(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002512
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
F21S 6/00 20060101AFI20231228BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20231228BHJP
F21V 5/00 20180101ALI20231228BHJP
F21V 9/40 20180101ALI20231228BHJP
F21V 7/06 20060101ALI20231228BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20231228BHJP
G02F 1/1347 20060101ALI20231228BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20231228BHJP
【FI】
F21S6/00 100
F21V5/04
F21V5/00 600
F21V9/40 400
F21V7/06 100
G02F1/13 505
G02F1/1347
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101734
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 誠
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 延幸
(72)【発明者】
【氏名】岡田 真文
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
【Fターム(参考)】
2H088EA42
2H088EA61
2H088HA02
2H189AA22
2H189AA32
2H189HA16
2H189MA15
(57)【要約】
【課題】外形が矩形であり、配光角度が小さく、照射光の形状を容易に変化させることが出来る表示装置を実現する。
【解決手段】
これを実現するために、本発明は、次のような構成をとる。すなわち、光源が配置した第1の孔と光を出射する第2の孔と、前記第1の孔と前記第2の孔を連結する反射曲面を有し、前記第1の孔の中心と前記第2の孔の中心を結ぶ線を第1の方向とするファンネル型反射体と、前記ファンネル型反射体の前記第2の孔と対向し、反射面の主面が前記第1の方向に対して第1の角度傾いている反射板と、前記反射板と対向し、入射面の主面が前記反射板の主面に対して第2の角度傾いている液晶レンズを有し、前記ファンネル型反射体から出射した光は、前記反射板で反射し、前記液晶レンズから出射することを特徴とする照明装置である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源が配置した第1の孔と光を出射する第2の孔と、前記第1の孔と前記第2の孔を連結する反射曲面を有し、前記第1の孔の中心と前記第2の孔の中心を結ぶ線を第1の方向とするファンネル型反射体と、
前記ファンネル型反射体の前記第2の孔と対向し、反射面の主面が前記第1の方向に対して第1の角度傾いている反射板と、
前記反射板と対向し、入射面の主面が前記反射板の主面に対して第2の角度傾いている液晶レンズを有し、
前記ファンネル型反射体から出射した光は、前記反射板で反射し、前記液晶レンズから出射することを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記第1の角度は45度であることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記第2の角度は45度であることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項4】
前記ファンネル型反射体の外形は直方体であり、
前記第1の孔は、前記直方体の第1の面に形成され、
前記第2の孔は、前記直方体において、前記第1の面に対向する第2の面に形成され、
前記ファンネル型反射体の第1の孔は第2の孔よりも小さく、
前記第1の孔と前記第2の孔を結ぶ曲面の少なくとも一部は、パラボラ曲面であることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項5】
前記ファンネル型反射体の前記第2の孔は円であることを特徴とする請求項4に記載の照明装置。
【請求項6】
前記ファンネル型反射体の前記第2の孔は矩形であることを特徴とする請求項4に記載の照明装置。
【請求項7】
前記ファンネル型反射体において、前記第2の孔の直径と前記ファンネル型反射体の前記第1の面と前記第2の面の距離の比は2以上であることを特徴とする請求項5に記載の照明装置。
