(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024979
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】医療情報共有システム
(51)【国際特許分類】
G16H 10/60 20180101AFI20240216BHJP
【FI】
G16H10/60
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128005
(22)【出願日】2022-08-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-01
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】513260579
【氏名又は名称】株式会社トマーレ
(74)【代理人】
【識別番号】110003074
【氏名又は名称】弁理士法人須磨特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野間口 敬
(72)【発明者】
【氏名】大林 淳子
(72)【発明者】
【氏名】松本 幸一
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA21
(57)【要約】 (修正有)
【課題】医療機関のスタッフが患者のベッドサイド以外の場所においても患者の医療情報を効率的に確認できる医療情報共有システム、端末装置及びサーバ装置を提供する。
【解決手段】医療機関において患者の医療情報を共有するための医療情報共有システム100であって、医療機関のスタッフMS1、MS2が使用する端末装置T1、T2と、患者識別情報と、その患者識別情報に対応する患者P1、P2についての医療情報であって、医療機関のスタッフの間で共有されるべき被共有医療情報と、を対応付けて記憶するサーバ装置S1と、を備える。端末装置は、患者を識別する患者識別情報を取得する取得部、取得部が取得した患者識別情報をサーバ装置に送信する送信部、患者識別情報に対応する患者についての被共有医療情報をサーバ装置から取得する取得部及び取得部が取得した被共有医療情報を含む表示画面を表示する表示部を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療機関において患者の医療情報を共有するための医療情報共有システムであって、
前記医療機関のスタッフが使用する端末装置と、
患者識別情報と、その患者識別情報に対応する患者についての医療情報であって、前記医療機関のスタッフの間で共有されるべき被共有医療情報とを対応付けて記憶するサーバ装置と、
を備え、
前記端末装置は、
医療機関のスタッフを識別するスタッフ識別情報を取得する第1取得部と、
前記第1取得部が取得した前記スタッフ識別情報を前記サーバ装置に送信する第1送信部、
前記第1送信部が送信した前記スタッフ識別情報と、予め記憶された前記医療機関のスタッフであることを識別するスタッフ識別情報とが一致すると前記サーバ装置が判定した場合、患者を識別する患者識別情報を取得する第2取得部、
前記第2取得部が取得した前記患者識別情報を前記サーバ装置に送信する第2送信部、
前記第2送信部が送信した前記患者識別情報に対応する患者についての前記被共有医療情報を前記サーバ装置から取得する第3取得部、及び、
前記第3取得部が取得した前記被共有医療情報を含む表示画面を表示する表示部、
を備えることを特徴とする医療情報共有システム。
【請求項2】
前記被共有医療情報が、少なくとも患者の移動、姿勢、排泄、食事又は飲み物に課せられた条件又は制限に関する医療情報、転倒転落の危険度に関する医療情報、診療スケジュール及び看護記録の一部のいずれかを含む、
請求項1に記載の医療情報共有システム。
【請求項3】
医療機関のスタッフを識別するスタッフ識別情報を取得する第1取得部と、
前記第1取得部が取得した前記スタッフ識別情報をサーバ装置に送信する第1送信部、
前記第1送信部が送信した前記スタッフ識別情報と、予め記憶された前記医療機関のスタッフであることを識別するスタッフ識別情報とが一致すると前記サーバ装置が判定した場合、患者を識別する患者識別情報を取得する第2取得部、
前記第2取得部が取得した前記患者識別情報を前記サーバ装置に送信する第2送信部、
前記第2送信部が送信した前記患者識別情報に対応する患者についての医療情報であって、前記医療機関のスタッフの間で共有されるべき被共有医療情報を前記サーバ装置から取得する第3取得部、及び、
前記第3取得部が取得した前記被共有医療情報を含む表示画面を表示する表示部、
を備えることを特徴とする端末装置。
【請求項4】
前記被共有医療情報が、少なくとも患者の移動、姿勢、排泄、食事又は飲み物に課せられた条件又は制限に関する医療情報、転倒転落の危険度に関する医療情報、診療スケジュール及び看護記録の一部のいずれかを含む、
請求項3に記載の端末装置。
【請求項5】
患者識別情報と、その患者識別情報に対応する患者についての医療情報であって、医療機関のスタッフ間で共有されるべき被共有医療情報とを対応付けて記憶する記憶部と、
医療機関のスタッフが使用する端末装置から医療機関のスタッフを識別するスタッフ識別情報を取得する第1取得部、
前記第1取得部が取得した前記スタッフ識別情報と、予め記憶した前記医療機関のスタッフであることを識別するスタッフ識別情報とが一致するか否かを判定する判定部、
前記第判定部が一致すると判定した場合、前記端末装置から患者を識別する患者識別情報を取得する第2取得部、及び、
前記第2取得部が取得した前記患者識別情報に対応する患者についての前記被共有医療情報を含む表示画面を前記端末装置に送信する送信部、
を備えるサーバ装置。
【請求項6】
前記被共有医療情報が、少なくとも患者の移動、姿勢、排泄、食事又は飲み物に課せられた条件又は制限に関する医療情報、転倒転落の危険度に関する医療情報、診療スケジュール及び看護記録の一部のいずれかを含む、
請求項5に記載のサーバ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療機関において患者の医療情報を共有するための医療情報共有システムに関する。
【背景技術】
【0002】
患者に適切な医療乃至看護を提供するためには患者の状態を適切に把握することが極めて重要であり、医療機関においては、患者の医療情報をより効率的に共有するための様々な試みがなされている。
【0003】
例えば、近年、医療機関においては、入院している患者がベッドサイドにおいて、テレビや映画の視聴、インターネットの閲覧をすることができるベッドサイド端末が提案・設置されはじめており、当該ベッドサイド端末に患者の状態、処理、検査、リハビリテーション又は手術等のスケジュールを表示させ、患者自身や患者の診療を担当する看護師や医師が必要な医療情報をベッドサイドにおいて確認することができる構成が種々提案されている(特許文献1~5)。
【0004】
また、ベッドサイド端末が設置されていない医療機関においても、患者の医療情報のうち、特に把握すべき医療情報を患者のベッドサイドに掲示するという取り組みが為されている。例えば、患者の移動、姿勢、排泄、食事等に関する条件又は制限に関する医療情報をピクトグラムとして患者のベッドサイドに貼り付けるという取り組みが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-275607号公報
【特許文献2】特開2012-118782号公報
【特許文献3】特開2014-97116号公報
【特許文献4】特開2015-18461号公報
【特許文献5】特開2017-091356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来技術によれば、患者の医療情報を、その患者のベッドサイドで確認することは容易となるが、ベッドサイドから離れた場所において、患者の医療情報を確認することは容易ではない。ベッドサイドから離れた場所において患者の医療情報を確認するためには、一度、患者のベッドサイドに戻ってその患者のベッドサイド端末を確認するか、ナースステーションに出向いて情報を確認しなければならず、必要な時、速やかに患者の医療情報を確認することは困難であった。
【0007】
一方、医療機関に入院している患者は、診察、検査、治療、リハビリ、面会、散歩、買い物等、多様な院内生活を送っており、必ずしも自分のベッドサイドにいるとは限らない。患者がベッドサイド以外の場所において、例えば、発作を起こした場合、転倒した場合、次の診療スケジュールの予定を忘れてしまった場合等、ベッドサイドから離れた場所においても患者の医療情報を確認したいという場面は存在する。上記のような従来技術では、このような場合に、適時に患者の医療情報を確認することはできなかった。
【0008】
また、ベッドサイドから離れた場所において患者が介助等を必要とする場合、その患者の最も近くにいる医療機関のスタッフは、医師や看護師等の医療スタッフ以外のスタッフ、例えば、医療事務スタッフであることも当然に想定される。しかしながら、上記のような従来技術においては、患者の医療情報を把握するスタッフとしては、当然、医師や看護師等の医療スタッフが想定されており、これらの医療スタッフ以外のスタッフ、例えば、医療事務スタッフは、たとえ同じ医療機関のスタッフであったとしても、患者の医療情報を把握することは困難であり、目の前にいる患者を適切に介助することは容易ではなかった。
