(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025186
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】形状計測システム、および形状計測方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20240216BHJP
G01B 11/08 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
G01B11/24 K
G01B11/08 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128426
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊内 哲也
(72)【発明者】
【氏名】丸山 重信
(72)【発明者】
【氏名】孟 凡輝
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA26
2F065AA53
2F065BB16
2F065CC05
2F065DD03
2F065DD06
2F065FF04
2F065FF09
2F065GG04
2F065HH05
2F065JJ03
2F065MM03
2F065MM04
2F065PP22
2F065QQ03
2F065QQ21
2F065QQ24
2F065QQ31
2F065UU06
(57)【要約】
【課題】歯車の直径に関わらず、歯車の歯形、歯筋、直径を一定精度で計測する。
【解決手段】本開示は、一例として、歯車の形状を計測する形状計測システムであって、計測対象の前記歯車が載置される歯車載置面を有する基準治具と、基準治具と歯車に対して光を照射して計測を行う、少なくとも1つの光学センサと、歯車載置面に沿った方向に基準治具及び歯車を直進移動させる直動ステージと、少なくとも1つの光学センサによる計測データに基づいて、歯車の形状の計測結果を出力するコントローラと、を備え、直動ステージ及び少なくとも1つの光学センサは、基準治具及び歯車が直動ステージ上を直進移動している際に、光学センサからの光が、歯車載置面を挟んで基準治具と歯車とに跨って照射されるように構成されており、コントローラは、基準治具の計測データの既知の輪郭形状のデータに対する位置合わせデータを歯車の計測データに適用することにより、歯車の形状を取得する、形状計測システムを提案する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車の形状を計測する形状計測システムであって、
計測対象の前記歯車が載置される歯車載置面を有する基準治具と、
前記基準治具と前記歯車に対して光を照射して計測を行う、少なくとも1つの光学センサと、
前記歯車載置面に沿った方向に前記基準治具及び前記歯車を直進移動させる直動ステージと、
前記少なくとも1つの光学センサによる計測データに基づいて、前記歯車の形状の計測結果を出力するコントローラと、を備え、
前記直動ステージ及び前記少なくとも1つの光学センサは、前記基準治具及び前記歯車が前記直動ステージ上を直進移動している際に、前記光学センサからの光が、前記歯車載置面を挟んで前記基準治具と前記歯車とに跨って照射されるように構成されており、
前記コントローラは、前記基準治具の計測データの既知の輪郭形状のデータに対する位置合わせデータを前記歯車の計測データに適用することにより、前記歯車の形状を取得する、形状計測システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記基準治具の前記歯車載置面の外径で画定される円の直径と、
前記歯車の外径で画定される円の直径の差分が、
前期光学センサの計測レンジ以下である形状計測システム。
【請求項3】
請求項1において、
さらに、前記基準治具を載置し、前記歯車および前記基準治具を回転させる回転ステージを備え、
前記コントローラは、
前記回転ステージを任意の角度だけ回転させて前記光学センサを動作させることにより、前記基準治具と前記歯車の1回分の計測データを取得する処理と、
前記任意の角度の回転と前記光学センサによる計測動作を繰り返して前記基準治具と前記歯車の全周の計測データを取得する処理と、
前記基準治具の全周の計測データの前記既知の輪郭形状のデータに対する位置合わせデータを前記歯車の全周の計測データに適用することにより、前記歯車の全周形状を取得する処理と、
を実行する形状計測システム。
【請求項4】
請求項1において、
さらに、前記基準治具を載置し、前記歯車および前記基準治具を回転させる回転ステージを備え、
前記直動ステージは、前記光学センサからの光の光軸と直交する方向に、前記歯車を載置した前記基準治具と前記光学センサとを相対的に直進移動させるように構成されており、
前記コントローラは、
前記直動ステージを直進移動させながら前記光学センサを動作させることにより、前記歯車の一部と前記基準治具の一部の計測データを取得する処理と、
前記回転ステージを任意の角度だけ回転させて計測個所を変更する処理と、
