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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025081
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】スイッチング制御回路、電源回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20240216BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
H02M3/28 C
H02M3/155 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128231
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日朝 信行
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA18
5H730AA20
5H730AS01
5H730AS04
5H730BB14
5H730BB43
5H730BB57
5H730CC01
5H730DD04
5H730EE02
5H730EE07
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD41
5H730FF02
5H730FF19
5H730FG05
5H730VV01
5H730XX03
5H730XX15
5H730XX25
5H730XX35
5H730XX43
(57)【要約】      (修正有)
【課題】サージ電圧を抑制するスイッチング制御回路及び電源回路を提供する。
【解決手段】交流電圧を整流した電圧が印加されるインダクタと、インダクタ電流を制御するトランジスタを制御するスイッチング制御ICであって、交流電圧の実効値が第1レベルか第2レベルかを識別する識別回路を含む判定回路34と、実効値が第1レベルで、スイッチング制御ICが絶縁型の電源回路に用いられる場合、インダクタ電流を第1電流値と比較し、実効値が第2レベルで、スイッチング制御ICが絶縁型又は非絶縁型の電源回路に用いられる場合、インダクタ電流を第1電流値より大きい第2電流値と比較する第1比較回路(コンパレータ47)と、インダクタ電流と出力電圧とに基づいてトランジスタを駆動する駆動回路と、を備える。駆動回路は、第1電流値及び第2電流値のうち比較対象の電流値よりインダクタ電流が大きくなると、トランジスタをオフする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧に応じた第1整流電圧が印加されるインダクタと、前記インダクタに流れるインダクタ電流を制御するトランジスタのスイッチングを制御するスイッチング制御回路であって、
前記交流電圧の実効値が第1レベル、または前記第1レベルより低い第2レベルであるかを識別する識別回路と、
前記実効値が前記第1レベルであり、前記スイッチング制御回路が絶縁型の第1電源回路に用いられる第1の場合、前記インダクタ電流を第1電流値と比較し、前記実効値が前記第2レベルであり、前記スイッチング制御回路が絶縁型の第1電源回路に用いられるか、前記スイッチング制御回路が非絶縁型の第2電源回路に用いられる第2の場合、前記インダクタ電流を前記第1電流値より大きい第2電流値と比較する第1比較回路と、
前記インダクタ電流と、前記交流電圧から生成される出力電圧と、に基づいて前記トランジスタを駆動する駆動回路と、
を備え、
前記駆動回路は、
前記第1電流値及び前記第2電流値のうち比較対象の電流値より前記インダクタ電流が大きくなると、前記トランジスタをオフする、
スイッチング制御回路。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチング制御回路であって、
前記スイッチング制御回路が前記第1電源回路に用いられるか、前記スイッチング制御回路が前記第2電源回路に用いられるかを判定する判定回路と、
前記判定回路の判定結果と、前記識別回路の識別結果とに基づいて、前記第1の場合、前記第1電流値に応じた第1基準電圧を出力し、前記第2の場合、前記第2電流値に応じた第2基準電圧を出力する基準電圧出力回路と、
を備え、
前記第1比較回路は、前記インダクタ電流に応じた電圧と、前記基準電圧出力回路の出力とを比較する、
スイッチング制御回路。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のスイッチング制御回路であって、
前記識別回路は、
前記交流電圧に応じた第2整流電圧のレベルと、所定レベルとを比較する第2比較回路と、
前記第2整流電圧のレベルが前記所定レベルより高くなると、前記実効値が前記第1レベルであることを示す識別結果を保持する保持回路と、
を含むスイッチング制御回路。
【請求項4】
請求項3に記載のスイッチング制御回路であって、
前記スイッチング制御回路は、集積回路であり、
前記第2整流電圧が印加される端子を含む、
スイッチング制御回路。
【請求項5】
交流電圧に応じた第1整流電圧が印加されるインダクタと、前記インダクタに流れるインダクタ電流を制御するトランジスタのスイッチングを制御するスイッチング制御回路であって、
前記交流電圧の実効値が第1レベル、または前記第1レベルより低い第2レベルであるかを識別する識別回路と、
前記実効値が前記第1レベルである場合、前記インダクタ電流を第1電流値と比較し、前記実効値が前記第2レベルである場合、前記インダクタ電流を前記第1電流値より大きい第2電流値と比較する第1比較回路と、
前記インダクタ電流と、前記交流電圧から生成される出力電圧と、に基づいて前記トランジスタを駆動する駆動回路と、
を備え、
前記駆動回路は、
前記第1電流値及び前記第2電流値のうち比較対象の電流値より前記インダクタ電流が大きくなると、前記トランジスタをオフする、
スイッチング制御回路。
【請求項6】
交流電圧から目的レベルの出力電圧を生成する絶縁型の電源回路であって、
前記交流電圧に応じた整流電圧が印加されるインダクタと、
前記インダクタに流れるインダクタ電流を制御するトランジスタと、
前記トランジスタのスイッチングを制御するスイッチング制御回路と、
を備え、
前記スイッチング制御回路は、
前記交流電圧の実効値が第1レベル、または前記第1レベルより低い第2レベルであるかを識別する識別回路と、
前記実効値が前記第1レベルである場合、前記インダクタ電流を第1電流値と比較し、前記実効値が前記第2レベルである場合、前記インダクタ電流を前記第1電流値より大きい第2電流値と比較する第1比較回路と、
前記インダクタ電流と、前記交流電圧から生成される出力電圧と、に基づいて前記トランジスタを駆動する駆動回路と、
を含み、
前記駆動回路は、
前記第1電流値及び前記第2電流値のうち比較対象の電流値より前記インダクタ電流が大きくなると、前記トランジスタをオフする、
電源回路。
【請求項7】
請求項6に記載の電源回路であって、
前記電源回路は、フライバック方式の回路である、
電源回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング制御回路、及び制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
交流電圧から、目的レベルの出力電圧を生成する電源回路がある(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7004113号
【特許文献2】特開2014-116307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、交流電圧から出力電圧を生成する電源回路では、交流電圧の実効値が高くなると、電源回路が起動する際、大きなサージ電圧が発生し、パワートランジスタが破壊されることがある。
