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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025107
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】状態改善装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 23/02 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
A61H23/02 340
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128287
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】本川 智紀
(72)【発明者】
【氏名】加藤 朋美
【テーマコード(参考)】
4C074
【Fターム(参考)】
4C074AA05
4C074BB01
4C074CC01
4C074GG01
(57)【要約】
【課題】ユーザーに振動及び音楽の刺激を与えて、ユーザーの顔の肌の状態を改善することができる状態改善装置を提供する。
【解決手段】本発明の状態改善装置は、ユーザーの心拍を示す情報を取得して、心拍を示す情報からユーザーの心拍のテンポを認識する心拍認識部と、心拍認識部により認識されたユーザーの心拍のテンポと同期するテンポを、ユーザーに提供する刺激のテンポとして決定するとともに、刺激の開始時点から終了時点にかけて所定のテンポまで遅くなるようにテンポの変化を決定する刺激内容決定部と、刺激内容決定部により決定されたテンポの刺激をユーザーに向けて発生させる刺激発生部と、を備える。刺激発生部は振動及び音楽からなる刺激を提供してユーザーの顔の肌の状態を改善する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーの心拍を示す情報を取得して、当該心拍を示す情報から当該ユーザーの心拍のテンポを認識する心拍認識部と、
前記心拍認識部により認識された前記ユーザーの心拍のテンポと同期するテンポを、当該ユーザーに提供する刺激のテンポとして決定するとともに、当該刺激の開始時点から終了時点にかけて所定のテンポまで遅くなるように当該テンポの変化を決定する刺激内容決定部と、
前記刺激内容決定部により決定されたテンポの前記刺激を前記ユーザーに向けて発生させる刺激発生部と、を備え
前記刺激発生部は振動及び音楽からなる刺激を提供してユーザーの顔の肌の状態を改善する
ことを特徴とする状態改善装置。
【請求項2】
請求項1に記載の状態改善装置において、
前記刺激発生部は、前記振動の刺激を前記ユーザーの顔以外の部位に向けて発生させる
ことを特徴とする状態改善装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の状態改善装置において、
前記刺激発生部は振動及び音楽からなる刺激を提供して前記ユーザーの顔の肌の状態に加えて、心の状態、及び顔の肌以外の体の状態の状態を改善する
ことを特徴とする状態改善装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の状態改善装置において、
前記ユーザーの顔のしわの数を減少させて顔の肌の状態を改善する
ことを特徴とする状態改善装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の状態改善装置において、
前記ユーザーの顔の目立つ毛穴の数を減少させて顔の肌の状態を改善する
ことを特徴とする状態改善装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の状態改善装置において、
前記ユーザーの顔のシミの数を減少させて顔の肌の状態を改善する
ことを特徴とする状態改善装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザーの状態を改善する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明者らは、ユーザーに振動等の刺激を与えて、ユーザーの心身状態を改善できる装置について、特許を取得している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7095169号報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の発明によれば、ユーザーに振動等の刺激を与えて、ユーザーの心身状態を改善し、ユーザーの作業能率、疲労状態、睡眠導入のしやすさを改善することができる。
