(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024991
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240216BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20240216BHJP
H01F 27/00 20060101ALI20240216BHJP
H01G 4/33 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
H01G4/30 541
H01F17/00 D
H01F27/00 S
H01G4/33 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128037
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】田村 英子
(72)【発明者】
【氏名】深江 優
(72)【発明者】
【氏名】須賀 武
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 光彦
【テーマコード(参考)】
5E001
5E070
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AF02
5E001AF03
5E070AA05
5E070DB08
5E082AA01
5E082BB02
5E082BC33
5E082DD08
5E082GG10
5E082JJ06
(57)【要約】
【課題】基板上にキャパシタが設けられた構造を有する電子部品において、キャパシタに加わる応力を低減する。
【解決手段】電子部品100は、下部電極パターン35、上部電極パターン41及びこれらの間に位置する誘電体膜12を含むキャパシタC1と、平面視で信号端子S1と重なり、且つ、信号端子S1に接続された導体パターン51と、上部電極パターン41と導体パターン51を接続する接続パターン58とを備える。接続パターン58は、上部電極パターン41と導体パターン51を最短距離で接続することなく迂回して接続する。これにより、接続パターン58を介して導体パターン51から上部電極パターン41に加わる応力を緩和することが可能となる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
端子電極と、
前記基板上に設けられた、下部電極パターン、上部電極パターン及びこれらの間に位置する誘電体膜を含むキャパシタと、平面視で前記端子電極と重なり、且つ、前記端子電極に接続された導体パターンと、前記上部電極パターンと前記導体パターンを接続する接続パターンと、を備え、
前記接続パターンは、前記上部電極パターンと前記導体パターンを最短距離で接続することなく迂回して接続する、電子部品。
【請求項2】
前記下部電極パターンは、前記基板上に設けられた第1の導体層に形成され、
前記上部電極パターンは、前記基板上に設けられた第2の導体層に形成され、
前記導体パターン及び前記接続パターンは、前記基板上に設けられた第3の導体層に形成され、
前記接続パターンは、前記第2の導体層と前記第3の導体層の間に位置する第1の層間絶縁膜に設けられた第1のビアホールを介して前記上部電極パターンに接続され、
前記導体パターンは、前記第3の導体層を覆う第2の層間絶縁膜に設けられた第2のビアホールを介して前記端子電極に接続され、
前記接続パターンは、前記第1のビアホールと前記第2のビアホールを最短距離で結ぶ仮想パターンを避けて配置され、これにより、前記仮想パターン上の少なくとも一部には前記接続パターンが存在しないクリアランス領域が形成される、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記クリアランス領域は、前記仮想パターンを幅方向に分断する、請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記接続パターンは、前記上部電極パターンに接続される第1部分パターンと、前記第1部分パターンと前記導体パターンを接続する第2部分パターンとを含み、
前記第2部分パターンの延在方向が屈曲又は湾曲している、請求項1に記載の電子部品。
【請求項5】
前記第2部分パターンの屈曲部における角度は、90°以上、150°以下である、請求項4に記載の電子部品。
【請求項6】
前記基板上に設けられ、前記キャパシタに接続された巻回パターンを含むインダクタをさらに備え、
前記上部電極パターンは、平面視で前記巻回パターンの外側に位置する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項7】
