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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025006
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】粒状入浴剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20240216BHJP
   A61K 8/20 20060101ALI20240216BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20240216BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20240216BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20240216BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/20
A61K8/36
A61K8/86
A61Q19/10
A61K8/19
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128065
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】714008950
【氏名又は名称】白元アース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】袴田 智也
(72)【発明者】
【氏名】阪本 卓之
(72)【発明者】
【氏名】金野 覚
(72)【発明者】
【氏名】片岡 賢志
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB311
4C083AB312
4C083AB332
4C083AB352
4C083AC231
4C083AC292
4C083AD041
4C083AD042
4C083CC25
4C083DD16
4C083EE41
4C083FF05
(57)【要約】
【課題】
浴湯に投入された際に浴湯表面に浮上し難い粒状入浴剤を、高温の加熱工程を実施することなく製造可能とする粒状入浴剤の製造方法を提供する。
【解決手段】
発泡性粒状入浴剤は、(A)核剤、(B)入浴剤有効成分、(C)コーティング剤、を含む組成物を撹拌装置に投入する投入工程と、撹拌装置に投入された組成物を撹拌し当該撹拌装置内部の温度が前記コーティング剤の融点未満の環境下で前記組成物を造粒化する造粒工程と、を備える。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)核剤、
(B)入浴剤有効成分、
(C)コーティング剤、
を含む組成物を撹拌装置に投入する投入工程と、
前記撹拌装置に投入された組成物を撹拌し当該撹拌装置内部の温度が前記コーティング剤の融点未満の環境下で前記組成物を造粒化する造粒工程と、
を備えることを特徴とする粒状入浴剤の製造方法。
【請求項2】
入浴剤100重量%において、粒径が3mm以上6.5mm未満の粒状物が全体の40重量%以上となるまで前記造粒工程を実施する請求項1に記載の粒状入浴剤の製造方法。
【請求項3】
前記(B)入浴剤有効成分が、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩と有機酸とを含む炭酸ガス発生物である請求項1または2に記載の粒状入浴剤の製造方法。
【請求項4】
前記(C)コーティング剤が、ポリエチレングリコールである請求項1または2に記載の粒状入浴剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状入浴剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
入浴剤は、液状、粉末状、粒状、錠剤等のさまざまな形態が知られる。中でも粒状入浴剤は、使用時の取り扱い性が容易であり、また浴湯に対し分散して入浴剤を投入しやすいという点で優れている。
【0003】
