IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フクダの特許一覧

特開2024-25035ガスリークテストのためのファン配置調節方法
<>
  • 特開-ガスリークテストのためのファン配置調節方法 図1
  • 特開-ガスリークテストのためのファン配置調節方法 図2
  • 特開-ガスリークテストのためのファン配置調節方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025035
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】ガスリークテストのためのファン配置調節方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/20 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
G01M3/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128128
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】390019035
【氏名又は名称】株式会社フクダ
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 貞叔
(72)【発明者】
【氏名】武田 弘行
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA01
2G067AA21
2G067CC11
2G067DD02
(57)【要約】
【課題】 ガスリークテストにおいて、テスト対象が大型、複雑な形状でも、計測の再現性を確保する。
【解決手段】
ガスリークテストでは、テスト対象Wを所定位置にセットしてチャンバ30を密閉し、テスト対象Wにトレーサガスを供給し、チャンバ30内に配置されたファン35でチャンバ30内の空気を撹拌することによりテスト対象Wからチャンバ30内に漏出するトレーサガスを拡散させ、ガス計測器52によりチャンバ30内の空気中のトレーサガスを計測し、テスト対象Wの良否を判定する。このガスリークテストのための準備段階として、ファン配置調節工程を実行する。チャンバ30内にテスト対象Wと同一構成の漏れの無いモデル対象Wsをセットし、疑似漏れ器60をモデル対象Wsの複数の部位P1~P4の近傍に順次配置する。上記ガスリークテストと同様の工程を実行し、疑似漏れ器60からトレーサガスを漏出させて、複数の部位P1~P4毎の計測値を得、これら計測値に基づきファン35の配置を調節する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ内に中空のテスト対象を所定位置にセットして前記チャンバを密閉し、前記テスト対象にトレーサガスを供給し、前記チャンバ内に配置された少なくとも1つのファンにより前記チャンバ内の空気を撹拌することにより前記テスト対象から前記チャンバ内に漏出するトレーサガスを拡散させ、前記チャンバに接続されたガス計測器により前記チャンバ内の空気中のトレーサガスを計測し、計測値が閾値を超える場合には前記テスト対象に欠陥ありと判断するガスリークテストのための準備段階として、
前記チャンバ内に、前記テスト対象と同一構成の漏れの無いモデル対象を前記所定位置にセットするとともに、疑似漏れ器を前記モデル対象における選択された複数の部位の近傍に順次配置し、前記複数の部位毎に、前記疑似漏れ器から前記トレーサガスを前記チャンバ内に漏出させ、前記ファンにより前記チャンバ内の空気の撹拌し、前記ガス計測器により前記トレーサガスを計測し、前記複数の部位毎の計測値に基づき、前記ファンの配置を調節することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ファンの配置の調節が、ファンの風量、向き、位置、台数の少なくとも1つの調節を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ファンが前記チャンバ内に複数配置されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記疑似漏れ器が、前記モデル対象の内部空間と前記モデル対象外の通路手段を介して連通し、前記モデル対象内のトレーサガスを、前記通路手段を介して前記疑似漏れ器から漏出させることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記通路手段がフレキシブル管を含