(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025169
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】保護膜形成用シート、及び保護膜付きワーク加工物の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20240216BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
H01L21/52 C
H01L21/78 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128400
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】山本 大輔
【テーマコード(参考)】
5F047
5F063
【Fターム(参考)】
5F047BA34
5F047BA37
5F047BA54
5F047BB03
5F047BB19
5F063AA15
5F063AA35
5F063AA44
5F063BA20
5F063BA41
5F063BA43
5F063BA44
5F063BA45
5F063BA47
5F063BA48
5F063CA04
5F063CA06
5F063CA10
5F063CB07
5F063CB28
5F063CC21
5F063DD25
5F063DD55
5F063DD59
5F063DD69
5F063DD85
5F063DD93
5F063DD96
5F063EE31
5F063EE42
5F063EE43
5F063EE44
5F063EE90
(57)【要約】
【課題】保護膜を形成可能な保護膜形成フィルムと剥離フィルムを備えた保護膜形成用シートであって、保護膜形成フィルムのワークへの貼付時に、保護膜付きワーク加工物の製造効率を低下させずに保護膜形成フィルムによるワークの汚染を抑制でき、保護膜形成用シートの使用時に剥離フィルムの加工が不要で、使用後の剥離フィルムを再利用できる保護膜形成用シートの提供。
【解決手段】第1剥離フィルムと、第1剥離フィルムより剥離力が大きい第2剥離フィルムと、これらの間に設けられた保護膜形成フィルムと、を備えた保護膜形成用シートであって、2枚以上の保護膜形成フィルムが第1剥離フィルムの長手方向に配置され、保護膜形成フィルムの平面形状が円形又は略円形であり、保護膜形成フィルムの直径が特定範囲であり、第1剥離フィルム及び第2剥離フィルムのいずれか一方又は両方が切れ込みを実質的に有しない、保護膜形成用シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護膜形成用シートであって、
前記保護膜形成用シートは、第1剥離フィルムと、前記第1剥離フィルムよりも剥離力が大きい第2剥離フィルムと、前記第1剥離フィルムと前記第2剥離フィルムとの間に設けられた保護膜形成フィルムと、を備え、
2枚以上の前記保護膜形成フィルムが、1枚の前記第1剥離フィルムと1枚の前記第2剥離フィルムの長手方向に沿って配置されており、
前記保護膜形成フィルムの平面形状が、円形又は略円形であり、
前記保護膜形成フィルムの直径が、135mm以上150mm未満、185mm以上200mm未満、285mm以上300mm未満、又は435mm以上450mm未満であり、
前記第1剥離フィルムと前記第2剥離フィルムとのいずれか一方又は両方が、その前記保護膜形成フィルムの外周部と一致する位置に、切れ込みを実質的に有しない、保護膜形成用シート。
【請求項2】
前記第2剥離フィルムの前記保護膜形成フィルムに対する剥離力と、前記第1剥離フィルムの前記保護膜形成フィルムに対する剥離力と、の差が、30mN/100mm以上200mN/100mm未満であり、
前記第1剥離フィルムの前記保護膜形成フィルムに対する剥離力が20mN/100mm以上であり、
前記第2剥離フィルムの前記保護膜形成フィルムに対する剥離力が500mN/100mm以下である、請求項1に記載の保護膜形成用シート。
【請求項3】
前記第1剥離フィルムが前記切れ込みを実質的に有しない、請求項1又は2に記載の保護膜形成用シート。
【請求項4】
保護膜付きワーク加工物の製造方法であって、
前記保護膜付きワーク加工物は、ワーク加工物と、前記ワーク加工物の一方の面に設けられた保護膜と、を備えており、
前記ワーク加工物は、ワークを加工することにより得られ、
前記ワークの平面形状が円形であり、
前記ワークの直径が、6インチ、8インチ、12インチ、又は18インチであり、
前記保護膜は、請求項1又は2に記載の保護膜形成用シート中の前記保護膜形成フィルムから形成されたものであり、
前記ワークの直径が6インチである場合には、前記保護膜形成フィルムの直径が135mm以上150mm未満であり、前記ワークの直径が8インチである場合には、前記保護膜形成フィルムの直径が185mm以上200mm未満であり、前記ワークの直径が12インチである場合には、前記保護膜形成フィルムの直径が285mm以上300mm未満であり、前記ワークの直径が18インチである場合には、前記保護膜形成フィルムの直径が435mm以上450mm未満であり、
前記保護膜形成フィルムが硬化性である場合には、前記保護膜形成フィルムの硬化物が前記保護膜であり、前記保護膜形成フィルムが非硬化性である場合には、前記ワークのいずれかの箇所に貼付された後の前記保護膜形成フィルムが前記保護膜であり、
前記製造方法は、前記保護膜形成用シート中の前記保護膜形成フィルムから前記第1剥離フィルムを剥離する第1剥離工程と、
前記第1剥離工程の後に、前記保護膜形成フィルムの外周部を前記ワークの外周部からはみ出させることなく、前記保護膜形成フィルムの前記第1剥離フィルムが設けられていた側の面を、前記ワークの一方の面に貼付することにより、前記ワークに前記保護膜形成フィルム又は前記保護膜が設けられた第1積層体を作製する第1貼付工程と、
前記第1貼付工程の後に、前記第1積層体中の前記保護膜形成フィルム又は前記保護膜から前記第2剥離フィルムを剥離する第2剥離工程と、
前記第2剥離工程の後に、前記保護膜形成フィルム又は前記保護膜の前記第2剥離フィルムが設けられていた側の面に、前記ワークを加工するための加工シートを貼付することにより、前記加工シートと、前記保護膜形成フィルム又は前記保護膜と、前記ワークと、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された第2積層体を作製する第2貼付工程と、
前記第2貼付工程の後に、前記ワークを加工することにより、前記ワーク加工物を作製する加工工程と、
前記第2貼付工程の後に、前記保護膜形成フィルム又は前記保護膜を切断する切断工程と、を有し、
前記保護膜形成フィルムが硬化性である場合には、さらに、前記第2剥離工程の後に、前記保護膜形成フィルムを硬化させることにより、前記保護膜を形成する硬化工程と、を有する、保護膜付きワーク加工物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護膜形成用シート、及び保護膜付きワーク加工物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハや絶縁体ウエハ等のウエハには、その一方の面(回路面)に回路が形成されており、さらにその面(回路面)上にバンプ等の突状電極を有するものがある。このようなウエハは、分割によりチップとされ、その突状電極が回路基板上の接続パッドに接続されることにより、前記回路基板に搭載される。このようなウエハやチップにおいては、クラックの発生等の破損を抑制するために、回路面とは反対側の面(裏面)を、保護膜で保護することがある。
また、半導体装置の製造過程では、ワークとして後述する半導体装置パネルが用いられ、このパネルにおいて反りやクラックの発生を抑制するために、パネルのいずれかの部位を保護膜で保護することがある。
【0003】
このような場合、例えば、ウエハの裏面など、ワークの目的とする箇所に、保護膜を形成するための保護膜形成フィルムを貼付し、以降、ワークを加工して、チップなどのワーク加工物を作製し、必要に応じて保護膜形成フィルムを硬化させ、保護膜形成フィルム又は保護膜を切断して、ワーク加工物と、そのいずれかの箇所に設けられた保護膜と、を備えた保護膜付きワーク加工物を製造する。保護膜付きワーク加工物の一例としては、半導体チップと、その裏面に設けられた保護膜と、を備えた保護膜付き半導体チップが挙げられる。
【0004】
保護膜付きワーク加工物の製造時には、ワークとして、その平面形状が円形であるものが汎用されるため、貼付直前の保護膜形成フィルムの平面形状も円形とされることが多い。このような用途で使用される保護膜形成フィルムは、例えば、その両面に剥離フィルムを備えた状態とされることがある。そして、保護膜形成フィルムのワークへの貼付を連続的に行うために、長尺の2枚の剥離フィルムの間に、円形に抜き加工された複数枚の保護膜形成フィルムが、これら剥離フィルムの長手方向に沿って配置され、構成された保護膜形成用シートが汎用される。
【0005】
図1(a)は、このような従来の保護膜形成用シートの一例を模式的に示す平面図であり、
図1(b)は、
図1(a)に示す保護膜形成用シートのI-I線における断面を模式的に示す図である。
【0006】
保護膜形成用シート9は、第1剥離フィルム92と、第2剥離フィルム93と、第1剥離フィルム92と第2剥離フィルム93との間に設けられた保護膜形成フィルム91と、を備えている。第1剥離フィルム92と第2剥離フィルム93はいずれも長尺である。
図1(a)は、保護膜形成用シート9を、その第1剥離フィルム92側の上方から見下ろして平面視したときの平面図である。
さらに、保護膜形成用シート9には、その厚さ方向において、第1剥離フィルム92の一方の面92aから第2剥離フィルム93の一方の面93aを通過し、第2剥離フィルム93の内部にまで到達する、円形の切れ込み99が2以上設けられている。すなわち、切れ込み99は、第1剥離フィルム92と保護膜形成フィルム91を、その厚さ方向において貫通している。これにより、例えば、保護膜形成フィルム91は、その平面形状が円形である2以上の第1領域911と、それ以外の第2領域912と、に分割されている。第1剥離フィルム92も同様に分割されている。保護膜形成フィルムの第2領域912は余剰部位であり、保護膜形成用シート9の使用前に、これに貼付されている第1剥離フィルム92とともに、第2剥離フィルム93から取り除かれる。一方、保護膜形成フィルムの第1領域911は、ワークへの貼付部位である。保護膜形成用シート9の使用時には、保護膜形成フィルムの第1領域911に貼付されている第1剥離フィルム92が取り除かれ、これにより保護膜形成フィルムの第1領域911の一方の面911aが露出面となり、この面911a(露出面)において、前記第1領域911がワークに貼付される。なお、保護膜形成フィルムの第2領域912のような余剰部位を取り除く操作を、当該分野においては「カス上げ」と称することがある。
【0007】
保護膜形成用シート9は、例えば、第1剥離フィルム92と、第2剥離フィルム93と、の間に、保護膜形成フィルム91が設けられた積層シートを作製し、次いで、前記積層シートに対して、その中の第1剥離フィルム92側からブレードをあてて、円形の切れ込み99を2以上形成することにより、製造できる。
【0008】
このように、円形に抜き加工された複数枚の保護膜形成フィルムが設けられている、長尺の保護膜形成用シートとしては、例えば、上述のカス上げ工程において、保護膜形成フィルムのワークへの貼付部位が、保護膜形成フィルムの余剰部位とともに取り除かれてしまう、所謂カス上げ不良の抑制効果が高いものが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
平面形状があらかじめ円形又は後述する略円形とされている保護膜形成フィルムを、ワークの円形の面に貼付するときに、保護膜形成フィルムの大きさ(面積)が大き過ぎると、ワークの外周から保護膜形成フィルムがはみ出し、保護膜形成フィルムのこのはみ出し部位が、ワークの外周(側面)に付着してワークを汚染してしまう。その場合には、保護膜付きワーク加工物を正常に製造できず、さらに、保護膜形成フィルムの貼付装置の内部を汚染してしまうことがある。これに対して、保護膜形成フィルムの大きさ(面積)が小さ過ぎる場合には、ワークの使用領域が必要以上に小さくなってしまい、保護膜付きワーク加工物の製造効率が低下してしまう。
【0011】
一方、剥離フィルムのように、保護膜形成フィルムの使用時に不要である部材は、資源の有効利用と環境保護の観点から、回収して再利用することが望まれている。しかし、第1剥離フィルム92のように、切れ込みが形成された剥離フィルムは、保護膜形成フィルムから取り除いた後は、再利用できない。さらに、保護膜形成用シート9のような、切れ込みが形成された保護膜形成用シートの汎用性を向上させるために、保護膜形成用シートを製品として出荷するときには、これに切れ込みを形成せず、購入者が保護膜形成用シートを使用するときに、これに切れ込みを形成することがある。その場合には、剥離フィルムの抜き加工に伴って、購入者側の装置内で、剥離フィルムの切断屑が生じることがあり、購入者側の装置内を汚染してしまうことがある。
【0012】
これらの事情を考慮すると、円形又は略円形の2枚以上の保護膜形成フィルムの両面に、剥離フィルムが設けられて構成されている保護膜形成用シートとして、保護膜形成フィルムのワークへの貼付時に、保護膜付きワーク加工物の製造効率を低下させずに、保護膜形成フィルムによるワークの汚染を抑制でき、保護膜形成用シートの使用時に、剥離フィルムの抜き加工が不要であり、使用後の剥離フィルムが再利用可能であるような保護膜形成用シートは、その有用性が極めて高い。
これに対して、特許文献1で開示されているものを始めとする従来の保護膜形成用シートは、これらの要求をすべて満たすとはいえない。
【0013】
本発明は、保護膜形成フィルムと、その両面に設けられた剥離フィルムと、を備え、保護膜形成フィルムが保護膜付きワーク加工物中の保護膜を形成可能な保護膜形成用シートであって、前記ワーク加工物はワークの加工により得られ、前記保護膜形成フィルムの前記ワークへの貼付時に、保護膜付きワーク加工物の製造効率を低下させずに、保護膜形成フィルムによるワークの汚染を抑制でき、保護膜形成用シートの使用時に、剥離フィルムの抜き加工が不要であり、使用後の剥離フィルムが再利用可能である保護膜形成用シートを提供することを目的とする。さらに本発明は、前記保護膜形成用シートを用いた保護膜付きワーク加工物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を採用する。
[1] 保護膜形成用シートであって、前記保護膜形成用シートは、第1剥離フィルムと、前記第1剥離フィルムよりも剥離力が大きい第2剥離フィルムと、前記第1剥離フィルムと前記第2剥離フィルムとの間に設けられた保護膜形成フィルムと、を備え、2枚以上の前記保護膜形成フィルムが、1枚の前記第1剥離フィルムと1枚の前記第2剥離フィルムの長手方向に沿って配置されており、前記保護膜形成フィルムの平面形状が、円形又は略円形であり、前記保護膜形成フィルムの直径が、135mm以上150mm未満、185mm以上200mm未満、285mm以上300mm未満、又は435mm以上450mm未満であり、前記第1剥離フィルムと前記第2剥離フィルムとのいずれか一方又は両方が、その前記保護膜形成フィルムの外周部と一致する位置に、切れ込みを実質的に有しない、保護膜形成用シート。
[2] 前記第2剥離フィルムの前記保護膜形成フィルムに対する剥離力と、前記第1剥離フィルムの前記保護膜形成フィルムに対する剥離力と、の差が、30mN/100mm以上200mN/100mm未満であり、前記第1剥離フィルムの前記保護膜形成フィルムに対する剥離力が20mN/100mm以上であり、前記第2剥離フィルムの前記保護膜形成フィルムに対する剥離力が500mN/100mm以下である、[1]に記載の保護膜形成用シート。
【0015】
[3] 前記第1剥離フィルムが前記切れ込みを実質的に有しない、[1]又は[2]に記載の保護膜形成用シート。
[4] 保護膜付きワーク加工物の製造方法であって、前記保護膜付きワーク加工物は、ワーク加工物と、前記ワーク加工物の一方の面に設けられた保護膜と、を備えており、前記ワーク加工物は、ワークを加工することにより得られ、前記ワークの平面形状が円形であり、前記ワークの直径が、6インチ、8インチ、12インチ、又は18インチであり、前記保護膜は、[1]~[3]のいずれか一項に記載の保護膜形成用シート中の前記保護膜形成フィルムから形成されたものであり、前記ワークの直径が6インチである場合には、前記保護膜形成フィルムの直径が135mm以上150mm未満であり、前記ワークの直径が8インチである場合には、前記保護膜形成フィルムの直径が185mm以上200mm未満であり、前記ワークの直径が12インチである場合には、前記保護膜形成フィルムの直径が285mm以上300mm未満であり、前記ワークの直径が18インチである場合には、前記保護膜形成フィルムの直径が435mm以上450mm未満であり、前記保護膜形成フィルムが硬化性である場合には、前記保護膜形成フィルムの硬化物が前記保護膜であり、前記保護膜形成フィルムが非硬化性である場合には、前記ワークのいずれかの箇所に貼付された後の前記保護膜形成フィルムが前記保護膜であり、前記製造方法は、前記保護膜形成用シート中の前記保護膜形成フィルムから前記第1剥離フィルムを剥離する第1剥離工程と、前記第1剥離工程の後に、前記保護膜形成フィルムの外周部を前記ワークの外周部からはみ出させることなく、前記保護膜形成フィルムの前記第1剥離フィルムが設けられていた側の面を、前記ワークの一方の面に貼付することにより、前記ワークに前記保護膜形成フィルム又は前記保護膜が設けられた第1積層体を作製する第1貼付工程と、前記第1貼付工程の後に、前記第1積層体中の前記保護膜形成フィルム又は前記保護膜から前記第2剥離フィルムを剥離する第2剥離工程と、前記第2剥離工程の後に、前記保護膜形成フィルム又は前記保護膜の前記第2剥離フィルムが設けられていた側の面に、前記ワークを加工するための加工シートを貼付することにより、前記加工シートと、前記保護膜形成フィルム又は前記保護膜と、前記ワークと、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された第2積層体を作製する第2貼付工程と、前記第2貼付工程の後に、前記ワークを加工することにより、前記ワーク加工物を作製する加工工程と、前記第2貼付工程の後に、前記保護膜形成フィルム又は前記保護膜を切断する切断工程と、を有し、前記保護膜形成フィルムが硬化性である場合には、さらに、前記第2剥離工程の後に、前記保護膜形成フィルムを硬化させることにより、前記保護膜を形成する硬化工程と、を有する、保護膜付きワーク加工物の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、保護膜形成フィルムと、その両面に設けられた剥離フィルムと、を備え、保護膜形成フィルムが保護膜付きワーク加工物中の保護膜を形成可能な保護膜形成用シートであって、前記ワーク加工物はワークの加工により得られ、前記保護膜形成フィルムの前記ワークへの貼付時に、保護膜付きワーク加工物の製造効率を低下させずに、保護膜形成フィルムによるワークの汚染を抑制でき、保護膜形成用シートの使用時に、剥離フィルムの抜き加工が不要であり、使用後の剥離フィルムが再利用可能である保護膜形成用シートが提供される。さらに、本発明によれば、前記保護膜形成用シートを用いた保護膜付きワーク加工物の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】従来の保護膜形成用シートの一例を模式的に示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)中のI-I線における断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用シートの一例を模式的に示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)中のII-II線における断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用シートの他の例を模式的に示す断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用シートのさらに他の例を模式的に示す断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用シートのさらに他の例を模式的に示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)中のIII-III線における断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用シートのさらに他の例を模式的に示す断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用シートのさらに他の例を模式的に示す断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用シートのさらに他の例を模式的に示す断面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る保護膜付きワーク加工物の製造方法の一例を、模式的に説明するための断面図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る保護膜付きワーク加工物の製造方法の一例を、模式的に説明するための断面図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る保護膜付きワーク加工物の製造方法の他の例を、模式的に説明するための断面図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る保護膜付きワーク加工物の製造方法の他の例を、模式的に説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
