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特開2024-25180制御情報生成装置、制御情報生成方法、プログラム及び積層造形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025180
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】制御情報生成装置、制御情報生成方法、プログラム及び積層造形方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/04 20060101AFI20240216BHJP
   B23K 9/032 20060101ALI20240216BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240216BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240216BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20240216BHJP
【FI】
B23K9/04 G
B23K9/04 Z
B23K9/032 Z
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128418
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】初田 光嶺
【テーマコード(参考)】
4E081
【Fターム(参考)】
4E081AA08
4E081BA05
4E081BA08
4E081CA01
4E081CA10
4E081CA11
4E081CA14
4E081CA19
4E081CA20
4E081DA14
4E081EA09
4E081EA23
(57)【要約】
【課題】造形領域同士の境界において、十分な接合強度が確保された造形物を造形させるための制御情報生成装置、制御情報生成方法、プログラム及び積層造形方法を提供する。
【解決手段】造形経路に沿ってトーチ11を移動させながら溶接材料を溶融して対象面に溶接ビードBを形成して造形物Wを造形する積層造形装置を制御するための制御情報を生成する制御情報生成装置であって、造形経路の情報である経路情報を取得する経路情報取得部31と、経路情報に基づいて、溶接ビードBの積層条件が異なる第一造形領域A1と第二造形領域A2との間にマージ領域Amを設定する領域設定部33と、溶接ビードBの経路長を調整して溶接ビードBの始端位置Bsおよび終端位置Beをマージ領域Am外に移動させる第一経路調整部35と、第一経路調整部35による調整に基づいて、他の溶接ビードBの造形経路を修正する第二経路調整部37と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形経路に沿ってトーチを移動させながら溶接材料を溶融して対象面に溶接ビードを形成してビード層を造形し、前記ビード層を積層した三次元形状の造形物を造形する積層造形装置を制御するための制御情報を生成する制御情報生成装置であって、
前記造形経路の情報である経路情報を取得する経路情報取得部と、
前記経路情報に基づいて、前記溶接ビードの積層条件が異なる第一造形領域と第二造形領域との間にマージ領域を設定する領域設定部と、
前記溶接ビードの経路長を調整して前記溶接ビードの始端位置および終端位置を前記マージ領域外に移動させる第一経路調整部と、
前記第一経路調整部による調整に基づいて、他の前記溶接ビードの造形経路を修正する第二経路調整部と、
を備える、
制御情報生成装置。
【請求項2】
前記第一経路調整部は、前記第一造形領域及び前記第二造形領域における前記溶接ビードの造形経路を折り曲げつつ延伸させ、かつ前記造形経路における前記第一造形領域と前記第二造形領域との境界において、前記溶接ビードの造形経路に、互いに平行に接する平行部を形成する、
請求項1に記載の制御情報生成装置。
【請求項3】
前記第一経路調整部は、前記溶接ビードの造形経路における前記平行部から折れ曲がった角部を前記マージ領域外に配置させる、
請求項2に記載の制御情報生成装置。
【請求項4】
前記第一経路調整部は、前記平行部を、前記第一造形領域または前記第二造形領域に侵入した位置に配置させる、
請求項2に記載の制御情報生成装置。
【請求項5】
前記領域設定部は、前記三次元形状から予め設定された余肉量に基づいて前記マージ領域を設定する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の制御情報生成装置。
【請求項6】
造形経路に沿ってトーチを移動させながら溶接材料を溶融して対象面に溶接ビードを形成してビード層を造形し、前記ビード層を積層した三次元形状の造形物を造形する積層造形装置を制御するための制御情報を生成する制御情報生成方法であって、
前記造形経路の情報である経路情報を取得する経路情報取得工程と、
前記経路情報に基づいて、前記溶接ビードの積層条件が異なる第一造形領域と第二造形領域との間にマージ領域を設定する領域設定工程と、
前記溶接ビードの経路長を調整して前記溶接ビードの始端位置および終端位置を前記マージ領域外に移動させる第一経路調整工程と、
前記第一経路調整工程による調整に基づいて、他の前記溶接ビードの造形経路を修正する第二経路調整工程と、