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記チャンバには主カプラと副カプラが設けられ、トレーサガス源から延びるガス供給通路は下流側で前記主カプラに接続される主通路部と前記副カプラに接続される副通路部に分岐され、前記主カプラには前記チャンバ内で前記モデル対象が接続され、前記副カプラには前記チャンバ内で前記フレキシブル管を介して前記疑似漏れ器が接続されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記疑似漏れ器は、前記モデル対象の外面に仮止め手段により着脱可能に仮止めされることを特徴とする請求項4~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記モデル対象の選択された複数の外面に前記疑似漏れ器を装着し、前記疑似漏れ器の漏れ通路と前記モデル対象の壁に形成された穴とを連通させ、前記モデル対象内のトレーサガスを、前記モデル対象の前記穴と前記疑似漏れ器の前記漏れ通路を介して、前記チャンバ内に漏出させることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素等のトレーサガスを用いたリークテストのために、チャンバ内のファンの配置を調節する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたガスリークテスト方法では、大気圧のチャンバ内に中空のテスト対象を配置し、このテスト対象に水素等のトレーサガスを供給し、チャンバに接続されたガス計測器により、テスト対象からチャンバ内の空気中に漏出したトレーサガスを計測し、計測値が閾値を超える場合には前記テスト対象に欠陥ありと判断する。
【0003】
特許文献1のガスリークテスト方法では、チャンバ内が大気圧であるため、高い強度を必要とせず装置を低コストで製造することができるが、漏出したトレーサガスの拡散が不十分であるため短時間で精度良くトレーサガスを計測できない。そのため、チャンバ内に配置されたファンにより前記チャンバ内の空気を撹拌することにより、前記テスト対象から漏出したトレーサガスの拡散を促進している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭55-40907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方法では、テスト対象が小型で単純な形状の場合には、トレーサガスの拡散が良好に行われるため、テスト対象の欠陥の位置(トレーサガスの漏出位置)に拘わらず、計測値を短時間で欠陥の大きさに応じた計測値を得ることができる(計測の再現性を確保できる)。しかし、テスト対象が大きい場合や複雑な形状の場合には、ファンの配置によって、テスト対象の複数の欠陥位置から漏出したトレーサガスの拡散の仕方が大きく異なり、欠陥の大きさが同じでもガス計測器の計測値が異なることがある(計測の再現性を確保できない)。その結果、テスト対象の良否の誤判定を招くおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上述の課題を解決するためになされたものであり、チャンバ内に中空のテスト対象を所定位置にセットして前記チャンバを密閉し、前記テスト対象にトレーサガスを供給し、前記チャンバ内に配置された少なくとも1つのファンにより前記チャンバ内の空気を撹拌することにより前記テスト対象から前記チャンバ内に漏出するトレーサガスを拡散させ、前記チャンバに接続されたガス計測器により前記チャンバ内の空気中のトレーサガスを計測し、計測値が閾値を超える場合には前記テスト対象に欠陥ありと判断するガスリークテストのための準備段階として、
前記チャンバ内に、前記テスト対象と同一構成の漏れの無いモデル対象を前記所定位置にセットするとともに、疑似漏れ器を前記モデル対象における選択された複数の部位の近傍に順次配置し、前記複数の部位毎に、前記疑似漏れ器から前記トレーサガスを前記チャンバ内に漏出させ、前記ファンにより前記チャンバ内の空気の撹拌し、前記ガス計測器により前記トレーサガスを計測し、前記複数の部位毎の計測値に基づき、前記ファンの配置を調節することを特徴とする。
この方法によれば、テスト対象が大型または複雑であり、テスト対象の欠陥の位置(トレーサガスの漏出位置)が異なっても、ファンの配置の調節によりトレーサガスを良好に拡散することができる。その結果、ガスリークテストにおいて、テスト対象の欠陥の位置(トレーサガスの漏出位置)に拘わらず、欠陥に応じた計測値を得ることができ(再現性を確保でき)、テスト対象の良否を正確に判定することができる。
【0007】