【0009】
本発明は、上記のような従来技術の課題を解決するために為されたものであり、医療機関のスタッフが、特に、患者のベッドサイド以外の場所においても患者の医療情報を効率的に確認することができる医療情報共有システムを提供することを一つの課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記のような従来技術においては、患者の医療情報の提供場所が、主として、患者のベッドサイド近辺に限定されており、また、患者の医療情報を把握する職員は医師や看護師等の特定の職種のスタッフに集中している点に着目し、医師や看護師等の特定の職種のスタッフに限らず、患者に接する可能性のある医療機関の全てのスタッフが、患者の医療情報を、必要な時に、必要な場所で把握することができれば、医療機関のスタッフ全体で患者を支えることができ、より患者に寄り添った、きめの細かい医療乃至看護サービスが提供できるものと考え、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明はある一側面において、
医療機関において患者の医療情報を共有するための医療情報共有システムであって、
前記医療機関のスタッフが使用する端末装置と、
患者識別情報と、その患者識別情報に対応する患者についての医療情報であって、前記医療機関のスタッフの間で共有されるべき被共有医療情報とを対応付けて記憶するサーバ装置と、
を備え、
前記端末装置は、
患者を識別する患者識別情報を取得する第2取得部と、
前記第2取得部が取得した前記患者識別情報を前記サーバ装置に送信する第2送信部、
前記患者識別情報に対応する患者についての前記被共有医療情報を前記サーバ装置から取得する第3取得部、及び、
前記第3取得部が取得した前記被共有医療情報を含む表示画面を表示する表示部、
を備えることを特徴とする医療情報共有システムを提供することにより上記課題を解決するものである。
【0012】
医療機関のスタッフの間で共有されるべき被共有医療情報とは、医療機関のスタッフの間で共有されることが望ましい医療情報を意味する。医療機関のスタッフの間で共有されることが望ましいとは、医師や看護師等の特定の医療スタッフに限らず、医療機関のスタッフ、望ましくは全てのスタッフの間で共有されることが望ましいことを意味する。
【0013】
ここで医療機関のスタッフという場合、当該医療機関のスタッフ又は職員、より詳細には、当該医療機関に勤務乃至在籍するスタッフ又は職員であることを意味し、必ずしも医師や看護師等の医療スタッフ、すなわち、患者に対して医療行為や看護行為を行うスタッフであることを意味するものではない。すなわち、医療機関のスタッフには、医師、看護師が含まれることは勿論であるが、医療機関のスタッフである限りにおいて、医師や看護師のみならず、医師、看護師以外の如何なる職種のスタッフもが含まれ得る。医師、看護師以外の職種の医療機関のスタッフとしては、例えば、医療事務スタッフ、介護事務スタッフ、調剤薬局事務スタッフ、看護助手(看護補助者)、施設介護員、薬剤師、助産師、臨床心理士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士、管理栄養士、栄養士、歯科衛生士、歯科技工士、細胞検査士、義肢装具士、調理師、診療放射線技師、臨床検査技師、衛生検査技師、臨床工学技士、診療情報管理士、社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員、認定医療社会福祉士、施設管理者、警備スタッフ、清掃スタッフ、リネン管理スタッフ、売店スタッフ及び/又は災害派遣医療スタッフ等が含まれ得るが、これらの職種のスタッフに限定されない。必要な医療情報を、患者本人や医師、看護師に限らず、医療機関において患者と接する可能性があるより多くのスタッフ、好ましくは全てのスタッフの間で共有することができれば、医療機関のスタッフ全員で個々の患者に気を配ることができ、よりきめの細かい医療乃至看護サービスを提供され得る。よって、本発明に係る医療情報共有システムの好適な一態様においては、端末装置のユーザである医療機関のスタッフは、上述した職種のうち、少なくとも2以上の職種のスタッフ、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、よりさらに好ましくは5以上、さらに好ましくはそれ以上の職種のスタッフを含み得る。
【0014】
なお、本明細書において「医療機関」という場合には、病院だけでなく、診療所、クリニック、医院、及び、リハビリテーション施設や介護施設等も含まれる。本発明に係る医療情報共有システムは、このような医療機関のスタッフの間で必要な医療情報を共有するためのものである。
【0015】
医療機関のスタッフの間で共有されるべき被共有医療情報は、医療機関のスタッフの間で共有されるべきものであって、患者及び/又はその関係者の同意が得られるものであれば基本的にどのようなものであっても良く、必要に応じて適宜選択され得るが、ある好適な一態様において、電子カルテ又は看護記録の全部又は一部であり、より好ましくは、患者の移動、姿勢、排泄、食事又は飲み物に課せられた条件又は制限に関する医療情報、患者の転倒転落の危険度に関する医療情報、及び、患者の診療スケジュールに関する医療情報のいずれかを含み得る。
【0016】
患者の移動、姿勢、排泄、食事又は飲み物に課せられた条件又は制限に関する医療情報は、例えば、患者の移動、姿勢、排泄、食事又は飲み物についての禁止事項、注意事項、補助具の要否、介助の要否及びその程度であり得る。このような患者の移動、姿勢、排泄、食事又は飲み物に課せられた条件又は制限に関する医療情報は、それらが遵守されない場合には、患者に重大な影響を及ぼす可能性がある重要な医療情報である。その一方で、プライバシー性は比較的低い医療情報であるので、医師や看護師のみならず、医療機関のスタッフの間で積極的に共有されるべき医療情報と言える。本発明の一態様に係る医療情報共有システムによれば、医療機関のスタッフは、医師又は看護師等の特定の職種のスタッフでなくても、また、ベッドサイド以外の場所であっても、必要な時に、自己が使用する端末装置を用いて、これらの医療情報を閲覧することができるので、必要に応じて、個々の患者に適切な対応をすることができるという利点がある。
【0017】
ある好適な一態様において、患者の移動、姿勢、排泄、食事又は飲み物に課せられた条件又は制限に関する前記医療情報はピクトグラム化された医療情報であり得る。ピクトグラムを用いることにより、限られたスペースで、効率的に患者の医療情報を伝達することが可能となる。なお、本明細書で「ピクトグラム」という場合、図形又は記号のみならず、必要な限度で文字列を含み得る。ピクトグラムに含まれ得る文字列を構成する文字数は、典型的には20文字以下、好ましくは15文字以下である。本発明に係る医療情報共有システムが備える端末装置は、主として、医療機関のスタッフが携帯する端末装置、すなわち、携帯端末であるため、そのディスプレイサイズは小さい場合が多く、典型的には8.0インチ未満、多くの場合7.0インチ以下である。患者の医療情報をピクトグラム化して表示することにより、ディスプレイサイズが小さい端末装置を用いた場合であっても、限られたスペースで効率良く医療情報を伝えることができる。なお、患者の移動、姿勢、排泄、食事又は飲み物に課せられた条件又は制限に関する前記医療情報以外の医療情報をピクトグラム化された医療情報として表示しても良いことは言うまでもない。
【0018】
一方、転倒転落の危険度に関する医療情報とは、患者の四肢の自由度や能力などを調べる転倒転落アセスメントと呼ばれる調査を患者ごとに行うことによって得ることができる医療情報であり、個々の患者についての転倒転落の危険度を、例えば、「A」は危険度「小」、「B」は危険度「中」、「C」は危険度「大」というようにランク分けして記号で表した情報である。A、B、Cという各記号に数字を添えることで、各ランクの危険度をさらに細分して表すことも可能である。このような転倒転落の危険度を知ることにより、その患者の転倒、転落の危険度を知ることができるので、適切な介助乃至は対応をとることができる。
【0019】
診療スケジュールに関する医療情報とは、患者に対して実施される1又は複数の診療行為、具体的には、問診、検査、処置、治療、投薬、手術、リハビリ及びそれらの準備などの診療行為の予定情報である。本発明に係る医療情報共有システムが備える端末装置に診療スケジュールに関する医療情報が表示される場合には、例えば、医療機関のスタッフの目の前にいる患者が、これから行うべき診療行為の予定を忘れてしまった際に、医療機関のスタッフは自己が使用する端末装置の表示画面に含まれる当該患者の診療スケジュールに関する医療情報を参照して、当該患者に適切な案内をすることができる。なお、プライバシー性を高めるという観点からは、端末装置の表示画面に含まれ得る診療スケジュールに関する医療情報は、所定の期間内の診療スケジュールに関する医療情報としても良い。当該所定の期間は、例えば、その医療情報が表示される当日から1月以内、14日以内、7日以内、6日以内、5日以内、4日以内、3日以内、2日以内、或いは、その医療情報が表示される当日のみであり得る。
【0020】
