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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025037
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】セル方式製氷機
(51)【国際特許分類】
   F25C 1/045 20180101AFI20240216BHJP
【FI】
F25C1/045 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128131
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000208503
【氏名又は名称】大和冷機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】杉野 雄一
(72)【発明者】
【氏名】土井 和也
(57)【要約】
【課題】 水跳ねを防止するとともに、氷が水皿とセルとの間に挟持されてしまわないようにする。
【解決手段】 水皿20の上面の下流端側の縁部には、水抜き穴22を形成しつつ、その上流側の縁部に傾斜面23を形成しているため、水抜き穴22の周縁が凹部になっている。傾斜面23とすることで、水皿20の上面を流れてきた水は水抜き穴22に落ちる手前からタンク30に近づいていくことになり、水抜き穴22に落ちる際の水跳ねが少なくなる。傾斜面23には、上方に向けて延設され、上端が概ね水皿20の上面と同一平面となるように形成された複数のリブ(板材)24を形成してある。リブ24は、上述した凹部に氷が入り込まないようにする障害物といえる。リブ24のような障害物が凹部内に配設されていることにより、氷の重心は高くなる上、氷は引っかかり続ける可能性が低くなる。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に開口するセルと、
前記セルの下方に位置し、脱氷時に傾斜面となって上面を氷が滑落可能な水皿と、
前記水皿の下方に位置するタンクとを有し、
前記水皿における傾斜時の下流端側の縁部部位には、上面を流下する水を下方のタンクへ落下させる水抜き穴が形成されるとともに、
前記水抜き穴の近辺には流下する氷が入り込まないようにする障害物を配設してあることを特徴とするセル方式製氷機。
【請求項2】
前記水皿における上面であって、前記水抜き穴の周縁における上流端側は、前記タンクに向けて近づく傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のセル方式製氷機。
【請求項3】
前記障害物は、前記傾斜面に形成されて、上方に向けて延設され、上端が概ね前記水皿の上面と同一平面となるように形成された複数の板材であることを特徴とする請求項2に記載のセル方式製氷機。
【請求項4】
前記板材の上面は、上方に向かうほど幅狭となる断面形状となっていることを特徴とする請求項3に記載のセル方式製氷機。
【請求項5】
前記障害物は、前記傾斜面となる凹部に収容される別部材にて形成されていることを特徴とする請求項2に記載のセル方式製氷機。
【請求項6】
前記別部材の障害物は、前記凹部へ収容されている状態で上端部位が概ね前記水皿の上面と同一平面となるように形成された複数の板材であることを特徴とする請求項5に記載のセル方式製氷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セル方式製氷機に関する。
【背景技術】
【0002】
製氷機として、従来より、セル方式製氷機や、バスタブ式製氷機などが利用されている。このうちセル方式製氷機は、冷媒にて冷却されて下方に開口するカップ形状のセルと、このセルの下方に配置されて製氷時には水を下方からセル内に向けて噴出させるとともに、脱氷時に傾斜面となって上面を氷が滑落可能な水皿と、この水皿の下方に配置され、上方に向けて開口するカップ状に形成され、製氷用の水を蓄えつつ、水皿から流下する水を回収するタンクとを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-59657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のセル方式製氷機では、水皿は脱氷時に傾斜面となり、セルから落下する氷は傾斜面に沿って滑落して下方の氷貯蔵部へと落下する。液体の水が氷貯蔵部に流れ落ちると氷同士がくっついてしまう。これを防止するため、水皿における傾斜時の下流端側の縁部部位には、上面を流下する水を下方のタンクへ落下させる水抜き穴が形成されている。
