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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024990
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】車椅子及び車椅子ユニット
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/08 20060101AFI20240216BHJP
   A61G 5/12 20060101ALI20240216BHJP
   A61G 5/10 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
A61G5/08 701
A61G5/12 701
A61G5/10 703
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128035
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】513294183
【氏名又は名称】有間 幸治
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 貴史
(74)【代理人】
【識別番号】100225347
【弁理士】
【氏名又は名称】鬼澤 正徳
(72)【発明者】
【氏名】有間 幸治
(57)【要約】
【課題】被介護者が座る座部を上昇及び下降させることが可能であり、かつ、被介護者が座部に座っていない状態で折り畳むことができる車椅子を提供する。
【解決手段】駆動輪15が取り付けられたフレーム13、駆動輪16が取り付けられたフレーム16と、フレーム13,14により支持される座部と、を有する車椅子11において、フレーム13に設けられて座部を支持する支持部21と、フレーム14に設けられて座部を支持する支持部24と、座部を支持部21,24に取り付け及び取り外しできるようにするガイド部19,20,22,23と、座部に設けられる受け部と、フレーム13,14に設けられ、かつ、座部の移動方向を鉛直方向に設定するガイド部19,20,22,23と、座部が支持部21,24から取り外された状態で、フレーム13,14を展開状態と折り畳み状態とで相互に変更可能とする背もたれ26と、を有する車椅子11を構成した。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1駆動輪及び第2駆動輪が取り付けられたフレームと、
前記フレームにより支持され、かつ、被介護者が座る座部と、
前記フレームに設けられ、かつ、前記座部に座る前記被介護者の背中を支持する背もたれと、
を有する車椅子において、
前記フレームに設けられ、かつ、前記座部を鉛直方向の所定位置で支持する支持部と、
前記フレームに設けられ、かつ、前記座部を前記支持部に取り付け及び取り外しできるようにする着脱機構と、
前記座部に設けられ、かつ、前記鉛直方向で前記座部の下に置かれるアクチュエータの押圧力を受ける受け部と、
前記フレームに設けられ、かつ、前記アクチュエータの押圧力を受けて前記支持部から離間されている前記座部の移動方向を前記鉛直方向に設定するガイド部と、
前記座部が前記支持部から取り外された状態で、前記フレームを展開状態と折り畳み状態とで相互に変更可能とする変更機構と、
を有する、車椅子。
【請求項2】
請求項1記載の車椅子において、
前記ガイド部は、前記座部を前記鉛直方向に移動させることにより、前記座部を前記支持部に取り付け及び取り外しさせる着脱機構を兼ねている、車椅子。
【請求項3】
請求項1または2記載の車椅子において、
前記フレームは、
前記第1駆動輪が取り付けられた第1フレームと、
前記第2駆動輪が取り付けられ、かつ、前記鉛直方向に交差する方向で前記第1フレームに対して間隔をおいて配置される第2フレームと、
を有し、
前記ガイド部は、
前記第1フレームに設けられ、かつ、前記鉛直方向に沿って延ばされた第1ガイド部と、
前記第2フレームに設けられ、かつ、前記鉛直方向に沿って延ばされた第2ガイド部と、
を有し、
前記支持部は、
前記第1フレームに設けられた第1支持部と、
前記第2フレームに設けられ、かつ、前記鉛直方向で前記第1支持部と同じ位置に配置された第2支持部と、
を有し、
前記第1支持部及び前記第2支持部は、前記第1フレームと前記第2フレームとの間に配置される前記座部を前記鉛直方向の所定位置で支持する、車椅子。
