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特開2024-24968ガラス板の製造装置及びガラス板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024968
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】ガラス板の製造装置及びガラス板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/04 20060101AFI20240216BHJP
   C03B 33/02 20060101ALI20240216BHJP
   C03B 17/06 20060101ALI20240216BHJP
   B65G 49/06 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B65H5/04
C03B33/02
C03B17/06
B65G49/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127984
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】寺町 孝久
(72)【発明者】
【氏名】板本 康彦
(72)【発明者】
【氏名】堂谷 尚正
【テーマコード(参考)】
3F101
4G015
【Fターム(参考)】
3F101BA01
3F101BB01
3F101BB05
3F101CC22
3F101LA16
3F101LB12
4G015FA01
4G015FB02
4G015FC10
(57)【要約】
【課題】ガラス板を作業エリアに搬送する過程で、ガラス板を保持する保持手段の前後方向移動を案内する案内機構から潤滑油が外方に漏出する事態を回避して、潤滑油のガラス板への付着などを阻止する。
【解決手段】縦姿勢のガラス板Gを保持して作業エリアEに搬送する搬送装置2を備えるガラス板の製造装置につき、搬送装置2が、ガラス板Gの上部を保持すると共に前後方向に移動可能とされ且つ前進動することでガラス板Gを作業エリアEに到達させる保持手段5と、潤滑油を用いて保持手段5の前後方向移動を案内する案内機構6とを備え、案内機構6の前方の端部位置に、潤滑油の外方への漏出を防止する漏出防止部材9を配置する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦姿勢のガラス板を保持して作業エリアに搬送する搬送装置を備えるガラス板の製造装置であって、
前記搬送装置は、前記ガラス板の上部を保持すると共に前後方向に移動可能とされ且つ前進動することで前記ガラス板を前記作業エリアに到達させる保持手段と、潤滑油を用いて前記保持手段の前後方向移動を案内する案内機構と、を備え、
前記案内機構の前方の端部位置に、前記潤滑油の外方への漏出を防止する漏出防止部材を配置したことを特徴とするガラス板の製造装置。
【請求項2】
前記保持部材が移動可能な前後方向は、前記ガラス板の主面と交差する方向である請求項1に記載のガラス板の製造装置。
【請求項3】
前記案内機構は、前記作業エリアに搬送される前記ガラス板の上方に配置され又は該ガラス板の主面と対向するように配置されている請求項1又は2に記載のガラス板の製造装置。
【請求項4】
前記漏出防止部材は、前記潤滑油の下方への落下を防止するように構成される請求項3に記載のガラス板の製造装置。
【請求項5】
前記漏出防止部材は、前記潤滑油の前方への飛散を防止するように構成される請求項3に記載のガラス板の製造装置。
【請求項6】
前記漏出防止部材は、平板状部材のみで構成される請求項5に記載のガラス板の製造装置。
【請求項7】
前記案内機構は、直動ガイドを用いて構成されている請求項1又は2に記載のガラス板の製造装置。
【請求項8】
縦方向に延びるガラスリボンを連続成形する成形装置と、前記ガラスリボンを幅方向に切断して前記ガラス板を切り出す切断装置と、をさらに備え、
前記作業エリアは、前記切断装置により切り出された前記ガラス板を前記搬送装置が搬送することで前記ガラス板が到達する受け渡しエリアであり、前記受け渡しエリアは、前記ガラス板を前記搬送装置から他の搬送装置に受け渡すためのエリアである請求項1又は2に記載のガラス板の製造装置。
【請求項9】
前記ガラス板の検査を行う検査装置をさらに備え、
前記作業エリアは、前記ガラス板を他の搬送装置から前記搬送装置が受け取って搬送することで前記ガラス板が到達する検査エリアであり、前記検査エリアは、前記検査装置により前記ガラス板の検査を行うためのエリアである請求項1又は2に記載のガラス板の製造装置。
【請求項10】
前記作業エリアは、前記ガラス板を他の搬送装置から前記搬送装置が受け取って搬送することで前記ガラス板が到達する梱包エリアであり、前記梱包エリアは、梱包用パレットを用いて前記ガラス板を梱包するためのエリアである請求項1又は2に記載のガラス板の製造装置。
【請求項11】
縦姿勢のガラス板を保持して作業エリアに搬送する搬送工程を備えるガラス板の製造方法であって、
