(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025121
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】作業機の油圧システム
(51)【国際特許分類】
F15B 11/02 20060101AFI20240216BHJP
F15B 11/08 20060101ALI20240216BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
F15B11/02 C
F15B11/08 A
E02F9/22 E
E02F9/22 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128313
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】長尾 昂平
(72)【発明者】
【氏名】福田 祐史
(72)【発明者】
【氏名】西本 龍起
【テーマコード(参考)】
2D003
3H089
【Fターム(参考)】
2D003AB03
2D003AB04
2D003BA02
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB02
3H089AA22
3H089AA60
3H089AA74
3H089BB20
3H089CC01
3H089CC12
3H089DA03
3H089DA13
3H089DB03
3H089DB33
3H089DB47
3H089DB49
3H089EE05
3H089EE22
3H089EE25
3H089EE36
3H089FF09
3H089GG02
3H089JJ01
(57)【要約】
【課題】複数の油圧アクチュエータを同時に作動させるときに、優先度の高い油圧アクチュエータの要求通りの作動速度を確保する。
【解決手段】 作業機の油圧システムは、油圧ポンプから吐出された作動油によって作動する第1油圧アクチュエータ及び第2油圧アクチュエータと、第1操作部材にて設定される第1要求流量に一致するように前記第1油圧アクチュエータへの作動油の第1供給流量を制御する第1流量制御装置と、第2操作部材にて設定される第2要求流量に一致するように前記第2油圧アクチュエータへの作動油の第2供給流量を制御する第2流量制御装置と、前記第1要求流量と前記第2要求流量との合計である総要求流量が前記油圧ポンプの吐出可能な作動油の最大流量である最大吐出流量を超えると、前記第1供給流量を減少させることで、前記第2供給流量を前記第2要求流量へと近づける特殊流量制御システムと、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから吐出された作動油によって作動する第1油圧アクチュエータと、
前記油圧ポンプから吐出された作動油によって作動する第2油圧アクチュエータと、
第1要求流量を設定するよう操作可能な第1操作部材と、
第2要求流量を設定するよう操作可能な第2操作部材と、
前記第1操作部材の操作により設定された前記第1要求流量に一致するよう前記第1油圧アクチュエータへの作動油の供給流量である第1供給流量を制御する第1流量制御装置と、
前記第2操作部材の操作により設定された前記第2要求流量に一致するよう前記第2油圧アクチュエータへの作動油の供給流量である第2供給流量を制御する第2流量制御装置と、
前記第1要求流量と前記第2要求流量との合計である総要求流量が前記油圧ポンプの吐出可能な作動油の最大流量である最大吐出流量を超えると判断すると、前記第1供給流量を減少させることで、前記第2供給流量を前記第2要求流量へと近づける特殊流量制御システムとを備える作業機の油圧システム。
【請求項2】
前記特殊流量制御システムは、前記総要求流量が前記最大吐出流量を超えると判断すると、前記第1要求流量よりも低い値の限定要求流量を設定し、前記第1供給流量を前記限定要求流量へと減少させることで、前記第2供給流量を前記第2要求流量へと近づける請求項1に記載の作業機の油圧システム。
【請求項3】
前記特殊流量制御システムは、前記総要求流量が前記最大吐出流量を超えると判断すると、前記最大吐出流量と前記第2要求流量との差以下の値である限定要求流量を設定し、前記第1供給流量を前記限定要求流量へと減少させることで、前記第2供給流量を前記第2要求流量へと近づける請求項1に記載の作業機の油圧システム。
【請求項4】
前記特殊流量制御システムは、前記第1要求流量が設定された後、前記第2要求流量が設定された時に、前記総要求流量が前記最大吐出流量を超えると判断すると、前記第1要求流量未満の前記第1供給流量をさらに低い値へと減少させることで、前記第2供給流量を前記第2要求流量へと近づける請求項1に記載の作業機の油圧システム。
【請求項5】
前記特殊流量制御システムは、前記第1要求流量が設定された後、前記第2要求流量が設定された時に、前記総要求流量が前記最大吐出流量を超えると判断すると、前記第1供給流量を減少させることで、前記第2供給流量を前記第2要求流量へと近づける請求項1に記載の作業機の油圧システム。
【請求項6】
前記特殊流量制御システムは、前記総要求流量が前記最大吐出流量を超えると判断すると、前記第1供給流量を徐々に減少させることで、前記第2供給流量を前記第2要求流量へと近づける請求項1に記載の作業機の油圧システム。
【請求項7】
前記特殊流量制御システムは、前記総要求流量が前記最大吐出流量を超えると判断すると、前記第1供給流量を一定の減少率で徐々に減少させることで、前記第2供給流量を前記第2要求流量へと近づける請求項1に記載の作業機の油圧システム。
【請求項8】
前記特殊流量制御システムは、前記総要求流量が前記最大吐出流量を超えると判断すると、前記第1供給流量を段階的に徐々に減少させることで、前記第2供給流量を前記第2要求流量へと近づける請求項1に記載の作業機の油圧システム。
【請求項9】
前記特殊流量制御システムは、前記総要求流量が前記最大吐出流量を超えた後、前記第1操作部材又は前記第2操作部材が操作されて、前記総要求流量が前記最大吐出流量以下になったと判断すると、減少させていた前記第1供給流量を増加させ、前記第1要求流量へと近づける請求項1に記載の作業機の油圧システム。
【請求項10】
前記油圧ポンプより吐出される作動油の流量を制御するためのポンプ制御装置をさらに備え、
前記ポンプ制御装置は、前記油圧ポンプより吐出される作動油の吐出圧が、前記第1油圧アクチュエータ及び前記第2油圧アクチュエータの最高負荷圧よりも、設定されたロードセンシング差圧の分高くなるように、前記油圧ポンプを制御する請求項1に記載の作業機の油圧システム。
【請求項11】
前記第1油圧アクチュエータへ供給される作動油について設定された油圧を補償するための圧力補償弁をさらに備える請求項10に記載の作業機の油圧システム。
【請求項12】
前記油圧ポンプより吐出される作動油を流す吐出油路と、
前記吐出油路より分岐する第1分岐油路と、
前記第1分岐油路を介して前記吐出油路より供給される作動油を前記第1油圧アクチュエータへと供給するよう操作可能な第1制御弁と、
前記第1分岐油路と並列状に前記吐出油路より分岐する第2分岐油路と、
前記第2分岐油路を介して前記吐出油路より供給される作動油を前記第2油圧アクチュエータへと供給するよう操作可能な第2制御弁と、をさらに備え、
前記第1流量制御装置は、前記第1供給流量が前記第1要求流量に一致するように前記第1制御弁の位置を制御し、
前記第2流量制御装置は、前記第2供給流量が前記第2要求流量に一致するように前記第2制御弁の位置を制御し、
前記特殊流量制御システムは、前記総要求流量が前記最大吐出流量を超えると判断すると、前記第2流量制御装置が、前記第2供給流量を前記第2要求流量に一致させる位置に前記第2制御弁を保持している間に、前記第1流量制御装置により、前記第1供給流量を減少させるように前記第1制御弁の位置を変更させることで、前記第2供給流量を前記第2要求流量へと近づける請求項1に記載の油圧システム。
【請求項13】
前記第1制御弁は、パイロット圧油を受けて位置制御されるものであり、
前記第1流量制御装置は、前記第1制御弁への前記パイロット圧油の供給を制御する請求項12に記載の作業機の油圧システム。
【請求項14】
前記第1制御弁に前記パイロット圧油を供給する電磁弁をさらに備え、
前記第1流量制御装置は、前記電磁弁の開度を制御するための制御信号を出力する請求項13に記載の作業機の油圧システム。
【請求項15】
前記第1制御弁は電磁弁であり、
前記第1流量制御装置は、前記第1制御弁にソレノイドの励磁を制御する制御信号を出力する請求項12に記載の作業機の油圧システム。
【請求項16】
前記特殊流量制御システムは、前記第1油圧アクチュエータに供給される作動油を流す油路に設けられる可変絞りを備え、
前記特殊流量制御システムは、前記総要求流量が前記最大吐出流量を超えると判断すると、前記第1流量制御装置が、前記第1供給流量を減少させるように前記可変絞りの絞り度を増大することで、前記第2供給流量を前記第2要求流量へと近づける請求項1に記載の作業機の油圧システム。
【請求項17】
前記油圧ポンプより吐出される作動油を流す吐出油路と、
前記吐出油路より分岐する第1分岐油路と、
前記第1分岐油路を介して前記吐出油路より供給される作動油を前記第1油圧アクチュエータへと供給するよう操作可能な第1制御弁と、
前記第1分岐油路と並列状に前記吐出油路より分岐する第2分岐油路と、
前記第2分岐油路を介して前記吐出油路より供給される作動油を前記第2油圧アクチュエータへと供給するよう操作可能な第2制御弁と、をさらに備え、
前記第1流量制御装置は、前記第1供給流量が前記第1要求流量に一致するように前記第1制御弁の位置を制御し、
前記第2流量制御装置は、前記第2供給流量が前記第2要求流量に一致するように前記第2制御弁の位置を制御し、
前記特殊流量制御システムは、前記総要求流量が前記最大吐出流量を超えると判断すると、前記第2流量制御装置が、前記第2供給流量を前記第2要求流量に一致させる位置に前記第2制御弁を保持し、前記第1流量制御装置が、前記第1供給流量を前記第1要求流量に一致させる位置に前記第1制御弁を保持している間に、前記第1供給流量を減少させるように前記可変絞りの絞り度を増大することで、前記第2供給流量を前記第2要求流量へと近づける請求項16に記載の油圧システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキッドステアローダ、コンパクトトラックローダ等の作業機の油圧システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧アクチュエータを備える作業機として、例えば、特許文献1に開示されるようなコンパクトトラックローダと称される作業機が公知である。この作業機は、左右一対のリフトアームを有し、リフトアームは油圧アクチュエータとしてのリフトアームシリンダの駆動にて機体に対し上下揺動される。
【0003】
また、スイーパ等、油圧アクチュエータを備えるアタッチメントをリフトアームに装着する場合に対応して、左右一対のリフトアームのうち一方に、作動油取出し用のポート(auxiliary(AUX)ポート)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記作業機においては、リフトアームシリンダ及びアタッチメントの油圧アクチュエータを同時に作動する場合があるが、リフトアームシリンダの要求流量とアタッチメントの油圧アクチュエータの要求流量との合計が、共通の油圧ポンプの最大吐出流量を上回ると、リフトアームシリンダへの供給流量もアタッチメントの油圧アクチュエータへの供給流量もそれぞれの要求流量を下回り、オペレータの望むような作業速度や作業効率等を達成できない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の問題を解決するため、本発明に係る作業機の油圧システムは、油圧ポンプと、前記油圧ポンプから吐出された作動油によって作動する第1油圧アクチュエータと、前記油圧ポンプから吐出された作動油によって作動する第2油圧アクチュエータと、第1要求流量を設定するよう操作可能な第1操作部材と、第2要求流量を設定するよう操作可能な第2操作部材と、前記第1操作部材の操作により設定された前記第1要求流量に一致するよう前記第1油圧アクチュエータへの作動油の供給流量である第1供給流量を制御する第1流量制御装置と、前記第2操作部材の操作により設定された前記第2要求流量に一致するよう前記第2油圧アクチュエータへの作動油の供給流量である第2供給流量を制御する第2流量制御装置と、前記第1要求流量と前記第2要求流量との合計である総要求流量が前記油圧ポンプの吐出可能な作動油の最大流量である最大吐出流量を超えると判断すると、前記第1供給流量を減少させることで、前記第2供給流量を前記第2要求流量へと近づける特殊流量制御システムとを備える。
【0007】
前記特殊流量制御システムは、前記総要求流量が前記最大吐出流量を超えると判断すると、前記第1要求流量よりも低い値の限定要求流量を設定し、前記第1供給流量を前記限定要求流量へと減少させることで、前記第2供給流量を前記第2要求流量へと近づけてもよい。
【0008】
前記特殊流量制御システムは、前記総要求流量が前記最大吐出流量を超えると判断する
と、前記最大吐出流量と前記第2要求流量との差以下の値である限定要求流量を設定し、前記第1供給流量を前記限定要求流量へと減少させることで、前記第2供給流量を前記第2要求流量へと近づけてもよい。
【0009】
前記特殊流量制御システムは、前記第1要求流量が設定された後、前記第2要求流量が設定された時に、前記総要求流量が前記最大吐出流量を超えると判断すると、前記第1供給流量を減少させることで、前記第2供給流量を前記第2要求流量へと近づけてもよい。
【0010】
前記特殊流量制御システムは、前記総要求流量が前記最大吐出流量を超えると判断すると、前記第1供給流量を徐々に減少させることで、前記第2供給流量を前記第2要求流量へと近づけてもよい。
【0011】