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みてなされたものであって、サージ電圧を抑制することが可能なスイッチング制御回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決する主たる本発明の第1の態様は、交流電圧に応じた第1整流電圧が印加されるインダクタと、前記インダクタに流れるインダクタ電流を制御するトランジスタのスイッチングを制御するスイッチング制御回路であって、前記交流電圧の実効値が第1レベル、または前記第1レベルより低い第2レベルであるかを識別する識別回路と、前記実効値が前記第1レベルであり、前記スイッチング制御回路が絶縁型の第1電源回路に用いられる第1の場合、前記インダクタ電流を第1電流値と比較し、前記実効値が前記第2レベルであり、前記スイッチング制御回路が絶縁型の第1電源回路に用いられるか、前記スイッチング制御回路が非絶縁型の第2電源回路に用いられる第2の場合、前記インダクタ電流を前記第1電流値より大きい第2電流値と比較する第1比較回路と、前記インダクタ電流と、前記交流電圧から生成される出力電圧と、に基づいて前記トランジスタを駆動する駆動回路と、を備え、前記駆動回路は、前記第1電流値及び前記第2電流値のうち比較対象の電流値より前記インダクタ電流が大きくなると、前記トランジスタをオフする。
【0007】
前述した課題を解決する主たる本発明の第2の態様は、交流電圧に応じた第1整流電圧が印加されるインダクタと、前記インダクタに流れるインダクタ電流を制御するトランジスタのスイッチングを制御するスイッチング制御回路であって、前記交流電圧の実効値が第1レベル、または前記第1レベルより低い第2レベルであるかを識別する識別回路と、前記実効値が前記第1レベルである場合、前記インダクタ電流を第1電流値と比較し、前記実効値が前記第2レベルである場合、前記インダクタ電流を前記第1電流値より大きい第2電流値と比較する第1比較回路と、前記インダクタ電流と、前記交流電圧から生成される出力電圧と、に基づいて前記トランジスタを駆動する駆動回路と、を備え、前記駆動回路は、前記第1電流値及び前記第2電流値のうち比較対象の電流値より前記インダクタ電流が大きくなると、前記トランジスタをオフする。
【0008】
前述した課題を解決する主たる本発明の第3の態様は、交流電圧から目的レベルの出力電圧を生成する絶縁型の電源回路であって、前記交流電圧に応じた整流電圧が印加されるインダクタと、前記インダクタに流れるインダクタ電流を制御するトランジスタと、前記トランジスタのスイッチングを制御するスイッチング制御回路と、を備え、前記スイッチング制御回路は、前記交流電圧の実効値が第1レベル、または前記第1レベルより低い第2レベルであるかを識別する識別回路と、前記実効値が前記第1レベルである場合、前記インダクタ電流を第1電流値と比較し、前記実効値が前記第2レベルである場合、前記インダクタ電流を前記第1電流値より大きい第2電流値と比較する第1比較回路と、前記インダクタ電流と、前記交流電圧から生成される出力電圧と、に基づいて前記トランジスタを駆動する駆動回路と、を含み、前記駆動回路は、前記第1電流値及び前記第2電流値のうち比較対象の電流値より前記インダクタ電流が大きくなると、前記トランジスタをオフする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、サージ電圧を抑制することが可能なスイッチング制御回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】スイッチング制御IC10の一例を示す図である。
図2】(a)は、端子Aに回路800aが接続された状態を示す図であり、(b)は、端子Aに回路800bが接続された状態を示す図であり、(c)は、端子Aの電圧レベルを説明するための図である。
図3】判定回路34の一例を示す図である。
図4】条件A,Bにおける過電流の値を説明するための図である。
図5】絶縁型の電源回路20の一例を示す図である。
図6】スイッチング制御IC10の一部の構成を示す図である。
図7】電源回路20の動作を説明するための図である。
図8】電源回路20の起動時の動作を説明するための図である。
図9】NMOSトランジスタ305がオンした際の電圧Vcsを説明するための図である。
図10】非絶縁型の電源回路21の一例を示す図である。
図11】スイッチング制御IC10の一部の構成を示す図である。
図12】電源回路21の動作を説明するための図である。
図13】電源回路21が起動時の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。また、ここでは、各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。
【0012】
本実施形態で、「接続」とは、特段の言及がない限り電気的に接続されている状態をいう。このため「接続」には、2つの部品が配線のみならず、例えば、抵抗を介して接続されている場合も含む。
【0013】
=====本実施形態=====
<<<スイッチング制御IC10の構成>>>
図1は、本発明の一実施形態であるスイッチング制御IC10の構成を示す図である。スイッチング制御IC10は、スイッチング制御IC10が、非絶縁型の電源回路、または絶縁型の電源回路に用いられるかを判定し、判定結果に応じて電源回路の動作を制御する集積回路である。
【0014】
具体的には、スイッチング制御IC10は、非絶縁型のスイッチング電源回路に用いられる際、出力電圧に応じた帰還電圧に基づいて動作する。一方、スイッチング制御IC10は、絶縁型のスイッチング電源回路に用いられる際、出力電圧の目的レベルからの誤差を示す電流に基づいて動作する。
【0015】
スイッチング制御IC10は、端子VH,VCC,ZCD,A,B,CS,OUTを有する。なお、スイッチング制御IC10には、例えば、接地電圧が印加されるGND端子や他の端子が設けられるが、便宜上、ここでは省略されている。
【0016】
端子VHは、交流電圧が整流された整流電圧Vhが印加される端子である。なお、整流電圧Vhは、「第2整流電圧」に相当する。
【0017】
端子VCCは、スイッチング制御IC10を動作させるための電源電圧Vccが印加される端子である。
【0018】
端子ZCDは、スイッチング制御IC10が用いられる電源回路のインダクタ電流ILに応じた電圧を検出するための端子である。詳細は後述するが、端子ZCDには、インダクタ電流ILがゼロになったか否かを検出する回路が接続される。
【0019】
端子Aは、スイッチング制御IC10が用いられる電源回路が、非絶縁型か、絶縁型かを判定するための電圧が印加される端子である。また、スイッチング制御IC10が非絶縁型の電源回路に用いられる場合、端子Aには、電源回路の出力電圧に応じた帰還電圧が印加される。
【0020】
詳細は後述するが、スイッチング制御IC10が絶縁型の電源回路に用いられる場合、端子Aには、所定電圧を印加する回路が接続される。なお、本実施形態では、端子Aの電圧を、電圧Vaとする。
【0021】
端子Bは、スイッチング制御IC10が非絶縁型の電源回路に用いられる場合、位相補償用の素子が接続され、スイッチング制御IC10が絶縁型の電源回路に用いられる場合、フォトトランジスタが接続される端子である。なお、本実施形態では、端子Bの電圧を、電圧Vbとする。
【0022】
端子CSは、スイッチング制御IC10が用いられる電源回路のインダクタ電流ILを検出するための端子である。詳細は後述するが、端子CSには、インダクタ電流ILが過電流になったか否かを検出する回路が接続される。
【0023】
端子OUTは、スイッチング素子のスイッチングを制御する駆動信号Vdrが印加される端子である。
【0024】
スイッチング制御IC10は、起動回路30、電源回路31、電圧検出回路32、判定回路33,34、コンパレータ40,45,47、パルス回路41、発振回路42、誤差増幅回路43、誤差電圧出力回路44、基準電圧出力回路46、OR回路48、及び駆動回路49を含む。
【0025】
===起動回路30===
起動回路30は、電源電圧Vccが所定レベルより低い場合、電源電圧Vccを整流電圧Vhに基づいて生成する。具体的には、起動回路30は、整流電圧Vhに基づいて、端子VCCに接続されたコンデンサ(後述)を充電し、電圧Vccを生成する。
【0026】
===電源回路31===
電源回路31は、電源電圧Vccに基づいて、スイッチング制御IC10の内部の回路を動作させるための電源電圧Vddを生成する回路(例えば、シリーズレギュレータ)である。なお、スイッチング制御IC10に含まれる回路のうち、電源電圧Vddが供給される回路は、駆動回路49のバッファ回路91(後述)以外の回路である。本実施形態では、駆動回路49のバッファ回路91は、電源電圧Vccに基づいて動作する。
【0027】
===電圧検出回路32===
