(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024963
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】打抜き機
(51)【国際特許分類】
B26F 1/44 20060101AFI20240216BHJP
B26D 7/06 20060101ALI20240216BHJP
B26D 7/02 20060101ALI20240216BHJP
B26D 7/18 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B26F1/44 G
B26D7/06 C
B26D7/02 D
B26D7/18 F
B26F1/44 H
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127978
(22)【出願日】2022-08-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】508066533
【氏名又は名称】有限会社小森製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114959
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 徹也
(72)【発明者】
【氏名】二家 勝治
【テーマコード(参考)】
3C021
3C060
【Fターム(参考)】
3C021CB01
3C021CB08
3C021DA03
3C021DA06
3C021DA15
3C021FD03
3C021FD05
3C060AA01
3C060BA01
3C060BB14
3C060BB15
3C060BB19
3C060BD01
3C060BE08
3C060BG03
3C060BG06
3C060BG16
3C060BG17
3C060BH01
(57)【要約】
【課題】枠体を確実に搬送することのできる打抜き機を得る。
【解決手段】ニック部Nで連結されたブランクBと枠体Fを持つ印刷紙Sが載置される受面13、および、ブランクBを落下させる開口部11、を備えた雌型1と、雌型1に載置された印刷紙Sを押してブランクBを抜く雄型2と、枠体Fの先側縁部Sfを把持し、ブランクBが除かれた枠体Fを受面13と平行な搬送方向Xに搬送する掴み部Gと、を備え、受面13のうち搬送方向Xに沿って開口部11の後側に隣接する位置に、雄型2に向けて突出し搬送方向Xに交差する第1稜線15を持つ山形状の第1受部141が形成され、第1受部141の突出高さが第1稜線15を挟んで前側ほど及び後側ほど減少し、雄型2のうち第1受部141に対向する位置に、第1受部141と共に枠体Fに第1山形部F1を形成する第1押部221が設けられた打抜き機K。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニック部で互いに連結されたブランクと枠体とからなる印刷紙が載置される受面、および、前記ブランクを落下させる開口部、を備えた雌型と、
前記雌型に載置された前記印刷紙を押圧し、前記ブランクを前記印刷紙から分離させる雄型と、
前記枠体の先側縁部を把持し、前記ブランクが分離した後の前記枠体を前記受面と平行な搬送方向に沿って搬送する掴み部と、を備え、
前記受面のうち前記開口部に対して前記搬送方向に沿った後側に隣接する位置に、前記雄型に向けて突出し前記搬送方向に交差しつつ延出する第1稜線を持つ山形状の第1受部が形成され、
前記第1受部の突出高さが、前記第1稜線を挟んで前記搬送方向に沿った前側の位置ほど及び後側の位置ほど減少するものであり、
前記雄型のうち前記第1受部に対向する位置に、前記第1受部と共に前記枠体を挟持して前記枠体に第1山形部を形成する第1押部が設けられている打抜き機。
【請求項2】
前記第1押部が、前記第1受部との間で前記枠体を挟持する際に、前記第1受部の山形に応じて変形する弾性部材を備えている請求項1に記載の打抜き機。
【請求項3】
前記受面のうち前記搬送方向を基準として前記開口部の側方に隣接する領域であって、前記搬送方向に沿って最も先側にある前記開口部に隣接する領域から最も後側にある前記開口部に隣接する領域に亘って延出する第2稜線を備え、前記雄型に向けて突出する山形状の第2受部が形成され、