を含む、
制御情報生成方法。
【請求項7】
造形経路に沿ってトーチを移動させながら溶接材料を溶融して対象面に溶接ビードを形成してビード層を造形し、前記ビード層を積層した三次元形状の造形物を造形する積層造形装置を制御するための制御情報を生成するプログラムであって、
コンピュータに、
前記造形経路の情報である経路情報を取得する経路情報取得機能と、
前記経路情報に基づいて、前記溶接ビードの積層条件が異なる第一造形領域と第二造形領域間にマージ領域を設定する領域設定機能と、
前記溶接ビードの造形経路長を調整して前記溶接ビードの始端位置および終端位置を前記マージ領域外に移動させる第一経路調整機能と、
前記第一経路調整機能による調整に基づいて、他の前記溶接ビードの造形経路を修正する第二経路調整機能と、
を実現させるための、
プログラム。
【請求項8】
第一方向の造形経路に沿って溶接ビードを形成して第一造形領域を造形し、前記第一造形領域における前記第一方向と交差する第二方向に沿って前記溶接ビードを形成して第二造形領域を造形することにより、前記第一造形領域に前記第二造形領域が接合された造形物を造形する積層造形方法であって、
前記溶接ビードの造形経路の情報である経路情報を取得する経路情報取得工程と、
前記経路情報に基づいて、前記第一造形領域と前記第二造形領域との間にマージ領域を設定する領域設定工程と、
前記第一造形領域及び前記第二造形領域の少なくとも一方を造形する前記溶接ビードの経路長を調整して前記溶接ビードの始端位置および終端位置を前記マージ領域外に移動させる第一経路調整工程と、
前記第一経路調整工程による調整に基づいて、他の前記溶接ビードの造形経路を修正する第二経路調整工程と、
修正された造形経路に沿って前記溶接ビードを形成し、前記第一造形領域に前記第二造形領域が接合された造形物を造形する造形工程と、
を含む、
積層造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御情報生成装置、制御情報生成方法、プログラム及び積層造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生産手段としての3Dプリンタのニーズが高まっており、特に金属材料への適用については航空機業界等で実用化に向けて研究開発が行われている。金属材料を用いた3Dプリンタは、レーザーやアーク等の熱源を用いて、金属粉体や金属ワイヤを溶融させ、溶融金属を積層させて造形物を造形する。
【0003】
例えば、特許文献1には、粉末積層造形において、造形領域を複数のゾーンに分割することが開示されている。この造形技術では、分割した各ゾーンを形成するためのパラメータを画定または選択し、3D物体の層を定め、さらに、ゾーンについての層データを融合し、層データからツールパスを作成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2019-529164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、造形物の構造や材質の使い分けにより、造形領域に境界が生じる場合、造形領域の境界において、接合強度や剛性が低下するなどの問題が生じることがある。
【0006】
例えば、図12に示すように、断面積が異なる造形部1及び造形部3を有する造形物を、溶接ビードを積層させて造形する場合、それぞれの造形部1,3の造形領域同士の接合箇所において、十分に融合することが必要な範囲(以下、マージ領域と呼ぶ)に、溶接ビードの始端位置や終端位置が含まれることがある。この場合、これらの溶接ビードの始端位置や終端位置におけるビード形状に起因して欠陥が発生し、造形領域同士の接合強度が低下するおそれがある。この接合強度の低下は、マージ領域において溶接ビードの始端位置や終端位置が多いほど懸念が高まる。
【0007】
そこで本発明は、造形領域同士の境界において、十分な接合強度が確保された造形物を造形させるための制御情報生成装置、制御情報生成方法、及びプログラム及び積層造形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は下記構成からなる。
(1) 造形経路に沿ってトーチを移動させながら溶接材料を溶融して対象面に溶接ビードを形成してビード層を造形し、前記ビード層を積層した三次元形状の造形物を造形する積層造形装置を制御するための制御情報を生成する制御情報生成装置であって、
前記造形経路の情報である経路情報を取得する経路情報取得部と、
前記経路情報に基づいて、前記溶接ビードの積層条件が異なる第一造形領域と第二造形領域との間にマージ領域を設定する領域設定部と、
前記溶接ビードの経路長を調整して前記溶接ビードの始端位置および終端位置を前記マージ領域外に移動させる第一経路調整部と、
前記第一経路調整部による調整に基づいて、他の前記溶接ビードの造形経路を修正する第二経路調整部と、
を備える、
制御情報生成装置。
(2) 造形経路に沿ってトーチを移動させながら溶接材料を溶融して対象面に溶接ビードを形成してビード層を造形し、前記ビード層を積層した三次元形状の造形物を造形する積層造形装置を制御するための制御情報を生成する制御情報生成方法であって、
前記造形経路の情報である経路情報を取得する経路情報取得工程と、
前記経路情報に基づいて、前記溶接ビードの積層条件が異なる第一造形領域と第二造形領域との間にマージ領域を設定する領域設定工程と、