本発明に係る医療情報共有システムが備える端末装置は患者を識別する患者識別情報を取得すると、取得した患者識別情報をサーバ装置に送信する。サーバ装置は、患者識別情報と、その患者識別情報に対応する患者についての医療情報であって、医療機関のスタッフの間で共有されるべき被共有医療情報とを対応付けて記憶しており、端末装置から患者識別情報を受信すると、受信した患者識別情報に対応する患者についての被共有医療情報を前記端末装置に送信する。このようにして、前記端末装置は取得した患者識別情報に対応する患者についての被共有医療情報を取得し得る。被共有医療情報を取得した前記端末装置の表示部には、取得した被共有医療情報を含む表示画面が表示される。医療機関のスタッフは当該表示画面を確認することにより、被共有医療情報を把握することができる。
【0021】
患者を識別する患者識別情報は、個々の患者を識別することができる情報であればどのようなものであっても良いが、例えば、患者ID、患者名、患者名と生年月日、個々の患者に割り当てられた発信機ID、バイオメトリクス情報又はこれらの組み合わせ等であり得る。バイオメトリクス情報としては、例えば、患者の指紋、虹彩、声紋、顔等から得られるバイオメトリクス情報が含まれ得る。これらの患者識別情報を取得する具体的な方法に特段の制限はなく、例えば、端末装置に表示される表示画面から、例えば、手動又は音声で直接入力するようにしても良いし、患者が有する情報媒体から取得するようにしても良いが、患者が有する情報媒体から取得するようにすることが好ましい。患者が有する情報媒体から患者識別情報を取得することにより、誤った患者識別情報が用いられ、患者を取り違えてしまうリスクが低減される。ちなみに、患者が有する情報媒体とは、例えば、ICカード、ICチップ、バーコード、二次元バーコード、ビーコン等であり得るが、これらに加えて、患者の指紋、虹彩、声紋、顔等も含まれ得る。
【0022】
ある一実施態様においては、前記端末装置のユーザが正当なユーザ、すなわち、医療機関のスタッフであることの認証を行うようにしても良い。すなわち、ある好適な一態様において、前記端末装置は、医療機関のスタッフであることを識別するスタッフ識別情報を取得する第1取得部と、前記第1取得部が取得した前記スタッフ識別情報を前記サーバ装置に送信する第1送信部を備えており、前記第2取得部は、前記スタッフ識別情報と、予め記憶された医療機関のスタッフであることを識別するスタッフ識別情報とが一致すると前記サーバ装置が判定した場合、患者を識別する患者識別情報を取得することを特徴とする端末装置であり得る。より具体的には、例えば、前記端末装置が取得したスタッフ識別情報が予め記憶された医療機関のスタッフであることを識別するスタッフ識別情報と一致すると前記サーバ装置が判定した場合に、前記端末装置が備える表示部に患者識別情報取得画面が表示され、当該患者識別情報取得画面を介して、患者を識別する患者識別情報を取得する構成としても良い。ちなみに、上述の場合において、サーバ装置は、前記第1送信部からスタッフ識別情報を受信する受信部と、受信したスタッフ識別情報と、予め記憶された医療機関のスタッフであることを識別するスタッフ識別情報とが一致するか否かを判定する判定部を備えているということになる。判定の結果、前記受信部が受信したスタッフ識別情報が予め記憶された医療機関のスタッフであることを識別するスタッフ識別情報と一致すると判定した場合、サーバ装置は、前記端末装置から患者を識別する患者識別情報を取得する。
【0023】
スタッフ識別情報は、当該スタッフ識別情報に対応するスタッフが、本発明に係る医療情報共有システムが用いられる医療機関のスタッフであることを識別することができる情報であれば、基本的にどのようなものであっても良いが、例えば、スタッフID、スタッフ名、スタッフ名と生年月日、バイオメトリクス情報又はこれらの組み合わせ等であり得る。バイオメトリクス情報としては、例えば、スタッフの指紋、虹彩、声紋、顔等から得られるバイオメトリクス情報が含まれ得る。これらのスタッフ識別情報を取得する具体的な方法に特段の制限はなく、例えば、端末装置に表示される表示画面から、例えば、手動又は音声で直接入力するようにしても良いし、スタッフが有する情報媒体から取得するようにしても良いが、スタッフが有する情報媒体から取得するようにすることが好ましい。ちなみに、スタッフが有する情報媒体とは、例えば、ICカード、ICチップ、バーコード、二次元バーコード等であり得るが、これらに加えて、スタッフの指紋、虹彩、声紋、顔等も含まれ得る。
【0024】
「医療機関のスタッフであることを識別する」とは、当該スタッフ識別情報に対応するスタッフが、本発明に係る医療情報共有システムが用いられ得る医療機関のスタッフ又は職員であることを識別することを意味し、当該スタッフ識別情報に対応するスタッフが、特定の職種のスタッフ、例えば、医師又は看護師等の医療スタッフであることを識別することとは機能的に異なる概念である。本発明は、主として、広く医療機関のスタッフに被共有医療情報を共有するためのものである。
【0025】
以上のとおり、スタッフ識別情報は、当該スタッフ識別情報に対応するスタッフが、本発明に係る医療情報共有システムが用いられる医療機関のスタッフであることを識別することができるものであれば良く、医療機関のスタッフの職種までをも識別できるものである必要はないが、ある一実施態様においては、職種を含めて医療機関のスタッフを識別し得る識別情報であっても良い。このように、職種を含めて医療機関のスタッフを識別し得る識別情報をスタッフ識別情報として用いる場合に、当該スタッフ識別情報が、予め記憶された医療機関のスタッフであることを識別するスタッフ識別情報と一致するか否かを判定することにより、当該スタッフ識別情報に対応するスタッフが医療機関のスタッフであることを判定しても良いことは勿論であるが、ある一実施態様においては、当該スタッフ識別情報が、予め記憶された特定の職種のスタッフを識別するスタッフ識別情報と一致するか否かを判定しても良い。すなわち、本発明のある一実施態様に係る医療情報共有システムの前記端末装置が備える前記第2取得部は、前記スタッフ識別情報と、予め記憶された医師、看護師、医療事務スタッフ、介護事務スタッフ、調剤薬局事務スタッフ、看護助手(看護補助者)、施設介護員、薬剤師、助産師、臨床心理士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士、管理栄養士、栄養士、歯科衛生士、歯科技工士、細胞検査士、義肢装具士、調理師、診療放射線技師、臨床検査技師、衛生検査技師、臨床工学技士、診療情報管理士、社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員、認定医療社会福祉士、施設管理者、警備スタッフ、清掃スタッフ、リネン管理スタッフ、売店スタッフ及び/又は災害派遣医療スタッフを識別するスタッフ識別情報とが一致すると前記サーバ装置が判定した場合、患者を識別する患者識別情報を取得するものであっても良い。なお、医療機関のスタッフの職種は上記に列挙したものに限られず、どのような職種の医療機関のスタッフであっても良いことは言うまでもない。
【0026】
一方、ある一実施態様において、本発明に係る医療情報共有システムが備える端末装置は、前記表示部が表示した前記表示画面を、所定時間が経過した後に非表示にする、及び/又は、前記第3取得部が取得した前記被共有医療情報を、所定時間が経過した後に前記端末装置から消去する制御部を備え得る。前記端末装置が、上記制御部を備えている場合には、所定時間が経過した後に、患者の医療情報を含む表示画面が自動的に非表示となる、及び/又は、所定時間が経過した後に、患者の医療情報が端末装置から消去されるため、万が一、端末装置が盗難又は紛失した場合であっても、当該端末装置を介して患者の医療情報が漏洩するリスクを低減することができる。前記所定時間に特段の制限はないが、患者の医療情報が漏洩するリスクを低減するという観点からは、例えば、前記表示画面が表示されてから60分、45分、30分、15分、10分、或いは5分であり得る。
【0027】
また、ある一実施態様において、本発明に係る医療情報共有システムが備える端末装置が正当な端末装置であることの認証を行うようにしても良い。すなわち、ある好適な一態様において、本発明に係る医療情報共有システムが備える端末装置は、前記端末装置を識別する端末識別情報を前記サーバ装置に送信する第3送信部を備え、被共有医療情報を取得する前記第3取得部は、前記第3送信部が送信した前記端末識別情報と、予め記憶された端末識別情報とが一致すると前記サーバ装置が判定した場合、前記第2取得部が取得した前記患者識別情報に対応する患者についての前記被共有医療情報を前記サーバ装置から取得することを特徴とする端末装置であり得る。この場合、例えば、前記サーバ装置は、患者の被共有医療情報へのアクセスが許可されている端末装置を識別する端末識別情報の一覧を記憶部に記憶しており、また、前記第3送信部から受信した前記端末識別情報が、記憶部に記憶された端末識別情報と一致するか否かを判定する判定部を有するということになる。なお、端末装置を識別する端末識別情報は、当該端末装置を識別することができる限りにおいて、どのような情報であっても良いが、例えば、各端末に割り当てられた個体識別番号、端末ID、MACアドレス(Media Access Control Address)等であり得る。本発明に係る医療情報共有システムが備える端末装置が以上の構成を備えている場合には、患者の医療情報が表示される端末装置が予め登録された所定の端末装置に限定されるので、患者の医療情報が第三者に漏洩するリスクを低減することができる。
【0028】
