(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024988
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】半導体装置、半導体装置の連結構造、半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20240216BHJP
H01L 23/48 20060101ALI20240216BHJP
H01L 23/06 20060101ALI20240216BHJP
H01L 23/28 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/48 G
H01L23/06 B
H01L23/28 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128031
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田代 匠太
(72)【発明者】
【氏名】市倉 優太
(72)【発明者】
【氏名】伊東 弘晃
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 尚威
(72)【発明者】
【氏名】田多 伸光
(72)【発明者】
【氏名】大部 利春
(72)【発明者】
【氏名】丸山 裕
(72)【発明者】
【氏名】田中 翔
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 尚隆
【テーマコード(参考)】
4M109
【Fターム(参考)】
4M109AA01
4M109DA10
4M109DB09
4M109EA02
(57)【要約】
【課題】電流集中を抑制し、同時に小型化および低コスト化を図ることができる半導体装置、半導体装置の連結構造、半導体装置の製造方法を提供することである。
【解決手段】実施形態の半導体装置は、複数の半導体素子と、ケースと、複数の導体と、を持つ。複数の導体の内、互いに並ぶ第一導体および第二導体の各々は、基部と、縦延出部と、横延出部と、を持つ。縦延出部は、基部の先端側から第一の方向に延びる。横延出部は、縦延出部の先端側から第二の方向に延びる。第一導体と第二導体とは、各々の横延出部の高さが互いに異なる。半導体装置の連結構造は、第一導体および第二導体の各横延出部を重ねて、一対の押さえ板により外部導体とともに挟み込んでボルトにより締結する。半導体装置の製造方法は、複数の導体および半導体素子を一体の小組体とし、この小組体を開口からケース内に収容する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体素子と、
前記複数の半導体素子を収容して覆うケースと、
前記ケースの内側で対応する半導体素子に一端側が接続され、前記一端側から他端側に向けて延び、前記他端側が前記ケースの外側に配置される複数の導体と、を備え、
前記ケースは、外壁の一部を開口壁とし、前記開口壁に形成された開口を通じて、前記複数の導体の他端側を前記ケースの外側に至らしめ、
前記複数の導体の内、互いに並列に並ぶ第一導体および第二導体の各々は、前記ケースの内側から外側に向けて延びる基部と、前記基部の先端側から前記開口壁の仮想外面に沿う第一の方向の一側に向けて屈曲して延びる縦延出部と、前記縦延出部の先端側から前記第一の方向と交差する第二の方向の一側に向けて屈曲し、前記開口壁から突出する側に延びて外部導体を接続可能とする横延出部と、を備え、
前記第一導体と前記第二導体とは、各々の前記横延出部の前記第一の方向の高さが互いに異なる、半導体装置。
【請求項2】
前記複数の導体は、前記ケース内の半導体素子と同一数に設けられる、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第一の方向は、前記半導体装置を設置場所に設置した際の上下方向であり、
前記半導体装置を前記設置場所に設置した状態において、
前記第一導体の横延出部は、前記第二導体の横延出部よりも上方に位置し、
前記第一導体における前記基部の先端側の屈曲位置から前記横延出部の下面までの高さは、前記第二導体における前記基部の先端側の屈曲位置から前記横延出部の上面までの高さと等しい、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記複数の導体が並ぶ導体並び方向において、前記複数の導体を含む導体群の全幅は、前記開口壁の開口の全幅内に収まる、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第一導体および前記第二導体は、前記半導体素子のエミッタ電極に接続されるものであり、
前記第一導体および前記第二導体とは別に前記エミッタ電極に接続されて電流を検知する電流検知用導体を備え、
前記第一導体および前記第二導体における前記エミッタ電極に対向する対向面は、前記半導体素子における前記エミッタ電極を配置したエミッタ面から離隔し、前記対向面と前記エミッタ面とは、前記電流検知用導体を介して接続される、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体素子は、エミッタ電極を前記第一の方向の一側に向けるとともに、コレクタ電極を前記第一の方向の他側に向けて配置され、
前記ケース内の前記第一の方向の他側には、前記半導体素子の前記コレクタ電極に接続されるコレクタ用導体を備え、
前記ケースは、前記第一の方向の他側の外壁を第二開口壁とし、前記第二開口壁に形成された第二開口を通じて、前記コレクタ用導体に外部導体を接続可能であり、
前記第一の方向から見て、前記コレクタ用導体および前記第二開口は、前記半導体素子のコレクタ電極よりも大きい、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体素子のゲート電極に一端側が接続され、前記一端側から他端側に向けて延び、前記他端側が前記ケースの外側に配置されるゲート用導体を備え、
前記ゲート用導体は、前記ケースの内側から外側に向けて延びる基部と、前記基部の先端側から前記第一の方向の一側に向けて屈曲して延びる縦延出部と、を備え、
前記第一の方向において、前記縦延出部の先端の高さは、前記第一導体および前記第二導体の各横延出部の何れの下面の高さよりも低い、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第一導体および前記第二導体は、前記半導体素子のエミッタ電極に接続されるものであり、
前記第一導体および前記第二導体とは別に前記エミッタ電極に接続されて電流を検知する電流検知用導体を備え、
前記ゲート用導体は、前記第一導体および前記第二導体がそれぞれ接続される前記半導体素子に対応して一対設けられ、
前記電流検知用導体は、一対の前記ゲート用導体の間の中央位置に、前記ケースの内側から外側に向けて延びる基部と、前記基部の先端側から第一の方向の一側に向けて屈曲して延びる縦延出部と、を備え、
前記第一の方向において、前記電流検知用導体の縦延出部の先端の高さは、各ゲート用導体の縦延出部の先端の高さと同一である、請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記ケースは、金属製のケース本体と、前記ケース本体の外側を覆う絶縁樹脂製のアウタケースと、を備えている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記ケース内は、絶縁材料の充填によって封止され、
前記半導体素子は、エミッタ電極を前記第一の方向の一側に向けるとともにコレクタ電極を前記第一の方向の他側に向けて配置され、
前記半導体素子のエミッタ電極側に、前記エミッタ電極に電流検知用導体を介して接続される前記第一導体および前記第二導体が配置され、
前記半導体素子のコレクタ電極側に、前記コレクタ電極に接続されるコレクタ用導体が配置され、
前記絶縁材料は、前記コレクタ用導体から前記半導体素子までを覆い、前記第一導体および前記第二導体は覆わない高さまで充填される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記ケースは、金属製のケース本体を備え、
