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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025184
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】半導体装置、半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240216BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240216BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240216BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 652M
H01L29/78 658F
H01L29/78 655A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128422
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】518453730
【氏名又は名称】三安ジャパンテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100171077
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 健
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩
(72)【発明者】
【氏名】塩井 伸一
(57)【要約】
【課題】チャネル移動度が高い半導体装置と、その半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置は、第1導電型または第2導電型の炭化珪素で形成された第1不純物層と、第1導電型の炭化珪素で形成されたドリフト層と、第2導電型の炭化珪素で形成された複数のボディ層と、第1導電型の炭化珪素でそれぞれ形成された複数の第2不純物層と、第2導電型の炭化珪素でそれぞれ形成された複数のボディコンタクト層と、複数のトレンチの内部にそれぞれ形成された複数のゲート電極層と、複数のボディ層のそれぞれの上において、第2不純物層と接触するように形成された複数の第1電極層と、第1不純物層に形成された第2電極層と、複数のトレンチのそれぞれの内部とゲート電極層との間に形成され、アルミニウムと窒素とを含んだ複数の窒化物結晶絶縁層と、を備えた。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型または第2導電型の炭化珪素で形成された第1不純物層と、
前記第1不純物層の第1面において第1導電型の炭化珪素で形成されたドリフト層と、
前記ドリフト層の上において第2導電型の炭化珪素で形成された複数のボディ層と、
前記複数のボディ層のそれぞれの上において前記ドリフト層よりも高不純物濃度の第1導電型の炭化珪素でそれぞれ形成された複数の第2不純物層と、
前記複数のボディ層のそれぞれの上において第2不純物層に囲まれ、ボディ層よりも高不純物濃度の第2導電型の炭化珪素でそれぞれ形成された複数のボディコンタクト層と、
隣接したボディ層においてボディ層と第2不純物層とを貫通して前記ドリフト層まで達する複数のトレンチの内部にそれぞれ形成された複数のゲート電極層と、
前記複数のボディ層のそれぞれの上において、第2不純物層と接触するように形成された複数の第1電極層と、
前記第1不純物層の第2面に形成された第2電極層と、
前記複数のトレンチのそれぞれの内面とゲート電極層との間に形成され、アルミニウムと窒素とを含んだ複数の窒化物結晶絶縁層と、
を備えた半導体装置。
【請求項2】
前記複数の窒化物結晶絶縁層は、前記複数のトレンチの底面および側面にそれぞれ形成された請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記複数の窒化物結晶絶縁層は、アルミニウムと窒素とで形成された請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記複数の窒化物結晶絶縁層は、ボロンを含んだ請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記複数の窒化物結晶絶縁層は、ガリウムとインジウムとスカンジウムとのうちの少なくとも1つを含んだ請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記複数のトレンチのそれぞれの内部において窒化物結晶絶縁層とゲート電極層との間に形成された複数の酸化物層、
を備えた請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記複数の酸化物層は、二酸化珪素である請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記複数の酸化物層は、酸化アルミニウムである請求項6に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記複数の窒化物結晶絶縁層は、前記複数の酸化物層よりも厚い請求項6に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記複数のトレンチの側面は、非極性面である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
