(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025142
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】付加製造装置
(51)【国際特許分類】
B22F 12/40 20210101AFI20240216BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240216BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20240216BHJP
B22F 12/50 20210101ALI20240216BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240216BHJP
B22F 10/36 20210101ALN20240216BHJP
B22F 10/368 20210101ALN20240216BHJP
B22F 10/366 20210101ALN20240216BHJP
B22F 10/362 20210101ALN20240216BHJP
B22F 10/34 20210101ALN20240216BHJP
【FI】
B22F12/40
B22F1/00 Q
B22F10/28
B22F12/50
B33Y30/00
B22F10/36
B22F10/368
B22F10/366
B22F10/362
B22F10/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128349
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田野 誠
(72)【発明者】
【氏名】椎葉 好一
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AB02
4K018AD06
4K018BA04
(57)【要約】
【課題】造形物の表層側の硬さを向上させつつ、全体として造形物の強度を向上させることのできる付加製造装置を提供する。
【解決手段】鉄系材料よりも硬質な粉末材料Pを供給する粉末材料供給装置110と、溶融ビームMBMの照射により前記粉末材料Pを溶融して、前記鉄系材料からなる基材Bの表面に第一層を形成し、既に形成された前記第一層の表面に溶融ビームMBMの照射により前記粉末材料Pを溶融して第二層を形成することにより、前記基材Bの表面に造形物を形成するビーム照射装置120と、を備え、前記第一層が形成されるときに前記ビーム照射装置120から加えられる入熱量よりも、前記第二層が形成されるときに前記ビーム照射装置120から加えられる入熱量が大きい、付加製造装置100。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄系材料よりも硬質な粉末材料を供給する粉末材料供給装置と、
ビームの照射により前記粉末材料を溶融して、前記鉄系材料からなる基材の表面に第一層を形成し、既に形成された前記第一層の表面にビームの照射により前記粉末材料を溶融して第二層を形成することにより、前記基材の表面に造形物を形成するビーム照射装置と、
を備え、
前記第一層が形成されるときに前記ビーム照射装置から加えられる入熱量よりも、前記第二層が形成されるときに前記ビーム照射装置から加えられる入熱量が大きい、付加製造装置。
【請求項2】
前記第一層が形成されるときに前記ビーム照射装置から照射されるビームのパワー密度よりも、前記第二層が形成されるときに前記ビーム照射装置から照射されるビームのパワー密度が大きい、請求項1に記載の付加製造装置。
【請求項3】
前記ビーム照射装置は、
前記基材に供給された前記粉末材料を前記粉末材料の融点より高い温度に加熱して溶融する溶融ビームを照射する溶融ビーム照射装置と、
前記溶融ビームが走査される走査方向について、前記溶融ビームが照射される照射範囲である溶融ビーム照射範囲より前記走査方向の前方の範囲を、前記融点より低い温度に加熱する予熱ビームを照射する補助ビーム照射装置と、を備え、
前記第一層は、前記溶融ビーム照射装置によって形成され、
前記第二層は、前記溶融ビーム照射装置および前記補助ビーム照射装置によって形成される、請求項1に記載の付加製造装置。
【請求項4】
前記ビーム照射装置は、
前記基材に供給された前記粉末材料を前記粉末材料の融点より高い温度に加熱して溶融する溶融ビームを照射する溶融ビーム照射装置と、
前記溶融ビームが走査される走査方向について、前記溶融ビームが照射される照射範囲である溶融ビーム照射範囲より前記走査方向の前方の範囲を、前記融点より低い温度に加熱する予熱ビームを照射する補助ビーム照射装置と、を備え、
前記第一層は、前記溶融ビーム照射装置によって形成され、
前記第二層は、前記溶融ビーム照射装置および前記補助ビーム照射装置によって形成され、
さらに、前記第一層が形成されるときに前記溶融ビーム照射装置から照射されるビームのパワー密度よりも、前記第二層が形成されるときに前記溶融ビーム照射装置から照射されるビームのパワー密度が大きい、請求項1に記載の付加製造装置。
【請求項5】
前記第一層が形成されるときに前記ビーム照射装置が走査される第一走査速度は、前記第二層が形成されるときに前記ビーム照射装置が走査される第二走査速度よりも大きく設定されている、請求項1に記載の付加製造装置。
【請求項6】
前記ビーム照射装置は、
前記基材に供給された前記粉末材料を前記粉末材料の融点より高い温度に加熱して溶融する溶融ビームを照射する溶融ビーム照射装置と、
前記溶融ビームが走査される走査方向について、前記溶融ビームが照射される照射範囲である溶融ビーム照射範囲より前記走査方向の前方の範囲を、前記融点より低い温度に加熱する予熱ビームを照射する補助ビーム照射装置と、を備え、