従来、粒状入浴剤は、各組成を混合した後、圧縮して造粒する方法が一般的であった。たとえば、特許文献1には、有機酸と炭酸塩を含有する固形浴用剤組成物の発明が開示されており、当該固形浴用剤組成物の製造方法として、ブリケットマシーンを用いて造粒する方法が開示されている。ブリケットマシーンとは、適宜、混合された粉末状の各組成を、回転する2本のロール間において圧縮し粒状に成型する造粒機である。
【0004】
また、入浴剤とは異なるが、特許文献2には、フットソーキングバスに用いるための粒状組成物に関し、少なくとも1つのワックス(封入用組成物)を含んでいる組成物によって封入されたソルトを含む粒状組成物が開示されている。同文献には、当該粒状組成物の製造方法として、ソルトをコーティングするための封入用組成物の成分を一緒に添加し、80℃まで加熱して混合物を均質になるまで撹拌し、ペーストを形成する。そして当該ペーストにソルトを添加し、ソルトがペーストに均一にコーティングされるまで撹拌する旨、説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-083584号公報
【特許文献2】特表2016-521723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に開示される造粒方法は以下の問題点があった。
即ち、特許文献1に開示されるブリケットマシーンを用いた造粒方法は、混合される組成がいずれも粉末状であり、小粒子状の組成を使用した例は一般的でない。また、2本のロール間の距離を調整し、圧縮時の圧力を適度に抑えることによって良好な造粒性が得られ得る半面、低い圧力で造粒された入浴剤は、密度が小さく浴湯に投入後、すぐに浴湯表面に浮いてしまう傾向にあった。
【0007】
一方、特許文献2に開示される造粒方法では、ソルトに対しペーストをコーティングするため、密度の高い粒状物が得られやすい。しかしながら、かかる造粒方法では、80℃という高温条件下で撹拌混合を行うことによる危険性、温度の高いペーストにソルトを追加投入する工程の実施など、高温の加熱を必須とすることによる製造上の問題点を有していた。また、ペースト状にしたコーティング剤は粘着性があり、撹拌装置で撹拌すると、装置内部に付着するなどして生産効率が低下するという問題もあった。
【0008】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものである。即ち、本発明は、浴湯に投入された際に浴湯表面に浮上し難い粒状入浴剤を、高温の加熱工程を実施することなく製造可能とする粒状入浴剤の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の粒状入浴剤の製造方法は、(A)核剤、(B)入浴剤有効成分、(C)コーティング剤、を含む組成物を撹拌装置に投入する投入工程と、上記撹拌装置に投入された組成物を撹拌し当該撹拌装置内部の温度が前記コーティング剤の融点未満の環境下で上記組成物を造粒化する造粒工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記構成を備える本発明の粒状入浴剤の製造方法によれば、核剤を含み浴湯表面に浮上し難い粒状入浴剤を、コーティング剤の融点まで加熱する必要なく、簡易な工程で製造することができる。また本発明における造粒工程は、コーティング剤の融点未満の環境下で組成物の造粒化が行われる。そのため、コーティング剤がペースト状になることが防止され、べたつきによる装置内部への付着が生じにくく、生産効率の低下の問題がない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の粒状入浴剤の製造方法は、(A)核剤、(B)入浴剤有効成分、(C)コーティング剤を含む組成物を撹拌装置に投入する投入工程と、上記撹拌装置に投入された組成物を撹拌し当該撹拌装置内部の温度が上記コーティング剤の融点未満の環境下で上記組成物を造粒化する造粒工程と、を備える。
尚、以下では本発明の粒状入浴剤の製造方法を単に本発明の製造方法という場合がある。
【0012】
上記構成を有する本発明の製造方法は、撹拌装置に入浴剤の組成物を投入し、撹拌することによって、撹拌装置内部の温度が上記コーティング剤の融点未満の環境下で、核剤の周囲に入浴剤有効成分が接着した粒状入浴剤を製造することができる。即ち、本発明の製造方法は、撹拌装置内部の温度がコーティング剤の融点以上の高温となるよう加熱する必要がない。そのため、本発明の製造方法は、高温条件下で撹拌混合を行うことによる危険性、温度の高いペーストにソルトを追加投入する工程の実施など、高温の加熱を必須とすることによる製造上の問題点が生じにくい。