前記ファンの配置の調節が、ファンの風量、向き、位置、台数の少なくとも1つの調節を含む。好ましくは、前記ファンは前記チャンバ内に複数配置される。
【0008】
一態様では、前記疑似漏れ器が、前記モデル対象の内部空間と前記モデル対象外の通路手段を介して連通し、前記モデル対象内のトレーサガスを、前記通路手段を介して前記疑似漏れ器から漏出させる。
この方法によれば、疑似漏れ器の近傍の部位でモデル対象の漏れを擬制するので、モデル対象に加工を施さずにファン配置を調節することができる。
【0009】
好ましくは、前記通路手段がフレキシブル管を含む。この方法によれば、疑似漏れ器をモデル対象の異なる複数部位に順次移す作業を円滑に行うことができる。
【0010】
さらに好ましくは、前記チャンバには主カプラと副カプラが設けられ、トレーサガス源から延びるガス供給通路は下流側で前記主カプラに接続される主通路部と前記副カプラに接続される副通路部に分岐され、前記主カプラには前記チャンバ内で前記モデル対象が接続され、前記副カプラには前記チャンバ内で前記フレキシブル管を介して前記疑似漏れ器が接続される。
【0011】
さらに好ましくは、前記疑似漏れ器は、前記モデル対象の外面に仮止め手段により着脱可能に仮止めされる。
【0012】
他の態様では、前記モデル対象の選択された複数の外面に前記疑似漏れ器を装着し、前記疑似漏れ器の漏れ通路と前記モデル対象の壁に形成された穴とを連通させ、前記モデル対象内のトレーサガスを、前記モデル対象の前記穴と前記疑似漏れ器の前記漏れ通路を介して、前記チャンバ内に漏出させる。
この方法によれば、モデル対象から直接トレーサガスを漏出させるので、通路構成を簡略化することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、テスト対象が大型または複雑であっても、テスト対象から漏出するトレーサガスを、テスト対象の欠陥位置に係わらず再現性良く計測でき、テスト対象の良否を正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係るファン配置調節方法を実行可能なガスリークテスト装置の概略構成図である。
図2】同第1実施形態のファン配置調節方法を示すチャンバ内部の概略図である。
図3】本発明の第2実施形態に係るファン配置調節方法を示す図2相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明方法の第1実施形態を、図面を参照しながら説明する。
<ガスリークテスト装置の構成>
最初に、本発明方法が適用されるガスリークテスト装置を、図1を参照しながら説明する。ガスリークテスト装置は、ガス供給通路10と、ガス供給通路10の上流端に接続されたトレーサガス源20と、ガス供給通路10の下流端に接続されたチャンバ30を備えている。
【0016】
トレーサガス源20は、ガスボンベ21と、ボンベ側レギュレータ22と、元栓23とを有している。ガスボンベ21には、水素5%、窒素95%の加圧トレーサガスが充填されている。ガス供給通路10には、テスト圧レギュレータ11と常閉の供給弁12と圧力スイッチ13が上流側から下流側に向かって順に設けられている。
【0017】
ガス供給通路10には、供給弁12の下流側に排気通路40が接続されている。排気通路40は第1分岐部41と第2分岐部42を有し、第1分岐部41には常閉の第1排気弁43が設けられ、第2分岐部42には常閉の第2排気弁44と真空ポンプ45が設けられている。ガス供給通路10の下流端は、主通路部15と副通路部16に分岐されている。
【0018】
チャンバ30は開閉可能であり、側壁に主カプラ31と副カプラ32を有している。主カプラ31にはガス供給通路10の主通路部15が接続され、副カプラ32には副通路部16が接続されている。
【0019】
チャンバ30内には、内部通路33が配置され、この内部通路33の一端が主カプラ31に接続されている。チャンバ30内には、密閉空間を有する中空のテスト対象Wが所定位置にセットされるようになっている。テスト対象Wは内部通路33の他端に着脱可能に接続される。さらにチャンバ30内には、複数のファン35が配置されている。
【0020】
後述するファン配置調節工程では、チャンバ30内に後述する疑似漏れ器60が配置され、この疑似漏れ器60がフレキシブル管65を介して副カプラ32に接続されるが、通常のガスリークテスト工程では、疑似漏れ器60はチャンバ30内に配置されず、フレキシブル65が副カプラ32に接続されないので、副カプラ32は閉鎖状態にある。
【0021】
