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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025036
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】インパクト工具
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/02 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
B25B21/02 G
B25B21/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128129
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】趙 鼎
(57)【要約】
【課題】インパクト工具の寿命が短くなることを抑制すること。
【解決手段】インパクト工具は、モータと、少なくとも一部がモータよりも前方に配置され、モータにより回転されるスピンドルと、スピンドルの周囲に配置されるハンマと、少なくとも一部がスピンドルよりも前方に配置され、ハンマにより回転方向に打撃されるアンビルと、スピンドルの後端面に設けられた開口から前方に延びるようにスピンドルの内部に形成される内部空間と、を備える。内部空間は、開口に接続される第1内径の第1空間と、第1空間よりも前方に設けられ第1内径よりも小さい第2内径の第2空間と、第2空間の前端部に接続され第2内径よりも大きい第3内径の第3空間と、を含む。第3空間に潤滑油が収容される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
少なくとも一部が前記モータよりも前方に配置され、前記モータにより回転されるスピンドルと、
前記スピンドルの周囲に配置されるハンマと、
少なくとも一部が前記スピンドルよりも前方に配置され、前記ハンマにより回転方向に打撃されるアンビルと、
前記スピンドルの後端面に設けられた開口から前方に延びるように前記スピンドルの内部に形成される内部空間と、を備え、
前記内部空間は、前記開口に接続される第1内径の第1空間と、前記第1空間よりも前方に設けられ前記第1内径よりも小さい第2内径の第2空間と、前記第2空間の前端部に接続され前記第2内径よりも大きい第3内径の第3空間と、を含み、
前記第3空間に潤滑油が収容される、
インパクト工具。
【請求項2】
前記第2空間の前端部と前記第3空間の後端部との境界に前方を向く段差面が設けられる、
請求項1に記載のインパクト工具。
【請求項3】
前記第3内径は、前記第1内径よりも小さい、
請求項1又は請求項2に記載のインパクト工具。
【請求項4】
前記スピンドルの外周面に設けられ、前記第3空間からの潤滑油を前記ハンマとの間に供給する第1供給口を備える、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のインパクト工具。
【請求項5】
前記スピンドルに設けられ、前記第3空間と前記第1供給口とを接続する第1流路を備える、
請求項4に記載のインパクト工具。
【請求項6】
前記ハンマは、ボディ部と、ボディ部から後方に突出し、前記スピンドルの外周面に接触する内周面を有する内筒部と、を有し、
前記第1供給口は、前記スピンドルの外周面と前記内筒部の内周面との間に前記潤滑油を供給する、
請求項4又は請求項5に記載のインパクト工具。
【請求項7】
前記第1供給口は、周方向に複数設けられる、
請求項4から請求項6のいずれか一項に記載のインパクト工具。
【請求項8】
前記スピンドルの前端部に設けられ、前記第3空間からの潤滑油を前記アンビルとの間に供給する第2供給口を備える、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のインパクト工具。
【請求項9】
前記スピンドルは、スピンドルシャフト部と、前記スピンドルシャフト部の前端部から前方に突出するスピンドル凸部と、を有し、
前記アンビルは、前記アンビルの後端面に設けられ、前記スピンドル凸部が配置されるアンビル凹部を有し、
前記ハンマは、前記スピンドルシャフト部の周囲に配置され、
前記第2供給口は、前記スピンドル凸部に設けられる、
請求項8に記載のインパクト工具。
【請求項10】
前記スピンドルは、前方を向く前記スピンドル凸部の前端面から後方に窪む収容凹部を有し、
前記アンビルは、後方を向く前記アンビル凹部の底面から後方に突出する突起部を有し、
前記突起部は、前記収容凹部の内側に配置される、
請求項9に記載のインパクト工具。
【請求項11】
前記第2供給口は、前方を向く前記収容凹部の底面に設けられる、
請求項10に記載のインパクト工具。
【請求項12】
モータと、
少なくとも一部が前記モータよりも前方に配置され、前記モータにより回転されるスピンドルと、
前記スピンドルの周囲に配置されるハンマと、
少なくとも一部が前記スピンドルよりも前方に配置され、前記ハンマにより回転方向に打撃されるアンビルと、を備え、
前記スピンドルは、スピンドルシャフト部と、前記スピンドルシャフト部の前端部から前方に突出するスピンドル凸部と、前方を向く前記スピンドル凸部の前端面から後方に窪む収容凹部と、を有し、
前記アンビルは、前記アンビルの後端面に設けられ、前記スピンドル凸部が配置されるアンビル凹部と、後方を向く前記アンビル凹部の底面から後方に突出する突起部と、を有し、
前記ハンマは、前記スピンドルシャフト部の周囲に配置され、
前記突起部は、前記収容凹部の内側に配置される、
インパクト工具。
【請求項13】
前記突起部は、後方に向かって外径が小さくなるテーパ状である、
請求項10から請求項12のいずれか一項に記載のインパクト工具。
【請求項14】
前記突起部の後端面は、前記アンビルの後端面よりも前方に配置される、
請求項10から請求項13のいずれか一項に記載のインパクト工具。
【請求項15】
アンビルベアリングを介して前記アンビルを支持するハンマケースを備え、
前記アンビルは、ソケットの後部が挿入される工具孔を有し、
連結部材を介して前記ソケットを保持するソケットホルダが前記ハンマケースに装着され、
前記ソケットホルダは、前記ハンマケースに設けられたフック部に掛けられる円弧部と、前記円弧部の一端部に設けられた第1保持部と、前記円弧部の他端部に設けられた第2保持部と、前記第1保持部と前記第2保持部とを固定する弾性リングと、を有し、
前記連結部材は、前記第1保持部及び前記第2保持部のそれぞれに連結される、
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のインパクト工具。
【請求項16】
モータと、
少なくとも一部が前記モータよりも前方に配置され、前記モータにより回転されるスピンドルと、
前記スピンドルの周囲に配置されるハンマと、
少なくとも一部が前記スピンドルよりも前方に配置され、前記ハンマにより回転方向に打撃されるアンビルと、
アンビルベアリングを介して前記アンビルを支持するハンマケースと、を備え、
前記アンビルは、ソケットの後部が挿入される工具孔を有し、
連結部材を介して前記ソケットを保持するソケットホルダが前記ハンマケースに装着され、
前記ソケットホルダは、前記ハンマケースに設けられたフック部に掛けられる円弧部と、前記円弧部の一端部に設けられた第1保持部と、前記円弧部の他端部に設けられた第2保持部と、前記第1保持部と前記第2保持部とを固定する弾性リングと、を有し、
前記連結部材は、前記第1保持部及び前記第2保持部のそれぞれに連結される、
インパクト工具。
【請求項17】
前記第1保持部は、前記円弧部の一端部から前方に突出するように設けられ、
前記第2保持部は、前記円弧部の他端部から前方に突出するように設けられる、
請求項15又は請求項16に記載のインパクト工具。
【請求項18】
前記第1保持部は、第1開口を有し、
前記第2保持部は、第2開口を有し、
前記連結部材は、前記第1開口及び前記第2開口のそれぞれに挿入される、
請求項15から請求項17のいずれか一項に記載のインパクト工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、インパクト工具に関する。
【背景技術】
【0002】
インパクト工具に係る技術分野において、特許文献1に開示されているようなインパクト工具が知られている。特許文献1に開示されているインパクト工具は、スピンドルと、スピンドルの周囲に配置されるハンマとを備える。スピンドルの内部空間に潤滑油が収容される。潤滑油は、スピンドルの内部空間からスピンドルとハンマとの間に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-037560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スピンドルの内部空間から潤滑油が漏洩すると、スピンドルとハンマとの間に供給される潤滑油の量が少なくなってしまう。その結果、スピンドル及びハンマの少なくとも一方が激しく摩耗したり焼き付きを起こしたりして、インパクト工具の寿命が短くなってしまう可能性がある。
【0005】
