(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025100
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】ズームレンズおよび撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 15/20 20060101AFI20240216BHJP
G02B 13/18 20060101ALN20240216BHJP
【FI】
G02B15/20
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128262
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】岩本 俊二
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087MA16
2H087MA17
2H087MA19
2H087NA07
2H087PA15
2H087PA16
2H087PB20
2H087QA03
2H087QA07
2H087QA19
2H087QA21
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA37
2H087QA41
2H087QA42
2H087QA45
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA36
2H087RA44
2H087SA57
2H087SA63
2H087SA64
2H087SA65
2H087SA66
2H087SA72
2H087SB05
2H087SB06
2H087SB15
2H087SB25
2H087SB26
2H087SB34
2H087SB35
2H087SB36
2H087SB37
2H087SB42
2H087SB43
2H087SB44
(57)【要約】
【課題】小型で高変倍比かつ大口径比でありながら、高画質化と高速なズーム操作とを実現させたズームレンズを提供する。
【解決手段】物体側から像側へ順に、正の屈折力の第1レンズ群(L1)と、負の屈折力の第2レンズ群(L2)と、ズーミングに際して移動する少なくとも4つのレンズ群を有する後続群(LR)とからなるズームレンズ(L0a)であって、ズーミングに際して、隣り合うレンズ群の間隔は変化し、ズーミングおよびフォーカシングに際して、第1レンズ群は像面に対して移動せず、広角端でのズームレンズにおける最も物体側の面の面頂点位置から像面までの光軸上の距離Lw、広角端でのズームレンズの焦点距離fw、第2レンズ群における最も物体側の面の面頂点位置から最も像側の面の面頂点位置までの光軸上の距離T2、第2レンズ群の焦点距離f2は、所定の条件式を満足する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側へ順に、正の屈折力の第1レンズ群と、負の屈折力の第2レンズ群と、ズーミングに際して移動する少なくとも4つのレンズ群を有する後続群とからなるズームレンズであって、
ズーミングに際して、隣り合うレンズ群の間隔は変化し、
ズーミングおよびフォーカシングに際して、前記第1レンズ群は像面に対して移動せず、
広角端での前記ズームレンズにおける最も物体側の面の面頂点位置から前記像面までの光軸上の距離をLw、広角端での前記ズームレンズの焦点距離をfw、前記第2レンズ群における最も物体側の面の面頂点位置から最も像側の面の面頂点位置までの光軸上の距離をT2、前記第2レンズ群の焦点距離をf2とするとき、
7.50<Lw/fw<15.00
0.20<T2/|f2|<0.85
なる条件式を満足することを特徴とするズームレンズ。
【請求項2】
広角端での前記ズームレンズにおける最も像側の面の面頂点位置から前記像面までの光軸上の距離をskwとするとき、
0.20<skw/fw<1.50
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項3】
前記第1レンズ群の焦点距離をf1、前記第2レンズ群の焦点距離をf2とするとき、
1.50<|f1/f2|<7.70
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項4】
広角端から望遠端へのズーミングに際しての前記第2レンズ群の移動量の絶対値をM2とするとき、