【0013】
本発明者らは、核剤と入浴剤有効成分と接着させて造粒するためにコーティング剤の利用について鋭意検討を行った。その結果、驚くべきことに、撹拌装置に核剤、入浴剤有効成分、及びコーティング剤を投入して撹拌を行うことで、コーティング剤の融点未満の温度で、コーティング剤によって核剤の周囲に入浴剤有効成分が接着してなる粒状物が得られることが見いだされた。かかる造粒化の機構は明らかではないが、摩擦により撹拌装置の内部温度が徐々に昇温する中で、摩擦による局部的温度上昇(閃光温度)が発生し、これによって軟化したコーティング剤が、核剤と入浴剤有効成分とを接着させて粒状物が形成されたものと推測される。
【0014】
本発明の製造方法は、加熱機能を有しない撹拌装置を用いてもよいし、加熱機能を有する撹拌装置を用いてもよい。加熱機能を有しない撹拌装置を用いる場合には、より簡易な設備かつより簡易工程で粒状入浴剤を製造できる点で好ましい。
また、加熱機能を有する撹拌装置を用いる場合には、撹拌装置内の温度がコーティング剤の融点未満の適度な温度となるまで、摩擦により生じる熱とともに加熱機能により撹拌装置内部を加熱してもよい。このように加熱機能を有する撹拌装置を用いることによって、造粒化するまでの撹拌時間の短縮を図ることが可能である。
以下では、加熱機能を有しない撹拌装置を用いた態様を例に、本発明の製造方法の詳細についてさらに説明する。
【0015】
投入工程:
本発明における投入工程とは、(A)核剤、(B)入浴剤有効成分、(C)コーティング剤を含む組成物を撹拌装置に投入する工程である。
投入工程は、後述する造粒工程とは独立に実施されてもよいし、投入工程の一部が造粒工程と重複して行われてもよい。また本発明は、投入工程を間欠的に行い、第一の投入工程と、これに続く第二の投入工程との間、及び第二の投入工程後に、撹拌を伴う造粒工程を実施してもよい。ただし、投入工程により全ての組成物を撹拌装置に投入して投入工程を完了し、その後に造粒工程を行う態様は、作業がシンプルであり製造工程が容易であるため好ましい。
【0016】
造粒工程:
造粒工程は、撹拌装置に投入された組成物を撹拌し当該撹拌装置内部の温度が上記コーティング剤の融点未満の環境下で上記組成物を造粒化する工程である。
上記投入工程に続き造粒工程が実施されるため、本発明の製造方法は、実質的に1つの撹拌装置を用いて実施することができる。そのため設備費及び設備のメンテナンスの負担が少ないという製造上の有利な点を有する。
【0017】
本発明に用いられる撹拌装置は、容器内部に撹拌羽を備え、(A)核剤、(B)入浴剤有効成分、(C)コーティング剤を含む組成物を撹拌できるものであればよいが、撹拌時の摩擦熱を有効に利用可能であるという観点からは、高速で撹拌できる撹拌装置が好ましい。好ましい市販の撹拌装置としては、たとえば日本コークス工業社製のFM1500などが挙げられる。
造粒工程における撹拌速度は、用いられる組成や使用する撹拌羽のサイズにより適宜決定することができるが、摩擦により発生する熱をコーティング剤の軟化に有効に利用するという観点からは、造粒工程における回転数は、たとえば80rpm以上800rpm以下の範囲で調整されることが好ましい。また、たとえば撹拌羽の長さが約20cm~約130cmの撹拌装置において6m/sec以上10m/sec以下の撹拌速度で撹拌することが好ましい。尚、ここでいう撹拌羽の長さとは、撹拌の軸回転部を中心として回転した際に攪拌羽の先端が描く円の直径の長さを指す。
【0018】
造粒工程における撹拌時間は、特に限定されるものではなく、投入した組成物が造粒化するまで撹拌を継続すればよい。たとえば加熱設備を利用することなしに造粒工程を実施する場合には、撹拌時間は20分以上実施することが好ましく、十分に摩擦熱を発生させてコーティング剤によるコーティングを確実に行うという観点からは、撹拌時間は25分以上であることがより好ましく、30分以上であることが更に好ましい。撹拌時間の上限は特に限定されないが、本発明者らの検討によれば、撹拌時間が数時間以内に良好に造粒することが可能であり、コーティング剤の含有量や撹拌速度などを調整することによって、撹拌時間を4時間以下に調整することが好ましく、3時間以下に調整することがより好ましく、2時間以下に調整することが更に好ましい。