本明細書で開示する技術は、インパクト工具の寿命が短くなることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、インパクト工具を開示する。インパクト工具は、モータと、少なくとも一部がモータよりも前方に配置され、モータにより回転されるスピンドルと、スピンドルの周囲に配置されるハンマと、少なくとも一部がスピンドルよりも前方に配置され、ハンマにより回転方向に打撃されるアンビルと、スピンドルの後端面に設けられた開口から前方に延びるようにスピンドルの内部に形成される内部空間と、を備えてもよい。内部空間は、開口に接続される第1内径の第1空間と、第1空間よりも前方に設けられ第1内径よりも小さい第2内径の第2空間と、第2空間の前端部に接続され前記第2内径よりも大きい第3内径の第3空間と、を含んでもよい。第3空間に潤滑油が収容されてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本明細書で開示する技術によれば、インパクト工具の寿命が短くなることが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るインパクト工具を示す前方からの斜視図である。
図2図2は、実施形態に係るインパクト工具の上部を示す側面図である。
図3図3は、実施形態に係るインパクト工具の上部を示す縦断面図である。
図4図4は、実施形態に係るインパクト工具の上部を示す横断面図である。
図5図5は、図3の一部を拡大した図である。
図6図6は、実施形態に係るインパクト工具の上部を示す前方からの斜視図である。
図7図7は、実施形態に係るインパクト工具の上部を示す右前方からの分解斜視図である。
図8図8は、実施形態に係るインパクト工具の上部を示す左前方からの分解斜視図である。
図9図9は、実施形態に係るインパクト工具の上部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1つ又はそれ以上の実施形態において、インパクト工具は、モータと、少なくとも一部がモータよりも前方に配置され、モータにより回転されるスピンドルと、スピンドルの周囲に配置されるハンマと、少なくとも一部がスピンドルよりも前方に配置され、ハンマにより回転方向に打撃されるアンビルと、スピンドルの後端面に設けられた開口から前方に延びるようにスピンドルの内部に形成される内部空間と、を備えてもよい。内部空間は、開口に接続される第1内径の第1空間と、第1空間よりも前方に設けられ第1内径よりも小さい第2内径の第2空間と、第2空間の前端部に接続され前記第2内径よりも大きい第3内径の第3空間と、を含んでもよい。第3空間に潤滑油が収容されてもよい。
【0010】
上記の構成では、第1空間と第3空間との間に内径が小さい第2空間が設けられる。第2空間が潤滑油の流れ抵抗部として機能するため、第3空間に収容されている潤滑油が第2空間を介して第1空間に移動することが抑制される。そのため、第3空間に収容されている潤滑油が開口を介して漏洩することが抑制される。これにより、スピンドルとハンマとの間に供給される潤滑油の量が少なくなってしまうことが抑制される。したがって、スピンドル及びハンマの摩耗又は焼き付きが抑制され、インパクト工具の寿命が短くなることが抑制される。
【0011】
1つ又はそれ以上の実施形態において、第2空間の前端部と第3空間の後端部との境界に前方を向く段差面が設けられてもよい。
【0012】
上記の構成では、段差面により、第3空間に収容されている潤滑油が第2空間に移動することが抑制される。
【0013】
1つ又はそれ以上の実施形態において、第3内径は、第1内径よりも小さくてもよい。
【0014】
上記の構成では、スピンドルの強度低下が抑制される。
【0015】
1つ又はそれ以上の実施形態において、スピンドルの外周面に設けられ、第3空間からの潤滑油をハンマとの間に供給する第1供給口を備えてもよい。
【0016】
上記の構成では、第3空間の潤滑油が第1供給口を介してスピンドルとハンマとの間に供給される。
【0017】
1つ又はそれ以上の実施形態において、スピンドルに設けられ、第3空間と第1供給口とを接続する第1流路を備えてもよい。
【0018】
上記の構成では、スピンドルが回転すると、遠心力により第3空間の潤滑油が第1流路を介して第1供給口に供給される。
【0019】
1つ又はそれ以上の実施形態において、ハンマは、ボディ部と、ボディ部から後方に突出し、スピンドルの外周面に接触する内周面を有する内筒部と、を有してもよい。第1供給口は、スピンドルの外周面とハンマの内筒部の内周面との間に潤滑油を供給してもよい。
【0020】
上記の構成では、スピンドルの外周面とハンマの内筒部の内周面との間に第3空間からの潤滑油が供給されるので、スピンドルのハンマの外周面とハンマの内筒部の内周面との摩耗又は焼き付きが抑制される。
【0021】
1つ又はそれ以上の実施形態において、第1供給口は、周方向に複数設けられてもよい。
【0022】
上記の構成では、第1供給口が周方向に複数設けられるので、スピンドルの外周面とハンマの内筒部の内周面との間に潤滑油が満遍なく供給される。
【0023】
1つ又はそれ以上の実施形態において、インパクト工具は、スピンドルの前端部に設けられ、第3空間からの潤滑油をアンビルとの間に供給する第2供給口を備えてもよい。
【0024】
上記の構成では、スピンドルとアンビルとの間に第3空間からの潤滑油が供給されるので、スピンドル及びアンビルの摩耗が抑制される。
【0025】
1つ又はそれ以上の実施形態において、スピンドルは、スピンドルシャフト部と、スピンドルシャフト部の前端部に設けられるスピンドル凸部と、を有してもよい。アンビルは、アンビルの後端面に設けられ、スピンドル凸部が配置されるアンビル凹部を有してもよい。ハンマは、スピンドルシャフト部の周囲に配置されてもよい。第2供給口は、スピンドル凸部に設けられてもよい。
【0026】
上記の構成では、スピンドル凸部の表面とアンビル凹部の内面との間に第3空間からの潤滑油が供給されるので、スピンドル凸部の表面とアンビル凹部の内面との摩耗が抑制される。
【0027】
1つ又はそれ以上の実施形態において、スピンドルは、前方を向くスピンドル凸部の前端面から後方に窪む収容凹部を有してもよい。アンビルは、後方を向くアンビル凹部の底面から後方に突出する突起部を有してもよい。突起部は、収容凹部の内側に配置されてもよい。
【0028】
上記の構成では、インパクト工具の全長が長くなることが抑制されつつ、スピンドル凸部とアンビル凹部との接触面積が小さくなることが抑制される。スピンドル凸部とアンビル凹部との接触面積が小さくなると、スピンドル凸部及びアンビル凹部の少なくとも一方に掛かる応力(接触面圧)が大きくなり、その結果、スピンドル凸部及びアンビル凹部の少なくとも一方が激しく摩耗したり焼き付きを起こしたりする可能性がある。スピンドル凸部とアンビル凹部との接触面積が小さくなることが抑制されるので、スピンドル凸部及びアンビル凹部の摩耗又は焼き付きが抑制される。そのため、インパクト工具の寿命が短くなることが抑制される。
【0029】
1つ又はそれ以上の実施形態において、第2供給口は、前方を向く収容凹部の底面に設けられてもよい。
【0030】
上記の構成では、スピンドル凸部の表面及びアンビル凹部の内面のそれぞれに潤滑油が満遍なく供給される。
【0031】
1つ又はそれ以上の実施形態において、突起部は、後方に向かって外径が小さくなるテーパ状でもよい。
【0032】
上記の構成では、アンビルに設けられた工具孔の後端部の形状に合った突起部が設けられる。
【0033】
1つ又はそれ以上の実施形態において、突起部の後端部は、アンビルの後端面よりも前方に配置されてもよい。
【0034】
上記の構成では、突起部がアンビルの後端面から飛び出ないので、収容凹部の深さを過度に深くしなくても済む。
【0035】
1つ又はそれ以上の実施形態において、インパクト工具は、アンビルベアリングを介してアンビルを支持するハンマケースを備えてもよい。アンビルは、ソケットの少なくとも一部が挿入される工具孔を有してもよい。連結部材を介してソケットを保持するソケットホルダがハンマケースに装着されてもよい。ソケットホルダは、ハンマケースに設けられたフック部に掛けられる円弧部と、円弧部の一端部に設けられた第1保持部と、円弧部の他端部に設けられた第2保持部と、第1保持部と第2保持部とを固定する弾性リングと、を有してもよい。連結部材は、第1保持部及び第2保持部のそれぞれに連結されてもよい。
【0036】
上記の構成では、ソケットホルダでソケットの前部が保持されることがにより、仮にソケットの中間部が折れても、ソケットの前部が落下することが抑制される。また、弾性リングにより第1保持部と第2保持部とが固定されるので、ソケットホルダの構造が簡素化され、ソケットホルダのコストが抑制される。
【0037】
1つ又はそれ以上の実施形態において、第1保持部は、円弧部の一端部から前方に突出するように設けられてもよい。第2保持部は、円弧部の他端部から前方に突出するように設けられてもよい。
【0038】
上記の構成では、作業者は、第1保持部及び第2保持部の前方から弾性リングを第1保持部及び第2保持部の周囲に装着することができる。
【0039】
1つ又はそれ以上の実施形態において、第1保持部は、第1開口を有してもよい。第2保持部は、第2開口を有してもよい。連結部材は、第1開口及び第2開口のそれぞれに挿入されてもよい。