なお、以上説明したとおり、本発明に係る医療情報共有システムは、主として、医療機関のスタッフの間で共有されるべき被共有医療情報を含む表示画面を表示することにより、医療機関のスタッフの間で共有されるべき被共有医療情報を、医療機関のスタッフの職種に関係なく、広く医療機関のスタッフの間で共有するためのものであるが、端末装置のユーザが医療スタッフである場合には、必要に応じて、被共有医療情報に加えて、医療機関の医療スタッフが必要とする医療情報を確認可能な構成としても良い。ここで医療スタッフとは、医療機関のスタッフのうち、患者に対して医療行為・看護行為等を実施するスタッフを意味し、例えば、医師、看護師、看護助手(看護補助者)、薬剤師、保健師、助産師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士、管理栄養士、栄養士、歯科衛生士、歯科技工士、義肢装具士、診療放射線技師、臨床検査技師、衛生検査技師、臨床工学技士、及び/又は災害派遣医療スタッフなどが含まれるが、これらの職種に限定されない。
【0029】
すなわち、本発明に係る医療情報共有システムのある好適な一態様において、前記端末装置は、医療スタッフを識別する医療スタッフ識別情報を取得する第4取得部と、前記第4取得部が取得した医療スタッフ識別情報を前記サーバ装置に送信する第4送信部、前記第4送信部が送信した前記医療スタッフ識別情報が、予め記憶された医療スタッフを識別するための医療スタッフ識別情報と一致すると前記サーバ装置が判定した場合、前記第2取得部が取得した前記患者識別情報に対応する患者についての医療情報であって、前記医療スタッフ識別情報に対応する医療スタッフが必要とする医療情報を前記サーバ装置から取得する第5取得部を備え、前記第5取得部が取得した前記医療情報を含む表示画面を表示することを特徴とする端末装置であり得る。
【0030】
この場合、例えば、前記サーバ装置は、医療スタッフを識別するための医療スタッフ識別情報を記憶部に記憶しており、これにより、前記第4送信部から受信した前記医療スタッフ識別情報が、予め記憶された医療スタッフを識別する医療スタッフ識別情報と一致するか否かを判定し得る。また、この場合、前記サーバ装置は、患者識別情報と、その患者識別情報に対応する患者についての医療情報に加え、その医療情報を必要とする医療スタッフを識別する医療スタッフ識別情報を対応付けて記憶しており、これにより、前記第4送信部から受信した医療スタッフ識別情報と、前記第2送信部から受信した患者識別情報に基づいて、端末装置のユーザである医療スタッフが必要とする医療情報を特定し、当該医療情報を含む表示画面を生成し得る。
【0031】
前記第4取得部による医療スタッフ識別情報の取得は、例えば、端末装置の表示部に表示される被共有医療情報を含む前記表示画面が表示された状態から、更に医療スタッフ識別情報を取得する構成としても良いし、前記第1取得部によるスタッフ識別情報の取得、第2取得部による患者識別情報の取得、及び表示部における前記表示画面の表示とは独立して、医療スタッフ識別情報を取得する構成としても良い。
【0032】
なお、医療スタッフを識別することができる限りにおいて、前記医療スタッフ識別情報は前記スタッフ識別情報と同じものであっても良い。前記スタッフ識別情報を医療スタッフ識別情報としても用いる場合、端末装置の表示部に表示される被共有医療情報を含む前記表示画面に、更に、前記医療スタッフ識別情報に対応する医療スタッフが必要とする医療情報を表示する構成としても良い。この場合、前記サーバ装置は、第1送信部が送信したスタッフ識別情報が、予め記憶された医療機関のスタッフであることを識別するスタッフ識別情報と一致するか否かの判定と、第1送信部が送信したスタッフ識別情報が、予め記憶された医療スタッフを識別する医療スタッフ識別情報と一致するか否かの判定のいずれを先に行っても良いし、可能である場合には、一括して行っても良い。また、前記スタッフ識別情報を医療スタッフ識別情報としても用いる場合、前記第5取得部と前記第3取得部は同じものであっても良い。すなわち、前記第3取得部が、前記第2取得部が取得した前記患者識別情報に対応する患者についての被共有医療情報と、その患者についての医療情報であって、前記医療スタッフ識別情報に対応する医療スタッフが必要とする医療情報を前記サーバ装置から取得する構成としても良い。
【0033】
なお、医療スタッフが必要とする医療情報の種類に特段の制限はなく、必要に応じて適宜設定され得るが、敢えて例示するのであれば、例えば、電子カルテの一部又は看護記録の一部であり、より具体的には、例えば、医療スタッフが医師、看護師、或いは看護助手(看護補助者)等である場合には、患者の体温、血圧、脈拍、呼吸、尿量、看護記録、診療スケジュール、検査結果、クリニカルパス等に関する医療情報であり得、医療スタッフが診療放射線技師である場合には、レントゲン画像、CT画像又はMRI画像等に関する医療情報であり得、医療スタッフが作業療法士や理学療法士である場合には、理学療法診療記録、作業療法診療記録又はリハビリ診療録等に関する医療情報であり得、医療スタッフが薬剤師である場合には、処方履歴であり得る。なお、これらの医療情報が前記サーバ装置に記憶されることがセキュリティ上好ましくない場合等には、前記サーバ装置に代えて、電子カルテシステム等の院内ネットワークに含まれる他のサーバ装置や記憶装置から取得するようにしても良い。
【0034】
また、本発明に係る医療情報共有システムが備える端末装置が、被共有医療情報以外の医療情報を含む上記表示画面を表示する手段を備えている場合には、上記表示画面を所定時間が経過した後に非表示にする、及び/又は、取得した被共有医療情報以外の前記医療情報を所定時間が経過した後に前記端末装置から消去する制御部を備えていることが更に好ましい。前記所定時間に特段の制限はないが、例えば、前記表示画面が表示されてから60分、より好ましくは40分、さらに好ましくは30分、よりさらに好ましくは15分とすることができる。
【0035】
本発明に係る医療情報共有システムが備える端末装置が、以上のような構成を備える場合には、端末装置のユーザである医療スタッフは、当該端末装置から患者についての必要最小限の医療情報の確認のみならず、患者についての詳細な医療情報を確認することができるので大変便利である。
【0036】
また、後述する実施例に示すとおり、患者についての医療情報には、医療機関内の特定の位置において、共有されるべき優先度が高まる医療情報がある。よって、ある好適な一態様においては、被共有医療情報ごとに、その被共有医療情報が共有されるべき医療機関内のエリアを設定しても良い。すなわち、ある好適な一態様において、本発明に係る医療情報共有システムにおいて、前記サーバ装置は、さらに、
被共有医療情報と、その被共有医療情報が共有されるべき医療機関内のエリアとを対応付けて記憶しており、
前記端末装置において、
前記第2送信部は、前記第2取得部が取得した前記患者識別情報とともに前記端末装置の位置を特定できる位置特定情報を前記サーバ装置に送信し、
前記第3取得部は、前記第2送信部が送信した前記患者識別情報に対応する患者についての前記被共有医療情報であって、当該被共有医療情報が共有されるべき医療機関内のエリアと、前記位置特定情報により特定される位置とを比較して、医療機関のスタッフに共有されるべきと前記サーバ装置が判定した被共有医療情報を前記サーバ装置から取得する、
ことを特徴とするものであり得る。本発明に係る医療情報共有システムが以上のような構成を備える場合には、医療機関のスタッフは、今、その場所で把握すべき医療情報を即座に把握することができるという利点が得られる。また、患者の医療情報のうち、特定の医療情報の共有を、特定の位置においてのみ行うことができるので、より患者のプライバシーに配慮した情報の共有が可能となる。
【0037】
なお、端末装置の位置を特定できる位置特定情報は、端末装置の位置を直接又は間接的に特定できるものであれば基本的にどのようなものであっても良いが、例えば、医療機関内の所定位置に予め設置された1又は複数のビーコンを識別するビーコン識別情報やこれらのビーコンからの受信電波強度、周波数等を含み得る。ビーコンは、例えば、BLE(Bluetooth Low Energy)ビーコンであり得る。
【0038】
また、患者についての医療情報のうち、医療機関内の特定の位置においては、特に優先して共有されるべき医療情報がある場合、そのような医療情報を他の医療情報に優先して表示、或いは、そのような医療情報があることを端末装置のユーザである医療機関のスタッフに報知しても良い。すなわち、本発明に係る医療情報共有システムのある好適な一態様においては、
前記サーバ装置は、さらに、
被共有医療情報と、その被共有医療情報が報知されるべき医療機関内のエリアとを対応付けて記憶しており、
前記端末装置において、
前記第2送信部は、前記第2取得部が取得した前記患者識別情報とともに前記端末装置の位置を特定できる位置特定情報を前記サーバ装置に送信し、
前記第3取得部は、前記第2送信部が送信した前記患者識別情報に対応する患者についての前記被共有医療情報であって、当該被共有医療情報が共有されるべき医療機関内のエリアと、前記位置特定情報により特定される位置とを比較して、医療機関のスタッフに共有されるべきと前記サーバ装置が判定した被共有医療情報を前記サーバ装置から取得するとともに、
前記端末装置は、
前記第3取得部が前記被共有医療情報を取得したとき、前記被共有医療情報の取得を報知する、
