(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025172
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】案内路付きマンホールの施工方法、案内路付き縦管
(51)【国際特許分類】
E03F 5/02 20060101AFI20240216BHJP
E03F 3/04 20060101ALI20240216BHJP
E02D 29/12 20060101ALI20240216BHJP
F16L 55/00 20060101ALI20240216BHJP
F16L 1/028 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
E03F5/02
E03F3/04 Z
E02D29/12 Z
F16L55/00 G
F16L1/028 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128407
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】南 吾郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅治
(72)【発明者】
【氏名】中村 有佑
【テーマコード(参考)】
2D063
2D147
3H025
【Fターム(参考)】
2D063BA20
2D063DA06
2D063DA07
2D063DA30
2D147BA00
3H025BA08
3H025BB02
(57)【要約】
【課題】流下する下水の流れに乱れを生じさせることなく、適切な減衰性能を発揮させることを可能にするとともに、直接、土圧を受け持つことを可能にし、コンクリート製のマンホールが無くても、仮設の立坑に直接、設置することを可能にする。
【解決手段】案内路付きマンホールの施工方法は、直管状の縦管本体11と、縦管本体11の軸芯Oに沿って螺旋状に設けられ、流入した流体を螺旋状に流下させる螺旋案内路14と、縦管本体11の一端側と他端側に形成された開口部16に接続する枝管12と、を備える案内路付き縦管10を準備する工程1と、竪穴50に土留め壁51を形成する工程2と、土留め壁51の内側に案内路付き縦管10を設置する工程3と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直管状の縦管本体と、前記縦管本体の軸芯に沿って螺旋状に設けられ、流入した流体を螺旋状に流下させる螺旋案内路と、前記縦管本体の一端側と他端側に形成された開口部に接続する枝管と、を備える案内路付き縦管を準備する工程1と、
竪穴に土留め壁を形成する工程2と、
前記土留め壁の内側に前記案内路付き縦管を設置する工程3と、を含むこと
を特徴とする案内路付きマンホールの施工方法。
【請求項2】
前記土留め壁と前記縦管本体の外径の差分が100mm~900mmである箇所が含まれること
を特徴とする請求項1に記載の案内路付きマンホールの施工方法。
【請求項3】
前記縦管本体に取り付けられた前記枝管の端部が、前記土留め壁の内側に位置するよう形成されていること
を特徴とする請求項1または2に記載の案内路付きマンホールの施工方法。
【請求項4】
前記枝管の端部が円弧状に形成されていること
を特徴とする請求項3に記載の案内路付きマンホールの施工方法。
【請求項5】
FRPで構成された直管状の縦管本体と、
前記縦管本体の軸芯に沿って形成された昇降路と、
前記昇降路に沿って螺旋状に設けられ、流入した流体を螺旋状に流下させる螺旋案内路と、
前記縦管本体の一端側と他端側に形成された開口部に接続する枝管と、を備えること
を特徴とする案内路付き縦管。
【請求項6】
前記縦管本体の開口部と前記枝管の接続部がFRPで補強されている
ことを特徴とする請求項5に記載の案内路付き縦管。
【請求項7】
前記縦管本体は、掘削された竪穴に設けられる土留め壁の内側に配置され、
前記土留め壁と前記縦管本体の外径の差分が100mm~900mmである箇所が含まれること