0.60<M2/fw<3.20
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項5】
望遠端での前記第2レンズ群の横倍率をβ2Tとするとき、
-2.00<β2t<-0.30
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項6】
前記第1レンズ群の焦点距離をf1、前記第1レンズ群における最も物体側の面の面頂点位置から最も像側の面の面頂点位置までの光軸上の距離をT1とするとき、
0.10<T1/f1<0.70
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項7】
前記第1レンズ群は、最も物体側に負の屈折力の第1レンズを有することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項8】
前記第1レンズ群の焦点距離をf1、前記第1レンズの焦点距離をf11とするとき、
0.40<|f11/f1|<2.20
なる条件式を満足することを特徴とする請求項7に記載のズームレンズ。
【請求項9】
前記第1レンズにおける物体側の面の曲率半径をr111、前記第1レンズにおける像側の面の曲率半径をr112とするとき、
-2.00<(r112+r111)/(r112-r111)<-0.20なる条件式を満足することを特徴とする請求項7に記載のズームレンズ。
【請求項10】
広角端から望遠端へのズーミングに際しての前記後続群を構成するレンズ群の移動量の絶対値のうち最大値をMR、望遠端での前記ズームレンズの焦点距離をftとするとき、
0.10<MR/ft<0.50
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項11】
前記後続群は、物体側から像側へ順に、正の屈折力の第3レンズ群と正の屈折力の第4レンズ群とを有することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項12】
前記第3レンズ群の焦点距離をf3とするとき、
2.00<f3/fw<11.00
なる条件式を満足することを特徴とする請求項11に記載のズームレンズ。
【請求項13】
前記第4レンズ群の焦点距離をf4とするとき、
0.70<f4/fw<6.70
なる条件式を満足することを特徴とする請求項11に記載のズームレンズ。
【請求項14】
広角端での前記第3レンズ群における最も像側の面の面頂点位置から前記第4レンズ群における最も物体側の面の面頂点位置までの光軸上の距離をD34w、望遠端での前記第3レンズ群における最も像側の面の面頂点位置から前記第4レンズ群における最も物体側の面の面頂点位置までの光軸上の距離をD34tとするとき、
0.40<(D34w-D34t)/fw<1.80
なる条件式を満足することを特徴とする請求項11に記載のズームレンズ。
【請求項15】
フォーカシングに際して、前記第4レンズ群の像側に配置されたレンズ群のみが移動することを特徴とする請求項11に記載のズームレンズ。
【請求項16】
前記第1レンズ群は、少なくとも3枚の正の屈折力のレンズを有することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項17】
前記第2レンズ群は、最も物体側に負の屈折力の第2レンズを有することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項18】
前記第2レンズの焦点距離をf21とするとき、
0.60<|f21/f2|<3.00
なる条件式を満足することを特徴とする請求項17に記載のズームレンズ。
【請求項19】
前記第2レンズにおける物体側の面の曲率半径をr211、前記第2レンズにおける像側の面の曲率半径をr212とするとき、
-2.60<(r212+r211)/(r212-r211)<-0.50
なる条件式を満足することを特徴とする請求項17に記載のズームレンズ。
【請求項20】
前記第2レンズ群は、物体側から像側へ順に、負の屈折力のレンズと、負の屈折力のレンズと、負の屈折力のレンズと、正の屈折力のレンズとを有することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項21】
請求項1乃至20のいずれか一項に記載のズームレンズと、
