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  • 特開-発泡材料の製造方法及び発泡材料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025026
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】発泡材料の製造方法及び発泡材料
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
C08J9/04 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128117
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】堀中 順一
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA01
4F074AA02
4F074AA42
4F074BA34
4F074CA24
4F074CA29
4F074DA02
4F074DA08
4F074DA32
4F074DA33
4F074DA57
4F074DA59
(57)【要約】
【課題】発泡剤を使用しない場合でも、発泡倍率が高く、生分解性を有する発泡材料を作製することが可能な発泡材料の製造方法、及び、発泡材料を提供する。
【解決手段】水酸基含有高分子と、水とを含有する発泡性混合物を作製する発泡性混合物作製工程と、前記発泡性混合物を加圧発泡させる加圧発泡工程とを有し、前記水酸基含有高分子は、60℃の水に1重量%以上溶解し、かつ、前記水酸基含有高分子の1重量%溶液は、60℃から25℃まで冷却した際にゲル化せず、前記発泡材料の前記発泡性混合物に対する発泡倍率は、2倍以上である、発泡材料の製造方法。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有高分子と、水とを含有する発泡性混合物を作製する発泡性混合物作製工程と、
前記発泡性混合物を加圧発泡させる加圧発泡工程とを有し、
前記水酸基含有高分子は、60℃の水に1重量%以上溶解し、かつ、前記水酸基含有高分子の1重量%溶液は、60℃から25℃まで冷却した際にゲル化せず、
発泡材料の前記発泡性混合物に対する発泡倍率は、2倍以上である、
発泡材料の製造方法。
【請求項2】
前記発泡性混合物は、温度25℃で動的粘弾性測定を行った場合、周波数1s-1における損失弾性率が100Pa以上であり、かつ、貯蔵弾性率と損失弾性率とが等しくなるクロスオーバー周波数を有し、クロスオーバー周波数よりも低周波数側において貯蔵弾性率が損失弾性率よりも小さく、かつ、クロスオーバー周波数よりも高周波数側で貯蔵弾性率が損失弾性率よりも大きい、請求項1記載の発泡材料の製造方法。
【請求項3】
前記クロスオーバー周波数は、周波数0.1~100s-1の間に位置する、請求項2記載の発泡材料の製造方法。
【請求項4】
前記発泡性混合物は、水酸基含有高分子及び水のみからなる、請求項1~3のいずれかに記載の発泡材料の製造方法。
【請求項5】
前記水酸基含有高分子は、25℃の水に40重量%以上溶解する、請求項1~3のいずれかに記載の発泡材料の製造方法。
【請求項6】
前記水酸基含有高分子は、炭素原子、水素原子及び酸素原子のみから構成される、請求項1~3のいずれかに記載の発泡材料の製造方法。
【請求項7】
前記水酸基含有高分子は、多糖類である、請求項1~3のいずれかに記載の発泡材料の製造方法。
【請求項8】
前記加圧発泡工程において、1MPa以上で加圧する、請求項1~3のいずれかに記載の発泡材料の製造方法。
【請求項9】
請求項1~3のいずれかに記載の発泡材料の製造方法で作製される発泡材料であって、密度が0.6g/cm以下である、発泡材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡材料の製造方法及び発泡材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、発泡体は、緩衝材、遮音材、断熱材、食品包装材、衣料材、建材用として用いられており、柔らかさ、クッション性等の弾性、断熱性等に優れているという点が求められている。このような発泡体としては、ポリエチレンおよびポリプロピレン等のポリオレフィン系などに代表される熱可塑性樹脂発泡体がよく知られている。