◇保護膜形成用シート
本発明の一実施形態に係る保護膜形成用シートは、第1剥離フィルムと、前記第1剥離フィルムよりも剥離力が大きい第2剥離フィルムと、前記第1剥離フィルムと前記第2剥離フィルムとの間に設けられた保護膜形成フィルムと、を備え、2枚以上の前記保護膜形成フィルムが、1枚の前記第1剥離フィルムと1枚の前記第2剥離フィルムの長手方向に沿って配置されており、前記保護膜形成フィルムの平面形状が、円形又は略円形であり、前記保護膜形成フィルムの直径が、135mm以上150mm未満、185mm以上200mm未満、285mm以上300mm未満、又は435mm以上450mm未満であり、前記第1剥離フィルムと前記第2剥離フィルムとのいずれか一方又は両方が、その前記保護膜形成フィルムの外周部と一致する位置に、切れ込みを実質的に有しない。
本実施形態の保護膜形成用シート中の前記保護膜形成フィルムは、平面形状が円形であるワークの一方の面に、保護膜を形成可能である。
【0019】
本実施形態の保護膜形成用シート中の保護膜形成フィルムの直径が、135mm以上150mm未満、185mm以上200mm未満、285mm以上300mm未満、又は435mm以上450mm未満であることにより、保護膜形成フィルムのワークへの貼付時に、保護膜付きワーク加工物の製造効率を低下させずに、保護膜形成フィルムによるワークの汚染を抑制できる。そして、保護膜形成用シートの使用時に、剥離フィルムの抜き加工が不要である。
【0020】
本実施形態の保護膜形成用シート中の保護膜形成フィルムは、ワーク加工物のいずれかの箇所に保護膜を設けて、ワーク加工物を保護するために用いるフィルムである。
前記保護膜形成フィルムは、軟質であり、前記加工物へと加工する前のワークに対して貼付できる。
【0021】
本実施形態において、ワークとしては、例えば、ウエハ、半導体装置パネル等が挙げられる。半導体装置パネルとは、半導体装置の製造過程で取り扱うものであり、その具体例としては、1個又は2個以上の電子部品が封止樹脂によって封止された状態の半導体装置を用い、複数個のこれら半導体装置が、円形の領域内に、平面的に配置されて構成されたものが挙げられる。
本明細書においては、ワークを加工したものを「ワーク加工物」と称する。例えば、ワークが半導体ウエハである場合、ワーク加工物としては半導体チップが挙げられる。
【0022】
本明細書において、「ウエハ」としては、シリコン、ゲルマニウム、セレン等の元素半導体や、GaAs、GaP、InP、CdTe、ZnSe、SiC等の化合物半導体、で構成される半導体ウエハ;サファイア、ガラス等の絶縁体で構成される絶縁体ウエハが挙げられる。
これらウエハを代表とするワークの一方の面上には、回路が形成されており、本明細書においては、このように回路が形成されている側のワークの面を「回路面」と称する。そして、ワークの回路面とは反対側の面を「裏面」と称する。
ウエハは、ダイシング等の手段により分割され、チップとなる。本明細書においては、ウエハの場合と同様に、回路が形成されている側のチップの面を「回路面」と称し、チップの回路面とは反対側の面を「裏面」と称する。
ワークの回路面には、いずれもバンプ、ピラー等の突状電極が設けられていることが好ましい。突状電極は、はんだで構成されていることが好ましい。
【0023】
本実施形態の保護膜形成用シート中の保護膜形成フィルムを用いることにより、チップと、前記チップの裏面に設けられた保護膜と、を備えた保護膜付きチップを製造できる。
そして、前記保護膜付きチップの製造に先立ち、前記保護膜形成フィルムを用いることにより、ウエハと、前記ウエハの裏面に設けられた保護膜形成フィルムと、を備えた保護膜形成フィルム付きウエハを製造できる。
【0024】
さらに、前記保護膜付きワーク加工物を用いることにより、基板装置を製造できる。
本明細書において、「基板装置」とは、保護膜付きワーク加工物が、回路基板に接続されて、構成されたものを意味する。前記基板装置の一例としては、保護膜付きワーク加工物が、その回路面上の突状電極において、回路基板上の接続パッドにフリップチップ接続されて、構成されたものが挙げられる。例えば、ワークとして半導体ウエハを用いた場合であれば、基板装置としては、保護膜付き半導体チップが搭載された半導体装置が挙げられる。前記保護膜付き半導体チップは、半導体チップと、その裏面に設けられた保護膜と、を備える。
【0025】
本実施形態の保護膜形成用シートにおいて、2枚以上の保護膜形成フィルムが、1枚の第1剥離フィルムと1枚の第2剥離フィルムの長手方向に沿って配置されていることで、保護膜形成フィルムのワークへの貼付を連続的に行うことができる。
【0026】
本実施形態の保護膜形成用シートにおいて、第1剥離フィルムと第2剥離フィルムとのいずれか一方又は両方が、その前記保護膜形成フィルムの外周部と一致する位置に、切れ込みを実質的に有しないことで、使用後のこれら剥離フィルムは再利用可能である。
【0027】
本実施形態の保護膜形成用シートは、長尺であることが好ましく、このような保護膜形成用シートは、ロール状に巻き取って(保護膜形成用シートのロールとして)保管するのに好適である。
【0028】
<<第1剥離フィルム>>
前記第1剥離フィルムは、公知のものであってもよい。
第1剥離フィルムとして、より具体的には、例えば、剥離フィルム用基材の一方の面又は両面が、剥離処理面であるものが挙げられる。
前記剥離処理面は、剥離フィルム用基材の表面を、剥離処理剤によって剥離処理することで形成できる。
【0029】
前記剥離フィルム用基材の構成材料としては、例えば、各種樹脂が挙げられる。
剥離フィルム用基材の構成材料である前記樹脂で好ましいものとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリウレタン;ポリイミド等が挙げられる。
【0030】
剥離フィルム用基材を構成する樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0031】
前記剥離処理剤は、公知のものであってよい。
好ましい剥離処理剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系又はワックス系等の剥離処理剤が挙げられる。
剥離処理剤は、耐熱性を有する点では、アルキッド系、シリコーン系又はフッ素系の剥離処理剤であることが好ましい。
【0032】
第1剥離フィルムは、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。第1剥離フィルムが複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0033】
本明細書においては、第1剥離フィルムの場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよいし、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0034】
第1剥離フィルムは、後述する第2剥離フィルムよりも剥離力が小さい。本明細書において、第1剥離フィルムの場合に限らず、剥離フィルムの剥離力とは、剥離フィルムと、この剥離フィルムに貼付されているもの(本明細書においては「貼付物」と称することがある)と、の積層物において、剥離フィルムを貼付物から剥離したときに要する力を意味する。すなわち、第1剥離フィルムをその貼付物から剥離するときの力と、第2剥離フィルムをその貼付物から剥離するときの力と、を比較すると、第1剥離フィルムの貼付物と、第2剥離フィルムの貼付物と、が同じであり、第1剥離フィルムとその貼付物との貼付の態様と、第2剥離フィルムとその貼付物との貼付の態様と、が同じである場合には、第1剥離フィルムをその貼付物から剥離するときの力の方が、第2剥離フィルムをその貼付物から剥離するときの力よりも小さい。
前記保護膜形成用シートにおいては、第1剥離フィルムの前記保護膜形成フィルムに対する剥離力は、第2剥離フィルムの前記保護膜形成フィルムに対する剥離力よりも小さい。
【0035】
第1剥離フィルムの保護膜形成フィルムに対する剥離力は、20mN/100mm以上であることが好ましく、例えば、40mN/100mm以上、60mN/100mm以上、及び80mN/100mm以上のいずれかであってもよい。第1剥離フィルムの前記剥離力が前記下限値以上であることで、保護膜形成用シートにおいて、第1剥離フィルムの保護膜形成フィルムからの目的外の剥離を抑制する効果が、より高くなる。
【0036】
第1剥離フィルムの保護膜形成フィルムに対する剥離力は、例えば、140mN/100mm以下であってもよいが、120mN/100mm以下であることが好ましく、100mN/100mm以下であることがより好ましく、80mN/100mm以下であることがさらに好ましい。第1剥離フィルムの前記剥離力が小さいほど、保護膜形成用シートの使用時に、第1剥離フィルムの保護膜形成フィルムからの剥離が、より容易となる。
【0037】
第1剥離フィルムの保護膜形成フィルムに対する剥離力は、上述のいずれかの下限値と、上述のいずれかの上限値と、を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。
一実施形態において、第1剥離フィルムの前記剥離力は、例えば、20~140mN/100mm、40~140mN/100mm、60~140mN/100mm、及び80~140mN/100mmのいずれかであってもよいし、20~120mN/100mm、40~120mN/100mm、60~120mN/100mm、及び80~120mN/100mmのいずれかであってもよいし、20~100mN/100mm、40~100mN/100mm、60~100mN/100mm、及び80~100mN/100mmのいずれかであってもよいし、20~80mN/100mm、40~80mN/100mm、及び60~80mN/100mmのいずれかであってもよい。ただし、これらは第1剥離フィルムの剥離力の一例である。
【0038】
第1剥離フィルムの保護膜形成フィルムに対する剥離力は、後述する実施例に記載の方法により、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、剥離速度を1000mm/minとし、第1剥離フィルムと保護膜形成フィルムの互いに接触していた面同士が180°の角度を為すように、第1剥離フィルムを保護膜形成フィルムから剥離した(180°剥離を行った)ときの剥離力であることが好ましい。
【0039】
<第1剥離フィルムとステンレス鋼板との間の付着力>
第1剥離フィルムの保護膜形成フィルム側の面(例えば、剥離処理面)と、ステンレス鋼(SUS)板の表面と、を貼付したとき、第1剥離フィルムとステンレス鋼板との間の付着力は、0mN/25mm以上50mN/25mm未満であることが好ましく、0mN/25mm以上20mN/25mm未満であることがより好ましく、0mN/25mm以上10mN/25mm未満であることがさらに好ましく、0mN/25mm以上5mN/25mm未満であることが特に好ましい。このような第1剥離フィルムを備えた保護膜形成用シートを用いて、保護膜形成フィルムから第1剥離フィルムを剥離し(例えば、後述する保護膜付きワーク加工物の製造方法における第1剥離工程)、この剥離した第1剥離フィルムをロール状に巻き取るときに、第1剥離フィルムの巻きずれが抑制される。また、このような第1剥離フィルムを備えた保護膜形成用シートは、より安価に製造できる。
保護膜形成用シートにおいては、第1剥離フィルムの保護膜形成フィルム側の面のうち、少なくとも保護膜形成フィルムが積層されていない領域が、上述の付着力(0mN/25mm以上50mN/25mm未満)を有していることが好ましく、前記面の全領域(全面)が、上述の付着力(0mN/25mm以上50mN/25mm未満)を有していてもよい。
第1剥離フィルムとステンレス鋼板との間の付着力は、実施例で後述する90°剥離法により測定できる。
【0040】
第1剥離フィルムの剥離力と、第1剥離フィルムとステンレス鋼板との間の付着力は、例えば、剥離フィルム用基材の表面の剥離処理に用いる剥離処理剤の種類及び量、並びに剥離処理法等を調節することで、調節できる。
【0041】
第1剥離フィルムは、帯状であるなど、長尺であることが好ましい。第1剥離フィルムが長尺である場合には、同様に第2剥離フィルムが長尺であることによって、保護膜形成用シート中の保護膜形成フィルムの枚数をより多くすることが可能である。
第1剥離フィルムで好ましいものとしては、例えば、幅が150~500cmで、長さが20~200mであるものが挙げられる。
【0042】
第1剥離フィルムは、その位置(領域)によらず、切れ込みを有していてもよいし、切れ込みを実質的に有していなくてもよく、例えば、その保護膜形成フィルムの外周部と一致する位置に、切れ込みを有していてもよいし、切れ込みを実質的に有していなくてもよい。ただし、第1剥離フィルムは、その保護膜形成フィルムの外周部と一致する位置に、切れ込みを実質的に有しないことが好ましく、その位置(領域)によらず、切れ込みを実質的に有しないことがより好ましい。このような第1剥離フィルムは、保護膜形成用シートの使用時に保護膜形成フィルムから剥離し、回収して、再利用するときの再利用に適している。さらに、このような第1剥離フィルムにおいては、保護膜形成フィルムから剥離した後に、切れ込みの部位に保護膜形成フィルムの一部が残像する不具合が抑制される。
【0043】
本明細書において、第1剥離フィルムが切れ込みを実質的に有しないとは、第1剥離フィルムでの位置によらず、第1剥離フィルムが切れ込みを全く有しないか、又は、有していても、切れ込みの深さが1μm未満であることを意味する。
【0044】
保護膜形成用シートにおける、第1剥離フィルムの、保護膜形成フィルムの外周部と一致する位置とは、例えば、第1剥離フィルムと保護膜形成フィルムとの積層物を、その保護膜形成フィルム側の上方から見下ろして平面視したときに、第1剥離フィルムの保護膜形成フィルム側の面のうち、保護膜形成フィルムの外周部(平面視したときには円周部)と重なる位置を意味する。
第1剥離フィルムの、保護膜形成フィルムの外周部と一致する位置に切れ込みを有する保護膜形成用シートは、保護膜形成フィルムをあらかじめ目的とする形状に抜き加工(ここでは円形又は略円形に抜き加工)しておく場合に、作製され易い。これに対して、本実施形態の保護膜形成フィルムは、後述する方法で製造することにより、第1剥離フィルムにおいて、このような切れ込みを実質的に有しない。
【0045】
第1剥離フィルムの厚さは、20~100μmであることが好ましく、25~80μmであることがより好ましい。第1剥離フィルムの厚さが前記下限値以上であることで、第1剥離フィルムの機械的強度がより高くなる。第1剥離フィルムの厚さが前記上限値以下であることで、保護膜形成用シート又は第1剥離フィルムをロール状に巻き取ることが、より容易となる。
ここで、「第1剥離フィルムの厚さ」とは、第1剥離フィルム全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる第1剥離フィルムの厚さとは、第1剥離フィルムを構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0046】
本明細書においては、第1剥離フィルムの場合に限らず、「厚さ」とは、特に断りのない限り、対象物において無作為に選出された5箇所で測定した厚さの平均で表される値であり、JIS K7130に準じて、定圧厚さ測定器を用いて取得できる。
【0047】
<<第2剥離フィルム>>
前記第2剥離フィルムは、公知のものであってもよい。
第2剥離フィルムは、第1剥離フィルムよりも、保護膜形成フィルムに対する剥離力が大きい点を除けば、第1剥離フィルムと同様のものである。
【0048】
第2剥離フィルムの保護膜形成フィルムに対する剥離力は、500mN/100mm以下であることが好ましく、例えば、400mN/100mm以下、300mN/100mm以下、及び200mN/100mm以下のいずれかであってもよい。第2剥離フィルムの前記剥離力が前記上限値以下であることで、保護膜形成用シート中の第1剥離フィルムを保護膜形成フィルムから剥離し(例えば、後述する保護膜付きワーク加工物の製造方法における第1剥離工程)、第2剥離フィルムを備えた保護膜形成フィルムをワークに貼付し(例えば、後述する保護膜付きワーク加工物の製造方法における第1貼付工程)、次いで、保護膜形成フィルム又は保護膜から第2剥離フィルムを剥離する(例えば、後述する保護膜付きワーク加工物の製造方法における第2剥離工程)ときに、保護膜形成フィルム又は保護膜のワークからの剥離を抑制する効果が、より高くなる。
【0049】
第2剥離フィルムの保護膜形成フィルムに対する剥離力は、80mN/100mm以上であることが好ましく、例えば、110mN/100mm以上、及び130mN/100mm以上のいずれかであってもよい。第2剥離フィルムの前記剥離力が大きいほど、第2剥離フィルムの保護膜形成フィルム又は保護膜からの目的外の剥離を抑制する効果が、より高くなる。
【0050】
第2剥離フィルムの剥離力は、上述のいずれかの下限値と、上述のいずれかの上限値と、を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。
一実施形態において、第2剥離フィルムの剥離力は、例えば、80~500mN/100mm、80~400mN/100mm、80~300mN/100mm、及び80~200mN/100mmのいずれかであってもよいし、110~500mN/100mm、110~400mN/100mm、110~300mN/100mm、及び110~200mN/100mmのいずれかであってもよいし、130~500mN/100mm、130~400mN/100mm、130~300mN/100mm、及び130~200mN/100mmのいずれかであってもよい。ただし、これらは第2剥離フィルムの剥離力の一例である。
【0051】
第2剥離フィルムの保護膜形成フィルムに対する剥離力は、後述する実施例に記載の方法により、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、剥離速度を1000mm/minとし、第2剥離フィルムと保護膜形成フィルムの互いに接触していた面同士が180°の角度を為すように、保護膜形成フィルムを第2剥離フィルムから剥離した(180°剥離を行った)ときの剥離力であることが好ましい。このとき、保護膜形成フィルムは、その第2剥離フィルム側とは反対側の面に、補強用の接着性フィルムを貼付した積層物の状態で、第2剥離フィルムから剥離することが好ましい。
【0052】
<第2剥離フィルム及び第1剥離フィルムの剥離力差>
第2剥離フィルムの保護膜形成フィルムに対する剥離力と、第1剥離フィルムの保護膜形成フィルムに対する剥離力と、の差(本明細書においては、「第2剥離フィルム及び第1剥離フィルムの剥離力差」と称することがある)は、例えば、15mN/100mm以上であってもよいが、30mN/100mm以上であることが好ましく、50mN/100mm以上であることがより好ましく、70mN/100mm以上であることがさらに好ましい。第2剥離フィルム及び第1剥離フィルムの剥離力差が前記下限値以上であることで、保護膜形成用シートの使用時に、第1剥離フィルムの保護膜形成フィルムからの剥離が、より容易となる。
【0053】
第2剥離フィルム及び第1剥離フィルムの剥離力差は、200mN/100mm未満であることが好ましく、例えば、150mN/100mm以下、及び100mN/100mm以下のいずれかであってもよい。第2剥離フィルム及び第1剥離フィルムの剥離力差がこのような範囲であることで、第1剥離フィルムの保護膜形成フィルムに対する剥離力、及び第2剥離フィルムの保護膜形成フィルムに対する剥離力を、上述の各々の数値範囲内に調節することが、より容易となる。
【0054】
第2剥離フィルム及び第1剥離フィルムの剥離力差は、上述のいずれかの下限値と、上述のいずれかの上限値と、を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。
例えば、前記剥離力差は、15mN/100mm以上200mN/100mm未満であってもよいが、30mN/100mm以上200mN/100mm未満であることが好ましく、50mN/100mm以上200mN/100mm未満、及び70mN/100mm以上200mN/100mm未満のいずれかであってもよいし、30~150mN/100mm、50~150mN/100mm、及び70~150mN/100mmのいずれかであってもよいし、30~100mN/100mm、50~100mN/100mm、及び70~100mN/100mmのいずれかであってもよい。ただし、これらは前記剥離力差の一例である。
【0055】
<第2剥離フィルムとステンレス鋼板との間の付着力>
第2剥離フィルムも、第1剥離フィルムの場合と同様の理由で、第1剥離フィルムの場合と同様の、ステンレス鋼板との間の付着力を有することが好ましい。
すなわち、第2剥離フィルムの保護膜形成フィルム側の面(例えば、剥離処理面)と、ステンレス鋼(SUS)板の表面と、を貼付したとき、第2剥離フィルムとステンレス鋼板との間の付着力は、0mN/25mm以上50mN/25mm未満であることが好ましく、0mN/25mm以上20mN/25mm未満であることがより好ましく、0mN/25mm以上10mN/25mm未満であることがさらに好ましく、0mN/25mm以上5mN/25mm未満であることが特に好ましい。このような第2剥離フィルムを備えた保護膜形成用シートを用いて、保護膜形成フィルム又は保護膜から第2剥離フィルムを剥離し(例えば、後述する保護膜付きワーク加工物の製造方法における第2剥離工程)、この剥離した第2剥離フィルムをロール状に巻き取るときに、第2剥離フィルムの巻きずれが抑制される。また、このような第2剥離フィルムを備えた保護膜形成用シートは、より安価に製造できる。
保護膜形成用シートにおいては、第2剥離フィルムの保護膜形成フィルム側又は保護膜側の面のうち、少なくとも保護膜形成フィルム又は保護膜が積層されていない領域が、上述の付着力(0mN/25mm以上50mN/25mm未満)を有していることが好ましく、前記面の全領域(全面)が、上述の付着力(0mN/25mm以上50mN/25mm未満)を有していてもよい。
