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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002499
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】乗用型苗植機
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
A01C11/02 350H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101712
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】山崎 仁史
【テーマコード(参考)】
2B064
【Fターム(参考)】
2B064AA02
2B064AA05
2B064AA07
2B064AB01
2B064CA02
2B064CA11
2B064CA15
2B064CA22
2B064CA27
2B064CA35
(57)【要約】
【課題】乗用型苗植機に装備した予備苗載部の2つの積載台が機体前後方向に同一平面状に連なる状態と折り畳んだ状態に切り換えるものがある。然しながら、2つの積載台を機体前後方向に同一平面状に連なる状態にして苗供給作業を行うが、機体前部からの突出長さが短くて、畦や道路と圃場の間に水路等がある場合に、予備苗載部の先端が畦に届かず苗供給作業の効率が悪い場合がある。そこで、苗供給作業の効率が良い予備苗載部を装備した乗用型苗植機を提供する。
【解決手段】予備苗載部50が機体に固定した第1積載台51aに対して、リンク機構52にて積層状態と第1積載台51aの前側に位置する直線状に展開した展開状態に姿勢変更できる第2積載台51bを装備し、第2積載台51bに、積層状態と機体前方に枢軸53にて回動して直線状に展開した展開状態に姿勢変更できる回動積載台51cを設ける。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(2)に苗植付部(30)と予備苗載部(50)を設けた乗用型苗植機において、該予備苗載部(50)が機体に固定した第1積載台(51a)に対して、リンク機構(52)にて積層状態と第1積載台(51a)の前側に位置する直線状に展開した展開状態に姿勢変更できる第2積載台(51b)を装備し、該第2積載台(51b)に、積層状態と機体前方に枢軸(53)にて回動して直線状に展開した展開状態に姿勢変更できる回動積載台(51c)を設けたことを特徴とする乗用型苗植機。
【請求項2】
回動積載台(51c)の上面側及び下面側に各々左右側壁(54a)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の乗用型苗植機。
【請求項3】
回動積載台(51c)が展開状態で上面側に左右側壁(54a)を設け、下面側に空箱収納部(55)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の乗用型苗植機。
【請求項4】
回動積載台(51c)の載置面(54b)先端部に開口状の把持部(54e)を設けたことを特徴とする請求項1~請求項3の何れか1項に記載の乗用型苗植機。
【請求項5】
回動積載台(51c)が展開状態で上面側に左右側壁(54a)を設け、下面側に突出した把持部(54e)を設けたことを特徴とする請求項1~請求項3の何れか1項に記載の乗用型苗植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予備苗載部を装備した乗用型苗植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場を走行しながら苗を植え付ける乗用型苗植機において、走行車体に2つの積載台を設けた予備苗載部を装備し、該2つの積載台が機体前後方向に同一平面状に連なる状態と折り畳んだ状態に切り換えるものがある(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-057556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2つの積載台を設けた予備苗載部を装備した小型の乗用型苗植機であり、安価で小さな圃場での機体の取り回しも良い。
【0005】