第1導電型または第2導電型の炭化珪素で形成された第1不純物層の第1面において第1導電型の炭化珪素のドリフト層を形成するドリフト層形成工程と、
前記ドリフト層の上において第2導電型の炭化珪素で複数のボディ層を形成するボディ層形成工程と、
前記複数のボディ層のそれぞれの上において前記ドリフト層よりも高不純物濃度の第1導電型の炭化珪素で複数の第2不純物層をそれぞれ形成する第2不純物層形成工程と、
前記複数のボディ層のそれぞれの上において第2不純物層に囲まれるように、ボディ層よりも高不純物濃度の第2導電型の炭化珪素で複数のボディコンタクト層をそれぞれ形成するボディコンタクト層形成工程と、
隣接したボディ層においてボディ層と第2不純物層とを貫通して前記ドリフト層まで達するように複数のトレンチを形成するトレンチ形成工程と、
前記複数のトレンチのそれぞれの内部に複数のゲート電極層をそれぞれ形成するゲート電極層形成工程と、
前記複数のボディ層のそれぞれの上において、第2不純物層と接触するように複数の第1電極層をそれぞれ形成する第1電極層形成工程と、
前記第1不純物層の第2面に第2電極層を形成する第2電極層形成工程と、
前記トレンチ形成工程の後、かつ、前記ゲート電極層形成工程の前に、前記複数のトレンチのそれぞれの内面においてアルミニウムと窒素とを含んだ複数の窒化物結晶絶縁層をそれぞれ形成する窒化物結晶絶縁層形成工程と、
を備えた半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記窒化物結晶絶縁層形成工程は、前記複数の窒化物結晶絶縁層をヘテロエピタキシャル成長させる工程を含んだ請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記トレンチ形成工程の後、前記複数のトレンチの底面と側面との境界部をラウンド化するアニール工程、
を備えた請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記窒化物結晶絶縁層形成工程は、キャリアガスとして水素を供給する工程を含んだ請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記窒化物結晶絶縁層形成工程は、MOCVD法またはALD法により前記複数の窒化物結晶絶縁層を形成する工程を含んだ請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記複数のトレンチのそれぞれの内部において前記複数の窒化物結晶絶縁層の上に複数の酸化物層をそれぞれ形成する酸化物層形成工程、
を備え、
前記ゲート電極層形成工程は、前記複数のトレンチのそれぞれの内部において前記複数の酸化物層の上に前記複数のゲート電極層をそれぞれ形成する工程を含んだ請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記トレンチ形成工程は、前記複数のトレンチの側面が非極性面となるように前記複数のトレンチを形成する工程を含んだ請求項11から請求項16のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置と、その半導体装置の製造方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、半導体装置を開示する。当該半導体装置によれば、不純物層と電極層との接続性が低くなることを抑制し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-102450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の半導体装置において、従来技術のゲート絶縁膜の構造および従来技術のゲート絶縁膜形成方法では、ベース層(もしくはボディ層)とゲート絶縁膜との界面に、欠陥として高密度の界面準位が導入される。このため、炭化珪素本来の高いチャネル移動度が抑制される。その結果、チャネル抵抗を十分に低くすることができない。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされた。本開示の目的は、チャネル移動度が高い半導体装置と、その半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る半導体装置は、
第1導電型または第2導電型の炭化珪素で形成された第1不純物層と、
前記第1不純物層の第1面において第1導電型の炭化珪素で形成されたドリフト層と、
前記ドリフト層の上において第2導電型の炭化珪素で形成された複数のボディ層と、
前記複数のボディ層のそれぞれの上において前記ドリフト層よりも高不純物濃度の第1導電型の炭化珪素でそれぞれ形成された複数の第2不純物層と、
前記複数のボディ層のそれぞれの上において第2不純物層に囲まれ、ボディ層よりも高不純物濃度の第2導電型の炭化珪素でそれぞれ形成された複数のボディコンタクト層と、