【0003】
一般的な発泡体を得る方法としては、通常物理的方法によるものと化学的方法によるものとがある。一般的な物理的方法としては、クロロフルオロカーボン類または炭化水素類などの低沸点液体(発泡剤)をポリマーに分散させ、次に加熱し発泡剤を揮発させることにより気泡を形成させるものである。また化学的方法においては、ポリマーベースに添加された化合物(発泡剤)の熱分解により生じたガスによりセルを形成し、発泡体を得るものである。
例えば、特許文献1には、樹脂の分解温度以下の温度で気体を放出する発泡剤を添加することで発泡成形を行う発泡成形品の製造方法が開示されている。
また、特許文献2には、澱粉、熱可塑性ポリマーに、珪酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の核剤(発泡剤)を添加することで発泡成形を行う発泡プラスチック材料の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭50-109262号公報
【特許文献2】特開平8-59892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の方法では、二酸化炭素の排出など各種の環境への問題が存在する。また、発泡後、発泡体中に残る、腐食性ガスや不純物による汚染が問題となっている。
更に、ポリ乳酸(PLA)等の生分解性プラスチックを発泡体としたものが市販されているが、ポリ乳酸は発泡性がなく、ビーズ状のポリ乳酸に重曹などの発泡剤を添加させる必要があるため、上記と同様の問題が生じている。
【0006】
本発明は、発泡剤を使用しない場合でも、発泡倍率が高く、生分解性を有する発泡材料を作製することが可能な発泡材料の製造方法、及び、発泡材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
項1.水酸基含有高分子と、水とを含有する発泡性混合物を作製する発泡性混合物作製工程と、前記発泡性混合物を加圧発泡させる加圧発泡工程とを有し、前記水酸基含有高分子は、60℃の水に1重量%以上溶解し、かつ、前記水酸基含有高分子の1重量%溶液は、60℃から25℃まで冷却した際にゲル化せず、発泡材料の前記発泡性混合物に対する発泡倍率は、2倍以上である、発泡材料の製造方法。
項2.前記発泡性混合物は、温度25℃で動的粘弾性測定を行った場合、周波数1s-1における損失弾性率が100Pa以上であり、かつ、貯蔵弾性率と損失弾性率とが等しくなるクロスオーバー周波数を有し、クロスオーバー周波数よりも低周波数側において貯蔵弾性率が損失弾性率よりも小さく、かつ、クロスオーバー周波数よりも高周波数側で貯蔵弾性率が損失弾性率よりも大きい、項1記載の発泡材料の製造方法。
項3.前記クロスオーバー周波数は、周波数0.1~100s-1の間に位置する、項2記載の発泡材料の製造方法。
項4.前記発泡性混合物は、水酸基含有高分子及び水のみからなる、項1~3のいずれかに記載の発泡材料の製造方法。
項5.前記水酸基含有高分子は、25℃の水に40重量%以上溶解する、項1~3のいずれかに記載の発泡材料の製造方法。
項6.前記水酸基含有高分子は、炭素原子、水素原子及び酸素原子のみから構成される、項1~3のいずれかに記載の発泡材料の製造方法。
項7.前記水酸基含有高分子は、多糖類である、項1~3のいずれかに記載の発泡材料の製造方法。
項8.前記加圧発泡工程において、1MPa以上で加圧する、項1~3のいずれかに記載の発泡材料の製造方法。
項9.項1~3のいずれかに記載の発泡材料の製造方法で作製される発泡材料であって、密度が0.6g/cm以下である、発泡材料。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明において、発泡材料の発泡性混合物に対する発泡倍率は2倍以上であり、好ましくは2.5倍以上、より好ましくは4倍以上である。
なお、上記発泡倍率の上限は特に限定されないが10倍である。
