(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025034
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】発酵植物エキスの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/10 20160101AFI20240216BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20240216BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20240216BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
A23L27/10 C
A23L27/00 C
A23L2/00 B
A23L2/00 T
A23L2/52 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128127
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000214537
【氏名又は名称】長谷川香料株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森 健
(72)【発明者】
【氏名】横江 祐美子
(72)【発明者】
【氏名】酒井 藍子
(72)【発明者】
【氏名】富 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】田村 瑞
【テーマコード(参考)】
4B047
4B117
【Fターム(参考)】
4B047LB03
4B047LB07
4B047LB09
4B047LE03
4B047LG10
4B047LG12
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4B047LG43
4B047LG45
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4B047LG56
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4B047LP01
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4B047LP19
4B117LC03
4B117LC14
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4B117LG07
4B117LK04
4B117LK08
4B117LK12
4B117LL02
(57)【要約】
【課題】
発酵植物エキスは、発酵により生じる呈味や発酵特有の香気は増強されるが、植物原料本来の風味、特に香りの点でトップの香り立ちが失われ、ぼやけた風味になってしまうという欠点があった。
【解決手段】
以下の工程(A)~(C)を含む発酵植物エキスの製造方法。
工程(A):植物原料を水蒸気蒸留し、蒸留残渣と留出液を得る工程、
工程(B):前記工程(A)で得られた蒸留残渣を水系溶媒で抽出して抽出液を調製するに際し、蒸留残渣、蒸留残渣と溶媒の混合物および抽出液からなる群から選ばれる少なくとも1つに対し、発酵処理を行い、発酵処理抽出液を得る工程、
工程(C):前記工程(B)で得られた発酵処理抽出液と、前記工程(A)で得られた留出液を混合し、発酵植物エキスを得る工程
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程(A)~(C)を含む発酵植物エキスの製造方法。
工程(A):植物原料を水蒸気蒸留し、蒸留残渣と留出液を得る工程、
工程(B):前記工程(A)で得られた蒸留残渣を水系溶媒で抽出して抽出液を調製するに際し、蒸留残渣、蒸留残渣と溶媒の混合物および抽出液からなる群から選ばれる少なくとも1つに対し、発酵処理を行い、発酵処理抽出液を得る工程、
工程(C):前記工程(B)で得られた発酵処理抽出液と、前記工程(A)で得られた留出液を混合し、発酵植物エキスを得る工程
【請求項2】
前記植物原料がスパイス類またはハーブ類である、請求項1に記載の発酵植物エキスの製造方法。
【請求項3】
前記植物原料がジンジャー、柑橘果皮、トウガラシ、ジュニパーベリー、ブラックペッパー、レモングラス、ローズマリーおよびエルダーフラワーからなる群から選ばれる1種または2種以上である、請求項1に記載の発酵植物エキスの製造方法。
【請求項4】
前記工程(B)における発酵処理が乳酸菌、酵母、麹および麹菌からなる群より選ばれる1種または2種以上による発酵処理である、請求項1~3のいずれか1項に記載の発酵植物エキスの製造方法。
【請求項5】
さらに以下の工程(D)および(E)を含む請求項1~3のいずれか1項に記載の発酵植物エキスの製造方法。
工程(D):前記工程(A)で得られた留出液が水相と油相とを含む場合において、それぞれを分離して、水相部と油相部を得る工程、
工程(E):前記工程(A)で得られた留出液のうち、前記工程(D)で得られた水相部のみを前記工程(C)に供する工程
【請求項6】
さらに以下の工程(D)、(F)および(G)を含む請求項1~3のいずれか1項に記載の発酵植物エキスの製造方法。
工程(D):前記工程(A)で得られた留出液が水相と油相とを含む場合において、それぞれを分離して、水相部と油相部を得る工程、
工程(F):前記工程(D)で得られた油相部を乳化し、油相部の乳化物を得る工程
工程(G):前記工程(A)で得られた留出液にかえて、または、前記工程(A)で得られた留出液とともに、前記工程(F)で得られた油相部の乳化物を、前記工程(C)に供する工程
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法により得られた発酵植物エキスを、飲食品に添加する飲食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発酵処理された植物エキスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発酵技術は近年、健康促進イメージが強い素材を提供する技術として注目されているが、古くから食品素材の風味特性に好ましい変化をもたらす目的で用いられてきた。
【0003】
例えば、乳酸菌発酵では、乳酸と香気成分の生成による、酸味のある爽やかな香りと味の付与、酵母発酵では、アルコール生成とその代謝による香気成分の生成で芳醇な酒のような香りの付与、麹発酵では、糖質やたんぱく質を分解して呈味成分を生成し、複雑でコクのある味わいの付与などがもたらされる。
【0004】
発酵技術を応用した植物原料抽出物の製造技術としては、例えば、香辛料およびハーブ類からなる香辛性材料を乳酸菌、麹菌および酵母菌の群から選ばれる一種以上の菌株により発酵させ、これら材料中に存在する刺激臭、繊維質、苦味、辛味等の問題が解消された発酵食品を製造する方法(特許文献1)、植物原材料と糖を混合し、乳酸菌または酵母を用いて、温度条件を変え2段階で発酵処理した後、エタノールを除去することによる、雑味が低減され、のど越しが良好な植物発酵飲料の製造方法(特許文献2)、ショウガの乳酸菌発酵において、ショウガ成分により乳酸菌発酵が阻害されないようにするため、ショウガ及び/又はショウガ由来成分を含む発酵基材と、ポリフェノールオキシダーゼ、ポリフェノールオキシゲナーゼ、及びポリフェノールデヒドロゲナーゼからなる群より選択される酵素と、乳酸菌と、を含む混合物を調製する工程1と、前記混合物を乳酸菌発酵条件に供する工程2と、を含む、ショウガ乳酸菌発酵物の製造方法(特許文献3)、生姜を細粒化して発酵・培養させて1次発酵生姜汁を生成する種菌培養工程と、この1次発酵生姜汁を種菌として用いて発酵・培養させ、2次発酵生姜汁を生成する本培養工程から構成される、生姜特有の辛味、苦味、刺激臭を消去して、毎日多量に摂取することができる発酵生姜汁の製造方法(特許文献4)、有機溶媒と水との混合液と、ウコギ科、ショウガ科などの植物の根茎とを混合して、有機溶媒の沸点以下の温度で加熱する工程、加熱により有機溶媒を揮発させ、該含有量を変化させながら水の沸点まで加熱する工程とを含む、根茎の持つ独特の苦味や臭いを改善した嗜好性に優れる根茎発酵抽出物の製造方法(特許文献5)、タマネギ、ショウガ、キャベツ、ナガネギ、ホウレンソウ、ニンジン、パセリ、ナス、ピーマン、キュウリ、ダイコン、カブ、ニンニク、バナナ、リンゴ、キウイ、パイナップル、スイカ、ブドウ、ナシ、レモン、イチゴ、ナツミカン、カキ、及びミカンからなる群から選ばれる一種以上の野菜及び/又は果物の汁液、並びに乳原料を含有する発酵飲料の製造方法であって、上記野菜及び/又は果物の汁液と乳原料とを含む原料に対して、先ず酵母を添加して発酵処理を施した後、乳酸菌を添加して発酵処理を施すことを特徴とする、野菜や果物のえぐ味やくさみ等のくせのある味が感じられず、清涼感のある酸味とまろやかな乳味を有する発酵飲料の製造方法(特許文献6)、レモン果汁液を特定の乳酸菌で発酵させ、乳酸濃度を1000質量ppm以上とし、レモン果汁の旨味を際立たせ、苦味雑味を低減し、マイルドで旨味が感じられる風味を付与する、レモン果汁発酵液の製造方法(特許文献7)、などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-238593号公報
【特許文献2】特開2020-80754号公報
【特許文献3】特開2020-182539号公報
【特許文献4】特開2006-296245号公報
【特許文献5】特開2005-58133号公報
【特許文献6】特開2001-190251号公報
【特許文献7】特許第5990209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、発酵処理を行うと、発酵により生じる呈味や発酵特有の香気は増強されるが、植物原料本来の風味、特に香りの点において、トップの香り立ちが失われ、ぼやけた風味になってしまうという欠点があった。
【0007】
本発明の目的は、植物原料の発酵処理エキスでありながら、発酵風味とともに、その植物原料が本来有するトップの香り立ちを有する発酵植物エキスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記課題にかんがみ、鋭意研究を行った。その結果、はじめに植物原料を水蒸気蒸留して留出液を得、次いで蒸留後の植物原料(以下「蒸留残渣」ともいう)から発酵処理抽出液を得、得られた発酵処理抽出液と前記留出液を混合することにより、植物原料本来の風味、特にトップの香り立ちを有する発酵植物エキスが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
かくして、本発明は以下のものを提供する。
(1)以下の工程(A)~(C)を含む発酵植物エキスの製造方法。
工程(A):植物原料を水蒸気蒸留し、蒸留残渣と留出液を得る工程、
工程(B):前記工程(A)で得られた蒸留残渣を水系溶媒で抽出して抽出液を調製するに際し、蒸留残渣、蒸留残渣と溶媒の混合物および抽出液からなる群から選ばれる少なくとも1つに対し、発酵処理を行い、発酵処理抽出液を得る工程、
工程(C):前記工程(B)で得られた発酵処理抽出液と、前記工程(A)で得られた留出液を混合し、発酵植物エキスを得る工程
(2)前記植物原料がスパイス類またはハーブ類である、(1)に記載の発酵植物エキスの製造方法。
(3)前記植物原料がジンジャー、柑橘果皮、トウガラシ、ジュニパーベリー、ブラックペッパー、レモングラス、ローズマリーおよびエルダーフラワーからなる群から選ばれる1種または2種以上である(1)または(2)に記載の発酵植物エキスの製造方法。
(4)前記工程(B)における発酵処理が乳酸菌、酵母、麹および麹菌からなる群より選ばれる1種または2種以上による発酵処理である、(1)~(3)のいずれか1つに記載の発酵植物エキスの製造方法。
(5)さらに以下の工程(D)および(E)を含む(1)~(4)のいずれか1つに記載の発酵植物エキスの製造方法。