前記補助ビーム照射装置は、さらに、
前記走査方向について、前記溶融ビーム照射範囲よりも前記走査方向の後方の範囲を、前記融点より低い温度に加熱する構成とされており、
前記第一層が形成されるときに前記溶融ビーム照射装置および前記補助ビーム照射装置が走査される第一走査速度は、前記第二層が形成されるときに前記溶融ビーム照射装置および前記補助ビーム照射装置が走査される第二走査速度よりも大きく設定されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の付加製造装置。
【請求項7】
前記ビーム照射装置は、既に形成された前記第二層の表面にビームの照射により前記粉末材料を溶融して第三層を形成することにより、前記基材の表面に造形物を形成する構成とされており、
前記第二層が形成されるときに前記ビーム照射装置から加えられる入熱量よりも、前記第三層が形成されるときに前記ビーム照射装置から加えられる入熱量が大きい、請求項1に記載の付加製造装置。
【請求項8】
前記第二層が形成されるときに前記ビーム照射装置から照射されるビームのパワー密度よりも、前記第三層が形成されるときに前記ビーム照射装置から照射されるビームのパワー密度が大きい、請求項7に記載の付加製造装置。
【請求項9】
前記粉末材料は超硬合金を主成分として含む、請求項1に記載の付加製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
付加製造には、例えば、指向性エネルギー堆積(Directed Energy Deposition)方式、粉末床溶融結合(Powder Bed Fusion)方式等があることが知られている。
【0003】
指向性エネルギー堆積方式は、ビーム(レーザビーム及び電子ビーム等)の照射と材料の供給を行う加工ヘッドの位置を制御することで付加製造を行う。指向性エネルギー堆積方式には、LMD(Laser Metal Deposition)等が含まれる。
【0004】
粉末床溶融結合方式は、平らに敷き詰められた粉末材料に対して、ビームを照射することで付加製造を行う。粉末床溶融結合方式には、SLM(Selective Laser Melting)、EBM(Electron Beam Melting)等が含まれる。
【0005】
指向性エネルギー堆積方式のLMDは、例えば硬質材を含む粉末材料等を噴射しながらビームを照射することにより、粉末材料等を溶融させた後に凝固させることができる。これにより、LMDは、例えば、部分的に耐摩耗性や強度を向上させるため、基材に対して硬質の付加製造物を付加する肉盛技術として利用されている。特許文献1には、基材に粉末材料からなる付加製造物を造形する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
基材に対して硬質の付加製造物を付加する場合、基材の表面にビームが照射されることにより溶融池が形成され、この溶融池に、硬質材を含む粉末材料が加えられる。溶融池内で粉末材料が溶融した後に凝固することにより、基材の表面に第一層が形成される。第一層には、粉末材料に含まれる硬質材の他に、溶融池を構成する基材が混入する。このように、基材の表面に形成された第一層には基材が混入しているので、第一層を表層とした場合に当該表層の硬さが想定された値よりも低くなることが懸念される。
【0008】
そこで、第一層の表面に、粉末材料からなる第二層をさらに形成することにより、基材の混入による影響を低減することが考えられる。
【0009】
第一層の表面にさらに第二層を形成する場合、第一層の表面にビームが照射されることにより溶融池が形成され、溶融池に粉末材料が加えられる。粉末材料が凝固することにより第二層が形成される。第二層には、溶融池を構成する第一層が混入する。第一層には基材が混入しているが、第二層に混入する基材の割合は、第一層よりも小さくなっている。これにより、造形物において第一層よりも表層側に位置する第二層の硬さを向上させることができると期待される。
【0010】
しかし、基材に溶融池を形成させるための溶融条件と、第一層に溶融池を形成させるための溶融条件とは異なるので、第一層と同じ条件で第二層を形成すると、第一層と第二層との境界部分の溶け込み不良等により、第一層と第二層との間の接合強度が低下して、全体として造形物の強度が不足する恐れがある。この結果、全体として造形物の強度が低下することが懸念される。
【0011】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、造形物の表層側の硬さを向上させつつ、全体として造形物の強度を向上させることのできる付加製造装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、
鉄系材料よりも硬質な粉末材料を供給する粉末材料供給装置と、
ビームの照射により前記粉末材料を溶融して、前記鉄系材料からなる基材の表面に第一層を形成し、既に形成された前記第一層の表面にビームの照射により前記粉末材料を溶融して第二層を形成することにより、前記基材の表面に造形物を形成するビーム照射装置と、
を備え、
前記第一層が形成されるときに前記ビーム照射装置から加えられる入熱量よりも、前記第二層が形成されるときに前記ビーム照射装置から加えられる入熱量が大きい、付加製造装置にある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、第一層のビードへの基材の混入量よりも、第二層のビードへの基材の混入量は少なくすることができるので、第一層のビードよりも第二層のビードの硬さを向上させることができる。この結果、造形物の硬さを全体として向上させることができる。
【0014】