隣接したボディ層においてボディ層と第2不純物層とを貫通して前記ドリフト層まで達する複数のトレンチの内部にそれぞれ形成された複数のゲート電極層と、
前記複数のボディ層のそれぞれの上において、第2不純物層と接触するように形成された複数の第1電極層と、
前記第1不純物層の第2面に形成された第2電極層と、
前記複数のトレンチのそれぞれの内面とゲート電極層との間に形成され、アルミニウムと窒素とを含んだ複数の窒化物結晶絶縁層と、
を備えた。
【0007】
前記複数の窒化物結晶絶縁層は、前記複数のトレンチの底面および側面にそれぞれ形成されたことが、本開示の一形態とされる。
【0008】
前記複数の窒化物結晶絶縁層は、アルミニウムと窒素とで形成されたことが、本開示の一形態とされる。
【0009】
前記複数の窒化物結晶絶縁層は、ボロンを含んだことが、本開示の一形態とされる。
【0010】
前記複数の窒化物結晶絶縁層は、ガリウムとインジウムとスカンジウムとのうちの少なくとも1つを含んだことが、本発明の一形態とされる。
【0011】
前記複数のトレンチのそれぞれの内部において窒化物結晶絶縁層とゲート電極層との間に形成された複数の酸化物層、
を備えたことが、本開示の一形態とされる。
【0012】
前記複数の酸化物層は、二酸化珪素であることが、本開示の一形態とされる。
【0013】
前記複数の酸化物層は、酸化アルミニウムであることが、本開示の一形態とされる。
【0014】
前記複数の窒化物結晶絶縁層は、前記複数の酸化物層よりも厚いことが、本開示の一形態とされる。
【0015】
前記複数のトレンチの側面は、非極性面であることが、本開示の一形態とされる。
【0016】
本開示に係る半導体装置の製造方法は、
第1導電型または第2導電型の炭化珪素で形成された第1不純物層の第1面において第1導電型の炭化珪素のドリフト層を形成するドリフト層形成工程と、
前記ドリフト層の上において第2導電型の炭化珪素で複数のボディ層を形成するボディ層形成工程と、
前記複数のボディ層のそれぞれの上において前記ドリフト層よりも高不純物濃度の第1導電型の炭化珪素で複数の第2不純物層をそれぞれ形成する第2不純物層形成工程と、
前記複数のボディ層のそれぞれの上において第2不純物層に囲まれるように、ボディ層よりも高不純物濃度の第2導電型の炭化珪素で複数のボディコンタクト層をそれぞれ形成するボディコンタクト層形成工程と、
隣接したボディ層においてボディ層と第2不純物層とを貫通して前記ドリフト層まで達するように複数のトレンチを形成するトレンチ形成工程と、
前記複数のトレンチのそれぞれの内部に複数のゲート電極層をそれぞれ形成するゲート電極層形成工程と、
前記複数のボディ層のそれぞれの上において、第2不純物層と接触するように複数の第1電極層をそれぞれ形成する第1電極層形成工程と、
前記第1不純物層の第2面に第2電極層を形成する第2電極層形成工程と、
前記トレンチ形成工程の後、かつ、前記ゲート電極層形成工程の前に、前記複数のトレンチのそれぞれの内面においてアルミニウムと窒素とを含んだ複数の窒化物結晶絶縁層をそれぞれ形成する窒化物結晶絶縁層形成工程と、
を備えた。
【0017】
前記窒化物結晶絶縁層形成工程は、前記複数の窒化物結晶絶縁層をヘテロエピタキシャル成長させる工程を含んだことが、本開示の一形態とされる。
【0018】
前記トレンチ形成工程の後、前記複数のトレンチの底面と側面との境界部をラウンド化するアニール工程、
を備えたことが、本開示の一形態とされる。
【0019】
前記窒化物結晶絶縁層形成工程は、キャリアガスとして水素を供給する工程を含んだことが、本開示の一形態とされる。
【0020】
前記窒化物結晶絶縁層形成工程は、MOCVD法またはALD法により前記複数の窒化物結晶絶縁層を形成する工程を含んだことが、本開示の一形態とされる。
【0021】
前記複数のトレンチのそれぞれの内部において前記複数の窒化物結晶絶縁層の上に複数の酸化物層をそれぞれ形成する酸化物層形成工程、
を備え、
前記ゲート電極層形成工程は、前記複数のトレンチのそれぞれの内部において前記複数の酸化物層の上に前記複数のゲート電極層をそれぞれ形成する工程を含んだことが、本開示の一形態とされる。
【0022】
前記トレンチ形成工程は、前記複数のトレンチの側面が非極性面となるように前記複数のトレンチを形成する工程を含んだことが、本開示の一形態とされる。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、チャネル移動度が高い半導体装置と、その半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施の形態1における半導体装置の要部の縦断面図である。
図2】実施の形態1における半導体装置の窒化物結晶絶縁層の選定方法を説明する際に用いられる図である。
図3】実施の形態1における半導体装置の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実施の形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には同一の符号が付される。当該部分の重複説明は適宜に簡略化ないし省略される。
【0026】
実施の形態1.