前記特殊流量制御システムは、前記総要求流量が前記最大吐出流量を超えると判断すると、前記第1供給流量を一定の減少率で徐々に減少させることで、前記第2供給流量を前記第2要求流量へと近づけてもよい。
【0012】
前記特殊流量制御システムは、前記総要求流量が前記最大吐出流量を超えると判断すると、前記第1供給流量を段階的に徐々に減少させることで、前記第2供給流量を前記第2要求流量へと近づけてもよい。
【0013】
前記特殊流量制御システムは、前記総要求流量が前記最大吐出流量を超えた後、前記第1操作部材又は前記第2操作部材が操作されて、前記総要求流量が前記最大吐出流量以下になったと判断すると、減少させていた前記第1供給流量を増加させ、前記第1要求流量へと近づけてもよい。
【0014】
前記油圧システムは、前記油圧ポンプより吐出される作動油の流量を制御するためのポンプ制御装置をさらに備えてもよい。前記ポンプ制御装置は、前記油圧ポンプより吐出される作動油の吐出圧が、前記第1油圧アクチュエータ及び前記第2油圧アクチュエータの最高負荷圧よりも、設定されたロードセンシング差圧の分高くなるように、前記油圧ポンプを制御してもよい。
【0015】
前記油圧システムは、前記第1油圧アクチュエータへ供給される作動油について設定された油圧を補償するための圧力補償弁をさらに備えてもよい。
【0016】
前記油圧システムは、前記油圧ポンプより吐出される作動油を流す吐出油路と、前記吐出油路より分岐する第1分岐油路と、前記第1分岐油路を介して前記吐出油路より供給される作動油を前記第1油圧アクチュエータへと供給するよう操作可能な第1制御弁と、前記第1分岐油路と並列状に前記吐出油路より分岐する第2分岐油路と、前記第2分岐油路を介して前記吐出油路より供給される作動油を前記第2油圧アクチュエータへと供給するよう操作可能な第2制御弁と、をさらに備えてもよい。前記第1流量制御装置は、前記第1供給流量が前記第1要求流量に一致するように前記第1制御弁の位置を制御してもよい。前記第2流量制御装置は、前記第2供給流量が前記第2要求流量に一致するように前記第2制御弁の位置を制御してもよい。前記特殊流量制御システムは、前記総要求流量が前記最大吐出流量を超えると判断すると、前記第2流量制御装置が、前記第2供給流量を前記第2要求流量に一致させる位置に前記第2制御弁を保持している間に、前記第1流量制御装置により、前記第1供給流量を減少させるように前記第1制御弁の位置を変更させることで、前記第2供給流量を前記第2要求流量へと近づけてもよい。
【0017】
前記第1制御弁は、パイロット圧油を受けて位置制御されるものであってもよい。前記第1流量制御装置は、前記第1制御弁への前記パイロット圧油の供給を制御してもよい。
【0018】
前記油圧システムは、前記第1制御弁に前記パイロット圧油を供給する電磁弁をさらに備えてもよい。前記第1流量制御装置は、前記電磁弁の開度を制御するための制御信号を出力してもよい。
【0019】
前記第1制御弁は電磁弁であってもよい。前記第1流量制御装置は、前記第1制御弁にソレノイドの励磁を制御する制御信号を出力してもよい。
【0020】
前記特殊流量制御システムは、前記第1油圧アクチュエータに供給される作動油を流す油路に設けられる可変絞りを備えてもよい。前記特殊流量制御システムは、前記総要求流量が前記最大吐出流量を超えると判断すると、前記第1供給流量を減少させるように前記可変絞りの絞り度を増大することで、前記第2供給流量を前記第2要求流量へと近づけてもよい。
【0021】
前記油圧システムは、前記油圧ポンプより吐出される作動油を流す吐出油路と、前記吐出油路より分岐する第1分岐油路と、前記第1分岐油路を介して前記吐出油路より供給される作動油を前記第1油圧アクチュエータへと供給するよう操作可能な第1制御弁と、前記第1分岐油路と並列状に前記吐出油路より分岐する第2分岐油路と、前記第2分岐油路を介して前記吐出油路より供給される作動油を前記第2油圧アクチュエータへと供給するよう操作可能な第2制御弁と、をさらに備えてもよい。前記第1流量制御装置は、前記第1供給流量が前記第1要求流量に一致するように前記第1制御弁の位置を制御してもよい。前記第2流量制御装置は、前記第2供給流量が前記第2要求流量に一致するように前記第2制御弁の位置を制御してもよい。前記特殊流量制御システムは、前記総要求流量が前記最大吐出流量を超えると判断すると、前記第2流量制御装置が、前記第2供給流量を前記第2要求流量に一致させる位置に前記第2制御弁を保持し、前記第1流量制御装置が、前記第1供給流量を前記第1要求流量に一致させる位置に前記第1制御弁を保持している間に、前記第1供給流量を減少させるように前記可変絞りの絞り度を増大することで、前記第2供給流量を前記第2要求流量へと近づけてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、2つの油圧アクチュエータが同時に駆動されるときに、優先度の低い油圧アクチュエータに供給される作動油の流量が抑えられ、その分、優先度の高い油圧アクチュエータに所望の流量の作動油が供給されて、優先度の高い油圧アクチュエータが望みどおりの速度や効率で駆動されて、好ましい作業効率での作業を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】第1実施形態に係る作業機の油圧システムの回路図である。
【
図3】流量制御システムによる要求流量の低下の第1パターンを示すグラフである。
【
図4】流量制御システムによる要求流量の低下の第2パターンを示すグラフである。
【
図5】流量制御システムによる流量制御の流れを示すフローチャートである。
【
図6】第2実施形態に係る作業機の油圧システムの回路図である。
【
図7】第3実施形態に係る作業機の油圧システムの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る作業機の油圧システムの実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1を参照して、本発明の実施形態に係る作業機の全体構成について概略説明する。本実施形態では、コンパクトトラックローダ(CTL)1を作業機としている。本発明に係る油圧システムを適用可能な作業機としては、コンパクトトラックローダの他、例えば、トラクタ、スキッドステアローダ、バックホー等が考えられる。
【0026】
CTL1は、機体2と、キャビン3と、作業装置4と、走行装置5とを備えている。機体2に、キャビン3、作業装置4、走行装置5が設けられている。以下、
図1において矢印Fの指す向きを前方、その反対側を後方とし、CTL1を後方から矢印F沿いに前方視した時の左方を左方、同じく前方視した時の右方を右方とする。
【0027】
本実施形態に係るCTL1はトラックローダであり、機体2の左部及び右部に設けられる左右一対のクローラ式の走行装置5を備えている。なお、走行装置はクローラ式走行装置に限らない。例えば、作業機を、前輪及び後輪を有するホイール式走行装置を備えたホイールローダとしてもよい。
【0028】
機体2の、例えばキャビン3より後方の部分には、原動機6が搭載されている。原動機6としては、内燃機関や電動モータ等が考えられる。左右一対の走行装置5は、原動機6の出力により駆動される。
【0029】
具体的には、左右一対の走行装置5が各別に図略の油圧モータ等の走行用油圧アクチュエータを備え、原動機6の出力にて駆動される油圧ポンプより吐出される作動油を走行用油圧アクチュエータに供給することで走行用油圧アクチュエータを作動し、各走行装置5の、例えば駆動輪を駆動する構成となっている。
【0030】
走行用油圧アクチュエータに作動油を供給する油圧ポンプとして、例えば一対の油圧ポンプを設け、各油圧ポンプと該当の各油圧モータとを流体接続して、一対の走行装置5のそれぞれを駆動するための一対の油圧式無段変速装置(Hydrostatic Transmission(HST))を構成するものとしてもよい。
【0031】
なお、本実施形態に係るCTL1の走行装置5の駆動形態は、上記の形態に限定されない。例えば、原動機6に代えて機体2にバッテリを搭載し、左右走行装置5は各別に電気モータを有し、バッテリより供給される電流にて電気モータを駆動するものとしてもよい。
【0032】
機体2には運転席7が搭載されている。キャビン3は、運転席7を囲むように機体2に搭載される。キャビン3は、運転席7に座る作業者及び運転席7の周囲に配置されるレバーやスイッチ等の各種操作部材や計器等を保護する保護機構の一種である。同様の機能を有する保護機構として、キャノピーやロプス(ROPS)等を機体2に設けることも考えられる。
【0033】
キャビン3内において、運転席7に座る作業者により手動で操作される操作部材の一種である作業操作レバー8が設けられる。作業操作レバー8は、作業装置4の後記左右一対のリフトアーム10の上下揺動又は後記アタッチメントの上下回動のために(具体的には後記左右一対のリフトアームシリンダ14の伸縮動又は左右一対のアタッチメントシリンダ15の伸縮動を制御するために)操作される。
【0034】
さらに、
図2を参照して、キャビン3内において、
図1では図略の予備駆動スイッチ(AUX操作スイッチ)9が運転席7の近傍に配置されている。AUX操作スイッチ9は、作業装置4に装着されたアタッチメント(例えば後記スイーパ23)の備える油圧アクチュエータ(例えば後記油圧モータ24)への作動油供給を制御するために操作される。
【0035】
作業装置4は、機体2に上下揺動自在に装着された左右一対のリフトアーム10を有している。左右一対のリフトアーム10のうち、左のリフトアーム10はキャビン3の左方に配置され、右のリフトアーム10は、キャビン3の右方に配置されている。各リフトアーム10はその長手方向がCTL1の前後方向に沿うようにして配置されている。
【0036】
キャビン3より前方にて、左右のリフトアーム10の前部同士が図略の接続部材を介して接続されている。また、キャビン3より後方にて、左右のリフトアーム10の後部同士が図略の接続部材を介して接続されている。
【0037】
こうして、左右のリフトアーム10及び前後の接続部材(図略)を一体に組み合わせてなる作業装置4の本体4aが、機体2に上下回動自在に取り付けられている。
【0038】
なお、左右のリフトアーム10同士の接続様態については上述のような前後の接続部材を介するものに限られるものではなく、左右のリフトアーム10が一体となって機体2に対し上下揺動可能な構成が確保されていればどのようなものでもよい。
【0039】
作業装置4は、左右のリフトアーム10を含む本体4aを機体2の後部に支持するため、左右一対のリフトリンク12及び左右一対の制御リンク13を備えている。
【0040】
また、作業装置4は、左右のリフトアーム10を含む本体4aを機体2に対し上下回動させるための油圧アクチュエータとして、左右一対のリフトアームシリンダ14を備えている。
【0041】
CTL1の左側面図である
図1には、キャビン3より左方に配置される左のリフトアーム10、リフトリンク12、制御リンク13、リフトアームシリンダ14が図示されている。同様に、キャビン3の右方に、右のリフトアーム10、リフトリンク12、制御リンク13、リフトアームシリンダ14が配置されているが、
図1では省略されている。
【0042】
なお、
図1は、機体2に対して上下揺動可能な左右リフトアーム10(を含む作業装置4の本体4a)が、上下揺動方向における最下げ位置にある状態を示している。以下、作業装置4の各部の位置や方向については、左右リフトアーム10がこの最下げ位置にあることを前提に説明するものとする。
【0043】
各リフトリンク12は略上下方向に延びており、その上端が、左右方向の軸心を有する枢軸16を介して各リフトアーム10の後端部に枢結され、その下端が、左右方向の軸心を有する枢軸17を介して機体2の後上部に枢結されている。
【0044】
なお、各リフトリンク12の前端縁に凹部12aが形成されている。
図1に示すように、各リフトアーム10の側面に設けたストッパ10aが凹部12aに嵌入すると、リフトアーム10はそこから枢軸16を中心にリフトリンク12に近づく方向に揺動することはできない。つまり、ストッパ10aが凹部12aに嵌入している時、枢軸16を中心にリフトアーム10とリフトリンク12との間に形成される角度が最小となる。
【0045】
各枢軸16より前方にて、各リフトアーム10の後部にブラケット10bが形成されており、各リフトアームシリンダ14のピストンロッド先端が、左右方向の軸心を有する枢軸18を介してブラケット10bに枢結されている。また、各枢軸17より下方にて、機体2の後下部に、各リフトアームシリンダ14の底端が、左右方向の軸心を有する枢軸19を介して枢結されている。
【0046】
各リフトアームシリンダ14は、
図1で図略のピストンを収容し、油圧にてピストンを移動させることでピストンロッドを伸縮する構成となっている。
図1に示すリフトアームシリンダ14は、ピストンロッドを最も収縮した状態となっている。即ち、ストッパ10aが凹部12aに嵌入して各リフトアーム10と各リフトリンク12との間の角度が最小になり、且つ、各リフトアームシリンダ14が最も収縮した時に、左右リフトアーム10は最下げ位置に配置される。
【0047】
前後方向において各枢軸16と各枢軸18との間にて、各リフトアーム10の後部に下方突出状のブラケット10cが形成されている。各制御リンク13は、略前後方向に延び、その前端が、左右方向の軸心を有する枢軸20を介して、機体2の後上部の、各枢軸16の前方の部分に枢結され、その後端が、左右方向の軸心を有する枢軸21を介して、各ブラケット10cに枢結されている。
【0048】
図1に示すように左右のリフトアーム10が最下げ位置にある状態から、左右リフトアームシリンダ14のピストンロッドが上方へ伸長されると、ピストンロッドがリフトアーム10のブラケット10bを持ち上げる。
【0049】
ブラケット10bより後方では、前述の如く、リフトアーム10の後端部とリフトリンク12の上端部とが枢軸16を介して枢結されているが、これらは、ブラケット10bが持ち上げられるにつれ、リフトアーム10とリフトリンク12との間の最小角度を保持したまま(すなわち、ストッパ10aが凹部12aに嵌入したまま)、枢軸17の軸心回りに、後下方に回動する。これにつれ、リフトアーム10の前端が最下げ位置から上昇する。