前記ケース本体は、前記半導体素子のエミッタ電極に接続される前記第一導体および前記第二導体、あるいは前記第一導体および前記第二導体とは別に前記エミッタ電極に接続される電流検知用導体、が接続される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項12】
請求項1から11の何れか一項に記載の半導体装置を複数連結する半導体装置の連結構造であって、
一対の前記半導体装置が互いに前記開口壁を対向させて配置されたとき、前記第一導体および前記第二導体の各横延出部が前記第一の方向で互いに重なって形成される導体対と、
前記導体対に前記第一の方向で重なる外部導体と、
前記導体対と前記外部導体とを前記第一の方向で挟む一対の押さえ板と、
前記導体対、前記外部導体ならびに前記一対の押さえ板を前記第一の方向で貫通して締め込まれるボルトと、を備える、半導体装置の連結構造。
【請求項13】
請求項1から11の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記複数の導体および前記半導体素子を予め組み合わせて一体の小組体とし、この小組体を前記開口から前記ケース内に収容して固定する、半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記ケースは、金属製のケース本体を備え、
前記ケース本体は、前記半導体装置の設置状態における上壁と下壁とが、一体の金属板を屈曲させることで連続して形成され、
前記上壁と前記下壁とに、または前壁と後壁とに、スリッド差し込み口が形成され、
各スリッド差し込み口に別体の金属板の端部が差し込まれ、前記金属板の端部が前記スリッド差し込み口の周縁に溶接により固定される、半導体装置の製造方法。
【請求項15】
複数の半導体素子と、
前記複数の半導体素子を収容して覆うケースと、
前記ケースの内側で対応する半導体素子に一端側が接続され、前記一端側から他端側に向けて延び、前記他端側が前記ケースの外側に配置される複数の導体と、を備え、
半導体装置を設置場所に設置した状態において、
各半導体素子は、エミッタ電極を上方に向けるとともにコレクタ電極を下方に向けて配置され、
前記ケースは、上方を向く上壁を開口壁とし、前記開口壁に形成された開口を通じて、前記複数の導体の他端側を前記ケースの外側に至らしめ、
前記複数の導体の内、互いに並列に並ぶ第一導体および第二導体の各々は、前記ケースの内側から外側に向けて上方に延び、
前記第一導体および前記第二導体は、上端高さが互いに等しい、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置、半導体装置の連結構造、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大容量電力変換器向けの半導体装置において、複数のIGBT等の半導体素子を並列接続したときに流れる電流の大きさを揃える構造が知られている。
MW級の大容量向けの電力変換器では、半導体素子数が増えるため、半導体装置は大型化し、高コスト化を避けることができない。半導体素子数が増えることで、半導体素子に流れる電流はばらつき、半導体素子に電流集中することが課題となる。半導体装置では、電流集中を抑制し、大型化や高コスト化を抑制するような構成が求められる。
【0003】
例えば、低コストで短絡電流通電時の破壊防止性能に優れた大容量向けの半導体モジュールがある。しかし、ケース内の半導体素子の配列について述べられたものはない。また、ケースの端から導体が出ているような構成では、ケースから出た端子が片側に寄りやすい。このため、半導体素子が多並列になると電流集中する構造になっている。さらに、ケースから端子が出る構成では、端子を重ねることができない場合、以下の課題がある。すなわち、モジュール毎に端子幅を確保することになり、半導体装置同士の連結体が大型化する。
【0004】
ケースから端子が出る場合、接触面積を増やす目的で、以下の構成が考えられる。すなわち、ケースから出た端子と外部導体とのネジ止め数を増やして接触面積を増やし、接触抵抗を小さくすることが考えられる。しかし、大容量になるほどネジ数は増加し、コストを増加させる。大容量向け半導体装置は、半導体素子が破壊した場合を考慮すると、破壊時の電気エネルギーを受けきるケースを備えることが望ましい。しかし、屈強なケースであってもコストの増加を抑える工夫が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、電流集中を抑制し、同時に小型化および低コスト化を図ることができる半導体装置、半導体装置の連結構造、半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の半導体装置は、複数の半導体素子と、ケースと、複数の導体と、を持つ。複数の導体の内、互いに並ぶ第一導体および第二導体の各々は、基部と、縦延出部と、横延出部と、を持つ。縦延出部は、基部の先端側から第一の方向に延びる。横延出部は、縦延出部の先端側から第二の方向に延びる。第一導体と第二導体とは、各々の横延出部の高さが互いに異なる。半導体装置の連結構造は、第一導体および第二導体の各横延出部を重ねて、一対の押さえ板により外部導体とともに挟み込んでボルトにより締結する。半導体装置の製造方法は、複数の導体および半導体素子を一体の小組体とし、この小組体を開口からケース内に収容する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態の半導体装置を模式的に示す正面図。
【
図4】第1の実施形態のエミッタ用導体を模式的に示す斜視図。
【
図5】第1の実施形態の一対の半導体装置を対向配置した状態を模式的に示す斜視図。
【
図6】
図5の状態からエミッタ用導体に外部導体を接続する構成を模式的に示す斜視図。
【
図7】第1の実施形態の電流検知用導体およびゲート用導体を模式的に示す斜視図。
【
図8】(a)は第1の実施形態のケースの開口とエミッタ用導体との寸法関係を模式的に示す斜視図、(b)は(a)のB矢視図。
【
図9】第1の実施形態のエミッタ用導体の変形例を模式的に示す斜視図。
【
図10】第2の実施形態の半導体装置を模式的に示す正面図。
【
図13】第2の実施形態のケースの第一例を模式的に示す斜視図。
【
図14】第2の実施形態のケースの第二例を模式的に示す斜視図。
【
図15】第2の実施形態のケースの第三例を模式的に示す斜視図。
【
図16】(a)~(c)は第2の実施形態のケースの壁を形成する壁形成部材の例を模式的に示す斜視図。
【
図17】(a)~(c)は第2の実施形態のケースの上壁の開口の例を模式的に示す斜視図。
【
図18】第2の実施形態の半導体装置の変形例を模式的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の半導体装置、半導体装置の連結構造、半導体装置の製造方法を、図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
第1の実施形態を
図1~
図9を参照して説明する。なお、同一の又は対応する構成要素には同一の符号を付して複数回の説明を省略する場合がある。他の実施形態についても同様である。
本実施形態の半導体装置1は、半導体素子2や金属ブロックなどからなる構造物を、開口面を持つ金属ケース(ケース本体)11で覆い、さらに金属ケース11を樹脂ケース18(アウタケース)18で覆う構成である。
図1は、第1の実施形態の半導体装置1を模式的に示した正面図である。
図2は、
図1のII-II断面図、
図3は、
図1のIII-III断面図である。
【0011】
本実施形態の半導体装置1は、MW級等の大容量電力変換器向けの半導体装置である。半導体装置1は、複数のIGBT等の半導体素子2を並列に配置して電流量を確保している。例えば、半導体装置1は、設備内の水平な床面G(設置場所G)に設置される。半導体装置1は、ケース10の下面を床面Gと平行にして設置される。図中矢印Zは、半導体装置1を設置場所Gに設置した際の上下方向(鉛直方向、第一の方向)を示す。矢印Z方向は、設置場所Gの法線方向であり、設置場所Gが傾斜していれば矢印Z方向も傾斜する。以下の説明における上下、前後、左右の向きは、特に記載が無ければ、半導体装置1を設置場所Gに設置した状態の向きと同一とする。図中矢印Yは前後方向、図中矢印Xは左右方向をそれぞれ示す。