を特徴とする請求項5または6に記載の案内路付き縦管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、案内路付きマンホールの施工方法、案内路付き縦管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マンホールの側壁からマンホール内に突出された流入管の一端に対して、縦管の上端を接続し、縦管の下端をマンホール内の底部に設置して、流入管によりマンホール内に流入された下水を縦管に導入する技術が知られていた(例えば、下記特許文献1参照)。
下水道において流域下水道の幹線は、地中の比較的深い位置に計画されており、関連公共下水道との接続点では高落差接合となっている。このため、一つのマンホール内で高落差処理を行う場合には、マンホール内に設けられる縦管が長くなる。その結果、縦管の下端へ流下する下水の落下衝撃が大きく、底部を損傷するおそれがあった。
【0003】
そこで、例えば特許文献2に記載されているように、縦管本体の内面に沿って上端から下端まで、螺旋状に形成された螺旋案内板を有する縦管を配置する方法が採用されるようになっている。
【0004】
通常の竪穴には、螺旋案内路付きの縦管を設置するための作業用スペース、及び保守管理用スペースが設けられることから、従来の竪穴は縦管よりも十分に大きく形成されるのが一般的である。
これに対し、近年では、地盤の掘削範囲を縮小し、縦管を設置する竪穴径を小さくして、施工期間の短縮化や施工コストの低減も図られている。
【0005】
しかしながら、竪穴径を小さくすると竪穴の内周面と縦管の外周面との隙間が狭くなり、縦管と竪穴との間に作業用スペースを確保できなくなる。この場合、作業者が竪穴内に入って縦管の外側から作業することができないものとなる。そのため、流入部、流出部となる枝管を事前に取り付けた縦管(螺旋案内路付きの縦管)が必要となる。
この種の縦管には、垂直に配設された直管状の縦管本体に対して、下水を螺旋状に旋回させて流下させる螺旋案内板からなる螺旋案内路が設けられている。これにより、マンホール内に流入した下水が螺旋案内路に沿って流下する間に下水のエネルギーを減衰させ、縦管の底部が強い衝撃や大きな荷重を受けるのを避け、底部の摩耗も抑制しうる。
またこの種の縦管において、縦管の軸芯部には、螺旋案内路に案内される下水中に含む空気を上方に排除するために中心筒が設けられている。さらに、中心筒には点検時に昇降可能な昇降路が取り付けられている。
【0006】
ところで、上述したような、高低差を有する下水路の連結に用いられる縦管は、上流側水平管路から下水流水平管路まで、上下垂直方向にマンホール内に設けられる。このマンホールには、一般的にコンクリートで構成されたマンホールが多く用いられる。この場合、一般的に縦管の直径はφ900mm以上で、深さが10m程度である。一方、プラスチックで構成されたマンホールは、一般的にサイズがφ300mm程度で、最大深さが4m程度である。そのため、下水の高落差用のマンホールとしては塩化ビニル等のプラスチック材料を適用することは困難である。
【0007】
また、コンクリートで構成されたマンホールは、肉厚が厚く、開口部に鉄筋を入れて補強することが容易に可能であり、補強鉄筋の量を増やして剛性を上げることで、埋設が深い場合でも土圧に耐えることができる。このようにコンクリートで構成されたマンホールは、流入部と流出部が開口しており、その開口部を事前に補強して設置することが一般的である。
一方、プラスチックで構成されたマンホールは土圧が負荷されると、変形しやすく、肉厚も薄いため、開口部の補強だけでは、剛性を上げることができない。また、一番深い所の開口部に応力が集中しやすくなるため、5m以上(望ましくは5m~15m程度)の埋設用としては、プラスチックで構成されたマンホールは不向きである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015-166522号公報
【特許文献2】特開2011-89338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
プラスチック製のマンホールには以上のような問題があるものの、プラスチックはコンクリートと比較すると、軽量であることや、腐食性能、水理性能(粗度係数:プララスチックは0.010、コンクリートは0.013)に優れている。そのため、プラスチック製の縦管であるドロップシャフトが採用されるケースがある。
しかしながらこの場合、縦管(ドロップシャフト)の周囲に土圧を受けるコンクリートマンホールを築造する必要がある。その結果、築造スペースとしての用地確保が困難になるケースがある。また、築造工期も長くなり、コンクリートマンホール築造費用が増大となる課題がある。