【0005】
発明者らは、さらなる研究を行うことにより、ユーザーに所定の振動及び音楽の刺激を与えることにより、ユーザーの顔の肌の状態を効果的に改善できることを発見した。
【0006】
そこで本発明は、ユーザーに振動及び音楽の刺激を与えて、ユーザーの顔の肌の状態を改善することができる状態改善装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の状態改善装置は、
ユーザーの心拍を示す情報を取得して、当該心拍を示す情報から当該ユーザーの心拍のテンポを認識する心拍認識部と、
前記心拍認識部により認識された前記ユーザーの心拍のテンポと同期するテンポを、当該ユーザーに提供する刺激のテンポとして決定するとともに、当該刺激の開始時点から終了時点にかけて所定のテンポまで遅くなるように当該テンポの変化を決定する刺激内容決定部と、
前記刺激内容決定部により決定されたテンポの前記刺激を前記ユーザーに向けて発生させる刺激発生部と、を備え
前記刺激発生部は振動及び音楽からなる刺激を提供してユーザーの顔の肌の状態を改善する
ことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、刺激内容決定部により、ユーザーの心拍のテンポと同期するテンポが、当該ユーザーに提供する刺激のテンポとして決定されるとともに、当該刺激の開始時点から終了時点にかけて所定のテンポまで遅くなるように当該テンポの変化が決定される。
【0009】
そして刺激発生部により、当該決定されたテンポの刺激がユーザーに向けて発せられる。なお、ユーザーに提供される刺激は振動及び音楽からなる刺激である。
【0010】
これにより、ユーザーの顔の肌の状態を効果的に改善することができる。
【0011】
本発明の状態改善装置において、
前記刺激発生部は、前記振動の刺激を前記ユーザーの顔以外の部位に向けて発生させる
ことが好ましい。
【0012】
装置を顔にあてて振動をユーザーに与える場合、例えば女性であれば装置が顔にあたることによる化粧くずれが気になるなど、装置を顔にあてることへの抵抗感を持つユーザーも多いことが想定される。
【0013】
発明者の研究により、ユーザーの心拍のテンポと同期するテンポで開始し、その後終了時点にかけて所定のテンポまで遅くなるようにテンポが変化する振動及び音楽の刺激をユーザーの顔以外の部位(例えばユーザーの片方又は両方の手全体、あるいは手指、手のひら)に与えることにより、ユーザーの顔の肌の状態を効果的に改善できることを発見した。
【0014】
本発明によれば、刺激発生部により、振動の刺激がユーザーの顔以外の部位に向けて発せられるので、装置を顔にあてることへの抵抗感をユーザーに持たせることなく、状態改善装置を利用させて、ユーザーの顔の肌の状態を効果的に改善することができる。
【0015】
本発明の状態改善装置において、
前記刺激発生部は振動及び音楽からなる刺激を提供して前記ユーザーの顔の肌の状態に加えて、心の状態、及び顔の肌以外の体の状態の状態を改善する
ことが好ましい。
【0016】
発明者の研究により、ユーザーの心拍のテンポと同期するテンポで刺激を開始し、その後、刺激のテンポを所定のテンポまで遅くなるように変化させると、ユーザーの顔の肌の状態に加えて、心の状態、及び顔の肌以外の体の状態を改善することができることが分かった。
【0017】
本発明によれば、ユーザーの心拍のテンポと同期するテンポで刺激を開始し、その後、刺激のテンポを所定のテンポまで遅くなるように変化させるので、ユーザーの顔の肌の状態に加えて、心の状態、及び顔の肌以外の体の状態を改善することができる。
【0018】
本発明の状態改善装置において、
前記ユーザーの顔のしわの数を減少させて顔の肌の状態を改善する
ことが好ましい。
【0019】
あるいは本発明の状態改善装置において、
前記ユーザーの顔の目立つ毛穴の数を減少させて顔の肌の状態を改善する
ことが好ましい。
【0020】
また本発明の状態改善装置において、
