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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025010
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】流体圧シリンダのピストン
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/14 20060101AFI20240216BHJP
   F16J 1/12 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
F15B15/14 345Z
F16J1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128083
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000215785
【氏名又は名称】TPR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】彦根 顕
(72)【発明者】
【氏名】大鋸 哲平
【テーマコード(参考)】
3H081
3J044
【Fターム(参考)】
3H081AA03
3H081BB03
3H081CC15
3H081CC23
3H081CC24
3H081DD06
3H081DD24
3H081EE28
3H081HH03
3J044AA01
3J044AA06
3J044BA04
3J044BA06
3J044CA23
3J044DA20
(57)【要約】
【課題】流体圧シリンダにおいて、ピストンの耐久性を向上することが可能な技術を提供する。
【解決手段】流体圧シリンダのピストンは、シリンダ室内にシリンダチューブに沿って移動可能となるように配設されたピストン本体と、ピストン本体に連結され、ピストンの軸方向に延びると共にロッドカバーに形成された挿通孔に挿入されたピストンロッドと、を備え、ピストンの軸方向両端部のうちヘッドカバーに対向するピストン端部は、ピストンの軸方向へ突出した凸状部を含み、凸状部は、その基端部から頂部に向かうに従って縮幅するように形成されており、凸状部の頂部は、ピストンの軸方向において該ピストンの最先端に位置し且つピストンの中心軸が通る位置に形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のシリンダチューブと前記シリンダチューブの一端部を閉塞するヘッドカバーと前記シリンダチューブの他端部を閉塞するロッドカバーとを有するシリンダ本体に挿設される、流体圧シリンダのピストンであって、
前記シリンダチューブと前記ヘッドカバーと前記ロッドカバーとによって画定されるシリンダ室内に前記シリンダチューブに沿って移動可能となるように配設されたピストン本体と、前記ピストン本体に連結され、前記ピストンの軸方向に延びると共に前記ロッドカバーに形成された挿通孔に挿入されたピストンロッドと、を備え、
前記ピストンの軸方向両端部のうち前記ヘッドカバーに対向するピストン端部は、前記ピストンの軸方向へ突出した凸状部を含み、
前記凸状部は、その基端部から頂部に向かうに従って縮幅するように形成されており、
前記凸状部の頂部は、前記ピストンの軸方向において該ピストンの最先端に位置し、且つ前記ピストンの中心軸が通る位置に形成されている、
ピストン。
【請求項2】
前記ピストン端部は、少なくとも一部が樹脂製である、
請求項1に記載のピストン。
【請求項3】
前記凸状部は、前記ピストンの中心軸を回転中心とした回転体として形成されており、
前記凸状部の直径をD1とし、前記シリンダチューブの内径をD2としたとき、
0.075≦D1/D2≦0.995であり、
前記ピストン端部の表面上の点であって前記ピストンの中心軸から径方向外側へD1/2離れた位置にある点と前記凸状部の頂部との前記ピストンの軸方向における距離をHとしたとき、
0.0024<H/(D1/2)<0.075である、
請求項1又は2に記載のピストン。
【請求項4】
前記凸状部の表面は、球面状である、
請求項1又は2に記載のピストン。
【請求項5】
前記凸状部の表面は、湾曲面状である、
請求項1又は2に記載のピストン。
【請求項6】
前記凸状部は、テーパ状に形成されている、
請求項1又は2に記載のピストン。
【請求項7】
空圧シリンダ用のピストンとして形成されている、