第2剥離フィルムとステンレス鋼板との間の付着力は、第1剥離フィルムの場合と同じ方法で測定できる。
【0056】
第2剥離フィルムの剥離力と、第2剥離フィルムとステンレス鋼板との間の付着力は、第1剥離フィルムの場合と同じ方法で、調節できる。
【0057】
第2剥離フィルムは、その位置(領域)によらず、切れ込みを有していてもよいし、切れ込みを実質的に有していなくてもよく、例えば、その保護膜形成フィルムの外周部と一致する位置に、切れ込みを有していてもよいし、切れ込みを実質的に有していなくてもよい。切れ込みを実質的に有しない第2剥離フィルムは、保護膜形成用シートの使用時に保護膜形成フィルム又は保護膜から剥離し、回収して、再利用するときの再利用に適している。さらに、このような第2剥離フィルムにおいては、保護膜形成フィルム又は保護膜から剥離した後に、切れ込みの部位に保護膜形成フィルム又は保護膜の一部が残像する不具合が抑制される。
【0058】
本明細書において、第2剥離フィルムが切れ込みを実質的に有しないとは、第2剥離フィルムでの位置によらず、第2剥離フィルムが切れ込みを全く有しないか、又は、有していても、切れ込みの深さが1μm未満であることを意味する。
保護膜形成用シートにおける、第2剥離フィルムの、保護膜形成フィルムの外周部と一致する位置とは、先に説明した第1剥離フィルムの場合と同じことを意味する。
【0059】
ただし、本実施形態の保護膜形成用シートにおいては、第1剥離フィルムと第2剥離フィルムとのいずれか一方又は両方が、その保護膜形成フィルムの外周部と一致する位置に、切れ込みを実質的に有しない。そして、本実施形態の保護膜形成用シートにおいては、第1剥離フィルムが前記切れ込みを実質的に有しないことが好ましい。このような保護膜形成用シートは、その取り扱い性がより高い。
【0060】
第2剥離フィルムの厚さは、20~100μmであることが好ましく、25~90μmであることがより好ましい。第2剥離フィルムの厚さが前記下限値以上であることで、第2剥離フィルムの機械的強度がより高くなる。第2剥離フィルムの厚さが前記上限値以下であることで、保護膜形成用シート又は第2剥離フィルムをロール状に巻き取ることが、より容易となる。
ここで、「第2剥離フィルムの厚さ」とは、第2剥離フィルム全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる第2剥離フィルムの厚さとは、第2剥離フィルムを構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0061】
第2剥離フィルムのうち、保護膜形成フィルムが積層されている部位(積層部位)の厚さと、保護膜形成フィルムが積層されていない部位(非積層部位)の厚さと、の差([保護膜形成フィルムが積層されている部位(積層部位)の厚さ]-[保護膜形成フィルムが積層されていない部位(非積層部位)の厚さ])は、10μm未満であることが好ましく、5μm未満であることがより好ましい。保護膜形成用シートをロール状に巻き取ったときには、ロールの径方向において、保護膜形成フィルムの配置位置が一致しないことがある。さらに、保護膜形成用シートのロールには、ロールの径方向において圧力が加わる。そのため、このような場合には、保護膜形成フィルムに巻き痕が生じ易い。これに対して、第2剥離フィルムにおいて、このように厚さの差が無いか又は微小であることで、保護膜形成フィルムの巻き痕の発生が抑制される。
【0062】
第2剥離フィルムのうち、保護膜形成フィルムが積層されている部位(積層部位)の厚さと、保護膜形成フィルムが積層されていない部位(非積層部位)の厚さと、の差([保護膜形成フィルムが積層されている部位(積層部位)の厚さ]-[保護膜形成フィルムが積層されていない部位(非積層部位)の厚さ])は、-10μm以上であることが好ましく、-5μm以上であることがより好ましく、0μm以上であることがさらに好ましい。前記差が前記下限値以上であることで、第2剥離フィルムの保護膜形成フィルムからの剥離が、より容易となる。
【0063】
第2剥離フィルムは、上述の点以外は、第1剥離フィルムと同様のものである。そこで、第2剥離フィルムについては、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0064】
<<保護膜形成フィルム>>
前記保護膜形成フィルムは、その平面形状が円形又は略円形であり、かつその直径が特定範囲に特定されている点を除けば、公知の保護膜形成フィルムと同じであってよい。
【0065】
保護膜形成フィルムの平面形状、すなわち、保護膜形成フィルムの主面をその上方から見下ろして平面視したときの前記主面の形状は、円形又は略円形である。
本明細書において、「略円形」とは、円形ではないものの、円形とみなしても問題ない程度に円形に近い形状であることを意味する。
例えば、非円形である形状(すなわち、真円ではない形状)において、外周上の2点を線分で結び、かつ重心(中心である場合もある)を通過する線分のうち、最短の線分の長さが、最長の線分の長さに対して、0.993倍以上である形状は、略円形である。例えば、楕円形の場合、短軸の長さが長軸の長さに対して0.993倍以上であれば、この楕円は略円形である。
なお、本明細書においては、前記外周上の2点を線分で結び、かつ重心(中心である場合もある)を通過する線分のうち、最長の線分の長さを、略円形の形状における直径とみなす。例えば、楕円形の場合、長軸の長さを直径とみなす。
【0066】
保護膜形成フィルムの平面形状である略円形は、楕円形であることが好ましい。このような平面形状の保護膜形成フィルムを用いることで、保護膜形成フィルムによるワークの汚染をより容易に抑制できる。
【0067】
保護膜形成用シートを用いて、ワークの一方の面に保護膜形成フィルムを貼付する場合、通常は、保護膜形成用シートに対して、その長手方向(換言すると、第2剥離フィルムの長手方向)に張力をかけた状態で、保護膜形成フィルムから第1剥離フィルムを剥離した後、第2剥離フィルム上の保護膜形成フィルムをワークの一方の面に貼付する。すなわち、保護膜形成フィルムのワークへの貼付時には、保護膜形成フィルム及び第2剥離フィルムは、第2剥離フィルムの長手方向において引っ張られるため、この方向において、保護膜形成フィルムの長さが伸び得る。この方向において、保護膜形成フィルムの長さが伸びた場合には、このように伸びた状態の保護膜形成フィルムの平面形状が円形であることが好ましい。このようにすることで、保護膜形成フィルムによるワークの汚染を抑制しつつ、平面形状が円形のワークの使用効率をより高くできるように保護膜形成フィルムを貼付できる。そのためには、保護膜形成用シートにおいて、平面形状が楕円形である保護膜形成フィルムの楕円の短軸方向が、第1剥離フィルム及び第2剥離フィルムの長手方向(長さ方向)と一致している(換言すると、楕円の長軸方向が第1剥離フィルム及び第2剥離フィルムの長手方向に対して直交する方向(すなわち短手方向又は幅方向)と一致している)必要がある。
【0068】
本実施形態の保護膜形成用シートにおいては、保護膜形成フィルムの直径の下限値は、保護膜形成フィルムの貼付対象であるワークの直径よりも15mmだけ小さい値である。一方、保護膜形成フィルムの直径の上限値は、保護膜形成フィルムの貼付対象であるワークの直径よりも小さい値である。より具体的には、以下のとおりである。
【0069】
直径が285mm以上300mm未満である保護膜形成フィルムは、直径が12インチ(300mm)であるワークへの貼付用である。
このような保護膜形成フィルムの直径は、例えば、288mm以上300mm未満、291mm以上300mm未満、及び294mm以上300mm未満のいずれかであってもよいし、285~296mm、285~293mm、及び285~290mmのいずれかであってもよいし、288~296mmであってもよい。ただしこれらは、直径が12インチ(300mm)であるワークへの貼付用の保護膜形成フィルムの直径の一例である。
【0070】
直径が135mm以上150mm未満である保護膜形成フィルムは、直径が6インチ(150mm)であるワークへの貼付用である。
このような保護膜形成フィルムの直径は、例えば、138mm以上150mm未満、141mm以上150mm未満、及び144mm以上150mm未満のいずれかであってもよいし、135~146mm、135~143mm、及び135~140mmのいずれかであってもよいし、138~146mmであってもよい。ただしこれらは、直径が6インチ(150mm)であるワークへの貼付用の保護膜形成フィルムの直径の一例である。
【0071】
直径が185mm以上200mm未満である保護膜形成フィルムは、直径が8インチ(200mm)であるワークへの貼付用である。
このような保護膜形成フィルムの直径は、例えば、188mm以上200mm未満、191mm以上200mm未満、及び194mm以上200mm未満のいずれかであってもよいし、185~196mm、185~193mm、及び185~190mmのいずれかであってもよいし、188~196mmであってもよい。ただしこれらは、直径が8インチ(200mm)であるワークへの貼付用の保護膜形成フィルムの直径の一例である。
【0072】
直径が435mm以上450mm未満である保護膜形成フィルムは、直径が18インチ(450mm)であるワークへの貼付用である。
このような保護膜形成フィルムの直径は、例えば、438mm以上450mm未満、441mm以上450mm未満、及び444mm以上450mm未満のいずれかであってもよいし、435~446mm、435~443mm、及び435~440mmのいずれかであってもよいし、438~446mmであってもよい。ただしこれらは、直径が18インチ(450mm)であるワークへの貼付用の保護膜形成フィルムの直径の一例である。
【0073】
保護膜形成フィルムは、第1剥離フィルムと第2剥離フィルムとの間に設けられている。すなわち、保護膜形成用シートは、第2剥離フィルムと、保護膜形成フィルムと、第1剥離フィルムと、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成されている。
1枚の保護膜形成用シートは、2枚以上の保護膜形成フィルムを備えており、これら2枚以上の保護膜形成フィルムが、1枚の第1剥離フィルムと1枚の第2剥離フィルムの長手方向に沿って配置されている。
【0074】
1枚の保護膜形成用シートが備えている2枚以上の保護膜形成フィルムは、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよいが、汎用性が高い点では、すべて同一であることが好ましい。
本明細書においては、2枚の保護膜形成フィルムを比較して、これら保護膜形成フィルムの直径、組成及び厚さのいずれか1又は2以上が互いに異なる場合に、これら保護膜形成フィルムは互いに異なるものとする。
【0075】
保護膜形成用シートにおいては、2枚以上の保護膜形成フィルムが、1枚の第1剥離フィルムと1枚の第2剥離フィルムの長手方向に沿って、一列に配置されていることが好ましい。
【0076】
保護膜形成フィルムは、硬化性であってもよいし、非硬化性であってもよい。すなわち、保護膜形成フィルムは、その硬化によって保護膜として機能するものであってもよいし、硬化していない状態で保護膜として機能するものであってもよい。
硬化性の保護膜形成フィルムは、熱硬化性及びエネルギー線硬化性のいずれであってもよく、熱硬化性及びエネルギー線硬化性の両方の特性を有していてもよい。
【0077】
本明細書において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味する。エネルギー線の例としては、紫外線、放射線、電子線等が挙げられる。紫外線は、例えば、紫外線源として高圧水銀ランプ、ヒュージョンランプ、キセノンランプ、ブラックライト又はLEDランプ等を用いることで照射できる。電子線は、電子線加速器等によって発生させたものを照射できる。
本明細書において、「エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射することにより硬化する性質を意味し、「非エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射しても硬化しない性質を意味する。
本明細書において、「非硬化性」とは、加熱やエネルギー線の照射等、如何なる手段によっても、硬化しない性質を意味する。非硬化性の保護膜形成フィルムは、目的とする対象物に設けられた(形成された)段階以降、保護膜であるとみなすことができる。
【0078】
保護膜形成フィルムを熱硬化させて、保護膜を形成する場合には、エネルギー線の照射によって硬化させる場合とは異なり、保護膜形成フィルムは、その厚さが厚くなっても、加熱によって十分に硬化するため、保護能が高い保護膜を形成できる。また、加熱オーブン等の通常の加熱手段を用いることによって、多数の保護膜形成フィルムを一括して加熱し、熱硬化させることができる。
保護膜形成フィルムを、エネルギー線の照射によって硬化させて、保護膜を形成する場合には、熱硬化させる場合とは異なり、硬化時に保護膜形成フィルムに積層されているフィルム又はシートが、耐熱性を有する必要がない。また、エネルギー線の照射によって、保護膜形成フィルムを短時間で硬化させることができる。
保護膜形成フィルムを硬化させずに保護膜として用いる場合には、硬化工程を省略できるため、簡略化された工程で保護膜付きワーク加工物を製造できる。
【0079】
保護膜形成フィルムは、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。保護膜形成フィルムが複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0080】
保護膜形成フィルムが2層以上の複数層からなる場合には、各層間の密着性が劣っていたり、各層の伸縮のし易さの相違に基づいて、保護膜に反りが生じ、保護膜がワーク加工物から剥離する、などの不具合が生じる可能性があり、このような不具合が抑制される点では、保護膜形成フィルムは、1層からなるものが好ましい。
1層からなる保護膜形成フィルムは、高い厚さの均一性で容易に製造できる点と、設計の自由度が高い点でも、好ましい。
【0081】
保護膜形成フィルムの厚さは、1~100μmであることが好ましく、3~80μmであることがより好ましく、5~60μmであることが特に好ましい。保護膜形成フィルムの厚さが前記下限値以上であることで、保護能がより高い保護膜を形成できる。保護膜形成フィルムの厚さが前記上限値以下であることで、保護膜の厚さが過剰となることが避けられる。
ここで、「保護膜形成フィルムの厚さ」とは、保護膜形成フィルム全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる保護膜形成フィルムの厚さとは、保護膜形成フィルムを構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0082】
<<保護膜形成用組成物>>
保護膜形成フィルムは、その構成材料を含有する保護膜形成用組成物を用いて形成できる。例えば、保護膜形成フィルムは、その形成対象面に保護膜形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、形成できる。保護膜形成用組成物における、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、保護膜形成フィルムにおける前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、18~28℃の温度等が挙げられる。
【0083】
熱硬化性保護膜形成フィルムは、熱硬化性保護膜形成用組成物を用いて形成でき、エネルギー線硬化性保護膜形成フィルムは、エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物を用いて形成でき、非硬化性保護膜形成フィルムは、非硬化性保護膜形成用組成物を用いて形成できる。本明細書においては、保護膜形成フィルムが、熱硬化性及びエネルギー線硬化性の両方の特性を有する場合、保護膜の形成に対して、保護膜形成フィルムの熱硬化の寄与が、エネルギー線硬化の寄与よりも大きい場合には、保護膜形成フィルムを熱硬化性のものとして取り扱う。反対に、保護膜の形成に対して、保護膜形成フィルムのエネルギー線硬化の寄与が、熱硬化の寄与よりも大きい場合には、保護膜形成フィルムをエネルギー線硬化のものとして取り扱う。
【0084】
保護膜形成フィルムにおいて、保護膜形成フィルムの総質量に対する、保護膜形成フィルムの1種又は2種以上の後述する含有成分の合計含有量の割合は、100質量%を超えない。
同様に、保護膜形成用組成物において、保護膜形成用組成物の総質量に対する、保護膜形成用組成物の1種又は2種以上の後述する含有成分の合計含有量の割合は、100質量%を超えない。
【0085】
保護膜形成用組成物の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
【0086】
保護膜形成用組成物の乾燥条件は、特に限定されない。ただし、保護膜形成用組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましい。そして、溶媒を含有する保護膜形成用組成物は、例えば、70~130℃で10秒~5分の条件で、加熱乾燥させることが好ましい。ただし、熱硬化性保護膜形成用組成物は、この組成物自体と、この組成物から形成された熱硬化性保護膜形成フィルムと、が熱硬化しないように、加熱乾燥させることが好ましい。
【0087】
以下、熱硬化性保護膜形成フィルム、エネルギー線硬化性保護膜形成フィルム及び非硬化性保護膜形成フィルムについて、順次説明する。
【0088】
◎熱硬化性保護膜形成フィルム
熱硬化性保護膜形成フィルムを熱硬化させて、保護膜を形成するときの硬化条件は、保護膜が十分にその機能を発揮する程度の硬化度となる限り、特に限定されず、熱硬化性保護膜形成フィルムの種類に応じて、適宜選択すればよい。
例えば、熱硬化性保護膜形成フィルムの熱硬化時の加熱温度は、100~200℃であることが好ましい。そして、前記熱硬化時の加熱時間は、0.5~5時間であることが好ましい。
【0089】
常温の保護膜形成フィルムを、常温を超える温度になるまで加熱し、次いで常温になるまで冷却することにより、加熱・冷却後の保護膜形成フィルムとし、加熱・冷却後の保護膜形成フィルムの硬さと、加熱前の保護膜形成フィルムの硬さと、を同じ温度で比較したとき、加熱・冷却後の保護膜形成フィルムの方が硬い場合には、この保護膜形成フィルムは、熱硬化性である。
【0090】
好ましい熱硬化性保護膜形成フィルムとしては、例えば、重合体成分(A)、熱硬化性成分(B)、充填材(D)及び着色剤(I)を含有するものが挙げられる。
重合体成分(A)は、重合性化合物が重合反応して形成されたとみなせる成分である。
熱硬化性成分(B)は、熱を反応のトリガーとして、硬化(重合)反応し得る成分である。なお、本明細書において重合反応には、重縮合反応も含まれる。
【0091】
<熱硬化性保護膜形成用組成物(III)>
好ましい熱硬化性保護膜形成用組成物としては、例えば、前記重合体成分(A)、熱硬化性成分(B)、充填材(D)及び着色剤(I)を含有する熱硬化性保護膜形成用組成物(III)(本明細書においては、単に「組成物(III)」と略記することがある)等が挙げられる。
【0092】
[重合体成分(A)]
重合体成分(A)は、熱硬化性保護膜形成フィルムに造膜性や可撓性等を付与するための重合体化合物である。なお、本明細書において重合体化合物には、重縮合反応の生成物も含まれる。
【0093】
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムが含有する重合体成分(A)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0094】
重合体成分(A)としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、飽和ポリエステル樹脂等が挙げられ、アクリル樹脂が好ましい。
【0095】
アクリル樹脂としては、例えば、1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸エステルの重合体;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン及びN-メチロールアクリルアミド等から選択される2種以上のモノマーの共重合体等が挙げられる。
【0096】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念である。(メタ)アクリル酸と類似の用語についても同様であり、例えば、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する概念である。
【0097】
アクリル樹脂は、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の他の化合物と結合可能な官能基を有していてもよい。アクリル樹脂の前記官能基は、後述する架橋剤(F)を介して他の化合物と結合してもよいし、架橋剤(F)を介さずに他の化合物と直接結合していてもよい。
【0098】
本実施形態においては、重合体成分(A)として、アクリル樹脂以外の熱可塑性樹脂(以下、単に「熱可塑性樹脂」と略記することがある)を、アクリル樹脂を用いずに単独で用いてもよいし、アクリル樹脂と併用してもよい。前記熱可塑性樹脂を用いることで、被着体の凹凸面(例えば、ウエハの粗い裏面)へ熱硬化性保護膜形成フィルムが追従し易くなることがある。
【0099】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレン等が挙げられる。
【0100】
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムが含有する前記熱可塑性樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0101】