前記計測データを取得する処理と前記計測個所を変更する処理を繰り返して前記歯車および前記基準治具の全周の計測データを取得する処理と、
前記基準治具の全周の計測データの前記既知の輪郭形状のデータに対する位置合わせデータを前記歯車の全周の計測データに適用することにより、前記歯車の全周形状を取得する処理と、
を実行する形状計測システム。
【請求項5】
請求項4において、
前記直動ステージは、前記基準治具の前記歯車載置面と平行な方向に、前記歯車を載置した前記基準治具を直進移動させ、
前記光学センサが出射する光は、前記直動ステージの移動方向に所定角度の広がりを有する、形状計測システム。
【請求項6】
請求項4において、
前記直動ステージは、前記基準治具および前記歯車の高さ方向に前記光学センサを直進移動させ、
前記光学センサが出射する光は、前記直動ステージの移動方向に所定角度の広がりを有する、形状計測システム。
【請求項7】
請求項2において、
前記基準治具の前記歯車載置面の形状は、前記歯車の歯数と同数の頂点をもつ正多角形である、形状計測システム。
【請求項8】
歯車の形状を計測する形状計測方法であって、
輪郭形状が既知の基準治具に計測対象の前記歯車を載置するステップと、
少なくとも1つの光学センサを用いて、前記基準治具と前記歯車に対して光を照射して計測を行うステップと、
コントローラを用いて、前記少なくとも1つの光学センサによる計測データに基づいて、前記歯車の形状の計測結果を生成するステップと、を含み、
前記基準治具及び前記歯車が前記歯車を直進移動させる直動ステージ上を直進移動している際に、前記光学センサからの光が、前記歯車載置面を挟んで前記基準治具と前記歯車とに跨って照射され、
前記歯車の形状の計測結果を生成するステップにおいて、前記コントローラは、前記基準治具の計測データの既知の輪郭形状のデータに対する位置合わせデータを前記歯車の計測データに適用することにより、前記歯車の形状を取得する、形状計測方法。
【請求項9】
請求項8において、さらに、
前記光学センサからの光の光軸と直交する方向に、前記歯車を載置した前記基準治具と前記光学センサとを相対的に直進移動させる直動ステージを直進移動させながら前記光学センサを動作させることにより、前記歯車の一部と前記基準治具の一部の計測データを取得するステップと、
前記基準治具を載置し、前記歯車および前記基準治具を回転させる回転ステージを任意の角度だけ回転させて計測個所を変更するステップと、
前記計測データを取得することと前記計測個所を変更することとを繰り返して前記歯車および前記基準治具の全周の計測データを取得するステップと、を含み、
前記コントローラは、前記基準治具の全周の計測データの前記既知の輪郭形状のデータに対する位置合わせデータを前記歯車の全周の計測データに適用することにより、前記歯車の全周形状を取得する、形状計測方法。
【請求項10】
請求項9において、
前記歯車の一部と前記基準治具の一部の計測データを取得するステップにおいて、前記コントローラは、前記直動ステージを制御して、前記基準治具の前記歯車載置面と平行な方向に、前記歯車を載置した前記基準治具を直進移動させ、
前記光学センサが出射する光は、前記直動ステージの移動方向に所定角度の広がりを有する、形状計測方法。
【請求項11】
請求項9において、
前記歯車の一部と前記基準治具の一部の計測データを取得するステップにおいて、前記コントローラは、前記直動ステージを制御して、前記基準治具および前記歯車の高さ方向に前記光学センサを直進移動させ、
前記光学センサが出射する光は、前記直動ステージの移動方向に所定角度の広がりを有する、形状計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、形状計測システム、および形状計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
動力伝達装置は、例えば自動車、建設機械、航空機などをはじめとする様々な製品のコアコンポーネントである。歯車の加工精度は動力伝達装置の性能を決定する重要な項目であり、伝達性能を保証するために、歯車形状の品質管理が必須となる。特に、歯形、歯すじ、および直径は、歯車同士のかみ合わせに直結するため、高精度に加工する必要がある。例えば、JIS B 1702-1で定める精度N9級歯車は、寸法が直径500mm、歯たけ20mmの場合、歯すじ誤差が34μm以内と定められている。このように歯車は高い加工精度が求められるため、歯車形状の品質管理には精密な計測が必要となる。一方で製造ラインでの全数検査を達成するためには、計測時間は短いことが望まれる。
【0003】
歯車計測としては、接触式プローブを用いる手法が主流である。本手法は、プローブを歯面にあてプローブを移動させる、または歯車を回転させることで歯車形状を計測する方法である。しかし、本手法によれば、高精度な計測ができるが、計測時間が長いという課題があった。
【0004】