【0010】
以上のように、従来の螺旋案内路付き縦管のプラスチックで構成されたマンホールは、土圧がかかると変形がしやすいため、コンクリートマンホールの築造が必要になるので、この築造を省略できるように、変形を防止できるような剛性が望まれている。
また、縦管の内壁に沿って流下する螺旋状の下水の流れを乱すことのない構造であって、かつ必要時には縦管の内部に進入して保守点検作業を安全で円滑に行うことのできる螺旋案内路付き縦管が好ましい。
【0011】
そこで、本発明に係る案内路付き縦管は、流下する下水の流れに乱れを生じさせることなく、適切な減衰性能を発揮させることを可能にするとともに、直接、土圧を受け持つことを可能にし、コンクリート製のマンホールが無くても、仮設の立坑に直接、設置することを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
<1>本発明の一態様に係る案内路付きマンホールの施工方法は、直管状の縦管本体と、縦管本体の軸芯に沿って螺旋状に設けられ、流入した流体を螺旋状に流下させる螺旋案内路と、縦管本体の一端側と他端側に形成された開口部に接続する枝管と、を備える案内路付き縦管を準備する工程1と、竪穴に土留め壁を形成する工程2と、土留め壁の内側に案内路付き縦管を設置する工程3と、を含むことを特徴とする。
<2><1>に係る案内路付きマンホールの施工方法では、土留め壁と縦管本体の外径の差分が100mm~900mmである箇所が含まれる構成を採用してもよい。
<3><1>または<2>に係る案内路付きマンホールの施工方法では、縦管本体に取り付けられた枝管の端部が、土留め壁の内側に位置するよう形成されている構成を採用してもよい。
<4><3>に係る案内路付きマンホールの施工方法では、枝管の端部が円弧状に形成されている構成を採用してもよい。
<5>本発明の一態様に係る案内路付き縦管は、FRPで構成された直管状の縦管本体と、縦管本体の軸芯に沿って形成された昇降路と、昇降路に沿って螺旋状に設けられ、流入した流体を螺旋状に流下させる螺旋案内路と、縦管本体の一端側と他端側に形成された開口部に接続する枝管と、を備えることを特徴とする。
<6><5>に係る案内路付き縦管では、縦管本体の開口部と枝管の接続部がFRPで補強されている構成を採用してもよい。
<7><5>または<6>に係る案内路付き縦管では、縦管本体は、掘削された竪穴に設けられる土留め壁の内側に配置され、土留め壁と縦管本体の外径の差分が100mm~900mmである箇所が含まれる構成を採用してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、容易に設置できる簡易な構造でありながら、コンクリートで構成されたマンホールを必要とせず、縦管と枝管を一体とすることで、開口部の変形による応力集中を減少させ、狭小地へ容易に施工することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る案内路付き縦管の縦断面図であって、竪穴に設置されている状態を示す図である。
【
図3】
図1に示す案内路付き縦管の側面図であって、竪穴に設置される前の状態を示す図である。
【
図4】
図3に示す案内路付き縦管の上部の正面図である。
【
図5】
図3に示す案内路付き縦管の下部の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1から
図5を参照し、本発明の一実施形態に係る案内路付き縦管10(以下、単に縦管10という)を説明する。縦管10は、流入した下水を螺旋状に流下させる高落差接合に好適に用いられる。縦管10は、地中に埋設されることで案内路付きマンホール(以下、単にマンホールという)となる。マンホールの施工の過程で、縦管10は、竪穴50(立坑)に設置される。以下、縦管10の説明にあたり、まず、竪穴50について説明する。
【0016】
(竪穴50)
図1および
図2に示すように、地面が掘削されることで竪穴50が形成される。竪穴50は、地表に開口し、地表から下方に延びている。竪穴50の底部50aには、例えば、均しコンクリートなどが設けられていてもよく、みかげ石などが敷かれていてもよい。
竪穴50の上面視形状は、例えば、真円形状である。ただし、竪穴50の上面視形状は、矩形状であってもよい。
【0017】
