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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025022
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】入浴介助用椅子装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/10 20060101AFI20240216BHJP
   A61G 5/12 20060101ALI20240216BHJP
   A61H 33/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
A61G5/10 703
A61G5/12 701
A61G5/12 705
A61H33/00 310K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128107
(22)【出願日】2022-08-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)CareTEX名古屋’22 令和4年2月2日~令和4年2月3日開催 (2)バリアフリー2022 令和4年6月8日~令和4年6月10日開催 (3)特別養護老人ホーム仙川くぬぎ園 令和4年2月21日販売 (4)ミモザ緑ヶ丘デイサービス 令和4年4月19日販売 (5)奥州市水沢桜屋敷小規模多機能型住宅 令和4年5月13日販売 (6)ミモザヘルパーステーション葛飾奥戸 令和4年6月3日販売 (7)育生会よつば苑 令和4年6月20日販売 (8)デイサービス黒川の里 令和4年6月28日販売 (9)特別養護老人ホーム北部陽光苑 令和4年7月14日販売 (10)新生病院 令和4年7月20日販売 (11)積水ホームテクノ株式会社東京ショールーム 令和4年1月31日展示 (12)積水ホームテクノ株式会社大阪ショールーム 令和4年2月3日展示 (13)積水ホームテクノ株式会社名古屋ショールーム 令和4年2月10日展示 (14)積水ホームテクノ株式会社九州ショールーム 令和4年2月28日展示 (15)積水ホームテクノ株式会社神奈川ショールーム 令和4年3月2日展示 (16)積水ホームテクノ株式会社奈良ショールーム 令和4年2月28日展示 (17)積水ホームテクノ株式会社東関東ショールーム 令和4年4月26日展示 (18)積水ホームテクノ株式会社関東ショールーム 令和4年5月24日展示 (19)積水ホームテクノ株式会社仙台ショールーム 令和4年6月6日展示 (20)積水ホームテクノ株式会社中四国ショールーム 令和4年6月6日展示 (21)積水ホームテクノ株式会社札幌ショールーム 令和4年6月7日展示
(71)【出願人】
【識別番号】501362906
【氏名又は名称】積水ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田 眞弘
(72)【発明者】
【氏名】杉 茂人
【テーマコード(参考)】
4C094
【Fターム(参考)】
4C094AA01
4C094CC02
4C094GG02
(57)【要約】
【課題】入浴介助用椅子装置における椅子をチルト姿勢から平常姿勢へ戻す際の安全性を、配線処理や水密処理が必要な電気回路を用いることなく確保する。
【解決手段】入浴介助用椅子装置3のベースフレーム10上に座部フレーム23をチルト可能に設ける。座部フレーム23に作動部材51を変位可能に連結する。座部フレーム23がチルト位置かつ足置き機構30が展開位置のとき、作動部材51が作動位置になる。該作動部材51の被係止部5がベースフレーム10の係止部50と係止されて、座部フレーム23の平常位置への変位が阻止される。足置き機構30が収納位置へ移行されるときは、足置き機構30の解除部32,33が作動部材51を解除位置へ変位させることによって、前記係止が解除される。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入浴介助用の椅子装置であって、
ベースフレームと、
前記ベースフレーム上に、平常位置と、前記平常位置より後端部が前方へずれるとともに前端部が上へ傾斜されたチルト位置との間で変位可能に支持された座部フレームと、
前記ベースフレームに設けられ、収納位置と、前記収納位置より前方へ展開された展開位置との間で出し入れ可能な足置き機構と、