組成物(III)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する重合体成分(A)の含有量の割合は、重合体成分(A)の種類によらず、5~65質量%であることが好ましく、5~45質量%であることがより好ましい。
この内容は、熱硬化性保護膜形成フィルムにおける、熱硬化性保護膜形成フィルムの総質量に対する、重合体成分(A)の含有量の割合が、重合体成分(A)の種類によらず、5~65質量%であることが好ましく、5~45質量%であることがより好ましい、ことと同義である。
これは、溶媒を含有する樹脂組成物から溶媒を除去して、樹脂膜を形成する過程では、溶媒以外の成分の量は、通常、変化しないことに基づいており、樹脂組成物と樹脂膜とでは、溶媒以外の成分同士の含有量の比率は同じである。そこで、本明細書においては、以降、熱硬化性保護膜形成フィルムの場合に限らず、溶媒以外の成分の含有量については、樹脂組成物から溶媒を除去した樹脂膜での含有量のみ記載する。
【0102】
重合体成分(A)は、熱硬化性成分(B)にも該当する場合がある。本発明においては、組成物(III)が、このような重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の両方に該当する成分を含有する場合、組成物(III)は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有するとみなす。
【0103】
[熱硬化性成分(B)]
熱硬化性成分(B)は、熱硬化性保護膜形成フィルムを熱硬化させるための成分である。
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムが含有する熱硬化性成分(B)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0104】
熱硬化性成分(B)としては、例えば、エポキシ系熱硬化性樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられ、エポキシ系熱硬化性樹脂が好ましい。
本明細書において、熱硬化性ポリイミド樹脂とは、熱硬化することによってポリイミド樹脂を形成する、ポリイミド前駆体と、熱硬化性ポリイミドと、の総称である。
【0105】
(エポキシ系熱硬化性樹脂)
エポキシ系熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)からなる。
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムが含有するエポキシ系熱硬化性樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0106】
・エポキシ樹脂(B1)
エポキシ樹脂(B1)としては、公知のものが挙げられ、例えば、多官能系エポキシ樹脂、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等、2官能以上のエポキシ化合物が挙げられる。
【0107】
エポキシ樹脂(B1)としては、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いてもよい。
【0108】
エポキシ樹脂(B1)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0109】
・熱硬化剤(B2)
熱硬化剤(B2)は、エポキシ樹脂(B1)に対する硬化剤として機能する。
熱硬化剤(B2)としては、例えば、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。前記官能基としては、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基、酸基が無水物化された基等が挙げられ、フェノール性水酸基、アミノ基、又は酸基が無水物化された基であることが好ましく、フェノール性水酸基又はアミノ基であることがより好ましい。
【0110】
熱硬化剤(B2)のうち、フェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤としては、例えば、多官能フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等が挙げられる。
熱硬化剤(B2)のうち、アミノ基を有するアミン系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド等が挙げられる。
【0111】
熱硬化剤(B2)は、不飽和炭化水素基を有していてもよい。
【0112】
熱硬化剤(B2)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0113】
熱硬化性保護膜形成フィルムにおける、熱硬化剤(B2)の含有量は、エポキシ樹脂(B1)の含有量100質量部に対して、0.1~25質量部であることが好ましく、0.5~10質量部であることがより好ましい。熱硬化剤(B2)の前記含有量が前記下限値以上であることで、熱硬化性保護膜形成フィルムの硬化がより進行し易くなる。熱硬化剤(B2)の前記含有量が前記上限値以下であることで、熱硬化性保護膜形成フィルムの吸湿率が低減されて、保護膜形成フィルムを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。
【0114】
熱硬化性保護膜形成フィルムにおける、熱硬化性成分(B)の含有量(例えば、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)の総含有量)は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の総含有量100質量部に対して、40~75質量部であることが好ましく、50~70質量部であることがより好ましい。熱硬化性成分(B)の前記含有量がこのような範囲であることで、熱硬化性成分(B)を用いたことによる効果及び重合体成分(A)を用いたことによる効果を、共に奏し易い。
【0115】
[充填材(D)]
熱硬化性保護膜形成フィルムが充填材(D)を含有することにより、熱硬化性保護膜形成フィルムと保護膜は、熱膨張係数の調整が容易となり、この熱膨張係数を保護膜の形成対象物に対して最適化することで、保護膜形成フィルムを用いて得られた保護膜付きワーク加工物の信頼性がより向上する。また、熱硬化性保護膜形成フィルムが充填材(D)を含有することにより、保護膜の吸湿率を低減したり、放熱性を向上させたりすることもできる。
【0116】
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムが含有する充填材(D)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0117】
充填材(D)は、有機充填材及び無機充填材のいずれであってもよいが、無機充填材であることが好ましい。
好ましい無機充填材としては、例えば、酸化チタン(チタンホワイト)、酸化アルミニウム(アルミナ)、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、ベンガラ、炭化ケイ素、窒化ホウ素等の粉末;これら無機充填材を球形化したビーズ;これら無機充填材の表面改質品;これら無機充填材の単結晶繊維;ガラス繊維等が挙げられる。
【0118】
熱硬化性保護膜形成フィルムにおける、熱硬化性保護膜形成フィルムの総質量に対する、充填材(D)の含有量の割合は、45~80質量%であることが好ましく、65~80質量%であることがより好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、上記の、熱硬化性保護膜形成フィルムと保護膜の熱膨張係数の調整がより容易となり、保護膜形成フィルムを用いて得られた保護膜付きワーク加工物の信頼性がより向上する。
【0119】
[着色剤(I)]
熱硬化性保護膜形成フィルム及び保護膜は、着色剤(I)を含有することにより、その光透過性を容易に調節できる。
【0120】
着色剤(I)としては、例えば、無機系顔料、有機系顔料、有機系染料等、公知のものが挙げられる。
【0121】
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムが含有する着色剤(I)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0122】
着色剤(I)を用いる場合、熱硬化性保護膜形成フィルムの着色剤(I)の含有量は、目的に応じて適宜調節すればよい。例えば、熱硬化性保護膜形成フィルムの着色剤(I)の含有量を調節し、熱硬化性保護膜形成フィルムの光透過性を調節することにより、熱硬化性保護膜形成フィルム又は保護膜に対してレーザー印字を行った場合の印字視認性を調節できる。また、熱硬化性保護膜形成フィルムの着色剤(I)の含有量を調節することで、保護膜の意匠性を向上させたり、ウエハの裏面の研削痕を見え難くすることもできる。これらの点を考慮すると、熱硬化性保護膜形成フィルムにおける、熱硬化性保護膜形成フィルムの総質量に対する、着色剤(I)の含有量の割合は、0.1~7.5質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、着色剤(I)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。例えば、被着体から熱硬化性保護膜形成フィルムを剥離したときに、熱硬化性保護膜形成フィルムの被着体における残存の有無を、目視によって容易に確認できる。前記割合が前記上限値以下であることで、着色剤(I)の過剰使用が抑制される。
【0123】
[硬化促進剤(C)]
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムは、硬化促進剤(C)を含有していてもよい。硬化促進剤(C)は、組成物(III)の硬化速度を調整するための成分である。
好ましい硬化促進剤(C)としては、例えば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第3級アミン;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類(1個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換されたイミダゾール);トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類(1個以上の水素原子が有機基で置換されたホスフィン);テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
【0124】
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムが含有する硬化促進剤(C)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0125】
硬化促進剤(C)を用いる場合、熱硬化性保護膜形成フィルムにおける、硬化促進剤(C)の含有量は、熱硬化性成分(B)の含有量100質量部に対して、0.01~5質量部であることが好ましく、0.1~3質量部であることがより好ましい。硬化促進剤(C)の前記含有量が前記下限値以上であることで、硬化促進剤(C)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。硬化促進剤(C)の含有量が前記上限値以下であることで、例えば、高極性の硬化促進剤(C)が、高温・高湿度条件下で熱硬化性保護膜形成フィルム中において被着体との接着界面側に移動して偏析することを抑制する効果が高くなる。その結果、保護膜形成フィルムを用いて得られた保護膜付きワーク加工物の信頼性がより向上する。
【0126】
[カップリング剤(E)]
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムは、カップリング剤(E)を含有していてもよい。カップリング剤(E)として、無機化合物又は有機化合物と反応可能な官能基を有するものを用いることにより、熱硬化性保護膜形成フィルムから形成された保護膜の被着体に対する接着性を向上させることができる。また、カップリング剤(E)を用いることで、前記保護膜は、耐熱性を損なうことなく、耐水性が向上する。
【0127】
カップリング剤(E)は、重合体成分(A)、熱硬化性成分(B)等が有する官能基と反応可能な官能基を有する化合物であることが好ましく、シランカップリング剤であることがより好ましい。
【0128】
好ましい前記シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
【0129】
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムが含有するカップリング剤(E)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0130】
カップリング剤(E)を用いる場合、熱硬化性保護膜形成フィルムにおける、カップリング剤(E)の含有量は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の総含有量100質量部に対して、0.01~7質量部であることが好ましく、0.02~3質量部であることがより好ましい。カップリング剤(E)の前記含有量が前記下限値以上であることで、充填材(D)の樹脂への分散性の向上や、熱硬化性保護膜形成フィルムの被着体との接着性の向上など、カップリング剤(E)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。カップリング剤(E)の前記含有量が前記上限値以下であることで、アウトガスの発生がより抑制される。
【0131】
[架橋剤(F)]
重合体成分(A)として、上述のアクリル樹脂等の、他の化合物と結合可能なビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の官能基を有するものを用いる場合、組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムは、架橋剤(F)を含有していてもよい。架橋剤(F)は、重合体成分(A)中の前記官能基を他の化合物と結合させて架橋するための成分であり、このように架橋することにより、熱硬化性保護膜形成フィルムの粘着力及び凝集力を調節できる。
【0132】
架橋剤(F)としては、例えば、有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物、金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤)、アジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤)等が挙げられる。
【0133】
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムが含有する架橋剤(F)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0134】
架橋剤(F)を用いる場合、組成物(III)において、架橋剤(F)の含有量は、重合体成分(A)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましい。架橋剤(F)の前記含有量が前記下限値以上であることで、架橋剤(F)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。架橋剤(F)の前記含有量が前記上限値以下であることで、架橋剤(F)の過剰使用が抑制される。
【0135】
[エネルギー線硬化性樹脂(G)]
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムは、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有していてもよい。熱硬化性保護膜形成フィルムは、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有していることにより、エネルギー線の照射によって特性を変化させることができる。
【0136】
エネルギー線硬化性樹脂(G)は、エネルギー線硬化性化合物、又はエネルギー線硬化性化合物から合成されたと見做せる、エネルギー線硬化性オリゴマー若しくはエネルギー線硬化性ポリマー(重合体)である。
前記エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、分子内に少なくとも1個の重合性二重結合を有する化合物が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
【0137】
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムが含有するエネルギー線硬化性樹脂(G)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0138】
エネルギー線硬化性樹脂(G)を用いる場合、熱硬化性保護膜形成フィルムにおける、熱硬化性保護膜形成フィルムの総質量に対する、エネルギー線硬化性樹脂(G)の含有量の割合は、1~30質量%であることが好ましく、5~25質量%であることがより好ましい。
【0139】
[光重合開始剤(H)]
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムは、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有する場合、エネルギー線硬化性樹脂(G)の重合反応を効率よく進めるために、光重合開始剤(H)を含有していてもよい。
【0140】
組成物(III)における光重合開始剤(H)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジル-1-ブタノン等のアセトフェノン化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;ベンジルフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド化合物;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール化合物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;チタノセン等のチタノセン化合物;チオキサントン等のチオキサントン化合物;パーオキサイド化合物;ジアセチル等のジケトン化合物;ベンジル;ジベンジル;ベンゾフェノン;2,4-ジエチルチオキサントン;1,2-ジフェニルメタン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン;1-クロロアントラキノン、2-クロロアントラキノン等のキノン化合物が挙げられる。
また、光重合開始剤(H)としては、例えば、アミン等の光増感剤等も挙げられる。
【0141】
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムが含有する光重合開始剤(H)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0142】
光重合開始剤(H)を用いる場合、熱硬化性保護膜形成フィルムにおける、光重合開始剤(H)の含有量は、エネルギー線硬化性樹脂(G)の含有量100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましい。
【0143】
[汎用添加剤(J)]
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲内において、汎用添加剤(J)を含有していてもよい。
汎用添加剤(J)は、公知のものでよく、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、ゲッタリング剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0144】
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムが含有する汎用添加剤(J)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムの汎用添加剤(J)の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0145】
[溶媒]
組成物(III)は、さらに溶媒を含有することが好ましい。溶媒を含有する組成物(III)は、取り扱い性が良好となる。
本明細書において、「溶媒」とは、特に断りのない限り、対象成分を溶解させるものだけでなく、対象成分を分散させる分散媒も含む概念とする。
【0146】
前記溶媒は特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2-プロパノール、イソブチルアルコール(2-メチルプロパン-1-オール)、1-ブタノール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド(アミド結合を有する化合物)等が挙げられる。
組成物(III)が含有する溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0147】
組成物(III)が含有する溶媒で、より好ましいものとしては、例えば、組成物(III)中の含有成分をより均一に混合できる点から、メチルエチルケトン、トルエン、酢酸エチル等が挙げられる。
【0148】
組成物(III)の溶媒の含有量は、特に限定されず、例えば、溶媒以外の成分の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0149】
<熱硬化性保護膜形成用組成物(III)の製造方法>