【0012】
半導体装置1は、複数(一対)の半導体素子2と、複数の半導体素子2を収容して覆うケース10と、ケース10の内側で対応する半導体素子2の表面のエミッタ電極3に一端側が接続され、一端側から他端側に向けて延び、他端側がケース10の外側に配置される複数(一対)のエミッタ用導体20と、エミッタ用導体20とは別にエミッタ電極3に接続されて電流を検知する単一の電流検知用導体30と、ケース10の内側で対応する半導体素子2のゲート電極5に一端側が接続され、一端側から他端側に向けて延び、他端側がケース10の外側に配置される複数(一対)のゲート用導体35と、各半導体素子2の裏面のコレクタ電極4に接続される単一のコレクタ用導体40と、を備えている。
【0013】
複数のエミッタ用導体20の内、左右方向で互いに並列に並ぶ一対のエミッタ用導体20を、第一導体20aおよび第二導体20bということがある。第一導体20aは、第二導体20bよりも上下方向の高さが高い。
複数の半導体素子2の内、左右方向で並ぶ一対の半導体素子2を、第一半導体素子2aおよび第二半導体素子2bということがある。第一半導体素子2aには第一導体20aが接続され、第二半導体素子2bには第二導体20bが接続される。
【0014】
各半導体素子2は、エミッタ電極3およびゲート電極5を上方に向けるとともに、コレクタ電極4を下方に向けて水平に配置されている。
各半導体素子2のエミッタ電極3側には、エミッタ用導体20、電流検知用導体30およびゲート用導体35が配置されている。エミッタ用導体20およびゲート用導体35は、それぞれケース10内の半導体素子2と同一数に設けられている。各半導体素子2のコレクタ電極4側には、コレクタ用導体40が配置されている。
【0015】
ケース10は、直方体状の外形を有し、上下壁12,13を水平にして配置されている。ケース10は、前後壁14,15を左右方向に沿わせ、左右側壁16,17を前後方向に沿わせて配置されている。ケース10は、金属ケース11および樹脂ケース18で構成されている。金属ケース11の上下壁12,13、前後壁14,15および左右側壁16,17がケース10の上下壁12,13、前後壁14,15および左右側壁16,17に相当し、ケース10の外壁を構成する。
【0016】
ケース10の内部は、エポキシ等の絶縁材料の充填によって封止されてもよい。例えば、絶縁材料は、少なくとも上下方向でコレクタ用導体40の途中(下面40aよりも上方)から半導体素子2の上方(電流検知用導体30の連結部31の途中)までの範囲H1に充填されるとよい。この範囲H1は最小限の充填範囲を示し、材料費を抑えながらコレクタおよびエミッタ間を絶縁可能である。
コレクタ用導体40の下面40aと、各エミッタ用導体20の少なくとも縦延出部22の先端側(上部)とは、絶縁材料で被覆されずにケース10外部に露出し、外部導体29(
図6参照)を接続可能とする。絶縁材料は、例えばPPS(polyphenylenes ulfide)などの樹脂を使用することができる。実施形態では、エミッタ用導体20(第一導体20aおよび第二導体20b)を絶縁材料で覆わない構成とすることで、材料費を抑えてコストダウンを図ることができる。
【0017】
ケース10は、外壁の一部(実施形態では前壁14)を開口壁とし、開口壁に形成された開口14aを通じて、複数のエミッタ用導体20の他端側をケース10の外側に至らしめる。
ケース10は、下壁13を第二開口壁とし、第二開口壁に形成された第二開口13aを通じて、コレクタ用導体40の下面40aをケース10の外側に露出させる。コレクタ用導体40は、ケース10の内側に配置されるが、第二開口13aを通じて、不図示の外部導体を接続可能である。
【0018】
コレクタ電極4とコレクタ用導体40とは、例えばはんだにより接続される。エミッタ電極3と電流検知用導体30とは、例えばはんだにより接続される。ゲート電極5とゲート用導体35とは、例えばボンディングワイヤ38を介して接続される。ボンディングワイヤ38は、例えばはんだによりゲート電極5およびゲート用導体35の各々に接続される。電流検知用導体30とエミッタ用導体20とは、例えばはんだにより接続される。各導体は、ともに銅ブロックで構成されている。各半導体素子2は、互いに同様の構成とする。
【0019】
図4は、エミッタ用導体20の外観を示す。
図1~
図4を参照し、各エミッタ用導体20は、ケース10の内側から外側に向けて前後方向に沿って直線的に延びる基部21と、基部21の先端側から上方に向けて屈曲し、上下方向に沿って直線状に延びる縦延出部22と、縦延出部22の先端側から前方に向けて屈曲し、前後方向に沿って直線状に延びる横延出部23と、を一体に備えている。基部21は、電流検知用導体30の連結部31と重なるように左右方向に延びてもよい(
図1参照)。
【0020】
縦延出部22は、開口壁の仮想外面に沿って上方に延びる。前記「仮想外面」とは、実施形態では前後方向と直交する平面であり、前後方向から見て開口14aの周縁に囲まれる平面である。
横延出部23は、前後方向で開口壁と反対側に突出するように延び、外部導体29等を接続可能とする。
【0021】
第一導体20aと第二導体20bとは、各々の横延出部23の上下方向の位置(高さ)が互いに異なる。第一導体20aの横延出部23は、第二導体20bの横延出部23よりも上方に位置している。
図1、
図2では、半導体装置1の図中左側に、高さの高い第一導体20aが配置され、半導体装置1の図中右側に、高さの低い第二導体20bが配置される。
【0022】
第一導体20aにおける基部21の先端側の屈曲位置21aから横延出部23の下面23aまでの高さを図中符号A1で示す。
第二導体20bにおける基部21の先端側の屈曲位置21aから横延出部23の上面23bまでの高さを図中符号A2で示す。
【0023】
第一導体20aにおける基部21の先端側の屈曲位置21aは、基部21の下面21bと同じ高さにある。基部21の下面21bは、ケース10の内側において、第一半導体素子2aの表面のエミッタ電極3に接続される。基部21の下面21bは、エミッタ電極3に対し、電流検知用導体30の連結部31を介して接続される。基部21におけるエミッタ電極3に対向する下面21b(対向面、接続面)は、第一半導体素子2aにおけるエミッタ電極3を配置した表面(エミッタ面)から上方に離隔している。
【0024】
第二導体20bにおける基部21の先端側の屈曲位置21aは、基部21の下面21bと同じ高さにある。基部21の下面21bは、ケース10の内側において、第二半導体素子2bの表面(エミッタ電極3)に接続される。基部21の下面21bは、エミッタ電極3に対し、電流検知用導体30の連結部31を介して接続される。基部21におけるエミッタ電極3に対向する下面21b(対向面、接続面)は、第二半導体素子2bにおけるエミッタ電極3を配置した表面(エミッタ面)から上方に離隔している。
【0025】
第一導体20aの高さA1と第二導体20bの高さA2とは、互いに等しい。一対の半導体装置1を設置場所Gに載置し、各々のエミッタ用導体20を互いに対向させて近付けると、以下の作用がある。すなわち、第一導体20aの横延出部23の下方に、第二導体20bの横延出部23を入り込ませ、各横延出部23を互いに上下方向で重ねることが可能である。上下方向で重なる一対の横延出部23上には、外部導体29が重なって接続される(
図6参照)。第一半導体素子2aから外部導体29までの電流経路と、第二半導体素子2bから外部導体29までの電流経路とは、上下方向の長さが互いに等しい。
【0026】
第一導体20aの横延出部23および第二導体20bの横延出部23には、それぞれ上下方向に沿うネジ孔(ネジ挿通孔)24が形成されている。各横延出部23を互いに上下方向で重ね合わせたとき、各横延出部23のネジ孔24は、上下方向で互いに同軸に並ぶ(
図5参照)。これらのネジ孔24にボルト25を挿通して締め込むことで(
図6参照)、以下の作用がある。すなわち、互いに対向する第一導体20aおよび第二導体20b同士を連結可能である。
