(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025044
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】取水装置
(51)【国際特許分類】
E02B 9/04 20060101AFI20240216BHJP
E02B 5/08 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
E02B9/04 Z
E02B5/08 102Z
E02B9/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128145
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000229128
【氏名又は名称】ベルテクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】田中 義人
(72)【発明者】
【氏名】岡井 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】有田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】松谷 英和
(57)【要約】
【課題】用水路から取水路に導かれる水量を適宜に調節できる取水装置を提供する。
【解決手段】取水装置1は、用水路Caから分岐した取水路Cbの取水口Ciに取り付けられるものであって、取水口Ciに対して枢動自在に設けられて用水路Caを流れる水の一部を取り込む取込部30と、取込部30の枢動先端側部分から取水路Cbの下流側に向かって延設されて取込部30に取り込まれた水を取水路Cbに案内する周側板33とを有し、取込部30を用水路Ca側に枢動させることにより、取込部30とともに周側板33が用水路Caの内側に突出する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
用水路から分岐した取水路の取水口に取り付けられる取水装置であって、
前記取水口に対して枢動自在に設けられて前記用水路を流れる水の一部を取り込む取込部と、
前記取込部の枢動先端側部分から前記取水路の下流側に向かって延設されて前記取込部に取り込まれた水を前記取水路に案内する案内部とを有し、
前記取込部を前記用水路側に枢動させることにより、前記取込部とともに前記案内部が前記用水路の内側に突出する
取水装置。
【請求項2】
前記案内部は、前記取水口の用水路上流側端縁の近接側に中心を有する円弧形状である
請求項1に記載の取水装置。
【請求項3】
前記取水口の用水路上流側端縁の近接側から前記案内部の底端部分に連接される底側案内部を有する
請求項1又は請求項2に記載の取水装置。
【請求項4】
前記取込部の枢動基端側部分と枢動先端側部分の間にある中途位置から前記取水路の下流側に向かって延設される中途案内部を有する
請求項1又は請求項2に記載の取水装置。
【請求項5】
複数枚の前記中途案内部を有し、
前記取込部の枢動基端側部分から枢動先端側部分に向かうにつれて前記中途案内部が前記取水路の下流側に向かって次第に長く形成された
請求項4に記載の取水装置。
【請求項6】
前記取込部は、前記用水路を流れる水に混入した異物を捕集する捕集構造を有する
請求項1に記載の取水装置。
【請求項7】
前記捕集構造は、上下方向に所定の間隔を隔てて配置される前記用水路の上下流方向に延設された複数の棒材を有する
請求項6に記載の取水装置。
【請求項8】
前記棒材の断面形状が前記捕集構造の入水側から出水側に向かって細くなる楔形状である
請求項7に記載の取水装置。
【請求項9】
互いに隣接する前記棒材の隙間が1.0mm~4.0mmであってもよい。
請求項7又は請求項8に記載の取水装置。
【請求項10】
前記捕集構造を第一捕集部とし、
前記第一捕集部の入水側に配置される第二捕集部を有する
請求項6に記載の取水装置。
【請求項11】
前記取水口よりも前記用水路の上流側の側壁から少なくとも前記第二捕集部の用水路上流側端部までに配置される第三捕集部を有する
請求項10に記載の取水装置。
【請求項12】
前記第二捕集部から前記用水路の下流側に向かって少なくとも前記取水口の用水路下流側端縁よりも長く延設された第四捕集部を有する
請求項10に記載の取水装置。
【請求項13】
前記取水口に嵌め合わされる枠体部と、
前記枠体部に前記取込部を枢動自在に支持する支持部と、
前記枠体部に前記取込部を所定の枢動角度で固定する固定部とを有し、
前記固定部は、前記枠体部に対して前記取込部の枢動角度を固定する固定箇所を固定可能とする
請求項1に記載の取水装置。
【請求項14】
前記固定箇所が前記取込部の枢動軸を中心として所定の角度ごとに設けられた
請求項13に記載の取水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、用水路から分岐した取水路の取水口に取り付けられる取水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、用水路を流れる水は、用水路から取水路に導かれ、種々の目的に利用される。用水路の側壁には、用水路を流れる水を取り込むべく取水口が設けられている。そして、かかる取水口に取水装置が取り付けられている(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、水の利用状況を鑑み、用水路から取水路に導かれる水量を適宜に調節したいという要望がある。しかし、既存の取水装置では、用水路を流れる水の水量に応じて取水路に導かれる水量が変化するにすぎず、適宜に調節することは不可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