このような背景の中、高精度かつ短時間な計測手法を提供するため、近年、光学的センサなどの非接触な手法を用いた形状計測システムが提案されてきた。例えば、特許文献1には、光学センサを歯車に対して複数配向し、歯車を回転させて全周形状を計測する装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、歯車を回転させながら計測するため、ロータリエンコーダに角度誤差が生じると、歯車のサイズに比例して計測精度が悪化する課題がある。例えば、歯車直径が500mmの場合、エンコーダの角度誤差が10秒(10°/3600)生じると、12μmの計測誤差が生じる。
本開示は、このような状況に鑑み、歯車のサイズに関わらず、歯車の歯形、歯筋、直径を高い精度で計測することが可能な形状計測技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示は、一例として、歯車の形状を計測する形状計測システムであって、計測対象の前記歯車が載置される歯車載置面を有する基準治具と、基準治具と歯車に対して光を照射して計測を行う、少なくとも1つの光学センサと、歯車載置面に沿った方向に基準治具及び歯車を直進移動させる直動ステージと、少なくとも1つの光学センサによる計測データに基づいて、歯車の形状の計測結果を出力するコントローラと、を備え、直動ステージ及び少なくとも1つの光学センサは、基準治具及び歯車が直動ステージ上を直進移動している際に、光学センサからの光が、歯車載置面を挟んで基準治具と歯車とに跨って照射されるように構成されており、コントローラは、基準治具の計測データの既知の輪郭形状のデータに対する位置合わせデータを歯車の計測データに適用することにより、歯車の形状を取得する、形状計測システムを提案する。
【0008】
本開示に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、本開示の態様は、要素及び多様な要素の組み合わせ及び以降の詳細な記述と添付される特許請求の範囲の様態により達成され実現される。なお、本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例をいかなる意味においても限定するものではない。
【発明の効果】
【0009】
本開示の技術によれば、歯車と同時に形状既知の基準治具も計測し、基準治具を部分形状データ合成時の位置合わせの基準として用いるため、ロータリエンコーダの角度誤差が歯車全周形状の合成精度に及ぼす影響を排除することができ、よって、歯車のサイズに依存せず、高い精度で歯車全周形状を測定して評価できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態による形状計測システム1の上面概略構成例を示す図である。
【
図2】第1の実施形態による形状計測システム1の正面概略構成例を示す図である。
【
図3】第1の実施形態による歯車計測処理を説明するためのフローチャートである。
【
図4】
図3のステップS102で光学センサ201および光学センサ202が計測した、歯車100と基準治具101の任意の断面の計測結果を示す図である。
【
図5】光学センサ201で計測した歯車100および基準治具101の部分形状データを合成する概念を示す図である。
【
図6】光学センサ202で計測した歯車100および基準治具101の部分形状データを合成する概念を説明するための図である。
【
図7】光学センサ201および光学センサ202で計測した、歯車100および基準治具101の部分形状データを合成して得られる歯車100の全周形状(例)を示す図である。
【
図8】第2の実施形態による形状計測システム1Aの概略構成例を示す図(上面図)である。
【
図9】第2の実施形態による形状計測システム1Aの歯車100周辺の拡大図(上面図)である。
【
図10】第2の実施形態による計測システム1Aの正面概略構成例を示す図である。
【
図11】第2の実施形態による歯車計測処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態は、輪郭形状および寸法が既知の基準治具上に載置した計測対象の歯車を基準治具とともに光センサで計測し、基準治具の計測データを仮想空間上の基準治具の座標データに基づいて座標変換値(平行移動および回転移動)を求め、当該座標変換値を歯車の計測データに適用することにより、歯車形状を描画(形状合成)し、対象の歯車の形状および寸法を計測(算出)することを開示する。
【0012】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本開示の原理に則った具体的な実施形態と実装例を示しているが、これらは本開示の技術の理解のためであり、決して本開示の技術を限定的に解釈するために用いられるものではない。
【0013】
本実施形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
【0014】
更に、本開示の実施形態は、後述されるように、汎用コンピュータ上で稼動するソフトウェアで実装しても良いし専用ハードウェア又はソフトウェアとハードウェアの組み合わせで実現してもよい。
【0015】
(1)第1の実施形態
第1の実施形態について
図1から
図7を参照しながら説明する。
<形状計測システム1の構成例>
図1および