前記溶接ビードの経路長を調整して前記溶接ビードの始端位置および終端位置を前記マージ領域外に移動させる第一経路調整工程と、
前記第一経路調整工程による調整に基づいて、他の前記溶接ビードの造形経路を修正する第二経路調整工程と、
を含む、
制御情報生成方法。(3) 造形経路に沿ってトーチを移動させながら溶接材料を溶融して対象面に溶接ビードを形成してビード層を造形し、前記ビード層を積層した三次元形状の造形物を造形する積層造形装置を制御するための制御情報を生成するプログラムであって、
コンピュータに、
前記造形経路の情報である経路情報を取得する経路情報取得機能と、
前記経路情報に基づいて、前記溶接ビードの積層条件が異なる第一造形領域と第二造形領域間にマージ領域を設定する領域設定機能と、
前記溶接ビードの造形経路長を調整して前記溶接ビードの始端位置および終端位置を前記マージ領域外に移動させる第一経路調整機能と、
前記第一経路調整機能による調整に基づいて、他の前記溶接ビードの造形経路を修正する第二経路調整機能と、
を実現させるための、
プログラム。
(4) 第一方向の造形経路に沿って溶接ビードを形成して第一造形領域を造形し、前記第一造形領域における前記第一方向と交差する第二方向に沿って前記溶接ビードを形成して第二造形領域を造形することにより、前記第一造形領域に前記第二造形領域が接合された造形物を造形する積層造形方法であって、
前記溶接ビードの造形経路の情報である経路情報を取得する経路情報取得工程と、
前記経路情報に基づいて、前記第一造形領域と前記第二造形領域との間にマージ領域を設定する領域設定工程と、
前記第一造形領域及び前記第二造形領域の少なくとも一方を造形する前記溶接ビードの経路長を調整して前記溶接ビードの始端位置および終端位置を前記マージ領域外に移動させる第一経路調整工程と、
前記第一経路調整工程による調整に基づいて、他の前記溶接ビードの造形経路を修正する第二経路調整工程と、
修正された造形経路に沿って前記溶接ビードを形成し、前記第一造形領域に前記第二造形領域が接合された造形物を造形する造形工程と、
を含む、
積層造形方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、造形領域同士の境界において、十分な接合強度が確保された造形物を造形できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、積層造形システムの全体構成を示す概略図である。
図2図2は、制御情報生成装置の機能ブロック図である。
図3図3は、制御情報生成装置による制御情報の生成手順を示すフローチャートである。
図4A図4Aは、第一造形領域及び第二造形領域における溶接ビードの経路を示す模式図である。
図4B図4Bは、始端位置及び終端位置の移動後の第一造形領域及び第二造形領域における溶接ビードの経路を示す模式図である。
図5図5は、始端位置及び終端位置の移動後の第一造形領域及び第二造形領域における溶接ビードの経路を示す模式図である。
図6A図6Aは、第一造形領域及び第二造形領域における溶接ビードの経路を示す模式図である。
図6B図6Bは、始端位置及び終端位置の移動後の第一造形領域及び第二造形領域における溶接ビードの経路を示す模式図である。
図7図7は、始端位置及び終端位置の移動後の第一造形領域及び第二造形領域における溶接ビードの経路を示す模式図である。
図8図8は、造形物における溶接ビードの経路を示す模式図である。
図9図9は、始端位置及び終端位置の移動後の造形物における溶接ビードの経路を示す模式図である。
図10図10は、始端位置及び終端位置の移動後の造形物における溶接ビードの経路を示す模式図である。
図11図11は、始端位置及び終端位置の移動後の造形物における溶接ビードの経路を示す模式図である。
図12図12は、断面積が異なる造形部を有する造形物の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。ここで示す積層造形システムは、マニピュレータに保持された溶加材(溶接ワイヤ)を熱源装置によって溶融させて溶接ビードを形成し、形成された溶接ビードを所望の形状に繰り返し積層して、溶接ビードが積層されてなる造形物を造形するものである。制御情報生成装置は、このような造形物を造形する積層造形装置を制御するための制御情報を生成する。
【0012】
<積層造形システムの構成>
上記の制御情報生成装置が生成する制御情報によって動作が制御される、積層造形システムの一構成例を説明する。
図1は、積層造形システムの全体構成を示す概略図である。
積層造形システム100は、造形制御装置15と、マニピュレータ17と、溶加材供給装置19と、マニピュレータ制御装置21と、熱源制御装置23とを含んで構成される。
【0013】
マニピュレータ制御装置21は、マニピュレータ17と、熱源制御装置23とを制御する。マニピュレータ制御装置21には不図示のコントローラが接続されて、マニピュレータ制御装置21の任意の操作がコントローラを介して操作者から指示可能となっている。
【0014】
