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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024981
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/30 20060101AFI20240216BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
G09F9/30 330
G09F9/30 338
H01L29/78 618B
H01L29/78 612C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128007
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】渡壁 創
(72)【発明者】
【氏名】津吹 将志
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊成
(72)【発明者】
【氏名】田丸 尊也
【テーマコード(参考)】
5C094
5F110
【Fターム(参考)】
5C094AA10
5C094AA45
5C094AA60
5C094BA03
5C094BA27
5C094BA43
5C094BA52
5C094BA75
5C094CA19
5C094CA20
5C094DA20
5C094DB01
5C094FA01
5C094FA02
5C094FB02
5C094FB12
5C094FB14
5C094HA10
5C094JA05
5C094JA08
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5F110DD02
5F110DD03
5F110DD04
5F110DD12
5F110DD13
5F110DD14
5F110DD15
5F110DD17
5F110DD25
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5F110EE06
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5F110EE14
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5F110EE42
5F110EE44
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5F110FF03
5F110FF04
5F110FF09
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5F110GG06
5F110GG13
5F110GG16
5F110GG25
5F110GG28
5F110GG29
5F110GG42
5F110GG43
5F110GG58
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5F110HJ13
5F110HL02
5F110HL03
5F110HL04
5F110HL06
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5F110HM19
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5F110NN04
5F110NN23
5F110NN24
5F110NN34
5F110NN35
5F110NN41
5F110NN73
5F110PP10
5F110QQ11
(57)【要約】
【課題】酸化物半導体を配線材料として用いた表示装置を提供すること。
【解決手段】表示装置は、複数の画素を有する表示部を含む表示パネルと、前記表示部の背面側に配置されたセンサ素子と、を含み、前記表示部は、平面視において前記センサ素子と重なる第1領域及び前記第1領域以外の第2領域を有し、前記複数の画素の各々は、多結晶構造を有する酸化物半導体で構成されたチャネル部及び導電部を含む半導体装置を有し、前記第1領域における前記複数の画素の各々は、前記導電部と同一層で構成された第1信号線によって接続され、前記第2領域における前記複数の画素の各々は、前記導電部に接続された金属層で構成された第2信号線によって接続されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素を有する表示部を含む表示パネルと、
前記表示部の背面側に配置されたセンサ素子と、
を含み、
前記表示部は、平面視において前記センサ素子と重なる第1領域及び前記第1領域以外の第2領域を有し、
前記複数の画素の各々は、多結晶構造を有する酸化物半導体で構成されたチャネル部及び導電部を含む半導体装置を有し、
前記第1領域における前記複数の画素の各々は、前記導電部と同一層で構成された第1信号線によって接続され、
前記第2領域における前記複数の画素の各々は、前記導電部に接続された金属層で構成された第2信号線によって接続されている、表示装置。
【請求項2】
前記第1信号線と前記導電部とは一体物である、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1領域における画素密度は、前記第2領域における画素密度よりも小さい、請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記複数の画素は、基板の上に配置され、
前記第1領域における前記基板の厚さは、前記第2領域における前記基板の厚さよりも薄い、請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記導電部の結晶構造は、前記チャネル部の結晶構造と同一である、請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
所定の結晶方位において、前記導電部の結晶構造の面間隔d値は、前記チャネル部の結晶構造の面間隔d値と略同一である、請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
前記チャネル部の結晶構造及び前記導電部の結晶構造は、立方晶である、請求項1に記載の表示装置。
【請求項8】
前記導電部のシート抵抗は、500Ω/sq.以下である、請求項1に記載の表示装置。
【請求項9】
前記酸化物半導体は、インジウム元素を含む少なくとも2以上の金属元素を含み、
前記少なくとも2以上の金属元素に対する前記インジウム元素の比率は、50%以上である、請求項1に記載の表示装置。
【請求項10】
前記センサ素子は、撮像素子である、請求項1に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態の一つは、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示パネルの背面側に撮像素子を配置し、表示装置に向かい合う被写体を撮像する表示装置が知られている。例えば、特許文献1に記載された表示装置は、通常時において表示領域の全体で画像表示を行い、撮像時において背面側に配置されたカメラを用いた撮像処理を行う。撮像の際、カメラは、表示パネルを透過した光を取り込んで被写体を撮像する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-89428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、従来の表示装置は、カメラに入射する外部光が表示パネルを通過するため、撮像画像の品質に表示パネルの透過率が大きく影響する。そのため、表示パネルを介して撮像を行う表示装置では、表示パネルの透過率を極力大きくすることが望ましい。しかしながら、表示パネルの表示領域には、画像表示のための画素が複数設けられており、各画素を構成する多くの素子や配線が設けられている。上述した従来の表示装置では、表示パネルの層構造を工夫して透過率を上げているが、回路設計の自由度が小さくなるという問題がある。
【0005】
本発明の一実施形態は、上記問題に鑑みてなされたものであり、簡易な構造で表示パネルの透過率を向上させた表示装置を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態における表示装置は、複数の画素を有する表示部を含む表示パネルと、前記表示部の背面側に配置されたセンサ素子と、を含み、前記表示部は、平面視において前記センサ素子と重なる第1領域及び前記第1領域以外の第2領域を有し、前記複数の画素の各々は、多結晶構造を有する酸化物半導体で構成されたチャネル部及び導電部を含む半導体装置を有し、前記第1領域における前記複数の画素の各々は、前記導電部と同一層で構成された第1信号線によって接続され、前記第2領域における前記複数の画素の各々は、前記導電部に接続された金属層で構成された第2信号線によって接続されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態の表示装置の外観を示す平面図である。
図2】本発明の一実施形態の表示装置における有機ELパネルの構成を示す平面図である。
図3】本発明の一実施形態の表示装置における画素回路の構成を示す図である。
図4】本発明の一実施形態の表示装置におけるシステム構成の概略を示す図である。
図5】本発明の一実施形態の表示装置における撮像領域の画素の画素構造を示す平面図である。
図6】本発明の一実施形態の表示装置における撮像領域の画素の画素構造を示す断面図である。
図7】本発明の一実施形態の表示装置における非撮像領域の画素の画素構造を示す平面図である。
図8】本発明の一実施形態の表示装置における非撮像領域の画素の画素構造を示す断面図である。
図9】本発明の一実施形態の表示装置における撮像領域と非撮像領域との境界付近における画素構造を示す平面図である。
図10】本発明の一実施形態に係る半導体装置の概要を示す断面図である。
図11】本発明の一実施形態に係る半導体装置の概要を示す平面図である。
図12A】酸化物半導体層の導電部に含まれるPoly-OSの結合状態を説明するための模式図である。
図12B】酸化物半導体層の導電部に含まれるPoly-OSの結合状態を説明するための模式図である。
図12C】酸化物半導体層の導電部に含まれるPoly-OSの結合状態を説明するための模式図である。
図13】酸化物半導体層の導電部のバンド構造を説明するためのバンドダイアグラムである。
図14】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すシーケンス図である。
図15】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図16】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図17】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図18】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図19】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図20】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図21】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図22】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図23】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図24】本発明の一実施形態に係る半導体装置の概要を示す断面図である。