造粒工程において、撹拌を継続して行うことにより、撹拌羽と(A)核剤、(B)入浴剤有効成分、(C)コーティング剤を含む組成物との接触により摩擦が生じ、撹拌装置内部の温度が昇温する。ここで撹拌装置内部の温度がコーティング剤の融点未満の温度であるにも関わらず、(C)コーティング剤を介して(A)核剤と(B)入浴剤有効成分とが接着し、粒状化物が製造される。そのためコーティング剤が全体的にペースト化して粘性が高くなり、撹拌羽や撹拌装置内壁等に付着して生産効率が低下するということがない。
摩擦熱による造粒化の機構は明らかではないが、撹拌により発生した摩擦により撹拌装置の内部温度が徐々に昇温する中で、摩擦による局部的温度上昇(閃光温度)が発生し、これによって軟化したコーティング剤が、核剤と入浴剤有効成分とを接着させて粒状物が形成されるものと推測される。
【0019】
本発明における造粒工程は、粒径が1.0mm以上6.5mm未満の粒状物が全体の50重量%以上となるまで実施されることが好ましく、60%重量以上となるまで実施されることがより好ましく、75%重量以上となるまで実施されることが更に好ましく、90重量%以上となるまで実施されることが特に好ましい。上述する適度な範囲の粒径の粒状物を所定割合で含むことによって、造粒工程後に、好ましい粒径の粒状物だけを選択する選択工程を実施することなく、そのまま製品として取り扱うことが可能である。
換言すると、本発明の製造方法、造粒工程の後に、所望の範囲の粒径を示す粒状物を、篩分けなどによる選択する選択工程を実施し、これによって、所望の範囲の粒径を示す粒状物の含有量が所望の割合(たとえば50重量%以上)で含まれる入浴剤を調整することもできる。たとえば、より優れた入浴剤を提供するという観点からは、造粒工程後に、さらに上記選択工程を実施して粒径の小さいもの及び粒径の大きいものを除くことによって、入浴剤100重量%において、90重量%以上が粒径1mm以上6.5mm未満の粒状物となるよう調整することが好ましく、95重量%以上が粒径1mm以上6.5mm未満の粒状物となるよう調整することがより好ましい。
【0020】
また、本発明における造粒工程は、入浴剤100重量%において、粒径が3mm以上6.5mm未満の粒状物が40重量%以上となるまで上記造粒工程を実施されることが好ましく、55重量%以上となるまで実施されることがより好ましく、70重量%以上となるまで実施されることが更に好ましく、80重量%以上となるまで実施されることが特に好ましい。
特に(B)入浴剤有効成分として炭酸ガス発生物を含む場合には、炭酸ガスの発生による浮力を勘案し、造粒工程は、入浴剤100重量%において、粒径が3mm以上6.5mm未満の粒状物が40重量%以上となるまで実施されることが好ましく、55重量%以上となるまで実施されることがより好ましく、70重量%以上となるまで実施されることが更に好ましく、80重量%以上となるまで実施されることが特に好ましい。
また更に、入浴剤100重量%において、粒径1mm以上6.5mm未満の粒状物が50重量%以上であって、かつ粒径が3mm以上6.5mm未満の粒状物が上述する好ましい範囲であることが望ましい。
【0021】
粒状入浴剤:
本発明の製造方法により製造される入浴剤は、所謂粉末状よりも粒径の大きい入浴剤を指し、たとえば、平均粒径は1mm以上の粒状物である入浴剤を製造することができる。製造される入浴剤の平均粒径は、使用するコーティング剤及び核剤など配合量などで調整可能である。ここでいう平均粒径は、製造された入浴剤から無作為に選択した30個の粒状物の長径を実測し、それらの実測値の算術平均を求めることで得られる。
製造された入浴剤が、このように適度な粒径であることによって、浴湯に投入された後、浴湯面に浮き上がり難く、浴湯中に沈降した状態を維持しやすい。たとえば、入浴剤有効成分として炭酸ガス発生物を含む一般的な粒状入浴剤は、浴湯に投入後、浮力により浴湯面に浮上しやすく、浴湯全体を炭酸ガスで満たすことが困難であった。しかし、(A)核剤及び(B)入浴剤有効成分として炭酸ガス発生物を用いて実施された本発明に製造方法によれば、浴湯に投入された後、浴湯表面への浮上が防止され、浴湯下方で炭酸ガスを発生せしめ、浴湯全体を炭酸ガスで満たす入浴剤を提供することが可能である。従って、本発明の製造方法は、発泡性粒状入浴剤の製造方法として優れる。