用水路から取水路に導かれる水量を適宜に調節できる取水装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、用水路から分岐した取水路の取水口に取り付けられる取水装置であって、前記取水口に対して枢動自在に設けられて前記用水路を流れる水の一部を取り込む取込部と、前記取込部の枢動先端側部分から前記取水路の下流側に向かって延設されて前記取込部に取り込まれた水を前記取水路に案内する案内部とを有し、前記取込部を前記用水路側に枢動させることにより、前記取込部とともに前記案内部が前記用水路の内側に突出することを特徴としている。
なお、本発明における枢動先端側部分とは、取込部が枢動軸を中心として枢動したときの枢動半径が大きくなる外周端部分を意味している。但し、取込部の外周端縁に限定するものではない。例えば、外周端縁の近傍であってもよい。
【0007】
この発明により、用水路から取水路に導かれる水量を適宜に調節できる。
詳述すると、本発明に係る取水装置は、用水路から分岐した取水路の取水口に取り付けられる。かかる取水装置は、取水口に対して枢動自在に設けられて用水路を流れる水の一部を取り込む取込部と、取込部の枢動先端側部分から取水路の下流側に向かって延設されて取込部に取り込まれた水を取水路に案内する案内部とを有している。そして、取込部を用水路側に枢動させることにより、取込部とともに案内部が用水路の内側に突出する。このような構成により、取込部の枢動動作に応じて用水路の内側に案内部を突出させることができる。さらには取込部の枢動角度に応じて案内部の突出量を自在に調節することができる。そのため、案内部に沿って取水路に導かれる水量を適宜に調節することが可能となる。
【0008】
具体的には、取込部を用水路側に枢動させると、案内部が取水路の内側から移動して用水路の内側に突出する。そして、取込部の枢動角度を大きくすると、それに応じて案内部の突出量が増え、用水路の上流側から視た案内部の投影面積が大きくなる。そのため、かかる案内部に沿って取水路に導かれる水量を増量させることが可能となる。反対に、取込部の枢動角度を小さくすると、それに応じて案内部の突出量が減り、用水路の上流側から視た案内部の投影面積が小さくなる。そのため、かかる案内部に沿って取水路に導かれる水量を減少させることが可能となる。こうして、用水路から取水路に導かれる水量を適宜に調節することが可能となる。
【0009】
この発明の態様として、前記案内部は、前記取水口の用水路上流側端縁の近接側に中心を有する円弧形状であってもよい。
なお、本発明における用水路上流側端縁とは、取水口を形成する開口端縁のうちの用水路の上流側に位置する端縁を意味している。また、用水路上流側端縁の近接側に中心を有する円弧形状とは、枢動中心軸に沿う方向から視て用水路上流側が凹面となる円弧形状を意味している。但し、曲率が一定の円弧形状に限定するものではない。例えば、徐々に曲率が変化する円弧形状であってもよい。
【0010】
この発明により、案内部に沿って流れる水が乱れたり淀んだりすることなく、円滑に取水路に導かれることとなる。そのため、用水路を流れる水の一部を効率よく取水路に導くことが可能となる。
【0011】
またこの発明の態様として、前記取水口の用水路上流側端縁の近接側から前記案内部の底端部分に連接される底側案内部を有してもよい。
なお、本発明における用水路上流側端縁については、前述のとおりである。また、案内部の底端部分とは、案内部の底端縁に限定するものではない。例えば、底端縁の近傍であってもよい。
【0012】
この発明により、案内部に沿って流れる水が案内部の内周面側から外周面側へ底端縁を回り込むようにして流出してしまうことを防止できる。そのため、用水路を流れる水の一部をより効率よく取水路に導くことが可能となる。
【0013】
またこの発明の態様として、前記取込部の枢動基端側部分と枢動先端側部分の間にある中途位置から前記取水路の下流側に向かって延設される中途案内部を有してもよい。
なお、本発明における枢動基端側部分とは、取込部が枢動軸を中心として枢動したときの枢動軸そのものを意味している。また、枢動先端側部分については、前述のとおりである。
【0014】
この発明により、用水路から取水路に導かれる水の経路が、案内部に沿って流れる経路のほかに中途案内部に沿って流れる経路に分けられる。そのため、水が案内部に沿って流れる経路に偏らず、分散されて取水路に導かれるので、用水路を流れる水の一部をより効率よく取水路に導くことが可能となる。
【0015】
またこの発明の態様として、複数枚の前記中途案内部を有し、前記取込部の枢動基端側部分から枢動先端側部分に向かうにつれて前記中途案内部が前記取水路の下流側に向かって次第に長く形成されてもよい。
なお、本発明における枢動基端側部分及び枢動先端側部分については、前述のとおりである。そのため、枢動基端側部分から枢動先端側部分に向かうとは、取込部の枢動軸から外周端部分に向かうことを意味している。
【0016】
この発明により、用水路から取水路に導かれる水の経路が、案内部に沿って流れる経路のほかに曲がり半径に応じた各中途案内部に沿って流れる経路に分けられる。そのため、水が案内部に沿って流れる経路に偏らず、分散されてそれぞれの経路から取水路の下流側に向かって平行に導かれるので、用水路を流れる水の一部をより効率よく取水路に導くことが可能となる。
【0017】
またこの発明の態様として、前記取込部は、前記用水路を流れる水に混入した異物を捕集する捕集構造を有してもよい。
なお、本発明における異物とは、小枝や枯葉等の自然物に限定するものではない。例えば、紙やビニル等の人工物であってもよい。
【0018】
この発明により、用水路から取水路に導かれる水量を適宜に調節すると同時に水に混入した異物を堰き止めて除去することができる。そして、異物を除去した水を取水路に導くことが可能となる。