ことを特徴とするものであり得る。本発明に係る医療情報共有システムが以上のような構成を備える場合には、医療機関のスタッフは、今、目の前にいる患者について、その場所で特に把握すべき重要な医療情報があることを即座に把握することができるので、適切な対応を迅速にとることができるという利点が得られる。
【0039】
被共有医療情報の取得を報知する具体的な方法に特段の制限はないが、例えば、音信号、光信号を発するようにしても良いし、端末装置が振動するようにしても良いし、これらの組み合わせであっても良い。さらに、被共有医療情報の取得を報知するとともに、取得した前記被共有医療情報を含む表示画面を表示するようにしても良いことは言うまでもない。
【0040】
また、本発明は、他の一側面において、上述したいずれかの医療情報共有システムが備える端末装置又はサーバ装置を提供することにより上記課題を解決するものである。端末装置又はサーバ装置が備える手段及び動作については、医療情報共有システムについての説明において、既に説明したとおりであるので、簡潔のため説明を省略する。
【0041】
また、本発明は、その好適な一態様において、コンピュータを上記いずれかの端末装置又はサーバ装置として機能させるためのコンピュータプログラムを提供することにより上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、医療機関のスタッフの間で、特に、医療機関のベッドサイド以外の場所において、患者の医療情報を効率的に共有することができるので、よりきめの細かい医療乃至看護サービスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】第1の実施形態に係る医療情報共有システムの全体構成を説明する概念図である。
【
図2】第1の実施形態に係る医療情報共有システムが備えるサーバ装置の記憶部に記憶されている情報の一例を示す図である。第1の実施形態に係る医療情報共有システムがサーバ装置S1の記憶部S11には、患者識別情報として患者IDと、前記患者IDに対応する患者についての被共有医療情報として、患者の移動、姿勢、排泄、食事又は飲み物に課せられた条件又は制限に関する医療情報が対応づけられて記憶されている。
【
図3】第1の実施形態に係る医療情報共有システムが備える端末装置の表示部に表示される表示画面及びそこに表示される情報の一例を示す図である。
【
図4】第3の実施形態に係る医療情報共有システムが備えるサーバ装置の記憶部に記憶されている情報の一例を示す図である。第3の実施形態に係る医療情報共有システムがサーバ装置S3の記憶部S31には、患者IDとビーコンIDが対応づけられて記憶されている。
【
図5】第3の実施形態に係る医療情報共有システムが備えるサーバ装置S3の記憶部S31に記憶されている情報の一例を示す図である。第3の実施形態に係る医療情報共有システムがサーバ装置S3の記憶部S31には、被共有医療情報と、前記被共有医療情報が報知されるべき医療機関内のエリアとが対応付けられて記憶されている。
【
図6】第3の実施形態に係る医療情報共有システムが備える端末装置T3の表示部に表示される報知画面及びそこに表示される情報の一例を示す図である。
【
図7】第3の実施形態に係る医療情報共有システムが備える端末装置T3の表示部に表示される表示画面及びそこに表示される情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明が実施例のものに限られないことは言うまでもない。
【0045】
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態に係る医療情報共有システム100について説明する。
【0046】
図1は、第1の実施形態に係る医療情報共有システム100の全体構成を説明する概念図である。
図1に示すように、本実施形態に係る医療情報共有システム100は、サーバ装置S1と端末装置T1、端末装置T2を含む。サーバ装置S1は、端末装置T1及び端末装置T2とネットワークNを介して接続されている。ネットワークNは、例えば、インターネット、LAN(Local Area Network)、電話回線又は専用回線であり得る。
【0047】
<サーバ装置>
本例において、サーバ装置S1は情報処理装置であり、端末装置T1、端末装置T2と連携して動作する。サーバ装置S1は、1つのサーバ装置であっても良いし、複数のサーバ装置であっても良い。サーバ装置は医療機関が管理するものであっても良いし、管理会社によって管理されるものであっても良い。
【0048】
サーバ装置S1は、機能概念的に、記憶部S11、通信部S12、制御部S13を備えている。なお、サーバ装置S1がこれら以外の構成を備えていても良いことは言うまでもなく、例えば、ディスプレイ等の表示部、キーボード等の入力部等を備えていても良い。
【0049】
記憶部S11は、各種処理に必要な情報を記憶する手段であり、揮発性メモリであっても良いし、不揮発性メモリであっても良い。具体的には、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)、キャッシュメモリ、バッファメモリなどであり得る。
【0050】
なお、本例において、記憶部S11はサーバ装置S1が備える記憶部であるが、記憶部S11は必ずしもサーバ装置S1が備えている記憶部である必要はなく、サーバ装置S1が随時接続してデータの読み取りが可能である限り、サーバ装置S1と直接又はネットワークNを介して接続され、サーバ装置S1とは独立して存在する1つ又は2つ以上の記憶装置又はその一部であっても良い。また、サーバ装置S1が接続可能な医療機関のネットワーク内に他のサーバ装置や記憶装置が存在する場合には、それらの記憶部の一部又は全部を記憶部S11として使用しても良い。以上のようなサーバ装置及び/又は記憶装置には、オンプレミス型のサーバ及びストレージ、並びに、クラウド型のサーバ及びストレージの双方が含まれ得る。
【0051】
通信部S12は、例えば、LAN(Local Area Network)カード、ネットワークカード等を含んで構成される、適宜のネットワークを介して各種の情報の送信又は受信を行う手段である。本例において、通信部S12は、ネットワークNを介して、端末装置T1及び端末装置T2へデータ等を送信する送信部S12a、及び、端末装置T1及び端末装置T2からデータ等を受信する受信部S12bを機能概念的に含んでいる。
【0052】
制御部S13は、例えば、一つ又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Ramdom Access Memory)等を含んで構成されており、サーバ装置S1の各部を制御する制御手段である。制御部S13は、記憶部S11等に記憶されているプログラムを適宜読み出して各種の処理を実行する。
【0053】
<端末装置>
端末装置T1及び端末装置T2は、各種の画面を表示するディスプレイを備える携帯端末である。このような携帯端末は、例えば、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末、又は腕時計型・眼鏡型等のウェアラブルデバイスであり得る。
【0054】
端末装置T1は、機能概念的に、表示部T11、記憶部T12、通信部T13、制御部T14を備えている。なお、端末装置T1がこれら以外の構成を備えていても良いことは言うまでもなく、例えば、タッチパネル等の入力部等を備えていても良い。端末装置T2については、端末装置T1についてと同様であるので、以下、簡略のため説明を省略する。
【0055】
表示部T11は、例えば、図示しない液晶モニター、有機ELディスプレイ等を含んで構成される、サーバ装置S1から送信される情報や画面を含む各種の情報や画面を表示する表示手段である。これらの各種情報及び画面は、表示部T11が表示可能な任意の形式で、サーバ装置S1から出力され得る。例えば、表示部T11がブラウザ機能を搭載している液晶モニター、有機ELディスプレイ等である場合には、HTML(Hyper Text Markup Language)等の形式で出力されても良い。
【0056】
端末装置T1の大きさに特段の制限はない。しかしながら、持ち運びが容易な方が好ましいという観点からは、そのディスプレイのサイズは8インチ未満であることが好ましく、7インチ以下であることがより好ましい。
【0057】
記憶部T12は、各種処理に必要な情報を記憶する手段であり、揮発性メモリであっても、不揮発性メモリであっても良く、具体的には、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)、キャッシュメモリ、バッファメモリなどであり得る。
【0058】
通信部T13は、例えば、LANカード、ネットワークカード等を含んで構成される、適宜のネットワークを介して各種の情報の送信又は受信を行う手段である。本例において、通信部T13は、ネットワークNを介して、サーバ装置S1へデータ等を送信する送信部T13a、及び、サーバ装置S1からデータ等を受信する受信部T13bを機能概念的に含んでいる。
【0059】
制御部T14は、例えば、一つ又は複数のCPU、MPU、GPU、ROM、RAM等を含んで構成されており、端末装置T1の各部を制御する制御手段である。制御部T14は、記憶部T12等に記憶されているプログラムを適宜読み出して各種の処理を実行する。
【0060】
<基本動作>
以下、第1の実施形態に係る医療情報共有システム100の基本動作を説明する。
