(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024973
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 27/088 20060101AFI20240216BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20240216BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240216BHJP
H01L 21/76 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
H01L27/088 331D
H01L27/06 102A
H01L29/78 301R
H01L29/78 301Z
H01L27/088 D
H01L27/088 331C
H01L27/088 331B
H01L21/76 M
H01L21/76 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127995
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】比嘉 友広
(72)【発明者】
【氏名】酒井 敦
(72)【発明者】
【氏名】後藤 洋太郎
【テーマコード(参考)】
5F032
5F048
5F140
【Fターム(参考)】
5F032AA34
5F032AA43
5F032AB01
5F048AA05
5F048AC03
5F048AC10
5F048BA02
5F048BA11
5F048BB05
5F048BF18
5F048BG13
5F048BH05
5F140AA25
5F140AB06
5F140AB09
5F140AB10
5F140AC33
5F140BA01
5F140BA16
5F140BD05
5F140BF04
5F140BG08
5F140BG14
5F140BH30
5F140BJ08
5F140BJ17
5F140BJ20
5F140CB04
5F140CC03
5F140CC08
5F140CD04
5F140CD05
(57)【要約】
【課題】半導体装置の信頼性を向上させる。
【解決手段】半導体装置は、複数のMISFETが形成されるセル領域と、平面視でセル領域を囲む外周領域とを備える。セル領域および外周領域において、半導体基板SUB中には、n型の不純物領域DNWが形成されている。平面視でセル領域を囲むように、外周領域において、半導体基板SUB中には、素子分離部STI、p型の不純物領域HPWおよびn型の不純物領域HNWが形成されている。不純物領域HPWに接するように、セル領域において、半導体基板SUB中には、p型の不純物領域PLDおよびn型の不純物領域NLDが形成されている。素子分離部STIは、不純物領域HPW中に位置し、且つ、不純物領域HPWと不純物領域NLDとの接合界面から離れている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のMISFETが形成されるセル領域と、平面視で前記セル領域を囲む外周領域とを備えた半導体装置であって、
前記セル領域および前記外周領域において、半導体基板中に形成された第1導電型の第1不純物領域と、
平面視で前記セル領域を囲むように、前記外周領域において、前記半導体基板の表面から所定の深さまで前記半導体基板中に形成された素子分離部と、
平面視で前記セル領域を囲むように、前記外周領域において、前記半導体基板の表面から前記素子分離部よりも深い位置まで前記半導体基板中に形成され、且つ、前記第1導電型と反対の第2導電型である第2不純物領域と、
平面視で前記第2不純物領域を囲むように、前記外周領域において、前記半導体基板の表面から前記第1不純物領域に渡って前記半導体基板中に形成された前記第1導電型の第3不純物領域と、
前記第1不純物領域上に位置し、且つ、前記第2不純物領域に接するように、前記セル領域において、前記半導体基板中に形成された前記第2導電型の第4不純物領域と、
前記第2不純物領域に接するように、前記セル領域において、前記半導体基板の表面から前記第4不純物領域に渡って前記半導体基板中に形成された前記第1導電型の第5不純物領域と、
を備え、
前記素子分離部は、前記半導体基板に形成された溝と、前記溝内に埋め込まれた絶縁膜とを含み、
前記素子分離部は、前記第2不純物領域中に位置し、且つ、前記第2不純物領域と前記第5不純物領域との接合界面から離れている、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記接合界面を跨ぐように、前記第2不純物領域および前記第5不純物領域の各々の表面には、電子と正孔とを再結合させるための再結合促進層が形成されている、半導体装置。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置において、
前記複数のMISFETは、それぞれ、
前記セル領域において、前記半導体基板の表面から前記第4不純物領域に渡って前記半導体基板中に形成された前記第2導電型の第6不純物領域と、
前記第6不純物領域中に形成された前記第1導電型のソース領域と、
前記第5不純物領域中に形成された前記第1導電型のドレイン領域と、
前記第6不純物領域上および前記第5不純物領域上に、ゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、
を有し、
平面視における第1方向において、前記複数のMISFETの各々の前記ゲート電極のゲート幅の合計値は、1000μm以上である、半導体装置。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置において、
前記セル領域および前記外周領域において、前記半導体基板の表面上に形成された層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜中に形成され、且つ、前記半導体基板に達するコンタクトホールと、
前記コンタクトホールの内部に形成されたプラグと
を更に備え、
前記再結合促進層は、前記コンタクトホールの底部に位置する前記半導体基板の表面に形成された結晶欠陥層であり、
前記コンタクトホールおよび前記結晶欠陥層は、前記接合界面に沿って、少なくとも前記第1方向に延在している、半導体装置。
【請求項5】
請求項3に記載の半導体装置において、
前記セル領域および前記外周領域において、前記半導体基板の表面上に形成された層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜中に形成され、且つ、前記半導体基板に達する複数のコンタクトホールと、
前記複数のコンタクトホールの内部にそれぞれ形成された複数のプラグと、
を更に備え、
前記再結合促進層は、前記複数のコンタクトホールの底部にそれぞれ形成された複数の結晶欠陥層であり、
前記複数のコンタクトホールおよび前記複数の結晶欠陥層は、前記接合界面に沿って、少なくとも前記第1方向に互いに離間しながら配置されている、半導体装置。
【請求項6】
請求項3に記載の半導体装置において、
前記再結合促進層は、シリサイド膜からなり、
