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  • 特開-管継手部材および管継手 図1
  • 特開-管継手部材および管継手 図2
  • 特開-管継手部材および管継手 図3
  • 特開-管継手部材および管継手 図4
  • 特開-管継手部材および管継手 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024977
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】管継手部材および管継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 37/138 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
F16L37/138
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128002
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 優秀
【テーマコード(参考)】
3J106
【Fターム(参考)】
3J106AA01
3J106AB01
3J106BA01
3J106BB01
3J106BC04
3J106BD01
3J106EA03
3J106EB02
3J106EC03
3J106ED04
3J106EE13
(57)【要約】
【課題】施錠部材が径方向外側に付勢されている管継手部材において、その外径を小さくすることや施錠部材を付勢するバネ部材の破損を防止すること。
【解決手段】雌型管継手部材10は、挿入通路14を画定する筒状の管継手本体16と、管継手本体16に形成された施錠子保持孔内に配置された施錠部材18と、施錠部材18を解錠位置に向かって付勢するバネ部材20と、管継手本体16の外周面16a上に配置されたスリーブ22と、を備える。バネ部材20は、長手軸線Lの方向に細長く延びて、一端20aが管継手本体16に固定され、他端20bが施錠部材18に係合して施錠部材18を径方向外側に付勢している。スリーブ22は、施錠部材18を施錠位置に保持する連結位置と、施錠部材18が解錠位置に変位する連結解除位置との間で変位可能とされ、連結解除位置から連結位置に変位するときに施錠部材18を施錠位置に向かって押圧する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応管継手部材に着脱可能に連結される管継手部材であって、
前記対応管継手部材が挿入される挿入通路を画定する筒状の管継手本体と、
前記管継手本体に形成された施錠子保持孔内に配置された施錠部材であって、前記挿入通路内に突出して前記挿入通路内に挿入された前記対応管継手部材の係止溝に係合する施錠位置と、前記施錠位置から径方向外側に変位して前記係止溝との係合が解除される解錠位置との間で変位可能とされた施錠部材と、
前記管継手本体の長手軸線の方向に細長く延びて、一端が前記管継手本体に固定され、他端が前記施錠部材に係合して前記施錠部材を前記解錠位置に向かって付勢するバネ部材と、
前記管継手本体の外周面上に配置されたスリーブであって、前記施錠部材を前記施錠位置に保持する連結位置と、前記施錠部材が前記解錠位置に変位することを許容する連結解除位置との間で変位可能とされ、前記連結解除位置から前記連結位置に変位するときに前記施錠部材を前記施錠位置に向かって押圧するようにされたスリーブと、
を備える管継手部材。
【請求項2】
前記管継手本体の外周面から径方向外側に突出するようにして前記管継手本体に取り付けられて、前記バネ部材に前記一端の近くで係合して前記バネ部材を径方向外側に撓ませるようにされた突起部材をさらに備える、請求項1に記載の管継手部材。
【請求項3】
前記管継手本体と前記スリーブとの間に配置されて、前記スリーブを前記連結位置に向かって付勢するコイルスプリングをさらに備え、前記バネ部材の少なくとも一部が前記コイルスプリングの内側に配置されている、請求項1に記載の管継手部材。
【請求項4】
前記管継手本体が、前記バネ部材に沿って前記長手軸線の方向に延びるバネ受入孔を有し、少なくとも前記施錠部材が前記施錠位置となっているときに、前記バネ部材の一部が前記バネ受入孔内に受け入れられているようにされた、請求項1に記載の管継手部材。
【請求項5】