図2はそれぞれ、本実施形態による形状計測システム1の概略構成例を示す上面図および正面図である。
【0016】
形状計測システム1は、歯車100を計測対象とし、歯車全周形状合成時の位置合わせに用いる形状既知の基準治具101と、歯車100と基準治具101の固定機構(図示せず)と、回転ステージ102と、直動ステージ103と、コントローラ104と、コンピュータ105と、光切断法を用いて歯車100と基準治具101の形状を計測する光学センサ201および202と、を備える。なお、ここではコントローラ104とコンピュータ105とを分けているが、コンピュータ105がコントローラ104の機能を備えるように構成してもよい。また、本実施形態では光学センサを2個設けているが、3個以上設けてもよい。
【0017】
歯車100の材質は、例えば鋼とすることができる。歯車諸元は、例えばモジュール数15、歯数12、高さ60mm、および精度N9級とすることができる。当該例示の歯車諸元の場合、歯先円直径は215.8mm、歯たけは33.7mmであり、歯形の許容誤差は60μm、歯筋の許容誤差は36μmと定まる。直径の精度は一般公差程度であり、歯車100の場合は公差200μmである。
【0018】
光学センサ201および202は、歯車100の異なる向き(側面)の歯面を計測するように配置される。例えば、本実施形態においては、光学センサ201および202は、半導体レーザなどを含む光出射部(光源)と、投光レンズおよび受光レンズを含む光学系と、受光レンズによって合焦された光を受光する受光部(受光素子)と、を含む光学装置である。本実施形態では、光学センサ201および202は、基準治具101の中心Oを通りy軸(直動ステージ103の移動方向)に平行な直線12を挟んで線対称に配置される。また、光学センサ201と歯車100の歯底の距離、すなわち
図1の線分S1-R1は180mmとしている。同じく光学センサ202と歯車100の歯底間の線分S2-R1’も180mmとする。光学センサ201および202は、計測精度を統一するため、同一のセンサとするのが望ましい。さらに、光学センサ201および光学センサ202のリニアリティは±0.01%である。歯車100の歯たけが33.7mmの場合、光軸21a方向の計測精度は±3.37μmとなる。計測精度は、歯形、歯筋、直径の公差の1/10以下のため、光学センサ201および光学センサ202は十分な計測精度を持つと言える。
【0019】
歯車100は、基準治具101の歯車載置面108上に設置され、基準治具101に固定される(固定機構については図示せず)。基準治具101は、歯車100の歯数と同数の頂点をもつ形状既知の正多角柱であり、本実施形態では正十二多角柱としている。また、基準治具101は、当該多角柱の底面(上面)を歯車載置面108として有する。なお、光学センサ201および光学センサ202は歯車100と基準治具101とを計測するため、光軸21a方向の計測レンジMR1に歯車100の歯筋T1-R1と基準治具101の輪郭が収まる必要がある。同様に、光学センサ202の光軸22a方向の計測レンジMR2に歯車100の歯筋T1’-R1’と基準治具101の輪郭が収まる必要がある。本実施形態では、計測レンジMR1およびMR2は80mmであるため、基準治具101の向かい合う辺の長さを220mmとし、計測レンジMR1およびMR2内に、歯車100の歯筋T1-R1および歯筋T1’-R1’と基準治具101の輪郭が収まるように、基準治具101の上に歯車100を設置する。
【0020】
また、基準治具101の高さは30mm、形状の精度は歯車直径公差の1/10程度、すなわち20μmである。歯車100と基準治具101は同一の光学センサで計測するため、表面の反射特性は同一であることが望ましい。
【0021】
基準治具101は、回転ステージ102に搭載される。回転ステージ102の回転軸11と基準治具101の中心点Oは一致させる。回転ステージ102は、直動ステージ103に搭載される。直動ステージ103は
図1のy軸方向に駆動する。光学センサ201および202は、直動ステージ103がy軸方向に移動中に歯車100の一部を計測する。
【0022】
コンピュータ105は、後述のフローチャート(
図3参照)の処理を実行するためのプログラムをメモリ(図示せず)から読み込み、当該プログラムに基づいて必要な動作制御するようにコントローラ104に指示する。コントローラ104は、コンピュータ105から与えられた指示に応答して、回転ステージ102の回転(ロータリエンコーダの動作)、直動ステージ103の直動、光学センサ201および202の光の照射などを制御する。
【0023】
図2に示すように、光学センサ201および202は、当該センサから出射されるラインビーム21および22の広がり(放射角φ)の長手方向がz軸と平行になるように設置される。ここで、ラインビーム21および22の放射角φは例えば26.7°であり、歯車100の歯面上ではラインビーム21および22の長さ(長手方向の長さ)は約80mmとなる。また、本実施形態においては、ラインビーム21および22は、基準治具101の歯車載置面108を挟んで歯車100および基準治具101の側面に跨って照射されるようにそのライン方向の照射範囲が設定されている。これにより歯車100と基準治具101の形状を同時に計測することができる。
