(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002498
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】スイッチ制御装置、スイッチング電源装置、車載機器、及び車両
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
H02M3/155 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101711
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 雄平
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA20
5H730AS05
5H730BB13
5H730DD03
5H730EE13
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD31
5H730XX04
5H730XX15
5H730XX24
5H730XX35
(57)【要約】
【課題】過電流保護を素早く行うことができるスイッチ制御装置を提供する。
【解決手段】スイッチ制御装置(2A)は、第1端が入力電圧の印加端に接続可能に構成され、第2端がインダクタ(L1)の第1端に接続可能に構成された第1スイッチ(SW1)のオン/オフと、第1端が前記インダクタの第1端及び前記第1スイッチの第2端に接続可能に構成され、第2端が前記入力電圧よりも低い低電圧の印加端に接続可能に構成された第2スイッチ(SW2)のオン/オフと、を制御するように構成される。前記スイッチ制御装置は、各スイッチング周期において前記第1スイッチがオンである時間を閾値以下に制限するように構成された制限部(21)を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端が入力電圧の印加端に接続可能に構成され、第2端がインダクタの第1端に接続可能に構成された第1スイッチのオン/オフと、第1端が前記インダクタの第1端及び前記第1スイッチの第2端に接続可能に構成され、第2端が前記入力電圧よりも低い低電圧の印加端に接続可能に構成された第2スイッチのオン/オフと、を制御するように構成されたスイッチ制御装置であって、
各スイッチング周期において前記第1スイッチがオンである時間を閾値以下に制限するように構成された制限部を有する、スイッチ制御装置。
【請求項2】
前記閾値は、前記入力電圧の標準値と、前記インダクタの第2端に発生する出力電圧の目標値とに応じた値である、請求項1に記載のスイッチ制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載のスイッチ制御装置と、
前記第1スイッチと、
前記第2スイッチと、
前記インダクタと、を有する、スイッチング電源装置。
【請求項4】
前記第1スイッチ及び前記第2スイッチの少なくとも一方は、化合物半導体素子である、請求項3に記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記スイッチ制御装置は、シリコンチップを含む半導体集積回路装置である、請求項4に記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
前記入力電圧が前記入力電圧の標準値と一致し、前記インダクタの第2端に発生する出力電圧が前記出力電圧の目標値と一致するときに、前記各スイッチング周期における前記第1スイッチがオンである時間は20nS以下である、請求項5に記載のスイッチング電源装置。
【請求項7】
前記入力電圧が前記入力電圧の標準値と一致し、前記インダクタの第2端に発生する出力電圧が前記出力電圧の目標値と一致するときに、前記各スイッチング周期における前記第1スイッチがオンである時間は5nS以下である、請求項6に記載のスイッチング電源装置。
【請求項8】
前記入力電圧が前記入力電圧の標準値と一致し、前記インダクタの第2端に発生する出力電圧が前記出力電圧の目標値と一致するときに、前記各スイッチング周期における前記第1スイッチがオンである時間は3nS以下である、請求項7に記載のスイッチング電源装置。
【請求項9】
請求項3~8のいずれか一項に記載のスイッチング電源装置を有する、車載機器。
【請求項10】