前記ズームレンズにより形成された像を受光する撮像素子と、を有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズームレンズおよび撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置に用いられるズームレンズとして、小型かつ軽量であり、色収差等の諸収差を良好に補正する高い光学性能を有するズームレンズが要望されている。また、広角端での焦点距離が短く、変倍比が大きく、Fナンバーが小さく大口径比かつ製造が容易なズームレンズが要望されている。また、高速なズーム操作が可能なズームレンズが要望されている。特許文献1には、物体側から像側へ順に、正の屈折力のレンズ群と、負の屈折力のレンズ群と、複数のレンズ群を有する後群とからなるズームレンズが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたズームレンズでは、小型で高変倍比かつ大口径比でありながら、高画質化と高速なズーム操作とを実現させることが難しい。
【0005】
そこで本発明は、小型で高変倍比かつ大口径比でありながら、高画質化と高速なズーム操作とを実現させたズームレンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としてのズームレンズは、物体側から像側へ順に、正の屈折力の第1レンズ群と、負の屈折力の第2レンズ群と、ズーミングに際して移動する少なくとも4つのレンズ群を有する後続群とからなるズームレンズであって、ズーミングに際して、隣り合うレンズ群の間隔は変化し、ズーミングおよびフォーカシングに際して、前記第1レンズ群は像面に対して移動せず、広角端での前記ズームレンズにおける最も物体側の面の面頂点位置から前記像面までの光軸上の距離をLw、広角端での前記ズームレンズの焦点距離をfw、前記第2レンズ群における最も物体側の面の面頂点位置から最も像側の面の面頂点位置までの光軸上の距離をT2、前記第2レンズ群の焦点距離をf2とするとき、
7.5<Lw/fw<15.0
0.20<T2/|f2|<0.85
なる条件式を満足する。
【0007】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、小型で高変倍比かつ大口径比でありながら、高画質化と高速なズーム操作とを実現させたズームレンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1におけるズームレンズの断面図である。
【
図2】実施例1におけるズームレンズの収差図である。
【
図3】実施例2におけるズームレンズの断面図である。
【
図4】実施例2におけるズームレンズの収差図である。
【
図5】実施例3におけるズームレンズの断面図である。
【
図6】実施例3におけるズームレンズの収差図である。
【
図7】実施例4におけるズームレンズの断面図である。
【
図8】実施例4におけるズームレンズの収差図である。
【
図9】実施例5におけるズームレンズの断面図である。
【
図10】実施例5におけるズームレンズの収差図である。
【
図11】各実施例におけるズームレンズを備えた撮像装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
高速なズーム操作を実現するには、変倍時に(ズーミングに際して)移動するレンズ群の質量および移動量を小さくことが好ましい。移動するレンズ群の質量を抑制するには、移動するレンズ群の構成枚数を少なくすることが好ましい。しかしながら、移動するレンズ群の構成枚数を少なくすると、収差補正が困難となり、高画質化を実現することが難しくなる。また、移動するレンズ群の移動量を小さくすると、高変倍化を実現することが困難となる。また、移動するレンズ群の移動量を小さくするためにズームレンズを構成するレンズ群の屈折力を強くすると、収差補正が困難となり高画質化が難しくなる。したがって、小型で高変倍比かつ大口径比でありながら高画質化と高速なズーム操作とを実現するズームレンズを得るには、ズームレンズを構成するレンズおよびレンズ群の配置を適切に設定することが重要である。
【0012】