前記接続パターンは、非直線的な形状に形成される、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項8】
基板と、
端子電極と、
前記基板上に設けられた、下部電極パターン、上部電極パターン及びこれらの間に位置する誘電体膜を含むキャパシタと、平面視で前記端子電極と重なり、且つ、前記端子電極に接続された導体パターンと、前記上部電極パターンと前記導体パターンを接続する接続パターンと、を備え、
前記接続パターンは、少なくとも一以上の屈曲部または湾曲部を含む非直線的に形成された配線により、前記上部電極パターンと前記導体パターンとを接続する、電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は電子部品に関し、特に、基板上に設けられたキャパシタを備える電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板上に設けられたキャパシタを備える表面実装型のチップ型電子部品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の電子部品においては、キャパシタに強い応力が加わらないように設計することが重要である。
【0005】
本開示においては、基板上にキャパシタが設けられた構造を有する電子部品において、キャパシタに加わる応力を低減する技術が説明される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面による電子部品は、基板と、端子電極と、基板上に設けられた、下部電極パターン、上部電極パターン及びこれらの間に位置する誘電体膜を含むキャパシタと、平面視で端子電極と重なり、且つ、端子電極に接続された導体パターンと、上部電極パターンと導体パターンを接続する接続パターンとを備え、接続パターンは、上部電極パターンと導体パターンを最短距離で接続することなく迂回して接続する。
【0007】
本開示によれば、接続パターンを介して導体パターンから上部電極パターンに加わる応力を緩和することが可能となる。
【0008】
本開示において、下部電極パターンは、基板上に設けられた第1の導体層に形成され、上部電極パターンは、基板上に設けられた第2の導体層に形成され、導体パターン及び接続パターンは、基板上に設けられた第3の導体層に形成され、接続パターンは、第2の導体層と第3の導体層の間に位置する第1の層間絶縁膜に設けられた第1のビアホールを介して上部電極パターンに接続され、導体パターンは、第3の導体層を覆う第2の層間絶縁膜に設けられた第2のビアホールを介して端子電極に接続され、接続パターンは、第1のビアホールと第2のビアホールを最短距離で結ぶ仮想パターンを避けて配置され、これにより、仮想パターン上の少なくとも一部には接続パターンが存在しないクリアランス領域が形成されても構わない。これによれば、上部電極パターンに加わる応力をより効果的に緩和することが可能となる。この場合、クリアランス領域は、仮想パターンを幅方向に分断するものであっても構わない。これによれば、上部電極パターンに加わる応力をよりいっそう効果的に緩和することが可能となる。
【0009】
本開示において、接続パターンは、上部電極パターンに接続される第1部分パターンと、上部電極パターンと導体パターンを接続する第2部分パターンとを含み、第2部分パターンの延在方向が屈曲又は湾曲していても構わない。これによれば、接続パターンのバネ性によって、上部電極パターンに加わる応力を緩和することが可能となる。この場合、第2部分パターンの屈曲部における角度は、90°以上、150°以下であっても構わない。これによれば、上部電極パターンに加わる応力をよりいっそう効果的に緩和することが可能となる。
【0010】
本開示の一側面による電子部品は、基板上に設けられ、キャパシタに接続された巻回パターンを含むインダクタをさらに備え、上部電極パターンは、平面視で巻回パターンの外側に位置するものであっても構わない。これによれば、巻回パターンとの干渉を避けてキャパシタを配置することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
このように、本開示によれば、基板上にキャパシタが設けられた構造を有する電子部品において、キャパシタに加わる応力を低減する技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態による電子部品100の外観を示す略斜視図である。
【
図3】
図3は、電子部品100の等価回路図である。
【
図4】
図4は、導体層M1,MMのパターン形状を示す略平面図である。
【
図5】
図5は、導体層M2のパターン形状を示す略平面図である。
【
図6】
図6は、導体層M3のパターン形状を示す略平面図である。
【
図7】
図7は、導体層M4,M5のパターン形状を示す略平面図である。
【
図8】