前記シリサイド膜は、前記接合界面に沿って、少なくとも前記第1方向に延在している、半導体装置。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体装置において、
前記シリサイド膜は、コバルトシリサイド膜、ニッケルシリサイド膜またはニッケルプラチナシリサイド膜である、半導体装置。
【請求項8】
請求項6に記載の半導体装置において、
前記セル領域および前記外周領域において、前記半導体基板の表面上に形成された層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜中に形成され、且つ、前記ソース領域上または前記ドレイン領域上に位置する第1コンタクトホールと、
前記第1コンタクトホールの内部に形成され、且つ、前記ソース領域または前記ドレイン領域に電気的に接続された第1プラグと、
を更に備え、
平面視で前記第1方向と交差する第2方向において、前記シリサイド膜の幅は、前記第1コンタクトホールの幅よりも大きい、半導体装置。
【請求項9】
複数のMISFETが形成されるセル領域と、平面視で前記セル領域を囲む外周領域とを備えた半導体装置の製造方法であって、
(a)前記セル領域および前記外周領域において、半導体基板中に、第1導電型の第1不純物領域を形成する工程、
(b)平面視で前記セル領域を囲むように、前記外周領域において、前記半導体基板中に、前記半導体基板の表面から所定の深さまで素子分離部を形成する工程、
(c)平面視で前記セル領域を囲むように、前記外周領域において、前記半導体基板中に、前記半導体基板の表面から前記素子分離部よりも深い位置まで前記第1導電型と反対の第2導電型の第2不純物領域を形成する工程、
(d)平面視で前記第2不純物領域を囲むように、前記外周領域において、前記半導体基板中に、前記半導体基板の表面から前記第1不純物領域に渡って前記第1導電型の第3不純物領域を形成する工程、
(e)前記第1不純物領域上に位置し、且つ、前記第2不純物領域に接するように、前記セル領域において、前記半導体基板中に、前記第2導電型の第4不純物領域を形成する工程、
(f)前記第2不純物領域に接するように、前記セル領域において、前記半導体基板中に、前記半導体基板の表面から前記第4不純物領域に渡って前記第1導電型の第5不純物領域を形成する工程、
を備え、
前記素子分離部は、前記半導体基板に形成された溝と、前記溝内に埋め込まれた絶縁膜とを含み、
前記素子分離部は、前記第2不純物領域中に位置し、且つ、前記第2不純物領域と前記第5不純物領域との接合界面から離れている、半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体装置の製造方法において、
前記接合界面を跨ぐように、前記第2不純物領域および前記第5不純物領域の各々の表面には、電子と正孔とを再結合させるための再結合促進層が形成されている、半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の半導体装置の製造方法において、
(g)前記セル領域において、前記半導体基板中に、前記半導体基板の表面から前記第4不純物領域に渡って前記第2導電型の第6不純物領域を形成する工程、
(h)前記第6不純物領域上および前記第5不純物領域上に、ゲート絶縁膜を形成する工程、
(i)前記第6不純物領域上および前記第5不純物領域上に、前記ゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程、
(j)前記第6不純物領域中に、前記第1導電型のソース領域を形成する工程、
(k)前記第5不純物領域中に、前記第1導電型のドレイン領域を形成する工程、
を有し、
平面視における第1方向において、前記複数のMISFETの各々の前記ゲート電極のゲート幅の合計値は、1000μm以上である、半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の半導体装置の製造方法において、
(m)前記セル領域および前記外周領域において、前記半導体基板の表面上に、層間絶縁膜を形成する工程、
(n)プラズマエッチング処理によって、前記層間絶縁膜中に、前記半導体基板に達するコンタクトホールを形成する工程、
(o)前記コンタクトホールの内部に、プラグを形成する工程、
を更に備え、
前記再結合促進層は、前記プラズマエッチング処理によって、前記コンタクトホールの底部に位置する前記半導体基板の表面に形成された結晶欠陥層であり、
前記コンタクトホールおよび前記結晶欠陥層は、前記接合界面に沿って、少なくとも前記第1方向に延在している、半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項11に記載の半導体装置の製造方法において、
(m)前記セル領域および前記外周領域において、前記半導体基板の表面上に、層間絶縁膜を形成する工程、
(n)プラズマエッチング処理によって、前記層間絶縁膜中に、前記半導体基板に達する複数のコンタクトホールを形成する工程、
(o)前記複数のコンタクトホールの内部に、それぞれ複数のプラグを形成する工程、
を更に備え、
前記再結合促進層は、前記プラズマエッチング処理によって、前記複数のコンタクトホールの底部に位置する前記半導体基板の表面に、それぞれ形成された複数の結晶欠陥層であり、
前記複数のコンタクトホールおよび前記複数の結晶欠陥層は、前記接合界面に沿って、少なくとも前記第1方向に互いに離間しながら配置されている、半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項11に記載の半導体装置の製造方法において、
(p)前記半導体基板の表面上に、前記半導体基板の表面の一部を開口するパターンを有する第1絶縁膜を形成する工程、
(q)前記第1絶縁膜から露出している前記半導体基板の表面に、シリサイド膜を形成する工程、
を更に備え、
前記再結合促進層は、シリサイド膜からなり、
前記シリサイド膜は、前記接合界面に沿って、少なくとも前記第1方向に延在している、半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の半導体装置の製造方法において、
前記シリサイド膜は、コバルトシリサイド膜、ニッケルシリサイド膜またはニッケルプラチナシリサイド膜である、半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項14に記載の半導体装置の製造方法において、
(m)前記セル領域および前記外周領域において、前記半導体基板の表面上に、層間絶縁膜を形成する工程、
(n)前記ソース領域上または前記ドレイン領域上に位置するように、プラズマエッチング処理によって、前記層間絶縁膜中に、第1コンタクトホールを形成する工程、
(o)前記ソース領域または前記ドレイン領域に電気的に接続するように、前記第1コンタクトホールの内部に、第1プラグを形成する工程、
を更に備え、
平面視で前記第1方向と交差する第2方向において、前記シリサイド膜の幅は、前記第1コンタクトホールの幅よりも大きい、半導体装置の製造方法。
【請求項17】
請求項9に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(a)工程は、