各実施例のズームレンズは、物体側から像側へ順に、正の屈折力の第1レンズ群L1と、負の屈折力の第2レンズ群L2と、ズーミングに際して移動する少なくとも4つのレンズ群を有する後続群LRとからなる。ズーミングに際して、隣り合うレンズ群の間隔(光軸OAに沿った方向の空気間隔)は変化する。また、ズーミングおよびフォーカシングに際して、第1レンズ群L1は像面に対して移動しない。高変倍比かつ大口径比のズームレンズは、前玉径が大きくなる傾向があり質量が大きくなるため、第1レンズ群L1を像面に対して固定することで、高速なズーム操作を容易とすることができる。また、複数のレンズ群が間隔を変化させながら移動することにより、ズーミングの際の諸収差、特に倍率色収差と非点収差のズーム変動の補正が良好となる。
【0013】
各実施例のズームレンズにおいて、以下の条件式(1)、(2)を満足する。
【0014】
7.50<Lw/fw<15.00 ・・・(1)
0.20<T2/|f2|<0.85 ・・・(2)
ここで、Lwは広角端でのズームレンズにおける最も物体側の面の面頂点位置から像面までの光軸上の距離、fwは広角端でのズームレンズ(全系)の焦点距離である。T2は第2レンズ群L2における最も物体側の面の面頂点位置から最も像側の面の面頂点位置までの光軸上の距離、f2は第2レンズ群L2の焦点距離である。
【0015】
条件式(1)は、広角端での最も物体側の面の面頂点位置から像面までの光軸上の距離と広角端でのズームレンズ(全系)の焦点距離との関係を規定している。条件式(1)の上限を超えると、第2レンズ群L2のレンズ径および質量が大きくなり、高速なズーム操作を実現することが困難となるため、好ましくない。一方、条件式(1)の下限を超えると、各レンズ群の屈折力が強くなりすぎて諸収差の補正、特に球面収差および非点収差の補正が困難となるため、好ましくない。
【0016】
条件式(2)は、第2レンズ群L2の光軸上の厚さと第2レンズ群L2の焦点距離との関係を規定している。条件式(2)の上限を超えて第2レンズ群L2の厚さが大きくなると、第2レンズ群L2の質量が大きくなり、高速なズーム操作を実現することが困難となるため、好ましくない。一方、条件式(2)の下限を超えて第2レンズ群L2の厚さが小さくなると、第2レンズ群L2で発生する収差を抑制することが困難となり、諸収差の補正、特に球面収差および非点収差のズーム変動が大きくなるため、好ましくない。
【0017】
各実施例において、好ましくは、条件式(1)、(2)の少なくとも1つの数値範囲は、以下の条件式(1a)、(2a)のようにそれぞれ設定される。
【0018】
8.02<Lw/fw<12.16 ・・・(1a)
0.38<T2/f2<0.84 ・・・(2a)
各実施例において、より好ましくは、条件式(1)、(2)の少なくとも1つの数値範囲は、以下の条件式(1b)、(2b)のようにそれぞれ設定される。
8.28<Lw/fw<10.74 ・・・(1b)
0.47<T2/f2<0.83 ・・・(2b)
次に、各実施例におけるズームレンズの好ましい構成について述べる。
【0019】
各実施例において、好ましくは、第1レンズ群L1は、最も物体側に負の屈折力のレンズ(第1レンズ)L11を有する。これにより、前玉径を抑制することが容易となり、小型化が容易となる。
【0020】
各実施例において、後続群LRは、物体側から像側へ順に、正の屈折力の第3レンズ群L3と正の屈折力の第4レンズ群L4とを有する。正の屈折力のレンズ群の間隔を変化させることで、非点収差のズーム変動を抑制し、光画質化が容易となる。また、正の屈折力のレンズ群を複数配置することで、第4レンズ群L4よりも像側に配置されたレンズ群へ入射する光線の光線高さを低くすることができ、第4レンズ群L4よりも像側に配置されたレンズ群の小径化および小型化が容易となる。
【0021】
各実施例において、好ましくは、無限遠から近距離への合焦時に(フォーカシングに際して)、第4レンズ群L4よりも像側に配置されたレンズまたはレンズ群が移動する。物体側に配置された大きい径のレンズ群をフォーカス時に固定とし、第4レンズ群L4よりも像側に配置された小さい径のレンズまたはレンズ群でフォーカスを行うように構成することで、フォーカスレンズ群の軽量化が容易となり、駆動機構が簡素化される。これにより、小型化が容易となる。
【0022】
各実施例において、第1レンズ群L1は、少なくとも3枚の正の屈折力のレンズを有する。これにより、高変倍化と高性能化とを両立することが容易となる。
【0023】
