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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025062
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】ポリウレタン発泡体及びバット
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20240216BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20240216BHJP
   C08G 18/40 20060101ALI20240216BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20240216BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20240216BHJP
   A63B 59/50 20150101ALI20240216BHJP
   A63B 69/00 20060101ALI20240216BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20240216BHJP
   A63B 102/18 20150101ALN20240216BHJP
【FI】
C08G18/00 F
C08G18/10
C08G18/40 009
C08G18/48 004
C08G18/76 078
A63B59/50
A63B69/00 505A
C08G101:00
A63B102:18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128200
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧原 伸征
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA07
4J034CA04
4J034CE01
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB05
4J034DB07
4J034DC50
4J034DG02
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG05
4J034DG06
4J034DG08
4J034DG09
4J034DG14
4J034EA12
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA42
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC17
4J034KC18
4J034KD02
4J034KD07
4J034KD12
4J034NA03
4J034QA01
4J034QB01
4J034QB13
4J034QB14
4J034QB16
4J034QB17
4J034QC01
4J034QD03
4J034RA03
(57)【要約】
【課題】汎用性が高く、ポリウレタン発泡体の耐久性を向上できる技術を提供する。
【解決手段】ポリウレタン発泡体は、イソシアネート成分と、活性水素基を有する化合物とを含むポリウレタン発泡体用組成物から得られたポリウレタン発泡体であって、イソシアネート成分は、ポリオールと、ポリイソシアネートとを含む組成物から得られたイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーであり、ポリウレタン発泡体用組成物のイソシアネートインデックスは120より大きく170以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート成分と、活性水素基を有する化合物とを含むポリウレタン発泡体用組成物から得られたポリウレタン発泡体であって、
前記イソシアネート成分は、ポリオールと、ポリイソシアネートとを含む組成物から得られたイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーであり、
前記ポリウレタン発泡体用組成物のイソシアネートインデックスは120より大きく170以下である、ポリウレタン発泡体。
【請求項2】
前記ポリオールには、2官能のポリオールが含まれる、請求項1に記載のポリウレタン発泡体。
【請求項3】
前記ポリオールには、3官能の重量平均分子量1000-10000のポリエーテルポリオールが含まれる、請求項2に記載のポリウレタン発泡体。
【請求項4】