【0024】
<歯車計測処理>
図3は、第1の実施形態による歯車計測処理を説明するためのフローチャートである。以下の説明では、各ステップの動作主体をコントローラ104、あるいはコンピュータ105としている。なお、コンピュータ105がコントローラ104の機能を備える場合には、動作主体はコンピュータ105となる。
【0025】
(i)ステップS101
ユーザ(オペレータ)が計測対象の歯車100を基準治具101に載置して固定した後、コンピュータ105の入力デバイスを用いて計測開始の指示を入力すると、コントローラ104は、計測開始の指令とともに1回の計測処理における直動ステージ103の一計測処理時移動距離(一移動ステップ)の情報をコンピュータ105から受け取り、光学センサ201および202、回転ステージ102、および直動ステージ103の動作を初期化する。
【0026】
(ii)ステップS102
コントローラ104は、直動ステージ103と光学センサ201および202を制御し、歯車100と基準治具101を
図1のy軸方向に一移動ステップ分の距離だけ直進させながら、歯車100の歯面と基準治具101の部分形状を計測する。計測範囲は、一移動ステップ分の距離に対応し、少なくとも歯車100の1歯分および基準治具101の1つの頂点を含む範囲とする。コントローラ104は、当該1回の計測処理で取得したデータ(基準治具101の計測データおよび歯車100の計測データ)をコンピュータ105に送る。コンピュータ105は、受け取った計測データを、全データを取得するまでメモリ(図示せず)に格納しておく。
【0027】
(iii)ステップS103
コンピュータ105は、計測処理が歯車100の全周分について終了したか確認する。歯車100の全周分の計測データを取得している場合(ステップS103でYesの場合)、処理はS105に移行する。まだ歯車100の全周分の計測データを取得していない場合(ステップS103でNoの場合)、処理はS104に移行する。
【0028】
(iv)ステップS104
コントローラ104は、コンピュータ105からの指令に応答して、回転ステージ102を制御し、回転軸11を中心に歯車100と基準治具101を任意の角度分回転させる。当該回転角は、例えば、歯車100の歯数Nに基づき、360°/Nとすることができる。歯数N=12の場合、360°/12=30°となる。回転角を360°/Nとして1歯ずつ計測することで、歯車100の全ての歯に対してラインビーム21および22の入射条件が同一となる。上述のように回転角は任意の角度を採用することができるが、回転角度を360°/Nとすることにより、歯車100の各歯と光学センサ201または光学センサ202との位置関係に各計測回で再現性を持たせることができるため、各歯を同一の光学条件で計測することができるようになる。つまり、歯車100の全ての歯に対して、計測条件が同一となる。
【0029】
(v)ステップS105
コンピュータ105は、コントローラ104から歯車全周分の計測データを受け取ったことを確認した場合には、計測処理を終了する。
【0030】
(vi)ステップS106
コンピュータ105は、計測して得られた歯車100の各部分形状を合成し、歯車全周形状を取得する。このとき、ステップS102にて歯車100と同時に計測した基準治具101の部分形状が歯車全周形状合成時の位置合わせの基準として用いられる。
【0031】
<歯車全周形状の合成処理>
図4から
図7を参照して、歯車全周形状の合成処理について説明する。
図4は、
図3のステップS102で光学センサ201および光学センサ202が計測した、歯車100と基準治具101の任意の断面の計測結果を示す図である。
図4において、点線は歯車100と基準治具101の実形状を示し、実線は歯車100と基準治具101の計測範囲を示す。
図3のステップS102にて直動ステージ103はy軸方向に送られ、光学センサ201および光学センサ202はx軸方向にラインビーム21およびラインビーム22を照射している。ただし、
図4では直動ステージ103、光学センサ201、光学センサ202、ラインビーム21、およびラインビーム22は省略されている。
【0032】
ステップS102で計測する範囲は、
図4のy方向約40mmの範囲A1および範囲A1’(直動ステージの一移動ステップに等しい)である。光学センサ201で計測した基準治具101の計測形状301は、頂点V1を含むB1-V1-C1となり、歯車100の計測形状401は歯筋R1-T1を含むBg1-R1-T1-Cg1となる。また、光学センサ202で計測した基準治具101の計測形状301’は、頂点V6を含むB1’-V6-C1’となる。歯車100の計測形状401’は、歯筋R1’-T1’を含むBg1’-R1’-T1’-Cg1’となる。
【0033】
図5は、光学センサ201で計測した歯車100および基準治具101の部分形状データを合成する概念を示す図である。点群合成用の仮想空間上(演算座標上)には、基準治具101の既知の輪郭形状101’が描画されている。