図25】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すシーケンス図である。
図26】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図27】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図28】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図29】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すシーケンス図である。
図30】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すシーケンス図である。
図31】本発明の一実施形態の表示装置における撮像領域の画素の画素構造を示す平面図である。
図32】本発明の一実施形態の表示装置における撮像領域の近傍を示す平面図である。
図33】本発明の一実施形態の表示装置における撮像領域の近傍を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。以下の開示はあくまで一例にすぎない。当業者が、発明の主旨を保ちつつ、実施形態の構成を適宜変更することによって容易に想到し得る構成は、当然に本発明の範囲に含有される。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合がある。しかし、図示された形状はあくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
後述する各実施形態において、基板から酸化物半導体層に向かう方向を上又は上方という。逆に、酸化物半導体層から基板に向かう方向を下又は下方という。このように、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明するが、例えば、基板と酸化物半導体層との上下関係が図示と逆になるように配置されてもよい。以下の説明で、例えば基板上の酸化物半導体層という表現は、上記のように基板と酸化物半導体層との上下関係を説明しているに過ぎず、基板と酸化物半導体層との間に他の部材が配置されていてもよい。上方又は下方は、複数の層が積層された構造における積層順を意味するものであり、「トランジスタの上方の画素電極」と表現する場合、平面視において、トランジスタと画素電極とが重ならない位置関係であってもよい。一方、「トランジスタの鉛直上方の画素電極」と表現する場合は、平面視において、トランジスタと画素電極とが重なる位置関係を意味する。
【0010】
後述する各実施形態において、「表面側」とは、表示装置における表示画面を構成する側を指し、「裏面側」とは、表面側とは反対の側を指す。
【0011】
後述する各実施形態において、ある一つの膜に対してエッチング等の加工処理を施すことにより形成された複数の要素(element)は、それぞれ異なる機能又は役割を有する要素として記載されることがある。これらの複数の要素は、同一の層構造及び同一の材料で構成されたものであり、同一層で構成された要素として記載される。
【0012】
後述する各実施形態において、「表示装置」とは、電気光学層を用いて映像を表示する装置を指す。例えば、表示装置という用語は、電気光学層を含む表示パネルに対して他の光学部材(例えば、センサ素子、偏光部材、バックライト又はタッチパネル等)を装着した装置を指す。「電気光学層」には、技術的な矛盾が生じない限り、液晶層、エレクトロルミネセンス(EL)層、エレクトロクロミック(EC)層、電気泳動層が含まれ得る。後述する各実施形態において、有機EL層を含む有機EL表示装置を例示して説明するが、本発明は、上述した他の電気光学層を含む表示装置に対しても適用することができる。
【0013】
後述する各実施形態において、「αはA、B又はCを含む」、「αはA、B及びCのいずれかを含む」、「αはA、B及びCからなる群から選択される一つを含む」といった表現は、特に明示が無い限り、αはA~Cの複数の組み合わせを含む場合を排除しない。さらに、これらの表現は、αが他の要素を含む場合も排除しない。
【0014】
(第1実施形態)
[表示装置の構成]
本発明の一実施形態の表示装置100について説明する。本実施形態において、表示装置100は、表示パネルとして有機ELパネルを備えた携帯端末(例えばスマートフォン)である。ただし、この例に限らず、表示パネルは、液晶層、無機EL層、エレクトロクロミック層、又は電気泳動層を含む表示パネルであってもよい。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態の表示装置100の外観を示す平面図である。図1に示すように、本実施形態の表示装置100は、筐体110、表示画面120、及び撮像ユニット130を含む。筐体110は、後述する有機ELパネル200を駆動したり携帯端末を制御したりするための回路群を収納する。表示画面120は、画像表示を行うためのインターフェースである。表示画面120は、筐体110に収納された有機ELパネル200の表面である。有機ELパネル200の表面がカバーガラス等を介して視認されることにより表示画面120として機能する。撮像ユニット130は、後述する撮像素子132と該撮像素子132で検出した入射光を画像として結像するための制御部(図示せず)とを含む。
【0016】
撮像ユニット130は、筐体110の内部に収納され、有機ELパネル200の裏面側に配置される。すなわち、ユーザの視点を基準とした場合、撮像ユニット130は、表示画面120の裏側に配置されるため、ユーザから視認することはできない。なお、本明細書において、平面視における有機ELパネル200のうち、撮像ユニット130の撮像素子132が配置される部分に重なる領域を「撮像領域130A」と呼ぶ。本実施形態の表示装置100において、撮像領域130Aは、撮像領域130A以外の領域(すなわち、非撮像領域130B)とは画素構造が異なる。この点については、後述する。
【0017】
本実施形態では、通常の画像表示の際、撮像領域130A及び非撮像領域130Bの両方を含む表示画面120全体で画像表示を行う。他方、画像を撮像する際は、撮像領域130Aだけ画像表示を止める。具体的には、画像を撮像する際、撮像領域130Aに位置する画素の発光を停止し、撮像領域130Aを外部光が透過する状態とする。例えば、画像表示中の1又は複数のフレームに亘って撮像領域130Aの画像表示を止めることにより、外部光が撮像素子132に到達し、撮像処理を行うことが可能となる。
【0018】
なお、本実施形態では、有機ELパネル200の裏面側に撮像素子132(すなわち、カメラ)を配置する例を示したが、裏面側に配置するデバイスは、撮像素子に限定されるものではなく、センサ素子であってもよい。例えば、センサ素子は、外光を検知する光センサ等であってもよい。
【0019】
図2は、本発明の一実施形態の表示装置100における有機ELパネル200の構成を示す平面図である。ただし、説明の便宜上、図2においては、有機ELパネル200のうち回路基板200Aについて図示を行い、他の要素(例えば、偏光板等の光学部材)については図示を省略している。
【0020】
図2に示すように、有機ELパネル200の回路基板200Aの表面側には、表示回路210、走査信号線駆動回路220、及び端子部230が設けられている。なお、図1に示した撮像領域130Aは、非撮像領域130Bとは異なる画素構造を有するが、基本的な回路配置は、図2に示すとおりである。
【0021】
回路基板200Aは、透光性を有する支持基板上に、酸化物半導体を用いて形成された半導体装置を複数配置した基板である。本実施形態では、半導体装置として薄膜トランジスタを配置する例を示すが、この例に限られるものではなく、スイッチング素子として機能する素子であれば、他の半導体装置を配置してもよい。回路基板200Aは、アクティブマトリクス基板と呼ばれる場合もある。回路基板200Aを構成する支持基板としては、透光性を有する基板を用いることができる。例えば、支持基板として、ガラス基板、又は可撓性を有する樹脂基板を用いることが好ましい。
【0022】
表示回路210は、画像を表示する複数の画素212を制御するための回路である。具体的には、表示回路210は、第1方向(D1方向)に延びる複数の走査信号線214及び第2方向(D2方向)に延びる複数の映像信号線216を含み、複数の走査信号線214及び複数の映像信号線216の交点のそれぞれに対応して、薄膜トランジスタ等の半導体装置を含む画素212を有する。本実施形態において、個々の画素212は、R(赤)、G(緑)及びB(青)のいずれかの色に対応するサブ画素である。したがって、実際には、RGBの各色に対応する3つの画素212を含む1つの画素(メイン画素)を単位としてカラー表示を行う構成となっている。
【0023】
ここで、個々の画素212の発光制御を行うための画素回路300について図3を用いて説明する。説明の便宜上、2つの半導体装置(薄膜トランジスタ)を用いた基本的な構成を例示して説明するが、画素回路300の構成は、この例に限られるものではない。
【0024】
図3は、本発明の一実施形態の表示装置100における画素回路300の構成を示す図である。図3に示すように、画素回路300は駆動トランジスタ301、選択トランジスタ302、保持容量303、及び発光素子304などの素子を含む。駆動トランジスタ301及び選択トランジスタ302は、薄膜トランジスタ等の半導体装置で構成される。
【0025】
駆動トランジスタ301のソースは、アノード電源線305に接続され、駆動トランジスタ301のドレインは、発光素子304の一端(アノード)に接続されている。発光素子304の他端(カソード)は、カソード電源線306に接続されている。本実施形態において、アノード電源線305には、カソード電源線306よりも高い電源電圧が印加されている。
【0026】
選択トランジスタ302のゲートは、走査信号線214に接続され、選択トランジスタ302のソースは、映像信号線216に接続されている。選択トランジスタ302のドレインは、駆動トランジスタ301のゲートに接続されている。なお、選択トランジスタ302のソース及びドレインは、映像信号線216に印加された電圧と保持容量303に蓄積された電圧との関係によって入れ替わる場合がある。
【0027】
保持容量303は、駆動トランジスタ301のゲート及びドレイン、並びに選択トランジスタ302のドレインに接続されている。映像信号線216には、発光素子304の発光強度を決める階調信号が供給される。走査信号線214には、階調信号を書き込む画素を選択するための走査信号が供給される。
【0028】
以上説明した画素回路300が、表示装置100の各画素212に配置されている。換言すれば、図2に示した表示回路210は、画素回路300の集合で構成されているとも言える。
【0029】
図2に説明を戻す。走査信号線駆動回路220は、走査信号線214に連結され、走査信号線214に対して走査信号を伝達する。具体的には、走査信号は、画素212に含まれる選択トランジスタのゲートに与えられ、選択トランジスタのスイッチング制御に用いられる。選択トランジスタは、画素212への信号入力の可否を選択するための半導体装置である。本実施形態では、複数の画素212と同様に、走査信号線駆動回路220も薄膜トランジスタを用いて形成されているが、ICチップ等で代用することも可能である。なお、本実施形態では、回路基板200Aに2つの走査信号線駆動回路220を含んでいるが、いずれか片方だけでもよい。