請求項1又は2に記載のピストン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧シリンダのピストンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワーク等の搬送手段として、例えば、流体圧を利用してピストンを往復移動させる流体圧シリンダが広く用いられている。流体圧シリンダのピストンは、アルミ製のピストン本体をカシメ加工や締結等によりピストンロッドの端部に固定したものが一般的であった。これに対して、部品点数や組み付け作業工数の削減を目的として、ピストンロッドに合成樹脂で形成したピストン本体をインサート成形することによりピストンロッドとピストン本体を一体に形成する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
ところで、流体圧シリンダには、ピストンがシリンダ本体に当接(衝突)する際の衝撃でピストンが破損することを防ぐために、ゴム等の弾性材料により形成されたダンパを設けたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-2416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、流体圧シリンダの軽量化やコンパクト化が進められており、流体圧シリンダにおいて、軽量化、コンパクト化をはかりつつ、ピストン自体が高い耐久性を有することが望まれている。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、流体圧シリンダにおいて、ピストンの耐久性を向上することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の手段を採用した。即ち、本発明は、筒状のシリンダチューブと前記シリンダチューブの一端部を閉塞するヘッドカバーと前記シリンダチューブの他端部を閉塞するロッドカバーとを有するシリンダ本体に挿設される、流体圧シリンダのピストンである。前記ピストンは、前記シリンダチューブと前記ヘッドカバーと前記ロッドカバーとによって画定されるシリンダ室内に前記シリンダチューブに沿って移動可能となるように配設されたピストン本体と、前記ピストン本体に連結され、前記ピストンの軸方向に延びると共に前記ロッドカバーに形成された挿通孔に挿入されたピストンロッドと、を備え、前記ピストンの軸方向両端部のうち前記ヘッドカバーに対向するピストン端部は、前記ピストンの軸方向へ突出した凸状部を含み、前記凸状部は、前記ピストンの軸方向において、その基端部から頂部に向かうに従って縮幅するように形成されており、前記凸状部の頂部は、前記ピストンの軸方向において該ピストンの最先端に位置し且つ前記ピストンの中心軸が前記頂部を通る位置に形成されている。
【0008】
本発明に係るピストンによると、ピストン本体がヘッドカバー側のエンドストロークに至る際には、凸状部の頂部が最初にヘッドカバーに接触する。そして、衝撃荷重により凸状部が変形する(押し潰される)ことで、凸状部はヘッドカバーとの接触領域を頂部から徐々に拡大しながらヘッドカバーに衝突する。これにより、衝撃エネルギーが分散してピストン端部に吸収され、衝撃応力が低減する。その結果、ピストン端部の破損を防止でき
る。
【0009】
なお、本発明において、前記ピストン端部は、少なくとも一部が樹脂製であってもよい。
【0010】
また、本発明において、前記凸状部は、前記ピストンの中心軸を回転中心とした回転体として形成されており、前記凸状部の直径をD1とし、前記シリンダチューブの内径をD2としたとき、0.075≦D1/D2≦0.995であり、前記ピストン端部の表面上の点であって前記ピストンの中心軸から径方向外側へD1/2離れた位置にある点と前記凸状部の頂部との前記ピストンの軸方向における距離をHとしたとき、0.0024<H/(D1/2)<0.075であってもよい。
【0011】
また、本発明において、前記凸状部の表面は、球面状であってもよい。
【0012】
また、本発明において、前記凸状部の表面は、湾曲面状であってもよい。
【0013】
また、本発明において、前記凸状部は、テーパ状に形成されてもよい。
【0014】
また、本発明は、空圧シリンダ用のピストンとして形成されてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、流体圧シリンダにおいて、ピストンの耐久性を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係るピストンを備えるエアシリンダの断面図である
図2】実施形態に係るエアシリンダのピストン端部付近の断面図である。
図3】凸状部の詳細を説明するための断面図である。
図4】比較例に係るエアシリンダのピストン端部付近の断面図である。