組成物(III)は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0150】
◎エネルギー線硬化性保護膜形成フィルム
エネルギー線硬化性保護膜形成フィルムをワークの目的とする箇所に貼付し、エネルギー線硬化させて、保護膜を形成するときの硬化条件は、保護膜が十分にその機能を発揮する程度の硬化度となる限り特に限定されず、エネルギー線硬化性保護膜形成フィルムの種類に応じて、適宜選択すればよい。
例えば、エネルギー線硬化性保護膜形成フィルムのエネルギー線硬化時における、エネルギー線の照度は、120~280mW/cm2であることが好ましい。そして、前記硬化時における、エネルギー線の光量は、100~1000mJ/cm2であることが好ましい。
【0151】
<エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物(IV)>
好ましいエネルギー線硬化性保護膜形成用組成物としては、例えば、前記エネルギー線硬化性成分(a)を含有するエネルギー線硬化性保護膜形成用組成物(IV)(本明細書においては、単に「組成物(IV)」と略記することがある)等が挙げられる。
【0152】
[エネルギー線硬化性成分(a)]
エネルギー線硬化性成分(a)は、エネルギー線の照射によって硬化する成分であり、エネルギー線硬化性保護膜形成フィルムに造膜性や、可撓性等を付与するとともに、硬化後に硬質の保護膜を形成するための成分でもある。
エネルギー線硬化性保護膜形成フィルムにおいて、エネルギー線硬化性成分(a)は、未硬化であることが好ましく、粘着性を有することが好ましく、未硬化でかつ粘着性を有することがより好ましい。
【0153】
エネルギー線硬化性成分(a)としては、例えば、エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1)、及びエネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2)が挙げられる。前記重合体(a1)は、その少なくとも一部が架橋剤によって架橋されたものであってもよいし、架橋されていないものであってもよい。
【0154】
組成物(IV)及びエネルギー線硬化性保護膜形成フィルムが含有する、エネルギー線硬化性成分(a)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0155】
[エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)]
組成物(IV)及びエネルギー線硬化性保護膜形成フィルムは、前記エネルギー線硬化性成分(a)として前記化合物(a2)を含有する場合、さらにエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)も含有することが好ましい。また、組成物(IV)及びエネルギー線硬化性保護膜形成フィルムは、前記化合物(a2)を含有せず、前記重合体(a1)、及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)をともに含有していてもよい。
【0156】
エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、上述の組成物(III)の含有成分として挙げた、重合体成分(A)と同じものが挙げられる。ただし、重合体(b)はエネルギー線硬化性基を有しない。
これらの中でも、前記重合体(b)は、アクリル重合体(以下、「アクリル重合体(b-1)」と略記することがある)であることが好ましい。
【0157】
前記重合体(b)が、グリシジル基、水酸基、置換アミノ基、カルボキシ基、アミノ基等の官能基を有している場合には、前記重合体(b)は、架橋剤によって架橋されていてもよい。
【0158】
組成物(IV)及びエネルギー線硬化性保護膜形成フィルムが含有する、エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0159】
組成物(IV)が、前記化合物(a2)を含有し、前記重合体(a1)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)のいずれか一方又は両方を含有する場合、組成物(IV)において、前記化合物(a2)の含有量は、前記重合体(a1)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の総含有量100質量部に対して、10~400質量部であることが好ましく、30~350質量部であることがより好ましい。
【0160】
エネルギー線硬化性保護膜形成フィルムにおける、エネルギー線硬化性保護膜形成フィルムの総質量に対する、前記エネルギー線硬化性成分(a)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の合計含有量の割合は、5~90質量%であることが好ましく、10~80質量%であることがより好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、エネルギー線硬化性保護膜形成フィルムの造膜性、可撓性及びエネルギー線硬化性がより良好となる。
【0161】
組成物(IV)は、エネルギー線硬化性成分(a)以外に、目的に応じて、熱硬化性成分、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤、着色剤及び汎用添加剤からなる群より選択される1種又は2種以上を含有していてもよい。
【0162】
組成物(IV)における前記熱硬化性成分、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤、着色剤及び汎用添加剤としては、それぞれ、組成物(III)における熱硬化性成分(B)、充填材(D)、カップリング剤(E)、架橋剤(F)、光重合開始剤(H)、着色剤(I)及び汎用添加剤(J)と同じものが挙げられる。
これらの成分を含有するエネルギー線硬化性保護膜形成フィルムは、これらの成分を含有する熱硬化性保護膜形成フィルムと、同様の効果を奏する。特に、光重合開始剤は、エネルギー線硬化の反応を効率よく進めることから、エネルギー線硬化性保護膜形成フィルムは、光重合開始剤を含有することが好ましい。
【0163】
組成物(IV)における前記熱硬化性成分、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤、着色剤及び汎用添加剤の含有量は、目的に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。
【0164】
組成物(IV)は、希釈によってその取り扱い性が向上することから、さらに溶媒を含有するものが好ましい。
組成物(IV)が含有する溶媒としては、例えば、組成物(III)における溶媒と同じものが挙げられる。
組成物(IV)が含有する溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
組成物(IV)の溶媒の含有量は、特に限定されず、例えば、溶媒以外の成分の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0165】
<エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物(IV)の製造方法>
組成物(IV)は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物は、例えば、配合成分の種類が異なる点以外は、先に説明した熱硬化性保護膜形成用組成物の場合と同じ方法で製造できる。
【0166】
◎非硬化性保護膜形成フィルム
好ましい非硬化性保護膜形成フィルムとしては、例えば、熱可塑性樹脂及び充填材を含有するものが挙げられる。
【0167】
<非硬化性保護膜形成用組成物(V)>
好ましい非硬化性保護膜形成用組成物としては、例えば、前記熱可塑性樹脂及び充填材を含有する非硬化性保護膜形成用組成物(V)(本明細書においては、単に「組成物(V)」と略記することがある)等が挙げられる。
【0168】
[熱可塑性樹脂]
前記熱可塑性樹脂は、特に限定されない。
前記熱可塑性樹脂として、より具体的には、例えば、上述の組成物(III)の含有成分として挙げた、重合体成分(A)と同じものが挙げられる。ただし、前記熱可塑性樹脂はエネルギー線硬化性基を有しない。
【0169】
組成物(V)及び非硬化性保護膜形成フィルムが含有する前記熱可塑性樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0170】
非硬化性保護膜形成フィルムにおける、非硬化性保護膜形成フィルムの総質量に対する、前記熱可塑性樹脂の含有量の割合は、25~75質量%であることが好ましい。
【0171】
[充填材]
充填材を含有する非硬化性保護膜形成フィルムは、充填材(D)を含有する熱硬化性保護膜形成フィルムと、同様の効果を奏する。
【0172】
組成物(V)及び非硬化性保護膜形成フィルムが含有する充填材としては、組成物(III)及び熱硬化性保護膜形成フィルムが含有する充填材(D)と同じものが挙げられる。
【0173】
組成物(V)及び非硬化性保護膜形成フィルムが含有する充填材は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0174】
非硬化性保護膜形成フィルムにおける、非硬化性保護膜形成フィルムの総質量に対する、充填材の含有量の割合は、15~70質量%であることが好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、組成物(III)を用いた場合と同様に、非硬化性保護膜形成フィルム及び保護膜の熱膨張係数の調整が、より容易となる。
【0175】
組成物(V)は、前記熱可塑性樹脂及び充填材以外に、目的に応じて、他の成分を含有していてもよい。
前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
例えば、前記熱可塑性樹脂及び着色剤を含有する組成物(V)を用いることにより、形成される非硬化性保護膜形成フィルム及び保護膜は、先に説明した熱硬化性保護膜形成フィルムが着色剤(I)を含有する場合と同様の効果を発現する。
【0176】
組成物(V)において、前記他の成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0177】
組成物(V)の前記他の成分の含有量は、目的に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。
【0178】
組成物(V)は、希釈によってその取り扱い性が向上することから、さらに溶媒を含有するものが好ましい。
組成物(V)が含有する溶媒としては、例えば、上述の組成物(III)における溶媒と同じものが挙げられる。
組成物(V)が含有する溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
組成物(V)の溶媒の含有量は、特に限定されず、例えば、溶媒以外の成分の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0179】
<非硬化性保護膜形成用組成物(V)の製造方法>
組成物(V)は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
非硬化性保護膜形成用組成物は、例えば、配合成分の種類が異なる点以外は、先に説明した熱硬化性保護膜形成用組成物の場合と同じ方法で製造できる。
【0180】
<<好ましい保護膜形成用シートの一例>>
前記保護膜形成用シートにおいては、第1剥離フィルムの保護膜形成フィルムに対する剥離力、第2剥離フィルムの保護膜形成フィルムに対する剥離力、並びに第2剥離フィルム及び第1剥離フィルムの剥離力差が、いずれも上述のいずれかの数値範囲であることが好ましい。このような保護膜形成用シートは、極めて優れた特性を有する。
好ましい保護膜形成用シートの一例としては、第2剥離フィルム及び第1剥離フィルムの剥離力差が30mN/100mm以上200mN/100mm未満であり、第1剥離フィルムの保護膜形成フィルムに対する剥離力が20mN/100mm以上であり、第2剥離フィルムの保護膜形成フィルムに対する剥離力が500mN/100mm以下である、保護膜形成用シートが挙げられる。
【0181】
前記保護膜形成用シートにおいては、第1剥離フィルムの保護膜形成フィルム側の面のうち、保護膜形成フィルムが積層されていない領域(非積層領域)と、第2剥離フィルムの保護膜形成フィルム側の面のうち、保護膜形成フィルムが積層されていない領域(非積層領域)と、の間には、介在物があってもよいし、無くてもよいが、介在物が実質的に無いことが好ましい。このような保護膜形成用シートを用いて、保護膜形成フィルムから第1剥離フィルムを剥離し(例えば、後述する保護膜付きワーク加工物の製造方法における第1剥離工程)、この剥離した第1剥離フィルムをロール状に巻き取るときに、第1剥離フィルムの巻きずれが抑制される。同様に、このような保護膜形成用シートを用いて、保護膜形成フィルム又は保護膜から第2剥離フィルムを剥離し(例えば、後述する保護膜付きワーク加工物の製造方法における第2剥離工程)、この剥離した第2剥離フィルムをロール状に巻き取るときに、第2剥離フィルムの巻きずれが抑制される。また、このような保護膜形成用シートは、より安価に製造できる。
【0182】
本明細書において、介在物が実質的に無いとは、介在物が全く無いか、又は、介在物があっても、介在物の最大幅が5mm未満であることを意味する。ここで、介在物の最大幅とは、介在物の表面上の異なる2点間を結ぶ線分の長さで最大のものを意味する。したがって、例えば、球状の介在物の最大幅は、この球の直径である。
【0183】
前記保護膜形成用シートにおいては、第1剥離フィルムの前記非積層領域と、第2剥離フィルムの前記非積層領域との間に、介在物が実質的に無い場合には、第1剥離フィルムの前記非積層領域の一部と、第2剥離フィルムの前記非積層領域の一部と、が互いに接触していてもよいし、互いに接触していなくてもよい。
【0184】
<<保護膜形成用シートの一例>>
図2(a)は、本実施形態の保護膜形成用シートの一例を模式的に示す平面図であり、
図2(b)は、
図2(a)に示す保護膜形成用シートのII-II線における断面を模式的に示す図である。
なお、
図2以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0185】
ここに示す保護膜形成用シート1は、第1剥離フィルム12と、第1剥離フィルム12よりも剥離力が大きい第2剥離フィルム13と、第1剥離フィルム12と第2剥離フィルム13との間に設けられた保護膜形成フィルム11と、を備えている。
図2(a)に示すように、第1剥離フィルム12と第2剥離フィルム13はいずれも長尺である。
図2(a)は、保護膜形成用シート1を、その第1剥離フィルム12側の上方から見下ろして平面視したときの平面図である。
保護膜形成用シート1においては、2枚以上の保護膜形成フィルム11が、1枚の第1剥離フィルム12と1枚の第2剥離フィルム13の長手方向に沿って配置されており、ここでは、2枚以上の保護膜形成フィルム11が、1枚の第1剥離フィルム12と1枚の第2剥離フィルム13の長手方向に沿って、一列に配置されている。ここでは、符号11aは、保護膜形成フィルム11の第1剥離フィルム12側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)を示し、符号11bは、保護膜形成フィルム11の第2剥離フィルム13側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)を示している。
保護膜形成フィルム11の平面形状は、すべて円形又は略円形である。
保護膜形成フィルム11の直径D
11は、135mm以上150mm未満、185mm以上200mm未満、285mm以上300mm未満、又は435mm以上450mm未満である。
【0186】
第1剥離フィルム12は、その保護膜形成フィルム11の外周部11cと一致する位置には、切れ込みを実質的に有しておらず、第2剥離フィルム13は、その保護膜形成フィルム11の外周部11cと一致する位置には、切れ込み139を有している。切れ込み139の深さは、1μm未満である。切れ込み139は、上記のように見下ろして平面視したときに、円形又は略円形を描いている。
【0187】
第2剥離フィルム13の保護膜形成フィルム11に対する剥離力と、第1剥離フィルム12の保護膜形成フィルム11に対する剥離力と、の差は、30mN/100mm以上200mN/100mm未満であることが好ましい。
第1剥離フィルム12の保護膜形成フィルム11に対する剥離力は、20mN/100mm以上であることが好ましい。
第2剥離フィルム13の保護膜形成フィルム11に対する剥離力は、500mN/100mm以下であることが好ましい。
第1剥離フィルム12の保護膜形成フィルム11側の面12bと、ステンレス鋼(SUS)板の表面と、を貼付したときの、第1剥離フィルム12とステンレス鋼板との間の付着力は、50mN/25mm未満であることが好ましく、第1剥離フィルム12の保護膜形成フィルム11側の面12bのうち、少なくとも保護膜形成フィルム11が積層されていない領域(非積層領域)122bが、上述の付着力(50mN/25mm未満)を有していることが好ましく、前記面12bの全領域(全面)が、上述の付着力(50mN/25mm未満)を有していてもよい。
第2剥離フィルム13の保護膜形成フィルム11側の面13aと、ステンレス鋼(SUS)板の表面と、を貼付したときの、第2剥離フィルム13とステンレス鋼板との間の付着力は、50mN/25mm未満であることが好ましく、第2剥離フィルム13の保護膜形成フィルム11側の面13aのうち、少なくとも保護膜形成フィルム11が積層されていない領域(非積層領域)132aが、上述の付着力(50mN/25mm未満)を有していることが好ましく、前記面13aの全領域(全面)が、上述の付着力(50mN/25mm未満)を有していてもよい。
【0188】
保護膜形成用シート1においては、第1剥離フィルム12の保護膜形成フィルム11側の面12bのうち、保護膜形成フィルム11が積層されていない領域(非積層領域)122bと、第2剥離フィルム13の保護膜形成フィルム11側の面13aのうち、保護膜形成フィルム11が積層されていない領域(非積層領域)132aと、の間には、介在物が実質的に無いことが好ましい。第1剥離フィルム12の前記非積層領域122bと、第2剥離フィルム13の前記非積層領域132aとの間に、介在物が実質的に無い場合には、
図2(b)に示すように、第1剥離フィルム12の前記非積層領域122bと、第2剥離フィルム13の前記非積層領域132aと、が互いに接触していなくてもよいし、
図3に示すように、第1剥離フィルム12の前記非積層領域122bの一部と、第2剥離フィルム13の前記非積層領域132aの一部と、が互いに接触していてもよい。
図3は、本実施形態の保護膜形成用シートの他の例を模式的に示す断面図である。
第1剥離フィルム12の保護膜形成フィルム11側の面12bのうち、保護膜形成フィルム11が積層されている領域(積層領域)121bは、前記非積層領域122bに囲まれており、その形状は、保護膜形成フィルム11の平面形状と同じである。
同様に、第2剥離フィルム13の保護膜形成フィルム11側の面13aのうち、保護膜形成フィルム11が積層されている領域(積層領域)131aは、前記非積層領域132aに囲まれており、その形状は、保護膜形成フィルム11の平面形状と同じである。
【0189】
第2剥離フィルム13のうち、保護膜形成フィルム11が積層されている部位(積層部位、
図2(b)においては、前記積層領域131aに対応した部位)の厚さT
131aと、保護膜形成フィルム11が積層されていない部位(非積層部位、
図2(b)においては、前記非積層領域132aに対応した部位)の厚さT
132aと、の差(T
131a-T
132a)は、10μm未満であることが好ましく、-10μm以上であることが好ましい。
【0190】
<<保護膜形成用シートの他の例>>
本実施形態の保護膜形成用シートは、上述のものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、ここまでに説明したもの(例えば、
図2(a)、
図2(b)、
図3に示した保護膜形成用シート)において、一部の構成が変更又は削除されたものや、さらに他の構成が追加されたものであってもよい。
【0191】
図4は、本実施形態の保護膜形成用シートの他の例を模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用シート2は、第2剥離フィルム23が、その保護膜形成フィルム11の外周部11cと一致する位置に、切れ込みを実質的に有しておらず、第1剥離フィルム22が、その保護膜形成フィルム11の外周部11cと一致する位置に、切れ込み229を有している。保護膜形成用シート2は、これらの点以外は、保護膜形成用シート1と同じである。
第1剥離フィルム22は、切れ込み229を有している点以外は、第1剥離フィルム12と同じであり、第1剥離フィルム22が有する切れ込み229は、第2剥離フィルム13が有する切れ込み139と同じである。
第2剥離フィルム23は、切れ込みを実質的に有していない点以外は、第2剥離フィルム13と同じである。
保護膜形成用シート2においては、第1剥離フィルム22の保護膜形成フィルム11側の面22bのうち、保護膜形成フィルム11が積層されていない領域(非積層領域)の一部と、第2剥離フィルム23の保護膜形成フィルム11側の面23aのうち、保護膜形成フィルム11が積層されていない領域(非積層領域)の一部と、が互いに接触していてもよい。
【0192】
図5(a)は、本実施形態の保護膜形成用シートのさらに他の例を模式的に示す平面図であり、
図5(b)は、
図5(a)に示す保護膜形成用シートのIII-III線における断面を模式的に示す図である。