前記ポリイソシアネートには、1,5-ナフタレンジイソシアネートが含まれる、請求項1又は請求項2に記載のポリウレタン発泡体。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のポリウレタン発泡体を備えるバット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリウレタン発泡体及びバットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、イソシアネート成分と、発泡剤と、触媒とを含むポリウレタン発泡体用組成物から得られるポリウレタン発泡体が記載されている。イソシアネート成分は、ポリオール成分と、活性水素基を有する化合物であり環状部分を有するポリロタキサンと、イソシアネートと、から得られたイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーである。このような構成によれば、破壊やへたり等に対する耐久性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-189953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のイソシアネート成分は、特殊な原料から得られる。ポリウレタン発泡体の耐久性を向上するうえで、種々の原料から得られたイソシアネート成分に適用可能な汎用性が高い技術が望まれる。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、汎用性が高く、ポリウレタン発泡体の耐久性を向上できる技術を提供することを目的とする。本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
イソシアネート成分と、活性水素基を有する化合物とを含むポリウレタン発泡体用組成物から得られたポリウレタン発泡体であって、
前記イソシアネート成分は、ポリオールと、ポリイソシアネートとを含む組成物から得られたイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーであり、
前記ポリウレタン発泡体用組成物のイソシアネートインデックスは120より大きく170以下である、ポリウレタン発泡体。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、汎用性が高く、ポリウレタン発泡体の耐久性を向上できる技術を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
・前記ポリオールには、2官能のポリオールが含まれる、ポリウレタン発泡体。
・前記ポリオールには、3官能の重量平均分子量1000-10000のポリエーテルポリオールが含まれる、ポリウレタン発泡体。
・前記ポリイソシアネートには、1,5-ナフタレンジイソシアネートが含まれる、ポリウレタン発泡体。
・上記のポリウレタン発泡体を備えるバット。
【0009】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「-」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10-20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10-20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0010】
1.ポリウレタンフォーム
ポリウレタン発泡体は、イソシアネート成分と、活性水素基を有する化合物とを含むポリウレタン発泡体用組成物から得られたポリウレタン発泡体であって、イソシアネート成分は、ポリオールと、ポリイソシアネートとを含む組成物から得られたイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーであり、ポリウレタン発泡体用組成物のイソシアネートインデックスは120より大きく170以下である。
【0011】
(1)イソシアネート成分
イソシアネート成分は、ポリオールと、ポリイソシアネートとを含む組成物から得られたイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーである。ウレタンプレポリマーを用いるプレポリマー法によれば、ソフトセグメントとハードセグメントの結晶の分布を調整し、規則的な結晶構造を形成しやすい。この結果、結晶性のよいウレタンエラストマーを好適に得ることができ、ポリウレタン発泡体の機械強度及び耐久性を向上できる。ウレタンプレポリマーのNCO%は特に限定されない。ウレタンプレポリマーのNCO%は、機械強度、柔軟性、及び耐久性の観点から、好ましくは2.5%以上5.0%以下であり、より好ましくは3.0%以上5.0%以下である。
【0012】
(1-1)ポリオール
ポリオールは特に限定されない。ポリオールには、2官能のポリオールが含まれることが好ましい。2官能のポリオールとしては、ポリテトラメチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリアルキレングリコール等が挙げられる。2官能のポリオールは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。2官能のポリオールは、反発弾性を向上する観点から、ポリテトラメチレングリコール及び/又はポリトリメチレングリコールであることが好ましく、ポリテトラメチレングリコールであることがより好ましい。ポリテトラメチレングリコールは、[-CHCHCHCH-O-]で示される繰り返し単位を有するポリオールである。
【0013】
ポリテトラメチレングリコールの重量平均分子量及び水酸基価は特に限定されない。ポリテトラメチレングリコールの重量平均分子量は、好ましくは500-5000であり、より好ましくは1000-4500であり、更に好ましくは1300-4000である。ポリテトラメチレングリコールの水酸基価は、好ましくは20mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であり、より好ましくは25mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であり、更に好ましくは30mgKOH/g以上120mgKOH/g以下である。
