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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024993
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】電流遮断装置及び充放電制御回路
(51)【国際特許分類】
   H01H 37/32 20060101AFI20240216BHJP
   H01H 37/16 20060101ALI20240216BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240216BHJP
   H02H 5/04 20060101ALI20240216BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
H01H37/32 A
H01H37/16
H02J7/00 S
H02H5/04 170
H02J1/00 309T
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128041
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】390025140
【氏名又は名称】ボーンズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】公文 高博
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 将起
(72)【発明者】
【氏名】鈴間 孝明
【テーマコード(参考)】
5G041
5G165
5G503
【Fターム(参考)】
5G041AA04
5G041AA07
5G041BB11
5G041CC01
5G165CA01
5G165DA01
5G165EA02
5G165HA07
5G165HA17
5G165KA05
5G165LA01
5G165LA02
5G165NA10
5G165PA01
5G165PA05
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA11
5G503CB11
5G503CB13
5G503DA04
5G503DA07
5G503FA17
(57)【要約】
【課題】電流が遮断される前段階での、発熱体の温度の推移を詳細に検出することが可能な電流遮断装置を提供する。
【解決手段】電流遮断装置100は、動作温度が異なる複数のブレーカー1が、並列に接続されてなる。ブレーカー1は、固定接点21を有する固定片2と、弾性変形可能な弾性部44及び可動接点41を有し、可動接点41を固定接点21に押圧して接触させる可動片4と、温度変化に伴って変形することにより、可動片4の状態を可動接点41が固定接点21に接触する導通状態から可動接点41が固定接点21から離隔する遮断状態に移行させる熱応動素子5とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流を遮断する電流遮断装置であって、
固定接点を有する固定片と、弾性変形可能な弾性部及び可動接点を有し、前記可動接点を前記固定接点に押圧して接触させる可動片と、温度変化に伴って変形することにより、前記可動片の状態を前記可動接点が前記固定接点に接触する導通状態から前記可動接点が前記固定接点から離隔する遮断状態に移行させる熱応動素子とを備え、前記可動片の状態が前記導通状態から前記遮断状態に移行する動作温度が異なる複数のブレーカーが、並列に接続されてなる、
電流遮断装置。
【請求項2】
少なくとも一つの前記ブレーカーの前記導通状態での両端間の抵抗は、他の前記ブレーカーの前記導通状態での両端間の抵抗と異なる、請求項1に記載の電流遮断装置。
【請求項3】
前記複数のブレーカーのうち最も前記動作温度が高い前記ブレーカーの前記導通状態での両端間の抵抗は、他の前記ブレーカーの前記導通状態での両端間の抵抗よりも大きい、請求項2に記載の電流遮断装置。
【請求項4】
前記複数のブレーカーのうち最も前記動作温度が低い前記ブレーカーの前記導通状態での両端間の抵抗は、他の前記ブレーカーの前記導通状態での両端間の抵抗よりも小さい、請求項2に記載の電流遮断装置。
【請求項5】
前記複数のブレーカーのうち最も前記動作温度が低い前記ブレーカーの前記導通状態での両端間の抵抗は、他の前記ブレーカーの前記導通状態での両端間の合成抵抗よりも小さい、請求項2に記載の電流遮断装置。
【請求項6】
前記複数のブレーカーのうち最も前記動作温度が低い前記ブレーカーの前記導通状態での両端間の抵抗は、他の前記ブレーカーの前記導通状態での両端間の合成抵抗の2%~201%である、請求項2に記載の電流遮断装置。
【請求項7】
前記複数のブレーカーは、前記可動片が前記遮断状態にあるとき、前記固定片と前記可動片とを導通させる正特性サーミスターを有する第1ブレーカーを1つまたは複数含む、請求項1に記載の電流遮断装置。
【請求項8】
前記複数のブレーカーは、前記正特性サーミスターを有さない第2ブレーカーを1つまたは複数含む、請求項7に記載の電流遮断装置。
【請求項9】
前記複数のブレーカーのうち、最も前記遮断状態から前記導通状態に復帰する復帰温度が高い前記ブレーカーは、前記第1ブレーカーである、請求項8に記載の電流遮断装置。
【請求項10】
最も前記復帰温度が高い前記第1ブレーカーの前記動作温度よりも高い前記動作温度の前記第2ブレーカーが、前記複数のブレーカーに含まれている数は1以下である、請求項9に記載の電流遮断装置。
【請求項11】
前記複数のブレーカーは、最も前記復帰温度が高い前記第1ブレーカーの前記動作温度よりも低い前記動作温度の前記ブレーカーを含む、請求項10に記載の電流遮断装置。
【請求項12】
前記複数のブレーカーは、同一の前記固定片及び同一の前記可動片にて構成されている、請求項1に記載の電流遮断装置。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれかに記載の電流遮断装置と、