図5】実施形態の変形例1に係るピストンのピストン端部付近を示す断面図である。
図6】実施形態の変形例2に係るピストンのピストン端部付近を示す断面図である。
図7】実施形態の変形例3に係るピストンのピストン端部付近を示す断面図である。
図8】衝撃応力の解析結果を示す図である。
図9】H/(D1/2)と最大衝撃応力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、流体圧シリンダの一例として、圧縮空気を駆動源とするエアシリンダ(空圧シリンダ)に本発明を適用したものである。但し、本発明に係るピストンを適用できる流体圧シリンダは、エアシリンダに限定されない。本発明に係るピストンは、圧縮油を駆動源とする油圧シリンダや、その他の圧力流体を利用する流体圧シリンダに適用してもよい。また、以下の実施形態に記載されている構成は、特に記載がない限りは発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、以下で参照する図面では、説明の便宜上、一部の形状が強調されることで原寸に比例して図示されていない場合がある。
【0018】
図1は、実施形態に係るピストン20を備えるエアシリンダ100の断面図である。図1は、エアシリンダ100の構造を模式的に説明するための図である。図1では、符号A
1で示すピストン20の中心軸に沿う断面が図示されている。
【0019】
[構成]
まず、実施形態に係るエアシリンダ100の構成について説明する。図1に示すように、エアシリンダ100は、両端が閉塞された筒状のシリンダ本体10と、シリンダ本体10に挿設されたピストン20と、を備える。シリンダ本体10は、筒状のシリンダチューブ1と、シリンダチューブ1の軸方向の一端部に取り付けられるヘッドカバー2と、シリンダチューブ1の軸方向の他端部に取り付けられるロッドカバー3と、を有する。ヘッドカバー2は、シリンダチューブ1の一端側の開口を閉塞している。ロッドカバー3は、シリンダチューブ1の他端側の開口を閉塞している。シリンダチューブ1とヘッドカバー2とロッドカバー3とによって、シリンダ本体10内にシリンダ室30が画定されている。シリンダ室30を形成するシリンダチューブ1の内周面(内周壁)は、円筒状である。
【0020】
シリンダチューブ1には、ヘッドカバー2寄りの位置に第1給排ポート101が形成されており、ロッドカバー3寄りの位置に第2給排ポート102が形成されている。また、ロッドカバー3には、挿通孔31が形成されている。
【0021】
ピストン20は、シリンダチューブ1に沿って延びる略円柱状に形成されており、その一端部がシリンダ室30に収容され且つ他端部がシリンダ室30の外部に突出するように、シリンダ本体10に挿設されている。ピストン20の軸方向両端部のうち、ヘッドカバー2に対向する端部をピストン端部201と称する。ピストン20は、シリンダチューブ1に沿って移動可能となるようにシリンダ室30に配設されたピストン本体4と、ピストン本体4に連結され、ピストン20の軸方向に延びると共にロッドカバー3に形成された挿通孔31に挿入されたピストンロッド5と、を備える。
【0022】
図1に示すように、シリンダ室30は、ピストン本体4によって、ヘッドカバー2側の第1圧力室301とロッドカバー3側の第2圧力室302とに区画されている。第1圧力室301は第1給排ポート101を介してシリンダ室30の外部に連通しており、第2圧力室302は第2給排ポート102を介してシリンダ室30の外部に連通している。
【0023】
図2は、実施形態に係るエアシリンダ100のピストン端部201付近の断面図である。図2に示すように、ピストンロッド5は、ピストン20の軸方向に沿って延びる円柱状の軸体である。ピストンロッド5の中心軸は、ピストン20の中心軸A1と一致する。ピストンロッド5は、SUSやスチール等の金属材料により形成されている。但し、ピストンロッド5の形状や材質は上記に限定されない。ここで、ピストンロッド5の軸方向両端部のうちピストン端部201側の端部を、ロッド端部51と称する。図2に示すように、ロッド端部51は、ピストン本体4に覆われている。ロッド端部51の端面(つまり、ピストンロッド5の先端面)は、ピストン20の軸方向に対して直交する平坦面として形成されている。なお、ピストンロッド5の先端面は、凸状に形成されてもよい。ピストンロッド5の外周面には、ピストン本体4をピストンロッド5に装着するための環状の係合溝5aが周方向に延びて形成されている。このとき、ピストンロッド5において、係合溝5aを挟んでロッド端部51の軸方向反対側に位置する部位をロッド本体部52と称する。図2に示すように、ロッド本体部52は、ピストン本体4から突出している。