【0027】
各横延出部23は、上下方向で重なって導体対26を構成する。導体対26には、上方から板状の外部導体29が重なるとともに、外部導体29の上方から上押さえ板27が重なる。導体対26には、下方から下押さえ板28が重なる。導体対26と外部導体29とは、上下の押さえ板27,28に上下方向で挟み込まれる。外部導体29および上下の押さえ板27,28には、各横延出部23のネジ孔24と上下方向で重なるネジ孔27a,28aが形成されている。
【0028】
導体対26、外部導体29ならびに上下の押さえ板27,28は、これらを上下方向で貫通するボルト25を用いて締め込まれて固定される。
上述のように一対の半導体装置1を組み合わせて連結すると、左右一対の導体対26の上下方向位置(高さ)が実質同一となり、電流集中が抑えられる。
【0029】
図5は、本実施形態の半導体装置1を一対用意し、これら一対の半導体装置1のエミッタ用導体20側を互いに対向させて配置して組み合わせた図である。このとき、前述したように、一方の半導体装置1が有する左右一対のエミッタ用導体20の先端部(横延出部23)と、他方の半導体装置1が有する左右一対のエミッタ用導体20の先端部(横延出部23)とが、それぞれ上下方向で重なる。これにより、各半導体装置1において、左右一対の半導体素子2のインダクタンスが揃うことになる。
【0030】
例えば、図中奥側の第一半導体素子2aは、コレクタ用導体40(
図1参照)、第一半導体素子2a、電流検知用導体30、高さの高いエミッタ用導体20(第一導体20a)、の順に電流経路が形成される。図中手前側の第二半導体素子2bは、コレクタ用導体40(
図1参照)、第二半導体素子2b、電流検知用導体30、高さの低いエミッタ用導体20(第二導体20b)、の順に電流経路が形成される。
【0031】
高さの低い第二導体20bの横延出部23上方に、高さの高い第一導体20aの横延出部23が重なる。各横延出部23が形成する導体対26上に、外部導体29を配置して接続すると、以下の作用がある。すなわち、第一半導体素子2aから外部導体29までの電流経路の長さと、第二半導体素子2bから外部導体29までの電流経路の長さと、が互いに等しくなる。電流経路の長さが揃うと、各半導体素子2に接続されるエミッタ用導体20の間で、インダクタンスの大きさに差がなくなる。インダクタンスの大きさの差をなくすことで、電流集中を抑制することができる。
【0032】
図6は、
図5の状態から導体対26と外部導体29とを接続する構造の一例を示す説明図である。
左右一対の導体対26は、上面26bの高さが互いに同一面上にある。左右一対の導体対26の内、図中奥側の導体対26の上面26bは、図中左側の半導体装置1のエミッタ用導体20の横延出部23の上面23bで構成される。図中手前側の導体対26の上面26bは、図中右側の半導体装置1のエミッタ用導体20の横延出部23の上面23bで構成される。
【0033】
左右一対の導体対26の上面26bには、板状の外部導体29が配置され、外部導体29の上方には、上押さえ板27が配置される。左右一対の導体対26の下面26aには、下押え板が配置される。上下押え板および外部導体29には、導体対26を貫通するネジ孔24と重なるネジ孔27a,28a,29aが形成されている。導体対26、外部導体29ならびに上下の押さえ板27,28は、各ネジ孔に挿通したボルト25により締め込まれて一体に結合される。
【0034】
例えば、押え板を使用せずに、一箇所につき一本のボルト25でエミッタ用導体20と外部導体29とをネジ止めした場合、以下の課題がある。すなわち、エミッタ用導体20と外部導体29とが点で接触することになり、接触抵抗が大きくなる。押え板を使用してエミッタ用導体20と外部導体29とをネジ止めすることで、以下の作用がある。すなわち、ボルト25の数によらずエミッタ用導体20と外部導体29とが面で接触することになり、接触抵抗が増大することを回避する。
【0035】
例えば、押し板を使用せず、一箇所に用いるボルト25を二本等の複数本として、エミッタ用導体20と外部導体29とをネジ止めする構成も考えられる。この構成では、ボルト25の本数および作業工数が増加してしまい、半導体素子2の数や並列に並べる半導体装置1の数に比例してコストを増加させてしまう。
【0036】
本実施形態によれば、一対の半導体装置1の連結において、エミッタ用導体20が4本に対して、ボルト25は2本となり、コストダウンに貢献することができる。半導体素子2や半導体装置1の数が増加しても、押さえ板27,28は共通とすることが可能であり、コスト面で優れている。押さえ板27,28や外部導体29は、アルミや銅などの導体で構成されている。
【0037】
図7は、電流検知用導体30およびゲート用導体35の構成を示す説明図である。
電流検知用導体30は、各半導体素子2のゲート電極5を避けた上で、なるべく広い面積で半導体素子2の表面(エミッタ電極3)と接触する。電流検知用導体30の縦延出部34の高さは、エミッタ用導体20の高さより低くする(
図1、
図3参照)。
【0038】
電流検知用導体30の高さをエミッタ用導体20の高さより低くすることで、エミッタ用導体20の先端部(横延出部23)と干渉せずに、電流検知用導体30に接続する外部導体29を配置することができる。電流検知用導体30は、半導体素子2の表面より高い位置に配置される。半導体素子2の裏面(コレクタ面)は、コレクタ電極4のため高電圧となり、数kVの電位差が生まれることがある。半導体素子2の裏面(コレクタ面)は、金属ケース11内を絶縁材料により絶縁する場合も、所定の空間距離や沿面距離を確保する必要がある。
【0039】
電流検知用導体30は、一対の半導体素子2の表面に渡って左右方向に延びる連結部31と、連結部31の左右中央から前上方に延びる端子部32と、を備えている。端子部32は、一対のゲート用導体35の間の中央に位置している。端子部32は、ケース10の内側から外側に向けて前後方向に沿って直線状に延びる基部33と、基部33の先端側から上方に向けて屈曲し、上下方向に沿って直線状に延びる縦延出部34と、を備えている。
【0040】
ゲート用導体35は、ケース10の内側から外側に向けて前後方向に沿って直線状に延びる基部36と、基部36の先端側から上方に向けて屈曲し、上下方向に沿って直線状に延びる縦延出部37と、を備えている。
電流検知用導体30の基部33の下面と、各ゲート用導体35の基部36の下面とは、互いに同一高さにある。
電流検知用導体30の縦延出部34の先端と、各ゲート用導体35の縦延出部37の先端とは、互いに同一高さにある。
【0041】
電流検知用導体30の縦延出部34と、各ゲート用導体35の縦延出部37とは、互いに左右方向で並列に並んでいる。電流検知用導体30の縦延出部34と、各ゲート用導体35の縦延出部37とは、左右方向で各エミッタ用導体20の縦延出部22の間に配置されている。図中線L1は、ケース10の内外の境界線を示し、各縦延出部34,37はケース10の外側に位置することを示す。
【0042】
図1、
図3を併せて参照し、各縦延出部34,37の先端の高さA3は、第一導体20aおよび第二導体20bの各横延出部23の何れの下面23aの高さよりも低い。すなわち、高さの低い第二導体20bの横延出部23の下面23aの高さA4よりも低い。これにより、各縦延出部34,37に接続する外部導体を配置しやすくなる。
【0043】
図8(a)は、ケース10の開口14aとエミッタ用導体20との寸法関係を示す斜視図、
図8(b)は、
図8(a)のB矢視図である。
一対のエミッタ用導体20、単一の電流検知用導体30、一対のゲート用導体35、および単一のコレクタ用導体40は、導体の塊として予め一体に組み立てられる。この導体の塊に、一対の半導体素子2等が実装されて、ケース10内に収容可能な小組体が形成される。小組体は、例えばケース10の第二開口壁(下壁13)の第二開口13aからケース10内に挿入され、ボルト25等を用いた締結あるいは金属ケース11への溶接等によってケース10内に固定される。小組体は、例えばケース10の開口壁(前壁14)の開口14aからケース10内に挿入される構成でもよい。ケース10内に小組体が入った後、開口14aは金属板で塞いだり樹脂で封止したりせず、樹脂製のアウタケース(樹脂ケース18)で金属ケース11全体を覆う対応としてもよい。