図8は、電子部品100を回路基板80に実装した状態を示す模式的な部分断面図である。
【
図9】
図9は、接続パターン58の形状を説明するための略平面図である。
【
図10】
図10は、変形例による接続パターン58の形状を説明するための略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本開示に係る技術の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本開示に係る技術の一実施形態による電子部品100の外観を示す略斜視図である。また、
図2は、電子部品100の略断面図である。
【0015】
本実施形態による電子部品100は表面実装型のハイパスフィルタであり、
図1に示すように、基板10と、基板10の表面に形成されたポリイミドなどの有機絶縁材料からなる層間絶縁膜20と、層間絶縁膜20の表面に形成された信号端子S1,S2及びグランド端子G1,G2とを備えている。
図2に示すように、基板10の表面は平坦化層11で覆われており、平坦化層11上に層間絶縁膜20で覆われた複数の導体層M1~M4,MMが設けられている。信号端子S1,S2及びグランド端子G1,G2は、最上層に位置する導体層M5に形成される。層間絶縁膜20は、4層の層間絶縁膜21~24を含む。
【0016】
基板10の材料としては、化学的・熱的に安定で応力発生が少なく、表面の平滑性を保つことができる材料であればよく、特に限定されるものではないが、シリコン単結晶、アルミナ、サファイア、窒化アルミ、MgO単結晶、SrTiO3単結晶、表面酸化シリコン、ガラス、石英、フェライトなどを用いることができる。平坦化層11としては、アルミナや酸化シリコンなどを用いることができる。
【0017】
図3は、本実施形態による電子部品100の等価回路図である。
【0018】
図3に示すように、本実施形態による電子部品100は、信号端子S1と信号端子S2の間に直列に接続されたキャパシタC1,C2,C4,C5と、キャパシタC1,C2に対して並列に接続されたキャパシタC3と、キャパシタC4,C5に対して並列に接続されたキャパシタC6と、キャパシタC1,C2の接続点とグランド端子G1の間に接続されたインダクタL1と、キャパシタC4,C5の接続点とグランド端子G2の間に接続されたインダクタL2とを有している。かかる回路構成により、本実施形態による電子部品100はハイパスフィルタとして機能する。ハイパスフィルタの周波数特性は、基本的にキャパシタC1~C6のキャパシタンスとインダクタL1,L2のインダクタンスによって決まる。
【0019】
以下、電子部品100に含まれる導体層M1~M5,MMの構造について説明する。尚、
図4~
図7に示すA-A線は、
図2の断面位置を示している。
【0020】
導体層M1は最下層に位置する導体層であり、
図4に示すように、導体パターン31~34、巻回パターン35,36、下部電極パターン37,38及びダミーパターン39を含んでいる。導体パターン31~34は、平面視でそれぞれ信号端子S1,S2及びグランド端子G1,G2と重なる位置に設けられる。巻回パターン35,36は、約1ターン周回するパターンであり、それぞれインダクタL1,L2の一部を構成する。下部電極パターン37,38は、導体パターン31と導体パターン32の間に配置される。このうち、下部電極パターン37は導体パターン31に接続され、下部電極パターン38は導体パターン32に接続される。ダミーパターン39は、導体パターン33と導体パターン34の間に配置され、どの導体パターンにも接続されない。導体パターン31~34及び巻回パターン35,36は、それぞれ層間絶縁膜21に設けられたビアホール31a~36aを介して、上層の導体層M2に接続される。
【0021】
図2に示すように、導体層M1の表面は窒化シリコンなどからなる誘電体膜12で覆われ、誘電体膜12上に導体層MMが設けられる。
図4に示すように、導体層MMは、上部電極パターン41~46を含んでいる。このうち、上部電極パターン41,42は巻回パターン35の一部と重なる位置に設けられ、上部電極パターン44,45は巻回パターン36の一部と重なる位置に設けられる。上部電極パターン41は巻回パターン35の一端と重なる位置に設けられ、上部電極パターン45は巻回パターン36の一端と重なる位置に設けられる。巻回パターン35,36のうち、上部電極パターン41,42,44,45と重なる部分は下部電極として機能する。これにより、巻回パターン35、上部電極パターン41及び誘電体膜12によってキャパシタC1が構成され、巻回パターン35、上部電極パターン42及び誘電体膜12によってキャパシタC2が構成される。同様に、巻回パターン36、上部電極パターン44及び誘電体膜12によってキャパシタC4が構成され、巻回パターン36、上部電極パターン45及び誘電体膜12によってキャパシタC5が構成される。また、上部電極パターン43,46は、それぞれ下部電極パターン37,38と重なる位置に設けられる。これにより、下部電極パターン37、上部電極パターン43及び誘電体膜12によってキャパシタC3が構成され、下部電極パターン38、上部電極パターン46及び誘電体膜12によってキャパシタC6が構成される。上部電極パターン41~46は、それぞれ層間絶縁膜21に設けられたビアホール41a~46aを介して、上層の導体層M2に接続される。