(a1)支持基板を用意する工程、
(a2)エピタキシャル成長法によって、前記支持基板上に半導体層を形成することで、前記支持基板と前記半導体層との積層体である前記半導体基板を形成する工程、
(a3)前記半導体層中に、前記第1不純物領域を形成する工程、
を有する、半導体装置の製造方法。
【請求項18】
請求項9に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(a)工程は、
(a4)支持基板を用意する工程、
(a5)前記支持基板中に、前記第1不純物領域を形成する工程、
(a6)エピタキシャル成長法によって、前記支持基板上に半導体層を形成することで、前記支持基板と前記半導体層との積層体である前記半導体基板を形成する工程、
を有する、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、特に、セル領域を囲む不純物領域を備えた半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置に備えられた半導体基板には、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)などの複数の半導体素子が形成される。半導体基板の深い位置にn型の不純物領域を形成し、このn型の不純物領域によって複数の半導体素子と半導体基板とを電気的に分離して、ノイズ耐性を高めることが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1の
図32に示されるように、複数のMISFETを含むセル領域は、平面視において外周領域に囲まれている。外周領域には、MISFETのチャネル領域となるウェル領域に電圧を供給するためのp型の不純物領域と、分離用の不純物領域に電圧を供給するためのn型の不純物領域が形成されている。このような外周領域によって、セル領域は、他の半導体素子と電気的に分離されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、各不純物領域によって、チャネル領域への給電および素子分離などを行う構造では、セル領域の構造が変更されると、既存の外周領域の構造では対応できない場合がある。すなわち、セル領域の構造が変更されることで、チャネル領域へのp型の不純物領域の接合が難しくなる場合があり、外周領域付近で耐圧が低下する場合がある。それ故、半導体装置の信頼性が低下する虞がある。
【0006】
その他の課題および新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0008】
一実施の形態に係る半導体装置は、複数のMISFETが形成されるセル領域と、平面視で前記セル領域を囲む外周領域とを備える。半導体装置は、前記セル領域および前記外周領域において、半導体基板中に形成された第1導電型の第1不純物領域と、平面視で前記セル領域を囲むように、前記外周領域において、前記半導体基板の表面から所定の深さまで前記半導体基板中に形成された素子分離部と、平面視で前記セル領域を囲むように、前記外周領域において、前記半導体基板の表面から前記素子分離部よりも深い位置まで前記半導体基板中に形成され、且つ、前記第1導電型と反対の第2導電型である第2不純物領域と、平面視で前記第2不純物領域を囲むように、前記外周領域において、前記半導体基板の表面から前記第1不純物領域に渡って前記半導体基板中に形成された前記第1導電型の第3不純物領域と、前記第1不純物領域上に位置し、且つ、前記第2不純物領域に接するように、前記セル領域において、前記半導体基板中に形成された前記第2導電型の第4不純物領域と、前記第2不純物領域に接するように、前記セル領域において、前記半導体基板の表面から前記第4不純物領域に渡って前記半導体基板中に形成された前記第1導電型の第5不純物領域と、を備える。ここで、前記素子分離部は、前記半導体基板に形成された溝と、前記溝内に埋め込まれた絶縁膜とを含み、前記素子分離部は、前記第2不純物領域中に位置し、且つ、前記第2不純物領域と前記第5不純物領域との接合界面から離れている。
【0009】
一実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、複数のMISFETが形成されるセル領域と、平面視で前記セル領域を囲む外周領域とを備えた半導体装置の製造方法である。半導体装置の製造方法は、(a)前記セル領域および前記外周領域において、半導体基板中に、第1導電型の第1不純物領域を形成する工程、(b)平面視で前記セル領域を囲むように、前記外周領域において、前記半導体基板中に、前記半導体基板の表面から所定の深さまで素子分離部を形成する工程、(c)平面視で前記セル領域を囲むように、前記外周領域において、前記半導体基板中に、前記半導体基板の表面から前記素子分離部よりも深い位置まで前記第1導電型と反対の第2導電型の第2不純物領域を形成する工程、(d)平面視で前記第2不純物領域を囲むように、前記外周領域において、前記半導体基板中に、前記半導体基板の表面から前記第1不純物領域に渡って前記第1導電型の第3不純物領域を形成する工程、(e)前記第1不純物領域上に位置し、且つ、前記第2不純物領域に接するように、前記セル領域において、前記半導体基板中に、前記第2導電型の第4不純物領域を形成する工程、(f)前記第2不純物領域に接するように、前記セル領域において、前記半導体基板中に、前記半導体基板の表面から前記第4不純物領域に渡って前記第1導電型の第5不純物領域を形成する工程、を備える。ここで、前記素子分離部は、前記半導体基板に形成された溝と、前記溝内に埋め込まれた絶縁膜とを含み、前記素子分離部は、前記第2不純物領域中に位置し、且つ、前記第2不純物領域と前記第5不純物領域との接合界面から離れている。
【発明の効果】
【0010】
一実施の形態によれば、半導体装置の信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1における半導体装置の一部を示す平面図である。
【
図2】実施の形態1における半導体装置の一部を拡大した要部平面図である。
【
図3】実施の形態1における半導体装置を示す断面図である。
【
図4】実施の形態1における半導体装置を示す断面図である。
【
図5】実施の形態1における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図12】本願発明者らによる実験データを示すグラフである。
【
図13】本願発明者らによる実験データを示すグラフである。
【
図14】実施の形態2における半導体装置の一部を拡大した要部平面図である。
【
図15】実施の形態3における半導体装置の一部を拡大した要部平面図である。
【
図16】実施の形態3における半導体装置を示す断面図である。
【
図17】本願発明者らによる実験データを示すグラフである。
【
図18】実施の形態4における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図21】検討例1における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図22】検討例2における半導体装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0013】