電圧検出回路32は、電源電圧Vddのレベルが、所定レベルV1となったか否かを検出する回路である。なお、「所定レベルV1」とは、電源電圧Vddが立ち上がったことを示すレベルであり、電源電圧Vddの目的レベルが5Vである場合、「所定レベルV1」は、例えば4.5Vである。電圧検出回路32は、電源電圧Vccのレベルが上昇し、所定レベルV1となると、信号S1のレベルをローレベル(以下、Lレベル)から、ハイレベル(以下、Hレベル)へと変化させる。
【0028】
===判定回路33===
判定回路33は、電源電圧Vddが立ち上がり、信号S1がHレベルになると、端子Aの電圧Vaに基づいて、スイッチング制御IC10が非絶縁型の電源回路に用いられるか、絶縁型の電源回路に用いられるかを判定する回路である。
【0029】
具体的には、判定回路33は、電圧Vaのレベルが、所定レベルV2(後述)より低い場合、スイッチング制御IC10が非絶縁型の電源回路に用いられると判定し、電圧Vaが、所定レベルV2より高い場合、スイッチング制御IC10が絶縁型の電源回路に用いられると判定する。図2は、端子Aに接続される外部回路と電圧Vaとの関係を説明するための図である。
【0030】
<絶縁型の電源回路に用いられる外部回路が接続される場合>
まず、図2(a)に示すように、絶縁型の電源回路に用いられる回路800aが端子Aに接続される場合に説明する。ここで、回路800aは、抵抗520、ツェナーダイオード521で構成される。また、抵抗520に電源電圧Vccが印加されると、ツェナーダイオード521の降伏電圧Vz0が発生する。つまり、回路800aに電源電圧Vccが印加されると、降伏電圧Vz0が端子Aに印加されることになる。
【0031】
<非絶縁型の電源回路に用いられる回路が接続される場合>
つぎに、図2(b)に示すように、非絶縁型の電源回路に用いられる回路800bが端子Aに接続される場合に説明する。ここで、回路800bは、抵抗120,121で構成される分圧回路である。
【0032】
回路800bは、非絶縁型の電源回路の出力電圧Vout2(後述)を分圧した分圧電圧Vd1を生成する。詳細は後述するが、出力電圧Vout2は、予め定められたレベル(例えば、400V)となるよう制御される。したがって、本実施形態では、抵抗120,121の分圧比を調整することにより、端子Aに印加される分圧電圧Vd1のレベルを調整できる。
【0033】
<端子Aの電圧Vaについて>
図2(c)は、回路800aで生成される降伏電圧Vz0と、回路800bで生成される分圧電圧Vd1との関係を説明するための図である。分圧電圧Vd1は、出力電圧Vout2が生成されていない場合には、最小値として0(ゼロ)Vとなる。
【0034】
一方、出力電圧Vout2が過電圧となると、分圧電圧Vd1のレベルは、所定レベルV3となる。なお、本実施形態の電源回路は、出力電圧Vout2が過電圧となると動作を停止するため、回路800bが用いられている際、分圧電圧Vd1の最大レベルは、所定レベルV3となる。つまり、分圧電圧Vd1は、0から所定レベルV3の範囲で変化する。
【0035】
本実施形態では、上述した判定回路33の所定レベルV2は、所定レベルV3より高くなるよう所定レベルV2は設定されている。さらに、ここでは、降伏電圧Vz0のレベルは、所定レベルV2より高くなるよう、降伏電圧Vz0は設定されている。
【0036】
したがって、判定回路33は、端子Aの電圧Vaに基づいて、端子Aに回路800a,800bの何れが接続されているか、つまりスイッチング制御IC10が絶縁型または非絶縁型の電源回路の何れに用いられているかを判定することができる。
【0037】
なお、本実施形態の判定回路33は、スイッチング制御IC10が非絶縁型の電源回路に用いられると判定すると、Lレベルの信号S2を出力し、スイッチング制御IC10が絶縁型の電源回路に用いられると判定すると、Hレベルの信号S2を出力する。
【0038】
===判定回路34===
判定回路34は、電源回路の過電流を検出するための電流値Iоcとして、電流値I1を用いるか、電流値I1より大きい電流値I2を用いるかを判定する回路である。詳細は後述するが、判定回路34は、交流電圧Vacの実効値と、スイッチング制御IC10が用いられる電源回路の種別とに基づいて、過電流を検出する電流値を判定する。なお、電流値I1は、「第1電流値」に相当し、電流値I2は、「第2電流値」に相当する。
【0039】
ここで、本実施形態では、電源回路には、実効値が100V、または240Vの交流電圧Vacが供給されることとする。ただし、供給される交流電圧Vacの実効値として、100V,240Vに限られず、他の値(例えば、200V,220V等)であっても良い
【0040】
また、詳細は後述するが、本実施形態では、交流電圧Vacの実効値が240Vでスイッチング制御IC10が絶縁型の電源回路に用いられる場合、過電流を検出する電流値Iоcは電流値I1となる。以下、「交流電圧Vacの実効値が240Vでスイッチング制御IC10が絶縁型の電源回路に用いられること」を、「条件A」と称する。
【0041】
一方、交流電圧Vacの実効値が100Vでスイッチング制御IC10が絶縁型の電源回路に用いられるか、スイッチング制御IC10が非絶縁型の電源回路に用いられる場合には、過電流を検出する電流値Iоcは電流値I2となる。以下、「交流電圧Vacの実効値が100Vでスイッチング制御IC10が絶縁型の電源回路に用いられるか、スイッチング制御IC10が非絶縁型の電源回路に用いられること」を、「条件B」と称する。
【0042】
そして、判定回路34は、上述した2つの条件A,Bのうち、何れかが満たされているか、を判定する。判定回路34は、図3に示すように、識別回路60、及びAND回路61を含んで構成される。なお、条件Aが満たされる場合は、「第1の場合」に相当し、条件Bが満たされる場合は、「第2の場合」に相当する。
【0043】
<<識別回路60>>
識別回路60は、交流電圧Vacを全波整流した整流電圧Vhに基づいて、交流電圧Vacの実効値が、例えば240Vであるか、100Vであるかを識別する。なお、ここでは、240Vは、「第1レベル」に相当し、100Vは、「第1レベルより低い第2レベル」に相当する。ただし、識別回路60が識別する実効値は、100V,240Vに限られず、大きさの異なる2つのレベルの実効値(例えば、100Vと、200V)であれば良い。
【0044】
識別回路60は、抵抗70,71、コンパレータ72、リセット回路73、及びSRフリップフロップ74を含んで構成される。抵抗70,71は、全波整流された整流電圧Vhを分圧する分圧回路を構成する。なお、抵抗70,71が生成する分圧電圧を、分圧電圧Vd2とする。
【0045】
コンパレータ72は、分圧電圧Vd2と、基準電圧Vref1とを比較する。ここでは、交流電圧Vacの実効値が240Vである場合、分圧電圧Vd2の最大値は、基準電圧Vref1より大きくなり、交流電圧Vacの実効値が100Vである場合、分圧電圧Vd2の最大値は、基準電圧Vref1より小さくなるよう、抵抗70,71及び基準電圧Vref1が定められている。
【0046】
したがって、コンパレータ72は、交流電圧Vacの実効値が240Vである場合にHレベルの信号Vc1を出力し、交流電圧Vacの実効値が100Vである場合にLレベルの信号Vc1を出力する。なお、コンパレータ72は、「第2比較回路」に相当する。
【0047】
リセット回路73は、電源電圧Vddが所定レベルV1となり、信号S1がHレベルになると、SRフリップフロップ74(後述)をリセットするためのリセット信号を出力する。
【0048】
SRフリップフロップ74は、リセット回路73からのリセット信号に基づいてQ出力をLレベルに変化させ、コンパレータ72からHレベルの信号Vc1が出力されるとQ出力をHレベルに変化させる。
【0049】
したがって、スイッチング制御IC10に、整流電圧Vhが印加された後、コンパレータ72が、交流電圧Vacの実効値が240Vであることを検出すると、SRフリップフロップ74は、Q出力をHレベルに保持する。なお、SRフリップフロップ74は、「保持回路」に相当し、SRフリップフロップ74で保持されるQ出力は、「識別結果」に相当する。
【0050】
<<AND回路61>>
AND回路61は、SRフリップフロップ74のQ出力と、信号S2との論理積を演算し、信号S3として出力する。AND回路61は、スイッチング制御IC10が非絶縁型の電源回路に用いられることを示すLレベルの信号S2が入力されると、Lレベルの信号S3を出力する。
【0051】