マニピュレータ17は、例えば多関節ロボットであり、先端軸に設けたトーチ11には、溶加材Mが連続供給可能に支持される。トーチ11は、溶加材Mを先端から突出した状態に保持する。トーチ11の位置及び姿勢は、マニピュレータ17を構成するロボットアームの自由度の範囲で3次元的に任意に設定可能となっている。マニピュレータ17は、6軸以上の自由度を有するものが好ましく、先端の熱源の軸方向を任意に変化させられるものが好ましい。マニピュレータ17は、図1に示す4軸以上の多関節ロボットの他、2軸以上の直交軸に角度調整機構を備えたロボット等、種々の形態であってもよい。
【0015】
トーチ11は、不図示のシールドノズルを有し、シールドノズルからシールドガスが供給される。シールドガスは、大気を遮断し、溶接中の溶融金属の酸化、窒化などを防いで溶接不良を抑制する。本構成で用いるアーク溶接法としては、被覆アーク溶接又は炭酸ガスアーク溶接等の消耗電極式、TIG(Tungsten Inert Gas)溶接又はプラズマアーク溶接等の非消耗電極式のいずれであってもよく、造形対象に応じて適宜選定される。ここでは、ガスメタルアーク溶接を例に挙げて説明する。消耗電極式の場合、シールドノズルの内部にはコンタクトチップが配置され、電流が給電される溶加材Mがコンタクトチップに保持される。トーチ11は、溶加材Mを保持しつつ、シールドガス雰囲気で溶加材Mの先端からアークを発生する。
【0016】
溶加材供給装置19は、トーチ11に向けて溶加材Mを供給する。溶加材供給装置19は、溶加材Mが巻回されたリール19aと、リール19aから溶加材Mを繰り出す繰り出し機構19bとを備える。溶加材Mは、繰り出し機構19bによって必要に応じて正方向又は逆方向に送られながらトーチ11へ送給される。繰り出し機構19bは、溶加材供給装置19側に配置されて溶加材Mを押し出すプッシュ式に限らず、ロボットアーム等に配置されるプル式、又はプッシュ-プル式であってもよい。
【0017】
熱源制御装置23は、マニピュレータ17による溶接に要する電力を供給する溶接電源である。熱源制御装置23は、溶加材Mを溶融、凝固させるビード形成時に供給する溶接電流及び溶接電圧を調整する。また、熱源制御装置23が設定する溶接電流及び溶接電圧等の溶接条件に連動して、溶加材供給装置19の溶加材供給速度が調整される。
【0018】
溶加材Mを溶融させる熱源としては、上記したアークに限らない。例えば、アークとレーザーとを併用した加熱方式、プラズマを用いる加熱方式、電子ビーム又はレーザーを用いる加熱方式等、他の方式による熱源を採用してもよい。電子ビーム又はレーザーにより加熱する場合、加熱量を更に細かく制御でき、形成するビードの状態をより適正に維持して、積層構造物の更なる品質向上に寄与できる。また、溶加材Mの材質についても特に限定するものではなく、例えば、軟鋼、高張力鋼、アルミ、アルミ合金、ニッケル、ニッケル基合金など、造形物Wの特性に応じて、用いる溶加材Mの種類が異なっていてよい。
【0019】
造形制御装置15は、上記した各部を統括して制御する。
【0020】
上記した構成の積層造形システム100は、造形物Wの造形計画に基づいて作成された造形プログラムに従って動作する。造形プログラムは、多数の命令コードにより構成され、造形物の形状、材質、入熱量等の諸条件に応じて、適宜なアルゴリズムに基づいて作成される。この造形プログラムに従って、トーチ11を移動させつつ、送給される溶加材Mを溶融及び凝固させると、溶加材Mの溶融凝固体である線状の溶接ビードBがベース13上に形成される。つまり、マニピュレータ制御装置21は、造形制御装置15から提供される所定のプログラムに基づいてマニピュレータ17、熱源制御装置23を駆動させる。マニピュレータ17は、マニピュレータ制御装置21からの指令により、溶加材Mをアークで溶融させながらトーチ11を移動させて溶接ビードBを形成する。このようにして溶接ビードBを順次に形成、積層することで、目的とする形状の造形物Wが得られる。
【0021】
図2は、制御情報生成装置の機能ブロック図である。
図2に示すように、造形制御装置15は、経路情報取得部31と、領域設定部33と、第一経路調整部35と、第二経路調整部37と、を含んで構成され、制御情報生成装置として機能する。各部の詳細については後述するが、概略的な機能は次のとおりである。
【0022】
経路情報取得部31は、溶接ビードBを積層する軌道である造形経路の情報を、経路情報として取得する。
【0023】
領域設定部33は、経路情報取得部31によって取得された経路情報に基づいて、溶接ビードBの積層条件が異なる第一造形領域及び第二造形領域を割り出し、これらの第一造形領域と第二造形領域と間にマージ領域を設定する。
【0024】
第一経路調整部35は、経路情報取得部31によって取得された造形経路に基づき、溶接ビードBの始端位置及び終端位置を割り出す。そして、この溶接ビードBの始端位置及び終端位置が領域設定部33で設定したマージ領域内に配置されている場合、溶接ビードBの経路長を調整し、溶接ビードBの始端位置及び終端位置をマージ領域外に移動させる。
【0025】
第二経路調整部37は、第一経路調整部35による調整に基づいて、始端位置及び終端位置をマージ領域外に移動された対象の溶接ビードB以外の他の溶接ビードBの造形経路を、対象の溶接ビードBの経路長の調整に応じて修正する。
【0026】