請求項9に記載の車載機器を有する、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、スイッチ制御装置、スイッチング電源装置、車載機器、及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1で開示されているスイッチング電源装置に設けられている過電流保護回路は、過電流を検出し、保護動作を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-47692号公報(段落0051)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
入力電圧の標準値(例えば48V)に対する出力電圧の目標値(例えば2V)の比が小さく、且つ、スイッチング周波数(例えば2MHz)が大きい場合、入力電圧が標準値であって出力電圧が目標値であるときのスイッチ電圧のハイレベル期間(例えば20nS)よりも、過電流保護回路の検出時間(例えば80nS)の方がはるかに長くなり、過電流保護回路の保護動作が間に合わないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書中に開示されているスイッチ制御装置は、第1端が入力電圧の印加端に接続可能に構成され、第2端がインダクタの第1端に接続可能に構成された第1スイッチのオン/オフと、第1端が前記インダクタの第1端及び前記第1スイッチの第2端に接続可能に構成され、第2端が前記入力電圧よりも低い低電圧の印加端に接続可能に構成された第2スイッチのオン/オフと、を制御するように構成される。前記スイッチ制御装置は、各スイッチング周期において前記第1スイッチがオンである時間を閾値以下に制限するように構成された制限部を有する。
【0006】
本明細書中に開示されているスイッチング電源装置は、上記構成のスイッチ制御装置と、前記第1スイッチと、前記第2スイッチと、前記インダクタと、を有する。
【0007】
本明細書中に開示されている車載機器は、上記構成のスイッチ制御装置又は上記構成のスイッチング電源装置を有する。
【0008】
本明細書中に開示されている車両は、上記構成の車載機器を有する。
【発明の効果】
【0009】
本明細書中に開示されている発明によれば、過電流保護を素早く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るスイッチング電源装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、スイッチ制御装置の一構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、ドライバの一構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係るスイッチング電源装置の動作を示すタイミングチャートである。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係るスイッチング電源装置の構成を示す図である。
【
図6】
図6は、ドライバの他の構成例を示す図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係るスイッチング電源装置の動作を示すタイミングチャートである。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係るスイッチング電源装置の動作を示すタイミングチャートである。
【
図9】
図9は、車両の一構成例を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、MOSトランジスタとは、ゲートの構造が、「導電体または抵抗値が小さいポリシリコン等の半導体からなる層」、「絶縁層」、及び「P型、N型、又は真性の半導体層」の少なくとも3層からなるトランジスタをいう。つまり、MOSトランジスタのゲートの構造は、金属、酸化物、及び半導体の3層構造に限定されない。
【0012】
本明細書において基準電圧とは、理想的な状態において一定である電圧を意味しており、実際には温度変化等により僅かに変動し得る電圧である。
【0013】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るスイッチング電源装置1Aの構成を示す図である。スイッチング電源装置1Aは、入力電圧VINを出力電圧VOUTに降圧するスイッチング電源装置である。スイッチング電源装置1Aは、スイッチ制御装置2Aと、第1スイッチSW1と、第2スイッチSW2と、インダクタL1と、出力コンデンサC1と、帰還部FB1と、を有する。スイッチング電源装置1Aは、軽負荷時に電流連続モードで動作する構成であってもよく、逆流防止機能を有し軽負荷時に電流不連続モードで動作する構成であってもよい。
【0014】
スイッチ制御装置2Aは、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2のオン/オフを制御する。より詳細には、スイッチ制御装置2Aは、帰還部FB1の出力に基づき、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2のオン/オフを制御する。