一方、AND回路61は、スイッチング制御IC10が絶縁型の電源回路に用いられることを示すHレベルの信号S2が入力されると、SRフリップフロップ74のQ出力に応じた論理レベルの信号S3を出力する。
【0052】
具体的には、AND回路61は、信号S2がHレベルであり、SRフリップフロップ74のQ出力がHレベルである場合(つまり、交流電圧Vacの実効値が240Vの場合)、Hレベルの信号S3を出力する。
【0053】
また、AND回路61は、信号S2がHレベルであり、SRフリップフロップ74のQ出力がLレベルである場合(つまり、交流電圧Vacの実効値が100Vの場合)、Lレベルの信号S3を出力する。
【0054】
したがってAND回路61は、交流電圧Vacの実効値が240Vでスイッチング制御IC10が絶縁型の電源回路に用いられる条件Aが満たされると、Hレベルの信号S3を出力する。
【0055】
一方、AND回路61は、交流電圧Vacの実効値が100Vでスイッチング制御IC10が絶縁型の電源回路に用いられるか、スイッチング制御IC10が非絶縁型の電源回路に用いられる条件Bが満たされると、Lレベルの信号S3を出力する。
【0056】
したがって、図4に示すように、判定回路34は、条件Aが満たされる場合、インダクタ電流ILが電流値I1で過電流となるよう、信号S3の論理レベルをHレベルとする。また、判定回路34は、条件Bが満たされる場合、インダクタ電流ILが電流値I2(>電流値I1)で過電流となるよう、信号S3の論理レベルをLレベルとする。
【0057】
なお、条件Aは、上述のように、交流電圧Vacの実効値が240Vでスイッチング制御IC10が絶縁型の電源回路に用いられる場合に相当する。また、条件Bは、交流電圧Vacの実効値が100Vでスイッチング制御IC10が絶縁型の電源回路に用いられるか、スイッチング制御IC10が非絶縁型の電源回路に用いられる場合に相当する。
【0058】
===コンパレータ40===
コンパレータ40は、いわゆるゼロ電流検出回路であり、端子ZCDの電圧Vzcdに基づいて、電源回路のインダクタ電流IL(後述)が、ゼロになったか否かを検出する。ここで、「ゼロ」とは、例えば、インダクタ電流ILがほぼゼロとなる電流値(例えば、0.1mA)であることとする。
【0059】
このため、コンパレータ40は、電圧Vzcdと、例えば0.1mAの電流に応じた基準電圧Vref2と、を比較し、インダクタ電流ILがゼロであることを検出する。なお、コンパレータ40は、インダクタ電流ILがゼロであることを検出すると、信号Vc2をLレベルに変化させる。
【0060】
===パルス回路41===
パルス回路41は、インダクタ電流ILがゼロであることが検出され、信号Vc2がLレベルになると、Hレベルのパルス信号Vpを出力する。
【0061】
===発振回路42===
発振回路42は、Hレベルのパルス信号Vpが入力する毎に、振幅が徐々に大きくなるランプ波Vrを出力する。
【0062】
===誤差増幅回路43===
誤差増幅回路43は、スイッチング制御IC10が非絶縁型の電源回路に用いられると判定され、Lレベルの信号S2が入力されると、基準電圧Vref3と、電圧Vaとの差に応じた電流を端子Bに出力するトランスインピーダンスアンプである。なお、基準電圧Vref3は、非絶縁型の電源回路の出力電圧の目的レベルに応じて定められる電圧である。また、ここでは、端子Bに印加される電圧を、誤差電圧Ve1とする。
【0063】
また、誤差増幅回路43は、スイッチング制御IC10が絶縁型の電源回路に用いられると判定され、Hレベルの信号S2が入力されると、動作を停止する。ここで、誤差増幅回路43は、動作が停止すると、例えば、誤差増幅回路43の出力がハイインピーダンス状態になる。
【0064】
===誤差電圧出力回路44===
誤差電圧出力回路44は、スイッチング制御IC10が絶縁型の電源回路に用いられると判定され、Hレベルの信号S2が入力されると、電源回路の出力電圧のレベルを目的レベルとするための誤差電圧Ve2を出力する回路であり、抵抗80、スイッチ81を含む。
【0065】
なお、詳細は後述するが、スイッチング制御IC10が絶縁型の電源回路に用いられる際、端子Bには、出力電圧の目的レベルからの誤差に応じた電流を発生させるフォトトランジスタが接続される。また、誤差電圧出力回路44は、フォトトランジスタの電流に応じて誤差電圧Ve2を生成する。
【0066】
本実施形態では、一端に電源電圧Vddが印加された抵抗80と、端子Bとの間には、スイッチ81が設けられている。そして、抵抗80に直列接続されたスイッチ81は、Hレベルの信号S2が入力されると、オンし、Lレベルの信号S2が入力されると、オフする。
【0067】
このため、Hレベルの信号S2が入力され、スイッチ81がオンとなると、フォトトランジスタ(後述)の電流が抵抗80に流れる。そして、抵抗80からは、出力電圧の目的レベルからの誤差に応じた誤差電圧Ve2が出力される。一方、Lレベルの信号S2が入力され、スイッチ81がオフとなると、誤差電圧Ve2の出力は停止される。
【0068】
このように、誤差増幅回路43は、Lレベルの信号S2が入力された場合に誤差電圧Ve1を出力し、誤差電圧出力回路44は、Hレベルの信号S2が入力された場合に誤差電圧Ve2を出力する。
【0069】
このため、本実施形態では、誤差増幅回路43と、誤差電圧出力回路44とのうち、何れか一方のみが動作し、出力電圧の誤差に応じた電圧を出力することになる。なお、端子Bに印加される電圧は、電圧Vbであるため、信号S1がLレベルの際、電圧Vbは、誤差電圧Ve1となり、信号S1がHレベルの際、電圧Vbは、誤差電圧Ve2となる。
【0070】
===コンパレータ45===
コンパレータ45は、端子Bの電圧Vbと、ランプ波Vrとの大小を比較して、比較結果として信号Vc3を出力する。ここでは、電圧Vbがコンパレータ45の反転入力端子に印加され、ランプ波Vrがコンパレータ45の非反転入力端子に印加されている。このため、ランプ波Vrのレベルが電圧Vbのレベルより低い場合、信号Vc3はLレベルとなり、ランプ波Vrのレベルが電圧Vbのレベルより高くなると信号Vc3はHレベルとなる。
【0071】
===基準電圧出力回路46===
基準電圧出力回路46は、インダクタ電流ILが過電流となる際の電流値Iocを設定するための基準電圧Vref4,Vref5を、信号S3の論理レベルに基づいて選択して出力する。
【0072】
ここで、基準電圧Vref4は、電流値I1に対応する電圧であり、基準電圧Vref5は、電流値I1より大きい電流値I2に対応する電圧である。また、基準電圧出力回路46は、入力される信号S3の論理レベルに基づいて、基準電圧Vref4,Vref5を選択するスイッチ85を含んで構成される。
【0073】
本実施形態では、交流電圧Vacの実効値が240Vでスイッチング制御IC10が絶縁型の電源回路に用いられる条件Aが満たされ、Hレベルの信号S3が入力されると、スイッチ86は、基準電圧Vref4を選択する。
【0074】
また、交流電圧Vacの実効値が100Vでスイッチング制御IC10が絶縁型の電源回路に用いられるか、スイッチング制御IC10が非絶縁型の電源回路に用いられる条件Bが満たされ、Lレベルの信号S3が入力されると、スイッチ86は、基準電圧Vref4を選択する。
【0075】
なお、基準電圧Vref4は、「第1基準電圧」に相当し、基準電圧Vref5は、「第2基準電圧」に相当する。また、基準電圧Vref4,Vref5のそれぞれに対応する電流値I1,I2のうち、スイッチ86で選択される電圧(つまり、電流値)は、インダクタ電流ILと比較される「比較対象の電流値」に相当する。
【0076】
===コンパレータ47===
コンパレータ47は、端子CSの電圧Vcsと、基準電圧出力回路46からの電圧とに基づいて、インダクタ電流ILが過電流であるか否かを示す信号Vc4を出力する。ここでは、電圧Vcsがコンパレータ47の非反転入力端子に印加され、基準電圧出力回路46の電圧がコンパレータ47の反転入力端子に印加されている。
【0077】
このため、電圧Vcsのレベルが基準電圧出力回路46の電圧のレベルより低い場合、信号Vc4はLレベルとなり、電圧Vcsのレベルが基準電圧出力回路46の電圧のレベルより高くなると信号Vc4はHレベルとなる。なお、コンパレータ47は、「第1比較回路」に相当する。
【0078】
===OR回路48===
OR回路48は、信号Vc3と信号Vc4との論理和を出力する。
【0079】
===駆動回路49===