ここに示す保護膜形成用シート3は、第1剥離フィルム12と第2剥離フィルム13との間に、さらに、第1剥離フィルム12と第2剥離フィルム13のそれぞれの2本の長辺に沿って、これら長辺の近傍に、帯状の保護膜形成フィルム31を備えている点以外は、保護膜形成用シート1と同じである。保護膜形成用シート3の幅方向において、2本の保護膜形成フィルム31は、第1剥離フィルム12と第2剥離フィルム13の両端部近傍に設けられており、2枚以上の保護膜形成フィルム11が、これら保護膜形成フィルム31の間に配置されている。
【0193】
保護膜形成フィルム31は、その形状以外は、保護膜形成フィルム11と同じである。保護膜形成フィルム31は、保護膜形成用シート3の製造時に、保護膜形成フィルム11と同時に形成できる。
保護膜形成フィルム31は、保護膜形成用シート3において、第1剥離フィルム12と第2剥離フィルム13との間に介在して、第1剥離フィルム12と第2剥離フィルム13との間の距離を一定値以上に保持するためのスペーサーとして機能する。
【0194】
保護膜形成用シート3が保護膜形成フィルム31を備えていることにより、保護膜形成用シート3をロール状に巻き取り、次いで、ロールから繰り出したときに、第1剥離フィルム及び第2剥離フィルムにおける、保護膜形成フィルム11の巻き痕の発生が抑制される。
【0195】
保護膜形成フィルム31の幅は、5~20mmであることが好ましい。
保護膜形成フィルム31の厚さは、保護膜形成フィルム11の厚さと同じであってよい。
【0196】
図6は、本実施形態の保護膜形成用シートのさらに他の例を模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用シート4は、第1剥離フィルム22と第2剥離フィルム23との間に、さらに、第1剥離フィルム22と第2剥離フィルム23のそれぞれの2本の長辺に沿って、これら長辺の近傍に、帯状の保護膜形成フィルム41を備えている点以外は、保護膜形成用シート2と同じである。保護膜形成用シート4の幅方向において、2本の保護膜形成フィルム41は、第1剥離フィルム22と第2剥離フィルム23の両端部近傍に設けられており、2枚以上の保護膜形成フィルム11が、これら保護膜形成フィルム41の間に配置されている。
【0197】
保護膜形成フィルム41は、その形状以外は、保護膜形成フィルム11と同じであり、保護膜形成用シート4での保護膜形成フィルム41の配置の態様は、保護膜形成フィルム31での保護膜形成フィルム31の配置の態様と同じである。
保護膜形成用シート4は、保護膜形成用シート3と同様の効果を奏する。
保護膜形成フィルム41は、このような保護膜形成用シート4を用いて、保護膜形成フィルム又は保護膜から第2剥離フィルムを剥離(例えば、後述する保護膜付きワーク加工物の製造方法における第2剥離工程)した後、この剥離した第2剥離フィルムをロール状に巻き取る前に、取り除いてもよい。
【0198】
図7は、本実施形態の保護膜形成用シートのさらに他の例を模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用シート5は、切れ込み139を有する第2剥離フィルム13に代えて、切れ込みを有しない第2剥離フィルム23を備えている点以外は、
図2(a)及び
図2(b)に示す保護膜形成用シート1と同じであり、切れ込み229を有する第1剥離フィルム22に代えて、切れ込みを有しない第1剥離フィルム12を備えている点以外は、
図4に示す保護膜形成用シート2と同じである。
保護膜形成用シート5においては、第1剥離フィルム12の保護膜形成フィルム11側の面12bのうち、保護膜形成フィルム11が積層されていない領域(非積層領域)の一部と、第2剥離フィルム23の保護膜形成フィルム11側の面23aのうち、保護膜形成フィルム11が積層されていない領域(非積層領域)の一部と、が互いに接触していてもよい。
【0199】
図8は、本実施形態の保護膜形成用シートのさらに他の例を模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用シート6は、切れ込み139を有する第2剥離フィルム13に代えて、切れ込みを有しない第2剥離フィルム23を備えている点以外は、
図5(a)及び
図5(b)に示す保護膜形成用シート3と同じであり、切れ込み229を有する第1剥離フィルム22に代えて、切れ込みを有しない第1剥離フィルム12を備えている点以外は、
図6に示す保護膜形成用シート4と同じである。
保護膜形成フィルム41は、このような保護膜形成用シート6を用いて、保護膜形成フィルム又は保護膜から第2剥離フィルムを剥離(例えば、後述する保護膜付きワーク加工物の製造方法における第2剥離工程)した後、この剥離した第2剥離フィルムをロール状に巻き取る前に、取り除いてもよい。
【0200】
<<保護膜形成用シートの製造方法>>
本実施形態の保護膜形成用シートは、公知の保護膜形成用シートの製造方法を適宜組み合わせることで、製造できる。
例えば、本実施形態の保護膜形成用シートは、第1剥離フィルム又は第2剥離フィルムと、除去用剥離フィルムと、これら(前記第1剥離フィルム又は第2剥離フィルムと、前記除去用剥離フィルム)の間に設けられた保護膜形成フィルムと、を備えて構成された積層シートを作製し、前記積層シートに対して、前記除去用剥離フィルムの露出面から、前記第1剥離フィルム又は第2剥離フィルムの前記保護膜形成フィルム側の面を通過し、前記第1剥離フィルム又は第2剥離フィルムの内部にまで到達する、直径が135mm以上150mm未満、185mm以上200mm未満、285mm以上300mm未満、又は435mm以上450mm未満の円形又は略円形の切れ込みを、前記積層シートの長手方向に沿って2以上形成して、前記保護膜形成フィルム及び除去用剥離フィルムを、平面形状が円形又は略円形の第1領域と、それ以外の第2領域と、に分割することで第1中間体を作製し、前記第1中間体において、前記保護膜形成フィルム及び除去用剥離フィルムの第2領域を、前記第1剥離フィルム又は第2剥離フィルムから取り除き、さらに、前記保護膜形成フィルムの第1領域から、これに貼付されている前記除去用剥離フィルムの第1領を取り除く(カス上げを行う)ことで、前記第1剥離フィルム又は第2剥離フィルムと、前記第1剥離フィルム又は第2剥離フィルムの一方の面上に設けられた、直径が135mm以上150mm未満、185mm以上200mm未満、285mm以上300mm未満、又は435mm以上450mm未満の円形又は略円形の2枚以上の保護膜形成フィルムと、を備え、前記第1剥離フィルム又は第2剥離フィルムが、その前記円形又は略円形の保護膜形成フィルムの外周部と一致する位置に、切れ込みを有する第2中間体を作製し、前記第2中間体が前記第1剥離フィルムを備えている場合には、第2剥離フィルムを新たに用意し、前記第2中間体が前記第2剥離フィルムを備えている場合には、第1剥離フィルムを新たに用意し、前記第2中間体中のすべての前記保護膜形成フィルムの前記第1剥離フィルム又は第2剥離フィルム側とは反対側の露出面に、前記新たに用意した第2剥離フィルム又は第1剥離フィルムを貼付することで、製造できる。前記新たに用意した第2剥離フィルム又は第1剥離フィルムを貼付するとき、又は貼付した後は、前記第1剥離フィルムの前記保護膜形成フィルム側の面と、前記第2剥離フィルムの前記保護膜形成フィルム側の面とを、前記保護膜形成フィルムの近傍以外の領域で接触させて(貼り合わせて)もよい。
本製造方法(本明細書においては、「製造方法(α)」と称することがある)により、第1剥離フィルムと第2剥離フィルムとのいずれか一方が、その保護膜形成フィルムの外周部と一致する位置に、切れ込みを有する保護膜形成用シート(例えば、
図2(a)、
図2(b)及び
図3に示す保護膜形成用シート1、
図4に示す保護膜形成用シート2)を製造できる。
また、本製造方法(製造方法(α))において、上記の第2中間体の作製時に、さらに、前記スペーサーとしての保護膜形成フィルムを形成するように、前記積層シートに対して切れ込みを形成することによって、前記スペーサーとしての保護膜形成フィルムも備えた保護膜形成用シート(例えば、
図5(a)及び
図5(b)に示す保護膜形成用シート3、
図6に示す保護膜形成用シート4)を製造できる。
【0201】
また、例えば、本実施形態の保護膜形成用シートは、平面形状が円形又は略円形の2枚以上の保護膜形成フィルムを、第1剥離フィルム又は第2剥離フィルムの長手方向に沿って形成可能なように、前記第1剥離フィルム又は第2剥離フィルムの一方の面にマスクを形成することでマスキングし、前記マスキング後の前記第1剥離フィルム又は第2剥離フィルムの前記一方の面上に、前記保護膜形成フィルムを形成するための保護膜形成用組成物の層を形成し、前記保護膜形成用組成物の層から前記保護膜形成フィルムを形成し、前記第1剥離フィルム又は第2剥離フィルムの前記一方の面上から、前記マスクと、前記マスク上の前記保護膜形成フィルムを除去することで、前記第1剥離フィルム又は第2剥離フィルムの前記一方の面上に、直径が135mm以上150mm未満、185mm以上200mm未満、285mm以上300mm未満、又は435mm以上450mm未満の円形又は略円形の2枚以上の保護膜形成フィルムを形成し、前記保護膜形成フィルムが前記第1剥離フィルム上に設けられている場合には、第2剥離フィルムを新たに用意し、前記保護膜形成フィルムが前記第2剥離フィルム上に設けられている場合には、第1剥離フィルムを新たに用意し、すべての前記保護膜形成フィルムの前記第1剥離フィルム又は第2剥離フィルム側とは反対側の露出面に、前記新たに用意した第2剥離フィルム又は第1剥離フィルムを貼付することで、製造できる。前記新たに用意した第2剥離フィルム又は第1剥離フィルムを貼付するとき、又は貼付した後は、前記第1剥離フィルムの前記保護膜形成フィルム側の面と、前記第2剥離フィルムの前記保護膜形成フィルム側の面とを、前記保護膜形成フィルムの近傍以外の領域で接触させて(貼り合わせて)もよい。
本製造方法(本明細書においては、「製造方法(β)」と称することがある)によれば、第1剥離フィルムと第2剥離フィルムがともに、その保護膜形成フィルムの外周部と一致する位置に、切れ込みを実質的に有しない保護膜形成用シート(例えば、
図7に示す保護膜形成用シート5)の製造方法として好適である。
また、製造方法(β)において、平面形状が円形又は略円形の保護膜形成フィルムに加えて、さらに、前記スペーサーとしての保護膜形成フィルムを形成するように、上記のマスクを形成することによって、前記スペーサーとしての保護膜形成フィルムも備えた保護膜形成用シート(例えば、
図8に示す保護膜形成用シート6)を製造できる。
製造方法(β)においては、マスキング後の前記第1剥離フィルム又は第2剥離フィルムの前記一方の面上に、前記保護膜形成フィルムと、前記スペーサーとしての保護膜形成フィルムと、を形成するための保護膜形成用組成物の層を形成するときには、前記保護膜形成用組成物を前記一方の面上に塗工すればよい。
【0202】
また、例えば、本実施形態の保護膜形成用シートは、第1剥離フィルム又は第2剥離フィルムの一方の面上に、前記第1剥離フィルム又は第2剥離フィルムの長手方向に沿って、平面形状が円形又は略円形の2以上の、保護膜形成フィルムを形成するための保護膜形成用組成物の層を形成し、前記保護膜形成用組成物の層から、直径が135mm以上150mm未満、185mm以上200mm未満、285mm以上300mm未満、又は435mm以上450mm未満の円形又は略円形の2枚以上の保護膜形成フィルムを形成し、前記保護膜形成フィルムが前記第1剥離フィルム上に設けられている場合には、第2剥離フィルムを新たに用意し、前記保護膜形成フィルムが前記第2剥離フィルム上に設けられている場合には、第1剥離フィルムを新たに用意し、すべての前記保護膜形成フィルムの前記第1剥離フィルム又は第2剥離フィルム側とは反対側の露出面に、前記新たに用意した第2剥離フィルム又は第1剥離フィルムを貼付することで、製造できる。前記新たに用意した第2剥離フィルム又は第1剥離フィルムを貼付するとき、又は貼付した後は、前記第1剥離フィルムの前記保護膜形成フィルム側の面と、前記第2剥離フィルムの前記保護膜形成フィルム側の面とを、前記保護膜形成フィルムの近傍以外の領域で接触させて(貼り合わせて)もよい。
本製造方法(本明細書においては、「製造方法(γ)」と称することがある)によれば、第1剥離フィルムと第2剥離フィルムがともに、その保護膜形成フィルムの外周部と一致する位置に、切れ込みを実質的に有しない保護膜形成用シート(例えば、
図7に示す保護膜形成用シート5)の製造方法として好適である。
また、製造方法(γ)において、平面形状が円形又は略円形の保護膜形成フィルムに加えて、さらに、前記スペーサーとしての保護膜形成フィルムを形成するための保護膜形成用組成物の層を形成し、前記保護膜形成用組成物の層から、前記スペーサーとしての保護膜形成フィルムを形成することにより、前記スペーサーとしての保護膜形成フィルムも備えた保護膜形成用シート(例えば、
図8に示す保護膜形成用シート6)を製造できる。
製造方法(γ)においては、第1剥離フィルム又は第2剥離フィルムの一方の面上に、前記保護膜形成フィルムと、前記スペーサーとしての保護膜形成フィルムと、を形成するための保護膜形成用組成物の層を形成するときには、前記保護膜形成用組成物を前記一方の面上に、スクリーン印刷法等の印刷法によって印刷すればよい。
【0203】
◇保護膜付きワーク加工物の製造方法(保護膜形成用シートの使用方法)
前記保護膜形成用シートは、保護膜付きワーク加工物の製造に用いることができる。
本発明の一実施形態に係る保護膜付きワーク加工物の製造方法において、前記保護膜付きワーク加工物は、ワーク加工物と、前記ワーク加工物の一方の面に設けられた保護膜と、を備えており、前記ワーク加工物は、ワークを加工することにより得られ、前記ワークの平面形状が円形であり、前記ワークの直径が、6インチ、8インチ、12インチ、又は18インチであり、前記保護膜は、前記保護膜形成用シート中の前記保護膜形成フィルムから形成されたものであり、前記ワークの直径が6インチである場合には、前記保護膜形成フィルムの直径が135mm以上150mm未満であり、前記ワークの直径が8インチである場合には、前記保護膜形成フィルムの直径が185mm以上200mm未満であり、前記ワークの直径が12インチである場合には、前記保護膜形成フィルムの直径が285mm以上300mm未満であり、前記ワークの直径が18インチである場合には、前記保護膜形成フィルムの直径が435mm以上450mm未満であり、前記保護膜形成フィルムが硬化性である場合には、前記保護膜形成フィルムの硬化物が前記保護膜であり、前記保護膜形成フィルムが非硬化性である場合には、前記ワークのいずれかの箇所に貼付された後の前記保護膜形成フィルムが前記保護膜であり、前記保護膜付きワーク加工物の製造方法は、前記保護膜形成用シート中の前記保護膜形成フィルムから前記第1剥離フィルムを剥離する第1剥離工程と、前記第1剥離工程の後に、前記保護膜形成フィルムの外周部を前記ワークの外周部からはみ出させることなく、前記保護膜形成フィルムの前記第1剥離フィルムが設けられていた側の面を、前記ワークの一方の面に貼付することにより、前記ワークに前記保護膜形成フィルム又は前記保護膜が設けられた第1積層体を作製する第1貼付工程と、前記第1貼付工程の後に、前記第1積層体中の前記保護膜形成フィルム又は前記保護膜から前記第2剥離フィルムを剥離する第2剥離工程と、前記第2剥離工程の後に、前記保護膜形成フィルム又は前記保護膜の前記第2剥離フィルムが設けられていた側の面に、前記ワークを加工するための加工シートを貼付することにより、前記加工シートと、前記保護膜形成フィルム又は前記保護膜と、前記ワークと、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された第2積層体を作製する第2貼付工程と、前記第2貼付工程の後に、前記ワークを加工することにより、前記ワーク加工物を作製する加工工程と、前記第2貼付工程の後に、前記保護膜形成フィルム又は前記保護膜を切断する切断工程と、を有し、前記保護膜形成フィルムが硬化性である場合には、さらに、前記第2剥離工程の後に、前記保護膜形成フィルムを硬化させることにより、前記保護膜を形成する硬化工程と、を有する。
【0204】
前記第1貼付工程の後の各工程において、保護膜形成フィルム及び保護膜のいずれを取り扱うかは、保護膜を形成するタイミングで決定される。保護膜形成フィルムが非硬化性である場合には、第1貼付工程の後に取り扱うのは、いずれの工程においても保護膜である。保護膜形成フィルムが硬化性である場合には、硬化工程前に取り扱うのは保護膜形成フィルムであり、硬化工程後に取り扱うのは保護膜である。
【0205】
ワークが半導体ウエハである場合、本発明の一実施形態に係る保護膜付きワーク加工物の製造方法、すなわち保護膜付き半導体チップの製造方法において、前記保護膜付き半導体チップは、半導体チップと、前記半導体チップの裏面に設けられた保護膜と、を備えており、前記半導体チップは、半導体ウエハを加工(分割)することにより得られ、前記半導体ウエハの平面形状が円形であり、前記半導体ウエハの直径が、6インチ、8インチ、12インチ、又は18インチであり、前記保護膜は、前記保護膜形成用シート中の前記保護膜形成フィルムから形成されたものであり、前記半導体ウエハの直径が6インチである場合には、前記保護膜形成フィルムの直径が135mm以上150mm未満であり、前記半導体ウエハの直径が8インチである場合には、前記保護膜形成フィルムの直径が185mm以上200mm未満であり、前記半導体ウエハの直径が12インチである場合には、前記保護膜形成フィルムの直径が285mm以上300mm未満であり、前記半導体ウエハの直径が18インチである場合には、前記保護膜形成フィルムの直径が435mm以上450mm未満であり、前記保護膜形成フィルムが硬化性である場合には、前記保護膜形成フィルムの硬化物が前記保護膜であり、前記保護膜形成フィルムが非硬化性である場合には、前記半導体ウエハの裏面に貼付された後の前記保護膜形成フィルムが前記保護膜であり、前記保護膜付き半導体チップの製造方法は、前記保護膜形成用シート中の前記保護膜形成フィルムから前記第1剥離フィルムを剥離する第1剥離工程と、前記第1剥離工程の後に、前記保護膜形成フィルムの外周部を前記半導体ウエハの外周部からはみ出させることなく、前記保護膜形成フィルムの前記第1剥離フィルムが設けられていた側の面を、前記半導体ウエハの一方の面に貼付することにより、前記半導体ウエハに前記保護膜形成フィルム又は前記保護膜が設けられた第1積層体を作製する第1貼付工程と、前記第1貼付工程の後に、前記第1積層体中の前記保護膜形成フィルム又は前記保護膜から前記第2剥離フィルムを剥離する第2剥離工程と、前記第2剥離工程の後に、前記保護膜形成フィルム又は前記保護膜の前記第2剥離フィルムが設けられていた側の面に、前記半導体ウエハを加工するための加工シートを貼付することにより、前記加工シートと、前記保護膜形成フィルム又は前記保護膜と、前記半導体ウエハと、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された第2積層体を作製する第2貼付工程と、前記第2貼付工程の後に、前記半導体ウエハを加工(分割)することにより、前記半導体チップを作製する加工工程と、前記第2貼付工程の後に、前記保護膜形成フィルム又は前記保護膜を切断する切断工程と、を有し、前記保護膜形成フィルムが硬化性である場合には、さらに、前記第2剥離工程の後に、前記保護膜形成フィルムを硬化させることにより、前記保護膜を形成する硬化工程と、を有する保護膜付き半導体チップの製造方法が挙げられる。
【0206】
前記製造方法によれば、前記保護膜形成フィルムの前記ワークへの貼付時に、(第1貼付工程において)、保護膜付きワーク加工物の製造効率を低下させずに、保護膜形成フィルムによるワークの汚染を抑制でき、保護膜形成用シートの使用時に、第1剥離フィルム又は第2剥離フィルムの抜き加工が不要であり、使用後の第1剥離フィルム又は第2剥離フィルムを再利用できる。
【0207】
前記製造方法は、前記硬化工程を有する場合の製造方法(本明細書においては、「製造方法(1)」と称することがある)と、前記硬化工程を有しない場合の製造方法(本明細書においては、「製造方法(2)」と称することがある)と、に分けられる。
以下、これら製造方法について、順次説明する。
【0208】
<<製造方法(1)>>
前記製造方法(1)において、前記保護膜付きワーク加工物は、ワーク加工物と、前記ワーク加工物の一方の面に設けられた保護膜と、を備えており、前記ワーク加工物は、ワークを加工することにより得られ、前記ワークの平面形状が円形であり、前記ワークの直径が、6インチ、8インチ、12インチ、又は18インチであり、前記保護膜は、前記保護膜形成用シート中の前記保護膜形成フィルムから形成されたものであり、前記ワークの直径が6インチである場合には、前記保護膜形成フィルムの直径が135mm以上150mm未満であり、前記ワークの直径が8インチである場合には、前記保護膜形成フィルムの直径が185mm以上200mm未満であり、前記ワークの直径が12インチである場合には、前記保護膜形成フィルムの直径が285mm以上300mm未満であり、前記ワークの直径が18インチである場合には、前記保護膜形成フィルムの直径が435mm以上450mm未満であり、前記保護膜形成フィルムが硬化性であるため、前記保護膜形成フィルムの硬化物が前記保護膜であり、前記保護膜付きワーク加工物の製造方法は、前記保護膜形成用シート中の前記保護膜形成フィルムから前記第1剥離フィルムを剥離する第1剥離工程と、前記第1剥離工程の後に、前記保護膜形成フィルムの外周部を前記ワークの外周部からはみ出させることなく、前記保護膜形成フィルムの前記第1剥離フィルムが設けられていた側の面を、前記ワークの一方の面に貼付することにより、前記ワークに前記保護膜形成フィルムが設けられた第1積層体を作製する第1貼付工程と、前記第1貼付工程の後に、前記第1積層体中の前記保護膜形成フィルムから前記第2剥離フィルムを剥離する第2剥離工程と、前記第2剥離工程の後に、前記保護膜形成フィルム又は前記保護膜の前記第2剥離フィルムが設けられていた側の面に、前記ワークを加工するための加工シートを貼付することにより、前記加工シートと、前記保護膜形成フィルム又は前記保護膜と、前記ワークと、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された第2積層体を作製する第2貼付工程と、前記第2貼付工程の後に、前記ワークを加工することにより、前記ワーク加工物を作製する加工工程と、前記第2貼付工程の後に、前記保護膜形成フィルム又は前記保護膜を切断する切断工程と、前記第2剥離工程の後に、前記保護膜形成フィルムを硬化させることにより、前記保護膜を形成する硬化工程と、を有する。