チャンバ30には、さらに計測用カプラ36が設けられている。この計測用カプラ36には、計測通路50の上流端が接続されている。この計測通路50には、常閉の計測弁51が設けられ、下流端には水素を計測するガス計測器52が接続されている。計測弁51とガス計測器52との間には洗浄通路55が接続されている。この洗浄通路55には常開の洗浄弁56が設けられている。
【0022】
<通常のガスリークテスト工程>
最初に通常のガスリークテスト工程について説明する。この工程では、疑似漏れ器60とフレキシブル管65はチャンバ30内に配置されない。テスト対象Wをチャンバ30内の所定位置にセットするとともに、内部通路33に接続し、チャンバ30を密閉する。チャンバ30内の空気は大気圧である。
【0023】
次に、図示しないコントローラのシーケンス制御により、以下のガスリークテスト工程を実行する。供給弁12を開き、テスト対象Wにテスト圧のトレーサガスを供給する。所定時間経過時点で、テスト対象W内の圧力がテスト圧に達したことを圧力スイッチ13で確認し、供給弁12を閉じて所定時間待機する。
【0024】
上記待機時間において、ファン35により、チャンバ30内の空気を撹拌する。テスト対象Wに欠陥がある場合には、テスト対象W内のトレーサガスがチャンバ30内に漏出され、上記ファン35による撹拌によりチャンバ内30を拡散する。なお、ファン35の稼働は、後述の計測段階でも継続するのが好ましい。また、待機時間前から稼働を開始してもよい。
【0025】
上記待機時間の終了時点から所定時間計測を実行する。すなわち、洗浄弁56を閉じ計測弁51を開く。これにより、チャンバ30内の空気がガス計測器52に内蔵された常時駆動のポンプによりガス計測器52へと送られる。テスト対象Wに欠陥がありトレーサガスがチャンバ30内の空気に拡散して場合には、トレーサガス中の水素がガス計測器52により計測される。ガス計測器52の計測値はコントローラに送られる。コントローラでは計測値が閾値を超えた場合にはテスト対象Wに欠陥ありと判断し、閾値以下の場合には良品と判断する。
【0026】
計測終了後に計測弁51を閉じ洗浄弁56を開く。これにより、大気中の空気が洗浄通路55を経てガス計測器52を通過することにより、ガス計測器52が洗浄される。
【0027】
上記洗浄工程とほぼ同時期に第1排気弁43を開くことにより、テスト対象W内のトレーサガスが排気通路40の第1分岐部41を経て屋外に排出される。さらに第1排気弁43を閉じ第2排気弁44を開くことにより、テスト対象W内のトレーサガスが真空ポンプ45により吸引され排気通路40の第2分岐部42を経て屋外に排出される。
【0028】
上記のガスリークテストが終了した後、チャンバ30が開かれテスト対象Wが搬出され、新たなテスト対象Wが内部通路33に接続されてガスリークテストが再開される。
【0029】
<ファン配置調節工程>
上述したガスリークテストでは、チャンバ30の内圧が略大気圧であるため、チャンバ30に高い強度が要求されず、装置の製造コストを抑えることができる。ファン35はチャンバ30内の空気を撹拌し、テスト対象Wの欠陥から漏出したトレーサガスの濃度を均一にする役割を担っている。これにより、テスト対象Wのどの部位に欠陥があっても、ガス計測器52が欠陥の大きさに対応して再現性良く水素ガスを計測できる。しかし、テスト対象Wは図1に概略的に示すような単純な形状のものばかりではない。例えばテスト対象Wが大型である場合や複雑な形状である場合、ファン35の配置によっては、トレーサガスが均一に拡散せず、欠陥の大きさが同じでも(すなわちトレーサガスの漏出量が同じでも)、計測値が異なってしまうことがある。
そこで、上記通常のガスリークテストに先立ち、その準備段階として各種形状のテスト対象W毎に、ファン35の配置を最適化して再現性を向上させる。
【0030】
図2に示すように、ファン配置調節工程では、既知のオリフィス(漏れ通路)を有する疑似漏れ器60を、フレキシブル管65を介して副カプラ32に接続する。テスト対象の良品サンプル、すなわちテスト対象と同一構成で漏れの無いことを確認したモデル対象Wsを、通常のガスリークテスト工程と同様にチャンバ30内の所定位置にセットするとともに、内部通路33に接続する。
【0031】
モデル対象Wsには、複数の部位P1~P4を予め選択しておく。これら部位P1~P4は、欠陥の発生しやすい部位であってもよいし、トレーサガスが漏出したときに拡散しづらい部位であってもよい。
疑似漏れ器60は、部位P1~P4の近傍に順次配置する。本実施形態では、テープ(仮止め手段)でこれら部位P1~P4の外面に仮止めする。例えば最初のファン位置調節工程では疑似漏れ器60を部位P1に設置する。
【0032】