【0019】
またこの発明の態様として、前記捕集構造は、上下方向に所定の間隔を隔てて配置される前記用水路の上下流方向に延設された複数の棒材を有してもよい。
なお、本発明における用水路の上下流方向とは、用水路の上流側と下流側をむすぶ方向を意味している。但し、用水路を流れる水に対して平行であることに限定するものではない。例えば、所定の角度で傾斜していてもよい。
【0020】
この発明により、水に混入した異物を棒材によって堰き止めて除去することができる。また、用水路を流れる水のうち取込部に取り込まれなかった水は、上下流方向に延設された棒材に沿うようにして用水路の下流側へ流れることとなる。そのため、棒材に堰き止められた異物を用水路の下流側に押し流すことが可能となる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記棒材の断面形状が前記捕集構造の入水側から出水側に向かって細くなる楔形状であってもよい。
なお、本発明における捕集構造の入水側とは、捕集構造を通過する水の捕集構造よりも上流側を意味している。また、捕集構造の出水側とは、捕集構造を通過する水の捕集構造よりも下流側を意味している。
【0022】
この発明により、水が捕集構造を通過する際の抵抗を減らすことができる。また、捕集構造における入水側の面である取込面が平坦であるため、用水路を流れる水のうち取込部に取り込まれなかった水は、取込面に沿って円滑に用水路の下流側へ流れることとなる。そのため、棒材に堰き止められた異物を効率よく用水路の下流側に押し流すことが可能となる。
【0023】
またこの発明の態様として、互いに隣接する前記棒材の隙間が1.0mm~4.0mmであってもよい。
この発明により、水が捕集構造を通過する際の抵抗を減らしつつ異物を適切に除去することができる。隙間を1.0mmよりも小さくすれば、水が捕集構造を通過する際の抵抗が大きくなり過ぎてしまい、隙間を4.0mmよりも大きくすれば、小さな小枝や枯葉が堰き止められずに通過してしまうからである。
【0024】
またこの発明の態様として、前記捕集構造を第一捕集部とし、前記第一捕集部の入水側に配置される第二捕集部を有してもよい。
なお、本発明における第二捕集部は、水に混入した異物を捕集する機能を有すればよく、その構造について限定するものではない。但し、用水路の上下流方向に延設された複数の棒材で構成されているのが好ましい。
【0025】
この発明により、第一捕集部と、その上流側に配置された第二捕集部とで二重の捕集部が構成されるので、水に混入した異物を確実に除去することができる。そして、二重の捕集部によって異物を除去した水を取水路に導くことが可能となる。また、第一捕集部よりも上流側で第二捕集部が異物の少なくとも一部を除去するため、第一捕集部における異物の滞積を抑えることが可能となる。したがって、これらの捕集部に引っ掛かった異物を除去する整備作業までの期間を長く確保することも可能となる。
【0026】
またこの発明の態様として、前記取水口よりも前記用水路の上流側の側壁から少なくとも前記第二捕集部の用水路上流側端部までに配置される第三捕集部を有してもよい。
なお、本発明における第三捕集部も、水に混入した異物を捕集する機能を有すればよく、その構造について限定するものではない。但し、用水路の上下流方向に延設された複数の棒材で構成されているのが好ましい。
【0027】
この発明により、用水路の側壁に沿って流れる水が、第二捕集部の用水路上流側端部を回り込んで第一捕集部に向かう場合においても、第一捕集部と、その上流側に配置された第三捕集部とで二重の捕集部が構成されるので、水に混入した異物を確実に除去することができる。そして、二重の捕集部によって異物を除去した水を取水路に導くことが可能となる。また、第一捕集部よりも上流側で第三捕集部が異物の少なくとも一部を除去するため、第一捕集部における異物の滞積を抑えることが可能となる。したがって、これらの捕集部に引っ掛かった異物を除去する整備作業までの期間を長く確保することも可能となる。
【0028】
またこの発明の態様として、前記第二捕集部から前記用水路の下流側に向かって少なくとも前記取水口の用水路下流側端縁よりも長く延設された第四捕集部を有してもよい。
なお、本発明における第四捕集部も、水に混入した異物を捕集する機能を有すればよく、その構造について限定するものではない。但し、用水路の上下流方向に延設された複数の棒材で構成されているのが好ましい。
【0029】
この発明により、第二捕集部に沿って流れる水が、第二捕集部の用水路下流側端部を回り込んで第一捕集部に向かう場合においても、第一捕集部と、その上流側に配置された第四捕集部とで二重の捕集部が構成されるので、水に混入した異物を確実に除去することができる。そして、二重の捕集部によって異物を除去した水を取水路に導くことが可能となる。また、第一捕集部よりも上流側で第四捕集部が異物の少なくとも一部を除去するため、第一捕集部における異物の滞積を抑えることが可能となる。したがって、これらの捕集部に引っ掛かった異物を除去する整備作業までの期間を長く確保することも可能となる。
【0030】
またこの発明の態様として、前記取水口に嵌め合わされる枠体部と、前記枠体部に前記取込部を枢動自在に支持する支持部と、前記枠体部に前記取込部を所定の枢動角度で固定する固定部とを有し、前記固定部は、前記枠体部に対して前記取込部の枢動角度を固定する固定箇所を固定可能としてもよい。
【0031】
この発明により、用水路を流れる水に対して取込部を所定の枢動角度で固定できる。また、用水路の内側に突出した案内部を所定の突出量で固定でき、ひいては用水路の上流側から視た案内部を所定の投影面積で固定することができる。そのため、用水路を流れる水に押されて、取込部の枢動角度や案内部の突出量ならびに投影面積が変わってしまい、取水路に導かれる水量が変化してしまうことを防止できる。