前記搬送工程では、前記ガラス板の上部を保持すると共に前後方向に沿って移動可能な保持手段が前進動することで前記ガラス板を前記作業エリアに到達させ、案内機構が潤滑油を用いて前記保持手段の前後方向移動を案内すると共に、前記案内機構の前方の端部位置に配置された漏出防止部材が前記潤滑油の外方への漏出を防止することを特徴とするガラス板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦姿勢のガラス板をその上部を保持して作業エリアに搬送する搬送装置を備えたガラス板の製造装置及びガラス板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス板製造の分野では、オーバーフローダウンドロー法やスロットダウンドロー法に代表されるダウンドロー法等により成形されるガラスリボンを幅方向に沿って切断して切り出されたガラス板を縦姿勢で各種の作業エリアに搬送することが行われている。
【0003】
その具体例として、特許文献1には、前記切り出して得られたガラス板を、受け渡しエリア、第二切断エリア、検査エリア、及び梱包エリアなどの作業エリアに、複数の搬送装置を用いて搬送することが開示されている。この複数の搬送装置は何れも、前記切り出して得られたガラス板や、そのガラス板の幅方向両端部を第二切断エリアで切断除去して得られたガラス板の上部を保持して縦姿勢で吊り下げ支持した状態で搬送するものである。
【0004】
ここで、特許文献2には、この種の搬送装置の構成の一例が開示されている。詳しくは、同文献の図2には、ガラス板を鎖線で示す前進端位置(作業エリアに存する位置)から実線で示す後退位置に後退動させる保持手段と、保持手段の前後方向移動を案内する案内機構とが開示されている。
【0005】
同文献に開示された保持手段は、ガラス板の上部を把持するチャックと、このチャックを前端で支持するプレートとを備える。また、同文献に開示された案内機構は、ベース上に固定され且つ前後方向に延びるLMレールと、プレートの下端に固定され且つLMレールに沿って前後方向に移動するLMブロックとを備える。
【0006】
この場合、同文献(同文献の図2)に開示された搬送装置は、先ず、ガラス板を保持していない保持手段を作業エリアまで前進動させ、その後、作業エリアでガラス板を受け取って後退動させるものである。
【0007】
また、同文献に開示された搬送装置は、LMレールがガラス板の上端よりも低い位置に配置されている。換言すれば、LMレールがガラス板の主面と対向するように配置されている。
【0008】
さらに、特許文献3には、縦姿勢のガラス板の上方に位置する搬送装置から発生した汚染物質としての潤滑剤が、ガラス板に付着しやすいことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2020/090625号
【特許文献2】特開2017-202958号公報
【特許文献3】特開2020-045267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、ガラス板を作業エリアに搬送する過程で、ガラス板を保持する保持手段の前後方向移動を案内する案内機構から潤滑油が外方に漏出する事態を回避して、潤滑油のガラス板への付着などを阻止することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1) 上記課題を解決するために創案された本発明の第一の側面は、縦姿勢のガラス板を保持して作業エリアに搬送する搬送装置を備えるガラス板の製造装置であって、前記搬送装置は、前記ガラス板の上部を保持すると共に前後方向に移動可能とされ且つ前進動することで前記ガラス板を前記作業エリアに到達させる保持手段と、潤滑油を用いて前記保持手段の前後方向移動を案内する案内機構と、を備え、前記案内機構の前方の端部位置に、前記潤滑油の外方への漏出を防止する漏出防止部材を配置したことに特徴づけられる。ここでいう「潤滑油」は、粘性の低い液状の潤滑オイルだけでなく粘性の高いグリースなどを含む(以下、同様)。また、ここいう「案内機構の前方の端部位置」とは、案内機構の前端位置だけでなく、当該前端位置から僅かな長さ(例えば50mm以内)だけ前方の位置又は当該前端位置から僅かな長さ(例えば50mm以内)だけ後方の位置を含む(以下、同様)。
【0012】
このような構成によれば、ガラス板を作業エリアに搬送するために保持手段が前進動していく際に、案内機構から外方に潤滑油が漏出しようとしても、案内機構の前方の端部位置に配置された漏出防止部材によってそのような潤滑油の漏出が防止される。これにより、ガラス板に潤滑油が付着する事態を回避でき、ガラス板の品質の低下や洗浄作業の困難化等による生産効率の低下を阻止できる。また、ガラス板に潤滑油が付着しない場合であっても、工場の床面等や製造設備に潤滑油が落下する事態を防止でき、作業環境の改善が図られる。
【0013】
(2) 上記(1)の構成において、前記保持部材が移動可能な前後方向は、前記ガラス板の主面と交差する方向であってもよい。
【0014】
この場合、ガラス板の主面に向かって潤滑油が漏出したならば、ガラス板への潤滑油の付着量が多くなり得る。ここでの構成によれば、このような方向性を持つ潤滑油の漏出が漏出防止部材によって阻止されるため、より顕著な効果を得ることができる。
【0015】
(3) 上記(1)又は(2)の構成において、前記案内機構は、前記作業エリアに搬送される前記ガラス板の上方に配置され又は該ガラス板の主面と対向するように配置されてもよい。
【0016】
ここでいう「ガラス板の上方に配置され」は、ガラス板の鉛直上方に配置される場合だけでなくガラス板の斜め上方に配置される場合も含む。また、「ガラス板の主面と対向するように配置され」は、厳密には、前後方向に沿う案内機構の前端がガラス板の主面と対向するように配置されることを意味する。案内機構がガラス板の上方に配置されることで、保持手段と案内機構とを接近させることができ、安定してガラス板を搬送することができる。また、案内機構がガラス板の主面と対向するように配置されることで、搬送装置の高さを抑えることができる。