駆動回路49は、パルス信号Vpが出力されると、パワートランジスタをオンし、OR回路48がHレベルの信号を出力すると、パワートランジスタをオフする。駆動回路49は、SRフリップフロップ90、バッファ回路91を含む。
【0080】
SRフリップフロップ90のS入力には、パルス信号Vpが入力され、R入力には、OR回路48の出力が入力される。このため、SRフリップフロップ90のQ出力は、パルス信号VpがHレベルになるとHレベルとなる。一方、OR回路48がHレベルの信号を出力すると、Q出力は、Lレベルになる。
【0081】
バッファ回路91は、SRフリップフロップ90のQ出力に基づいて、スイッチング素子を駆動するための駆動信号Vdrを出力する。具体的には、バッファ回路91は、Q出力がHレベルになると、Hレベルの駆動信号Vdrを出力し、Q出力がLレベルになると、Lレベルの駆動信号Vdrを出力する。
【0082】
上述のように、本実施形態では、条件Aが満たされる場合、コンパレータ47は、電圧Vcsが、基準電圧Vref4より高くなると、Hレベルの信号Vc4を出力する。このため、条件Aが満たされる場合、駆動回路49は、インダクタ電流ILが小さい電流値I1となると、Lレベルの駆動信号Vdrを出力する。
【0083】
また、本実施形態では、条件Bが満たされる場合、コンパレータ47は、電圧Vcsが、基準電圧Vref5より高くなると、Hレベルの信号Vc4を出力する。このため、条件Bが満たされる場合、駆動回路49は、インダクタ電流ILが大きい電流値I2となると、Lレベルの駆動信号Vdrを出力する。
【0084】
<<<絶縁型の電源回路の一例>>>
図5は、絶縁型の電源回路20の構成の一例を示す図である。電源回路20は、商用電源の交流電圧Vacから目的レベルVo1(例えば、15V)の出力電圧Vout1を負荷11に生成するフライバック方式のAC-DCコンバータである。電源回路20における負荷11は、例えば照明用の発光ダイオード等である。また、電源回路20は、「第1電源回路」に相当する。
【0085】
電源回路20は、ダイオード300,301,307、全波整流回路302、コンデンサ303,308、トランス304、NMOSトランジスタ305、制御ブロック306、定電圧回路309、及び発光ダイオード310を含んで構成される。
【0086】
ダイオード300,301は、交流電圧Vacを全波整流し、電圧Vhとして、スイッチング制御IC10の端子VHに出力する。なお、なお、交流電圧Vacは、例えば、100~240V、周波数が50~60Hzの電圧である。
【0087】
全波整流回路302は、交流電圧Vacを全波整流し、整流電圧Vrec1として、コンデンサ303に出力する。
【0088】
コンデンサ303は、電整流圧Vrec1のノイズを除去しつつ、平滑化する素子である。なお、平滑化された整流電圧Vrec1はトランス304に印加される。なお、整流電圧Vrec1は、「第1整流電圧」に相当する。
【0089】
トランス304は、1次コイルL10(インダクタ)、2次コイルL11、補助コイルL12を備えており、1次コイルL10と、2次コイルL11と、補助コイルL12との間は絶縁されている。
【0090】
トランス304においては、1次側の1次コイルL10の両端の電圧の変化に応じて、2次側の2次コイルL11に電圧が発生し、1次コイルL10の電圧の変化に応じて、1次側の補助コイルL12の電圧が発生する。
【0091】
また、1次コイルL10の一端には、NMOSトランジスタ305のドレインが接続されているため、NMOSトランジスタ305のスイッチングが開始されると、2次コイルL11と、補助コイルL12の夫々の電圧が変化することとなる。なお、1次コイルL10と、2次コイルL11とは、逆極性で電磁結合されており、2次コイルL11と、補助コイルL12とは、同極性で電磁結合されている。
【0092】
制御ブロック306は、NMOSトランジスタ305のスイッチングを制御するための回路ブロックであり、詳細は後述する。なお、本実施形態では、パワートランジスタとして、NMOSトランジスタ305が用いられることとしたが、電力を制御できるトランジスタであれば良い。
【0093】
ダイオード307は、2次コイルL11の電圧を整流し、コンデンサ308は、整流された電圧を平滑化する。この結果、コンデンサ308には、平滑化された出力電圧Vout1が生成される。なお、出力電圧Vout1は、目的レベルVo1の直流電圧(例えば、15V)となる。
【0094】
定電圧回路309は、一定の直流電圧を生成する回路であり、例えば、シャントレギュレータを用いて構成される。
【0095】
発光ダイオード310は、出力電圧Vout1と、定電圧回路309の出力との差に応じた強度の光を発光する素子であり、後述するフォトトランジスタ530とともに、フォトカプラを構成する。
【0096】
本実施形態では、出力電圧Vout1のレベルが高くなると、発光ダイオード310からの光の強度は強くなる。
【0097】
<<<制御ブロック306>>>
制御ブロック306は、スイッチング制御IC10、コンデンサ500、ダイオード501、抵抗502,510,520、ツェナーダイオード521、及びフォトトランジスタ530を含む。
【0098】
スイッチング制御IC10は、図1で説明した、NMOSトランジスタ305のスイッチングを制御する集積回路である。
【0099】
端子VCCには、一端が接地されたコンデンサ500の他端と、ダイオード501のカソードとが接続されている。このため、コンデンサ500は、ダイオード501からの電流により充電される。そして、コンデンサ500の充電電圧が、スイッチング制御IC10を動作させる電源電圧Vccとなる。
【0100】
端子ZCDと、補助コイルL12との間には、抵抗502が接続されている。このため、補助コイルL12で発生する電圧Vz1が、電圧Vzcdとして端子ZCDに印加される。また、上述のように、補助コイルL12は、1次コイルL10と逆極性の電圧を発生させる。
【0101】
このため、1次コイルL10に流れるインダクタ電流IL1が減少している際には、補助コイルL12は、正の電圧Vz1を発生させ、1次コイルL10に流れるインダクタ電流IL1が増加している際には、補助コイルL12は、負の電圧Vz1を発生させる。
【0102】
端子CSには、NMOSトランジスタ305と、抵抗510とが接続されている。抵抗510は、NMOSトランジスタ305がオンの際に、インダクタ電流IL1を検出するための抵抗である。このため、端子CSには、インダクタ電流IL1に応じた電圧であり、インダクタ電流IL1を変換した電圧である電圧Vcsが印加されることになる。
【0103】
端子Aには、電源電圧Vccが一端に印加される抵抗520の他端と、ツェナーダイオード521のカソードと、が接続されている。このため、電源電圧Vccが十分高くなると、端子Aに印加される電圧Vaは、ツェナーダイオード521の降伏電圧Vz0(例えば、5.1V)になる。なお、抵抗520及びツェナーダイオード521は、図2(a)に示す回路800aと同じである。
【0104】
端子Bは、出力電圧Vout1のレベルと、目的レベルVo1との誤差を示す誤差電圧が発生する端子であり、フォトトランジスタ530が接続される。フォトトランジスタ530は、発光ダイオード310からの光の強度に応じた大きさのバイアス電流Ibを、端子Bから接地へと流す。
【0105】
このため、フォトトランジスタ530は、シンク電流を生成するトランジスタとして動作する。なお、端子Bと、接地との間には、ノイズを除去するためのコンデンサ等の素子が設けられても良い。
【0106】
端子OUTは、NMOSトランジスタ305のゲートが接続されるため、NMOSトランジスタ305は、駆動信号Vdrによりスイッチングされる。
【0107】
===電源回路20に用いられるスイッチング制御IC10===
図6は、絶縁型の電源回路20に用いられるスイッチング制御IC10の一部の構成を示す図である。ここでは、端子Aには降伏電圧Vz0が印加されるため、誤差増幅回路43と、誤差電圧出力回路44のうち、誤差電圧出力回路44のみが動作することになる。そして、誤差増幅回路43の出力はハイインピーダンス状態となるため、端子Bの電圧Vbに、誤差増幅回路43の出力が影響を及ぼすことはない。
【0108】
===電源回路20におけるスイッチング制御IC10の動作===
図7は、電源回路20に用いられるスイッチング制御IC10の動作を説明するための図である。
【0109】