【0044】
半導体装置1毎にエミッタ用導体20の高さを揃えると、一対の半導体装置1を対向配置して各々の横延出部23を上下に重ねるには、以下の課題がある。すなわち、一対の半導体装置1の間でエミッタ用導体20の高さが異なってしまう。例えば、一方の半導体装置1では高さの高い第一導体20aが二つ並び、他方の半導体装置1では高さの低い第二導体10bが二つ並ぶ態様となる。このように、半導体装置1毎に高さを揃えたエミッタ用導体20を用いて小組体を作ると、2種類の小組工程が必要となる。また、小組体を金属ケース11に入れてエミッタ用導体20まで樹脂ケース18で覆うためには、2種類の樹脂ケース18の型が必要となる。このように、半導体装置1毎にエミッタ用導体20の高さを揃えると、工程およびコストを増加させることが考えられる。実施形態のように、半導体装置1毎に高さの異なるエミッタ用導体20を用いて共通の小組体を作ると、小組工程や樹脂ケース18の型を共通にして工程およびコストの増加が抑えられる。
【0045】
図8(a)を参照し、ケース10の前壁14の開口14aの左右幅W1は、左右一対のエミッタ用導体20を含む左右対の全体の左右幅W2よりも広い。例えば、左右対の左右幅W2は、基部21から横延出部23まで一定である。これにより、前壁14の開口14aを通じて、左右一対のエミッタ用導体20をケース10内側からケース10外側へ出すことが可能である。
【0046】
図8(b)を参照し、ケース10の下壁13(第二開口壁)の第二開口13aは、金属ケース11内の一対の半導体素子2の裏面(コレクタ電極4)の合計面積よりも広い。第二開口13aは、下方から見て、金属ケース11内の一対の半導体素子2の配置領域よりも広い。第二開口13aは、下方から見て、コレクタ用導体40よりも広いとよい。コレクタ用電極の上面には、一対の半導体素子2が実装されている。一対の半導体素子2は、下方から見て、第二開口13aの内側に配置されている。第二開口13aを広くすることで、コレクタ電極4側で電流経路が絞られず、電流抵抗の増加がおさえられる。
【0047】
金属ケース11は、ステンレス、アルミニウム、鉄などの金属で形成されている。金属ケース11は、つなぎ部分に必要に応じて溶接を行って製作される。金属ケース11は、ケース10内側からケース10外側に向けて広がろうとする力に強くなるように製作される。金属ケース11は、半導体素子2が破壊した時に金属ケース11内部の部品が飛び散らないように工夫されている。
【0048】
図9は、第1の実施形態のエミッタ用導体20の変形例を示す。この変形例のエミッタ用導体20は、第1の実施形態において前後方向で対向した一対のエミッタ用導体20を一体化した態様である。説明都合上、第1の実施形態のエミッタ用導体20の形状および符号を残している。変形例のエミッタ用導体20は、左右方向から見た側面視でハット形をなす一体の金属ブロックとして構成されている。
【0049】
この変形例では、高さ違いのエミッタ用導体20を個別に製作する必要がなく、エミッタ用導体20の製作工程を少なくすることができる。変形例では、一体のエミッタ用導体20の上部にネジ孔24を貫通形成すればよい。一対のエミッタ用導体20の先端部にそれぞれネジ孔24をあける場合に比べて、製造工程を少なくしてコストを抑えることができる。
【0050】
半導体装置1における高電圧がかかる部位の間は、所定の空間距離や沿面距離が確保される。金属ケース11内は、必要に応じて、半導体素子2の高さを越える高さまで絶縁材で封止することが考えられる。さらに、必要に応じて、金属ケース11の電位を固定するために、エミッタ用導体20あるいは電流検知用導体30と接続することが考えられる。
図1中符号7は電流検知用導体30と金属ケース11とを接続する電位固定線を示す。これにより、金属ケース11の電位を固定し、後述するように、予期せぬ電圧が発生することによる半導体素子2の破壊を抑制する。金属ケース11に電位を付与する導体は、電流検知用導体30に限らず、同じく半導体素子2のエミッタ電極3に接続される第一導体20aおよび第二導体20bであってもよい。
【0051】
第1の実施形態の半導体装置1では、複数の半導体素子2と、複数の半導体素子2を収容して覆うケース10と、ケース10の内側で対応する半導体素子2に一端側が接続され、一端側から他端側に向けて延び、他端側がケース10の外側に配置される複数のエミッタ用導体20と、を備える。ケース10は、外壁の一部(前壁14)を開口壁とし、開口壁に形成された開口14aを通じて、複数のエミッタ用導体20の他端側をケース10の外側に至らしめる。複数のエミッタ用導体20の内、互いに並列に並ぶ第一導体20aおよび第二導体20bの各々は、ケース10の内側から外側に向けて延びる基部21と、基部21の先端側から開口壁の仮想外面に沿う第一の方向(上下方向)の一側に向けて屈曲して延びる縦延出部22と、縦延出部22の先端側から第一の方向と交差する第二の方向(前後方向)の一側に向けて屈曲し、開口壁から突出する側に延びて外部導体29を接続可能とする横延出部23と、を備える。第一導体20aと第二導体20bとは、各々の横延出部23の上下方向の位置(高さ)が互いに異なる。
【0052】
この構成によれば、第一導体20aの横延出部23と第二導体20bの横延出部23とが、開口壁に沿う上下方向で互いに高さを異ならせることで、以下の作用がある。すなわち、一対の半導体装置1を互いに開口壁を対向させて配置したとき、一方の半導体装置1の高さの高い横延出部23と他方の半導体装置1の高さの低い横延出部23とは、導体並び方向(左右方向)の一側に配置される。一方の半導体装置1の高さの低い横延出部23と他方の半導体装置1の高さの高い横延出部23とは、導体並び方向の他側に配置される。一対の半導体装置1の各々の横延出部23を、上下方向で互いを避けるように配置可能となる。一対の半導体装置1を対向配置したときに各々の横延出部23が互いに突き当たる構成に比べて、一対の半導体装置1同士を互いに近付けてコンパクトに配置することができる。
高位置にある横延出部23の下方に、低位置にある横延出部23が入り込んで重なる構成とすれば、以下の作用がある。すなわち、導体並び方向の一側および他側の各々で、高位置の横延出部23と低位置の横延出部23とが上下方向で互いに重なり合う。一対の半導体装置1の各々の横延出部23を、一体的な締結等によってまとめて外部導体29に接続することができ、コストダウンを図ることができる。各半導体装置1の半導体素子2から外部導体29までの電流経路の長さの均等化を図り、電流集中を抑制することができる。
【0053】
第1の実施形態の半導体装置1において、複数のエミッタ用導体20は、ケース10内の半導体素子2と同一数に設けられている。
この構成によれば、エミッタ用導体20と半導体素子2とが同一数に設けられることで、各半導体素子2から個別のエミッタ用導体20を通じて電流が流れる。各半導体素子2からの電流のバラツキを抑え、電流集中を抑制することができる。
【0054】
第1の実施形態の半導体装置1において、第一導体20aの横延出部23は、第二導体20bの横延出部23よりも上方に位置し、第一導体20aにおける基部21の先端側の屈曲位置21aから横延出部23の下面23aまでの高さは、第二導体20bにおける基部21の先端側の屈曲位置21aから横延出部23の上面23bまでの高さと等しい。
この構成によれば、半導体装置1の設置時に、第一導体20aにおける高位置にある横延出部23の下面23aまでの高さと、第二導体20bにおける低位置にある横延出部23の上面23bまでの高さとが、互いに等しくなる。一対の半導体装置1を対向配置したとき、高位置にある横延出部23と低位置にある横延出部23とが、上下方向で互いに重なり合う。一対の半導体装置1の各々の横延出部23が互いに突き当たる構成に比べて、一対の半導体装置1同士を互いに近付けてコンパクトに配置することができる。一対の半導体装置1の各々の横延出部23を、一体的な締結等によってまとめて外部導体29に接続することができる。各半導体装置1の半導体素子2から外部導体29までの電流経路の長さの均等化を図り、電流集中を抑制することができる。