工程(D):前記工程(A)で得られた留出液が水相と油相とを含む場合において、それぞれを分離して、水相部と油相部を得る工程、
工程(E):前記工程(A)で得られた留出液のうち、前記工程(D)で得られた水相部のみを前記工程(C)に供する工程
(6)さらに以下の工程(D)、(F)および(G)を含む(1)~(5)のいずれか1つに記載の発酵植物エキスの製造方法。
工程(D):前記工程(A)で得られた留出液が水相と油相とを含む場合において、それぞれを分離して、水相部と油相部を得る工程、
工程(F):前記工程(D)で得られた油相部を乳化し、油相部の乳化物を得る工程
工程(G):前記工程(A)で得られた留出液にかえて、または、前記工程(A)で得られた留出液とともに、前記工程(F)で得られた油相部の乳化物を、前記工程(C)に供する工程
(7)(1)~(6)のいずれか1つに記載の製造方法により得られた発酵植物エキスを、飲食品に添加する飲食品の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
植物原料の発酵抽出エキスの特徴を生かしながら、発酵風味とともに、その植物原料が本来有するトップの香り立ちを有する発酵植物エキスを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[植物原料]
本発明で使用することのできる植物原料は、発酵処理に供することができるものであればいかなる原料でも使用することができる。これらの植物原料としては、例えば、茶類(緑茶、抹茶、碾茶、紅茶、ウーロン茶、後発酵茶、麦茶、玄米茶、ハブ茶など)、生および焙煎コーヒー豆、柑橘果皮(レモンピール、オレンジピール、グレープフルーツピール、ユズピールその他の柑橘)、スパイス類またはハーブ類(ジンジャー、レモングラス、ラベンダー、シソ、ジャスミン、パセリ、セージ、オレガノ、ベルガモット、ホップ、レモンバーム、カモミール、ローズマリー、タイム、ミント、コリアンダー、ブラックペッパー、ホワイトペッパー、クミン、トウガラシ、サンショウなど)、果実(リンゴ、イチゴ、ブドウ、ミカン、オレンジ、レモン、パイナップル、キウイなど)、野菜(白菜、キャベツ、ダイコン、タマネギ、トマトなど)、ナッツ類(白胡麻、黒胡麻、クルミ、栗、カシューナッツ、マカデミアナッツ、ピーナッツなど)、を挙げることができる。これらの中ではスパイス類またはハーブ類が好ましく、特にジンジャー、柑橘果皮、トウガラシ、ジュニパーベリー、ブラックペッパー、レモングラス、ローズマリーおよびエルダーフラワーが好ましい。
【0012】
前記植物原料は生のままで使用しても良いが、乾燥、焙煎、焙焼などの加熱処理により、香気を増強あるいは改善して使用しても良い。
【0013】
前記植物原料は必要に応じて0.1mm~10mm程度、好ましくは1mm~5mm程度の粒径となるように粉砕を行い、蒸留による香気回収率の改善を行っても良い。
【0014】
[工程(A):植物原料を水蒸気蒸留し、蒸留残渣と留出液を得る工程]
水蒸気蒸留は、原料に水蒸気を吹き込んだ際、原料中に含まれる揮発性物質の蒸気圧(分圧)と外部から加えた水蒸気の蒸気圧(分圧)の和が周囲の圧力(常圧水蒸気蒸留の場合は大気圧)と同等以上になったときに、揮発性成分が水蒸気とともに蒸留されて留出してくる現象で、水蒸気とともに留出してくる揮発性成分を冷却することにより、揮発性成分(一般的にはいわゆる香気成分である)を含んだ水溶液を留出液として得ることができる。
【0015】
水蒸気蒸留法としては、例えば常圧水蒸気蒸留法、加圧水蒸気蒸留法、減圧水蒸気蒸留法などが採用でき、また、植物原料をカラムに充填して直接蒸気を吹き込む方法、植物原料をカラムに充填した後、植物原料を少量の水で湿らせてから蒸気を吹き込む方法、植物原料と水を混合して懸濁液とし、これを充填した釜に水蒸気を吹き込む方法、SCC(「スピニングコーンカラム」、「気-液向流接触抽出」ともいう)装置を使用した水蒸気蒸留などが採用できる。
【0016】
例えば、カラムによる水蒸気蒸留を用いる方法では、原料を仕込んだ水蒸気蒸留釜の底部から水蒸気を吹き込み、上部の留出側に接続した冷却器で留出蒸気を冷却することにより、凝縮物として香気を含む留出液を捕集することができる。必要に応じて、この香気捕集装置の先に冷媒(ドライアイス-エタノール、ドライアイス-アセトン、液体窒素など)を用いたコールドトラップを接続することにより、より低沸点の香気成分をも確実に捕集することができる。また、水蒸気蒸留の際に、窒素ガスなどの不活性ガスおよび/またはビタミンCなどの抗酸化剤の存在下で蒸留すると、原料および/または香気成分の加熱による劣化を効果的に防止することができる。水蒸気蒸留では蒸留の初期に香気が多く留出し、その後、徐々に香気の留出が少なくなる。どこで蒸留を終了するかは、何回かの結果を参考に経済性等も考慮して決める。留出液の採取量は原料1質量部に対して、0.1質量部~10質量部、好ましくは、0.2質量部~5質量部程度、より好ましくは0.5質量部~2質量部であり、Bx0~5°程度の留出液が得られる。
【0017】
SCC装置を用いる方法では、例えば、原料粉砕物(1mm~3mm程度)を水と混合しスラリーとして、例えば、特公平7-22646号公報に記載の装置を用いて蒸留する方法を採用することができる。この装置を用いて香気を回収する手段を具体的に説明すると、回転円錐と固定円錐が交互に組み合わせられた構造を有する気-液向流接触抽出装置の回転円錐上に、液状またはペースト状の嗜好性飲料用原料を上部から流下させると共に、下部から蒸気を上昇させ、該原料に本来的に存在している香気成分を回収する方法を例示することができる。この気-液向流接触抽出装置の操作条件としては、該装置の処理能力、原料の種類および濃度、香気の強度その他によって任意に選択することができる。原料スラリーにおける原料と水の比率は、原料が流動性をもつ状態となる量であればいかなる比率も採用することができるがおおよそ、原料1質量部に対し水5倍量~30倍量を例示することができる。
【0018】
留出液の採取量は植物原料1質量部に対して、0.1質量部~10質量部、好ましくは、0.2質量部~5質量部程度、より好ましくは0.5質量部~2質量部である。この工程(A)では留出液と同時に、蒸留残渣が得られる。
【0019】
留出液は、後の工程(C)(前記工程(B)で得られた抽出液と、前記工程(A)で得られた留出液を混合する工程)にそのまま使用することもできるが、留出液が水相と油相とを含む場合がある。特に、植物原料がスパイス・ハーブなどでは、精油を多く含むため、留出液が水相と油相とを含む場合が多く、そのような場合はさらに工程(D)~(G)を行うこともあるが、これらの説明は後に記し、まずは工程(B)について述べる。
【0020】
[工程(B):前記工程(A)で得られた蒸留残渣を水系溶媒で抽出して抽出液を調製するに際し、蒸留残渣、蒸留残渣と溶媒の混合物および抽出液からなる群から選ばれる少なくとも1つに対し、発酵処理を行う工程]
蒸留残渣は、次いで、水、エタノール水溶液、グリセリン、グリセリン水溶液などの水性溶媒を用いて抽出を行う。好ましい溶媒は水である。
【0021】
本発明では、この抽出液を調製するに際し、蒸留残渣、蒸留残渣と溶媒の混合物または抽出液のいずれかに対し、発酵処理を行い、発酵処理抽出液を得る。すなわち、発酵処理は、抽出の前に行っても良いし、抽出の際に同時に行っても良いし、一旦抽出を行った後に行っても良く、これらの方法を組み合わせて行ってもよい。
【0022】
カラムを用いた水蒸気蒸留後の蒸留残渣を一旦水抽出してから発酵処理する場合の抽出液の製造方法を具体的に示せば、例えば、上記の水蒸気蒸留後の植物原料1重量部あたり1~100重量部の水を加え、静置もしくは撹拌条件下に、抽出温度室温~約100℃にて、使用温度に応じて約2分~約5時間抽出を行い、冷却後、遠心分離、圧搾、濾過などのそれ自体既知の方法で固液分離することによって不溶物を除去することにより得ることができる。また、例えば、蒸留残渣をガラス又はステンレスなど適宜な材質のカラムに充填し、該カラムの上部または下部より、室温~約100℃の熱水を、定量ポンプなどを用いて流し、カラム抽出することによって得ることができる。このようなカラム抽出は所望により複数のカラムを直列に接続して行うことができる。
【0023】
また、気-液向流接触抽出法により香気を回収した場合は、蒸留残渣がすでに抽出液を含むスラリー状となっているため、蒸留残渣中の固形分を、遠心分離、圧搾、濾過などのそれ自体既知の方法で固液分離することによって不溶物を除去することにより抽出液を得ることができる。
【0024】
以上述べたように発酵処理の前に抽出液を採取する方法も採用することができるが、本発明では、蒸留残渣と抽出溶媒を含んだ状態で発酵処理を行うこともできる。蒸留残渣と抽出溶媒を含んだ状態で発発酵処理を行うことで、植物組織の変化により生じた発酵成分を抽出液の可溶性固形分中に含めることも可能となる。
【0025】
本発明の発酵に使用できる微生物は、いわゆる発酵処理に使用できるとされているものであれば特に限定されるものではないが、乳酸菌、酵母、麹または麹菌を好ましく例示できる。
【0026】
乳酸菌(lactic acid bacteria)は、糖類を分解して乳酸をつくり出す細菌の総称で、1)細胞形態が桿菌もしくは球菌、2)グラム陽性、3)カタラーゼ陰性(嫌気性菌)、4)内生胞子をつくらない、5)運動性がない(鞭毛を持たない)、6)消費したブドウ糖から50%以上の乳酸を生成する細菌と定義されており、その種類は200種類以上にもなると言われている。
【0027】
本発明に用いられる乳酸菌としては、ラクチプランチバチラス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)、ラクトバチラス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・ クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・カルバータス(Lactobacillus curvatus)、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus delbr bulgaricus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reiteri)、ラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)、ラクトバチルス・サリバリアス(Lactobacillus salivarius)、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ペディオコッカス・ダムノサス(Pediococcus damnosus)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、テトラジェノコッカス・ハロフィルス(Tetragencoccus halophilus)、リューコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)、ラクトコッカス・クレモリス(Lactococcus cremoris)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、ストレプトコッカス・ラクティス(Streptococcus lactis)が例示される。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0028】
前記乳酸菌のうち、特にラクチプランチバチラス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)、ラクトバチラス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、及びペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)から選択される少なくとも1種を用いると、得られる発酵植物エキスの風味が良好となるため好ましい。
【0029】