また、本願において説明されるX方向、Y方向およびZ方向は、互いに交差し、互いに直交している。本願では、Z方向をある構造体の上下方向、高さ方向または厚さ方向として説明する。また、本願で用いられる「平面図」または「平面視」などの表現は、X方向およびY方向によって構成される面を「平面」とし、この「平面」をZ方向から見ることを意味する。
【0014】
(実施の形態1)
<半導体装置の構造>
以下に
図1~
図4を用いて、実施の形態1における半導体装置の構造について説明する。
図1は、実施の形態1における半導体装置(半導体チップ)の一部を示す平面図である。
図2は、
図1に示される拡大領域1Aを示す要部平面図である。
図3は、
図2に示されるA-A線に沿った断面図である。
図4は、
図2に示されるB-B線に沿った断面図である。
【0015】
図1に示されるように、半導体装置は、複数のMISFET、ツェナーダイオードZD、抵抗素子および容量素子などのような様々な半導体素子を備えている。ここでは、複数のMISFETが形成される領域を、セル領域CRとして示している。各半導体素子は、平面視においてn型の不純物領域HNWによって囲まれている。また、各半導体素子は、断面視において不純物領域HNWと後述のn型の不純物領域DNWとによって、互いに電気的に分離されている。
【0016】
図2に示されるように、半導体装置は、セル領域CRと、平面視でセル領域CRを囲む外周領域ORとを備える。セル領域CRの複数のMISFETは、例えばDC/DCコンバータまたは電源ICの一部の回路を構成している。複数のMISFETは、それぞれY方向に延在するゲート電極GEを有する。
【0017】
外周領域ORには、平面視でセル領域CRを囲み、X方向およびY方向に延在するp型の不純物領域HPWが形成されている。また、外周領域ORには、平面視で不純物領域HPWを囲み、X方向およびY方向に延在するn型の不純物領域HNWが形成されている。
【0018】
図3および
図4に示されるように、半導体基板SUBは、p型のシリコン基板からなる支持基板SSと、支持基板SS上にエピタキシャル成長法によって形成されたp型の半導体層(エピタキシャル層)EPとの積層体からなる。半導体層EPには、様々な不純物領域が形成されているが、以下では説明の簡略化のために、様々な不純物領域が半導体基板SUBに形成されているとして説明する。
【0019】
セル領域CRおよび外周領域ORにおいて、半導体基板SUB中には、n型の不純物領域DNWが形成されている。この不純物領域DNWによってセル領域CRの複数のMISFETと支持基板SSとを分離して、ノイズ耐性を高めることが行われている。
【0020】
まず、外周領域ORの構造について説明する。
【0021】
外周領域ORにおいて、半導体基板SUBの表面から所定の深さまで半導体基板SUBには、素子分離部STIが形成されている。素子分離部STIは、半導体基板SUB中に形成された溝と、上記溝内に埋め込まれた酸化シリコン膜のような絶縁膜とを含む。
【0022】
また、外周領域ORにおいて、半導体基板SUBの表面から素子分離部STIよりも深い位置まで半導体基板SUB中には、p型の不純物領域HPWおよびn型の不純物領域HNWが形成されている。不純物領域HNWは、半導体基板SUBの表面から不純物領域DNWに渡って半導体基板SUB中に形成されている。素子分離部STIに囲まれた不純物領域HPWには、高濃度拡散領域PRが形成され、素子分離部STIに囲まれた不純物領域HNWには、高濃度拡散領域NRが形成されている。
【0023】
次に、セル領域CRの構造について説明する。
【0024】
不純物領域DNW上に位置し、且つ、不純物領域HPWに接するように、セル領域CRにおいて、半導体基板SUB中には、p型の不純物領域PLDが形成されている。また、不純物領域HPWに接するように、セル領域CRにおいて、半導体基板SUB中には、半導体基板SUBの表面から不純物領域PLDに渡って、n型の不純物領域NLDおよびp型の不純物領域PWが形成されている。
【0025】
図3および
図4に示されるように、不純物領域PW中には、n型のソース領域NSおよびp型の高濃度拡散領域PRが形成されている。
図2に示されるように、ゲート電極GEの中央付近には、開口部が設けられ、開口部の内部において、ソース領域NSおよび高濃度拡散領域PRが形成されている。
【0026】
不純物領域NLD中には、n型のドレイン領域NDが形成されている。不純物領域PWは、平面視において不純物領域NLDに囲まれている。不純物領域PW上および不純物領域NLD上には、ゲート絶縁膜GIを介してゲート電極GEが形成されている。ゲート絶縁膜GIは、例えば酸化シリコン膜である。ゲート電極GEは、例えばn型の不純物が導入された多結晶シリコン膜である。
【0027】
ソース領域NSは、MISFETのソース領域を構成する。ドレイン領域NDは、不純物領域NLDと共に、MISFETのドレイン領域の一部を構成する。ゲート電極GEの直下に位置する不純物領域PWは、MISFETのチャネル領域となる。
【0028】
ゲート電極GEの各側面には、サイドウォールスペーサSWが形成されている。サイドウォールスペーサSWは、例えば、酸化シリコン膜と、上記酸化シリコン膜上に形成された窒化シリコン膜との積層膜である。ゲート電極GEの一部およびサイドウォールスペーサSWを覆うように、半導体基板SUBの表面上には、半導体基板SUBの表面の一部およびゲート電極GEの一部を開口するパターンを有する絶縁膜IF1が形成されている。絶縁膜IF1は、例えば酸化シリコン膜である。
【0029】
絶縁膜IF1から露出している領域には、シリサイド膜SIが形成されている。すなわち、ゲート電極GEの一部、ソース領域NS、ドレイン領域ND、高濃度拡散領域PRおよび高濃度拡散領域NRの各々の表面上には、シリサイド膜SIが形成されている。セル領域CRのソース領域NSおよび高濃度拡散領域PRは、同じシリサイド膜SIによって電気的に接続されている。シリサイド膜SIは、例えばコバルトシリサイド(CoSi2)膜、ニッケルシリサイド(NiSi)膜またはニッケルプラチナシリサイド(NiPtSi)膜である。
【0030】
セル領域CRおよび外周領域ORにおいて、半導体基板SUBの表面上には、層間絶縁膜ILが形成されている。層間絶縁膜ILは、例えば酸化シリコン膜である。層間絶縁膜ILは、窒化シリコン膜と、上記窒化シリコン膜上に形成された酸化シリコン膜との積層膜であってもよい。
【0031】
層間絶縁膜IL中には、複数のコンタクトホールCH1が形成されている。複数のコンタクトホールCH1の内部には、それぞれ複数のプラグPGが形成されている。プラグPGは、例えば、バリアメタル膜と、上記バリアメタル膜上に形成された導電性膜との積層膜からなる。上記バリアメタル膜は、例えばチタン膜と窒化チタン膜との積層膜であり、上記導電性膜は、例えばタングステン膜である。
【0032】
複数のコンタクトホールCH1は、ソース領域NS、ドレイン領域ND、高濃度拡散領域PRおよび高濃度拡散領域NRの各々の表面上に位置している。ここでは図示していないが、層間絶縁膜IL上には、複数のプラグPGに接続された複数の配線が形成されている。ソース領域NS、ドレイン領域ND、高濃度拡散領域PRおよび高濃度拡散領域NRには、上記複数の配線から所定の電圧が供給される。