【0017】
(4) 上記(3)の構成において、前記漏出防止部材は、前記潤滑油の下方への落下を防止するように構成されていてもよい。
【0018】
このようにすれば、ガラス板の上方に案内機構が配置される場合は、案内機構から潤滑油が下方に落下しようとしても(飛散して下方に落下しようとする場合を含む)、その潤滑油の落下は、漏出防止部材により阻止される。これにより、ガラス板への潤滑油の付着が阻止される。一方、ガラス板の主面と対向するように案内機構が配置される場合は、案内機構から潤滑油が斜め前方に向かって落下しようとしても、その潤滑油の落下は、漏出防止部材により阻止される。これにより、ガラス板の主面への潤滑油の付着が阻止される。
【0019】
(5) また、上記(3)の構成において、前記漏出防止部材は、前記潤滑油の前方への飛散を防止するように構成されていてもよい。
【0020】
このようにすれば、ガラス板の上方に案内機構が配置される場合は、案内機構から潤滑油が前方に向かって飛散して下方に落下しようとしても、その潤滑油の飛散及び落下は漏出防止部材により阻止される。一方、ガラス板の主面と対向するように案内機構が配置される場合は、案内機構から潤滑油が前方に向かって飛散しようとしても、その潤滑油の飛散は漏出防止部材により阻止される。
【0021】
(6) 上記(1)~(5)のいずれかの構成において、前記漏出防止部材は、平板状部材のみで構成されていてもよい。
【0022】
このようにすれば、極めて簡素な構成で潤滑油の落下や前方への飛散などが阻止される。これにより、漏出防止部材の製作作業や取り付け作業の簡略化さらには制作費用や取り付け費用の削減が図られる。なお、平板状部材を途中で折り曲げて縦姿勢となる部位と横姿勢になる部位とを形成すれば、縦姿勢となる部位で潤滑油の前方への飛散などを阻止し、横姿勢となる部位で潤滑油の下方への落下などを阻止するようにできる。
【0023】
(7) 上記(1)~(6)のいずれかの構成において、前記案内機構は、直動ガイドを用いて構成されていてもよい。
【0024】
このようにすれば、案内機構の製作作業や取り付け作業の簡略化さらには制作費用や取り付け費用の削減が図られる。
【0025】
(8) 上記(1)~(7)のいずれかの構成において、縦方向に延びるガラスリボンを連続成形する成形装置と、前記ガラスリボンを幅方向に切断して前記ガラス板を切り出す切断装置と、をさらに備え、前記作業エリアは、前記切断装置により切り出された前記ガラス板を前記搬送装置が搬送することで前記ガラス板が到達する受け渡しエリアであり、前記受け渡しエリアは、前記ガラス板を前記搬送装置から他の搬送装置に受け渡すためのエリアであってもよい。
【0026】
この場合、受け渡しエリアで既述の構成の搬送装置から他の搬送装置にガラス板を受け渡す際には、既述の案内機構から潤滑油が外方に漏出してガラス板に付着するおそれがある。しかも、ここでのガラス板は、成形されたガラスリボンから切り出されたものであるために高温である。そのため、ガラス板に潤滑油が付着した場合には、潤滑油が焼き付くおそれがあり、洗浄が極めて困難になる。しかし、ここでの構成によれば、案内機構からの潤滑油の外方への漏出が漏出防止部材によって阻止されるため、このような不具合が回避され得る。
【0027】
(9) 上記(1)~(7)のいずれかの構成において、前記ガラス板の検査を行う検査装置をさらに備え、前記作業エリアは、前記ガラス板を他の搬送装置から前記搬送装置が受け取って搬送することで前記ガラス板が到達する検査エリアであり、前記検査エリアは、前記検査装置により前記ガラス板の検査を行うためのエリアであってもよい。
【0028】
この場合、検査エリアでは、検査装置によってガラス板に発生している欠陥や汚れなどの検査が行われる。そして、既述の構成の搬送装置が他の搬送装置から受け取ったガラス板を検査エリアに到達させる際には、既述の案内機構から潤滑油が外方に漏出してガラス板に付着するおそれがある。また、検査装置が既述の構成の搬送装置を備える場合もあり、この場合には検査装置にも潤滑油が付着するおそれがある。しかし、ここでの構成によれば、案内機構からの潤滑油の外方への漏出が漏出防止部材によって阻止されるため、これらの不具合が回避され得る。
【0029】
(10) 上記(1)~(7)のいずれかの構成において、前記作業エリアは、前記ガラス板を他の搬送装置から前記搬送装置が受け取って搬送することで前記ガラス板が到達する梱包エリアであり、前記梱包エリアは、梱包用パレットを用いて前記ガラス板を梱包するためのエリアであってもよい。
【0030】
この場合、既述の構成の搬送装置が他の搬送装置から受け取ったガラス板を梱包エリアに到達させた際には、既述の案内機構から潤滑油が外方に漏出してガラス板や梱包用パレットに付着するおそれがある。しかし、ここでの構成によれば、案内機構からの潤滑油の外方への漏出が漏出防止部材によって阻止されるため、このような不具合が回避され得る。
【0031】
(11) 上記課題を解決するために創案された本発明の第二の側面は、縦姿勢のガラス板を保持して作業エリアに搬送する搬送工程を備えるガラス板の製造方法であって、前記搬送工程では、前記ガラス板の上部を保持すると共に前後方向に沿って移動可能な保持手段が前進動することで前記ガラス板を前記作業エリアに到達させ、案内機構が潤滑油を用いて前記保持手段の前後方向移動を案内すると共に、前記案内機構の前方の端部位置に配置された漏出防止部材が前記潤滑油の外方への漏出を防止することに特徴づけられる。