また、本発明の一態様によれば、第一層のビードが形成されるときにビーム照射装置から加えられる入熱量よりも、第二層のビードが形成されるときにビーム照射装置から加えられる入熱量を大きくすることができる。これにより、第二層のビードが形成されるときに粉末材料を適切に溶融させることができるので、第一層のビードと第二層のビードとの接合強度を向上させることができる。この結果、造形物の強度を全体として向上させることができる。
【0015】
以上のごとく、上記の態様によれば、造形物の表層側の硬さを向上させつつ、全体として造形物の強度を向上させることのできる付加製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態1の付加製造装置を示す模式図である。
【
図2】実施形態1の付加製造装置の移動装置を説明するための図である。
【
図3】実施形態1の付加製造装置における溶融ビームの溶融ビーム照射範囲と補助ビームの補助ビーム照射範囲とを説明するための図である。
【
図4】実施形態1の付加製造装置において基材に付加製造物を造形する場合のビームパワー密度とビーム照射範囲との関係を示すビームプロファイルである。
【
図5】実施形態1の付加製造装置による第一層のビードを造形する際の途中状態を示す平面図である。
【
図6】実施形態1の付加製造装置による第二層のビードを造形する際の途中状態を示す断面図である。
【
図7】実施形態1の付加製造装置において、基材に加えられる入熱量を示す模式図である。
【
図8】実施形態2の付加製造装置による第二層のビードを造形する際の途中状態を示す平面図である。
【
図9】実施形態3の付加製造装置による第二層のビードを造形する際の途中状態を示す平面図である。
【
図10】実施形態3の付加製造装置において、基材に加えられる入熱量を示す模式図である。
【
図11】実施形態4の付加製造装置による第三層のビードを造形する際の途中状態を示す平面図である。
【
図12】実施形態4の付加製造装置による第三層のビードを造形する際の途中状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態1)
1.付加製造装置の概要
本形態の付加製造装置は、例えば、指向性エネルギー堆積方式であってLMD方式を採用する。この付加製造装置は、硬質材である硬質粉末材料に結合粉末材料を混合した粉末材料を基材に向けて噴射しながらビームを照射することにより、基材に硬質の付加製造物を造形する。粉末材料、特に、硬質粉末材料と基材は、異なる材料である。また、粉末材料は、硬質粉末材料と結合粉末材料とを固めた造粒粉末でも良い。
【0018】
ここでは、硬質材の一例である炭化タングステン(WC)の硬質粉末材料等を用いて造形される硬質の付加製造物を、鉄系材料の一例である炭素鋼(S45C)を用いて形成された基材に造形する場合について説明する。ただし、硬質材は、基材よりも硬質な材料であればよく、例えばハイスピード鋼等、任意の材料を選択できる。また、鉄系材料は炭素鋼(S45C)に限られず任意の鉄系材料を選択できる。
【0019】
結合粉末材料は、炭化タングステン(WC)を結合する超硬バインダとして作用するコバルト(Co)を用いる。ここで、炭化タングステン(WC)の融点(凝固点)は、2870℃であり、超硬バインダであるコバルト(Co)の融点(凝固点)の1495℃よりも高い。尚、超硬バインダはコバルト(Co)に限られず、例えば、ニッケル(Ni)を超硬バインダとして用いることも可能である。
【0020】
2.付加製造装置100の構成
図1に示すように、付加製造装置100は、粉末材料供給装置110、ビーム照射装置120及び制御装置130を主に備える。尚、本例の付加製造装置100の基本的な構成及び動作については、周知のLMD型の付加製造装置と同等である。このため、付加製造装置100についての詳細な構成及び動作等の説明については省略する。
【0021】
粉末材料供給装置110は、ホッパ111、バルブ112、ガスボンベ113及び噴射ノズル114を備える。ホッパ111は、結合粉末材料P2が混合された硬質粉末材料P1を貯蔵する。尚、以下の説明において、硬質粉末材料P1と結合粉末材料P2とを混合した粉末材料を「粉末材料P」と称呼する。
【0022】
バルブ112は、粉末導入バルブ112a、粉末供給バルブ112b及びガス導入バルブ112cを備える。粉末導入バルブ112aは、配管111aを介してホッパ111と接続される。粉末供給バルブ112bは、配管114aを介して噴射ノズル114と接続される。ガス導入バルブ112cは、配管113aを介してガスボンベ113と接続される。
【0023】
噴射ノズル114及び配管114aは、噴射ノズル114側に傾斜部分を有する筒状の容器115に収容される。噴射ノズル114は、容器115の傾斜部分の先端に配置される。そして、噴射ノズル114は、配管114aを介して、例えば、ガスボンベ113から供給される高圧の窒素により、粉末材料Pを基材B、より詳しくは、造形物Wを造形する造形面B1に向けて噴射する。尚、粉末材料Pを噴射するガスは、窒素に限定されるものではなく、不活性ガスであればアルゴン等でも良い。
【0024】
ビーム照射装置120は、溶融ビーム照射装置121と、補助ビーム照射装置122と、溶融ビーム照射装置121及び補助ビーム照射装置122の各々を独立して相対移動させる移動装置123を主に備える。溶融ビーム照射装置121と補助ビーム照射装置122とは、移動装置123によって各々が照射するビームの照射方向(光軸)が交差する、或いは、ねじれの位置関係を有するように配置される。
【0025】
溶融ビーム照射装置121は、溶融ビーム生成部121aにより生成され供給される溶融ビームMBMを基材Bの造形面B1に直交するように照射する溶融ビーム照射部121bを備える。溶融ビーム生成部121aは、制御装置130によって制御されて、溶融ビームMBMを生成する。