前記座部フレームと連結されて、前記座部フレームが前記平常位置のときの退避位置と、前記座部フレームが前記チルト位置かつ前記足置き機構が前記展開位置のときの作動位置と、解除位置とを含む作動範囲内で変位可能であり、かつ被係止部を有する作動部材と、
前記ベースフレームに設けられ、前記作動位置における作動部材の前記被係止部と係止されて前記座部フレームの前記平常位置への変位を阻止する係止部と、
前記足置き機構に設けられ、前記足置き機構が前記収納位置へ移行されるとき前記作動部材を前記解除位置へ変位させることによって前記係止を解除する解除部と、
を備えたことを特徴とする入浴介助用椅子装置。
【請求項2】
前記作動部材が、前記座部フレームの後端部に回転可能に連結されるとともに前記座部フレームと前記ベースフレームとの間を前方へ延びるレバーを有し、
前記被係止部が、前記レバーの中間部に形成された凹部を含み、
前記係止部が、前記退避位置における前記作動部材より前方における前記ベースフレームから突出された凸部を含むことを特徴とする請求項1に記載の入浴介助用椅子装置。
【請求項3】
前記座部フレームの後端部にはチルトローラが設けられ、
前記ベースフレームには、前記チルトローラを案内するガイド溝を有するチルトガイドレールが前後へ延びるように設けられており、
前記作動部材が、前記ガイド溝に出没可能に収容されていることを特徴とする請求項2に記載の入浴介助用椅子装置。
【請求項4】
前記作動部材の前端部には被案内部が設けられ、
前記ベースフレームにおける前記係止部の直近後方部には、その後方から前進時の作動部材の前記被案内部と当たって前記作動部材の前端部を押し上げる案内部が設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の入浴介助用椅子装置。
【請求項5】
前記案内部及び前記被案内部の少なくとも一方が、前方へ向かって上へ傾斜する傾斜面を含むことを特徴とする請求項4に記載の入浴介助用椅子装置。
【請求項6】
前記案内部及び前記被案内部の他方が案内ローラを含むことを特徴とする請求項5に記載の入浴介助用椅子装置。
【請求項7】
前記足置き機構が、前記ベースフレームによって前後方向へスライド可能に支持されたサポートアームと、前記サポートアームの前端部に足置き軸部を介して回転可能に設けられた足置き部材とを有し、
前記足置き部材及び前記足置き軸部及び前記サポートアームの前端部の少なくとも1つが、前記収納位置のとき前記作動部材と当たって前記作動部材を前記解除位置に位置させることによって前記解除部を構成することを特徴とする請求項2又は3に記載の入浴介助用椅子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、要介助者の入浴介助に使用する入浴介助用椅子装置に関し、特にチルト機構および足置き機構(跨ぎサポート)を有する入浴介助用椅子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
要介助者を着座させて入浴介助に用いる椅子装置は公知である(特許文献1、2等参照)。特許文献1、2の椅子装置は、キャリーに搭載されて浴槽の側まで運ばれ、そこから浴槽の框上に設置した支持レールに移されて浴槽内へ下降される。これによって、要介助者を着座させたまま、入浴させることができる。入浴後、逆の操作によって椅子装置ひいては要介助者が浴槽から出される。
【0003】
特許文献1の椅子装置には、足置き機構(跨ぎサポート)が設けられている。足置き機構を椅子の座部の前方へ展開させ、その足置き部材に要介助者の足を載せる。これによって、椅子装置が浴槽の框上を通過する際、介助者が要介助者の足を持ち上げて框を跨がせる必要が無い。
【0004】
特許文献2の椅子装置には、チルト機構が設けられている。チルト姿勢では、座部が前方へスライドされながら前端部が上へ傾き、背凭れが後へ倒れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-058054号公報
【特許文献2】特開2021-029617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
チルト機構及び足置き機構を有する入浴介助用椅子装置において、足置き機構が前方へ展開された状態で、椅子をチルト姿勢から平常姿勢へ戻すために、座部の前部を手で掴んで押し下げると、その手が、座部の前部と足置き機構との間に挟まれるおそれがある。これを回避するため、例えばスイッチ等を含む電気回路によって足置き機構が展開されているか否かを検知して、展開された状態では、椅子をチルト姿勢から平常姿勢へ戻せないようにすることが考えられる。しかし、可動構造の足置き機構に電気配線を引き回す配線処理は煩雑である。加えて、使用時には椅子が全体的に浴槽に漬かるものであるため、スイッチや電気配線を水密処理する必要がある。