前記雄型のうち、前記第2受部に対向する部位に、前記第2受部と共に前記枠体を挟持し、前記枠体に第2山形部を形成する第2押部が形成されている請求項1に記載の打抜き機。
【請求項4】
前記第2押部が、前記第2受部との間で前記枠体を挟持する際に、前記第2受部の山形に応じて変形する弾性部材を備えている請求項3に記載の打抜き機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食料品や化粧品など各種紙器等の板紙の製造に用いられる打抜き機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような打抜き機に関連する技術としては、例えば以下の特許文献1(明細書第〔0009〕、〔0021〕~〔0026〕段落、
図2~
図5等参照)に示すものがある。
【0003】
特許文献1に係る技術は、シート材100aからブランク100bを打ち抜く打ち抜き工程と、打ち抜き型30及びその下方のブランキングメス型50によって打ち抜かれたブランク100bをシート材100aから切り離すブランキング工程と、ブランク100bが切り離された後の抜きカス100cをブランキングメス型50の上方で所定の方向に搬送する搬送工程とを有する。この従来技術では、搬送工程において抜きカス100cが自重により垂れ下がり、ブランキングメス型50に干渉することを防止するために、打ち抜き工程において抜きカス100cに強度アップのための垂下防止用溝101を形成するものである。
【0004】
具体的には、打ち抜き工程で用いる打ち抜き型30は、長板状の基板31と、この基板31に設けられた切刃32と、ブランク100bに折り筋を形成する第1押罫部33と、抜きカス100cに垂下防止用溝101を形成するよう基板31の表面側に配設された第2押罫部34と、を備えている。
【0005】
打ち抜き型30と対向する下方には面板35が設けられている。この面板35上には面切り型36が設けられており、面切り型36には、第2押罫部34の夫々に対向する凹溝36aが形成されている。打ち抜き型30がシート材100aを介して面板35に押し付けられることで、シート材100aには複数の垂下防止用溝101が形成される。
【0006】
第2押罫部34は、例えば、基板31のうちシート材100aの搬送方向上流側の長辺と中央位置との夫々において、長手方向に離間した四箇所に設けられており、八箇所の垂下防止用溝101が、シート材100aの搬送方向と直交する方向に延出しつつ形成される。このように垂下防止用溝101が形成されることで抜きカス100cの強度が高まり、抜きカス100cが回収位置に搬送される際に自重による垂れ下がりを回避することで面板35への干渉が防止されるとのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来技術における垂下防止用溝101は、抜きカス100cとして残された枠体のうち、ブランク100bが打ち抜かれた箇所に対して搬送方向に沿った側方に形成されている。この位置は、枠体が搬送方向に沿って連なった位置であるから、枠体が面板35の上から搬送される際に、当該垂下防止用溝101そのものが面板35の開口部の縁に干渉することはない。
【0009】
面板35への干渉を防止すべき個所は、搬送方向に直交する方向に隣接する二つの垂下防止用溝101の間の領域である。この領域の幅は狭く、垂下防止用溝101が形成できるほどの面積は有していない。よって従来技術では、この位置に対して垂下防止用溝101を形成することはせず、これに隣接する領域の剛性を高めて枠体の干渉を防止しようとするものである。
【0010】
ただし、枠体のうち面板に干渉する恐れのある領域の幅は狭く剛性も低いため、この部位は容易に撓み得ると推測される。よって、この従来技術の打抜き機においても、面板に対する枠体の干渉が確実に回避されるわけではない。
【0011】
このように、上記従来技術では種々の課題があるため未だ改善の余地があり、従来より、枠体を確実に搬送することのできる打抜き機が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(特徴構成)
本発明に係る打抜き機の特徴構成は、
ニック部で互いに連結されたブランクと枠体とからなる印刷紙が載置される受面、および、前記ブランクを落下させる開口部、を備えた雌型と、