【0032】
この方法によれば、前述の対応するガラス板の製造装置と実質的に同一の作用効果を享受することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、ガラス板を作業エリアに搬送する過程で、ガラス板を保持する保持手段の前後方向移動を案内する案内機構から潤滑油が外方に漏出する事態が回避され、潤滑油のガラス板への付着などが阻止される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の実施形態に係る製造装置を用いてガラス板を製造する過程におけるガラス板の搬送手順を模式的に示す概略平面図である。
図2図1の製造装置をX-X線に則して視た概略側面図である。
図3図1の製造装置をY-Y線に則して視た概略側面図である。
図4図1の製造装置をZ-Z線に則して視た概略側面図である。
図5】本発明の実施形態に係るガラス板の製造装置が備える第一例に係る搬送装置を示す側面図である。
図6図5のV-V線断面図である。
図7図5のW-W線断面図である。
図8】本発明の実施形態に係るガラス板の製造装置が備える第一例に係る搬送装置の作用を示す側面図である。
図9】本発明の実施形態に係るガラス板の製造装置が備える第一例に係る搬送装置の第一の変形例を示す要部側面図である。
図10】本発明の実施形態に係るガラス板の製造装置が備える第一例に係る搬送装置の第二の変形例を示す要部側面図である。
図11】本発明の実施形態に係るガラス板の製造装置が備える第二例に係る搬送装置を示す側面図である。
図12】本発明の実施形態に係るガラス板の製造装置が備える第二例に係る搬送装置の作用を示す側面図である。
図13】本発明の実施形態に係るガラス板の製造装置が備える第二例に係る搬送装置のより詳細な構成を示す側面図である。
図14】本発明の実施形態に係るガラス板の製造装置が備える第二例に係る搬送装置の変形例を示す要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態に係るガラス板の製造装置及びガラス板の製造方法について添付図面を参照して説明する。
【0036】
図1は、本発明の実施形態に係る製造装置を用いてガラス板を製造する過程におけるガラス板の搬送手順を模式的に示す概略平面図である。なお、本発明では、製造装置が備える複数の搬送装置のうち、構成に特徴がある搬送装置を主たる要素としている。そこで、以下の説明では、その構成に特徴がある搬送装置を本搬送装置と記述する。また、図例では、製造装置が備える複数の搬送装置につき、それぞれの構成要素であるガラス板の上部を把持する把持爪のみを図示し、それら把持爪に各搬送装置の符号を付す。
【0037】
先ず、オーバーフローダウンドロー法を実行する成形装置によって連続成形されつつ下方に送られるガラスリボンは、図1に示す第一ゾーン1内の第一切断エリアE1で切断装置によりガラスリボンの幅方向に沿って切断される。これにより、両端部に不要部(幅方向中央部よりも板厚が厚い耳部)を有する不要部付きガラス板G1が切り出される。
【0038】
同図に示すように、本搬送装置2Aは、切り出された不要部付きガラス板G1を第一切断エリアE1から受け取った後、第一ゾーン1内の受け渡しエリアE2に搬送する。このとき、不要部付きガラス板G1は、その主面Gaと交差する方向(本実施形態では直交する方向)(矢印A方向)に搬送される。受け渡しエリアE2では、不要部付きガラス板G1が本搬送装置2Aから他の搬送装置2Bに受け渡される。
【0039】
他の搬送装置2Bは、不要部付きガラス板G1を受け渡しエリアE2から同図右側の第二ゾーン2内の第二切断エリアE3に搬送する。このとき、不要部付きガラス板G1は、その幅方向(矢印B方向)に搬送される。第二切断エリアE3では、不要部付きガラス板G1の幅方向両端部の内側縁にそれぞれ上下方向(紙面と直交する方向)に沿うスクライブ線Sを刻設する。そして、これらスクライブ線Sに沿って折割りを行うことで、不要部が切断除去されたガラス板G2を得る。なお、第二切断エリアE3は、スクライブ線Sを刻設するためのエリアと、スクライブ線Sに沿って折割りを行うためのエリアとを備えてもよい。不要部付きガラス板G1の幅方向両端部の不要部は、レーザ割断又はレーザ溶断によって除去してもよい。
【0040】
この後、他の搬送装置2Bは、ガラス板G2を第二切断エリアE3から同図右側の第三ゾーン3に搬送する。このとき、ガラス板G2はその幅方向に搬送される。第三ゾーン3では、先ず、ガラス板G2を他の搬送装置2Bから本搬送装置2Cに受け渡す。然る後、本搬送装置2Cは、ガラス板G2を第三ゾーン3内の検査エリアE4に搬送する。このとき、ガラス板G2は、その主面Gaと交差する方向(本実施形態では直交する方向)に搬送される。検査エリアE4では、検査装置(例えば、撮像手段を含む画像処理装置)D1によってガラス板G2の汚れや欠陥(例えば、白金異物や泡の混入、歪、或いはチッピング(割断端面の不当なクラック))などの検査が行われる。なお、検査エリアE4は、複数のエリアを備え、各エリアで異なる検査を行ってもよい。
【0041】