【0055】
第1の実施形態の半導体装置1において、複数のエミッタ用導体20が並ぶ導体並び方向(左右方向)において、複数のエミッタ用導体20を含む導体群の全幅は、開口壁の開口14aの全幅内に収まる。
この構成によれば、複数の導体を含む導体群の全幅が開口14aの全幅内に収まることで、複数の導体をケース10内側から外側へ出しやすくなる。複数の導体を備えて電流量を確保する構成としながら、複数の導体をケース10外側に取り回しやすくすることができる。
【0056】
第1の実施形態の半導体装置1において、第一導体20aおよび第二導体20bとは別にエミッタ電極3に接続されて電流を検知する電流検知用導体30を備え、第一導体20aおよび第二導体20bにおけるエミッタ電極3に対向する対向面は、半導体素子2におけるエミッタ電極3を配置したエミッタ面から上方に離隔し、対向面とエミッタ面とは、電流検知用導体30の連結部31を介して接続される。
この構成によれば、電流を検知する電流検知用導体30(小電流用導体)を介して、第一導体20aおよび第二導体20b(何れも大電流用導体)が半導体素子2のエミッタ電極3に接続される。小電流用導体を介することで、第一導体20aおよび第二導体20bの電流バラツキを抑え、電力集中を抑制することができる。
【0057】
第1の実施形態の半導体装置1において、半導体素子2は、エミッタ電極3を上方に向けるとともに、コレクタ電極4を下方に向けて配置され、ケース10内の下方には、半導体素子2のコレクタ電極4に接続されるコレクタ用導体40を備え、ケース10は、下壁13を第二開口壁とし、第二開口壁に形成された第二開口13aを通じて、コレクタ用導体40に外部導体29を接続可能であり、上下方向から見て、コレクタ用導体40および第二開口13aは、複数の半導体素子2のコレクタ電極4の合計面積よりも大きい。
この構成によれば、コレクタ電極4に接続されるコレクタ用導体40、およびケース10におけるコレクタ電極4側の第二開口13aが、複数のコレクタ電極4の合計面積よりも大きい。コレクタ電極4側の第二開口13aで電流経路が絞られることを抑え、電流抵抗の増加を抑えることができる。
【0058】
第1の実施形態の半導体装置1において、半導体素子2のゲート電極5に一端側が接続され、一端側から他端側に向けて延び、他端側がケース10の外側に配置されるゲート用導体35を備え、ゲート用導体35は、ケース10の内側から外側に向けて延びる基部36と、基部36の先端側から上方に向けて屈曲して延びる縦延出部37と、を備え、上下方向において、縦延出部37の先端の高さは、第一導体20aおよび第二導体20bの各横延出部23の何れの下面23aの高さよりも低い。
この構成によれば、ゲート用導体35の先端高さを、第一導体20aおよび第二導体20bの各横延出部23の何れの下面23aの高さよりも低く設定することで、以下の作用がある。すなわち、ゲート用導体35に接続するゲート回路を、第一導体20aおよび第二導体20bの各横延出部23の下方に配置することが可能となる。これにより、ゲート回路を含む半導体装置1アッセンブリの小型化を図ることができる。
【0059】
第1の実施形態の半導体装置1において、ゲート用導体35は、第一導体20aおよび第二導体20bがそれぞれ接続される半導体素子2に対応して一対設けられ、電流検知用導体30は、一対のゲート用導体35の間の中央位置に、ケース10の内側から外側に向けて延びる基部33と、基部33の先端側から上方に向けて屈曲して延びる縦延出部34と、を備え、上下方向において、電流検知用導体30の縦延出部34の先端の高さは、各ゲート用導体35の縦延出部37の先端の高さと同一である。
この構成によれば、小電流のゲート用導体35および電流検知用導体30の先端高さを互いに同一に設定することで、以下の作用がある。すなわち、ゲート回路を含む制御回路を、第一導体20aおよび第二導体20bの各横延出部23の下方に配置することが可能となる。これにより、制御回路を含む半導体装置1アッセンブリの小型化を図ることができる。
【0060】
第1の実施形態の半導体装置1において、ケース10は、金属製のケース本体(金属ケース11)と、ケース本体の外側を覆う絶縁樹脂製のアウタケース(樹脂ケース18)と、を備えてもよい。
この構成によれば、金属製のケース本体内を絶縁樹脂で封止する工程をなくすことが可能となる。製造工程を簡略化して製造コストの低減を図ることができる。
【0061】
第1の実施形態の半導体装置1において、ケース10内は、絶縁材料の充填によって封止され、絶縁材料は、コレクタ用導体40から半導体素子2までを覆い、第一導体20aおよび第二導体20bは覆わない高さまで充填されてもよい。
この構成によれば、絶縁材料のケース10内への充填高さを、半導体素子2を覆う最小限の高さに抑えることが可能となる。材料費を抑えてコストダウンを図ることができる。
【0062】
第1の実施形態の半導体装置1において、金属ケース11は、半導体素子2のエミッタ電極3に接続される第一導体20aおよび第二導体20b、あるいは第一導体20aおよび第二導体20bとは別にエミッタ電極3に接続される電流検知用導体30、が接続されてもよい。
この構成によれば、金属ケース11に規定の電位を付与することで、半導体装置1の破壊防止に貢献することができる。
【0063】
すなわち、金属ケース11の電位を固定することで、金属ケース11の電位が不定の状態になることを抑えることができる。金属ケース11の電位が不定の場合、金属ケース11が予期せぬ電圧を持ってしまうことがある。すると、前記「予期せぬ電圧」と半導体素子2との間で、絶縁不良を起こす可能性がある。これに対し、金属ケース11の電位を固定することで、前記「予期せぬ電圧」の発生を抑え、絶縁不良による半導体素子2の破壊が起こることを抑えることができる。特に、金属ケース11の電位をエミッタ電位に固定することで、金属ケース11の内側から外側に延びるエミッタ用導体20と金属ケース11との間の絶縁を簡易とし、安全を確保しながらコンパクトな半導体装置1を構成することができる。
【0064】
第1の実施形態の半導体装置1を複数連結するための半導体装置の連結構造では、一対の半導体装置1が互いに開口壁を対向させて配置されたとき、第一導体20aおよび第二導体20bの各横延出部23が上下方向で互いに重なって形成される導体対26と、導体対26に上下方向で重なる外部導体29と、導体対26と外部導体29とを上下方向で挟む一対の押さえ板27,28と、導体対26、外部導体29ならびに一対の押さえ板27,28を上下方向で貫通して締め込まれるボルト25と、を備えている。
この構成によれば、一対の半導体装置1の各々の横延出部23が、上下方向で互いを避けるように配置される。一対の半導体装置1同士を互いに近付けてコンパクトに配置することができる。
導体対26および外部導体29が一対の押さえ板27,28を介して締め込まれることで、以下の作用がある。すなわち、少ない本数のボルト25で導体対26と外部導体29との接触面積を確保することができる。ネジ止め箇所を減らしてコストを抑えるとともに、導体対26と外部導体29との間の接触抵抗を小さくして電流バラツキを抑えることができる。
【0065】
第1の実施形態の半導体装置の製造方法では、複数の導体および半導体素子2を予め組み合わせて一体の小組体とし、この小組体を開口(前壁14の開口14aまたは下壁13の第二開口13a)からケース10内に収容して固定する。
この構成によれば、複数の導体および半導体素子2を一体の小組体としてケース10内に収容することで、以下の作用がある。すなわち、複数の導体を備えて電流量を確保する構成としながら、製造工程の自由度を向上させることができる。
【0066】
(第2の実施形態)
第2の実施形態を
図10~
図18を参照して説明する。
第2の実施形態の半導体装置101は、第1の実施形態の半導体装置1に対して、一対のエミッタ用導体120がケース110の上方に向けて延び、上端高さを互いに同一にする点で特に異なる。その他の、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付して詳細説明は省略する。
【0067】