なお、本開示において、ポリオールの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)法による測定値である。ポリオールが市販品である場合には、重量平均分子量としてカタログ値を採用してもよい。
【0014】
ポリウレタン発泡体の反発弾性率を向上する観点から、ポリテトラメチレングリコールの含有量は、ポリオール全体を100質量部とした場合に、50質量部以上が好ましく、60質量部以上がより好ましく、70質量部以上が更に好ましい。ポリテトラメチレングリコールの含有量の上限値は、100質量部であってもよく、95質量部以下であってもよい。これらの観点から、ポリテトラメチレングリコールの含有量は、ポリオール全体を100質量部とした場合に、50質量部以上100質量部以下が好ましく、60質量部以上100質量部以下がより好ましく、70質量部以上95質量部以下が更に好ましい。
【0015】
ポリオールには、成形性を確保する観点から、3官能の重量平均分子量1000-10000のポリエーテルポリオールが含まれていてもよい。ポリエーテルポリオールは、官能基数が3であり、重量平均分子量が1000-10000であれば、特に限定されない。以下の説明では、本ポリオールを3官能のポリエーテルポリオールとも称する。3官能のポリエーテルポリオールは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0016】
3官能のポリエーテルポリオールは、活性水素含有基を3個有する化合物に、1種以上のアルキレンオキサイドをランダム的又はブロック的に、好ましくはブロック的に開環付加させて得ることができる。開環付加されるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、2,3-ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等が挙げられる。ポリエーテルポリオールは、プロピレンオキサイドユニットを少なくとも含むポリエーテルポリオールであることが好ましく、ポリエチレンオキサイド-ポリプロピレンオキサイド共重合体であることがより好ましく、両末端にポリエチレンオキサイドが付加されているポリエチレンオキサイド-ポリプロピレンオキサイドブロック共重合体であることが更に好ましい。
【0017】
3官能のポリエーテルポリオールの重量平均分子量は1000-10000であり、好ましくは2500-9000であり、より好ましくは4000-8000である。ポリエーテルポリオールの水酸基価は、好ましくは15mgKOH/g以上180mgKOH/g以下であり、より好ましくは18mgKOH/g以上70mgKOH/g以下であり、更に好ましくは20mgKOH/g以上45mgKOH/g以下である。
3官能のポリエーテルポリオールの含有量は、ポリオール全体を100質量部とした場合に、0質量部以上であり、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、7質量部以上が更に好ましい。3官能のポリエーテルポリオールの含有量は、例えば、50質量部以下である。
【0018】
ポリテトラメチレングリコールと、3官能のポリエーテルポリオールを併用する場合において、ポリテトラメチレングリコールと、3官能のポリエーテルポリオールの質量比は特に限定されない。ポリウレタン発泡体の反発弾性を確保しつつ、成形性を良くする観点から、ポリテトラメチレングリコールと3官能のポリエーテルポリオールの質量比(ポリテトラメチレングリコール:3官能のポリエーテルポリオール)は、100:0-50:50であり、好ましくは100:0-60:40であり、より好ましくは95:5-70:30である。
【0019】
ポリオールには、ポリテトラメチレングリコールと3官能のポリエーテルポリオール以外のポリオール(その他のポリオール)が含まれていてもよい。その場合であっても、その他のポリオールの含有量は、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0020】
(1-2)ポリイソシアネート
ポリイソシアネートは、ポリウレタン発泡体の製造に用いられる公知の芳香族イソシアネート、脂環族イソシアネート、脂肪族イソシアネートを用いることができる。芳香族イソシアネートとしては、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI(クルードMDI)、キシリレンジイソシアネート、ジメチルビフェニルジイソシアネート(TODI)等が挙げられる。脂環族イソシアネートとしては、シロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添MDI等が挙げられる。脂肪族イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0021】
ポリウレタン発泡体の反発弾性率を向上する観点から、ポリイソシアネートには、1,5-ナフタレンジイソシアネートが少なくとも含まれることが好ましく、1,5-ナフタレンジイソシアネートのみが含まれることが好ましい。
【0022】
(2)活性水素基を有する化合物
