(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025116
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】手術工程解析システム
(51)【国際特許分類】
G16H 40/00 20180101AFI20240216BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20240216BHJP
G06Q 10/063 20230101ALI20240216BHJP
【FI】
G16H40/00
G06Q10/04
G06Q10/06 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128305
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内尾 佳貴
(72)【発明者】
【氏名】小室 良和
(72)【発明者】
【氏名】篠原 礼奈
【テーマコード(参考)】
5L049
5L099
【Fターム(参考)】
5L049AA04
5L049AA06
5L099AA03
(57)【要約】
【課題】手術中の種々の変更にリアルタイムで対応して、精度よく手術終了時刻を予想し、提示する手段を提供する。
【解決手段】手術工程解析システムは、複数の工程からなる術式毎に、各工程に要する予測時間を記録した記録部と、複数の工程から所望の工程について、ユーザ選択を受け付ける受付部と、受付部が受け付けた工程と、記録部に記録した各工程に要する予測時間とを用いて、工程毎の予定所要時間を算出し、当該予定所要時間と、ユーザに選択された工程の実行中に当該工程に要した時間との差分を算出する演算処理部と、を備え、予測と実際とのずれをもとに手術終了時刻を工程終了ごとに再計算し、提示する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
術式に含まれる複数の工程について、工程毎の所要時間を記録した記録部と、
前記複数の工程から所望の工程について、ユーザ選択を受け付ける受付部と、
前記受付部が受け付けた工程と、前記記録部に記録した各工程の所要時間とを用いて、工程毎の予測所要時間を算出し、当該予測所要時間と、ユーザに選択された工程の実行時に当該工程に要した実時間との差分を算出する演算処理部と、を備え、
予測と実際とのずれを提示することを特徴とする手術工程解析システム。
【請求項2】
請求項1に記載の手術工程解析システムであって、
前記演算処理部は、手術の開始時刻を受け付け、当該開始時刻と、前記工程毎の予測所要時間とを用いて、手術の終了時刻を算出し、提示することを特徴とする手術工程解析システム。
【請求項3】
請求項2に記載の手術工程解析システムであって、
前記演算処理部は、ユーザ選択された複数の工程のうち1の工程終了ごとに、前記差分を算出し、差分を算出した工程以降の工程の予測所要時間を補正し、前記手術の終了時刻を再計算することを特徴とする手術工程解析システム。
【請求項4】
請求項1に記載の手術工程解析システムであって、
前記受付部は、各工程の終了時刻を受け付け、前記演算処理部は、前記受付部が受け付けた各工程の終了時刻を用いて、前記工程に要した実時間を取得することを特徴とする手術工程解析システム。
【請求項5】
請求項1に記載の手術工程解析システムであって、
前記演算処理部は、術式の進行を記録又は監視する監視装置から、前記工程に要した実時間を取得することを特徴とする手術工程解析システム。
【請求項6】
請求項1に記載の手術工程解析システムであって、
前記記録部に記録されている各工程の所要時間は、過去の実績を蓄積した1ないし複数の所要時間を含み、
前記演算処理部は、過去の実績所要時間を統計処理することにより、工程毎の予測所要時間を算出することを特徴とする手術工程解析システム。
【請求項7】
請求項6に記載の手術工程解析システムであって、
前記演算処理部は、術式の実行中に得た各工程の実時間を、前記記録部の記録に追加することを特徴とする手術工程解析システム。
【請求項8】
請求項1に記載の手術工程解析システムであって、
前記受付部は、ユーザ選択された所望の工程に対するユーザ変更を受け付け、
前記演算処理部は、前記ユーザ変更により変更された工程に基づいて、前記工程毎の予測所要時間を再計算することを特徴とする手術工程解析システム。