【0050】
左右リフトアームシリンダ14のピストンロッドがさらに上方に伸長されると、左右のリフトリンク12は後上向に傾斜した状態で残されたまま、ブラケット10bのさらなる持ち上げにより、やがて、ストッパ10aが凹部12aから外れ、リフトアーム10とリフトリンク12との間の角度が大きくなるように、リフトアーム10が枢軸16の軸心回りに回動する。これにつれ、枢軸20を中心に制御リンク13が前上方に回動し、リフトアーム10の前端はさらに上方に移動する。
【0051】
制御リンク13が前上方に回動して、枢軸21がその上下に移動可能な範囲の最も高い位置に達すると、それ以上は左右リフトアーム10(作業装置4の本体4a)を持ち上げることはできない。すなわち、枢軸21がこの位置に達した時に、左右リフトアーム10(作業装置4の本体4a)が最上げ位置に達し、リフトアームシリンダ14が最伸長の状態となる。
【0052】
各リフトアーム10はブラケット10bから前方に(最下げ位置にある時は前下方に)延出し、キャビン3の前方の位置にて曲折部10dを有しており、曲折部10dからリフトアーム10の前端まで下方に延びている。左右リフトアーム10の前端は、作業用のアタッチメントを接続可能な構成となっている。
【0053】
作業装置4は、左右一対のアタッチメントシリンダ15を備えている。これらは、左右リフトアーム10に取り付けられたアタッチメントを支持し、また、アタッチメントをリフトアーム10に対して上下回動させるための油圧アクチュエータである。
【0054】
各リフトアーム10の曲折部10dにはブラケット10eが形成されており、ブラケット10eに各アタッチメントシリンダ15のシリンダボトム(上端)が左右方向に軸心を有する枢軸22を介して枢結されている。左右一対のアタッチメントシリンダ15のピス
トンロッドの先端(下端)は、左右リフトアーム10の前端に取り付けられたアタッチメントに枢結される。
【0055】
さらに、左右一対のリフトアーム10のうちの一方の(本実施形態では左の)リフトアーム10の曲折部10dに、一以上のAUXポート(作動油取出しポート)11が設けられている。AUXポート11はカプラとなっていて、左右リフトアーム10の前端に取り付けたアタッチメントの有する油圧アクチュエータ(AUXアクチュエータ)に、ホース等の油管の接続端を接続可能となっている。
【0056】
作業装置4には、様々な種類のアタッチメントを装着可能となっている。これらのアタッチメントは、少なくとも、左右のリフトアーム10の前端に接続可能な構成となっている。すなわち、左右両リフトアーム10の前端にアタッチメントを接続することで、当該アタッチメントを作業装置4に装着することができる。
【0057】
作業装置4に装着可能(左右リフトアーム10に接続可能)な様々な種類のアタッチメントには、例えば、バケット、油圧圧砕機、油圧ブレーカ、アングルブルーム、アースオーガ、パレットフォーク、スイーパ、モア、スノウブロア等が含まれる。
図1は、CTL1の作業装置4にスイーパ23を装着した実施形態を示している。
【0058】
スイーパ23は、左右方向の回転軸を有する回転ブラシ23aと、回転ブラシ23aを覆い、かつその回転軸を軸支するスイーパカバー23bと、回転ブラシ23aの回転軸を駆動するための油圧アクチュエータ(AUXアクチュエータ)である油圧モータ24とを備えている。
【0059】
スイーパ23は、スイーパカバー23bの後端下部が左右両リフトアーム10の前端に枢結され、さらに、スイーパカバー23bの後端上部が左右両アタッチメントシリンダ15のピストンロッドの先端(下端)に枢結されることで、左右のリフトアーム10を含む作業装置4の本体4aに上下揺動可能に支持されている。
【0060】
さらに、スイーパ23には、油圧モータ24に作動油を供給するための作動油管25が備えられており、作動油管25の上端に形成されるカプラを、一方のリフトアーム10の曲折部10dに設けた前記AUXポート11に接続している。
【0061】
これにより、リフトアームシリンダ14やアタッチメントシリンダ15等に作動油を供給するために機体2内に設けられた油圧回路から、作業装置4に装着したスイーパ23の油圧モータ24へと、作動油を取り出して供給可能となっている。
【0062】
次に、
図2の油圧回路図を参照して、作業装置4及び作業装置4に装着したアタッチメント(本実施形態ではスイーパ23)の備える油圧アクチュエータを制御するためのCTL1の油圧システム30について説明する。
【0063】
図2に示すように、油圧システム30は、油圧ポンプ31、32を備えている。油圧ポンプ31、32は、ともに、原動機6の動力によって駆動され、共通のリザーバタンク33に貯留された油を吸入し、各々の吐出口より油を吐出する。
【0064】
油圧ポンプ31は、可変容量型のポンプである。本実施形態では、可動斜板式のアキシャルピストンポンプを油圧ポンプ31として適用しているが、可変容積型のポンプであればその他の構造のポンプでもよい。
【0065】
本実施形態の油圧ポンプ31は、可動斜板31aを有し、可動斜板31aの傾斜角度を
変更することで、吐出する油の流量(吐出流量D)を変更できる。さらに、原動機6の回転数を変更することによっても油圧ポンプ31の吐出流量Dを変更できる。
【0066】
油圧ポンプ32は、固定容量型のポンプであり、典型的にはギヤポンプである。なお、原動機6の出力回転数を変更することで、油圧ポンプ32の吐出する油の流量(吐出流量)を変更することはできる。
【0067】
なお、
図2では図略しているが、作業装置4の油圧アクチュエータ、すなわち、左右一対のクローラ走行装置5の備える一対の走行用油圧アクチュエータ(HST等)にも、油圧ポンプ32の吐出する作動油を供給する構成としてもよい。
【0068】
油圧ポンプ31は、CTL1の作業装置4が備える油圧アクチュエータ(すなわち、左右一対のリフトアームシリンダ14及び左右一対のアタッチメントシリンダ15)、及び、作業装置4に装着されたアタッチメントの有する油圧アクチュエータ(本実施形態では、スイーパ23の油圧モータ24)に供給される作動油を吐出する油圧ポンプである。
【0069】
機体2には、複数の油圧アクチュエータへの作動油供給を制御する複数の制御弁が備えられている、これら複数の制御弁のうち、
図2では、左右リフトアームシリンダ14に供給される作動油の流れを制御するリフトアーム制御弁41、左右アタッチメントシリンダ15に供給される作動油の流れを制御するアタッチメント制御弁42、AUXポート11に供給される作動油の流れを制御するAUX制御弁43が開示されている。
【0070】
油圧ポンプ31の吐出口より吐出油路34が延設されている。吐出油路34より分岐する分岐油路36がリフトアーム制御弁41のポンプポートに接続されている。吐出油路34における分岐油路36への分岐点の下流側の部分より分岐する分岐油路37がアタッチメント制御弁42のポンプポートに接続されている。吐出油路34における分岐油路37への分岐点の下流側の部分より分岐する分岐油路38がAUX制御弁43のポンプポートに接続されている。すなわち、制御弁41、42、43は、吐出油路34に対し、それぞれの分岐油路36、37、38を介して、並列状に接続されている。
【0071】
リフトアームシリンダ14は複動式油圧シリンダであり、その内部はピストンにてボトム(下端)側油室とロッド(上端)側油室とに分かれている。リフトアーム制御弁41より給排油路44、45が延設され、給排油路44が左右両リフトアームシリンダ14のロッド側油室に連通し、給排油路45が左右両リフトアームシリンダ14のボトム側油室に連通している。
【0072】
アタッチメントシリンダ15は複動式油圧シリンダであり、その内部はピストンにてロッド(下端)側油室とボトム(上端)側油室とに分かれている。アタッチメント制御弁42より給排油路46、47が延設され、給排油路46が左右両アタッチメントシリンダ15のボトム側油室に連通し、給排油路47が左右両アタッチメントシリンダ15のロッド側油室に連通している。
【0073】
AUX制御弁43より給排油路48、49が延設され、それぞれ、複数のAUXポート11のうちの該当する各ポートに接続されている。また、AUXポート11にスイーパ23(アタッチメント)の油圧モータ24(油圧アクチュエータ)が作動油管25(
図1参照)を介して流体接続される。
【0074】
なお、以下の油圧システム30の説明の中で、「リフトアーム10」は左右一対のリフトアーム10を指すものとし、「リフトアームシリンダ14」は左右一対のリフトアームシリンダ14を指すものとし、「アタッチメントシリンダ15」は左右一対のアタッチメ
ントシリンダ15を指すものとする。
【0075】
制御弁41、42、43は、スプールの両側にパイロット圧を受ける受圧部を有するパイロット圧制御式方向切換弁となっている。油圧ポンプ32は、制御弁41、42にパイロット圧油を供給するためのパイロット圧油ポンプである。
【0076】
図1、
図2に示す作業操作レバー8は、運転席7に座る作業者の手動操作により、前後方向に傾動することでリフトアーム10を機体2に対して上下に揺動(昇降)させるものであり、左右方向に傾動することでアタッチメント(本実施形態ではスイーパ23)をリフトアーム10に対し上下に回動させるものである。
【0077】
CTL1において、作業操作レバー8の基部の周囲には、操作弁51、52、53、54が配置されている。油圧ポンプ32の吐出口より吐出油路50が延設され、操作弁51、52、53、54に接続されている。
【0078】
操作弁51、52、53、54はそれぞれ、作業操作レバー8の傾動により作動して、油圧ポンプ32より吐出油路50を介して供給される油を、パイロット圧油として吐出する。
【0079】
作業操作レバー8を中立位置から前方に傾動すると、中立位置からの傾倒角度(操作量)に応じた量のパイロット圧油が操作弁51より吐出される。当該パイロット圧油は、パイロット油路55を介して、
図2ではリフトアーム制御弁41の上側の受圧部に供給されて、リフトアーム制御弁41のスプールを
図2で下方にシフトする。
【0080】
これにより、リフトアーム制御弁41から給排油路44を介してリフトアームシリンダ14のロッド側油室に作動油が供給され、リフトアームシリンダ14のボトム側油室から給排油路45を介してリフトアーム制御弁41に作動油が排出され、リフトアームシリンダ14が収縮してリフトアーム10が下降する。
【0081】
作業操作レバー8を中立位置から後方に傾動すると、中立位置からの傾倒角度(操作量)に応じた量のパイロット圧油が操作弁52より吐出される。当該パイロット圧油は、パイロット油路56を介して、
図2ではリフトアーム制御弁41の下側の受圧部に供給されて、リフトアーム制御弁41のスプールを
図2で上方にシフトする。
【0082】
これにより、リフトアーム制御弁41から給排油路45を介してリフトアームシリンダ14のボトム側油室に作動油が供給され、リフトアームシリンダ14のロッド側油室から給排油路44を介してリフトアーム制御弁41に作動油が排出され、リフトアームシリンダ14が伸長してリフトアーム10が上昇する。
【0083】
ここで、リフトアーム10の昇降速度は、リフトアーム制御弁41からリフトアームシリンダ14に供給される(給排油路44、45中の)作動油の流量により決まる。作業操作レバー8の前後方向の傾倒角度、すなわち操作量は、リフトアームシリンダ14への作動油の流量の設定値、すなわち、リフトアームシリンダ14への作動油の要求流量を意味する。
【0084】
操作弁51、52は、作業操作レバー8の前後傾動に伴って作動し、リフトアーム制御弁41からリフトアームシリンダ14への作動油の供給流量(実際値)が当該要求流量となるように、パイロット圧油をリフトアーム制御弁41に吐出するのである。
【0085】
すなわち、操作弁51、52は、リフトアームシリンダ14への供給流量が作業操作レ
バー8の前後回動操作により設定されるリフトアームシリンダ14への要求流量に一致するようにリフトアーム制御弁41の位置を制御する流量制御装置27を構成している。
【0086】
作業操作レバー8を中立位置から左方に傾動すると、中立位置からの傾倒角度(操作量)に応じた量のパイロット圧油が操作弁53より吐出される。当該パイロット圧油は、パイロット油路57を介して、
図2ではアタッチメント制御弁42の上側の受圧部に供給されて、アタッチメント制御弁42のスプールを
図2で下方にシフトする。
【0087】
これにより、アタッチメント制御弁42から給排油路46を介してアタッチメントシリンダ15のボトム側油室に作動油が供給され、アタッチメントシリンダ15のロッド側油室から給排油路47を介してアタッチメント制御弁42に作動油が排出され、アタッチメントシリンダ15が伸長してリフトアーム10に対してアタッチメント(本実施形態ではスイーパ23)が下方回動する。
【0088】
作業操作レバー8を中立位置から右方に傾動すると、中立位置からの傾倒角度(操作量)に応じた量のパイロット圧油が操作弁54より吐出される。当該パイロット圧油は、パイロット油路58を介して、
図2ではアタッチメント制御弁42の下側の受圧部に供給されて、アタッチメント制御弁42のスプールを
図2で上方にシフトする。
【0089】
これにより、アタッチメント制御弁42から給排油路47を介してアタッチメントシリンダ15のロッド側油室に作動油が供給され、アタッチメントシリンダ15のボトム側油室から給排油路46を介してアタッチメント制御弁42に作動油が排出され、アタッチメントシリンダ15が収縮して左右リフトアーム10に対してアタッチメント(本実施形態ではスイーパ23)が上方回動する。
【0090】
ここで、アタッチメントのリフトアーム10に対する上下回動速度は、アタッチメント制御弁42からアタッチメントシリンダ15に供給される(給排油路46、47中の)作動油の流量により決まる。作業操作レバー8の左右方向の傾倒角度、すなわち操作量は、アタッチメントシリンダ15への作動油の流量の設定値、すなわち、アタッチメントシリンダ15への作動油の要求流量を意味する。