【0026】
溶融ビーム照射部121bは、容器115の内部において、噴射ノズル114の近傍に配置される。具体的に、溶融ビーム照射部121bは、噴射ノズル114から噴射される粉末材料Pの供給位置に向けて溶融ビームMBMが照射可能となるように、容器115の傾斜部分の先端に配置される。そして、溶融ビーム照射部121bは、容器115の内部に配置された図示省略のコリメータレンズや集光レンズ等の光学系を通して溶融ビームMBMを照射する。
【0027】
溶融ビームMBMは、基材Bを融点以上に加熱して溶融させることにより溶融池MPを形成し、この溶融池において粉末材料供給装置110から供給される粉末材料Pを融点以上に加熱して溶融させる。尚、「加工ヘッド」は、噴射ノズル114、溶融ビーム照射装置121及び容器115を含んで構成されることにより、粉末材料Pと溶融ビームMBMとは一体に移動する。
【0028】
補助ビーム照射装置122は、補助ビーム生成部122aにより生成され供給される補助ビームABMを基材Bの造形面B1に斜め上方から照射する補助ビーム照射部122bを備える。補助ビーム生成部122aは、制御装置130によって制御されて、補助ビームABMを生成する。
【0029】
補助ビーム照射部122bは、筒状の容器122cにおいて、基材Bに対向する先端に配置される。具体的に、補助ビーム照射部122bは、溶融ビーム照射装置121から照射される溶融ビームMBMの溶融ビーム照射範囲に重ねて補助ビームABMが照射可能となるように、容器122cの先端に配置される。そして、補助ビーム照射部122bは、容器122cの内部に配置された図示省略のコリメータレンズや集光レンズ等の光学系を通して補助ビームABMを照射する。
【0030】
補助ビーム照射部122bは、形成された溶融池MPに対し、溶融ビーム照射範囲の外側、つまり溶融ビーム照射装置121の走査方向にて前側及び後側、特に、少なくとも後側に向けて補助ビームABMを照射する。そして、補助ビームABMは、基材Bの造形面B1を融点未満に予熱(加熱)すると共に、溶融ビームMBMによって形成された溶融池MPが凝固した部分を融点未満に保温する。
【0031】
移動装置123は、
図1及び
図2に示すように、第一ロボットアーム123a及び第二ロボットアーム123bを主に備える。第一ロボットアーム123aは、溶融ビーム照射装置121(即ち、加工ヘッド)を支持する。そして、第一ロボットアーム123aは、基材Bの造形面B1に対して、溶融ビームMBMの照射方向(即ち、溶融ビームMBMの光軸)が直交する状態で、溶融ビーム照射装置121を相対変位させる。
【0032】
第二ロボットアーム123bは、補助ビーム照射装置122を支持する。具体的に、第二ロボットアーム123bは、溶融ビームMBMの照射方向(溶融ビームMBMの光軸)に対して補助ビームABMの照射方向(補助ビームABMの光軸)が傾いた姿勢、換言すれば、造形面B1に対して補助ビームABMの照射方向(補助ビームABMの光軸)が傾いた姿勢で、補助ビーム照射装置122を支持する。そして、第二ロボットアーム123bは、補助ビーム照射装置122を、溶融ビーム照射装置121に追従させて、基材Bに対して相対変位させる。なお、ビームの照射系は固定し、移動装置123の代わりに基材Bを保持する移動可能なステージ等を備える構成としてもよい。また、移動装置123を無くし、ガルバノスキャナヘッド等の一つのレーザヘッドで溶融ビームMBMと補助ビームABMの各径や各位置を独立制御する構成としてもよい。
【0033】
制御装置130は、CPU、ROM、RAM、インターフェース等を主要構成部品とするコンピュータ装置である。制御装置130は、粉末材料供給装置110の粉末供給を制御する。具体的に、制御装置130は、粉末供給バルブ112b及びガス導入バルブ112cの開閉を制御することにより、噴射ノズル114から基材Bの造形面B1に向けた粉末材料Pの噴射供給を制御する。
【0034】
制御装置130は、ビーム照射装置120、即ち溶融ビーム照射装置121、補助ビーム照射装置122及び移動装置123のビーム照射を制御する。具体的に、制御装置130は、溶融ビーム照射装置121の溶融ビーム生成部121a及び補助ビーム照射装置122の補助ビーム生成部122aの動作をそれぞれ制御する。つまり、制御装置130は、溶融ビーム照射装置121及び補助ビーム照射装置122の各々を独立して制御可能であり、
図3に示す溶融ビーム照射範囲MSと補助ビーム照射範囲ASを連動させずに変化可能である。
【0035】
そして、本例においては、
図3に示すように、制御装置130は、溶融ビーム照射部121bから溶融ビーム照射範囲MSが円形状の照射形状となる溶融ビームMBMを照射する。また、補助ビーム照射部122bから補助ビーム照射範囲ASが溶融ビーム照射範囲MSの全部に重畳し且つ溶融ビーム照射範囲MSの外側を囲う円形状の照射形状となる補助ビームABMを照射する。そして、制御装置130は、溶融ビーム照射範囲MSの中心と補助ビーム照射範囲ASの中心との同心を維持して、溶融ビームMBM及び補助ビームABMを走査方向SDに走査する。ただし、溶融ビーム照射範囲MSの中心と補助ビーム照射範囲ASの中心とは同心でなくてもよい。
【0036】
ここで、
図3に示すように、本例では溶融ビーム照射範囲MSが円形状であるので、当該溶融ビーム照射範囲MSの大きさは、走査方向SDに平行であって溶融ビーム照射範囲MSの最長部分、すなわち溶融ビーム照射範囲MSの中心を通る直線MLと、溶融ビーム照射範囲MSの外周との交点間の距離(溶融ビーム照射範囲MSの直径(溶融ビーム照射径MD))で定義する。また、補助ビーム照射範囲ASが円形状であって溶融ビーム照射範囲MSの中心と補助ビーム照射範囲ASの中心とが同心であるので、当該補助ビーム照射範囲ASの大きさは、走査方向SDに平行であって溶融ビーム照射範囲MSの中心を通る直線ML(補助ビーム照射範囲ASの中心を通る直線KL)と、補助ビーム照射範囲ASの外周との交点間の距離(補助ビーム照射範囲ASの直径(補助ビーム照射径AD))で定義する。