竪穴50には、土留め壁51が設けられている。土留め壁51は、竪穴50の側面に設けられている。土留め壁51は、竪穴50の側面の上下方向の全長にわたって設けられている。土留め壁51は、竪穴50の側面の周方向の全周にわたって設けられている。
土留め壁51は、施工中の竪穴50の崩壊を防ぐために設けられる。土留め壁51自体は、施工後の土圧を受けもっても受けもたなくてもよい。マンホールの設計上、土留め壁51は土圧を受けもたない構造物として扱ってもよい。
【0018】
土留め壁51としては、公知の構成を採用することが可能である。土留め壁51は、例えば、親杭横矢板工法、鋼矢板工法、鋼管矢板工法、地中連続壁工法などによって施工することができる。また、土留め壁51を用いた仮設立坑として、ライナープレート、ケーシング、アーバンリングなどを採用してもよい。
【0019】
竪穴50の側面には、横穴52が開口している。図示の例では、竪穴50の側面に横穴52として、第1横穴52aと、第2横穴52bと、が開口している。第1横穴52aは、マンホールに対する流入路となる。第2横穴52bは、マンホールに対する流出路となる。第1横穴52aは、第2横穴52bに対して上方に位置する。第1横穴52aおよび第2横穴52bはいずれも、土留め壁51を径方向に貫通している。
【0020】
(縦管10)
図1から
図5に示すように、縦管10は、縦管本体11と、枝管12と、空洞部13と、螺旋案内路14と、連結部材15と、を備えている。
縦管本体11は、直管状である。縦管本体11は、FRP(Fiber Reinforced Plastics、繊維強化プラスチック)で構成される。FRPとしては、例えば、GFRP(ガラス繊維強化プラスチック)やCFRP(炭素繊維強化プラスチック)などが挙げられる。
【0021】
縦管本体11の軸芯O(以下、単に軸芯Oという)は、上下方向に延びる。縦管本体11は、竪穴50の底部50aに支持されている。縦管本体11は、例えば、竪穴50に同軸に配置される。縦管本体11の高さは、竪穴50の深さと同等か、竪穴50の深さよりも小さい。縦管本体11の上面視形状は、真円形状である。縦管本体11の外径は、竪穴50の内径よりも小さい。縦管本体11は、土留め壁51の内側に配置される。土留め壁51の内面(竪穴50の側面)と縦管本体11の外面との間には、隙間C1があく。この隙間C1には、エアモルタル等の充填材が充填される。
【0022】
なお、土留め壁51と縦管本体11の外径の差分L1(すなわち、前記隙間C1の径方向の大きさ、
図2参照)が、100mm~900mmである箇所が含まれることが好ましく、100mm~600mmである箇所が含まれていてもよい。ここで前記差分L1は、縦管本体11の全長にわたって、かつ、全周にわたって(すなわち、隙間C1の全域にわたって)100mm~900mm(または、100mm~600mm)であることが好ましい。
【0023】
縦管本体11には、開口部16が形成されている。図示の例では、縦管本体11に開口部16として、第1開口部16aと、第2開口部16bと、が開口している。第1開口部16aは、立管本体の上端側(一端側)に配置されている。第2開口部16bは、立管本体の下端側(他端側)に配置されている。第1開口部16aは、後述する第1枝管12aを通して第1横穴52aに接続される。第2開口部16bは、後述する第2枝管12bを通して第2横穴52bに接続される。第1開口部16aおよび第2開口部16bはいずれも、縦管本体11を径方向に貫通している。
【0024】
枝管12は、縦管本体11から径方向の外側に延びる。枝管12は、開口部16に接続されている。縦管10は、枝管12として、第1枝管12aと、第2枝管12bと、を備えている。第1枝管12aは、第1開口部16aに接続されている。第2枝管12bは、第2開口部16bに接続されている。なお図示の例では、第1枝管12aは、第2枝管12bよりも大径である。第1枝管12aは。縦管本体11と同径である。第2枝管12bは、縦管本体11よりも小径である。
【0025】
各枝管12は、縦管本体11と別途、製造された後、縦管本体11に接続される。各枝管12は、縦管本体11に取り付けられている。各枝管12は、縦管本体11と同様に、例えば、FRP製であってもよい。なお、縦管本体11の開口部16と各枝管12との接続部は、FRP17で補強されていることが好ましい。
【0026】