前記ユーザーの顔のシミの数を減少させて顔の肌の状態を改善する
ことが好ましい。
【0021】
装置を利用することにより、ユーザーの顔のしわの数、目立つ毛穴の数、シミの数が減少すれば、ユーザーに当該装置の利用による改善効果を直感的に認識させることができる。
【0022】
本発明によれば、ユーザーの顔のしわの数、目立つ毛穴の数、あるいはシミの数を減少させて顔の肌の状態を改善するので、ユーザーに当該装置の利用による改善効果を直感的に認識させることができる。
【0023】
<試験結果の詳細>
以下に、本発明の状態改善装置を用いたユーザーの状態改善効果の試験結果を示す。ユーザーは、本発明の機能を実装したアプリがインストールされたスマートフォン(又はタブレット)を本発明の装置として用いて、1か月間の任意のタイミングで以下の刺激を体験した。
【0024】
<刺激の内容>
ユーザーに向けて発せられる刺激は、以下の2つの成分で構成されている。
(1)被験者の心拍と同じテンポで始まり、50bpm(1分あたりの心拍数)までテンポが下がって終了する振動
(2)振動のテンポの変化に応じてテンポが変化する音楽
【0025】
なお音楽とは、以下のような特徴をもつ音楽である。
<音楽の特徴>
・長調
・3分以上の長さ
・音楽の開始時のテンポは65bpm以下
・音楽の開始から終了に向けてテンポが階段状に遅くなっている
・音楽の後半に、繰り返しの旋律が3回以上存在し、テンポが徐々にゆっくりになっていく
【0026】
ユーザーは、本装置を手で保持し、ユーザーの心拍のテンポと同期するテンポで刺激が開始されて、その後、刺激のテンポが遅くなるように変化する上記の振動及び音楽の刺激を体験する。従って本装置による振動の刺激はユーザーの片方又は両方の手全体、あるいは手指、手のひらに向けて発せられる。
【0027】
<顔の肌の状態の改善効果>
45人の健康な男性被験者が1か月の使用後の顔の肌の状態への有効性を確認するためにテストされた。性ホルモンの変動による皮膚への影響を排除し、管理された条件下で試験を実施するため、男性個体を選択した。被験者はランダムに2つのグループに分けられ、1つは本発明の装置を使用し、もう1つは使用しないで、顔の肌の状態とコルチゾール(皮膚に関連することも知られているストレス関連の物質である。)の変化を分析した。
【0028】
VISIA(登録商標)Evolution(Canfield Scientific Inc.)を使用して顔の肌の状態を分析し、ブラウンスポットカウント、ポアカウント(顔の目立つ毛穴の数を示す指標)、ポルフィリンカウント、レッドスポットカウント、レッドバスキュラーカウント、スポットカウント、テクスチャカウント、UVスポットカウント(顔のシミの数を示す指標)、リンクルカウント(顔のしわの数を示す指標)のスコアを分析に使用した。
【0029】
すなわち本発明において、顔の目立つ毛穴の数を示す指標、顔のシミの数を示す指標、顔のしわの数を示す指標は、VISIA(登録商標)Evolutionを用いて画像解析することにより得られる値である。また、唾液中のコルチゾールの濃度を試験で使用した。
【0030】
ウィルコクソンの符号付き順位検定を使用して、装置を使用するグループと使用しないグループの両方で1か月の変化の有意性をテストした。
【0031】
表1は、本発明の装置を1か月使用した後の顔の肌の状態への影響をまとめたものである。
【0032】
【表1】
VISIA(登録商標)Evolutionを使用した顔の肌の状態の分析では、本発明の装置の非使用グループで有意な変化は見られなかった。一方、装置を使用したグループでは、顔のしわの数、目立つ毛穴の数、およびUVスポットの数が大幅に減少した。
【0033】
さらに、唾液コルチゾールレベルは装置を使用したグループのみで有意に改善された。これらの結果は、本発明の装置を使用することにより、顔の肌の状態が改善されることを示している。
【0034】
<心の状態の改善効果>
・心理的ストレスの改善効果
まず、装置の1回の使用の有効性を確認した。有効性を実証するために、装置の使用グループと非使用グループを比較することにより、36人の健康な男性被験者をテストした(ランダムクロスオーバー試験)。
【0035】
被験者は、ATMTおよび2バックタスクの14分間のストレスにさらされた。前者のタスクでは、多くの数値表記がコンピューター画面に表示され、指定された番号を被験者に検索させた。後者のタスクでは、アルファベットが順番に表示され、2つ前に表示されたアルファベットを被験者に思い出させた。