まず、時刻t10にパルス信号Vpが出力されると、駆動信号VdrがHレベルになり、NMOSトランジスタ305はオンする。この結果、インダクタ電流IL1は増加する。また、パルス信号Vpが出力されると、発振回路42からのランプ波Vrの振幅が増加する。NMOSトランジスタ305はオンした時、2次コイルL11は逆極性で電磁結合されているため、ダイオード307はオフとなり、トランス304にエネルギーが蓄えられる。
【0110】
そして、時刻t11に、ランプ波Vrの振幅レベルが電圧Vb(=Ve2)のレベルより高くなると、コンパレータ45は、信号Vc3をHレベルに変化させる。この結果、SRフリップフロップ90はリセットされ、駆動信号VdrはLレベルとなる。
【0111】
駆動信号VdrがLレベルとなると、NMOSトランジスタ305はオフする。この結果、インダクタ電流IL1は急激に減少し、一端が接地された補助コイルL12の他端の電圧Vz1は正となる。また、トランス304に蓄えられたエネルギーが2次コイルL11からダイオード307を介して出力される。この結果、電圧Vzcd(=Vz1)は、基準電圧Vref2より高くなるため、コンパレータ40から信号Vc2はHレベルになる。
【0112】
そして、時刻t12に2次コイルL11のインダクタ電流IL2がほぼゼロとなると、主コイルL10に磁気結合された補助コイルL12の電圧Vz1は急激に低下する。この結果、時刻t13に、電圧Vzcd(=Vz1)は、基準電圧Vref2より低くなり、コンパレータ40の信号Vc2はLレベルになる。
【0113】
信号Vc2がLレベルになると、パルス信号Vpが出力され、NMOSトランジスタ305はオンする。そして、時刻t13以降、時刻t10~t13までの動作が繰り返される。
【0114】
<<過電流について>>
なお、時刻t10~t13の動作が繰り返されている際に、インダクタ電流IL1が過電流となることがある。ここで、電源回路20に供給される交流電圧Vacの実効値が240Vの場合は、条件Aが満たされるため、インダクタ電流IL1が、小さい電流値I1となると過電流と判定される。一方、電源回路20に供給される交流電圧Vacの実効値が100Vの場合は、条件Bが満たされるため、インダクタ電流IL1は、大きい電流値I2となると過電流と判定される。
【0115】
コンパレータ47は、インダクタ電流IL1が過電流であると判定すると、Hレベルの信号Vc4を出力する。この結果、駆動回路49は、NMOSトランジスタ305をオフするため、インダクタ電流IL1が過電流を超えて大きくなることを防ぐことができる。
【0116】
===フィードバック制御===
ここで、負荷11が軽負荷となると、出力電圧Vout1は目的レベルVo1より上昇する。この際、図5の定電圧回路309のシャントレギュレータ(不図示)に流れる電流が増加するため、発光ダイオード310の電流も増加する。
【0117】
そして、フォトトランジスタ530が、発光ダイオード310からの光の増幅度に応じて、バイアス電流Ibを増加させるため、誤差電圧Ve2(=Vb)は低下する。この結果、NMOSトランジスタ305がオンする期間は短くなるため、出力電圧Vout1は低下する。
【0118】
一方、出力電圧Vout1が目的レベルVo1から低くなると、上述とは逆に発光ダイオード310の電流は減少する。この結果、バイアス電流Ibは減少し、誤差電圧Ve2(=Vb)は上昇する。したがって、NMOSトランジスタ305がオンする期間は長くなり、出力電圧Vout1は上昇する。
【0119】
このように、電源回路20においては、出力電圧Vout1は、目的レベルVo1になるよう、フィードバック制御されている。したがって、スイッチング制御IC10は、絶縁型の電源回路20に所望の動作をさせることができる。
【0120】
===起動時からの電源回路20の動作について===
図7では、電源回路20の動作波形について説明したが、ここでは電源回路20の起動時から、目的レベルVo1の出力電圧Vout1が生成されるまでの電源回路20の主要な波形について説明する。なお、ここでは、適宜図1図5等を参照する。
【0121】
図8は、電源回路20に、交流電圧Vacが供給された際の電源回路20の主要な波形を示す図である。なお、ここでは、交流電圧Vacの実効値は240Vであることとする。
【0122】
まず、時刻t20において、電源回路20に交流電圧Vacが供給されると、整流電圧Vhが起動回路30に供給される。したがって、起動回路30は、図5のコンデンサ500を充電するため、電源電圧Vccが徐々に高くなる。
【0123】
また、電源回路20に交流電圧Vacが供給されると、整流電圧Vrec1も高くなるため、NMOSトランジスタ305のドレイン-ソース間電圧Vds(図8の最下段)も徐々に高くなる。
【0124】
図8では便宜上、省略しているが、電源電圧Vccが高くなると、図1の電源回路31は、スイッチング制御IC10の内部の電源電圧Vddの生成を開始する。この結果、時刻t21になるまでに、電源電圧Vddが所定レベルV1となると、電圧検出回路32がHレベルの信号S1を出力し、判定回路33は、絶縁型の電源回路を示すHレベル信号S2を出力する。さらに、判定回路34は、Hレベルの信号S3を出力するため、基準電圧出力回路46は、小さい電流値I1に対応する基準電圧Vref4を出力する。
【0125】
また、時刻t21に、スイッチング制御IC10は、NMOSトランジスタ305のスイッチングを開始すると、電源電圧Vccは徐々に減少する。一方、端子Bには、電源電圧Vddが印加されているため、電圧Vbは、抵抗80や端子Bに発生する寄生容量の影響を受けつつ、徐々に電源電圧Vddのレベルに近づくよう上昇する。
【0126】
ここで、電圧Vbのレベルが高くなると、NMOSトランジスタ305がオンとなる期間は長くなる。この結果、トランス304の1次コイルL10に蓄積されるエネルギーも大きくなる。
【0127】
ところで、時刻t21では、NMOSトランジスタ305のスイッチングが開始されたばかりであり、出力電圧Vout1も0Vである。そして、トランス304に電流の供給が開始されたタイミングでは、トランス304の励磁状態や寄生容量等の影響により、トランス304の1次コイルL10に蓄積されたエネルギーは、2次側の2次コイルL11に伝達され難い。
【0128】
この結果、NMOSトランジスタ305がオンの際に1次コイルL10に蓄積されたエネルギーは、NMOSトランジスタ305がオフされた際、トランス304の1次側の大きなサージ電圧として表れる。この結果、時刻t21以降のタイミングにおいて、NMOSトランジスタ305のドレイン-ソース間の電圧Vdsが大きく上昇する。
【0129】
ここで、電源回路20において、電圧Vdsは、以下の式(1)で示される。
Vds=Vr+Vrec1+Vsurge・・・(1)
なお、「Vr」は、いわゆるフライバック電圧であり、式(2)で表され、「Vsurge」は、サージ電圧である。
【0130】
また、フライバック電圧Vrは、以下の式(2)で示される。
Vr=(Vout1+Vf)×N1/N2・・・(2)
なお、「Vf」は、2次側のダイオード307の順方向電圧であり、「N1」は、1次コイルL10の巻き数であり、「N2」は、2次コイルL11の巻き数である。
【0131】
ここでは、交流電圧Vacの実効値が240Vであるため、式(1)の整流電圧Vrec1も大きくなる。したがって、NMOSトランジスタ305の破壊を防ぐべく、電圧Vdsを小さくするためには、サージ電圧Vsurgeを小さくする必要がある。
【0132】
図9は、図8の時刻t21~t22までにおける駆動信号Vdrと、電圧Vcs(つまり、インダクタ電流IL1)との一例を説明するための図である。例えば時刻t200に、駆動信号VdrがHレベルとなると、NMOSトランジスタ305がオンとなるため、インダクタ電流IL1の増加に応じて、電圧Vcsも高くなる。
【0133】
本実施形態では、交流電圧Vacの実効値が240Vである場合、インダクタ電流IL1の過電流が小さい電流値I1となるよう、基準電圧Vref4が選択されている。このため、時刻t201に電圧Vcsが基準電圧Vref4となると、コンパレータ47は、信号Vc4をHレベルに変化させる。この結果、駆動回路49は、駆動信号VdrをLレベルに変化させ、NMOSトランジスタ305をオフする。
【0134】