【0037】
溶融ビームMBMは、主として、基材Bの造形面B1において粉末材料Pを溶融することにより、
図1に示すように、複数のビードNによる造形物Wを造形する。また、補助ビームABMは、主として、基材Bの造形面B1を予熱し、また、基材Bの造形面B1に付加製造された造形物W(より詳しくは、粉末材料Pが溶融した溶融池MP)の温度低下を抑制することにより保温する。
【0038】
制御装置130は、溶融ビームMBM及び補助ビームABMの各々の出力条件を独立して制御する。ここで、出力条件としては、例えば、それぞれのレーザ出力や、レーザ光照射範囲(溶融ビームMBMの溶融ビーム照射範囲MS及び補助ビームABMの補助ビーム照射範囲AS)の各単位面積当たりのレーザ出力(光出力)であるパワー密度(溶融ビームMBMの溶融ビームパワー密度及び補助ビームABMの補助ビームパワー密度)の分布形状、即ち、ビームプロファイルを挙げることができる。
【0039】
制御装置130は、
図4に示すように、溶融ビームMBMのパワー密度のビームプロファイルにおけるピークMBP1を、補助ビームABMのパワー密度のビームプロファイルにおけるピークABP1より増加させる制御を行う。溶融ビームMBMのレーザ出力は、硬質粉末材料P1及び結合粉末材料P2を溶融して溶融池MPを形成できる温度となるように制御される。また、補助ビームABMのレーザ出力は、硬質粉末材料P1及び結合粉末材料P2を溶融させることがない所定の温度となるように制御される。
【0040】
また、制御装置130は、移動装置123の第一ロボットアーム123a及び第二ロボットアーム123bを作動させることにより、補助ビームABMを溶融ビームMBMの軌跡に追従させる。この場合、制御装置130は、第二ロボットアーム123bを作動させることにより、補助ビームABMの補助ビーム照射範囲ASの大きさや補助ビームABMの光軸の溶融ビームMBMの光軸に対する角度等を制御することができる。
【0041】
これにより、溶融ビームMBMの溶融ビーム照射範囲MSの大きさに対する補助ビームABMの補助ビーム照射範囲ASの大きさが可変となるように、制御装置130は、溶融ビーム照射装置121に対する補助ビーム照射装置122の相対的な姿勢を制御することができる。
【0042】
更に、制御装置130は、基材Bの造形面B1に対する溶融ビームMBM及び補助ビームABMの相対的な走査を制御する。具体的に、本例においては、制御装置130は、モータM1の回転を制御して基材Bを中心軸線Cの回りに回転させると共に、モータM2の回転を制御して基材Bを中心軸線Cの方向に移動させる。これにより、基材Bの周面に対する溶融ビームMBM及び補助ビームABMの相対的な走査を制御する。
【0043】
尚、本例においては、制御装置130が基材Bを回転及び移動させるようにする。しかしながら、制御装置130が移動装置123を制御することにより、溶融ビーム照射装置121及び補助ビーム照射装置122を基材Bの造形面B1に対して相対的に移動させることが可能であることは言うまでもない。
【0044】
更に、制御装置130は、撮像装置140と接続される。撮像装置140は、溶融ビーム照射装置121に組み付けられており、基材Bの造形面B1に形成された造形物W(ビードN)の状態を撮像する。撮像装置140は、例えば、赤外線カメラやサーモグラフィ等を用いることができる。
【0045】
3.付加製造方法
次に、付加製造装置100による付加製造方法、具体的に、基材Bの表面に複数層のビードNを形成する肉盛加工について、
図3、
図5~
図7を参照して説明する。
【0046】
まず、基材Bの表面に第一層のビードN1を形成する。
図5に示すように、第一層のビードN1を形成するための溶融ビームMBM1を照射することにより、溶融ビーム照射範囲MSにおいて、基材Bの造形面B1の一部を基材Bの融点以上に加熱して溶融させることで溶融池MPを形成し、さらに溶融池MPに供給された粉末材料Pを融点以上に加熱して溶融させる溶融処理を行う。
【0047】
そして、
図5に白抜きの矢線で示すように、溶融ビームMBM1を走査方向SDに走査する(本例では、基材Bが回転することにより走査するが、
図5では便宜上、溶融ビームMBM1を走査するものとして説明する。)ことで溶融池MPを拡大させることにより、造形物W(ビードN1)を造形する。
【0048】
ここで、本例の造形物W(ビードN1)は、硬質粉末材料P1の炭化タングステン(WC)が超硬バインダとして作用する結合粉末材料P2のコバルト(Co)によって結合されて形成されるものである。そして、第一層の造形物Wは、基材Bの周方向に沿って筋状に形成される複数のビードN1によって構成される(
図1参照)。溶融ビームMBMは、溶融池MPを拡大させるように粉末材料Pを溶融させた後、走査方向SDに順次移動する。これにより、基材Bの表面に第一層のビードN1が形成される。
【0049】
第一層のビードN1においては、粉末材料Pに、溶融した基材Bの一部が混入した状態になっている。
【0050】
次に、
図3および
図6に示すように、第二層のビードN2を、第一層のビードN1の表面に形成する。補助ビームABMを照射することにより、造形物W(ビードN)の付加製造処理における前処理である予熱処理を行う。この予熱処理における補助ビームABMのレーザ出力は、第一層を構成する粉末材料Pの融点よりも低い温度に制御される。換言すると、補助ビームABMのレーザ出力は、第一層のビードN1が溶融せずに所定の温度となるように制御される。
【0051】
続いて、