【請求項9】
請求項1に記載の手術工程解析システムであって、
前記記録部は、人的要素に係るカテゴリー毎に、前記各工程の所要時間を記録しており、
前記受付部は、前記人的要素に係るカテゴリーを受け付け、
前記演算処理部、前記受付部が受け付けたカテゴリーの前記各工程の所要時間を用いて、前記差分を算出することを特徴とする手術工程解析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機関において行われる手術の工程を管理し、円滑化するための手術工程解析システムに係る。
【背景技術】
【0002】
一般に手術に際しては、事前に医療スタッフや医療機器の配置計画を医療ステージ毎に策定し、策定した配置計画に従って手術が実施されるが、策定された配置計画通りに進むとは限らず、医療事故の原因になったり、所要時間に差が生じ、手術室の管理に不都合を生じたり、という問題が生じる。
【0003】
このような問題に対し、特許文献1には、策定した医療スタッフや医療機器の配置計画と、医療行為中の配置位置との差分情報を取得し、その情報を表示することで、医療スタッフや医療機器を計画された配置計画の位置に誘導することで医療事故を防止する医療事故防止システムが提案されている。特許文献1には、さらに、手術計画の策定において、過去に取得した差異情報(策定と実際との差異)に基づいて統計処理を行い、最適な医療スタッフ人員、医療機器数、所要時間を求めて、手術計画を作成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで医療機関において手術を行う際には、手術室を効率よく使用することが求められるが、医療スタッフの熟練度により、術式に係る所要時間には差が生じる。熟練度の異なる複数の医療スタッフが在籍する病棟などでは、手術に関与する医療スタッフに依存して手術にかかる所要時間も異なる。このような状況においては、特許文献1に開示されるような医療事故防止システムにより最適な所要時間を計画したとしても、計画どおりの所要時間となるとは限らず、不測の所要時間の変化は、手術そのものに影響を与えるだけでなく、手術室の空き状況の管理をも困難とする。
【0006】
本発明は医療スタッフの熟練度などにより変動しうる術式の所要時間を適切に管理し、それによって手術室の空き状況の管理を含む病棟運営に資する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は予め策定した工程時間と実際の工程時間との間に差異が生じた場合に、リアルタイムで計画した工程時間を補正し、提示する手段を提供する。
【0008】
即ち、本発明の手術工程解析システムは、術式に含まれる複数の工程について、工程毎の所要時間を記録した記録部と、複数の工程から所望の工程について、ユーザ選択を受け付ける受付部と、受付部が受け付けた工程と、記録部に記録した各工程の所要時間とを用いて、工程毎の予測所要時間を算出し、当該予測所要時間と、ユーザに選択された工程の実行時に当該工程に要した実時間との差分を算出する演算処理部と、を備える。手術工程解析システムは、演算処理部の結果として、予測と実際とのずれ或いはそれから導出される時間情報を提示する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、提示される計画工程時間を実際の術式の進行状態に合わせてリアルタイムで補正し提示することで、熟練度の浅い医療スタッフの影響等で、予め策定した工程時間に遅れが生じた場合にも、術式終了時刻等の時間情報を精度よく求めることができる。逆に熟練度が高い医療スタッフの存在や医療スタッフの優れた連携などによって工程時間が早まった場合にも、術式終了時時刻を精度よく求めることができる。これにより手術室の空き状況の管理を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】手術工程解析システムの概要を示すブロック図
【
図4】実施形態1の、術式選択と手術フロー選択の画面例を示す図
【
図5】実施形態1の、情報取得部が取得する工程毎の所要時間の一例を示す図
【
図6】実施形態1の、工程の予測所要時間の補正を説明する図
【
図7】実施形態1の、補正後の予測工程時間の表示例を示す図
【