上記発泡倍率は、発泡前後の体積から算出することができる。
【0009】
本発明の発泡材料の製造方法では、水酸基含有高分子と、水とを含有する発泡性混合物を作製する発泡性混合物作製工程を行う。
【0010】
本発明において、上記発泡性混合物は、温度25℃で動的粘弾性測定を行った場合、周波数1s-1における損失弾性率が100Pa以上であり、かつ、貯蔵弾性率と損失弾性率とが等しくなるクロスオーバー周波数を有し、クロスオーバー周波数よりも低周波数側において貯蔵弾性率が損失弾性率よりも小さく、かつ、クロスオーバー周波数よりも高周波数側で貯蔵弾性率が損失弾性率よりも大きいことが好ましい。
このような特徴を有することで、ゲル化が起こりにくくなるとともに、水に溶解した状態で水酸基含有高分子のからみ合いが存在しやすくなる。
なお、上記動的粘弾性測定は、例えば、ひずみ制御型レオメーター等によって測定することができる。
【0011】
本発明におけるクロスオーバー周波数について、図を用いて説明する。
本発明に係る発泡性混合物について、動的粘弾性測定(周波数依存性)を行った結果の一例を図1に示す。上記動的粘弾性測定では、貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”を求めることができ、G’とG”は高周波数側から低周波数側にかけて左下がりに低下している。
本発明に係る発泡性混合物は、G’とG”とが等しくなるクロスオーバー周波数(X)を有し、Xよりも低周波数側においてG’はG”よりも小さく、かつ、Xよりも高周波数側でG’はG”よりも大きい。
【0012】
本発明において、上記クロスオーバー周波数は、0.1~100s-1の間に位置することが好ましい。上記範囲内に位置することで、本発明の効果をより高めることが可能となる。上記クロスオーバー周波数は、1~100s-1の間に位置することがより好ましく、5~100s-1の間に位置することがさらに好ましい。
【0013】
本発明の「G’とG”とが等しくなるクロスオーバー周波数(X)を有し、Xよりも低周波数側においてG’はG”よりも小さく、かつ、Xよりも高周波数側でG’はG”よりも大きい」という特性は、水酸基含有高分子の種類、含有量によって調整することができる。
【0014】
本発明において、上記発泡性混合物は、水酸基含有高分子と、水とを含有する。
上記発泡性混合物は、水酸基含有高分子、水以外の添加物を含有してもよいが、特に、水酸基含有高分子及び水のみからなることが好ましい。なお、「水酸基含有高分子及び水のみからなる」は、灰成分やたんぱく質などの不純物の上記発泡性混合物への混入を除外するものではない。また、上記発泡性混合物は、(水以外の)発泡剤は含まない方が好ましい。添加剤としては、発泡材料を着色するための着色剤等が考えられる。
【0015】
上記水酸基含有高分子は、60℃の水に1重量%以上溶解する。上記水酸基含有高分子は、60℃の水に3重量%以上溶解することが好ましい。上記60℃の水への溶解量の上限に関しては特に限定されないが、90重量%であることが好ましく、60℃の水に80重量%以下溶解するのが好ましい。
また、上記水酸基含有高分子は、25℃の水に40重量%以上溶解することが好ましい。
【0016】
また、上記水酸基含有高分子を1重量%溶解させた水溶液は、60℃から25℃まで冷却した際にゲル化しない。つまり、冷却した水溶液は、流動性がある状態(ゾル状態)を維持しており、流動性がない状態(ゲル状態)にはならない。これにより、発泡剤を使用しない場合でも、発泡倍率が高く、弾性に優れる発泡材料を作製できるという利点がある。
なお、ゲル化の有無は、傾斜法によって判断することができる。
【0017】
上記発泡性混合物の粘度は特に限定されないが、25℃でレオメーター(ひずみ速度:0.01~100s-1)を用いて測定した場合の粘度の好ましい下限が0.1mPa・s、好ましい上限が100mPa・sである。上記範囲内とすることで、発泡性混合物を一体化させやすくすることができる。
なお、上記粘度は、例えば、ひずみ制御型レオメーター等の回転型レオメーター等によって測定することができる。また、上記粘度測定時における発泡性混合物の水酸基含有高分子含有量に関しては、特に限定されないが、通常は1~5重量%の範囲内である。