【0036】
ストレスにさらされた後、コントロールグループは椅子で自由に休息し(14分)、他の群(ユーザーグループ)は自由に休息(10分)する前に本装置による刺激(4分)を体験した。
【0037】
振動の影響を確認するために、2つのユーザーグループを設定した。一方は音楽と振動の刺激を経験し(グループ1)、もう一方は音楽の刺激のみを経験した(グループ2)。
【0038】
・VAS項目(ストレス感、緊張度、イライラ感)
・感情の(おちつかない、ゆったりした、気力に満ちた、くつろいだ、エネルギッシュな)についての5つのスコア(全く当てはまらない、わずかにあてはまる、すこしあてはまる、かなりあてはまる、非常によくあてはまる)を用いた回答
・唾液中のコルチゾール濃度によるストレス状態
をストレスにさらされた直後と休息した後の2つの時点で収集、測定した。2つのグループ間のストレス状態の変化を、ボンフェローニ補正後にウィルコクソンの符号付き順位検定によって比較した。
【0039】
【表2】
表2に検証結果を示す。グループ1の結果は、本発明の装置を使用しなかったグループと比較して、ストレス(VASスコア)、リラックススコア、および唾液コルチゾールレベルのすべてで有意な改善を示した。
【0040】
一方、グループ2では、ストレス(VASスコア)とリラックススコアのみで大幅な改善を示した。これらの結果は、音楽と振動との組み合わせの刺激の、心理的ストレスの改善における有効性を示している。
【0041】
・PANASスケールと自己肯定感の改善効果
55人の健康な女性被験者をテストして、1か月の使用後の心の状態に対する有効性を確認した。PANAS(Positive and Negative Affect Schedule)スケールと自己肯定感の質問への回答を、質問票を使用して収集した。
【0042】
PANASスケールは、ポジティブ影響スケール(PANASポジティブ)とネガティブ影響スケール(PANASネガティブ)で構成される。ウィルコクソン符号順位検定を使用して、本発明の装置の使用前と使用後の間のPANASのポジティブとネガティブの変化を検定した。
【0043】
自己肯定感の質問では、被験者は「ありのままの自分を受け入れられていますか?」という質問に対して、「1.全くそう思わない」「2.ほとんどそう思わない」「3.あまりそう思わない」「4.どちらともいえない」「5.少しそう思う」「6.かなりそう思う」「7.とてもそう思う」から1つの答えを選択するように求めた。
【0044】
分析のために、否定的な回答(1から3)の総数の比率を計算し、この比率の変化をカイ二乗検定で使用前と1か月の使用後の間でテストした。
【0045】
図1~3は、本発明の装置を1か月使用した後の心への影響をまとめたものである。PANASネガティブスコアの有意な低下が確認された(図1)。PANASポジティブスコアについては、使用前の平均スコア(24.6)を下回ったグループ(31人)で、PANASポジティブスコアの有意な増加が確認された(図2)。
【0046】
また、「自分をそのまま受け入れているか」という質問に対する否定的な回答(スコア1~3)の比率は大幅に減少した(図3)。
【0047】
これらの結果により、本発明の使用は、否定的な考え方の改善について肯定的な影響をもたらすことが確認された。
【0048】
・セルフケア意識の向上効果
862人の健康な男性と625人の健康な女性の被験者が、セルフケア意識の向上に関する本発明の有効性を確認するためにテストされた。本発明の装置を1週間自由に使用してもらい、セルフケア意識の変化をアンケートで収集した。質問は、「装置を使用しての気づきはありますか。」であり、以下の回答から、被験者は装置を使用した後に感じたものを選択させ、1454人から有効回答を得た。
【0049】
答えの選択肢は「1.気分の切り替えの大切さに気づいた」、「2.自分に意識を向ける必要性を感じた」、「3.自分の状態をわかっていなかったことに気づいた」、「4.セルフケアは大切だと思った」、「5.もっと自分をいたわってあげようと思った」、「6.1日に1回は自分の顔をしっかり見ることは大事だと感じた」または「コメントなし」である。
【0050】
被験者は、装置の使用回数によって3つのグループに分けられた。3つのグループ間の肯定的な回答の総数の平均をSteel-Dwassテストで比較した。