前記雌型に載置された前記印刷紙を押圧し、前記ブランクを前記印刷紙から分離させる雄型と、
前記枠体の先側縁部を把持し、前記ブランクが分離した後の前記枠体を前記受面と平行な搬送方向に沿って搬送する掴み部と、を備え、
前記受面のうち前記開口部に対して前記搬送方向に沿った後側に隣接する位置に、前記雄型に向けて突出し前記搬送方向に交差しつつ延出する第1稜線を持つ山形状の第1受部が形成され、
前記第1受部の突出高さが、前記第1稜線を挟んで前記搬送方向に沿った前側の位置ほど及び後側の位置ほど減少するものであり、
前記雄型のうち前記第1受部に対向する位置に、前記第1受部と共に前記枠体を挟持して前記枠体に第1山形部を形成する第1押部が設けられた点にある。
【0013】
(効果)
本構成であれば、雌型に雄型を押し付けてブランクを打ち抜く際に、雌型の第1受部と雄型の第1押部とで印刷紙の枠体が挟持される。これにより枠体のうちブランクの位置に対して搬送方向に沿って後側に隣接する位置に山形状の第1山形部が形成される。この第1山形部は雄型に向けて突出し、その頂上部である第1稜線は搬送方向に対して交差している。
【0014】
このような第1山形部を形成することで、ブランクを打抜いたあと枠体を搬送する際に、第1山形部が翼の作用を発揮し、枠体が雌型から離間して浮き上がる。これにより、枠体のみとなった印刷紙であっても、雌型の一部に干渉することなく確実に搬送除去することができる。
【0015】
また、枠体に第1山形部が形成されることでこの部位の剛性が増す。よって、掴み部により枠体が搬送方向に引かれる際に、枠体の第1山形部に生じる下方への撓みが抑制され、第1山形部は雌型の開口部の縁部に干渉することなく搬送除去される。
【0016】
(特徴構成)
本発明に係る打抜き機においては、前記第1押部が、前記第1受部との間で前記枠体を挟持する際に、前記第1受部の山形に応じて変形する弾性部材を備えていると好都合である。
【0017】
(効果)
第1押部が第1受部の形状に応じて変形できるよう弾性部材を備えていれば、第1押部の押圧面の形状を予め第1受部の形状に適合させておく必要はない。例えば、第1押部を単なる平面として簡便に構成することができる。つまり、第1受部の形状とは無関係に第1押部を構成できるから、雄型の構成を簡略化することができる。
【0018】
さらに、第1押部が変形可能であれば、第1受部に対する第1押部の対向位置やサイズを厳密に定めておく必要がない。これにより、さらに打抜き機の構成を簡略化することができる。
【0019】
(特徴構成)
本発明に係る打抜き機においては、前記受面のうち前記搬送方向を基準として前記開口部の側方に隣接する領域であって、前記搬送方向に沿って最も先側にある前記開口部に隣接する領域から最も後側にある前記開口部に隣接する領域に亘って延出する第2稜線を備え、前記雄型に向けて突出する山形状の第2受部が形成され、
前記雄型のうち、前記第2受部に対向する部位に、前記第2受部と共に前記枠体を挟持し、前記枠体に第2山形部を形成する第2押部が形成されていると好都合である。
【0020】
(効果)
本構成は、搬送方向に沿う第2山形部を枠体に形成するべく、雌型に、複数の開口部に亘って延出する山形状の第2受部を設け、雄型に、第2受部に対向する第2押部を形成するものである。
【0021】
これら第2受部および第2押部によって枠体に形成された第2山形部は、枠体の搬送方向に沿う枠体の全体剛性を高める。掴み部によって枠体が引張り搬送される際に、第1山形部の浮揚効果によって枠体が上昇するが、その際に、枠体全体の平面状態を維持するものである。
【0022】
仮に、枠体の一部の剛性が不十分であれば、特定の第1山形部だけが浮揚に適した姿勢となり、他の領域は枠体の撓みのために浮揚効果を発揮できない姿勢となる恐れがある。その場合、姿勢が不適切な第1山形部が浮揚しないばかりか、逆に気流に対する迎え角が負の状態となり、当該第1山形部が急激に降下して雌型の受面に干渉する恐れが生じる。
【0023】
そこで本構成では、雌型に、搬送方向に沿って複数形成された開口部どうしに亘って延出する第2受部を形成し、雄型には、これに対応する第2押部を形成することで、押圧加工された枠体の剛性を高め、全体を一つの平面状に維持するものである。この結果、枠体の複数の部位に形成された第1山形部が夫々に発生する揚力が異なるものであっても、枠体は平面状態を維持したまま雌型から浮揚することとなり、枠体の搬送作業が確実なものとなる。