本発明は、かかる事情に鑑み、入浴介助用椅子装置における椅子をチルト姿勢から平常姿勢へ戻す際の安全性を確保することを目的とする。特に、配線処理や水密処理が必要な電気回路を用いずに安全性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、入浴介助用の椅子装置であって、
ベースフレームと、
前記ベースフレーム上に、平常位置と、前記平常位置より後端部が前方へずれるとともに前端部が上へ傾斜されたチルト位置との間で変位可能に支持された座部フレームと、
前記ベースフレームに設けられ、収納位置と、前記収納位置より前方へ展開された展開位置との間で出し入れ可能な足置き機構と、
前記座部フレームと連結されて、前記座部フレームが前記平常位置のときの退避位置と、前記座部フレームが前記チルト位置かつ前記足置き機構が前記展開位置のときの作動位置と、解除位置とを含む作動範囲内で変位可能であり、かつ被係止部を有する作動部材と、
前記ベースフレームに設けられ、前記作動位置における作動部材の前記被係止部と係止されて前記座部フレームの前記平常位置への変位を阻止する係止部と、
前記足置き機構に設けられ、前記足置き機構が前記収納位置へ移行されるとき前記作動部材を前記解除位置へ変位させることによって前記係止を解除する解除部と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
当該入浴介助用椅子装置においては、座部フレームがチルト位置かつ足置き機構が展開位置のとき、作動部材が作動位置にあり、該作動位置の作動部材の被係止部と係止部とが係止されている。したがって、座部フレームの平常位置への変位が阻止される。これによって、座部フレームの平常位置へ戻そうとして、該座部フレームと展開位置の足置き機構との間に手を挟むのが回避され、安全性が確保される。足置き機構を収納位置へ移行させると、解除部によって被係止部と係止部との係止が解除される。これによって、座部フレームの平常位置へ戻すのが許容される。
すなわち、作動部材は、座部フレームがチルト位置かつ足置き機構が収納位置のとき、座部フレームの平常位置への変位を許容し、座部フレームがチルト位置かつ足置き機構が展開位置のとき、座部フレームの平常位置への変位を阻止するように作動する。
作動部材を含む機械的機構だけで座部フレームのチルト解除の許否を行なうものであるため、煩雑な配線処理や水密処理を要する電気回路が不要である。
【0009】
好ましくは、前記作動部材が、前記座部フレームの後端部に回転可能に連結されるとともに前記座部フレームと前記ベースフレームとの間を前方へ延びるレバーを有している。
好ましくは、前記被係止部が、前記レバーの中間部に形成された凹部を含み、前記係止部が、前記退避位置における前記作動部材より前方における前記ベースフレームから突出された凸部を含む。
椅子のチルト動作に伴って、座部フレームの後端部が前後にスライドされる。該座部フレームと共にレバーが前後にスライドされる。座部フレームをチルト位置にすると、レバーが退避位置のときより前方へスライドされて作動位置に位置される。これによって、退避位置の作動部材より前方の凸部が、被係止部の凹部に嵌って係止される。
【0010】
好ましくは、前記座部フレームの後端部にはチルトローラが設けられ、
前記ベースフレームには、前記チルトローラを案内するガイド溝を有するチルトガイドレールが前後へ延びるように設けられており、
前記作動部材が、前記ガイド溝に出没可能に収容されている。
これによって、前記ガイド溝を作動部材の収容スペースとすることができる。専用の収容スペースを確保する必要が無い。
【0011】
好ましくは、前記作動部材の前端部には被案内部が設けられ、
前記ベースフレームにおける前記係止部の直近後方部には、その後方から前進時の作動部材の前記被案内部と当たって前記作動部材の前端部を押し上げる案内部が設けられている。
座部フレームを平常位置からチルト位置にするとき、作動部材が前進される。このとき、被案内部が前記案内部に当たって作動部材が押し上げられる。これによって、作動部材が係止部に乗り上げることができる。そして、被係止部と係止部とが係止される。
【0012】
好ましくは、前記案内部及び前記被案内部の少なくとも一方が、前方へ向かって上へ傾斜する傾斜面を含む。