前記施錠部材が、前記管継手本体の周方向に延びる弧状形状とされており、前記係止溝に係合する弧状の係合内周面と、前記係合内周面の周方向での中央部に形成された凹部とを有し、前記バネ部材の前記他端が前記凹部において前記施錠部材に係合するようにされた、請求項1に記載の管継手部材。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の管継手部材と、
前記管継手部材と着脱可能に連結する対応管継手部材であって、外周面上に係止溝を有する対応管継手部材と、
を備える、管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対応管継手部材に着脱可能に連結される管継手部材、及びそれら対応管継手部材と管継手部材とからなる管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、配管同士の着脱を迅速に行うことを可能とする、雄型管継手部材と雌型管継手部材とからなる管継手が知られている。このような管継手の雌型管継手部材は、例えば特許文献1に開示されているように、通常、流体通路を有する筒状の管継手本体と、管継手本体に径方向で変位可能に保持された施錠部材と、管継手本体の外周面上で前後方向に変位可能に配置されたスリーブと、スリーブを管継手本体に対して前方に付勢するコイルスプリングとを備える。スリーブが前方位置にあるときには施錠部材はスリーブによって管継手本体の内周面から突出した位置に保持され、スリーブが後方位置にあるときには施錠部材は径方向外側に自由に変位可能な状態となる。雌型管継手部材を雄型管継手部材に連結する際には、スリーブをコイルスプリングの付勢力に抗して後方位置に変位させてそれを保持した状態で、雌型管継手部材の流体通路内に雄型管継手部材を挿入する。スリーブの保持を解除すると、スリーブはコイルスプリングによって前方位置に変位し、これにより施錠部材が雄型管継手部材の外周面に形成された係止溝に係合する。これにより雄型管継手部材は雌型管継手部材に連結される。雌型管継手部材を雄型管継手部材から分離する際には、スリーブをスプリングの付勢力に抗して後方位置に変位させてそれを保持した状態で、雌型管継手部材を雄型管継手部材から引き抜くようにする。
【0003】
上述のような管継手においては、スリーブが後方位置にあるときに施錠部材は径方向に自由に移動できる状態となっており、管継手の向きによっては流体通路内に突出した位置となっている可能性がある。このような状態で雄型管継手部材を雌型管継手部材に対して挿入したり引き抜いたりすると、施錠部材が雄型管継手部材に当りその操作がスムーズに行えないことがある。特に、管継手部材同士の連結及び連結解除をロボット操作によって行なう場合には、これが問題となり得る。特許文献2には、施錠部材であるツメ体をスリーブで径方向内側に押圧して、ツメ体のツメ部を管の外壁に食い込ませることで管を連結するようにした管継手が開示されている。このツメ体には、管継手本体の周方向に延びるバネ部が設けられており、このバネ部が管継手本体の外周面に係合することによりツメ体は常に径方向外側に付勢された状態となっている。これにより、スリーブが連結解除位置になると、ツメ体はバネ部の付勢力によって管の外壁から離れた位置となる。このようにツメ体がバネ部によって径方向外側に変位することにより、管の挿入・引出時に管がツメ体に引っかかることが無くなり、管の連結及び連結解除を容易に行なうことができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/039719号
【特許文献2】特開2000-310383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の従来技術における施錠部材(ツメ体)においては、バネ部が両側部から延びるようにして形成されている。このような構成とした場合には、ツメ体は、管の外壁に係合した位置となった状態でも管継手本体から径方向外側に突出するような形状となり、施錠部材の径方向での寸法が大きくなる傾向がある。そして、それに伴って、管継手部材全体の外径が大きくなってしまう。また、管継手部材の湾曲した外周面に係合するように周方向に延びるバネ部は、ツメ体の本体から比較的に近い位置で管継手部材に接触するため、ツメ体が径方向に変位した際に特にツメ体の本体との接続部において大きな弾性変形が生じて大きな応力が生じ易く、ツメ体が繰り返し変位したときにその部分が破損する虞がある。
【0006】
そこで本発明は、上述の従来技術の課題の少なくとも1つを解決することができるようにした管継手部材及び管継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、