【0005】
しかし、水抜き穴によって殆どの水が流れ落ちることは防止できるが、氷の滑落と共に勢いよく流れるときは、水が跳ねて氷貯蔵部に入ってしまうことがある。また、希に水抜き穴に氷が引っかかってしまうこともある。滑落しない状態で一定時間経過すると、水皿は元の水平な状態に戻ろうとするため、水皿とセルとの間に氷が挟まれて停止してしまうことがあった。
本発明は、水跳ねを防止するとともに、氷が水皿とセルとの間に挟持されてしまわないようにする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下方に開口するセルと、前記セルの下方に位置し、脱氷時に傾斜面となって上面を氷が滑落可能な水皿と、前記水皿の下方に位置するタンクとを有し、前記水皿における傾斜時の下流端側の縁部部位には、上面を流下する水を下方のタンクへ落下させる水抜き穴が形成されるとともに、前記水抜き穴の近辺には流下する氷が入り込まないようにする障害物を配設した構成としてある。
【0007】
上記構成において、セルの下方に位置する水皿が脱氷時に傾斜面となると、下方に開口するセルにて製造された氷は、水皿の上面を滑落し、水皿の下方に位置するタンクに落下していく。脱氷時、水皿上に残る液体の水は、水皿の上面に沿って流下するが、水皿における傾斜時の下流端側の縁部部位に形成された水抜き穴を介して下方のタンクに落下していく。
また、セルから脱氷した氷も水皿の上面に沿って滑落していき、概ね水抜き穴の上を通過してタンク外に落下していく。このとき、水抜き穴の近辺には障害物を配設してあるため、流下する氷が水抜き穴に入り込むこともない。
【0008】
本発明の他の構成として、前記水皿における上面であって、前記水抜き穴の周縁における上流端側は、前記タンクに向けて近づく傾斜面が形成された構成としてある。
上記構成において、水皿の上面における水抜き穴の周縁のうち上流端側は、タンクに向けて近づく傾斜面となっている。従って、水皿の上面を流れ落ちる水は、水抜き穴に近くなる部位で傾斜面を流れ落ちる。傾斜面はタンクに向けて近づく傾斜なので、水がタンク内に流れ落ちやすくなる。
【0009】
本発明の他の構成として前記障害物は、前記傾斜面に形成されて、上方に向けて延設され、上端が概ね前記傾斜面と同一平面となるように形成された複数の板材である構成としてある。
上記構成において、水抜き穴の周縁に傾斜面が形成されているので、水抜き穴を含めて周縁は必然的に凹部となる。しかし、この傾斜面からは上方に向けて複数の板材が延設されており、その上端は概ね水皿の上面と同一平面となるように形成されている。従って、水皿の上面を滑落してくる氷は、板材の上端上にさしかかるとき、水抜き穴の周縁に形成される凹部に入り込まない。そして、上端上を滑落して水抜き穴を通過して水皿からタンク外の下方へと落下していく。
【0010】
本発明の他の構成として前記板材の上面は、上方に向かうほど幅狭となる断面形状となった構成としてある。
上記構成において、板材の上面が上方に向かうほど幅狭となる断面形状であるため、氷が上面を滑落するときの抵抗が小さくなり、より引っかかりにくい。
【0011】
本発明の他の構成として前記障害物は、前記傾斜面となる凹部に収容される別部材にて形成された構成としてある。
上記構成において、傾斜面となる凹部に別部材にて形成された障害物が収容されており、氷は水抜き穴の上を通過するときに、この障害物の上面を滑落し、凹部に入り込むことがない。
【0012】
本発明の他の構成として前記別部材の障害物は、前記凹部へ収容されている状態で上端部位が概ね前記水皿の上面と同一平面となるように形成された複数の板材で構成としてある。
上記構成において、別部材の障害物は、凹部へ収容されている状態で上端部位が概ね水皿の上面と同一平面となっており、氷が水皿の上から水抜き穴の上を通過するときに、水皿の上面と同一平面となった障害物の上端部位の上面を滑落する。このため、引っかかることなく滑落することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水皿の上面を流下する水を下方のタンクへ落下させて水跳ねを防止しつつ、氷が水皿上で引っかかってしまわないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明が適用される製氷機の外観斜視図である。