【0032】
またこの発明の態様として、前記固定箇所が前記取込部の枢動軸を中心として所定の角度ごとに設けられてもよい。
なお、本発明における取込部の枢動軸とは、取込部が枢動する際の枢動中心軸を意味している。
【0033】
この発明により、用水路を流れる水に対して取込部を任意の枢動角度で固定できる。したがって、例えば、水の需要が少ないときには、用水路を流れる水に対して取込部を沿わせるように小さな枢動角度で固定でき、かつ用水路の内側に突出した案内部を小さな突出量で固定でき、ひいては用水路の上流側から視た案内部を小さな投影面積で固定できる。反対に、水の需要が多いときには、用水路を流れる水に対して取込部を対向させるように大きな枢動角度で固定でき、かつ用水路の内側に突出した案内部を大きな突出量で固定でき、ひいては用水路の上流側から視た案内部を大きな投影面積で固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図2】
図1における矢印Aの方向から視た取水装置の正面図。
【
図3】
図1における矢印Bの方向から視た取水装置の平面図。
【
図7】
図5における領域F及び領域Gの部分拡大図。
【
図8】
図5における領域H及び
図6における領域Iの部分拡大図。
【
図9】枢動体部を用水路側に枢動させる前後の状況を示す説明図。
【
図10】枢動体部の枢動角度と取水路に導かれる水量の関係を示す特性図。
【
図11】他の実施形態に係る取水装置を示す斜視図。
【
図12】
図11における矢印Jの方向から視た取水装置の正面図。
【
図13】
図11における矢印Kの方向から視た取水装置の平面図。
【
図14】枢動体部を用水路側に枢動させる前後の状況を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
この発明の一実施形態に係る取水装置1について詳述する。
本願においては、各図に用水路Ca及び取水路Cbにおける水の流れ方向を矢印Fにて表している。水は、矢印Fに沿って上流側から下流側へ流れているものとする。
【0036】
図1は取水装置1を示す斜視図である。
図2は
図1における矢印Aの方向から視た取水装置1の正面図であり、
図3は
図1における矢印Bの方向から視た取水装置1の平面図である。
図4は
図2におけるC-C矢視断面図であり、
図5は
図3におけるD-D矢視断面図であり、
図6は
図3におけるE-E矢視断面図である。
【0037】
また、
図7は
図5における領域F及び領域Gの部分拡大図である。
図8は
図5における領域H及び
図6における領域Iの部分拡大図である。そして、
図9は枢動体部3を用水路Ca側に枢動させる前後の状況を示す説明図であり、
図10は、枢動体部3の枢動角度と取水路Cbに導かれる水量の関係を示す特性図である。
【0038】
図1に示すように、用水路Caの側壁には、用水路Caを流れる水を取り込むべく取水口Ciが設けられている。そして、かかる取水口Ciに取水装置1が取り付けられている。取水装置1は、取水口Ciに嵌め合わされる枠体部2と、枠体部2の内側で枢動自在に支持される枢動体部3と、用水路Caを流れる水に混入した異物Dを捕集する異物捕集部4とで構成されている。以下に、
図1から
図9を用いて、枠体部2と枢動体部3と異物捕集部4について説明する。
【0039】
図1から
図6に示すように、枠体部2は、所定寸法に切り出された溝形鋼と断面四角形状の角形鋼管の組み合わせにより、正面側から視て矩形状に形成されている。枠体部2は、取水口Ciの底端縁に沿って水平に配置される底側横枠21と、取水口Ciの用水路上流側端縁に沿って鉛直に配置される上流側縦枠22と、取水口Ciの用水路下流側端縁に沿って鉛直に配置される下流側縦枠23と、上流側縦枠22ならびに下流側縦枠23の上端部分をつなぐ上側横枠24とを有している。上側横枠24には、取水装置1を設置する際に使用される取手241が溶接されている。
【0040】
また、枠体部2には、枢動体部3を枢動自在に支持する支持部25が設けられている。支持部25は、底側横枠21における上流側縦枠22の近傍部分に挿通された六角ボルト251と、上側横枠24における上流側縦枠22の近傍部分に挿通されたアイボルト252とで構成されている(
図7(a)及び(b)参照)。六角ボルト251とアイボルト252は、ともに鉛直線上に配置されており、枢動体部3を構成する枢動軸32の両端面に螺合されている。そのため、支持部25は、枢動軸32を枢動自在に支持することができ、ひいては枢動体部3を枢動自在に支持することができる(
図9参照)。
【0041】
さらに、枠体部2には、枢動体部3を所定の枢動角度で固定する固定部26が設けられている。固定部26は、上側横枠24における下流側縦枠23の近傍部分に形成された貫通孔24hと後述する上側板34の円弧部分に形成された貫通孔34hに挿通されるアイボルト261で構成されている(
図8(a)参照)。アイボルト261は、上方側から下方側に向かって挿通されるだけであるが、上側板34等に螺合されるとしてもよい。上側板34には、枢動軸32を中心として5度ごとに六つの貫通孔34hが形成されている。そのため、固定部26は、貫通孔24hに適宜の貫通孔34hを重ね合わせてアイボルト261を挿通あるいは螺合させることで、枢動体部3を任意の枢動角度で固定することができる。
【0042】
図1から
図6に示すように、枢動体部3は、所定形状に切り出された鋼板と断面円形状の円形鋼管の組み合せにより、正面側から視て矩形状に、かつ上方側から視て扇形状に形成されている。枢動体部3は、底側横枠21に沿って水平に配置される底側板31と、上流側縦枠22に沿って鉛直に配置される枢動軸32と、下流側縦枠23に沿って鉛直に配置される周側板33と、上側横枠24に沿って水平に配置され、枢動軸32ならびに周側板33の上端部分をつなぐ上側板34とを有している。上側板34には、枢動体部3の枢動角度を変更する際に使用される取手341が溶接されている。