図6に示すように、第二層のビードN2を形成するための溶融ビームMBM2を照射することにより、溶融ビーム照射範囲MSにおいて、第一層のビードN1を融点以上に加熱して溶融させることで溶融池MPを形成し、溶融池MPに供給された粉末材料Pを溶融させる溶融処理を行う。また、この溶融処理においては、補助ビームABMの補助ビーム照射範囲ASのうち、溶融ビームMBM2の走査方向SDにて溶融ビームMBM2よりも前側の補助ビーム照射範囲ASFにて、補助ビームABMの一部により溶融池MPの形成処理の前処理としての予熱処理を行う。上記の補助ビーム照射範囲ASFを照射する補助ビームABMが予熱ビームに相当する。
【0052】
そして、
図3および
図6に白抜きの矢線で示すように、溶融ビームMBM2を走査方向SDに走査することで溶融池MPを拡大させることにより、造形物W(ビードN2)を造形する。第二層のビードN2が形成されるときには、補助ビームABMによって基材Bが予熱されているので、第一層が形成されるときに加えられる入熱量よりも、第二層が形成されるときに加えられる入熱量が大きくなっている。なお、本形態における入熱量は、ビーム照射装置120によって加えられた単位時間当たりの熱量(J/sec)を、ビーム照射装置120の走査速度(cm/sec)で除した値(J/cm)である。
【0053】
さらに、本形態においては、第一層のビードN1が形成されるときに溶融ビーム照射装置121から照射される溶融ビームMBM1のパワー密度よりも、第二層のビードN2が形成されるときに溶融ビーム照射装置121から照射される溶融ビームMBM2のパワー密度が大きく設定されている。これにより、第一層が形成されるときに加えられる入熱量よりも、第二層が形成されるときに加えられる入熱量が、さらに大きくなっている。
【0054】
第二層のビードN2を形成するときの溶融ビームMBM2のパワー密度は、第一層のビードN1を形成するときの溶融ビームMBM1のパワー密度の、1.05倍~1.15倍であることが好ましい。第二層のビードN2を形成するときの溶融ビームMBM2のパワー密度が、第一層のビードN1を形成するときの溶融ビームMBM1のパワー密度の1.05倍より小さいと、第一層のビードN1に空孔が形成される恐れがあり、第一層と第二層との接合強度が低下することが懸念される。また、第二層のビードN2を形成するときの溶融ビームMBM2のパワー密度が、第一層のビードN1を形成するときの溶融ビームMBM1のパワー密度の1.15倍より大きいと、第一層のビードN1に加えられる入熱量が過多となるので、金属蒸発反張力による飛散金属量(スパッタ)が増加したり、第一層のビードN1が過剰に溶融して表面に凹凸が形成されたりすることにより、第二層のビードN2の品質が低下する恐れがある。
【0055】
また、第一層のビードN1の造形時における溶融ビームMBM1の第一走査速度は、第二層のビードN2の造形時における溶融ビームMBM2の第二走査速度よりも大きく設定されている。これにより、第一層が形成されるときに加えられる入熱量よりも、第二層が形成されるときに加えられる入熱量が、さらに大きくなっている。
【0056】
次いで、溶融ビームMBM2は、溶融池MPを拡大させるように粉末材料Pを溶融させた後、走査方向SDに順次移動する。このため、補助ビームABMの補助ビーム照射範囲ASのうち、溶融ビームMBM2の走査方向SDにて溶融ビームMBM2よりも後側の補助ビーム照射範囲ASBにおいて、補助ビームABMの一部が溶融池MPを照射する。これにより、補助ビームABMは、造形物Wの付加製造の後処理としての保温処理を行う。この保温処理により、第一層が形成されるときに加えられる入熱量よりも、第二層が形成されるときに加えられる入熱量が、さらに大きくなっている。また、第二層のビードN2が急冷されることが抑制されるようになっている。補助ビームABMによって、第二層のビードN2の冷却速度は、540℃/sec以下に制御されるようになっている。以上により、第二層のビードN2が、第一層のビードN1の表面に形成される。
【0057】
図7に示すように、第一層のビードN1が形成されるときの溶融ビームMBM1から基材Bに加えられる入熱量よりも、第二層のビードN2が形成されるときの溶融ビームMBM1および補助ビームABMから第一層のビードN1に加えられる入熱量は大きくなっている。詳細には、溶融ビームMBM2のピーク部分においては、溶融ビームMBM1と比べて、ビームパワー密度が大きいこと、走査速度が小さいこと、および補助ビームABMが照射されている分だけ底上げされていることから、第一層のビードN1に加えられる入熱量が大きくなっている。
【0058】
4.本形態の作用効果
続いて、本形態の作用効果について説明する。本形態によれば、溶融ビームMBMの照射により粉末材料Pを溶融して、鉄系材料からなる基材Bの表面に第一層のビードN1を形成し、既に形成された第一層のビードN1の表面に溶融ビームMBMの照射により粉末材料Pを溶融して第二層のビードN2を形成することにより、基材Bの表面に造形物Wが形成される。これにより、第一層のビードN1への基材Bの混入量よりも、第二層のビードN2への基材Bの混入量は少なくすることができるので、第一層のビードN1よりも第二層のビードN2の硬さを向上させることができる。この結果、造形物Wの硬さを全体として向上させることができる。
【0059】
また、本形態によれば、第二層のビードN2が形成されるときに補助ビーム照射装置122を用いることによって、第一層のビードN1が形成されるときに溶融ビーム照射装置121から加えられる入熱量よりも、第二層のビードN2が形成されるときに溶融ビーム照射装置121および補助ビーム照射装置122から加えられる入熱量を大きくすることができる。
【0060】