活性水素基を有する化合物としては、数平均分子量18-1000の化合物が好ましい。活性水素基を有する化合物としては、水、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエステルポリオール、ヒマシ油等を挙げることができる。これらの中でも、水が好ましい。活性水素基を有する化合物が水の場合には、ウレタンプレポリマーと反応して炭酸ガスを発生し、その炭酸ガスによって発泡がなされる。活性水素基を有する化合物が水の場合には、乳化剤と併用されることがより好ましい。乳化剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールエステル等のノニオン系乳化剤、ヒマシ油のナトリウム塩、スルホン化ヒマシ油のナトリウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等のアニオン系乳化剤、アルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン系乳化剤が挙げられ、単独又は2種類以上を併用してもよい。
水の配合量は、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー100質量部に対して0.3質量部以上5質量部以下が好ましい。乳化剤の配合量は、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下が好ましい。
【0023】
(3)その他の成分
ポリウレタン発泡体用組成物には、その他の成分が適宜含まれ得る。その他の成分としては、触媒、可塑剤、相溶化剤、整泡剤、酸化防止剤や光安定剤等の合成樹脂安定剤、充填材(フィラー)、着色剤、難燃剤等を挙げることができる。また、ポリウレタン発泡体用組成物には、発泡剤の他に発泡助剤を配合してもよい。
【0024】
ポリウレタン発泡体用組成物に含まれる触媒としては、公知のウレタン化触媒を用いることができる。例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミン、テトラメチルグアニジン等のアミン触媒や、スタナスオクトエートやジブチルチンジラウレート等のスズ触媒やオクテン酸鉛等の金属触媒(有機金属触媒とも称される。)を挙げることができる。触媒の配合量は、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー100質量部に対して0.001質量部以上0.5質量部以下が好ましい。
【0025】
(4)ポリウレタン発泡体用組成物のイソシアネートインデックス
ポリウレタン発泡体用組成物のイソシアネートインデックスは、耐久性を向上する観点から、120より大きく、好ましくは125より大きく、より好ましくは130以上であり、更に好ましくは140以上、145以上である。ポリウレタン発泡体用組成物のイソシアネートインデックスは、成形性を向上する観点から、170以下であり、好ましくは165以下であり、より好ましくは160以下である。これらの観点から、ポリウレタン発泡体用組成物のイソシアネートインデックスは、120より大きく170以下であり、好ましくは125より大きく165以下であり、より好ましくは130以上160以下である。イソシアネートインデックスは、ポリウレタン発泡体の分野で使用される指数であって、ポリウレタン発泡体用組成物中の活性水素基に対するイソシアネート基の当量比を百分率で表した数値[NCO基の当量/活性水素基の当量×100]である。
【0026】
ポリウレタン発泡体用組成物のイソシアネートインデックスが120より大きく170以下である場合に、ポリウレタン発泡体の耐久性を向上できる理由は定かではないが、次のように推測される。なお、本開示はこの推測理由に限定解釈されない。
ポリウレタン発泡体は、ポリウレタン中のウレア結合の比率が高いと脆くなり、耐久性が低下する。ポリウレタン中のウレア結合は、例えば活性水素基を有する化合物が水である場合に、次のようにして生成される。ポリウレタン発泡体用組成物に含まれるイソシアネート成分と、水が反応すると、アミンと、炭酸ガスが生成される。生成されたアミンは過剰なイソシアネート成分と反応し、ウレアを生成することにより鎖延長する。他方、ポリウレタン発泡体用組成物に含まれる水はイソシアネート成分を消費するので、主反応であるウレタン化を妨害する。すなわち、イソシアネート成分のNCO%が同じ場合において、水の量が少ないと、ウレア結合の生成が抑えられ、ウレタン結合等の生成が促される。すると、ポリウレタン中のウレア結合の比率が低くなり、ポリウレタン発泡体の耐久性が向上すると考えられる。
イソシアネート成分のNCO%が同じ場合において、イソシアネートインデックス[NCO基の当量/活性水素基の当量×100]は、活性水素基の当量(水の量)が少ない程、大きい値になる。すなわち、ポリウレタン発泡体用組成物のイソシアネートインデックスが大きいことは、水の量が少ないこと、すなわち、ポリウレタン中のウレア結合の比率が低いことの一つの指標となる。このように、イソシアネートインデックスを所定値(例えば120)より大きくすることによって、ポリウレタン中のウレア結合の比率を抑えることができ、ポリウレタン発泡体の耐久性を向上できると推測される。
【0027】
2.ポリウレタン発泡体の製造方法
ポリウレタン発泡体は、ポリウレタン発泡体用組成物のイソシアネート成分と活性水素基を有する化合物とを反応させ、発泡させることにより製造される。