モデル対象Wsと疑似漏れ器60の設置が完了したら、チャンバ30を密閉し、コントローラにより通常のガスリークテスト工程と同じシーケンス制御を実行する。供給弁12(図1参照)が閉じた後の待機段階において、トレーサガスは、モデル対象Wsから直接チャンバ30内に漏出されないが、内部通路33,主通路部15,副通路部16,フレキシブル管65からなる通路手段を経て、疑似漏れ器60のオリフィスからチャンバ30内に漏出される。この疑似漏れ器60からのトレーサガスの漏出は、モデル対象Wsにおいて疑似漏れ器60が装着された部位P1からの漏出を擬制する。漏出されたトレーサガスはファン35により拡散される。この疑似漏れに起因したトレーサガスがガス計測器52で計測される。
【0033】
上記計測値が既知の疑似漏れ器60の予測漏出量とチャンバ30の容積等から導かれる予測計測値と許容範囲内で一致するか否かを判断する。一致しない場合には、ファン35の配置を調節する。ファン35の配置の調節は、ファン35の風量、向き、位置、台数の少なくとも1つの調節を含む。例えば、部位P1に最も近いファン35の位置、向き、風量等を調節したり、部位P1の近くにファン35を新たに設置したりする。調節後に再度同様の工程を繰り返す。ガス計測器52の計測値が予測計測値と許容範囲内で一致した場合には、部位P1でのファン35の配置調節を完了する。
【0034】
次に、疑似漏れ器60をモデル対象Wsの部位P2、P3,P4に順次移し替えて仮止めし、同様のファン配置調節工程を実行し、ファン35の配置を最適化する。疑似漏れ器60はフレキシブル管65に接続されているので、これら移し替えを円滑に行うことができる。
【0035】
上記のように、テスト対象Wが大型であったり複雑な形状であったりしても、上述のようにファン35の配置を調節することにより、ガスリークテスト工程において、テスト対象Wの漏出位置に係わらずトレーサガスを均一に拡散するようにファン35の配置が最適化されるため、テスト対象Wの異なる位置での欠陥により生じるトレーサガスの計測値を、欠陥の大きさ(トレーサガスの漏出量)と対応させることができ、再現性を確保できる。その結果、テスト対象Wの良否を正確に判定することができる。
本実施形態では、モデル対象Wsに加工を施さずに済む。
【0036】
<第2実施形態>
次にファン配置調節工程の第2実施形態について説明する。
図2に示す第1実施形態では、疑似漏れ器60のオリフィスが、内部通路33,主通路部15,副通路部16,フレキシブル管65からなる通路手段を介してモデル対象Wsに連なっている。これに対して、図3に示す第2実施形態では、ガス供給通路10の下流端は分岐されず主カプラ31に接続されている。副通路部16,フレキシブル管65がなく、疑似漏れ器60はモデル対象Wsの外面に直接気密をなして接着等の手段で取り付けられる。疑似漏れ器60のオリフィスが、モデル対象Wsの壁に形成された穴(図示しない)を介してモデル対象Wsの内部空間に連なっている。本実施形態では疑似漏れ器60がモデル対象Ws外の通路手段を介さずにモデル対象Wsに連なるので、第2実施形態に比べて通路構成を簡略化することができる。
【0037】
モデル対象Wsの部位P1~P4の全てに予め穴が形成され、1つの部位についてファン配置調節を行う場合にはこの部位に疑似漏れ器60を装着し、他の部位を図示しない閉塞手段で閉塞する。ガス供給通路10からのトレーサガスは、内部通路33を経てモデル対象Wsに供給される。モデル対象Wsのトレーサガスは、疑似漏れ器60を経てチャンバ30に漏出される。他は第1実施形態と同様であるから説明を省略する。
【0038】
第2実施形態において、モデル対象Wsを選択された部位P1~P4の数だけ用意し、各モデル対象Wsは異なる部位P1~P4の1つにそれぞれ穴を有し、これら部位に疑似漏れ器60を装着してもよい。この場合、各部位毎のファン配置調節工程毎にモデル対象Wsを交換する。
【0039】
本発明は、上記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変をなすことができる。
トレーサガスとしてヘリウムを含むガスを用いてもよい。疑似漏れ器の漏れ通路は薄板に形成されたピンホールでもよい。
ファンは1つでもよい。この場合、ファンの風量、向き、位置のうちの少なくとも1つが調節される。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、ガスリークテスト方法に適用できる。
【符号の説明】
【0041】
10 ガス供給通路
11 主通路部
12 副通路部
20 トレーサガス源
30 チャンバ
31 主カプラ
32 副カプラ
35 ファン
52 ガス計測器
60 疑似漏れ器
65 フレキシブル管(通路手段)
W テスト対象
Ws モデル対象
図1
図2
図3