上記の造形制御装置15は、例えば、PC(Personal Computer)などの情報処理装置を用いたハードウェアにより構成される。造形制御装置15の各機能は、不図示の制御部が不図示の記憶装置に記憶された特定の機能を有するプログラムを読み出し、これを実行することで実現される。記憶装置としては、揮発性の記憶領域であるRAM(Random Access Memory)、不揮発性の記憶領域であるROM(Read Only Memory)等のメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等のストレージを例示できる。また、制御部としては、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processor Unit)などのプロセッサ、又は専用回路等を例示できる。造形制御装置15は、上記した形態のほか、ネットワーク等を介して積層造形システム100から遠隔から接続される他のコンピュータであってもよい。
【0027】
<制御情報の生成手順>
図3は、制御情報生成装置による制御情報の生成手順を示すフローチャートである。図4Aは、第一造形領域A1及び第二造形領域A2における溶接ビードBの経路を示す模式図である。図4Bは、始端位置Bs及び終端位置Beの移動後の第一造形領域A1及び第二造形領域A2における溶接ビードBの経路を示す模式図である。
【0028】
経路情報取得部31が、溶接ビードBを積層する軌道である造形経路の情報を、径路情報として取得する(ステップS1)。この溶接ビードBの経路情報は、公知の手段で算出できる。例えば、CADデータ等における造形物を複数層にスライスした形状データに対して、各種の軌道パターンを適用して生成できる。また、予め生成・記憶された軌道の情報を読み込んで経路情報としてもよい。なお、読み込む経路情報としては、例えば、溶接ビードBのパス中に含まれる点の座標情報(X,Y,Z)や隣接する溶接ビードBのパス同士のピッチ、ビード層ごとの間隔、各溶接ビードBのパスの積層順序などが挙げられる。
【0029】
図4Aに示すように、領域設定部33が、経路情報取得部31によって取得された経路情報に基づいて、溶接ビードBの積層条件が異なる第一造形領域A1及び第二造形領域A2を割り出し、これらの第一造形領域A1と第二造形領域A2との間にマージ領域Amを設定する(ステップS2)。
【0030】
ここで、異なる第一造形領域A1及び第二造形領域A2は、互いに積層条件が異なる領域とする。なお、第一造形領域A1及び第二造形領域A2は、積層条件の設定以前において、造形物の目標形状に基づいて特徴的な形状ごとに分割して定めてもよく、また、使用する材料ごとに分けてもよい。
【0031】
図4Aに示す造形例では、第一造形領域A1及び第二造形領域A2において、溶接ビードBの経路が、第一造形領域A1と第二造形領域A2との境界Fに対して直交方向に向けられ、交互に異なる方向の経路とされている。領域設定部33は、経路情報に基づいて、異なる造形領域である第一造形領域A1と第二造形領域A2と間にマージ領域Amを設定する。
【0032】
マージ領域Amは、製造する製品形状や寸法を満足することを前提に、予め設定されている余肉量や溶接ビードB間の所望の溶け込み量などから大きさを設定できる。また、マージ領域Amは、造形物の3次元形状に対して有限要素法(FEM)で応力解析を行い、応力集中係数が所定値以上となる範囲から設定してもよい。特に、余肉量からマージ領域Amを設定する場合、溶接ビードBの造形経路を柔軟に変更できる。また、全体的に修正する溶接ビードBの造形経路の経路長を小さくでき、溶接ビードBを効率的に形成できる。
【0033】
第一経路調整部35は、経路情報取得部31によって取得した造形経路に基づき、溶接ビードBの始端位置Bs及び終端位置Beを割り出す。そして、図4Bに示すように、始端位置Bs及び終端位置Beが領域設定部33で設定したマージ領域Am内に配置されている溶接ビードBの経路長を調整し、溶接ビードBの始端位置Bs及び終端位置Beをマージ領域Am外に移動させる(ステップS3)。
【0034】
第二経路調整部37は、第一経路調整部35による調整に基づいて、他の溶接ビードBの造形経路を修正する(ステップS4)。例えば、図4Bに示したように、始端位置Bs及び終端位置Beをマージ領域Am外に配置すべく、第一造形領域A1の溶接ビードBを延伸させた場合、この延伸させた溶接ビードBに対して、第二造形領域A2の他の溶接ビードBの経路長を短くするように調整する。同様に、第二造形領域A2の溶接ビードBを延伸させた場合、この延伸させた溶接ビードBに対して、第一造形領域A1の他の溶接ビードBの経路長を短くするように調整する。なお、溶接ビードBの経路長の調整量については、必要な溶着面積や溶着体積と、延伸させた溶接ビードBの溶着面積や溶着体積の差分に基づいて割り出す。
【0035】
上記のように、溶接ビードBの始端位置Bs及び終端位置Beを、溶接ビードBの積層条件が異なる第一造形領域A1と第二造形領域A2との間のマージ領域Amから外れた位置に移動させることにより、マージ領域Amにおける欠陥の発生を抑えることができる。これにより、積層条件が異なる第一造形領域A1と第二造形領域A2との接合箇所における接合強度の低下度合を抑制できる。特に、溶接ビードBのパスを入れ違いに延伸させれば、始端位置Bs及び終端位置Beが一平面上に集中することを回避でき、より高い接合強度が得られる。
【0036】
図5は、始端位置Bs及び終端位置Beの移動後の第一造形領域A1及び第二造形領域A2における溶接ビードBの経路を示す模式図である。