【0040】
上記の構成では、連結部材が第1開口及び第2開口のそれぞれに挿入されることによって、ソケットホルダと連結部材とが連結される。
【0041】
[実施形態]
実施形態について図面を参照しながら説明する。実施形態においては、左、右、前、後、上、及び下の用語を用いて各部の位置関係について説明する。これらの用語は、インパクト工具1の中心を基準とした相対位置又は方向を示す。インパクト工具1は、動力源としてモータ6を有する。
【0042】
実施形態において、モータ6の回転軸AXと平行な方向を適宜、軸方向、と称し、回転軸AXの周囲を周回する方向を適宜、周方向又は回転方向、と称し、回転軸AXの放射方向を適宜、径方向、と称する。
【0043】
回転軸AXは、前後方向に延伸する。軸方向一方側は、前方であり、軸方向他方側は、後方である。また、径方向において、回転軸AXに近い位置又は接近する方向を適宜、径方向内側、と称し、回転軸AXから遠い位置又は離隔する方向を適宜、径方向外側、と称する。
【0044】
<インパクト工具>
図1は、実施形態に係るインパクト工具1を示す前方からの斜視図である。図2は、実施形態に係るインパクト工具1の上部を示す側面図である。図3は、実施形態に係るインパクト工具1の上部を示す縦断面図である。図4は、実施形態に係るインパクト工具1の上部を示す横断面図である。
【0045】
実施形態において、インパクト工具1は、ねじ締め工具の一種であるインパクトドライバである。インパクト工具1は、ハウジング2と、リヤカバー3と、ハンマケース4と、ベアリングボックス24と、ハンマケースカバー51と、モータ6と、減速機構7と、スピンドル8と、打撃機構9と、アンビル10と、工具保持機構11と、ファン12と、バッテリ装着部13と、トリガレバー14と、正逆転切換レバー15と、ライトアセンブリ18と、ライトカバー52とを備える。
【0046】
ハウジング2は、合成樹脂製である。実施形態において、ハウジング2は、ナイロン製である。ハウジング2は、左ハウジング2Lと、左ハウジング2Lの右方に配置される右ハウジング2Rとを含む。左ハウジング2Lと右ハウジング2Rとは、複数のねじ2Sにより固定される。ハウジング2は、一対の半割れハウジングにより構成される。
【0047】
ハウジング2は、モータ収容部21と、グリップ部22と、バッテリ保持部23とを有する。
【0048】
モータ収容部21は、モータ6を収容する。モータ収容部21は、ハンマケース4の少なくとも一部を収容する。モータ収容部21は、筒状である。
【0049】
グリップ部22は、作業者に握られる。グリップ部22は、モータ収容部21から下方に延びる。トリガレバー14は、グリップ部22の上部に設けられる。
【0050】
バッテリ保持部23は、バッテリ装着部13を介してバッテリパック25を保持する。バッテリ保持部23は、グリップ部22の下端部に接続される。前後方向及び左右方向のそれぞれにおいて、バッテリ保持部23の外形の寸法は、グリップ部22の外形の寸法よりも大きい。
【0051】
リヤカバー3は、モータ収容部21の後端部の開口を覆うように配置される。リヤカバー3は、モータ収容部21の後方に配置される。リヤカバー3は、ファン12の少なくとも一部を収容する。ファン12は、リヤカバー3の内側に配置される。リヤカバー3は、後側ロータベアリング37を保持する。リヤカバー3は、合成樹脂製である。リヤカバー3は、2本のねじ3Sによりモータ収容部21の後端部に固定される。
【0052】
モータ収容部21は、吸気口19を有する。リヤカバー3は、排気口20を有する。ハウジング2の外部空間の空気は、吸気口19を介してハウジング2の内部空間に流入する。ハウジング2の内部空間の空気は、排気口20を介してハウジング2の外部空間に流出する。
【0053】
ハンマケース4は、減速機構7の少なくとも一部、スピンドル8、打撃機構9、及びアンビル10の少なくとも一部を収容する。ハンマケース4は、金属製である。実施形態において、ハンマケース4は、アルミニウム製である。ハンマケース4は、筒状である。ハンマケース4は、大筒部4Aと、小筒部4Bと、接続部4Cとを含む。小筒部4Bは、大筒部4Aよりも前方に配置される。大筒部4Aの前端部と小筒部4Bの後端部とは、接続部4Cを介して接続される。接続部4Cは、環状である。大筒部4Aの外径は、小筒部4Bの外径よりも大きい。大筒部4Aの内径は、小筒部4Bの内径よりも大きい。
【0054】
ベアリングボックス24は、減速機構7の少なくとも一部を収容する。ベアリングボックス24は、前側ロータベアリング38及びスピンドルベアリング44を保持する。ベアリングボックス24は、金属製である。ベアリングボックス24は、ハンマケース4の後部に固定される。ベアリングボックス24は、後側環状部24Aと、前側環状部24Bとを有する。前側環状部24Bは、後側環状部24Aよりも前方に配置される。後側環状部24Aの前端部と前側環状部24Bの後端部とは、接続部24Cを介して接続される。接続部24Cは、環状である。後側環状部24Aの外径は、前側環状部24Bの外径よりも小さい。後側環状部24Aの内径は、前側環状部24Bの内径よりも小さい。ベアリングボックス24とハンマケース4とは、ねじ部により固定されてもよいし、嵌め込み(軽合)により固定されてもよい。例えば、前側環状部24Bの外周部にねじ山が形成され、大筒部4Aの内周部にねじ溝が形成されてもよい。前側環状部24Bのねじ山と大筒部4Aのねじ溝とが結合されることにより、ベアリングボックス24とハンマケース4とが固定されてもよい。前側環状部24Bが大筒部4Aに嵌め込まれることにより、ベアリングボックス24とハンマケース4とが固定されてもよい。前側ロータベアリング38は、後側環状部24Aの径方向内側に配置される。スピンドルベアリング44は、接続部24Cの径方向内側に配置される。
【0055】
ハンマケース4は、左ハウジング2Lと右ハウジング2Rとに挟まれる。ハンマケース4の後部は、モータ収容部21に収容される。ハンマケース4は、モータ収容部21の前部に接続される。ベアリングボックス24は、モータ収容部21及びハンマケース4のそれぞれに固定される。
【0056】
ハンマケースカバー51は、ハンマケース4を保護する。ハンマケースカバー51は、ハンマケース4とハンマケース4の周囲の物体との接触を抑制する。ハンマケースカバー51は、大筒部4Aの外周面を覆うように配置される。なお、ハンマケースカバー51は省略されてもよい。
【0057】
モータ6は、インパクト工具1の動力源である。モータ6は、インナロータ型のブラシレスモータである。モータ6は、ステータ26と、ロータ27とを有する。ステータ26は、モータ収容部21に支持される。ロータ27の少なくとも一部は、ステータ26の内側に配置される。ロータ27は、ステータ26に対して回転する。ロータ27は、前後方向に延びる回転軸AXを中心に回転する。
【0058】
ステータ26は、ステータコア28と、後側インシュレータ29と、前側インシュレータ30と、コイル31とを有する。
【0059】
ステータコア28は、積層された複数の鋼板を含む。鋼板は、鉄を主成分とする金属製の板である。ステータコア28は、筒状である。ステータコア28は、ロータ27よりも径方向外側に配置される。ステータコア28は、コイル31を支持する複数のティースを有する。
【0060】
後側インシュレータ29及び前側インシュレータ30のそれぞれは、合成樹脂製の電気絶縁部材である。後側インシュレータ29及び前側インシュレータ30のそれぞれは、ステータコア28とコイル31とを電気的に絶縁する。後側インシュレータ29は、ステータコア28の後部に固定される。前側インシュレータ30は、ステータコア28の前部に固定される。後側インシュレータ29は、ティースの表面の一部を覆うように配置される。前側インシュレータ30は、ティースの表面の一部を覆うように配置される。
【0061】
コイル31は、後側インシュレータ29及び前側インシュレータ30を介してステータコア28に装着される。コイル31は、複数配置される。コイル31は、後側インシュレータ29及び前側インシュレータ30を介してステータコア28のティースの周囲に配置される。コイル31とステータコア28とは、前側インシュレータ30及び後側インシュレータ29により電気的に絶縁される。複数のコイル31は、ヒュージング端子36を介して接続される。
【0062】
ロータ27は、回転軸AXを中心に回転する。ロータ27は、ロータコア32と、ロータシャフト33と、ロータ磁石34Aと、センサ磁石34Bとを有する。
【0063】
ロータコア32及びロータシャフト33のそれぞれは、鋼製である。実施形態において、ロータコア32とロータシャフト33とは、一体である。ロータシャフト33の後部は、ロータコア32の後端面から後方に突出する。ロータシャフト33の前部は、ロータコア32の前端面から前方に突出する。
【0064】
ロータ磁石34Aは、ロータコア32に固定される。実施形態において、ロータ磁石34Aは、ロータコア32の周囲に配置される。センサ磁石34Bは、ロータコア32に固定される。実施形態において、センサ磁石34Bは、ロータコア32の前端面に配置される。
【0065】