図1は実施の形態1における半導体装置の要部の縦断面図である。
【0027】
図1において、半導体装置1は、炭化珪素のMISFETである。半導体装置1は、トレンチ型である。半導体装置1は、ドレイン層2とドリフト層3と複数のボディ層4と複数のソース層5と複数のボディコンタクト層6と複数の酸化物層7と複数のゲート電極層8と複数の層間絶縁層9と複数のソース電極層10と配線電極層11とドレイン電極層12と複数の窒化物結晶絶縁層13とを備える。
【0028】
なお、図1において、複数の酸化物層7と複数のゲート電極層8と複数の層間絶縁層9と複数の窒化物結晶絶縁層13とは、それぞれ1つのみが図示される。
【0029】
ドレイン層2は、第1不純物層として、第1導電型の炭化珪素で形成される。例えば、ドレイン層2は、n型の4H-SiCで形成される。例えば、ドレイン層2は、窒素を不純物として形成される。ドリフト層3は、ドレイン層2の第1面(図1においては上面)に形成される。ドリフト層3は、ドレイン層2よりも低不純物濃度の第1導電型の炭化珪素で形成される。例えば、ドリフト層3は、n型の層である。例えば、ドリフト層3は、エピタキシャル成長によりドレイン層2の上に形成される。
【0030】
複数のボディ層4は、ドリフト層3の上に形成される。複数のボディ層4は、第2導電型の炭化珪素で形成される。例えば、複数のボディ層4は、p型の層である。例えば、複数のボディ層4は、アルミニウムを不純物としてイオン注入法により形成される。複数のソース層5は、第2不純物層として、複数のボディ層4のそれぞれの上に形成される。複数のソース層5は、ドリフト層3よりも高不純物濃度の第1導電型の炭化珪素で形成される。例えば、複数のソース層5は、n型の層である。例えば、複数のソース層5は、窒素を不純物としてイオン注入法により形成される。複数のボディコンタクト層6は、複数のボディ層4のそれぞれの上に形成される。複数のボディ層4のそれぞれにおいて、ボディコンタクト層6は、ソース層5に囲まれる。複数のボディコンタクト層6は、複数のボディ層4よりも高不純物濃度の第2導電型の炭化珪素で形成される。例えば、複数のボディコンタクト層6は、p型の層である。例えば、複数のボディコンタクト層6は、アルミニウムを不純物としてイオン注入法により形成される。
【0031】
複数の酸化物層7は、隣接したボディ層4においてボディ層4とソース層5とを貫通してドリフト層3まで達する複数のトレンチTの内部にそれぞれ形成される。例えば、複数の酸化物層7は、二酸化珪素である。例えば、複数の酸化物層7は、酸化アルミニウムである。例えば、複数の酸化物層7は、熱酸化により形成される。例えば、複数の酸化物層7は、CVD法またはALD法により形成される。複数のゲート電極層8は、複数のトレンチTのそれぞれの内部において複数の酸化物層7の上にそれぞれ形成される。例えば、複数のゲート電極層8は、CVD法によりポリシリコンで形成される。
【0032】
複数の層間絶縁層9は、複数のゲート電極層8をそれぞれ覆うように形成される。例えば、複数の層間絶縁層9は、CVD法により形成される。複数のソース電極層10は、複数のボディ層4のそれぞれに対応して形成される。ソース電極層10は、第1電極層として、ソース層5と接触するように形成される。ソース電極層10は、ボディコンタクト層6にまたがるように形成されてもよい。例えば、複数のソース電極層10は、スパッタ法によりNi等を成膜し、熱処理して形成される。例えば、複数のソース電極層10は、スパッタ法によりTi等を成膜して形成される。配線電極層11は、複数のソース電極層10を覆うように形成される。例えば、配線電極層11は、スパッタ法によりアルミニウム合金で形成される。
【0033】
ドレイン電極層12は、第2電極層として、ドレイン層2の第2面(図1においては下面)に形成される。例えば、ドレイン電極層12は、スパッタ法によりNi等を成膜し、熱処理して形成される。
【0034】
本実施の形態においては、複数の窒化物結晶絶縁層13が付加される。複数の窒化物結晶絶縁層13は、複数のトレンチTのそれぞれの内面と酸化物層7との間に形成される。具体的には、複数の窒化物結晶絶縁層13は、複数のトレンチTの底面および側面にそれぞれ形成される。例えば、複数の窒化物結晶絶縁層13は、複数の酸化物層7よりも厚い。例えば、複数の窒化物結晶絶縁層13は、複数の酸化物層7よりも薄い。
【0035】
複数の窒化物結晶絶縁層13は、アルミニウムと窒素とを含む。例えば、複数の窒化物結晶絶縁層13は、アルミニウムおよび窒素のみで形成される。例えば、複数の窒化物結晶絶縁層13は、ボロンを含む。例えば、複数の窒化物結晶絶縁層13は、ガリウムを含む。例えば、複数の窒化物結晶絶縁層13は、インジウムまたはスカンジウムを含む。