検査が行われた後、本搬送装置2Cは、第三ゾーン3内の当初の位置に戻り、ガラス板G2を本搬送装置2Cから他の搬送装置2Bに受け渡す。他の搬送装置2Bは、ガラス板G2を第三ゾーン3から同図右側の第四ゾーン4に搬送する。このとき、ガラス板G2はその幅方向に搬送される。第四ゾーン4では、ガラス板G2を他の搬送装置2Bから本搬送装置2Dに受け渡す。この後、本搬送装置2Dは、ガラス板G2を第四ゾーン4内の梱包エリアE5に搬送する。このとき、ガラス板G2は、その主面Gaと交差する方向(本実施形態では直交する方向)に搬送される。梱包エリアE5では、梱包用パレットD2を用いてガラス板G2を梱包するための作業が行われる。
【0042】
ここで、上記の各本搬送装置2A、2C、2Dが各作業エリアE2、E4、E5にガラス板G1、G2を搬送する態様についてさらに説明を加える。図2は、図1の第一ゾーン1をX-X線に則して視た側面図である。同図に示すように、本搬送装置2Aは、不要部付きガラス板G1の上端部を把持爪2aにより把持して受け渡しエリアE2まで搬送し、受け渡しエリアE2で一旦停止する。受け渡しエリアE2では、待機していた鎖線で示す他の搬送装置2Bが、不要部付きガラス板G1の上端部を把持爪2bにより把持し、本搬送装置2Aの把持爪2aによる把持を解除することで受け渡しが行われる。
【0043】
図3は、図1の第三ゾーン3をY-Y線に則して視た側面図である。同図に示すように、本搬送装置2Cは、ガラス板G2の上端部を把持爪2cにより把持して検査エリアE4まで搬送し、同図に鎖線で示すように検査エリアE4で一旦停止する。検査エリアE4では、本搬送装置2Cの把持爪2cがガラス板G2の上端部を把持した状態のままで、検査装置D1がガラス板G2に対して検査を行う。
【0044】
図4は、図1の第四ゾーン4をZ-Z線に従って視た側面図である。同図に示すように、本搬送装置2Dは、ガラス板G2の上端部を把持爪2dにより把持して梱包エリアE5まで搬送し、同図に鎖線で示すように梱包エリアE5で一旦停止する。梱包エリアE5では、例えば先端に吸盤を備えたロボットアーム(図示略)などがガラス板G2を保持し、本搬送装置2Dの把持爪2dによる把持を解除する。そして、ロボットアームなどの動作によりガラス板G2が保護シート(図示略)と交互に梱包用パレットD2上に積載されていく。なお、ガラス板G2を本搬送装置2Dからロボットアームに受け渡すことなく、本搬送装置2Dによってガラス板G2を梱包用パレットD2上に積載してもよい。この場合、本搬送装置2Dは、ガラス板G2を上下方向に搬送する機構(図示略)を備える。
【0045】
ここで、ガラス板G2は、厚みが100~1500μm、上下方向長さが700~3300mm、幅方向長さが900~3900mmであって、所定の加工や処理が行われることでパネルディスプレイ用の基板やカバーガラスなどになる。
【0046】
以下、上記の本搬送装置2A、2C、2Dの構成を詳細に説明する。なお、本搬送装置2A、2C、2Dは、何れも、基本的な構成が同一であるため、以下の説明では、これら装置2A、2C、2Dを、本搬送装置2と記述する。また、本搬送装置2は、受け渡しエリアE2、検査エリアE4及び梱包エリアE5に対して共通して使用できるため、以下の説明では、これらエリアE2、E4、E5を、作業エリアEと記述する。さらに、本搬送装置2は、不要部付きガラス板G1及び不要部が切断除去されたガラス板G2の何れについても適用できるため、以下の説明では、これらG1、G2を、ガラス板Gと記述する。なお、把持爪2a、2c、2dについては、便宜上、把持爪5caと記述する。
【0047】
先ず、本搬送装置2の第一例について説明する。図5は、第一例に係る本搬送装置2の側面図であり、図6は、図5のV-V線断面図であり、図7は、図5のW-W線断面図である。なお、これら各図に基づく説明では、作業エリアEに向かう方向を前方とし、その逆方向を後方とする。また、ガラス板Gの幅方向に沿う方向を、幅方向とする。これら各図に示すように、第一例に係る本搬送装置2は、ガラス板Gの上端部を保持すると共に前後方向に移動可能とされた保持手段5と、潤滑油を用いて保持手段5の前後方向移動を案内する案内機構6と、保持手段5を前後方向に移動させる駆動手段7とを備える。
【0048】
保持手段5は、平面視が矩形で板状をなす基部材5aと、基部材5aの上面に立設固定されたアーム部材5bと、アーム部材5bの前端部に装着された把持機構5cとを備える。アーム部材5bは、基部材5aから上方に延びる支持部5baと、支持部5baの上端から前方に延び出す前方延出部5bbとを有する。前方延出部5bbの前端部の下方には、把持機構5cが取り付けられている。把持機構5cは、ガラス板Gの上端部を把持する把持爪5caを有する。把持機構5c(把持爪5caを含む)は、ガラス板Gの幅方向の複数箇所(本実施形態では二箇所)に配置されている。なお、本実施形態では、複数の把持機構5cが複数のアーム部材5bに取り付けられているが、アーム部材5bの幅方向長さを長くして、複数の把持機構5cが一つのアーム部材5bに取り付けられるようにしてもよい。
【0049】
案内機構6は、直動ガイド(例えばLMガイド(登録商標)など)を用いて構成されている。詳述すると、案内機構6は、ベース8の上面に固定された前後方向に延びるレール6aと、レール6aに上方から係合して前後方向に移動可能に保持されたブロック6bとを備える。ベース8は定位置に設置されている。レール6aは、幅方向の複数箇所(本実施形態では二箇所)に配置されている。ブロック6bは、各レール6aの前後方向の複数箇所(本実施形態では二箇所)に配置されている。ブロック6bの上面には、保持手段5の基部材5aが固定されている。ブロック6bとレール6aとの間は、潤滑油で潤滑される構成とされている。また、案内機構6の前端部(詳しくはレール6aの前端6ax)は、ガラス板Gの主面(後側の主面)Gbと対向するように配置されている。
