(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025141
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】多層チューブ
(51)【国際特許分類】
F16L 11/04 20060101AFI20240216BHJP
B32B 1/08 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
F16L11/04
B32B1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128347
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000226932
【氏名又は名称】日星電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柴田 欽司
(72)【発明者】
【氏名】平井 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】薮崎 善治
【テーマコード(参考)】
3H111
4F100
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA15
3H111CB04
3H111CB23
3H111CB24
3H111DA26
3H111DB25
3H111DB27
3H111EA04
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK03C
4F100AK04C
4F100AK06C
4F100AK46B
4F100AK46C
4F100AK48B
4F100AK48C
4F100AL07C
4F100BA03
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4F100BA10C
4F100DA02
4F100JB16A
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4F100JK04B
4F100JK04C
4F100JK06
4F100JK07B
4F100JK07C
(57)【要約】
【課題】
ガスバリア性と柔軟性を両立した多層チューブを提供することにある。
【解決手段】
内層、中間層、外層が積層された構造の多層チューブとし、中間層は内層と比較して酸素透過係数が小さい第1高分子で構成する。第1高分子はヒドロキシ基以外の第1極性基を有することで第1高分子を構成する高分子鎖間で水素結合を形成可能なものを使用する。外層は第1極性基との間に水素結合を形成可能な第2極性基を有するとともに、曲げ弾性率が第1高分子以下である第2高分子で構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも内層、中間層、及び外層が積層された多層チューブであって、
該内層は熱可塑性樹脂で構成されており、
該中間層は該内層と比較して酸素透過係数が小さい第1高分子で構成されており、
該第1高分子は、ヒドロキシ基以外の第1極性基を有することで該第1高分子を構成する高分子鎖間で水素結合を形成可能であるとともに、
該外層は、該第1極性基との間に水素結合を形成可能な第2極性基を有した第2高分子で構成されており、
該第2高分子の曲げ弾性率は該第1高分子の曲げ弾性率以下であることであることを特徴とする多層チューブ。
【請求項2】
該第1極性基はカルボニル基であることを特徴とする、請求項1に記載の多層チューブ。
【請求項3】
該第1極性基はアミド結合内のカルボニル基であることを特徴とする、請求項1に記載の多層チューブ。
【請求項4】
該第1高分子はポリアミドであることを特徴とする、請求項1に記載の多層チューブ。
【請求項5】
該第1高分子はナイロン11または12であることを特徴とする、請求項1に記載の多層チューブ。
【請求項6】
該第2極性基が有機酸由来の極性基であることを特徴とする、請求項1~5の何れか一項に記載の多層チューブ。
【請求項7】
該第2高分子はポリオレフィンであることを特徴とする、請求項1~5の何れか一項に記載の多層チューブ。
【請求項8】
該ポリオレフィンはポリエチレンであることを特徴とする、請求項7に記載の多層チューブ。
【請求項9】