図5に示すように、溶接ビードBの始端位置Bs及び終端位置Beをマージ領域Am外に移動させ、さらに、第一造形領域A1及び第二造形領域A2における一部の溶接ビードBの造形経路を、例えば、約90°で折り曲げつつ延伸させてもよい。このとき、マージ領域Am内で互いに平行に接するように、折り曲げた溶接ビードBの造形経路を延伸させれば、マージ領域Am内で溶接ビードBが平行に接する平行部Pを設けることができる。このようにすれば、第一造形領域A1と第二造形領域A2とが接合される境界Fに対して溶接ビードBが垂直に配置される場合と比べ、溶接ビードBが平行に接する平行部Pにおいて溶接ビードB同士の溶融面積を十分に確保でき、より高い接合強度が得られる。
【0037】
なお、溶接ビードBは、折り曲げ箇所の角部Cにおいて、トーチ11の移動速度が変化しやすく、トーチ11を移動させるマニピュレータ17の駆動系が指定の軌跡を辿れず内回りとなって融合が不足するおそれがある。したがって、溶接ビードBの造形経路を折り曲げる場合、折り曲げ箇所である角部Cがマージ領域Am外となるように配置することが好ましい。
【0038】
図6Aは、第一造形領域A1及び第二造形領域A2における溶接ビードBの経路を示す模式図である。図6Bは、始端位置Bs及び終端位置Beの移動後の第一造形領域A1及び第二造形領域A2における溶接ビードBの経路を示す模式図である。
【0039】
図6Aに示す造形例では、第一造形領域A1及び第二造形領域A2において、溶接ビードBの経路が、第一造形領域A1と第二造形領域A2との境界Fに沿う方向とされ、交互に異なる方向の経路とされている。そして、境界Fに近接する溶接ビードBは、その始端位置Bs及び終端位置Beがマージ領域Am内に配置されている。
【0040】
このような場合、制御情報生成装置では、第一経路調整部35が、マージ領域Am内に始端位置Bs及び終端位置Beが配置されている溶接ビードBの経路長を調整し、溶接ビードBの始端位置Bs及び終端位置Beをマージ領域Am外に移動させるとともに、第二経路調整部37が、他の溶接ビードBの経路長を調整する。
【0041】
具体的には、図6Bに示すように、マージ領域Am内に始端位置Bs及び終端位置Beが配置されている溶接ビードBの経路長を延伸させ、この溶接ビードBの始端位置Bs及び終端位置Beを、マージ領域Amの外側の余肉部分に配置させる。
【0042】
この場合も、溶接ビードBの始端位置Bs及び終端位置Beを、溶接ビードBの積層条件が異なる第一造形領域A1と第二造形領域A2との間のマージ領域Amから外れた位置に移動させることにより、マージ領域Amにおける欠陥の発生を抑えることができる。これにより、積層条件が異なる第一造形領域A1と第二造形領域A2との接合箇所における接合強度の低下度合を抑制できる。
【0043】
なお、第一造形領域A1と第二造形領域A2との接合強度をより高めるために、マージ領域Am内で平行に接する平行部Pを構成する溶接ビードBの溶接条件を調整してもよく、また、これらのマージ領域Am内の平行部Pを構成する溶接ビードBに隣接する溶接ビードBの溶接条件をさらに調整してもよい。
【0044】
図7は、始端位置Bs及び終端位置Beの移動後の第一造形領域A1及び第二造形領域A2における溶接ビードBの経路を示す模式図である。
図7に示す造形例では、第一造形領域A1の溶接ビードBにおけるマージ領域Am内に始端位置Bs及び終端位置Beが配置されている溶接ビードBの経路長を延伸させ、さらに、この溶接ビードBを第二造形領域A2から離間する方向へ折り曲げて延伸させている。さらに、この溶接ビードBの折り曲げ部分の角部Cをマージ領域Am外に配置させている。これにより、マージ領域Amにおける欠陥の発生を抑えることができ、積層条件が異なる第一造形領域A1と第二造形領域A2との接合箇所における接合強度の低下度合を抑制できる。なお、第二造形領域A2における溶接ビードBの経路は、それぞれ同一方向に向かって延びる経路とされている。
【0045】
また、この造形例では、マージ領域Am及び第二造形領域A2の溶接ビードBの中央部分を第一造形領域A1側へ変位させるように造形経路を調整することにより、マージ領域Amで溶接ビードBが平行に接する平行部Pを第一造形領域A1に侵入した位置に配置させている。このように、溶接ビードBの造形経路を調整すれば、平行部Pを構成する溶接ビードB同士の接合長さ及び接合面積を増加させることができ、また、第一造形領域A1と第二造形領域A2との境界Fにおける接合面が単純な平面とならず、接合強度を強化できる。したがって、第二造形領域A2が十分な接合強度で第一造形領域A1に接合された造形物を造形できる。
【0046】
また、この造形例では、溶接ビードBの造形経路を調整して平行部Pを第一造形領域A1側へ変位させることにより、溶接ビードBにおける平行部Pの両端側に屈曲箇所が設けられ、これらの屈曲箇所の方向が互いに合わされている。したがって、マージ領域Amの両端側への嵩張りによる余肉量の増加を抑えつつ溶接ビードBの始端位置Bs、終端位置Be及び折り曲げた溶接ビードBの角部Cをマージ領域Am外の余肉部分に配置でき、さらに、溶接ビードB同士の融合面積を確保できる。
【0047】
図8は、第一造形領域A1から第二造形領域A2が側方へ延在する造形物を造形する場合の造形例を示している。
【0048】