【0091】
操作弁53、54は、作業操作レバー8の左右傾動に伴って作動し、アタッチメント制御弁42からアタッチメントシリンダ15への作動油の供給流量(実際値)が当該要求流量となるように、パイロット圧油をアタッチメント制御弁42に吐出するのである。
【0092】
すなわち、操作弁53、54は、アタッチメントシリンダ15への供給流量が作業操作レバー8の左右回動操作により設定されるアタッチメントシリンダ15への要求流量に一致するようにアタッチメント制御弁42の位置を制御する流量制御装置28を構成している。
【0093】
なお、作業操作レバー8は、中立位置から斜め四方にも傾動可能であってもよく、これら斜め方向の傾動により、左右リフトアーム10の昇降とアタッチメント(スイーパ23)の上下回動とを同時に行うことができるものとしてもよい。
【0094】
この場合、例えば、作業操作レバー8を中立位置から前左方に傾動することでリフトアーム10を下降しつつアタッチメントを下方回動し、作業操作レバー8を中立位置から前右方に傾動することでリフトアーム10を下降しつつアタッチメントを上方回動し、作業操作レバー8を中立位置から後左方に傾動することでリフトアーム10を上昇しつつアタッチメントを下方回動し、作業操作レバー8を中立位置から後右方に傾動することでリフトアーム10を上昇しつつアタッチメントを上方回動するものとしてもよい。
【0095】
図2に示すように、本実施形態において作業装置4に装着されるアタッチメントとしてのスイーパ23の油圧モータ24が作動油管25(
図1参照)等を介してAUXポート11に流体接続されている。
【0096】
スイーパ23(アタッチメント)の備える油圧モータ24(油圧アクチュエータ)への作動油の供給のON・OFFや油圧モータ24(油圧アクチュエータ)に供給される作動油の流量及び流れ方向等は、前述の如く運転席7の周囲に設けられたAUX操作スイッチ9の操作により制御できる。
【0097】
油圧システム30は、AUX制御弁43の位置制御用の電磁弁59、60を備えている。電磁弁59、60は、AUX操作スイッチ9の操作に基づき、制御装置(流量制御装置)26により制御される。
【0098】
AUX操作スイッチ9は、例えば、揺動自在なシーソー型スイッチ、摺動自在なスライド型スイッチ、或いは、押圧自在なプッシュ型スイッチで構成されている。制御装置26は、CPU、MPU、メモリ等を含む電気電子回路等から構成されている。
【0099】
AUX操作スイッチ9は、制御装置26の入力インタフェースに電気接続されている。AUX操作スイッチ9が操作されると、その操作方向及び操作量に応じた電気信号である入力信号が、AUX操作スイッチ9より出力され、制御装置26に入力される。
【0100】
例えば、AUX操作スイッチ9がスライド型スイッチであれば、その摺動方向(操作方向)及び摺動量(操作量)に対応する入力信号が制御装置26に入力される。
【0101】
電磁弁59及び電磁弁60は、制御装置26の出力インタフェースに電気接続されている。制御装置26は、AUX操作スイッチ9からの電気信号に応じて、制御信号CS1としての電流を電磁弁59、60に出力する。なお、「電磁弁59、60」は、特別の記述のない限り「電磁弁59及び/又は電磁弁60」を意味するものとする。
【0102】
電磁弁59、60には、AUX制御弁43へのパイロット圧油となる油として、例えば、吐出油路34を介して油圧ポンプ31より吐出される作動油が供給される。なお、AUX制御弁43へのパイロット圧油となる油の電磁弁59、60への供給元については
図2で図略されている。
【0103】
電磁弁59、60は、それぞれ、初期の閉弁状態から、制御装置26から出力された制御信号CS1によりソレノイドが励磁されるにつれて開口し、AUX制御弁43へのパイロット圧油として、供給された油を吐出する。
【0104】
AUX操作スイッチ9のON・OFFや操作方向等により、電磁弁59、60のうちのいずれに制御信号CS1が制御装置26より出力されるか(あるいはいずれにも出力しないか)が決定される。
【0105】
また、制御信号CS1は、電磁弁59、60それぞれの、AUX制御弁43へのパイロット圧油吐出口の開口量が、AUX操作スイッチ9の操作量に応じたものとなるように設定されている。
【0106】
電磁弁59が制御信号CS1を受けると、電磁弁59よりパイロット油路61を介して、
図2ではAUX制御弁43の上側の受圧部にパイロット圧油が供給されて、AUX制御弁43を
図2で下方にシフトする。
【0107】
これにより、AUX制御弁43から給排油路48及びAUXポート11(複数のAUXポート11のうちの該当のポート。以下、「AUXポート11」について同様とする)を介して、スイーパ23(アタッチメント)の油圧モータ24(油圧アクチュエータ)に作動油が供給され、油圧モータ24よりAUXポート11及び給排油路49を介してAUX制御弁43に作動油が戻される。これにより油圧モータ24が第1回転方向に回転し、それに対応する方向に回転ブラシ23aが回転する。
【0108】
電磁弁60が制御信号CS1を受けると、電磁弁60よりパイロット油路62を介して、
図2ではAUX制御弁43の下側の受圧部にパイロット圧油が供給されて、AUX制御弁43を
図2で上方にシフトする。
【0109】
これにより、AUX制御弁43から給排油路49及びAUXポート11を介して、スイーパ23(アタッチメント)の油圧モータ24(油圧アクチュエータ)に作動油が供給され、油圧モータ24よりAUXポート11及び給排油路48を介してAUX制御弁43に作動油が戻される。これにより油圧モータ24が第1回転方向とは逆の第2回転方向に回転し、それに対応する方向に回転ブラシ23aが回転する。
【0110】
ここで、油圧モータ24の回転速度は、AUX制御弁43から油圧モータ24に供給される(給排油路48、49中の)作動油の流量により決まる。AUX操作スイッチ9の操作量は、油圧モータ24への作動油の流量の設定値、すなわち、油圧モータ24への作動油の要求流量を意味する。
【0111】
したがって、制御装置26は、AUX操作スイッチ9からの入力信号より当該要求流量を読み取り、AUX制御弁43から油圧モータ24への作動油の供給流量(実際値)が当該要求流量(設定値)と一致するように制御信号CS1を電磁弁59、60に出力するのである。
【0112】
吐出油路34における分岐油路36への分岐点の上流側の部分よりブリードオフ油路35が分岐している。ブリードオフ油路35上の流量調整弁39により、油圧ポンプ31より吐出されて吐出油路34を流れる作動油の流量が、リフトアーム制御弁41への分岐油路36への分岐点に至るまでに調整される。ブリードオフ油路35はリザーバタンク33に至るものであり、流量調整弁39よりリリースされる油は、ブリードオフ油路35を介してリザーバタンク33へと回収される。
【0113】
流量調整弁39の下流側にて、ブリードオフ油路35に、リフトアーム制御弁41のタンクポートからのドレン油路63が接続されている。また、ドレン油路63との接続点の下流側にて、ブリードオフ油路35に、アタッチメント制御弁42のタンクポートからのドレン油路64が接続されている。さらに、ドレン油路64との接続点の下流側にて、ブリードオフ油路35に、AUX制御弁43のタンクポートからのドレン油路65が接続されている。
【0114】
なお、制御弁41、42、43と油圧アクチュエータ(リフトアームシリンダ14、アタッチメントシリンダ15、油圧モータ24)との間に介設される各給排油路44~49とブリードオフ油路35との間にも、各別の流量調整弁40が介設されており、これにより、各給排油路44~49を流れる油圧アクチュエータ駆動用の作動油の流量が調整される。
【0115】
さらに、ブリードオフ油路35におけるドレン油路65との接続点の下流側の部分と、操作弁51~54との間に、連通油路66が介設されている。これにより、各制御弁41
、42、43のタンクポートから排出された油及び各流量調整弁39、40よりリリースされた油が合流してなるブリードオフ油路35内の油流を、連通油路66を介して操作弁51~54へと導入することが可能であり、また、逆に、連通油路66を介して、操作弁51~54より排出される油を、ブリードオフ油路35内の油流に合流させることも可能である。
【0116】
なお、電磁弁59、60と連通油路66との間に連通油路67が介設されており、連通油路67を介して、電磁弁59、60より連通油路66に油を排出可能であり、また、連通油路66より電磁弁59、60へと油を導入可能である。
【0117】
油圧システム30は、CTL1で行う作業に応じて油圧ポンプ31の吐出流量を制御するポンプ制御装置としてのロードセンシング(LS)システム70を備えている。より詳しく言うと、LSシステム70は、所定のロードセンシング(LS)差圧を設定しており、油圧ポンプ31の吐出圧が、作業用油圧アクチュエータの最高負荷圧よりもLS差圧分高くなるよう、油圧ポンプ31の吐出流量を制御するものである。
【0118】
LSシステム70は、圧力補償弁71、72、73、油路74、75、76、流量補償弁77、斜板制御アクチュエータ78を備えている。
【0119】
各圧力補償弁71、72、73は、各制御弁41、42、43にそれぞれ流体接続されている。各制御弁41、42、43は、それぞれに接続される該当の油圧アクチュエータを作動させている時は、吐出油路34より導入した作動油を、該当の圧力補償弁71、72、73を介して、該当の油圧アクチュエータへと供給する。
【0120】
作動油の圧力補償弁71、72、73の通過状況に応じて、該当の油圧アクチュエータの最高負荷圧が検出され、検出した圧力に相当するパイロット圧油が、油路74を介して流量補償弁77へと導出される。
【0121】
一方、油圧ポンプ31の吐出口より延設される吐出油路34(詳しくは、吐出油路34におけるブリードオフ油路35への分岐点より上流側の部分)より油路75が分岐しており、油圧ポンプ31の吐出する作動油の一部を、油路75を介して流量補償弁77に導入可能となっている。
【0122】
流量補償弁77は油路76を介して斜板制御アクチュエータ78と流体接続されている。油圧ポンプ31は可動斜板31aを備えている。斜板制御アクチュエータ78は、油圧シリンダであり、そのピストンロッドを可動斜板31aに連結している。このピストンロッドの伸縮により、可動斜板31aの傾倒角度を変更し、油圧ポンプ31の吐出流量Dを変更する。
【0123】
流量補償弁77は、流量補償弁77を初期位置(斜板制御アクチュエータ78への油供給量を0とする位置)へと付勢するLS差圧設定バネ77a(以下、単に「バネ77a」)を有している。バネ77aのバネ力は、LSシステム70において設定される目標ロードセンシング(LS)差圧P0に該当する。
【0124】
目標LS差圧P0とは、各油圧アクチュエータ14、15、24により作動油にかかる負荷圧のうちの最高負荷圧P1と、油圧ポンプ31の吐出圧P2との間の差圧P3の目標値である。言い換えれば、油圧システム30においては、油圧ポンプ31の吐出圧P2が常に最高負荷圧P1よりも目標LS差圧P0の分だけ高い油圧状態である(P2=P1+P0)ことが求められ、LSシステム70は、このように求められる油圧状態を常時確保するシステムである。
【0125】
流量補償弁77は、最高負荷圧P1に該当する油路74からのパイロット油圧と吐出圧P2に該当する油路75内の油圧との間の差圧P3と、バネ77aのバネ力(目標LS差圧P0)とが釣り合う位置に位置決めされ、その位置に対応する量の油を斜板制御アクチュエータ78へと供給する。
【0126】
斜板制御アクチュエータ78は、流量補償弁77より供給される油量に応じたストロークでピストンロッドを伸長させ、可動斜板31aの傾倒角度を当該ストロークに対応する角度に設定する。油圧ポンプ31は可動斜板31aの傾倒角度に対応する吐出流量Dで作動油を吐出する。
【0127】
最高負荷圧P1が大きくなり差圧P3が小さくなると、流量補償弁77は、差圧P3を上回るバネ77aの付勢力により、斜板制御アクチュエータ78への供給油量を増加する方向に移動し、これにより可動斜板31aの傾倒角度を増加し、吐出流量Dを増加することで吐出圧P2を増加する。可動斜板31aの傾倒角度は、差圧P3とバネ77aの付勢力とが釣り合うまで、すなわち、差圧P3が目標LS差圧P0となるまで増加される。
【0128】
最高負荷圧P1が小さくなり差圧P3が大きくなると、流量補償弁77は、バネ77aのバネ力を上回る差圧P3の付勢力により、斜板制御アクチュエータ78への供給油量を減少する方向に移動し、これにより可動斜板31aの傾倒角度を減少し、吐出流量Dを減少することで吐出圧P2を低減する。可動斜板31aの傾倒角度は、差圧P3とバネ77aの付勢力とが釣り合うまで、すなわち、差圧P3が目標LS差圧P0となるまで減少される。
【0129】
LSシステム70は、さらに、目標LS差圧P0を変更可能となっている。より詳しくは、LSシステム70は、原動機6の回転数、負荷、温度等に応じて、目標LS差圧P0を調整できる構造となっている。この構造について説明する。
【0130】
流量補償弁77は、圧力調整アクチュエータ79に連動連係されている。圧力調整アクチュエータ79は、油圧シリンダであって、そのシリンダ内の油室を、油路82を介してリザーバタンク33に流体接続している。
【0131】
また、油圧シリンダである圧力調整アクチュエータ79のピストンロッドを流量補償弁77に連結している。このピストンロッドの伸縮により、流量補償弁77のバネ77aのバネ力と差圧P3とが釣り合う流量補償弁77の位置を変更し、これにより目標LS差圧を変更する。
【0132】
一方、吐出油路50より分岐油路80が分岐し、油路82に接続されている。分岐油路80上には、電磁弁81が設けられている。電磁弁81は制御装置26の出力インタフェースに電気接続されており、電磁弁81のソレノイドは制御装置26より出力される制御信号CS2を受けて励磁される。
【0133】