【0030】
端子部230は、図示を省略しているが、走査信号線駆動回路220及び複数の映像信号線216に接続された複数の端子の集合体である。端子部230は、表示回路210の外側に配置される。外部から供給される映像信号及び制御信号は、端子部230を介して表示回路210又は走査信号線駆動回路220に供給される。
【0031】
有機ELパネル200は、端子部230を介してフレキシブルプリント回路基板240に接続される。フレキシブルプリント回路基板240は、有機ELパネル200の回路基板200Aと外部の制御回路(図示せず)とを接続するためのインターフェース基板である。本実施形態では、フレキシブルプリント回路基板240に対して表示制御回路250が実装されている。表示制御回路250は、走査信号線駆動回路220に送信する各種の制御信号及び映像信号線216に送信する映像信号を処理する信号処理回路である。本実施形態では、表示制御回路250は、ICチップの形態でフレキシブルプリント回路基板240に実装される。
【0032】
フレキシブルプリント回路基板240は、樹脂材料で構成された可撓性基板の上に配線が印刷された回路基板であるため、折り曲げることが可能である。本実施形態では、フレキシブルプリント回路基板240を一点鎖線242で折り曲げ、フレキシブルプリント回路基板240と回路基板200Aの裏面側(表示回路210などが形成されていない側)とが重なるようにすることができる。これにより、有機ELパネル200及びフレキシブルプリント回路基板240をコンパクトに筐体110の内部に収納することができる。
【0033】
図4は、本発明の一実施形態の表示装置100におけるシステム構成の概略を示す図である。前述のとおり、走査信号線駆動回路220に伝達される各種の制御信号は、表示制御回路250によって処理される。表示制御回路250は、スタートパルス等の制御信号を生成する場合もあるし、外部のシステム制御回路270から取得した制御信号に所定の信号処理を施す場合もある。また、表示制御回路250は、システム制御回路270から取得した映像信号に所定の信号処理を施すこともできる。
【0034】
システム制御回路270は、表示制御回路250、及び撮像ユニット130を統括して制御する。本実施形態では、システム制御回路270が、撮像ユニット130の動作と表示回路210の動作との同期をとっている。これにより、例えば、撮像ユニット130を使用しないときには、撮像領域130A及び非撮像領域130Bを含めた表示画面全体に画像を表示し、撮像ユニット130を使用するときには、撮像領域130Aだけ画像表示を停止することができる。具体的には、撮像ユニット130を使用するときには、撮像領域130Aに位置する画素212の発光を停止し、外部光が撮像領域130Aを透過する状態となるように表示回路210を制御することができる。
【0035】
次に、表示装置100における撮像領域130Aと非撮像領域130Bとの画素構造の違いについて説明する。まず、撮像領域130Aの画素構造について説明する。
【0036】
図5は、本発明の一実施形態の表示装置100における撮像領域130Aの画素212Aの画素構造を示す平面図である。図6は、本発明の一実施形態の表示装置100における撮像領域130Aの画素212Aの画素構造を示す断面図である。具体的には、図6は、図5に示す画素212Aの画素構造を線分A1-A2で切断した断面を示す断面図に相当する。ただし、図5及び図6では、図3で説明した選択トランジスタ302の構造に着目して説明するため、駆動トランジスタ301、保持容量303、及びアノード電源線305の図示を省略する。
【0037】
図5に示すように、画素212Aは、第1方向(D1方向)に延在する走査信号線214と第2方向(D2方向)に延在する映像信号線216Aとに囲まれた領域に配置された発光素子304を含む。映像信号線216Aによって伝達された映像信号は、選択トランジスタ302を介して画素212Aに入力される。選択トランジスタ302の端子電極407は、図示は省略するが、駆動トランジスタ301のゲートに接続される(図3参照)。
【0038】
撮像領域130Aでは、選択トランジスタ302のソース領域として機能する導電部403bが映像信号線216Aと同一層で構成されている。つまり、図5に示すように、画素212Aを構成する選択トランジスタ302は、導電部403bと映像信号線216Aとが一体物になっている。換言すれば、撮像領域130Aにおける複数の画素212Aの各々は、選択トランジスタ302の導電部403bと同一層で構成された映像信号線216Aによって接続される。
【0039】
図5に示すように、撮像領域130Aにおいて、走査信号線214は、複数の配線214aと、各配線214aを接続する接続配線214bとを含む。図5では、各配線214aは、各画素に対応して設けられており、映像信号線216Aを跨がないように配置される。接続配線214bは、コンタクト部214cを介して各配線214aと電気的に接続され、映像信号線216Aを跨いで各配線214aを相互に接続する。つまり、接続配線214bは、映像信号線216を挟んで互いに離隔する配線214aを相互に接続するブリッジ配線として機能する。
【0040】
図5において、枠線CPで囲まれた領域では、配線214aと映像信号線216Aとの位置関係を示すために接続配線214bの図示を省略している。枠線CPで囲まれた領域に示すように、各配線214aは、映像信号線216Aを挟んで向かい合うように互いに離隔している。接続配線214bは、このように離隔した各配線214aを電気的に接続する。
【0041】
後述するように、導電部403bは、酸化物半導体層のうち不純物を添加する過程で導電性が付与された部分である。そのため、映像信号線216Aとして用いる酸化物半導体層には全体的に不純物を添加する必要がある。しかしながら、酸化物半導体層のうち映像信号線216Aとして用いる部分に配線214aが重畳していると、配線214aと重畳する部分には不純物が添加されず、不純物が添加された部分に比べて抵抗が高くなる。そのため、酸化物半導体層を映像信号線216Aとして機能させることができない。
【0042】
以上のことから、本実施形態では、映像信号線216Aに重畳しないように各配線214aを配置し、映像信号線216Aとして機能する酸化物半導体層が露出した状態で酸化物半導体層に不純物を添加する。これにより、映像信号線216Aとして機能する酸化物半導体層の全体に導電性を付与することができる。本実施形態では、映像信号線216A(導電部403b)として機能する酸化物半導体層を形成した後、離間した配線214a同士を接続配線214bで電気的に連結することにより、走査信号線214を形成する。
【0043】
図6に示すように、選択トランジスタ302は、基板401の上に設けられる。基板401は、透光性を有する基板であり、例えば、ガラス基板又は樹脂基板を用いることができる。下地層402は、酸化シリコン層、窒化シリコン層、又は、酸化シリコン層及び窒化シリコン層の積層膜で構成される。下地層402は、基板401からの不純物等の侵入を防ぐ役割を有する。
【0044】
本実施形態の選択トランジスタ302は、多結晶構造を有する酸化物半導体で構成された酸化物半導体層403を含む。酸化物半導体としては、例えば、インジウム(In)を含む2以上の金属を含む金属酸化物が用いられる。通常、酸化物半導体は、透光性を有し、可視光に対して透明である。
【0045】
酸化物半導体層403は、チャネル部403a及び導電部403bを含む。チャネル部403aは、導電部403bは、選択トランジスタ302のソース領域又はドレイン領域として機能する。図5及び図6に示すように、撮像領域130Aでは、導電部403bの一方が引き延ばされて、映像信号線216Aとして機能する。なお、説明の便宜上、図5及び図6では、映像信号線216Aに接続される導電部403bをソース領域と呼び、端子電極407と接続される導電部403bをドレイン領域と呼ぶ場合がある。
【0046】
酸化物半導体層403は、酸化シリコン層で構成されたゲート絶縁層404に覆われている。酸化物半導体層403のチャネル部403aの直上には、ゲート絶縁層404を介して、金属層で構成されたゲート電極405が設けられている。ゲート電極405は、走査信号線214のうちチャネル部403aに重畳する部分に相当する。したがって、走査信号線214も金属層で構成される。
【0047】
ゲート電極405及びゲート絶縁層404の上には、酸化シリコン層、窒化シリコン層、又は、それらの積層膜で構成された層間絶縁層406が設けられる。層間絶縁層406には、コンタクトホール406aが設けられ、コンタクトホール406aを介して端子電極407と導電部403b(ドレイン領域)とが接続される。
【0048】
選択トランジスタ302の上には、樹脂材料で構成された平坦化層410が設けられる。平坦化層410の上には、発光素子304が設けられる。図6では図示を省略するが、発光素子304は、図3で説明した駆動トランジスタ301に接続される。具体的には、発光素子304のアノード電極として機能する画素電極411は、駆動トランジスタ301のドレインに接続されている。
【0049】
発光素子304は、ITO等の透明導電膜と銀等の金属層とを積層した構造を有する画素電極411を含む。画素電極411の端部は、バンク又はリブと呼ばれる樹脂層412に覆われている。樹脂層412に設けられた開口部412aは、画素電極411の表面の一部を露出させる。開口部412aによって露出された画素電極411の外形が発光素子304の発光領域を画定させる。開口部412aの内側には、発光層413及び共通電極414が設けられる。共通電極414は、発光素子304のカソード電極として機能し、複数の画素212Aに跨って配置される。図3で説明したように、共通電極414は、カソード電源線306(図示せず)に接続される。他方、画素電極411及び発光層413は、各画素212Aに対して個別に設けられる。発光層413は、画素の表示職色に応じて異なる材料が用いられる。
【0050】
以上説明したとおり、本実施形態では、撮像領域130Aに配置される画素212Aに関して、選択トランジスタ302のソース領域(導電部403b)と映像信号線216Aとが一体形成される。すなわち、導電部403bと映像信号線216とは同一層で構成され、具体的には導電性を付与した酸化物半導体で構成される。本実施形態の選択トランジスタ302は、導電部403bの抵抗が従来のものより大幅に低いため、配線としての使用が可能である。具体的には、導電部403bのシート抵抗が1000Ω/sq.以下(好ましくは、500Ω/sq.以下)であるため、映像信号線216としての使用が可能となっている。
【0051】
本実施形態の表示装置100は、撮像領域130Aにおいて酸化物半導体で構成された映像信号線216Aを用いるため、映像信号線が可視光を遮蔽しない。また、映像信号線216Aは、選択トランジスタ302のソース領域及びドレイン領域を形成すると同時に形成されるため、簡易な構造で映像信号線216Aに透光性を付与することができる。このように、本実施形態によれば、簡易な構造で表示パネル(有機ELパネル200)の透過率を向上させることができる。
【0052】