【請求項4】
請求項3記載の車椅子において、
前記第1支持部は、前記鉛直方向で上に向けて突出された第1凸部を有し、
前記第2支持部は、前記鉛直方向で上に向けて突出された第2凸部を有し、
前記座部は、
前記第1凸部が進入及び退出できる第1係合穴と、
前記第2凸部が進入及び退出できる第2係合穴と、
を有する、車椅子。
【請求項5】
請求項1または2記載の車椅子において、
前記受け部は、前記フレームを前記鉛直方向の真上から見た平面視で、前記座部の中央に配置されている、車椅子。
【請求項6】
請求項1または2記載の車椅子において、
前記背もたれは、展開及び折り畳みができる構成を有し、
前記背もたれは、前記変更機構を兼ねている、車椅子。
【請求項7】
第1駆動輪及び第2駆動輪が取り付けられたフレームと、
前記フレームにより支持され、かつ、被介護者が座る座部と、
前記フレームに設けられ、かつ、前記座部に座る前記被介護者の背中を支持する背もたれと、
を有する車椅子ユニットにおいて、
前記フレームに設けられ、かつ、前記座部を鉛直方向の所定位置で支持する支持部と、
前記座部を前記支持部に取り付け及び取り外しできるようにする着脱機構と、
前記鉛直方向で前記座部の下に置かれ、かつ、押圧力を生成するアクチュエータと、
前記座部に設けられ、かつ、前記アクチュエータの押圧力を受ける受け部と、
前記フレームに設けられ、かつ、前記アクチュエータの押圧力を受けて前記支持部から離間されている前記座部の移動方向を前記鉛直方向に設定するガイド部と、
前記座部が前記支持部から取り外された状態で、前記フレームを展開状態と折り畳み状態とで相互に変更可能とする変更機構と、
を有する、車椅子ユニット。
【請求項8】
請求項7記載の車椅子において、
前記アクチュエータは、油圧に応じた押圧力を前記受け部に付与する油圧ジャッキである、車椅子ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被介護者が座る座部を上昇及び下降させることの可能な車椅子及び車椅子ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
被介護者が座る座部を上昇及び下降させることの可能な車椅子の一例が、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された車椅子は、車輪が取り付けられた支持フレームと、支持フレームに設けられた昇降シリンダと、昇降シリンダの上端に取り付けられた椅子台とを有する。椅子台は、被介護者が座る座部(前板)と、座部の後方に設けられた後部張出板と、座部の両側に設けられた側板と、を有する。昇降シリンダは、座部の略中央位置を支え、シリンダをガス圧で突出入させることで、座部の昇降高さを調節するジャッキである。なお、被介護者が座る座部を上昇及び下降させることの可能な車椅子は、特許文献2及び特許文献3にも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3213246号公報
【特許文献2】特許第4583812号公報
【特許文献3】特許第5771344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、特許文献1乃至3に記載された車椅子は、被介護者が座部に座っていない状態で折り畳むことができない、という課題を認識した。
【0005】
本開示の目的は、被介護者が座る座部を上昇及び下降させることが可能であり、かつ、被介護者が座部に座っていない状態で折り畳むことができる車椅子及び車椅子ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、第1駆動輪及び第2駆動輪が取り付けられたフレームと、前記フレームにより支持され、かつ、被介護者が座る座部と、前記フレームに設けられ、かつ、前記座部に座る前記被介護者の背中を支持する背もたれと、を有する車椅子において、前記フレームに設けられ、かつ、前記座部を鉛直方向の所定位置で支持する支持部と、前記フレームに設けられ、かつ、前記座部を前記支持部に取り付け及び取り外しできるようにする着脱機構と、前記座部に設けられ、かつ、前記鉛直方向で前記座部の下に置かれるアクチュエータの押圧力を受ける受け部と、前記フレームに設けられ、かつ、前記アクチュエータの押圧力を受けて前記支持部から離間されている前記座部の移動方向を前記鉛直方向に設定するガイド部と、前記座部が前記支持部から取り外された状態で、前記フレームを展開状態と折り畳み状態とで相互に変更可能とする変更機構と、を有する車椅子を構成した。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、被介護者が座る座部を上昇及び下降させることが可能であり、かつ、被介護者が座部に座っていない状態でフレームを折り畳むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(A),(B)は、車椅子ユニットの斜視図である。