前記傾斜面によって、前進時の作動部材の前端部が確実に押し上げられて係止部と係止されるようにできる。
【0013】
好ましくは、前記案内部及び前記被案内部の他方が案内ローラを含む。
これによって、作動部材の前進時には、前記傾斜面に前記案内ローラが当たって転動され、作動部材の前端部が確実に押し上げられて係止部と係止されるようにできる。
【0014】
好ましくは、前記足置き機構が、前記ベースフレームによって前後方向へスライド可能に支持されたサポートアームと、前記サポートアームの前端部に足置き軸部を介して回転可能に設けられた足置き部材とを有し、
前記足置き部材及び前記足置き軸部及び前記サポートアームの前端部の少なくとも1つが、前記収納位置のとき前記作動部材と当たって前記作動部材を前記解除位置に位置させることによって前記解除部を構成する。
これによって、足置き機構に専用の解除部を設けなくて済む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、入浴介助用椅子装置における椅子をチルト姿勢から平常姿勢へ戻す際の安全性を確保することができる。特に、配線処理や水密処理が必要な電気回路を用いることなく安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1(a)は、本発明の第1実施形態に係る入浴介助用椅子装置を含む入浴用車椅子の側面図である。図1(b)は、前記入浴介助用椅子装置をチルト姿勢にして浴槽に出し入れする状態の側面図である。
図2図2は、前記入浴介助用椅子装置のベースフレーム及び足置き機構の斜視図である。
図3図3は、前記入浴介助用椅子装置の椅子を下側から見た斜視図である。
図4図4は、前記入浴介助用椅子装置の座部フレームの一部及び作動部材の分解斜視図である。
図5図5は、前記入浴介助用椅子装置の座部を平常姿勢で示す側面断面図である。
図6図6は、前記入浴介助用椅子装置の座部を平常姿勢からチルトさせ始めた段階で示す側面断面図である。
図7図7は、前記入浴介助用椅子装置の座部をチルト側へ少し変位させた状態で示す側面断面図である。
図8図8は、前記入浴介助用椅子装置の座部を更にチルト側へ変位させた状態で示す側面断面図である。
図9図9は、前記入浴介助用椅子装置の座部をチルト姿勢とし、足置き機構を展開位置として示す側面断面図である。
図10図10(a)は、前記入浴介助用椅子装置の足置き機構を展開位置のままで、座部をチルト姿勢から平常姿勢へ戻そうとしたときの側面図である。図10(b)は、同図(a)の円部Xbの拡大断面図である。
図11図11は、前記入浴介助用椅子装置を、座部をチルト姿勢に保ちながら足置き機構を収納位置へ移行させる途中段階の側面断面図である。
図12図12は、前記入浴介助用椅子装置を、座部をチルト姿勢に保ちながら足置き機構を収納位置へ更に移行させた段階の側面断面図である。
図13図13は、前記入浴介助用椅子装置を、座部をチルト姿勢に保ちながら足置き機構を収納位置にした状態の側面断面図である。
図14図14は、前記入浴介助用椅子装置を、足置き機構を収納位置にした状態で、座部をチルト姿勢から平常姿勢へ向けて少し変位させた状態の側面断面図である。
図15図15は、本発明の第2実施形態を示し、作動部材の分解斜視図である。
図16図16は、本発明の第3実施形態を示し、作動部材の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態>
図1(a)は、要介助者Aの入浴介助に用いられる入浴用車椅子1を示したものである。入浴用車椅子1は、キャリー2と、入浴介助用椅子装置3を備えている。キャリー2に入浴介助用椅子装置3が搭載されて運搬される。図1(b)に示すように、浴室には浴槽4の側部に支持レール装置5が付設されている。入浴介助用椅子装置3が、要介助者Aを座らせた状態で、図1(a)のキャリー2から支持レール装置5の支持レール5aに移されて入槽される。
【0018】
図1(a)及び同図(b)に示すように、入浴介助用椅子装置3は、ベースフレーム10と、椅子20を備えている。図2に示すように、ベースフレーム10は、左右一対の縦フレーム部11と、後端部の横フレーム部12とを有し、概略コ字状に形成されている。縦フレーム部11は、四角筒状に形成され、前後に延びている。これら縦フレーム11の後端部どうしが横フレーム部12によって連ねられている。
【0019】