発泡は、スラブ発泡あるいはモールド発泡のいずれでもよい。スラブ発泡は、混合したポリウレタン発泡体用組成物をベルトコンベア上に吐出し、大気圧下、常温で発泡させる方法であり、一方、モールド発泡は、混合したポリウレタン発泡体用組成物をモールド(金型)に充填してモールド内で発泡させる方法である。
【0028】
3.ポリウレタンフォームの物性及び用途
ポリウレタンフォームの物性は、用途等に応じて適宜設定できる。ポリウレタンフォームは、以下の物性を備えることが好ましい。
(1)密度(見掛け密度)
密度(JIS K7222:2005)は、好ましくは0.20g/cm以上0.60g/cm以下であり、より好ましくは0.30g/cm以上0.60g/cm以下である。
(2)引張強度
引張強度(JIS K6251:2017(ダンベル状2号形)に準拠)は、好ましくは2.0MPa以上であり、より好ましくは2.5MPa以上であり、更に好ましくは3.0MPa以上である。引張強度の上限値は特に限定されず、例えば、5.0MPa以下である。
(3)伸び(切断時伸び)
伸び(JIS K6251:2017)は、好ましくは250%以上であり、より好ましくは300%以上であり、更に好ましくは350%以上である。伸びの上限値は特に限定されず、例えば、500%以下である。
【0029】
(4)反発性
ポリウレタン発泡体は、好ましくは反発性が55%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上である。反発性の上限は特に限定されないが、85%が挙げられる。反発性の測定は、市販のピッチングマシーンを使用し、垂直のコンクリート壁に固定したテストピース(横幅200mm×縦幅110mm×厚み30mm)へ、ピッチングマシーンから発射させたボール(全日本軟式野球連盟公認球 M号)が、テストピースから逸れないように(より好ましくは、テストピースの中心部付近へ)ぶつけ、テストピースへの衝突前のボールの速度と衝突により跳ね返されたボールの速度を測定し、次式で反発性を算出することにより行った。
反発性(%)=跳ね返されたボールの速度/衝突前のボールの速度×100
【0030】
なお、ピッチングマシーンの発射口とコンクリート壁との距離は1m、ボールがテストピースの表面に衝突する際の速度は100km/hである。
テストピースへの衝突前のボールの速度と衝突により跳ね返されたボールの速度の測定は、テストピース近くにおけるボールの通り道(球道)の側方に、コンクリート壁から500mmの位置から200mmの位置まで100mm間隔で縦線が引かれた速度測定ボードを設置して行った。ボールの先端が速度測定ボードの縦線を横切ってテストピースに衝突し、跳ね返されたボールの先端がコンクリート壁から500mmの位置を通過するまでを高速撮影カメラで撮影し、ボールの先端がテストピースに衝突する前の300mmの距離(コンクリート壁から500mmの位置から200mmの位置までの距離)を通過するのに要した時間を計測した。テストピースで跳ね返されてテストピースから300mmの距離(コンクリート壁から200mmの位置から500mmの位置までの距離)を通過するのに要した時間を計測した。ボールの通過距離300mmと、計測したボールがテストピースに衝突するまでの時間から、衝突前のボールの速度を計算した。ボールの通過距離300mmと、計測したテストピースで跳ね返されてからの時間から、跳ね返されたボールの速度を計算した。
【0031】
テストピース(ポリウレタン発泡体)の厚みは、15mm以上が好ましく、25mm以上とすることがより好ましい。テストピースの厚みの上限は特に限定されないが、50mm未満が好ましく、40mm未満がより好ましい。テストピースの厚みが15mm未満の場合、ボールがテストピースにぶつかった際に、底付く可能性があり、テストピース自体の反発性を正しく評価できないおそれがある。本開示のポリウレタン発泡体の反発性は、テストピースの厚みを30mmとして評価を行った。
【0032】
(5)耐久性
本開示のポリウレタン発泡体は、以下の落すい衝撃試験における破損までの回数(耐久性)が好ましくは300回以上である。破損までの回数の上限は特に限定されない。落すい試験は、外径30mm、内径10mm、高さ30mmの環状からなるテストピースを金属板から突設されたシャフトに差し込み、テストピースの上からスリーブをシャフトに沿って被せる。スリーブの上方110mmの位置から、50kgの重りを1分間に6回の間隔で自然落下させてテストピースの上面に衝突させ、テストピースが破損するまでの衝突回数を測定する。重りは、内部が密な状態(内部が中空では無い)の金属製で直径がテストピースの外形より大の円板状からなる。
【0033】
落すい衝撃試験における重りの落下高さの設定は、次の理由による。全日本軟式野球連盟公認球 M号の重さは約138g(0.138kg)であり、バットの打球部に対し速度100km/hで衝突した場合の運動エネルギーは、約53Jとなる。一方、50kgの重りを自由落下させ、位置エネルギーが約53Jとなる落下距離(高さ)は、約110mm(0.110m)となり、落すい衝撃試験の落下高さをスリーブの上方110mmと設定した。ただし、本落すい衝撃試験は、金属製の重りを使用しており、軟質かつ内部が中空である全日本軟式野球連盟公認球に比べ、テストピースへの落すい時の衝撃は大きくなる。
【0034】
(6)用途