発酵処理におけるpH、温度、時間などの条件は、発酵に用いる微生物によって異なり、例えば乳酸菌発酵では、一般的にはpH6~7が発酵開始時の至適pHとされているが、本発明における好ましい乳酸菌であるラクチプランチバチラス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)、ラクトバチラス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)から選択される少なくとも1種を用いる場合は、pHが4.5~5.5、特に4.8~5.2において乳酸発酵を開始すると、乳酸菌の増殖が良好で好ましい。
【0030】
発酵工程において、乳酸菌の使用量は限定されるものではなく、乳酸菌の種類等に応じて適宜決定することができる。例えば、前記ラクチプランチバチラス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)、ラクトバチラス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)から選択される少なくとも1種を用いる場合は、植物エキス1g当たり、1×106cfu/ml以上、好ましくは1×107cfu/ml以上の菌数となる条件で発酵工程を開始すると乳酸発酵を確実に進めることができ、発酵温度は10~37℃、好ましくは25~35℃とすることができ、発酵時間は5~72時間、好ましくは10~48時間とすることができる。発酵処理抽出液のpHを適宜測定して確認しながら、発酵時間を制御することができる。
【0031】
乳酸発酵が進むにつれて、乳酸の生産によりpHは徐々に低下していくが、発酵植物エキスのpHが3.3~4.5、特に3.5~4.0となるまで乳酸発酵を実施すると(その時点で乳酸発酵を終了すると)、程よい酸味の発酵処理抽出液が得られるため好ましい。
【0032】
酵母は、生活環の一定期間において栄養体が単細胞性を示す真菌類の総称である。
【0033】
本発明に用いられる酵母としては、サッカロマイセス(Saccharomyces)、ハンセヌラ(Hansenula)、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)、ロダロマイセス(Lodderomyces)、ピチア(Pichia)、ナドソニア(Nadsonia)、サッカロマイコデス(Saccharomycodes)、ハンセニアスポラ(Hanseniaspora)、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)、エンドマイコプシス(Endomycopssis)、ネマトスポラ(Nematospora)、等のようなエンドマイセタレス(Endomycetales)に属するもの、リュウコスポリディウム(Leucosporidium)、ロドスポリディウム(Rhodosporidium)のようなユスチラジナレス(Ustilaginales)に属するもの、ブレラ(Bullera)、スポロボロマイセス(Sporoboromyces)、スポリディオボラス(Sporidiobolus)のようなスポロボロマイセタセ(Sporobolomycetaceae)に属するもの(以上子のう菌酵母)やブレタノマイセス(Brettanomyces)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、クロッケラ(Kloeckera)、ロドトルラ(Rhodotorula)、ステリグマトマイセス(Sterigmatomyces)(以上無胞子酵母)に属するもの等が挙げられ、これらを単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、入手し易く、取り扱いが容易なサッカロマイセス、ハンセヌラに属するもの、特にサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)好ましい。
【0034】
酵母発酵の条件は、一般的な酵母の培養条件に従えばよく、例えば温度は20~40℃、好ましくは25~35℃とすることができ、pHは通常は3.0~6.0、特に好ましくはpH3.5~5.0とすることができ、発酵時間は5~72時間、好ましくは10~48時間とすることができる。また、発酵工程において、酵母の使用量は、特に限定されるものではないが、植物エキス1ml当たり、1×106cfu/ml以上、好ましくは1×109cfu/ml以上の菌数となる条件で発酵工程を開始すると酵母発酵を確実に進めることができる。
【0035】
また、酵母は好気的条件で生育しやすいため、通気・攪拌を行いながら培養することもできる。通気培養する場合の通気の量と攪拌の条件は、培養の容量と時間、菌の初発濃度を考慮して、適宜決定することができる。例えば、通気は0.2~2VVM(Volume per volume per minut)程度、攪拌は50~800rpm程度を例示できる。
【0036】
麹菌は、麹をつくるための糸状菌の総称であり、カビの一種である。なお、麹(糀、こうじ)とは、米・麦・大豆などの穀物を蒸したものに麹菌を繁殖させたものである。麹菌はプロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼをはじめとする、多くの酵素を生成し、その酵素のはたらきによって、素材をやわらかくしたり、発酵食品の旨みや甘味を引き出したりするために用いられている。麹の中では前記酵素がそのまま残っていて、被発酵対象に麹を添加して発酵を行うことにより、前記酵素の作用により被発酵対象中のタンパク質、糖質、脂質が分解し、呈味成分が生成し、複雑でコクのある味わいが生じる。
【0037】
麹菌としては、例えば、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)、アスペルギルス・ソジャエ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)等が挙げられる。また、麹菌は、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0038】
なお、麹菌自体は水溶液中では増殖できないので、麹菌を使用する場合は、蒸留残渣に麹菌を混合し、適当な水分活性、温度、湿度、時間条件にて菌の増殖を行う。すなわち麹菌が効率よく生育する原料であればどのような原料でも用いることができる。培養後、得られた麹菌培養物(麹)をそのまま使用してもよいし、さらに必要に応じて遠心分離などによる粗精製、濾過等による固液分離、滅菌操作などを行ってもよい。
【0039】
麹は、当該麹菌の固体培養に通常用いられる蒸煮した原料を使用して、適当な条件下で固体培養することにより調製することができる。原料としては、穀物として米、麦(大麦、小麦、ライ麦及びオート麦)など、豆類として大豆など、イモ類としてサツマイモなど、さらには、ポテトデキストロース寒天培地などの公知の真菌用培地を用いて調製してもよく、さらには、本発明の工程(A)で得られた蒸留残渣、あるいは、本発明の工程(A)で得られた蒸留残渣に糖類などの他の原料を加えたものを使用しても良い。麹を使用する場合は、麹自体を調製することもできるが、市販で入手できる各種麹を用いることもできる。
【0040】
麹中の麹菌による発酵の条件は、麹に含まれている麹菌由来の酵素のうち、主として作用させようとする酵素(プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼなど)により異なってくるため一概にいえないが、例えば温度は15~60℃、好ましくは20~30℃とすることができ、pHは通常は3.5~7.0、特に好ましくはpH4.0~6.0とすることができ、発酵時間は1~144時間とすることができる。
【0041】
麹菌を使用する場合は、例えば工程(A)で得られる蒸留残渣、または、工程(A)で得られる蒸留残渣と適当な炭水化物源を混合し、これに種麹をふりかけ、ニーダーなどを用いて均一混合し、さらにトレイのような容器に適当に広げて空気との接触を良好な状態とし、温度28℃~40℃程度で、通常5時間~144時間程度、好ましくは12時間~120時間程度保持する。この際乾燥しないよう、時々水分を補給することが好ましい。また、塊とならないよう、時々ほぐすことが好ましい。
【0042】
前記乳酸菌、酵母、麹または麹菌による発酵処理は、蒸留残渣、蒸留残渣と溶媒の混合物または抽出液のいずれに対して行っても良い。また、乳酸菌、酵母、麹または麹菌による発酵処理はそれぞれ独立して行っても良く、また、順次行っても良い。これらの微生物による発酵は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0043】
また、前記発酵処理に際し、適当な酵素を併用することも可能である。使用する酵素は、植物原料に応じたものを使用すればよく、例えばセルラーゼ、ペクチナーゼ、へミセルラーゼ、アミラーゼ、タンナーゼ、プロテアーゼ、リパーゼなどが例示できる。また、原料がコーヒーの場合は特にマンナナーゼ、茶類であれば特にタンナーゼなどは好ましい酵素として例示できる。
【0044】
発酵処理後は加熱などにより殺菌および酵素失活し、スラリーを含む場合は固液分離および/または濾過し、発酵処理抽出液を得ることができる。加熱の条件は菌の種類、酵素の耐熱性(アミラーゼの中には耐熱性の高いものもある)などのより一概には設定できないが、通常は80℃~120℃、好ましくは85℃~110℃で、通常は30秒~30分、好ましくは1分~15分程度を例示できる。固液分離は、適当なフィルタープレス、遠心式ろ過機、濾紙にセルロールや珪藻土をコーティングした吸引または加圧濾過機などを用いて行うことができる。
【0045】
前記発酵処理抽出液は必要に応じて濃縮を行っても良い。濃縮方法としては例えば、減圧濃縮、逆浸透膜(RO膜)濃縮、凍結濃縮など適宜な濃縮手段を採用して濃縮することにより、水溶性溶媒の抽出液または発酵処理抽出液の濃縮物を得ることができる。濃縮液の濃度は、一般には、Bx2°~50°、好ましくは5°~40°の範囲内とすることができる。
【0046】
[工程(C):前記工程(B)で得られた発酵処理抽出液と、前記工程(A)で得られた留出液を混合する工程]
前記工程(B)で得られた発酵処理抽出液と、前記工程(A)で得られた留出液とを混合し、本発明の発酵植物エキスを得る。
【0047】
混合の比率は特に限定はなく、本発明の発酵植物エキスが添加される最終製品における本発明品の添加目的や、使用する原料などにより異なり、特に限定されないが、例えば、前記発酵処理抽出液1質量部あたり留出液を通常は0.001~100質量部、好ましくは、0.01~10質量部、より好ましくは0.1~1質量部の範囲内とすることができる。
【0048】
[工程(D):前記工程(A)で得られた留出液が、水相と油相とを含む場合において、水相と油相をそれぞれ分離し、水相部と油相部を得る工程]
水蒸気蒸留留出液にそもそも油相が生じていない場合(例えば、茶類やコーヒーなどでは揮発性成分の含有量は微量であり、低極性物質も含めて水相に溶解してしまうことが多い)、前記留出液は水相のみからなるため、水相部のみを、後の工程(C)(前記工程(B)で得られた抽出液と、前記工程(A)で得られた留出液を混合する工程)にそのまま使用することができる。
【0049】
しかしながら、特に、スパイス・ハーブ類などでは、精油を多く含むため、留出液が水相と油相とを含む場合がある。
【0050】
このような場合、留出液全体をそのまま後の工程(C)に供すると、本発明の発酵植物エキス中で油相部(精油)が分離してしまう可能性がある。そのため、前記工程(A)で得られた留出液が、水相と油相とを含む場合は、水相と油相を分離し、水相部と油相部を得、その特性に応じ、それぞれを利用することが好ましい。
【0051】
水相と油相の分離の方法としては、例えば静置によるデカンテーション分離、遠心分離法による分離、油水分離膜による分離などが例示できる。
【0052】