図2に示すように、ベースフレーム10に一対の足置き機構30(跨ぎサポート)が設けられている。足置き機構30は、サポートアーム31と、足置き部材32を含む。サポートアーム31は、前後に延びている。サポートアーム31は、縦フレーム部11から前方へ突出されるようにして、縦フレーム部11に挿し込まれて、前後方向へスライド可能に支持されている。サポートアーム31の前後スライドによって、足置き機構30が、椅子20内に引っ込んだ収納位置と、椅子20から前方へ展開された展開位置との間で前後に出し入れされる。
【0020】
サポートアーム31の前端部に足置き軸部33を介して足置き部材32が支持されている。足置き軸部33は、軸線を左右(椅子の幅方向)へ向けて、サポートアーム31から椅子20の内側の側方へ突出されている。足置き軸部33に足置き部材32が畳み位置と足置き位置との間で回転(変位)可能に嵌められている。足置き部材32は、自重によって畳み位置で安定している。畳み位置の足置き部材32は、つま先が椅子後方を向くように裏返っている。足置き位置の足置き部材32は、サポートアーム31から前方へ突出されている。図1(b)に示すように、足置き位置の足置き部材32に着座者Aの足を載せることができる。
【0021】
図3に示すように、椅子20は、座部21と、背凭れ22を含む。図1(b)に示すように、座部21は、座部フレーム23と、座部クッション24を含む。座部フレーム23がベースフレーム10上に支持されている。ひいては、椅子20が、ベースフレーム10上に支持されている。座部21の両側部には、サイドカバー28が垂れ下げられるように設けられている。
【0022】
図1(a)に示すように、背凭れ22は、背凭れフレーム25と、背部クッション26を含む。背凭れフレーム25が、背部フレーム16に上下スライド可能かつ起倒可能に支持されている。背部クッション26の下端部が、座部クッション24の後端部と一体に連なっている。
【0023】
図1に示すように、椅子20にはチルト機構40が組み込まれている。チルト機構40によって、椅子20の座部21及び背凭れ22が、フレーム10,16に対して平常姿勢(図1(a))とチルト姿勢(図1(b))との間で変位可能である。図1(b)に示すように、チルト姿勢における座部フレーム23は、平常位置(図1(a))より後端部が前方へずれるとともに前端部23fが上へ傾斜される。チルト姿勢における背部フレーム25は、平常姿勢(図1(a))より下降されるとともに下端部が前方へずれるように傾倒される。
以下、平常姿勢での座部フレーム23の位置(角度を含む)を「平常位置」と称し、チルト姿勢での座部フレーム23の位置(角度を含む)を「チルト位置」と称す。
【0024】
チルト機構40は、次のように構成されている。
図2に示すように、ベースフレーム10の一対の縦フレーム部11には、それぞれチルトガイドレール41が設けられている。チルトガイドレール41は、ガイド溝41aを有する凹溝状に形成され、前後に真っ直ぐ延びている。
【0025】
図3に示すように、座部フレーム23の底部の後端部の左右両側部には、それぞれローラユニット42が設けられている。ローラユニット42は、ローラホルダ43と、チルトローラ44を含む。ローラホルダ43にチルトローラ44が回転可能に保持されている。チルトローラ44の回転軸線は、左右方向(椅子20の幅方向)へ向けられている。図2の二点鎖線にて示すように、チルトローラ44が、ガイド溝41a内に転動可能に嵌められている。
【0026】
図5図14に示すように、椅子20のチルト動作に伴って、チルトローラ44がチルトガイドレール41に沿って前後(図5図14の各図において左右)へ案内される。図5に示すように、椅子20が平常姿勢のとき、チルトローラ44がガイド溝41aの後端部近くに在る。図9に示すように、椅子20がチルト姿勢のとき、チルトローラ44がガイド溝41aの前端部近くに在る。
【0027】
なお、図1(a)及び図5に示すように、椅子20が平常姿勢のとき、平常位置の座部フレーム23の前端部が、収納位置の足置き機構30の前方に被さっている。したがって、図1(b)及び図9に示すように、椅子20がチルト姿勢のときだけ、足置き機構30を出し入れさせて展開位置にすることができる。
【0028】
図1(b)に示すように、要介助者Aを椅子20に座らせて、椅子20をチルト姿勢にし、更に、展開位置にした足置き機構30の足置き部材32に要介助者Aの足を載せる。これによって、入浴介助用椅子装置3が支持レール5aに沿って浴槽4の框4a上を通過する際、介助者が要介助者Aの足を持ち上げて框を跨がせる必要が無い。
【0029】