【0033】
高濃度拡散領域NR、不純物領域HNWおよび不純物領域DNWは、それぞれn型の不純物領域として導通しているので、これらは同じ電位に固定される。高濃度拡散領域PR、不純物領域HPW、不純物領域PLDおよび不純物領域PWは、それぞれp型の不純物領域として導通しているので、これらは同じ電位に固定される。ドレイン領域NDおよび不純物領域NLDは、それぞれn型の不純物領域として導通しているので、これらは同じ電位に固定される。
【0034】
また、ここでは図示していないが、シリサイド膜SIが形成されているゲート電極GEの表面上にも、コンタクトホールCH1およびプラグPGが形成されている。ゲート電極GEには、このプラグPGを介してゲート電圧が供給される。
【0035】
また、層間絶縁膜IL中には、スリット状のコンタクトホールCH2が形成されている。コンタクトホールCH2の内部には、ダミープラグDPGが形成されている。ダミープラグDPGは、プラグPGと同様のバリアメタル膜および導電性膜からなる。コンタクトホールCH2およびダミープラグDPGは、不純物領域HPWと不純物領域NLDとの接合界面を跨ぐように、不純物領域HPWおよび不純物領域NLDの各々の表面上に形成されている。
【0036】
コンタクトホールCH2の底部に位置する半導体基板SUBの表面には、再結合促進層RCLが形成されている。実施の形態1における再結合促進層RCLは、コンタクトホールCH2を形成する際に行われるプラズマエッチング処理によって形成された結晶欠陥層である。また、
図2に示されるように、コンタクトホールCH2および再結合促進層RCLは、上記接合界面に沿って、少なくともY方向に延在し、X方向にも延在している。
【0037】
なお、n型の不純物領域DNWの不純物濃度は、例えば1×1016~1×1017cm-3である。p型の不純物領域HPWの不純物濃度は、例えば5×1016~5×1017cm-3である。n型の不純物領域HNWの不純物濃度は、例えば1×1016~1×1017cm-3である。p型の不純物領域PLDの不純物濃度は、例えば1×1016~8×1016cm-3である。n型の不純物領域NLDの不純物濃度は、例えば1×1016~5×1016cm-3である。p型の不純物領域PWの不純物濃度は、例えば5×1017~5×1018cm-3である。n型の高濃度拡散領域NR、n型のソース領域NSおよびn型のドレイン領域NDの各々の不純物濃度は、例えば1×1019~1×1021cm-3である。p型の高濃度拡散領域PRの不純物濃度は、例えば1×1019~1×1021cm-3である。
【0038】
コンタクトホールCH1の口径(X方向における幅およびY方向における幅)は、例えば0.16μm以上且つ0.20μm以下である。また、コンタクトホールCH2の延在方向と直交する方向において、コンタクトホールCH2の幅は、例えば0.16μm以上且つ0.20μm以下である。
【0039】
実施の形態1の主な特徴は、素子分離部STIが、不純物領域HPW中に位置し、且つ、不純物領域HPWと不純物領域NLDとの接合界面から離れている点と、上記接合界面を跨ぐように再結合促進層RCLが形成されている点とにある。しかし、そのような特徴については、半導体装置の製造方法についての説明を行った後、検討例を用いて説明する。
【0040】
<半導体装置の製造方法>
以下に
図5~
図11に示される各製造工程を用いて、実施の形態1における半導体装置の製造方法について説明する。なお、以下では
図3のA-A断面を基にして説明を行う。
【0041】
図5に示されるように、まず、p型の支持基板SSを用意する。支持基板SSは、シリコンからなる。次に、エピタキシャル成長法によって、支持基板SS上にp型の半導体層EPを形成する。これにより、支持基板SSと半導体層EPとの積層体である半導体基板SUBが形成される。
【0042】
図6に示されるように、セル領域CRおよび外周領域ORにおいて、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法によって、半導体基板SUB中(半導体層EP中)にn型の不純物領域DNWを形成する。
【0043】
また、平面視でセル領域CRを囲むように、外周領域ORにおいて、半導体基板SUB中に、半導体基板SUBの表面から所定の深さまで素子分離部STIを形成する。まず、フォトリソグラフィ技術およびエッチング処理によって、半導体基板SUB中に溝を形成する。次に、上記溝内を埋め込むように、半導体基板SUB上に酸化シリコン膜のような絶縁膜を形成する。次に、CMP法を用いた研磨処理によって、半導体基板SUB上の上記絶縁膜を除去し、上記溝内に上記絶縁膜を残す。このようにして、上記溝および上記絶縁膜で構成される素子分離部STIが形成される。
【0044】
図7に示されるように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法によって、外周領域ORにおいて、半導体基板SUB中に、半導体基板SUBの表面から素子分離部STIよりも深い位置までp型の不純物領域HPWを形成する。次に、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法によって、外周領域ORにおいて、半導体基板SUB中に、半導体基板SUBの表面から不純物領域DNWに渡ってn型の不純物領域HNWを形成する。
【0045】
次に、不純物領域DNW上に位置し、且つ、不純物領域HPWに接するように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法によって、セル領域CRにおいて、半導体基板SUB中に、p型の不純物領域PLDを形成する。次に、不純物領域HPWに接するように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法によって、セル領域CRにおいて、半導体基板SUB中に、半導体基板SUBの表面から不純物領域PLDに渡ってn型の不純物領域NLDを形成する。次に、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法によって、セル領域CRにおいて、半導体基板SUB中に、半導体基板SUBの表面から不純物領域PLDに渡ってp型の不純物領域PWを形成する。
【0046】
なお、不純物領域HPW、不純物領域HNW、不純物領域PLD、不純物領域NLDおよび不純物領域PWを形成する順番は、何れが先でも後でも構わない。
【0047】
図8に示されるように、例えば熱酸化法またはCVD法によって、不純物領域PW上および不純物領域NLD上に、例えば酸化シリコンからなるゲート絶縁膜GIをそれぞれ形成する。次に、例えばCVD法によって、不純物領域PW上および不純物領域NLD上に、ゲート絶縁膜GIを介して、例えばn型の不純物が導入された多結晶シリコン膜を形成する。その後、この多結晶シリコン膜をパターニングすることで、ゲート絶縁膜GI上に、ゲート電極GEを形成する。
【0048】
次に、ゲート電極GEを覆うように、例えばCVD法によって、半導体基板SUB上に、例えば窒化シリコン膜のような絶縁膜を形成する。次に、上記絶縁膜膜に対して異方性エッチング処理を施すことで、ゲート電極GEの各々の側面に、サイドウォールスペーサSWを形成する。