【0015】
スイッチ制御装置2Aは、例えば、シリコンチップを含む半導体集積回路装置である。スイッチ制御装置2Aがシリコンチップを含む半導体集積回路装置である場合、スイッチ制御装置2の低コスト化を図ることができる。
【0016】
第1スイッチSW1は、第1端が入力電圧VINの印加端に接続可能に構成され、第2端がインダクタL1の第1端に接続可能に構成される。第1スイッチSW1は、入力電圧VINの印加端からインダクタL1に至る電流経路を導通/遮断する。第1スイッチSW1としては、例えばPチャネル型MOSトランジスタ、Nチャネル型MOSトランジスタ等を用いることができる。例えば第1スイッチSW1にNチャネル型MOSトランジスタを用いる場合、入力電圧VINより大きい電圧を生成するためにブートストラップ回路等をスイッチング電源装置1Aに設けるようにすればよい。
【0017】
第2スイッチSW2は、第1端がインダクタL1の第1端及び第1スイッチSW1の第2端に接続可能に構成され、第2端がグランド電位の印加端に接続可能に構成される。第2スイッチSW2は、グランド電位の印加端からインダクタL1に至る電流経路を導通/遮断する。第2スイッチSW2としては、例えばNチャネル型MOSトランジスタ等を用いることができる。なお、本実施形態の変形例として、第2スイッチSW2の第2端は、入力電圧VINよりも低く且つグランド電位以外の低電圧の印加端に接続可能に構成されてもよい。
【0018】
第2スイッチSW2はダイオードであってもよい。第2スイッチSW2がダイオードである場合、スイッチ制御装置2Aは、第1スイッチSW1のオン/オフを制御することで第2スイッチSW2(ダイオード)にかかるバイアス電圧を制御する。第2スイッチSW2(ダイオード)のオン/オフは第2スイッチSW2(ダイオード)にかかるバイアス電圧によって決まるので、スイッチ制御装置2Aは、第2スイッチSW2(ダイオード)のオン/オフを間接的に制御する。
【0019】
例えば、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2の少なくとも一方は、化合物半導体素子である。化合物半導体素子は、例えばGaN半導体素子であってもよく、例えばSiC半導体素子であってもよい。化合物半導体素子は、シリコン半導体素子に比べて、高耐圧であり且つ優れた高周波特性を有する。第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2の少なくとも一方が化合物半導体素子である場合、入力電圧VINに対する出力電圧VOUTの比を小さくすること、及び、スイッチング周波数を高くすることが容易になる。
【0020】
第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2のスイッチングによって、第1スイッチSW1と第2スイッチSW2の接続ノードにパルス状のスイッチ電圧VSWが生成される。インダクタL1及び出力コンデンサCOUTは、パルス状のスイッチ電圧VSWを平滑化して出力電圧VOUTを生成し、その出力電圧VOUTを出力電圧VOUTの印加端に供給する。出力電圧VOUTの印加端には負荷LD1が接続され、負荷LD1に出力電圧VOUTが供給される。
【0021】
帰還部FB1は、出力電圧VOUTに応じた帰還電圧VFBを生成して出力する。帰還部FB1としては、例えば出力電圧VOUTを抵抗分圧して帰還電圧VFBを生成する抵抗分圧回路等を用いることができる。また例えば、帰還部FB1は、出力電圧VOUTを取得し、出力電圧VOUTそのものを帰還電圧VFBとして出力する構成であってもよい。なお、帰還部FB1は、出力電圧VOUTに応じた帰還電圧VFBに加えて、インダクタL1を流れる電流に応じた帰還信号SFBも生成して出力する構成であってもよい。帰還部FB1がインダクタL1を流れる電流に応じた帰還信号SFBも生成することで、電流モード制御が可能になる。
【0022】
インダクタL1を流れる電流を検出する手法は特に限定されない。例えば、入力電圧VINの印加端と第1スイッチSW1の第1端との間に電流検出用抵抗を設け、当該電流検出用抵抗の両端電位差が帰還信号として利用されてもよい。また、例えば、第1スイッチSW1の両端電位差が帰還信号として利用されてもよい。また、例えば、第2スイッチSW2の第2端とグランド電位の印加端との間に電流検出用抵抗を設け、当該電流検出用抵抗の両端電位差が帰還信号として利用されてもよい。また、例えば、第2スイッチSW2の両端電位差が帰還信号として利用されてもよい。また、例えば、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2の接続ノードとインダクタL1の第1端との間に電流検出用抵抗を設け、当該電流検出用抵抗の両端電位差が帰還信号として利用されてもよい。