【0022】
(A)核剤:
本発明の製造方法に用いられる核剤は、入浴剤に含まれることが禁止されない範囲において、粒状物の核となり、当該粒状物に適度な密度(重量)を付与することが可能な化合物から適宜に選択することができる。浴湯に核剤が残存することを避けるという観点からは、上記核剤は、37℃以上のお湯に対し溶解性を示す化合物であることが好ましい。
【0023】
上記核剤として用いられる化合物は、平均粒径0.5mm以上6.5mm以下であることが好ましく、平均粒径1mm以上5mm以下であることがより好ましく、平均粒径2mm以上4mm以下であることが更に好ましい。かかる範囲の粒径を示す核剤であれば、造粒工程において、撹拌羽等と衝突して摩擦を発生させるとともに局所的に高温の閃光温度を発生させやすく、したがって加熱設備を有しなくても、良好にコーティング剤により核剤と入浴剤有効成分とを接着させることができる。また造粒工程における撹拌によって核剤の一部は割れるなどして相対的に小径になる場合があるが、上述する平均粒径の範囲の核剤であれば多少の割れが生じたとしても、核剤としての機能を良好に維持し得る。
尚、ここで述べる核剤の平均粒径は、核剤の集合物から無作為に選択された30個の粒状物の長径を実測し、測定された値を算術平均することによって求められる。
【0024】
本発明における核剤は、浴湯における入浴剤の沈降に望ましい影響を及ぼすだけではなく、入浴剤として効能も発揮可能な化合物であることが好ましい。かかる観点からは、核剤として、塩化ナトリウム及び/又は硫酸マグネシウムが選択されることがより好ましい。また塩化ナトリウム、硫酸マグネシウムは、結晶性であり適度の粒径を有するとともに、浴湯において溶解性が良好であるという観点からも、核剤として好ましい。
【0025】
本発明の製造方法において、投入工程により投入される核剤の配合割合は特に限定されないが、製造された入浴剤の各粒状物が浴湯に投入された際、浴湯面に浮上することを効果的に防止するという観点からは、投入工程において投入される全組成の合計100重量%において核剤の配合割合は、25重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがより好ましく、35重量%以上であることが更に好ましい。一方、製造された入浴剤の浮上を良好に防止するとともに、(B)入浴剤有効成分による効能も十分に発揮させるという観点からは、投入工程において投入される全組成の合計100重量%において核剤の配合割合は、55重量%以下であることが好ましく、50重量%以下であることがより好ましく、45重量%以下であることが更に好ましい。
【0026】
(B)入浴剤有効成分:
本発明の製造方法は、(A)核剤及び(C)コーティング剤以外の組成として、(B)入浴剤有効成分を用いる。
(B)入浴剤有効成分は、入浴剤の有効成分として知られる種々の組成から1種又は2種以上を適宜選択することができる。
【0027】
たとえば、(B)入浴剤有効成分として炭酸塩及び/又は炭酸水素塩と有機酸とを含む炭酸ガス発生物を挙げることができる。これによって、浴湯に投入された際に、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩と有機酸と水とが反応して炭酸ガスを発生する発泡性粒状入浴剤を製造することができる。
【0028】
ところで、従来の炭酸ガス発泡性の粒状入浴剤は、浴湯に投入されると浴湯表面に浮き上がってしまい、浴湯表面において炭酸ガスの発生が生じるため、炭酸ガスが浴湯全体に行きわたらず、また炭酸ガス発生のために用いられる有機酸が空中に飛散していまい入浴者の咽の原因となるという問題があった。これに対し、(B)入浴剤有効成分として炭酸ガス発生物を用いる態様の本発明の製造方法よれば、核剤の存在により、浴湯に投入された後、浴湯表面に浮き上がりにくく、浴湯中に沈降した状態維持しやすい粒状入浴剤を提供可能である。そのため本発明の製造方法によれば、上述する従来の発泡性の粒状入浴剤の問題が発生し難い優れた発泡性粒状入浴剤を提供可能である。
【0029】
(炭酸塩及び/又は炭酸水素塩)
入浴剤有効成分として用いられる炭酸ガス発生物に含まれる炭酸塩及び/又は炭酸水素塩としては、発泡性入浴剤に使用可能な炭酸塩、炭酸水素塩から1種又は2種以上を適宜選択することができる。