前記電流遮断装置に直列に接続される2次電池パックと、
前記2次電池パックに給電する給電部または前記2次電池パックから給電される負荷と、
前記電流遮断装置の両端抵抗に基づいて、前記給電部からの充電電流または前記負荷への放電電流を制御する制御部とを含む、充放電制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度変化に応じて電流を遮断する電流遮断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電流を遮断する装置として、固定接点と、可動接点を固定接点に押圧して接触させる可動片と、温度変化に伴って変形することにより、可動片の状態を可動接点が固定接点に接触する導通状態から可動接点が固定接点から離隔する遮断状態に移行させる熱応動素子とを有するブレーカーが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-079594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記電流遮断装置は、通常、2次電池や負荷等の発熱体の近傍に配され、発熱体の温度上昇に応じて動作し、2次電池等を保護する。このような電流遮断装置及び2次電池を含む回路にあっては、可動片が導通状態から遮断状態に移行し電流が遮断される前段階で発熱体の温度の推移を詳細に検出できれば、例えば、負荷に印加する電圧の制御に役立てることができ、2次電池等の安全性をより一層高めることができる。
【0005】
しかしながら、単一のブレーカーによって構成されている電流遮断装置にあっては、電流が遮断される前段階での、発熱体の温度を詳細に検出することが困難であった。
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、電流が遮断される前段階での、発熱体の温度の推移を詳細に検出することが可能な電流遮断装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電流を遮断する電流遮断装置であって、
固定接点を有する固定片と、弾性変形可能な弾性部及び可動接点を有し、前記可動接点を前記固定接点に押圧して接触させる可動片と、温度変化に伴って変形することにより、前記可動片の状態を前記可動接点が前記固定接点に接触する導通状態から前記可動接点が前記固定接点から離隔する遮断状態に移行させる熱応動素子とを備え、前記可動片の状態が前記導通状態から前記遮断状態に移行する動作温度が異なる複数のブレーカーが、並列に接続されてなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電流遮断装置は、固定片、可動片及び熱応動素子を有し、動作温度が異なる複数のブレーカーを含む。発熱体の温度上昇に伴い、動作温度の低いブレーカーから、順次、可動片の状態が導通状態から遮断状態に移行する。そして、各ブレーカーは並列に接続されているので、各可動片の状態の移行に伴い電流遮断装置の両端間の抵抗が変動し、全てのブレーカーの可動片の状態が遮断状態に移行したとき電流が遮断される。従って、電流遮断装置の両端間の抵抗の変動を監視することにより、電流が遮断される前段階での、発熱体の温度の推移を詳細に検出することが可能となる。よって、例えば、電流遮断装置の両端間の抵抗に基づいて、2次電池の入出力を制御することにより、容易に2次電池等の安全性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態である電流遮断装置を示す図。
図2図1のブレーカーの構成を示す組み立て前の斜視図。
図3】導通状態における図2のブレーカーを示す断面図。
図4】遮断状態における図2のブレーカーを示す断面図。
図5図1のブレーカーの別の構成を示す組み立て前の斜視図。
図6】導通状態における図5のブレーカーを示す断面図。
図7】遮断状態における図5のブレーカーを示す断面図。
図8図1の電流遮断装置の初期動作を示す図。
図9図8に続けて電流遮断装置の動作を時系列で示す図。
図10図9に続けて電流遮断装置の動作を時系列で示す図。
図11図10に続けて電流遮断装置の動作を時系列で示す図。
図12図11に続けて1つのブレーカーが導通状態に復帰した電流遮断装置の動作を時系列で示す図。
図13図1の電流遮断装置を含む充放電制御回路を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施形態である電流遮断装置100を示している。電流遮断装置100は、温度変化に応じて電流を遮断する装置である。電流遮断装置100は、複数のブレーカー1が、並列に接続されることにより構成されている。
【0011】
本実施形態の電流遮断装置100の両端には、電流遮断装置100の両端間の抵抗を検出するための端子101、102が設けられている。端子101のうち、一方は例えば2次電池パック201と接続され、他方は例えば給電部202または負荷203と接続される(後述する図13参照)。
【0012】
図2ないし7は、ブレーカー1を示している。ブレーカー1は、固定接点21を有する固定片2と、先端部に可動接点41を有する可動片4と、温度変化に伴って変形する熱応動素子5と、固定片2、可動片4及び熱応動素子5を収容するケース10等によって構成されている。ケース10は、ケース本体(第1ケース)7とケース本体7の上面に装着される蓋部材(第2ケース)8等によって構成されている。
【0013】
固定片2には、ケース10から露出する端子22が形成されている。ケース10から露出する可動片4には、端子42が形成されている。各ブレーカー1の端子22同士及び42同士が互いに接続されることにより、ブレーカー1が、並列に接続される。
【0014】
固定片2は、例えば、銅等を主成分とする板状の金属材料(この他、銅-チタニウム合金、洋白、黄銅などの金属板)をプレス加工することにより形成されている。固定片2は、端子22をケース本体7の外側に露出させた状態で、ケース本体7にインサート成形により埋め込まれ、ケース本体7に収容されている。