制御信号CS2に応じて電磁弁81の開口度が調整され、その開口度に応じた量の油が、電磁弁81より油路82を介して圧力調整アクチュエータ79の油室へと供給される。この油室への油の供給量に応じて圧力調整アクチュエータ79のピストンロッドの伸長ストロークが決まる。
【0134】
なお、吐出油路50上にはラインフィルタ84が設けられており、ラインフィルタ84の下流側にて、吐出油路50より分岐油路80が分岐している。また、油圧ポンプ32の吐出口より延設される吐出油路50には、流量調整弁83が流体接続されており、油圧ポ
ンプ32より吐出油路50内へと吐出される油は、流量調整弁83により流量を調整され、ラインフィルタ84を通過した後に、その一部が分岐油路80へと分流する。
【0135】
制御装置26の入力インタフェースには、原動機回転数検出装置85、温度検出装置86、一対の走行速度設定操作装置87が電気接続されている。
【0136】
原動機回転数検出装置85は、原動機6の出力回転数を検出する。温度検出装置86は、油圧システム30にて循環される作動油の油温、原動機6が内燃機関等である場合のエンジンオイルの油温、或いは、原動機6等を冷却するための冷却水の水温等の温度を検出する。
【0137】
制御装置26には、原動機回転数検出装置85の検出した回転数に応じた検出信号(電気信号)や、温度検出装置86の検出した温度に応じた検出信号(電気信号)が入力される。
【0138】
また、一対の走行速度設定操作装置87は、左右一対の走行装置5それぞれの走行駆動速度(詳しくは、各走行装置5の備えるそれぞれの油圧アクチュエータ(油圧モータ、HST等)の出力回転数)を設定するためのものであって、運転席7に座る作業者によって操作されよう、キャビン3内に設けられている。
【0139】
各走行速度設定操作装置87が作業者により操作されると、その操作量に応じた入力信号(電気信号)が、制御装置26に送信される。各走行速度設定操作装置87は、例えば足踏みペダルであり、この場合、その踏込み量が操作量に該当する。
【0140】
制御装置26は、原動機回転数検出装置85、温度検出装置86、一対の走行速度設定操作装置87から入力された電気信号に基づき、目標LS差圧P0を変更する必要があるか否かを判断し、変更する必要があると判断すればその変更量を算出する。
【0141】
なお、これらの入力装置85、86、87からの入力信号に基づき、例えばエンジンの負荷状態を表す指数(負荷率)を演算し、その演算値に応じて、目標LS差圧P0の変更の要否の判断および変更量を算出するものとしてもよい。
【0142】
制御装置26は、算出した変更量に応じた制御信号CS2を電磁弁81のソレノイドに送信してソレノイドを励磁する。電磁弁81は、制御装置26が算出した変更量に応じた開口量で開口し、吐出油路50より分岐油路80及び油路82を介して、圧力調整アクチュエータ79へと油を供給する。
【0143】
この供給油量に応じて、圧力調整アクチュエータ79のピストンロッドが伸長し、その伸長量に応じて、バネ77aのバネ力と差圧P3とが釣り合う流量補償弁77の位置が変更される。すなわち、目標LS差圧P0が変更される。
【0144】
油圧システム30においては、以上の如き構成のLSシステム70が、例えば複数の油圧アクチュエータを作動させるために作動油の要求流量が増加した場合に、最高負荷圧の増加等に伴って油圧ポンプ31の吐出流量Dを最大吐出流量Dmまでは増大させて各油圧アクチュエータへの供給流量をそれぞれの要求流量に近づけるように機能する。
【0145】
さらに、油圧システム30は、アタッチメントの有する油圧アクチュエータとリフトアームシリンダ14とを同時に作動する場合のように、複数の油圧アクチュエータへの作動油の要求流量の総和が最大吐出流量を超える場合に対応して作動油の流量を制御するための特殊流量制御システム90を備えている。
【0146】
以下、
図1~5を参照して、アタッチメントとしてのスイーパ23の回転ブラシ23aを駆動しつつリフトアーム10を昇降する場合に対応する特殊流量制御システム90について説明する。
【0147】
特殊流量制御システム90は、AUX制御弁43を制御する電磁弁59、60及び目標LS差圧変更用の電磁弁81に制御信号CS1、CS2を出力する制御装置26を用いる。
【0148】
特殊流量制御システム90は、
図2に示すように、制御装置26に電気信号を入力する入力装置として、AUXポート11(油圧モータ24)への作動油の要求流量R1を検出する第1要求流量検出装置91と、リフトアームシリンダ14への作動油の要求流量R2を検出する第2要求流量検出装置92と、給排油路48、49中を流れる実際の作動油の供給流量Q1を検出する第1供給流量検出装置93と、給排油路44、45中を流れる実際の作動油の供給流量Q2を検出する第2供給流量検出装置94と、吐出油路34中を流れる実際の油圧ポンプ31からの作動油の吐出流量を検出する吐出流量検出装置95を備えている。
【0149】
なお、第1要求流量検出装置91は、AUX操作スイッチ9の操作量(スライド型スイッチである場合はその摺動量)を測るものであり、
図2に示すAUX操作スイッチ9と重複してもよいものとする。また、第2要求流量検出装置92は、作業操作レバー8の操作量(前後方向の傾倒角度)を測るものであり、角度センサ等で構成することが考えられる。操作弁51、52の操作位置を検出するものであってもよい。
【0150】
制御装置26は、演算部26a及び信号生成部26bを備えている。演算部26aでは検出装置91~95からの入力信号に基づき、後述の総要求流量SRや限定要求流量R1a等を算出する。信号生成部26bでは、演算部26aにおける演算値等に基づいて、電磁弁59、60、81のうちのいずれかに出力される制御信号CS1、CS2を生成する。
【0151】
なお、「要求流量」には、厳密には、作業者が任意で入力装置である操作部材(作業操作レバー8、AUX操作スイッチ9)を操作することで設定される要求流量(「入力要求流量」とする)の意味と、油圧アクチュエータへの作動油の供給流量を制御する制御弁(リフトアーム制御弁41、AUX制御弁43)の位置制御のために出力される制御信号(パイロット圧、電気信号)に相当する要求流量(「出力要求流量」とする)の意味とが含まれる。
【0152】
通常、制御弁に対して出力する制御信号(パイロット圧、電気信号)に相当する出力要求流量を入力要求流量に一致させるものなので、特に区別することなく「要求流量」と称している。しかし、本実施形態に係る特殊流量制御システム90においては、AUX操作スイッチ9で設定した要求流量(入力要求流量)とは異なる(より詳しくは、入力要求流量よりも低い)値の要求流量(出力要求流量)に対応する制御信号CS1を出力する。
【0153】
そこで、AUXポート11に流体接続される油圧モータ24への供給流量Q1の制御に関しては、AUX操作スイッチ9の操作で設定される入力要求流量を単に「要求流量R1」とし、制御装置26より出力される制御信号CS1に対応する出力要求流量を「出力要求流量R1out」とする。
【0154】
ここでまず、特殊流量制御システム90が対応する状況について説明する。CTL1は、路面等の清掃作業に際しては、スイーパ23を作業装置4に装着し、左右一対のリフトアーム10を
図1に示すような最下げ位置に配置し、左右リフトアーム10の前端に取り付けたスイーパ23の回転ブラシ23aを接地させた状態で、回転ブラシ23aを回転させながら、左右一対の走行装置5を駆動し走行する。
【0155】
こうしてCTL1が清掃作業をする中で、方向転換等のためにリフトアーム10を上昇する必要がある一方で、回転ブラシ23aの回転については、方向転換等が終了してリフトアーム10を下降させてからすぐに清掃作業を再開できるように、回転ブラシ23aの駆動を停止させたくない場合もある。
【0156】
これは、回転ブラシ23aがある速度で回転するようにAUX操作スイッチ9をON設定したままで、作業者が作業操作レバー8を後方に傾動させた場合に該当する。すなわち、AUX操作スイッチ9の操作量に応じて0を超える量の要求流量(入力要求流量)R1が設定され、且つ、作業操作レバー8の操作量(中立位置からの後方傾倒角度)に応じて0を超える量の要求流量(入力要求流量)R2が設定される場合である。
【0157】
この場合、吐出油路34からは、油圧ポンプ31にて吐出圧のかかった作動油が、分岐油路36、38を介して、制御弁41、43へと均等な圧力で分配供給され、リフトアーム制御弁41からは要求流量R2に等しい流量の作動油がリフトアームシリンダ14へと供給され、AUX制御弁43からは要求流量R1に等しい流量の作動油がAUXポート11を介してスイーパ23の油圧モータ24へと供給される。
【0158】
すなわち、リフトアーム制御弁41は、操作弁51、52からのパイロット圧により、両リフトアームシリンダ14への作動油の供給流量Q2を、要求流量R2と等しくなるように制御し、AUX制御弁43は、電磁弁59、60への制御信号CS1に相当する出力要求流量R1outをAUX操作スイッチ9で設定された要求流量(入力要求流量)R1と等しいものとし、この制御信号CS1にて制御する電磁弁59、60からのパイロット圧により、油圧モータ24への作動油の供給流量Q1を、要求流量R1と等しくなるように制御する。
【0159】
しかし、要求流量R1、R2の合計である総要求流量SRが、油圧ポンプ31の最大吐出流量Dmを超えると、吐出油路34から各制御弁41、43に供給される作動油の流量が不足し、リフトアーム制御弁41からリフトアームシリンダ14への供給流量Q2は要求流量R2を下回り、AUX制御弁43から油圧モータ24への供給流量Q1は要求流量R1を下回る。
【0160】
この事態を回避すべく、特殊流量制御システム90は、同時に作動する油圧アクチュエータのうち優先度が低い方の油圧アクチュエータへの要求流量を、該当の操作部材にて設定された要求流量よりも低い値に設定し直し、その油圧アクチュエータへの供給流量を少なくすることで、優先度の高い方の油圧アクチュエータへの供給流量が要求流量を満たすようにしている。
【0161】
スイーパ23での作業中であれば、上述のように、回転ブラシ23aの駆動中に方向転換等のためにリフトアーム10を上昇させた時の状況に該当する。この場合、リフトアーム10の上昇については作業者が要求した速度で上昇することが求められる一方で、回転ブラシ23aはリフトアーム10の上昇中については使われることがないので、作業時に要求されるような駆動速度で回転する必要はない。
【0162】
そこで、油圧モータ24への供給流量Q1を低減させ、その分、リフトアームシリンダ14への供給流量Q2を増加させて要求流量R2へと近づけ又は到達させるものである。
【0163】
なお、油圧モータ24への供給流量Q1が減ると、吐出油路34から分岐油路38への作動油の流量が減るので、その分、分岐油路38とは並列状に吐出油路34に接続される分岐油路36を介して、吐出油路34からリフトアーム制御弁41へと供給される作動油の流量は自然に増加し、リフトアーム制御弁41からリフトアームシリンダ14への作動油の供給流量Q2も、要求流量R2へと近づくように(あるいは要求流量R2に到達するまで)自然に増加する。
【0164】
供給流量Q1を低減する方法としては、AUX制御弁43を制御する電磁弁59、60への制御信号CS1の値(デューディー比等)を低減する等して、供給流量Q1を低減する方向にAUX制御弁43をシフトする、すなわち、制御信号CS1に相当する出力要求流量R1outを一時的にAUX操作スイッチ9にて設定されている要求流量(入力要求流量)R1よりも低い値に減少させるものである。
【0165】
ここで、
図3により、要求流量R1、R2の合計である総要求流量SRが最大吐出流量Dmを上回る場合に対応しての、要求流量R1から限定要求流量R1aまでの出力要求流量R1outの減少パターンと、出力要求流量R1outの減少に伴う供給流量Q1の変化と、それによるリフトアームシリンダ14への供給流量Q2の増量作用について説明する。
【0166】
図3では、出力要求流量R1out、各供給流量Q1、Q2、及び総供給流量SQ(供給流量Q1、Q2の合計)の経時変化が、時間T(単位は例えば「秒」)を横軸、流量Q(単位は例えば「ml」)を縦軸にしての折れ線グラフにて示されている。なお、出力要求流量R1outの変化を鎖線で描いており、各供給流量Q1、Q2、及び総供給流量SQの変化を実線で描いている。また、図示や説明の便宜上、作業操作レバー8にて設定される要求流量R1とAUX操作スイッチ9にて設定される要求流量R2とが等しい値であることを前提としている。
【0167】
要求流量R1、R2の合計である総要求流量SRが最大吐出流量Dmを上回るとき、当初、要求流量R1に達するまでには供給流量Q1が不足流量LR1だけ不足し、要求流量R2に達するまでには供給流量Q2が不足流量LR2だけ不足しているものとする。このとき、最大吐出流量Dmに等しい総供給流量SQが総要求流量SRに達するまでの不足流量は、LR1とLR2との合計(LR1+LR2)である。
【0168】
この状態において、制御装置26は、演算部26aにて、要求流量R1、R2の合計である総要求流量SRと最大吐出流量Dmとを比較し、例えば時点T10において、総要求流量SRが最大吐出流量Dmを上回ると判定すると、油圧ポンプ31の最大吐出流量Dmとリフトアームシリンダ14について設定されている要求流量R2との差(Dm-R2)以下の値である限定要求流量R1aを算出する。
【0169】
制御装置26は、信号生成部26bにて、当初、要求流量R1に等しい値の出力要求流量R1outに対応する制御信号CS1を生成し、電磁弁59又は電磁弁60へと制御信号CS1を出力する。前記限定要求流量R1aを算出して以後は、出力要求流量R1outを、限定要求流量R1aまで徐々に(すなわち、ある程度の時間(
図3で時点T0から時点T3までの時間)をかけて)減少させ、この出力要求流量R1outの減少に応じて、電磁弁59又は電磁弁60へと出力する制御信号CS1を変化させていく。
【0170】
この出力要求流量R1outの減少に相当する制御信号CS1の変化に応じて、AUX制御弁43のスプールが、供給流量Q1を減少させる方向に徐々に移動する。なお、出力要求流量R1outが、要求流量R1より不足流量LR1だけ不足した当初の実際の供給流量Q1と等しい値(R1-LR1)まで減少するまで(時点T10から時点T11まで