図5では輪郭形状101’は点線で示されている。
図3のステップS102で計測した基準治具101の計測形状301は、仮想空間上の輪郭形状101’の頂点V1を含む領域と重なり合うように座標変換される。つまり、例えば、まず、基準治具101の頂点V1の計測データ(座標)を輪郭形状101’上の頂点V1に対応する点(座標)に重ねるための平行移動量が算出される。次に、計測データによる線分V1-C1を輪郭形状101’における線分V1-C1に対応する線分に重ねるための回転移動量(回転角度)が算出される。この平行移動量と回転移動量が各回の計測データに関して算出され、各回の計測データに対する座標変換値となる。そして、歯車100の部分形状401に対しても、基準治具の計測形状301(部分計測形状)と同様の座標変換が実行される。以下、同様に基準治具101の頂点V2~V12を計測範囲に含む歯車100および基準治具101の部分形状データが、輪郭形状101’を基準に合成される。以上の処理により、光学センサ201が計測する歯車100の歯面形状を合成することが可能となる。
【0034】
また、光学センサ202で計測する歯面に対しても光学センサ201の計測する歯面と同様の合成処理が実行される。
図6は、光学センサ202で計測した歯車100および基準治具101の部分形状データを合成する概念を説明するための図である。
図6に示されるように、点群合成用の仮想空間上には、基準治具101の既知の輪郭形状101’が点線で描画されている。
図3のステップS102で計測した基準治具101の計測形状301’(部分計測形状)は、仮想空間上で輪郭形状101’の頂点V6を含む領域と重なり合うように座標変換される。この時、歯車100の部分形状401’に対しても基準治具101の計測形状301’と同様の座標変換が実行される。以下、同様に、基準治具101の頂点V7~V12、V1~V5を計測範囲に含む歯車100および基準治具101の部分形状が、輪郭形状101’を基準に合成される。以上により、光学センサ202が計測する歯車100の歯面形状を合成することが可能となる。
【0035】
図7は、光学センサ201および光学センサ202で計測した、歯車100および基準治具101の部分形状データを合成して得られる歯車100の全周形状(例)を示す図である。
図7からは、歯車100の計測形状100’は、
図5および
図6に示す歯車片面の全周形状を合成した形状となっていることがわかる。このように、光学センサ201および光学センサ202で計測した部分形状データに対し、共通の基準治具101を位置合わせの基準とするため、歯車の歯面両面の全周形状を合成することができるようになる。
【0036】
<第1の実施形態の効果>
第1の実施形態によれば、以下の効果を得られる。
(i)歯車100を直進させて計測することで、歯車サイズに依らず計測精度が一定となる。
(ii)歯車100の部分データを合成する際に基準治具101を位置合わせの基準とすることで、歯車100の全周形状の正確な評価が可能となる。
【0037】
(2)第2の実施形態
続いて、第2の実施形態として、センサの配置を変更した例について説明する。
【0038】
<形状計測システム1Aの構成例>
(i)全体構成例について
図8は、第2の実施形態による形状計測システム1Aの概略構成例を示す図(上面図)である。
【0039】
形状計測システム1Aは、歯車100を計測対象とし、歯車全周形状合成時の位置合わせに用いる形状既知の基準治具101aと、歯車100と基準治具101aの固定機構(図示せず)と、回転ステージ102と、コントローラ104と、コンピュータ105と、歯車100と基準治具101の形状を計測する光学センサ201および202と、光学センサ201および202をz軸方向に駆動する直動ステージ106および107と、を備える。なお、ここではコントローラ104とコンピュータ105とを分けているが、コンピュータ105がコントローラ104の機能を備えるように構成してもよい。また、本実施形態では光学センサを2個設けているが、3個以上設けてもよい。
【0040】
歯車100の寸法、形状、および材質は、第1の実施形態のそれと同様とする。基準治具101aは、歯車100の歯数と同数の頂点をもつ形状既知の正多角柱であり、第2の実施形態では正十二多角柱としている。
【0041】
また、光学センサ201および202の仕様は、第1の実施形態のそれらと同様とする。光学センサ201および202は、当該センサから出射されるラインビーム21および22の広がり(放射角ψ)の長手方向が
図8のy軸と平行になるように設置される。光学センサ201および202は、歯車100の異なる向き(側面)の歯面を計測する。本実施形態では、光学センサ201および光学センサ202は、基準治具101aの中心Oaを通り、y軸に平行な直線12aを挟んで線対称に配置される。
【0042】
歯車100は、基準治具101aの上に設置され、基準治具101aに固定される(固定機構については図示せず)。基準治具101aは、中心点Oaが回転ステージ102の回転軸11と一致するように回転ステージ102に搭載される。
【0043】
(ii)配置関係および寸法について
図9は、形状計測システム1Aの歯車100周辺の拡大図(上面図)である。
