(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024982
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】液体クロマトグラフ用カラム、気体分析方法、及び気体分析システム
(51)【国際特許分類】
B01J 20/281 20060101AFI20240216BHJP
B01J 20/287 20060101ALI20240216BHJP
B01J 20/288 20060101ALI20240216BHJP
B01J 20/283 20060101ALI20240216BHJP
B01J 20/285 20060101ALI20240216BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B01J20/281 G
B01J20/281 Y
B01J20/287
B01J20/288
B01J20/281 X
B01J20/283
B01J20/285
G01N30/88 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128012
(22)【出願日】2022-08-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和3年9月22日~24日に公益社団法人日本分析化学会 第70年会 講演要旨集にて発表(要旨集発行日:令和3年9月8日)
(71)【出願人】
【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
(71)【出願人】
【識別番号】000173566
【氏名又は名称】一般財団法人 化学物質評価研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】渋川 雅美
(72)【発明者】
【氏名】中野 裕太
(57)【要約】
【課題】混合気体中の複数種の気体を簡便かつ高精度に分離して分析することが可能な液体クロマトグラフ用カラムを提供する。
【解決手段】気体を分離及び分析するために用いる、その内部に充填剤が充填された液体クロマトグラフ用カラムである。充填剤が、第1の微粒子及び第2の微粒子を含み、第1の微粒子が、親水性微粒子及び多数の細孔を有する第1の疎水性微粒子の少なくともいずれかであり、第2の微粒子が、その内部に気相が固定化された多数の細孔を有する第2の疎水性微粒子であり、第1の疎水性微粒子の細孔の平均細孔径(A(nm))と、第2の疎水性微粒子の細孔の平均細孔径(B(nm))が、下記式(1)の関係を満たす。
A-B≧10 ・・・(1)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を分離及び分析するために用いる、その内部に充填剤が充填された液体クロマトグラフ用カラムであって、
前記充填剤が、第1の微粒子及び第2の微粒子を含み、
前記第1の微粒子が、親水性微粒子及び多数の細孔を有する第1の疎水性微粒子の少なくともいずれかであり、
前記第2の微粒子が、その内部に気相が固定化された多数の細孔を有する第2の疎水性微粒子であり、
前記第1の疎水性微粒子の細孔の平均細孔径(A(nm))と、前記第2の疎水性微粒子の細孔の平均細孔径(B(nm))が、下記式(1)の関係を満たす液体クロマトグラフ用カラム。
A-B≧10 ・・・(1)
【請求項2】
前記第1の微粒子(H)と、前記第2の微粒子(P)の質量比が、H:P=80:20~20:80である請求項1に記載の液体クロマトグラフ用カラム。
【請求項3】
前記親水性微粒子が、シリカゲル、ジオール基結合シリカゲル、及びアミノ基結合シリカゲルからなる群より選択される少なくとも一種のシリカ系微粒子、又はポリアクリルアミドゲル、デキストランゲル、ポリエチレングリコールゲル、及びポリヒドロキシメタクリレートゲルからなる群より選択される少なくとも一種のポリマー系微粒子であり、
前記第1の疎水性微粒子及び前記第2の疎水性微粒子が、それぞれ、オクタデシルシリル基結合シリカゲル、オクチルシリル基結合シリカゲル、ブチルシリル基結合シリカゲル、トリアコンチルシリル基結合シリカゲル、フェニルヘキシルシリル基結合シリカゲル、及びフェニルシリル基結合シリカゲルからなる群より選択される少なくとも一種のシリカ系微粒子、又はポリスチレンゲル及びポリエチレンゲルの少なくともいずれかのポリマー系微粒子である請求項1に記載の液体クロマトグラフ用カラム。
【請求項4】