図2】(A)は、車椅子ユニットの模式的な側面図、(B)は、車椅子ユニットの模式的な平面図である。
図3】(A),(B)は、車椅子の座部の昇降動作を示す側面断面図である。
図4】(A)は、座部を取り外した車椅子の展開状態を示す斜視図、(B)は、座部を取り外した車椅子の折り畳み状態の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示における車椅子ユニットの一実施形態を、図面を参照して説明する。図1(A),(B)に示す車椅子ユニット10は、車椅子11及び油圧ジャッキ12を有する。車椅子11は、第1フレーム13及び第2フレーム14と、第1フレーム13に取り付けられた駆動輪15と、第2フレーム14に取り付けられた駆動輪16と、第1フレーム13に取り付けられた補助輪17と、第2フレーム14に取り付けられた補助輪18と、を有する。また、車椅子11は、第1フレーム13に設けられたガイド部19,20及び支持部21、第2フレーム14に設けられたガイド部22,23及び支持部24、2つの支持部21,24により支持される座部25、第1フレーム13と第2フレーム14とを接続する背もたれ26と、を有する。
【0010】
車椅子11を前方から、つまり正面から見ると、左側に第1フレーム13が配置され、右側に第2フレーム14が配置される。車椅子11を正面から見ると、第1フレーム13と第2フレーム14とは、左右対称の形状を備えている。第1フレーム13は、第1縦部材44及び第2縦部材27と、第1横部材28及び図2(B)に示す第2横部材29を有する。第1縦部材44及び第2縦部材27は、高さ方向に延ばされている。第1横部材28及び第2横部材29は、水平方向に、かつ、車椅子11の前後方向に延ばされている。車椅子11の前後方向で、第1縦部材44は第2縦部材27より前方に配置されている。車椅子11の高さ方向で、第1横部材28は第2横部材29より上に配置されている。車椅子11の高さ方向は、第1フレーム13及び第2フレーム14の高さ方向と同じであり、かつ、重力の作用方向を示す鉛直方向と同義である。
【0011】
第2フレーム14は、第1縦部材30及び第2縦部材31と、第1横部材32及び第2横部材33を有する。第1縦部材30及び第2縦部材31は、高さ方向に延ばされている。第1横部材32及び第2横部材33は、水平方向に延ばされ、かつ、車椅子11の前後方向に延ばされている。車椅子11の前後方向で、第1縦部材30は第2縦部材31より前方に配置されている。車椅子11の高さ方向で、第1横部材32は第2横部材33より上に配置されている。
【0012】
第1縦部材44、第2縦部材27、第1横部材28、第2横部材29は、金属製の棒材(パイプ)である。つまり、第1フレーム13は、棒材(パイプ)が屈曲されたり、複数の棒材同士が溶接されること、または、複数の棒材がねじ部材により連結されることにより、構成されている。第1縦部材30、第2縦部材31、第1横部材32、第2横部材33は、金属製の棒材(パイプ)である。つまり、第2フレーム14は、棒材(パイプ)が屈曲されたり、複数の棒材同士が溶接されること、または、複数の棒材がねじ部材により連結されることにより、構成されている。金属製の棒材は、一例としてアルミニウム、ステンレス、鋼を含む。第2縦部材27の上端に、手押しハンドル45が設けられ、第2縦部材31の上端に、手押しハンドル46が設けられている。手押しハンドル45,46は、介護者が車椅子11の移動及び停止を補助する場合に、介護者が手で掴む部位である。
【0013】
駆動輪15は、第1フレーム13に対して車軸を介して回転可能に取り付けられている。駆動輪16は、第2フレーム14に対して車軸を介して回転可能に取り付けられている。なお、図2(A),(B)に示す被介護者P1が右手で操作するハンドリムが駆動輪15に設けられ、被介護者P1が左手で操作するハンドリムが駆動輪16に設けられている。さらに、駆動輪15及び駆動輪16に制動力を付与するブレーキが設けられている。便宜上、ハンドリム及びブレーキは、図示を省略している。補助輪17は、第1縦部材44の下端に回転可能に取り付けられ、補助輪18は、第1縦部材30の下端に回転可能に取り付けられている。補助輪17,18は、車椅子11の移動方向を変更し易くするキャスターである。