【0051】
図4図5は、本発明の装置を1週間使用した後のセルフケア意識の変化の結果をまとめたものである。装置を使用することにより、参加者の81.6%が1つ以上の肯定的な回答を選択し、使用回数が増えるにつれて肯定的な回答の総数が増加した。
【0052】
これにより、本発明の使用は、セルフケア意識の向上について肯定的な影響をもたらすことが確認された。
【0053】
<顔の肌以外の体の状態の改善効果>
合計85人の健康な女性被験者をテストして、1ヵ月の使用後の体への有効性を確認した。
【0054】
試験では、Chalder疲労尺度(30名)と唾液IgA(55名)を指標として使用した。唾液IgAは、長期的なストレスの身体への蓄積のバイオマーカーである。データは、本発明の装置の使用前と使用の4週間後に収集した。なおChalder疲労尺度のデータは、装置の使用の2週間後にも収集した。
【0055】
ウィルコクソン符号順位検定を使用して、Chalder疲労尺度の変化とIgA濃度の変化をテストした。また、スピアマンの相関検定を使用して、Chalder疲労尺度の改善と装置の使用回数との相関分析を行った。
【0056】
図6図8は、本発明の装置を1か月間使用した後の身体への影響を調査した結果をまとめたものである。
【0057】
Chalder疲労尺度で有意な改善が確認され(図6)、この改善の変化量は装置の使用回数と相関する傾向があった(p=0.059)(図7)。
【0058】
また、唾液中のIgA値は、装置の使用後に大幅に上昇することが確認された(図8)。唾液中のIgA値が高いほど長期的なストレスの身体への蓄積の程度が低い状態を示している。
【0059】
これらの結果は、装置の使用による顔の肌以外の体の状態の改善効果を示している。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】本発明の試験結果を示す図。
図2】本発明の試験結果を示す図。
図3】本発明の試験結果を示す図。
図4】本発明の試験結果を示す図。
図5】本発明の試験結果を示す図。
図6】本発明の試験結果を示す図。
図7】本発明の試験結果を示す図。
図8】本発明の試験結果を示す図。
図9】本発明の全体像を示すブロック図。
図10】本発明の処理内容を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0061】
<本発明の構成>
まず図9を用いて、本実施形態の状態改善装置の構成について説明する。本実施形態の状態改善装置は、ユーザーの顔の肌の状態を改善する装置である。特に、ユーザーの顔の、しわの数、目立つ毛穴の数及び/又はシミの数を減少させることにより、ユーザーの顔の肌の状態を改善する装置である。また更に、ユーザーの心の状態(心理的ストレス、PANASスケール、自己肯定感、セルフケア意識の向上)、及び顔の肌以外の体の状態(疲労状態、長期的なストレスの身体への蓄積)の状態を改善する装置としても機能する。
【0062】
本実施形態の状態改善装置は、装置制御部10と、記憶部20と、刺激発生部30とを備え、あるいはさらに撮像部50と、表示部70と、入力部90と、を含んで構成される。状態改善装置の本体としては例えばスマートフォン又はタブレットなどの汎用的な機器が用いられてよいが、専用の端末が用いられてもよい。さらに例えば刺激発生部30などの、状態改善装置を構成する機構の一部が状態改善装置の本体から分離した、外付けの装置として備えられていてもよい。
【0063】
ユーザーは、本装置を例えば手で保持し、ユーザーの心拍のテンポと同期するテンポで刺激が開始されて、その後、刺激のテンポが遅くなるように変化する振動及び音楽の刺激を体験する。この場合、本装置による振動の刺激はユーザーの片方又は両方の手全体、あるいは手指、手のひら(すなわち顔以外の部位)に向けて発せられる。
【0064】
装置制御部10は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置、メモリ、及びI/O(Input/Output)デバイスなどにより構成されている。装置制御部10は、所定のプログラムを読み込んで実行することにより、例えば心拍認識部110、刺激内容決定部130として機能する。
【0065】