静置によるデカンテーション分離では、例えば、留出液を分液ロートに採取し、適当時間、例えば、通常5分~1週間程度、好ましくは30分~3日間、より好ましくは1時間~24時間程度静置し水相と油相が十分分離したところで、例えば下層(一般的には水相であることが多い)をロート下部より抜き取り、上層(一般的には油相、すなわち精油であることが多い)を、ロート自体を傾けて上部より取り出すか、上部からスポイト、ピペット、吸引ポンプなどで吸い取ることにより取り出し、それぞれ水相部と油相部を得ることができる。
【0053】
遠心分離による分離は、主に水相と油相がエマルジョンとなって分離しにくい場合に採用することができる。例えば、通常300G~20000G、好ましくは500G~10000G、より好ましくは800G~5000G程度の重力加速度で、通常1分~20分程度、好ましくは2分~10分程度処理を行い、それぞれ水相部と油相部を得ることができる。
【0054】
これらの水相部および油相部は、本発明品の発酵植物エキスが必要とする香気の質・強度、本発明品の発酵植物エキスが添加される最終製品における本発明品添加の目的などに応じ、いずれか一方を前記発酵処理抽出液と混合しても良いし両方を前記発酵処理抽出液と混合しても良い。
【0055】
[工程(E):前記工程(D)で得られた水相部のみを留出液として、前記工程(C)に供する工程]
前記留出液の油相部を使用せず、水相部のみを使用する場合は、前記水相部のみを、前記発酵処理抽出液に混合することができる。
【0056】
一般に、油相部は極性の低い揮発性成分から構成され、水相部には極性の高い揮発性成分が多く含まれる。したがって、水相部分と油相部分は含まれる香気成分の構成および比率が異なる。なお、極性の高い揮発性成分は、分子中における元素の構成として、酸素、硫黄、窒素を比較的多く含む化合物を多く含む場合が多く、極性の低い揮発性成分は、分子中における元素の構成として炭素および水素が主体で、酸素、硫黄、窒素の構成比率が低い化合物を多く含む場合が多い。したがって、これらの差が水相部と油相部の香気の違いとしても現れる。
【0057】
水相部の香気が、例えば植物原料素材の本来の香気と近いなど、水相部のみを使用しても、本発明の発酵植物エキス、さらには、その発酵植物エキスを配合した飲食品中において十分その香気を付与、再現等できる場合は、水相部のみを使用するという選択を行うことができる。
【0058】
発酵処理抽出液に対する、前記水相部の混合の比率は特に限定はなく、本発明の発酵植物エキスが添加される最終製品における本発明品の添加目的や、使用する原料などにより異なり、特に制限されないが、例えば、前記発酵処理抽出液1質量部あたり前記水相部を通常は0.001~1000質量部、好ましくは、0.01~100質量部、より好ましくは0.1~10質量部の範囲内とすることができる。
【0059】
また、前記水相部(または留出液が油相を含まない場合は、留出液全体)は吸着剤に吸着後、次いで有機溶媒で脱着することにより水相部の濃縮物としてから前記工程(C)に供することもできる。吸着剤としては、特に限定はなく、合成吸着剤、活性炭、活性白土、酸性白土、その他の吸着剤を用いることができるが、これらのうち合成吸着剤を用いることが、脱着が容易である観点から好ましい。合成吸着剤としては、スチレンジビニルベンゼン共重合体、エチルビニルベンゼンとジビニルベンゼン共重合体、2,6-ジフェニル-9-フェニルオキサイドの重合体、メタアクリル酸とジオールの重縮合ポリマーおよび修飾シリカゲルから選択される1以上であることが好ましい。修飾シリカゲルとは、シリカゲル表面のシラノール基の反応性を利用して、これに例えば、アルコール類、アミン類、シラン類などを化学結合させた化学結合型シリカゲルのことを言う。中でも、スチレンジビニルベンゼン共重合体が好ましい。吸着剤は、多孔性重合樹脂であることが好ましい。吸着剤の表面積が、例えば、約300m2/g以上であることが好ましく、約500m2/g以上であることがより好ましい。吸着剤の細孔分布が約10Å~約500Åであることが好ましい。
【0060】
吸着剤の形状は特に制限はないが、粒子状であることが好ましい。吸着剤が粒子状である場合の平均粒子直径は特に制限はなく、0.1~20mm、または0.1~1mmの範囲内が例示できるが、これらに限定されない。
【0061】
上記の条件に該当する多孔性重合樹脂としては、例えば、HP樹脂(三菱ケミカル(株)製)、スチレンジビニルベンゼン共重合体であるSP樹脂(三菱ケミカル(株)製)、XAD-4(ローム・ハース社製)などがあり、市場で容易に入手することができる。また、メタアクリル酸エステル系樹脂も、例えば、XAD-7およびXAD-8(ローム・ハース社製)などの商品として入手することができる。SP樹脂としては、セパビーズSP-70、SP-207を好ましく用いることができる。
【0062】
また、前記水相部を合成吸着剤に吸着させる処理手段としては、バッチ方式あるいはカラム方式のいずれも採用できるが、作業性の点からカラム方式を好ましく採用することができる。カラム方式で吸着させる方法としては、例えば、上記のような合成吸着剤を充填したカラムに、該吸着剤の10倍~1000倍の水相部をSV=1~100の流速で通液することにより、香気成分を吸着させることができる。次いで、香気成分の吸着した吸着剤を水洗した後、50~95重量%のエタノール溶液をSV=0.1~10の流速で通液し、該吸着剤に吸着されている香気成分を溶出させることにより水相部の濃縮物を得ることができる。
【0063】
[工程(F):前記工程(D)で得られた油相部を乳化し、油相部の乳化物を得る工程]
前記発酵処理抽出液と前記油相部との混合において、油相部は少量であれば、発酵処理抽出液の有する乳化力により均一に混合される場合もあるが、油相部を多く混合しようとする場合、発酵処理抽出液と油相部が分離してしまう可能性がある。
【0064】
このような場合、前記発酵処理抽出液と前記油相部を混合するに際し、油相部が発酵処理抽出液と均一に混合するようにするため、油相部を乳化(可溶化)してから混合することが好ましい。
【0065】
乳化の方法としては、例えば食品に一般的に用いられる乳化剤(可溶化剤)を使用することができ、乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、化工澱粉、キラヤサポニン、大豆サポニン、レシチン等を例示できる。
【0066】
なお、ポリグリセリン脂肪酸エステルを使用する場合は、精製ポリグリセリン脂肪酸エステルを使用することもできる。このようなものとしては精製ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化度が2.5未満、より好ましくは2.3未満、さらに好ましくは2未満であり、かつ、未反応ポリグリセリン含有量が5重量%未満、好ましくは1重量%未満となるよう精製したものが、好適に例示できる。なお、精製ポリグリセリン脂肪酸エステルの調製方法およびエステル化度の計算は、例えば、特許4512022号公報、特開2007-116930号公報、特開2008-079505号公報などに記載の方法を採用することができる。このような精製ポリグリセリン脂肪酸エステルの使用によって、各種飲料に配合したときに透明に溶解し、高温条件での保存、殺菌のための加熱などの過酷な条件を受けても、長期間にわたって十分な透明状態を維持できる。
【0067】
これらの乳化剤は単独で、あるいは、数種類を組み合わせて使用してもよい。
【0068】
前記油相部と乳化剤の割合は特に限定されないが、例えば、前記油相部1質量部に対し、乳化剤を、通常0.1~30質量倍、0.2~25質量倍、または1~6質量倍で配合することができる。
【0069】
また、必要に応じてアラビアガム、ベンゾインガム、ダンマル樹脂、グアガム、カラヤガム、トラガントガム、ローカストビーンガム、クインスシード、カンテン、澱粉等のガム質、カゼイン、ペクチン、デキストリン、エステルガム、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、プロマルジン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、ペプチド等の高分子化合物、SAIB(Sucrose Acetate Isobutyrate)などの比重調整剤、アスコルビン酸等の酸化防止剤を添加することができる。
【0070】
また、乳化に際し、乳化を補助するため、エタノールや、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトールなどの多価アルコール、糖類、水などを配合することもできる。
【0071】
また、乳化状態を安定化させるため、前記油相部に中鎖脂肪酸グリセリドなどの油脂を混合することもできる。
【0072】
乳化の方法は特に制限なく、例えば油相部の極性が比較的高い場合や、油相部に対し乳化剤の量が比較的多目である場合などは、ソルビタン脂肪酸エステルなどの乳化力の強い乳化剤やエタノールを用いる場合などは特に強く攪拌せずとも、前記油相部と前記乳化剤等を混合するだけで均一となる場合もある。
【0073】
また、コロイドミル、アジター、ホモジナイザーなど一般的に用いられている乳化機を用いて乳化することもできる。より具体的には、例えば、前記油相部と前記乳化剤等を混合し、T.K.ロボミックス(登録商標)(プライミクス社製)などの乳化機を用いて、約5000rpm~約10000rpmの回転数で、約5分~約20分間撹拌して乳化する。また、T.K.ロボミックスに代えて、これと同等もしくはそれ以上の乳化能力を有するものであれば、従来公知の高圧ホモジナイザー或いはコロイドミルなどの乳化機を用いて乳化処理してもよい。または、前記油相部と前記乳化剤等を混合し撹拌機などで混合して予備乳化し、得られた予備乳化液をホモミキサー、ホモジナイザーなどの乳化機を用いて高速撹拌して乳化すれば、乳化温度、撹拌速度、乳化時間などを調整することにより任意の平均粒子径(50~800nm程度)の油相部の乳化物を得ることができる。
【0074】
[工程(G):前記工程(F)で得られた油相部の乳化物を留出液として、前記工程(C)に供する工程]
前述の通り、留出液の水相部と油相部の香気の質・強度は異なることが一般的である。水相部にも油相部にも香気は含まれているため、いずれも発酵処理抽出液との混合に使用することができるが、必要に応じて油相部のみを使用こともできる。油相部は、前述の通り、油相部の乳化物として発酵処理抽出液に混合する。
【0075】
また、留出液の水相部と油相部は、必要に応じて、水相部と油相部の両方を使用することもできる。また、水相部、油相部の両方を使用する場合であっても、いずれも全量を使用せずに、適当量を使用することにより、所望とする香気の質・強度を有する発酵植物エキスを得ることができる。
【0076】
発酵処理抽出液に対する、前記油相部の乳化物の混合の比率は特に限定はなく、本発明の発酵植物エキスが添加される最終製品における本発明品の添加目的や、使用する原料などにより異なり、特に制限されないが、例えば、前記発酵処理抽出液1質量部あたり前記油相部の乳化物を通常は0.00001~1000質量部、好ましくは、0.0001~100質量部、より好ましくは0.001~10質量部の範囲内とすることができる。
【0077】
また、発酵処理抽出液に対する、前記水相部の混合の比率は特に限定はなく、本発明の発酵植物エキスが添加される最終製品における本発明品の添加目的や、使用する原料などにより異なり、特に制限されないが、例えば、前記発酵処理抽出液1質量部あたり前記水相部を通常は0.001~1000質量部、好ましくは、0.01~100質量部、より好ましくは0.1~10質量部の範囲内とすることができる。
【0078】
[加熱殺菌]
本発明の発酵植物エキスは、前記工程のいずれかの段階で加熱殺菌を行うことで微生物的に安定な発酵植物エキスとすることができる。
【0079】
好ましい箇所としては、前記発酵処理抽出液と留出液を混合し、容器への充填を行う前、または後が例示できる。
【0080】
加熱殺菌は、バッチ式、プレート式いずれで行っても良く、バッチ式であれば温度としては通常80℃~110℃、好ましくは85℃~105℃、より好ましくは90℃~100℃で、時間は通常30秒~60分、好ましくは1分~30分、より好ましくは2分~15分を例示することができる。また、プレート式では温度としては通常80℃~140℃、好ましくは85℃~135℃、より好ましくは90℃~130℃で、時間は通常達温(即冷却)~5分、好ましくは15秒~3分、より好ましくは30秒~2分を例示することができる。