前側インシュレータ30にセンサ基板35が取り付けられる。センサ基板35は、ねじ30Sにより前側インシュレータ30に固定される。センサ基板35は、円環状の回路基板と、回路基板に支持される回転検出素子とを有する。センサ基板35の少なくとも一部は、センサ磁石34Bの前端面に対向する。回転検出素子は、センサ磁石34Bの位置を検出することにより、ロータ27の回転方向の位置を検出する。
【0066】
ロータシャフト33の後端部は、後側ロータベアリング37に回転可能に支持される。ロータシャフト33の前端部は、前側ロータベアリング38に回転可能に支持される。後側ロータベアリング37は、リヤカバー3に保持される。前側ロータベアリング38は、ベアリングボックス24に保持される。
【0067】
ロータシャフト33の前端部は、ベアリングボックス24の後側環状部24Aに設けられた開口59を介してハンマケース4の内部空間に配置される。
【0068】
ロータシャフト33の前端部にピニオンギヤ41が固定される。ピニオンギヤ41は、減速機構7の少なくとも一部に連結される。ロータシャフト33は、ピニオンギヤ41を介して減速機構7に連結される。
【0069】
減速機構7は、ロータシャフト33とスピンドル8とを連結する。減速機構7のギヤは、ロータ27により駆動される。減速機構7は、ロータ27の回転をスピンドル8に伝達する。減速機構7は、ロータシャフト33の回転速度よりも低い回転速度でスピンドル8を回転させる。減速機構7は、ステータ26よりも前方に配置される。減速機構7は、遊星歯車機構を含む。
【0070】
減速機構7は、ピニオンギヤ41の周囲に配置される複数のプラネタリギヤ42と、複数のプラネタリギヤ42の周囲に配置されるインターナルギヤ43とを有する。ピニオンギヤ41、プラネタリギヤ42、及びインターナルギヤ43のそれぞれは、ハンマケース4に収容される。複数のプラネタリギヤ42のそれぞれは、ピニオンギヤ41に噛み合う。プラネタリギヤ42は、ピン42Pを介してスピンドル8に回転可能に支持される。スピンドル8は、プラネタリギヤ42により回転される。インターナルギヤ43は、プラネタリギヤ42に噛み合う内歯を有する。
【0071】
インターナルギヤ43は、ハンマケース4の大筒部4Aに固定される。インターナルギヤ43は、ハンマケース4に対して常に回転不可能である。
【0072】
モータ6の駆動によりロータシャフト33が回転すると、ピニオンギヤ41が回転し、プラネタリギヤ42がピニオンギヤ41の周囲を公転する。プラネタリギヤ42は、インターナルギヤ43の内歯に噛み合いながら公転する。プラネタリギヤ42の公転により、ピン42Pを介してプラネタリギヤ42に接続されているスピンドル8は、ロータシャフト33の回転速度よりも低い回転速度で回転する。
【0073】
スピンドル8は、モータ6により回転軸AXを中心に回転される。スピンドル8は、ロータ27により回転される。スピンドル8は、減速機構7を介して伝達されたロータ27の回転力により回転する。スピンドル8は、モータ6の回転力を、ボール48及びハンマ47を介してアンビル10に伝達する。スピンドル8の少なくとも一部は、モータ6よりも前方に配置される。スピンドル8は、ステータ26よりも前方に配置される。スピンドル8の少なくとも一部は、ロータ27よりも前方に配置される。スピンドル8の少なくとも一部は、減速機構7よりも前方に配置される。スピンドル8の少なくとも一部は、アンビル10よりも後方に配置される。
【0074】
スピンドル8は、スピンドルシャフト部8Aと、第1フランジ部8Bと、第2フランジ部8Cと、連結部8Dと、スピンドル凸部8Fとを有する。
【0075】
スピンドルシャフト部8Aは、前後方向に長いロッド状である。スピンドルシャフト部8Aの中心軸と回転軸AXとは、一致する。第1フランジ部8Bは、スピンドルシャフト部8Aの外周面の後端部から径方向外側に延びる。第2フランジ部8Cは、第1フランジ部8Bよりも後方に配置される。第2フランジ部8Cは、環状である。連結部8Dは、第1フランジ部8Bの一部と第2フランジ部8Cの一部とを連結する。スピンドル凸部8Fは、スピンドルシャフト部8Aの前端部から前方に突出する。ピン42Pの前端部は、第1フランジ部8Bに支持される。ピン42Pの後端部は、第2フランジ部8Cに支持される。プラネタリギヤ42は、第1フランジ部8Bと第2フランジ部8Cとの間に配置される。プラネタリギヤ42は、ピン42Pを介して第1フランジ部8B及び第2フランジ部8Cに回転可能に支持される。スピンドルベアリング44は、第2フランジ部8Cの後面から後方に突出するスピンドル8の筒状部の内側に配置される。スピンドルベアリング44は、スピンドル8の筒状部を保持する。スピンドルベアリング44は、ベアリングボックス24に保持される。
【0076】
打撃機構9は、モータ6により駆動される。モータ6の回転力は、減速機構7及びスピンドル8を介して打撃機構9に伝達される。打撃機構9は、モータ6により回転するスピンドル8の回転力に基づいて、アンビル10を回転方向に打撃する。打撃機構9は、ハンマ47と、ボール48と、コイルスプリング49と、ワッシャ50とを有する。ハンマ47、ボール48、コイルスプリング49、及びワッシャ50を含む打撃機構9は、ハンマケース4の大筒部4Aに収容される。
【0077】
ハンマ47は、減速機構7よりも前方に配置される。ハンマ47は、スピンドル8の周囲に配置される。ハンマ47は、スピンドルシャフト部8Aの周囲に配置される。ハンマ47は、スピンドルシャフト部8Aに保持される。ボール48は、スピンドル8とハンマ47との間に配置される。
【0078】
ハンマ47は、ボディ部47Aと、外筒部47Bと、内筒部47Cと、ハンマ突起部47Dとを有する。ボディ部47Aは、スピンドルシャフト部8Aの周囲に配置される。ボディ部47Aは、環状である。外筒部47B及び内筒部47Cのそれぞれは、ボディ部47Aから後方に突出する。外筒部47Bは、内筒部47Cよりも径方向外側に配置される。ボディ部47Aの後面と外筒部47Bの内周面と内筒部47Cの外周面とにより凹部47Eが規定される。凹部47Eは、ハンマ47の後端部から前方に窪むように設けられる。凹部47Eは、リング状である。スピンドルシャフト部8Aは、ボディ部47A及び内筒部47Cよりも径方向内側に配置される。内筒部47Cは、スピンドルシャフト部8Aの外周面8Sに接触する内周面47Sを有する。ハンマ突起部47Dは、ボディ部47Aから前方に突出する。ハンマ突起部47Dは、2つ設けられる。
【0079】
ハンマ47は、モータ6により回転される。モータ6の回転力は、減速機構7及びスピンドル8を介してハンマ47に伝達される。ハンマ47は、モータ6により回転するスピンドル8の回転力に基づいて、スピンドル8と一緒に回転可能である。ハンマ47の回転軸とスピンドル8の回転軸とモータ6の回転軸AXとは一致する。ハンマ47は、回転軸AXを中心に回転する。
【0080】
ワッシャ50は、凹部47Eの内側に配置される。ワッシャ50は、複数のボール54を介してハンマ47に支持される。ボール54は、ワッシャ50よりも前方に配置される。ボール54は、ボディ部47Aの後面とワッシャ50の前面との間に配置される。
【0081】
コイルスプリング49は、スピンドルシャフト部8Aの周囲に配置される。コイルスプリング49の後端部は、第1フランジ部8Bに支持される。コイルスプリング49の前端部は、凹部47Eの内側に配置され、ワッシャ50に支持される。コイルスプリング49は、ハンマ47を前方に移動させる弾性力を常時発生する。
【0082】
ボール48は、鉄鋼のような金属製である。ボール48は、スピンドルシャフト部8Aとボディ部47Aとの間に配置される。スピンドルシャフト部8Aは、ボール48の少なくとも一部が配置されるスピンドル溝8Gを有する。スピンドル溝8Gは、スピンドルシャフト部8Aの外周面の一部に設けられる。ハンマ47は、ボール48の少なくとも一部が配置されるハンマ溝47Gを有する。ハンマ溝47Gは、ボディ部47A及び内筒部47Cの内周面の一部に設けられる。
【0083】
ボール48は、2つ設けられる。スピンドル溝8Gは、スピンドルシャフト部8Aの外周面に2つ設けられる。ハンマ溝47Gは、ボディ部47A及び内筒部47Cの内周面に2つ設けられる。一方のボール48は、一方のスピンドル溝8Gと一方のハンマ溝47Gとの間に配置される。他方のボール48は、他方のスピンドル溝8Gと他方のハンマ溝47Gとの間に配置される。ボール48は、スピンドル溝8Gの内側及びハンマ溝47Gの内側のそれぞれを転がることができる。ハンマ47は、ボール48に伴って移動可能である。スピンドル8とハンマ47とは、スピンドル溝8G及びハンマ溝47Gにより規定される可動範囲において、軸方向及び回転方向のそれぞれに相対移動することができる。
【0084】
アンビル10は、モータ6よりも前方に配置される。アンビル10は、ロータ27の回転力に基づいて回転するインパクト工具1の出力部である。アンビル10の少なくとも一部は、スピンドル8よりも前方に配置される。アンビル10の少なくとも一部は、ハンマ47よりも前方に配置される。アンビル10は、ハンマ47により回転方向に打撃される。
【0085】