【0043】
底側板31と上側板34は、互いに対して平行に配置されている。底側板31と上側板34は、上方側から視て上流側縦枠22の近接側を鋭角とし、下流側縦枠23の近接側を円弧とした扇形状に形成されている。枢動軸32は、平行に配置された底側板31と上側板34における鋭角部分をつなぐように溶接され、周側板33は、底側板31と上側板34における円弧部分をつなぐように溶接されている。周側板33は、上方側から視て枢動軸32を中心とした曲率が一定の円弧形状とされている(
図3及び
図4参照)。そのため、周側板33の外周面から下流側縦枠23の内壁面までの隙間は、枢動体部3が枢動軸32を中心として枢動しても不変である(
図9参照)。
【0044】
さらに、本実施形態に係る枢動体部3は、三枚の中間板35を有している。これらの中間板35は、互いに対して平行に、かつ互いに対して所定の距離を隔てて配置されている。また、これらの中間板35は、底側板31と上側板34における用水路Ca側の端縁部分からかかる端縁部分に対して垂直に取水路Cb側の端縁部分まで延設されている。なお、前述したように、底側板31と上側板34は、上方側から視て扇形状に形成されている。そのため、中間板35は、枢動軸32から周側板33に向かうにつれて取水路Cbの下流側に向かって次第に長く形成されている(
図4参照)。これらの中間板35は、湾曲しない平板とされているが、枢動軸32を中心に湾曲した湾曲板であってもよい。
【0045】
加えて、枢動体部3には、底側板31と上側板34における用水路Ca側の端縁部分ならびに枢動軸32と周側板33における用水路Ca側の端縁部分によって囲まれた略矩形状の開口30が形成されている。かかる開口30は、用水路Caを流れる水の一部を取り込む取込部30であるといえる。取込部30には、用水路Caを流れる水に混入した異物Dを捕集する異物捕集部4が取り付けられている。以降に、異物Dを捕集する異物捕集部4について説明する。なお、前述した周側板33は、取込部30の枢動先端側部分(取込部30が枢動軸32を中心として枢動したときの枢動半径が大きくなる外周端部分)から取水路Cbの下流側に向かって延設されて取込部30に取り込まれた水を取水路Cbに案内する案内部であるといえる。
【0046】
図1から
図6に示すように、異物捕集部4は、所定長さに切り出された鋼棒の組み合わせにより、正面側から視て矩形状に形成され、取込部30の内側に嵌め込まれている。異物捕集部4は、互いに対して平行に、かつ互いに対して所定の間隔を隔てて配置された複数のウェッジワイヤーと呼ばれる棒材41を有している(
図8(b)参照)。棒材41は、その両端部分が枢動体部3における枢動軸32と周側板33に溶接されている。また、棒材41は、その中途部分が棒材41に対して交差方向に配置されたサポートロッドと呼ばれる棒材42に対しても溶接されている。
【0047】
また、それぞれの棒材41は、用水路Caの上下流方向に延設されている。すなわち、用水路Caの上流側と下流側をむすぶ方向に沿って配置されている。このようにしたのは、用水路Caを流れる水のうち取込部30に取り込まれなかった水が棒材41に沿って円滑に流れるように意図したものである(
図9における矢印Fa参照)。
【0048】
さらに、それぞれの棒材41は、その断面形状が異物捕集部4の入水側から出水側に向かって細くなる楔形状とされている。すなわち、異物捕集部4を通過する水の異物捕集部4よりも上流側から下流側に向かって細くなる楔形状とされている。このようにしたのは、水が異物捕集部4を通過する際の抵抗を減らすことを意図したものである。なお、異物捕集部4における入水側の面である取込面4sは、棒材41と棒材41の隙間を除いて平坦な面となっている。
【0049】
加えて、それぞれの棒材41は、隣接する棒材41に対して1.0mm~4.0mmの隙間dをあけて配置されている。このように、隙間dを1.0mm~4.0mmに限定したのは、小枝や枯葉を水に混入した実験により見出された値である。つまり、隙間dを1.0mmよりも小さくすれば、水が異物捕集部4を通過する際の抵抗が大きくなり過ぎてしまい、隙間dを4.0mmよりも大きくすれば、小さな小枝や枯葉が堰き止められずに通過してしまうからである。なお、それぞれの棒材41は、用水路Caの上流側から下流側に向かって徐々に隙間dが広がるとしてもよい。水が異物捕集部4を通過する際の抵抗を減らしつつ異物Dを適切に除去するためである。
【0050】
次に、
図9及び
図10を用いて、本実施形態に係る取水装置1の動作態様と取水特性について説明する。ここでは、枢動体部3が枢動角度0度の状態から徐々に用水路Ca側に枢動され、最大枢動角度40度の状態まで枢動された場合を想定して説明する。
【0051】
枢動体部3が取水路Cbの内側に収容された枢動角度0度の状態において、取込部30は、用水路Caを流れる水に対して平行に配置される(
図9(a)参照)。このとき、取込部30に取り込まれた水を取水路Cbに案内する周側板33は、取水路Cbの内側に収容された状態となっている。そのため、取込部30に取り込まれた水は、周側板33や各中間板35に沿って蛇行しつつ取水路Cbに導かれることとなる。
【0052】
このように、取込部30とともに周側板33が用水路Caの内側に突出しない枢動角度0度の状態においては、用水路Caから取水路Cbに導かれる水量が少なくなる(
図10における点P1参照)。これは、用水路Caを流れる水が異物捕集部4における取込面4sに沿って用水路Caの下流側に流れやすくなり、ひいては取込部30に取り込まれにくくなるからである。換言すると、用水路Caを流れる水が取込部30に取り込まれにくくなり、ひいては取込面4sに沿って用水路Caの下流側に流れやすくなるからである。