【0049】
図9に示されるように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法によって、セル領域CRにおいて、不純物領域PW中にソース領域NSを形成すると共に、不純物領域NLD中にドレイン領域NDを形成する。この際、外周領域ORでは、不純物領域HNW中に高濃度拡散領域NRが形成される。次に、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法によって、外周領域ORの不純物領域HPW中に高濃度拡散領域PRを形成する。この際、セル領域CRの不純物領域PW中にも、
図4に示される高濃度拡散領域PRが形成される。なお、高濃度拡散領域PRを、ソース領域NS、ドレイン領域NDおよび高濃度拡散領域NRよりも先に形成してもよい。
【0050】
図10に示されるように、ゲート電極GEを覆うように、例えばCVD法によって、半導体基板SUBの表面上に、例えば酸化シリコン膜のような絶縁膜IF1を形成する。次に、フォトリソグラフィ技術およびエッチング処理によって、絶縁膜IF1をパターニングする。これにより、絶縁膜IF1には、半導体基板SUBの表面の一部およびゲート電極の表面の一部を開口するパターンが形成される。
【0051】
次に、サリサイド技術によって、絶縁膜IF1から露出している半導体基板SUBの表面の一部およびゲート電極の表面の一部に、シリサイド膜SIを形成する。まず、例えばスパッタリング法によって、絶縁膜IF1上、半導体基板SUBの表面上およびゲート電極の表面上に、金属膜を形成する。この金属膜は、例えばコバルト、ニッケルまたはニッケルプラチナ合金からなる。次に、半導体基板SUBに300℃~400℃程度の第1熱処理を施し、その後、600℃~700℃程度の第2熱処理を施すことによって、半導体基板SUBおよびゲート電極GEに含まれる材料を、上記金属膜と反応させる。これにより、絶縁膜IF1から露出している半導体基板SUBの表面上およびゲート電極GEの表面上に、シリサイド膜SIが形成される。その後、未反応の上記金属膜を除去する。
【0052】
図11に示されるように、セル領域CRおよび外周領域ORにおいて、例えばCVD法によって、半導体基板SUBの表面上に、層間絶縁膜ILを形成する。層間絶縁膜ILは、酸化シリコン膜の単層膜でもよいが、窒化シリコン膜と、窒化シリコン膜上の酸化シリコン膜との積層膜であってもよい。
【0053】
次に、プラズマエッチング処理によって、層間絶縁膜IL中に、複数のコンタクトホールCH1、CH2を形成する。複数のコンタクトホールCH1は、ソース領域NS、ドレイン領域ND、高濃度拡散領域PRおよび高濃度拡散領域NRの各々の表面上に位置し、各シリサイド膜SIに達する。コンタクトホールCH2は、不純物領域HPWと不純物領域NLDとの接合界面を跨ぐように、不純物領域HPWおよび不純物領域NLDの各々の表面上に形成される。
【0054】
上記プラズマエッチング処理によって、コンタクトホールCH2の底部に位置する半導体基板SUBの表面には、結晶欠陥層が形成される。この結晶欠陥層が、再結合促進層RCLになる。
【0055】
次に、複数のコンタクトホールCH1の内部にプラグPGを形成し、コンタクトホールCH2の内部にダミープラグDPGを形成することで、
図3に示される半導体装置が製造される。
【0056】
プラグPGおよびダミープラグDPGを形成するためには、まず、複数のコンタクトホールCH1の内部およびコンタクトホールCH2の内部を含む層間絶縁膜IL上に、例えばスパッタリング法によって、バリアメタル膜を形成する。上記バリアメタル膜は、例えばチタン膜と窒化チタン膜との積層膜である。
【0057】
次に、例えばCVD法によって、上記バリアメタル膜上に、例えばタングステン膜のような導電性膜を形成する。次に、プラズマエッチング処理またはCMP法を用いた研磨処理によって、複数のコンタクトホールCH1の外部およびコンタクトホールCH2の外部に形成されている上記導電性膜および上記バリアメタル膜を除去する。
【0058】
<検討例1と、実施の形態1の主な特徴>
以下に
図21を用いて、本願発明者ら検討を行った検討例1における半導体装置について説明する。検討例1における半導体装置では、素子分離部STIが、不純物領域HPWと不純物領域NLDとの接合界面を跨ぐように形成されている。
【0059】
図21は、
図7に対応する製造工程を示している。p型の不純物領域PLDを形成する際には、イオン注入が行われるが、素子分離部STIの直下では、イオンが到達し難くなる傾向がある。それ故、不純物領域HPWとの接触箇所の付近で、不純物領域PLDが形成されない、または、不純物領域PLDの不純物濃度が著しく低くなってしまう等の問題が発生する虞がある。すなわち、不純物領域PLDが不純物領域HPWに電気的に導電されない場合がある。そうすると、高濃度拡散領域PRおよび不純物領域HPWに供給された電位が、不純物領域PLDおよび不純物領域PWに伝達されなくなるという問題が生じる。
【0060】
このような問題に対して、実施の形態1では、
図3に示されるように、不純物領域HPWと不純物領域NLDとの接合界面から離れるように、素子分離部STIを不純物領域HPW中に位置させている。このため、不純物領域PLDが不純物領域HPWに確実に接触でき、高濃度拡散領域PRから不純物領域PWに至る給電経路が確保されるので、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0061】
<検討例2と、実施の形態1の主な特徴>
以下に
図22を用いて、本願発明者ら検討を行った検討例2における半導体装置について説明する。検討例2における半導体装置は、再結合促進層RCLが形成されていない点を除き、実施の形態1における半導体装置とほぼ同じである。
【0062】
半導体装置の信頼性に関する試験の1つに、寄生耐圧BVceoの測定試験がある。寄生耐圧BVceoが低下し始めると、半導体装置の過渡動作時、保護回路動作時およびラッチアップ時などにおいて、素子破壊が引き起こされる虞がある。このため、寄生耐圧BVceoの低下を抑制できる技術の提供が求められる。
【0063】
図22に示されるように、この測定試験では、ソース領域NSおよび高濃度拡散領域PRには、電圧が供給されない状態(OPEN)となっている。そのため、p型の不純物領域PW、PLD、HPWには、電圧が供給されない。また、不純物領域NLDには、ドレイン領域NDを介して基準電圧(GND)が供給されている。また、n型の不純物領域DNWには、高濃度拡散領域NRおよび不純物領域HNWを介して正電圧(V+)が供給されている。
【0064】
本願発明者らは、セル領域CRに形成されている複数のMISFETのゲート幅の合計値がある程度の長さになると、寄生耐圧BVceoが低下し始めるという現象を発見した。
【0065】