仮に、インダクタ電流IL1の過電流が大きい電流値I2となるよう、基準電圧Vref5が選択されていると、時刻t202に電圧Vcsが基準電圧Vref5となる。この結果、時刻t202において、コンパレータ47は、信号Vc4をHレベルに変化させ、駆動回路49は、NMOSトランジスタ305をオフする。
【0135】
したがって、本実施形態では、1次コイルL10のインダクタ電流IL1の最大値を小さくできるため、NMOSトランジスタ305がオフした際に発生するサージ電圧Vsurgeを小さくすることができる。この結果、図8の時刻t21~t22に図示したように、例えば、電圧Vdsのピークを、電圧Vpk2(一点鎖線)から、電圧Vpk2(実線)に低下させることができる。
【0136】
なお、電圧Vpk2(一点鎖線)は、インダクタ電流IL1の過電流として、大きい電流値I2を設定した場合の波形であり、電圧Vpk2(実線)は、インダクタ電流IL1の過電流として、小さい電流値I1を設定した場合の波形である。
【0137】
そして、図8の時刻t22となると、トランス304の1次コイルL10に蓄積されたエネルギーは、2次側の2次コイルL11に伝達されるため、出力電圧Vout1が徐々に上昇する。そして、時刻t22以降、出力電圧Vout1が発生するため、トランス304の1次コイルL10から、2次コイルL11にエネルギーが伝達し易くなる。
【0138】
この結果、NMOSトランジスタ305がオフした際、1次側で発生するサージ電圧Vsurgeは小さくなる。また、時刻t22以降、電源電圧Vccは徐々に低下するため、駆動回路49のバッファ回路91から出力される駆動信号Vdrのレベルも低下する。したがって、NMOSトランジスタ305が十分にオンできず、出力電圧Vout1の上昇は停滞することになる。
【0139】
その後、時刻t23となると、トランス304の寄生容量等の影響が小さくなるため、トランス304の1次コイルL10に蓄積されたエネルギーは、2次側の2次コイルL11、及び補助コイルL12に効率良く伝達される。この結果、電源回路20の出力電圧Vout1、及び電源電圧Vccは上昇する。
【0140】
時刻t23以降、出力電圧Vout1は上昇し、目的レベルVo1を超えるが、時刻t24となると、発光ダイオード310が反応し、発光が強くなるため、フォトトランジスタ530がバイアス電流Ibを増加させる。この結果、例えば時刻t24に、電圧Vbは低下し、出力電圧Vout1も目的レベルVo1となる。
【0141】
このように、本実施形態では、例えば、図4に示すように、交流電圧Vacの実効値が240Vと大きい場合であっても、インダクタ電流IL1の過電流を小さい電流値I1とすることができるため、サージ電圧Vsurgeを小さくすることができる。
【0142】
なお、例えば、交流電圧Vacの実効値が100Vの場合、整流電圧Vrec1は小さくなる。このため、この場合、上述した式(1)から、インダクタ電流IL1の過電流を大きい電流値I2としても、NMOSトランジスタ305の電圧Vdsの変動を抑制できる。
Vds=Vr+Vrec1+Vsurge・・・(1)
【0143】
また、交流電圧Vacの実効値が100Vの場合、インダクタ電流IL1の過電流を大きい電流値I2することで、短時間でより多くのエネルギーを1次側から、2次側に伝達することが可能となる。したがって、電源回路20の出力電圧Vout1の立ち上げ時間(0Vから目的レベルVo1となるまでの時間)を短くすることができる。
【0144】
<<<非絶縁型の電源回路の一例>>>
図10は、非絶縁型の電源回路21の構成の一例を示す図である。電源回路21は、商用電源の交流電圧Vacから目的レベルVo2(例えば、400V)の出力電圧Vout2を負荷12に生成する昇圧チョッパー型のAC-DCコンバータである。なお、電源回路21の負荷12は、例えば、DC-DCコンバータやマイコン等の電子機器である。また、電源回路21は、「第2電源回路」に相当する。
【0145】
電源回路21は、スイッチング制御IC10、ダイオード600,601,607,609、全波整流回路602、コンデンサ603,605,608,632,633、トランス604、抵抗606,611,620,621,631、及びNMOSトランジスタ610を含んで構成される。
【0146】
スイッチング制御IC10は、図1で説明した制御ICであり、電源回路21の力率を改善しつつ、出力電圧Vout2のレベルが目的レベルVo2となるよう、NMOSトランジスタ610のスイッチングを制御する。
【0147】
ダイオード600,601は、交流電圧Vacを全波整流し、電圧Vhとして、スイッチング制御IC10の端子VHに出力する。
【0148】
全波整流回路602は、交流電圧Vacを全波整流し、整流電圧Vrec2として、コンデンサ603と、トランス604の主コイルL20に印加する。なお、整流電圧Vrec2は、「第1整流電圧」に相当する。
【0149】
コンデンサ603は、整流電圧Vrec2を平滑化するための素子である。
【0150】
トランス604は、主コイルL20と、主コイルL20に磁気的に結合された補助コイルL21とを有する。ここで、本実施形態では、補助コイルL21に生じる電圧が、主コイルL20に生じる電圧とは極性が逆になるよう、補助コイルL21は巻かれている。
【0151】
補助コイルL21の一端と、端子ZCDとの間には、抵抗106が設けられているため、端子ZCDには、補助コイルL21で発生する電圧Vz2が、電圧Vzcdとして印加される。
【0152】
また、補助コイルL21の一端と、接地との間には、ダイオード607及びコンデンサ608が設けられているため、コンデンサ608は、電圧Vz2により充電される。そして、本実施形態では、コンデンサ608の充電電圧が、スイッチング制御IC10の電源電圧Vccとして供給される。
【0153】
コンデンサ605は、主コイルL20、ダイオード609、及びNMOSトランジスタ610とともに昇圧チョッパー回路を構成する。このため、コンデンサ605の充電電圧が直流の出力電圧Vout2となる。
【0154】
NMOSトランジスタ610は、負荷11への電力を制御するためのパワートランジスタである。なお、本実施形態では、スイッチング制御IC10の端子OUTからは、NMOSトランジスタ610を駆動するための駆動信号Vdrが出力される。
【0155】
抵抗611は、NMOSトランジスタ610がオンとなると、主コイルL20に流れるインダクタ電流IL10を検出するための素子である。抵抗611の一端は、NMOSトランジスタ610及び端子CSに接続され、他端は、接地されている。よって端子CSにはインダクタ電流IL1に応じた電圧であり、インダクタ電流IL1を変換した電圧である電圧Vcsが発生する。
【0156】
抵抗620,621は、出力電圧Vout2を分圧する分圧回路を構成し、NMOSトランジスタ610をスイッチングする際に用いられる帰還電圧Vfbを生成する。なお、抵抗620,621が接続されるノードに生成される帰還電圧Vfbは、端子Aに印加される。このため、電源回路21においては、端子Aの電圧Vaは、帰還電圧Vfbとなる。この場合、抵抗620,621は、図2の(b)に示す回路800bである。
【0157】
抵抗631及びコンデンサ632、並びにコンデンサ633は、電源回路21のフィードバックループを安定させるための位相補償用の素子であり、端子Bと、接地との間に設けられている。なお、詳細は後述するが、端子Bの電圧Vbは、上述した誤差電圧Ve1となる。
【0158】
===電源回路21に用いられるスイッチング制御IC10===
図11は、非絶縁型の電源回路21に用いられるスイッチング制御IC10の一部の構成を示す図である。ここでは、端子Aの電圧Vaは、図2(c)に示す所定レベルV2より低いため、誤差増幅回路43と、誤差電圧出力回路44のうち、誤差増幅回路43のみが動作することにな。このため、誤差増幅回路43が端子Bのコンデンサ633等を充電し、端子Bに印加される誤差電圧Ve1が、電圧Vbとなる。
【0159】
===非絶縁型の電源回路21の動作===
図12は、電源回路21に用いられるスイッチング制御IC10の動作を説明するための図である。
【0160】
まず、時刻t30にパルス信号Vpが出力されると、駆動信号VdrがHレベルになり、NMOSトランジスタ610はオンする。この結果、主コイルL20(インダクタ)に流れるインダクタ電流IL10は増加する。また、パルス信号Vpが出力されると、発振回路42からのランプ波Vrの振幅が増加する。
【0161】