さらに、本形態によれば、第一層のビードN1が形成されるときに溶融ビーム照射装置121から照射される溶融ビームMBM1のパワー密度よりも、第二層のビードN2が形成されるときに溶融ビーム照射装置121から照射される溶融ビームMBM2のパワー密度が大きい。これにより、第一層のビードN1が形成されるときに溶融ビーム照射装置121から加えられる入熱量よりも、第二層のビードN2が形成されるときに溶融ビーム照射装置121および補助ビーム照射装置122から加えられる入熱量を大きくすることができる。
【0061】
上記のように、本形態によれば、第一層のビードN1が形成されるときにビーム照射装置120から加えられる入熱量よりも、第二層のビードN2が形成されるときにビーム照射装置120から加えられる入熱量が大きいので、第二層のビードN2が形成されるときに第一層のビードN1を溶融させて溶融池MPを形成し、溶融池MPに供給された粉末材料Pを適切に溶融させることができる。これにより、第一層のビードN1と第二層のビードN2との接合強度を向上させることができる。この結果、造形物Wの強度を全体として向上させることができる。
【0062】
さらに、本形態によれば、第一層のビードN1が形成されるときに溶融ビーム照射装置121および補助ビーム照射装置122が走査される第一走査速度は、第二層のビードN2が形成されるときに溶融ビーム照射装置121および補助ビーム照射装置122が走査される第二走査速度よりも大きく設定されている。このように本形態によれば、第二層のビードN2を形成するときの溶融ビーム照射装置121および補助ビーム照射装置122の走査速度は第一走査速度と比較して小さいので、既に形成された第一層のビードN1を溶融させやすくするとともに、粉末材料Pも、より溶融させやすくすることができる。これにより、第一層のビードN1と第二層のビードN2との接合強度をさらに向上させることができる。さらに、第二層のビードN2を形成するときの溶融ビーム照射装置121および補助ビーム照射装置122の走査速度が第一走査速度と比較して小さいので、形成された第二層のビードN2が急激に冷却されることを抑制できる。これにより、第二層のビードN2に割れ等の不具合が生じることが抑制される。この結果、第二層のビードN2の品質を向上させることができるので、全体として造形物Wの品質を向上させることができる。
【0063】
さらに、本形態によれば、補助ビーム照射装置122は、走査方向SDについて、溶融ビーム照射範囲MSよりも走査方向SDの後方の範囲を、融点より低い温度に加熱する構成とされている。これにより、第二層のビードN2が、急冷凝固による割れが発生することを抑制できる。これにより、造形物Wの品質を向上させることができる。
【0064】
また、本形態によれば、粉末材料Pは超硬合金を主成分として含む。上記したように、粉末材料Pは、超硬バインダとしてコバルトを含む。コバルトの融点は基材Bを構成する鉄系材料の融点と同程度であり、また、硬質材である炭化タングステンの熱伝導率は基材Bよりも高い。このため、第一層のビードN1溶融させるために必要な入熱量を大きくする必要がある。本形態によれば、このような場合であっても、第一層のビードN1と第二層のビードN2との接合強度を向上させることができるので、造形物Wの強度を全体として向上させることができる。
【0065】
(実施形態2)
次に、実施形態2について
図8を参照しつつ説明する。
図7に示すように、本形態においては、第二層のビードN2を形成するとき、補助ビーム照射装置122は、走査方向SDについて溶融ビーム照射範囲MSの前方の領域に、補助ビームABMを照射する。補助ビームABMの形状は、走査方向SDと直交する方向を長軸とし、走査方向SDを短軸とする楕円形状とされる。
【0066】
補助ビーム照射範囲ASの長軸方向の長さ寸法は、溶融ビーム照射範囲MSの直径よりも長い形状とされている。これにより、溶融ビーム照射範囲MSは、補助ビームABMにより確実に予熱されるようになっている。
【0067】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0068】
第二層のビードN2が形成されるときに補助ビーム照射装置122を用いることによって、第一層のビードN1が形成されるときに溶融ビーム照射装置121から加えられる入熱量よりも、第二層のビードN2が形成されるときに溶融ビーム照射装置121および補助ビーム照射装置122から加えられる入熱量を大きくすることができる。これにより、第一層のビードN1と第二層のビードN2との接合強度を向上させることができる。この結果、造形物Wの強度を全体として向上させることができる。
【0069】
(実施形態3)
次に、実施形態3について
図9および
図10を参照して説明する。
図9に示すように、本形態においては、第二層のビードN2が形成されるときに、補助ビームABMが照射されない。
【0070】
本形態においては、第一層のビードN1が形成されるときに溶融ビーム照射装置121から照射される溶融ビームMBM1のパワー密度よりも、第二層のビードN2が形成されるときに溶融ビーム照射装置121から照射される溶融ビームMBM2のパワー密度が大きく設定されている。これにより、
図10に示すように、第一層が形成されるときに溶融ビームMBM1から基材Bに加えられる入熱量よりも、第二層が形成されるときに溶融ビームMBM2から基材Bに加えられる入熱量が、さらに大きくなっている。
【0071】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0072】
(実施形態4)
次に、実施形態4について
図11および
図12を参照しつつ説明する。
図12に示すように、本形態においては、第二層のビードN2の表面に、第三層のビードN3が形成される。
【0073】
本形態においては、第一層のビードN1と、第二層のビードN2は、実施形態1と同様に形成される。
【0074】