前記親水性微粒子、前記第1の疎水性微粒子、及び前記第2の疎水性微粒子が、それぞれ、その表面に化学修飾基を有するシリカ系微粒子又はポリマー系微粒子であり、
前記化学修飾基が、水素原子がシアノ基、水酸基、カルボキシ基、酸アミド基、イミド基、スルホ基、アミノ基、グリセロイド基、若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい、炭素数1~50のアルキル基又は炭素数6~50のアリール基である請求項1に記載の液体クロマトグラフ用カラム。
【請求項5】
前記第1の疎水性微粒子の細孔の平均細孔径(A(nm))が、30~200nmであり、
前記第2の疎水性微粒子の細孔の平均細孔径(B(nm))が、3~20nmである請求項1に記載の液体クロマトグラフ用カラム。
【請求項6】
前記親水性微粒子、前記第1の疎水性微粒子、及び前記第2の疎水性微粒子の平均粒子径が、それぞれ、1~50μmである請求項1に記載の液体クロマトグラフ用カラム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の液体クロマトグラフ用カラムに複数種の気体を含有する試料を移動相とともに流通させて、前記気体を分離する工程と、分離した前記気体を検出する工程と、を有する気体分析方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の液体クロマトグラフ用カラムと、
前記液体クロマトグラフ用カラムに複数種の気体を含有する試料を移動相とともに流通させる加圧機構と、
前記液体クロマトグラフ用カラムで分離した前記気体を検出する検出部と、
を備える気体分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフ用カラム、気体分析方法、及び気体分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、混合気体に含まれる複数種の気体を分離して分析するための手法として、ガスクロマトグラフィー(GC)が利用されている。ガスクロマトグラフィーは、気化しうる化合物の同定及び定量に用いられる機器分析の手法の一種であり、微量分析技術として各種の科学分野で汎用されている。
【0003】
ガスクロマトグラフィーを採用した気体成分を分析するための装置としては、例えば、ジフェニル及びジメチルシリコン等の固定相をその内壁に塗布したガスクロマトグラフ用のカラムを備える分析装置が提案されている(特許文献1)。また、モレキュラーシーブ等のゼオライトを充填したガスクロマトグラフ用のカラムを備える、希ガスと窒素ガスを含有する混合ガスを分離するためのガス分離装置が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-194456号公報
【特許文献2】特開2020-171894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2等で提案された、ガスクロマトグラフ用のカラムを採用した分析装置を使用しても、各種の無機ガスを含有する混合気体や、微量成分を含有する一般的な空気を高精度に分離して分析することは必ずしも容易ではなかった。なかでも、アルゴン(Ar)と酸素(O2)の分離は困難であり、このように分離困難な複数種の気体を含有する気体をより高精度かつ容易に分離及び分析するための技術開発が求められていた。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、混合気体中の複数種の気体を簡便かつ高精度に分離して分析することが可能な液体クロマトグラフ用カラムを提供することにある。また、本発明の課題とするところは、この液体クロマトグラフ用カラムを用いた気体分析方法及び気体分析システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明によれば、以下に示す液体クロマトグラフ用カラムが提供される。
[1]気体を分離及び分析するために用いる、その内部に充填剤が充填された液体クロマトグラフ用カラムであって、前記充填剤が、第1の微粒子及び第2の微粒子を含み、前記第1の微粒子が、親水性微粒子及び多数の細孔を有する第1の疎水性微粒子の少なくともいずれかであり、前記第2の微粒子が、その内部に気相が固定化された多数の細孔を有する第2の疎水性微粒子であり、前記第1の疎水性微粒子の細孔の平均細孔径(A(nm))と、前記第2の疎水性微粒子の細孔の平均細孔径(B(nm))が、下記式(1)の関係を満たす液体クロマトグラフ用カラム。
A-B≧10 ・・・(1)