該ポリエチレンは低密度ポリエチレンであることを特徴とする、請求項8に記載の多層チューブ。
【請求項10】
該第2高分子は酸変性ポリオレフィンであることを特徴とする、請求項1~5の何れか一項に記載の多層チューブ。
【請求項11】
該酸変性ポリオレフィンはポリエチレンであることを特徴とする、請求項10に記載の多層チューブ。
【請求項12】
該ポリエチレンは低密度ポリエチレンであることを特徴とする、請求項11に記載の多層チューブ。
【請求項13】
該第2極性基はアミノ基であることを特徴とする、請求項1~5の何れか一項に記載の多層チューブ。
【請求項14】
該第2極性基はアミド結合内のアミノ基であることを特徴とする、請求項1~5の何れか一項に記載の多層チューブ。
【請求項15】
該第2高分子はポリアミドであることを特徴とする、請求項1~5の何れか一項に記載の多層チューブ。
【請求項16】
該第2高分子はナイロン11または12であることを特徴とする、請求項1~5の何れか一項に記載の多層チューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に気体・液体等の流体を搬送する目的に使用される多層チューブであって、酸素ガスや窒素ガス等に対するガスバリア性を備えるとともに、特に柔軟性を考慮した多層チューブに関するものであり、更には外周面の滑り性も考慮したものである。
【背景技術】
【0002】
インク供給チューブや、脱気装置、分析装置、半導体装置などの産業装置用チューブとして、ガスバリア性の樹脂と、ポリエチレン等の樹脂を積層した多層チューブが知られている。これらのチューブは所定の空間、形状に配設する際の容易さや、装置の稼働部に配設して使用される場合における稼働への追従を目的として、柔軟性が求められることが多い。
【0003】
また、上記の用途に使用される多層チューブは、配設作業や装置の稼働の際、周辺に存在する部材との接触抵抗が円滑な作業、動作の妨げとなるため、多層チューブの外周面には滑り性が求められることも多い。
【0004】
柔軟性を考慮した多層チューブとしては、特許文献1に記載のものなどが挙げられる。特許文献1に記載のチューブはガスバリア層をエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂で形成するとともに、ガスバリア層近傍の酸素濃度を特定の値に設定することで、柔軟性に起因した性能である対クラック性を高めている。
【0005】
滑り性を考慮した多層チューブとしては、特許文献2に記載のものなどが挙げられる。特許文献2に記載のチューブは最外層を中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン又はポリプロピレンで構成することで、チューブ表面の滑り性を向上させている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のチューブで使用されているエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂、特許文献2に記載のチューブで使用されている中密度、高密度ポリエチレン類は一般的に硬度が高い樹脂と評価されており、チューブの柔軟性を向上させる観点においては不向きな面も有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2019-059243号公報
【特許文献2】特開2001-289368号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、多層チューブのガスバリア性と柔軟性を決定する因子の1つである水素結合に注目し、ガスバリア層と外層との間に形成される水素結合の量を考慮することで、ガスバリア性を有するとともに、柔軟性に優れた多層チューブを得るに至った。
【0009】
本発明の多層チューブは、少なくとも内層、中間層、外層が積層された構造を有し、中間層は内層と比較して酸素透過係数が小さい第1高分子で構成され、第1高分子はヒドロキシ基以外の第1極性基を有することで第1高分子を構成する高分子鎖間で水素結合を形成可能であるとともに、外層は第1極性基との間に水素結合を形成可能な第2極性基を有した第2高分子で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の多層チューブは酸素ガス等に対するガスバリア性を有するとともに、柔軟性に優れる。