【0081】
このようにして得られる本発明の植物エキスは、冷却後容器に充填するか、熱いまま容器に充填し冷却し、さらに冷蔵または冷凍して保存することもできる。
[飲食品への添加]
上記のようにして得られた本発明の発酵植物エキスは、各種飲食品に配合し、飲食品に対し、発酵による、酸味のある爽やかな香りと味、芳醇な酒のような香り、複雑でコクのある味わいの他、用いた植物原料が本来有するトップの香り立ちを付与することができる。また、発酵食品による健康促進効果が期待できる場合もある。
【0082】
発明の発酵植物エキスを添加することで発酵風味や素材の持つ植物原料本来の風味を付与、改良、または増強することができる飲食品としては、例えば、飲料、調味料、ドレッシング、冷菓、デザート、レトルト食品、畜肉加工食品、水産加工食品などを挙げることができる。これら飲食品に配合される本発明の発酵植物エキスの量は、飲食品の種類、形態などにより異なるが、一般的には飲食品全量に対して0.001~2質量%の範囲を例示することができる。これら飲食品の具体例として、コーラ飲料、果汁入り炭酸飲料、乳類入り炭酸飲料などの炭酸飲料類;果汁飲料、野菜飲料、スポーツドリンク、ハチミツ飲料、豆乳、ビタミン補給飲料、ミネラル補給飲料、栄養ドリンク、滋養ドリンク、乳酸菌飲料、乳飲料などのソフト飲料類;緑茶、紅茶、ウーロン茶、ハーブティー、ミルクティー、コーヒー飲料などの嗜好飲料類;チューハイ、カクテルドリンク、発泡酒、果実酒、薬味酒などのアルコール飲料類;バター、チーズ、ミルク、ヨーグルトなどの乳製品;アイスクリーム、ラクトアイス、氷菓、ヨーグルト、プリン、ゼリー、デイリーデザートなどのデザート類およびそれらを製造するためのミックス類;キャラメル、キャンディー、錠菓、クラッカー、ビスケット、クッキー、パイ、チョコレート、スナックなどの菓子類およびそれらを製造するためのケーキミックスなどのミックス類;パン、スープ、各種インスタント食品などの一般食品類;歯磨きなどの口腔用組成物;などを挙げることができる。
【0083】
具体例を示すと、果実風味飲食品または糖酸水などのシロップに、適宜水溶性香料も併用のうえ、本発明の発酵植物エキスを0.001~10質量%、好ましくは0.01~5質量%程度配合することにより、その植物原料に由来する発酵風味やその植物原料の持つ本来の風味を付与することができる。
【実施例0084】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明の具体的態様を詳しく説明するが、本発明の本質は前記開示した技術的思想にあるのであり、実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の記載中に割合を示す数字がある場合は、質量基準の割合を意味する。
【0085】
(実施例1)乾燥ジンジャーの発酵エキス(水蒸気蒸留留出液の水相部+油相部配合)
乾燥ジンジャー(中国産)薄切り400gを3Lステンレスカラムに充填し、水蒸気をカラム下部より吹き込み、カラム上部から得られるジンジャーの揮発性成分を含んだ水蒸気を冷却管(水道水冷却、約20℃)により凝縮し、約1時間かけて、ジンジャーの揮発性成分を含んだ留出液408g(対ジンジャー102%)および蒸留残渣を得た。
【0086】
得られた留出液は分液ロートに採取し、常温で一夜(約18時間)静置し、水相と油相をデカンテーション分離し、水相部399.6g(Bx1.1、pH4.0)および油相部(精油)0.91gを得た。
【0087】
油相部(精油)0.91gに中鎖脂肪酸トリグリセライド3.64g(対油相部4倍量)を混合し乳化用オイル相部とした。これとは別にグリセリン10.92g(対油相部12倍量)、デカグリセリンモノオエート(HLB12)3.64g(対油相部4倍量)および精製水3.64g(対油相部4倍量)を混合し乳化用水相部とした。乳化用オイル相部と乳化用水相部を混合し、T.K.ロボミックス(プライミクス社製)により8000rpmで10分間撹拌しながら混合し、油相部(精油)の乳化物20.5g(処方合計量22.75g)を得た。
【0088】
一方、蒸留残渣は、水蒸気蒸留終了後、直ちに熱水(93~97℃)2000g(対乾燥ジンジャー5倍)をカラム上部より投入し、カラムジャケットを常圧水蒸気で加温しながら45分間、浸漬抽出した。次いで抽出液を約15分間要して抜き取った。抜き取った抽出液は即冷却して28~30℃とし、200メッシュ濾過した(抽出液収量1124.5g、Bx5.0、pH5.0)。抽出液は水を加え、Bx4.0を目標にBx調整を行った(水280g添加、水添加後抽出液量1404.5g、Bx4.0、pH5.1)。次いで、6倍濃縮透明レモン果汁14g(対抽出液1%)を添加した(添加後のpH3.55)。これに、乳酸菌Lactiplantibacillus plantarum の種菌を1×107cfu/mlとなるように添加し、よく攪拌して混合した後、30±2℃で20時間静置して発酵処理した(発酵終了目標のpH4.0以下、20時間静置後のBx3.6、pH3.7)。次いで、80±2℃で10分間加熱殺菌した後25℃まで冷却した。次いで1200×Gにて10分間遠心分離処理を行い、沈殿物を除去し、濾紙にセルロース粉末とケイソウ土1:1でコーティングしたヌッチェで吸引濾過を行い、濾過液1356.7gを得た(Bx2.83)。濾過液は水にてBx2.6に調整し、発酵処理抽出液とした(1478.9g、Bx2.6、pH3.6)。
【0089】
これらの、発酵処理抽出液、留出液(水相部)および留出液(油相部の乳化物)は発酵処理抽出液:留出液(水相部):留出液(油相部の乳化物)=64:32:1の割合で使用し、以下の混合・殺菌工程を行い、発酵植物エキスとした。
【0090】
前記発酵処理抽出液799.2gと留出液(水相部)399.6g(全量使用)を混合し、バッチ式で90℃達温(殺菌)後、即冷却し、77(±)3℃となったところで、留出液(油相部の乳化物)12.5gを添加混合する。30℃以下まで冷却後、200メッシュサランにて濾過し、容器に充填し、本発明品1の発酵ジンジャーエキス1200gを得た(pH3.7、対乾燥ジンジャー収率300%)。
【0091】
(実施例2)(水蒸気蒸留留出液の水相部のみ配合)
実施例1と同様に乾燥ジンジャー(中国産)薄切り400gを処理し、発酵処理抽出液、留出液(水相部)および留出液(油相部の乳化物)を得た。
【0092】
これらの、発酵処理抽出液および留出液(水相部)を発酵処理抽出液:留出液(水相部)=2:1の割合で使用し、以下の量を混合・殺菌工程を行い、発酵植物エキスとした。
【0093】
前記発酵処理抽出液799.2gと留出液(水相部)399.6g(全量使用)を混合し、バッチ式で90℃達温(殺菌)後、即冷却し、30℃以下まで冷却後、200メッシュサランにて濾過し、容器に充填し、本発明品2の発酵ジンジャーエキス1190gを得た(pH3.7、対乾燥ジンジャー収率297.5%)。
【0094】
(実施例3)(水蒸気蒸留留出液の油相部のみ配合)
実施例1と同様に乾燥ジンジャー(中国産)薄切り400gを処理し、発酵処理抽出液、留出液(水相部)および留出液(油相部の乳化物)を得た。
【0095】
これらの、発酵処理抽出液および留出液(水相部)を発酵処理抽出液:留出液(油相の乳化物)=64:1の割合で使用し、以下の量を混合・殺菌工程を行い、発酵植物エキスとした。
【0096】
前記発酵処理抽出液1456.0gをバッチ式で90℃達温(殺菌)後、即冷却し、77(±)3℃となったところで、留出液(油相部の乳化物)22.75g(全量)を添加混合する。30℃以下まで冷却後、200メッシュサランにて濾過し、容器に充填し、本発明品3の発酵ジンジャーエキス1470gを得た(pH3.7、対乾燥ジンジャー収率367.5%)。
【0097】
(比較例1)乾燥ジンジャーの発酵エキス(水蒸気蒸留を行わないもの)
乾燥ジンジャー(中国産)薄切り(実施例1で使用したのと同じ原料)400gを3Lステンレスカラムに充填し、カラムジャケットを常圧水蒸気で加温しながら、熱水(93~97℃)2000g(対乾燥ジンジャー5倍)をカラム上部より投入し、引き続きカラムジャケットを常圧水蒸気で加温しながら45分間、浸漬抽出した。次いで抽出液を約15分間要して抜き取った。抜き取った抽出液は即冷却し28~30℃とし、200メッシュ濾過した(抽出液収量1110.3g、Bx4.9、pH5.1)。抽出液は水を加え、Bx4.0を目標にBx調整を行った(水244.3g添加、水添加後抽出液量1354.5g、Bx4.0、pH5.2)。これに、乳酸菌Lactiplantibacillus plantarum の種菌を1×107cfu/mlとなるように添加し、よく攪拌して混合した後、30±2℃で20時間静置して発酵処理した(発酵終了目標のpH4.0以下、20時間静置後のpH3.7、Bx3.5)。次いで、80±2℃で10分間加熱殺菌した後25℃まで冷却した。次いで、6倍濃縮透明レモン果汁13.5g(対抽出液1%)を添加した(添加後のpH3.4)。次いで1200×Gにて10分間遠心分離処理を行い、沈殿物を除去し、濾紙にセルロース粉末とケイソウ土1:1でコーティングしたヌッチェで吸引濾過を行い、濾過液1338.6gを得た(Bx2.8)。濾過液は水にてBx2.6に調整し、発酵処理抽出液とした(1455.9g、Bx2.6、pH3.6)。発酵処理抽出液はバッチ式で90℃達温(殺菌)後、即冷却し、30℃以下まで冷却後、200メッシュサランにて濾過し、容器に充填し、比較品1の発酵ジンジャーエキス1440gを得た(Bx2.58、pH3.60、対乾燥ジンジャー収率360%)。
【0098】
(比較例2)(発酵処理も水蒸気蒸留も行わないもの)
乾燥ジンジャー(中国産)薄切り(実施例1で使用したのと同じ原料)400gを3Lステンレスカラムに充填し、カラムジャケットを常圧水蒸気で加温しながら、熱水(93~97℃)2000g(対乾燥ジンジャー5倍)をカラム上部より投入し、引き続きカラムジャケットを常圧水蒸気で加温しながら45分間、浸漬抽出した。次いで抽出液を約15分間要して抜き取った。抜き取った抽出液は即冷却し28~30℃とし、200メッシュ濾過した(抽出液収量1110.3g、Bx4.9、pH5.1)。抽出液は水を加え、Bx4.0を目標にBx調整を行った(水244.3g添加、水添加後抽出液量1354.5g、Bx4.0、pH5.2)。次いで、6倍濃縮透明レモン果汁13.5g(対抽出液1%)を添加した(添加後のpH4.55)。次いで1200×Gにて10分間遠心分離処理を行い、沈殿物を除去し、濾紙にセルロース粉末とケイソウ土1:1でコーティングしたヌッチェで吸引濾過を行い、濾過液1338.6gを得た(Bx3.9)。濾過液は水にてBx3.6に調整し(1442.7g、Bx3.6、pH3.9)バッチ式で90℃達温(殺菌)後、即冷却し、30℃以下まで冷却後、200メッシュサランにて濾過し、容器に充填し、比較品2の非発酵ジンジャーエキス1440gを得た(pH3.9、対乾燥ジンジャー収率360%)。
【0099】
(実施例4)官能評価
下記表1に示す処方にて、本発明品1~3、比較品1および比較品2を用いたジンジャーエール飲料を調製し、10名のパネリストにより官能評価を行った。それぞれの飲料の評価基準は、発酵感、コク、酸味のさわやかさ、辛味、ジンジャーのトップの香りの5項目について、比較品1の発酵感を5点、比較品2の発酵感を0点、比較品2の発酵感以外の項目を5点を基準とし、非常に強い:10点、強い:8点、やや強い:6点、やや弱い:4点、弱い:2点、非常に弱い:0点とした。また、それぞれ飲料について、自由コメントを記載した。その結果(平均点)を表2に示す。なお自由コメントはパネリストの平均的な内容をまとめたものである。
【0100】
【0101】
【0102】