【0209】
ワークが半導体ウエハである場合には、前記製造方法(1)において、前記保護膜付き半導体チップは、半導体チップと、前記半導体チップの裏面に設けられた保護膜と、を備えており、前記半導体チップは、半導体ウエハを加工(分割)することにより得られ、前記半導体ウエハの平面形状が円形であり、前記半導体ウエハの直径が、6インチ、8インチ、12インチ、又は18インチであり、前記保護膜は、前記保護膜形成用シート中の前記保護膜形成フィルムから形成されたものであり、前記半導体ウエハの直径が6インチである場合には、前記保護膜形成フィルムの直径が135mm以上150mm未満であり、前記半導体ウエハの直径が8インチである場合には、前記保護膜形成フィルムの直径が185mm以上200mm未満であり、前記半導体ウエハの直径が12インチである場合には、前記保護膜形成フィルムの直径が285mm以上300mm未満であり、前記半導体ウエハの直径が18インチである場合には、前記保護膜形成フィルムの直径が435mm以上450mm未満であり、前記保護膜形成フィルムが硬化性であるため、前記保護膜形成フィルムの硬化物が前記保護膜であり、前記保護膜付き半導体チップの製造方法は、前記保護膜形成用シート中の前記保護膜形成フィルムから前記第1剥離フィルムを剥離する第1剥離工程と、前記第1剥離工程の後に、前記保護膜形成フィルムの外周部を前記半導体ウエハの外周部からはみ出させることなく、前記保護膜形成フィルムの前記第1剥離フィルムが設けられていた側の面を、前記半導体ウエハの裏面に貼付することにより、前記半導体ウエハに前記保護膜形成フィルムが設けられた第1積層体を作製する第1貼付工程と、前記第1貼付工程の後に、前記第1積層体中の前記保護膜形成フィルムから前記第2剥離フィルムを剥離する第2剥離工程と、前記第2剥離工程の後に、前記保護膜形成フィルム又は前記保護膜の前記第2剥離フィルムが設けられていた側の面に、前記半導体ウエハを加工するための加工シートを貼付することにより、前記加工シートと、前記保護膜形成フィルム又は前記保護膜と、前記半導体ウエハと、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された第2積層体を作製する第2貼付工程と、前記第2貼付工程の後に、前記半導体ウエハを加工(分割)することにより、前記半導体チップを作製する加工工程と、前記第2貼付工程の後に、前記保護膜形成フィルム又は前記保護膜を切断する切断工程と、前記第2剥離工程の後に、前記保護膜形成フィルムを硬化させることにより、前記保護膜を形成する硬化工程と、を有する。
【0210】
加工工程及び切断工程を行う順番は、目的に応じて任意に選択でき、加工工程を行ってから切断工程を行ってもよいし、加工工程及び切断工程を同時に行ってもよいし、切断工程を行ってから加工工程を行ってもよい。
本実施形態においては、ワークの加工と、保護膜形成フィルム又は保護膜の切断とを、その順序によらず、中断することなく同じ操作によって連続的に行った場合には、加工工程及び切断工程を同時に行ったものとみなす。
【0211】
加工工程及び切断工程は、いずれも、これらを行う順番に応じて、公知の方法で行うことができる。
【0212】
ワークが半導体ウエハであり、加工(分割)工程を行ってから切断工程を行う場合には、半導体ウエハの分割(換言すると個片化)は、例えば、ステルスダイシング(登録商標)又はレーザーダイシング等によって行うことができる。
ステルスダイシング(登録商標)とは、以下のような方法である。すなわち、まず、半導体ウエハの内部において、分割予定箇所を設定し、この箇所を焦点として、この焦点に集束するように、レーザー光を照射することにより、半導体ウエハの内部に改質層を形成する。半導体ウエハの改質層は、半導体ウエハの他の箇所とは異なり、レーザー光の照射によって変質しており、強度が弱くなっている。そのため、半導体ウエハに力が加えられることにより、半導体ウエハの内部の改質層において、半導体ウエハの両面方向に延びる亀裂が発生し、半導体ウエハの分割(切断)の起点となる。次いで、半導体ウエハに力を加えて、前記改質層の部位において半導体ウエハを分割し、半導体チップを作製する。
【0213】
ワークが半導体ウエハであり、加工(分割)工程を行ってから切断工程を行う場合には、保護膜形成フィルム又は保護膜の切断は、例えば、保護膜形成フィルム又は保護膜を、その半導体チップへの貼付面に対して平行な方向に引っ張る、所謂エキスパンドによって行うことができる。エキスパンドされた保護膜形成フィルム又は保護膜は、半導体チップの外周に沿って切断される。このようなエキスパンドによる切断は、-20~5℃等の低温下において、行うことが好ましい。
【0214】
ワークが半導体ウエハであり、加工(分割)工程及び切断工程を同時に行う場合には、ブレードを用いるブレードダイシング、レーザー照射によるレーザーダイシング、又は研磨剤を含む水の吹き付けによるウォーターダイシング等の各ダイシングによって、半導体ウエハの分割と、保護膜形成フィルム又は保護膜の切断と、を同時に行ことができる。
また、ステルスダイシング(登録商標)により改質層を形成し、かつ分割を行っていない半導体ウエハと、保護膜形成フィルム又は保護膜と、をともに、上記と同様の方法でエキスパンドすることにより、半導体ウエハの分割と、保護膜形成フィルム又は保護膜の切断と、を同時に行こともできる。
【0215】
ワークが半導体ウエハであり、切断工程を行ってから加工(分割)工程を行う場合には、上記と同様の各ダイシング時の手法によって、半導体ウエハを分割することなく、保護膜形成フィルム又は保護膜を切断することができ、次いで、半導体ウエハをブレーキングによって分割することができる。
【0216】
図9~
図10は、ワークが半導体ウエハである場合の前記製造方法(1)の一例を模式的に説明するための断面図である。ここでは、
図2(a)及び
図2(b)に示す保護膜形成用シート1を用いた場合の製造方法について説明する。
【0217】
<第1剥離工程>
製造方法(1)の前記第1剥離工程においては、
図9(a)に示すように、保護膜形成用シート1中の保護膜形成フィルム11から第1剥離フィルム12を剥離する。
このときの剥離速度は、5~100mm/sであることが好ましい。
【0218】
保護膜形成用シート1において、第1剥離フィルム12は、保護膜形成フィルム11の外周部11cと一致する位置に、切れ込みを実質的に有しない。そして、通常は、剥離フィルムに形成される切れ込みは、保護膜形成フィルムの切断時に形成されるため、第1剥離フィルム12は、保護膜形成フィルム11の外周部11cと一致する位置に、切れ込みを実質的に有しなければ、それ以外の領域にも、切れ込みを実質的に有しない。このような第1剥離フィルム12は、保護膜形成フィルム11から剥離した後、再利用するのに好適である。さらに、切れ込みを実質的に有しない第1剥離フィルム12においては、切れ込みの部位に保護膜形成フィルムの一部が残像する不具合が抑制される。さらに、保護膜形成用シート1において、保護膜形成フィルム11はすでに目的とする形状に抜き加工されているため、保護膜形成用シート1の使用時、すなわち、第1剥離工程を行うまでの間に、保護膜形成フィルムの抜き加工と、それに伴う第1剥離フィルム12及び第2剥離フィルム13の抜き加工が、ともに不要である。したがって、第1剥離フィルム12及び第2剥離フィルム13の加工時に生じる切断屑で、装置内が汚染されることもない。
【0219】
<第1貼付工程>
製造方法(1)の第1剥離工程の後、前記第1貼付工程においては、
図9(b)に示すように、保護膜形成フィルム11の外周部11cを半導体ウエハ9の外周部9cからはみ出させることなく、保護膜形成フィルム11の第1剥離フィルム12が設けられていた側の面(第1面)11aを、半導体ウエハ9の裏面9bに貼付することにより、半導体ウエハ9に保護膜形成フィルム11が設けられた第1積層体101を作製する。半導体ウエハ9の回路面9aには、複数個の突状電極91が設けられている。
【0220】
半導体ウエハ9の平面形状(回路面9a及び裏面9bの形状)は、円形であり、保護膜形成フィルム11の平面形状(第1面11a及び第2面11bの形状)は、円形又は略円形である。
半導体ウエハ9の直径D
9は、6インチ、8インチ、12インチ、又は18インチであり、半導体ウエハ9の直径D
9が6インチである場合には、保護膜形成フィルム11の直径D
11が135mm以上150mm未満であり、半導体ウエハ9の直径D
9が8インチである場合には、保護膜形成フィルム11の直径D
11が185mm以上200mm未満であり、半導体ウエハ9の直径D
9が12インチである場合には、保護膜形成フィルム11の直径D
11が285mm以上300mm未満であり、半導体ウエハ9の直径D
9が18インチである場合には、保護膜形成フィルム11の直径D
11が435mm以上450mm未満である。すなわち、
図9(b)中の、半導体ウエハ9の断面は、半導体ウエハ9の中心を含み、保護膜形成フィルム11の断面は、保護膜形成フィルム11の重心を含んでいる。
【0221】
第1貼付工程において、D9とD11が上述の関係を満たすことにより、保護膜形成フィルム11の外周部11cを半導体ウエハ9の外周部9cからはみ出させることなく、保護膜形成フィルム11を半導体ウエハ9に容易に貼付できるため、保護膜形成フィルム11による半導体ウエハ9の汚染を抑制できる。さらに、D11が過剰に小さくなっていないため、半導体ウエハ9の使用効率が高くなり、保護膜付きワーク加工物の製造効率の低下が抑制される。
【0222】
第1貼付工程においては、保護膜形成フィルム11の半導体ウエハ9への貼付速度は、5~100mm/sであることが好ましく、貼付圧力は0.15~0.6MPaであることが好ましい。
【0223】
第1貼付工程においては、保護膜形成フィルム11を加熱することにより軟化させて、半導体ウエハ9に貼付してもよい。
【0224】
半導体ウエハ9は、その厚さを目的の値とするために、その裏面9bが研削されたものであってよい。すなわち、半導体ウエハ9の裏面9bは、研削面であってよい。
【0225】
<第2剥離工程>
製造方法(1)の第1貼付工程の後、前記第2剥離工程においては、
図9(c)に示すように、第1積層体101中の保護膜形成フィルム11から第2剥離フィルム13を剥離する。
【0226】
<硬化工程>
製造方法(1)の第2剥離工程の後、前記硬化工程においては、
図9(d)に示すように、保護膜形成フィルム11を硬化させることにより、保護膜11’を形成する。このときの硬化条件は、先に説明したとおりである。
図9(d)中、符号11a’は保護膜11’の第1面を示し、符号11b’は保護膜11’の第2面を示し、符号11c’は保護膜11’の外周部を示しており、それぞれ、保護膜形成フィルム11の第1面11a、保護膜形成フィルム11の第2面11b、保護膜形成フィルム11の外周部11cに対応している。
図9(d)中、保護膜形成フィルム11が保護膜11’となっている第1積層体に対しては、新たに符号101’を付しており、本明細書においてはこれも「第1積層体」と称する。
【0227】
<第2貼付工程>
製造方法(1)の第2剥離工程(ここでは硬化工程)の後、前記第2貼付工程においては、
図10(a)に示すように、第1積層体101’中の保護膜11’の第2面(ここでは露出面)11b’に、半導体ウエハ9を加工するための加工シートであるダイシングシート8を貼付する。これにより、ダイシングシート8と、保護膜11’と、半導体ウエハ9と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された第2積層体102を作製する。
【0228】
ダイシングシート8としては、例えば、基材81と、基材81の一方の面上に設けられた粘着剤層82と、を備えて構成された、公知のダイシングシートが挙げられる。ダイシングシート8は、その一方の表面8a(ここでは粘着剤層82の基材81側とは反対側の面82a)において、保護膜11’に貼付する。
ただし、用いるダイシングシートはこれに限定されず、基材81と粘着剤層82を備えて構成されたものに該当しないダイシングシートであってもよい。
【0229】
<加工工程、切断工程>
製造方法(1)の第2貼付工程の後、前記加工工程においては、
図10(b)に示すように、半導体ウエハ9を加工(分割)することにより、半導体チップ90を作製し、前記切断工程においては、保護膜11’を切断する。
図10(b)中、切断後の保護膜11’に対しては、新たに符号110’を付している。なお、本明細書においては、「切断後の保護膜」を単に「保護膜」と称することがある。
図10(b)中、符号90aは半導体チップ90の回路面を示し、符号90bは半導体チップ90の裏面を示し、符号110a’は切断後の保護膜110’の第1面を示し、符号110b’は切断後の保護膜110’の第2面を示しており、それぞれ、半導体ウエハ9の回路面9a、半導体ウエハ9の裏面9b、保護膜11’の第1面11a’、保護膜11’の第2面11b’に対応している。
【0230】
加工工程及び切断工程を行う順番は、先の説明のとおり、限定されない。
加工工程及び切断工程を行う方法は、先に説明したとおりである。
【0231】
以上により、ワーク加工物である半導体チップ90と、半導体チップ90の一方の面(裏面90b)に設けられた保護膜110’と、を備えて構成された、目的とする、保護膜付きワーク加工物である保護膜付き半導体チップ109が複数個得られる。これら複数個の保護膜付き半導体チップ109はすべて、1枚のダイシングシート8上で整列した状態となっており、これら保護膜付き半導体チップ109とダイシングシート8は、保護膜付き半導体チップ群103を構成している。
【0232】
この後、公知の方法で、保護膜付き半導体チップ109をダイシングシート8から引き離してピックアップし、このピックアップした保護膜付き半導体チップ109を用いて公知の方法で、保護膜付き半導体チップが搭載された半導体装置を製造できる。
【0233】
<他の工程>
製造方法(1)は、第1剥離工程と、第1貼付工程と、第2剥離工程と、第2貼付工程と、加工工程と、切断工程と、硬化工程と、のいずれにも該当しない他の工程を有していてもよい。
前記他の工程の種類と、これを行うタイミングは、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
【0234】
前記他の工程としては、例えば、保護膜形成フィルム11の第2面11b、保護膜11’ の第2面11b’、又は切断後の保護膜110’の第2面110b’に対して、レーザー光を照射することにより、保護膜形成フィルム11、保護膜11’又は切断後の保護膜110’に印字を行う印字工程が挙げられる(図示略)。
本実施形態において、印字工程を行うタイミングは、特に限定されない。
【0235】
<硬化工程を行うタイミング>
ここまでは、第2剥離工程と第2貼付工程との間に、硬化工程を行う場合について説明したが、硬化工程を行うタイミングは、第2剥離工程の後であれば、いずれであってもよい。例えば、硬化工程は、第2貼付工程と加工工程との間、第2貼付工程と切断工程との間、加工工程と切断工程との間、及び切断工程の後、のいずれで行ってもよいし、印字工程を行う場合には、印字工程とその前の工程との間、及び印字工程とその後の工程との間、のいずれで行ってもよい。
【0236】
<<製造方法(2)>>
前記製造方法(2)において、前記保護膜付きワーク加工物は、ワーク加工物と、前記ワーク加工物の一方の面に設けられた保護膜と、を備えており、前記ワーク加工物は、ワークを加工することにより得られ、前記ワークの平面形状が円形であり、前記ワークの直径が、6インチ、8インチ、12インチ、又は18インチであり、前記保護膜は、前記保護膜形成用シート中の前記保護膜形成フィルムから形成されたものであり、前記ワークの直径が6インチである場合には、前記保護膜形成フィルムの直径が135mm以上150mm未満であり、前記ワークの直径が8インチである場合には、前記保護膜形成フィルムの直径が185mm以上200mm未満であり、前記ワークの直径が12インチである場合には、前記保護膜形成フィルムの直径が285mm以上300mm未満であり、前記ワークの直径が18インチである場合には、前記保護膜形成フィルムの直径が435mm以上450mm未満であり、前記保護膜形成フィルムが非硬化性であるため、前記ワークのいずれかの箇所に貼付された後の前記保護膜形成フィルムが前記保護膜であり、前記保護膜付きワーク加工物の製造方法は、前記保護膜形成用シート中の前記保護膜形成フィルムから前記第1剥離フィルムを剥離する第1剥離工程と、前記第1剥離工程の後に、前記保護膜形成フィルムの外周部を前記ワークの外周部からはみ出させることなく、前記保護膜形成フィルムの前記第1剥離フィルムが設けられていた側の面を、前記ワークの一方の面に貼付することにより、前記ワークに前記保護膜が設けられた第1積層体を作製する第1貼付工程と、前記第1貼付工程の後に、前記第1積層体中の前記保護膜から前記第2剥離フィルムを剥離する第2剥離工程と、前記第2剥離工程の後に、前記保護膜の前記第2剥離フィルムが設けられていた側の面に、前記ワークを加工するための加工シートを貼付することにより、前記加工シートと、前記保護膜と、前記ワークと、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された第2積層体を作製する第2貼付工程と、前記第2貼付工程の後に、前記ワークを加工することにより、前記ワーク加工物を作製する加工工程と、前記第2貼付工程の後に、前記保護膜を切断する切断工程と、を有する。
【0237】
製造方法(2)は、ワークの種類によらず、前記硬化工程を有さず、ワークに貼付した後の保護膜形成フィルムをそのまま保護膜とする点を除けば、製造方法(1)と同じである。
【0238】
ワークが半導体ウエハである場合には、前記製造方法(2)において、前記保護膜付き半導体チップは、半導体チップと、前記半導体チップの裏面に設けられた保護膜と、を備えており、前記半導体チップは、半導体ウエハを加工(分割)することにより得られ、前記半導体ウエハの平面形状が円形であり、前記半導体ウエハの直径が、6インチ、8インチ、12インチ、又は18インチであり、前記保護膜は、前記保護膜形成用シート中の前記保護膜形成フィルムから形成されたものであり、前記半導体ウエハの直径が6インチである場合には、前記保護膜形成フィルムの直径が135mm以上150mm未満であり、前記半導体ウエハの直径が8インチである場合には、前記保護膜形成フィルムの直径が185mm以上200mm未満であり、前記半導体ウエハの直径が12インチである場合には、前記保護膜形成フィルムの直径が285mm以上300mm未満であり、前記半導体ウエハの直径が18インチである場合には、前記保護膜形成フィルムの直径が435mm以上450mm未満であり、前記保護膜形成フィルムが非硬化性であるため、前記半導体ウエハの裏面に貼付された後の前記保護膜形成フィルムが前記保護膜であり、前記保護膜付き半導体チップの製造方法は、前記保護膜形成用シート中の前記保護膜形成フィルムから前記第1剥離フィルムを剥離する第1剥離工程と、前記第1剥離工程の後に、前記保護膜形成フィルムの外周部を前記半導体ウエハの外周部からはみ出させることなく、前記保護膜形成フィルムの前記第1剥離フィルムが設けられていた側の面を、前記半導体ウエハの裏面に貼付することにより、前記半導体ウエハに前記保護膜が設けられた第1積層体を作製する第1貼付工程と、前記第1貼付工程の後に、前記第1積層体中の前記保護膜から前記第2剥離フィルムを剥離する第2剥離工程と、前記第2剥離工程の後に、前記保護膜の前記第2剥離フィルムが設けられていた側の面に、前記半導体ウエハを加工するための加工シートを貼付することにより、前記加工シートと、前記保護膜と、前記半導体ウエハと、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された第2積層体を作製する第2貼付工程と、前記第2貼付工程の後に、前記半導体ウエハを加工(分割)することにより、前記半導体チップを作製する加工工程と、前記第2貼付工程の後に、前記保護膜を切断する切断工程と、を有する。
【0239】
図11~
図12は、ワークが半導体ウエハである場合の前記製造方法(2)の一例を模式的に説明するための断面図である。ここでは、
図2(a)及び
図2(b)に示す保護膜形成用シート1を用いた場合の製造方法について説明する。
【0240】
<第1剥離工程>
製造方法(2)の前記第1剥離工程は、
図11(a)に示すように、製造方法(1)の第1剥離工程と同じである。したがって、製造方法(2)の第1剥離工程では、製造方法(1)の第1剥離工程の場合と同じ効果が得られる。
【0241】
<第1貼付工程>
製造方法(2)の第1剥離工程の後、前記第1貼付工程においては、保護膜形成フィルム11の外周部11cを半導体ウエハ9の外周部9cからはみ出させることなく、保護膜形成フィルム11の第1剥離フィルム12が設けられていた側の面(第1面)11aを、半導体ウエハ9の裏面9bに貼付することにより、
図11(b)に示すように、半導体ウエハ9に保護膜11’が設けられた第1積層体101’を作製する。
製造方法(2)の第1貼付工程は、半導体ウエハ9へ貼付後の保護膜形成フィルム11を保護膜11’として取り扱う点を除けば、製造方法(1)の第1貼付工程と同じである。この段階で保護膜形成フィルム11を保護膜11’として取り扱うため、第1積層体には、符号として101ではなく、101’を付している。
製造方法(2)の第1貼付工程では、製造方法(1)の第1貼付工程の場合と同じ効果が得られる。
【0242】
<第2剥離工程>
製造方法(2)の第1貼付工程の後、前記第2剥離工程においては、
図11(c)に示すように、第1積層体101’中の保護膜11’から第2剥離フィルム13を剥離する。
【0243】
<第2貼付工程>
製造方法(2)の第2剥離工程の後、前記第2貼付工程においては、