各実施例において、第2レンズ群L2は、物体側から像側へ順に、負の屈折力のレンズ(第2レンズ)と、負の屈折力のレンズと、負の屈折力のレンズと、正の屈折力のレンズとを有する。第2レンズ群L2における物体側に負レンズを配置することで、広角化と前玉径の抑制とを両立することが容易となる。
【0024】
各実施例において、好ましくは、以下の条件式(3)~(15)の少なくとも1つを満足する。
【0025】
0.20<skw/fw<1.50 ・・・(3)
1.50<|f1/f2|<7.70 ・・・(4)
0.60<M2/fw<3.20 ・・・(5)
-2.00<β2t<-0.30 ・・・(6)
0.10<T1/f1<0.70 ・・・(7)
0.40<|f11/f1|<2.20 ・・・(8)
-2.00<(r112+r111)/(r112-r111)<-0.20 ・・・(9)
0.10<MR/ft<0.50 ・・・(10)
2.00<f3/fw<11.00 ・・・(11)
0.70<f4/fw<6.70 ・・・(12)
0.40<(D34w-D34t)/fw<1.80 ・・・(13)
0.60<|f21/f2|<3.00 ・・・(14)
-2.60<(r212+r211)/(r212-r211)<-0.50 ・・・(15)
ここで、skwは、広角端での前記ズームレンズにおける最も像側の面の面頂点位置から前記像面までの光軸上の距離(バックフォーカス)である。f1は、第1レンズ群L1の焦点距離である。f2は、第2レンズ群L2の焦点距離である。M2は、広角端から望遠端へのズーミングに際しての第2レンズ群L2の移動量の絶対値である。β2Tは、望遠端での第2レンズ群L2の横倍率である。T1は、第1レンズ群L1における最も物体側の面の面頂点位置から最も像側の面の面頂点位置までの光軸上の距離である。f11は、レンズ(第1レンズ)L11の焦点距離である。r111はレンズL11における物体側の面の曲率半径、r112はレンズL11における像側の面の曲率半径である。MRは、広角端から望遠端へのズーミングに際しての後続群LRを構成するレンズ群の移動量の絶対値のうち最大値である。ftは、望遠端でのズームレンズ(全系)の焦点距離である。f3は第3レンズ群L3の焦点距離、f4は第4レンズ群L4の焦点距離である。D34wは、広角端での第3レンズ群L3における最も像側の面の面頂点位置から第4レンズ群L4における最も物体側の面の面頂点位置までの光軸上の距離である。D34tは、望遠端での第3レンズ群L3における最も像側の面の面頂点位置から第4レンズ群L4における最も物体側の面の面頂点位置までの光軸上の距離である。f21は、レンズ(第2レンズ)L21の焦点距離である。r211はレンズL21における物体側の面の曲率半径、r212はレンズL21における像側の面の曲率半径である。
【0026】
条件式(3)は、広角端におけるバックフォーカスとズームレンズ(全系)の焦点距離との関係を規定している。条件式(3)の上限を超えてバックフォーカスが長くなると、前玉径が増大し、大型化するため好ましくない。一方、条件式(3)の下限を超えてバックフォーカスが短くなると、後続群LRを構成するレンズのレンズ径が大きくなり、後続群LRを構成するレンズの質量が大きくなることで高速なズーム操作を実現することが困難となるため、好ましくない。
【0027】
条件式(4)は、第1レンズ群L1の焦点距離と第2レンズ群L2の焦点距離との関係を規定している。条件式(4)の上限を超えて第1レンズ群L1の焦点距離が大きくなると、大型化するため好ましくない。一方、条件式(4)の下限を超えて第1レンズ群L1の焦点距離が小さくなると、諸収差の補正、特に望遠端における球面収差および倍率色収差の補正が困難となるため、好ましくない。
【0028】
条件式(5)は、第2レンズ群L2の移動量と広角端での焦点距離との関係を規定している。条件式(5)の上限を超えて第2レンズ群L2の移動量が大きくなると、高速なズーム操作を実現することが困難となるため、好ましくない。一方、条件式(5)の下限を超えて第2レンズ群L2の移動量が小さくなると、高変倍化を実現することが困難となるため、好ましくない。
【0029】
条件式(6)は、望遠端での第2レンズ群L2の横倍率を規定している。条件式(6)の上限を超えて望遠端での第2レンズ群L2の横倍率の絶対値が小さくなると、高変倍化が困難となるため好ましくない。一方、条件式(6)の下限を超えて第2レンズ群L2の横倍率の絶対値が大きくなると、第2レンズ群L2の変倍分担が大となる。その結果、第2レンズ群L2で発生する収差の補正が困難となり、特に球面収差および非点収差のズーム変動を抑制することが困難となるため、好ましくない。