【0011】
加えて、チューブ外周面の滑り性も両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る多層チューブの一例を示す図である。
【
図2】層間剥離強度の測定方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の多層チューブについて、図面を参照しながら説明する。
【0014】
本発明の多層チューブ1の基本構成を
図1に示す。本発明の多層チューブ1は少なくとも内層10、中間層20、外層30が積層されて構成される。必要に応じ、層間に接着層や、内周面、外周面にコーティング層を設けても良い。
【0015】
本発明において内層10は熱可塑性樹脂で構成され、ポリエチレン、ふっ素樹脂、熱可塑性エラストマーなどが用いられる。
【0016】
内層10がポリエチレンで構成されている場合、極性が小さいため極性分子である水分子との親和性が低く、水分子はポリエチレンに溶解しにくい。このため、多層チューブ1に水蒸気バリア性が求められる場合は内層10としてポリエチレンが好ましく用いられる。
【0017】
ポリエチレンの結晶化度は50%以上であることが好ましく、より好ましくは70%以上である。ポリエチレンは結晶化度が高くなるほど、水分子が拡散する非晶領域の割合が小さくなるため、高い水蒸気バリア性を発現する。
【0018】
ポリエチレンの密度が高くなるほど結晶化度も高くなるため、水蒸気バリア性を重視する際は、比重0.94以上の高密度ポリエチレンが好ましく用いられる。
【0019】
内層10がふっ素樹脂で形成されている場合も、極性が小さいため水蒸気バリア性が期待できる。加えて、耐薬品性に優れるため、多層チューブ1に薬品を流す場合は内層10としてふっ素樹脂が好ましく用いられる。
【0020】
ふっ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、ふっ素化エチレンプロピレン(FEP)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)などを用いることができ、これらのふっ素樹脂を単独、もしくは組合せて用いられる。
【0021】
ふっ素樹脂を組合わせて用いる場合は、耐薬品性に優れるとともに中間層20との接合強度を高めることができる、PFAとCTFE(クロロトリフルオロエチレン)を基本構成とした変性ふっ素樹脂が好ましく用いられる。
【0022】
本発明において、中間層20は多層チューブ1にガスバリア性を付与するための層として設けられ、内層10と比較して酸素透過係数が小さい第1高分子で構成される。
【0023】
第1高分子は低い酸素透過係数、すなわちガスバリア性を得るため、高分子鎖間で水素結合を形成可能にする第1極性基を有した高分子が選択されるが、本発明においては、第1極性基はヒドロキシ基以外のものから選択される。
【0024】
第1極性基の具体例としてはカルボニル基が挙げられ、より具体的にはアミド結合内のカルボニル基が挙げられる。
【0025】
上述したカルボニル基を有する第1高分子としてはポリアミドが挙げられ、ナイロン11、ナイロン12などが用いられる。
【0026】
仮に第1高分子が有する第1極性基がヒドロキシ基である場合、第1高分子として代表的なものはエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)であるが、EVOHは分子構造上、その高分子鎖内に高頻度でヒドロキシ基が存在することになる。
【0027】
EVOHは高頻度で存在するヒドロキシ基が分子鎖間に多くの水素結合を形成することで、高いガスバリア性を発現できる反面、多くの水素結合が存在する影響で柔軟性を阻害してしまう。
【0028】
また、ヒドロキシ基は各種の官能基の中で高分子鎖上に比較的容易に設けることができる官能基のため、EVOH以外でも高分子鎖内に高頻度で存在しやすい。
【0029】
本発明は、第1高分子としてヒドロキシ基以外の極性官能基を有する高分子を用いることで、ガスバリア性を得つつも、高分子鎖間に水素結合が過度に形成されない状態にすることができ、多層チューブ1の柔軟性の向上に寄与する。
【0030】
なお、第1高分子はヒドロキシ基を全く有さないものに限定されず、主にヒドロキシ基以外の極性官能基によって高分子鎖間に水素結合が形成される高分子であれば、ヒドロキシ基を有した第1高分子を用いても良い。