対応管継手部材に着脱可能に連結される管継手部材であって、
前記対応管継手部材が挿入される挿入通路を画定する筒状の管継手本体と、
前記管継手本体に形成された施錠子保持孔内に配置された施錠部材であって、前記挿入通路内に突出して前記挿入通路内に挿入された前記対応管継手部材の係止溝に係合する施錠位置と、前記施錠位置から径方向外側に変位して前記係止溝との係合が解除される解錠位置との間で変位可能とされた施錠部材と、
前記管継手本体の長手軸線の方向に細長く延びて、一端が前記管継手本体に固定され、他端が前記施錠部材に係合して前記施錠部材を前記解錠位置に向かって付勢するバネ部材と、
前記管継手本体の外周面上に配置されたスリーブであって、前記施錠部材を前記施錠位置に保持する連結位置と、前記施錠部材が前記解錠位置に変位することを許容する連結解除位置との間で変位可能とされ、前記連結解除位置から前記連結位置に変位するときに前記施錠部材を前記施錠位置に向かって押圧するようにされたスリーブと、
を備える管継手部材を提供する。
【0008】
当該管継手部材においては、施錠部材を解錠位置に向かって径方向外側に付勢するためのバネ部材が、施錠部材とは別体とされ、長手軸線の方向に延びるようにして配置されている。これにより、バネ部材を施錠部材から周方向に延びるように一体に形成する場合に比べて、施錠部材の径方向での寸法を小さくすることが可能となり、管継手部材の外径を小さくすることが可能となる。また、バネ部材は長手軸線の方向に比較的に長く延びる部材とすることができるため、局所的に大きな変形が生じないようにすることが可能となる。
【0009】
また、前記管継手本体の外周面から径方向外側に突出するようにして前記管継手本体に取り付けられて、前記バネ部材に前記一端の近くで係合して前記バネ部材を径方向外側に撓ませるようにされた突起部材をさらに備えるようにできる。
【0010】
さらに、前記管継手本体と前記スリーブとの間に配置されて、前記スリーブを前記連結位置に向かって付勢するコイルスプリングをさらに備え、前記バネ部材の少なくとも一部が前記コイルスプリングの内側に配置されているようにすることができる。
【0011】
さらに、前記管継手本体が、前記バネ部材に沿って前記長手軸線の方向に延びるバネ受入孔を有し、少なくとも前記施錠部材が前記施錠位置となっているときに、前記バネ部材の一部が前記バネ受入孔内に受け入れられているようにすることができる。
【0012】
また、前記施錠部材が、前記管継手本体の周方向に延びる弧状形状とされており、前記係止溝に係合する弧状の係合内周面と、前記係合内周面の周方向での中央部に形成された凹部とを有し、前記バネ部材の前記他端が前記凹部において前記施錠部材に係合するようにすることができる。
【0013】
上述の各構成およびそれらの組合せにより、管継手部材の外径をさらに小さくすることが可能となる。
【0014】
本発明はさらに
上述のいずれかの管継手部材と、
前記管継手部材と着脱可能に連結する対応管継手部材であって、外周面上に係止溝を有する対応管継手部材と、
を備える、管継手を提供する。
【0015】
以下、本発明に係る管継手の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る管継手の側面断面図である。
図2図1の管継手の雌型管継手部材の分解斜視図である。
図3図1の管継手の、雌型管継手部材のスリーブを連結解除位置とした状態の側面断面図である。
図4図3の状態から雄型管継手部材を雌型管継手部材に挿入した状態の側面断面図である。
図5図4の状態からスリーブを連結位置として雌型管継手部材に雄型管継手部材を連結した状態の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る管継手1は、図1図5に示すように、相互に着脱可能に連結される雌型管継手部材(管継手部材)10とそれに対応する雄型管継手部材(対応管継手部材)12とからなる。雌型管継手部材10は、図1及び図2に示すように、挿入通路14を画定する筒状の管継手本体16と、管継手本体16に対して径方向に変位可能に配置された施錠部材18と、施錠部材18を径方向外側に付勢するための板状のバネ部材20と、管継手本体16の外周面16a上に配置されたスリーブ22と、を備える。当該雌型管継手部材10はさらに、管継手本体16とスリーブ22との間に配置されてスリーブ22を前方(図で見て右方)に付勢するためのコイルスプリング24を備える。
【0018】