各枝管12の2つの端部のうち、径方向の内側に位置する端部は、縦管本体11の開口部16に接続されている。
前記2つの端部のうち、径方向の外側に位置する端部12cは、土留め壁51の内側に位置するよう形成されている。
図2に示すように、この端部12cは、上面視において円弧状に形成されている。この端部12cが上面視においてなす円弧の曲率中心は、竪穴50の軸芯O上であることが好ましい。これにより、枝管12の端部12cの円弧が、土留め壁51の内周のRに沿って延びる。
【0027】
竪穴50の半径と、枝管12の端部12cの曲率半径と、の差分L2(土留め壁51と枝管12の端部とのクリアランス)は、5~15mm程度が望ましい。例えば、竪穴50の内径(仮設内径)がφ1800mmで、枝管12の端部12cの円弧の曲率半径が900mmの場合は設置した場合は、施工時に互いに干渉してしまう。そのため、前記曲率半径は、890±5mm程度が望ましい。これにより、竪穴50内に縦管10が搬入し易くなる。
【0028】
図1から
図5に示すように、空洞部13は、縦管本体11内に配置されている。空洞部13は、軸芯Oに沿って延びる直管である。空洞部13は、中心管、中心筒であるとも言える。空洞部13は、縦管本体11と同軸に配置されている。空洞部13の上面視形状は、真円形状である。空洞部13は、縦管本体11よりも小径である。空洞部13は、縦管本体11よりも上下方向に小さい。空洞部13の下端は、縦管本体11の下端よりも上方に位置している。
【0029】
空洞部13の内部には、昇降路18が設けられている。昇降路18は、軸芯Oに沿って形成されている。昇降路18は、例えば、空洞部13の内部空間であってもよい。昇降路18は、例えば、空洞部13の内周面に設けられた図示しないはしごを含んでいてもよい。
空洞部13を形成する材料は任意に設定することが可能である。空洞部13は、例えば、FRP製である。
【0030】
空洞部13は、螺旋案内路14および連結部材15を介して縦管本体11に連結されている。螺旋案内路14および連結部材15はいずれも、空洞部13の外周面と縦管本体11の内周面とを連結している。螺旋案内路14および連結部材15は、上下方向(軸芯O方向)にずらされて配置されている。本実施形態では、螺旋案内路14は、連結部材15の下方に位置している。
【0031】
螺旋案内路14は、軸芯O(縦管10や空洞部13、昇降路18)に沿って螺旋状に設けられている。螺旋案内路14は、例えば、軸芯Oを中心として、上面視したときに反時計回りの螺旋状であってもよく、時計回りの螺旋状であってもよい。螺旋案内路14は、縦管本体11に流下した排水が流れる方向を誘導する。
【0032】
螺旋案内路14は、流入した流体を螺旋状に流下させる。このように、螺旋案内路14が、排水に縦管本体11の内部を螺旋状に流下させることで、排水が渦を形成する。これにより、排水の効率が向上する。排水が効果的に渦を形成するために、螺旋案内路14の上端から下端までの間に少なくとも3周の螺旋が排水によって形成されることが好ましい。
【0033】
螺旋案内路14を形成する材料は任意に設定することが可能である。螺旋案内路14は、例えば、FRP製である。螺旋案内路14は、空洞部13の外周面、および、縦管本体11の内周面にそれぞれ接続されている。螺旋案内路14と空洞部13との接続部や、螺旋案内路14と縦管本体11との接続部は、FRPで補強されていることが好ましい。
【0034】
連結部材15は、軸芯Oに沿って延びている。連結部材15は、表裏面が周方向を向く板である。連結部材15は、例えば、FRP製である。連結部材15は、空洞部13の外周面、および、縦管本体11の内周面にそれぞれ接続されている。連結部材15と空洞部13との接続部や、連結部材15と縦管本体11との接続部は、FRPで補強されていることが好ましい。
【0035】
以上のような縦管10では、縦管10内の保守点検作業にともなって作業者が昇降路18を利用することができ、安全に昇降して作業を行うことが可能となる。
また、螺旋案内路14を備えた縦管本体11において、下水は遠心力により縦管本体11の内壁に沿う螺旋状の流れとなり、空気が中心方向に集められて空洞部13を通って上方へ抜ける。したがって、かかる空洞部13に昇降路18を設けても、螺旋状の水流に影響を与えることがなく、点検作業を行わないときでも、好適に螺旋流を形成することができる。
【0036】