心拍認識部110は、ユーザーの心拍を示す情報を取得して、心拍を示す情報からユーザーの心拍のテンポを認識する。心拍認識部110は、たとえば撮像部50により撮像されたユーザーの顔又は手指の肌の画像に基づいて当該ユーザーの心拍を示す情報を認識する。
【0066】
刺激内容決定部130は、心拍認識部110により認識されたユーザーの心拍のテンポと同期するテンポを、当該ユーザーに提供する刺激のテンポとして決定するとともに、当該刺激の開始時点から終了時点にかけて所定のテンポまで遅くなるように当該テンポの変化を決定する。
【0067】
また刺激内容決定部130は、ユーザーに提供する刺激である振動と音楽との組み合わせを決定する。あるいはさらに刺激内容決定部130は、振動及び音楽と組み合わせてユーザーに提供する例えば、文字及び画像の一方又は両方の情報の内容を決定してもよい。
【0068】
記憶部20は、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置により構成されている。
【0069】
記憶部20は、ユーザーの顔の肌の状態、心の状態、及び顔の肌以外の体の状態を改善するための、振動及び音楽、あるいはらさらに文字、画像の情報からなる刺激の情報を記憶しているほか、状態改善装置の処理結果、状態改善装置の処理に必要な情報を記憶している。
【0070】
なお音楽とは、以下のような特徴をもつ音楽である。
<音楽の特徴>
・長調
・3分以上の長さ
・音楽の開始時のテンポは65bpm以下
・音楽の開始から終了に向けてテンポが階段状に遅くなっている
・音楽の後半に、繰り返しの旋律が3回以上存在し、テンポが徐々にゆっくりになっていく
【0071】
テンポが階段状に遅くなるとは例えば、65bpmのテンポで約30秒継続した後に、60bpmのテンポに切り替わって32秒間継続し、55bpmのテンポに切り替わって約35秒間継続し、さらに50bpmのテンポに切り替わって所定時間継続するようにテンポが変化する態様を表す。
【0072】
刺激発生部30は、刺激内容決定部130により決定されたテンポの刺激をユーザーに向けて発生させる機構であり、振動を発生させる例えばバイブレーターなどの振動部310及びスピーカーなどの音再生部330を含んで構成される。
【0073】
あるいはユーザーに提供される刺激に文字、画像(静止画又は動画像など)が含まれる場合には表示部70が刺激発生部30として機能する。
【0074】
撮像部50は、例えばユーザーの顔の画像、顔又は手指の肌の画像を取得する、例えばカメラである。
【0075】
表示部70は、例えばディスプレイであり、ユーザーが本実施形態の状態改善装置を使用するうえで必要な情報をユーザーに向けて表示する。
【0076】
入力部90は、状態改善装置に対する、ユーザーによる入力を受け付ける、例えばタッチパネルであるが、キーボード、マウスその他のポインティングデバイスである入力機構で構成されていてもよい。
【0077】
<処理の概要>
次に、図2を用いて本実施形態の状態改善装置の処理内容について説明する。図2は、本実施形態の状態改善装置の全体的な処理の内容を示している。
【0078】
本実施形態の状態改善装置においては、処理を開始するとまず、撮像部50はユーザーの顔の画像を取得する(図2/S31)。
【0079】
続いて心拍認識部110が、ユーザーの心拍のテンポを認識する(図2/S35)。例えば心拍認識部110は、撮像部50により撮像されたユーザーの顔の肌の画像に基づいてユーザーの心拍を示す情報を取得する。
【0080】
心拍認識部110がユーザーの顔の肌の画像からユーザーの心拍を示す情報を取得する手法としては既知の種々の手法が用いられてよいが、心拍認識部110は例えば、ユーザーの顔の肌の画像のRGBの各色成分の輝度の変化の情報に含まれる特定の色成分(例えばG(緑))の輝度の変化を所定のアルゴリズムを用いて分析することにより、ユーザーの心拍を示す情報を取得する。
【0081】
そして心拍認識部110は、上記のようにして取得された心拍を示す情報から、ユーザーの心拍のテンポを認識する。心拍認識部110はユーザーの心拍のテンポとして、例えば1分あたりの心拍数(bpm)を認識する。
【0082】
そして刺激内容決定部130は、心拍認識部110により認識されたユーザーの心拍のテンポと同期するテンポを、ユーザーに提供する刺激のテンポとして決定するとともに、さらに刺激の開始時点から終了時点にかけて所定のテンポまで遅くなるように当該テンポの変化を決定してテンポの決定処理(図2/S50)を終了する。