管継手本体16には、図2に示すように、施錠部材18を収容するための施錠子保持孔26と、バネ部材20を受け入れるためのバネ受入孔28とが形成されている。施錠子保持孔26は周方向に延びるように形成され、バネ受入孔28はバネ部材20に沿って長手軸線Lの方向に延びるように形成されている。施錠子保持孔26とバネ受入孔28は、相互に繋がって略T字状の孔を形成している。
【0019】
施錠部材18は、管継手本体16の周方向に沿って延びる弧状形状とされており、その弧状の係合内周面18aの周方向での中央部には凹部30が設けられている。バネ部材20は、その一端20aがネジ32によって管継手本体16の外周面16a上に固定され、そこから他端20bにまで長手軸線Lに沿って前方に細長く延びている。管継手本体16の外周面16aには、バネ部材20の一端20aの近くの位置に球状の突起部材34が圧入されて固定されている。この突起部材34は、バネ部材20の一端20aの近くでバネ部材20に係合してバネ部材20を径方向外側に撓ませている。これにより、バネ部材20は外力が加えられていない状態において、一端20aから他端20bに向かって径方向外側に曲がった状態となり、バネ部材20の他端20bが施錠部材18の凹部30に係合して施錠部材18を径方向外側に付勢するようになる。コイルスプリング24は管継手本体16の外側に配置されており、バネ部材20はその一端20aと他端20bを除いた大部分がコイルスプリング24の内側に位置している。
【0020】
スリーブ22を図1の状態からコイルスプリング24の付勢力に抗して後退させて図3の連結解除位置とすると、施錠部材18はバネ部材20の付勢力によって径方向外側に向かって変位して図示の解錠位置となる。スリーブ22が連結解除位置に保持されている間は、雄型管継手部材12は施錠部材18に当たることなく挿入通路14内に挿入できる。図4に示す位置にまで雄型管継手部材12を挿入してからスリーブ22の保持を解除すると、スリーブ22はコイルスプリング24の付勢力によって図5の連結位置にまで前方に変位する。このとき施錠部材18は、スリーブ22の傾斜内周面36によって径方向内側に押圧されて、バネ部材20の付勢力に抗して施錠位置にまで変位する。スリーブ22が連結位置にある間は、施錠部材18はスリーブ22によってこの施錠位置に保持される。この施錠位置において施錠部材18は、その係合内周面18aが挿入通路14内に突出して雄型管継手部材12の係止溝38に係合した状態となる。これにより、雄型管継手部材12は、施錠部材18によって係止されて、雌型管継手部材10に連結される。なお、バネ部材20は、施錠部材18が施錠位置に変位するのに伴って径方向内側に曲げられ、その一部がバネ受入孔28内に受け入れられる。連結を解除する際には、スリーブ22を連結解除位置にまで変位させて図3の状態として、雄型管継手部材12を雌型管継手部材10から引き抜くようにする。
【0021】
当該管継手1の雌型管継手部材10においては、施錠部材18を径方向外側に付勢するためのバネ部材20が、施錠部材18とは別体とされ、長手軸線Lの方向に延びるようにして配置されている。これにより、施錠部材18は、施錠位置となったときにそのほぼ全体が施錠子保持孔26内に収容されるような形状とすることができ、特に径方向での寸法を小さくすることができる。施錠部材18の径方向での寸法を小さくすることにより、雌型管継手部材10全体の外径を小さくすることが可能となる。また、バネ部材20は、長手軸線Lの方向に延びるように配置されているため、周方向に延びるように配置する場合に比べてより長い部材とすることが可能となり、局所的に大きな変形が生じないようにすることが可能となる。これにより、バネ部材20が破損する可能性を低減させることが可能となる。また、バネ部材20を長くすることにより、バネ部材20によって生じる付勢力の大きさのばらつきを小さくすることもできる。
【0022】
以上に本発明の実施形態について説明をしたが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。例えば、施錠部材及びバネ部材の数や形状は、任意に変更することが出来る。また、管継手本体へのバネ部材の固定は、ネジによる形態に限られず、接着や圧入などの種々の形態とすることができる。
【符号の説明】
【0023】
1 管継手
10 雌型管継手部材(管継手部材)
12 雄型管継手部材(対応管継手部材)
14 挿入通路
16 管継手本体
16a 外周面
18 施錠部材
18a 係合内周面
20 バネ部材
20a 一端
20b 他端
22 スリーブ
24 コイルスプリング
26 施錠子保持孔
28 バネ受入孔
30 凹部
32 ネジ
34 突起部材
36 傾斜内周面
38 係止溝
L 長手軸線
図1
図2
図3
図4
図5