アンビル10は、アンビルシャフト部10Aと、アンビル突起部10Bとを有する。アンビルシャフト部10Aは、前後方向に長いロッド状である。アンビルシャフト部10Aの中心軸と回転軸AXとは、一致する。アンビル突起部10Bは、アンビルシャフト部10Aの後端部に設けられる。アンビル突起部10Bは、アンビルシャフト部10Aの後端部から径方向外側に突出する。アンビル突起部10Bは、2つ設けられる。
【0086】
アンビル10の前端面に工具孔10Cが設けられる。アンビル10の後端面にアンビル凹部10Dが設けられる。工具孔10Cは、アンビルシャフト部10Aの前端面から後方に延びるように形成される。工具孔10Cに先端工具が挿入される。先端工具は、アンビル10に装着される。アンビル凹部10Dは、アンビル10の後端面から前方に窪むように設けられる。アンビル凹部10Dにスピンドル凸部8Fが配置される。
【0087】
アンビル10は、アンビルベアリング46に回転可能に支持される。アンビル10の回転軸とハンマ47の回転軸とスピンドル8の回転軸とモータ6の回転軸AXとは一致する。アンビル10は、回転軸AXを中心に回転する。アンビルベアリング46は、アンビルシャフト部10Aの周囲に配置される。アンビルベアリング46とアンビルシャフト部10Aとの間にOリング45が配置される。アンビルベアリング46は、ハンマケース4の小筒部4Bの内側に配置される。アンビルベアリング46は、ハンマケース4の小筒部4Bに保持される。ハンマケース4は、アンビルベアリング46を介してアンビル10を支持する。アンビルベアリング46は、アンビルシャフト部10Aの前部を回転可能に支持する。実施形態において、アンビルベアリング46は、前後方向に2つ配置される。
【0088】
アンビル突起部10Bの前方にワッシャ56及び支持部材57が配置される。支持部材57は、接続部4Cの後面及びアンビルベアリング46の外輪の後面に接触するように配置される。支持部材57は、リング状である。支持部材57は、アンビルベアリング46が小筒部4Bから後方に抜けることを抑制する。また、支持部材57は、アンビル突起部10Bの前面とハンマケース4との接触を抑制する。ワッシャ56は、支持部材57を後方から支持する。ワッシャ56は、大筒部4Aの内周面に設けられた溝に配置される。
【0089】
ハンマ突起部47Dは、アンビル突起部10Bに接触可能である。ハンマ突起部47Dとアンビル突起部10Bとが接触している状態で、モータ6が駆動することにより、アンビル10は、ハンマ47及びスピンドル8と一緒に回転する。
【0090】
アンビル10は、ハンマ47により回転方向に打撃される。例えばねじ締め作業において、アンビル10に作用する負荷が高くなると、コイルスプリング49の荷重だけではアンビル10を回転させることができなくなる状況が発生する場合がある。コイルスプリング49の荷重だけではアンビル10を回転させることができなくなると、アンビル10及びハンマ47の回転が停止する。スピンドル8とハンマ47とは、ボール48を介して軸方向及び周方向のそれぞれに相対移動可能である。ハンマ47の回転が停止しても、スピンドル8の回転は、モータ6が発生する動力により継続される。ハンマ47の回転が停止している状態で、スピンドル8が回転すると、ボール48がスピンドル溝8G及びハンマ溝47Gのそれぞれにガイドされながら後方に移動する。ハンマ47の回転が停止している状態で、スピンドル8が回転すると、スピンドル8の外周面8Sとハンマ47の内周面47Sとが摺動する。ハンマ47は、ボール48から力を受け、ボール48に伴って後方に移動する。すなわち、ハンマ47は、アンビル10の回転が停止された状態で、スピンドル8が回転することにより、後方に移動する。ハンマ47が後方に移動することにより、ハンマ突起部47Dとアンビル突起部10Bとの接触が解除される。
【0091】
上述のように、コイルスプリング49は、ハンマ47を前方に移動させる弾性力を常時発生する。後方に移動したハンマ47は、コイルスプリング49の弾性力により、前方に移動する。ハンマ47は、前方に移動するとき、ボール48から回転方向の力を受ける。すなわち、ハンマ47は、回転しながら前方に移動する。ハンマ47が回転しながら前方に移動すると、ハンマ47は、回転しながらアンビル突起部10Bに接触する。これにより、アンビル突起部10Bは、ハンマ47のハンマ突起部47Dにより回転方向に打撃される。アンビル10には、モータ6の動力とハンマ47の慣性力との両方が作用する。したがって、アンビル10は、高いトルクで回転軸AXを中心に回転することができる。
【0092】
工具保持機構11は、アンビル10の前部の周囲に配置される。工具保持機構11は、アンビル10の工具孔10Cに挿入された先端工具を保持する。工具保持機構11は、先端工具を着脱可能である。
【0093】
工具保持機構11は、ボール71と、リーフスプリング72と、スリーブ73と、コイルスプリング74と、位置決め部材75とを有する。
【0094】
アンビル10は、ボール71を支持する支持凹部76を有する。支持凹部76は、アンビルシャフト部10Aの外面に形成される。実施形態において、支持凹部76は、アンビルシャフト部10Aに2つ形成される。
【0095】
ボール71は、アンビル10に移動可能に支持される。ボール71は、支持凹部76に配置される。ボール71は、1つの支持凹部76に1つ配置される。
【0096】
アンビルシャフト部10Aに、支持凹部76の内面と工具孔10Cの内面とを結ぶ貫通孔が形成される。ボール71の直径は、貫通孔の直径よりも小さい。ボール71が支持凹部76に支持された状態で、ボール71の少なくとも一部を介して、工具孔10Cの内側に配置される。ボール71は、工具孔10Cに挿入された先端工具を固定することができる。ボール71は、先端工具を固定する係合位置と先端工具の固定を解除する解除位置とに移動可能である。
【0097】
リーフスプリング72は、ボール71を係合位置に移動させる弾性力を発生する。リーフスプリング72は、アンビルシャフト部10Aの周囲に配置される。リーフスプリング72は、ボール71を前方に移動させる弾性力を発生する。
【0098】
スリーブ73は、円筒状の部材である。スリーブ73は、アンビルシャフト部10Aの周囲に配置される。スリーブ73は、アンビルシャフト部10Aの周囲において軸方向に移動可能である。スリーブ73は、係合位置に配置されているボール71が係合位置から脱出することを阻止することができる。スリーブ73は、軸方向に移動されることにより、ボール71を係合位置から解除位置に移動可能な状態に変化させることができる。
【0099】
スリーブ73は、アンビルシャフト部10Aの周囲において、ボール71の径方向外側への移動を阻止する阻止位置と径方向外側への移動を許容する許容位置とに移動可能である。
【0100】
スリーブ73が阻止位置に配置されることにより、係合位置に配置されているボール71が径方向外側に移動することが抑制される。すなわち、スリーブ73が阻止位置に配置されることにより、係合位置に配置されているボール71が係合位置から脱出することが阻止される。スリーブ73が阻止位置に配置されることにより、先端工具がボール71により固定された状態が維持される。
【0101】
スリーブ73が許容位置に移動されることにより、係合位置に配置されているボール71が径方向外側に移動することが許容される。スリーブ73は、許容位置に移動されることにより、ボール71を係合位置から解除位置に移動可能な状態に変化させる。すなわち、スリーブ73が許容位置に配置されることにより、係合位置に配置されているボール71が係合位置から脱出することが許容される。スリーブ73が許容位置に配置されることにより、先端工具がボール71により固定された状態が解除可能になる。
【0102】
コイルスプリング74は、スリーブ73が阻止位置に移動するように弾性力を発生する。コイルスプリング74は、アンビルシャフト部10Aの周囲に配置される。阻止位置は、許容位置よりも後方に規定される。コイルスプリング74は、スリーブ73を後方に移動させる弾性力を発生する。
【0103】
位置決め部材75は、アンビルシャフト部10Aの外面に固定されたリング状の部材である。位置決め部材75は、スリーブ73の後端部に対向可能な位置に固定される。位置決め部材75は、スリーブ73を阻止位置に位置決めする。コイルスプリング74から後方に移動する弾性力を付与されているスリーブ73は、位置決め部材75に接触することにより、阻止位置に位置決めされる。
【0104】
ファン12は、モータ6のステータ26よりも後方に配置される。ファン12は、モータ6を冷却するための気流を生成する。ファン12は、ロータ27の少なくとも一部に固定される。ファン12は、ブッシュ12Aを介してロータシャフト33の後部に固定される。ファン12は、後側ロータベアリング37とステータ26との間に配置される。ファン12は、ロータ27の回転により回転する。ロータシャフト33が回転することにより、ファン12は、ロータシャフト33と一緒に回転する。ファン12が回転することにより、ハウジング2の外部空間の空気が、吸気口19を介してハウジング2の内部空間に流入する。ハウジング2の内部空間に流入した空気は、ハウジング2の内部空間を流通することにより、モータ6を冷却する。ハウジング2の内部空間を流通した空気は、ファン12が回転することにより、排気口20を介してハウジング2の外部空間に流出する。
【0105】