【0015】
固定接点21は、銀、ニッケル、ニッケル-銀合金の他、銅-銀合金、金-銀合金などの導電性の良い材料のクラッド、メッキ又は塗布等により可動接点41に対向する位置に形成され、ケース本体7の内部に形成されている開口73aの一部から露出されている。
【0016】
端子22は、固定片2の一端に形成されている。端子22はケース本体7の端縁の側壁から外側に突出している。
【0017】
本出願においては、特に断りのない限り、固定片2において、固定接点21が形成されている側の面(すなわち図2において上側の面)を第1面、その反対側の面を第2面として説明している。固定接点21から可動接点41に向く方向を第1方向と、第1方向とは反対の方向を第2方向とそれぞれ定義した場合、第1面は第1方向を向き、第2面は第2方向を向く。他の部品、例えば、可動片4及び熱応動素子5等についても同様である。
【0018】
可動片4は、銅等を主成分とする板状の金属材料をプレス加工することにより、長手方向の中心線に対して対称なアーム状に形成されている。
【0019】
可動片4の長手方向の先端部には、可動接点41が形成されている。可動接点41は、例えば、固定接点21と同等の材料によって形成され、溶接の他、クラッド、かしめ(crimping)等の手法によって可動片4の先端部に接合されている。
【0020】
可動片4の長手方向の他端部には、端子42が形成されている。端子42はケース本体7の端縁の側壁から外側に突出している。端子22及び端子42のうち、いずれか一方が2次電池の端子101と接続され、他方が端子102と接続される。
【0021】
可動片4は、可動接点41と端子42の間に、当接部43及び弾性部44を有している。当接部43は、端子42と弾性部44との間でケース本体7及び蓋部材8と当接する。当接部43は、可動片4の短手方向に翼状に突出する突出部43aを有する。突出部43aが設けられていることにより、当接部43が幅広く大きな領域でケース本体7及び蓋部材8によって挟み込まれ、可動片4がケース10に対して強固に固定される。
【0022】
弾性部44は、当接部43から可動接点41の側に延出されている。可動片4は、弾性部44の基端側の当接部43で、ケース10によって片持ち支持され、その状態で弾性部44が弾性変形することにより、弾性部44の先端部に形成されている可動接点41が固定接点21の側に押圧されて接触し、固定片2と可動片4とが通電可能となる。
【0023】
可動片4は、弾性部44において、プレス加工により湾曲又は屈曲されている。湾曲又は屈曲の度合いは、熱応動素子5を収納できる限り特に限定はなく、動作温度及び復帰温度における弾性力、可動接点41の押圧力などを考慮して適宜設定すればよい。また、弾性部44の第2面には、熱応動素子5に対向して一対の突起44a,44bが形成されている。突起44aは、基端側で熱応動素子5に向って突出し、遮断状態で熱応動素子5と当接する。突起44bは、突起44aよりも先端側(すなわち可動接点41側)で熱応動素子5に向って突出し、遮断状態で熱応動素子5と当接する。過熱により熱応動素子5が変形すると、熱応動素子5が突起44a及び突起44bと当接し、熱応動素子5の変形が突起44a及び突起44bを介して弾性部44に伝達され、可動片4の先端部が押し上げられる(図4参照)。
【0024】
熱応動素子5は、可動片4の状態を可動接点41が固定接点21に接触する導通状態から可動接点41が固定接点21から離隔する遮断状態に移行させる。熱応動素子5は、断面が円弧状に湾曲した初期形状をなし、熱膨張率の異なる薄板材を積層することにより、板状に形成されている。過熱により動作温度に達すると、熱応動素子5の湾曲形状は、スナップモーションを伴って逆反りし、冷却により復帰温度を下回ると復元する。熱応動素子5の初期形状は、プレス加工により形成することができる。所期の温度で熱応動素子5の逆反り動作により可動片4の弾性部44が押し上げられ、かつ弾性部44の弾性力により元に戻る限り、熱応動素子5の材質及び形状は特に限定されるものでないが、生産性及び逆反り動作の効率性の観点から矩形状が望ましい。
【0025】
熱応動素子5の材料としては、洋白、黄銅、ステンレス鋼等の各種の合金からなる熱膨張率が異なる2種類の板状の金属材料を積層したものが、所要条件に応じて組み合わせて使用される。例えば、安定した動作温度及び復帰温度が得られる熱応動素子5の材料としては、高膨脹側に銅-ニッケル-マンガン合金、低膨脹側に鉄-ニッケル合金を組み合わせたものが望ましい。また、化学的安定性の観点からさらに望ましい材料として、高膨脹側に鉄-ニッケル-クロム合金、低膨脹側に鉄-ニッケル合金を組み合わせたものが挙げられる。さらにまた、化学的安定性及び加工性の観点からさらに望ましい材料として、高膨脹側に鉄-ニッケル-クロム合金、低膨脹側に鉄-ニッケル-コバルト合金を組み合わせたものが挙げられる。
【0026】
熱応動素子5単体での動作温度は、熱応動素子5を構成する金属の熱膨張率及び厚さ寸法並びに熱応動素子5の曲率等に依存する。従って、これらのパラメーターを適宜変更することにより、所望の動作温度の熱応動素子5を得ることができる。
【0027】
ケース10を構成するケース本体7及び蓋部材8は、難燃性のポリアミド、耐熱性に優れたポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの熱可塑性樹脂により成形されている。上述した樹脂と同等以上の特性が得られるのであれば、樹脂以外の材料を適用してもよい。
【0028】
ケース本体7には、可動片4、熱応動素子5などを収容するための内部空間である凹部73が形成されている。凹部73は、可動片4を収容するための開口73a,73b、可動片4及び熱応動素子5を収容するための開口73c等を有している。なお、ケース本体7に組み込まれた可動片4、熱応動素子5の端縁は、凹部73の内部に形成されている枠によってそれぞれ当接され、熱応動素子5の逆反り時に案内される。
【0029】