【0050】
駆動手段7は、本実施形態では、正転及び逆転が可能なサーボモータ7aと、サーボモータ7aの正転及び逆転を前後方向移動に変換するボールねじ機構、ベルト機構、又はラックピニオン機構などの前後方向移動機構7bとを備える。したがって、サーボモータ7aの正転及び逆転によって、保持手段5はブロック6bと共にレール6aに沿って前後方向に移動する構成とされている。この場合、ブロック6bの前方への移動の規制は、サーボモータ7aによる位置制御により行ってもよく、或いはブロック6bの位置を検出するセンサを設け、このセンサからの信号に基づいてサーボモータ7aがブロック6bの前方への移動を規制するようにしてもよい。なお、同様にしてブロック6bの後方への移動も規制される。
【0051】
本搬送装置2は、さらに潤滑油の外方への漏出を防止する漏出防止部材9を備える。漏出防止部材9は、案内機構6の前方の端部位置(定義は既述の通り)に配置される。ここで、案内機構6の前方の端部位置とは、例えば図5に示す点P1から点P2までの前後方向に沿う領域EA内の位置である。漏出防止部材9は、各図例では、上下方向及び幅方向に延びる一枚の平板状部材としてのプレートで構成されている。プレート9は、各種金属や樹脂などで形成することができるが、耐熱性や加工性が良好である等の理由により炭素鋼やステンレス鋼、アルミニウム合金等の金属で形成することが好ましい。この場合、プレート9は、ベース8の前端8aに固定されている。なお、プレート9は、ベース8の前方からボルト等の止着部材を用いて固定されていてもよく、溶接等によって固定されていてもよい。また、図例(図5参照)では、ベース8の前端8aとレール6aの前端6axとが前後方向の同一位置に配置されているため、プレート9は、この両者に固定されていてもよく、レール6aの前端6axのみに固定されていてもよい。また、図例とは異なり、ベース8の前端8aがレール6aの前端6axから前方に突出していてもよく(この場合、プレート9はベース8に固定される)、レール6aの前端6axがベース8の前端8aから突出していてもよい(この場合、プレート9はレール6aに固定される)。なお、図例では、プレート9の後面(受け面)9aがレール6aの前端6ax及びベース8の前端8aに当接しているが、ベース8の前端8aがレール6aの前端6axから前方に突出する場合は、プレート9の受け面9aはレール6aの前端6axから離反する。また、図例では、プレート9の下端とベース8の下面とが同一の高さ位置になっているが、プレート9の下端がレール6aの下面よりも低い位置にあれば、プレート9の下端は、ベース8の下面よりも高くても低くてもよい。
【0052】
さらに、プレート9は、レール6aの上面6ayから上方に突出しており、その突出長さL1の下限値は、好ましくは30mm以上、より好ましくは50mm以上であり、突出長さL1の上限値は、好ましくは200mm以下であり、より好ましくは100mm以下である(図5参照)。また、プレート9は、二本のレール6aの何れからも幅方向外側に突出しており、その突出長さL2の下限値は、好ましくは100mm以上、より好ましくは200mm以上であり、突出長さL2の上限値は、好ましくは400mm以下であり、より好ましくは300mm以下である(図6参照)。したがって、二本のレール6aの前端6axは、全周に亘って前側からプレート9により覆われている。
【0053】
次に、上記構成を備えた第一例に係る本搬送装置2の作用効果を、図5及び図8に基づいて説明する。ここで、図8は、保持手段5及びブロック6bが、前進端位置に達してサーボモータ7aの動作により停止した状態を例示している。この停止した時点では、前後二つのブロック6bのうちの前側のブロック(以下、前側ブロック6bという)が、レール6aの前端部位置6azに達する。さらに、この停止した時点では、ガラス板Gが作業エリアEに到達する。
【0054】
本搬送装置2によってガラス板Gが前方に搬送されている間において、前側ブロック6bが図5に示す位置から図8に示すレール6aの前端部位置6azまで移動する際には、前側ブロック6bによって潤滑油が掻き集められて溜まっていく。そして、前側ブロック6bがレール6aの前端部位置6azに達するとき又は達するまでの間に、溜まった潤滑油が前側ブロック6bにより押し出されて外方に漏出しようとする。この潤滑油の漏出としては、図8に符号H1で示すような潤滑油の前方に向かう飛散や、同図に符号H2で示すような飛散を伴わない潤滑油の斜め前方への落下などが挙げられる。
【0055】
この場合、前側ブロック6bが図8に示すようにレール6aの前端部位置6azに達して停止した時点では、ガラス板Gの後側の主面Gbと、レール6aの前端6axとの前後方向に沿う離間距離L3の下限値は、好ましくは100mm以上、より好ましくは150mm以上、離間距離L3の上限値は、好ましくは400mm以下、より好ましくは300mm以下と短くされている。しかも、レール6aの前端6axは、ガラス板Gの後側の主面Gbの上部と対向するように配置されている。そのため、上述のような潤滑油の漏出が生じた場合には、ガラス板Gの後側の主面Gbに潤滑油が付着し、その後の洗浄工程でのガラス板Gの清浄化を困難にすると共に、ガラス板Gの品質低下などを招く。しかし、本搬送装置2では、レール6aの前端6axが全周に亘って前側からプレート9により覆われているため、そのような不具合は生じない。
【0056】