【0022】
導体層M2は、層間絶縁膜21を介して導体層M1の上層に位置し、
図5に示すように、導体パターン50~54,57、接続パターン58,59及び巻回パターン55,56を含んでいる。導体パターン51~54は、それぞれ層間絶縁膜21に設けられたビアホール31a~34aを介して、導体層M1の導体パターン31~34に接続される。巻回パターン55,56は、約1ターン周回するパターンであり、それぞれインダクタL1,L2の一部を構成する。巻回パターン55,56の一端は、それぞれ層間絶縁膜21に設けられたビアホール35a,36aを介して導体層M1の巻回パターン35,36の他端に接続される。導体パターン57は、層間絶縁膜21に設けられたビアホール42a,43a,44a,46aを介して導体層M1の上部電極パターン42,43,44,46に共通に接続される。接続パターン58は、導体パターン51から巻回パターン55に向かって突出するパターンであり、面内で導体パターン51に接続されるとともに、層間絶縁膜21に設けられたビアホール41aを介して導体層M1の上部電極パターン41に接続される。接続パターン59は、導体パターン52から巻回パターン56に向かって突出するパターンであり、面内で導体パターン52に接続されるとともに、層間絶縁膜21に設けられたビアホール45aを介して導体層M1の上部電極パターン45に接続される。導体パターン50は、導体パターン53と導体パターン54を接続するパターンであり、グランド端子G1,G2を短絡する役割を果たす。導体パターン50と重なる位置にはダミーパターン39が存在しており、これにより平坦性が確保される。導体パターン51~54及び巻回パターン55,56は、それぞれ層間絶縁膜22に設けられたビアホール51a~56aを介して、上層の導体層M3に接続される。
【0023】
導体層M3は、層間絶縁膜22を介して導体層M2の上層に位置し、
図6に示すように、導体パターン61~64及び巻回パターン65,66を含んでいる。導体パターン61~64は、それぞれ層間絶縁膜22に設けられたビアホール51a~54aを介して導体層M2の導体パターン51~54に接続される。巻回パターン65,66は、約0.5ターン周回するパターンであり、それぞれインダクタL1,L2の一部を構成する。巻回パターン65,66の一端は、それぞれ層間絶縁膜22に設けられたビアホール55a,56aを介して導体層M2の巻回パターン55,56の他端に接続される。巻回パターン65,66の他端は、それぞれ導体パターン63,64に接続される。導体パターン61~64は、それぞれ層間絶縁膜23に設けられたビアホール61a~64aを介して、上層の導体層M4に接続される。
【0024】
導体層M4は、層間絶縁膜23を介して導体層M3の上層に位置し、
図7に示すように、導体パターン71~74を含んでいる。導体パターン71~74は、それぞれ層間絶縁膜23に設けられたビアホール61a~64aを介して導体層M3の導体パターン61~64に接続されるとともに、それぞれ層間絶縁膜24に設けられたビアホール71a~74aを介して、上層の導体層M5に接続される。導体層M5は、信号端子S1,S2及びグランド端子G1,G2を含んでいる。信号端子S1,S2及びグランド端子G1,G2は、それぞれ層間絶縁膜24に設けられたビアホール71a~74aを介して、導体層M4の導体パターン71~74に接続される。上述した導体層M1~M5,MMは、いずれもCu(銅)などの良導体からなる。信号端子S1,S2及びグランド端子G1,G2の表面は、ハンダに対する濡れ性を高めるための表面処理が施されていても構わない。
【0025】
以上のパターン構造により、巻回パターン35,55,65,75によってインダクタL1が構成され、巻回パターン36,56,66,76によってインダクタL2が構成される。ここで、グランド端子G1,G2を始点としたインダクタL1,L2の巻回方向は互いに逆であり、これにより同じ導体層におけるインダクタL1,L2の隣接区間には、同方向に電流が流れる。
【0026】
図8は、本実施形態による電子部品100を回路基板80に実装した状態を示す模式的な部分断面図である。
【0027】
回路基板80には、ランドパターン81が設けられている。