図5に示すように、入浴介助用椅子装置3には、チルト解除許否用のメカニカルロック機構50が設けられている。チルト解除許否用メカニカルロック機構50は、作動部材51と、係止部60と、解除部32,33を備えている。作動部材51は、座部フレーム23がチルト位置かつ足置き機構30が収納位置のとき、座部フレーム23の平常位置への変位を許容し、座部フレーム23がチルト位置かつ足置き機構30が展開位置のとき、座部フレーム23の平常位置への変位を阻止するように作動する。
【0030】
詳しくは、図3及び図4に示すように、作動部材51は、レバー52(作動部材本体)と、連結軸部53と、被案内部55を有している。レバー52は、長手方向を概略前後方向へ向けた板状に形成されている。レバー52の後端部が、連結軸部53を介して、ローラホルダ43におけるチルトローラ44の前方かつ近傍に回転可能に連結されている。これによって、図5に示すように、作動部材51が、座部フレーム23に連結されるとともに、座部フレーム23とベースフレーム10との間を前方へ延びている。好ましくは、作動部材50は、ガイド溝41aに出没可能に収容されている。
連結軸部53の軸線は、左右(椅子20の幅方向)へ向けられている。
【0031】
図4に示すように、レバー52の下側縁の中間部には、切り欠き状の凹部からなる被係止部54が設けられている。被係止部54の前側の縁部は、鋭角状の被係止爪54fとなっている。
【0032】
図4に示すように、レバー52の前端部には、被案内部55が設けられている。被案内部55は、一対の案内ローラ56と、軸部材57を含む。一対の案内ローラ56は、作動部材51の両側部に配置されている。これら案内ローラ56とレバー52とが、軸部材57によって連結されている。軸部材57の軸線は左右(椅子20の幅方向)へ向けられている。案内ローラ56は、レバー52に対して軸部材57を中心軸にして回転可能である。
【0033】
図5図14に示すように、作動部材51は、椅子20のチルト操作及び足置き機構30の出し入れ操作と連動して、退避位置(図5)と作動位置(図9図10)と解除位置(図13図14)を含む作動範囲内で回転及び前後スライド(変位)される。
【0034】
図5に示すように、座部フレーム23が平常位置かつ足置き機構30が収納位置のとき、作動部材51は退避位置に在る。退避位置における作動部材51は、ガイド溝41aの前端部より後方へ離れて、ガイド溝41aの長手方向に沿うように倒されて、全体がガイド溝41aに収まっている。
【0035】
図9に示すように、座部フレーム23がチルト位置かつ足置き機構30が展開位置のとき、作動部材51は作動位置に在る。作動位置における作動部材51は、退避位置のときより前方にずれて、前後方向へほぼ水平に延びている。
【0036】
図13に示すように、座部フレーム23がチルト位置かつ足置き機構30が展開位置のとき、作動部材51は解除位置に在る。解除位置における作動部材51は、作動位置のときとほぼ同じ前後方向の位置において、前端部が少し上へ起こされている。
【0037】
図5に示すように、ベースフレーム10には、チルト解除許否用メカニカルロック機構50の係止部60と案内部61が設けられている。係止部60は、ガイド溝41aの前端部から上へ突出された凸部である。具体的には、係止部60は、ベースフレーム10におけるガイドレール41の前端壁によって構成されている。係止部60によって、ガイド溝41aの前端部が画成されている。図9及び図10に示すように、係止部60は、作動位置における作動部材51の被係止部54と係止されて、座部フレーム23の平常位置への変位を阻止する。
【0038】
図5に示すように、係止部60から収納位置の足置き軸部33までの距離L33は、作動部材51における被係止爪54fから案内ローラ56までの距離L51とほぼ等しい。
【0039】
ガイド溝41aにおける係止部60の直近後方部には、案内部61が設けられている。案内部61は、ガイド溝41aの溝底部から前方かつ上方へ突出する傾斜板によって構成されている。案内部61のおもて側面が、前方へ向かって上へ傾斜する傾斜面62となっている。図6及び図7に示すように、案内部61は、その後方から前進時の作動部材51の被案内部55と当たって、作動部材51の前端部を押し上げるように案内する機能を有している。
【0040】
足置き機構30の足置き部材32及び足置き軸部33は、メカニカルロック機構50における解除部として提供されている。図11図13に示すように、解除部32,33は、座部フレーム23がチルト位置で、かつ足置き機構30が展開位置から収納位置へ移行されるとき、作動部材51を作動位置から解除位置へ変位させることによって、被係止部54と係止部60との係止状態を解除する。