蓋部材8には、銅等を主成分とする金属板又はステンレス鋼等の金属板がインサート成形によって埋め込まれていてもよい。金属板は、可動片4の第1面と適宜当接し、可動片4の動きを規制すると共に、蓋部材8のひいては筐体としてのケース10の剛性・強度を高めつつブレーカー1の小型化に貢献する。
【0030】
図2、5が示すように、固定片2(固定接点21)、可動片4(可動接点41、弾性部44)及び熱応動素子5等を収容したケース本体7の開口73a、73b、73c等を塞ぐように、蓋部材8が、ケース本体7に装着される。ケース本体7と蓋部材8とは、例えば超音波溶着によって接合される。これにより、端子22及び42を露出させた状態で、ブレーカー1が組み立てられる。
【0031】
図3、4及び6、7は、ブレーカー1の動作の概略を示している。図3及び6は、通常の充電又は放電状態におけるブレーカー1の動作を示している。通常の充電又は放電状態においては、熱応動素子5は逆反り前の初期形状を維持している。弾性部44によって可動接点41が固定接点21の側に押圧されることにより、可動接点41と固定接点21とが接触し、ブレーカー1の固定片2と可動片4とが導通可能な状態とされる。
【0032】
図3及び6に示されるように、熱応動素子5は、導通状態の可動片4の突起44a及び突起44bと離隔していてもよい。これにより、可動接点41と固定接点21との接触圧力が高められ、両者間の接触抵抗が低減される。
【0033】
図4及び7は、過充電状態又は異常時などにおけるブレーカー1の動作を示している。過充電又は異常により高温状態となると、動作温度に達した熱応動素子5は逆反りして可動片4の弾性部44と接触し、弾性部44が押し上げられて固定接点21と可動接点41とが離隔する。このとき、固定接点21と可動接点41の間を流れていた電流は遮断される。
【0034】
過充電状態を解除し、又は異常状態を解消すると、熱応動素子5は復帰温度に戻り、元の初期形状に復元する。そして、可動片4の弾性部44の弾性力によって可動接点41と固定接点21とは再び接触し、回路は遮断状態を解かれ、図3及び6に示す導通状態に復帰する。
【0035】
図1に示されるように、本発明の電流遮断装置100は、動作温度が異なる複数(同図では3つ)のブレーカー1を含む。各ブレーカー1の動作温度は、熱応動素子5単体での動作温度及び弾性率並びに可動片4の弾性率等に依存する。従って、例えば、熱応動素子5の材料及び形状等を変更することにより、各ブレーカー1の動作温度を調整することが可能となる。
【0036】
電流遮断装置100は、動作温度が異なる複数のブレーカー1を含むので、発熱体の温度上昇に伴い、動作温度の低いブレーカー1から、順次、可動片4の状態が導通状態から遮断状態に移行する。そして、各ブレーカー1は並列に接続されているので、各可動片4の状態の移行に伴い電流遮断装置100の両端間の抵抗が変動し、全てのブレーカー1の可動片4の状態が遮断状態に移行したとき電流が遮断される。従って、電流遮断装置100の両端間の抵抗の変動を監視することにより、電流が遮断される前段階での、発熱体の温度の推移を詳細に検出することが可能となる。よって、例えば、電流遮断装置100の両端間の抵抗に基づいて、2次電池の入出力を制御することにより、容易に2次電池等の安全性を高めることが可能となる。
【0037】
なお、電流遮断装置100の両端間の抵抗は、例えば、端子101、102間の電位差及び電流遮断装置100を流れる電流から算出される。
【0038】
複数のブレーカー1は、少なくとも一つのブレーカー1の導通状態での両端間の抵抗は、他のブレーカー1の導通状態での両端間の抵抗と異なる、のが望ましい。各ブレーカー1の導通状態での両端間の抵抗は、固定片2及び可動片4の導通抵抗と、固定接点21と可動接点41との間の接触抵抗の和となる。少なくとも一つのブレーカー1の導通状態での両端間の抵抗は、他のブレーカー1の導通状態での両端間の抵抗と異なることにより、可動片4の状態が導通状態から遮断状態に移行したブレーカー1の特定が容易となり、発熱体の温度の推移を詳細に検出することが可能となる。
【0039】
各ブレーカー1の導通状態での両端間の抵抗は、互いに異なっていてもよい。各ブレーカー1の導通状態での両端間の抵抗が互いに異なることにより、可動片4の状態が導通状態から遮断状態に移行したブレーカー1が特定され、発熱体の温度の推移を詳細に検出することが可能となる。
【0040】
電流遮断装置100において、ブレーカー1は、1つまたは複数の第1ブレーカー1Aを含んでいる、のが望ましい。図1では、1つの第1ブレーカー1Aを含む電流遮断装置100が示されている。
【0041】
図2ないし4は、第1ブレーカー1Aを示している。第1ブレーカー1Aは、上記固定片2、可動片4、熱応動素子5、ケース10に加え、固定片2と熱応動素子5とを導通させるPTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスター6を含んでいる。
【0042】
PTCサーミスター6は、可動片4が遮断状態にあるとき、固定片2と可動片4とを導通させる。PTCサーミスター6は、固定片2と熱応動素子5との間に配設されている。すなわち、PTCサーミスター6を挟んで、固定片2の支持部23は熱応動素子5の直下に位置している。熱応動素子5の逆反り動作により固定片2と可動片4との通電が遮断されたとき、PTCサーミスター6に流れる電流が増大する。PTCサーミスター6は、温度上昇と共に抵抗値が増大して電流を制限する正特性サーミスターであれば、作動電流、作動電圧、作動温度、復帰温度などの必要に応じて種類を選択でき、その材料及び形状はこれらの諸特性を損なわない限り特に限定されるものではない。本実施形態では、チタニウム酸バリウム、チタニウム酸ストロンチウム又はチタニウム酸カルシウムを含むセラミック焼結体が用いられる。セラミック焼結体の他、ポリマーにカーボン等の導電性粒子を含有させたいわゆるポリマーPTCを用いてもよい。
【0043】