[2]前記第1の微粒子(H)と、前記第2の微粒子(P)の質量比が、H:P=80:20~20:80である前記[1]に記載の液体クロマトグラフ用カラム。
[3]前記親水性微粒子が、シリカゲル、ジオール基結合シリカゲル、及びアミノ基結合シリカゲルからなる群より選択される少なくとも一種のシリカ系微粒子、又はポリアクリルアミドゲル、デキストランゲル、ポリエチレングリコールゲル、及びポリヒドロキシメタクリレートゲルからなる群より選択される少なくとも一種のポリマー系微粒子であり、前記第1の疎水性微粒子及び前記第2の疎水性微粒子が、それぞれ、オクタデシルシリル基結合シリカゲル、オクチルシリル基結合シリカゲル、ブチルシリル基結合シリカゲル、トリアコンチルシリル基結合シリカゲル、フェニルヘキシルシリル基結合シリカゲル、及びフェニルシリル基結合シリカゲルからなる群より選択される少なくとも一種のシリカ系微粒子、又はポリスチレンゲル及びポリエチレンゲルの少なくともいずれかのポリマー系微粒子である前記[1]又は[2]に記載の液体クロマトグラフ用カラム。
[4]前記親水性微粒子、前記第1の疎水性微粒子、及び前記第2の疎水性微粒子が、それぞれ、その表面に化学修飾基を有するシリカ系微粒子又はポリマー系微粒子であり、前記化学修飾基が、水素原子がシアノ基、水酸基、カルボキシ基、酸アミド基、イミド基、スルホ基、アミノ基、グリセロイド基、若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい、炭素数1~50のアルキル基又は炭素数6~50のアリール基である前記[1]又は[2]に記載の液体クロマトグラフ用カラム。
[5]前記第1の疎水性微粒子の細孔の平均細孔径(A(nm))が、30~200nmであり、前記第2の疎水性微粒子の細孔の平均細孔径(B(nm))が、3~20nmである前記[1]~[4]のいずれか記載の液体クロマトグラフ用カラム。
[6]前記親水性微粒子、前記第1の疎水性微粒子、及び前記第2の疎水性微粒子の平均粒子径が、それぞれ、1~50μmである前記[1]~[5]のいずれかに記載の液体クロマトグラフ用カラム。
【0008】
また、本発明によれば、以下に示す気体分析方法が提供される。
[7]前記[1]~[6]のいずれかに記載の液体クロマトグラフ用カラムに複数種の気体を含有する試料を移動相とともに流通させて、前記気体を分離する工程と、分離した前記気体を検出する工程と、を有する気体分析方法。
【0009】
さらに、本発明によれば、以下に示す気体分析システムが提供される。
[8]前記[1]~[6]のいずれかに記載の液体クロマトグラフ用カラムと、前記液体クロマトグラフ用カラムに複数種の気体を含有する試料を移動相とともに流通させる加圧機構と、前記液体クロマトグラフ用カラムで分離した前記気体を検出する検出部と、を備える気体分析システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、混合気体中の複数種の気体を簡便かつ高精度に分離して分析することが可能な液体クロマトグラフ用カラムを提供することができる。また、本発明によれば、この液体クロマトグラフ用カラムを用いた気体分析方法及び気体分析システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の気体分析システムの一実施形態を示す模式図である。
【
図2】分析例1の結果を示すクロマトグラムである。
【
図3】分析例2の結果を示すクロマトグラムである。
【
図4】分析例3の結果を示すクロマトグラムである。
【
図5】分析例4の結果を示すクロマトグラムである。
【
図6A】分析例5の結果を示すクロマトグラムである。
【
図6B】分析例5の結果を示すクロマトグラムである。
【
図6C】分析例5の結果を示すクロマトグラムである。
【
図7A】分析例6の結果を示すクロマトグラムである。
【
図7B】分析例6の結果を示すクロマトグラムである。
【
図7C】分析例6の結果を示すクロマトグラムである。
【
図8】分析例7の結果を示すクロマトグラムである。
【
図9】分析例8の結果を示すクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<液体クロマトグラフ用カラム>
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明者らは、混合気体中の複数種の気体を簡便かつ高精度に分離して分析しうる手法について種々検討した。その結果、その内部に気相が固定化された多数の細孔を有する疎水性微粒子が充填剤として充填された、いわゆる「表面気泡変調液体クロマトグラフィー(SBMLC)カラム」を用いる液体クロマトグラフィーが有効であることを見出し、本発明に至った。なお、この「表面気泡変調液体クロマトグラフィー(SBMLC)カラム」については、例えば、「Analytical Chemistry, 2015, 87, p.1180-1187」、及び「The Journal of Physical Chemistry C, 2018, 122, p.4409-4418」等において紹介されている。