【0018】
上記水酸基含有高分子は、水酸基を有するものであれば特に限定されないが、多糖類、ポリビニルアルコール等が好ましく、多糖類であることがより好ましい。
また、上記水酸基含有高分子は、炭素原子、水素原子及び酸素原子のみから構成されるものであることが好ましい。
【0019】
上記多糖類は、加水分解により2分子以上の単糖類を生じる糖類である。上記多糖類は、特に限定されないが、プルラン、デキストラン、セルロース誘導体、水溶性大豆多糖類が好ましい。上記多糖類は、置換されている多糖類であってよく、特に、ヒドロキシル基が置換されている多糖類であってよい。
上記セルロース誘導体としては、特に制限されないが、カルボキシメチルセルロースが好ましい。
上記水溶性大豆多糖類とは、大豆から抽出された多糖類である。この水溶性大豆多糖類としては、例えば、ラムノース、フコース、アラビノース、キシロース、ガラクトース、グルコース及びウロン酸等を構成糖に含有し、その平均分子量は5万~100万であるものが挙げられる。上記水溶性大豆多糖類の市販品としては、例えば、ソヤファイブ-S-LN、ソヤファイブ-S-DA100(何れも不二製油社製)等が挙げられる。
上述のなかでは、特にプルラン、デキストランが好ましく、特にプルランが好ましい。
【0020】
上記発泡性混合物において、上記水酸基含有高分子の含有量は、混合する水酸基含有高分子の種類により異なる。一般的には、発泡性混合物全体に対して、10~85重量%とすることが好ましく、20~70重量%とすることがより好ましい。また、上記水酸基含有高分子としてプルラン、ポリビニルアルコールを用いる場合は特に40~80重量%とすることが好ましい。また、デキストランを用いる場合は特に60~80重量%とすることが好ましい。
【0021】
上記水としては、特に限定されず、例えば、イオン交換水、純水等が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0022】
上記発泡性混合物は、水酸基含有高分子及び水を添加、混合することで作製することができる。
上記混合の方法としては、攪拌具(スパチュラ等)を用いて人力で混合することができる。また、混合の方法としては、ホモミキサー、ホモジナイザーのような高速攪拌やアトライター、ビーズミル、サンドミル、遊星ミル等のメディア型湿式分散装置や、ジェットミル等の混合方法を使用することもできる。また、発泡性混合物は、均一になるように混合されているのが好ましい。
【0023】
本発明では、次いで上記発泡性混合物を加圧発泡させる加圧発泡工程を行う。
上記加圧発泡工程により、空隙が内部に押し込まれ、発泡倍率を向上できるものと推察される。上記加圧発泡工程における圧力は、常圧より大きくすることが好ましく、1MPa以上とすることがより好ましく、10MPa以上とすることが更に好ましい。上記圧力の上限は特に限定されないが50MPaとすることが好ましい。
また、上記加圧発泡工程における加圧温度及び加圧時間は、使用する水酸基含有高分子の種類、要求する発泡度合いにより適宜調節すればよく、発泡度合いを大きくする(密度を小さくする)場合には、加圧温度は高く、加圧時間は長くすればよい。なお、加圧温度は、分解や熱変性が起きないのであれば、160℃以上とすることが好ましく、200℃以上が好ましい。加圧時間は、10分以下が好ましいが、短時間で発泡を行うためには、3分以下がより好ましい。
なお、上記加圧発泡工程を行う場合は、ホットプレス法を用いて行うことが好ましい。ホットプレス法では、発泡性混合物が挟み込まれる一対の金型と、発泡性混合物が挟み込まれた金型に圧力を加える加圧機とを含む、加圧発泡装置(図示せず)を用いて加圧発泡工程が行われる。具体的には、一対の金型を加圧温度に加熱した状態で、一対の金型に上記圧力を加えて加圧時間の間保持することにより、加圧発泡が行われる。
また、加圧の全体に均一に発泡させるために、発泡性混合物を小分けにして金型内に配置させてもよい。
【0024】
本発明の製造方法により製造された発泡材料もまた本発明の1つである。