ポリウレタン発泡体が使用される物品は、特に限定されない。本開示の技術は、ポリウレタン発泡体を備えるバットに好適である。ポリウレタン発泡体は、野球・ソフトボール等のバットの打球部に設けられることが好ましい。具体的には、バットは、グリップエンドと先端部との間に装着部を有するバット本体と、筒状に形成されたポリウレタン発泡体を前記装着部に装着した打球部と、を備えているとよい。それ以外にも、本開示のポリウレタン発泡体は、スポーツ用靴底等の高反発性及び耐久性が求められる物品に好適である。
【実施例0035】
1.NCO末端ウレタンプレポリマー(B液)の調整
表1に示す配合割合でポリオールとイソシアネートを配合し、窒素ガス気流下、130℃で約30分反応させて、ウレタンプレポリマー(B液)を調整した。
各原料の詳細は以下の通りである。
・ポリオール1:ポリテトラメチレングリコール、官能基数2、水酸基価56mgKOH/g、数平均分子量2000、品番;PTG2000、保土谷化学工業社製
・ポリオール2:ポリエーテルポリオール、官能基数3、水酸基価29mgKOH/g、重量平均分子量6000、品番;プレミノール7001K、旭硝子社製
・イソシアネート(NDI);1,5-ナフタレンジイソシアネート、NCO%;40%、品番;コスモネートND、三井化学社製
なお、ポリオール1は、2官能のポリオールに相当する。ポリオール2は、3官能の重量平均分子量1000-10000のポリエーテルポリオールに相当する。
【0036】
表1における「ウレタンプレポリマーのNCO%」は、計算によって得られたNCO%の理論値であり、以下の式によって算出した。
NCO%=[〔NCO基のモル数-(ポリテトラメチレングリコールのモル数+ポリエーテルポリオールのモル数)〕×NCO分子量]/[イソシアネートの配合量+ポリテトラメチレングリコールの配合量+ポリエーテルポリオールの配合量]×100
【表1】
【0037】
A液として、表2に示す配合割合で活性水素基を有する化合物と触媒を含む配合液を準備した。A液において、可塑剤は、NCO末端ウレタンプレポリマーと発泡液の配合比率を適切にし、安定して混合・撹拌するために添加されている。
各原料の詳細は以下の通りである。
・発泡剤:水と乳化剤(スルホン化ヒマシ油のナトリウム塩、高スルホン化脂肪酸のナトリウム塩等の混合物)とを含む混合液、品番;アドベードSV(水と乳化剤の重量比50:50)、ラインケミージャパン社製
・可塑剤:ジイソノニルアジペート(DINA)、大八化学社製
・触媒:アミン触媒、品番;Addocat PP、ラインケミージャパン社製
【表2】
【0038】
B液(ウレタンプレポリマー)とA液を、表3に示す配合量で混合して金型内に注入し、モールド発泡によってポリウレタン発泡体を作製した。金型は、200mm×110mm×30mm厚みのキャビティ(成形空間)を有する金型を使用した。
なお、実施例1のポリウレタン発泡体用組成物のイソシアネートインデックスは、151である。実施例2のポリウレタン発泡体用組成物のイソシアネートインデックスは、156である。比較例のポリウレタン発泡体用組成物のイソシアネートインデックスは、100である。
【表3】
【0039】
2.評価方法
密度は、テストピース(横幅200mm×縦幅110mm×厚み30mm、6面スキン層有)についてJIS K7222:2005に準拠して、測定した。
引張強度及び伸びは、テストピースを厚み2mmにスライス(スキン層無)し、ダンベル状2号形に打抜いたサンプルを作製し、JIS K6251:2017に準拠して、測定を行った。
外観は、目視にて観察して、成形性を評価した。成形性が良い場合は「良」とした。成形性が良くない場合は「不良」とした。「-」は、成形性の評価を行っていないことを表す。
反発性は、テストピース(200×110×30mm)をそのまま使用し(上下面及び側面全てスキン層有り)、実施形態に記載の方法で評価した。「-」は、反発性の評価を行っていないことを表す。
耐久性は、テストピース(200×110×30mm)から、外径30mm、内径10mm、高さ30mmの環状(上下面のみスキン層有り)をした測定用テストピースを作製し、実施形態に記載の落すい衝撃試験にて重りを300回落下させた際の破損の有無を評価した。
判定は、以下の基準で評価した。
良 :測定用テストピースの少なくとも一部が破損するまでの回数が300回以上であり、実用可能なポリウレタン発泡体である。
不良:測定用テストピースの少なくとも一部が破損するまでの回数が300回未満であるか、実用に適しないポリウレタン発泡体である。
【0040】
3.結果
結果を表3に併記する。
比較例は、ポリウレタン発泡体用組成物のイソシアネートインデックスが120以下である。比較例は落すい衝撃試験で破損があり、耐久性が良くなかった。
実施例1,2は、ポリウレタン発泡体用組成物のイソシアネートインデックスが120より大きく170以下である。実施例1,2は落すい衝撃試験で破損がなく、耐久性が良かった。
【0041】
実施例1,2は、反発性が70%以上であり、十分な反発性を有していた。また、実施例1,2は、密度が0.30g/cm以上0.60g/cm以下であり、実用に適した密度であった。実施例1,2は、引張強度が2.0MPa以上、伸びが250%以上であり、実用に適した機械強度であった。実施例1,2は、外観が良好であり、実用に適したポリウレタン発泡体であった。
【0042】
以上の実施例によれば、汎用性が高く、ポリウレタン発泡体の耐久性を向上できる技術を提供できた。
【0043】
本開示は上記で詳述した実施例に限定されず、本開示の範囲で様々な変形又は変更が可能である。