【0013】
すなわち、本発明の液体クロマトグラフ用カラム(以下、単に「カラム」とも記す)は、気体を分離及び分析するために用いる、その内部に充填剤が充填された液体クロマトグラフ用のカラムである。充填剤は、第1の微粒子及び第2の微粒子を含む。第1の微粒子は、親水性微粒子及び多数の細孔を有する第1の疎水性微粒子の少なくともいずれかである。第2の微粒子は、その内部に気相が固定化された多数の細孔を有する第2の疎水性微粒子である。そして、第1の微粒子が第1の疎水性微粒子である場合には、第1の疎水性微粒子の細孔の平均細孔径(A(nm))と、第2の疎水性微粒子の細孔の平均細孔径(B(nm))が、下記式(1)の関係を満たす。以下、本発明のカラムの詳細について説明する。
A-B≧10 ・・・(1)
【0014】
(充填剤)
充填剤は、第1の微粒子及び第2の微粒子を含む。第1の微粒子は、(i)親水性微粒子;及び(ii)多数の細孔を有する第1の疎水性微粒子;の少なくともいずれかである。また、第2の微粒子は、その内部に気相が固定化された多数の細孔を有する第2の疎水性微粒子である。第1の疎水性微粒子と第2の疎水性微粒子は、いずれも、多数の細孔を有する疎水性の微粒子(多孔性微粒子)であるが、以下の点で相違する。すなわち、第1の疎水性微粒子の細孔の平均細孔径(A(nm))と、第2の疎水性微粒子の細孔の平均細孔径(B(nm))は、下記式(1)の関係を満たす。
A-B≧10 ・・・(1)
【0015】
第1の疎水性微粒子の細孔の細孔径は、第2の疎水性微粒子の細孔の細孔径に比して大きい。このように、細孔径が異なる2種類の疎水性微粒子を組み合わせるか、又は親水性微粒子と疎水性微粒子(第2の疎水性微粒子)を組み合わせることで、混合気体中の複数種の気体を高精度に分離することができる。「A-B」の値が小さすぎると、気体の分離精度が低下するとともに、分離可能な圧力域が狭くなる傾向にある。なお、第1の疎水性微粒子の細孔の平均細孔径(A(nm))と、第2の疎水性微粒子の細孔の平均細孔径(B(nm))は、下記式(2)の関係を満たすことが好ましく、下記式(3)の関係を満たすことがさらに好ましい。「A-B」の値が大きすぎると、充填剤をカラムに均一に充填することが困難になる場合がある。このため、「A-B」の値は、カラムへの充填のしやすさ等の観点から、130(nm)以下であることが好ましい。
A-B≧20 ・・・(2)
A-B≧50 ・・・(3)
【0016】
カラムに充填される、第1の微粒子(H)と、第2の微粒子(P)の質量比は、H:P=80:20~20:80であることが好ましく、H:P=70:30~50:50であることがさらに好ましく、H:P=66:34~50:50であることが特に好ましい。カラムに充填する第1の微粒子(H)と、第2の微粒子(P)の質量比を上記の範囲内とすることで、混合気体中の複数種の気体をより高精度に分離することができる。
【0017】
親水性微粒子としては、シリカ系微粒子やポリマー系微粒子を用いることができる。親水性微粒子として使用しうるシリカ系微粒子としては、シリカゲル、ジオール基結合シリカゲル、及びアミノ基結合シリカゲルからなる群より選択される少なくとも一種を挙げることができる。また、親水性微粒子として使用しうるポリマー系微粒子としては、ポリアクリルアミドゲル、デキストランゲル、ポリエチレングリコールゲル、及びポリヒドロキシメタクリレートゲルからなる群より選択される少なくとも一種を挙げることができる。
【0018】
第1の疎水性微粒子及び第2の疎水性微粒子としては、それぞれ、シリカ系微粒子やポリマー系微粒子を用いることができる。第1の疎水性微粒子や第2の疎水性微粒子として使用しうるシリカ系微粒子としては、オクタデシルシリル基結合シリカゲル、オクチルシリル基結合シリカゲル、ブチルシリル基結合シリカゲル、トリアコンチルシリル基結合シリカゲル、フェニルヘキシルシリル基結合シリカゲル、及びフェニルシリル基結合シリカゲルからなる群より選択される少なくとも一種を挙げることができる。また、第1の疎水性微粒子や第2の疎水性微粒子として使用しうるポリマー系微粒子としては、ポリスチレンゲル及びポリエチレンゲルの少なくともいずれかを挙げることができる。
【0019】