図10は、第2の実施形態の半導体装置101を模式的に示した正面図である。
図11は、
図10のXI-XI断面図、
図12は、
図10のXII-XII断面図である。
半導体装置101は、複数(一対)の半導体素子2と、複数の半導体素子2を収容して覆うケース110と、ケース110の内側で対応する半導体素子2のエミッタ電極3に一端側が接続され、一端側から他端側に向けて延び、他端側がケース110の外側に配置される複数(一対)のエミッタ用導体120と、エミッタ用導体120とは別にエミッタ電極3に接続されて電流を検知する単一の電流検知用導体130と、ケース110の内側で半導体素子2のゲート電極5に一端側が接続され、一端側から他端側に向けて延び、他端側がケース110の外側に配置される単一のゲート用導体135と、各半導体素子2のコレクタ電極4に接続される単一のコレクタ用導体140と、を備えている。
【0068】
複数のエミッタ用導体120の内、左右方向で互いに並列に並ぶ一対のエミッタ用導体120を、第一導体120aおよび第二導体120bということがある。第一導体120aは図中左側に位置し、第二導体120bは図中右側に位置する。
複数の半導体素子2の内、左右方向で並ぶ一対の半導体素子2を、第一半導体素子2aおよび第二半導体素子2bということがある。第一半導体素子2aは図中左側に位置し、第二半導体素子2bは図中右側に位置する。第一半導体素子2aには第一導体120aが接続され、第二半導体素子2bには第二導体120bが接続される。
【0069】
ケース110は、直方体状の外形を有し、上下壁12,13を水平にして配置されている。ケース110は、前後壁14,15を左右方向に沿わせ、左右側壁16,17を前後方向に沿わせて配置されている。ケース110は、金属ケース111および樹脂ケース118で構成されている。
ケース110の内部は、エポキシ等の絶縁材料の充填によって封止されてもよい。例えば、絶縁材料は、少なくとも上下方向でコレクタ用導体140の途中(下面140aよりも上方)から半導体素子2の上方(電流検知用導体130の連結部131の途中)までの範囲H2に充填されるとよい。
【0070】
ケース110は、外壁の一部(実施形態では上壁12)を開口壁とし、開口壁に形成された開口を通じて、複数のエミッタ用導体120の他端側をケース110の外側に至らしめる。すなわち、ケース110の上壁12に形成された開口から、第一導体120aおよび第二導体120bが上方に突出して延びている。
コレクタ用導体140と半導体素子2との接続は、第1の実施形態と同様である。その他、エミッタ電極3と電流検知用導体130との接続、ゲート電極5とゲート用導体135との接続、電流検知用導体130とエミッタ用導体120との接続も、第1の実施形態と同様である。
【0071】
各エミッタ用導体120(第一導体120aおよび第二導体120b)は、ケース110の内側から外側に向けて上下方向に沿って直線的に延びる。第一導体120aおよび第二導体120bの各上端高さは、互いに等しい。第一導体120aおよび第二導体120bの各上端には、不図示の外部導体が接続される。第一導体120aおよび第二導体120bの各下端は、はんだ(
図10参照)を介して電流検知用導体130の連結部131の上面に接続される。電流検知用導体130の連結部131の下面は、各半導体素子2の上面(エミッタ面)にはんだ(
図10参照)を介して接続される。
【0072】
第一半導体素子2aから外部導体までの電流経路の長さと、第二半導体素子2bから外部導体までの電流経路の長さと、が互いに等しくなる。電流経路の長さが揃うと、各半導体素子2に接続されるエミッタ用導体120の間で、インダクタンスの大きさに差がなくなる。インダクタンスの大きさの差をなくすことで、電流集中を抑制することができる。
【0073】
電流検知用導体130の縦延出部134の高さは、エミッタ用導体120の上端高さより低い。電流検知用導体130に接続される不図示の外部導体は、エミッタ用導体120に接続される外部導体との干渉が抑えられる。
ゲート用導体135は、一対の半導体素子2の表面に渡って左右方向に延びる連結部131と、連結部131の左右中央から前上方に延びる端子部132と、を備えている。端子部132は、前方に向けて前後方向に沿って直線状に延びる基部133と、基部133の先端側から上方に向けて屈曲し、上下方向に沿って直線状に延びる縦延出部134と、を備えている。
【0074】
ゲート用導体135は、一対の半導体素子2のゲート端子に渡って左右方向に延びる連結部136と、連結部136の左右中央から上方に延びる縦延出部137と、を備えている。縦延出部137は、上下方向に沿って直線状に延びる。縦延出部137は、電流検知用導体130の縦延出部134の前方に位置し、縦延出部134と並列に並ぶ。ゲート用導体135の縦延出部137の上端と電流検知用導体130の縦延出部134の上端とは、互いに同一高さにある。
【0075】
以下、金属ケース111の構成について
図13~
図17を参照して説明する。
図13は、金属ケース111の製作パターンの第一例を示す。
図13の金属ケース111は、上壁12と下壁13とが、一体の金属板をU字状(コ字状)に屈曲させることで連続して形成される。上壁12および下壁13を含む一体の金属板部品を屈曲体111aと称する。
上壁12および下壁13の左右両側には、前後方向に沿って延びるスリッド差し込み口111bが形成される。金属ケース111の左右側壁16,17は、屈曲体111aとは別体の金属板(スリッド板111c)を溶接固定することで形成される。
【0076】
スリッド板111cは、上下端部が上壁12および下壁13のスリッド差し込み口111bにそれぞれ嵌め込まれる。この状態で、スリッド板111cの上下端部が上壁12および下壁13にそれぞれ溶接結合される。スリッド板111cは、屈曲体111aに溶接で固定しやすいように、上下端部を折り曲げてもよい。スリッド板111cの数を増やすことで、金属ケース111をより強固にすることができる。スリッド板111cは、金属ケース111の外壁のみならず、金属ケース111内側の隔壁や筋交いとして利用することもできる。
【0077】
例えば、金属ケース111の前壁14は、前方に向けて開放されて開口14aを形成してもよい。上壁12には、左右一対のエミッタ用導体120、ゲート用導体135および電流検知用導体130の各縦延出部134,137を上方に突出させる上壁開口12aが形成される。下壁13には、コレクタ用導体140を下方に露出させる第二開口13aが形成される。
この金属ケース111の構成は、第2の実施形態のみならず、上壁開口12aを無くす又は変更することで、第1の実施形態でも使用可能である。
【0078】
図14は、金属ケース111の製作パターンの第二例を示す。
図14の例は、
図13の例に対し、スリッド差し込み口111bが上壁12および下壁13から前壁14および後壁15に移動した構成を示す。
図14の例では、屈曲体111aに前壁14の左右側部を設けている。前壁14および後壁15には、上下方向に沿って延びるスリッド差し込み口111bが形成される。スリッド板111cは、前後端部が前壁14および後壁15のスリッド差し込み口111bに嵌め込まれる。この状態で、スリッド板111cの前後端部が前壁14および後壁15にそれぞれ溶接結合される。
この金属ケース111の構成も、第2の実施形態のみならず、上壁開口12aの変更等により、第1の実施形態でも使用可能である。
【0079】
図15は、金属ケース111の製作パターンの第三例を示す。
図15の例は、
図13の例に対し、スリッド差し込み口111bが上壁12および下壁13から左右側壁16,17に移動した構成を示す。
図15の例では、左右側壁16,17が、一体の金属板をU字状(コ字状)に屈曲させることで連続して形成される。左右側壁16,17を含む一体の金属板部品を屈曲体111dと称する。
左右側壁16,17の上部および下部には、前後方向に沿って延びるスリッド差し込み口111bが形成される。金属ケース111の上壁12および下壁13は、屈曲体111dとは別体の金属板(スリッド板111c)を溶接固定することで形成される。
【0080】