【0024】
(特徴構成)
本発明に係る打抜き機においては、前記第2押部が、前記第2受部との間で前記枠体を挟持する際に、前記第2受部の山形に応じて変形する弾性部材を備えていると好都合である。
【0025】
(効果)
第2押部が第2受部の形状に応じて変形できるよう弾性部材を備えていれば、第2押部の押圧面の形状を予め第2受部の形状に適合させておく必要はない。例えば、第2押部を単なる平面として簡便に構成することができる。つまり、第2受部の形状とは無関係に第2押部を構成できるから、雄型の構成を簡略化することができる。
【0026】
さらに、第2押部が変形可能であれば、第2受部に対する第2押部の対向位置やサイズを厳密に定めておく必要がない。これにより、さらに打抜き機の構成を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の打抜き機におけるブランキング型の構成を示す斜視図
【
図5】第1受部の別実施形態に係る構成を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔概要〕
本発明に係る打抜き機Kの概要を
図1および
図2に示す。
図2は打抜き機Kの全体構成を示すものであり、
図1は、このうちのブランキング部K4を示すものである。
【0029】
図2に示すように、打抜き機Kは、上流側から順に、給紙部K1、打抜き部K2、落丁部K3、ブランキング部K4、排紙部K5を備えている。これらの部位に亘ってモータMにより駆動するドライブチェーンCが設けられており、ドライブチェーンCに所定間隔で設けられた掴み部Gの爪によって印刷紙Sが咥えられ上記順に搬送される。
【0030】
図1に示すように、掴み部Gの爪G1が印刷紙Sの先側縁部Sfを線状に或いは散点状に咥える。これにより、印刷紙Sを高速で搬送した際にも印刷紙Sの変形が軽減される。
【0031】
印刷紙Sは、次の打抜き部K2に搬送され、紙器等となるブランクBの外周が切り抜かれる。印刷紙SのうちブランクBを除く部分は枠体Fとなる。ただし、枠体FとブランクBとは数カ所のニック部Nによって繋がった状態に維持される。打抜き部K2にあっては、上方に、合板材等で構成された打抜き型K21が配置されている。打抜き型K21は、板状の基板aを有し、この基板aにブランク形状に合致した切刃bとブランクBの所定箇所に折り筋を形成する押し罫cとが植設されている。一方、打抜き部K2の下方には、トグル機構tにより上下動する面盤K22が設けられ、この面盤K22の表面には、押し罫cに押し付けられる面版eが取り付けられている。印刷紙Sが所定位置で停止した後、面盤K22が上昇し、押し罫cと面版eとで印刷紙SにブランクBが打ち抜かれる。
【0032】
次の落丁部K3では、穴部gを有する落丁雌型K31が下方に置かれ、上方には落丁雄型K32が置かれている。落丁雄型K32の下降により、落丁押部iが穴部gに挿入され、その際に穴屑hが取り除かれる。
【0033】
次のブランキング部K4において印刷紙SからブランクBが抜き落とされ、残りの部分である枠体Fには、山形状の第1山形部F1などが形成される。そのために、下方にはブランキング雌型1(以下、「雌型1」と称する)が置かれ、上方には上下動するブランキング雄型(以下、「雄型2」と称する)が置かれている。その後、枠体Fが排紙部K5に搬送される。
【0034】
雌型1は板状の部材であり、打抜かれたブランクBを下方に落下させるための開口部11を備えている。開口部11の縁部に沿った数箇所には、開口部11を落下するブランクBを揃える案内ガイド12が設けられている。開口部11の周囲部分は印刷紙Sの枠体Fを受ける受面13となる。雄型2には、ブランクBを押し下げつつ開口部11に挿入可能な押し型21と、押し型21に隣接する部位の所定箇所に設けられて印刷紙Sを押さえる押部22とが設けられている。
【0035】
落丁部K3から搬送された印刷紙Sの位置決めが完了すると、上部の雄型2が下降し雌型1の開口部11を介してブランクBを突き落とす。駆動速度は、毎分100~150枚程度である。突き落とされたブランクBは雌型1の下部に設置されたパレットP1に積み上げられる。ブランクBが突き落とされた枠体Fは、このあと排紙部K5に搬送され別のパレットP2に積み上げられる。このときの枠体Fは急激な加速を受け、その搬送速度は約300cm/秒である。