【0014】
2つのガイド部19,20は、第1フレーム13に溶接、または、ねじ部材により固定されている。2つのガイド部19,20は、車椅子11の前後方向に間隔をおいて配置されている。また、2つのガイド部19,20は、図2(A)のように高さ方向に延ばされ、かつ、互いに平行に配置されている。また、支持部21は、2つのガイド部19,20に対して、溶接またはねじ部材により固定されている。支持部21は、金属製の板であり、支持部21の上面は水平である。図3(A),(B)のように、支持部21の上面には、車椅子11の前後方向に間隔をおいて複数の凸部34が設けられている。複数の凸部34は、支持部21の上面から上に向けて突出されている。
【0015】
2つのガイド部22,23は、第2フレーム14に溶接、または、ねじ部材により固定されている。図2(B)のように、2つのガイド部22,23は、車椅子11の前後方向に間隔をおいて配置されている。また、2つのガイド部22,23は、高さ方向に延ばされ、かつ、互いに平行に配置されている。4つのガイド部19,20,22,23は、座部25の移動方向を鉛直方向に設定し、かつ、座部25が鉛直方向に対して交差する方向に移動することを規制する。また、支持部24は、2つのガイド部22,23に対して、溶接またはねじ部材により固定されている。支持部は、金属製の板であり、支持部24の上面は水平である。支持部24の上面には、車椅子11の前後方向に間隔をおいて複数の凸部35が設けられている。複数の凸部35は、支持部24の上面から上に向けて突出されている。支持部21,24は、座部25及び被介護者P1の荷重を支えられる強度を有している。支持部21の上面及び支持部24の上面は、鉛直方向で同じ位置に配置されている。
【0016】
座部25は、4つのガイド部19,20,22,23の間に配置され、かつ、2つの支持部21,24により支持される。座部25は、図2(A)のように被介護者P1が着座する要素であり、座部25は、一例として木製、合成樹脂製である。座部25は、支持部21,24に取り付け及び取り外しできる。座部25の外周の平面形状は、略四角形である。座部25の四隅の外面には、スライダ47がそれぞれ固定されている。各スライダ47は金属製であり、各スライダ47は、4つのガイド部19,20,22,22に別個に接触して高さ方向に移動可能である。このため、座部25は、4つのガイド部19,20,22,23に沿って高さ方向、つまり、図2(A)、及び図3(A),(B)において上下方向に移動可能である。座部25には、複数の係合穴36が設けられている。複数の係合穴36は、座部25を厚さ方向に貫通していてもよいし、座部25を厚さ方向に貫通していなくてもよい。座部25の厚さ方向は、座部25が支持部21,24で支持された状態で高さ方向と同義である。
【0017】
図2(B)のように車椅子11を平面視すると、複数の係合穴36は、座部25の四隅に設けられている。本実施形態において、車椅子11の平面視とは、重力の作用方向、つまり、鉛直方向で車椅子11を真上から俯瞰することを意味する。図2(A)には、鉛直方向を鉛直線D1として示してある。図2(A)では、車椅子11の形状を表す平面に対して垂直である。図3(A),(B)のように、座部25が高さ方向に移動されると、各係合穴36に各凸部34,35が、それぞれ単独で進入及び退出される。図3(B)のように、座部25が2つの支持部21,24により支持されていると、座部25は、車椅子11の左右方向で第1フレーム13と第2フレーム14との間隔が狭くなることを防止する役割を果たす。座部25の上面25Bは、被介護者P1の臀部の形状、及び下肢の形状に沿って湾曲されている。また、座部25の上にクッション、例えば、座布団等が置いてもよいが、ここでは、クッションの図示を省略している。
【0018】
図1(A),(B)、図2(A)、図3(A),(B)のように、座部25の下面には、受け部37が設けられている。受け部37は、油圧ジャッキ12から付与される押圧力を受ける機能と、座部25及び被介護者P1の荷重を、油圧ジャッキ12に伝達する機能とを有する。受け部37は、一例として、木製または金属製の円柱である。受け部37は、座部25及び被介護者P1の荷重に耐えられる強度を有する。図2(B)のように、車椅子11を平面視すると、受け部37は座部25の略中央に配置されている。