然しながら、2つの積載台を機体前後方向に同一平面状に連なる状態にして苗供給作業を行うが、機体前部からの突出長さが短くて、畦や道路と圃場の間に水路等がある場合に、予備苗載部の先端が畦に届かず苗供給作業の効率が悪い場合がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、苗供給作業の効率が良い予備苗載部を装備した乗用型苗植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、走行車体2に苗植付部30と予備苗載部50を設けた乗用型苗植機において、該予備苗載部50が機体に固定した第1積載台51aに対して、リンク機構52にて積層状態と第1積載台51aの前側に位置する直線状に展開した展開状態に姿勢変更できる第2積載台51bを装備し、該第2積載台51bに、積層状態と機体前方に枢軸53にて回動して直線状に展開した展開状態に姿勢変更できる回動積載台51cを設けた乗用型苗植機である。
【0008】
請求項1記載の発明によれば、予備苗載部50が機体に固定した第1積載台51aに対して、リンク機構52にて積層状態と第1積載台51aの前側に位置する直線状に展開した展開状態に姿勢変更できる第2積載台51bを装備し、該第2積載台51bに、積層状態と機体前方に枢軸53にて回動して直線状に展開した展開状態に姿勢変更できる回動積載台51cを設けたので、前後方向に連なり同一平面状になる3つの第1積載台51a・第2積載台51b・回動積載台51cを装備した予備苗載部50であってもリンク機構52を短く小型の構成とすることができ、機体の小型軽量化が図れる。
【0009】
また、予備苗載部50は、小型軽量化が図れた前後方向に連なり同一平面状になる3つの第1積載台51a・第2積載台51b・回動積載台51cを装備しているので、畦や道路と圃場の間に水路等があって離れていても展開状態の予備苗載部50先端部は畦上に位置させることができて苗供給作業が効率良く容易に行える。
【0010】
請求項2記載の発明は、回動積載台51cの上面側及び下面側に各々左右側壁54aを設けた請求項1に記載の乗用型苗植機である。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の作用効果に加えて、回動積載台51cの上面側及び下面側に各々左右側壁54aを設けたので、回動積載台51cが展開状態または積層状態の何れの状態であっても、苗箱を脱落するような事態を回避して適切に載置できる。
【0012】
請求項3記載の発明は、回動積載台51cが展開状態で上面側に左右側壁54aを設け、下面側に空箱収納部55を設けた請求項1に記載の乗用型苗植機である。
【0013】
請求項4記載の発明は、回動積載台51cの載置面54b先端部に開口状の把持部54eを設けた請求項1~請求項3の何れか1項に記載の乗用型苗植機である。
【0014】
請求項5記載の発明は、回動積載台51cが展開状態で上面側に左右側壁54aを設け、下面側に突出した把持部54eを設けた請求項1~請求項3の何れか1項に記載の乗用型苗植機である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態にかかる乗用型田植機の側面図である。
図2】同乗用型田植機の予備苗載部の作用説明用の側面図である。
図3】同乗用型田植機の予備苗載部の平面図である。
図4】本発明の第2実施形態を示す予備苗載部の作用説明用の側面図である。
図5】本発明の第3実施形態を示す予備苗載部の作用説明用の側面図である。
図6】本発明の実施形態におけるフロントグリップ部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本願の開示する乗用型苗植機の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0017】
図1を参照して実施形態に係る乗用型苗植機としての乗用型田植機1の全体構成について説明する。
【0018】
乗用型田植機1は、圃場を走行可能な走行車体2を備える。走行車体2は、左右一対の前輪3と、左右一対の後輪4とを備える。なお、走行車体2は、たとえば、前輪3および後輪4が駆動する四輪駆動となる。走行車体2の後部には、昇降装置20によって昇降駆動される苗植付部30が設けられる。
【0019】
走行車体2は、機体フレーム5と、機体フレーム5上に設けられたエンジンEと、エンジンEで発生した動力を駆動輪および苗植付部30に伝達する動力伝達装置6とを備える。すなわち、動力源であるエンジンEで発生した動力は、走行車体2を前進または後進させるために使用されるだけでなく、苗植付部30を駆動するためにも使用される。
【0020】
エンジンEは、左右方向における走行車体2の中央部で、走行車体2に搭乗した作業者が足を載せるフロアステップ7よりも上方に突出した位置に配置される。なお、エンジンEとしては、ディーゼル機関やガソリン機関などの熱機関が用いられる。フロアステップ7は、前後方向において、走行車体2の前部に設けられる。フロアステップ7は、走行車体2の前部からエンジンEの後部にかけて設けられる。
【0021】