炭酸塩、炭酸水素塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、セスキ炭酸ナトリウム等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が挙げられる。その中でも炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムは、炭酸ガスの発生に寄与するだけでなく、入浴剤の温浴効果を高める作用も発揮するため好ましい。
【0030】
(B)入浴剤有効成分として炭酸ガス発生物を含む本発明の態様において、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩の配合割合は特に限定されないが、核剤との配合割合、良好な炭酸ガスの発生などを勘案した場合、たとえば、投入工程に用いられる全組成100重量%において、5重量%以上25重量%以下であることが好ましい。
【0031】
(有機酸)
入浴剤有効成分として用いられる炭酸ガス発生物に含まれる有機酸としては、発泡性入浴剤に使用可能な有機酸から1種又は2種以上を適宜選択することができる。
有機酸としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸等が挙げられる。中でも、コハク酸は、造粒時の成形性に望ましく寄与し、また取り扱い性の面で好ましい。そのため、有機酸としてコハク酸を含むことは好ましい。コハク酸としては、従来の石油化学原料から作られるコハク酸のほか、植物由来原料など、非化石原料から作られるバイオコハク酸も使用可能である。
上述する有機酸の中でも特にコハク酸は、咽の原因となりやすい有機酸として知られ、発泡性入浴剤の有機酸として実質的に使用し難い有機酸であった。しかしながら、本発明の入浴剤は、浴湯に投入後、浴湯下方に沈降しかつ浮上し難く、浴湯中で炭酸ガスを発生させやすいため、コハク酸を使用しても咽の発生を良好に防止することができる。
【0032】
(B)入浴剤有効成分として炭酸ガス発生物を含む本発明の態様において、有機酸の配合割合は特に限定されないが、核剤との含有比率、良好な炭酸ガスの発生などを勘案した場合、たとえば、投入工程に用いられる全組成100重量%において、5重量%以上25重量%以下であることが好ましい。
【0033】
投入工程に用いられる全組成100重量%における炭酸ガス発生物の配合割合は特に限定されないが、浴湯に投入された後に浴湯面に浮き上がることを良好に防止するという観点からは、35重量%以下であることが好ましく、33重量%以下であることがより好ましい。一方、本発明の入浴剤の使用により炭酸ガスを良好に発生させるという観点からは、入浴剤100重量%における炭酸ガス発生物の配合割合は、20重量%以上であることが好ましく、25重量%以上であることがより好ましい。
【0034】
(B)入浴剤有効成分として炭酸ガス発生物を含む本発明の態様において、(A)核剤及び(B)炭酸ガス発生物の配合割合(炭酸ガス発生物の配合量/核剤の配合量)は、0.80以下となるよう調整されることが好ましい。かかる割合により、本発明の製造方法により製造された発泡性粒状入浴剤は浴湯に投入された後、浴湯表面に浮き上がり難く、浴湯に沈降した状態で炭酸ガスを発生させうる。
より十分に入浴剤の浮き上がりを防止するという観点からは、上記配合割合は、0.78以下であることが好ましく、0.75以下であることがより好ましい。
【0035】
一方、炭酸ガス発生物の配合量/核剤の配合量の下限は特に限定されないが、製造された発泡性粒状入浴剤の浮き上がりを防止しつつ、十分に炭酸ガスを発生させるという観点からは、0.50以上であることが好ましく、0.53以上であることがより好ましく、0.55以上であることがさらに好ましい。
【0036】
(他の組成)
(B)入浴剤有効成分として、上述する炭酸ガス発生物の替わりに又は炭酸ガス発生物と併用して、他の組成を含んでもよい。ここでいう他の組成とは、入浴剤に含まれることによって、好ましい効能や効果を発揮可能な化合物を指す。
上記他の組成としては、入浴剤に含有させうる一般的な組成から1種又は2種以上を選択することができる。一般的な組成としては、たとえば、硫酸ナトリウム又はチオ硫酸ナトリウム等の無機塩類、酸化チタン、ポリアクリル酸ナトリウム、酸化マグネシウム、グリシン、法定色素、香料、保湿成分、植物成分、無水ケイ酸等の安定化剤、アスパラギン酸ナトリウム等のアミノ酸などが挙げられる。