)は、供給流量Q1、Q2とも当初の値(R1-LR1)、(R2-LR2)のままである。
【0171】
そして、出力要求流量R1outがさらに減少し、供給流量Q1の当初値(R1-LR1)よりも低い値へと減少する(時点T1の後)と、この出力要求流量R1outの減少に対応してAUX制御弁43のスプールが移動するのに伴って供給流量Q1が減少する。
【0172】
前述の如く、吐出油路34に分岐油路36、38が並列状に接続されている構造により、吐出油路34内における最大吐出流量Dmの作動油がリフトアーム制御弁41及びAUX制御弁43により共有されるので、リフトアーム制御弁41からリフトアームシリンダ14への作動油の供給流量Q2は、AUX制御弁43から油圧モータ24への供給流量Q1が減少した分、増加する。なお、供給流量Q2は、要求流量R2に達するまでの不足流量LR2の分、増量の余地がある。
【0173】
出力要求流量R1outがさらに減少し、AUX制御弁43のスプールの移動に伴って供給流量Q1が減少するにつれ、供給流量Q2はさらに増加し、やがて、供給流量Q1が最大吐出流量Dmと要求流量R2との差(Dm-R2)に等しい値まで減少した時点(
図3で時点T
12)で、供給流量Q2は要求流量R2に到達する。その後は、リフトアームシリンダ14に対し、要求流量R2に等しい供給流量Q2の作動油が供給され、作業操作レバー8で設定されたとおりの速度でリフトアーム10が上昇する。
【0174】
なお、本実施形態では、限定要求流量R1aが最大吐出流量Dmと要求流量R2との差(Dm-R2)よりも小さい値に設定されているため、リフトアームシリンダ14に要求流量R2に等しい供給流量Q2が供給されるようになってから(時点T12の後)も、減少される出力要求流量R1outが限定要求流量R1aに至るまで(時点T13まで)は供給流量Q1の減少が続く。
【0175】
出力要求流量R1outが限定要求流量R1aに至った後(時点T13の後)は、限定要求流量R1aに等しい値の供給流量Q1の作動油が油圧モータ24に供給され続けることとなる。すなわち、作業操作レバー8及びAUX操作スイッチ9の操作位置(操作状態)が保持され、要求流量R1、R2が設定された値のままで保持される限り、リフトアームシリンダ14には要求流量R2どおりの供給流量Q2の作動油が供給されて、リフトアーム10が作業者の所望の速度での動作を続ける一方、油圧モータ24には要求流量R1より低い限定要求流量R1aに等しい値の供給流量Q1の作動油が供給されて、回転ブラシ23aは回転速度を抑えられた状態で回転し続ける。
【0176】
以上の如く、供給流量Q1を減少させる方向にAUX制御弁43をシフトすることにより、リフトアームシリンダ14にはリフトアーム制御弁41より要求流量R2どおりかそれに近い流量の作動油が供給され、リフトアーム10は、作業操作レバー8で設定したとおりかそれに近い速度で上昇する。このリフトアーム10の上昇中に、スイーパ23の回転ブラシ23aは、回転し続けるも、供給流量Q1の減少につれ、その回転速度を低下させる。
【0177】
なお、供給流量Q1の減少については、必ずしも供給流量Q2を要求流量R2に到達させるレベルまで減少させる必要はない。例えば、供給流量Q1を徐々に減少させれば、供給流量Q2も徐々に増加するので要求流量R2に達するまでにリフトアーム10が目的の位置に達することもあり、その時点で供給流量Q1のそれ以上の減少を停止させてもよい。
【0178】
また、供給流量Q2が要求流量R2まで達しなくてもそれに近い値になれば作業者にと
っては満足であることも考えられるので、例えば、限定要求流量R1aを、最大吐出流量Dmと要求流量R2との差(Dm-R2)以下のような低い値にしなくてもよく、要求流量R1よりも低い値であって、且つ供給流量Q2を要求流量R2に近い値にまで増加できるような値であってもよい。
【0179】
すなわち、特殊流量制御システム90は、総要求流量SRが最大吐出流量Dmを超えると判断すると、少なくとも、供給流量Q2を要求流量Q2へと近づけるように供給流量Q1を減少させるものであってもよい。
【0180】
なお、スイーパ23の油圧モータ24への実際の供給流量Q1の減少は、リフトアームシリンダ14への実際の供給流量Q2を増加し要求流量R2に到達させる効果以外に、AUX制御弁43に接続される圧力補償弁73の耐久性を向上するという効果ももたらす。
【0181】
すなわち、供給流量Q1が高いままだと、圧力補償弁73にはそれだけの流量の作動油が通過するため、圧力補償弁73が高温化し、それだけ耐久性を減退させるが、実際の供給流量Q1を減少することによって、圧力補償弁73を通過する作動油の流量も減り、圧力補償弁73の高温化も抑えられるのである。
【0182】
なお、前述の如く、特殊流量制御システム90は、要求流量R1から限定要求流量R1aまでの出力要求流量R1outの減少を、ある程度時間をかけて(すなわち徐々に)行うことにより、AUXポート11への作動油の供給流量Q1の減少(スイーパ23の回転ブラシ23aの回転速度の低下)を、ある程度時間をかけて(すなわち徐々に)行うものとしている。
【0183】
これは、急に供給流量Q1を減少させると、回転ブラシ23aが急に速度低下するのを、作業者がスイーパ23の異常事態(故障)と解釈してしまい、不必要にCLT1の運転を停止してしまう等、誤操作等にもつながる可能性があるからである。
【0184】
この出力要求流量R1outの、要求流量R1から限定要求流量R1aへの減少パターンとしては、例えば、一定の減少率(単位時間当たりの減少量)での減少とすることが考えられる。
図3では、この出力要求流量R1outの減少パターンが、一定の傾きを有する傾斜状の直線グラフで表されている。そして、出力要求流量R1outの減少に起因する供給流量Q1の減少、供給流量Q2の増加、及び総供給流量SQの変化(減少)も、一定の傾きを有する傾斜状の直線で表されていることがわかる。
【0185】
或いは、出力要求流量R1outを、要求流量R1から限定要求流量R1aまで、段階的に減少することが考えられる。この場合の出力要求流量R1outの変化を、
図3と同様に横軸を時間T、縦軸を流量Qとしてグラフ化すれば、
図4に示すように、階段状の折れ線グラフ(
図4では鎖線グラフ)となる。
【0186】
なお、
図4でも、
図3と同様に、出力要求流量R1outの変化に伴っての各供給流量Q1、Q2及び総供給流量SQ(供給流量Q1、Q2の合計)の変化を示しているが、出力要求流量R1outの段階的な減少に起因するこれらの変化(供給流量Q1の減少、供給流量Q2の増加、総供給流量SQの減少)も、階段状の折れ線(
図4では実線グラフ)で表されていることがわかる。
【0187】
すなわち、
図4の実施形態では、総要求流量SRが最大吐出流量Dmを上回ると判定された時点T
20から出力要求流量R1outが段階的に徐々に減少する。段階的に減少される出力要求流量R1outが当初の実際の供給流量Q1と等しい値(R1-L
R1)になるまで、供給流量Q1、Q2はともに当初の値(R1-L
R1)、(R2-L
R2)の
ままである。
【0188】
供給流量Q1は、出力要求流量R1outが、供給流量Q1の当初値(R1-LR1)よりも低い値へと減少する段階(時点T21)に伴って、AUX制御弁43のスプールが移動することで、一段階低い値まで減少する。この供給流量Q1の減少により、供給流量Q2が一段高い値へと増加する。以後、出力要求流量R1outが段階的に減少するにつれ、供給流量Q1が段階的に減少し、これにより、供給流量Q2が段階的に増加する。
【0189】
やがて、出力要求流量R1outが、限定要求流量R1aまで減少した段階(時点T22)にて、供給流量Q1は限定要求流量R1aへと一段減少し、それに伴って、供給流量Q2は増加して要求流量Q2に到達する。以後、要求流量R1、R2の設定が続く限り、リフトアームシリンダ14には要求流量R2に等しい値の供給流量Q2の作動油が供給され続け、油圧モータ24には要求流量R1より低い値の限定要求流量R1aに等しい値の供給流量Q1の作動油が供給され続ける。
【0190】
なお、本実施形態においては、上述のような段階的な供給流量Q1の減少とすることで、例えば、限定要求流量R1aを算出して設定しなくても、一定量の供給流量Q1での作動油の供給が一定時間経過するごとに、供給流量Q2が要求流量R2に到達したか否かを見て、到達していなければ供給流量Q1を一段階低い値にしてその値の作動油の供給を一定時間持続させ、到達していればそれ以上の供給流量Q1の減少を停止するという形態で、供給流量Q1を徐々に減少させることもできる。
【0191】
なお、
図3又は
図4に見られる出力要求流量R1outのグラフを、制御装置26が信号生成部26bで制御信号CS1を生成するのに用いられるマップとしてもよい。また、制御装置26内に構成した記憶部や、制御装置26に外付けされた(或いは、リモート接続された)記憶装置に、このようなマップを記憶させるものとしてもよい。
【0192】
リフトアーム10を上方揺動してスイーパ23を上昇させ、方向転換等、目的の動作を終了した後は、作業者は作業操作レバー8を操作し、リフトアームシリンダ14のピストンロッドを収縮してリフトアーム10を
図1に示す最下げ位置まで下降し、スイーパ23の回転ブラシ23aを接地させる。制御装置26は、回転ブラシ23aが接地する時、或いはその直前又は直後に、回転ブラシ23aの回転速度を、元々のAUX操作スイッチ9で設定された速度に戻して、CTL1による清掃作業を再開させる。
【0193】
なお、回転ブラシ23aの回転速度の復帰については、リフトアーム10を上方揺動中の回転ブラシ23aの回転速度の低下のように徐々に(時間をかけて)行う必要はなく、回転ブラシ23aが接地する直前、設置した時、或いは接地した直後に、迅速に復帰させるものとしてもよい。すなわち、制御装置26から電磁弁59、60に発信される制御信号CS1の相当する出力要求流量R1outを、限定要求流量R1aから要求流量R1へと、迅速に変化させるものとしてもよい。
【0194】
また、この場合の供給流量Q1の増加についても、必ずしも要求流量R1まで到達するものでなくてもよく、少なくとも、要求流量R1に近づくものであればよい。
【0195】
さらに言えば、供給流量Q2を要求流量R2に近づけるための供給流量Q1の減少も、必ずしも徐々に(ある程度の時間をかけて)行うものでなくてもよい。
【0196】
図5のフローチャートは、以上の如き特殊流量制御システム90における流量制御の流れを示す。このフローチャートについて説明する。なお、
図5のフローチャートは、
図3に示す如き流量制御プロセスへの適用を前提としているが、後述の如く、ステップの内容
を適宜変更したりステップをスキップする等して、例えば
図4に示す如き流量制御プロセスへも適用できるものである。
【0197】
制御装置26は、まず、AUX操作スイッチ9からの入力信号により、油圧モータ24への要求流量R1として0を超える値が設定されているかどうかを判断する(S01)。0を超える要求流量R1が設定されていれば(S01、YES)、さらに、制御装置26は、作業操作レバー8の後方傾倒角、操作弁51の開度、或いはパイロット油路55を流れるパイロット圧油の流量等を検出することで、リフトアーム10の上方揺動のためのリフトアームシリンダ14への要求流量R2として0を超える値が設定されているかどうかを判断する(S02)。
【0198】
0を超える要求流量R2が設定されていれば(S02、YES)、制御装置26は、要求流量R1、R2の合計である総要求流量SRと油圧ポンプ31の最大吐出流量Dmとを比較する(S03)。
【0199】
総要求流量SRが最大吐出流量Dm以下であれば(S03、YES)、要求流量R1に等しい供給流量Q1の作動油を油圧モータ24に供給し、要求流量R2に等しい供給流量Q2の作動油をリフトアームシリンダ14に供給する(S04)。
【0200】
総要求流量SRが最大吐出流量Dmを上回る場合は(S03、NO)、演算部26aにて、最大吐出流量Dmと要求流量R2との差以下の値である限定要求流量R1aを算出し、これを出力要求流量R1outの目標値として設定する(S05)。
【0201】
限定要求流量R1aが決定され次第、電磁弁59、60への制御信号CS1に相当する出力要求流量R1outを、当初の要求流量R1に等しい値から、限定要求流量R1aへと(好ましくは徐々に)減少させていく(S06)。
【0202】
この出力要求流量R1outの減少は、AUX制御弁43の、供給流量Q1を減少する方向の移動(シフト)を意味するものである。やがて出力要求流量R1outがある程度減少(具体的には、最大吐出流量Dmと要求流量R2との差(Dm-R2)に該当する値まで減少)して、そこからさらに出力要求流量R1outを減少させると、それにつれ、AUX制御弁43から油圧モータ24への供給流量Q1が(好ましくは徐々に)減少し、その分、リフトアーム制御弁41からリフトアームシリンダ14への供給流量Q2が増加する(S07)。
【0203】
つまり、出力要求流量R1outを減少させるほど供給流量Q2が増加するので、少なくとも、供給流量Q2が要求流量R2に到達するまで(S08、NO)は、出力要求流量R1outの減少が続けられる(S09)。
【0204】
リフトアームシリンダ14への供給流量Q2が要求流量R2に達した後(S08、YES)、すなわち、リフトアーム10が作業操作レバー8で設定された速度で上方揺動している間、減少を続ける油圧モータ24への供給流量Q1は限定要求流量R1aに達し、減少は停止し、限定要求流量R1aに等しい値の供給流量Q1の作動油が油圧モータ24に供給され続ける(S09)。すなわち、スイーパ23の回転ブラシ23aが低速回転する状態が続けられる。
【0205】
その後、作業操作レバー8が中立位置に向けて回動される等して、総要求流量SR(要求流量R1、R2の合計)が最大吐出流量Dm以下の状態になったことが確認されれば(S08、YES)、油圧モータ24への供給流量Q1を要求流量R1に等しい値に復帰させる(S04)。これは、出力要求流量R1outを要求流量R1と等しい値に戻すことにより実現される。