【請求項8】
前記ファンネル型反射体の前記第2の孔は正方形であり、
前記第2の孔の辺の長さと前記ファンネル型反射体の前記第1の面と前記第2の面の距離の比は2以上であることを特徴とする請求項6に記載の照明装置。
【請求項9】
前記液晶レンズは、第1の液晶レンズ、第2の液晶レンズ、第3の液晶レンズ、第4の液晶レンズを有することを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項10】
前記第1の液晶レンズ、前記第2の液晶レンズ、前記第3の液晶レンズ、前記第4の液晶レンズは、入射光のうちの、異なる偏光光に対して作用することを特徴とする請求項9に記載の照明装置。
【請求項11】
前記第1の液晶レンズ、前記第2の液晶レンズ、前記第3の液晶レンズ、前記第4の液晶レンズは、入射光に対して発散または収束作用を有することを特徴とする請求項9に記載の照明装置。
【請求項12】
前記第1の液晶レンズ、前記第2の液晶レンズ、前記第3の液晶レンズ、前記第4の液晶レンズは、特定方向には発散作用を有し、前記特定方向と直角方向には発散を有しないことを特徴とする請求項9に記載の照明装置。
【請求項13】
前記第1の液晶レンズ、前記第2の液晶レンズ、前記第3の液晶レンズ、前記第4の液晶レンズは、特定方向に偏向作用を有することを特徴とする請求項9に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンパクトで、かつ、照射光の形状を容易に変化させることが出来る照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
照明器具としては、いわゆるZライト、LEDを線状に配置したデスクライト、筒状スタンドライト等種々の器具が存在している。
【0003】
一方、出射光がコリメートされている照明装置を使用したいという要求がある。特許文献1には、ロッドレンズ等を用いて光源からの光を平行光にして出射する照明装置が記載されている。また、引用文献1には、ロッドレンズ等によってコリメートされた光を液晶バルブ(液晶表示装置)のバックライトとして使用する構成も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来使用されてきた、いわゆるZライト、LEDを線状に配置したデスクライト、筒状スタンドライト等の照明器具はサイズが大きく、小さなスペースでの使用は困難なものが多い。また、これらの照明器具からコリメートされた光を得ることは難しい。
【0006】
従来コリメート光を得るためには、ロッドレンズ等が使用されてきたが、一般には、ロッドレンズのみでは、十分なコリメート光を得ることが出来ないので、追加のレンズ等の光学部品が必要になる。そうすると、照明装置の出射方向の長さが大きくなる。
【0007】
本発明の課題は、コンパクトで、かつ、光の出射方向における照明装置の長さを小さくできる照明装置を実現することである。また、照明装置としてはコンパクトでありながら、出射光の配光角を小さくすることが出来る照明装置を実現することである。さらに、光スポットの形状を容易に変化させることが出来る照明装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するものであり、主な具体的な手段は次のとおりである。すなわち、光源が配置した第1の孔と光を出射する第2の孔と、前記第1の孔と前記第2の孔を連結する反射曲面を有し、前記第1の孔の中心と前記第2の孔の中心を結ぶ線を第1の方向とするファンネル型反射体と、前記ファンネル型反射体の前記第2の孔と対向し、反射面の主面が前記第1の方向に対して第1の角度傾いている反射板と、前記反射板と対向し、入射面の主面が前記反射板の主面に対して第2の角度傾いている液晶レンズを有し、前記ファンネル型反射体から出射した光は、前記反射板で反射し、前記液晶レンズから出射することを特徴とする照明装置である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図8】液晶レンズの動作を説明する他の断面図である。
【
図9】液晶レンズの動作を説明するさらに他の断面図である。
【
図11】第1液晶レンズの電極形状を示す平面図である。
【
図12】第1液晶レンズと第2液晶レンズの動作を示す斜視図である。
【
図13】第1液晶レンズと第2液晶レンズを積層した状態を示す断面図である。
【
図14】第1液晶レンズ、第2液晶レンズ、第3液晶レンズ、第4液晶レンズの動作を示す斜視図である。
【
図15】実施例1による液晶レンズの種々の作用を示す表である。
【
図16】液晶レンズの他の例による電極構成を示す平面図である。
【
図17】
図16における液晶レンズのレンズ要素の平面図である。