図2】脱氷時の製氷ユニットの概略断面図である。
図3】水皿の斜視図である。
図4】リブの正面図である。
図5】リブの平面図である。
図6】リブの側面図である。
図7】リブがある場合の氷の重心位置を示す概略図である。
図8】リブがない場合の氷の重心位置を示す概略図である。
図9】変形例にかかる障害物を含む水皿の斜視図である。
図10】変形例にかかる障害物を含む水皿の一部概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面にもとづいて本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明が適用されるセル方式製氷機である製氷機の外観斜視図である。
同図において、製氷機10は、矩形の箱形に形成されており、正面の概ね上半分のドア11が取り付けられている。ドア11の上端部位には、横方向に伸びるように形成された下向きの凹部が取手11aとして形成されており、この取手11aに指先を挿入して手前に引くことにより、ドア11の下縁を回転軸芯として開口可能となっている。製氷機10の内部は、上方部位に後述する製氷ユニットが配置され、下方部位が氷の貯蔵室やコンプレッサーなどの冷却機構が配設されている。なお、セル式製氷機の基本構造については説明を省略する。
【0016】
図2は、脱氷時の製氷ユニットの概略断面図であり、図3は、水皿の斜視図である。
水皿20とタンク30とは一体として組み立てられており、水皿20の左壁面に形成されたヒンジ機構21によって上部フレーム12に対して所定角度範囲内で枢動可能に支持されている。水皿20は製氷時にその上面がほぼ水平に保たれて支持されているが、脱氷時に上記ヒンジ機構21を回転軸芯として傾動し、その上面が傾斜面となる。上面が傾斜面となることにより、図示しない製氷皿から脱落してくる氷を傾斜面に沿って滑落され、下方の貯蔵室に落下させる。
【0017】
水皿20が傾斜したときの下流端側の縁部部位には、上面を流下する水を下方のタンク30へ落下させる水抜き穴22が形成されている。この水抜き穴22は単なる平面に形成される穴ではなく、水皿20の下流端でタンク30と接する部位の壁面22aを下方に延設させつつ、先端を上流側にやや戻すようにすることで、水皿20上を流下してきて勢いの付いた水が、この水抜き穴22を通過するときに上記壁面22aにぶつかり、同壁面22aに沿って下方に向きを変えて流れ落ち、タンク30内へと回収される。
【0018】
この水抜き穴22は、水皿20上面を流下した水を氷の貯蔵庫に落とさずに回収するための穴である。従って、タンク30の壁面と水皿20の縁部とで穴を形成するようにしてもよい。例えば、水皿20の下流端が凹部となっているに過ぎず、この凹部に接するタンク30の壁面とによって穴を形成するようなものであってもよい。
【0019】
水皿20の上面であって水抜き穴22に隣接する上流端側の縁部は、図2等に示すように、水抜き穴22に近づくにつれて徐々に下方のタンク30に近づくような傾斜面23が形成されている。傾斜面23とすることで、水皿20の上面を流れてきた水は水抜き穴22に落ちる手前からタンク30に近づいていくことになり、水抜き穴22に落ちる際の水跳ねが少なくなる。このとき、より水皿20の上面になじみながら流下するように、傾斜面23の全部または一部にしぼ加工をしておいてもよい。
【0020】
水皿20の上面の下流端側の縁部には、このような水抜き穴22を形成しつつ、その上流側の縁部に傾斜面23を形成しているため、水抜き穴22の周縁が凹部になっている。このため、氷が水皿20の上面を滑落するときに、凹部に入り込んでしまい、水皿20の上面から滑落しないことが想定されうる。
このため、傾斜面23には、上方に向けて延設され、上端が概ね水皿20の上面と同一平面となるように形成された複数のリブ(板材)24を形成してある。
【0021】
図4は、リブの正面図であり、図5は、リブの平面図であり、図6は、リブの側面図である。
リブ24は、上述した凹部に氷が入り込まないようにする障害物といえる。リブ24は、上辺24aが水皿20の上面とほぼ同一平面となり、斜辺24bが上記傾斜面23に接しており、残りの一辺が水抜き穴22の縁部に接する垂直辺24cとなる概略三角形である。
【0022】