図9を用いて、光学センサ201および202と歯車100および基準治具101aとの配置関係(例)、並びに基準治具101aの寸法(例)について説明する。
【0044】
第2の実施形態では、光学センサ201は、主光軸21aが歯車100の歯先の頂点T1を通り、S1-T1が90mmとなるように配置される。同様に、光学センサ202は、主光軸22aが歯車100の歯先の頂点T1’を通り、S2-T1’が90mmとなるように配置される。
【0045】
光学センサ201によって歯車100および基準治具101aを計測するためには、光軸21a方向の光学センサ201の計測レンジMR1に歯車100の歯筋T1-R1および基準治具101aの輪郭が収まる必要がある。同様に、光軸22a方向の光学センサ202の計測レンジMR2に歯車100の歯筋T1’-R1’と基準治具101aの輪郭が収まる必要がある。本実施形態では、計測レンジMR1およびMR2は80mmとしているため、基準治具101aの対角線の長さを220mmとし、計測レンジMR1内に歯筋T1-R1と基準治具101aの輪郭を収め、計測レンジMR2の範囲内に、歯筋T1’-R1’と基準治具101aの輪郭を収めている。
【0046】
また、基準治具101aの頂点を位置合わせの基準点として用いるため、ラインビーム21のy軸方向の照射範囲に基準治具101aの頂点V1と歯車100の歯筋T1-R1が含まれる必要がある。同様に、ラインビーム22のy軸方向の照射範囲に基準治具101aの頂点V5と歯車100の歯筋T1’-R1’が含まれる必要がある。
【0047】
以上のような条件を満たすように基準治具101aと歯車100が配置される。また、基準治具101aの高さは30mmで、形状の精度は歯車直径公差の1/10程度、すなわち20μmである。なお、歯車100と基準治具101aは同一の光学センサで計測するため、表面の反射特性は同一であることが望ましい。
【0048】
(iii)正面構成例について
図10は、第2の実施形態による計測システム1Aの正面構成例を示す図である。光学センサ201および202はそれぞれ、直動ステージ106および107に固定され、z軸方向に移動し、歯車100および基準治具101aの形状を計測する。光学センサ201は、その計測範囲31が歯車100および基準治具101aを含むようにz軸方向に移動制御される。同様に光学センサ202も、その計測範囲32が歯車100および基準治具101aを含むようにz軸方向に移動制御される。
【0049】
<歯車計測処理>
図11は、第2の実施形態による歯車計測処理を説明するためのフローチャートである。以下の説明では、各ステップの動作主体をコントローラ104、あるいはコンピュータ105としている。コンピュータ105がコントローラ104の機能を備える場合には動作主体はコンピュータ105である。
【0050】
(i)ステップS201
ユーザ(オペレータ)が計測対象の歯車100を基準治具101aに載置して固定した後、コンピュータ105の入力デバイスを用いて計測開始の指示を入力すると、コントローラ104は、計測開始の指令とともに1回の計測処理における直動ステージ106および107の一計測処理時移動距離(計測範囲31および32)の情報をコンピュータ105から受け取り、光学センサ201および202、回転ステージ102、および直動ステージ106および107の動作を初期化する。
【0051】
(ii)ステップS202
コントローラ104は、直動ステージ106および107と光学センサ201および202を制御し、直動ステージ106および107で光学センサ201および202を
図10のz軸方向に所定距離分だけ直進させながら、歯車100の歯面と基準治具101aの部分形状を計測する。直動ステージ106および107のz軸方向の移動距離は、計測範囲31および32(計測範囲31と計測範囲32は同一範囲)に対応する距離である。つまり、1回の計測動作により、ラインビーム21で歯車100の歯筋T1-R1と基準治具101aの頂点V1およびそれに隣接する辺の少なくとも一部を、ラインビーム22で歯車100の歯筋T1’-R1’と基準治具101aの頂点V5およびそれに隣接する辺の少なくとも一部を、計測範囲31および32の高さ分のデータが取得できるように、直動ステージ106および107を用いて光学センサ201および202を移動させることになる。
【0052】
コントローラ104は、当該1回の計測処理で取得したデータ(基準治具101aの計測データおよび歯車100の計測データ)をコンピュータ105に送る。コンピュータ105は、受け取った計測データを、全データを取得するまでメモリ(図示せず)に格納しておく。
【0053】
(iii)ステップS203
コンピュータ105は、計測処理が歯車100の全周分について終了したか確認する。歯車100の全周分の計測データを取得している場合(ステップS203でYesの場合)、処理はステップS205に移行する。まだ歯車100の全周分の計測データを取得していない場合(ステップS203でNoの場合)、処理はステップS204に移行する。
【0054】
(iv)ステップS204