【
図18】液晶レンズへの入射光の形状を示す平面図である。
【
図19】液晶レンズが特定方向に発散作用をおこなっている状態を示す断面図である。
【
図20】
図19に示す特定方向と直角方向には、液晶レンズの発散作用が無い場合を示す断面図である。
【
図21】液晶レンズを時分割駆動する場合のチャートである。
【
図22】実施例2による液晶レンズの作用を示す断面図及びグラフである。
【
図23】実施例2の液晶レンズの電極構成を示す平面図である。
【
図24】実施例2の液晶レンズの他の電極構成を示す平面図である。
【
図25】実施例3における液晶レンズの作用を示す平面図と断面図である。
【
図26】実施例3による液晶レンズの種々の作用の例を示す表である。
【
図27】実施例3によるファンネル型反射体の斜視図である。
【
図28】
図27のファンネル型反射体を底面方向(B方向)から視た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【実施例0011】
図1は、比較例としての照明装置である。
図1は、照明装置1をベース3からのアーム2で支える構成となっている。
図1の照明装置1の概略形状は、断面が幅d2の正方形であり、長さがd1の直方体である。
図1における照明装置1の基本的な構成は、光源にはLEDを用い、LEDからの光を、内壁がパラボラ曲面を有するファンネル型反射体によって、平行光を得るものである。
【0012】
ファンネル型反射体の詳細は後で説明するが、コリメート光を得るためには、ファンネル型反射体は光軸方向に所定の長さが必要である。
図1の照明装置1の長さd1においては、はファンネル型反射体の長さd1が大きな割合を示す。したがって、
図1において、出射光4の配光角θを出来るだけ小さくしようとすると、照明装置1の出射方向の長さが大きくなる。そうすると、照明装置1の出射孔から作業面31までの距離h1を十分とれなくなるという問題が生ずる。
【0013】
図2は、
図1の構成における問題点を対策した実施例1の概略側面図である。
図2が
図1と異なる点は、アーム2に付けた照明装置1が横向きになっており、出射光4は、照明装置1の側面に配置した出射光から出射することである。出射光4を照明装置1の側面から出射させるために、
図2の照明装置1の内部には、光の進行方向に対して45度傾斜した反射板が配置されており、照明装置1の外形も、これに倣って傾斜面が形成されている。
【0014】
図2の構成であれば、照明装置1から作業面31までの距離を十分にとることが出来る。また、出射光4の配光角θをさらに小さくするために、照明装置1の長さd3を長くしても照明装置1の幅d4は変わらないので。照明装置1から作業面31までの距離h2は変わらない。
【0015】
図3は、
図2の照明装置1を斜め上方向から視た斜視図である。
図3において、照明装置1の筐体5には、光源であるLEDとファンネル型反射体が配置し、外形が傾斜している部分には、光の向きを変えるための反射板が配置している。
図4は
図3をA方向から視た斜視図である。すなわち、
図4は照明装置1の底面の形状を示すものである。
図4において、円形の光の出射孔6は、照明装置1の底面に配置している。また、後で説明するように、出射孔6の直前には、出射光4の形状を変化させるための液晶レンズが配置している。
【0016】
図5は、実施例1の構成を示す断面図であり、筐体5内に配置された部品の断面図である。
図5の構成の概略は次のとおりである。
図5において、ファンネル型反射体10のLED用孔に光源であるLED20がはめ込まれている。LED20はLED基板21に配置されている。LED20から出射した光はファンネル型反射体10の内面に形成されたパラボラ曲面によって、光軸と平行方向にコリメートされ、ファンネル型反射体10の出射光から反射板30に向かう。
【0017】
光の方向は、反射板30によって90度曲げられ、
図5の下方に向かう。照明装置1の用途によっては、光が曲げられる方向は、90度には限る必要は無い。光の曲げられる方向は
図5に示す反射板30の傾斜角度φによって決められる。反射板30で反射した光7は、液晶レンズ100に入射し、液晶レンズ100によって、レンズ作用を受けた後、出射光4となって照明装置の出射孔から出射する。
図5では、液晶レンズに入射した光は、発散作用を受けている。
図5の液晶レンズ100は、4枚の液晶レンズセットで構成されている。
【0018】
図5においては、反射板30の主面と液晶レンズ100の主面の角度φは45度となっているが、この角度は、45度に限る必要はない。照明装置の用途によっては、45度からずれることもあり得る。
【0019】