【0019】
さらに、具体的に説明すると、座部25の対向する隅を通る2本の対角線B1,B2の交点C1は、受け部37の配置領域に含まれている。また、対角線B1は、ガイド部19とガイド部23とを結ぶ仮想線として把握することもできる。対角線B2は、ガイド部22とガイド部20とを結ぶ仮想線として把握することもできる。図2(A)では、受け部37の中心を表す仮想線Q1と、鉛直線D1とが共通の位置に示されている。受け部37は、座部25の下面から下に向けて突出されている。なお、受け部37の下端に、衝撃を吸収する合成ゴム製のクッションが取り付けられていてもよい。
【0020】
背もたれ26は、第1フレーム13と第2フレーム14とを接続するように設けられている。背もたれ26は、座部25に着座する被介護者P1の背中を支持する要素である。背もたれ26は、一例として、合成樹脂製、レザー製等である。背もたれ26は、可撓性を備えており、高さ方向の折線に沿って折り畳むことができる。さらに、アームサポート38が、第1横部材28,32にそれぞれ設けられている。アームサポート38は、被介護者P1が座部25に座った状態で腕を置く要素である。また、被介護者P1が座部25に座った状態から立ち上がる過程、または、被介護者P1が座部25に座る過程において、被介護者P1が手を置いて体重を支える役割を果たす。
【0021】
車椅子11は、座部25が取り外されている状態において、展開状態と、折り畳んだ状態とに切り換えるための折り畳み機構を備えている。本実施形態において、車椅子11を折り畳んだ状態、または車椅子11の折り畳み状態は、車椅子11の展開状態に比べて、左右方向、前後方向、高さ方向のうち、少なくとも1つの方向における車椅子11の占有範囲が狭いことを意味する。ここでは、図4(B)に示す車椅子11の折り畳み状態のように、図4(A)に示す車椅子11の展開状態に比べて、左右方向の占有範囲が狭い例を説明する。
【0022】
車椅子11の展開状態と折り畳み状態との切り替えは、座部25が支持部21,24から取り外され、かつ、座部25がガイド部19,20,22,23の間から取り除かれた状態で行われる。折り畳み機構の一例は、背もたれ26を展開及び折り畳み可能な材質で構成することである。そして、背もたれ26を折線に沿って折り曲げることにより、車椅子11を折り畳み状態とすることができる。折り畳み状態は、第1フレーム13と第2フレーム14とを接近させた状態、または、第1フレーム13と第2フレーム14とを重ねた状態を含む。また、背もたれ26を展開させると、車椅子11は、第1フレーム13と第2フレーム14とを左右方向に離間させた展開状態となる。
【0023】
折り畳み機構の他の例は、背もたれ26を左右方向に分割した複数の構成片26A,26Bで構成し、かつ、構成片26A,26B同士をヒンジ42により連結し、かつ、背もたれ26と第1フレーム13及び第2フレーム14とを、それぞれヒンジ43により連結することである。
【0024】
油圧ジャッキ12は、車椅子11から物理的に分離して設けられている。図2(A)のように、油圧ジャッキ12は、座部25の真下で床39に置かれる。油圧ジャッキ12は、座部25を上昇させる場合に押上力を発生する機能と、座部25を下降させる場合に座部25及び被介護者P1の荷重を受ける機能と、を有するアクチュエータである。油圧ジャッキ12は、油圧室を内蔵した本体部40と、油圧室の油圧が作用するプランジャ41と、を有する。プランジャ41は、鉛直方向に上昇及び下降することができる。プランジャ41の先端、つまり、上端は平坦面である。プランジャ41が上昇すると、プランジャ41の上端が、受け部37の下端に接触される。座部25が支持部21,24で支持され、かつ、プランジャ41が下降すると、プランジャ41が受け部37から離間される。
【0025】
車椅子11の使用例を説明する。まず、駆動輪15,16、補助輪17,18を床39に置き、かつ、図4(A)のように、車椅子11を展開状態に保持する。車椅子11の展開状態では、第1フレーム13と第2フレーム14とが所定間隔で離間されている。
【0026】
次に、座部25の下面25Aを下に向け、かつ、座部25の上面25Bを略水平として車椅子11の上から下降させ、凸部34,35を係合穴36へそれぞれ進入させた後、図1(A)及び図3(A)のように、座部25を支持部21,24で支持する。座部25は、支持部21,24で支持されて鉛直方向の所定位置、つまり、初期位置で停止される。このようにして、座部25は、図1(A)に示す車椅子11の左右方向で、駆動輪15及び第1フレーム13と、駆動輪16及び第2フレーム14との間に配置され、かつ、支持部21,24により水平に支持される。さらに、図1(A)及び図2(A)のように、油圧ジャッキ12を受け部37の真下に位置させて床39に置く。この時点において、プランジャ41は初期位置で停止されており、プランジャ41は受け部37から離間されている。