【0041】
入浴介助用椅子装置3におけるメカニカルロック機構50は、椅子20のチルト時及びチルト解除時に次のように動作する。
図5に示すように、座部フレーム23が平常位置のとき、作動部材51は、係止部60及び案内部61より後方へ離れて退避位置に位置されている。
【0042】
椅子20をチルトさせるために、座部フレーム23を平常位置からチルト位置へ向けて傾けていくと、座部フレーム23の後端部が前方へずれ、チルトローラ44が前方へ転動されるのに伴って、作動部材51が前方へスライドされる。このとき、案内ローラ56が、ガイド溝41aの溝底上を転動しながら前進される。
【0043】
そして、図6に示すように、前進中の案内ローラ56が、案内部61に当たり、その傾斜面62に乗り上げる。これによって、レバー52の前端部が押し上げられ、作動部材51が起こされていく。続いて、図7に示すように、案内ローラ56が、係止部60の上端部に乗り上げる。さらに、図8に示すように、案内ローラ56が係止部60より前方へ移行し、レバー52が係止部60に乗り上げる。
案内ローラ56と案内部61との案内作用によって、作動部材51をスムーズに起こして、係止部60にスムーズに乗り上げさせることができる。
【0044】
座部フレーム23がチルト位置に達すると、案内ローラ56が収納位置の足置き機構30の前端部に乗り上げる(図13)。このとき、レバー52が係止部60の上方を横切るとともに、被係止部54が、係止部60の上方に離れて係止部60と対峙する。
【0045】
図9に示すように、その後、足置き機構30を前方へ引き出して展開位置にすると、案内ローラ56が足置き機構30から外れることによって、レバー52が自重で少し倒れてほぼ水平になり、被係止部54の上底部54aが係止部60の上端部に突き当たる。これによって、被係止部54と係止部60どうしが嵌り合って係止される。
【0046】
ここで、椅子20をチルト姿勢から平常姿勢へ戻すために、図10(a)に示すように、足置き機構30を展開位置にした状態のままで、例えば介助者が、座部21の前部を手Bでつかんで下へ押したとする。すると、前記押し下げ力によって座部フレーム23の後端部が後方へスライドしようとし、かつ該座部フレーム23と共に作動部材51が後方へ少しスライドしようとして、図10(b)に示すように、被係止爪54fが係止部60に突き当たる。このため、作動部材51ひいては座部フレーム23が後方へスライドできなくなる。したがって、座部フレーム23の平常位置への変位が阻止される。
これによって、手Bが、座部21の前部と足置き機構30との間に挟まれるのを回避でき、椅子20をチルト姿勢から平常姿勢へ戻す際の安全性を確保することができる。
【0047】
椅子20をチルト姿勢から平常姿勢へ戻す際は、正しくは、先ず、足置き機構30を展開位置から引っ込める。すると、図11図12に示すように、引っ込み途中の足置き機構30の前端部が作動部材51に突き当たり、作動部材51を上へ起こすように回転変位させる。具体的には、図11に示すように、畳み位置の足置き部材32の裏面32bが、作動部材51の案内ローラ56に突き当たる。裏面32bは、前方へ向かって上へ傾斜する斜面になっている。図12に示すように、該裏面32b上を案内ローラ56が転動されることによって、レバー52の前端部が押し上げられる。
【0048】
図13に示すように、足置き機構30を収納位置まで引っ込めると、案内ローラ56が足置き軸部33上に載り、レバー52が前端部へ向かって上へ傾けられる。これによって、作動部材51が解除位置に位置され、被係止部54が係止部60の上方に離れることで、作動部材51と係止部60との係止が解除される。
足置き機構30の足置き部材32及び足置き軸部33をメカニカルロック機構50における解除部として機能させることによって、足置き機構30に解除部としてだけ機能する専用パーツを設ける必要が無い。
【0049】
足置き機構30を収納位置にした後、図14に示すように、座部21の前部を手Bでつかんで押し下げる。すると、座部フレーム23の後端部と共に作動部材51が後方へスライドされる。被係止部54は、係止部60の上方に退避されているため、係止部60に引っ掛かることなく、係止部60よりも後方へ移行することができる。そして、被係止爪54fの下端部が、係止部60の上端部に乗り上げる。L33≒L51図5)であるため、この時点では、まだ案内ローラ56が足置き軸部33(解除部)上に置かれた状態に維持されている。つまり、被係止部54が係止部60を超えるまで、作動部材51が解除位置に保持されている。