以下の考察は、本願発明者らがTCADを用いて調査を行うことで見出したメカニズムである。不純物領域DNWに正電圧を加えていくと、不純物領域DNWと不純物領域PLDとの界面で、電子・正孔対が生成される。ソース領域NSおよび高濃度拡散領域PRは、「OPEN」となっているので、正孔は、不純物領域PLDに順次蓄積されていく。蓄積された正孔は、不純物領域PLDの電位を上昇させる。やがて、不純物領域PLDと、「GND」に接続されたドレイン領域NDとが準バイアスされ、寄生バイポーラが作動する。この寄生バイポーラによって、寄生耐圧BVceoの低下が発生する。
【0066】
以下に
図12を用いて、複数のゲート電極GEのゲート幅Wの合計値[μm]と、寄生耐圧BVceoの低下との関係について説明する。ここで、本願発明者らは、外周領域ORで再結合中心が盛んであるということを、実験を通して見出している。
【0067】
図12に示されるように、ゲート幅Wの合計値が小さい場合、例えばゲート幅Wの合計値が1000μmよりも小さい場合には、不純物領域PLDに蓄積された正孔の多くは、外周領域ORでの再結合によって消費される。このため、不純物領域PLDおよびドレイン領域NDは、これらが準バイアスされるよりも早く、接合耐圧によってショートするので、寄生耐圧BVceoは、約18Vで固定される。
【0068】
一方で、ゲート幅Wの合計値が大きい場合、例えばゲート幅Wの合計値が1000μm以上である場合には、外周領域ORで再結合する正孔の量よりも、不純物領域DNWと不純物領域PLDとの界面で、生成される電子・正孔対の量が多くなる。このため、検討例2では、ゲート幅Wの合計値が大きくなるに連れて、寄生耐圧BVceoが低下していく。
【0069】
以上の考察を基にして、本願発明者らは、セル領域CRと外周領域ORとの境界付近において再結合を促進することで、寄生耐圧BVceoの低下を抑制できる構造を発案した。
【0070】
なお、ここで言う再結合とは、正孔と電子とが結合して消失することを意味する。再結合は、正孔が豊富なp型領域と、電子が豊富なn型領域との界面で形成される空乏層IVLで主に発生する。従って、再結合を促進するためには、空乏層IVLが形成される半導体基板SUBの表面に再結合促進層RCLを形成することが効果的である。また、再結合促進層RCLが空乏層IVLに重なる面積が大きければ大きい程、寄生耐圧BVceoの低下を抑制する効果は大きくなる。
【0071】
このため、実施の形態1では、
図3に示されるように、不純物領域HPWと不純物領域NLDとの接合界面を跨ぐように、不純物領域HPWおよび不純物領域NLDの各々の表面には、電子と正孔とを再結合させるための再結合促進層RCLが形成されている。上述のように、実施の形態1における再結合促進層RCLは、プラズマエッチング処理による結晶欠陥層である。この結晶欠陥層が、ミッドギャップ準位として働き、正孔の再結合を促進する。
【0072】
図12に示されるように、検討例では、ゲート幅Wの合計値が1000μm付近になった辺りから寄生耐圧BVceoが低下し始め、ゲート幅Wの合計値が5000μm以上になると、寄生耐圧BVceoが12V程度まで低下しているが、実施の形態1では、ゲート幅Wの合計値が5000μm以上であっても、寄生耐圧BVceoの低下が抑制されている。従って、実施の形態1によれば、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0073】
なお、再結合促進層RCLを設けることで、寄生耐圧BVceoの低下を抑制した分、ドレイン領域NDとソース領域NSとの間に、再結合電流がオフリーク電流として流れることが懸念される。
図13は、本願発明者らのオフリーク電流に関する実験結果である。
図13に示されるように、検討例2と実施の形態1との間で、オフリーク電流の増加は、ほぼ無く、測定誤差レベルであることが判った。
【0074】
ところで、コンタクトホールCH2および再結合促進層RCLは、不純物領域HPWと不純物領域NLDとの接合界面を跨ぐように形成されていることが最も好ましいが、コンタクトホールCH2および再結合促進層RCLが、上記接合界面から少し離れた領域にのみ形成されていたとしても、寄生耐圧BVceoの低下をある程度抑制できる。
【0075】
すなわち、コンタクトホールCH2および再結合促進層RCLは、不純物領域HNWよりも上記接合界面に近い位置において、不純物領域HPWの表面に形成されていてもよい。同様の主旨で、コンタクトホールCH2および再結合促進層RCLは、ドレイン領域NDよりも上記接合界面に近い位置において、不純物領域NLDの表面に形成されていてもよい。これらの場合、コンタクトホールCH2および再結合促進層RCLと、上記接合界面とが離れている距離は、40nm以内であることが好ましい。
【0076】
(実施の形態2)
以下に
図14を用いて、実施の形態2における半導体装置について説明する。なお、以下の説明では、実施の形態1との相違点について主に説明し、実施の形態1と重複する点については説明を省略する。
【0077】
実施の形態1では、コンタクトホールCH2がスリット状に形成されていたが、実施の形態2では、複数のドット状のコンタクトホールCH2に分割されている。従って、実施の形態2における再結合促進層RCLは、複数のコンタクトホールCH2の底部にそれぞれ形成された複数の結晶欠陥層である。すなわち、複数のコンタクトホールCH2および複数の結晶欠陥層は、不純物領域HPWと不純物領域NLDとの接合界面に沿って、少なくともY方向に互いに離間しながら配置され、X方向にも互いに離間しながら配置されている。
【0078】
実施の形態2におけるコンタクトホールCH2は、コンタクトホールCH1と同一形状であり、コンタクトホールCH2の口径(X方向における幅およびY方向における幅)は、例えば0.16μm以上且つ0.20μm以下である。また、各コンタクトホールCH2は、各コンタクトホールCH1と同じ製造工程によって形成される。
【0079】
実施の形態2では、実施の形態1と比較して、半導体基板SUBとコンタクトホールCH2全体との接触面積が少なくなる。すなわち、再結合促進層RCLの形成面積が少なくなる。そのため、
図12に示されるように、寄生耐圧BVceoの低下を抑制するという点では、実施の形態1の方が、実施の形態2よりも優れている。しかし、実施の形態2でも、検討例2と比較して、寄生耐圧BVceoの低下を十分に抑制できる。
【0080】
しかしながら、実施の形態2におけるコンタクトホールCH2は、コンタクトホールCH1と同一形状であるので、実施の形態2の方が、実施の形態1よりもコンタクトホールCH2の形状不良などの不具合が発生し難く、半導体装置の製造が安定して行える。
【0081】
(実施の形態3)
以下に
図15および
図16を用いて、実施の形態3における半導体装置について説明する。なお、以下の説明では、実施の形態1との相違点について主に説明し、実施の形態1と重複する点については説明を省略する。
【0082】
実施の形態1では、コンタクトホールCH2を形成する過程で再結合促進層RCLが形成され、コンタクトホールCH2の内部にダミープラグDPGが形成されていた。しかし、実施の形態3では、コンタクトホールCH2およびダミープラグDPGが形成されていない。
【0083】
図15および
図16に示されるように、実施の形態3では、不純物領域HPWと不純物領域NLDとの接合界面を跨ぐように、不純物領域HPWおよび不純物領域NLDの各々の表面上に、ダミーシリサイド膜DSIが形成されている。このダミーシリサイド膜DSI自体が、ミッドギャップ準位として働き、再結合促進層RCLとして機能する。再結合促進層RCL(シリサイド膜SI)は、実施の形態1と同様に、上記接合界面に沿って、少なくともY方向に延在し、X方向にも延在している。