スリッド板111cは、左右端部が左右側壁16,17のスリッド差し込み口111bにそれぞれ嵌め込まれる。この状態で、スリッド板111cの左右端部が左右側壁16,17にそれぞれ溶接結合される。スリッド板111cは、屈曲体111dに溶接で固定しやすいように、左右端部を折り曲げてもよい。上壁12となるスリッド板111cには上壁開口12aが形成され、下壁13となるスリッド板111cには第二開口13aが形成される。
この金属ケース111の構成も、第2の実施形態のみならず、上壁開口12aの変更等により、第1の実施形態でも使用可能である。
【0081】
図13~
図15の金属ケース111は、屈曲体111a,111dが形成する外壁の一部とスリッド板111cとを溶接すればよく、製作コストを抑えた金属ケース111となる。スリッド板111cを増やせば、半導体素子2の破壊にも強くすることができる。電流が流れる方向の両側に位置する上壁12と下壁13とを一体の金属板で連続して形成することで、破壊に対してより強くすることができる。スリッド板111cの形は、
図16に示すように、様々な形が考えられる。
【0082】
図16(a)のスリッド板111cは、例えば、上壁12および下壁13に形成された各開口を避けるように溶接フランジf1を延ばした例である。上壁12および下壁13と溶接する部分を長くすることで、スリッド板111cの固定力を高めることができる。
図16(b)のスリッド板111cは、上壁12および下壁13と溶接する部分の少なくとも一方を、溶接フランジf1よりも短く、スリッド板111cの端部に沿って長い長方形状f2とした例である。
図16(c)のスリッド板111cは、スリッド板111cの一部の溶接フランジf1の曲げる向きを、他の溶接フランジf1に対して反転させた例である。
金属ケース111におけるスリッド板111cの溶接は、金属ケース111の外壁の固定力と製造コストにかかわるため、製造設備に合わせて作りこむとよい。
【0083】
スリッド板111cを増やして金属ケース111の外壁の固定力を上げることで、左右方向のみならず上下方向等においても、金属ケース111の強度を高めることができる。すなわち、金属ケース111を内側から押し上げたり押し下げたりする力にも強くすることができる。スリッド板111cの端部を折り曲げて溶接することで、スリッド板111cを平坦なまま用いる場合に比べて、スリッド板111cが外力に対して強くなる。スリッド板111cが外力に強くなることで、半導体装置101が破壊したときに、金属ケース111の内側から部品等が飛び出すことを防ぐことができる。スリッド板111cと屈曲体111a,111dとが触れる部分のみ溶接することで、溶接部分を最小限にして製作コストを抑えることができる。
【0084】
金属ケース111の上壁開口12aの形は、
図17に示すように、各導体の形や配置に応じて変更することができる。
図17(a)の上壁開口12aは、左右一対のエミッタ用導体120が通過する大開口12bと、電流検知用導体130およびゲート用導体135の各々における左右中央の縦延出部134,137が通過する小開口12cと、を一体に形成した例である。
開口面が同じでも、各導体が同じように金属ケース111の開口を通過するとは限らない。
例えば、
図17(b)の上壁開口12aは、大開口12bと小開口12cとを別体に形成した例である。この場合、大電流が流れる経路と小電流が流れる経路とを別々にする(分離させる)ことができる。上壁開口12aを分割する他の例として、例えば電位が異なるゲート用導体135が通過する小開口12cのみ、エミッタ用導体120および電流検知用導体130が通過する大開口12bと別体に設けることもできる。
図17(c)の上壁開口12aは、第一開口を左右に分割した例である。この例は、第2の実施形態のように、半導体素子2毎に左右別体のエミッタ用導体120を備える場合に適用可能である。
これらの上壁開口12aのパターンは、コストと強度とを加味して選択することができる。
【0085】
図18は、第2の実施形態の半導体装置101の変形例を示している。この変形例は、
図10の構成に対し、左右一対のエミッタ用導体120(第一導体120aおよび第二導体120b)と電流検知用導体130(連結部131および端子部132)とを一体化した点で特に異なる。同電位のエミッタ用導体120および電流検知用導体130を一体化することにより、部品点数を削減し、かつエミッタ用導体120の強度を高めることができる。
【0086】
第2の実施形態の半導体装置101では、複数の半導体素子2と、複数の半導体素子2を収容して覆うケース110と、ケース110の内側で対応する半導体素子2に一端側が接続され、一端側から他端側に向けて延び、他端側がケース110の外側に配置される複数の導体と、を備える。半導体装置101を設置場所Gに設置した状態において、各半導体素子2は、エミッタ電極3を上方に向けるとともにコレクタ電極4を下方に向けて配置される。ケース110は、上方を向く上壁12を開口壁とし、開口壁に形成された開口を通じて、複数の導体の他端側をケース110の外側に至らしめる。複数の導体の内、互いに並列に並ぶ第一導体120aおよび第二導体120bの各々は、ケース110の内側から外側に向けて上方に延びる。第一導体120aおよび第二導体120bは、上端高さが互いに等しい。
【0087】
この構成によれば、半導体装置101を設置場所Gに設置した状態において、複数の導体がケース110の上壁12から上方に延びることで、以下の作用がある。すなわち、複数の半導体装置101を設置場所Gに並べて配置したとき、複数の半導体装置101同士を互いに近付けてコンパクトに配置することができる。
各半導体素子2のエミッタ電極3から第一導体120aおよび第二導体120bをストレートに上方に延ばすことで、電流経路の変化を抑えて電流集中を抑制することができる。
第一導体120aおよび第二導体120bの上端高さを互いに等しくすることで、各半導体素子2から外部導体までの電流経路の長さの均等化を図り、電流集中を抑制することができる。
【0088】
第2の実施形態の半導体装置の製造方法では、金属ケース111は、半導体装置101の設置状態における上壁12と下壁13とが、一体の金属板を屈曲させることで連続して形成される。上壁12と下壁13とに、または前壁14と後壁15とに、スリッド差し込み口111bが形成される。各スリッド差し込み口111bに別体の金属板(スリッド板111c)の端部が差し込まれ、金属板の端部がスリッド差し込み口111bの周縁に溶接により固定される。
この構成によれば、金属ケース111における各半導体素子2の電流が流れる方向(上下方向)に位置する上壁12および下壁13を、一体の金属板で形成することで、破壊に対する強度を高めることができる。別体の金属板(スリッド板111c)の端部がスリッド差し込み口111bに差し込まれて溶接結合されることで、金属ケース111を箱状に形成する際の溶接長さを抑えることができる。
【0089】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、複数の半導体素子2と、ケース10と、複数の導体20と、を持つことにより、一対の半導体装置1同士を互いに近付けてコンパクトに配置することができる。一体的な締結等によってまとめて外部導体29に接続することができ、コストダウンを図ることができる。各半導体装置1の半導体素子2から外部導体29までの電流経路の長さの均等化を図り、電流集中を抑制することができる。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0091】
1,101…半導体装置、2…半導体素子、3…エミッタ電極、4…コレクタ電極、5…ゲート電極、10,110…ケース、11,111…金属ケース、12…上壁、13…下壁、14…前壁、15…後壁、20…エミッタ用導体(導体)、20a,120a…第一導体、20b,120b…第二導体、21…基部、22…縦延出部、23…横延出部、23a…下面、23b…上面、25…ボルト、26…導体対、27…上押さえ板、28…下押さえ板、29…外部導体、30,130…電流検知用導体、33,133…基部、34,134…縦延出部、35,135…ゲート用導体、36…基部、37,137…縦延出部、40,140…コレクタ用導体、40a,140a…下面、G…設置場所、H1,H2…範囲