【0036】
なお、トレンチTの底面は、極性面である。具体的には、トレンチTの底面は、(0001)Si面または(000-1)C面である。トレンチTの側面は、非極性面である。具体的には、トレンチTの側面は、(11-20)A面または(1-100)M面または(03-38)面である。
【0037】
例えば、窒化物結晶絶縁層13は、トレンチTの底面(結晶面)および側面(結晶面)を成長面としてヘテロエピタキシャル成長により、炭化珪素のホモエピタキシャル成長よりも低温の雰囲気の中で形成される。例えば、窒化物結晶絶縁層13は、トレンチTの底面および側面を成長面としてMOCVD法またはALD法により形成される。例えば、窒化物結晶絶縁層13は、キャリアガスとして水素が供給された雰囲気の中で形成される。
【0038】
次に、図2を用いて、窒化物結晶絶縁層13の選定方法を説明する。
図2は実施の形態1における半導体装置の窒化物結晶絶縁層の選定方法を説明する際に用いられる図である。
【0039】
図2において、炭化珪素(4H-SiC)と窒化物結晶絶縁層13とに関し、バンドギャップと電子親和力と格子定数aと格子定数cとc軸方向の分子層数と1分子層長さとが示される。
【0040】
窒化物結晶絶縁層13の組成は、炭化珪素(4H-SiC)のバンドギャップと電子親和力と格子定数aと1分子層長さと自らのバンドギャップと電子親和力と格子定数aと1分子層長さとを考慮して選定される。
【0041】
トレンチ型の半導体装置1の場合、トレンチTの底面については、窒化物結晶絶縁層13の格子定数aと炭化珪素(4H-SiC)の格子定数aとの差が小さいことが好ましい。一方、トレンチTの側面については、窒化物結晶絶縁層13の1分子層長さと炭化珪素(4H-SiC)の1分子層長さとの差が小さいことが好ましい。
【0042】
図2に示されるように、窒化アルミニウム(AlN)の格子定数aと炭化珪素(4H-SiC)の格子定数aとの差は小さい。窒化アルミニウム(AlN)の1分子層長さと炭化珪素(4H-SiC)の1分子層長さとの差は小さい。このため、第1例においては、窒化物結晶絶縁層13として、窒化アルミニウム(AlN)が選定される。
【0043】
窒化物結晶絶縁層13の格子定数aと1分子層長さとが炭化珪素(4H-SiC)の格子定数aと1分子層長さとにそれぞれより近づくように、窒化物結晶絶縁層13の組成が選定される場合もある。窒化物結晶絶縁層13の組成を変えることで、バンドギャップと電子親和力と格子定数aと1分子層長さが変化し、炭化珪素(4H-SiC)の格子定数aと1分子層長さに近づくように、窒化物結晶絶縁層13の組成が選定される場合もある。
【0044】
例えば、第2例の窒化物結晶絶縁層13として、第1例の窒化物結晶絶縁層13に対して数パーセントのボロン(B)が添加された組成が選定される。例えば、第3例の窒化物結晶絶縁層13として、第1例の窒化物結晶絶縁層13または第2例の窒化物結晶絶縁層13に対して数パーセントのガリウム(Ga)が添加された組成が選定される。例えば、第4例の窒化物結晶絶縁層13として、第1例の窒化物結晶絶縁層13から第3例の窒化物結晶絶縁層13のいずれかに対して数パーセントのインジウム(In)が添加された組成が選定される。例えば、第5例の窒化物結晶絶縁層13として、第1例の窒化物結晶絶縁層13から第4例の窒化物結晶絶縁層13のいずれかに対して数パーセントのスカンジウム(Sc)が添加された組成が選定される。例えば、第6例の窒化物結晶絶縁層13として、厚さの薄い第1例の窒化物結晶絶縁層13と厚さの薄い他の組成の窒化物結晶絶縁層とを組み合わせて、超格子構造のように層を形成してもよい。例えば、第7例の窒化物結晶絶縁層13として、厚さの薄い第1例の窒化物結晶絶縁層13と厚さの薄い窒化ボロン(BN)の層とを組み合わせて、超格子構造のように層を形成してもよい。
【0045】
次に、図3を用いて、半導体装置1の製造方法を説明する。
図3は実施の形態1における半導体装置の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0046】
図3に示されるように、半導体装置1は、第1不純物層形成工程とドリフト層形成工程とボディ層形成工程と第2不純物層形成工程とボディコンタクト層形成工程と高温アニール工程とトレンチ形成工程とアニール工程と窒化物結晶絶縁層形成工程と酸化物層形成工程とゲート電極層形成工程と層間絶縁層形成工程と第1電極層形成工程と配線電極層形成工程と第2電極層形成工程とを経て製造される。