図5の構成によれば、光の出射方向における照明装置の厚さを小さくすることが出来る。また、液晶レンズ100を反射板30とファンネル型反射体10との間に配置するのではなく、反射板30によって光が曲げられた後に配置することによって、液晶レンズ100のレンズ作用をより効果的に発揮させることが出来る。また、反射板30とファンネル型反射体10の出射孔との距離を小さくすることが出来、光学設計の自由度を増すことが出来る。
【0020】
図6はファンネル型反射体10の斜視図である。
図5では、ファンネル型反射体10は横向きに配置されているが、
図6では縦向きに配置されている。ファンネル型反射体10の外形は直方体となっている。直方体の内部には、ファンネル状に凹部が形成され、凹部の壁面はパラボラ曲面11となっている。この凹部の形状は、x-y平面では円であり、z軸方向の断面はパラボラとなっている。パラボラ曲面によって、光は、z軸と平行方向にコリメートされる。なお、凹部の壁面は、一部がパラボラ曲面となっている構成でもよい。
【0021】
図6において、直方体の上面には、LED20用の孔13が形成されている。小型のLEDは平面で視て1.5mm□程度の小さいものも市販されている。LED孔13は、このような小さなLEDが組み込まれるだけの径が空いていればよい。直方体の下面には、出射孔12が形成されている。出射孔12は、例えば直径ddが6.5mm程度の円である。
【0022】
LED用孔13と出射孔12の間はパラボラ曲面11でつながっている。パラボラ曲面11によってLED20から出射した光はコリメートされて出射孔12から出射する。
図6において、出射孔12の径ddとファンネル型反射体10の高さhfの比(hf/dd)が大きいほど、よりコリメートされた光、すなわち、配光角の小さな出射光を得ることが出来る。(hf/dd)をアスペクト比と呼ぶこともある。
【0023】
アスペクト比は、2以上であることが好ましく、3以上であればより好ましく、4以上であればさらに好ましい。
図5の本発明の構成では、ファンネル型反射体10は横向きで使用されるので、アスペクト比を大きくしても、照明装置の高さは変わらない。したがって、
図2に示すh2は維持することが出来る。
【0024】
図5に戻り、本発明では、照明装置1から出射する光の形状は液晶レンズ100によって変化させられる。液晶レンズ100によって光スポットの形状をより正確に決めるには、液晶レンズ100に入射する光は、出来るだけコリメートされた光であることが望ましい。ファンネル型反射体10は小さな外形でありながら、配光角の小さな光を出射することが出来るので、
図5のような光学的な構成には好適である。
【0025】
図5において、ファンネル型反射体10から出射した光は、反射板30において反射され、90度向きを変えて進む。反射光の配向角は、反射板30で反射した後も、ほとんど変化がないことは実験的に確認されている。なお、
図5では、反射板30の主面の光軸に対する角度は45度であるが、照明装置の用途によって変化させることが出来る。
【0026】
反射板30において反射した光は液晶レンズ100に入射し、液晶レンズ100による作用によって、必要に応じて色々な光スポット形状に変化させることが出来る。液晶レンズ100は、第1液晶レンズ110、第2液晶レンズ120、第3液晶レンズ130、第4液晶レンズ140の、4枚の液晶レンズがセットになっている。
【0027】
図5の構成によれば、液晶レンズ100への入射光はファンネル型反射体10によってコリメートされた光であり、反射板30で反射された後も小さな光スポット径を維持している。したがって、液晶レンズ100のサイズを大きくする必要がない。なお、各液晶レンズ110、120、130、140は、TFT基板と対向基板で構成され、各基板の厚さは0.5mm程度なので、1枚の液晶レンズの厚さは1mm程度であり、4個の液晶レンズを重ねると、合計の厚さは4mm程度となる。
【0028】
図7は、液晶レンズ100の原理を示す断面図である。
図7において、液晶層300の左側からコリメートされた光が入射している。
図7におけるPは入射光の偏向方向の意味である。通常の光の偏向方向はランダム分布しているが、液晶は屈折率に異方性があるので、
図7はP方向に偏向している光についての作用を示すものである。
【0029】
図7において、液晶層300には、電極によって液晶分子301が液晶層300の周辺に行くにしたがって、傾きが大きくなるように配向している。液晶分子301は細長い形状であり、液晶分子301の長軸方向の実効屈折率は、液晶分子301の短軸方向の実効屈折率よりも大きいので、液晶層300の周辺ほど屈折率が大きくなるため、凸レンズが形成される。
図7における点線は光波面WFであり、fはレンズのフォーカス距離である。
【0030】
液晶は、屈折率に異方性があるので、レンズを形成するには、第1のレンズが作用する光の偏向方向と直角方向に偏向する光に作用する第2のレンズが必要になる。