なお、親水性微粒子、第1の疎水性微粒子、及び第2の疎水性微粒子としては、それぞれ、その表面に化学修飾基を有するシリカ系微粒子又はポリマー系微粒子を用いることができる。これらの微粒子の表面に結合する化学修飾基は、水素原子がシアノ基、水酸基、カルボキシ基、酸アミド基、イミド基、スルホ基、アミノ基、グリセロイド基、若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい、炭素数1~50のアルキル基又は炭素数6~50のアリール基等を挙げることができる。
【0020】
第1の疎水性微粒子の細孔の平均細孔径(A(nm))は、30~200nmであることが好ましく、30~150nmであることがさらに好ましい。また、第2の疎水性微粒子の細孔の平均細孔径(B(nm))は、3~20nmであることが好ましく、5~13nmであることがさらに好ましい。
【0021】
親水性微粒子、第1の疎水性微粒子、及び第2の疎水性微粒子の平均粒子径(メジアン径(D50))は、液体クロマトグラフィーの条件等に応じて適宜設定すればよい。具体的には、親水性微粒子、第1の疎水性微粒子、及び第2の疎水性微粒子の平均粒子径は、それぞれ、1~50μmであればよく、5~40μmであることが好ましい。
【0022】
(カラムの製造方法)
本発明のカラムは、例えば、以下の方法によって製造することができる。まず、第1の微粒子及び第2の微粒子を含む充填剤をカラム本体(空カラム)に常法にしたがって充填する。次いで、充填剤を充填したカラムに揮発性の有機溶媒を通液し、カラム内の空隙を溶媒で満たす。有機溶媒としては、例えば、アセトン、ジクロロメタン、及びジエチルエーテル等の有機溶媒を用いることが好ましい。その後、カラム本体の両端のプラグを外してオーブン内に設置し、適度に加熱して乾燥させる。そして、カラムを分析システムに取り付け、圧力及び流量を適切に制御しながらカラムに純水を通液する。これにより、その内部に気相が固定化された多数の細孔を有する第2の疎水性微粒子を含む充填剤が充填された、本発明のカラムを得ることができる。
【0023】
<気体分析方法>
本発明の気体分析方法は、前述の液体クロマトグラフ用カラムに複数種の気体を含有する試料を移動相とともに流通させて、気体を分離する工程(分離工程)と、分離した気体を検出する工程(検出工程)と、を有する。
【0024】
(分離工程)
分離工程では、上述のカラムに複数種の気体を含有する試料(混合気体)を移動相とともに流通させる。これにより、混合気体中の複数種の気体を分離することができる。混合気体に含まれる気体としては、無機ガス、有機ガス、及び希ガス等を挙げることができ、特に限定されない。移動相としては、水を用いることができる。なお、移動相として用いる水には、必要に応じて、液体クロマトグラフィーに一般的に用いられる各種有機溶媒や塩類等が適宜含まれていてもよい。
【0025】
必要に応じて、カラムオーブン等を使用してカラムを加温してもよい。前述のカラムを分離カラムとして用いるとともに、混合気体を分析対象の試料として用いること以外、一般的な液体クロマトグラフィーの通常の手順とすればよい。
【0026】
(検出工程)
検出工程では、カラムで分離した気体を検出する。気体を検出するには、検出対象となる気体を検出することが可能な検出器を用いればよい。検出器としては、例えば、示差屈折率検出器(RID)、質量分析計(MS)、及び紫外吸光検出器(UV)等を用いることができる。
【0027】
<気体分析システム>
図1は、本発明の気体分析システムの一実施形態を示す模式図である。
図1に示す実施形態の気体分析システム100は、上述の気体分析方法に好適に用いられるシステムであり、前述の液体クロマトグラフ用カラム(カラム4)、ポンプ8等の加圧機構、及び検出器14等の検出部を備える。ポンプ8等の加圧機構は、カラム4に複数種の気体を含有する試料(混合気体)を移動相1とともに流通させる機構である。また、検出器14等の検出部は、カラム4で分離した気体を検出する部分である。
【0028】
移動相1は、ポンプ8で加圧されるとともにデガッサー6を通じて送液される。試料(混合気体)は、シリンジ10によりバッグ12から6方バルブ20内に導入され、6方バルブ20の操作によって移動相1とともにカラム4に流入する。必要に応じて、カラムオーブン18を使用してカラム4を加温してもよい。カラム4に流入した試料中の複数種の気体は分離されてカラム4から流出し、検出器14に導入されて順次同定される。その後、残余の移動相1は廃液15に貯留される。
【0029】