【0037】
(B)入浴剤有効成分として、炭酸ガス発生物と上述する他の組成とを含む場合には、投入工程に投入される全組成100重量%において、上記他の組成の配合割合は35重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましく、25重量%以下であることが更に好ましい。
【0038】
(C)コーティング剤:
本発明の製造方法に用いられるコーティング剤は、(A)核剤と(B)入浴剤有効成分とを粒子状にまとめることが可能な化合物をさし、たとえば、(A)核剤と(B)入浴剤有効成分との集合物の外表面を被覆することで粒状化させることが可能な化合物であってもよいし、コーティング剤を介して(A)核剤と(B)入浴剤有効成分とを接着させ、これによって粒状化を可能とする化合物であってもよい。
【0039】
上記コーティング剤としては、たとえば、(A)核剤及び(B)入浴剤有効成分の融点又は軟化点よりも低い、融点又は軟化点を示す化合物から選択されるとよい。また造粒工程における摩擦熱及び摩擦熱とともに局所的に発生する閃光温度により軟化させてコーティング作用を発揮させやすいという観点からは、コーティング剤として用いられる化合物の融点は、60℃以上80℃以下であることが好ましく、60℃以上70℃以下であることがより好ましい。具体的には、たとえばポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、パラフィンワックスなどが挙げられる。
またコーティング剤を浴湯中に残存させないという観点からは、コーティング剤は、浴湯(たとえば35℃以上の湯)に溶解性を示す化合物であることが好ましい。
【0040】
コーティング剤として好ましく用いられる化合物の例としては、たとえばポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなどが挙げられ、中でもポリエチレングリコールが好ましい。コーティング剤としてポリエチレングリコールを配合することによって、造粒工程において撹拌装置内が摩擦熱等で55℃以上60℃未満程度に昇温することで良好に当該ポリエチレングリコールを軟化させることができ、他の組成同士を接着させて粒状化することができる。
【0041】
コーティング剤として用いられるポリエチレングリコールは、エチレングリコールが重合した構造を有し、分子量が20000以下の化合物を指す。浴湯への溶解性の観点から、コーティング剤として、分子量15000以下のポリエチレングリコールが用いられることが好ましく、分子量10000以下のポリエチレングリコールが用いられることがより好ましい。一方、コーティング剤として用いられるポリエチレングリコールは、常温で固体であることが好ましく、分子量が2000より小さいポリエチレングリコールはペースト状もしくは液状であるためコーティング剤として適当ではないため、分子量2000以上のポリエチレングリコールが用いられることが好ましい。コーティング剤としては分子量3000以上8500以下のポリエチレングリコールが最も好ましく用いられる。
【0042】
ポリエチレングリコールなどのコーティング剤の配合量は、(A)核剤及び(B)入浴剤有効成分を接着させ良好に粒状化させることが可能であるという観点からは、入浴剤100重量%において、5重量%以上であることが好ましく、7重量%以上であることがより好ましく、9重量%以上であることが更に好ましい。また、十分にコーティングの機能を果たしつつ(A)核剤及び(B)炭酸ガス発生物の配合比率を十分に確保するという観点からはコーティング剤の配合量は、入浴剤100重量%において、20重量%以下であることが好ましく、17重量%以下であることがより好ましく、14重量%以下であることが更に好ましい。
【0043】
本発明の製造方法における(A)核剤、(B)入浴剤有効成分(たとえば有機酸、炭酸塩、炭酸水素塩)、(C)コーティング剤のそれぞれの配合割合は、投入工程の実施において調整される。また本発明の製造方法により製造された入浴剤を適当量、秤量してサンプルとし、当該サンプル中に含まれる(A)核剤、(B)入浴剤有効成分(たとえば有機酸、炭酸塩、炭酸水素塩)、(C)コーティング剤の含有量を分析により求めることによって、これらの各組成の配合割合(重量%)を求めることもできる。
【0044】