【0036】
尚、掴み部Gは、枠体Fが雌型1の開口部11の縁部に接触しないように受面13よりもやや高い位置を移動する。そのため、掴み部Gが移動する間は、雌型1が下方の待避位置に下降する。
【0037】
〔枠体に対する第1山形部の形成〕
本実施形態のブランキング部K4では、これらブランクBの打抜きの他に、枠体Fの所定箇所に第1山形部F1を形成する。そのために、
図1および
図3、
図4に示すように、雌型1には、受面13のうち開口部11に対して搬送方向Xに沿った後側に隣接する位置に、雄型2に向けて突出する第1受部141が形成されている。第1受部141は、搬送方向Xに交差しつつ延出する第1稜線15を備えており、第1稜線15に直交する断面視において山形状の形状を有する。
【0038】
第1受部141の断面形状は上向きに凸状に形成されており、その突出高さは、第1稜線15の部分で最も高く形成してある。第1稜線15に対して枠体Fの搬送方向Xに沿った前側、つまり、第1稜線15から掴み部Gに近づく側の領域では、第1稜線15から離れるほど高さが減少している。一方、搬送方向Xに沿った後側、つまり、第1稜線15から掴み部Gと反対方向に遠去かる領域においても、第1稜線15から離れるほど高さが減少する。尚、本実施形態では、
図1に示すように第1稜線15を挟んで前後両側は傾斜した平面に構成してある。
【0039】
このような第1受部141は、受面13のうち開口部11に対して搬送方向Xに沿った後側に隣接する位置に設けてある。
図1に示すように、夫々の開口部11に対し、搬送方向Xに交差する方向に沿って四箇所の第1受部141が形成されている。これら四箇所の第1受部141は、搬送方向Xに沿って見た場合に開口部11の全幅に亘って連続した状態に形成されている。つまり、枠体Fが搬送方向Xに引かれる際に雌型1の開口部11の縁に干渉し易いのは開口部11の後側に位置する縁部であるから、枠体Fのこの領域の全長に亘って第1山形部F1を形成し、浮揚効果を高めるものである。
【0040】
ここで、印刷紙Sに使用される板紙の特性について説明する。抄紙機でパルプが一定方向に流され、大きなロール状に巻き取られることで紙が製造される。紙が製造される進行方向にパルプ繊維が流れ、紙目が発生する。ロール状の紙は断裁されて板紙となるが、板紙の縦横寸法と紙目との関係により縦目或いは横目の板紙が製造される。
【0041】
具体的には、紙の長辺に沿って紙目があるものが縦目の板紙であり、短辺に沿って紙目があるものが横目の板紙である。縦目の板紙は長辺を軸として折り易く、横目の板紙は短辺を軸として折り易い。食料品や化粧品など小物雑貨等の紙器には、印刷機など生産機械の都合により縦目の板紙が使用されることが多い。一般的なロール胴を用いて回転印刷を行う場合、紙目を軸として丸めるように板紙を用いると品質の良い印刷紙Sが得られる。
【0042】
本実施形態に示す板紙は縦目の紙であり、この紙が長辺方向と直角な方向、つまり、紙目に直角な方向に搬送される。板紙は元々紙目を軸として撓み易い上に、ブランクBが抜き落とされて全体の剛性が低下した枠体Fは、その後側ほど下方に撓み易くなる。本実施形態では、このような垂れ下がりを防止するために特に開口部11の後側に隣接した領域に第1山形部F1を形成し、浮揚させることとしている。
【0043】
雌型1の受面13に第1受部141を形成するには、例えば
図1に示すように、中央付近に第1稜線15を有する山形の第1部材1aを雌型1に対して着脱可能に構成しておくと便利である。例えば、受面13に、第1部材1aの固定位置を特定する凹部13aを形成し、ここに嵌合させるとよい。
【0044】
第1部材1aを凹部13aに嵌め込む構成であれば、雄型2による押圧を繰り返し受けても第1部材1aが位置ずれしない。また、第1部材1aの上面の形状は、二つの平面で構成するものの他に、
図5(a)に示すように、飛行機の翼のように曲面状に構成してもよいし、
図5(b)に示すように、稜線の位置に線状の凸部16を設けても良い。枠体Fの浮揚の程度は、枠体Fの重量や形状あるいは搬送速度によって変化するから、適切な第1部材1aを選択可能にすることで、雌型1への枠体Fの干渉防止効果をより高めることができる。
【0045】