図4に示される遮断状態にある第1ブレーカー1Aにおいて、熱応動素子5は、可動片4と接触して、僅かな漏れ電流が熱応動素子5及びPTCサーミスター6を通して流れることとなる。すなわち、PTCサーミスター6は、可動片4を遮断状態に移行させている熱応動素子5を介して、固定片2と可動片4とを導通させる。PTCサーミスター6は、このような漏れ電流の流れる限り発熱を続け、熱応動素子5を逆反り状態に維持させつつ抵抗値を激増させるので、電流は固定接点21と可動接点41の間の経路を流れず、上述の僅かな漏れ電流のみが存在する(自己保持回路を構成する)。この漏れ電流は電流遮断装置100を含む回路の他の機能に充てることができる。
【0044】
第1ブレーカー1Aでは、固定接点21から可動接点41が離隔するとき、熱応動素子5及びPTCサーミスター6を介して固定片2と可動片4との間に上記漏れ電流が流れる。従って、固定接点21と可動接点41との間にアーク放電が生ずることが抑制される。従って、電流遮断装置100を構成する複数のブレーカー1に1つまたは複数の第1ブレーカー1Aが含まれるように構成することにより、電流遮断装置100の内部で生ずるアーク放電が抑制され、電流遮断装置100の安全性が高められる。
【0045】
電流遮断装置100において、ブレーカー1は、1つまたは複数の第2ブレーカー1Bを含んでいてもよい。電流遮断装置100に含まれる第1ブレーカー1Aが一つである場合、電流遮断装置100はさらに1つまたは複数の第2ブレーカー1Bを含む。電流遮断装置100に含まれる第2ブレーカー1Bが一つである場合、電流遮断装置100はさらに1つまたは複数の第1ブレーカー1Aを含む。図1では、2つの第2ブレーカー1Bを含む電流遮断装置100が示されている。
【0046】
図5ないし7は、第2ブレーカー1Bを示している。第2ブレーカー1Bは、上記固定片2、可動片4、熱応動素子5、ケース10等によって構成され、第1ブレーカー1Aに含まれているPTCサーミスター6を有さない。第2ブレーカー1Bの遮断状態での抵抗は、実質的に無限大となる。
【0047】
第2ブレーカー1Bでは、第1ブレーカー1AにおいてPTCサーミスター6が配されていた領域には、ケース本体を構成する樹脂が嵩上げされており、固定片2と熱応動素子5とは互いに絶縁されている。このような第2ブレーカー1Bは、PTCサーミスター6を有する第1ブレーカー1Aに対して、安価である。従って、電流遮断装置100のブレーカー1として第2ブレーカー1Bを含めることにより、電流遮断装置100の製造コストを抑制できる。さらに、複数の第2ブレーカー1Bを含めることにより、電流遮断装置100の製造コストを抑制できる。
【0048】
図1に示される電流遮断装置100は、単一の第1ブレーカー1Aと2つの第2ブレーカー1Bとを有している。このような電流遮断装置100は、製造コストを抑制しつつ、動作時のアーク放電を抑制することが可能となる。なお、電流遮断装置100を構成するブレーカー1のバリエーションは、単一の第1ブレーカー1Aと2つの第2ブレーカー1Bとの組み合わせに限られない。例えば、本発明の電流遮断装置100は、単一の第1ブレーカー1Aと単一の第2ブレーカー1Bとの組み合わせによって構成されていてもよく、複数の第1ブレーカー1Aによって構成されていてもよい。また、本発明の電流遮断装置100は、単一又は複数の第1ブレーカー1Aと3つ以上の第2ブレーカー1Bとの組み合わせによって構成されていてもよい。この場合、第1ブレーカー1Aの個数よりも多い個数の第2ブレーカー1Bにて電流遮断装置100を構成することにより、電流遮断装置100の製造コストを抑制できる。なお、特に低い製造コストが要求される用途にあっては、電流遮断装置100は、複数の第2ブレーカー1Bのみによって構成されていてもよい。
【0049】
図8ないし11は、電流遮断装置100の温度が上昇したときの第1ブレーカー1A及び第2ブレーカー1B1、1B2を含む電流遮断装置100の動作を時系列で示している。ここで、第2ブレーカー1B1の動作温度をT1、第2ブレーカー1B2の動作温度をT2、第1ブレーカー1Aの動作温度をT3とし、T1<T2<T3とする。また、第2ブレーカー1B1の導通状態での両端間の抵抗をR1、第2ブレーカー1B2の導通状態での両端間の抵抗をR2、第1ブレーカー1Aの導通状態での両端間の抵抗をR3、第1ブレーカー1Aの遮断状態での両端間の抵抗をR0とする。
【0050】
なお、以下では、第1ブレーカー1A及び第2ブレーカー1B1、1B2の温度差は小さく、第1ブレーカー1A及び第2ブレーカー1B1、1B2の温度は、実質的に発熱体の温度に等しいものとする。
【0051】
図8に示されるように、発熱体の温度がT1未満である初期状態では、第1ブレーカー1A及び第2ブレーカー1B1、1B2は、全て導通状態を維持し、電流遮断装置100の両端間の抵抗RR1は、第1ブレーカー1A及び第2ブレーカー1B1、1B2の合成抵抗で表される。
【0052】
図9に示されるように、発熱体の温度がT1に達すると、第2ブレーカー1B1が遮断状態に移行し、電流遮断装置100の両端間の抵抗RR2は、第1ブレーカー1A及び第2ブレーカー1B2の合成抵抗で表される。
【0053】
図10に示されるように、発熱体の温度がT2に達すると、第2ブレーカー1B2が遮断状態に移行し、電流遮断装置100の両端間の抵抗RR3は、第1ブレーカー1Aの抵抗で表される。
【0054】
そして、図11に示されるように、発熱体の温度がT3に達すると、第1ブレーカー1Aが遮断状態に移行し、電流遮断装置100の両端間の抵抗RR4は、第1ブレーカー1Aの遮断状態での抵抗R0で表される。なお、電流遮断装置100において、すべてのブレーカー1がPTCサーミスター6を含まない第2ブレーカー1Bで構成されている場合、抵抗RR4は無限大となる。
【0055】
図8ないし11に示されるように、発熱体の温度に応じて電流遮断装置100の両端間の抵抗が変動する。従って、電流遮断装置100の両端間の抵抗をモニターすることにより、発熱体の温度を知得することが可能となる。
【0056】