【0206】
以上の如き
図5のフローチャートは様々にステップの内容を変更したりステップをスキップしたりすることも可能である。
【0207】
例えば、
図5のフローチャートのステップS05については、限定要求流量R1aの値を必ずしも最大吐出流量Dmと要求流量R2との差(Dm-R2)のような低い値にしなくてもよく、要求流量R1より低い値であって、実際に供給流量Q1の減少を引き起こすことのできる値(本実施形態では(R1―L
R1)未満の値)であればよい。
【0208】
また、ステップS05、S09をスキップするものとしてもよい。すなわち、限定要求流量R1aを設定せず、例えば、
図4の流量制御プロセスに関して述べたように、供給流量Q2の増加状態を見ながら供給流量Q1を段階的に減少させるものとしてもよい。
【0209】
また、ステップS08をスキップしてもよい。すなわち、前述の如く、総要求流量SRが最大吐出流量Dmを超える場合に、必ずしも供給流量Q2を要求流量R2に到達するまでに増加させる必要はなく、少なくとも要求流量R2へと近づけるように増加させるものとしてもよい。
【0210】
同様に、総要求流量SRが最大吐出流量Dmを超えて特殊流量制御システム90が供給流量Q1を減少させた後、総要求流量SRが最大吐出流量Dm以下に下がった時も、必ずしも供給流量Q1を要求流量R1に到達するまでに増加させる必要はなく、少なくとも要求流量R1に近づけるものとしてもよい。
【0211】
以上の如き構成の特殊流量制御システム90において、供給流量Q2を要求流量R2まで増加させるために減少される出力要求流量R1outは、前述の如く、パイロット油圧式方向切換弁であるAUX制御弁43へのパイロット圧油の流れを制御する電磁弁59、60へと制御装置26より出力される制御信号CS1に相当する。
【0212】
すなわち、
図2の油圧システム30では、供給流量Q2を要求流量R2に到達させるために供給流量Q1を低下させる特殊流量制御システム90が備えられており、特殊流量制御システム90は、AUXポート11(油圧モータ24)への供給流量Q1を要求流量R1に一致させるための流量制御装置である制御装置26(演算部26a、信号生成部26b)、制御装置26に電気接続された入力装置91~95、制御装置26に電気接続された出力装置としての電磁弁59、60及びAUX制御弁43より構成されている。
【0213】
しかし、供給流量Q2を要求流量R2に到達させる(または近づける)ために供給流量Q1を低下させる構造の流量制御システムは、他にも考えられる。
図6、
図7は、その代替例を示すものである。
【0214】
図6に示す油圧システム30Aでは、AUXポート11に作動油を供給するAUX制御弁として、パイロット油圧制御式のAUX制御弁43に代えて、電磁弁であるAUX制御弁96を設けている。AUX制御弁96は、AUX制御弁43のスプールの両側の受圧部に代えて、スプールの両側にソレノイドを備えている。
【0215】
図6の油圧システム30Aにおいては、パイロット圧油供給用の電磁弁59、60は不要であり、これらの電磁弁は向けられておらず、これに代えて、制御装置26の出力インタフェースとAUX制御弁96の両ソレノイドとを電気接続している。
【0216】
油圧システム30Aの以上の点以外の構造については、
図2の油圧システム30と同様
である。また、油圧アクチュエータ30Aには、供給流量Q2を要求流量R2に到達させる(又は近づける)ために供給流量Q1を低下させる特殊流量制御システム90Aが備えられており、特殊流量制御システム90Aは、制御装置26(演算部26a、信号生成部26b)、制御装置26に電気接続された入力装置91~95、制御装置26に電気接続された出力装置としてのAUX制御弁96より構成されている。
【0217】
制御装置26からは、通常、AUX操作スイッチ9にて設定された要求流量R1に等しい出力要求流量R1outに相当する制御信号CS1aがAUX制御弁96のソレノイドへと出力される。
【0218】
そして、リフトアーム10の上方揺動(上昇)とスイーパ23の回転ブラシ23aの回転駆動とを同時に行う場合において、総要求流量SR(要求流量R1、R2の合計)が最大吐出流量Dmを超えるとき、制御装置26からAUX制御弁96のソレノイドへと出力される制御信号CS1aを変化させる。
【0219】
この制御信号CS1aの変化は、例えば、
図3に示すように出力要求流量R1outを要求流量R1から限定要求流量R1aへと徐々に減少させることや、
図4に示すように出力要求流量R1outを要求流量R1から減少させることに相当する変化である。
【0220】
こうした制御信号CS1aの変化により、AUX制御弁96(のスプール)が、AUXポート11への供給流量Q1を減少させる方向にシフトし、これにより実際に供給流量Q1を減少させ、それにつれてリフトアーム制御弁41からリフトアームシリンダ14への供給流量Q2を増加して要求流量R2に到達させるものである。
【0221】
以上のように、
図2及び
図6に示す特殊流量制御システム90、90Aでは、基本的にはAUX操作スイッチ9にて設定された要求流量R1と等しい供給流量Q1の作動油をAUXポート11(に接続された油圧アクチュエータ)に供給するように制御されるAUX制御弁43、96を、供給流量Q2を要求流量R2に到達させるために供給流量Q1を低下させる際に制御される弁としても兼用している。言い換えれば、供給流量Q1を要求流量R1に一致させるためにAUX流量制御弁43、96の位置を制御する制御装置26が、供給流量Q1を減少させるようAUX流量制御弁43、96の位置を変更することによって、供給流量Q2を要求流量R2へと近づける構成となっている。
【0222】
これに対し、
図7に示す実施形態は、AUX制御弁43(またはAUX制御弁96)とは別に、当該目的で供給流量Q1を減少させるために制御される弁を設けたものである。
【0223】
すなわち、
図7に示す油圧システム30Bは、総要求流量SRが最大吐出流量Dmを超える場合に対応する特殊流量制御システム90Bの構成要素として、AUX制御弁43(またはAUX制御弁96)とAUXポート11との間に介設される給排油路48又は給排油路49(本実施形態では給排油路48)上に可変絞り97を設けている。両給排油路48、49に可変絞り97を設けるものとしてもよい。
【0224】
図7の油圧システム30Bにおいて、特殊流量制御システム90Bは、特殊流量制御システム90、90Aと同様に制御装置26を有し、また、同様に制御装置26に接続される入力装置91~95を有している。
【0225】
油圧システム30Bでは、AUX制御弁43(96)は、総要求流量SRが最大吐出流量Dm以下か否かにかかわらず、制御装置26により、AUX操作スイッチ9で設定した要求流量R1に等しい供給流量Q1の作動油を吐出する位置に制御される。
【0226】
一方、特殊流量制御システム90Bにおいて、可変絞り97が制御装置26の出力インタフェースに電気接続され、可変絞り97の絞り度が制御装置26にて制御される。
【0227】
可変絞り97は、制御装置26の演算部26aにて総要求流量SRが最大吐出流量Dm以下と判断される限り、絞り度は0〈すなわち全開状態〉とし、AUX制御弁43より油圧モータ24へと吐出される全流量分の(すなわち、要求流量R1に等しい供給流量Q1の)作動油を通過させる。
【0228】
そして、制御装置26の演算部26aは、総要求流量SRが最大吐出流量Dmを上回ると判断すると、特殊流量制御システム90、90Aの制御装置26と同様に、最大吐出流量Dmと要求流量R2との差以下の値である限定要求流量R1aを算出し、限定要求流量R1aへと供給流量Q1を徐々に減少させるように、(あるいは限定要求流量R1aを設定することなく、供給流量Q2を要求流量R2へと近づけるよう供給流量Q1を徐々に減少させるように、)絞り度を徐々に増大させる(開口度を徐々に減少させる)。そのため、信号生成部26bにて、可変絞り97の絞り度を制御する制御信号CS3を生成し、可変絞り97へと出力する。
【0229】
なお、
図7に示す特殊流量制御システム90Bでは、可変絞り97の絞り度を制御する制御信号CS3を生成して可変絞り97へと出力するのに、AUX制御弁43、96を位置制御する制御装置26が用いられている。しかし、本実施形態では、供給流量Q1を減少させるために可変絞り97に制御信号CS3が出力されている間も、制御装置26は、供給流量Q1が要求流量R1に一致する位置にAUX制御弁43、96を制御している。
【0230】
したがって、特殊流量制御システム90Bにおいては、制御装置26とは別に可変絞り97制御用の流量制御装置を設けてもよい。この場合、可変絞り97制御用の流量制御装置に前記の入力装置91~95と同様の入力装置を接続してもよく、また当該流量制御装置が、これらの入力装置からの入力信号に基づいて総要求流量SRや限定要求流量R1a等を算出する演算部や、制御信号CS3を生成するための信号生成部等を備えるものとしてもよい。
【0231】
なお、
図7のように特殊流量制御システム90Bが制御装置26を用いる場合、制御装置26は、可変絞り97の絞り度を制御するという簡単な制御プロセスのプログラム等を得るだけで、この供給流量Q1を減少させるというプロセスを現出可能である。
【0232】
さらに、流量制御システム90、90Aにおいても、要求流量R1未満の供給流量Q1をさらに低い値に減少させるためにAUX制御弁43、96の位置を変更するために、必ずしも、供給流量Q1が要求流量R1に一致するようにAUX制御弁43、96の位置を制御する制御装置26を利用する必要はなく、制御装置26とは別に、総要求流量SRが総吐出流量Dmを超えると判断すると要求流量R1未満の供給流量Q1をさらに低い値へと減少させるようAUX制御弁43、96の位置を制御し得る制御装置を設けてもよい。
【0233】
以下、上述の作業機の油圧システム30、30A、30Bの有する様々な特徴により得られる効果について説明する。
【0234】
CTL(コンパクトトラックローダ)1(作業機)の油圧システム30、30A、30Bは、油圧ポンプ31と、油圧ポンプ31から吐出された作動油によって作動する油圧モータ24(第1油圧アクチュエータ)と、油圧ポンプ31から吐出された作動油によって作動するリフトアームシリンダ14(第2油圧アクチュエータ)と、要求流量R1(第1要求流量)を設定するよう操作可能なAUX操作スイッチ9(第1操作部材)と、要求流量R2(第2要求流量)を設定するよう操作可能な作業操作レバー8(第2操作部材)と、AUX操作スイッチ9の操作により設定された要求流量R1に一致するよう油圧モータ24への作動油の供給流量Q1(第1供給流量)を制御する制御装置26(第1流量制御装置)と、作業操作レバー8の操作により設定された要求流量R2に一致するようリフトアームシリンダ14への作動油の供給流量Q2(第2供給流量)を制御する流量制御装置27(第2流量制御装置)と、要求流量R1と要求流量R2との合計である総要求流量SRが油圧ポンプ31の吐出可能な作動油の最大流量である最大吐出流量Dmを超えると判断すると、供給流量Q1を減少させることで、供給流量Q2を要求流量R2へと近づける特殊流量制御システム90、90A、90Bとを備える。
【0235】
上記構成により、例えば、スイーパ23を装着したCTL1(作業機)が以下のような効果を得る。すなわち、スイーパ23の回転ブラシ23aを駆動するためのAUX操作スイッチ9(第1操作部材)の操作と、リフトアーム10を上下回動するための作業操作レバー8(第2操作部材)の操作とが同時に行われて、総要求流量SRが最大吐出流量Dmを超えることとなった時に、回転ブラシ23a駆動用の油圧モータ24(第1油圧アクチュエータ)への作動油の供給流量Q1(第1供給流量)も、リフトアーム10駆動用のリフトアームシリンダ14(第2油圧アクチュエータ)への作動油の供給流量Q2(第2供給流量)も、ともにそれぞれの要求流量R1、R2(第1要求流量、第2要求流量)に満たずに、回転ブラシ23a及びリフトアーム10のいずれも駆動速度不足となってしまう事態を回避し、優先度の高いリフトアームシリンダ14については供給流量Q2が要求流量R2へと近づけることで、所望どおりの速度、或いは所望した速度に近い速度での動作を確保できる。一方、優先度の低い油圧モータ24については供給流量Q1が少なく抑えられることで、油圧システム30、30A、30Bにおける油圧モータ24の駆動に関連する構成要素にかかる負荷を低減し、その耐久性を向上できる。
【0236】
特殊流量制御システム90、90A、90Bは、総要求流量SRが最大吐出流量Dmを超えると判断すると、要求流量R1よりも低い値の限定要求流量R1aを設定し、供給流量Q1を限定要求流量R1aへと減少させることで、供給流量Q2を要求流量R2へと近づける。
【0237】
上記構成により、要求流量R1よりも低い値として設定された限定要求流量R1aへと供給流量Q1が減少されることで、供給流量Q2は確実に要求流量R2へと近づくことができる。
【0238】
特殊流量制御システム90、90A、90Bは、総要求流量SRが最大吐出流量Dmを超えると判断すると、最大吐出流量Dmと要求流量R2との差(Dm-R2)以下の値である限定要求流量R1aを設定し、供給流量Q1を限定要求流量R1aへと減少させることで、供給流量Q2を要求流量R2へと近づける。
【0239】
上記構成により、最大吐出流量Dmと要求流量R2との差(Dm-R2)以下の値として設定された限定要求流量R1aへと供給流量Q1が減少されることで、供給流量Q2は確実に要求流量R2へと近づくことができる。
【0240】
特殊流量制御システム90、90A、90Bは、要求流量R1が設定された後、要求流量R2が設定された時に、総要求流量SRが最大吐出流量Dmを超えると判断すると、供給流量Q1を減少させることで、供給流量Q2を要求流量R2へと近づける。
【0241】