尚、第1受部141は、雌型1を構成する材料と一体に形成するものであっても良い。本構成であれば、第1受部141の強度が十分なものとなり、開口部11に対して第1受部141が位置ズレすることもなく、枠体Fに最適な形状の第1山形部F1を形成することができる。
【0046】
〔ブランキング雄型〕
図1および
図3、
図4に示すように、雌型1に対向する位置には雄型2を設けてある。雄型2は雌型1に対して昇降可能であり、下降時に印刷紙SからブランクBを抜き落とすと共に、枠体Fに第1山形部F1を形成する。そのために、雄型2のうちブランクBに対向する位置には押部22が設けてあり、第1受部141に対向する位置には、第1受部141と共に枠体Fを挟持して枠体Fに第1山形部F1を形成する第1押部221が形成されている。
【0047】
第1押部221は、枠体Fを押圧する際に、第1受部141の山形に応じて変形する弾性部材を備えている。本実施形態では、雄型2に固定されたブロック状の押部本体22aに弾性部材で構成される当接部材22bが取り付けられている。この取り付けは、接着など適宜の方法による。
【0048】
当接部材22bのうち枠体Fに当接する部位は例えば単なる平面に構成しておけばよい。その場合、先ず、当接部材22bの当接面の全体が枠体Fに当接し、さらに第1受部141への押し付けが進むと、枠体Fが第1受部141の稜線に強く押し付けられ、枠体Fが稜線に対応する位置で曲がり始める。これに伴い、弾性部材が第1受部141の形状に沿うように変形し、枠体Fに第1山形部F1が形成される。
【0049】
弾性部材からなる当接部材22bを用いて第1押部221を構成しておけば、当接部材22bの押圧面の形状を予め第1受部141の形状に合わせておく必要がない。例えば、当接部材22bを単なる直方体として簡便に構成することができる。このように、第1受部141の形状とは無関係に第1押部221を構成できるから、雄型2の構成を簡略化することができる。
【0050】
さらに、第1押部221の一部が変形可能であれば、第1受部141に対する第1押部221の対向位置やサイズを厳密に定めておく必要がない。これにより、さらに打抜き機Kの構成を簡略化することができる。
【0051】
尚、本実施形態では、
図1および
図3に示すように、これらの第1押部221に加えて別の補助押部223を設けてある。補助押部223は、例えば第1押部221に隣接した位置に設けてある。補助押部223は、雌型1の受面13との間で枠体Fを挟持し、押し型21によるブランクBの打ち抜き作業を安定化させる。
【0052】
以上の構成を有する雌型1および雄型2を備えたブランキング部K4では、落丁部K3で穴屑hを取り除かれた印刷紙Sの搬送完了に続けて雄型2を降下させる。
図3(a)は、雄型2の降下前の状態であり、
図3(b)が雄型2の降下後の状態である。第1押部221の弾性を有する当接部材22bが枠体Fを押し、第1受部141との協働で
図4に示すように枠体Fに第1山形部F1を形成する。さらに雄型2が降下すると、押し型21がブランクBを抜き落とし、雌型1の受面13には枠体Fが残される。これにより枠体FのうちブランクBの位置に対して搬送方向Xに沿って後側に隣接する位置に山形状の第1山形部F1が形成される。この第1山形部F1は雄型2に向けて突出し、その頂上部である稜線は搬送方向Xに対して交差している。
【0053】
ブランクBの除去が完了すると掴み部Gが稼働位置に上昇し、枠体Fを搬送する。第1山形部F1が形成されたことで、ブランクBを打ち抜いたあと枠体Fを搬送する際に、第1山形部F1が翼の作用を発揮し、枠体Fが雌型1から離間して浮き上がる。具体的には、
図4に示すように、気流が第1山形部F1を通過する際には、その表面形状に沿って気流は一旦上方に偏向される。これにより、第1山形部F1の上面での気圧が低下する。
【0054】
一方、第1山形部F1の裏面における気圧は、枠体Fの周囲の気圧と同じであるか、それよりも僅かに高いものとなる。枠体Fが掴み部Gによって雌型1から取り除かれる時、掴み部Gは僅かに上昇し、その後搬送方向Xに移動を始める。このため、枠体Fが引かれ始めるときには前縁部に対して後縁部が下がった姿勢となる。よって、枠体Fの下面側には気流が正圧として作用し、第1山形部F1の表裏における圧力差が広がり易くなる。このような浮揚効果は、第1山形部F1の前後領域が開口となっており、第1山形部F1があたかも翼として作用する場合に特に良好に発揮される。よって、枠体Fとして残された領域の形状が搬送方向Xに沿って幅狭であり、搬送方向に直交する方向に長く延出するほど浮揚効果が高まる。このようにして枠体Fは搬送に際して浮揚し易くなり、雌型1の開口部11などに干渉することなく確実に搬送除去可能となる。