通常、可動片4が導通状態のときの各ブレーカー1の抵抗は極めて小さく、可動片4が遮断状態のときの各ブレーカー1の抵抗は極めて大きい。従って、いずれかのブレーカー1が導通状態に移行したときの電流遮断装置100の両端間の抵抗の変動は然程大きくない。そこで、本実施形態では、各ブレーカーの導通状態での両端間の抵抗を以下の通り設定することにより、電流遮断装置100の両端間の抵抗の変動を大きくし、各ブレーカーの動作の検出精度が高められる。
【0057】
電流遮断装置100において、第1ブレーカー1Aの導通状態での両端間の抵抗R3は、第2ブレーカー1B1の導通状態での両端間の抵抗R1及び第2ブレーカー1B2の導通状態での両端間の抵抗R2よりも大きい、のが望ましい。すなわち、第1ブレーカー1Aの導通状態での両端間の抵抗は、各第2ブレーカー1Bの導通状態での両端間の抵抗よりも大きい、のが望ましい。このような電流遮断装置100では、各第2ブレーカー1Bの動作の検出精度を容易に高めることができる。また、各第2ブレーカー1Bの導通状態での両端間の抵抗は、第1ブレーカー1Aの導通状態での両端間の抵抗よりも小さくなるため、図8に示されるような初期状態及び図9に示されるような一部の第2ブレーカー1Bが動作している状態において、電流遮断装置100の抵抗値が抑制され、充放電電流を大きくすることが可能となる。なお、第2ブレーカー1Bが単一の第2ブレーカー1B1のみで構成される形態にあっては、第1ブレーカー1Aの導通状態での両端間の抵抗R3は、第2ブレーカー1B1の導通状態での両端間の抵抗R1よりも大きい、のが望ましい。
【0058】
電流遮断装置100において、第1ブレーカー1Aの導通状態での両端間の抵抗は、少なくとも一つの第2ブレーカー1B(例えば、第2ブレーカー1B1)の導通状態での両端間の抵抗よりも大きくてもよい。このような電流遮断装置100では、第2ブレーカー1B1の動作の検出精度を容易に高めることができる。また、図8に示されるような初期状態において、電流遮断装置100の抵抗値が抑制され、充放電電流を大きくすることが可能となる。
【0059】
また、一般に、複数のブレーカー1を含む電流遮断装置100にあっては、複数のブレーカー1のうち最も動作温度が高いブレーカー1の導通状態での両端間の抵抗は、他のブレーカー1の導通状態での両端間の抵抗よりも大きいのが望ましい。このような電流遮断装置100にあっても、他のブレーカーの動作の検出精度を容易に高めることができる。また、他のブレーカー1の導通状態での両端間の抵抗は、最も動作温度が高いブレーカー1の導通状態での両端間の抵抗よりも小さくなるため、図8に示されるような初期状態及び図9に示されるような一部のブレーカー1が動作している状態において、電流遮断装置100の抵抗値が抑制され、充放電電流を大きくすることが可能となる。
【0060】
電流遮断装置100において、第2ブレーカー1B1の導通状態での両端間の抵抗R1は、第2ブレーカー1B2の導通状態での両端間の抵抗R2よりも小さい、のが望ましい。すなわち、複数の第2ブレーカー1Bのうち最も動作温度が低い第2ブレーカー1Bの導通状態での両端間の抵抗は、他の第2ブレーカー1Bの導通状態での両端間の抵抗よりも小さい、のが望ましい。このような電流遮断装置100では、最も動作温度が低い第2ブレーカー1Bの動作後における、他の第2ブレーカー1Bの動作の検出精度を容易に高めることができる。また、図8に示されるような初期状態において、電流遮断装置100の抵抗値が抑制されるので、充放電電流を大きくすることが可能となる。
【0061】
また、一般に、複数のブレーカー1を含む電流遮断装置100にあっては、複数のブレーカー1のうち最も動作温度が低いブレーカー1の導通状態での両端間の抵抗は、他のブレーカー1の導通状態での両端間の抵抗よりも小さいのが望ましい。このような電流遮断装置100にあっては、他のブレーカー1の動作の検出精度を容易に高めることができる。また、図8に示されるような初期状態において、電流遮断装置100の抵抗値が抑制され、充放電電流を大きくすることが可能となる。
【0062】
電流遮断装置100において、第2ブレーカー1B1の導通状態での両端間の抵抗R1は、第2ブレーカー1B2と第1ブレーカー1Aの導通状態での両端間の合成抵抗(RR2)よりも小さい、のが望ましい。すなわち、複数の第2ブレーカー1Bのうち最も動作温度が低い第2ブレーカー1Bの導通状態での両端間の抵抗は、他のブレーカー1の導通状態での両端間の合成抵抗よりも小さい、のが望ましい。このような電流遮断装置100では、最も動作温度が低い第2ブレーカー1Bの動作後における、他の第2ブレーカー1Bの動作の検出精度をより一層高めることができる。また、図8に示されるような初期状態において、電流遮断装置100の抵抗値が抑制されるので、充放電電流を大きくすることが可能となる。
【0063】
また、一般に、複数のブレーカー1を含む電流遮断装置100にあっては、複数のブレーカー1のうち最も動作温度が低いブレーカー1の導通状態での両端間の抵抗は、他のブレーカー1の導通状態での両端間の合成抵抗よりも小さい、のが望ましい。このような電流遮断装置100にあっても、最も動作温度が低いブレーカー1の動作後における、他のブレーカー1の動作の検出精度をより一層高めることができる。また、図8に示されるような初期状態において、電流遮断装置100の抵抗値が抑制されるので、充放電電流を大きくすることが可能となる。
【0064】
電流遮断装置100において、第2ブレーカー1B1の導通状態での両端間の抵抗は、第2ブレーカー1B2及び第1ブレーカー1Aの導通状態での両端間の合成抵抗の2%~201%である、のが望ましい。すなわち、複数の第2ブレーカー1Bのうち最も動作温度が低い第2ブレーカー1Bの導通状態での両端間の抵抗は、他のブレーカー1の導通状態での両端間の合成抵抗の2%~201%である、のが望ましい。最も動作温度が低い第2ブレーカー1Bの導通状態での両端間の抵抗が他のブレーカー1の導通状態での両端間の合成抵抗の2%以上であることにより、最も動作温度が低い第2ブレーカー1Bの動作の検出精度をより一層高めることができる。最も動作温度が低い第2ブレーカー1Bの導通状態での両端間の抵抗が他のブレーカー1の導通状態での両端間の合成抵抗の200%以下であることにより、最も動作温度が低い第2ブレーカー1Bの動作後における、他の第2ブレーカー1Bの動作の検出精度を容易に高めることができる。