表2に示した通り、本発明品1~3はいずれも比較品2よりも発酵感が強く、発酵処理を行っている比較品1よりもさらに発酵感が強く、コクも強く良好であった。これは、ジンジャーの香気成分が除かれたことにより、発酵がより進みやすくなったためと推定される。比較品1は比較品2と比べ、ジンジャーのトップの香りが弱いが、これは発酵処理によりトップの香気がぼやけてしまったことによると考えられる。本発明品1~3はそれぞれ香気の質はやや異なるが、いずれも比較品2および比較品1よりもジンジャーのトップの香りが強く、ジンジャーらしい風味を感じさせるものであった。特に、水蒸気蒸留留出液の水相部と油相部の乳化物の両方を使用した本発明品1は、ジンジャーのトップの香りが非常に強く、また、さわやかで良好であった。
【0103】
(実施例5)レモンピールの乳酸菌発酵エキス(水蒸気蒸留留出液の水相部+油相部配合)
レモンゼスト(スペイン産の、ワックスがけしていないレモンのピール表面をすりおろしたもの、冷凍品、ラビフュルイ社製)500gを冷凍のまま3Lステンレスカラムに充填し、水蒸気をカラム下部より吹き込み、カラム上部から得られるレモンピールの揮発性成分を含んだ水蒸気を冷却管(水道水冷却、約20℃)により凝縮し、約1時間かけて、レモンピールの揮発性成分を含んだ留出液525g(対レモンゼスト105%)および蒸留残渣を得た。
【0104】
得られた留出液は分液ロートに採取し、常温で一夜(約18時間)静置し、水相と油相をデカンテーション分離し、水相部500gおよび油相部(精油)3.3gを得た。油相部(精油)3.3gに中鎖脂肪酸トリグリセライド9.9g(対油相部3倍量)を混合し乳化用オイル相部とした。これとは別にグリセリン33.0g(対油相部10倍量)、デカグリセリンモノオエート(HLB12)13.2g(対油相部4倍量)および精製水9.9g(対油相部3倍量)を混合し乳化用水相部とした。乳化用オイル相部と乳化用水相部を混合し、T.K.ロボミックス(プライミクス社製)により8000rpmで10分間撹拌しながら混合し、油相部(精油)の乳化物65.3g(処方合計量69.3g)を得た。
【0105】
一方、蒸留残渣は、水蒸気蒸留終了後、直ちに熱水(80±2℃)500g(対レモンゼスト等量)をカラム上部より投入しながら、カラム下部より抽出液を約15分間要して抜き取った。抜き取った抽出液は即冷却し45±2℃まで冷却し、80メッシュ濾過し、抽出液709.2g(水蒸気蒸留時のドリップを含むため、抽出液収量は、熱水仕込み量よりも多い)を得た。抽出液はBx4.5、pH3.5であった。
【0106】
次いで、この抽出液にスミチームSPG(新日本化学工業社製のペクチナーゼ)0.32g(抽出液のBx計算による可溶性固形分の1%)を添加し、45±2℃にて1時間攪拌して酵素反応を行った後、除菌水を用いてBxを4.0に調整した(除菌水88.7g添加、添加後抽出液量797.9g、Bx4.0、pH3.6)。
【0107】
30%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pHを5.0に調整した後、80±2℃にて10分間加熱殺菌後、30±2℃まで冷却した。これに、乳酸菌Lactiplantibacillus plantarum の種菌を6×106cfu/mlとなるように添加し、よく攪拌して混合した後、30±2℃で20時間静置して発酵処理した(発酵終了目標のpH4.0以下、20時間静置後のBx4.1、pH3.7)。次いで、80±2℃で10分間加熱殺菌した後25℃まで冷却した。次いで1200×Gにて10分間遠心分離処理を行い、沈殿物を除去し、濾紙にケイソウ土でコーティングしたヌッチェで吸引濾過を行い、濾過液677.7gを得た(Bx3.9、pH3.6)。次いで除菌水を用いてBxを3.0に調整した(除菌水203.3g添加、添加後抽出液量881.0g、Bx3.0、pH3.6)。
【0108】
これらの、発酵処理抽出液、留出液(水相部)および留出液(油相部の乳化物)は発酵処理抽出液:留出液(水相部):留出液(油相部の乳化物)=60:60:1の割合で使用し、以下の混合・殺菌工程を行い、発酵レモンピールエキスとした。
【0109】
前記発酵処理抽出液500gと留出液(水相部)500gを混合し、アスコルビン酸ナトリウムを0.1g(対混合液0.01%)加え、バッチ式で90℃達温(殺菌)後、即冷却し、77(±)3℃となったところで、留出液(油相部の乳化物)8.33gを添加混合する。30℃以下まで冷却後、200メッシュサランにて濾過し、容器に充填し、本発明品4の発酵レモンピールエキス1000gを得た(Bx2.1、pH3.9、対レモンゼスト収率200%)。
【0110】
(実施例6)レモンピールの酵母発酵エキス(水蒸気蒸留留出液の水相部+油部配合)
実施例5と同様の操作により、レモンゼスト(スペイン産のワックスがけしていないレモンのピール表面をすりおろしたもの、冷凍品、ラビフュルイ社製)500gから、蒸留残渣、水蒸気蒸留留出液の水相部500gおよび油相部の乳化物(可溶化物)69.3gを得た。
【0111】
蒸留残渣は、実施例5と同様に抽出し、抽出液709.2gを得た(Bx4.5、pH3.5)。
【0112】
次いで、この抽出液にスミチームSPG(新日本化学工業社製のペクチナーゼ)0.32g(抽出液のBx計算による可溶性固形分の1%)を添加し、45±2℃にて1時間攪拌して酵素反応を行った後、除菌水を用いてBxを4.0に調整した(除菌水81.6g添加、添加後抽出液量790.8g、Bx4.0、pH3.6)。
【0113】
30%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pHを3.8に調整した後、80±2℃にて10分間加熱殺菌後、30±2℃まで冷却した。これに、酵母Saccharomyces cerevisiae の種菌(2×109個/g)0.237g(抽出液のBx計算による可溶性固形分の0.75%)を2.37g(対酵母種菌10倍量)の水に懸濁して添加し、よく攪拌して混合した後、30±2℃で20時間静置して発酵処理した(20時間静置後のpH3.7、Bx2.8、エタノール0.85%)。次いで、80±2℃で10分間加熱殺菌した後25℃まで冷却した。次いで1200×Gにて10分間遠心分離処理を行い、沈殿物を除去し、濾紙にケイソウ土でコーティングしたヌッチェで吸引濾過を行い、濾過液662.3gを得た(Bx2.7、pH3.8)。次いで除菌水を用いてBxを2.0に調整した(除菌水241.7g添加、添加後抽出液量904.0g、Bx2.0、pH3.8)。
【0114】
これらの、発酵処理抽出液、留出液(水相部)および留出液(油相部の乳化物)は発酵処理抽出液:留出液(水相部):留出液(油相部の乳化物)=60:60:1の割合で使用し、以下の混合・殺菌工程を行い、発酵レモンピールエキスとした。
【0115】
前記発酵処理抽出液500gと留出液(水相部)500gを混合し、アスコルビン酸ナトリウムを0.1g(対混合液0.01%)加え、バッチ式で90℃達温(殺菌)後、即冷却し、77(±)3℃となったところで、留出液(油相部の乳化物)8.33gを添加混合する。30℃以下まで冷却後、200メッシュサランにて濾過し、容器に充填し、本発明品5の発酵レモンピールエキス1000gを得た(pH4.3、対レモンゼスト収率200%)。
【0116】
(比較例3)レモンピールの乳酸菌発酵エキス(水蒸気蒸留を行わないもの)
レモンゼスト(スペイン産のワックスがけしていないレモンのピール表面をすりおろしたもの、冷凍品、ラビフュルイ社製)500gを冷凍のまま3Lステンレスカラムに充填し、カラムのジャケットをスチーム加熱しながら、熱水(80±2℃)1000g(対レモンゼスト2倍量)をカラム上部より投入しながら、カラム下部より抽出液を約15分間要して抜き取った。抜き取った抽出液は即冷却し45±2℃まで冷却し、80メッシュ濾過し、抽出液715.8gを得た。抽出液はBx4.4、pH3.5であった。
【0117】
次いで、この抽出液にスミチームSPG(新日本化学工業社製のペクチナーゼ)0.32g(抽出液のBx計算による可溶性固形分の1%)を添加し、45±2℃にて1時間攪拌して酵素反応を行った後、除菌水を用いてBxを4.0に調整した(除菌水76.9g添加、添加後抽出液量792.7g、Bx4.0、pH3.6)。
【0118】
30%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pHを5.0に調整した後、80±2℃にて10分間加熱殺菌後、30±2℃まで冷却した。これに、乳酸菌Lactiplantibacillus plantarum の種菌を6×106cfu/mlとなるように添加し、よく攪拌して混合した後、30±2℃で20時間静置して発酵処理した(発酵終了目標のpH4.0以下、20時間静置後のpH3.7、Bx4.1)。次いで、80±2℃で10分間加熱殺菌した後25℃まで冷却した。次いで1200×Gにて10分間遠心分離処理を行い、沈殿物を除去し、濾紙にケイソウ土でコーティングしたヌッチェで吸引濾過を行い、濾過液685.3gを得た(Bx3.9、pH3.6)。次いで除菌水を用いてBxを3.0に調整した(除菌水205.6g添加、添加後抽出液量890.9g、Bx3.0、pH3.6)。これにアスコルビン酸ナトリウムを0.89g(対抽出液1%)加え、バッチ式で90℃達温(殺菌)後、即冷却し30℃以下まで冷却後、200メッシュサランにて濾過し、容器に充填し、比較品3の発酵レモンピールエキス880gを得た(pH3.9、対レモンゼスト収率176%)。
【0119】
(比較例4)レモンピールの酵母発酵エキス(水蒸気蒸留を行わないもの)
レモンゼスト(スペイン産のワックスがけしていないレモンのピール表面をすりおろしたもの、冷凍品、ラビフュルイ社製)500gを冷凍のまま3Lステンレスカラムに充填し、カラムのジャケットをスチーム加熱しながら、熱水(80±2℃)1000g(対レモンゼスト2倍量)をカラム上部より投入しながら、カラム下部より抽出液を約15分間要して抜き取った。抜き取った抽出液は即冷却し45±2℃まで冷却し、80メッシュ濾過し、抽出液715.8gを得た。抽出液はBx4.4、pH3.5であった。
【0120】
次いで、この抽出液にスミチームSPG(新日本化学工業社製のペクチナーゼ)0.32g(抽出液のBx計算による可溶性固形分の1%)を添加し、45±2℃にて1時間攪拌して酵素反応を行った後、除菌水を用いてBxを4.0に調整した(除菌水81.6g添加、添加後抽出液量790.8g、Bx4.0、pH3.6)。
【0121】
30%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pHを3.8に調整した後、80±2℃にて10分間加熱殺菌後、30±2℃まで冷却した。これに、酵母Saccharomyces cerevisiae の種菌(2×109個/g)0.237g(抽出液のBx計算による可溶性固形分の0.75%)を2.37g(対酵母種菌10倍量)の水に懸濁して添加し、よく攪拌して混合した後、30±2℃で20時間静置して発酵処理した(20時間静置後のpH3.7、Bx2.8、エタノール0.85%)。次いで、80±2℃で10分間加熱殺菌した後25℃まで冷却した。次いで1200×Gにて10分間遠心分離処理を行い、沈殿物を除去し、濾紙にケイソウ土でコーティングしたヌッチェで吸引濾過を行い、濾過液660.3gを得た(Bx2.7、pH3.8)。次いで除菌水を用いてBxを2.0に調整した(除菌水231.1g添加、添加後抽出液量891.4g、Bx2.0、pH3.8)。これに、アスコルビン酸ナトリウムを0.089g(対混合液0.01%)加え、バッチ式で90℃達温(殺菌)後、即冷却し、30℃以下まで冷却後、200メッシュサランにて濾過し、容器に充填し、比較品4の発酵レモンピールエキス880gを得た(pH4.3、対レモンゼスト収率176%)。
【0122】
(比較例5)レモンピールエキス(水蒸気蒸留なし、発酵処理なし)
レモンゼスト(スペイン産のワックスがけしていないレモンのピール表面をすりおろしたもの、冷凍品、ラビフュルイ社製)500gを冷凍のまま3Lステンレスカラムに充填し、カラムのジャケットをスチーム加熱しながら、熱水(80±2℃)1000g(対レモンゼスト2倍量)をカラム上部より投入しながら、カラム下部より抽出液を約15分間要して抜き取った。抜き取った抽出液は即冷却し45±2℃まで冷却し、80メッシュ濾過し、抽出液715.8gを得た。抽出液はBx4.4、pH3.5であった。