フロアステップ7は、機体フレーム5上に取り付けられる。フロアステップ7のうち、たとえば、後述する操縦席9付近の一部などは作業者の靴などに付着した泥などを圃場に落とせるように、平面視において格子状に形成される。
【0022】
また、フロアステップ7の前部には、フロントステップ7Fが設けられ、フロアステップ7の左右外側には左右拡張サイドステップ7Sが設けられている。なお、フロアステップ7の後部には、後輪4のフェンダを兼ねるリヤステップ7Rが設けられ、左右拡張サイドステップ7Sの外側部には、作業者が車体に乗降する乗降ステップ7Jが設けられている。
【0023】
エンジンEは、エンジンカバー8に覆われている。エンジンカバー8の上方には操縦席9が設けられる。動力伝達装置6は、エンジンEから動力が伝達されるベルト式動力伝達部6aと、エンジンEからベルト式動力伝達部を介して伝達される動力を変速する変速装置である油圧式無段変速機と、ミッションケース6bとを備える。
【0024】
油圧式無段変速機は、たとえば、HSTといわれる静油圧式無段変速機である。油圧式無段変速機は、主変速レバーが操作されることで、出力(回転速度)と出力方向(回転方向)とを変更可能である。すなわち、油圧式無段変速機は、回転速度や回転方向を変更することで、走行車体2の前後進や走行速度を変更可能である。
【0025】
ミッションケース6bには、油圧式無段変速機によって変速されたエンジンEからの動力を各部に伝達する伝動装置が設けられる。ミッションケース6bは、走行時や作業時における走行速度を切り替える副変速機構を備える。ミッションケース6bは、副変速レバーが操作されると、走行車体2の走行速度を、たとえば、植付作業時の走行速度よりも高速な走行速度、植付作業時における苗植付速度などに切り替え可能である。
【0026】
走行車体2は、フロアステップ7上に操縦席9を備える。操縦席9は、作業者が操縦時に着席する座席である。
【0027】
走行車体2は、操縦席9の前方に、ステアリングハンドル10や植付レバーなどを備える。ステアリングハンドル10は、走行車体2のボンネット11に設けられ、作業者に操作されることで、走行車体2を操舵するものである。なお、植付レバーは、クラッチレバーであり、ボンネット11に設けられ、苗植付部30を昇降させたり、苗植付部30による苗の植え付けを開始および停止させるために操作するレバーである。
【0028】
また、走行車体2は、主変速レバーと、副変速レバーとを備える。主変速レバー(HSTレバーともいう)は、走行車体2の前後進および走行速度を変更する場合に操作されるレバーである。副変速レバーは、走行車体2の走行速度を、走行する場所(圃場や路上)に応じた速度に切り替える場合に操作されるレバーである。
【0029】
また、ボンネット11は、フロアステップ7から上方に突出して設けられ、フロントカバー11aに覆われている。ボンネット11には、たとえば、表示部(メータパネル)が設けられる。表示部は、操縦席9に着席して前方を向いた作業者と対面するように、後下がりに傾斜した表示面を有する。
【0030】
表示部は、たとえば、圃場面に直進の目安となる進行基準線を形成する後述する線引きマーカが走行車体の左右側部に出ていることを検知するマーカセンサ、植付レバーの操作位置を検知する植付レバーポジションセンサ、施肥装置40の貯留ホッパ41に貯留された肥料が所定量を下回ったことを検知する肥料切れセンサ、貯留ホッパ41から送られた肥料が供給経路に詰まったことを検知する肥料詰まりセンサなどの各種センサ類からの情報を表示する。
【0031】
乗用型田植機1は、昇降装置20と、苗植付部30とを備える。昇降装置20は、昇降リンク21を備える。昇降リンク21は、走行車体2の後部と苗植付部30とを連結する平行リンクであり、走行車体2の後部のリンクフレームと苗植付部30とのそれぞれに対して上下方向に回動自在に連結されることで、走行車体2に対して苗植付部30を昇降可能に連結する。
【0032】
また、昇降装置20は、油圧式の昇降シリンダ22を備える。昇降シリンダ22は、植付レバーが操作されて油圧バルブが切り替えられることで、伸縮動作する。昇降シリンダ22は、伸縮動作することで昇降リンク21を駆動して、苗植付部30を昇降させる。すなわち、昇降シリンダ22は、植付レバーが操作されることで、苗植付部30を上昇させた非作業位置、苗植付部30を下降させた対地作業位置(植付位置)に切り替える。
【0033】
苗植付部30は、上記したように、昇降リンク21を介して走行車体2の後部に取り付けられる。苗植付部30は、たとえば、複数の列(条)で苗を植え付けることが可能である。苗植付部30は、苗載置台31と、フロート32と、植付装置33とを備える。
【0034】