【0023】
スイッチ制御装置2Aは、制限部21を有する。制限部21は、各スイッチング周期において第1スイッチSW1がオンである時間を閾値以下に制限する。言い換えると、制限部21は、各スイッチング周期においてスイッチ電圧VSWがHIGHレベルである時間を閾値以下に制限する。したがって、何らかの原因によってスイッチング電源装置1Aに過電流が流れた場合でも、制限部21が各スイッチング周期において第1スイッチSW1がオンである時間を閾値以下に制限する。これにより、スイッチ制御装置2Aは、第1スイッチSW1がオンである時間が閾値に達した時点で即座に過電流保護を行うことができる。すなわち、スイッチ制御装置2Aは、過電流保護を素早く行うことができる。
【0024】
上記の閾値は、入力電圧VINの標準値と、出力電圧VOUTの目標値とに応じた値に設定されるとよい。
【0025】
スイッチ制御装置2Aの安定動作時において、各スイッチング周期においてスイッチ電圧VSWがHIGHレベルである時間は、出力電圧VOUTの目標値を入力電圧VINの標準値で除算したものにスイッチング周波数を乗算して得られる値になる。したがって、上記の閾値が入力電圧VINの標準値と出力電圧VOUTの目標値とに応じた値に設定されることで、通常動作であるにもかかわらず過電流保護がかかることを抑制することができる。
【0026】
そして、スイッチング電源装置1Aの制御系のトータルゲインのゼロクロス周波数が高ければ、スイッチング電源装置1Aが外乱を受けたときに制御系での応答が速くなり、スイッチ電圧VSWの変調量が大きくなる。一方、ゼロクロス周波数が低ければ、制御系での応答が遅くなり、スイッチング電源装置1Aが外乱を受けたときに制御系での応答が遅くなり、スイッチ電圧VSWの変調量が小さくなる。したがって、上記の閾値がゼロクロス周波数に応じた値に設定されることで、通常動作であるにもかかわらず外乱によって過電流保護がかかることを抑制することができる。
【0027】
図2は、スイッチ制御装置2Aの一構成例を示す図である。
図2に示す構成例のスイッチ制御装置2Aは、スロープ回路22と、加算回路23と、基準電圧源24と、エラーアンプ25と、コンパレータ26と、オシレータ27と、クランプ信号生成回路28と、ドライバ29と、を有する。制御部21は、クランプ信号生成回路28及びドライバ29によって構成される。
【0028】
スロープ回路22は、スロープ電圧VSLP0を生成して出力する。スロープ電圧VSLP0は、後述するセット信号SET及びリセット信号RESET信号に同期する。スロープ電圧VSLP0は、セット信号SETの立ち下りエッジタイミングで比例的な増加を開始し、リセット信号RESET信号の立ち上がりタイミングで比例的な増加を終了して初期値に戻り、次のセット信号SETの立ち下りエッジタイミングまで初期値を維持する。
【0029】
加算回路23は、帰還信号SFBとスロープ電圧VSLP0とを加算してスロープ電圧VSLP1を生成し、スロープ電圧VSLP1をコンパレータ26の非反転入力端子に供給する。なお、帰還部FB1が帰還信号SFBを生成しない構成である場合には、スイッチ制御装置2Aから加算回路23が取り除かれ、スロープ回路22から出力されるスロープ電圧VSLP0がコンパレータ26の非反転入力端子に供給されるようにすればよい。
【0030】
基準電圧源24は、基準電圧VREFを生成し、基準電圧VREFをエラーアンプ25の非反転入力端子に供給する。
【0031】
エラーアンプ25の反転入力端子には帰還電圧VFBが供給される。エラーアンプ25は、帰還電圧VFBと基準電圧VREFとの差に応じたエラー電圧VERRを生成し、エラー電圧VERRをコンパレータ26の反転入力端子に供給する。
【0032】
コンパレータ26は、スロープ電圧VSLP1とエラー電圧VERRとを比較して比較信号であるリセット信号RESETを生成する。
【0033】
オシレータ27は、所定周波数のクロック信号であるセット信号SETを生成する。
【0034】
クランプ信号生成回路28は、セット信号SETに同期したパルス信号であるクランプ信号VCLPを生成してドライバ29に供給する。
【0035】