図8はこのレンズ構成を示す分解斜視図である。
図8において、左側の平行四辺形は光の波面である。つまり、X方向とY方向に偏向した光が液晶層300に入射する。第1液晶レンズ110はX偏光光に作用するレンズであり、第2液晶レンズ120はY偏光光に作用するレンズである。
【0031】
図8において、第1液晶レンズ110と第2液晶レンズ120では液晶分子301の初期配向方向が90度異なっている。液晶分子301の初期配向は、液晶レンズ内の配向膜の配向方向によって決定される。つまり、
図8では、2枚の液晶レンズ110、120において、光が入射する側の基板における配向膜の配向方向が互いに直角方向になっている。
【0032】
図9は液晶レンズによって凹レンズを形成する場合である。
図9において、波面WFが液晶層300に平行で、1方向に偏向した光が、左側から液晶層300に入射する。
図9において、液晶層300における液晶分子301は、電極によって光軸付近において最も大きく配向され、周辺に行くにしたがって、配向角度が小さくなっている。このような液晶配向によるレンズ構成によって、液晶層300を通過した光の波面WFは
図9の点線で示すような曲線になって凹レンズが形成される。なお、凹レンズの場合も、
図8に示すように、2枚の液晶レンズが必要なことは同じである。
【0033】
図10は、液晶レンズ110の詳細断面図である。
図10において、TFT基板111の上には、第1電極112が形成され、第1電極112を覆って第1配向膜113が形成されている。第1配向膜113の配向方向によって、入射光のうちの、液晶レンズによって作用を受ける方向の偏光光が決められる。対向基板115の内側には、第2電極116が形成され、第2電極116を覆って第2配向膜117が形成されている。第1配向膜113の配向方向と第2配向膜117の配向方向の関係は、どのような液晶を使用するかによって決められる。TFT基板111と対向基板115の間に液晶層300が挟持されている。
【0034】
図11の左側は第1基板111に形成された第1電極112の平面図である。第1電極112は同心円状の円となっている。円状の各電極112には電圧を印加するための引き出し配線114が接続されている。
図11の右側の図は、対向基板115に形成された第2電極116の形状を示す平面図である。第2電極116は、平面電極であり、対向基板115のほぼ全面にわたって形成されている。
【0035】
図11において、第1電極112と第2電極116間の電圧を変化させることによって種々の強度のレンズを形成することができる。
図10、
図11の例は、第1電極111が同心円で形成されているので、円形のレンズを容易に形成できるという特徴を有している。
【0036】
図10及び
図11で説明した液晶レンズ110は、1方向、例えば偏光光PXに対して作用するレンズである。しかし、LED10からの光は、あらゆる方向に偏光しているので、少なくとも、PXと直角方向に偏光した光PYに対して作用する液晶レンズが必要である。
【0037】
図12はこの構成を示す斜視図である。
図12において、LEDからの光LLが左側から入射すると、第1液晶レンズ110によってPX方向に偏光した光が液晶レンズの作用を受ける。PY方向に偏光した光は第1液晶レンズ110の影響を受けない。PY方向に偏光した光は、第2液晶レンズ120によって液晶レンズの作用を受ける。PX方向に偏光した光は、第2液晶レンズ120の作用は受けない。これによって、x方向に偏光した光もy方向に偏光した光も液晶レンズの作用を受けることが出来る。
【0038】
図13は、第1液晶レンズ110と第2液晶レンズ120を積層した状態を示す断面図である。第1液晶レンズ110と第2液晶レンズ120は透明接着材200によって接着している。
図13において、第2液晶レンズ120の電極構成は、第1液晶レンズ110と同じである。つまり、第2液晶レンズ120において、TFT基板121に第3電極122が形成され、その上に第3配向膜123が形成されている。対向基板125の上に第4電極126が形成され、その上に第4配向膜127が形成されている。
【0039】
第2液晶レンズ120が第1液晶レンズ110と異なる点は、配向膜123の配向方向である。
図13において、ALは配向膜113の配向方向を示している。
図13において、第1液晶レンズ110におけるTFT基板111に形成された第1配向膜113の配向方向は例えばx方向である。第2液晶レンズ120のTFT基板121に形成された第3配向膜123の配向方向は、例えばy方向である。つまり、x方向に偏光した光もy方向に偏光した光も、2枚の液晶レンズ110及び120によって作用を受けることが出来る。
【0040】