本発明の製造方法で得られる発泡材料の密度は、0.6g/cm以下ある。また、上記密度は、0.3g/cm以下であることが好ましい。上記密度の下限は特に限定されないが、0.01g/cmであることが好ましい。
なお、上記密度は発泡材料の体積及び重量から算出することができる。
【0025】
本発明の製造方法は、上述のように発泡剤を用いず簡便な製造方法で発泡倍率が高く、弾性に優れ、生分解性を有する発泡材料を得ることができる方法である。また、本発明の製造方法、及び、当該製造方法で得られる発泡材料は、持続可能性、生分解性、石油不使用、製造工程の炭素排出ゼロ等の環境適合性が求められている分野や、生体適合性材料としての医療分野に加えて、緩衝材、遮音材、断熱材、食品包装材、衣料材、建材用、輸送機器等で好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、発泡剤を使用しない場合でも、発泡倍率が高く、生分解性を有する発泡材料を作製することが可能な発泡材料の製造方法、及び、発泡材料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係る発泡性混合物について、動的粘弾性測定(周波数依存性)を行った結果の一例を表した図である。
図2】加圧発泡工程に用いる金属型等を表した図である。
図3】実施例3-1で得られた発泡性混合物の動的粘弾性測定結果を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0029】
(実施例1~5、比較例1~12)
最初に以下の水酸基含有高分子について、後述する「水溶性測定」を行った。また、「水溶性測定」において、水溶性であったものについては「ゲル化の有無」評価を行った。
更に、特定の水酸基含有高分子について「粘度測定」を行った。
水酸基含有高分子としては、プルラン(東京化成製)、デキストラン(シグマアルドリッチ製、分子量300万~700万)、カルボキシメチルセルロース(CMC、富士フイルム和光純薬製)、ソヤファイブ-S-DA100(水溶性大豆多糖類、不二製油社製)、PVA(ポリビニルアルコール、VM-17 けん化度95~97%)、κ-カラギーナン(東京化成製)、アガロース(富士フイルム和光純薬社製)、セルロース(富士フイルム和光純薬社製)カードラン(富士フイルム和光純薬社製)、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース、東京化成工業社製)、ヒアルロン酸(シグマアルドリッチ社製)、グアーガム(富士フイルム和光純薬社製)を用いた。
【0030】
(1-1)水溶性測定
60℃の水に対して1重量%の水酸基含有高分子が溶解するか否かを判断した。水溶性であったものについては、「〇」を、水溶性でなかったものについては、「×」を付した。測定結果を表1に示す。
【0031】
(1-2)ゲル化の有無
「水溶性測定」において60℃で溶解させた1重量%の水酸基含有高分子を含む試料を室温(25℃)まで自然冷却した際にゲル化しなかったものをゲル化しないと判断し、「×」を付した。一方で、上記条件でゲル化したものをゲル化すると判断し、「〇」を付した。ゲル化したか否かについては、傾斜法により判断した。具体的には、サンプル瓶に試料を入れ25℃で30分置いた後、90度傾けたときに3分間、自重による瞬間的な変形以上の変形を生じない場合をゲル化していると判断した。
【0032】
(1-3)粘度測定
「水溶性測定」「ゲル化の有無」とは別に、4重量%のプルランを含有するプルラン混合物、1重量%のデキストランを含有するデキストラン混合物、1重量%のCMCを含有するCMC混合物、5重量%のソヤファイブを含有するソヤファイブ混合物、4重量%のPVAを含有するPVA混合物を調整した。そして、ひずみ制御型レオメーター(ARES)を用い、ひずみ速度:0.01~100s-1、測定温度:25℃にて、せん断粘度を測定した。測定結果を表1に示す。なお、κ-カラギーナンの粘度については、表1において文献値を記載した。
【0033】
[試料(混合物)作製工程]
上記水酸基含有高分子を、水に対して、表1に示す含有量で添加し、混合することで、混合物(今後、処理前試料と称する場合がある)を調製した。
【0034】
[加圧発泡工程]