【0055】
また、枠体Fに第1山形部F1が形成されることでこの部位の剛性が増す。よって、掴み部Gにより枠体Fが搬送方向Xに引かれる際に、例えば第1山形部F1の一部の個所が下方に撓むことがない。よって、第1山形部F1が雌型1の開口部11の縁部に干渉し難くなり、枠体Fが円滑に搬送除去される。
【0056】
〔枠体に対する第2山形部の形成〕
本実施形態に係る打抜き機Kにあっては、
図1及び
図4に示すように、ブランキング部K4の雌型1および雄型2によって、第1山形部F1に加え、枠体Fの一部に搬送方向Xに沿った稜線を有する第2山形部F2を形成する。具体的には、受面13のうち搬送方向Xを基準として開口部11の側方に隣接する領域であって、搬送方向Xに沿って最も先側にある開口部11に隣接する領域から最も後側にある開口部11に隣接する領域に亘って長尺状の第2受部142を形成する。
【0057】
このような第2受部142を、枠体Fの搬送方向Xに対して三列に設けられたブランクBの両側に設ける。よって、第2受部142は合計四本設けられる。夫々の第2受部142の全長に亘って第2稜線Fbが延出し、第2受部142は雄型2に向けて突出する山形状の断面形状を有する。本実施形態では、
図1に示すように、第2受部142は二つの平面を備えた三角断面に形成されている。
【0058】
一方の雄型2にあっては、第2受部142に対向する部位に同じく長尺状の第2押部222が形成されている。第2押部222は、第1押部221と同様に、雄型2に固定されたブロック状の押部本体22aに弾性部材からなる当接部材22bが取り付けられて構成される。これにより、第2受部142の形状とは無関係に第2押部222を構成できるから、雄型2の構成を簡略化することができる。また、第2受部142に対する第2押部222の対向位置やサイズを厳密に定めておく必要がなく、さらに打抜き機Kの構成を簡略化することができる。
【0059】
図4に示すように、これら第2受部142および第2押部222によって枠体Fに形成された第2山形部F2は、搬送方向Xに沿う枠体Fの全体剛性を高める。枠体Fは、掴み部Gによって引かれる際に第1山形部F1の効果によって浮揚するが、第2山形部F2は、その際に枠体Fの全体の平面状態を維持する。
【0060】
仮に、枠体Fの一部の剛性が不十分であれば枠体Fに撓みが生じ、夫々の第1山形部F1の搬送方向Xに対する相対姿勢が異なるものとなる。その結果、特定の第1山形部F1だけが浮揚に適した姿勢となり、他の領域は枠体Fの撓みのために浮揚効果を発揮できない姿勢となる恐れがある。その場合、姿勢が不適切な第1山形部F1は浮揚しないばかりか、逆に気流に対する迎え角が負の状態となり、当該第1山形部F1が急激に降下して雌型1の開口部11の縁部に干渉する恐れが生じる。
【0061】
本構成では、雌型1に、搬送方向Xに沿って複数形成された開口部11どうしに亘って延出する第2受部142を形成し、雄型2には、これに対応する第2押部222を形成することで、押圧加工された枠体Fの剛性を高め、全体を一つの平面状に維持するものである。この結果、枠体Fに形成された夫々の第1山形部F1が同様の浮揚効果を発揮することとなる。また、仮に、夫々の第1山形部F1が生じる浮揚効果が異なるものとなっても、枠体Fは平面状態を維持したまま浮揚するため、雌型1に干渉することはなく枠体Fの搬送作業が確実なものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係る打抜き機は、例えば、印刷紙から食料品や化粧品など各種紙器等となるブランクを打ち抜く装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 雌型
11 開口部
13 受面
141 第1受部
142 第2受部
15 第1稜線
2 雄型
221 第1押部
222 第2押部
B ブランク
F 枠体
F1 第1山形部
Fb 第2稜線
G 掴み部
K 打抜き機
N ニック部
S 印刷紙
Sf 先側縁部
X 搬送方向