以上説明した撮像領域130Aの画素構造は、酸化物半導体の抵抗を配線として使用し得るレベルまで小さくしたことによって実現されている。具体的には、酸化物半導体を用いた半導体装置である選択トランジスタ302の導電部403bを低抵抗化することによって実現される。本実施形態で用いた半導体装置(薄膜トランジスタ)の構成及び製造方法については後述する。
【0053】
なお、酸化物半導体で構成された導電部403bを用いた配線は、金属材料で構成された配線と比較すると相対的に抵抗が高い。しかしながら、本実施形態では、有機ELパネル200の一部の領域(具体的には、撮像領域130A)について、映像信号線216Aと選択トランジスタ302の導電部403bとを同一層で構成する。このように、特定の領域に限定して導電部403bを配線として使用した場合、金属層に比べてシート抵抗が高くても、十分に配線として機能させることができる。
【0054】
次に、非撮像領域130Bの画素構造について説明する。
【0055】
図7は、本発明の一実施形態の表示装置100における非撮像領域130Bの画素212Bの画素構造を示す平面図である。図8は、本発明の一実施形態の表示装置100における非撮像領域130Bの画素212Bの画素構造を示す断面図である。具体的には、図8は、図7に示す画素212Bの画素構造を線分B1-B2で切断した断面を示す断面図に相当する。ただし、図7及び図8では、図3で説明した選択トランジスタ302の構造に着目して説明するため、駆動トランジスタ301、保持容量303、及びアノード電源線305の図示を省略する。
【0056】
図7に示すように、非撮像領域130Bの画素構造は、図5に示した撮像領域130Aの画素構造と同じである。すなわち、画素212Bは、第1方向(D1方向)に延在する走査信号線214と第2方向(D2方向)に延在する映像信号線216Bとに囲まれた領域に配置された発光素子304を含む。映像信号線216Bによって伝達された映像信号は、選択トランジスタ302を介して画素212Bに入力される。選択トランジスタ302の端子電極407は、図示は省略するが、駆動トランジスタ301のゲートに接続される。
【0057】
図5と異なる点は、非撮像領域130Bでは、選択トランジスタ302のソース領域として機能する導電部403bが、金属材料で構成された映像信号線216Bに接続されている点である。つまり、図7に示すように、非撮像領域130Bにおける複数の画素212Bの各々は、選択トランジスタ302の導電部403bに接続された金属層で構成された映像信号線216Bによって接続される。
【0058】
図8に示すように、選択トランジスタ302のソース領域として機能する導電部403bには、層間絶縁層406に設けられたコンタクトホール406bを介して映像信号線216Bが接続される。映像信号線216Bは、選択トランジスタ302のドレイン領域に接続される端子電極407と同一層で構成される。例えば、映像信号線216Bは、例えば、チタン層/アルミニウム層/チタン層の積層構造で構成することができる。
【0059】
図1に示したように、非撮像領域130Bは、撮像領域130Aよりも広い面積を有する。そのため、非撮像領域130Bにおける映像信号線216Bは、相対的に撮像領域130Aにおける映像信号線216Aよりも長くなる。したがって、信号遅延を防ぐために、非撮像領域130Bでは、金属材料を用いて映像信号線216Bを形成することが望ましい。
【0060】
図9は、本発明の一実施形態の表示装置100における撮像領域130Aと非撮像領域130Bとの境界付近における画素構造を示す平面図である。図9に示すように、撮像領域130Aと非撮像領域130Bとの境界付近では、映像信号線216Aと映像信号線216Bとが電気的に接続される。映像信号線216Aと映像信号線216Bとの接続構造は、図8で説明したソース領域として機能する導電部403bと映像信号線216Bとの接続構造と同じである。また、走査信号線214の構成は、図5に示した構造と同様である。具体的には、複数の配線214aは、映像信号線216Aを跨ぐように配置された接続配線214bによって相互に接続され、全体として走査信号線214として機能する。なお、接続配線214bは、映像信号線216Bと同一層で形成されていてもよい。
【0061】
本実施形態の表示装置100は、有機ELパネル200の回路基板200Aに設けられた映像信号線216が、酸化物半導体材料で構成された映像信号線216Aと金属材料で構成された映像信号線216Bとを含む。換言すれば、本実施形態の表示装置100における表示パネルは、酸化物半導体材料で構成された映像信号線216Aを含む領域(撮像領域130A)と金属材料で構成された映像信号線216Bを含む領域(非撮像領域130B)とを含む。
【0062】
本実施形態では、撮像領域130Aにおいて、半導体装置(駆動トランジスタ301及び選択トランジスタ302)、映像信号線216A、保持容量303、及び発光素子304を構成する導電層として酸化物半導体を用いる。そのため、簡易な構造で有機ELパネル200の透過率を向上させることができ、撮像素子132で撮像処理を行う際に、十分に外部光を取り込むことができる。他方、本実施形態の表示装置100は、非撮像領域130Bでは、映像信号線216Bとして金属材料で構成された配線を用いるため、信号遅延の影響を抑制することができる。その結果、本実施形態の表示装置100は、相対的に高い透過率を必要とする撮像領域130Aにおいて局所的に酸化物半導体で構成された映像信号線216Aを配置することにより、信号遅延を招くことなく、撮像性能の向上を実現している。
【0063】
なお、本実施形態では、非撮像領域130Bでは、映像信号線216Bとして金属材料で構成された配線を用いる例を示した。しかしながら、半導体層の導電部403bの抵抗が実用に耐えるレベルまで十分に低ければ、撮像領域130Aの映像信号線216Aとして酸化物半導体で構成された配線を用いることも可能である。
【0064】
以上説明したように、本実施形態では、酸化物半導体で構成された導電部403bの抵抗を十分に低くすることによって実現されている。そこで、本実施形態で用いた半導体装置の構成及び製造方法について以下に説明する。
【0065】
[半導体装置10の構成]
図10及び図11を用いて、本実施形態の表示装置100に用いた半導体装置10の構成について説明する。図10は、本発明の一実施形態に係る半導体装置10の概要を示す断面図である。図11は、本発明の一実施形態に係る半導体装置10の概要を示す平面図である。また、図11に示す一点鎖線で切断したときの断面が、図10に示す断面図に対応する。
【0066】
図10に示すように、半導体装置10は、基板500の上方に設けられている。半導体装置10は、下地膜520、酸化物半導体層544、ゲート絶縁層550、ゲート電極564、絶縁層570、絶縁層580、ソース電極601、及びドレイン電極603を含む。ただし、前述のとおり、撮像領域130Aに配置する選択トランジスタ302は、ソース電極601が省略される(図6参照)。
【0067】
下地膜520は、基板500の上に設けられている。酸化物半導体層544は、下地膜520の上に設けられている。酸化物半導体層544は、下地膜520に接している。酸化物半導体層544の主面のうち、下地膜520に接する面を下面という。下地膜520は、基板500から酸化物半導体層544に向かって拡散する不純物を遮蔽するバリア膜としての機能を備える。
【0068】
酸化物半導体層544は、透光性を有している。また、酸化物半導体層544は、ソース領域544S、ドレイン領域544D、及びチャネル領域544CHに区分される。チャネル領域544CHは、酸化物半導体層544のうちゲート電極564の鉛直下方の領域である。ソース領域544Sは、酸化物半導体層544のうちゲート電極564と重ならない領域であって、チャネル領域544CHよりもソース電極601に近い側の領域である。ドレイン領域544Dは、酸化物半導体層544のうちゲート電極564と重ならない領域であって、チャネル領域544CHよりもドレイン電極603に近い側の領域である。チャネル領域544CHは、図6及び図8に示したチャネル部403aに相当し、ソース領域544S及びドレイン領域544Dは、それぞれ図6及び図8に示した導電部403bに相当する。
【0069】
ゲート電極564は、金属層で構成され、酸化物半導体層544に対向している。ゲート絶縁層550は、酸化物半導体層544とゲート電極564との間に設けられている。ゲート絶縁層550は、酸化物半導体層544に接している。酸化物半導体層544の主面のうち、ゲート絶縁層550に接する面を上面という。上面と下面との間の面を側面という。絶縁層570及び絶縁層580は、それぞれゲート絶縁層550及びゲート電極564の上に設けられている。絶縁層570及び絶縁層580には、酸化物半導体層544に達するコンタクトホール571及び573が設けられている。ソース電極601は、コンタクトホール571を介してソース領域544Sに接する。ドレイン電極603は、コンタクトホール573を介してドレイン領域544Dに接する。
【0070】
酸化物半導体層544は、複数の結晶粒を含む多結晶構造を有する。詳細は後述するが、Poly-OS(Poly-crystalline Oxide Semiconductor)技術を用いることにより、多結晶構造を有する酸化物半導体層544を形成することができる。以下の説明において、多結晶構造を有する酸化物半導体そのものを指してPoly-OSと呼ぶ場合がある。
【0071】
本実施形態において、酸化物半導体層544は、インジウムを含む2以上の金属を含み、2以上の金属におけるインジウムの比率は50%以上である。インジウム元素以外の金属元素として、ガリウム(Ga)元素、亜鉛(Zn)元素、アルミニウム(Al)元素、ハフニウム(Hf)元素、イットリウム(Y)元素、ジルコニウム(Zr)元素、およびランタノイドが用いられる。ただし、この例に限らず、酸化物半導体層544は、上記以外の金属元素を含んでいてもよい。
【0072】
また、ソース領域544S及びドレイン領域544Dは、上記金属元素以外の元素を含んでいてもよい。詳細は後述するが、ソース領域544S及びドレイン領域544Dは、チャネル領域544CHよりも抵抗率が低い。このような抵抗率の低下は、酸化物半導体層544にアルゴン(Ar)、リン(P)、又はボロン(B)などの元素(以下、「不純物元素」という)を添加する過程で実現される。
【0073】
ソース領域544S及びドレイン領域544Dに含まれる不純物元素の濃度は、SIMS分析(二次イオン質量分析)で測定した場合に、1×1018cm-3以上1×1021cm-3以下であることが好ましい。ソース領域544S及びドレイン領域544Dに、1×1018cm-3以上1×1021cm-3以下で不純物元素が含まれる場合、イオン注入法又はイオンドーピング法により不純物元素が意図的に添加されたものと推定される。ただし、ソース領域544S及びドレイン領域544Dには、1×1018cm-3未満の濃度で、アルゴン(Ar)、リン(P)、又はボロン(B)以外の不純物元素が含まれていてもよい。なお、チャネル領域544CHに、不純物元素が含まれると、半導体装置10の特性に影響を及ぼす。そのため、チャネル領域544CHに含まれる不純物元素の濃度は、1×1018cm-3未満(より好ましくは1×1016cm-3以下)であることが好ましい。
【0074】
ゲート電極564は、半導体装置10のトップゲートとしての機能を備える。ゲート絶縁層550は、トップゲートに対するゲート絶縁層としての機能を備え、製造プロセスにおける熱処理によって酸素を放出する機能を備える。絶縁層570及び絶縁層580は、それぞれゲート電極564とソース電極601との間、及び、ゲート電極564とドレイン電極603との間を絶縁する。これにより、ゲート電極564とソース電極601との間、及び、ゲート電極564とドレイン電極603との間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0075】