【0024】
図2に示すように、ピストン本体4は、ロッド端部51を覆うように、有底筒状のキャップ状に形成されている。ピストン本体4は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)やPOM(ポリアセタール)、PA(ポリアミド)等の樹脂材料により形成されている。但し、ピストン本体4の形状や材質は上記に限定されない。ピストン本体4は、アルミやアルミ合金(A6061等)、チタン等の金属材料により形成されてもよい。
【0025】
ピストン本体4は、筒状部41とカバー部42とピストン外周部43と係合部44とを有する。筒状部41は、筒状に形成されると共にピストンロッド5のロッド端部51の外周面を覆っている。カバー部42は、筒状部41の一端部を閉塞すると共にロッド端部51の先端面を覆っている。ピストン外周部43は、筒状部41の外周に突設され、シリンダチューブ1に対向している。ピストン外周部43の外周面には、環状の装着溝4aが周方向に延びて形成されている。装着溝4aには、シリンダチューブ1の内周面に摺接することで第1圧力室301と第2圧力室302との間をシールする、ゴム製のピストンパッキン6が装着されている。係合部44は、筒状部41の内周に突設され、ピストンロッド5の係合溝5aに係合している。係合部44が係合溝5aに係合することで、ピストン本体4とピストンロッド5とが連結されている。
【0026】
ピストン20は、例えば、ピストンロッドに合成樹脂で形成したピストン本体をインサート成形することにより形成される。但し、本発明に係るピストンの製造方法はインサート成形に限定されない。例えばピストン本体が金属製の場合には、ねじ込みによりピストン本体とピストンロッドとを接合してもよい。
【0027】
図2に示すように、ピストン20では、ピストン本体4のカバー部42によって、ピストン端部201が形成されている。また、ピストン端部201の周囲には、周方向に延びる環状溝7が形成されている。なお、環状溝7は、本発明において必須の構成ではない。
【0028】
図2に示すように、ピストン端部201は、ピストン20の軸方向に突出した凸状部C1を含む。図中、凸状部C1の範囲にドットパターンを付している。ピストン20では、樹脂製のピストン本体4の一部によって、凸状部C1が形成されている。また、本例に係る凸状部C1は、ピストン20の中心軸A1を回転中心として凸円弧を回転させた、断面が円弧状の回転体として形成されている。そのため、凸状部C1は球状に形成されており、凸状部C1の表面S1は球面状に湾曲している。ここで、凸状部C1において最もヘッドカバー2側(即ち、最先端)の部位を頂部T1と称する。このとき、図2に示すように、凸状部C1の頂部T1は、ピストン20の軸方向においてピストン20の最先端に位置し、且つ、ピストン20の中心軸A1が通る位置に形成されている。凸状部C1は、その基端部から頂部T1に向かうに従って縮幅(縮径)するように形成されている。ここでいう「縮幅」とは、より詳細には、ピストン20の軸方向に直交する方向における幅が狭まることをいう。なお、本発明に係る凸状部の形状は、上記のような球状(R形状)に限定されない。凸状部C1は、例えば、テーパ形状(円錐状や角錐状)であってもよい。また、凸状部C1は、後述の変形例1のように頂部T1が平坦な台形状であってもよい。また、凸状部C1の表面は、Rが一様な湾曲面であってもよく、Rが一様ではない湾曲面であってもよい。また、本発明において、ピストンの中心軸と凸状部の頂点とが完全に一致することは必須ではなく、微小範囲で凸状部の頂点がピストンの中心軸に対して偏心した態様も許容される。
【0029】
ここで、図2に示すように、凸状部C1の直径をD1とする。詳細には、直径D1は、凸状部C1において外径が最大となる基端部分の直径である。また、シリンダチューブ1の内径をD2とする。このとき、本例では、0.075≦D1/D2≦0.995となっている。
【0030】
図3は、凸状部C1の詳細を説明するための断面図である。図3に示すように、ピストン20の軸方向における凸状部C1の高さ(突出量)をHとする。高さHは、詳細には、点P1と凸状部C1の頂部T1とのピストン20の軸方向における距離である。点P1は、ピストン20の中心軸から径方向外側へD1/2離れた位置にある、ピストン端部201の表面上の点である。点P1は、凸状部C1の基端部に位置する。このとき、本例では、0.0024<H/(D1/2)<0.075となっている。
【0031】
図2に戻り、ピストンロッド5のロッド端部51の直径をD3とする。このとき、本例では、1.03≦D1/D3≦1.99となっている。