図12(a)に示すように、第1積層体101’中の保護膜11’の第2面(ここでは露出面)11b’に、半導体ウエハ9を加工するための加工シートであるダイシングシート8を貼付する。これにより、ダイシングシート8と、保護膜11’と、半導体ウエハ9と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された第2積層体102を作製する。
【0244】
<加工工程、切断工程>
製造方法(2)の第2貼付工程の後、前記加工工程においては、
図12(b)に示すように、半導体ウエハ9を加工(分割)することにより、半導体チップ90を作製し、前記切断工程においては、保護膜11’を切断する。
【0245】
以上により、ワーク加工物である半導体チップ90と、半導体チップ90の一方の面(裏面90b)に設けられた保護膜110’と、を備えて構成された、目的とする、保護膜付きワーク加工物である保護膜付き半導体チップ109が複数個得られる。これら複数個の保護膜付き半導体チップ109はすべて、1枚のダイシングシート8上で整列した状態となっており、これら保護膜付き半導体チップ109とダイシングシート8は、保護膜付き半導体チップ群103を構成している。
【0246】
この後、公知の方法で、製造方法(1)の場合と同じ方法で、保護膜付き半導体チップ109をダイシングシート8から引き離してピックアップし、このピックアップした保護膜付き半導体チップ109を用いて公知の方法で、半導体装置を製造できる。
【0247】
<他の工程>
製造方法(2)は、製造方法(1)の場合と同様に、第1剥離工程と、第1貼付工程と、第2剥離工程と、第2貼付工程と、加工工程と、切断工程と、のいずれにも該当しない他の工程を有していてもよい。
前記他の工程の種類と、これを行うタイミングは、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。前記他の工程としては、例えば、製造方法(1)の場合と同様の印字工程が挙げられる。
【実施例0248】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0249】
<樹脂の製造原料>
本実施例及び比較例において略記している、樹脂の製造原料の正式名称を、以下に示す。
BA:アクリル酸n-ブチル
MA:アクリル酸メチル
GMA:メタクリル酸グリシジル
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
【0250】
<保護膜形成用組成物の製造原料>
保護膜形成用組成物の製造に用いた原料を以下に示す。
[重合体成分(A)]
(A)-1:BA(10質量部)、MA(70質量部)、GMA(5質量部)及びHEA(15質量部)を共重合して得られたアクリル樹脂(重量平均分子量400000、ガラス転移温度-1℃)。
[エポキシ樹脂(B1)]
(B1)-1:液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER828」、分子370、エポキシ当量184~194g/eq)
(B1)-2:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC社製「エピクロンHP-7200」、軟化点56~66℃、エポキシ当量254~264g/eq)
[熱硬化剤(B2)]
(B2)-1:ジシアンジアミド(三菱ケミカル社製「DICY7」、平均粒子径3μm、最大粒子径25μm)
[硬化促進剤(C)]
(C)-1:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製「キュアゾール(登録商標)2PHZ-PW」)
[充填材(D)]
(D)-1:シリカフィラー(アドマテックス社製「SC2050MB」、エポキシ系化合物で表面修飾された球状シリカフィラー、平均粒子径0.5μm、最大粒子径2.0μm)
[カップリング剤(E)]
(E)-1:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤、信越シリコーン社製「KBM403」、分子量236.3)
[着色剤(I)]
(I)-1:カーボンブラック(三菱ケミカル社製「MA600」、平均粒子径20nm)
【0251】
[実施例1]
<<保護膜形成用シートの製造>>
<保護膜形成用組成物(III)の製造>
重合体成分(A)-1(9.22質量部)、エポキシ樹脂(B1)-1(11.82質量部)、エポキシ樹脂(B1)-2(3.7質量部)、熱硬化剤(B2)-1(0.22質量部)、硬化促進剤(C)-1(0.22質量部)、充填材(D)-1(73.6質量部)、カップリング剤(E)-1(0.22質量部)及び着色剤(I)-1(1質量部)を、メチルエチルケトンに溶解又は分散させて、23℃で撹拌することで、溶媒以外のすべての成分の合計濃度が67質量%である熱硬化性の保護膜形成用組成物(III)-1を得た。なお、ここに示す前記溶媒以外の成分の配合量はすべて、溶媒を含まない目的物の配合量である。
【0252】
<保護膜形成フィルムの製造>
ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理されて構成された、長尺の第2剥離フィルム(リンテック社製「SP-PET502150」、厚さ50μm)を用い、その前記剥離処理面に、上記で得られた保護膜形成用組成物(III)-1を塗工し、100℃で2分乾燥させることにより、厚さ25μmの熱硬化性の保護膜形成フィルムを製造した。
【0253】
<保護膜形成用シートの製造>
ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理されて構成された、長尺の除去用剥離フィルム(リンテック社製「SP-PET381130」,厚さ38μm)を用意した。
上記で得られた保護膜形成フィルムの、第2剥離フィルムを備えていない側の露出面に、ラミネートロールを用いて、上記の除去用剥離フィルムの剥離処理面を貼付した。これにより、保護膜形成フィルムと、前記保護膜形成フィルムの一方の面に設けられた除去用剥離フィルムと、前記保護膜形成フィルムの他方の面に設けられた第2剥離フィルムと、を備えて構成された長尺の積層シートを得た。
【0254】
次いで、この積層シートに対して、その中の除去用剥離フィルム側からブレードをあてて、除去用剥離フィルムの露出面から、保護膜形成フィルムを通過し、第2剥離フィルムの内部にまで到達する円形の切れ込みを、積層シートの長手方向に2以上形成した。このとき、第2剥離フィルムにおいては、その保護膜形成フィルム側の面から15μmの深さまで、前記切れ込みを形成した。このように、長尺の積層シートの長手方向に沿って、円形の抜き加工を2箇所以上行うことにより、保護膜形成フィルムを、直径が299.5mmの2以上の第1領域と、それ以外の第2領域と、に分割し、除去用剥離フィルムも同様に、第1領域と第2領域とに分割した。これにより、
図1(a)~
図1(b)に示すものと同様の構成を有する第1中間体を得た。
次いで、この第1中間体において、保護膜形成フィルムの第2領域を、これに貼付されている除去用剥離フィルムの第2領域とともに、第2剥離フィルムから取り除き、さらに、保護膜形成フィルムの第1領域から、これに貼付されている除去用剥離フィルムの第1領域を取り除く(カス上げを行う)ことにより、第2中間体を得た。
【0255】
次いで、ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理されて構成された、長尺の第1剥離フィルム(リンテック社製「SP-PET381130」,厚さ38μm)を用意した。そして、第2中間体中のすべての保護膜形成フィルムの第1領域、すなわち、直径が299.5mmの2以上の円形の保護膜形成フィルムの露出面(第2剥離フィルム側とは反対側の面)に、ラミネートロールを用いて、この第1剥離フィルムの剥離処理面を貼付するとともに、第1剥離フィルムの剥離処理面と、第2剥離フィルムの剥離処理面とを、保護膜形成フィルムの近傍以外の領域で接触させた。このとき、ラミネートロールの温度を70℃とし、貼付圧力を0.3MPaとし、貼付速度を10m/minとした。
以上のように、製造方法(α)により、
図2(a)及び
図2(b)に示す構成の長尺の保護膜形成用シートを製造した。
【0256】
<<保護膜形成用シートの評価>>
<第1剥離フィルムの保護膜形成フィルムに対する剥離力の測定>
上記で得られた保護膜形成用シートから、幅100mm、長さ130mmの第1試験片を切り出した。この第1試験片の第2剥離フィルム側の露出面(第2剥離フィルムの保護膜形成フィルム側とは反対側の面)の全面を、補強用の接着性フィルムである汎用両面テープ(リンテック社製「タックライナーTL-202*」)を介して、アクリル板(厚さ2mm)の表面に貼付することにより、第1試験片をアクリル板上に固定した。
次いで、引張試験機(島津製作所社製「AG-1S」)を用いて、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、この第1試験片中の保護膜形成フィルムから、第1剥離フィルムを剥離した。このとき、剥離速度を1000mm/minとし、第1剥離フィルムと保護膜形成フィルムの互いに接触していた面同士が180°の角度を為すように、第1剥離フィルムを保護膜形成フィルムから剥離した(180°剥離を行った)。そして、第1剥離フィルムの剥離部分の長さが30mmを超えた後から、剥離が終了するまでに測定された剥離力の平均値を算出し、この平均値を第1剥離フィルムの剥離力として採用した。結果を表1中の「第1剥離フィルムの剥離力(mN/100mm)」の欄に示す。
【0257】
<第2剥離フィルムの保護膜形成フィルムに対する剥離力の測定>
上記で得られた保護膜形成用シートから、幅120mm、長さ145mmの切片を切り出した。この切片中の第1剥離フィルムを保護膜形成フィルムから剥離し、これにより新たに生じた保護膜形成フィルムの露出面(第2剥離フィルム側とは反対側の面)の全面に、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする易接着性フィルム(厚さ25μm、東洋紡社製「PET25A-4100」)の易接着面を貼り合わせた。このとき、ラミネーター(大成ラミネーター社製「VA-400」)を用いて、貼付圧力0.3MPa、貼付速度1m/min、貼付温度70℃の条件で、熱ラミネートにより貼り合わせた。そして、得られたものから、幅100mm、長さ130mmの第2試験片を切り出した。この第2試験片の第2剥離フィルム側の露出面(第2剥離フィルムの保護膜形成フィルム側とは反対側の面)の全面を、補強用の接着性フィルムである汎用両面テープ(リンテック社製「タックライナーTL-202*」)を介して、アクリル板(厚さ2mm)の表面に貼付することにより、第2試験片をアクリル板上に固定した。
次いで、引張試験機(島津製作所社製「AG-1S」)を用いて、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、この第2試験片中の第2剥離フィルムから、保護膜形成フィルムと前記易接着性フィルムの積層物を剥離した。このとき、剥離速度を1000mm/minとし、前記積層物(より具体的には前記積層物中の保護膜形成フィルム)と第2剥離フィルムの互いに接触していた面同士が180°の角度を為すように、前記積層物を第2剥離フィルムから剥離した(180°剥離を行った)。そして、前記積層物の剥離部分の長さが30mmを超えた後から、剥離が終了するまでに測定された剥離力の平均値を算出し、この平均値を第2剥離フィルムの剥離力として採用した。結果を表1中の「第2剥離フィルムの剥離力(mN/100mm)」の欄に示す。
【0258】
<第2剥離フィルム及び第1剥離フィルムの剥離力差の算出>
上記で求めた第2剥離フィルムの剥離力と、第1剥離フィルムの剥離力と、の差を算出した。結果を表1に示す。
【0259】
<第1剥離フィルムの剥離適性の評価>
テープラミネーター(リンテック社製「RAD-3600F/12」)を用い、ゴムロールの温度を60℃とし、テーブルの温度を80℃として、上記で得られた保護膜形成用シートを用いて、剥離速度50mm/sで第1剥離フィルムを剥離しながら、貼付速度50mm/s、貼付圧力0.25MPaの条件で、20枚の保護膜形成フィルムを1枚ずつ連続して、20枚の12インチシリコンウエハ(直径300mm、厚さ300μm)の#2000研磨面に対して貼付することを試みた。そして、第1剥離フィルムの剥離時に、第1剥離フィルムとともに第2剥離フィルムから剥離した保護膜形成フィルムの枚数(剥離枚数)を確認し、下記基準に従って、第1剥離フィルムの剥離適性を評価した。結果を表1に示す。
[評価基準]
A:保護膜形成フィルムの剥離枚数が0枚であり、第1剥離フィルムの剥離適性が高い。
B:保護膜形成フィルムの剥離枚数が1枚であり、第1剥離フィルムの剥離適性が良好である。
C:保護膜形成フィルムの剥離枚数が2枚以上であり、第1剥離フィルムの剥離適性が低い。
【0260】
<保護膜形成フィルムによるシリコンウエハの汚染の抑制効果の評価>
上記の第1剥離フィルムの剥離適性の評価時に、デジタル顕微鏡(キーエンス社製「VHS-7000」)を用いて、500倍の倍率で、保護膜形成フィルムが貼付されたすべてのシリコンウエハの外周部を観察した。そして、外周部に保護膜形成フィルムの付着が見られるシリコンウエハの枚数(汚染枚数)を確認し、下記基準に従って、保護膜形成フィルムによるシリコンウエハの汚染の抑制効果を評価した。結果を表1に示す。
[評価基準]
A:シリコンウエハの汚染枚数が0枚であり、保護膜形成フィルムによる汚染の抑制効果が高い。
B:シリコンウエハの汚染枚数が1枚であり、保護膜形成フィルムによる汚染の抑制効果が良好である。
C:シリコンウエハの汚染枚数が2枚以上であり、保護膜形成フィルムによる汚染の抑制効果が低い。
【0261】
<<第1剥離フィルムとステンレス鋼板との間の付着力の測定>>
前記第1剥離フィルムの剥離力の測定後に、保護膜形成フィルムから剥離した第1剥離フィルム(幅100mm、長さ130mm)を切断することで、幅25mm、長さ130mmの第1剥離フィルム片を2枚作製した。23℃の貼付温度条件で、貼付速度を300mm/minとし、貼付圧力を0.3MPaとして、前記第1剥離フィルム片を、その剥離処理面(すなわち、保護膜形成フィルムが貼付されていた面)によって、ステンレス鋼板(パルテック社製「SUS304 ♯600 片面 600HL 0.5mm×70mm×150mm」)の♯600研磨された面に貼付することで、第1剥離フィルム片付きステンレス鋼板を得た。ここで、「23℃の貼付温度条件」とは、ラミネートローラーの温度を23℃とし、ステンレス鋼板の温度を23℃としたことを意味する。
次いで、引張試験機(島津製作所社製「AG-1S」)を用いて、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、この第1剥離フィルム片付きステンレス鋼板中のステンレス鋼板から、第1剥離フィルム片を剥離した。このとき、剥離速度を300mm/minとし、ステンレス鋼板と第1剥離フィルム片の互いに接触していた面同士が90°の角度を為すように、第1剥離フィルム片をその長さ方向へ剥離した(90°剥離を行った)。そして、測定開始から第1剥離フィルム片の長さ110mmの部分までについて、この90°剥離のときの荷重(付着力)を測定し、測定開始から第1剥離フィルム片の長さ60mmの部分までの測定値を有効値から除外し、それ以降の測定値の平均値を付着力(mN/25mm)として採用した。
このような、付着力の測定を2回行い、その時の平均値を、第1剥離フィルムとステンレス鋼板との間の付着力(mN/25mm)として採用した。結果を表1に示す。
【0262】
<<第2剥離フィルムとステンレス鋼板との間の付着力の測定>>
前記第2剥離フィルムの剥離力の測定後に、保護膜形成フィルムから剥離した第2剥離フィルム(幅100mm、長さ130mm)を切断することで、幅25mm、長さ130mmの第2剥離フィルム片を2枚作製した。そして、前記第1剥離フィルム片に代えて、この第2剥離フィルム片を用いた点以外は、上記の第1剥離フィルムとステンレス鋼板との間の付着力の測定時と同じ方法で、第2剥離フィルムとステンレス鋼板との間の付着力を測定した。結果を表1に示す。
【0263】
<<保護膜形成用シートの製造及び評価>>
[実施例2]
すべての円形の保護膜形成フィルムの直径を、299.5mmに代えて299mmとした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、保護膜形成用シートを製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0264】
[実施例3]
すべての円形の保護膜形成フィルムの直径を、299.5mmに代えて285mmとした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、保護膜形成用シートを製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0265】
[実施例4]
すべての円形の保護膜形成フィルムの直径を、299.5mmに代えて299mmとした点と、ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理されて構成された、長尺の第1剥離フィルムとして、上述の「SP-PET381130」に代えて、リンテック社製「SP-PET38T124-2,厚さ38μm)を用いた点、以外は、実施例1の場合と同じ方法で、保護膜形成用シートを製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0266】
[比較例1]
すべての円形の保護膜形成フィルムの直径を、299.5mmに代えて300mmとした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、保護膜形成用シートを製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0267】
[比較例2]
実施例1の場合と同じ方法で、保護膜形成フィルムと、前記保護膜形成フィルムの一方の面に設けられた除去用剥離フィルムと、前記保護膜形成フィルムの他方の面に設けられた第2剥離フィルムと、を備えて構成された長尺の積層シートを製造した。さらに、すべての円形の保護膜形成フィルムの直径を、299.5mmに代えて299mmとした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、この積層シートに対して、円形の切れ込みを形成した(円形の抜き加工を行った)。そして、以降の工程を行わず、この円形の切れ込みを形成後の積層シート(前記第1中間体)を、比較用の長尺の保護膜形成用シートとして、実施例1の場合と同じ方法で評価した。すなわち、本比較例では、上述の除去用剥離フィルムを、円形の切れ込みが形成された第1剥離フィルムと見做して、
図1(a)及び
図1(b)に示すものと同様の構成を有する第1中間体を評価した。結果を表1に示す。
【0268】
【0269】
上記結果から明らかなように、実施例1~4においては、保護膜形成フィルムのシリコンウエハ(ワーク)への貼付時に、保護膜形成フィルムによるシリコンウエハの汚染を抑制できた。実施例1~4においては、保護膜形成フィルムの直径が299.5mm以下であり、シリコンウエハの直径と、保護膜形成フィルムの直径と、の差が、0.5mm以上であった。そして、実施例1~4においては、保護膜形成フィルムの直径が285mm以上であり、シリコンウエハの直径と、保護膜形成フィルムの直径と、の差が、15mm以下であり、保護膜形成用シートは保護膜付きワーク加工物の製造効率を低下させないものであった。
実施例1~4においては、保護膜形成用シート中の保護膜形成フィルムのサイズが、シリコンウエハのサイズに近いため、保護膜形成用シートの使用時に、保護膜形成フィルムのさらなる抜き加工は不要であり、そのため、剥離フィルムの抜き加工も不要であった。
実施例1~4においては、保護膜形成用シート中の第1剥離フィルムが切れ込みを有さず、使用後の第1剥離フィルムは再利用可能であった(再利用適性を有していた)。
【0270】
なかでも、実施例2~4においては、保護膜形成フィルムの直径が299mm以下であり、シリコンウエハの直径と、保護膜形成フィルムの直径と、の差が、1mm以上であり、保護膜形成フィルムによるシリコンウエハの汚染の抑制効果が高かった。この観点で、実施例2~4の保護膜形成用シートは、より好ましい特性を有していた。
【0271】
なかでも、実施例1~3においては、第1剥離フィルムの剥離力が70mN/100mmであり、低水準となっており、第1剥離フィルムの剥離適性が高かった。実施例1~3においては、第2剥離フィルム及び第1剥離フィルムの剥離力差が、80mN/100mmであり、大きかった。これらの観点で、実施例1~3の保護膜形成用シートは、より好ましい特性を有していた。
【0272】
なお、実施例1~4においては、第1剥離フィルムとステンレス鋼板との間の付着力が5.3mN/25mm以下であり、第2剥離フィルムとステンレス鋼板との間の付着力が2.9mN/25mmであって、これら第1剥離フィルム及び第2剥離フィルムはいずれも、ロール状に巻き取るときに、巻きずれの抑制効果が高いものであると推測された。
【0273】
これに対して、比較例1においては、保護膜形成フィルムによるシリコンウエハの汚染の抑制効果が低かった。比較例1においては、保護膜形成フィルムの直径が300mmであり、シリコンウエハの直径と同じであった。
【0274】
比較例2においては、保護膜形成用シート中の第1剥離フィルム及び第2剥離フィルムが、いずれも切れ込みを有しており、使用後の第1剥離フィルム及び第2剥離フィルムは再利用不可能であった(再利用適性を有していなかった)。
【0275】
ここまでは、保護膜形成フィルムとして、その平面形状が円形であるものを備えた保護膜形成用シートについての実施例及び比較例を示したが、保護膜形成フィルムとして、その平面形状が略円形(例えば、楕円形)であるものを備えた保護膜形成用シートを用いた場合も、同様の評価結果が得られると認識できた。