【0123】
次いで、この抽出液にスミチームSPG(新日本化学工業社製のペクチナーゼ)0.32g(抽出液のBx計算による可溶性固形分の1%)を添加し、45±2℃にて1時間攪拌して酵素反応を行った後、除菌水を用いてBxを4.0に調整した(除菌水81.6g添加、添加後抽出液量790.8g、Bx4.0、pH3.6)。
【0124】
次いで、80±2℃で10分間加熱殺菌した後25℃まで冷却した。次いで1200×Gにて10分間遠心分離処理を行い、沈殿物を除去し、濾紙にケイソウ土でコーティングしたヌッチェで吸引濾過を行い、濾過液725.4gを得た(Bx3.90、pH3.8)。
次いで除菌水を用いてBxを3.0に調整した(除菌水217.6g添加、添加後抽出液量943.0g、Bx3.0、pH3.6)。これにアスコルビン酸ナトリウムを0.094g(対抽出液0.01%)加え、バッチ式で90℃達温(殺菌)後、即冷却し30℃以下まで冷却後、200メッシュサランにて濾過し、容器に充填し、比較品5のレモンピールエキス940gを得た(pH3.6、対レモンゼスト収率188%)。
【0125】
(実施例7)官能評価
下記表3に示す処方にて、本発明品4、5および比較品3~5を用いたレモン飲料(チューハイ)を調製し、官能評価を行った。
【0126】
【0127】
[レモンピール乳酸菌発酵品の官能評価]
乳酸菌発酵についての、それぞれの飲料の評価基準は、発酵感、コク、酸味のさわやかさ、レモンのトップの香りの4項目について、比較品5の発酵感を0点、比較品5の発酵感以外の項目を、5点を基準とし、比較品3の発酵感以外の項目を、5点を基準とし、非常に強い:10点、強い:8点、やや強い:6点、やや弱い:4点、弱い:2点、非常に弱い0点とし、10名のパネリストにより官能評価を行った。また、それぞれ飲料について、自由コメントを記載した。その結果を表4に示す。なお自由コメントはパネリストの平均的な内容をまとめたものである。
【0128】
【0129】
表4に示した通り、本発明品4は、比較品5よりも発酵感が強く、発酵処理を行っている比較品3よりもさらに発酵感が強く、コクも強く良好であった。これは、レモンの香気成分が除かれたことにより、発酵がより進みやすくなったためと推定される。比較品3は比較品5と比べ、レモンのトップの香りが弱いが、これは発酵処理によりトップの香気がぼやけてしまったことによると思われる。本発明品4は、比較品5および比較品1よりもレモンの香りが非常に強く、また、さわやかで良好であった。
【0130】
[レモンピール酵母発酵品の官能評価]
酵母発酵についての、それぞれの飲料の評価基準は、発酵感、コク、酸味のさわやかさ、レモンのトップの香りの4項目について、比較品5の発酵感を0点、比較品5の発酵感以外の項目を、5点を基準とし、比較品4の発酵感以外の項目を、5点を基準とし、非常に強い:10点、強い:8点、やや強い:6点、やや弱い:4点、弱い:2点、非常に弱い0点とし、10名のパネリストにより官能評価を行った。また、それぞれ飲料について、自由コメントを記載した。その結果を表5に示す。なお自由コメントはパネリストの平均的な内容をまとめたものである。
【0131】
【0132】
表5に示した通り、本発明品5は、比較品5よりも発酵感が強く、発酵処理を行っている比較品4よりもさらに発酵感が強く、コクも強く良好であった。これは、レモンの香気成分が除かれたことにより、発酵がより進みやすくなったためと推定される。比較品4は比較品5と比べ、レモンのトップの香りが弱いが、これは発酵処理によりトップの香気がぼやけてしまったことによると思われる。本発明品5は、比較品5および比較品4よりもレモンの香りが非常に強く、また、さわやかで良好であった。
【0133】
(実施例8)赤唐辛子(カプシカム)の乳酸菌発酵エキス(水蒸気蒸留留出液配合)
乾燥赤唐辛子みじん切り(メキシコ産)500gを3Lステンレスカラムに充填し、水蒸気をカラム下部より吹き込み、カラム上部から得られるトウガラシの揮発性成分を含んだ水蒸気を冷却管(水道水冷却、約20℃)により凝縮し、約1時間かけて、トウガラシの揮発性成分を含んだ留出液500g(対唐辛子100%)および蒸留残渣を得た。
【0134】
得られた留出液は、油相(精油)は分離していなかった(浮いていなかった)ためそのまま使用した。
【0135】
一方、蒸留残渣は、水蒸気蒸留終了後、水(30±2℃)1000g(対唐辛子2倍量)をカラム上部より投入し、さらに、乳酸菌Lactiplantibacillus plantarum の種菌5×109cfuを添加し、よく攪拌して混合した後、30±2℃で20時間静置して発酵処理した。次いで、カラム下部より抽出液を約15分間要して抜き取った(抽出液収量785.2g、Bx15.2、pH3.8)。抜き取った抽出液は90℃達温加熱殺菌後、即冷却し25±2℃まで冷却し、80メッシュ濾過し、抽出液780.2gを得た。抽出液はBx14.5、pH3.8であった。次いで1200×Gにて10分間遠心分離処理を行い、沈殿物を除去し、濾紙にケイソウ土でコーティングしたヌッチェで吸引濾過を行い、濾過液745.3gを得た(Bx13.9、pH3.8)。次いで除菌水を用いてBxを10.0に調整した(除菌水290.7g添加、添加後抽出液量1036.0g、Bx10.0、pH3.6)。
【0136】
これらの、発酵処理抽出液および留出液は発酵処理抽出液:留出液=2:1の割合で使用し、以下の混合・殺菌工程を行い、発酵赤唐辛子エキスとした。
【0137】
前記発酵処理抽出液1000gと留出液500gを混合し、アスコルビン酸ナトリウムを0.15g(対混合液0.01%)加え、バッチ式で90℃達温(殺菌)後、即冷却し、30℃以下まで冷却後、200メッシュサランにて濾過し、容器に充填し、本発明品6の発酵唐辛子エキス1500gを得た(Bx6.8、pH3.9、対唐辛子収率150%)。
【0138】
本発明品6の発酵唐辛子エキスを5%砂糖水溶液に1%添加して飲用したところ、さわやかな酸味、発酵感を有するとともに、唐辛子本来の辛そうなイメージの香りを有していた。
【0139】
(実施例9)ジュニパーベリーの酵母発酵エキス(水蒸気蒸留留出液配合)
乾燥ジュニパーベリー500gをミキサーにて粉砕し、3Lステンレスカラムに充填し、水蒸気をカラム下部より吹き込み、カラム上部から得られるジュニパーベリーの揮発性成分を含んだ水蒸気を冷却管(水道水冷却、約20℃)により凝縮し、約1時間かけて、ジュニパーベリーの揮発性成分を含んだ留出液500g(対ジュニパーベリー100%)および蒸留残渣を得た。
【0140】
得られた留出液は分液ロートに採取し、常温で一夜(約18時間)静置し、水相と油相をデカンテーション分離し、水相部490.5g(Bx0.3、pH4.5)および油相部(精油)1.5gを得た。油相部(精油)1.5gに中鎖脂肪酸トリグリセライド6.0g(対油相部4倍量)を混合し乳化用オイル相部とした。これとは別にグリセリン30.0g(対油相部20倍量)、デカグリセリンモノオエート(HLB12)9.0g(対油相部6倍量)および精製水9.0g(対油相部6倍量)を混合し乳化用水相部とした。乳化用オイル相部と乳化用水相部を混合し、T.K.ロボミックス(プライミクス社製)により8000rpmで10分間撹拌しながら混合し、油相部(精油)の乳化物52.3g(処方合計量55.5g)を得た。
【0141】
一方、蒸留残渣は、水蒸気蒸留終了後、水1500g(対ジュニパーベリー300%)とともに攪拌釜に移し、温度が45℃となったところで、スミチームSPG(新日本化学工業社製のペクチナーゼ)0.5g(対ジュニパーベリー0.1%)を添加し、45±2℃にて1時間攪拌して酵素反応を行った(pH3.6)。
【0142】
30%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pHを3.8に調整した後、80±2℃にて10分間加熱殺菌後、30±2℃まで冷却した。これに、酵母Saccharomyces cerevisiae の種菌(2×109個/g)0.25g(対ジュニパーベリー0.05%)を2.5g(対酵母10倍量)の水に懸濁して添加し、よく攪拌して混合した後、30±2℃で20時間静置して発酵処理した(20時間静置後のpH3.7)。次いで、80±2℃で10分間加熱殺菌した後25℃まで冷却した。次いで、脱水機型遠心分離機にて固液分離し、抽出液(1356.2g、Bx12.3、pH3.6)を得た。抽出液を1200×Gにて10分間遠心分離処理を行い、沈殿物を除去し、濾紙にケイソウ土でコーティングしたヌッチェで吸引濾過を行い、濾過液1156.3gを得た(Bx11.8、pH3.7)。次いで除菌水を用いてBxを10に調整した(除菌水268.9g添加、添加後抽出液量1422.2g、Bx10.0、pH3.6)。
【0143】
これらの、発酵処理抽出液、留出液(水相部)および留出液(油相部の乳化物)は発酵処理抽出液:留出液(水相部):留出液(油相部の乳化物)=200:100:9の割合で使用し、以下の混合・殺菌工程を行い、発酵ジュニパーベリーエキスとした。
【0144】
前記発酵処理抽出液980gと留出液(水相部)490gを混合し、アスコルビン酸ナトリウムを0.147g(対混合液0.01%)加え、バッチ式で90℃達温(殺菌)後、即冷却し、77(±)3℃となったところで、留出液(油相部の乳化物)44.1を添加混合した。30℃以下まで冷却後、200メッシュサランにて濾過し、容器に充填し、本発明品7の発酵ジュニパーベリーエキス1500gを得た(pH3.9、対乾燥ジュニパーベリー収率300%)。
【0145】
本発明品7の発酵ジュニパーベリーエキスを水に0.3%添加して飲用したところ、発酵感を有するとともに、ジュニパー(ジン)本来のウッディーでフレッシュな香りを有していた。
【0146】
(実施例10)ブラックペッパーの麹菌および酵母発酵エキス(水蒸気蒸留留出液配合)
乾燥ブラックペッパー500g(粗挽き、約2mm)を3Lステンレスカラムに充填し、水蒸気をカラム下部より吹き込み、カラム上部から得られるブラックペッパーの揮発性成分を含んだ水蒸気を冷却管(水道水冷却、約20℃)により凝縮し、約1時間かけて、ブラックペッパーの揮発性成分を含んだ留出液525g(対ブラックペッパー105%)および蒸留残渣を得た。
【0147】
得られた留出液は分液ロートに採取し、常温で一夜(約18時間)静置し、水相と油相をデカンテーション分離し、水相部500g(Bx0.8、pH4.2)および油相部(精油)9.8gを得た。
【0148】
油相部(精油)9.8gに中鎖脂肪酸トリグリセライド39.2g(対油相部4倍量)を混合し乳化用オイル相部とした。これとは別にグリセリン117.6g(対油相部12倍量)、デカグリセリンモノオエート(HLB12)39.2g(対油相部4倍量)および精製水39.2g(対油相部4倍量)を混合し乳化用水相部とした。乳化用オイル相部と乳化用水相部を混合し、T.K.ロボミックス(プライミクス社製)により8000rpmで10分間撹拌しながら混合し、油相部(精油)の乳化物243.1g(処方合計量245.0g)を得た。
【0149】
一方、蒸留残渣は、水蒸気蒸留終了後、ステンレストレイ(41.5×29×5cm)に均一に広げ、品温が30℃となったところで、上から種麹(商品名「白銀」、株式会社ビオック社製)0.05gを均一にふりかけ、更に攪拌混合し、上部を食品用ラップフィルムで覆った。恒温槽にて、30±2℃で保温しながら、1日に1回攪拌、空気を入れ替え、重量を測定し、減少分の滅菌水をふりかけ乾燥を防ぎ、5日間麹菌を培養した。
【0150】
引き続き、麹菌培養後の残渣を水1000g(対ブラックペッパー200%)とともに攪拌釜に移し、90±2℃にて10分間加熱殺菌後、30±2℃まで冷却した。これに、酵母Saccharomyces cerevisiae の種菌(2×109個/g)0.25g(対ブラックペッパー0.05%)を2.5g(対酵母種菌10倍量)の水に懸濁して添加し、よく攪拌して混合した後、30±2℃で20時間静置して発酵処理した(20時間静置後のpH4.3)。次いで、80±2℃で10分間加熱殺菌した後25℃まで冷却した。次いで、脱水機器型遠心分離機にて固液分離し、抽出液(758.3g、Bx12.2、pH4.3)を得た。抽出液を1200×Gにて10分間遠心分離処理を行い、沈殿物を除去し、濾紙にケイソウ土でコーティングしたヌッチェで吸引濾過を行い、濾過液712.6gを得た(Bx10.9、pH3.7)。次いで除菌水を用いてBxを10.0に調整した(除菌水268.9g添加、添加後抽出液量776.7g、Bx10.0、pH4.3)。