図8】実施形態1の、記録部の記録内容の更新の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明において、術式とは、所定の部位に対しなされる1ないし複数の処理工程の組み合わせと、それを施す(或いは施した)順番とを含む一連の処理を意味する。手術によって選択可能な複数の術式が存在し、術式に応じて、工程の組み合わせや順序(手術フローともいう)が異なる。
【0012】
上記定義を踏まえ、以下、本発明の手術工程解析システムの実施形態を、図面を参照して説明する。
【0013】
手術工程解析システム1は、
図1の概略図に示すように、手術工程に係る情報を格納した記録部10と、手術工程に係る演算を行うとともに各種情報の入力及び表示の制御を行う制御部20と、ユーザが入力を行うための入力部30、及び表示部40を備える。手術工程解析システム1は、付属装置として入力装置や表示装置を備えた汎用の計算機やワークステーション内に構築することもでき、システム内の各部は例えばバスを介して接続されている。
【0014】
入力部30と表示部40とは、近接して配置し、表示部40に表示したGUIと入力部30のポインティングデバイスやマウス等とでユーザと制御部20とのインターフェイスを行うインターフェイス部として機能することができる。また表示部40はインターフェイス部として機能するとは別の表示装置、例えば手術室とは異なる場所に配置された表示装置を含む場合もある。
【0015】
記録部10は、計算機からは独立した記憶装置であってもよく、その場合、有線又は無線の種々の転送手段によって制御部20と情報をやり取りする。また記録部10として、システムに接続された記憶装置とは別にデータベースを含んでもよい。
【0016】
記録部10には、予め、手術対象である病気の種類、部位毎に、1ないし複数の術式と、術式毎に、それに含まれる各工程の所要時間とが格納されている。手術工程と所要時間とは、例えば、この手術工程解析システム1が導入された施設において、経験的に得られた情報とともに、それから統計的に算出された所要時間や推奨される手術工程などが登録されている。
【0017】
制御部20は、
図2に示すように、入力部30からの指令を受け付ける受付部202と、入力部30を介して入力された情報に基づいて、記録部10から所望の情報を抽出して取り込む情報取得部201、及び情報取得部201及び受付部202からの情報を用いて、手術工程に係る演算を行う演算処理部203を備える。手術工程に係る演算は、手術工程の時間演算を含み、例えば、手術工程の所要時間(予測所要時間)、手術工程の終了時刻、計画工程時間と実際の工程の進度との差分の計算、当該差分に基づく予測所要時間或いは終了時刻の補正などがある。演算処理部203は上述の時間演算全てを行うものとは限らないが、本実施形態では、少なくとも計画工程時間及び実際の所要工程時間との差分の算出を行う。なお、これら時間演算に必要な時間或いは時刻の情報は、外部機器から取得するほか、制御部20または演算処理部203に備えられたタイマーにより得ることもできる。
【0018】
演算処理部203は、入力部30を介して工程の進み具合に関する情報を得て、或いは入力部30からの情報に代えて或いはそれとともにカメラ50等の手術の進行状況を記録或いは監視する装置からの情報を得て、計画された手術工程の経過時間と実際に進行中の手術工程の経過時間との差を求め、その結果を表示部40に表示させる。
【0019】
入力部30は、情報取得部201が記録部10から所望の情報を抽出するのに必要な情報の入力(ユーザ指定)を受け付ける。ユーザ指定は、例えば、手術対象である病気の種類及び部位、術式などを含む。
【0020】
本実施形態の手術工程解析システムは、計画された手術工程と実際行われている手術工程との進行時間の差分をリアルタイムで求め、それを、例えば予定終了時刻の変更という形でユーザに提示する。これにより、手術に関わる者は手術の遅れ或いは手術が早まっていることを正確に知ることができ、手術後の対応を迅速に行うことができる。
【0021】
表示部40における表示、入力部30による入力、制御部20の演算処理には種々の態様が取りえるので、以下、それらの具体例である実施形態を説明する。以下の実施形態において、
図1及び
図2に示した手術工程解析システムの概要は共通しているので、以下の説明では適宜これら図面を参照する。
【0022】
<実施形態1>
本実施形態1は、ユーザが選択した術式の工程が確定していることを前提に、当該工程に含まれる個々の処理の時間のずれ(計画工程との差)を算出し、それをその後の処理に反映して提示する。