ドライバ29は、セット信号SET及びリセット信号RESETに基づき、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2を相補的にオン/オフする。ドライバ29は、セット信号SETの立ち下がりエッジタイミングで第1スイッチSW1をターンオンさせ第2スイッチSW2をターンオフさせる。また、ドライバ29は、リセット信号RESETの立ち上がりエッジタイミングで第1スイッチSW1をターンオフさせ第2スイッチSW2をターンオンさせる。なお、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2のオン/オフ切り替わり時には、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2の双方がオフになるデッドタイムを設けることが好ましい。
【0036】
また、ドライバ29は、クランプ信号VCLPの立ち上がりエッジタイミングに基づき、各スイッチング周期において第1スイッチSW1がオンである時間をクランプする。
【0037】
図3は、ドライバ29の一構成例を示す図である。
図3に示す構成例のドライバ29は、ORゲート291と、ラッチ回路292と、パワーアンプ293と、を有する。
【0038】
ORゲート291は、リセット信号RESETとクランプ信号VCLPとの論理和をラッチ回路292のリセット端子に供給する。セット信号SETはラッチ回路292のセット端子に供給される。
【0039】
ラッチ回路292の出力端子から電圧VQが出力される。ラッチ回路292は、セット信号SETの立ち下がりエッジタイミングで電圧VQのレベルをLOWレベルからHIGHレベルに切り替える。また、ラッチ回路292は、リセット端子に供給される信号SETの立ち上がりエッジタイミングで電圧VQのレベルをHIGHレベルからLOWレベルに切り替える。
【0040】
パワーアンプ293は、電圧VQを電力増幅した信号を生成して第1スイッチSW1に供給する。また、パワーアンプ293は、電圧VQの反転信号を電力増幅した信号を生成して第2スイッチSW2に供給する。
【0041】
図4は、スイッチング電源装置1Aの動作を示すタイミングチャートである。各スイッチング周期においてリセット信号RESETの立ち上がりエッジタイミングよりもクランプ信号VCLPの立ち上がりエッジタイミングの方が早い場合、第1スイッチSW1がオンである時間はクランプ信号VCLPによってクランプされる。これにより、スイッチ制御装置2Aは過電流保護動作を素早く実行できる。
【0042】
入力電圧VINに対する出力電圧VOUTの比を小さくすること、及び、スイッチング周波数を高くすることによって、入力電圧VINが入力電圧VINの標準値と一致し、出力電圧VOUTが出力電圧VOUTの目標値と一致するときに、各スイッチング周期における第1スイッチSW1がオンである時間は20nS以下に設定されることが望ましく、5nS以下に設定されることがより望ましく、3nS以下に設定されることがさらに望ましい。このような設定により、素早い過電流保護が必要不可欠になり、素早い過電流保護の効果が顕著になる。
【0043】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態に係るスイッチング電源装置1Bの構成を示す図である。スイッチング電源装置1Bは、スイッチ制御装置2Aの代わりにスイッチ制御装置2Bを有し、且つ、過電流保護回路3を有する点でスイッチング電源装置1Aと異なり、それ以外の点でスイッチング電源装置1Aと同様である。
【0044】
過電流保護回路3は、第2スイッチSW2がオンであるときに第2スイッチSW2を流れる電流が過電流であるか否かを判定し、判定結果をスイッチ制御装置2Bに供給する。過電流保護回路3は、第2スイッチSW2がオンであるときに第2スイッチSW2を流れる電流が過電流であると判定した場合に、スイッチ制御装置2Bに供給する電圧V3をHIGHレベルにする。一方、過電流保護回路3は、第2スイッチSW2がオンであるときに第2スイッチSW2を流れる電流が過電流でないと判定した場合に、スイッチ制御装置2Bに供給する電圧V3をLOWレベルにする。
【0045】
スイッチ制御装置2Bとスイッチ制御装置2Aとは、ドライバ29の構成が異なっており、それ以外の点では同様である。
【0046】
図6は、スイッチ制御装置2Bに設けられるドライバ29の一構成例を示す図である。
図6に示す構成例のドライバ29は、ORゲート291と、ラッチ回路292と、パワーアンプ293と、NOTゲート294と、ANDゲート295と、を有する。
【0047】
ORゲート291は、リセット信号RESETとクランプ信号VCLPとの論理和をANDゲート295の第1入力端子に供給する。NOTゲート294は、電圧V3の反転信号をANDゲート295の第2入力端子に供給する。ANDゲート295の出力端子から出力される信号は、ラッチ回路292のリセット端子に供給される。セット信号SETはラッチ回路292のセット端子に供給される。
【0048】