【0053】
また、枢動体部3が用水路Ca側に枢動された枢動角度10度の状態において、取込部30は、用水路Caを流れる水に対して10度の角度で配置される。このとき、取込部30に取り込まれた水を取水路Cbに案内する周側板33は、用水路Caの内側に僅かに突出した状態となっている。そして、枢動体部3の枢動角度が10度から20度になると、周側板33が用水路Caの内側により突出した状態となる。こうして、取込部30に取り込まれた水は、周側板33や各中間板35に沿って旋回しつつ取水路Cbに導かれることとなる。
【0054】
このように、取込部30とともに周側板33が用水路Caの内側に突出した枢動角度10度の状態においては、用水路Caから取水路Cbに導かれる水量が枢動角度0度のときに比べて1.4倍程度多くなる(
図10における点P2参照)。そして、枢動角度20度の状態においては、用水路Caから取水路Cbに導かれる水量が枢動角度10度のときに比べて1.4倍程度多くなる(
図10における点P3参照)。これは、用水路Caの内側に突出した周側板33の突出量が増え、用水路Caの上流側から視た周側板33の投影面積が大きくなったことに起因する。
【0055】
さらに、枢動体部3が用水路Ca側に枢動された枢動角度30度の状態において、取込部30は、用水路Caを流れる水に対して30度の角度で配置される。このとき、取込部30に取り込まれた水を取水路Cbに案内する周側板33は、用水路Caの内側に大きく突出した状態となっている。そして、枢動体部3の枢動角度が30度から40度になると、周側板33が用水路Caの内側により突出した状態となる(
図9(b)参照)。こうして、取込部30に取り込まれた水は、周側板33や各中間板35に沿って滑らかに旋回しつつ取水路Cbに導かれることとなる。
【0056】
このように、取込部30とともに周側板33が用水路Caの内側に突出した枢動角度30度の状態においては、用水路Caから取水路Cbに導かれる水量が枢動角度20度のときに比べて1.4倍程度多くなる(
図10における点P4参照)。そして、枢動角度40度の状態においては、用水路Caから取水路Cbに導かれる水量が枢動角度30度のときに比べて1.4倍程度多くなる(
図10における点P5参照)。これは、用水路Caの内側に突出した周側板33の突出量がさらに増え、用水路Caの上流側から視た周側板33の投影面積がより大きくなったことに起因する。
【0057】
以上のように、本実施形態に係る取水装置1は、用水路Caから分岐した取水路Cbの取水口Ciに取り付けられるものであって、取水口Ciに対して枢動自在に設けられて用水路Caを流れる水の一部を取り込む取込部30と、取込部30の枢動先端側部分(取込部30が枢動軸32を中心として枢動したときの枢動半径が大きくなる外周端部分)から取水路Cbの下流側に向かって延設されて取込部30に取り込まれた水を取水路Cbに案内する周側板33とを有し、取込部30を用水路Ca側に枢動させることにより、取込部30とともに周側板33が用水路Caの内側に突出することを特徴としている。
【0058】
このような取水装置1によれば、用水路Caから取水路Cbに導かれる水量を適宜に調節できる。
詳述すると、本発明に係る取水装置1は、用水路Caから分岐した取水路Cbの取水口Ciに取り付けられる。かかる取水装置1は、取水口Ciに対して枢動自在に設けられて用水路Caを流れる水の一部を取り込む取込部30と、取込部30の枢動先端側部分から取水路Cbの下流側に向かって延設されて取込部30に取り込まれた水を取水路Cbに案内する周側板33とを有している。そして、取込部30を用水路Ca側に枢動させることにより、取込部30とともに周側板33が用水路Caの内側に突出する。このような構成により、取込部30の枢動動作に応じて用水路Caの内側に周側板33を突出させることができる。さらには取込部30の枢動角度に応じて周側板33の突出量を自在に調節することができる。そのため、周側板33に沿って取水路Cbに導かれる水量を適宜に調節することが可能となる。
【0059】
具体的には、取込部30を用水路Ca側に枢動させると、周側板33が取水路Cbの内側から移動して用水路Caの内側に突出する。そして、取込部30の枢動角度を大きくすると、それに応じて周側板33の突出量が増え、用水路Caの上流側から視た周側板33の投影面積が大きくなる。そのため、かかる周側板33に沿って取水路Cbに導かれる水量を増量させることが可能となる。反対に、取込部30の枢動角度を小さくすると、それに応じて周側板33の突出量が減り、用水路Caの上流側から視た周側板33の投影面積が小さくなる。そのため、かかる周側板33に沿って取水路Cbに導かれる水量を減少させることが可能となる。こうして、用水路Caから取水路Cbに導かれる水量を適宜に調節することが可能となる。
【0060】
また、本実施形態に係る取水装置1において、周側板33は、取水口Ciの用水路上流側端縁(取水口Ciを形成する開口端縁のうちの用水路Caの上流側に位置する端縁)の近接側に中心を有する円弧形状である。
【0061】
このような取水装置1によれば、周側板33に沿って流れる水が乱れたり淀んだりすることなく、円滑に取水路Cbに導かれることとなる。そのため、用水路Caを流れる水の一部を効率よく取水路Cbに導くことが可能となる。
【0062】
また、本実施形態に係る取水装置1においては、取水口Ciの用水路上流側端縁(取水口Ciを形成する開口端縁のうちの用水路Caの上流側に位置する端縁)の近接側から周側板33の底端部分に連接される底側板31を有している。
【0063】
このような取水装置1によれば、周側板33に沿って流れる水が周側板33の内周面側から外周面側へ底端縁を回り込むようにして流出してしまうことを防止できる。そのため、用水路Caを流れる水の一部をより効率よく取水路Cbに導くことが可能となる。