図11に示すように、ゲート配線565は、第1方向(D1方向)に延在する。ゲート配線565の一部は、第2方向(D2方向)に向かって分岐し、酸化物半導体層544と重畳する。ゲート配線565のうち酸化物半導体層544と重畳した部分が、ゲート電極564として機能する。酸化物半導体層544とゲート電極564とが重畳する領域(すなわち、チャネル領域544CH)の第1方向(D1方向)の長さがチャネル長(L)であり、第2方向(D2方向)の長さがチャネル幅(W)である。
【0076】
[酸化物半導体層の結晶構造]
酸化物半導体層544は、Poly-OSを含む。酸化物半導体層544の上面(または酸化物半導体層544の膜厚方向)から観察したPoly-OSに含まれる結晶粒の結晶粒径は、0.1μm以上であり、好ましくは0.3μm以上であり、さらに好ましくは0.5μm以上である。結晶粒の結晶粒径は、例えば、断面SEM観察、断面TEM観察、または電子線後方散乱回折(Electron Back Scattered Diffraction:EBSD)法などを用いて取得することができる。
【0077】
Poly-OSでは、複数の結晶粒が1種類の結晶構造を有していてもよく、複数の種類の結晶構造を有していてもよい。Poly-OSの結晶構造は、電子線回折法またはXRD法などを用いて特定することができる。すなわち、酸化物半導体層544及び酸化物導電層164の結晶構造は、電子線回折法またはXRD法などを用いて特定することができる。
【0078】
酸化物半導体層544の結晶構造は、立方晶であることが好ましい。立方晶は、結晶構造の対称性が高く、酸化物半導体層544に酸素欠陥が生成された場合においても、構造緩和が起きにくく、結晶構造が安定している。上述したように、酸化物半導体層544は、インジウムを含む2以上の金属を含み、2以上の金属におけるインジウムの比率は50%以上である。インジウム元素の比率を高くすることにより、複数の結晶粒の各々の結晶構造が制御され、立方晶の結晶構造を有する酸化物半導体層544を形成することができる。
【0079】
図10に示すように、酸化物半導体層544は、チャネル領域544CHに対応するチャネル部403a(図6及び図8参照)、並びに、ソース領域544S及びドレイン領域544Dに対応する導電部403b(図6及び図8参照)を含む。酸化物半導体層544では、チャネル部403aが第1の結晶構造を有し、導電部403bが第2の結晶構造を有する。導電部403bは、チャネル部403aよりも大きな電気伝導度を有するが、第2の結晶構造は、第1の結晶構造と同一である。ここで、2つの結晶構造が同一とは、結晶系が同一であることを意味する。例えば、酸化物半導体層544の結晶構造が立方晶であるとき、チャネル部403aの第1の結晶構造および導電部403bの結晶構造は、ともに立方晶であり、同一である。第1の結晶構造および第2の結晶構造は、例えば、極微電子線回折法などを用いて特定することができる。
【0080】
また、所定の結晶方位において、第1の結晶構造の面間隔d値と、第2の結晶構造の面間隔dとは、略同一である。ここで、2つの面間隔d値が略同一とは、一方の面間隔d値が、他方の面間隔d値の0.95倍以上1.05倍以下であることをいう。あるいは、極微電子線回折法において、2つの回折パターンがほとんど一致している場合をいう。
【0081】
チャネル部403aと導電部403bとの間には、結晶粒界が存在しなくてもよい。また、1つの結晶粒の中に、チャネル部403a及び導電部403bが含まれていてもよい。換言すると、チャネル部403aから導電部403bへの変化は、連続的な結晶構造の変化であってもよい。
【0082】
図12A図12Cは、酸化物半導体層544の導電部403bに含まれるPoly-OSの結合状態を説明するための模式図である。図12A図12Cには、インジウム原子(In原子)およびIn原子と異なる金属原子(M原子)を含むPoly-OSが示されている。
【0083】
図12Aに示すPoly-OSでは、In原子および金属原子Mの各々が酸素原子(O原子)と結合している。図12Aに示すPoly-OSの結晶構造は、導電部403bでは、チャネル部403aよりも電気伝導度を大きくするために、In原子とO原子(又は金属原子MとO原子)との結合が切断され、O原子が脱離された酸素欠陥が生成されている(図12B参照)。Poly-OSは、結晶粒径の大きな結晶粒を含むため、長距離秩序が維持されやすい。そのため、酸素欠陥が生成されても、構造緩和が起きにくく、In原子および金属原子Mの位置はほとんど変化しない。図12Bに示す状態において、水素が存在すると、酸素欠陥中のIn原子のダングリングボンド及び金属原子Mのダングリングボンドが水素原子(H原子)と結合し、安定化する(図12C参照)。酸素欠陥中のH原子はドナーとして機能するため、導電部403bのキャリア濃度が増加する。
【0084】
また、図12Cに示すように、Poly-OSでは、酸素欠陥中でH原子が結合されても、In原子及び金属原子Mの位置がほとんど変化しない。そのため、導電部403bの第2の結晶構造は、酸素欠陥のないPoly-OSの結晶構造から変化しない。すなわち、導電部403bの第2の結晶構造は、チャネル部403aの第1の結晶構造と同一である。
【0085】
図13は、酸化物半導体層544の導電部403bのバンド構造を説明するためのバンドダイアグラムである。
【0086】
図13に示すように、導電部403bのPoly-OSでは、バンドギャップE内に、第1のエネルギー準位1010及び第2のエネルギー準位1020を含む。また、価電子帯上端のエネルギー準位Evの近傍及び伝導帯下端のエネルギー準位Eの近傍のそれぞれに、テイル準位1030を含む。第1のエネルギー準位1010は、バンドギャップE内に存在する深いトラップ準位であり、酸素欠陥に起因するものである。第2のエネルギー準位1020は、伝導帯の下端近傍に存在するドナー準位であり、酸素欠陥内で結合された水素原子に起因するものである。テイル準位1030は、長距離秩序の乱れに起因するものである。
【0087】
導電部403bにおけるPoly-OSは、酸素欠陥を含むものの、結晶構造を有しており、長距離秩序が維持されている。また、導電部403bにおけるPoly-OSでは、構造的な乱れを生じることなく、酸素欠陥内で水素原子を結合することができる。そのため、テイル準位1030の状態密度(Density of State:DOS)を抑制しながら、第2のエネルギー準位1020のDOSを大きくすることができる。そのため、第2のエネルギー準位1020のDOSは、伝導帯下端近傍のテイル準位1030のDOSよりも大きく、第2のエネルギー準位1020のDOSは、伝導帯下端のエネルギー準位Eを超えて広がることができる。すなわち、フェルミ準位Eは、伝導帯下端のエネルギー準位Eを超え、導電部403bにおけるPoly-OSは、金属的性質を有する。
【0088】
上述したように、導電部403bにおけるPoly-OSは、従来の酸化物半導体と異なり、金属的性質を有する。そのため、導電部403bは、酸素欠陥を生成することにより、十分に低抵抗化することができる。導電部403bのシート抵抗は、1000Ω/sq.以下であり、好ましくは500Ω/sq.以下であり、さらに好ましくは250Ω/sq.である。
【0089】
このように、本実施形態では、酸化物半導体層544のソース領域544S及びドレイン領域544D(すなわち、導電部403b)を十分に低抵抗化することが可能であるため、導電部403bを配線として使用することができる。図5及び図6を用いて説明した撮像領域130Aの画素構造は、このような酸化物半導体層544の特長を利用したものである。
【0090】
本実施形態において、基板500と酸化物半導体層544との間には遮光層が設けられてもよい。チャネル領域544CHと重畳する領域に、遮光層が設けられることにより、チャネル領域544CHへの光の照射に起因する半導体装置10の特性変動を抑制することができる。
【0091】
本実施形態では、半導体装置10として、ゲート電極564が酸化物半導体層544の上に設けられたトップゲート型トランジスタを例示するが、この構成に限られるものではない。例えば、半導体装置10として、ゲート電極564が酸化物半導体層544の下方に設けられたボトムゲート型トランジスタ、又は、ゲート電極564が酸化物半導体層544の上方及び下方の両方に設けられたデュアルゲート型トランジスタであってもよい。
【0092】
[半導体装置10の製造方法]
図14図23を用いて、本発明の一実施形態に係る半導体装置10の製造方法について説明する。図14は、本発明の一実施形態に係る半導体装置10の製造方法を示すシーケンス図である。図15図23は、本発明の一実施形態に係る半導体装置10の製造方法を示す断面図である。
【0093】
まず、図14及び図15に示すように、基板500の上に下地膜520を形成する(ステップS1001)。
【0094】
基板500として、ガラス基板、石英基板、及びサファイア基板など、透光性を有する剛性基板が用いられる。基板500が可撓性を備える必要がある場合、基板500として、ポリイミド基板、アクリル基板、シロキサン基板、フッ素樹脂基板など、樹脂を含む基板が用いられる。基板500として樹脂を含む基板が用いられる場合、基板500の耐熱性を向上させるために、上記の樹脂に不純物元素が導入されていてもよい。
【0095】
下地膜520はCVD(Chemical Vapor Deposition)法又はスパッタリング法によって成膜される。下地膜520として、一般的な絶縁性材料が用いられる。下地膜520として、例えば、酸化シリコン(SiO)、酸化窒化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、窒化酸化シリコン(SiN)、酸化アルミニウム(AlO)、酸化窒化アルミニウム(AlO)、窒化酸化アルミニウム(AlN)、及び窒化アルミニウム(AlN)などの無機絶縁材料が用いられる。
【0096】
上記のSiO及びAlOは、酸素(O)よりも少ない比率(x>y)の窒素(N)を含有するシリコン化合物及びアルミニウム化合物である。SiN及びAlNは、窒素よりも少ない比率(x>y)の酸素を含有するシリコン化合物及びアルミニウム化合物である。
【0097】
下地膜520は、単層構造又は積層構造で形成される。下地膜520を積層構造とする場合には、基板500から窒素を含む絶縁材料と酸素を含む絶縁材料との順で形成されることが好ましい。窒素を含む絶縁材料を用いることにより、例えば、基板500側から酸化物半導体層544に向かって拡散する不純物をブロックすることができる。また、酸素を含む絶縁材料を用いることにより、熱処理によって酸素を放出させることができる。酸素を含む絶縁材料が酸素を放出する熱処理の温度は、例えば、600℃以下、500℃以下、450℃以下、又は400℃以下である。つまり、酸素を含む絶縁材料は、例えば、基板500としてガラス基板が用いられた場合の半導体装置10の製造工程で行われる熱処理温度で酸素を放出する。本実施形態では、窒素を含む絶縁材料として、例えば、窒化シリコンが用いられる。酸素を含む絶縁材料として、例えば、酸化シリコンが用いられる。
【0098】
次に、図14及び図16に示すように、下地膜520の上に酸化物半導体層540を形成する(ステップS1002)。この工程について、基板500の上に酸化物半導体層540を形成する、という場合がある。
【0099】