【0027】
そして、油圧ジャッキ12のプランジャ41を上昇させる。プランジャ41の上端が受け部37に接触されると座部25は上昇される。座部25は、ガイド部19,20,22,23に接触することで、座部25は、上昇する方向が高さ方向、つまり、鉛直方向にガイドされる。言い換えると、座部25は鉛直方向に対して交差する方向には移動しない。油圧ジャッキ12のプランジャ41が上昇位置で停止されると、図1(B)及び図3(B)のように、座部25は上昇位置で停止される。油圧ジャッキ12の油圧室の油圧は、所定の高圧に保持される。座部25が上昇位置で停止された状態で、座部25の下面25Aは、ガイド部19,20,22,23の上端より下に位置する。このため、座部25は鉛直方向に対して交差する方向には移動しない。
【0028】
その後、被介護者P1はアームサポート38へ手を付いて体重を支え、座部25へ着座する。ここで、油圧ジャッキ12の油圧室が高圧に保持されているため、座部25は上昇位置に保持される。つまり、油圧ジャッキ12は、被介護者P1及び座部25の荷重を受けた状態で、プランジャ41を停止させている。そして、油圧ジャッキ12が操作されて油圧室の油圧が低下すると、プランジャ41及び座部25が同期して下降される。さらに、図1(A)、図2(A)、図3(A)のように、座部25が支持部21,24に接触すると座部25が初期位置で停止する。また、プランジャ41が受け部37から離間される。このため、座部25及び被介護者P1の荷重は、支持部21,24を介して第1フレーム13及び第2フレーム14に伝達される。その後、プランジャ41が初期位置で停止され、油圧ジャッキ12は車椅子11の下から除去される。
【0029】
一方、座部25に座っている被介護者P1が、座部25から降りる場合は、前述と同様に油圧ジャッキ12を受け部37の真下に置き、プランジャ41を上昇させる。油圧ジャッキ12は、被介護者P1及び座部25の荷重を受けた状態で、プランジャ41を上昇させる。そして、プランジャ41が停止され、座部25が上昇位置で停止される。さらに、被介護者P1は、アームサポート38に手を付いて体重を支え、座部25から降りることができる。このように、座部25は、初期位置と上昇位置との間において、約20cm以上の範囲内で上昇及び下降される。
【0030】
したがって、被介護者P1が座部25へ着座する場合、または、座部25から降りる場合の何れにおいても、支えが無い状態で腰を落とすことを抑制できる。さらに、被介護者P1が座部25へ乗り降りする作業が楽になり、かつ、被介護者P1を補助する介護者の腰への負担を軽減することができる。また、車椅子11を平面視すると、受け部37が座部25の略中央に設けられている。座部25の略中央は、被介護者P1の体重が一番かかり易い箇所である。したがって、油圧ジャッキ12によって支持される座部25の水平性を確保できる。さらに、支持部21,24で支持された座部25は、4隅がガイド部19,20,22,23に接触することにより、高さ方向に対して交差する方向への移動が阻止される。したがって、車椅子11の平面視において、プランジャ41と受け部37との位置がずれることを防止できる。
【0031】
一方、被介護者P1が座部25から降りた後に、座部25を手で掴んで上昇させ、支持部21,24から取り外し、ガイド部19,20,22,23の間から、図4(A)のように取り除くことができる。つまり、車椅子11は、展開状態になする。そして、背もたれ26を折線に沿って折り曲げることにより、図4(B)のように、車椅子11を折り畳み状態とすることができる。また、背もたれ26をヒンジ42,43で折り畳み、車椅子11を折り畳み状態としてもよい。車椅子11が折り畳み状態である場合の第1フレーム13と第2フレーム14との間隔は、車椅子11が展開状態である場合の第1フレーム13と第2フレーム14との間隔より短い。このように、車椅子11は使用しない場合に折り畳むことができる。
【0032】