【0064】
また、本実施形態に係る取水装置1においては、取込部30の枢動基端側部分(取込部30が枢動軸32を中心として枢動したときの枢動軸32そのもの)と枢動先端側部分(取込部30が枢動軸32を中心として枢動したときの枢動半径が大きくなる外周端部分)の間にある中途位置から取水路Cbの下流側に向かって延設される中間板35を有している。
【0065】
このような取水装置1によれば、用水路Caから取水路Cbに導かれる水の経路が、周側板33に沿って流れる経路のほかに中間板35に沿って流れる経路に分けられる。そのため、水の経路が周側板33に沿って流れる経路に偏らず、分散されて取水路Cbに導かれるので、用水路Caを流れる水の一部をより効率よく取水路Cbに導くことが可能となる。
【0066】
また、本実施形態に係る取水装置1においては、複数枚の中間板35を有し、取込部30の枢動基端側部分(取込部30が枢動軸32を中心として枢動したときの枢動軸32そのもの)から枢動先端側部分(取込部30が枢動軸32を中心として枢動したときの枢動半径が大きくなる外周端部分)に向かうにつれて中間板35が取水路Cbの下流側に向かって次第に長く形成されている。
【0067】
このような取水装置1によれば、用水路Caから取水路Cbに導かれる水の経路が、周側板33に沿って流れる経路のほかに曲がり半径に応じた各中間板35に沿って流れる経路に分けられる。そのため、水が周側板33に沿って流れる経路に偏らず、分散されてそれぞれの経路から取水路Cbの下流側に向かって平行に導かれるので、用水路Caを流れる水の一部をより効率よく取水路Cbに導くことが可能となる。
【0068】
また、本実施形態に係る取水装置1において、取込部30は、用水路Caを流れる水に混入した異物Dを捕集する異物捕集部4を有しているため、用水路Caから取水路Cbに導かれる水量を適宜に調節すると同時に水に混入した異物Dを堰き止めて除去することができる。そして、異物Dを除去した水を取水路Cbに導くことが可能となる。
【0069】
また、本実施形態に係る取水装置1において、異物捕集部4は、上下方向に所定の間隔を隔てて配置される用水路Caの上下流方向に沿って延設された複数の棒材41を有しているため、水に混入した異物Dを棒材41によって堰き止めて除去することができる。また、用水路Caを流れる水のうち取込部30に取り込まれなかった水は、上下流方向に延設された棒材41に沿うようにして用水路Caの下流側へ流れることとなる。そのため、棒材41に堰き止められた異物Dを用水路Caの下流側に押し流すことが可能となる(
図9における矢印Fa参照)。
【0070】
また、本実施形態に係る取水装置1において、棒材41の断面形状が異物捕集部4の入水側から出水側に向かって細くなる楔形状であるため、水が異物捕集部4を通過する際の抵抗を減らすことができる。また、異物捕集部4における入水側の面である取込面4sが平坦であるため、用水路Caを流れる水のうち取込部30に取り込まれなかった水は、取込面4sに沿って円滑に用水路Caの下流側へ流れることとなる。そのため、棒材41に堰き止められた異物Dを効率よく用水路Caの下流側に押し流すことが可能となる(
図9における矢印Fa参照)。
【0071】
また、本実施形態に係る取水装置1においては、互いに隣接する棒材41の隙間dが1.0mm~4.0mmであるため、水が異物捕集部4を通過する際の抵抗を減らしつつ異物Dを適切に除去することができる。隙間dを1.0mmよりも小さくすれば、水が異物捕集部4を通過する際の抵抗が大きくなり過ぎてしまい、隙間dを4.0mmよりも大きくすれば、小さな小枝や枯葉が堰き止められずに通過してしまうからである。
【0072】
また、本実施形態に係る取水装置1においては、取水口Ciに嵌め合わされる枠体部2と、枠体部2に取込部30を枢動自在に支持する支持部25と、枠体部2に取込部30を所定の枢動角度で固定する固定部26とを有している。そして、固定部26は、枠体部2に対して取込部30の枢動角度を固定する固定箇所(上側板34の円弧部分に形成された貫通孔34h)を固定可能としているため、用水路Caを流れる水に対して取込部30を所定の枢動角度で固定できる。また、用水路Caの内側に突出した周側板33を所定の突出量で固定でき、ひいては用水路Caの上流側から視た周側板33を所定の投影面積で固定できる。そのため、用水路Caを流れる水に押されて、取込部30の枢動角度や周側板33の突出量ならびに投影面積が変わってしまい、取水路Cbに導かれる水量が変化してしまうことを防止できる。
【0073】
また、本実施形態に係る取水装置1において、固定箇所(上側板34の円弧部分に形成された貫通孔34h)が取込部30の枢動軸32を中心として5度ごとに設けられているため、用水路Caを流れる水に対して取込部30を任意の枢動角度で固定できる。したがって、例えば、水の需要が少ないときには、用水路Caを流れる水に対して取込部30を沿わせるように小さな枢動角度で固定でき、かつ用水路Caの内側に突出した周側板33を小さな突出量で固定でき、ひいては用水路Caの上流側から視た周側板33を小さな投影面積で固定できる。反対に、水の需要が多いときには、用水路Caを流れる水に対して取込部30を対向させるように大きな枢動角度で固定でき、かつ用水路Caの内側に突出した周側板33を大きな突出量で固定でき、ひいては用水路Caの上流側から視た周側板33を大きな投影面積で固定できる。
【0074】
この発明の構成と前述の実施形態との対応において、
取水装置は取水装置1に対応し、
枠体部は枠体部2に対応し、
枢動体部は枢動体部3に対応し、
捕集構造は異物捕集部4に対応し、
支持部は支持部25に対応し、
固定部は固定部26に対応し、
取込部は取込部30に対応し、
底側案内部は底側板31に対応し、