また、縦管本体11に枝管12を取り付けることで、縦管10の開口部16の剛性を上げられることが、CAE解析結果にて認められた。発明者が解析した結果、縦管本体11に枝管12を取り付けることで、最大主応力は50%程度低減することが確認された。この点を考察すると、縦管本体11の開口部16のみをFRP補強するだけでは、縦管本体11自体の変形を防止することが出来ないものの、縦管本体11に枝管12を取り付けることで、円形の変形から形状的な変化をもたらすことで、縦管本体11の剛性が高くなり、開口部16の応力集中が緩和されると考えられる。
【0037】
また、縦管本体11と枝管12とはFRP17のハンドレイアップ法にて一体とさせ、縦管本体11と枝管12との接続部をFRP17で補強した場合、更に剛性があがることが解析の結果確認された。この場合、最大主応力は、縦管本体11に枝管12を単に取り付けた場合に比べて、更に60%程度低減することが可能となった。例えば、縦管本体11と枝管12を一体化するFRP17の補強を60mm程度の厚みとした場合、縦管10を深さ15mに適用可能であることがCAE解析の結果によって確認された。
【0038】
なお例えば、前述のハンドレイアップ法で縦管本体11と枝管12とを取り付ける場合、竪穴50内では取り付け作業の作業スペースを確保することが困難であることから、竪穴50に縦管10を設置する前に、縦管本体11と枝管12とを一体とすることが好ましい。一例として、竪穴50の内径(仮設内径)が1800mm(φ1800)であれば、縦管10の外径は1560mm(φ1560)となり、前記隙間C1が120mmとなる。このような狭小スペースでの作業は実質的に不可能である。
【0039】
ところで、前述したように、土留め壁51と縦管本体11の外径の差分L1(すなわち、前記隙間C1の径方向の大きさ)が、100mm~900mmである箇所が含まれることが好ましく、100mm~600mmである箇所が含まれていてもよい。
前記差分L1が100mm未満であると、例えば、竪穴50内に搬入レールの設置が困難となる。搬入レールは、縦管10を竪穴50内に設置するときに縦管10のガイドとなる。よって、前記差分L1の下限値は100mmであることが好ましい。
前記差分L1は小さいほど竪穴50が小さくなるため好ましい。しかしながら、一般的には安全上、土留め壁51と縦管本体11の間を人が昇降できる最小寸法は600mm程度であり、更には900mm程度のスペースが好ましいため、前記差分L1の上限値は600mmまたは900mmであることが好ましい。
【0040】
なお、下水道の幹線は地中の比較的深い位置に計画されることが多く、例えば、竪穴50は15mの深さ、1.8mの内径で形成される。このような竪穴50に対して、縦管10は、竪穴50と略同等の高さを有する。例えば、縦管本体11の外径が1.56mとされ、内径が1.5mとされている。この場合には、竪穴50の内周面と縦管10の外周面との隙間C1は、0.12m(120mm)程度となる。
【0041】
(マンホールの施工方法)
次に、前記縦管10を用いたマンホールの施工方法を説明する。
この方法は、縦管10を準備する工程1と、竪穴50に土留め壁51を形成する工程2と、土留め壁51の内側に縦管10を設置する工程3と、を含む。
【0042】
(工程1)
縦管10を準備する工程では、前記縦管10を製造する。このとき、例えば、縦管本体11、枝管12、螺旋案内路14、連結部材15を別個、成形した後、各部材を、例えば、ハンドレイアップ工法などで一体化する。
【0043】
(工程2)
竪穴50に土留め壁51を形成する工程では、竪穴50を掘削して土留め壁51を打設する。この工程2は、工程1の前に実施してもよく、後に実施してもよい。
土留め壁51を打設した後、第1横穴52aおよび第2横穴52bを形成する。このとき、例えば、第1横穴52aおよび第2横穴52bを竪穴50の内部から径方向の外側に向けて掘削してもよい。
【0044】
(工程3)
土留め壁51の内側に縦管10を設置する工程では、例えば、竪穴50に縦管10を吊り降ろす。この工程3は、例えば、準備工程と、取付工程と、搬入工程と、充填材打設工程と、を含む。
【0045】
(準備工程)
準備工程では、例えば、縦管10の搬入作業等に先立って、竪穴50の上下方向に沿ってガイドを設置する。このとき、例えば、ガイドは、竪穴50の内壁(土留め壁51)を設置される。ガイドは、例えば、竪穴50の周方向に間隔をあけて設置することができる。ガイドには、例えば、断面L字状の山型鋼(アングル)を用いることができる。