【0030】
条件式(7)は、第1レンズ群L1の厚さと焦点距離との関係を規定している。条件式(7)の上限を超えて第1レンズ群L1の厚さが大きくなると、前玉径が増大して大型化するため、好ましくない。一方、条件式(7)の下限を超えて第1レンズ群L1の厚さが小さくなると、第1レンズ群L1で発生する収差の補正が困難となり、特に望遠端での球面収差および倍率色収差の補正が困難となるため、好ましくない。
【0031】
条件式(8)はレンズL11の焦点距離と第1レンズ群L1の焦点距離との関係を規定している。条件式(8)の上限を超えてレンズL11の焦点距離の絶対値が大きくなると、前玉径が増大し好ましくない。一方、条件式(8)の下限を超えてレンズL11の焦点距離の絶対値が小さくなると、レンズL11で発生する収差の補正が困難となり、特に広角端での歪曲収差およびコマ収差の補正が困難となるため、好ましくない。
【0032】
条件式(9)は、レンズL11における物体側の面の曲率半径と像側の面の曲率半径との関係を規定している。条件式(9)の上限を超えると、歪曲収差の補正が困難となるため好ましくない。一方、条件式(9)の下限を超えると、前玉径が増大し大型化するため好ましくない。
【0033】
条件式(10)は、後続群LRを構成するレンズの移動量の絶対値の最大値と望遠端でのフォーカスレンズ(全系)の焦点距離との関係を規定している。条件式(10)の上限を超えて後続群LRを構成するレンズの移動量の絶対値の最大値が大きくなると、高速なズーム操作を実現することが困難となるため、好ましくない。一方、条件式(10)の下限を超えて後続群LRを構成するレンズの移動量の絶対値の最大値が小さくなると、高変倍化が困難となるため好ましくない。
【0034】
条件式(11)は、第3レンズ群L3の焦点距離と広角端でのズームレンズ(全系)の焦点距離の関係を規定している。条件式(11)の上限を超えて第3レンズ群L3の焦点距離が大きくなると、第3レンズ群L3よりも像側に配置されたレンズ群の径が大きくなり、大型化するため好ましくない。一方、条件式(11)の下限を超えて第3レンズ群L3の焦点距離が小さくなると、第3レンズ群L3で発生する収差の補正が困難となり、諸収差、特に望遠端における球面収差および軸上色収差の補正が困難となり、好ましくない。
【0035】
条件式(12)は、第4レンズ群L4の焦点距離と広角端でのズームレンズ(全系)の焦点距離との関係を規定している。条件式(12)の上限を超えて第4レンズ群L4の焦点距離が大きくなると、第4レンズ群L4よりも像側に配置されたレンズ群の径が大きくなり、大型化するため好ましくない。一方、条件式(12)の下限を超えて第4レンズ群L4の焦点距離が小さくなると、第4レンズ群L4で発生する収差の補正が困難となり、諸収差、特に望遠端での球面収差および非点収差、広角端でのコマ収差の補正が困難となり、好ましくない。
【0036】
条件式(13)は、広角端および望遠端での第3レンズ群L3と第4レンズ群L4との間隔(空気間隔)と広角端でのズームレンズ(全系)の焦点距離との関係を規定している。条件式(13)の上限を超えて間隔の変化が大きくなると、第4レンズ群L4の移動量が大きくなり、高速なズーム操作を実現することが困難となるため好ましくない。一方、条件式(13)の下限を超えて間隔の変化が小さくなると、非点収差のズーム変動が大きくなり、高画質化を実現することが困難となるため好ましくない。
【0037】
条件式(14)は、レンズL21の焦点距離と第2レンズ群L2の焦点距離との関係を規定している。条件式(14)の上限を超えてレンズL21の焦点距離の絶対値が大きくなると、前玉径が増大し、大型化するため好ましくない。一方、条件式(14)の下限を超えてレンズL21の焦点距離の絶対値が小さくなると、諸収差の補正、特に広角端での歪曲収差および倍率色収差の補正が困難となるため、好ましくない。
【0038】
条件式(15)は、レンズL21における物体側の面の曲率半径と像側の面の曲率半径との関係を規定している。条件式(15)の上限を超えると、歪曲収差の補正が困難となるため好ましくない。一方、条件式(15)の下限を超えると、前玉径が増大し大型化するため好ましくない。
【0039】
各実施例において、より好ましくは、条件式(3)~(15)の少なくとも1つの数値範囲は、以下の条件式(1a)~(15a)のようにそれぞれ設定される。