なお、第1液晶レンズ110における対向基板115に形成された第2配向膜117の配向方向、及び第2液晶レンズ120の対向基板125に形成された第4配向膜127の配向方向は、液晶300としてどのような液晶を使用するかによって決まる。つまり、第1液晶レンズ110における第2配向膜117は第1配向膜113と同じ方向に配向する場合もあるし、直角方向に配向する場合もある。第2液晶レンズ120における第3配向膜123と第4配向膜127の関係も同じである。
【0041】
ところで、LED10からの光は、全方向に偏光しているので、PXあるいはPYの偏光光にのみ作用したのでは、液晶レンズの十分な作用を得られない場合がある。この場合は、
図14に示すように、例えば、x方向に対して45度方向に偏光している光P45に対して作用する液晶レンズ130、x方向に対して135度方向に偏光している光P135に対して作用する液晶レンズ140を加えればよい。
【0042】
液晶レンズには、単に収束、発散の作用だけでなく、光スポットの形状を変える作用を持たせることも出来る。
図15に示す表は、その代表的な例である。
図15において、15Aは小さな円形のビームを大きな円形に変換する場合であり、15Bは横方向にのみ拡大する場合であり、15Cは縦方向にのみ拡大する場合であり、15Dはクロス状に拡大する場合である。
【0043】
15Aは
図11のレンズ構成によって対応することが出来るが、15B、15C、15D等は、
図11のレンズ構成では対応できない。
図16は、このような作用をもつことが出来る液晶レンズ110の平面図である。
図16において、TFT基板111と対向基板115が周辺においてシール材150で接着し、内部に液晶が封入されている。TFT基板111と対向基板115が重なった領域がレンズ領域170となる。
【0044】
TFT基板111は対向基板115よりも大きく形成され、TFT基板111において、対向基板115と重なっていない部分は端子領域160である。端子領域160には、液晶レンズを駆動するドライバIC165等が配置している。
【0045】
図16のレンズ領域170において、横方向(x方向)に走査線151が延在し、縦方向(y方向)に配列している。また、信号線152が縦方向に延在し、横方向に配列している。走査線151と信号線152に囲まれた領域にレンズ要素電極(以後単に要素電極という)を含むレンズ要素153が形成される。要素電極と対向基板に形成されたコモン電極との間に電圧を印加して、液晶分子を必要な方向に配向させて、光を屈折させる。
【0046】
図17はレンズ要素153の平面図である。
図17において、走査線151と信号線152に囲まれた領域に要素電極154が形成されている。要素電極154と信号線152との間に走査信号によってスイッチングされるTFT(Thin Film Trnsistor)が形成されている。TFTは走査線151から分岐したゲート電極210、半導体膜211、信号線153から分岐したドレイン電極212、及びソース電極123で形成され、ソース電極213はスルーホール214を介して要素電極154と接続する。他の液晶レンズ120、130、140も同様な構成となっている。
【0047】
図18は、液晶レンズ100に対して、
図5に示すように、反射板30からの光7が入射している状態を示す平面図である。矩形の液晶レンズ100に対して略円形の光7が入射している。この光7に対し、液晶レンズ100を、
図19に示すようにx方向に発散させるように作用させ、
図20に示すようにy方向にはレンズ作用を与えないようにすれば、
図15Bのような横長の光スポットを得ることが出来る。なお、
図19及び
図20の白矢印は光の進行方向を示す。
【0048】
一方、液晶レンズ100によって、
図15Cに示すように、縦方向に長い光スポットを得るには、y方向には液晶レンズ100を
図19のように発散させるように作用させ、x方向には、
図20に示すように、レンズ作用を与えないようにすればよい。
【0049】
しかし、液晶レンズ100によって、
図15Dに示すように、クロス形状の光スポットを得るには、同様な方法では難しい。そこで、
図15のような光スポットを得るには、
図15Bの横長の光スポットと
図15Cの縦長の光スポットを時分割で表示すればよい。
図21は、クロス形状の光スポットを得るための時分割駆動の例である。
図21に示すように、最初のT1の間は横長のスポットを表示し、続くT1の間は縦長のスポットを表示する。T1はフリッカーが目立たないような時間を選べばよい。
第1液晶レンズ110のTFT基板111及び対向基板115の電極構造は、第2液晶レンズ120も同じである。第1液晶レンズ110と第2液晶レンズ120が異なる点は、第1液晶レンズ110における第1配向膜113及び第2配向膜117の配向方向と、第2液晶レンズ120における第1配向膜123及び第2配向膜127の配向方向とが互いに90度の角度をなしている点である。