【0065】
また、一般に、複数のブレーカー1を含む電流遮断装置100にあっては、複数のブレーカー1のうち最も動作温度が低いブレーカー1の導通状態での両端間の抵抗は、他のブレーカー1の導通状態での両端間の合成抵抗の2%~201%である、のが望ましい。これにより、最も動作温度が低いブレーカー1の動作の検出精度をより一層高めつつ、最も動作温度が低いブレーカー1の動作後における、他のブレーカー1の動作の検出精度を容易に高めることができる。
【0066】
電流遮断装置100の動作によって2次電池パック201の放電または充電が停止し、発熱体の温度が低下すると、それぞれのブレーカー1の温度も低下し、各ブレーカー1は、図4または7に示される遮断状態から図3または6に示される導通状態に復帰する。各ブレーカー1が遮断状態から導通状態に復帰する温度を復帰温度とする。復帰温度は、動作温度よりも低い温度であり、各ブレーカー1ごとに設定される。復帰温度は、通常、動作温度と相関があるが、例えば、熱応動素子5曲率及び弾性率並びに可動片4の弾性率等の設定如何によっては、動作温度と独立して設定可能である。
【0067】
図12は、図11に示される状態から発熱体の温度が低下して、複数のブレーカー1のうち最も復帰温度が高いブレーカー1Zが遮断状態から導通状態へと復帰した電流遮断装置100を示している。
【0068】
複数のブレーカー1を含む電流遮断装置100にあっては、最も復帰温度が高いブレーカー1Zが先に復帰する。仮に、最も復帰温度が高いブレーカー1ZがPTCサーミスター6を含まない第2ブレーカー1Bであるとすると、この第2ブレーカー1Bの復帰に伴い、2次電池パック201の放電または充電が再開される。これに伴い、発熱体が再び発熱し、発熱体が当該第2ブレーカー1Bの動作温度に達すると、電流遮断装置100は図11に示される状態へと再度移行する。このような緩やかなチャタリング動作は、2次電池パック201に蓄えられていた電力が実質的に枯渇するまで繰り返される。
【0069】
そこで、電流遮断装置100では、複数のブレーカー1のうち、最も復帰温度が高いブレーカー1Zは、第1ブレーカー1Aである、のが望ましい。このような構成により、2次電池パック201に蓄えられていた電力が第1ブレーカー1AのPTCサーミスター6に消費されて実質的に枯渇し、発熱体の温度が当該第1ブレーカー1Aの復帰温度まで低下するまで電流遮断装置100の遮断状態は維持される。これにより、上述したチャタリング動作は抑制される。
【0070】
最も復帰温度が高いブレーカー1Zが第1ブレーカー1Aである形態において、当該第1ブレーカー1Aの動作温度よりも高い動作温度の第2ブレーカー1Bが、複数のブレーカー1に含まれている数は1以下であってもよい。このような第2ブレーカー1Bは、設計及び製造が困難であるところ、かかる第2ブレーカー1Bを削減することにより、電流遮断装置100の設計及び製造が容易となる。
【0071】
最も復帰温度が高いブレーカー1Zが第1ブレーカー1Aである形態において、複数のブレーカー1は、最も復帰温度が高い第1ブレーカー1Aの動作温度よりも低い動作温度のブレーカー1を含んでいてもよい。この場合、最も復帰温度が高い第1ブレーカー1Aの動作温度よりも低い動作温度のブレーカー1は、第1ブレーカー1Aであってもよく、第2ブレーカー1Bであってもよい。このようなブレーカー1は、設計及び製造が容易であるため、電流遮断装置100の設計及び製造も容易となる。
【0072】
電流遮断装置100において、複数のブレーカー1は、同一の固定片2及び同一の可動片4にて構成されていてもよい。「同一の固定片」とは、実質的に同一の材料及び寸法にて形成されている固定片を意図し、工程上の公差として許容される範囲内であれば足り、それ以上の精度は要求されない。従って、例えば、部品単体としての導通抵抗が等しい固定片は、同一の固定片である。「同一の可動片」についても同様である。なお、この場合、各ブレーカー1において、固定接点21と可動接点41との接触抵抗は互いに異なっていてもよい。
【0073】
このような電流遮断装置100では、各ブレーカー1を構成する可動片4及び熱応動素子5等のパーツを共通化することが可能となり、電流遮断装置100のコストダウンを図ることができる。
【0074】
図13は、電流遮断装置100を含む充放電制御回路200を示している。充放電制御回路200は、電流遮断装置100と、2次電池パック201と、給電部202と、負荷203と、制御部204とを含んでいる。
【0075】
2次電池パック201は、電流遮断装置100に対して直列に接続される。給電部202は、2次電池パック201を充電するための直流電力を供給する。負荷203は、2次電池パック201から直流電力の供給を受ける。本実施形態の充放電制御回路200では、給電部202及び負荷203の両方が2次電池パック201に接続されているが、いずれか一方が省力されていてもよい。すなわち、充放電制御回路200は、少なくとも給電部202または負荷203の一方を含んでいる。
【0076】
2次電池パック201は、内部抵抗を有し、充電または放電の際に発熱する。従って、充放電制御回路200では、2次電池パック201が発熱体となり、電流遮断装置100は、2次電池パック201の熱が伝達され易いように配される。特に、電流遮断装置100を構成する複数のブレーカー1は、2次電池パック201に隣接して配されるのが望ましい。2次電池パック201が発する熱を伝達する伝熱体が設けられる形態では、複数のブレーカー1は、伝熱体に隣接して配されていてもよい。
【0077】
制御部204は、給電部202からの充電電流または負荷203への放電電流を制御する。制御部204は、電流遮断装置100の端子101、102と接続されている。これにより、制御部204が、電流遮断装置100の両端抵抗を検出可能となる。
【0078】