【0032】
[動作]
次に、実施形態に係るエアシリンダ100の動作について、図1を参照して説明する。なお、図1に示される、ピストン本体4がヘッドカバー2に当接した状態を初期位置として説明する。
【0033】
先ず、初期位置において、圧縮空気供給源(図示せず)から第1給排ポート101を介して第1圧力室301に圧縮空気が供給されると、圧縮空気によって押圧されたピストン本体4がロッドカバー3側に移動し始める。すると、第2圧力室302の空気が第2給排ポート102を介して外部へ排出され、ピストン本体4がロッドカバー3側のストロークエンドに至るまで移動する。これにより、ピストンロッド5は、シリンダチューブ1から突出する方向へ移動する。ピストン本体4は、ロッドカバー3側のストロークエンドに到ると、ロッドカバー3に衝突する。
【0034】
次に、第2給排ポート102を介して第2圧力室302に圧縮空気が供給されると、圧縮空気によって押圧されたピストン本体4がヘッドカバー2側に移動し始める。すると、第1圧力室301の空気が第1給排ポート101を介して外部へ排出され、ピストン本体4がヘッドカバー2側のストロークエンド(つまり、初期位置)に到るまで移動する。これにより、ピストンロッド5は、シリンダチューブ1に没入する方向へ移動する。ピストン本体4は、ヘッドカバー2側のストロークエンドに到ると、ヘッドカバー2に衝突する。
【0035】
[作用・効果]
以下、比較例との比較により、実施形態に係るエアシリンダ100が備えるピストン20の作用効果について説明する。図4は、比較例に係るエアシリンダ200のピストン端部401付近の断面図である。図4に示すように、比較例に係るピストン40は、ピストン端部401に凸状部C1が形成されていない点で、実施形態に係るピストン20と相違する。比較例に係るピストン40では、ピストン端部401の端面S2が、ピストン40の軸方向に対して直交する平坦面となっている。そのため、ピストン40では、ピストン本体4がヘッドカバー2側のエンドストロークに至る際に、ピストン端部401の端面S2の全体が略同時にヘッドカバー2に衝突することとなる。その結果、ピストン端部401に高い衝撃応力(瞬間最大応力)が発生し、ピストン端部401を構成する樹脂製のピストン本体4が破損する虞がある。
【0036】
これに対して、図2に示すように、実施形態に係るピストン20のピストン端部201は、ピストン20の軸方向へ突出した凸状部C1を含み、凸状部C1は、その基端部から頂部T1に向かうに従って縮幅するように形成されている。そして、凸状部C1の頂部T1は、ピストン20の軸方向において該ピストン20の最先端に位置し且つピストン20の中心軸A1が通る位置に形成されている。これによると、ピストン本体4がヘッドカバー2側のエンドストロークに至る際には、凸状部C1の頂部T1が最初にヘッドカバー2に接触する。そして、衝撃荷重により凸状部C1が変形する(押し潰される)ことで、凸状部C1はヘッドカバー2との接触領域を頂部T1から徐々に拡大しながらヘッドカバー2に衝突する。これにより、衝撃エネルギーが分散してピストン端部201に吸収され、衝撃応力が低減する。その結果、ピストン端部201の破損を防止できる。
【0037】
以上のように、本実施形態によると、ピストン20の耐久性を向上することが可能となる。このことは、樹脂製のピストン本体4によりピストン端部201を形成するピストン
20において、特に好適である。なお、本発明は、ピストン端部の少なくとも一部を樹脂製としてもよい。但し、本発明において、ピストン端部が樹脂製であることは必須ではない。
【0038】
また、本実施形態では、0.075≦D1/D2≦0.995とし、0.0024<H/(D1/2)<0.075とすることで、ピストン端部201がヘッドカバー2に衝突する際の衝撃応力をより好適に低減することができる。更に、1.03≦D1/D3≦1.99とすることによっても、ピストン端部201がヘッドカバー2に衝突する際の衝撃応力をより好適に低減することができる。また、図2に示すように、ピストンロッド5のロッド本体部52の直径をD4としたとき、D3≦D4であってもよい。但し、本発明は、これらの条件には限定されない。
【0039】
[変形例]
以下、実施形態の変形例に係るピストンについて説明する。変形例の説明では、図1~3で説明したピストン20との相違点を中心に説明し、ピストン20と同様の点については詳細な説明は割愛する。
【0040】
[変形例1]
図5は、実施形態の変形例1に係るピストン20Aのピストン端部201付近を示す断面図である。図5に示すように、ピストン20Aの凸状部C1は、頂部T1が平坦面として形成されている。これにより、凸状部C1の断面は、両側辺が湾曲した鉢状になっている。なお、凸状部C1の断面は、両側辺が直線状の台形状であってもよい。