バッテリ装着部13は、バッテリ保持部23の下部に配置される。バッテリ装着部13は、バッテリパック25に接続される。バッテリパック25は、バッテリ装着部13に装着される。バッテリパック25は、バッテリ装着部13に着脱可能である。バッテリパック25は、バッテリ保持部23の前方からバッテリ装着部13に挿入されることにより、バッテリ装着部13に装着される。バッテリパック25は、バッテリ装着部13から前方に抜去されることにより、バッテリ装着部13から外される。バッテリパック25は、二次電池を含む。実施形態において、バッテリパック25は、充電式のリチウムイオン電池を含む。バッテリ装着部13に装着されることにより、バッテリパック25は、インパクト工具1に電力を供給することができる。モータ6は、バッテリパック25から供給される電力に基づいて駆動する。
【0106】
トリガレバー14は、グリップ部22に設けられる。トリガレバー14は、モータ6を起動するために作業者に操作される。トリガレバー14が操作されることにより、モータ6の駆動と停止とが切り換えられる。
【0107】
正逆転切換レバー15は、グリップ部22の上部に設けられる。正逆転切換レバー15は、作業者に操作される。正逆転切換レバー15が操作されることにより、モータ6の回転方向が正転方向及び逆転方向の一方から他方に切り換えられる。モータ6の回転方向が切り換えられることにより、スピンドル8の回転方向が切り換えられる。
【0108】
ライトアセンブリ18は、照明光を射出する。ライトアセンブリ18は、アンビル10及びアンビル10の周辺を照明光で照明する。ライトアセンブリ18は、アンビル10の前方を照明光で照明する。また、ライトアセンブリ18は、アンビル10に装着された先端工具及び先端工具の周辺を照明光で照明する。実施形態において、ライトアセンブリ18は、小筒部4Bの周囲に配置される。ライトアセンブリ18は、回路基板18Aと、回路基板18Aに支持される発光素子18Bと、発光素子18Bから射出された光が通過する光学部材18Cとを有する。光学部材18Cは、リング状である。
【0109】
ライトカバー52は、ライトアセンブリ18を保護する。ライトカバー52は、ライトアセンブリ18とライトアセンブリ18の周囲の物体との接触を抑制する。ライトカバー52は、光学部材18Cの周囲に配置される。
【0110】
<スピンドルの内部空間>
図5は、図3の一部を拡大した図である。図3図4、及び図5に示すように、スピンドル8は、内部空間60を有する。スピンドル8の後端面に開口が設けられる。内部空間60は、スピンドル8の後端面に設けられた開口から前方に延びるようにスピンドル8の内部に形成される。
【0111】
内部空間60は、第1空間61と、第2空間62と、第3空間63と、第4空間64と、第5空間65とを含む。第1空間61は、スピンドル8の後端面の開口に接続される。第1空間61の後端部には、スピンドル8の後端面の開口を介してピニオンギヤ41の前端部が挿入される。第2空間62は、第1空間61よりも前方に設けられる。第3空間63は、第2空間62よりも前方に設けられる。第4空間64は、第3空間63よりも前方に設けられる。第5空間65は、第4空間64よりも前方に設けられる。
【0112】
第1空間61、第2空間62、第3空間63、第4空間64、及び第5空間65のそれぞれは、実質的に円柱状である。回転軸AXに直交する断面において、第1空間61、第2空間62、第3空間63、第4空間64、及び第5空間65のそれぞれは、円形状である。第1空間61の中心軸と、第2空間62の中心軸と、第3空間63の中心軸と、第4空間64の中心軸と、第5空間65の中心軸とは、実質的に一致する。第1空間61の中心軸、第2空間62の中心軸、第3空間63の中心軸、第4空間64の中心軸、及び第5空間65の中心軸と、回転軸AXとは、実質的に一致する。
【0113】
第2空間62の内径を示す第2内径D2は、第1空間61の内径を示す第1内径D1よりも小さい。第3空間63の内径を示す第3内径D3は、第2空間62の内径を示す第2内径D2よりも大きい。第3空間63の内径を示す第3内径D3は、第1空間61の内径を示す第1内径D1よりも小さい。第3空間63の内径を示す第3内径D3は、第4空間64の内径を示す第4内径D4よりも大きい。第5空間65の内径を示す第5内径D5は、第4空間64の内径を示す第4内径D4よりも小さい。第2空間62の内径を示す第2内径D2は、第4空間64の内径を示す第4内径D4と等しい。すなわち、[D1>D3>D2=D4>D5]の関係が成立する。
【0114】
前後方向において、第3空間63の寸法は、第2空間62の寸法及び第4空間64の寸法よりも大きい。前後方向において、第3空間63の寸法は、第1空間61の寸法及び第5空間65の寸法よりも小さい。前後方向において、第5空間65の寸法は、第1空間61の寸法よりも大きい。
【0115】
第1空間61の後端部は、スピンドル8の後端面の開口に接続される。第1空間61の前端部は、テーパ状の通路を介して第2空間62の後端部に接続される。第2空間62の前端部は、第3空間63の前端部に接続される。第2空間62の前端部と第3空間63の後端部との境界に段差面66が設けられる。段差面66は、前方を向く。第3空間63の前端部は、テーパ状の通路を介して第4空間64の後端部に接続される。第4空間64の前端部は、テーパ状の通路を介して第5空間65の後端部に接続される。
【0116】
第3空間63に潤滑油が収容される。潤滑油は、グリス(grease)を含む。
【0117】
スピンドル8は、第1供給口81と、第2供給口82とを有する。
【0118】
第1供給口81は、スピンドルシャフト部8Aの外周面に設けられる。第1供給口81は、第1空間61からの潤滑油をスピンドル8とハンマ47との間に供給する。実施形態において、第1供給口81は、スピンドルシャフト部8Aの外周面8Sと内筒部47Cの内周面47Sとの間に潤滑油を供給する。第1供給口81は、スピンドルシャフト部8Aの内部に形成された第1流路91を介して第3空間63に接続される。第1流路91は、第3空間63と第1供給口81とを接続するように、第3空間63から径方向外側に延びるように設けられる。スピンドル8の遠心力により、第3空間63に収容されている潤滑油は、第1供給口81に向かって第1流路91を流れる。第3空間63から第1流路91を介して第1供給口81に供給された潤滑油は、スピンドルシャフト部8Aの外周面8Sと内筒部47Cの内周面47Sとの間に供給される。
【0119】
上述のように、ハンマ47の回転が停止している状態で、スピンドル8が回転すると、スピンドル8の外周面8Sとハンマ47の内周面47Sとが摺動する。摺動面である外周面8Sと内周面47Sとの間に潤滑油が供給されることにより、外周面8S及び内周面47Sの摩耗又は焼き付きが抑制される。
【0120】
第1供給口81は、周方向に複数設けられる。実施形態において、第1供給口81は、第1供給口81Aと、周方向において第1供給口81Aとは異なる位置に設けられる第1供給口81Bとを含む。前後方向において、第1供給口81Aの位置と第1供給口81Bの位置とは、実質的に等しい。周方向において、第1供給口81Aと第1供給口81Bとは、180度だけ異なる位置に配置される。
【0121】
なお、周方向における第1供給口81Aと第1供給口81Bとの相対角度は、一例である。また、第1供給口81は、2つでなくてもよく、1つでもよいし、3つ以上の任意の複数でもよい。
【0122】
第2供給口82は、スピンドル8の前端部に設けられる。第2供給口82は、第3空間63からの潤滑油をスピンドル8とアンビル10との間に供給する。第5空間65の前端部は、第2供給口82に接続される。実施形態において、第2供給口82は、スピンドル凸部8Fに設けられる。第2供給口82は、スピンドル凸部8Fの表面とアンビル凹部10Dの内面との間に潤滑油を供給する。第3空間63から第4空間64及び第5空間65を介して第2供給口82に供給された潤滑油は、スピンドル凸部8Fの表面とアンビル凹部10Dの内面との間に供給される。
【0123】
<スピンドル凸部及びアンビル凹部>
図5に示すように、スピンドル8は、スピンドルシャフト部8Aと、スピンドルシャフト部8Aの前端面8Mから前方に突出するスピンドル凸部8Fとを有する。アンビル10は、アンビル10の後端面10Lに設けられ、スピンドル凸部8Fが配置されるアンビル凹部10Dを有する。
【0124】
また、スピンドル8は、スピンドル凸部8Fの前端面8Jから後方に窪む収容凹部8Kを有する。前端面8Jは、前方を向く。アンビル10は、アンビル凹部10Dの底面10Fから後方に突出する突起部10Gを有する。底面10Fは、後方を向く。突起部10Gは、収容凹部8Kの内側に配置される。第2供給口82は、前方を向く収容凹部8Kの底面に設けられる。
【0125】
突起部10Gの外径は、後方に向かって小さくなる。突起部10Gは、後方に向かって外径が小さくなるテーパ状である。収容凹部8Kの内径は、後方に向かって小さくなる。収容凹部8Kは、突起部10Gの形状に沿うように、後方に向かって内径が小さくなるテーパ状である。突起部10Gの後端面10Hは、アンビル10の後端面10Lよりも前方に配置される。
【0126】