ラッチ回路292の出力端子から電圧VQが出力される。ラッチ回路292は、セット信号SETの立ち下がりエッジタイミングで電圧VQのレベルをLOWレベルからHIGHレベルに切り替える。また、ラッチ回路292は、リセット端子に供給される信号SETの立ち上がりエッジタイミングで電圧VQのレベルをHIGHレベルからLOWレベルに切り替える。
【0049】
パワーアンプ293は、電圧VQを電力増幅した信号を生成して第1スイッチSW1に供給する。また、パワーアンプ293は、電圧VQの反転信号を電力増幅した信号を生成して第2スイッチSW2に供給する。
【0050】
図7は、負荷LD1がグランド電位に短絡していない状態から短絡した状態に遷移した場合のスイッチング電源装置1Bの動作を示すタイミングチャートである。各スイッチング周期においてリセット信号RESETの立ち上がりエッジタイミングよりもクランプ信号VCLPの立ち上がりエッジタイミングの方が早い場合、第1スイッチSW1がオンである時間はクランプ信号VCLPによってクランプされる。これにより、スイッチ制御装置2Aは過電流保護動作を素早く実行できる。また、過電流保護回路3でも過電流を検出できているため、過電流保護回路3によっても過電流保護動作が実行され得る。ただし、クランプ信号VCLPによる過電流保護の方が過電流保護回路3による過電流保護よりも速いため、過電流保護回路3によっても過電流保護は予備的なものとなる。
【0051】
図8は、第1スイッチSW1と第2スイッチSW2との接続ノードがグランド電位に短絡していない状態から短絡した状態に遷移した場合のスイッチング電源装置1Bの動作を示すタイミングチャートである。各スイッチング周期においてリセット信号RESETの立ち上がりエッジタイミングよりもクランプ信号VCLPの立ち上がりエッジタイミングの方が早い場合、第1スイッチSW1がオンである時間はクランプ信号VCLPによってクランプされる。これにより、スイッチ制御装置2Aは過電流保護動作を素早く実行できる。第1スイッチSW1と第2スイッチSW2との接続ノードがグランド電位に短絡した場合、過電流保護回路3では過電流を検出できないが、クランプ信号VCLPによって過電流保護が実行されるため、スイッチ制御装置2Bは過電流から適切に保護される。
【0052】
<用途>
次に、先に説明したスイッチング電源装置1の用途例について説明する。
図9は、車載機器を搭載した車両の一構成例を示す外観図である。本構成例の車両Xは、車載機器X11~X17と、これらの車載機器X11~X17に電力を供給するバッテリ(不図示)と、を搭載している。当該バッテリから出力される電圧の標準値は、例えば48Vである。
【0053】
車載機器X11は、エンジンに関連する制御(インジェクション制御、電子スロットル制御、アイドリング制御、酸素センサヒータ制御、及び、オートクルーズ制御など)を行うエンジンコントロールユニットである。
【0054】
車載機器X12は、HID[high intensity discharged lamp]やDRL[daytime running lamp]などの点消灯制御を行うランプコントロールユニットである。
【0055】
車載機器X13は、トランスミッションに関連する制御を行うトランスミッションコントロールユニットである。
【0056】
車載機器X14は、車両Xの運動に関連する制御(ABS[anti-lock brake system]制御、EPS[electric power Steering]制御、電子サスペンション制御など)を行うボディコントロールユニットである。
【0057】
車載機器X15は、ドアロックや防犯アラームなどの駆動制御を行うセキュリティコントロールユニットである。
【0058】
車載機器X16は、ワイパー、電動ドアミラー、パワーウィンドウ、電動サンルーフ、電動シート、及び、エアコンなど、標準装備品やメーカーオプション品として、工場出荷段階で車両Xに組み込まれている電子機器である。
【0059】
車載機器X17は、車載A/V[audio/visual]機器、カーナビゲーションシステム、及び、ETC[Electronic Toll Collection System]など、ユーザの任意で車両Xに装着される電子機器である。
【0060】
なお、先に説明したスイッチング電源装置1は、車載機器X11~X17のいずれにも組み込むことが可能である。また、先に説明したスイッチング電源装置1の用途としては、車両Xに搭載される電源に限定されず、例えば産業機器に搭載される電源であってもよい。産業機器に搭載される場合、入力電圧VINの標準値は、例えば600Vである。
【0061】
<その他>
なお、本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0062】