図2に加圧発泡工程に用いる金属型等を図示する。加熱板と接する金属板と、金属型との間に、圧力を保つためのゴムシートを挟んだ構成となっている。
図2に示す金属型に、得られた表1に示す混合物を添加し、加熱板を表1に示す温度に加熱し、表1に示す圧力にて表1に示す時間加圧することで、ホットプレスにより加熱発泡成形を行い、処理後試料を作成した。
【0035】
(評価方法)
上記で得られた、処理前試料(一部、発泡性混合物)及び処理後試料(一部、発泡材料)を以下の方法で評価した。結果を表1に示した。なお、表1中の「―」は未測定または測定不能を意味する。
【0036】
(2-1)動的粘弾性測定
得られた試料の一部について、ひずみ制御型レオメーター(ARES)を用い、ひずみ(γ):0.1、周波数0.1~100s-1、測定温度:25℃にて、貯蔵弾性率及び損失弾性率を測定した。
なお、コーンプレートとしては「コーン角:0.1rad,直径:25mm」又は「コーン角:0.04rad、直径:50mm」のものを用いた。
また、得られた動的粘弾性測定結果から、貯蔵弾性率と損失弾性率とが等しくなるクロスオーバー周波数を有するか否かを判定した。
更に、クロスオーバー周波数よりも低周波数側において貯蔵弾性率が損失弾性率よりも小さく、かつ、クロスオーバー周波数よりも高周波数側で貯蔵弾性率が損失弾性率よりも大きい場合を「A型」、クロスオーバー周波数よりも低周波数側において損失弾性率が貯蔵弾性率よりも小さく、かつ、クロスオーバー周波数よりも高周波数側で損失弾性率が貯蔵弾性率よりも大きい場合を「B型」とした。
加えて、「1s-1における損失弾性率」及び「クロスオーバー周波数(A型の場合)」を表1に示した。
なお、本発明を満たす場合の一例として、実施例3-1で得られた発泡性混合物の動的粘弾性測定結果(●:貯蔵弾性率G’、△:損失弾性率G”)を図3に示す。
【0037】
(2-2)絡み合い
1s-1における損失弾性率が100Pa以上で、かつ、クロスオーバー周波数よりも高周波数側で貯蔵弾性率が損失弾性率よりも大きいものを絡み合いありと判断し、「〇」を付した。なお、50重量%のソヤファイブを含むソヤファイブ混合物は、測定範囲外である100s-1より大きい周波数でクロスオーバー周波数が存在していると思われるため、「△」を付した。一方で、クロスオーバー周波数よりも高周波数側で貯蔵弾性率が損失弾性率よりも大きいものを絡み合いと判断し、「×」を付した。
【0038】
(2-3)密度
発泡材料の長さをノギス等で測定して体積を算出し、重量を精密天秤で測定し、単位体積あたりの重量として求めた。なお、後述の「(2-4)発泡の有無及び発泡倍率」評価において、評価が「×」「△」である場合は、密度が0.6g/cmを超えるものと想定されるため、「-」とした。
【0039】
(2-4)発泡の有無及び発泡倍率
発泡の有無として、発泡倍率が2倍以上であったものを「〇」、発泡倍率が2倍未満であるが発泡挙動を示したものを「△」、発泡挙動自体を示さなかったものを「×」として表記した。また、2倍以上に発泡したもののいくつか、及び、発泡倍率が2倍未満であったものについては、目視にて発泡状態を確認した。なお、発泡倍率の算出は、発泡前の混合物の体積を同様に算出し、発泡材料の体積を除することにより行った。
【0040】
(2-5)引張試験
得られた発泡材料について、引張試験機(Tensilon RTM-500)を用い、伸長速度:1mm/min、測定温度:25℃にて、初期弾性率を測定した。
【0041】
【表1】
【0042】
(考察)
水溶性があり、かつ、ゲル化しない水酸基含有高分子は、発泡材料の原料となり得ることが判明した。また、絡み合いがないものについては、十分な発泡が得られにくい傾向にあることが判明した。そして、絡み合いがあるもの、特にクロスオーバー周波数があり、クロスオーバー周波数よりも高周波数側で貯蔵弾性率が損失弾性率よりも大きいものは、発泡倍率が2倍以上になり、発泡材料として有用ということが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、発泡剤を使用しない場合でも、発泡倍率が高く、生分解性を有する発泡材料を作製することが可能な発泡材料の製造方法、及び、発泡材料を提供できる。
図1
図2
図3