図9は、第一例に係る本搬送装置2が備える漏出防止部材9の第一の変形例を示すものである。同図に示すように、第一の変形例に係る漏出防止部材9は、レール6aの前端6axから下方に落下する潤滑油を受ける受け部材である。受け部材9には、下方に落下した潤滑油を溜めるための凹部9bが形成されている。受け部材9は、ベース8の下面8bの前端部8baに取り付けられている。受け部材9の幅方向の状態は、既述のプレート9と同一である。この構成によれば、潤滑油が工場等の床面や製造設備に落下して作業環境が悪化する事態を阻止できる。また、この受け部材9と既述のプレート9とを併用すれば、プレート9により完全に潤滑油の漏出を阻止できずに下方に落下してしまう潤滑油を受け部材9で受けることが可能となる。
【0057】
図10は、第一例に係る本搬送装置2が備える漏出防止部材9の第二の変形例を示すものである。同図に示すように、第二の変形例に係る漏出防止部材9は、既述のプレートを下方に延ばし且つその延ばした部位を折り曲げることで後方に延びる受け部9cを形成したものである。換言すれば、この漏出防止部材は、一枚のプレート9を途中で折り曲げることで、上下方向及び幅方向に延びる縦姿勢部9dと、後方向及び幅方向に延びる横姿勢部9cとを形成したものである。縦姿勢部9dは、既述のプレート9と同様に取り付けられており、横姿勢部9cは、ベース8の下面8bから隙間をあけて配置されている。このような漏出防止部材9によれば、縦姿勢部9dにより完全に潤滑油の漏出を阻止できずに下方に落下してしまう潤滑油を横姿勢部9cで受けることが可能となる。
【0058】
図11は、第二例に係る本搬送装置2の側面図である。この第二例に係る本搬送装置2が既述の第一例に係る本搬送装置2と基本的に相違している点は、保持手段5及び案内機構6が上下逆になっているところである。したがって、この第二例に係る本搬送装置2の説明は、図11の側面図のみに基づいて行い、既述の第一例に係る本搬送装置2と共通する構成要素については、図11に同一符号を付し、その説明を省略する。ここで、第二例に係る本搬送装置2が、既述の第一例に係る本搬送装置2と相違している点を詳細に説明する。同図に示すように、案内機構6については、ベース8の下面にレール6aが固定され、ブロック6bがレール6aに下方から係合している。保持手段5については、基部材5aの下面にアーム部材5bが固定されている。アーム部材5bは、基部材5aから下方に延びる支持部5baと、支持部5baの下端から前方に延びる前方延出部5bbとで構成されている。前方延出部5bbの前端部の下方には、ガラス板Gの上端部を把持する把持爪5caを有する把持機構5cが取り付けられている。基部材5aは、ブロック6bの下面に固定されている。レール6aは、ガラス板Gの上方に配置されている。漏出防止部材であるプレート9は、レール6aの下面6ayから下方に突出している。この場合の下方への突出長さL1は、既述の第一例におけるプレート9の上方への突出長さL1と同一である。また、このプレート9の幅方向の状態も、既述の第一例におけるプレート9の幅方向の状態と同一である。なお、駆動手段7は、既述の第一例における駆動手段7と同様に、サーボモータ7aと前後方向移動機構7bとで構成されている。
【0059】
上記の構成を備えた第二例に係る本搬送装置2の作用効果を、図11及び図12に基づいて説明する。ここで、図12は、保持手段5及びブロック6bが、前進端位置に達してサーボモータ7aの動作により停止した状態を例示している。この停止した時点では、前後二つのブロック6bのうちの前側ブロック6bが、レール6aの前端部位置6azに達する。さらに、この停止した時点では、ガラス板Gが作業エリアEに到達する。
【0060】
第二例に係る本搬送装置2についても、前側ブロック6bがレール6aの前端部位置6azに達するとき又は達するまでの間に、溜まった潤滑油が前側ブロック6bにより押し出されて外方に漏出しようとする。この潤滑油の漏出としては、図12に符号H3で示すような潤滑油の前方に向かう飛散後の落下や、同図に符号H4で示すような飛散を伴わない潤滑油の斜め前方への落下などが挙げられる。
【0061】
この場合、前側ブロック6bが図12に示すようにレール6aの前端部位置6azに達して停止した時点では、ガラス板Gの後側の主面Gbと、レール6aの前端6axとの前後方向に沿う離間距離L4の下限値は、好ましくは100mm以上、より好ましくは150mm以上、離間距離L4の上限値は、好ましくは400mm以下、より好ましくは300mm以下と短くされている。また、レール6aの下面6ayと、ガラス板Gの上端Gcとの上下方向に沿う離間距離L5の下限値は、好ましくは150mm以上、より好ましくは200mm以上、離間距離L5の上限値は、好ましくは400mm以下、より好ましくは350mm以下とされている。そのため、上述のような潤滑油の漏出が生じた場合には、ガラス板Gの後側の主面Gbや上端Gcに潤滑油が付着する事態を招く。しかし、本搬送装置2では、レール6aの前端6axが全周に亘って前側からプレート9により覆われているため、そのような不具合は生じない。
【0062】
図13は、第二例に係る本搬送装置2が第二の案内機構10を備える構成を例示している。同図に示すように、第二の案内機構10は、ベース8の上面に固定された複数本(図例では二本)の幅方向に延びるレール10aと、これらレール10aに上方からそれぞれ係合するブロック10bとを備える。そして、基体11の下面11aにブロック10bが固定されている。基体11は、定置に設置されている。したがって、ベース8ひいてはガラス板Gは、幅方向にも移動できるように構成されている。
【0063】