そして、時刻t31に、ランプ波Vrの振幅レベルが電圧Vb(=Ve1)のレベルより高くなると、コンパレータ45は、信号Vc3をHレベルに変化させる。この結果、SRフリップフロップ90はリセットされ、駆動信号VdrはLレベルとなる。
【0162】
駆動信号VdrがLレベルとなると、NMOSトランジスタ610はオフするため、インダクタ電流IL10は徐々に減少する。また、NMOSトランジスタ610がオフすると、主コイルL10の入力側(全波整流回路602側)の電圧が、主コイルL10の出力側(コンデンサ605側)より低くなるため、一端が接地された補助コイルL2の他端の電圧Vz2は正となる。この結果、電圧Vzcd(=Vz2)は、基準電圧Vref2より高くなるため、コンパレータ40から信号Vc2はHレベルになる。
【0163】
そして、時刻t32にインダクタ電流IL10がほぼゼロとなると、主コイルL1に磁気結合された補助コイルL2の電圧Vz2は急激に低下する。この結果、時刻t33に、電圧Vz2は、基準電圧Vref2より低くなり、コンパレータ40からの信号Vc2はLレベルになる。
【0164】
コンパレータ40からの信号Vc2がLレベルになると、パルス信号Vpが出力されるため、NMOSトランジスタ610はオンする。そして、時刻t23以降、時刻t30~t33までの動作が繰り返される。
<<過電流について>>
なお、時刻t30~t33の動作が繰り返されている際に、インダクタ電流IL10が過電流となることがある。ここで、電源回路21では、条件Bが満たされるため、インダクタ電流IL10が、大きい電流値I2(>電流値I1)となると過電流と判定される。
【0165】
コンパレータ47は、インダクタ電流IL10が過電流と判定すると、Hレベルの信号Vc4を出力する。この結果、駆動回路49は、NMOSトランジスタ610をオフするため、インダクタ電流IL1が過電流を超えて大きくなることを防ぐことができる。
【0166】
===フィードバック制御と力率改善===
ここで、電源回路21において、出力電圧Vout2が目的レベルVo2(例えば、400V)から高くなると、帰還電圧Vfbは上昇する。この結果、誤差電圧Ve1は低下し、NMOSトランジスタ610がオンする期間は短くなるため、出力電圧Vout2は低下する。
【0167】
一方、出力電圧Vout2が目的レベルVo2から低くなると、帰還電圧Vfbは低下する。この結果、誤差電圧Ve1は上昇し、NMOSトランジスタ610がオンする期間は長くなるため、出力電圧Vout2は上昇する。このように、電源回路21においては、出力電圧Vout2は、目的レベルVo2になるよう、フィードバック制御されている。
【0168】
したがって、電源回路21が所定の交流電圧Vacから目的レベルVo2の出力電圧Vout2を生成し、一定の負荷に電力を供給している際、帰還電圧Vfbは一定となる。この結果、誤差増幅回路43から出力される誤差電圧Ve1も一定になるため、NMOSトランジスタ610がオンする期間(例えば、時刻t20~t21までの期間)も一定となる。
【0169】
そして、NMOSトランジスタ610がオンする際に、交流電圧Vacを整流した電圧Vrec2のレベルが高くなると、インダクタ電流IL10の電流値も大きくなる。この結果、インダクタ電流IL10のピークの波形は電圧Vrec2と同じ波形となり、力率が改善される。したがって、電源回路21は、PFC(Power Factor Correction:力率改善)回路として動作する。このように、スイッチング制御IC10は、非絶縁型の電源回路21に所望の動作をさせることができる。
【0170】
===起動時からの電源回路21の動作について===
上述した電源回路20が起動する際には、電圧Vbが高くなるため、NMOSトランジスタ305がオンとなる期間が長くなる。したがって、電源回路20に供給される交流電圧Vacの実効値が240Vの場合、サージ電圧Vsurgeを小さくするため、インダクタ電流IL1の過電流を、小さい電流値I1とする必要があった。
【0171】
電源回路21が起動する際には、例えば図11に示すように、誤差増幅回路43が、端子Bを介してコンデンサ632,633を充電する。このため、図13に示すように、電源回路21が起動する時刻t50から、一点鎖線で示す電圧Vbは0から徐々に上昇することになる。なお、ここでは、スイッチング制御IC10には、インダクタ電流ILがゼロとならない期間が所定期間継続すると、Hレベルのパルス信号Vpを出力するリスタートタイマ(不図示)が設けられている。
【0172】
したがって、電源回路21では、NMOSトランジスタ610のオン時間は、時刻t51~53のそれぞれに示すよう徐々に長くなり、いわゆるソフトスタートが実現される。このため、電源回路21では、電流IL20の過電流を大きい電流値I2とすることで、出力電圧Vout2の立ち上げ時間を短くすることができる。
【0173】
===まとめ===
以上、本実施形態のスイッチング制御IC10について説明した。例えば、スイッチング制御IC10は、交流電圧Vacの実効値が240Vであり、絶縁型の電源回路20に用いられる場合、インダクタ電流IL1の過電流を小さい電流値I1とする。このため、図8の時刻t21~t22に示すように、サージ電圧Vsurgeを抑制することができる。
【0174】
また、スイッチング制御IC10には、絶縁型の電源回路20、または非絶縁型の電源回路21に用いられるかを判定する判定回路33が設けられているため、必要な場合に過電流の電流値を小さくすることができる。
【0175】
また、識別回路60は、整流電圧Vhを分圧した分圧電圧Vd2が、基準電圧Vref1より高くなるか否か、つまり、整流電圧Vhのレベルが、基準電圧Vref1に応じた所定レベルより高くなるか否かを検出するコンパレータ72を備える。また、コンパレータ72が、分圧電圧Vd2のレベルが、基準電圧Vref1のレベルより高くなると、SRフリップフロップ74は、交流電圧Vacの実効値が240V(第1レベル)であることを保持する。したがって、本実施形態では、SRフリップフロップ74のQ出力に基づいて、基準電圧Vref4,Vref5を選択できる。
【0176】
また、スイッチング制御IC10は、整流電圧Vhが印加される端子VHを備えている。したがって、識別回路60は、端子VHに印加される電圧Vhに基づいて、交流電圧Vacの実効値を識別できる。
【0177】
また、本実施形態では、スイッチング制御IC10は、絶縁型の電源回路、非絶縁型の電源回路の何れにも用いることができる回路であるが、これに限られない。例えば、スイッチング制御IC10において、誤差増幅回路43を含まないIC(つまり、絶縁型の電源回路専用のIC)としても、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0178】
また、例えば、誤差増幅回路43を含まないスイッチング制御ICを用いた場合であっても、フライバック方式の電源回路20の起動時に発生するサージ電圧Vsurgeを抑制することができる。
【0179】
また、スイッチング制御IC10は、絶縁型の電源回路20として、フライバック方式の電源回路に用いることとしたが、これに限られない。例えば、絶縁型の電源回路20の方式としては、フォワード方式、プッシュプル方式、ハーフブリッジ方式、フルブリッジ方式、チョッパー方式であっても良い。
【0180】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0181】
10 スイッチング制御IC
11,12 負荷
20,21 電源回路
30 起動回路
31 電源回路
32 電圧検出回路
33,34 判定回路
40,45,47,72 コンパレータ
41 パルス回路
42 発振回路
43 誤差増幅回路
44 誤差電圧出力回路
46 基準電圧出力回路
48 OR回路
49 駆動回路
60 識別回路
61 AND回路
70,71,502,510,520,606,611,620,621,631 抵抗
73 リセット回路
74,90 SRフリップフロップ
300,301,307,501,600,601,607,609 ダイオード
302,602 全波整流回路
303,308,500,603,605,608,632,633 コンデンサ
304,604 トランス
305,610 NMOSトランジスタ
306 制御ブロック
309 定電圧回路
310 発光ダイオード
521 ツェナーダイオード
530 フォトトランジスタ
800a,800b 回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13