【0040】
0.33<skw/fw<1.13 ・・・(3a)
2.25<|f1/f2|<5.79 ・・・(4a)
0.90<M2/fw<2.41 ・・・(5a)
-1.05<β2t<-0.60 ・・・(6a)
0.17<T1/f1<0.53 ・・・(7a)
0.60<|f11/f1|<1.65 ・・・(8a)
-1.50<(r112+r111)/(r112-r111)<-0.21 ・・・(9a)
0.17<MR/ft<0.38 ・・・(10a)
2.97<f3/fw<8.26 ・・・(11a)
1.04<f4/fw<5.04 ・・・(12a)
0.58<(D34w-D34t)/fw<1.35 ・・・(13a)
0.94<|f21/f2|<2.24 ・・・(14a)
-1.49<(r212+r211)/(r212-r211)<-0.94 ・・・(15a)
各実施例において、更に好ましくは、条件式(3)~(15)の少なくとも1つの数値範囲は、以下の条件式(3b)~(15b)のようにそれぞれ設定される。
【0041】
0.40<skw/fw<0.95 ・・・(3b)
2.62<|f1/f2|<4.83 ・・・(4b)
1.05<M2/fw<2.01 ・・・(5b)
-1.00<β2t<-0.68 ・・・(6b)
0.21<T1/f1<0.44 ・・・(7b)
0.70<|f11/f1|<1.37 ・・・(8b)
-0.99<(r112+r111)/(r112-r111)<-0.22 ・・・(9b)
0.21<MR/ft<0.32 ・・・(10b)
3.46<f3/fw<6.89 ・・・(11b)
1.21<f4/fw<4.21 ・・・(12b)
0.67<(D34w-D34t)/fw<1.10 ・・・(13b)
1.11<|f21/f2|<1.86 ・・・(14b)
-1.33<(r212+r211)/(r212-r211)<-0.95 ・・・(15b)
以下、各実施例のズームレンズの構成について詳述する。
【実施例0042】
まず、
図1および
図2(a)、(b)を参照して、実施例1におけるズームレンズL0aについて説明する。
図1は、無限遠合焦時における広角端でのズームレンズL0aの断面図である。
図1において、左方が物体側(前方)で、右方が像側(後方)である。開口絞りSPは、開放Fナンバー(Fno)の光束を決定(制限)する。無限遠物体から最至近距離物体へのフォーカシングに際して、フォーカスレンズ群は、
図1中の矢印focusに示されるように移動する。ズームレンズL0aをデジタルスチルカメラまたはデジタルビデオカメラの撮像光学系として使用する際には、像面IPはCCDセンサまたはCMOSセンサ等の撮像素子(光電変換素子)の撮像面となる。ズームレンズL0aを銀塩フィルム用カメラの撮像光学系として使用する際には、像面IPはフィルム面に相当する。なお、以上の説明は、他の断面図に関しても同様である。
【0043】
図2(a)は無限遠合焦時における広角端でのズームレンズL0aの収差図、
図2(b)は無限遠合焦時における望遠端でのズームレンズL0aの収差図である。球面収差図において、FnoはFナンバーであり、d線(波長587.56nm)、g線(波長435.8nm)に対する球面収差量を示している。非点収差図において、ΔSはサジタル像面における非点収差量、ΔMはメリディオナル像面における非点収差量を示している。歪曲収差図において、d線に対する歪曲収差量を示している。色収差図において、g線に対する色収差量を示している。ωは近軸計算による撮像半画角(°)である。なお、以上の説明は、他の収差図に関しても同様である。
【0044】
本実施例のズームレンズL0aは、物体側から像側へ順に、第1レンズ群L1と、第2レンズ群L2と、後続群LRとから構成される。後続群LRは、物体側から像側へ順に、正の屈折力の第3レンズ群L3と、正の屈折力の第4レンズ群L4と、負の屈折力の第5レンズ群L5と、正の屈折力の第6レンズ群L6と、負の屈折力の第7レンズ群L7とから構成される。第1レンズ群L1は、変倍に際して像面IPに対して固定されている(ズーミングに際して移動しない)。各レンズ群は、変倍時に互いの間隔を変化させながら異なる軌跡(
図1中の矢印で示される軌跡)で移動する。第3レンズ群L3は、開口絞りSPを有する。無限遠から近距離へのフォーカシングに際して、第5レンズ群L5は像側に移動し、第6レンズ群L6は像側に移動する。