実施形態において、スピンドルシャフト部8Aの前端面8Mとアンビル10の後端面10Lとは、接触する。スピンドル凸部8Fの外周面8Lとアンビル凹部10Dの内周面10Kとは、接触する。スピンドル凸部8Fの前端面8Jとアンビル凹部10Dの底面10Fとは、間隙を介して対向する。突起部10Gの外周面10Jと収容凹部8Kの内周面とは、平行である。突起部10Gの外周面10Jと収容凹部8Kの内周面とは、間隙を介して対向する。突起部10Gの後端面10Hは、第2供給口82と対向する。突起部10Gの後端面10Hと第2供給口82とは、離れている。
【0127】
<ソケットホルダ>
図6は、実施形態に係るインパクト工具1の上部を示す前方からの斜視図である。図7は、実施形態に係るインパクト工具1の上部を示す右前方からの分解斜視図である。図8は、実施形態に係るインパクト工具1の上部を示す左前方からの分解斜視図である。図9は、実施形態に係るインパクト工具1の上部を示す側面図である。
【0128】
図9に示すように、ソケット200がアンビル10に装着される場合がある。ソケット200の前端部には六角形の孔が設けられる。ソケット200の後部にはアンビル10の工具孔10Cに挿入される挿入部が設けられる。ソケット200の六角形の孔にボルトの頭部が配置された状態で、アンビル10が回転することにより、ボルトが対象に締め付けられる。
【0129】
ソケットホルダ100がハンマケース4に装着される。ソケットホルダ100は、連結部材105を介してソケット200を保持する。ソケットホルダ100は、ハンマケース4に設けられたフック部4Fに掛けられる円弧部103と、円弧部103の一端部に設けられた第1保持部101と、円弧部103の他端部に設けられた第2保持部102と、第1保持部101と第2保持部102とを固定する弾性リング104とを有する。
【0130】
図4及び図7に示すように、フック部4Fは、ハンマケース4の小筒部4Bに設けられる。フック部4Fは、小筒部4Bの外周面から径方向外側に突出する。フック部4Fは、リング状である。円弧部103の内周面には、フック部4Fが挿入される凹部が設けられる。円弧部103の凹部の内側にフック部4Fが挿入されることにより、円弧部103がフック部4Fに掛けられる。
【0131】
第1保持部101及び第2保持部102のそれぞれは、連結部材105を保持する。第1保持部101は、円弧部103の一端部から前方に突出するように設けられる。第2保持部102は、円弧部103の他端部から前方に突出するように設けられる。第1保持部101及び第2保持部102のそれぞれは、プレート状である。第1保持部101は、第1開口101Aを有する。第2保持部102は、第2開口102Aを有する。
【0132】
弾性リング104は、第1保持部101と第2保持部102とを固定する。弾性リングとして、ゴムリングが例示される。弾性リング104は、第1保持部101と第2保持部102とを囲むように配置される。
【0133】
ソケットホルダ100をハンマケース4に装着する場合、作業者は、円弧部103が拡径するように円弧部103を弾性変形させた状態で、円弧部103を小筒部4Bの周囲に配置する。円弧部103が小筒部4Bの周囲に配置され、円弧部103の凹部の内側にフック部4Fが挿入された後、作業者は、第1保持部101及び第2保持部102の前方から弾性リング104を第1保持部101及び第2保持部102に装着する。弾性リング104は、第1保持部101と第2保持部102とを囲むように配置されることにより、第1保持部101と第2保持部102とが離隔することが抑制される。
【0134】
連結部材105は、ワイヤ状である。連結部材105は、紐を含んでもよいし、チェーンを含んでもよいし、フレキシブルチューブを含んでもよい。連結部材105の一端部は、ソケット200の前部に装着される。連結部材105の他端部は、第1保持部101及び第2保持部102に装着される。連結部材105の他端部は、第1開口101A及び第2開口102Aのそれぞれに挿入される。ソケットホルダ100は、連結部材105を介してソケット200を保持する。ソケットホルダ100でソケット200の前部が保持されることがにより、仮にソケット200の中間部が折れても、ソケット200の前部が落下することが抑制される。
【0135】
ソケットホルダ100は、ハンマケース4に装着された状態で、ライトアセンブリ18の前方に配置される。円弧部103は、径方向に薄い板状の部材により形成される。これにより、光学部材18Cの光射出面(前面)が円弧部103で覆われることが抑制される。光学部材18Cの光射出面の一部は円弧部103で覆われるものの、図3に示すように、径方向において、円弧部103の設置範囲301と発光素子18Bの設置範囲302とは、重複しない。設置範囲302は、設置範囲301よりも径方向外側に存在する。そのため、ソケットホルダ100がハンマケース4に装着された状態で、ライトアセンブリ18は、ライトアセンブリ18よりも前方の照明対象を十分に照明することができる。
【0136】
<インパクト工具の動作>
次に、インパクト工具1の動作について説明する。例えば、作業対象にねじ締め作業を実施するとき、ねじ締め作業に使用される先端工具(ドライバビット)が、アンビル10の工具孔10Cに挿入される。工具孔10Cに挿入された先端工具は、工具保持機構11により保持される。先端工具がアンビル10に装着された後、作業者は、グリップ部22を例えば右手で握ってトリガレバー14を右手の人差し指で引き操作する。トリガレバー14が引き操作されると、バッテリパック25からモータ6に電力が供給され、モータ6が起動し、同時にライトアセンブリ18が点灯する。モータ6の起動により、ロータ27のロータシャフト33が回転する。ロータシャフト33が回転すると、ロータシャフト33の回転力がピニオンギヤ41を介してプラネタリギヤ42に伝達される。プラネタリギヤ42は、インターナルギヤ43の内歯に噛み合った状態で、自転しながらピニオンギヤ41の周囲を公転する。プラネタリギヤ42は、ピン42Pを介してスピンドル8に回転可能に支持される。プラネタリギヤ42の公転により、スピンドル8は、ロータシャフト33の回転速度よりも低い回転速度で回転する。
【0137】
ハンマ突起部47Dとアンビル突起部10Bとが接触している状態で、スピンドル8が回転すると、アンビル10は、ハンマ47及びスピンドル8と一緒に回転する。アンビル10が回転することにより、ねじ締め作業が進行する。
【0138】
ねじ締め作業の進行により、アンビル10に所定値以上の負荷が作用した場合、アンビル10及びハンマ47の回転が停止する。ハンマ47の回転が停止している状態で、スピンドル8が回転すると、ハンマ47は、後方に移動する。ハンマ47が後方に移動することにより、ハンマ突起部47Dとアンビル突起部10Bとの接触が解除される。後方に移動したハンマ47は、コイルスプリング49の弾性力により、回転しながら前方に移動する。ハンマ47が回転しながら前方に移動することにより、アンビル10は、ハンマ47により回転方向に打撃される。これにより、アンビル10は、高いトルクで回転軸AXを中心に回転する。そのため、ねじは作業対象に高いトルクで締め付けられる。
【0139】
<効果>
以上説明したように、実施形態において、インパクト工具1は、モータ6と、少なくとも一部がモータ6よりも前方に配置され、モータ6により回転されるスピンドル8と、スピンドル8の周囲に配置されるハンマ47と、少なくとも一部がスピンドル8よりも前方に配置され、ハンマ47により回転方向に打撃されるアンビル10と、スピンドル8の後端面に設けられた開口から前方に延びるようにスピンドル8の内部に形成される内部空間60と、を備える。内部空間60は、開口に接続される第1内径D1の第1空間61と、第1空間61よりも前方に設けられ第1内径D1よりも小さい第2内径D2の第2空間62と、第2空間62の前端部に接続され第2内径D2よりも大きい第3内径D3の第3空間63と、を含む。第3空間63に潤滑油が収容される。
【0140】
上記の構成では、第1空間61と第3空間63との間に内径が小さい第2空間62が設けられる。第2空間62が潤滑油の流れ抵抗部として機能するため、第3空間63に収容されている潤滑油が第2空間62を介して第1空間61に移動することが抑制される。そのため、第3空間63に収容されている潤滑油が開口を介して漏洩することが抑制される。これにより、スピンドル8とハンマ47との間に供給される潤滑油の量が少なくなってしまうことが抑制される。したがって、スピンドル8及びハンマ47の摩耗又は焼き付きが抑制され、インパクト工具1の寿命が短くなることが抑制される。
【0141】
実施形態において、第2空間62の前端部と第3空間63の後端部との境界に前方を向く段差面66が設けられる。
【0142】
上記の構成では、段差面66により、第3空間63に収容されている潤滑油が第2空間62に移動することが抑制される。
【0143】
実施形態において、第3内径D3は、第1内径D1よりも小さい。
【0144】
上記の構成では、スピンドル8の強度低下が抑制される。
【0145】
実施形態において、スピンドル8の外周面に設けられ、第3空間63からの潤滑油をハンマ47との間に供給する第1供給口81を備える。
【0146】
上記の構成では、第3空間63の潤滑油が第1供給口81を介してスピンドル8とハンマ47との間に供給される。
【0147】
実施形態において、スピンドル8に設けられ、第3空間63と第1供給口81とを接続する第1流路91を備える。