酸化物半導体層540は、スパッタリング法又は原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)によって成膜される。酸化物半導体層540の膜厚は、例えば、10nm以上100nm以下、15nm以上70nm以下、又は20nm以上40nm以下である。
【0100】
酸化物半導体層540として、半導体の特性を有する金属酸化物を用いることができる。酸化物半導体層540として、例えば、インジウム(In)を含む2以上の金属を含む酸化物半導体が用いられる。また、2以上の金属におけるインジウムの比率は50%以上である。酸化物半導体層540として、インジウムに加えて、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ハフニウム(Hf)、イットリウム(Y)、ジルコニア(Zr)、又はランタノイドが用いられる。酸化物半導体層540として、上記以外の元素が用いられてもよい。本実施形態では、酸化物半導体層540として、インジウム(In)及びガリウム(Ga)を含む金属酸化物(IGO系酸化物半導体)が用いられる。
【0101】
後述するOSアニール(ステップS1004)によって、酸化物半導体層540を結晶化する場合、成膜後かつOSアニール前の酸化物半導体層540はアモルファス(酸化物半導体の結晶成分が少ない状態)であることが好ましい。つまり、酸化物半導体層540の成膜方法は、成膜直後の酸化物半導体層540ができるだけ結晶化しない条件であることが好ましい。例えば、スパッタリング法によって酸化物半導体層540が成膜される場合、被成膜対象物(基板500及びその上に形成された構造物)の温度を制御しながら酸化物半導体層540が成膜される。
【0102】
スパッタリング法によって被成膜対象物に対して成膜を行うと、プラズマ中で発生したイオン及びスパッタリングターゲットによって反跳した原子が被成膜対象物に衝突するため、成膜処理に伴い被成膜対象物の温度が上昇する。成膜処理中の被成膜対象物の温度が上昇すると、成膜直後の状態で酸化物半導体層540に微結晶が含まれ、その後のOSアニールによる結晶化が阻害される。上記のように被成膜対象物の温度を制御するために、例えば、被成膜対象物を冷却しながら成膜を行うことができる。例えば、被成膜対象物の被成膜面の温度(以下、「成膜温度」という。)が100℃以下、70℃以下、50℃以下、又は30℃以下になるように、被成膜対象物を当該被成膜面の反対側の面から冷却することができる。上記のように、被成膜対象物を冷却しながら酸化物半導体層540の成膜を行うことで、成膜直後の状態で結晶成分が少ない酸化物半導体層540を成膜することができる。
【0103】
次に、図14及び図17に示すように、フォトリソグラフィにより酸化物半導体層540のパターンを形成する(ステップS1003)。図示は省略するが、酸化物半導体層540の上にレジストマスクを形成し、当該レジストマスクを用いて酸化物半導体層540をエッチングする。酸化物半導体層540をエッチングする際には、ウェットエッチング及びドライエッチングのいずれが用いられてもよい。ウェットエッチングの場合、酸性のエッチャントを用いてエッチングを行うことができる。エッチャントとしては、例えば、シュウ酸又はフッ酸を用いることができる。
【0104】
酸化物半導体層540は、ステップS1004で実施するOSアニールの前にパターンに加工されることが好ましい。OSアニールによって酸化物半導体層540が結晶化すると、エッチングし難い傾向がある。また、エッチングによって酸化物半導体層540にダメージが生じても、OSアニールによってダメージを修復することができる。
【0105】
酸化物半導体層540のパターン形成の後に酸化物半導体層540に対して熱処理(OSアニール)が行われる(ステップS1004)。OSアニールでは、酸化物半導体層540が、所定の到達温度で所定の時間保持される。所定の到達温度は、300℃以上500℃以下であり、好ましくは350℃以上450℃以下である。また、到達温度での保持時間は、15分以上120分以下であり、好ましくは30分以上60分以下である。OSアニールを行うことにより、酸化物半導体層540が結晶化され、多結晶構造を有する酸化物半導体層544が形成される。
【0106】
次に、図14及び図18に示すように、酸化物半導体層544の上にゲート絶縁層550を成膜する(ステップS1005)。
【0107】
ゲート絶縁層550の成膜方法及び絶縁材料は、下地膜520の説明を参照すればよい。本実施形態において、ゲート絶縁層550の膜厚は、例えば、50nm以上150nm以下であるが、この例に限られない。
【0108】
ゲート絶縁層550として、酸素を含む絶縁材料を用いることが好ましい。また、ゲート絶縁層550として、欠陥が少ない絶縁層を用いることが好ましい。例えば、ゲート絶縁層550における酸素の組成比と、ゲート絶縁層550と同様の組成の絶縁層(以下、「他の絶縁層」という)における酸素の組成比と、を比較した場合、ゲート絶縁層550における酸素の組成比の方が当該他の絶縁層における酸素の組成比よりも当該絶縁層に対する化学量論比に近い。例えば、ゲート絶縁層550及び絶縁層580の各々に酸化シリコン(SiO)が用いられる場合、ゲート絶縁層550として用いられる酸化シリコンにおける酸素の組成比は、絶縁層580として用いられる酸化シリコンにおける酸素の組成比に比べて、酸化シリコンの化学量論比に近い。例えば、ゲート絶縁層550として、電子スピン共鳴法(ESR)で評価したときに欠陥が観測されない層が用いられてもよい。
【0109】
ゲート絶縁層550として欠陥が少ない絶縁層を形成するために、350℃以上の成膜温度でゲート絶縁層550を成膜してもよい。また、ゲート絶縁層550を成膜した後に、ゲート絶縁層550の一部に酸素を打ち込む処理を行ってもよい。本実施形態では、ゲート絶縁層550として、欠陥が少ない絶縁層を形成するために、350℃以上の成膜温度で酸化シリコン層が形成される。
【0110】
次に、図14及び図18に示すように、ゲート絶縁層550の上にアルミニウムを主成分とする金属酸化物層590を成膜する(ステップS1006)。
【0111】
金属酸化物層590は、スパッタリング法によって成膜される。金属酸化物層590の成膜によって、ゲート絶縁層550に酸素が打ち込まれる。アルミニウムを主成分とする金属酸化物層は、例えば、酸化アルミニウム(AlO)、酸化窒化アルミニウム(AlO)、窒化酸化アルミニウム(AlN)、窒化アルミニウム(AlN)などの無機絶縁層が用いられる。「アルミニウムを主成分とする金属酸化物層」とは、金属酸化物層590に含まれるアルミニウムの比率が、金属酸化物層590全体の1%以上であることを意味する。金属酸化物層590に含まれるアルミニウムの比率は、金属酸化物層590全体の5%以上70%以下、10%以上60%以下、又は30%以上50%以下であってもよい。上記の比率は、質量比であってもよく、重量比であってもよい。
【0112】
金属酸化物層590の膜厚は、例えば、5nm以上100nm以下、5nm以上50nm以下、5nm以上30nm以下、又は7nm以上15nm以下である。本実施形態では、金属酸化物層590として酸化アルミニウムが用いられる。酸化アルミニウムはガスに対する高いバリア性を備えている。本実施形態において、金属酸化物層590として用いられた酸化アルミニウムは、金属酸化物層590の成膜時にゲート絶縁層550に打ち込まれた酸素が外方へ拡散することを抑制する。
【0113】
例えば、金属酸化物層590をスパッタリング法で形成した場合、金属酸化物層590の膜中にはスパッタリングで用いられたプロセスガスが残存する。例えば、スパッタリングのプロセスガスとしてArが用いられた場合、金属酸化物層590の膜中にはArが残存することがある。残存したArは金属酸化物層590に対するSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)分析で検出することができる。
【0114】
酸化物半導体層544の上にゲート絶縁層550が成膜され、ゲート絶縁層550の上に金属酸化物層590が成膜された状態で、酸化物半導体層544へ酸素を供給するための熱処理(酸化アニール)が行われる(ステップS1007)。
【0115】
酸化物半導体層544が成膜されてから酸化物半導体層544の上にゲート絶縁層550が成膜されるまでの間の工程で、酸化物半導体層544の上面及び側面には多くの酸素欠陥が発生する。上記の酸化アニールによって、下地膜520から放出された酸素が酸化物半導体層544の上面及び側面に供給され、酸化物半導体層544の内部の酸素欠陥が修復される。
【0116】
上記の酸化アニールにおいて、ゲート絶縁層550に打ち込まれた酸素は、金属酸化物層590によってブロックされるため、大気中への放出が抑制される。したがって、ステップS1007で行われる酸化アニールによって、酸素が効率よく酸化物半導体層544に供給され、酸化物半導体層544の内部の酸素欠陥が修復される。
【0117】
次に、図14及び図19に示すように、酸化アニールの後に、金属酸化物層590はエッチング(除去)される(ステップS1008)。金属酸化物層590のエッチングには、ウェットエッチング及びドライエッチングのいずれが用いられてもよい。ウェットエッチングのエッチャントとしては、例えば希釈フッ酸(DHF)が用いられる。当該エッチングによって、ゲート絶縁層550の全面に形成された金属酸化物層590が除去される。換言すると、金属酸化物層590の除去はマスクを用いずに行われる。さらに換言すると、ステップS1008で行われるエッチングによって、少なくとも平面視において、ある1つのパターンに形成された酸化物半導体層544と重なる領域の全ての金属酸化物層590が除去される。
【0118】
次に、図14及び図20に示すように、ゲート絶縁層550の上にゲート電極564を形成する(ステップS1009)。ゲート電極564は、スパッタリング法又は原子層堆積法によって形成された金属層に対し、パターニングを行うことにより形成される。上記のように、ゲート電極564は、金属酸化物層590が除去されることで露出したゲート絶縁層550と接するように形成される。
【0119】
ゲート電極564の材料としては、一般的な金属材料が用いられる。金属材料としては、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ビスマス(Bi)、銀(Ag)、銅(Cu)、及びこれらの合金又は化合物などを用いることができる。ゲート電極564は、上記の材料が単層構造で用いられてもよいし、積層構造で用いられてもよい。
【0120】
次に、図14及び図21に示すように、ゲート電極564が形成された状態で、酸化物半導体層544のソース領域544S及びドレイン領域544Dが形成される(ステップS1010)。具体的には、イオン注入又はイオンドーピング法によって、ゲート電極564をマスクとしてゲート絶縁層550を介して酸化物半導体層544に不純物元素が注入される。ステップS1010では、ゲート電極564で覆われていない酸化物半導体層544の一部に対して、例えば、アルゴン(Ar)、リン(P)、ボロン(B)などの不純物元素が注入される。
【0121】
酸化物半導体層544のうち不純物元素が注入された領域は、酸素欠損が形成されることにより、導電層として機能し得る程度に低抵抗化される。すなわち、ステップS1010で酸化物半導体層544に不純物元素が注入された結果、ゲート電極564で覆われていない領域には、導電部403b(ソース領域544S及びドレイン領域544D)が形成される。他方、酸化物半導体層544のうち、ゲート電極564で覆われた領域には、チャネル部403a(チャネル領域544CH)が形成される。ゲート電極564がマスクとして機能するため、チャネル部403aには不純物元素は注入されない。