【0023】
【0024】
入力部30を介して手術の術式及び手術工程の選択を受け付ける(S1、S2)と、演算処理部203は、選択された術式について、記録部10に記録された工程の所要時間を抽出する。
【0025】
術式の選択及び手術工程の選択(S1、S2)は、例えば、表示部40に複数の術式を選択するための画面(GUI)を表示し、表示された複数の術式の中から、ユーザが入力部30を操作して、所望の術式を選択するにより行うことができる。具体的には、例えば
図4左側に示すような術式選択画面401が表示部40に表示されるので、そこに列挙された複数の術式(
図4では術式I、術式II、術式III)を示すボタンをユーザが操作することにより術式が選択され、例えば術式Iが選択されると、選択画面は
図4右側に示すような手術フロー選択画面402に推移する。
【0026】
記録部10には、術式毎に、それに含まれる複数の工程(実施の可能性のある工程)と、それら工程を実施する順番(可能性のある順番)とが記録されており、手術フロー選択画面402には、例えば、各工程とその可能な実施順番とがグラフィカルに表示される。図示する表示画面例では、術式Iに含まれる工程A~工程Gが手術開始から終了までに、いくつかの順番でつながった図が示されており、デフォルトとして手術フロー(工程A、工程C、工程F、工程G)が他の工程(工程B、工程D、工程E)とは異なる輝度或いは色で識別可能に表示される。ユーザはこの手術フロー選択画面402を介して手術フローを選択する。手術フローは同画面を介して変更することも可能であるが、ここではデフォルトの手術フローが選択されたものとする。この選択された工程の表示は、その後の各工程の終了を入力する入力ボタン(GUI)として機能する。
【0027】
また、記録部10には、過去の手術において、各工程に要した所要時間がリストとして記録されており、受付部202が上述したように手術工程の選択を受け付けると、情報取得部201が、
図5に示すように、選択された術式Iに含まれる工程、ここでは4つの工程A、C、F、Gを抽出する。演算処理部203は、リストされた各工程の所要時間から予測所要時間を算出する。予測所要時間は、例えば過去の所要時間の中央値、平均値などを用いて算出する。図示する例では、工程A、工程C、工程F、及び工程Gの所要時間として、それぞれ、中央値である1h(時間)40m(分)、1h40m、2h20m、2h10mが算出されている。
【0028】
術式及び手術工程が確定し、ユーザが画面402の手術開始ボタン4021を操作すると、受付部202が手術開始ボタン操作を受け付け、演算処理部203は手術開始時刻を記録する(S3)。演算処理部203は、手術開始時刻が入力されると、手術開始時刻と、抽出された4つの工程A、C、F、Gの予測所要時間をもとに、術式Iの予想終了時刻を算出し、表示部40に表示する(S4)。これによりユーザは、選択した術式が終わる時刻を推定することができる。
【0029】
術式が施され、最初の工程Aが終わり、ユーザが画面402に表示された工程Aのボタンを操作すると、受付部202はこの操作を工程Aの終了時刻として受付け、演算処理部203は受付部202が受け付けた工程Aの終了時刻と手術開始時刻とから実際に工程Aに要した所要時間(実測時間)を算出し、既に記録部10から抽出した工程Aの予測所要時間と実際の所要時間との差を算出し(S5)、この差を用いてその後の工程の予測所要時間を補正する(S6)。
【0030】
図6を用いて、補正の例を説明する。
図6に示す上側のグラフは、過去の所要時間の分布を示しており、縦軸は症例数、横軸は中央値である予測所要時間を50パーセンタイル(%タイル)としておき、所要時間に対するずれをパーセンタイルで示している。この例では、予測所要時間は1h40mであり、10%タイル刻み或いは15%タイル刻みで示し、40~60%タイルをレベル0、25~40%タイルをレベル-2、10~25%タイルをレベル-3、それ以下をレベル-4とし、60~75%タイルをレベル2、75~90%タイルをレベル3、それ以上をレベル4というようにレベル分けしている。つまりレベルは所要時間からのずれ(符号付き)の程度を示し、術者の熟練度を示す指標となる。
【0031】
例えば、実測時間が1h50mの場合、60%タイルの位置、レベル1に該当する。
【0032】