枢動軸は枢動軸32に対応し、
案内部は周側板33に対応し、
上側板は上側板34に対応し、
中途案内部は中間板35に対応し、
用水路は用水路Caに対応し、
取水路は取水路Cbに対応し、
取水口は取水口Ciに対応し、
異物は異物Dに対応するも、
この発明は、前述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0075】
例えば、本実施形態に係る取水装置1は、三枚の中間板35を有している。しかし、中間板35を有さない構造であってもよい。また、三枚よりも少ないあるいは多い中間板35を有する構造であってもよい。
【0076】
さらに、本実施形態に係る取水装置1は、異物捕集部4が枢動体部3における用水路Ca側の開口部分(入口部分)に配置されている。しかし、異物捕集部4が枢動体部3における取水路Cb側の開口部分(出口部分)に配置された構造であってもよい。また、異物捕集部4が枢動軸32を中心とした周方向の中途部分に配置された構造であってもよい。
【0077】
さらに、本実施形態に係る取水装置1は、異物Dを捕集する捕集構造として異物捕集部4を有するのみである。しかし、
図11から
図14に示すように、かかる異物捕集部4を第一捕集部4とし、第一捕集部4の入水側に配置される第二捕集部5を有してもよい。第二捕集部5も、上下方向に所定の間隔を隔てて配置される用水路Caの上下流方向に延設された複数の棒材で構成されているのが好ましい。
【0078】
このような取水装置1によれば、第一捕集部4と、その上流側に配置された第二捕集部5とで二重の捕集部4,5が構成されるので、水に混入した異物Dを確実に除去することができる。そして、二重の捕集部4,5によって異物Dを除去した水を取水路Cbに導くことが可能となる。また、第一捕集部4よりも上流側で第二捕集部5が異物Dの少なくとも一部を除去するため、第一捕集部4における異物Dの滞積を抑えることが可能となる。したがって、これらの捕集部4,5に引っ掛かった異物Dを除去する整備作業までの期間を長く確保することも可能となる。
【0079】
なお、第二捕集部5は、第一捕集部4に対して平行に配置されているが、これに限定するものではない。例えば、取水口Ciよりも用水路Caの上流側の側壁に第二捕集部5の用水路上流側端部5uが近接し、用水路Caの下流側に向かうにつれて第一捕集部4から離間するように配置されてもよい。
【0080】
さらに、
図11から
図14に示すように、取水口Ciよりも用水路Caの上流側の側壁から少なくとも第二捕集部5の用水路上流側端部5uまでに配置される第三捕集部6を有してもよい。第三捕集部6も、上下方向に所定の間隔を隔てて配置される用水路Caの上下流方向に延設された複数の棒材で構成されているのが好ましい。
【0081】
このような取水装置1によれば、用水路Caの側壁に沿って流れる水が、第二捕集部5の用水路上流側端部5uを回り込んで第一捕集部4に向かう場合においても、第一捕集部4と、その上流側に配置された第三捕集部6とで二重の捕集部4,6が構成されるので、水に混入した異物Dを確実に除去することができる。そして、二重の捕集部4,6によって異物Dを除去した水を取水路Cbに導くことが可能となる。また、第一捕集部4よりも上流側で第三捕集部6が異物Dの少なくとも一部を除去するため、第一捕集部4における異物Dの滞積を抑えることが可能となる。したがって、これらの捕集部4,6に引っ掛かった異物Dを除去する整備作業までの期間を長く確保することも可能となる。
【0082】
なお、第三捕集部6は、第二捕集部5とは異なる別個の構成部品であるが、これに限定するものではない。例えば、第二捕集部5が用水路Caの上流側に延設されて第三捕集部6を構成してもよい。また、第三捕集部6は、第二捕集部5に固定されているが、用水路Caの側壁や上流側縦枠22に固定されてもよい。
【0083】
さらに、
図11から
図14に示すように、第二捕集部5から用水路Caの下流側に向かって少なくとも取水口Ciの用水路下流側端縁よりも長く延設された第四捕集部7を有してもよい。第四捕集部7も、上下方向に所定の間隔を隔てて配置される水平方向に延設された複数の棒材で構成されているのが好ましい。
【0084】
このような取水装置1によれば、第二捕集部5に沿って流れる水が、第二捕集部5の用水路下流側端部5dを回り込んで第一捕集部4に向かう場合においても、第一捕集部4と、その上流側に配置された第四捕集部7とで二重の捕集部4,7が構成されるので、水に混入した異物Dを確実に除去することができる。そして、二重の捕集部4,7によって異物Dを除去した水を取水路Cbに導くことが可能となる。また、第一捕集部4よりも上流側で第四捕集部7が異物Dの少なくとも一部を除去するため、第一捕集部4における異物Dの滞積を抑えることが可能となる。したがって、これらの捕集部4,7に引っ掛かった異物Dを除去する整備作業までの期間を長く確保することも可能となる。
【0085】
なお、第四捕集部7は、第二捕集部5とは異なる別個の構成部品であるが、これに限定するものではない。例えば、第二捕集部5が用水路Caの下流側に延設されて第四捕集部7を構成してもよい。また、第四捕集部7は、第一捕集部4に対して平行に配置されているが、第二捕集部5の用水路下流側端部5dから用水路Caの下流側の側壁に近づくように配置されてもよい。枢動体部3が用水路Ca側に枢動した状態において、第四捕集部7が用水路Caの内側に大きく張り出してしまい、用水路Caを流れる水を阻害してしまうことを防ぐためである。
【符号の説明】
【0086】
1…取水装置
2…枠体部
3…枢動体部
4…異物捕集部
4…第一捕集部
5…第二捕集部
6…第三捕集部
7…第四捕集部
25…支持部
26…固定部
30…取込部
31…底側板
32…枢動軸
33…周側板
34…上側板
35…中間板
Ca…用水路
Cb…取水路
Ci…取水口
D…異物