【0047】
ステップS1において、第1不純物層形成工程が行われる。第1不純物層形成工程においては、基板がドレイン層2として形成される。その後、ステップS2において、ドリフト層形成工程が行われる。ドリフト層形成工程においては、エピタキシャル層がドリフト層3として形成される。
【0048】
その後、ステップS3において、ボディ層形成工程が行われる。ボディ層形成工程においては、イオン注入法により複数のボディ層4が形成される。その後、ステップS4において、不純物層形成工程が行われる。第2不純物層形成工程においては、第2不純物層として、イオン注入法により複数のソース層5が形成される。その後、ステップS5において、ボディコンタクト層形成工程が行われる。ボディコンタクト層形成工程においては、イオン注入法により複数のボディコンタクト層6が形成される。その後、ステップS6において、高温アニール工程が行われる。高温アニール工程においては、イオン注入された不純物元素(ドーパント)を活性化させるために、アニール処理が高温の雰囲気の中で行われる。
【0049】
その後、ステップS7において、トレンチ形成工程が行われる。トレンチ形成工程においては、エッチングにより複数のトレンチTが形成される。この際、複数のトレンチTは、側面の非極性面がエッチングにより露出することで形成される。その後、ステップS8において、アニール工程が行われる。アニール工程においては、複数のトレンチTにおいて、底面と側面との平坦性が改善されつつ、底面と側面との境界部がラウンド化される。例えば、アニール工程は、シリコンガスの雰囲気で行われる。
【0050】
その後、ステップS9において、窒化物結晶絶縁層形成工程が行われる。窒化物結晶絶縁層形成工程においては、例としてMOCVD法によるヘテロエピタキシャル成長により複数の窒化物結晶絶縁層13が形成される。または、ALD法により結晶性を有する複数の窒化物結晶絶縁層13が形成される。その後、ステップS10において、酸化物層形成工程が行われる。酸化物層形成工程においては、CVD法により複数の酸化物層7が形成される。その後、ステップS11において、ゲート電極層形成工程が行われる。ゲート電極層形成工程においては、複数のゲート電極層8が形成される。
【0051】
その後、ステップS12において、層間絶縁層形成工程が行われる。層間絶縁層形成工程においては、層間絶縁層9が形成される。その後、ステップS13において、第1電極層形成工程が行われる。第1電極層形成工程においては、第1電極層として、複数のソース電極層10が形成される。その後、ステップS14において、配線電極層形成工程が行われる。配線電極層形成工程においては、配線電極層11が形成される。
【0052】
その後、ステップS15において、第2電極層形成工程が行われる。第2電極層形成工程においては、第2電極層として、ドレイン電極層12が形成される。
【0053】
以上で説明された実施の形態1によれば、複数のトレンチTのそれぞれの内部において、窒化物結晶絶縁層13は、トレンチTの内面とゲート電極層8との間に形成される。窒化物結晶絶縁層13は、アルミニウムと窒素とを含む。このため、トレンチTの内面と窒化物結晶絶縁層13との間において界面欠陥密度を低減することができる。その結果、チャネル移動度を高めることができる。
【0054】
また、窒化物結晶絶縁層13は、トレンチTの底面および側面に形成される。このため、チャネル移動度をより確実に高めることができる。
【0055】
また、窒化物結晶絶縁層13は、アルミニウムと窒素とで形成される。このため、窒化物結晶絶縁層13を容易に形成することができる。
【0056】
また、窒化物結晶絶縁層13は、ボロンを含む。このため、チャネル移動度をより確実に高めることができる。
【0057】
また、窒化物結晶絶縁層13は、ガリウムとインジウムとスカンジウムとのうちの少なくとも1つを含む。このため、チャネル移動度をより確実に高めることができる。
【0058】
また、複数のトレンチTのそれぞれの内部において、酸化物層7は、窒化物結晶絶縁層13とゲート電極層8との間に形成される。このため、ゲートのリーク電流を抑制することができる。
【0059】
また、酸化物層7は、二酸化珪素である。このため、酸化物層7を容易に形成することができる。
【0060】
また、酸化物層7は、酸化アルミニウムである。このため、酸化物層7を容易に形成することができる。
【0061】
また、窒化物結晶絶縁層13は、酸化物層7よりも厚い。このため、半導体装置1の信頼性を向上することができる。