【0031】
第1高分子としてポリアミドを用いる場合は、アミド結合中のカルボニル基によって水素結合が形成されるが、通常、ポリアミドの高分子鎖内に存在するアミド結合は脂肪族骨格、或いは芳香族骨格を繋ぐ形で存在し、分子鎖の長さに対してアミド結合が現れる頻度が限られているため、過度な水素結合の形成を抑制できる。
【0032】
その一方でアミド結合は、アミド結合を構成するカルボニル基とアミノ基との間で水素結合が可能なため、第1高分子の高分子鎖間でガスバリア性を得るのに必要十分な水素結合を形成することができる。
【0033】
加えて、カルボニル基とアミノ基の両者を有することで、内層10と中間層20との間、及び中間層20と外層30との間に水素結合を形成させる余地が生まれるため、層間の接合強度の向上に寄与することもできる。
【0034】
本発明の多層チューブ1は、産業装置等の稼働部に配設して使用されることを想定したものであり、稼働時、屈曲時に発生する負荷への耐久性を得るため、中間層20と外層30との間の接合強度を高めるのが望ましい。
【0035】
このため、本発明の多層チューブ1において、外層30は第1極性基との間に水素結合を形成可能な第2極性基を有した第2高分子で構成するのが好ましい。
【0036】
中間層20と外層30は通常、両層同時に一体的に押出成形を行い、押出時の熱と圧力で層間に共有結合を形成させることで接合するが、層間に水素結合も形成可能となるように中間層20、外層30の材料を選定することで中間層20と外層30との接合強度をより高めることができる。
【0037】
加えて、第2高分子は、第1高分子以下の曲げ弾性率を有するものが用いられる。第1高分子として高分子鎖間に水素結合が過度に形成されないものを用いることで中間層20の柔軟性を得ているが、第2高分子の曲げ弾性率を第1高分子以下とすることで、中間層20の柔軟性を外層30が阻害してしまう状態を抑制し、多層チューブ1の柔軟性に寄与する。
【0038】
第2高分子の曲げ弾性率が第1高分子以下であれば、第2極性基の種類は限定されず、ヒドロキシ基も選択することができる。
【0039】
好ましく用いることができる第2極性基としては、有機酸由来の極性基が挙げられる。
【0040】
外層30を構成する第2高分子は、チューブの製造に用いられている各種の熱可塑性樹脂を用いることができ、第2極性基を有した高分子とすることを考慮すると、重合過程で容易に官能基を導入することができるポリオレフィンが好ましく用いることができる第2高分子の1つである。
【0041】
第2高分子をポリオレフィン、第2極性基を有機酸由来の極性基とする場合、第2高分子として酸変性ポリオレフィンが好ましく用いられる。
【0042】
酸変性ポリオレフィンの具体例としては、オレフィン-無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。無水マレイン酸を有機酸として用いる場合、カルボニル基もしくはカルボニル基由来の側鎖が第2極性基となる。
【0043】
酸変性ポリオレフィンは有機酸の配合量によって第2極性基の存在量を制御可能であり、中間層20と外層30との接合強度を得るのに必要な第2極性基を導入しつつ、必要以上の第2極性基の導入を抑制できる点で好適である。
【0044】
ポリオレフィンの中では、ポリエチレンが外層30の材料として特に好ましく用いられる。先述したようにポリエチレンは水蒸気バリア性に優れるため、酸素透過係数の小ささを重視した結果、中間層20の水蒸気バリア性が不十分となったときにこれを補うことができ、多層チューブ1の総合的な性能の向上に寄与する。
【0045】
また、ポリエチレンの中では低密度ポリエチレンが好ましく用いられる。低密度ポリエチレンは曲げ弾性率を小さく設定することができるため、過度の水素結合の形成を抑制することで得られた中間層20の柔軟性を阻害することがなく、多層チューブ1の柔軟性の維持に寄与する。低密度ポリエチレンは直線状低密度ポリエチレンを用いても良い。
【0046】
加えて、本発明の多層チューブ1は外周面に滑り性が求められることも想定される。このため、滑り性を下げる方向に作用する第2極性基の存在は望ましくないが、第2高分子が低密度ポリエチレンであれば、ポリエチレン自体が本来有する接着性は小さく、滑り性に優れるため、第2極性基が存在しても実使用上の問題が無い水準の滑り性を維持することができる。
【0047】