上述する本発明の製造方法は、(A)核剤として塩化ナトリウム及び/又は硫酸マグネシウムを含み、(B)入浴剤有効成分として炭酸塩及び/又は炭酸水素塩および有機酸を含み、(C)コーティング剤としてポリエチレングリコールを含むことで、発泡性の粒状入浴剤を好ましく製造することができる。
【実施例0045】
以下に、本発明を実施例と比較例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0046】
(実施例1)
以下のとおり本発明の製造方法として実施例1を実施した。
核剤として塩化ナトリウム、炭酸水素塩として重曹、有機酸としてコハク酸、コーティング剤として外原規ポリエチレングリコール6000(重量平均分子量8300)、その他成分として芒硝(硫酸ナトリウム10水塩)を表1に示す配合割合で、撹拌装置に投入した。撹拌装置は、日本コークス工業社製、製品名FM10(撹拌羽の長さは約20cm)を用いた。
尚、表1に示す組成の配合割合は、各成分の純分の割合(重量%)である。
【0047】
組成が投入された撹拌装置内に、温度計を設置し、8m/secの撹拌速度で、撹拌を開始し、上記温度計により内部の温度(撹拌停止温度)が58℃に到達した時点で、撹拌を終了した。撹拌開始から撹拌終了までの時間は30分であった。
尚、撹拌停止温度は、予備実験において、所望の粒径の粒状物が生成される時間を確認した。
【0048】
撹拌停止後、撹拌装置から生成された粒状物を取り出し、常温環境下の条件で冷却し、入浴剤を得た。
【0049】
(実施例2)
撹拌条件を表1に示す内容に変更したこと以外は実施例1と同様に粒状物を製造した。
【0050】
(比較例1)
核剤を用いず、他の成分の配合割合および撹拌条件を表1に示す内容に変更したこと以外は実施例1と同様の条件で入浴剤を製造した。
(比較例2)
コーティング剤を用いず、他の成分の配合割合および撹拌条件を表1に示す内容に変更したこと以外は実施例1と同様の条件で入浴剤を製造した。
【0051】
上述のとおり実施された実施例1、2の製造方法において製造された入浴剤の粒径を以下のとおり測定した。
製造された入浴剤100gをサンプル1とした。上記サンプル1を1mmの目の篩にかけ、当該篩に残った入浴剤をサンプル2とし、篩を通過した入浴剤をサンプル3とした。次にサンプル2を3mmの目の篩にかけ、当該篩を通過した入浴剤をサンプル4とし、篩に残った入浴剤をサンプル5とした。次にサンプル5を6.5mmの目の篩にかけ、当該篩を通過した入浴剤をサンプル6とし、篩に残った入浴剤をサンプル7とした。
・サンプル7: R≧6.5mm
・サンプル6: 6.5mm>R≧3.0mm
・サンプル4: 3.0mm>R≧1.0mm
・サンプル3: 1.0mm>R
上記サンプル3、4、6、7の重量を測定し、入浴剤100g中における割合を算出し、表1に示した。
【0052】
比較例1の製造方法では、30分以上撹拌を継続しても撹拌装置の内部の温度が顕著に上昇せず、粒状物が製造されなかった。
比較例2の製造方法では、コーティング剤を有しないため、(A)核剤と(B)炭酸ガス発生物とが接着せず、粒状物が製造されなかった。また、比較例2は30分以上撹拌を継続しても撹拌装置の内部の温度が顕著に上昇しないことが確認された。
【表1】
【0053】
上述する本発明は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)(A)核剤、
(B)入浴剤有効成分、
(C)コーティング剤、
を含む組成物を攪拌機に投入する投入工程と、
前記撹拌機に投入された組成物を攪拌し当該撹拌機内部の温度が前記コーティング剤の融点未満の環境下で前記組成物を造粒化する造粒工程と、
を備えることを特徴とする粒状入浴剤の製造方法。
(2)入浴剤100重量%において、粒径が3mm以上6.5mm未満の粒状物が全体の40重量%以上となるまで前記造粒工程を実施する上記(1)に記載の粒状入浴剤の製造方法。
(3)前記(B)入浴剤有効成分が、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩と有機酸とを含む炭酸ガス発生物である上記(1)または(2)に記載の粒状入浴剤の製造方法。
(4)前記(C)コーティング剤が、ポリエチレングリコールである上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の粒状入浴剤の製造方法。