さらに、被介護者P1が座部25に座っていない状態では、油圧ジャッキ12が支える荷重は座部25のみであるため、油圧ジャッキ12の負荷を軽減できる。さらに、被介護者P1が座部25に座っている状態では、油圧ジャッキ12が支える荷重は、座部25及び被介護者P1であり、第1フレーム13、第2フレーム14、背もたれ26等を上昇させずに済む。したがって、油圧ジャッキ12の負荷を軽減できる。車椅子11と油圧ジャッキ12とが別々に設けられているため、車椅子11を折り畳み状態と展開状態とで変更する場合に、操作を行い易い。また、車椅子11の重量が増加することを抑制でき、第1駆動輪15及び第2駆動輪16に加える操作力の増加を抑制できる。
【0033】
さらに、第1フレーム13及び第2フレーム14にそれぞれサイドガードが設けられていてもよい。サイドガードは、座部25に座った被介護者P1の衣服が駆動輪15,16に接触すること、または、衣服が駆動輪15,16に巻き込まれることを防止する要素である。そして、サイドガードが、ガイド部または支持部の少なくとも一方の機能を有していてもよい。このように構成すると、ガイド部及び支持部を専用で設けずに済み、車椅子11の構造を簡略化できる。
【0034】
本実施形態で説明した事項の技術的意味の一例は、次の通りである。車椅子ユニット10は、車椅子ユニットの一例である。車椅子11は、車椅子の一例である。油圧ジャッキ12は、アクチュエータの一例である。駆動輪15は、第1駆動輪の一例であり、駆動輪16は、第2駆動輪の一例である。第1フレーム13は、第1フレームの一例であり、第2フレーム14は、第2フレームの一例である。座部25は、座部の一例である。背もたれ26は、背もたれの一例である。支持部21は、第1支持部の一例であり、支持部24は、第2支持部の一例である。ガイド部19,20,22,23は、着脱機構を兼ねている。ガイド部19,20は、第1ガイド部の一例である。ガイド部22,23は、第2ガイド部の一例である。受け部37は、受け部の一例である。背もたれ26及びヒンジ42,43は、変更機構の一例である。凸部34は、第1凸部の一例であり、凸部35は、第2凸部の一例である。係合穴36は、第1係合穴及び第2係合穴の一例である。車椅子11を鉛直方向の真上から見た平面視は、“フレームを鉛直方向の真上から見た平面視”と同義である。図2(B)は、“フレームを鉛直方向の真上から見た平面視”の一例である。
【0035】
本実施形態は、図面を用いて開示されたものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、本実施形態において、座部に押圧力を付与するアクチュエータは、油圧ジャッキの他に、空気圧ジャッキ、“電動モータ及びラック・アンド・ピニオン機構”の組み合わせ、ソレノイドアクチュエータを含む。フレームの平面視で、座部の外周形状は、略四角形、楕円形、円形、トラック形状等のうちの何れでもよい。第1ガイド部は、単数または複数の何れでもよい。複数の第1ガイド部は、2つに限らず、3つ以上設けられていてもよい。第2ガイド部は、単数または複数の何れでもよい。複数の第2ガイド部は、2つに限らず、3つ以上設けられていてもよい。
【0036】
第1凸部は、単数または複数の何れでもよい。複数の第1凸部は、2つに限らず、3つ以上設けられていてもよい。第2凸部は、単数または複数の何れでもよい。複数の第2凸部は、2つに限らず、3つ以上設けられていてもよい。第1係合穴の数は、第1凸部の数と同じである。第2係合穴の数は、第2凸部の数と同じである。また、“高さ方向に延ばされ”は、“高さ方向に沿い”という意味を含む。また、“水平方向に延ばされ”は、“水平方向に沿い”という意味を含む。また、“前後方向に延ばされ”は、“前後方向に沿い”という意味を含む。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本実施形態は、被介護者が座る座部を上昇及び下降させることの可能な車椅子及び車椅子ユニットに利用可能である。
【符号の説明】
【0038】
10…車椅子ユニット、11…車椅子、12…油圧ジャッキ、13,14…フレーム、15…駆動輪、16…駆動輪、19,20,22,23…ガイド部、21,24…支持部、25…座部、26…背もたれ、34,35…凸部、36…係合穴、37…受け部、42,43…ヒンジ
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-08-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
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