図8に示すように、この造形例では、経路情報に基づいた溶接ビードBの造形経路が、第一造形領域A1において上下方向に沿う方向とされ、第二造形領域A2において水平方向に沿う方向とされている。なお、第一造形領域A1及び第二造形領域A2では、溶接ビードBの経路は、交互に異なる方向の経路とされている。この造形例では、第一造形領域A1と第二造形領域A2との間に設定したマージ領域Amに、第二造形領域A2を造形する溶接ビードBの始端位置Bs及び終端位置Beが配置される。
【0049】
上記の造形例における制御情報生成装置による制御情報の生成について説明する。
図9は、始端位置Bs及び終端位置Beの移動後の造形物における溶接ビードBの経路を示す模式図である。
【0050】
図9に示すように、マージ領域Amに配置された溶接ビードBの始端位置Bs及び終端位置Beをマージ領域Am外に配置すべく、第一経路調整部35が、第二造形領域A2の溶接ビードBについて、例えば、最上部を除く溶接ビードBの経路長を調整しつつ第一造形領域A1側を下から順に上方へ折り曲げ、第二経路調整部37が、他の溶接ビードBである最上部の溶接ビードBの経路長を短くするように調整する。これにより、マージ領域Amに配置されていた第二造形領域A2の溶接ビードBの始端位置Bs及び終端位置Beが、マージ領域Amから外れた第二造形領域A2の上方位置に配置される。
【0051】
このように、溶接ビードBの始端位置Bsおよび終端位置Beをマージ領域Am外に移動させることにより、マージ領域Amにおける欠陥の発生を抑えることができ、第一造形領域A1と、この第一造形領域A1から側方へ造形される第二造形領域A2との接合箇所の強度を改善できる。
【0052】
しかも、第二造形領域A2の溶接ビードBを折り曲げて始端位置Bs及び終端位置Beをマージ領域Am外に配置させるので、溶接ビードBのパス数を増やすことなく、第一造形領域A1と第二造形領域A2との接合強度を高められる。
【0053】
また、マージ領域Am内において、第二造形領域A2で折り曲げた溶接ビードBと第一造形領域A1の溶接ビードBと平行が接する平行部Pが設けられるので、第一造形領域A1と第二造形領域A2との境界Fにおける溶接ビードB同士の溶融面積を十分に確保できる。
【0054】
なお、図10に示すように、第二造形領域A2において造形経路を調整する最下部の溶接ビードBは、その折り曲げ部分の角部Cに、屈曲方向の外方へ突出するような突起状のシフト部Csを設けるのが好ましい。このような突起状のシフト部Csを設けることにより、角部Cにおけるトーチ11の内回りを抑え、第一造形領域A1との融合を促すことができる。
【0055】
また、図11に示すように、第二造形領域A2において造形経路を調整する最下部の溶接ビードBについてのみ経路長を調整しつつ上方へ折り曲げることにより、第二造形領域A2の溶接ビードBの始端位置Bs及び終端位置Beをマージ領域Amから外れた側方位置に配置させてもよい。この場合、経路長が短くされる他の溶接ビードBとしては、高溶着で形成可能な溶接条件に調整する。このようにすれば、マージ領域Amにおける欠陥の発生を抑えることができ、しかも、第二造形領域A2を造形する溶接ビードBのパス数を削減でき、造形時間を短縮できる。
【0056】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせること、及び明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0057】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 造形経路に沿ってトーチを移動させながら溶接材料を溶融して対象面に溶接ビードを形成してビード層を造形し、前記ビード層を積層した三次元形状の造形物を造形する積層造形装置を制御するための制御情報を生成する制御情報生成装置であって、
前記造形経路の情報である経路情報を取得する経路情報取得部と、
前記経路情報に基づいて、前記溶接ビードの積層条件が異なる第一造形領域と第二造形領域との間にマージ領域を設定する領域設定部と、
前記溶接ビードの経路長を調整して前記溶接ビードの始端位置および終端位置を前記マージ領域外に移動させる第一経路調整部と、
前記第一経路調整部による調整に基づいて、他の前記溶接ビードの造形経路を修正する第二経路調整部と、
を備える、制御情報生成装置。
この構成の制御情報生成装置によれば、応力の集中しやすいマージ領域に配置された溶接ビードの始端位置および終端位置をマージ領域外に移動させるので、マージ領域における欠陥の発生を抑えることができ、積層条件が異なる第一造形領域と第二造形領域との接合箇所の強度を改善できる。
【0058】
(2) 前記第一経路調整部は、前記第一造形領域及び前記第二造形領域における前記溶接ビードの造形経路を折り曲げつつ延伸させ、かつ前記造形経路における前記第一造形領域と前記第二造形領域との境界において、前記溶接ビードの造形経路に、互いに平行に接する平行部を形成する、(1)に記載の制御情報生成装置。
この構成の制御情報生成装置によれば、平行部を形成することで、溶接ビードの始点と終端との間における空隙を抑えることができる。また、第一造形領域と前記第二造形領域との境界に沿って溶接ビードが平行な平行部を形成するので、第一造形領域と第二造形領域とが接合される境界に対して溶接ビードが垂直に配置される場合と比べ、第一造形領域と第二造形領域との融合面積を確保しやすい。
【0059】
(3) 前記第一経路調整部は、前記溶接ビードの造形経路における前記平行部から折れ曲がった角部を前記マージ領域外に配置させる、(2)に記載の制御情報生成装置。