【0084】
ダミーシリサイド膜DSIを形成するためには、
図10の製造工程において、絶縁膜IF1に、上記接合界面の周囲を開口するパターンを設けておく。その後、他のシリサイド膜SIを形成する工程と同じ工程によって、ダミーシリサイド膜DSIが再結合促進層RCLとして形成される。従って、実施の形態3における再結合促進層RCLは、他のシリサイド膜SIと同じ材料からなる。
【0085】
また、実施の形態3では、実施の形態1よりも再結合促進層RCLの幅を自由に設計し易いという効果がある。実施の形態1では、再結合促進層RCLの幅は、コンタクトホールCH2の幅に依存し、コンタクトホールCH1の幅とほぼ同じであり、例えば0.16μm以上且つ0.20μm以下であった。実施の形態3では、再結合促進層RCLの幅(ダミーシリサイド膜DSIの幅)をコンタクトホールCH1の幅よりも大きくすることが容易に行える。従って、寄生耐圧BVceoの低下を更に抑制し易い。なお、上述の再結合促進層RCLの幅とは、再結合促進層RCL(ダミーシリサイド膜DSI)の延在方向と直交する方向における幅である。
【0086】
図17は、再結合促進層RCLの幅L1の大きさによって、寄生耐圧BVceoがどの程度変化するかを測定した結果である。なお、幅L1は、素子分離部STIの端部から不純物領域NLD側へ向かって形成された再結合促進層RCLの幅を示している。
【0087】
図17に示されるように、幅L1が2.3μm以上になった辺りから、寄生耐圧BVceoの低下が抑制されていることが判る。すなわち、再結合促進層RCLが上記接合界面に近づき、再結合促進層RCLと空乏層IVLとが重なる領域が増えると、寄生耐圧BVceoの低下が抑制されていることが判る。
図17の実験は、素子分離部STIの端部から徐々にダミーシリサイド膜DSIの幅を増やしたものであるが、ダミーシリサイド膜DSIは、素子分離部STIの端部に接している必要はなく、上記接合界面の周囲(空乏層IVLの周囲)に形成されていればよい。
【0088】
なお、実施の形態3でも、再結合促進層RCLを設けることで、再結合電流がオフリーク電流として流れ易くなる。上述のように、実施の形態3では、実施の形態1のコンタクトホールCH2の幅よりも再結合促進層RCLの幅を大きくすることを容易に行える。しかし、その分、オフリーク電流の増加が懸念されるので、再結合促進層RCLの幅を適切に設定することが好ましい。
【0089】
なお、実施の形態3でも、実施の形態2のように、再結合促進層RCLが複数のダミーシリサイド膜DSIによって構成されていてもよい。その場合、上記接合界面に沿って、絶縁膜IF1に複数の開口パターンを設ければ、それらの開口パターン内に複数のダミーシリサイド膜DSIを形成できる。すなわち、複数のダミーシリサイド膜DSIは、上記接合界面に沿って、少なくともY方向に互いに離間しながら配置され、X方向にも互いに離間しながら配置されていてもよい。
【0090】
(実施の形態4)
以下に
図18~
図20を用いて、実施の形態4における半導体装置について説明する。なお、以下の説明では、実施の形態1との相違点について主に説明し、実施の形態1と重複する点については説明を省略する。
図18~
図20は、
図5~
図7に対応する各製造工程を示している。
【0091】
実施の形態1では、各半導体素子を電気的に分離するための構造として、n型の不純物領域DNWを適用していた。実施の形態4では、n型の不純物領域DNWに相当する構造として、n型の不純物領域NBLを適用する。
【0092】
図18に示されるように、まず、p型の支持基板SSを用意する。次に、セル領域CRおよび外周領域ORにおいて、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法によって、支持基板SS中に、n型の不純物領域NBLを形成する。次に、エピタキシャル成長法によって、支持基板SS上にp型の半導体層EPを形成する。これにより、支持基板SSと半導体層EPとの積層体である半導体基板SUBが形成される。
【0093】
実施の形態1では、先に半導体層EPを形成し、その後、イオン注入法によって半導体層EPに不純物領域DNWを形成する。イオン注入が届く範囲内で不純物領域DNWを形成する必要があるので、半導体層EPの厚さを厚くすることが難しいという問題がある。実施の形態4のように、先にイオン注入法によって支持基板SSに不純物領域NBLを形成し、その後、半導体層EPを形成することで、半導体層EPの厚さを厚くできる。そのため、実施の形態4では、実施の形態1と比較して製造コストが上昇するが、耐圧の向上およびノイズ耐性の向上などの優位点がある。
【0094】
なお、実施の形態1の不純物領域DNWは、半導体基板SUBの上面から2.0~3.0μm程度の深さに位置するが、実施の形態4の不純物領域NBLは、半導体基板SUBの上面から6.0~12.0μm程度の深さに位置する。また、実施の形態1の不純物領域DNWの不純物濃度は、例えば1×1016~1×1017cm-3であるが、実施の形態4の不純物領域NBLの不純物濃度は、例えば1×1017~1×1018cm-3である。
【0095】
次に、
図19に示されるように、外周領域ORにおいて、素子分離部STIを形成し、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法によって、半導体基板SUB中に、n型の不純物領域DHNWを形成する。不純物領域DHNWは、後述の不純物領域HNWの一部として形成され、不純物領域NBLと不純物領域HNWとの電気的導通を果たす役割を担う。不純物領域DHNWの不純物濃度は、例えば1×10
16~1×10
17cm
-3である。
【0096】
その後、
図20に示されるように、実施の形態1と同様の手法によって、不純物領域HPW、不純物領域HNW、不純物領域PLD、不純物領域NLDおよび不純物領域PWを形成する。その後の製造工程は、
図8以降の製造工程と同様である。
【0097】
なお、実施の形態4で説明した技術は、実施の形態2および実施の形態3にも適用可能である。
【0098】
以上、本発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0099】
1A 拡大領域
CH1~CH3 コンタクトホール
CR セル領域
DHNW n型の不純物領域
DNW n型の不純物領域
DPG ダミープラグ
DSI ダミーシリサイド膜
EP 半導体層(エピタキシャル層)
GE ゲート電極
GI ゲート絶縁膜
HPW p型の不純物領域
HNW n型の不純物領域
IF1 絶縁膜
IL 層間絶縁膜
IVL 空乏層
NBL n型の不純物領域
ND n型のドレイン領域
NLD n型の不純物領域
NR n型の高濃度拡散領域
NS n型のソース領域
OR 外周領域
PG プラグ
PLD p型の不純物領域
PR p型の高濃度拡散領域
RCL 再結合促進層
SI シリサイド膜
SS 支持基板
STI 素子分離部
SUB 半導体基板
SW サイドウォールスペーサ
ZD ツェナーダイオード