図14は、第二例に係る本搬送装置2が備える漏出防止部材9の変形例を示すものである。同図に示すように、変形例に係る漏出防止部材9は、既述のプレートを下方に延ばし且つその延ばした部位を折り曲げることで後方に延びる受け部9eを形成したものである。換言すれば、この漏出防止部材は、一枚のプレート9を途中で折り曲げることで、上下方向及び幅方向に延びる縦姿勢部9fと、後方向及び幅方向に延びる横姿勢部9eとを形成したものである。縦姿勢部9fは、既述のプレート9と同様に取り付けられており、横姿勢部9eは、保持手段5の基部材5aの下面5aaから隙間をあけて配置されるようになっている。このような漏出防止部材9によれば、基部材5aの前端5abと縦姿勢部9fとの間の隙間12を通じて下方に落下する潤滑油を横姿勢部9eで受けることが可能となる。これにより、潤滑油が保持手段5のアーム部材5bに付着する事態をも回避できる。
【0064】
次に、本発明の実施形態に係るガラス板の製造方法を簡単に説明する。この製造方法は、縦姿勢のガラス板Gをその上部を保持して作業エリアEに搬送する搬送工程を備える。搬送工程では、ガラス板Gを保持すると共に前後方向に沿って移動可能な保持手段5が前進動することでガラス板Gを作業エリアEに到達させる。また、搬送工程では、案内機構6が潤滑油を用いて保持手段5の前後方向移動を案内すると共に、案内機構6の前方の端部位置に配置された漏出防止部材9が潤滑油の外方への漏出を防止する。これらの詳細な構成は、既に説明した通りであるので、ここではその説明を省略する。
【0065】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0066】
上記実施形態では、第一例及び第二例に係る本搬送装置2が、何れも、ガラス板Gをその主面と直交する方向に搬送するように構成されているが、ガラス板Gをその幅方向に搬送するように構成されていてもよい。このように構成されるためには、第二例に係る本搬送装置2では、複数の把持機構5cの向き及び配置状態を変更するだけで済む。一方、第一例に係る本搬送装置2では、アーム部材5bの前方延出部5bbの前端からさらに下方に延びる下方延出部を追加して設け、この下方延出部の下端部に前後方向に延びる支持部材を取り付け、この支持部材に複数の把持機構5cを装着することで、ベース8よりも下方に、支持部材、把持機構5c、及びガラス板Gの上端が配置されるようにすればよい。これらの構成にすれば、第一例及び第二例に係る本搬送装置2の何れもが、ガラス板Gの上方にレール6aの前端部位置6azが配置されることになるため、上記実施形態と同様にガラス板Gへの潤滑油の付着を阻止することができる。
【0067】
上記実施形態では、漏出防止部材9が、複数本のレール6aに対して幅方向で分割されていないが、複数本のレール6aごとに幅方向で分割されていてもよい。
【0068】
上記実施形態では、漏出防止部材9をベース8及び/又はレール6aに固定したが、案内機構6の前方の端部位置に漏出防止部材9が配置されるのであれば、定置に設置されたそれら以外の部材に漏出防止部材9を固定してもよい。
【0069】
上記実施形態では、保持手段5として、基部材5a及びアーム部材5bを備えるが、これら基部材5a及びアーム部材5bは、一体化されたものであってもよく、また図例とは形状が異なる他の部材であってもよい。
【0070】
上記実施形態では、案内機構6としてLMガイド(登録商標)を用いたが、これに限定されない。本搬送装置2の直線運動を案内する機構であれば、転がり案内を使用した機構(例えばクロスローラウェイやボールスプラインなど)であってもよく、滑り案内を使用した機構(例えばリニアブッシュなど)であってもよい。
【0071】
上記実施形態では、ベース8の幅方向の複数箇所(本実施形態では二箇所)にレール6aを設けたが、一箇所にレール6aを設けても良い。また、レール6aの前後方向の複数箇所(本実施形態では二箇所)にブロック6bを配置したが、一箇所にブロック6bを配置してもよい。
【0072】
上記実施形態では、本搬送装置2を、受け渡しエリアE2、検査エリアE4、及び梱包エリアE5の三つの作業エリアに適用したが、これら以外の作業エリアについても本搬送装置2を適用することが可能である。
【0073】
上記実施形態では、オーバーフローダウンドロー法で成形されたガラス板を本搬送装置2により搬送するようにしたが、それ以外のダウンドロー法やフロート法によって成形されたガラス板であっても、同様にして本搬送装置2により搬送することができる。
【0074】
上記実施形態における第一例に係る本搬送装置2では、案内機構6の前端部(レール6aの前端6ax)が、ガラス板Gの主面Gbと対向するように配置されているが、ガラス板Gを仮想的に幅方向に延長した場合の仮想主面と対向するように配置されていてもよい。すなわち、案内機構6の前端部(レール6aの前端6ax)は、ガラス板Gの幅方向においてその主面Gbに沿う面と対向するように配置されていればよい。
【符号の説明】
【0075】
2 搬送装置(本搬送装置)
2A 搬送装置(本搬送装置)
2C 搬送装置(本搬送装置)
2D 搬送装置(本搬送装置)
5 保持手段
6 案内機構
6a レール
6b ブロック
9 漏出防止部材(プレート)
D1 検査装置
D2 梱包用パレット
E2 受け渡しエリア
E4 検査エリア
E5 梱包エリア
G ガラス板
G1 ガラス板
G2 ガラス板
Ga ガラス板の主面
Gb ガラス板の主面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14