制御部204は、電流遮断装置100の両端抵抗を検出することにより、発熱体すなわち、2次電池パック201の温度を知得する。そして、2次電池パック201の温度に応じて給電部202からの充電電流または負荷203への放電電流を制御する。
【0079】
すなわち、制御部204は、電流遮断装置100の両端抵抗に基づいて、給電部202からの充電電流または負荷203への放電電流を制御する。例えば、電流遮断装置100の両端抵抗がRR1からRR2に増加したとき、制御部204は、充電電流または放電電流が減少するように、給電部202または負荷203を制御する。これにより、2次電池パック201の温度上昇が抑制される。
【0080】
さらに電流遮断装置100の両端抵抗がRR2からRR3に増加したとき、制御部204は、充電電流または放電電流がさらに減少するように、給電部202または負荷203を制御する。これにより、2次電池パック201の温度上昇がさらに抑制される。このような制御によっても、電流遮断装置100の両端抵抗がRR3からRR4に増加したとき、制御部204は、給電部202または負荷203の運転を停止させる。
【0081】
このように、制御部204が、電流遮断装置100の両端抵抗に基づいて給電部202または負荷203を段階的に制御することにより、給電部202または負荷203の運転が効率よく制御される。
【0082】
以上、本発明の電流遮断装置100等が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。すなわち、本発明の電流遮断装置100は、少なくとも、温度変化に応じて電流を遮断する電流遮断装置100であって、固定接点21を有する固定片2と、弾性変形可能な弾性部44及び可動接点41を有し、可動接点41を固定接点21に押圧して接触させる可動片4と、温度変化に伴って変形することにより、可動片4の状態を可動接点41が固定接点21に接触する導通状態から可動接点41が固定接点21から離隔する遮断状態に移行させる熱応動素子5とを有し、可動片4の状態が導通状態から遮断状態に移行する動作温度が異なる複数のブレーカー1が、並列に接続されてなっていればよい。
【0083】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0084】
[本発明1]
電流を遮断する電流遮断装置であって、
固定接点を有する固定片と、弾性変形可能な弾性部及び可動接点を有し、前記可動接点を前記固定接点に押圧して接触させる可動片と、温度変化に伴って変形することにより、前記可動片の状態を前記可動接点が前記固定接点に接触する導通状態から前記可動接点が前記固定接点から離隔する遮断状態に移行させる熱応動素子とを備え、前記可動片の状態が前記導通状態から前記遮断状態に移行する動作温度が異なる複数のブレーカーが、並列に接続されてなる、
電流遮断装置。
[本発明2]
少なくとも一つの前記ブレーカーの前記導通状態での両端間の前記抵抗は、他の前記ブレーカーの前記導通状態での両端間の前記抵抗と異なる、本発明1に記載の電流遮断装置。
[本発明3]
前記複数のブレーカーのうち最も前記動作温度が高い前記ブレーカーの前記導通状態での両端間の抵抗は、他の前記ブレーカーの前記導通状態での両端間の抵抗よりも大きい、本発明2に記載の電流遮断装置。
[本発明4]
前記複数のブレーカーのうち最も前記動作温度が低い前記ブレーカーの前記導通状態での両端間の抵抗は、他の前記ブレーカーの前記導通状態での両端間の抵抗よりも小さい、本発明2に記載の電流遮断装置。
[本発明5]
前記複数のブレーカーのうち最も前記動作温度が低い前記ブレーカーの前記導通状態での両端間の抵抗は、他の前記ブレーカーの前記導通状態での両端間の合成抵抗よりも小さい、本発明2に記載の電流遮断装置。
[本発明6]
前記複数のブレーカーのうち最も前記動作温度が低い前記ブレーカーの前記導通状態での両端間の抵抗は、他の前記ブレーカーの前記導通状態での両端間の合成抵抗の2%~201%である、本発明2に記載の電流遮断装置。
[本発明7]
前記複数のブレーカーは、前記可動片が前記遮断状態にあるとき、前記固定片と前記可動片とを導通させる正特性サーミスターを有する第1ブレーカーを1つまたは複数含む、本発明1に記載の電流遮断装置。
[本発明8]
前記複数のブレーカーは、前記正特性サーミスターを有さない第2ブレーカーを1つまたは複数含む、本発明7に記載の電流遮断装置。
[本発明9]
前記複数のブレーカーのうち、最も前記遮断状態から前記導通状態に復帰する復帰温度が高い前記ブレーカーは、前記第1ブレーカーである、本発明8に記載の電流遮断装置。
[本発明10]
最も前記復帰温度が高い前記第1ブレーカーの前記動作温度よりも高い前記動作温度の前記第2ブレーカーが、前記複数のブレーカーに含まれている数は1以下である、本発明9に記載の電流遮断装置。
[本発明11]
前記複数のブレーカーは、最も前記復帰温度が高い前記第1ブレーカーの前記動作温度よりも低い前記動作温度の前記ブレーカーを含む、本発明10に記載の電流遮断装置。
[本発明12]
前記複数のブレーカーは、同一の前記固定片及び同一の前記可動片にて構成されている、本発明1に記載の電流遮断装置。
[本発明13]
本発明1ないし12のいずれかに記載の電流遮断装置と、
前記電流遮断装置に直列に接続される2次電池パックと、
前記2次電池パックに給電する給電部または前記2次電池パックから給電される負荷と、
前記電流遮断装置の両端抵抗に基づいて、前記給電部からの充電電流または前記負荷への放電電流を制御する制御部とを含む、充放電制御回路。
【符号の説明】
【0085】
1 :ブレーカー
1A :第1ブレーカー
1B :第2ブレーカー
1B1 :第2ブレーカー
1B2 :第2ブレーカー
2 :固定片
4 :可動片
5 :熱応動素子
6 :サーミスター
21 :固定接点
41 :可動接点
44 :弾性部
100 :電流遮断装置
200 :充放電制御回路
201 :2次電池パック
202 :給電部
203 :負荷
204 :制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13