上記の気体分析システムを用いて実施される本発明の気体分析方法によれば、混合気体中の複数種の気体を簡便かつ高精度に分離して分析することができる。さらに、これまでの技術では分離困難であったアルゴン(Ar)と酸素(O2)を分離することもできる。
【実施例0030】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0031】
<充填剤の用意>
表1に示す種類の各種充填剤を用意した。
【0032】
【0033】
<カラムの用意>
(実施例1)
シリカ1及びODS4を1:1の質量比で混合して充填剤を調製した。内径4.6mm×長さ250mmのカラム本体に調製した充填剤を常法にしたがって充填した後、アセトンを通液し、カラム内の空隙をアセトンで満たした。次いで、カラム本体の両端のプラグを外してオーブン内に設置し、80℃に加熱して恒量に達するまで乾燥させた後、分析システムに取り付けた。圧力及び流量を制御しながら純水を通液して平衡状態としたものをカラム(SBMLCカラム)とした。
【0034】
(実施例2~5)
表2に示す種類の充填剤を用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、カラム(SBMLCカラム)を用意した。
【0035】
【0036】
<気体の分析>
(分析例1)
図1に示す構成を有する気体分析システム100に実施例1のカラム(カラム4)を取り付けた。また、無機ガス及びメタンを含有する混合気体をバッグ12に入れた。バッグ12内の混合気体20μLを系内に注入するとともに、純水を移動相として用いて、カラム温度50℃、流速3.0mL/minの条件でカラム4に混合気体を導入して、混合気体中の各気体を分離及び分析した。なお、検出器14としては、示差屈折率検出器(RID)を用いた。結果を
図2に示す。
【0037】
(分析例2)
アルゴン及び空気を含有する混合気体を用いたこと以外は、前述の分析例1と同様にして、混合気体中の各気体を分離及び分析した。結果を
図3に示す。
【0038】
(分析例3)
図1に示す構成を有する気体分析システム100に実施例2のカラム(カラム4)を取り付けた。また、無機ガス及びメタンを含有する混合気体をバッグ12に入れた。バッグ12内の混合気体20μLを系内に注入するとともに、純水を移動相として用いて、カラム温度50℃、流速2.0mL/minの条件でカラム4に混合気体を導入して、混合気体中の各気体を分離及び分析した。結果を
図4に示す。
【0039】
(分析例4)
アルゴン及び空気を含有する混合気体を用いたこと以外は、前述の分析例3と同様にして、混合気体中の各気体を分離及び分析した。結果を
図5に示す。
【0040】
(分析例5)
図1に示す構成を有する気体分析システム100に実施例3のカラム(カラム4)を取り付けた。また、空気をバッグ12に入れた。バッグ12内の空気20μLを系内に注入するとともに、純水を移動相として用いて、カラム温度50℃、流速1.5mL/min、圧力5.2~19.7MPaの条件でカラム4に空気を導入して、空気中の各気体を分離及び分析した。結果を
図6A~6Cに示す。
図6A~6Cに示すように、A-Bの値が比較的大きいカラム(A-B=113)を用いたため、広範な圧力範囲で分析可能であったことがわかる。
【0041】
(分析例6)
図1に示す構成を有する気体分析システム100に実施例4のカラム(カラム4)を取り付けた。また、空気をバッグ12に入れた。バッグ12内の空気20μLを系内に注入するとともに、純水を移動相として用いて、カラム温度50℃、流速1.5mL/min、圧力9.6~15.7MPaの条件でカラム4に空気を導入して、空気中の各気体を分離及び分析した。結果を
図7A~7Cに示す。
図7A~7Cに示すように、A-Bの値が比較的小さいカラム(A-B=18)を用いたため、A-Bの値が比較的大きいカラム(A-B=113)を用いた分析例5に比して、好適に使用可能な圧力範囲が若干狭かった。
【0042】
(分析例7)
図1に示す構成を有する気体分析システム100に実施例5のカラム(カラム4)を取り付けた。また、無機ガス及びメタンを含有する混合気体をバッグ12に入れた。バッグ12内の混合気体20μLを系内に注入するとともに、純水を移動相として用いて、カラム温度50℃、流速2.0mL/minの条件でカラム4に混合気体を導入して、混合気体中の各気体を分離及び分析した。結果を
図8に示す。
【0043】
(分析例8)
アルゴン及び空気を含有する混合気体を用いたこと以外は、前述の分析例7と同様にして、混合気体中の各気体を分離及び分析した。結果を
図9に示す。
【0044】
分析例1~8を纏めたものを表3に示す。
【0045】