図8には、ランドパターン81と信号端子S1がハンダ82を介して接続された部分及びその周囲が示されている。図示しないが、他の信号端子S2及びグランド端子G1,G2についても、ハンダを介してそれぞれ対応するランドパターンに接続されている。回路基板80に電子部品100を実装する際には、ハンダ82のリフローが行われる。リフローの際には、電子部品100が260℃程度に加熱されることから、リフロー後、常温に戻る際には、電子部品100の内部に各部材の熱膨張係数差に起因する応力が発生する。特に、誘電体膜12を構成する窒化シリコンと層間絶縁膜20を構成するポリイミドは熱膨張係数差が大きいため、誘電体膜12には強い応力が加わりやすい。
【0028】
具体的には、リフロー後の温度低下に伴って熱膨張係数の大きいポリイミドに収縮が発生するものの、信号端子S1,S2及びグランド端子G1,G2が回路基板80に固定されているために応力が開放されず、符号F1で示すように、導体パターン31,51,61,71が内側に引っ張られる。これは、導体パターン31,51,61,71が平面視で信号端子S1と重なるとともに、ビアホールを介して互いに接続されているためである。そして、導体パターン51が内側に引っ張られると、符号F2で示すように、同じ導体層M2に位置する接続パターン58も引っ張られる。接続パターン58は、層間絶縁膜21に設けられたビアホール41aを介して上部電極パターン41に接続されていることから、符号F3で示すように、上部電極パターン41に剥離方向の力が働く。ここで、符号F3で示す剥離方向の力が強いと、上部電極パターン41と誘電体膜12の間に隙間が生じてしまい、キャパシタC1のキャパシタンスが低下してしまう。
【0029】
このような現象を抑制すべく、本実施形態においては、
図4に示すように、接続パターン58,59を直線状ではなく屈曲又は湾曲させることによって、上部電極パターン41に加わる引っ張り応力を緩和している。言い換えると、接続パターン58,59は、直線状ではなく、屈曲又は湾曲している部分を含む非直線的な形状により形成されてよい。以下、接続パターン58の形状についてより詳細に説明する。
【0030】
図9は、接続パターン58の形状を説明するための略平面図である。
【0031】
図9に示すように、接続パターン58は導体パターン51と一体的なパターンであるが、層間絶縁膜22に設けられたビアホール51aと重なる部分及びその周囲に位置する略矩形状の領域を導体パターン51と定義した場合、それ以外の部分が接続パターン58を構成する。接続パターン58は、層間絶縁膜21に設けられたビアホール41aを介して上部電極パターン41に接続される第1部分パターン58Aと、導体パターン51と第1部分パターン58Aを接続する第2部分パターン58Bとを含む。
【0032】
図9に示すように、第2部分パターン58Bの延在方向は直線的ではなく、屈曲又は湾曲している。つまり、接続パターン58は、上部電極パターン41と導体パターン51を直線的に最短距離で接続することなく、迂回して両者を接続する。より詳細には、導体パターン51に接続されるビアホール51aと、上部電極パターン41に接続されるビアホール41aは、接続パターン58によって最短距離で接続されず、ビアホール51aとビアホール41aを最短距離で直線的に結ぶ仮想パターン91を避けて接続パターン58が配置される。これにより、仮想パターン91上には接続パターン58が存在しないクリアランス領域92が形成される。
【0033】
接続パターン58の第2部分パターン58Bは、略矩形状である導体パターン51の接続辺に対して垂直に延在する区間58B
1と、区間58B
1の延在方向とは異なる方向に延在する区間58B
2とを有している。
図9に示す例では、区間58B
1と区間58B
2の延在方向が屈曲部58Cにおいて変化している。区間58B
1の延在方向と区間58B
2の延在方向が成す角はθ
0である。
【0034】
このような構成により、
図8において符号F1で示す応力が上部電極パターン41に与える影響は、接続パターン58の迂回形状によって緩和される。これにより、
図8において符号F3で示す引っ張り応力が低減することから、上部電極パターン41の剥離が生じにくくなる。つまり、ビアホール51aとビアホール41aを最短距離で直線的に結ぶ仮想パターン91に沿って接続パターン58を形成すると、
図8において符号F1で示す応力が上部電極パターン41に直接伝わるため、上部電極パターン41に比較的強い引っ張り応力が加わってしまう。これに対し、本実施形態においては、仮想パターン91を避けて接続パターン58を迂回させていることから、迂回形状を有する接続パターン58のバネ性によって、上部電極パターン41に加わる引っ張り応力が大幅に緩和される。
【0035】
上部電極パターン41に加わる引っ張り応力をより効果的に緩和するためには、クリアランス領域92をより大きく確保してもよい。たとえば、
図9に示すように、クリアランス領域92が仮想パターン91を幅方向に分断するように形成されてもよい。これにより、ビアホール51aとビアホール41aの間の応力の結合が十分に弱められることから、上部電極パターン41に加わる引っ張り応力が大幅に緩和される。また、屈曲部58Cの角度θ