苗載置台31は、機体の左右方向において、植付条数分の苗載せ面を有する。各苗載せ面は、上下方向に複数枚のマット苗(土付きマット苗)を載置可能な後下がりの傾斜面である。
【0035】
フロート32は、走行車体2の移動に伴い圃場(水田)の圃場面上を滑走しながら整地する。フロート32は、機体の左右方向において、機体中央部に配置されるセンターフロートと、センターフロートを挟んで左右方向の外側に配置されるサイドフロートとを備える。なお、図示の例では、乗用型田植機1は、整地装置である整地ロータ13をさらに備える。
【0036】
フロート32の各フロート(センターフロートおよびサイドフロート)は、圃場面の凹凸に応じて前部が上下動するように、走行車体2に回動自在に取り付けられる。
【0037】
植付作業時には、センターフロートの前部の上下動が回動センサによって検知され、回動センサの検知結果に応じて制御部によって昇降シリンダ22の伸縮動作を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部30を昇降させ、苗の植え付け深さを調節することができる。
【0038】
植付装置33は、苗載置台31の植付支持フレームによって支持されることで、苗載置台31の下方に配置される。植付装置33は、苗載置台31に載置された苗を圃場に植え付ける。植付装置33は、植込杆331と、ロータリーケース332と、植付ケース333とを備える。植込杆331は、苗載置台31に載置されたマット苗から苗をとって圃場面に植え付ける。
【0039】
ロータリーケース332は、植付ケース333を回転可能に支持する。ロータリーケース332には、植込杆331の回転速度を変化させながら植込杆331を回転させることが可能な不等速伝動機構が設けられる。植込杆331は、ロータリーケース332に対する回転角度によって回転速度を変えながら回転する。
【0040】
乗用型田植機1は、施肥装置40を備える。施肥装置40は、圃場に肥料を散布する装置である。乗用型田植機1においては、苗植付部30によって圃場に苗を植え付けながら、施肥装置40によって圃場に肥料を散布する。施肥装置40は、たとえば、走行車体2の後部上方であり操縦席9の後方に設けられる。施肥装置40は、肥料を貯留する貯留ホッパ41を備える。
【0041】
乗用型田植機1は、走行車体2の前側における左右側部に各々予備苗載部50を備える。
【0042】
ここで、図2及び図3に基づいて、予備苗載部50の詳細構成を説明する。
【0043】
予備苗載部50は、下段の第1積載台51aが機体に固定され、上段の第2積載台51bがリンク機構52にて回動自在に設けられている。
【0044】
下段の第1積載台51aの上に上段の第2積載台51bが位置する積層状態と下段の第1積載台51aの前方に上段の第2積載台51bが位置し直線状に展開した展開状態にリンク機構52にて姿勢変更できる。
【0045】
そして、上段の第2積載台51bには、前端側に枢軸53にて回動自在に支持された回動積載台51cが設けられている。
【0046】
上段の第2積載台51bの上に回動積載台51cが位置する積層状態と上段の第2積載台51bの前方に回動積載台51cが位置し直線状に展開した展開状態に枢軸53回りに回動積載台51cを回動させて姿勢変更できる。
【0047】
即ち、3つの第1積載台51a・第2積載台51b・回動積載台51cが上下3段となって平面視で重複した積層状態と、リンク機構52にて上段の第2積載台51bが前方向に回動して下降し直線状に展開し、枢軸53回りに回動積載台51cを前方に回動させた展開状態(3つの第1積載台51a・第2積載台51b・回動積載台51cが前後方向に連なり同一平面状になっている状態)に切り替え自在である。
【0048】
下段の第1積載台51a及び上段の第2積載台51bは、パレット状であり、上面側に一対の左右側壁54aと載置面54bと後部壁54cを備える。なお、前部壁を設けても良い。
【0049】
回動積載台51cは、パレット状であり、上面側及び下面側に各々一対の左右側壁54aと載置面54bと後部壁54cを備える。なお、前部壁を設けても良い。
【0050】
また、上段の第2積載台51bの前部及び後部の内側方には、各々把持部54dが設けられており、作業者は、何れか把持しやすい側の把持部54dを把持して、上段の第2積載台51bを前方下方に移動させて展開状態に切り替えたり、後方上方に移動させて積層状態に切り替えたりする。
【0051】
そして、回動積載台51cの載置面54b先端部には、開口状の把持部54eが設けられており、作業者は、該把持部54eを把持して、回動積載台51cを枢軸53回りに前方に回動させて展開状態に切り替える。
【0052】
次に、予備苗載部50を用いた田植作業について説明する。
【0053】