図1において、P1は患者番号「0001」で特定される患者であり、ICカードを所持している。当該ICカードには、患者P1を識別する患者識別情報として、患者P1の患者ID「0001」が記憶されている。MS1は作業療法士(医療機関のスタッフ)であり、端末装置T1を携帯している。一方、MS2は医療事務スタッフ(医療機関のスタッフ)であり、端末装置T2を携帯している。
【0061】
本例において、サーバ装置S1の記憶部S11には、患者識別情報として患者IDと、その患者識別情報に対応する患者についての医療情報であって、医療機関のスタッフの間で共有されるべき被共有医療情報として、患者の移動、姿勢、排泄、食事又は飲み物に課せられた条件又は制限に関する医療情報が対応づけて記憶されている。サーバ装置S1の記憶部S11に記憶されている情報の一例を
図2に示す。
図2に示すとおり、例えば、患者ID「PT0001」で特定される患者は「患者一郎」であり、当該患者についての被共有医療情報は、「移動制限(杖)」、「姿勢制限(ベッドアップ制限60
о)」、及び「アルコール禁止」である。
【0062】
本例において、患者P1は作業療法士MS1とともにリハビリテーションを行うため自分の病床を離れ、リハビリテーション病棟にやってきた。まず、作業療法士MS1が患者P1の医療情報を確認する場合を例にして基本動作を説明する。
【0063】
まず、作業療法士MS1は端末装置T1を用いて、自己が有するICカードをスキャンする。これにより、端末装置T1は、MS1のICカードからMS1が医療機関のスタッフであることを識別するスタッフ識別情報として職員ID「MS0001」を取得する。すなわち、本例において、端末装置T1はICカードリーダを備えており、医療機関のスタッフである作業療法士MS1が有するICカードからMS1の職員ID「MS0001」を取得する。なお、端末装置T1がスタッフ識別情報を取得する具体的な手段に特段の制限はないが、例えば、非接触通信方式であり得る。非接触通信方式としては、例えば、NFC(Near Field Communication)に基づいた通信方式等が含まれ得る。
【0064】
端末装置T1がスタッフ識別情報として職員ID「MS0001」を取得すると、取得した当該スタッフ識別情報はサーバ装置S1へ送信される。一方、サーバ装置S1は、端末装置T1からスタッフ識別情報を受信する。本例において、サーバ装置S1は、記憶部S11に、当該医療機関のスタッフに割り当てられた職員IDの一覧を予め記憶しており、端末装置T1からスタッフ識別情報を受信すると、受信したスタッフ識別情報が予め記憶された職員IDのいずれかと一致するか否かを判定することにより、受信したスタッフ識別情報が予め記憶された医療機関のスタッフであることを識別するスタッフ識別情報のいずれかと一致するか否かを判定する。
【0065】
上記判定の結果、サーバ装置S1が端末装置T1から受信した前記スタッフ識別情報がサーバ装置S1の記憶部S11に予め記憶された医療機関のスタッフであることを識別するスタッフ識別情報のいずれかと一致すると判定した場合、サーバ装置S1は、患者識別情報入力画面を出力し、端末装置T1へ送信する。このようにして、端末装置T1においては、サーバ装置S1に送信した上記スタッフ識別情報と、予め記憶された医療機関のスタッフであることを識別するスタッフ識別情報とが一致すると前記サーバ装置が判定した場合、患者を識別する患者識別情報を取得することができる。
【0066】
続いて、作業療法士MS1は自己が携帯する端末装置T1を用いて、患者P1が有するICカードから患者P1を識別する患者識別情報、本例では、患者ID「PT0001」を取得する。端末装置T1が患者P1を識別する患者識別情報として患者ID「PT0001」を取得すると、取得した当該患者識別情報はサーバ装置S1へ送信される。
【0067】
一方、サーバ装置S1は、端末装置T1から患者P1を識別する患者識別情報を受信する。サーバ装置S1は端末装置T1から患者識別情報を受信すると、受信した患者識別情報に対応する患者についての医療情報のうち、医療機関のスタッフの間で共有されるべき被共有医療情報を端末装置T1に送信する。本例においては、
図2に示されるとおり、患者ID「PT0001」に対応する患者P1についての被共有医療情報として、「移動制限(杖)」、「姿勢制限(ベッドアップ制限60
о)」、及び「アルコール禁止」が端末装置T1に送信される。なお、端末装置T1には、必要に応じて、被共有医療情報とともに、その他の情報を送信しても良く、本例においては、患者P1の患者名、病棟、及び担当医などの患者情報が上記の被共有医療情報とともに端末装置T1に送信される。
【0068】
なお、端末装置T1から取得した患者IDに対応する患者、及びその患者についての被共有医療情報が記憶部S11に記憶されていない場合には、端末装置T1には患者P1についての被共有医療情報に代えて、エラーメッセージが送信される。
【0069】
端末装置T1は、サーバ装置S1から送信される被共有医療情報を取得し、被共有医療情報を取得すると、取得した被共有医療情報を医療機関のスタッフが確認するための表示画面として、当該被共有医療情報を含む表示画面を表示部に表示する。このようにして表示される表示画面及びそこに表示される情報の一例を
図3に示す。
図3に示されるとおり、端末装置T1に表示される表示画面には、患者P1の患者名、患者ID、病室、主治医等の患者情報とともに、患者P1についての被共有医療情報として、患者の移動、姿勢、排泄、食事又は飲み物に課せられた条件又は制限に関する医療情報、より具体的には、「移動制限(杖)」、「姿勢制限(ベッドアップ制限60
о)」、及び「アルコール禁止」が表示されており、「移動制限(杖)」、「姿勢制限(ベッドアップ制限60
о)」についてはピクトグラム化された医療情報として表示されている。作業療法士MS1は、
図3に示す表示画面を確認することにより、患者P1についての被共有医療情報、本例においては、「移動制限(杖)」、「姿勢制限(ベッドアップ制限60
о)」、及び「アルコール禁止」を確認することができるので、これから行うリハビリテーションにおいて上記医療情報に注意を払い適切な対応ができる。
【0070】
その後、リハビリテーションが終了し、患者P1は病室へ戻ることとなった。しかしながら、その道のりで、患者P1は転倒してしまったとする。このような場合、患者P1の近くを通りかかった医療事務スタッフMS2は、自己が有する端末装置T2を用いて、上述したのと同様の手順にて、患者P1についての上記被共有医療情報を確認することができる。これにより医療事務スタッフMS2は、患者P1が「移動制限(杖)」及び「姿勢制限(ベッドアップ制限60о)」という制限又は条件がある患者であることを速やかに把握することが可能となるので、患者P1の状態に注意を払い、適切な介助を行うことができる。また、端末装置T2には、患者P1の主治医、病室といった情報が表示されるので、医療事務スタッフMS2は、必要な場合には、誰に患者P1の介助を要請すべきかをいち早く知ることができる。
【0071】
このように本実施形態に係る医療情報共有システムによれば、患者P1の医療情報、本例においては、患者P1の移動、姿勢、排泄、食事又は飲み物に課せられた条件又は制限に関する医療情報を、ナースステーションやベッドサイドに戻ることなく、必要な時、必要な場所で、容易に確認することができるようになるため、よりきめの細かい医療サービス乃至看護サービスを提供することが可能となる。また、それだけに限らず、本実施形態に係る医療情報共有システムは医療機関のスタッフと患者の間のコミュニケーションツールになり得る。例えば、本実施形態に係る医療情報共有システムによれば、医療機関のスタッフであるMS1やMS2が患者P1の患者情報を容易に確認できるので、患者P1の病状が回復していること等をすぐに知ることができる。これにより、患者P1への積極的な声掛けが可能となるし、このような声掛けは患者P1がリハビリテーションを頑張るモチベーションとなり得るものである。このように本実施形態に係る医療情報共有システムによれば、医療情報共有の利便性が高まるだけでなく、患者と医療機関のスタッフのコミュニケーションを活発にするきっかけが与えられる。
【0072】
なお、端末装置T1及びT2に表示された患者P1についての被共有医療情報を含む表示画面は、所定時間が経過した後に非表示となり、また、患者P1についての医療情報は、所定時間が経過した後に端末装置T1及びT2から消去される。これにより、患者P1が有するICカードから患者P1を識別する患者識別情報を再度取得しない限り、端末装置T1及びT2から患者P1についての被共有医療情報を閲覧することはできなくなる。端末装置T1、T2はベッドサイドに配置されるベッドサイド端末等の据え置き型の端末と異なり、持ち運ばれて使用されるため、紛失する危険性、また、第三者に盗難される危険性が大きくなる。これに対して、本実施形態に係る医療情報共有システムが備える端末装置T1及びT2によれば、万が一、端末装置T1又はT2が紛失した場合であっても、患者P1の医療情報が第三者に漏洩するリスクを最小限に留めることができる。
【0073】
<第2の実施形態>
第2の実施形態は、端末装置が正当な端末装置であることを確認する認証工程を含む実施の形態に関する。以下、本発明の第2の実施形態に係る医療情報共有システム200の動作を説明する。以下、特に説明する場合を除いて、第2の実施形態に係る医療情報共有システム200の構成は第1の実施形態に係る医療情報共有システム100と同様であるので、簡潔のため説明を省略する。