【0083】
すなわち例えば刺激内容決定部130は、刺激の開始時点のテンポ(=ユーザーの心拍のテンポ)が65bpmであって、終了時点のテンポが50bpmである場合には、刺激内容決定部130は、65bpmのテンポの刺激を30秒(第1段階)、60bpmのテンポの刺激を32秒(第2段階)、55bpmのテンポの刺激を35秒(第3段階)、50bpmのテンポの刺激を130秒(第4段階)発生させると決定する。なお、刺激全体の長さは、刺激の開始時のテンポにかかわらず一定であってよい。あるいは例えば各段階間のテンポの変化の大きさ、各段階の長さ、刺激全体の長さは、刺激の開始時のテンポの速さに応じて(すなわち、ユーザーの心拍のテンポに応じて)適宜に設定されてよい。
【0084】
すなわち例えば、刺激内容決定部130は、ユーザーの心拍のテンポが速く、刺激の開始時のテンポが85bpmである場合には、各段階で5bpmずつテンポを所定のテンポ(例えば50bpm。)まで遅くする刺激を発生させると決定してもよい。刺激内容決定部130は例えば、刺激の開始時のテンポ(又はユーザーの心拍のテンポ)と、上述したようなテンポの変化パターンとの対応表を参照して、刺激の開始時のテンポ(又はユーザーの心拍のテンポ)に応じた、テンポの変化パターンを決定する。また、当該対応表は、例えばあらかじめ記憶部20に記憶されている。
【0085】
なお、上記のいずれのケースにおいても、刺激内容決定部130は、ユーザーに提供する刺激に含まれる振動及び音楽のテンポが相互に同期するようにテンポを決定する。
【0086】
すなわち例えば振動及び音楽が同時に開始して同時に終了するのであれば、振動及び音楽の開始時点のテンポは心拍認識部110により認識されたユーザーの心拍のテンポと同期しており、振動及び音楽の終了時点のテンポはともに刺激内容決定部130が決定した同一のテンポとなる。
【0087】
あるいは例えば刺激に含まれる振動が先に開始され、音楽が途中で開始される場合には、音楽の開始時点のテンポは、音楽が開始される時点の振動のテンポと同一になるように刺激内容決定部130により決定される。
【0088】
より具体的には例えば、先に開始される振動の開始時のテンポが85bpmであり、音楽の開始時のテンポが65bpmである場合について説明すると、まず振動のみの刺激が85bpmで開始され、その後時間の経過とともに振動のテンポが遅くなっていく。そして、振動のテンポが65bpmまで遅くなったときに、65bpmのテンポで音楽の再生が開始される。その後、振動と音楽とが同時に発せられている間は、振動と音楽のテンポは同期する。
【0089】
振動及び音楽の一方が先に終了し、他方が後で終了する場合も同様に、振動と音楽とが同時に発せられている間は、振動と音楽のテンポが同期するようにテンポが刺激内容決定部130により決定される。
【0090】
なお、「ユーザーの心拍のテンポと同期するテンポ」とは、ユーザーの心拍のテンポと完全に一致することのみを意味するものではない。すなわち例えばユーザーの心拍のテンポが85~89bpmである場合には85bpmを刺激のテンポとして決定するというように、ある範囲の心拍のテンポに対応する刺激のテンポとしてあらかじめ定められたテンポを認識して、当該認識したテンポを刺激のテンポとして決定するように構成されていてもよい。
【0091】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これに限定されない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0092】
すなわち例えば撮像部50はユーザーの顔の肌の画像に加えて又は替えて、手指の肌の画像を撮像するように構成され、心拍認識部110は、撮像部50により撮像されたユーザーの手指の肌の画像に基づいてユーザーの心拍を示す情報を認識するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0093】
10…装置制御部、20…記憶部、30…刺激発生部、50…撮像部、70…表示部、90…入力部、110…心拍認識部、130…刺激内容決定部、310…振動部、330…音再生部。
図1
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図10