また、上辺24aは、上方に向かうほど幅狭となる断面形状となっている。より具体的には断面半円状である。垂直辺24cは、下流側に向かうほど幅狭となる断面形状となっている。より具体的には断面半円状である。このような形状とすることにより、氷と接触する部位の面積が小さくなり、氷は滑落しやすくなる。
【0023】
図7は、リブがある場合の氷の重心位置を示す概略図であり、図8は、リブがない場合の氷の重心位置を示す概略図である。
傾斜面23を形成したことで水跳ねはしにくくなるものの、凹部の容積が拡大し、図8に示すように氷が深く入り込む可能性がある。この凹部から抜け出せるか否かは、図8に示すように凹部に氷が入り込んだときに、氷の重心が水皿20の下流側端辺を超えているか否かによる。図8に示すように、重心が水皿20の下流側端辺よりも凹部側にあれば氷が貯蔵室に落下せず、引っかかり続ける可能性が高い。
【0024】
これに対してリブ24のような障害物が凹部内に配設されていることにより、氷が入り込める凹部の容積は実質的には狭まり、図7に示すように僅かしか入り込めない。さらに、このことによって氷の重心は高くなる上、水皿20の下流側端辺よりも凹部側に位置することが難しくなる。すなわち、氷は引っかかり続ける可能性が低く、容易に氷が貯蔵室に落下しやすくなる。
【0025】
タンク30は水皿20を下方から覆うように形成されており、水皿20から流下してくる製氷用の水、洗浄用の水を蓄える。タンク30に蓄えられている水を上記製氷皿に向けて繰り返し吹き付けることでゆっくりと製氷され、氷とならなかった水は水皿20からタンク30に向けて流下し、これを繰り返す。
氷ができると、水皿20とタンク30は傾斜され、洗浄水を水皿20表面に流すことで水皿20上面に生成される不要な氷を溶かし、製氷皿から脱落してくる氷が滑落しやすくする。
【0026】
タンク30の下面は概ね水平となっているが、傾動したときに下方で待ち受ける排水皿40に当接しないように、前記ヒンジ機構21と反対側の角部31を傾斜させて形成されている。なお、この部位は、余分な水を排水皿40に流下させる水路32も形成されている。
上述した実施形態においては、障害物として板材からなるリブ24を形成しているが、板材以外の形状でも、凹部に氷が入り込みにくくする障害物として有効である。板材であれば、形成も容易であり、余分な凹みなども形成されず、汚れも付着しにくい。
【0027】
また、リブ24は水皿20と一体的に形成されているが、この障害物は、傾斜面23となる凹部に収容される別部材にて形成することもできる。
【0028】
図9は、変形例にかかる障害物を含む水皿の斜視図であり、図10は、変形例にかかる障害物を含む水皿の一部概略断面図である。
図9図10に示す例では、別部材の障害物25は、凹部へ収容されている状態で上端部位が概ね水皿20の上面と同一平面となるように形成された複数の板材で形成されている。この例では、障害物25はネジ山のようにらせん状に凹部の長さ方向に延伸された形状としてある。らせん状とすることにより一体として形成され、凹部に収容される。むろん、一体で形成されていなくても良い。
【0029】
これら以外にも障害物は、製氷された氷が水皿20の上面を流下して滑落するときに、氷が水抜き穴の近辺に入り込まないようにすることができればよい。
【0030】
なお、本発明は上記実施例に限られるものでないことは言うまでもない。当業者であれば言うまでもないことであるが、
・上記実施例の中で開示した相互に置換可能な部材および構成等を適宜その組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術であって上記実施例の中で開示した部材および構成等と相互に置換可能な部材および構成等を適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術等に基づいて当業者が上記実施例の中で開示した部材および構成等の代用として想定し得る部材および構成等と適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
は本発明の一実施例として開示されるものである。
【符号の説明】
【0031】
10…製氷機、11…ドア、11a…取手、12…上部フレーム、20…水皿、21…ヒンジ機構、22…水抜き穴、22a…壁面、23…傾斜面、24…リブ(板材)、24a…上辺、24b…斜辺、24c…垂直辺、25…障害物、30…タンク、31…角部、32…水路、40…排水皿。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10