上記構成は、例えば、スイーパ23を装着したCTL1(作業機)においては、AUX操作スイッチ9をONして回転ブラシ23aを回転させ、スイーパ23にて地面を清掃しながらCTL1を走行運転している状態から、方向転換のために作業者がリフトアーム10を上昇させようと作業操作レバー8を操作した場合に適用可能である。すなわち、上記構成の適用により、AUX操作スイッチ9をON操作して油圧モータ24への要求流量R1(第1要求流量)が設定された後に、作業者が作業操作レバー8を操作してリフトアームシリンダ14への要求流量R2(第2要求流量)が設定されると、制御装置26は、要求流量R1、R2の合計である総要求流量SRと油圧ポンプ31の最大吐出流量Dmとを比較し、総要求流量SRが最大吐出流量Dmを超えると判断すれば、リフトアーム10の上方回動中はスイーパ23が清掃作業をしないので優先度の低い油圧モータ24への供給流量Q1を減少させ、リフトアームシリンダ14への供給流量Q2を要求流量R2へと近づけることで、リフトアーム10は作業者が所望する速度又は所望した速度に近い速度で上昇し、円滑なCLT1の方向転換を実現できるのである。
【0242】
特殊流量制御システム90、90A、90Bは、総要求流量SRが最大吐出流量Dmを超えると判断すると、供給流量Q1を徐々に減少させることで、供給流量Q2を要求流量R2へと近づける。
【0243】
上記構成により、供給流量Q1を徐々に減少させることで、急な供給流量Q1の減少により回転ブラシ23aの回転速度が急に低下することで作業者がスイーパ23の故障等と誤解して、CTL1の運転を停止したりするような事態を回避する。即ち、作業者の戸惑いによる誤操作等を防止できる。
【0244】
特殊流量制御システム90、90A、90Bは、総要求流量SRが最大吐出流量Dmを超えると判断すると、供給流量Q1を一定の減少率で徐々に減少させることで、供給流量Q2を要求流量R2へと近づける。
【0245】
以上の構成により、供給流量Q1が、一定の減少率で連続的に減少するので、回転ブラシ23aの回転速度の減少中においても、時々急に速度が低下するという現象も現れないので、作業者が回転ブラシ23aの回転速度低下に気づかないという効果を一層高めることができる。
【0246】
特殊流量制御システム90、90A、90Bは、総要求流量SRが最大吐出流量Dmを超えると判断すると、要求流量R1未満の供給流量Q1をさらに低い値へと段階的に徐々に減少させることで、供給流量Q2を、要求流量R2へと近づける。
【0247】
以上の構成により、例えば一定量の供給流量Q1での作動油の供給が一定時間経過するごとに、供給流量Q2が要求流量R2に到達したか否かを見て、到達していなければ供給流量Q1を一段階低い値にしてその値の作動油の供給を一定時間持続するという形態で、供給流量Q1を徐々に減少させることができる。
【0248】
特殊流量制御システム90、90A、90Bは、総要求流量SRが最大吐出流量Dmを超えた後、AUX操作スイッチ9又は作業操作レバー8が操作されて、総要求流量SRが最大吐出流量Dm以下になったと判断すると、減少させていた供給流量Q1を増加させ、要求流量R1へと近づける。
【0249】
上記構成は、例えば、スイーパ23を装着したCTL1(作業機)においては、上述の如く回転ブラシ23aを低い速度で回転させつつ、リフトアーム10を上昇させて方向転換した後、作業操作レバー8を操作してリフトアーム10を下降しスイーパ23を接地して清掃作業を再開する場合に適用可能である。すなわち、総要求流量SRが最大吐出流量Dmを超える状態でリフトアーム10の上昇中に減少させていた供給流量Q1を、リフトアーム10を下降するために作業操作レバー8が操作されて、総要求流量SRが最大吐出流量Dm以下になり次第、要求流量R1へと増加させることで、方向転換後に再度スイーパ23を接地させた状態から直ちに回転ブラシ23aがAUX操作スイッチ9の操作で設
定した速度又はそれに近い速度で回転し、スイーパ23による清掃作業を再開することができる。
【0250】
油圧システム30、30A、30Bは、油圧ポンプ31より吐出される作動油の流量Dを制御するためのLSシステム70(ポンプ制御装置)をさらに備えている。LSシステム70は、油圧ポンプ31より吐出される作動油の吐出圧P2が、油圧モータ24及びリフトアームシリンダ14の最高負荷圧P1よりも、設定されたロードセンシング差圧P0の分高くなるように、油圧ポンプ31を制御する。
【0251】
上記構成により、上述のように油圧モータ24及びリフトアームシリンダ14(複数の油圧アクチュエータ)が同時に駆動される場合において、総要求流量SRが最大吐出流量Dm以下であれば、LSシステム70(ポンプ制御装置)が、油圧ポンプ31の吐出流量Dを最大吐出流量Dmまでは増加させることができ、総要求流量SR以上の吐出流量Dを確保することで、両油圧アクチュエータ24、14に、それぞれの要求流量D1、D2に等しい量の供給流量Q1、Q2の作動油を供給することができる。すなわち、油圧システム30、30A、30Bにおいて、総要求流量SRが最大吐出流量Dm以下の場合の吐出流量Dの制御をLSシステム70が担い、総要求流量SRが最大吐出流量Dmを超える場合の供給流量Q1、Q2の制御を特殊流量制御システム90が担うものとすることができる。
【0252】
油圧システム30、30A、30Bは、油圧モータ24(第1油圧アクチュエータ)へ供給される作動油について設定された油圧を補償するための圧力補償弁73をさらに備える。
【0253】
上記構成により、油圧モータ24への供給流量Q1を減少することで、それだけ圧力補償弁73を通過する作動油の流量を抑えることができ、圧力補償弁73の高温化を抑制し、圧力補償弁73の耐久性を向上できる。
【0254】
油圧システム30、30Aは、油圧ポンプ31より吐出される作動油を流す吐出油路34と、吐出油路34より分岐する分岐油路38(第1分岐油路)と、分岐油路38を介して吐出油路34より供給される作動油を油圧モータ24へと供給するよう操作可能なAUX制御弁43、96(第1制御弁)と、分岐油路38と並列状に吐出油路34より分岐する分岐油路36(第2分岐油路)と、分岐油路36を介して吐出油路34より供給される作動油をリフトアームシリンダ14へと供給するよう操作可能なリフトアーム制御弁41(第2制御弁)と、をさらに備えている。制御装置26は、供給流量Q1が要求流量R1に一致するようにAUX制御弁43、96の位置を制御する。流量制御装置27は、供給流量Q2が要求流量R2に一致するようにリフトアーム制御弁41の位置を制御する。特殊流量制御システム90、90Aは、総要求流量SRが最大吐出流量Dmを超えると判断すると、流量制御装置27が、供給流量Q2を要求流量R2に一致させる位置にリフトアーム制御弁41を保持している間に、制御装置26により、要求流量R1未満の供給流量Q1をさらに低い値へと徐々に減少させるようにAUX制御弁43、96の位置を変更させることで、供給流量Q2を要求流量R2へと近づける。
【0255】
上記構成により、吐出油路34に対し分岐油路38、36を介して並列状に接続されるAUX制御弁43、96(第1制御弁)及びリフトアーム制御弁41(第2制御弁)は、吐出油路34内の作動油を共有する(吐出油路34内の作動油が分配される)ので、総要求流量SRが最大吐出流量Dmを超えると、油圧モータ24への供給流量Q1もリフトアームシリンダ14への供給流量Q2も、それぞれの要求流量R1、R2に対して不足する状況の中、供給流量Q1を減少させると、供給流量Q2が、要求流量R2へと近づくように自然に増加する。したがって、総要求流量SRが最大吐出流量Dmを超える場合に、流量制御装置27(第2流量制御装置)は本来どおり供給流量Q2を要求流量R1に一致させるようにリフトアーム制御弁41の位置を制御する状態のままで、制御装置26についてのみ、特別に、供給流量Q1を減少させるよう構成するだけでよい。すなわち、複数の油圧アクチュエータを同時に駆動する場合に優先度の高い油圧アクチュエータへの供給流量の要求流流量に対する不足(または深刻な量の不足)を発生させない油圧システムを低コストで構成することができる。
【0256】
油圧システム30において、AUX制御弁43は、パイロット圧油を受けて位置制御されるものである。制御装置26は、AUX制御弁43へのパイロット圧油の供給を制御する。
【0257】
上記構成により、油圧システム30において、例えばAUX制御弁43を含めて、各油圧アクチュエータについての制御弁の全てがパイロット圧制御式の制御弁である場合に、制御装置26は、AUX制御弁43へのパイロット圧油の供給の制御について、総要求流量SRが最大吐出流量Dmを超える場合に要求流量R1未満の供給流量Q1を徐々に減少させるような構成とすればよく、特別に新たな構成要素を加えることなく低コストで本発明を提供できる。
【0258】
油圧システム30は、AUX制御弁43にパイロット圧油を供給する電磁弁59、60をさらに備えている。制御装置26は、電磁弁59、60の開度を制御するための制御信号CS1を出力する。
【0259】
上記構成により、電磁弁59、60への制御信号CS1としての電気信号を変更すればAUX制御弁43へのパイロット圧油の供給制御を変更することができる。すなわち、総要求流量SRが最大吐出流量Dmを超える場合に要求流量R1未満の供給流量Q1を徐々に減少させるためには、制御信号CS1を変更するように制御装置26のプログラムを変更する等の簡単な方法を行うだけでよく、特別に新たな構成要素を加えることなく低コストで本発明を提供できる。
【0260】
油圧システム30Aにおいて、AUX制御弁96は電磁弁であり、制御装置26は、AUX制御弁96にソレノイドの励磁を制御する制御信号CS1aを出力する。
【0261】
上記構成により、油圧モータ24への供給流量Q1を制御すべく位置制御されるAUX制御弁96が電磁弁であることで、制御装置26からは、AUX制御弁96の位置制御用の電気信号である制御信号CS1aをAUX制御弁96に直接出力すればよく、前述のようにパイロット圧油の供給制御のための電磁弁59、60のようなAUX制御弁96とは別の電磁弁を設ける必要はないので構成要素数を低減し、油圧システムの簡素化やコンパクト化等につながる。
【0262】
特殊流量制御システム90Bは、油圧モータ24に供給される作動油を流す給排油路48に設けられる可変絞り97を備えている。特殊流量制御システム90Bは、総要求流量SRが最大吐出流量Dmを超えると判断すると、供給流量Q1を減少させるように可変絞り97の絞り度を増大することで、供給流量Q2を要求流量R2へと近づける。
【0263】
上記構成により、油圧モータ24に供給される作動油を流す給排油路48に可変絞り97を設けるだけで、総要求流量SRが最大吐出流量Dmを超えると供給流量Q1を減少させて供給流量Q2を要求流量R2に到達させる構成を簡単に提供できる。
【0264】
油圧システム30Bは、油圧ポンプ31より吐出される作動油を流す吐出油路34と、吐出油路34より分岐する分岐油路38(第1分岐油路)と、分岐油路38を介して吐出
油路34より作動油を供給されるものであって、供給流量Q1を制御するため制御装置26にて位置を制御されるAUX制御弁43、96(第1制御弁)と、分岐油路38と並列状に吐出油路34より分岐する分岐油路36(第2分岐油路)と、分岐油路36を介して吐出油路34より作動油を供給されるものであって、供給流量Q2を制御するため流量制御装置27にて位置を制御されるリフトアーム制御弁41(第2制御弁)と、をさらに備えている。制御装置26は、供給流量Q1が要求流量R1に一致するようにAUX制御弁43、96の位置を制御する。流量制御装置27は、供給流量Q2が要求流量R2に一致するようにリフトアーム制御弁41の位置を制御する。特殊流量制御システム90Bは、総要求流量SRが最大吐出流量Dmを超えると判断すると、流量制御装置27が、供給流量Q2を要求流量R2に一致させる位置にリフトアーム制御弁41を保持し、制御装置26が、供給流量Q1を要求流量R1に一致させる位置にAUX制御弁43(96)を保持している間に、供給流量Q1を減少させるように可変絞り97の絞り度を増大することで、供給流量Q2を要求流量R2へと近づける。
【0265】
上記構成により、吐出油路34に対し分岐油路38、36を介して並列状に接続されるAUX制御弁43、96(第1制御弁)及びリフトアーム制御弁41(第2制御弁)は、吐出油路34内の作動油を共有する(吐出油路34内の作動油が分配される)ので、総要求流量SRが最大吐出流量Dmを超えると、油圧モータ24への供給流量Q1もリフトアームシリンダ14への供給流量Q2も、それぞれの要求流量R1、R2に対して不足する状況の中、供給流量Q1を減少させると、供給流量Q2が、要求流量R2へと近づくように自然に増加する。また、供給流量Q1を減少させるのを、可変絞り97の制御によるものとすることで、AUX制御弁43、96の位置制御については、常に、要求流量R1に供給流量Q1を一致させる位置に制御すればよく、AUX制御弁43、96の制御の単純化を実現できる。
【0266】
以上、本発明について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0267】
1 :CLT(コンパクトトラックローダ)(作業機)
4 :作業装置
8 :作業操作レバー(第2操作部材)
9 :AUX操作スイッチ(第1操作部材)
10 :リフトアーム
11 :AUXポート(作動油取出しポート)
14 :リフトアームシリンダ(第2油圧アクチュエータ)
23 :スイーパ
24 :油圧モータ(第1油圧アクチュエータ)
26 :制御装置(第1流量制御装置)
27 :流量制御装置(第2流量制御装置)
30 :油圧システム
30A :油圧システム
30B :油圧システム
31 :油圧ポンプ
34 :吐出油路
36 :分岐油路(第2分岐油路)
38 :分岐油路(第1分岐油路)
41 :リフトアーム制御弁(第2制御弁)
43 :AUX制御弁(第1制御弁)
48 :給排油路
51 :操作弁
52 :操作弁
59 :電磁弁
60 :電磁弁
70 :ロードセンシング(LS)システム(ポンプ制御装置)
73 :圧力補償弁
96 :AUX制御弁(第1制御弁)
97 :可変絞り
D :吐出流量
Dm :最大吐出流量
Q1 :供給流量(第1供給流量)
Q2 :供給流量(第2供給流量)
R1 :要求流量(第1要求流量)
R2 :要求流量(第2要求流量)
SR :総要求流量(第1要求流量と第2要求流量との合計)