図11に白抜きの矢線で示すように、溶融ビームMBM3を走査方向SDに走査する。これにより、第三層のビードN3を、第二層のビードN2の表面に形成する。補助ビームABMを照射することにより、造形物W(ビードN)の付加製造処理における前処理である予熱処理を行う。この予熱処理における補助ビームABMのレーザ出力は、第二層のビードN2が溶融せずに所定の温度となるように制御される。
【0075】
続いて、
図12に示すように、第三層のビードN3を形成するための溶融ビームMBM3を照射することにより、溶融ビーム照射範囲MSにおいて、第二層のビードN2及び粉末材料Pを溶融して溶融池MPを形成する溶融処理を行う。また、この溶融処理においては、補助ビームABMの補助ビーム照射範囲ASのうち、溶融ビームMBM3の走査方向SDにて溶融ビームMBMよりも前側の補助ビーム照射範囲ASFにて、補助ビームABMの一部により溶融池MPの形成処理の前処理としての予熱処理を行う。
【0076】
そして、第三層のビードN3の造形時と同様に、溶融ビームMBM3を走査方向SDに走査することで溶融池MPを拡大させることにより、造形物W(ビードN)を造形する。
【0077】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0078】
本形態においては、第二層のビードN2が形成されるときに溶融ビーム照射装置121から照射される溶融ビームMBM2のパワー密度よりも、第三層のビードN3が形成されるときに溶融ビーム照射装置121から照射される溶融ビームMBM3のパワー密度が大きく設定されている。これにより、第二層が形成されるときに加えられる入熱量よりも、第三層が形成されるときに加えられる入熱量が、さらに大きくなっている。また、粉末材料Pを適切に溶融させることができるので、第二層のビードN2と第三層のビードN3との接合強度を向上させることができる。この結果、造形物Wの強度を全体として向上させることができる。
【0079】
また、第二層のビードN2の造形時における溶融ビームMBM2の走査速度は、第三層のビードN3の造形時における溶融ビームMBM3の走査速度よりも大きく設定されている。これにより、第二層が形成されるときに加えられる入熱量よりも、第三層が形成されるときに加えられる入熱量が、さらに大きくなっている。
【0080】
本形態によれば、第二層のビードN2の表面に第三層のビードN3を形成することにより、第三層のビードN3への基材Bの混入をさらに抑制することができる。これにより、第三層のビードN3の強度を向上させることができる。
【0081】
また、第二層のビードN2が形成されるときにビーム照射装置120から加えられる入熱量よりも、第三層のビードN3が形成されるときにビーム照射装置120から加えられる入熱量が大きいので、粉末材料Pを適切に溶融させることができる。これにより、第二層のビードN2と第三層のビードN3との接合強度を向上させることができる。この結果、造形物Wの強度を全体として向上させることができる。
【0082】
ビードNが、第一層、第二層、さらに第三層と積層されるにしたがって、ビードNからなる造形物Wの熱容量も増加する。すると、第二層のビードN2を溶融させるための熱量、および第三層のビードN3を形成するための熱量も増大する。また、ビードNを構成する粉末材料Pの熱伝導率が高いため、溶融ビーム照射範囲MSの温度が上がりにくくなる傾向となる。本形態においては、熱容量の増加および熱伝導率の上昇に対応して、第三層のビードN3が形成されるときにビーム照射装置120から加えられる入熱量も大きくなっているので、第二層のビードN2と第三層のビードN3との接合強度を向上させることができる。この結果、造形物Wの強度を全体として向上させることができる。
【0083】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【0084】
実施形態1~4では、付加製造装置100において、粉末材料供給装置110により、基材Bの造形面B1に対して硬質粉末材料P1及び結合粉末材料P2からなる粉末材料Pを噴射して供給するようにした。しかしながら、造形面B1への材料供給に関しては、粉末材料Pに限定されず、金属製の線形材料からなる、例えば、ワイヤ等を材料供給装置により供給することも可能である。
【0085】
実施形態1~4においては、第二層を形成する溶融ビームMBM2のパワー密度は、第一層を形成する溶融ビームMBM1のパワー密度より大きいものとしたが、これに限られず、第二層を形成する溶融ビームMBM2のパワー密度は、第一層を形成する溶融ビームMBM1のパワー密度と同じであってもよい。
【0086】
実施形態1~4においては、第一層のビードN1が形成されるときに溶融ビーム照射装置121が走査される第一走査速度は、第二層のビードN2が形成されるときに溶融ビーム照射装置121が走査される第二走査速度よりも大きく設定される構成としたが、これに限られず、第一層のビードN1が形成されるときに溶融ビーム照射装置121が走査される第一走査速度は、第二層のビードN2が形成されるときに溶融ビーム照射装置121が走査される第二走査速度と同じであってもよい。
【0087】
実施形態4においては、第一層~第三層のビードN1~N3によって造形物Wが形成される構成としたが、これに限られず、四層以上のビードNによって造形物Wが形成されてもよい。
【符号の説明】
【0088】
100…付加製造装置、110…粉末材料供給装置、120…ビーム照射装置、121…溶融ビーム照射装置、122…補助ビーム照射装置、B…基材、B1…造形面、W…造形物、N,N1,N2,N3…ビード、MP…溶融池、ABM…補助ビーム、MBM、MBM1,MBM2,MBM3…溶融ビーム、AS…補助ビーム照射範囲、MS…溶融ビーム照射範囲、P…粉末材料、SD…走査方向