この構成の制御情報生成装置によれば、空隙等の欠陥が生じやすい溶接ビードの折れ曲がった角部をマージ領域外に配置させることにより、第一造形領域と第二造形領域との接合強度の低下を抑制できる。
【0060】
(4) 前記第一経路調整部は、前記平行部を、前記第一造形領域または前記第二造形領域に侵入した位置に配置させる、(2)に記載の制御情報生成装置。
この構成の制御情報生成装置によれば、第一経路調整部が、平行部を、第一造形領域または第二造形領域に侵入した位置に配置させることにより、平行部における溶接ビード同士の接合長さ及び接合面積を増加させることができ、また、第一造形領域と第二造形領域との境界における接合面が単純な平面とならず、接合強度を強化できる。
【0061】
(5) 前記領域設定部は、前記三次元形状から予め設定された余肉量に基づいて前記マージ領域を設定する、(1)から(4)のいずれか一つに記載の制御情報生成装置。
この構成の制御情報生成装置によれば、余肉量に応じて溶接ビードの造形経路を柔軟に変更でき、また、全体的に修正する溶接ビードの造形経路の経路長を小さくでき、効率的に造形できる。
【0062】
(6) 造形経路に沿ってトーチを移動させながら溶接材料を溶融して対象面に溶接ビードを形成してビード層を造形し、前記ビード層を積層した三次元形状の造形物を造形する積層造形装置を制御するための制御情報を生成する制御情報生成方法であって、
前記造形経路の情報である経路情報を取得する経路情報取得工程と、
前記経路情報に基づいて、前記溶接ビードの積層条件が異なる第一造形領域と第二造形領域との間にマージ領域を設定する領域設定工程と、
前記溶接ビードの経路長を調整して前記溶接ビードの始端位置および終端位置を前記マージ領域外に移動させる第一経路調整工程と、
前記第一経路調整工程による調整に基づいて、他の前記溶接ビードの造形経路を修正する第二経路調整工程と、
を含む、制御情報生成方法。
この制御情報生成方法によれば、応力の集中しやすいマージ領域に配置された溶接ビードの始端位置および終端位置をマージ領域外に移動させるので、マージ領域における欠陥の発生を抑えることができ、積層条件が異なる第一造形領域と第二造形領域との接合箇所の強度を改善できる。
【0063】
(7) 造形経路に沿ってトーチを移動させながら溶接材料を溶融して対象面に溶接ビードを形成してビード層を造形し、前記ビード層を積層した三次元形状の造形物を造形する積層造形装置を制御するための制御情報を生成するプログラムであって、
コンピュータに、
前記造形経路の情報である経路情報を取得する経路情報取得機能と、
前記経路情報に基づいて、前記溶接ビードの積層条件が異なる第一造形領域と第二造形領域間にマージ領域を設定する領域設定機能と、
前記溶接ビードの造形経路長を調整して前記溶接ビードの始端位置および終端位置を前記マージ領域外に移動させる第一経路調整機能と、
前記第一経路調整機能による調整に基づいて、他の前記溶接ビードの造形経路を修正する第二経路調整機能と、
を実現させるための、プログラム。
この構成のプログラムによれば、応力の集中しやすいマージ領域に配置された溶接ビードの始端位置および終端位置をマージ領域外に移動させるので、マージ領域における欠陥の発生を抑えることができ、積層条件が異なる第一造形領域と第二造形領域との接合箇所の強度を改善できる。
【0064】
(8) 第一方向の造形経路に沿って溶接ビードを形成して第一造形領域を造形し、前記第一造形領域における前記第一方向と交差する第二方向に沿って前記溶接ビードを形成して第二造形領域を造形することにより、前記第一造形領域に前記第二造形領域が接合された造形物を造形する積層造形方法であって、
前記溶接ビードの造形経路の情報である経路情報を取得する経路情報取得工程と、
前記経路情報に基づいて、前記第一造形領域と前記第二造形領域との間にマージ領域を設定する領域設定工程と、
前記第一造形領域及び前記第二造形領域の少なくとも一方を造形する前記溶接ビードの経路長を調整して前記溶接ビードの始端位置および終端位置を前記マージ領域外に移動させる第一経路調整工程と、
前記第一経路調整工程による調整に基づいて、他の前記溶接ビードの造形経路を修正する第二経路調整工程と、
修正された造形経路に沿って前記溶接ビードを形成し、前記第一造形領域に前記第二造形領域が接合された造形物を造形する造形工程と、
を含む、積層造形方法。
この積層造形方法によれば、応力の集中しやすいマージ領域に配置された溶接ビードの始端位置および終端位置をマージ領域外に移動させるので、マージ領域における欠陥の発生を抑えることができる。これにより、第一方向に沿う溶接ビードによって造形される第一造形領域に対して、第一方向と交差する第二方向に沿う溶接ビードによって造形される第二造形領域が、十分な接合強度で接合された造形物を造形できる。
【符号の説明】
【0065】
11 トーチ
15 造形制御装置(制御情報生成装置)
31 経路情報取得部
33 領域設定部
35 第一経路調整部
37 第二経路調整部
100 積層造形システム(積層造形装置)
A1 第一造形領域
A2 第二造形領域
Am マージ領域
B 溶接ビード
Bs 始端位置
Be 終端位置
C 角部
F 境界
P 平行部
W 造形物
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12