【0074】
本実施形態において、医療情報共有システム200は、医療情報共有システム100と同様、サーバ装置S1及び端末装置T1を備えている。本例においても、第1の実施形態と同様、患者P1は作業療法士MS1とともにリハビリテーションを行うため自分の病床を離れ、リハビリテーション病棟にやってきたものとし、作業療法士MS1が患者P1の医療情報を確認する場合を例にして動作を説明する。
【0075】
まず、第1の実施形態と同様、作業療法士MS1は端末装置T1を用いて、自己が有するICカードをスキャンする。これにより、端末装置T1は、MS1のICカードからMS1が医療機関のスタッフであることを識別するスタッフ識別情報として職員ID「MS0001」を取得する。
【0076】
一方、本例においては、端末装置T1がスタッフ識別情報として職員ID「MS0001」を取得すると、取得した当該スタッフ識別情報は、端末装置T1を識別する端末識別情報とともにサーバ装置S1へ送信される。サーバ装置S1は、端末装置T1からスタッフ識別情報と端末識別情報を受信する。第1の実施形態と同様、本例においても、サーバ装置S1は、記憶部S11に、当該医療機関のスタッフであることを識別するスタッフ識別情報を予め記憶しており、端末装置T1からスタッフ識別情報を受信すると、受信したスタッフ識別情報が予め記憶されたスタッフ識別情報のいずれかと一致するか否かを判定する。一方、本例において、サーバ装置S1は、当該医療機関が管理する端末装置の端末識別情報を予め記憶している。サーバ装置S1は、端末装置T1から当該端末装置を識別する端末識別情報を受信すると、受信した端末識別情報が予め記憶された端末識別情報のいずれかと一致するか否かを判定する。
【0077】
上記判定の結果、サーバ装置S1が端末装置T1から受信した前記スタッフ識別情報がサーバ装置S1の記憶部S11に予め記憶された医療機関のスタッフであることを識別するスタッフ識別情報のいずれかと一致すると判定するとともに場合、端末装置T1から受信した前記端末識別情報がサーバ装置S1の記憶部S11に予め記憶された端末識別情報のいずれかと一致すると判定した場合、サーバ装置S1は、患者識別情報入力画面を出力し、端末装置T1へ送信する。このようにして、端末装置T1においては、サーバ装置S1に送信した上記スタッフ識別情報及び端末識別情報が、予め記憶された医療機関のスタッフであることを識別するスタッフ識別情報及び予め記憶された端末識別情報と、それぞれ一致すると前記サーバ装置が判定した場合、患者を識別する患者識別情報を取得することができる。なお、上記2つの判定は、同時に行っても良いし、いずれかを先に行っても良い。また、サーバ装置S1が、予めスタッフ識別情報と端末識別情報との組み合わせを記憶しており、端末装置T1から取得したスタッフ識別情報と端末識別情報との組み合わせが、予め記憶されたスタッフ識別情報と端末識別情報との組み合わせと一致するか否かを判定する構成としても良い。これにより医療情報共有システムのセキュリティをより一層高めることができる。
【0078】
以降の工程は、第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。作業療法士MS1は自己が携帯する端末装置T1を用いて、患者P1が有するICカードから患者P1を識別する患者識別情報を取得し、端末装置T1を用いて、患者P1についての被共有医療情報を確認することができる。
【0079】
<第3の実施形態>
被共有医療情報のうち、いくつかの被共有医療情報は特定の位置条件下において、特に共有されるべき優先度が高い。第3の実施形態は、ある患者について、このような被共有医療情報を取得した場合、そのことを医療機関のスタッフに報知する実施の形態に関する。以下、本発明の第3の実施形態に係る医療情報共有システム300の動作を説明する。以下、特に説明する場合を除いて、第3の実施形態に係る医療情報共有システム300の構成は第1の実施形態に係る医療情報共有システム100と同様であるので、簡潔のため説明を省略する場合がある。
【0080】
本実施形態において、医療情報共有システム300は、サーバ装置S3及び端末装置T3を備えている。MS3は医療事務スタッフであり端末装置T3を携帯している。一方、P2は患者ID「PT0002」で特定される患者であり、ビーコンを所持している。当該ビーコンは、当該ビーコンを識別するビーコン識別情報を記憶しており、当該ビーコン識別情報を送信する手段を備えている発信機である。
【0081】
端末装置T3は上記ビーコンからビーコン識別情報を取得する手段を備えている。すなわち、端末装置T3は、患者P2が近傍に存在する場合、当該患者P2が所持するビーコンから、前記ビーコンを識別するビーコン識別情報を取得することができる。なお、本例において、患者P2が所持するビーコンのビーコン識別情報はビーコンID「B0002」であるとする。
【0082】
一方、サーバ装置S3の記憶部S31には、患者を識別する患者IDと、前記患者が所持するビーコンを識別するビーコンIDとが対応づけて記憶されている。サーバ装置S2の記憶部S21に記憶されている情報の一例を
図4に示す。
図4に示されるとおり、患者ID「PT0002」で特定される患者に対応するビーコンは、ビーコンID「B0002」で特定されるビーコンであることが分かる。このようにサーバ装置S31の記憶部S31には、患者IDとビーコンIDが対応付けて記憶されているため、ビーコンを識別するビーコン識別情報であるビーコンIDは、患者を識別する患者識別情報として機能する。
【0083】
第1の実施形態についての説明において述べたと同様に、サーバ装置S3の記憶部S31には、患者と、その患者についての医療情報であって、医療機関のスタッフの間で共有されるべき被共有医療情報が対応付けられて記憶されている。サーバ装置S3の記憶部S31に記憶されている情報の一例は
図2に示したとおりである。
図2に示すとおり、例えば、患者ID「PT0002」で特定される患者は「患者次郎」であり、当該患者についての被共有医療情報は「徘徊注意」である。
【0084】
一方、本例において、サーバ装置S3の記憶部S31には、さらに、被共有医療情報と、前記被共有医療情報が報知されるべき医療機関内のエリアとが対応付けられて記憶されている。サーバ装置S3の記憶部S31に記憶されている情報の一例を
図5に示す。
図5において「〇」は、その被共有医療情報が、対応する医療機関内の特定のエリアにおいて報知されるべき被共有医療情報(以下、被報知医療情報と言う場合がある。)であることを示している。一方、
図5において「×」は、被共有医療情報が、対応する医療機関内の特定のエリアにおいて報知されるべき被共有医療情報には該当しないことを示している。本例においては、
図5に示されるとおり、「徘徊注意」は、医療機関の「エントランス」においては、報知されるべき被報知医療情報である(
図5において、「徘徊注意」は「エントランス」において「〇」)。その一方で、「徘徊注意」は、「売店」や「トイレ」においては、報知されるべき被報知医療情報ではない(
図5において、「徘徊注意」は「売店」や「トイレ」において「×」)。
【0085】
以上をまとめると、
図2及び
図5より、患者ID「PT0002」で特定される患者P2の被共有医療情報は「徘徊注意」であり、この被共有医療情報は「エントランス」において報知されるべき被報知医療情報であることが分かる。
【0086】
以下、端末装置T3を携帯する医療事務スタッフMS3が医療機関のエントランスで出歩いている患者P2を見かけた場合を例として、本実施形態に係る医療情報共有システム300の動作を説明する。
【0087】
医療事務スタッフMS3が携帯する端末装置T3は、当該端末装置T3の近傍に存在する患者P2が所持するビーコンから当該ビーコンを識別するビーコン識別情報を取得する。すなわち、端末装置T3は患者が所持するビーコンからビーコン識別情報を取得する手段を備えており、ビーコン識別情報を取得すると、取得したビーコン識別情報とともに端末装置T3の位置を特定できる位置特定情報をサーバ装置S3に送信する。なお、第1の実施形態において説明したとおり、ビーコン識別情報を取得する前に、医療事務スタッフMS3が有する情報媒体からスタッフ識別情報を取得し、当該スタッフ識別情報が予め記憶された医療機関のスタッフであることを識別するスタッフ識別情報と一致するとサーバ装置S3が判定した場合に、ビーコン識別情報を取得する構成としても良いことは言うまでもない。また、第2の実施形態において説明したとおり、ビーコン識別情報とともに端末装置T3を識別する端末識別情報をサーバ装置S3へ送信する構成としても良いことももちろんである。
【0088】
サーバ装置S3は、端末装置T3から患者P2が所持するビーコンを識別するビーコン識別情報及び端末装置T3の位置を特定できる位置特定情報を受信する。なお、端末装置T3の位置を特定できる位置特定情報は、端末装置T3の位置を特定できる限りにおいて基本的にどのようなものであっても良いが、医療機関内の所定位置に予め設置された1又は複数のビーコンを識別するビーコン識別情報やこれらのビーコンからの受信電波強度を含み得る。
【0089】
サーバ装置S3は、ビーコンIDを受信すると、記憶部S31を参照し、ビーコンID「B0002」に対応する患者ID「PT0002」を取得する。これにより受信したビーコンIDに紐づけられた患者を特定することができる。
【0090】