【0050】
座部21を更に押し下げると、作動部材51が、座部フレーム23の後端部と共に更に後方へスライドされる。このとき、レバー52における被係止部54より前側の下側縁が、係止部60の上端部と摺擦される(図8)。足置き機構30は前もって収納位置にされているため、座部21を掴んだ手が、座部21と足置き機構30との間に挟まれることはない。
【0051】
やがて、案内ローラ56が、係止部60に達し(図7)、更に案内部61に沿ってガイド溝41a内へ下降される(図6)。
そして、図5に示すように、作動部材51の全体がガイド溝41aに収まり、ローラユニット42がガイド溝41aの後端部に達する。これによって、椅子20を平常姿勢まで戻される。
【0052】
このように、入浴介助用椅子装置3によれば、スイッチや電気配線を含む電気回路を用いることなく、メカニカルロック機構50によって、椅子20をチルト姿勢から平常姿勢へ戻す際の安全性を確保できる。したがって、前記電気回路のための配線処理や水密処理は不要である。
【0053】
次に本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において、既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態(図15)>
第2実施形態は、作動部材の変形例に係る。図15に示すように、第2実施形態の作動部材51Bにおいては、平行に並んだ一対のレバー52を含む。これらレバー52の被係止部54より前側部分どうしが、半円筒状のブリッジ58によって連ねられている。レバー52の前端部どうし間に案内ローラ56(被案内部)が設けられている。レバー52の後端部どうしは、軸部材57を介して、座部フレーム23(図4参照)の後端部に連繋される。
【0054】
<第3実施形態(図16)>
図16に示すように、第3実施形態の作動部材51Cにおいては、第2実施形態と同様に一対のレバー52を有している。各レバー52の被係止部54は、段差状になっている。レバー52の前側部分どうしをつなぐブリッジ58は、平板状になっている。
【0055】
作動部材51Cには案内ローラ56が設けられていない。これに代えて、各レバー52の前端の縁部は、上へ向かうにしたがって前方へ突出ように斜めになっている。該縁部が、被案内部59となっている。作動部材51Cが退避位置から作動位置へ向かって前進されるとき、被案内部59が案内部61の傾斜面62(図5参照)に沿って滑ることによって、作動部材51Cの前端部が押し上げられて被係止部54と係止部60(図9参照)とが係止される。
【0056】
また、展開位置の足置き機構30を収納位置へ引っ込めるときは、被案内部59が、足置き機構30の前端部の解除部32,33に当たって滑ることによって、作動部材51Cが解除位置に位置される(図12図13参照)。
【0057】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨に反しない限り種々の改変をなすことができる。
例えば、係止部60の直近後方の案内部が、傾斜板61に代えて、案内ローラであってもよい。
作動部材の被係止部が凸部であり、ベースフレームの係止部が凹部であってもよい。
サポートアーム31の前端部が解除部として機能するようにしてもよい。
足置き機構30に、作動部材と係止部との係止状態を解除するための専用の解除部を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、要介助者の入浴介助機器に適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 入浴用車椅子
3 入浴介助用椅子装置
10 ベースフレーム
20 椅子
21 座部
22 背凭れ
23 座部フレーム
30 足置き機構(跨ぎサポート)
31 サポートアーム
32 足置き部材(解除部)
33 足置き軸部(解除部)
40 チルト機構
41 チルトガイドレール
41a ガイド溝
42 ローラユニット
43 ローラホルダ
44 チルトローラ
50 チルト解除許否用のメカニカルロック機構
51 作動部材
51B,51C 作動部材
52 レバー(作動部材本体)
53 連結軸部
54 被係止部(凹部)
54f 被係止爪
55 被案内部
56 案内ローラ
57 軸部材
60 係止部(凸部)
61 案内部
62 傾斜面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16