【0041】
変形例1に係るピストン20Aにおいても、上述のピストン20と同様に、凸状部C1が頂部T1に向かうに従って縮幅するように形成されており、頂部T1が該ピストン20の最先端に位置し且つ中心軸A1が頂部T1を通る位置に形成されている。これにより、変形例1においても、ピストン20Aの耐久性を向上させることができる。
【0042】
[変形例2]
図6は、実施形態の変形例2に係るピストン20Bのピストン端部201付近を示す断面図である。図6に示すように、ピストン20Bのピストン本体4は、ピストンロッド5のロッド端部51を覆うカバー部42を有さない。そのため、ロッド端部51の端面がピストン20Bの先端に露出している。これにより、ピストン20Bでは、ピストン本体4の筒状部41とピストンロッド5のロッド端部51とによって、ピストン端部201が形成されている。上述のピストン20と同様に、ピストン20Bのピストン端部201にもピストン20の軸方向に突出した凸状部C1が形成されている。ピストン20Bでは、樹脂製のピストン本体4の一部と金属製のピストンロッド5の一部とによって、球状の凸状部C1が形成されている。
【0043】
変形例2に係るピストン20Bにおいても、上述のピストン20と同様に、凸状部C1が頂部T1に向かうに従って縮幅するように形成されており、頂部T1が該ピストン20の最先端に位置し且つ中心軸A1が通る位置に形成されている。これにより、変形例2においても、ピストン20Bの耐久性を向上させることができる。
【0044】
[変形例3]
図7は、実施形態の変形例3に係るピストン20Cのピストン端部201付近を示す断面図である。図7に示すように、ピストン20Cは、図2等で示すピストン20と異なり、環状溝7を有さない。
【0045】
<解析評価>
解析ソフトを用いた有限要素解析により、実施形態に係るピストンの応力評価を行った。応力評価では、ピストンがエアシリンダのヘッドカバーに衝突した際のピストン本体の衝撃応力の分布及び衝撃応力の最大値を求めた。解析モデルに用いた部材の材料は、ピストン本体をPPS、ピストンロッドをS45C、シリンダ本体をA6061とした。また、ピストン本体とピストンロッド、及びピストンパッキンを含むピストンの質量は過負荷試験相当のウェイトを考慮して設定し、ピストンの速度は0.3[m/s]とした。
【0046】
実施例1~10として、実施形態に係るピストン20を評価した。また、比較例1~3として、比較例に係るピストン40を評価した。表1に、実施例1~10及び比較例1~3におけるD1、H、H/(D1/2)、及び最大衝撃応力比を示す。最大衝撃応力比は、実施例1~10及び比較例1~3における衝撃応力の最大値(最大衝撃応力)の比率である。最大衝撃応力比は、比較例1の最大衝撃応力に対する比率で表した。表1において、実施例1~10と比較例1とで最大衝撃応力比を比較すると、実施例1~10の方が比較例1よりも最大衝撃応力が低いことが分る。これにより、ピストン端部に凸状部を形成することによる応力の低減効果を確認できた。また、図8は、衝撃応力の解析結果を示す図である。図8は、実施例3、実施例10、比較例1のピストン本体における衝撃応力の分布を示す。図8では、ピストン本体の断面の横半分が図示されている。
【表1】
【0047】
次に、上述の解析により、H/(D1/2)の範囲を評価した。図9は、解析結果から導出した、H/(D1/2)と最大衝撃応力との関係を示すグラフである。最大衝撃応力は、H/(D1/2)=0のときの最大衝撃応力に対する比率として表されている。グラフ中、実線は最大衝撃応力比率を示し、破線はピストン本体の引張強さを示す。図9に示すように、0.0024<H/(D1/2)<0.075の範囲において、最大衝撃応力がピストン本体の引張強さよりも低くなることが分る。これにより、0.0024<H/(D1/2)<0.075とすることで、衝撃応力を好適に低減できることが確認できた。
【0048】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上述した種々の形態は、可能な限り組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 :シリンダチューブ
2 :ヘッドカバー
3 :ロッドカバー
4 :ピストン本体
5 :ピストンロッド
10 :シリンダ本体
20 :ピストン
100 :エアシリンダ(流体圧シリンダの一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9