路上での移動や圃場間移動やトラック積載時には、予備苗載部50を3つの第1積載台51a・第2積載台51b・回動積載台51cが上下3段となって平面視で重複した積層状態にする。
【0054】
従って、機体がコンパクトな状態となり、安全に操縦性良く移動でき、また、トラックにコンパクトに積載できる。
【0055】
圃場内で田植作業を行う時には、予備苗載部50を作業者が把持部54dを把持してリンク機構52にて上段の第2積載台51bが前方向に回動して下降し直線状に展開し、また、把持部54eを把持して枢軸53回りに回動積載台51cを前方に回動させた展開状態(3つの第1積載台51a・第2積載台51b・回動積載台51cが前後方向に連なり同一平面状になっている状態)にする。
【0056】
すると、展開状態の予備苗載部50先端部は、走行車体2前端から前方に大きく突出した状態となる。
【0057】
そこで、畦や道路に置いているマット状土付き苗が入った苗箱を乗用型田植機1に搭載する作業は、次のように行なう。
【0058】
乗用型田植機1前端部を畦や道路に着けると、展開状態の予備苗載部50先端部が走行車体2前端から前方に大きく突出した状態であるから、畦や道路と圃場の間に水路等があっても展開状態の予備苗載部50先端部は畦上に位置する。
【0059】
そこで、畦に居る作業者は、畦に置いている苗箱を展開状態の予備苗載部50先端部(回動積載台51c)に載せて3つの第1積載台51a・第2積載台51b・回動積載台51cが前後方向に連なり同一平面状になっている3つの載置面54b上を機体側に押して、3つの第1積載台51a・第2積載台51b・回動積載台51cに順次3つの苗箱を載せる。
【0060】
機体に搭乗している作業者は、予備苗載部50後端部(第1積載台51a)に載っている苗箱から苗掬い板でマット状土付き苗を掬い出して苗植付部30の苗載置台31に供給し、予備苗載部50後端部(第1積載台51a)の空の苗箱を取り除く。
【0061】
畦に居る作業者は、機体に搭乗している作業者が予備苗載部50後端部(第1積載台51a)の空の苗箱を取り除くたびに、畦に置いている苗箱を展開状態の予備苗載部50先端部(回動積載台51c)に載せて3つの第1積載台51a・第2積載台51b・回動積載台51cが前後方向に連なり同一平面状になっている3つの載置面54b上を機体側に押す。
【0062】
以上の作業を繰り返して、苗植付部30の苗載置台31にマット状土付き苗を満載する。
【0063】
そして、機体に搭乗している作業者は、空の苗箱を機体から畦に降ろし、畦に居る作業者は、3つの第1積載台51a・第2積載台51b・回動積載台51cに3つの苗箱を載せる。
【0064】
機体に搭乗している作業者は、操縦席9に着座して機体を操縦して畦から離れて圃場の所定の経路を走行して田植作業を行う。
【0065】
田植作業中に苗載置台31の苗が残り少なくなれば、機体を停止して、予備苗載部50の第1積載台51a・第2積載台51b・回動積載台51cに載せている苗箱から苗掬い板でマット状土付き苗を掬い出して苗植付部30の苗載置台31に供給して、田植作業を続行する。
【0066】
以上要するに、予備苗載部50を機体に固定した第1積載台51aに対してリンク機構52にて積層状態と機体に固定した第1積載台51aの前側に位置する直線状に展開した展開状態に姿勢変更できる第2積載台51bを設け、該姿勢変更できる第2積載台51bに積層状態と機体前方に枢軸53にて回動して直線状に展開した展開状態に姿勢変更できる回動積載台51cを設けたので、前後方向に連なり同一平面状になる3つの第1積載台51a・第2積載台51b・回動積載台51cを装備した予備苗載部50であるがリンク機構52を短く小型の構成とすることができ、機体の小型軽量化が図れる。
【0067】
そして、予備苗載部50は、小型軽量化が図れた前後方向に連なり同一平面状になる3つの第1積載台51a・第2積載台51b・回動積載台51cを装備しているので、畦や道路と圃場の間に水路等があって離れていても展開状態の予備苗載部50先端部は畦上に位置させることができて苗供給作業が効率良く容易に行える。
【0068】
一方、田植作業時に予備苗載部50の3つの第1積載台51a・第2積載台51b・回動積載台51cを積層状態で使用する際には、枢軸53にて回動して姿勢変更する回動積載台51cの上面側及び下面側に各々一対の左右側壁54aと載置面54bと後部壁54cを設けたので、回動積載台51cが積層状態にして上下反転していても左右側壁54aと載置面54bと後部壁54cがあり苗箱を脱落するような事態を回避して適切に載置できる。
【0069】
図4は予備苗載部50の第2実施形態を示す。
【0070】
即ち、回動積載台51cは、展開状態にした時の上面側に一対の左右側壁54aと載置面54bと後部壁54cを設け、下面側にレバー状の把持部54eを設けている。
【0071】