0については、応力の緩和効果が高められるような適切な範囲に設定されてよい。たとえば、屈曲部58Cの角度θ
0を小さくすることで応力の緩和効果が高められるように、角度θ
0は、150°以下とされてもよい。但し、屈曲部58Cの角度θ
0が小さすぎると、接続パターン58の形状が複雑となり占有面積が増大することから、角度θ
0は90°以上とされてもよい。
【0036】
また、
図5に示す対角線Dに対して垂直な仮想線93を定義した場合、仮想線93と区間58B
1の延在方向B1が成す角θ
1よりも、仮想線93と区間58B
2の延在方向B2が成す角θ
2の方が小さくても構わない。ここで、対角線Dとは、積層方向から見た平面視で、基板10の側面101,102によって構成される角部と、基板10の側面103,104によって構成される角部を結ぶ直線である。側面101,103は長辺側に位置する互いに平行な面であり、側面102,104は短辺側に位置する互いに平行な面である。仮想線93と区間58B
2の延在方向B2は、ほぼ一致していても構わない。
図9に示す例では、仮想線93と区間58B
2の延在方向B2が完全には一致していないが、両者の差が小さいことから、区間58B
2の全区間を仮想線93と重ねることができる。
【0037】
図10は、変形例による接続パターン58の形状を説明するための略平面図である。
【0038】
図10に示す変形例においては、第2部分パターン58Bに含まれる区間58B
2が湾曲形状を有している。つまり、区間58B
2の延在方向が区間58B
1から第1部分パターン58Aに向かって徐々に変化する。このような形状であっても、導体パターン51に加わる応力の影響が上部電極パターン41に加わりにくくなる。この場合、区間58B
2の内周側における曲率半径Rは、小さいほど応力の緩和効果が高くなる。このため、曲率半径Rは、たとえば、第1部分パターン58Aと導体パターン51の距離Wの2倍以下であってもよい。
【0039】
以上、接続パターン58の形状について説明したが、接続パターン59の形状は接続パターン58と線対称であり、接続パターン58と同じ効果を得ることができる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態による電子部品100は、上部電極パターン41と導体パターン51を接続する接続パターン58が迂回形状を有していることから、信号端子S1に接続された導体パターン31,51,61,71に加わる応力の影響が上部電極パターン41に加わりにくくなる。同様に、上部電極パターン45と導体パターン52を接続する接続パターン59が迂回形状を有していることから、信号端子S2に接続された導体パターン32,52,62,72に加わる応力の影響が上部電極パターン45に加わりにくくなる。これにより、リフロー後において、上部電極パターン41,45に剥離が生じにくくなることから、上部電極パターン41,45の剥離によるキャパシタC1,C5のキャパシタンスの低下を抑制することが可能となる。
【0041】
以上、本開示に係る技術の実施形態について説明したが、本開示に係る技術は、上記の実施形態に限定されることなく、その主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本開示に係る技術の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。たとえば、上記実施形態においては、接続パターン58に屈曲部58Cが一つ含まれる形態を例示しているが、屈曲部58Cは2つ以上であってもよい。
【符号の説明】
【0042】
10 基板
11 平坦化層
12 誘電体膜
20~24 層間絶縁膜
31~34 導体パターン
31a~36a ビアホール
35,36 巻回パターン
37,38 下部電極パターン
39 ダミーパターン
41~46 上部電極パターン
41a~46a ビアホール
50~54,57 導体パターン
51a~56a ビアホール
55,56 巻回パターン
58,59 接続パターン
58A 第1部分パターン
58B 第2部分パターン
58B1,58B2 区間
58C 屈曲部
61~64 導体パターン
61a~64a ビアホール
65,66 巻回パターン
71~74 導体パターン
71a~74a ビアホール
80 回路基板
81 ランドパターン
82 ハンダ
91 仮想パターン
92 クリアランス領域
93 仮想線
100 電子部品
101~104 側面
B1 延在方向
B2 延在方向
C1~C6 キャパシタ
D 対角線
F1~F3 応力
G1,G2 グランド端子
L1,L2 インダクタ
M1~M5,MM 導体層
R 曲率半径
S1,S2 信号端子
W 距離
θ0~θ2 角度