図6の下側のグラフは、上述ように求めた実測時間と予測所要時間のずれをもとに、その後の工程、ここでは工程Cの予測所要時間を補正する例を示している。記録部から抽出した工程Cの予測所要時間は、50%タイルの1h20mであるが、工程Aの実測時間の遅れがレベル1との結果であるので、工程Cについてもその遅れを反映して、予測所要時間をレベル1即ち60%タイル(1h40m)に補正する。
【0033】
工程Cに後続する工程についても同様の補正を行い、予想手術終了時刻を再計算し、表示部40に表示する(S7)。
【0034】
次の工程Cが終了後に、例えば、画面の工程Cのボタンの操作によって、工程Cの終了時刻が入力された場合には、工程Aと同様に、元の工程Cの予測所要時間(
図6下側のグラフの50%タイル)と比較し、遅れとそのレベルを決定する。その結果を反映して、工程Cより後の工程について補正し、予想手術終了時刻を再計算する。元の予測所要時間と実測時間との差が、例えばレベル0であれば、工程Aの結果を反映してレベル1として補正されていた各工程の予測所要時間が補正され、補正された予測所要時間を用いて予想手術終了時刻が再計算されることになる。
【0035】
制御部20は、演算処理部203の再計算により補正された予想終了時刻を表示部40に表示させる。表示部40の表示例を
図7に示す。この例では、表示画面に手術フロー701と各工程の予測所要時間の表702が表示されており、所定の手術工程を選択することで演算処理部203により予測所要時間が算出され、手術フローを示す画面701上及び表702上に表示される。工程が進み、完了した工程については、実際に工程に要した時間(実時間)と予測所要時間との差分とともに、実測所要時間が表示される。
【0036】
このように、工程によって熟練度に差がある場合にも、各工程が終了するごとに予測所要時間の補正と予想手術終了時刻の再計算を行い、手術の進行に合わせて予想手術終了時刻をリアルタイムで更新しながら提示するので、手術状況を精度よく把握することが可能になる。
【0037】
なお、本実施形態では、手術の開始時刻や各工程の終了時刻を、表示部40の画面操作(GUI)により行う場合を説明したが、画面操作ではなく、受付部202がカメラ等の記録装置や監視装置の情報や手術に用いる装置から出力される情報を受け付け、各時刻を取得する構成としてもよい。例えば、工程によって用いる装置や術具が異なることをカメラの映像から判別し、異なった時点を工程の終了と次工程の開始の時刻としてもよいし、術具に用いられる装置から電子的に、動作を開始した時点及び終了した時点の情報を取得し、当該装置を用いる工程の開始と終了の時刻としてもよい。
【0038】
また上述の例では、各工程のボタン操作が行われた時刻を工程終了時刻としたが、手術フローの工程とは別に、工程の開始/終了を操作するボタンを設けて、それらの操作により工程開始時刻および終了時刻を取得してもよい。この場合、例えば一つの工程について、終了ボタンが操作されたら、その工程の表示を暗くするなど、終了が識別できるような表示とし、次に開始ボタンが操作されたら、次の工程の表示を明るくする或いは赤い表示にするなど、工程の実行中であることを識別できるような表示に変えて行ってもよい。
【0039】
このような開始/終了ボタンを設けることで、工程と工程との間に、空き時間が挟まれていたとしても、その空き時間を予定終了時間に反映しながら、工程毎のレベル分けを正確に行うことができる。
【0040】
また本実施形態の応用例として、手術終了後に、当該手術の各工程に要した時間を、記録部10にフィードバックしてもよく、これによって記録部10に記録されている工程毎の各工程の予測所要時間を更新してもよい。
図8に更新の例を示す。
【0041】
図8でも一例として工程A、C、F、Gの所要時間を示しており、記録部10の過去のデータに対し、最新の手術(例えば3月2日に行われた手術)での結果が最下行に追加されている。演算処理部203は、記録部10から所定の工程が抽出されると、過去のデータに新たに追加された実測所要時間を加えて、平均値を求め、それを各工程の予測所要時間として算出する。
【0042】
このように手術が実行される度に、各工程の所要時間を追加し、予測所要時間の算出に反映していくことで、予測所要時間の統計的尤度を高めることができるとともに、例えば記録を行っている施設での熟練度の変化などを確認することができ、スタッフの管理や教育などの支援に用いることができる。
【0043】