【0148】
上記の構成では、スピンドル8が回転すると、遠心力により第3空間63の潤滑油が第1流路91を介して第1供給口81に供給される。
【0149】
実施形態において、ハンマ47は、ボディ部47Aと、ボディ部47Aから後方に突出し、スピンドル8の外周面に接触する内周面を有する内筒部47Cと、を有する。第1供給口81は、スピンドル8の外周面とハンマ47の内筒部47Cの内周面との間に潤滑油を供給する。
【0150】
上記の構成では、スピンドル8の外周面とハンマ47の内筒部47Cの内周面との間に第3空間63からの潤滑油が供給されるので、スピンドル8のハンマ47の外周面とハンマ47の内筒部47Cの内周面との摩耗又は焼き付きが抑制される。
【0151】
実施形態において、第1供給口81は、周方向に複数設けられる。
【0152】
上記の構成では、第1供給口81が周方向に複数設けられるので、スピンドル8の外周面とハンマ47の内筒部47Cの内周面との間に潤滑油が満遍なく供給される。
【0153】
実施形態において、インパクト工具1は、スピンドル8の前端部に設けられ、第3空間63からの潤滑油をアンビル10との間に供給する第2供給口82を備える。
【0154】
上記の構成では、スピンドル8とアンビル10との間に第3空間63からの潤滑油が供給されるので、スピンドル8及びアンビル10の摩耗が抑制される。
【0155】
実施形態において、スピンドル8は、スピンドルシャフト部8Aと、スピンドルシャフト部8Aの前端部に設けられるスピンドル凸部8Fと、を有する。アンビル10は、アンビル10の後端面に設けられ、スピンドル凸部8Fが配置されるアンビル凹部10Dを有する。ハンマ47は、スピンドルシャフト部8Aの周囲に配置される。第2供給口82は、スピンドル凸部8Fに設けられる。
【0156】
上記の構成では、スピンドル凸部8Fの表面とアンビル凹部10Dの内面との間に第3空間63からの潤滑油が供給されるので、スピンドル凸部8Fの表面とアンビル凹部10Dの内面との摩耗が抑制される。
【0157】
実施形態において、スピンドル8は、前方を向くスピンドル凸部8Fの前端面から後方に窪む収容凹部8Kを有する。アンビル10は、後方を向くアンビル凹部10Dの底面10Fから後方に突出する突起部10Gを有する。突起部10Gは、収容凹部8Kの内側に配置される。
【0158】
上記の構成では、インパクト工具1の全長が長くなることが抑制されつつ、スピンドル凸部8Fとアンビル凹部10Dとの接触面積が小さくなることが抑制される。スピンドル凸部8Fとアンビル凹部10Dとの接触面積が小さくなると、スピンドル凸部8F及びアンビル凹部10Dの少なくとも一方に掛かる応力(接触面圧)が大きくなり、その結果、スピンドル凸部8F及びアンビル凹部10Dの少なくとも一方が激しく摩耗したり焼き付きを起こしたりする可能性がある。スピンドル凸部8Fとアンビル凹部10Dとの接触面積が小さくなることが抑制されるので、スピンドル凸部8F及びアンビル凹部10Dの摩耗又は焼き付きが抑制される。例えば、インパクト工具1の全長が長くなることが抑制されつつ、外周面8Lと内周面10Kとの接触面積が小さくなることが抑制される。そのため、インパクト工具1の寿命が短くなることが抑制される。なお、インパクト工具1の全長とは、リヤカバー3の後端部とアンビル10の前端部との前後方向の距離をいう。
【0159】
実施形態において、第2供給口82は、前方を向く収容凹部8Kの底面に設けられる。
【0160】
上記の構成では、スピンドル凸部8Fの表面及びアンビル凹部10Dの内面のそれぞれに潤滑油が満遍なく供給される。
【0161】
実施形態において、突起部10Gは、後方に向かって外径が小さくなるテーパ状である。
【0162】
上記の構成では、アンビル10に設けられた工具孔10Cの後端部の形状に合った突起部10Gが設けられる。
【0163】
実施形態において、突起部10Gの後端部(後端面10H)は、アンビル10の後端面10Lよりも前方に配置される。
【0164】
上記の構成では、突起部10Gがアンビル10の後端面10Lから後方に飛び出ないので、収容凹部8Kの深さを過度に深くしなくても済む。
【0165】
実施形態において、インパクト工具1は、アンビルベアリング46を介してアンビル10を支持するハンマケース4を備える。アンビル10は、ソケット200の後部が挿入される工具孔10Cを有する。連結部材105を介してソケット200を保持するソケットホルダ100がハンマケース4に装着される。ソケットホルダ100は、ハンマケース4に設けられたフック部4Fに掛けられる円弧部103と、円弧部103の一端部に設けられた第1保持部101と、円弧部103の他端部に設けられた第2保持部102と、第1保持部101と第2保持部102とを固定する弾性リング104と、を有する。連結部材105は、第1保持部101及び第2保持部102のそれぞれに連結される。
【0166】
上記の構成では、ソケットホルダ100でソケット200の前部が保持されることがにより、仮にソケット200の中間部が折れても、ソケット200の前部が落下することが抑制される。また、弾性リング104により第1保持部101と第2保持部102とが固定されるので、ソケットホルダ100の構造が簡素化され、ソケットホルダ100のコストが抑制される。
【0167】
実施形態において、第1保持部101は、円弧部103の一端部から前方に突出するように設けられる。第2保持部102は、円弧部103の他端部から前方に突出するように設けられる。
【0168】
上記の構成では、作業者は、第1保持部101及び第2保持部102の前方から弾性リング104を第1保持部101及び第2保持部102の周囲に装着することができる。
【0169】
実施形態において、第1保持部101は、第1開口101Aを有する。第2保持部102は、第2開口102Aを有する。連結部材105は、第1開口101A及び第2開口102Aのそれぞれに挿入される。
【0170】
上記の構成では、連結部材105が第1開口101A及び第2開口102Aのそれぞれに挿入されることによって、ソケットホルダ100と連結部材105とが連結される。
【0171】
[その他の実施形態]
上述の実施形態においては、インパクト工具1がインパクトドライバであることとした。インパクト工具1は、インパクトレンチでもよい。
【0172】
上述の実施形態において、インパクト工具1の電源は、バッテリパック25でなくてもよく、商用電源(交流電源)でもよい。
【符号の説明】
【0173】
1…インパクト工具、2…ハウジング、2L…左ハウジング、2R…右ハウジング、2S…ねじ、3…リヤカバー、3S…ねじ、4…ハンマケース、4A…大筒部、4B…小筒部、4C…接続部、4F…フック部、6…モータ、7…減速機構、8…スピンドル、8A…スピンドルシャフト部、8B…第1フランジ部、8C…第2フランジ部、8D…連結部、8F…スピンドル凸部、8K…収容凹部、8J…前端面、8L…外周面、8M…前端面、8G…スピンドル溝、8S…外周面、9…打撃機構、10…アンビル、10A…アンビルシャフト部、10B…アンビル突起部、10C…工具孔、10D…アンビル凹部、10F…底面、10G…突起部、10L…後端面、10H…後端面、10J…外周面、10K…内周面、11…工具保持機構、12…ファン、12A…ブッシュ、13…バッテリ装着部、14…トリガレバー、15…正逆転切換レバー、18…ライトアセンブリ、18A…回路基板、18B…発光素子、18C…光学部材、19…吸気口、20…排気口、21…モータ収容部、22…グリップ部、23…バッテリ保持部、24…ベアリングボックス、24A…後側環状部、24B…前側環状部、24C…接続部、25…バッテリパック、26…ステータ、27…ロータ、28…ステータコア、29…後側インシュレータ、30…前側インシュレータ、30S…ねじ、31…コイル、32…ロータコア、33…ロータシャフト、34A…ロータ磁石、34B…センサ磁石、35…センサ基板、36…ヒュージング端子、37…後側ロータベアリング、38…前側ロータベアリング、41…ピニオンギヤ、42…プラネタリギヤ、42P…ピン、43…インターナルギヤ、44…スピンドルベアリング、45…Oリング、46…アンビルベアリング、47…ハンマ、47A…ボディ部、47B…外筒部、47C…内筒部、47D…ハンマ突起部、47E…凹部、47G…ハンマ溝、47S…内周面、48…ボール、49…コイルスプリング、50…ワッシャ、51…ハンマケースカバー、52…ライトカバー、54…ボール、56…ワッシャ、57…支持部材、59…開口、60…内部空間、61…第1空間、62…第2空間、63…第3空間、64…第4空間、65…第5空間、66…段差面、71…ボール、72…リーフスプリング、73…スリーブ、74…コイルスプリング、75…位置決め部材、76…支持凹部、81…第1供給口、81A…第1供給口、81B…第1供給口、82…第2供給口、91…第1流路、100…ソケットホルダ、101…第1保持部、101A…第1開口、102…第2保持部、102A…第2開口、103…円弧部、104…弾性リング、105…連結部材、200…ソケット、AX…回転軸、D1…第1内径、D2…第2内径、D3…第3内径、D4…第4内径、D5…第5内径。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9