有機酸由来の極性基の他、アミノ基も第2極性基として好ましく用いることができる。第1極性基がカルボニル基である場合、カルボニル基を構成する酸素原子が相対的に負電荷を示すため、相対的に正電荷を示す水素原子を有したアミノ基との間に水素結合を形成しやすく、中間層20と外層30との間の接合強度の向上に寄与する。
【0048】
アミノ基は、アミド結合内のアミノ基を用いることができ、この態様を選択する場合は、第2高分子としてポリアミドを用いることができる。
【0049】
中間層20を形成する好ましい第1高分子としてポリアミドを挙げたが、外層30を形成する第2高分子にもポリアミドを用いる場合は、中間層20、外層30の両方にアミド結合が存在することになるため、アミド結合を構成するカルボニル基とアミノ基との間で水素結合を形成可能となり、中間層20と外層30との接合強度の向上に寄与する。
【0050】
また、中間層20と外層30とが同種の樹脂で形成されている点も、接合強度の向上に寄与する。
【0051】
第2高分子として用いられるポリアミドは、第1高分子と同様、ナイロン11、ナイロン12などが用いられる。
【0052】
多層チューブ1の製法は、特に限定されないが、通常は押出成型が用いられる。複数の層を同時に成型可能であるため、多層チューブ1を製造する際の生産性に優れる。必要に応じて、延伸処理、ケミカル処理、プラズマ処理、電子架橋処理などを施しても良い。
【0053】
押出成型の製造条件について特に限定されないが、層間の接合強度を確保するためには、過度の加熱を避ける製造条件が好ましい。
【0054】
本発明の多層チューブ1は、内層10と中間層20との間で5N/cm以上の接合強度、並びに中間層20と外層30との間で層間剥離が起きない水準の接合強度を得ることができる。接合強度を高めることで、多層チューブ1に屈曲、捻回等の外力が加わった際にも層間の剥離、割れを防止でき、多層チューブ1のガスバリア性、水蒸気バリア性等の特性を維持できる。
【0055】
接合強度は、180度剥離試験によって測定された層間剥離強度を用いる。多層チューブ1を長さ方向に切り開き、シート状の試験片を作成する。試験片の長さ方向の端部から層間を一部剥離した後、
図2に示すように各層の端部を引張試験機のチャックに固定し、200mm/分の引張り速度にて180度剥離試験を実施する。測定長は10cmとし、引張強度の最大値を、層間剥離強度として測定する。
図2には中間層20と外層30との間の層間剥離強度を測定する様子を示したが、内層10と中間層20との間の層間剥離強度も同様に測定される。
【0056】
多層チューブ1の内径は2~10mm程度、外径は4~12mm程度に設定されるが、これらの値に限定されるものではなく、多層チューブ1の用途に応じて適宜設定すれば良い。
【0057】
内層10の肉厚は0.1~0.5mm程度、中間層20の肉厚は0.01~0.2mm程度、外層30の肉厚は0.1~1.0mm程度に設定されるが、これらの値に限定されるものではなく、多層チューブ1の用途に応じて適宜設定すれば良い。
【0058】
多層チューブ1は、25℃における酸素透過係数が2.0×10-10cm3・cm/cm2・sec・cmHg以下になるよう形成することができる。酸素透過係数の測定方法は、JIS K 7126-2に記載のガスクロマトグラフ法に準拠する。
【0059】
酸素透過係数が2.0×10-10cm3・cm/cm2・sec・cmHg以下である多層チューブ1はガスバリア性に優れ、多層チューブ1によって搬送される流体に多層チューブ1の外部からガスが混入するのを抑制する効果がある。好ましくは、酸素透過係数が1.0×10-10cm3・cm/cm2・sec・cmHg以下となるように形成する。
【0060】
加えて、多層チューブ1は、25℃における窒素透過係数が1.0×10-10cm3・cm/cm2・sec・cmHg以下になるよう形成することができる。窒素透過係数の測定方法は、JIS K 7126-2に記載のガスクロマトグラフ法に準拠する。
【0061】
窒素透過係数が1.0×10-10cm3・cm/cm2・sec・cmHg以下である多層チューブ1は、多層チューブ1によって搬送される流体に多層チューブ1の外部からガスが混入するのを抑制する効果がある。好ましくは、窒素透過係数が0.5×10-10cm3・cm/cm2・sec・cmHg以下となるように形成する。
【0062】