【0122】
なお、本実施形態では、ゲート絶縁層550を介して酸化物半導体層544に不純物元素が注入されるため、ソース領域544S及びドレイン領域544Dだけでなく、ゲート絶縁層550にもアルゴン(Ar)、リン(P)、ボロン(B)などの不純物元素が含まれている。
【0123】
次に、図14及び図22に示すように、ゲート絶縁層550及びゲート電極564の上に層間膜として絶縁層570及び580を成膜する(ステップS1011)。
【0124】
絶縁層570及び580の成膜方法及び絶縁材料は、下地膜520の説明を参照すればよい。絶縁層570の膜厚は、50nm以上500nm以下である。絶縁層580の膜厚は、50nm以上500nm以下である。本実施形態では、例えば、絶縁層570として窒化シリコン層が形成され、絶縁層580として酸化シリコン層が形成される。
【0125】
次に、図14及び図23に示すように、ゲート絶縁層550及び絶縁層570及び580にコンタクトホール571及び573を形成する(ステップS1012)。コンタクトホール571によってソース領域544Sが露出され、コンタクトホール573によってドレイン領域544Dが露出される。コンタクトホール571及び573によってソース領域544S及びドレイン領域544Dが露出したら、図10に示したソース電極601及びドレイン電極603を形成する(ステップS1013)。以上のプロセスを経て、図10に示した半導体装置10が完成する。
【0126】
ソース電極601及びドレイン電極603は、例えば、スパッタリング法により成膜される。ソース電極601及びドレイン電極603は、一般的な金属材料を用いて形成することができる。金属材料としては、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ビスマス(Bi)、銀(Ag)、銅(Cu)、及びこれらの合金又は化合物を用いることができる。ソース電極601及びドレイン電極603は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0127】
上記の製造方法で作製した半導体装置10では、チャネル領域544CHのチャネル長Lが2μm以上4μm以下、かつ、チャネル領域544CHのチャネル幅が2μm以上25μm以下の範囲において、移動度が30cm/Vs以上、35cm/Vs以上、又は40cm/Vs以上の電気特性(具体的には、電界効果移動度)を得ることができる。本実施形態における電界効果移動度とは、半導体装置10の飽和領域における電界効果移動度であって、ソース電極とドレイン電極との間の電位差(Vd)が、ゲート電極に供給される電圧(Vg)から半導体装置10の閾値電圧(Vth)を引いた値(Vg-Vth)より大きい領域における電界効果移動度の最大値を意味する。
【0128】
本実施形態の半導体装置10は、ソース領域544S及びドレイン領域544Dの抵抗値が十分に低いため、配線として用いることが可能である。酸化物半導体は、透光性を有するため、本実施形態のように酸化物半導体を配線材料として用いることが可能となれば、表示パネル(本実施形態では、有機ELパネル200)の透過率を向上させる上で非常に有利である。
【0129】
〈第2実施形態〉
本実施形態では、第1実施形態に示す半導体装置10の構成とは異なる構成を有する半導体装置10aについて説明する。
【0130】
[半導体装置10aの構成]
本実施形態に係る半導体装置10aの構成は、第1実施形態の半導体装置10と類似しているが、下地膜520と酸化物半導体層544との間に金属酸化物層530が設けられている点において、第1実施形態の半導体装置10と相違する。以下の説明において、第1実施形態と同様の構成については説明を省略し、主に第1実施形態との相違点について説明する。
【0131】
図24は、本発明の一実施形態に係る半導体装置10aの概要を示す断面図である。図24に示すように、半導体装置10aは、下地膜520、金属酸化物層530、酸化物半導体層544、ゲート絶縁層550、ゲート電極564、絶縁層570、絶縁層580、ソース電極601、及びドレイン電極603を含む。
【0132】
金属酸化物層530は、下地膜520の上に設けられている。金属酸化物層530は、下地膜520に接している。酸化物半導体層544は、金属酸化物層530の上に設けられている。酸化物半導体層544は、金属酸化物層530に接している。酸化物半導体層544の主面のうち、金属酸化物層530に接する面を下面という。金属酸化物層530の端部と酸化物半導体層544の端部とは略一致している。
【0133】
金属酸化物層530は、金属酸化物層590(図18参照)と同様にアルミニウムを主成分とする金属酸化物を含む層であり、酸素や水素などのガスを遮蔽するガスバリア膜としての機能を備える。金属酸化物層530としては、金属酸化物層590と同様の材料を用いることができるが、異なる材料を用いてもよい。
【0134】
半導体装置10aの平面形状は、図11と同様なので図示を省略するが、平面視において、金属酸化物層530の平面パターンは、酸化物半導体層544の平面パターンと略同一である。図24を参照すると、酸化物半導体層544の下面は金属酸化物層530によって覆われている。特に、本実施形態では、酸化物半導体層544の下面の全てが、金属酸化物層530によって覆われている。
【0135】
酸化物半導体層544におけるインジウムの比率が50%以上であることで、高移動度の半導体装置10aを実現することができる。一方、このような酸化物半導体層544では、酸化物半導体層544に含まれる酸素が還元されやすく、酸化物半導体層544に酸素欠陥が形成されやすい。
【0136】
半導体装置10aでは、製造プロセスの熱処理工程において、酸化物半導体層544よりも基板500側に設けられる層(例えば、下地膜520)から水素が放出され、その水素が酸化物半導体層544に到達することで、酸化物半導体層544に酸素欠陥が発生する場合がある。酸素欠陥の発生は、酸化物半導体層544のパターンサイズが大きいほど顕著である。このような酸素欠陥の発生を抑制するために、酸化物半導体層544の下面への水素の到達を抑制する必要がある。
【0137】
また、酸化物半導体層544の上面は、酸化物半導体層544が形成された後の工程(例えば、パターニング工程又はエッチング工程)の影響を受ける。一方、酸化物半導体層544の下面(酸化物半導体層544の基板500側の面)は、上記のような影響を受けない。
【0138】
したがって、酸化物半導体層544の上面に形成される酸素欠陥は、酸化物半導体層544の下面に形成される酸素欠陥より多い。つまり、酸化物半導体層544の内部の酸素欠陥は、酸化物半導体層544の膜厚方向に一様な分布で存在しているのではなく、酸化物半導体層544の膜厚方向に不均一な分布で存在している。具体的には、酸化物半導体層544の内部の酸素欠陥は、酸化物半導体層544の下面側ほど少なく、酸化物半導体層544の上面側ほど多い。
【0139】
上記のように酸素欠陥が分布した酸化物半導体層544に対して、一様に酸素供給処理を行う場合、酸化物半導体層544の上面側に形成された酸素欠陥を修復するために必要な量の酸素を供給すると、酸化物半導体層544の下面側には酸素が過剰に供給される。その結果、下面側では、過剰な酸素によって酸素欠陥とは異なる欠陥準位が形成されてしまい、信頼性試験における特性変動、又は電界効果移動度の低下などの現象が発生する。したがって、このような現象を抑制するためには、酸化物半導体層544の下面側への酸素供給を抑制しつつ、酸化物半導体層544の上面側へ酸素を供給する必要がある。
【0140】
従来の構成及び製造方法では、酸化物半導体層への酸素供給処理によって半導体装置の初期特性が改善されても、信頼性試験による特性変動が発生する場合があった。すなわち、従来の構成及び製造方法は、初期特性と信頼性試験との間にトレードオフの関係があった。しかし、本実施形態に係る構成及び製造方法によって、半導体装置10aの良好な初期特性及び信頼性試験を得ることができる。
【0141】
[半導体装置10aの製造方法]
図25図28を用いて、本発明の一実施形態に係る半導体装置10aの製造方法について説明する。図25は、本発明の一実施形態に係る半導体装置10aの製造方法を示すシーケンス図である。図26図28は、本発明の一実施形態に係る半導体装置10aの製造方法を示す断面図である。
【0142】
図25に示すように、基板500の上に下地膜520が形成される(ステップS2001)。ステップS2001については、図14及び図15に示すステップS1001の説明を参照すればよい。本実施形態では、下地膜520の材料として、窒化シリコン及び酸化シリコンを用いる。酸化シリコンは、熱処理によって酸素を放出するため、酸化物半導体層544の酸素欠陥を低減する上で好ましい。
【0143】
図25及び図26に示すように、下地膜520の上に金属酸化物層530及び酸化物半導体層540を形成する(ステップS2002)。金属酸化物層530及び酸化物半導体層540は、スパッタリング法又は原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)によって成膜される。
【0144】
金属酸化物層530の材料は、図18に示した金属酸化物層590の材料の説明を参照すればよい。金属酸化物層530の膜厚は、例えば、1nm以上100nm以下、1nm以上50nm以下、1nm以上30nm以下、又は1nm以上10nm以下である。本実施形態では、金属酸化物層530として酸化アルミニウムが用いられる。酸化アルミニウムはガスに対する高いバリア性を備えている。本実施形態において、金属酸化物層530として用いられた酸化アルミニウムは、下地膜520から放出された水素及び酸素をブロックし、放出された水素及び酸素が酸化物半導体層540に到達することを抑制する。
【0145】
酸化物半導体層540の膜厚は、例えば、10nm以上100nm以下、15nm以上70nm以下、又は20nm以上40nm以下である。本実施形態では、酸化物半導体層540として、インジウム(In)及びガリウム(Ga)を含む酸化物が用いられる。後述するステップS2004で行われるOSアニールの前の酸化物半導体層540は、アモルファスである。
【0146】
後述するOSアニールによって、酸化物半導体層540を結晶化する場合、成膜後かつOSアニール前の酸化物半導体層540はアモルファス(酸化物半導体の結晶成分が少ない状態)であることが好ましい。成膜後の酸化物半導体層540がアモルファスとなる成膜方法については、図14に示したステップS1002の説明を参照すればよい。
【0147】
次に、図25及び図27に示すように、酸化物半導体層540のパターンを形成する(ステップS2003)。図示は省略するが、酸化物半導体層540の上にレジストマスクを形成し、当該レジストマスクを用いて酸化物半導体層540をエッチングする。酸化物半導体層540のエッチングは、ウェットエッチング及びドライエッチングのいずれが用いられてもよい。ウェットエッチングは、酸性のエッチャントを用いて行うことができる。酸性のエッチャントとしては、例えば、シュウ酸又はフッ酸を用いることができる。
【0148】
次に、図25に示すように、酸化物半導体層540のパターン形成の後に酸化物半導体層540に対して熱処理(OSアニール)が行われる(ステップS2004)。本実施形態では、OSアニールによって、酸化物半導体層540が結晶化する。また、結晶化された酸化物半導体層を、酸化物半導体層544と記載する。