<実施形態2>
本実施形態は、受付部202が、術式の実施中にユーザによる工程の修正を受け付ける機能を備え、演算処理部203が、工程の修正を反映して、時刻演算を行う。実際の手術の場面では、手術前に術式を決めたとしても、状況により工程を変更したほうがよい場合が生じうる。本実施形態は、このような状況においても、所要時間と予定手術終了時刻の変化をリアルタイムで反映して、提示するものである。
【0044】
以下、実施形態1と異なる点を中心に本実施形態の流れを説明する。
図9に本実施形態の処理のフローを示す。
【0045】
本実施形態でも、手術の開始に先立って、術式の選択と手術フロー選択を行うこと(S1、S2)及び、手術開始時刻の入力後に選択された手術フローをもとに予想終了時刻を算出すること(S3、S4)は実施形態1と同じである。一例として、術式Iが選択され、
図10の画面711に示すような手術フローが選択されているものとする。ここで、工程Aの実施中に、次工程を工程Cではなく工程Dに変更したとする(S81)。
【0046】
変更の指示を受け付ける形態は、特に限定しないが、例えば、
図5に示す術式選択画面401で別の術式を再選択するようにしてもよいし、図示していないが手術フロー選択画面711に「術式変更ボタン」を設け、この術式変更ボタンが操作された後に、変更可能な工程のボタンを点滅などの表示に変え、いずれか(この例では工程Dのボタン)を操作するようにしてもよい。これにより術式がIからIIに切り替わり手術フローは、「工程A→工程C→工程F→工程G」から「工程A→工程D→工程F→工程G」に切り替わり、また手術フローの表示も「工程A→工程D→工程F→工程G」を示す画面712に切り替える(S82)。
【0047】
演算処理部203は、工程Aの次に行われる工程が、工程Cから工程Dに変更された時点で、情報取得部201が記録部10から工程Dの所要時間を取得し、工程Dの所要時間を用いて、術式と手術開始時刻とを用いて算出した手術の予想終了時刻を補正し(S83)、それまで表示されていた手術予想終了時刻を補正後の時刻に変更する。
【0048】
その後、工程Aの終了時刻が介して入力されると、実施形態1と同様に、例えば工程Dのボタンの操作により工程Dの終了時刻が入力されるまで、工程Dの所要時間を実測する。また情報取得部201が、工程Dについて記録部10に記録されている予測所要時間(統計の中央値等)を取得し、演算処理部203は工程Dの予測所要時間と実測時間とを比較し、時間ずれのレベル(%タイル)を求め、工程D以降の工程の予測所要時間を補正し、予定手術終了時刻を再計算し、提示する(S5~S7)。
【0049】
本実施形態によれば、手術中に工程変更があった場合にも、予定手術終了時間をリアルタイムで更新して提示することができる。
【0050】
本実施形態において、実測された各工程の所要時間を記録部10にフィードバックし、記録部10に記録された各工程の予測所要時間を更新してもよいことは実施形態1と同様である。
【0051】
<実施形態3>
以上の実施形態は、記録部10に工程毎の所要時間が記録されているものであったが、工程ごとの所要時間は、異なるカテゴリー毎に複数用意してもよい。異なるカテゴリーの例として、執刀医や補助スタッフなどの人的要因が挙げられる。特に、術式の各工程の熟練度や工程毎の得手不得手は執刀医によって変わりえるので、例えば
図11に示すように、執刀医毎に、術式の所要時間を記録として保持しておくことで、より正確に予定手術終了時刻の算出や提示を行うことができる。
【0052】
本実施形態では、実施形態1の術式選択(
図3:S1)に先立って、執刀医選択を行うステップが挿入される。執刀医選択は、
図12に示すような執刀医選択画面400を表示部40に表示し、ユーザ選択を受け付ける。執刀医が選択された後は、実施形態1と同様に、術式の選択及び手術フローの選択を受け付ける。情報取得部201は、選択された執刀医及び術式の情報を用いて、記録部10から、選択された執刀医について記録されている工程後の所要時間を抽出する。それ以降の処理は、実施形態1或いは実施形態2と同様である。
【0053】
本実施形態によれば、予想手術終了時刻の算出を、より正確に行うことができ、より適切な手術管理を行うことができる。
【符号の説明】
【0054】
1:手術工程解析システム、10:記録部、20:制御部、201:情報取得部、202:受付部、203:演算処理部、30:入力部、40:表示部