【0062】
なお、窒化物結晶絶縁層13において格子不整合によりミスフィット転位が導入される場合は、窒化物結晶絶縁層13をミスフィット転位が導入されない厚さとなるように薄くし、酸化物層7を追加で堆積すればよい。この場合、ゲートのリーク電流をより確実に抑制することができる。その結果、半導体装置1の信頼性を向上することができる。
【0063】
また、トレンチTの側面は、非極性面である。この場合、トレンチTの側面にヘテロエピタキシャル成長した窒化物結晶絶縁層13において、ピエゾ電界の発生を抑制することができる。このため、ピエゾ電界に起因する不均一性を抑制することができる。その結果、性能のばらつきが抑制された高品質の半導体装置1を得ることができる。
【0064】
また、窒化物結晶絶縁層13は、ヘテロエピタキシャル成長により形成される。窒化物のヘテロエピタキシャル成長温度は、炭化珪素(4H-SiC)のエピタキシャル成長温度よりも低温である。さらに、ヘテロエピタキシャル成長の炉内においては、酸素が排除される。このため、炭化珪素の酸化を抑制しつつ、高品質の窒化物結晶絶縁層13を形成することができる。
【0065】
また、アニール工程により、トレンチTにおいて、底面と側面との平坦性が改善されつつ、トレンチTの底面と側面との境界部がラウンド化される。この場合、トレンチTの底面と側面との境界部において局所的に電界が高くなる領域を減らすことができる。このため、トレンチTの底面と側面との境界部の電界分布を改善することができる。その結果、絶縁破壊が発生することを抑制できる。
【0066】
また、窒化物結晶絶縁層13は、キャリアガスとして水素が供給された雰囲気の中で形成される。このため、高品質の窒化物結晶絶縁層13を形成することができる。
【0067】
また、窒化物結晶絶縁層13は、MOCVD法またはALD法により形成される。このため、高品質の窒化物結晶絶縁層13を形成することができる。
【0068】
なお、酸化物層7を形成せずに、窒化物結晶絶縁層13だけでゲート絶縁層を形成してもよい。この場合、図3において、ステップS10の工程を不要とすることができる。
【0069】
また、第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としてもよい。この場合も、チャネル移動度を高めることができる。
【0070】
また、半導体装置1をIGBTとしてもよい。この場合、第1不純物層としてのドレイン層2を、P型のコレクタ層とすればよい。第2不純物層としてのソース層5をエミッタ層とすればよい。第1電極層としてのソース電極層10をエミッタ電極層とすればよい。第2電極層としてのドレイン電極層12をコレクタ電極層とすればよい。
【0071】
少なくとも一つの実施形態のいくつかの側面が説明されたが、様々な改変、修正および改善が当業者にとって容易に想起されることを理解されたい。かかる改変、修正および改善は、本開示の一部となることが意図され、かつ、本開示の範囲内にあることが意図される。
【0072】
理解するべきことだが、ここで述べられた方法および装置の実施形態は、上記説明に記載され又は添付図面に例示された構成要素の構造および配列の詳細への適用に限られない。方法および装置は、他の実施形態で実装し、様々な態様で実施又は実行することができる。
【0073】
特定の実装例は、例示のみを目的としてここに与えられ、限定されることを意図しない。
【0074】
本開示で使用される表現および用語は、説明目的であって、限定としてみなすべきではない。ここでの「含む」、「備える」、「有する」、「包含する」およびこれらの変形の使用は、以降に列挙される項目およびその均等物並びに付加項目の包括を意味する。
【0075】
「又は(若しくは)」の言及は、「又は(若しくは)」を使用して記載される任意の用語が、当該記載の用語の一つの、一つを超える、およびすべてのものを示すように解釈され得る。
【0076】
前後左右、頂底上下、横縦、表裏への言及は、いずれも、記載の便宜を意図する。当該言及は、本開示の構成要素がいずれか一つの位置的又は空間的配向に限られるものではない。したがって、上記説明および図面は、例示にすぎない。
【符号の説明】
【0077】
1 半導体装置、 2 ドレイン層(第1不純物層)、 3 ドリフト層、 4 ボディ層、 5 ソース層(第2不純物層)、 6 ボディコンタクト層、 7 酸化物層、 8 ゲート電極層、 9 層間絶縁層、 10 ソース電極層(第1電極層)、 11 配線電極層、 12 ドレイン電極層(第2電極層)、 13 窒化物結晶絶縁層

図1
図2
図3