そして、患者ID「PT0002」に対応する患者、すなわち、患者P2についての医療情報のうち、医療機関のスタッフの間で共有されるべき被共有医療情報のそれぞれについて、当該被共有医療情報が報知されるべき医療機関内のエリアと、端末装置T3から取得した前記位置特定情報により特定される位置とを比較して、各被共有医療情報が医療機関のスタッフに報知されるべき被報知医療情報であるか否かを判定する。
【0091】
本例においては、
図5に示されるとおり、患者ID「PT0002」に対応する患者、すなわち、患者P2についての「徘徊注意」という被共有医療情報が報知されるべき医療機関内のエリアは医療機関の「エントランス」である。これに対して、医療機関内のエントランスにいる医療事務スタッフMS3が所持する端末装置T3から取得した前記位置特定情報に基づき、サーバ装置S3は、端末装置T3が「エントランス」に存在すると判定することができる。よって、サーバ装置S3は患者P2についての「徘徊注意」という被共有医療情報は、端末装置T3に報知されるべき被報知医療情報であると判定し、当該被報知医療情報を端末装置T3に送信する。このようにして、端末装置T3は、患者P2についての被共有医療情報であって、サーバ装置S3が端末装置T3に報知されるべきと判定した被報知医療情報、本例においては、「徘徊注意」という医療情報をサーバ装置S3から取得する。
【0092】
端末装置T3がサーバ装置S3から被報知医療情報を取得すると、端末装置T3は着信音を発するとともに振動することで、当該被報知医療情報の取得を報知する。これにより、医療事務スタッフMS3は、端末装置T3が、近傍に存在するいずれかの患者について被報知医療情報を取得したことを知ることができる。なお、本例においては、医療事務スタッフMS3が携帯する端末装置T3は、さらに、前記被報知医療情報の取得を報知する報知画面を表示することにより、前記被報知医療情報の取得を報知する。端末装置T3に表示される報知画面及びそこに含まれる情報の一例を
図6に示す。
図6に示すとおり、端末装置T3に表示される報知画面から、医療事務スタッフMS3は、「徘徊注意」の患者が近くに存在することを直ちに把握することができる。
【0093】
そこで、医療事務スタッフMS3は、
図6に表示された報知画面から、さらに、「∨」ボタンを押すことによって、取得した被報知医療情報を確認するための表示画面を表示させることができる。端末装置T3に表示される表示画面及びそこに含まれる情報の一例を
図7に示す。
図7に示される表示画面を確認することにより医療事務スタッフMS3は「徘徊注意」の患者は患者P2であることが分かる。なお、被報知医療情報を医療機関のスタッフが確認するための前記表示画面には、患者名、顔写真等の患者を判別するための患者判別情報が含まれることが好ましい。すなわち、ある好適な一態様において、被報知医療情報を医療機関のスタッフが確認するための前記表示画面は、被報知医療情報とともに患者を判別するための患者判別情報が含まれる。患者判別情報としては、例えば、患者名、顔写真、似顔絵等が含まれ得る。
【0094】
本例において、「徘徊注意」の患者P2を発見した医療事務スタッフMS3は、例えば、患者P2が医療機関のエントランスから外に出て行きそうなときは、患者P2に声掛けし、静止することができる。一方、患者P2が医療機関内を歩き回っているだけの場合には、静かに見守ることを選択しても良いし、担当の看護師に連絡しても良い。いずれにせよ、本実施形態に係る医療情報共有システムによれば、医療事務スタッフMS3は、患者P2について注意すべき医療情報を即座に把握することができるので、適切な対応をとることができる。
【0095】
一方、端末装置T3を携帯する医療事務スタッフMS3が、今度は、患者P2の病室付近を出歩いている患者P2を見かけたとする。この場合、端末装置T3が送信する位置特定情報に基づいて特定される位置は患者P2の病室付近であり、「徘徊注意」という被共有医療情報が報知されるべき医療機関内のエリアである「エントランス」に含まれない。したがって、サーバ装置S3は「徘徊注意」という被共有医療情報は、端末装置T3に報知されるべき被報知医療情報ではないと判定し、当該被共有医療情報(すなわち「徘徊注意」)を端末装置T3に送信しない。よって、端末装置T3を携帯する医療事務スタッフMS3が、患者P2の病室付近で出歩いている患者P2を見かけたとしても、端末装置T3に患者P2についての被共有医療情報が表示乃至報知されることはない。
【0096】
このように本実施形態に係る医療情報共有システムによれば、医療機関のスタッフは、周囲に注意を払うべき患者がいるときに限り、そのことを即座に把握できる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明によれば、医療機関のスタッフが個々の患者について把握すべき必要な医療情報を効率的に把握することができるので、医療機関に入院する患者に、より一層、きめの細かい看護サービス乃至医療サービスを提供することができる。医療機関において、十分な数の医師又は看護師等を確保することが、近年、益々困難となってきている状況下、医療機関のスタッフ全体で患者を支え、より患者に寄り添った質の高い医療・看護サービスを提供し得る本発明に係る医療情報共有システムの産業上の利用可能性は多大なものである。
【符号の説明】
【0098】
100、200、300 医療情報共有システム
N ネットワーク
S1、S3 サーバ装置
T1、T2、T3 端末装置
P1、P2 患者
MS1 医療機関のスタッフ(作業療法士)
MS2 医療機関のスタッフ(医療事務スタッフ)
MS3 医療機関のスタッフ(医療事務スタッフ)
【手続補正書】
【提出日】2023-02-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療機関において患者の医療情報を共有するための医療情報共有システムであって、
前記医療機関のスタッフが使用する端末装置と、
患者識別情報と、その患者識別情報に対応する患者についての医療情報であって、前記医療機関のスタッフの間で共有されるべき被共有医療情報とを対応付けて記憶するサーバ装置と、
を備え、
前記端末装置は、
医療機関のスタッフを識別するスタッフ識別情報を取得する第1取得部と、
前記第1取得部が取得した前記スタッフ識別情報を前記サーバ装置に送信する第1送信部、
前記第1送信部が送信した前記スタッフ識別情報と、予め記憶された前記医療機関のスタッフであることを識別するスタッフ識別情報とが一致すると前記サーバ装置が判定した場合、患者が有する情報媒体から前記患者を識別する患者識別情報を取得する第2取得部、
前記第2取得部が取得した前記患者識別情報を前記サーバ装置に送信する第2送信部、
前記第2送信部が送信した前記患者識別情報に対応する患者についての前記被共有医療情報を前記サーバ装置から取得する第3取得部、及び、
前記第3取得部が取得した前記被共有医療情報を含む表示画面を表示する表示部、
を備えることを特徴とする医療情報共有システム。
【請求項2】
前記被共有医療情報が、少なくとも患者の移動、姿勢、排泄、食事又は飲み物に課せられた条件又は制限に関する医療情報、転倒転落の危険度に関する医療情報、診療スケジュール及び看護記録の一部のいずれかを含む、
請求項1に記載の医療情報共有システム。
【請求項3】
医療機関のスタッフを識別するスタッフ識別情報を取得する第1取得部と、
前記第1取得部が取得した前記スタッフ識別情報をサーバ装置に送信する第1送信部、
前記第1送信部が送信した前記スタッフ識別情報と、予め記憶された前記医療機関のスタッフであることを識別するスタッフ識別情報とが一致すると前記サーバ装置が判定した場合、患者が有する情報媒体から前記患者を識別する患者識別情報を取得する第2取得部、
前記第2取得部が取得した前記患者識別情報を前記サーバ装置に送信する第2送信部、
前記第2送信部が送信した前記患者識別情報に対応する患者についての医療情報であって、前記医療機関のスタッフの間で共有されるべき被共有医療情報を前記サーバ装置から取得する第3取得部、及び、
前記第3取得部が取得した前記被共有医療情報を含む表示画面を表示する表示部、
を備えることを特徴とする端末装置。
【請求項4】
前記被共有医療情報が、少なくとも患者の移動、姿勢、排泄、食事又は飲み物に課せられた条件又は制限に関する医療情報、転倒転落の危険度に関する医療情報、診療スケジュール及び看護記録の一部のいずれかを含む、
請求項3に記載の端末装置。
【請求項5】
患者識別情報と、その患者識別情報に対応する患者についての医療情報であって、医療機関のスタッフ間で共有されるべき被共有医療情報とを対応付けて記憶する記憶部と、
医療機関のスタッフが使用する端末装置から医療機関のスタッフを識別するスタッフ識別情報を取得する第1取得部、
前記第1取得部が取得した前記スタッフ識別情報と、予め記憶した前記医療機関のスタッフであることを識別するスタッフ識別情報とが一致するか否かを判定する判定部、
前記判定部が一致すると判定した場合、前記端末装置から患者が有する情報媒体から取得した前記患者を識別する患者識別情報を取得する第2取得部、及び、
前記第2取得部が取得した前記患者識別情報に対応する患者についての前記被共有医療情報を含む表示画面を前記端末装置に送信する送信部、
を備えるサーバ装置。
【請求項6】
前記被共有医療情報が、少なくとも患者の移動、姿勢、排泄、食事又は飲み物に課せられた条件又は制限に関する医療情報、転倒転落の危険度に関する医療情報、診療スケジュール及び看護記録の一部のいずれかを含む、
請求項5に記載のサーバ装置。