さらに、多層チューブ1は、80℃における水蒸気透過係数が、200×10-10cm3・cm/cm2・sec・cmHg以下になるよう形成することができる。水蒸気透過係数の測定方法は、JIS K 7126-2に記載のガスクロマトグラフ法に準拠する。
【0063】
80℃における水蒸気透過係数が200×10-10cm3・cm/cm2・sec・cmHg以下である多層チューブ1であれば、高温環境下においても一定の水蒸気バリア性を有する。好ましくは、水蒸気透過係数が150×10-10cm3・cm/cm2・sec・cmHg以下となるように形成する。
【実施例0064】
以下、本発明の多層チューブ1について、実施例を挙げ、さらに具体的に説明するが、本発明の範囲について、これらに限定されるものではない。
【0065】
[実施例1]
実施例1の多層チューブ1-1は、内層10をPFAとCTFEから構成される変性ふっ素樹脂、中間層20をポリアミド系エラストマー(ナイロン12)、外層30を酸変性ポリオレフィンで形成した。
【0066】
[実施例2]
実施例2の多層チューブ1-2は、内層10をPFAとCTFEから構成される変性ふっ素樹脂、中間層20をポリアミド系エラストマー(ナイロン12)、外層30をポリアミド系エラストマー(ナイロン11)で形成した。
【0067】
その他、各実施例の多層チューブ1の仕様を表1に示す。
【0068】
(酸素透過係数の測定方法)
JIS K 7126-2に記載のガスクロマトグラフ法に準拠し、25℃における酸素透過係数を測定する。測定器は汎用のガス透過試験機を用い、キャリアガスの流量は10ml/minとし、大気圧下(101.3kPa)で測定した。
【0069】
(窒素透過係数の測定方法)
JIS K 7126-2に記載のガスクロマトグラフ法に準拠し、25℃における窒素透過係数を測定する。測定器は汎用のガス透過試験機を用い、キャリアガスの流量は10ml/minとし、大気圧下(101.3kPa)で測定した。
【0070】
(水蒸気透過係数の測定方法)
JIS K 7126-2に記載のガスクロマトグラフ法に準拠し、80℃における水蒸気の透過係数を測定する。測定器は汎用のガス透過試験機を用い、キャリアガスの流量は10ml/minとし、試験時の相対湿度は75%、水蒸気/窒素ガス/酸素ガスの分圧は38.6kPa/49.5kPa/13.2kPaとした。
【0071】
(接合強度の測定方法)
長さ12cmに切断した多層チューブ1を長さ方向に切り開いてシート状の試験片を作成し、先述した180度剥離試験の方法に従って接合強度(層間剥離強度)を測定した。
【0072】
(柔軟性の評価方法)
多層チューブ1を所定の半径を有する円柱に巻き付け、キンクが発生した時の半径を多層チューブ1の最小曲げ半径とし、柔軟性の指標とした。
【0073】
(滑り性の評価方法)
滑り性の評価方法の概略図を
図3に示す。所定の長さに切断した多層チューブ1を3本用意し、互いに接触するよう平行に並べた状態で固定する。固定したチューブの上に底面をポリプロピレンでコートした質量450gの錘を載せ、図視しない引張型ロードセルを用いて錘を多層チューブ1の長手方向に引張る。多層チューブ1上を錘が滑り始めた際の引張力を滑り性の指標とする。引張力が小さいほど、滑り性が良好と言える。
【0074】
実施例に対する上記の測定結果を表1に示す。
【0075】
【0076】
透過係数については、良好なガスバリア性及び水蒸気バリア性を有すると言える水準である。
【0077】
接合強度についても、良好な層間の接合強度が得られていると言える水準である。
【0078】
最小曲げ半径については、中間層にEVOHを使用した態様の多層チューブでは概ね20mmより大きくなると言われているところ、実施例の多層チューブ1では15mmまで小さくなり、実施例の多層チューブ1は柔軟性に優れた態様と評価できる。
【0079】
滑り性については、3N未満の小さい力で錘が動き始めており、実施例の多層チューブ1は滑り性に優れた態様と評価できる。
【0080】
以上の通り、本発明の多層チューブ1は良好なガスバリア性、層間の接合強度を示すのに加え、
優れた柔軟性、滑り性も有した多層チューブと評価できる。
本発明の多層チューブはガスバリア性と柔軟性を両立し、その他の性能にも優れるため、分析装置用の気液搬送用のチューブ、インクジェットプリンタ用のインク供給用チューブ、内視鏡やカテーテル等の医療機器の一部部材として用いられるチューブ等、化学、医療、製薬、食品、分析機器等、広い分野において利用可能である。