図5は予備苗載部50の第3実施形態を示す。
【0072】
即ち、回動積載台51cは、展開状態にした時の上面側に一対の左右側壁54aと載置面54bと後部壁54cを設け(なお、前部壁を設けても良い)、下面側に杆体にて構成した空の苗箱を収納する空箱収納枠55を設けている。
【0073】
予備苗載部50の3つの第1積載台51a・第2積載台51b・回動積載台51cを積層状態にした時に、該回動積載台51cの空箱収納枠55は、空になった苗箱を挿入する挿入口55aが機体後方を向いて開口した状態となり、作業者が苗箱から苗救い板にてマット状土付き苗を掬い出した後の空の苗箱を該挿入口55aから挿し込んで空箱収納枠55に載置収納する。
【0074】
図1及び図6に示すように、乗用型田植機1は、機体前端部にセンタマスコット60とフロントグリップ70を装備する。
【0075】
センタマスコット60は、機体から前方に向けて延出した支持フレーム61の先端部に前後回動自在に枢支軸62にて基部が枢支されており、機体前方に突出した使用状態と機体後方に傾斜させた収納状態に姿勢変更できる。
【0076】
センタマスコット60は、機体前方に突出した使用状態にして、操縦席9に着座した作業者が前工程で左右線引きマーカ80にて圃場に引いた次工程の機体中心線に合わせて機体を操向操作して機体を直進させるための指標である。
【0077】
フロントグリップ70は、支持フレーム61の先端部に基部を固定したU字状パイプ材70aの左右上端部に各々左右グリップ70bの基部を挿し込んで上下位置調節自在に固定できる構成である。
【0078】
左右グリップ70bには、各々スロットルレバー80aと植付部上昇レバー80bが設けられている。
【0079】
スロットルレバー80a及び植付部上昇レバー80bは、作業者が左右グリップ70bを握ってフロントグリップ70にて機体前部に体重をかけて機体の転倒を防止した状態で操作できる。
【0080】
スロットルレバー80aは、握り操作することによりエンジンEの回転数を上げることができる。
【0081】
植付部上昇レバー80bは、握り操作することにより油圧バルブを切り替えて昇降シリンダ22を伸長させて苗植付部30を上昇させることができる。
【0082】
畦を越えて圃場に出入りする際に、作業者は機体から降りて機体の前側に立ち、センタマスコット60を機体後方側に傾斜させて邪魔にならないようにし、左右グリップ70bの上下位置調節をして作業者が握って操作し易い高さにする。
【0083】
この時、フロントグリップ70は、U字状で中央に空間があるので、センタマスコット60を容易に傾斜調節することができる。
【0084】
そして、機体を微速前進させ、操縦者は左右グリップ70bを握ってフロントグリップ70に体重をかけて機体が転倒しないようにして、機体の畦越えを行う。
【0085】
この時、フロントグリップ70は、T字状で左右グリップ70bが左右に離間した位置にあり、作業者は容易に該左右グリップ70bを握って機体操作が行える。
【0086】
また、機体の推進力が不足する場合にはスロットルレバー80aを握り操作して容易にエンジンEの回転数を上げることができる。
【0087】
また、畦を登るときに機体後部の苗植付部30が接地しそうな時には植付部上昇レバー80bを握り操作して容易に苗植付部30を任意量上昇させることができる。
【0088】
他の実施形態として、植付部上昇レバー80bに換えてデフロックレバーを設けて、必要時にデフロックレバーを握り操作してデフロックできるようにしても良い。
【0089】
他の実施形態として、スロットルレバー80aに換えて微速レバーを設けて、必要時に微速レバーの握り操作によりHSTを操作して車速を更に遅い超低速にできるようにしても良い。
【0090】
なお、上記のスロットルレバー80aや植付部上昇レバー80b等の各種レバーは、左右グリップ70bの下方位置に設けても良いし、左右グリップ70bの後方位置に設けても良い。
【0091】
また、フロントグリップ70の前側に折り畳み自在の補助苗載台を設けても良い。
【0092】
即ち、支持フレーム6の先端部の前側に機体左右方向の枢支軸で基部が枢支され、前方に向けて水平に延びる苗載せ作用状態と下方に垂れ下がった収納状態に切り替え自在に補助苗載台を設ける。
【0093】
補助苗載台を前方に向けて水平に延びる苗載せ作用状態にすると、畦に置いている苗箱を予備苗載部50に積み込む際に、機体前部左右中央位置にある補助苗載台に一時的に苗箱を置くことができて、作業性が良い。
【符号の説明】
【0094】
2 走行車体
30 苗植付部
50 予備苗載部
51a 第1積載台
51b 第2積載台
51c 回動積載台
52 リンク機構
53 枢軸
54a 左右側壁
54b 載置面
54e 把持部
55 空箱収納部
図1
図2
図3
図4
図5
図6