【0149】
次に、図25及び図28に示すように、金属酸化物層530のパターンを形成する(ステップS2005)。金属酸化物層530は、結晶化された酸化物半導体層544をマスクとしてエッチングされる。金属酸化物層530のエッチングは、ウェットエッチング及びドライエッチングのいずれが用いられてもよい。ウェットエッチングのエッチャントとしては、例えば希釈フッ酸(DHF)が用いられる。結晶化された酸化物半導体層544は、アモルファスの酸化物半導体層540と比較して、希釈フッ酸に対するエッチング耐性を有する。そのため、酸化物半導体層544をマスクとして、自己整合的に金属酸化物層530をエッチングすることができる。これにより、フォトリソグラフィ工程を省略することができる。
【0150】
図25に示すステップS2006~ステップS2014に示す工程は、図14に示すステップS1005~ステップS1013と同様であるため、以降の説明を省略する。ステップS2006~ステップS2014を経ることにより、図24に示す半導体装置10aを形成することができる。
【0151】
上記の製造方法で作製した半導体装置10aでは、チャネル領域544CHのチャネル長Lが2μm以上4μm以下、かつ、チャネル領域544CHのチャネル幅が2μm以上25μm以下の範囲において、移動度が50cm/Vs以上、55cm/Vs以上、又は60cm/Vs以上の電気特性(具体的には、電界効果移動度)を得ることができる。本実施形態における電界効果移動度の定義は、第1実施形態と同様である。
【0152】
〈第3実施形態〉
本実施形態では、第2実施形態とは異なる方法で製造された半導体装置について説明する。本実施形態の半導体装置の構造は、外観としては第2実施形態で説明した半導体装置10aと同一である。本実施形態では、第2実施形態と異なる点に着目して説明する。
【0153】
図29は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すシーケンス図である。図29に示すように、本実施形態では、図25に示したステップS2007及びステップS2009の2つの工程が省略されている。すなわち、本実施形態では、ゲート絶縁層550を形成した後、そのままの状態で酸化アニール(ステップS2008)を行う。酸化アニールにより、ゲート絶縁層550から放出された酸素が酸化物半導体層540へと供給され、酸化物半導体層540に含まれる酸素欠陥が修復される。その際における金属酸化物層530の役割は、第2実施形態と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0154】
本実施形態の製造方法で作成した半導体装置10aでは、チャネル領域544CHのチャネル長Lが2μm以上4μm以下、かつ、チャネル領域544CHのチャネル幅が2μm以上25μm以下の範囲において、移動度が30cm/Vs以上、35cm/Vs以上、又は40cm/Vs以上の電気特性(具体的には、電界効果移動度)を得ることができる。本実施形態における電界効果移動度の定義は、第1実施形態と同様である。
【0155】
〈第4実施形態〉
本実施形態では、第1実施形態とは異なる方法で製造された半導体装置について説明する。本実施形態の半導体装置の構造は、外観としては第1実施形態で説明した半導体装置10と同一である。本実施形態では、第1実施形態と異なる点に着目して説明する。
【0156】
図30は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すシーケンス図である。図30に示すように、本実施形態では、図14に示したステップS1006及びステップS1008の2つの工程が省略されている。すなわち、本実施形態では、ゲート絶縁層550を形成した後、そのままの状態で酸化アニール(ステップS1007)を行う。酸化アニールにより、ゲート絶縁層550から放出された酸素が酸化物半導体層544へと供給され、酸化物半導体層544に含まれる酸素欠陥が修復される。
【0157】
〈第5実施形態〉
第1実施形態では、撮像領域130Aにおける走査信号線214を、金属層を用いて構成する例を示したが、本実施形態では、金属層の代わりに、透明導電層を用いる例を示す。本実施形態の表示装置の構造は、外観としては第1実施形態で説明した表示装置100と同一である。本実施形態では、第1実施形態と異なる構成について説明を行い、同一の構成については同じ符号を用いて図示することにより説明を省略する。
【0158】
図31は、本発明の一実施形態の表示装置100における撮像領域130Aの画素212Aの画素構造を示す平面図である。本実施形態では、図31における走査信号線214-1(ゲート電極405aを含む。)を透明導電層により形成する。具体的には、本実施形態では、透明導電層を構成する材料として、ITO(Indium Tin Oxide)を用いる。透明導電層としては、透光性を有する他の金属酸化物を用いてもよい。
【0159】
本実施形態の表示装置100は、撮像領域130Aにおいて、走査信号線214-1を透明導電層で形成しているため、走査信号線214-1が可視光を遮蔽しない。したがって、本実施形態によれば、第1実施形態の撮像領域130Aよりもさらに表示パネルの透過率を向上させることができる。なお、走査信号線214-1の構成は、図5に示した構造と同様である。具体的には、複数の配線214-1aは、映像信号線216Aを跨ぐように配置された接続配線214-1bによって相互に接続され、全体として走査信号線214-1として機能する。接続配線214-1bは、各配線214-1aとコンタクト部214-1cを介して電気的に接続される。配線214-1aと映像信号線216Aとの位置関係は、枠線CPで囲まれた部分に示すとおりである。
【0160】
また、本実施形態では、撮像領域130Aにおける走査信号線214aを透明導電層で形成し、非撮像領域130Bにおける走査信号線は、金属層で形成する。すなわち、本実施形態では、相対的に抵抗値の高い透明導電層は、限定された領域(つまり、撮像領域130A)に用い、撮像領域130Aよりも広い非撮像領域130Bには、相対的に抵抗値の低い金属層を用いる。これにより、一部の走査信号線に透明導電層を用いても信号遅延等による表示不良を抑制することができる。ただし、この例に限られるものではなく、撮像領域130Aだけでなく非撮像領域130Bの走査信号線に透明導電層を用いてもよい。
【0161】
本実施形態では、走査信号線214aに透明導電層を用いる例を示したが、さらに、アノード電源線305(図3参照)に透明導電層を用いてもよい。この場合、さらに表示パネルの透過率を向上させることができる。
【0162】
〈第6実施形態〉
本実施形態では、撮像領域130Aと非撮像領域130Bとで画素密度が異なる例について説明する。具体的には、本実施形態では、撮像領域130Aにおける画素密度が、非撮像領域130Bにおける画素密度よりも小さい例を示す。本実施形態では、第1実施形態と異なる構成について説明を行い、同一の構成については同じ符号を用いて図示することにより説明を省略する。
【0163】
図32は、本発明の一実施形態の表示装置100における撮像領域130Aの近傍を示す平面図である。図32に示すように、本実施形態では、非撮像領域130Bに配置される画素212Bに比べて、撮像領域130Aに配置される画素212Aの画素密度を小さくする。ここで、画素密度とは、単位面積当たりに含まれる画素の個数である。つまり、撮像領域130Aでは、隣接する画素間の距離が非撮像領域130Bにおける隣接する画素間の距離よりも大きい。
【0164】
本実施形態によれば、撮像領域130Aに配置される画素間に、非撮像領域130Bよりも多くの間隙を設けることができるため、表示パネル(ここでは、有機ELパネル200)の透過率を向上させることができる。
【0165】
〈第7実施形態〉
本実施形態では、撮像領域130Aと非撮像領域130Bとで基板の厚さが異なる例について説明する。具体的には、本実施形態では、撮像領域130Aにおける基板の厚さが、非撮像領域130Bにおける基板の厚さよりも薄い例を示す。本実施形態では、第1実施形態と異なる構成について説明を行い、同一の構成については同じ符号を用いて図示することにより説明を省略する。
【0166】
図33は、本発明の一実施形態の表示装置100における撮像領域130Aの近傍を示す断面図である。図33に示すように、本実施形態では、回路基板200Aの厚さ(厳密には、図6及び図8に示した基板401の厚さ)が、撮像領域130Aにおいて局所的に薄くなっている。例えば、図33では、非撮像領域130Bにおける回路基板200Aの厚さがT2であるのに対し、撮像領域130Aにおける回路基板200Aの厚さがT1になっている。回路基板200Aの厚さを薄くするためには、例えば、図6及び図8に示した基板401の一部(撮像領域130Aに対応する部分)をウェットエッチング、ドライエッチング、又はレーザーエッチング等により薄くしておけばよい。
【0167】
本実施形態によれば、撮像領域130Aにおいて外光が表示パネル(有機ELパネル200)を通過する光路長が短くなるため、実質的に表示パネルの透過率を向上させることができる。また、本実施形態の場合、回路基板200Aの裏面側に撮像素子132を配置する際、回路基板200Aによって形成された窪みの内側に撮像素子132を配置することにより、表示装置100を薄型化することも可能である。
【0168】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0169】
上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0170】
10、10a…半導体装置、100…表示装置、110…筐体、120…表示画面、130…撮像ユニット、130A…撮像領域、130B…非撮像領域、132…撮像素子、164…酸化物導電層、200…有機ELパネル、200A…回路基板、210…表示回路、212、212A、212B…画素、214、214-1…走査信号線、214a、214-1a…配線、241b、214-1b…接続配線、214c、214-1c…コンタクト部、216、216A、216B…映像信号線、220…走査信号線駆動回路、230…端子部、240…フレキシブルプリント回路基板、250…表示制御回路、270…システム制御回路、300…画素回路、301…駆動トランジスタ、302…選択トランジスタ、303…保持容量、304…発光素子、305…アノード電源線、306…カソード電源線、401…基板、402…下地層、403…酸化物半導体層、403a…チャネル部、403b…導電部、404…ゲート絶縁層、405…ゲート電極、406…層間絶縁層、406a、406b…コンタクトホール、407…端子電極、410…平坦化層、411…画素電極、412…樹脂層、412a…開口部、413…発光層、414…共通電極、500…基板、520…下地膜、530…金属酸化物層、540、544…酸化物半導体層、544CH…チャネル領域、544D…ドレイン領域、544S…ソース領域、550…ゲート絶縁層、564…ゲート電極、565…ゲート配線、570…絶縁層、571、573…コンタクトホール、580…絶縁層、590…金属酸化物層、601…ソース電極、603…ドレイン電極、1010…第1のエネルギー準位、1020…第2のエネルギー準位、1030…テイル準位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
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