【0046】
(取付工程)
取付工程では、例えば、縦管10に吊り受け具および芯出し具を取り付ける。吊り受け具は、縦管10を吊り下げるための吊りワイヤ等の線材を連結する治具である。吊り受け具には、例えば、縦管10の外周面に取り付けられる環状の治具などを採用することができる。芯出し具は、前記ガイドによって案内される治具である。芯出し具には、例えば、縦管10の外周面に取り付けられる治具などを採用することができる。
【0047】
(搬入工程)
搬入工程では、縦管10をガイドに沿って竪穴50内に吊り降ろす。このとき、例えば、吊り受け具に線材を連結した状態で、揚重機械により線材を介して縦管10を縦吊りにして、縦管10を竪穴50内へ吊り降ろす。この場合、吊り上げた縦管10を、竪穴50の上端へ搬送し、縦管10に取り付けた芯出し具を竪穴50の内壁に摺接させながら吊り降ろす。このとき、芯出し具を竪穴50のガイドに係合させ、竪穴50に対する縦管10の吊り降ろし方向を規制する。これにより、芯出し具を用いて縦管10を竪穴50に挿入する、という単一作業だけで、縦管10と竪穴50との芯出しを容易に行うことができる。さらにこのとき、第1横穴52aと第1枝管12aの向き、および、第2横穴52bと第2枝管12bの向きが調整されるように、ガイドおよび芯出し具を係合させることができる。この向きについての調整は、例えば、ガイドが周方向に複数設けられることで実現することが可能である。
【0048】
(充填材打設工程)
縦管10を設置した後、縦管10と竪穴50との間隙にモルタル等の充填材を打設して、竪穴50と縦管10とを一体化する。このとき、土留め壁51やガイドなどは、残置したままであってよく、いわゆる埋め殺しをしてもよい。
以上で工程3が完了する。この後、必要に応じて、例えば、第1横穴52aと第1枝管12aとを接続し、第2横穴52bと第2横枝とを接続する等して、マンホールの施工が完了する。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係る案内路付きマンホールの施工方法によれば、螺旋案内路14によって、流下する下水の流れに乱れを生じさせることなく、適切な減衰性能を発揮させることができる。縦管本体11と枝管12とが一体に接続されていることで、直接、土圧を受け持つことを可能にし、コンクリート製のマンホールが無くても、仮設の立坑に直接、縦管10を設置することができる。縦管10がFRP製である場合、土圧をより効果的に受け持つことができる。
【0050】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0051】
例えば、連結部材15がなくてもよい。
縦管10が上下方向に複数の部材(以下、縦管部材と言う)に分割されていてもよい。この場合、第1枝管12aと第2枝管12bとは、別の縦管部材に配置される。またこの場合、施工時には、搬入工程時において、縦管部材を1つずつ搬入する。そして、2回目以降の搬入工程では、縦管部材を搬入したとき、その縦管部材(以下、上側の縦管部材とも言う)の下端を、その直前の搬入工程で搬入されていた縦管部材(以下、下側の縦管部材とも言う)の上端に接続する接続工程を実施する。この場合、例えば、上側の接続部材の下端が挿し口で、下側の接続部材の上端が受口であってもよい。なお、この接続工程において、上側の縦管部材を下側の縦管部材に押し込む必要がある場合(例えば、上側の接続部材の下端(例えば挿し口)を下側の接続部材の上端(例えば受口)に嵌合させる必要がある場合)、竪穴50の内壁(土留め壁51)に、反力をとるための線材(反力用線材)を設置しておいてもよい。反力用線材は、例えば、準備工程において設置しておくことができる。
なお、縦管10の分割の有無は、竪穴50の深さ(マンホールの深さ)に応じて適宜調整可能である。例えば、竪穴50の深さが6m程度であれば、縦管10を分割しなくてもよい。縦管10を分割する場合、1つの縦管部材の上下方向の大きさは、例えば、4m程度とすることができる。
【0052】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 縦管
11 縦管本体
12 枝管
12c 端部
14 螺旋案内路
16 開口部
18 昇降路
50 竪穴
51 土留め壁
L1 差分
O 軸芯