【0151】
これらの、発酵処理抽出液、留出液(水相部)および留出液(油相部の乳化物)は発酵処理抽出液:留出液(水相部):留出液(油相部の乳化物)=15:10:4の割合で使用し、以下の混合・殺菌工程を行い、発酵ブラックペッパーエキスとした。
【0152】
前記発酵処理抽出液750gと留出液(水相部)500gを混合し、アスコルビン酸ナトリウムを0.125g(対混合液0.01%)加え、バッチ式で90℃達温(殺菌)後、即冷却し、77(±)3℃となったところで、留出液(油相部の乳化物)200を添加混合した。30℃以下まで冷却後、200メッシュサランにて濾過し、容器に充填し、本発明品8の発酵ブラックペッパーエキス1430gを得た(pH4.5、対ブラックペッパー収率286%)。
【0153】
本発明品8の発酵ブラックペッパーエキスを水に0.1%添加して飲用したところ、発酵感を有するとともに、ブラックペッパー本来のスパイシーでフレッシュな香りを有していた。
【0154】
(実施例11)レモングラスの乳酸菌発酵エキス(水蒸気蒸留留出液配合)
レモングラスの乾燥葉(3mmカット)500gを3Lステンレスカラムに充填し、水蒸気をカラム下部より吹き込み、カラム上部から得られるレモングラスの揮発性成分を含んだ水蒸気を冷却管(水道水冷却、約20℃)により凝縮し、約1時間かけて、レモングラスの揮発性成分を含んだ留出液525g(対レモングラス105%)および蒸留残渣を得た。
【0155】
得られた留出液は分液ロートに採取し、常温で一夜(約18時間)静置し、水相と油相をデカンテーション分離し、水相部500gおよび油相部(精油)1.65gを得た。
【0156】
油相部(精油)1.65gに中鎖脂肪酸トリグリセライド4.95g(対油相部3倍量)を混合し乳化用オイル相部とした。これとは別にグリセリン16.5g(対油相部10倍量)、デカグリセリンモノオエート(HLB12)6.60g(対油相部4倍量)および精製水4.95g(対油相部3倍量)を混合し乳化用水相部とした。乳化用オイル相部と乳化用水相部を混合し、T.K.ロボミックス(プライミクス社製)により8000rpmで10分間撹拌しながら混合し、油相部(精油)の乳化物31.6g(処方合計量34.65g)を得た。
【0157】
一方、蒸留残渣は、水蒸気蒸留終了後、直ちに熱水(80±2℃、約3000g:対レモングラス6倍量)をカラム上部より投入しながら、カラム下部より約30分間要して抽出液を抜き取り、直ちに45±2℃まで冷却し、80メッシュ濾過し、抽出液2010.6gを得た(Bx3.9°、pH5.5)。
【0158】
次いで、この抽出液にスミチームSPG(新日本化学工業社製のペクチナーゼ)0.078g(抽出液のBx計算による可溶性固形分の0.1%)を添加し、45±2℃にて1時間攪拌して酵素反応を行った(反応後pH4.9)。次いで80±2℃にて10分間加熱殺菌後、30±2℃まで冷却した。これに、乳酸菌Lactiplantibacillus plantarum の種菌
を8×106cfu/mlとなるように添加し、よく攪拌して混合した後、30±2℃で20時間静置して発酵処理した(発酵終了目標のpH4.0以下、20時間静置後のBx3.5、pH3.7)。次いで、80±2℃で10分間加熱殺菌した後25℃まで冷却した。次いで1200×Gにて10分間遠心分離処理を行い、沈殿物を除去し、濾紙にケイソウ土でコーティングしたヌッチェで吸引濾過を行い、濾過液1935.8gを得た(Bx3.2、pH3.6)。次いで除菌水を用いてBxを3.0に調整した(除菌水129.0g添加、添加後抽出液量2064.8g、Bx3.0、pH3.6)。
【0159】
これらの、発酵処理抽出液、留出液(水相部)および留出液(油相部の乳化物)は発酵処理抽出液:留出液(水相部):留出液(油相部の乳化物)=80:20:1の割合で使用し、以下の混合・殺菌工程を行い、発酵レモングラスエキスとした。
【0160】
前記発酵処理抽出液2000gと留出液(水相部)500gを混合し、アスコルビン酸ナトリウムを0.25g(対混合液0.01%)加え、バッチ式で90℃達温(殺菌)後、即冷却し、77(±)3℃となったところで、留出液(油相部の乳化物)25gを添加混合した。30℃以下まで冷却後、200メッシュサランにて濾過し、容器に充填し、本発明品9の発酵レモングラスエキス2480gを得た(対レモングラス収率496%)。
【0161】
これを以下の表6に示す処方にて、本発明品9を用いたレモン飲料(チューハイ)を調製して飲用したところ、発酵感を有するとともに、レモングラス本来のシトラス感溢れるスパイシーさを伴ったフレッシュな香りを有していた。
【0162】
(実施例12) ローズマリーの乳酸菌発酵エキス(水蒸気蒸留留出液配合)
ローズマリーの乾燥葉(3mmカット)500gを3Lステンレスカラムに充填し、水蒸気をカラム下部より吹き込み、カラム上部から得られるローズマリーの揮発性成分を含んだ水蒸気を冷却管(水道水冷却、約20℃)により凝縮し、約1時間かけて、ローズマリーの揮発性成分を含んだ留出液525g(対ローズマリー105%)および蒸留残渣を得た。
【0163】
得られた留出液は分液ロートに採取し、常温で一夜(約18時間)静置し、水相と油相をデカンテーション分離し、水相部500gおよび油相部(精油)6.2gを得た。
【0164】
油相部(精油)6.2gに中鎖脂肪酸トリグリセライド18.6g(対油相部3倍量)を混合し乳化用オイル相部とした。これとは別にグリセリン62.0g(対油相部10倍量)、デカグリセリンモノオエート(HLB12)24.8g(対油相部4倍量)および精製水18.6g(対油相部3倍量)を混合し乳化用水相部とした。乳化用オイル相部と乳化用水相部を混合し、T.K.ロボミックス(プライミクス社製)により8000rpmで10分間撹拌しながら混合し、油相部(精油)の乳化物127.5g(処方合計量130.2g)を得た。
【0165】
一方、蒸留残渣は、水蒸気蒸留終了後、直ちに熱水(80±2℃、約3000g:対ローズマリー6倍量)をカラム上部より投入しながら、カラム下部より約30分間要して抽出液を抜き取り、直ちに45±2℃まで冷却し、80メッシュ濾過し、抽出液2025.3gを得た(Bx5.6°、pH5.4)。
【0166】
次いで、この抽出液にスミチームSPG(新日本化学工業社製のペクチナーゼ)0.11g(抽出液のBx計算による可溶性固形分の0.1%)を添加し、45±2℃にて1時間攪拌して酵素反応を行った(反応後pH4.9)。次いで80±2℃にて10分間加熱殺菌後、30±2℃まで冷却した。これに、乳酸菌Lactiplantibacillus plantarum の種菌
を1×107cfu/mlとなるように添加し、よく攪拌して混合した後、30±2℃で20時間静置して発酵処理した(発酵終了目標のpH4.0以下、20時間静置後のBx4.8、pH3.7)。次いで、80±2℃で10分間加熱殺菌した後25℃まで冷却した。次いで1200×Gにて10分間遠心分離処理を行い、沈殿物を除去し、濾紙にケイソウ土でコーティングしたヌッチェで吸引濾過を行い、濾過液1956.6gを得た(Bx4.4、pH3.6)。次いで除菌水を用いてBxを4.0に調整した(除菌水129.0g添加、添加後抽出液量2152.3g、Bx4.0、pH3.6)。
【0167】
これらの、発酵処理抽出液、留出液(水相部)および留出液(油相部の乳化物)は発酵処理抽出液:留出液(水相部):留出液(油相部の乳化物)=20:5:1の割合で使用し、以下の混合・殺菌工程を行い、発酵ローズマリーエキスとした。
【0168】
前記発酵処理抽出液2000gと留出液(水相部)500gを混合し、アスコルビン酸ナトリウムを0.25g(対混合液0.01%)加え、バッチ式で90℃達温(殺菌)後、即冷却し、77(±)3℃となったところで、留出液(油相部の乳化物)100gを添加混合した。30℃以下まで冷却後、200メッシュサランにて濾過し、容器に充填し、本発明品10の発酵ローズマリーエキス2580gを得た(対ローズマリー収率516%)。
【0169】
これを以下の表7に示す処方にて、本発明品9を用いたレモン飲料(チューハイ)を調製して飲用したところ、発酵感を有するとともに、ローズマリー特有かつ本来のスパイシーさを伴ったフレッシュな香りを有していた。
【0170】
(実施例13)エルダーフラワーの乳酸菌発酵エキス(水蒸気蒸留留出液配合)
乾燥エルダーフラワー粉砕物(3mmカット)500gを3Lステンレスカラムに充填し、水蒸気をカラム下部より吹き込み、カラム上部から得られるエルダーフラワーの揮発性成分を含んだ水蒸気を冷却管(水道水冷却、約20℃)により凝縮し、約1時間かけて、エルダーフラワーの揮発性成分を含んだ留出液500g(対エルダーフラワー100%)および蒸留残渣を得た。得られた留出液には油相(精油成分)はほとんど分離していなかった(ほぼ水相のみ)。
【0171】
留出液500gはセパビーズSP-207(三菱ケミカル(株)社製のスチレンジビニルベンゼン系合成吸着剤)2mlを充填したカラムにSV=50で通液し、95%エタノールにてSV=2にて脱着し、脱着液(留出液の樹脂吸着エタノール脱着液)10gを得た。
【0172】
一方、水3000g(対エルダーフラワー6倍)および95%エタノール3000g(対エルダーフラワー6倍)の混合液を調製し、前記水蒸気蒸留終了後の残渣を、前記混合液とともに攪拌釜に移し、40±2℃にて1時間攪拌抽出した。25℃まで冷却後、次いで、脱水機型遠心分離機にて固液分離し、抽出液(4758g)を得た。抽出液を1200×Gにて10分間遠心分離処理を行い、沈殿物を除去し、濾紙にケイソウ土でコーティングしたヌッチェで吸引濾過を行い、濾過液4685gを得た。この濾過液を、ロータリーエバポレーターを用いて40℃にて減圧濃縮し、濃縮液が1561.3g(濾過液の1/3)となったところで水1561.3g(濃縮液と等量)加え、同一条件でさらに減圧濃縮を行い、エタノールを除去した濃縮液1561.3g(Bx8.8°、pH4.6)を得た。
【0173】
これに、乳酸菌Lactiplantibacillus plantarum の種菌を2×107cfu/mlとなるように添加し、よく攪拌して混合した後、30±2℃で20時間静置して発酵処理した(発酵終了目標のpH4.0以下、20時間静置後のBx8.5、pH3.7)。次いで、80±2℃で10分間加熱殺菌した後25℃まで冷却した。次いで1200×Gにて10分間遠心分離処理を行い、沈殿物を除去し、濾紙にケイソウ土でコーティングしたヌッチェで吸引濾過を行い、濾過液1398.8gを得た(Bx8.2、pH3.6)。次いで除菌水を用いてBxを8.0に調整し(除菌水35.0g添加、添加後抽出液量1433.8g、Bx8.0、pH3.6)、発酵処理抽出液を得た。
【0174】
これらの、発酵処理抽出液および留出液の樹脂吸着エタノール脱着液は発酵処理抽出液:留出液の樹脂吸着エタノール脱着液=14:1の割合で使用し、以下の混合・殺菌工程を行い、発酵エルダーフラワーエキスとした。
【0175】
前記発酵処理抽出液1400gにアスコルビン酸ナトリウムを0.14g(発酵処理抽出液0.01%)加え、バッチ式で90℃達温(殺菌)後、即冷却し、77(±)3℃となったところで、留出液の樹脂吸着エタノール脱着液10gを添加混合した。30℃以下まで冷却後、200メッシュサランにて濾過し、容器に充填し、本発明品11の発酵エルダーフラワーエキス1400gを得た(対エルダーフラワー収率280%)。
【0176】
これを以下の表7に示す処方にて、本発明品11を用いたレモン飲料(チューハイ)を調製して飲用したところ、発酵感を有するとともに、エルダーフラワー特有かつ本来の、アップル香を伴うフローラルでフレッシュな香りを有していた。
【0177】