以上説明したスイッチ制御装置(2A、2B)は、第1端が入力電圧の印加端に接続可能に構成され、第2端がインダクタ(L1)の第1端に接続可能に構成された第1スイッチ(SW1)のオン/オフと、第1端が前記インダクタの第1端及び前記第1スイッチの第2端に接続可能に構成され、第2端が前記入力電圧よりも低い低電圧の印加端に接続可能に構成された第2スイッチ(SW2)のオン/オフと、を制御するように構成されたスイッチ制御装置であって、各スイッチング周期において前記第1スイッチがオンである時間を閾値以下に制限するように構成された制限部(21)を有する構成(第1の構成)である。
【0063】
上記第1の構成であるスイッチ制御装置は、過電流保護を素早く行うことができる。
【0064】
上記第1の構成であるスイッチ制御装置において、前記閾値は、前記入力電圧の標準値と、前記インダクタの第2端に発生する出力電圧の目標値とに応じた値である構成(第2の構成)であってもよい。
【0065】
上記第2の構成であるスイッチ制御装置は、通常動作であるにもかかわらず過電流保護がかかることを抑制することができる。
【0066】
以上説明したスイッチング電源装置(1A、1B)は、上記第1又は第2の構成であるスイッチ制御装置と、前記第1スイッチと、前記第2スイッチと、前記インダクタと、を有する構成(第3の構成)である。
【0067】
上記第3の構成であるスイッチング電源装置は、過電流保護を素早く行うことができる。
【0068】
上記第3の構成であるスイッチング電源装置において、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチの少なくとも一方は、化合物半導体素子である構成(第4の構成)であってもよい。
【0069】
上記第4の構成であるスイッチング電源装置では、入力電圧Nに対する出力電圧の比を小さくすること、及び、スイッチング周波数を高くすることが容易になる。
【0070】
上記第3又は上記第4の構成であるスイッチング電源装置において、前記スイッチ制御装置は、シリコンチップを含む半導体集積回路装置である構成(第5の構成)であってもよい。
【0071】
上記第5の構成であるスイッチング電源装置は、スイッチ制御装置の低コスト化を図ることができる。
【0072】
上記第3~第5いずれかの構成であるスイッチング電源装置において、前記入力電圧が前記入力電圧の標準値と一致し、前記インダクタの第2端に発生する出力電圧が前記出力電圧の目標値と一致するときに、前記各スイッチング周期における前記第1スイッチがオンである時間は20nS以下である構成(第6の構成)であってもよい。
【0073】
上記第6の構成であるスイッチング電源装置は、素早い過電流保護が必要不可欠になり、素早い過電流保護の効果が顕著になる。
【0074】
上記第6の構成であるスイッチング電源装置において、前記入力電圧が前記入力電圧の標準値と一致し、前記インダクタの第2端に発生する出力電圧が前記出力電圧の目標値と一致するときに、前記各スイッチング周期における前記第1スイッチがオンである時間は5nS以下である構成(第7の構成)であってもよい。
【0075】
上記第7の構成であるスイッチング電源装置は、素早い過電流保護が必要不可欠になり、素早い過電流保護の効果が一層顕著になる。
【0076】
上記第7の構成であるスイッチング電源装置において、前記入力電圧が前記入力電圧の標準値と一致し、前記インダクタの第2端に発生する出力電圧が前記出力電圧の目標値と一致するときに、前記各スイッチング周期における前記第1スイッチがオンである時間は3nS以下である構成(第8の構成)であってもよい。
【0077】
上記第8の構成であるスイッチング電源装置は、素早い過電流保護が必要不可欠になり、素早い過電流保護の効果がより一層顕著になる。
【0078】
以上説明した車載機器(X11~X17)は、上記第1若しくは上記第2の構成であるスイッチ制御装置、又は、上記第3~第8いずれかの構成であるスイッチング電源装置を有する構成(第9の構成)である。
【0079】
上記第9の構成である車載機器は、過電流保護を素早く行うことができる。
【0080】
以上説明した車両(X)は、上記第9の構成である車載機器を有する構成(第10の構成)である。
【0081】
上記第10の構成である車両は、過電流保護を素早く行うことができる。
【符号の説明】
【0082】
1A、1B スイッチング電源装置
2A、2B スイッチ制御装置
3 過電流保護回路
21 制限部
22 スロープ回路
23 加算回路
24 基準電圧源
25 エラーアンプ
26 コンパレータ
27 オシレータ
28 クランプ信号生成回路
29 ドライバ
291 ORゲート
292 ラッチ回路
293 パワーアンプ
294 NOTゲート
295 ANDゲート
COUT 出力コンデンサ
FB1 帰還部
L1 インダクタ
LD1 負荷
SW1 第1スイッチ
SW2 第2スイッチ
X 車両
X11~X17 車載機器