コントローラ104は、コンピュータ105からの指令に応答して、回転ステージ102を制御し、回転軸11を中心に歯車100と基準治具101aを任意の角度分回転させる。当該回転角は、例えば、歯車100の歯数Nに基づき、360°/Nとすることができる。歯数N=12の場合、360°/12=30°となる。回転角を360°/Nとして1歯ずつ計測することで、歯車100の全ての歯に対してラインビーム21および22の入射条件が同一となる。すなわち、歯車100の全ての歯に対して、計測条件が同一となる。
【0055】
なお、上述のように回転角は任意の角度を採用することができるが、回転角度を360°/Nとすることにより、歯車100の各歯と光学センサ201または光学センサ202との位置関係に各計測回で再現性を持たせることができるため、歯車100の全ての歯に対してラインビーム21、22の入射条件が同一となる。すなわち、歯車100の全歯に対して、光学条件(計測条件)を同じにすることができる。
【0056】
(v)ステップS205
コンピュータ105は、コントローラ104から歯車全周分の計測データを受け取ったことを確認した場合には、計測処理を終了する。
【0057】
(vi)ステップS106
コンピュータ105は、計測して得られた歯車100の各部分形状を合成し、歯車全周形状を取得(描画)する。このとき、ステップS102にて歯車100と同時に計測した基準治具101aの部分形状が歯車全周形状合成時の位置合わせの基準として用いられる。なお、歯車100の全周形状の合成方法は第1の実施形態と同様であるため説明は省略する。
【0058】
<第2の実施形態の効果>
第2の実施形態によれば、第1の実施形態による上記効果(i)および(ii)に加え、歯車100の高さ(歯筋)方向の計測範囲の制約が緩和される。例えば、歯車100の厚み(高さ)が大きくなっても光学センサ201および202のz方向の可動範囲を調整(高く)すれば当該歯車100を計測することができる。これは、第1の実施形態の場合は、歯車100の高さ方向の計測範囲がラインビーム21および22の広がり角ψに依存していたが、第2の実施形態の場合は直動ステージ106および107の稼働範囲であれば、計測可能となるためである。
【0059】
(3)変形例
第1および第2の実施形態では外歯歯車の形状計測処理について説明したが、本開示の技術を用いて内歯歯車の形状も計測することができる。より具体的には、内歯歯車の形状を計測する際には、光学センサ201および202のxy平面に対する角度を、基準治具101あるいは101aと内歯歯車の両方に光を照射することができるような角度に調整することにより、上述の全周形状合成処理を適用することが可能となる。
【0060】
(4)まとめ
(i)本開示の技術によれば、輪郭形状が既知の基準治具101あるいは101aに計測対象の歯車100を載置し、少なくとも1つの光学センサ201あるいは202を用いて基準治具101と歯車100に対して光を照射して計測を行う。そして、コンピュータ105は、基準治具の計測データの既知の輪郭形状のデータに対する位置合わせデータを歯車の計測データに適用することにより、歯車の形状を取得する。ここで、基準治具の歯車載置面108は、歯車の外径で画定される円よりも大きいものを用いるとよい。また、基準治具101あるいは101aの歯車載置面108の形状は、歯車100の歯数と同数の頂点をもつ正多角形とすることができる。
【0061】
本実施形態では、輪郭形状が既知の基準治具101あるいは101aの計測データを既知の輪郭形状データに位置合わせすることによって基準治具101あるいは101aの計測データの既知の輪郭形状データからのずれ量(演算座標上での平行移動量および回転移動量:座標変換値)を算出し、それを歯車100の計測データに適用するので、基準治具101あるいは101aへの歯車100の載置位置が多少ずれていたとしても正確に歯車100の全周形状を合成することが可能となる。
【0062】
(ii)本実施形態による形状計測システム1あるいは1Aにおいても、従来技術と同様に、基準治具101あるいは101aを載置し、歯車100および基準治具101あるいは101aを回転させる回転ステージ(ロータリエンコーダを含む)102を用いることができる。この場合、コンピュータ105は、回転ステージ102を任意の角度だけ回転させて光学センサ201および202を動作させることにより、基準治具101あるいは101aと歯車100の1回分の計測データを取得し、任意の角度の回転と光学センサ201および202による計測動作を繰り返して基準治具101あるいは101aと歯車100の全周の計測データを取得する。そして、コンピュータ105は、基準治具101あるいは101aの全周の計測データの既知の輪郭形状のデータに対する位置合わせデータ(演算座標上での平行移動量および回転移動量:座標変換値)を歯車100の全周の計測データに適用することにより、歯車100の全周形状を取得する。このように基準治具101あるいは101aの計測データを位置合わせに用いるので、回転ステージ102とロータリエンコーダを用いたとしてもロータリエンコーダの角度誤差による歯車全周形状の合成精度への悪影響を排除することができる。このため、歯車100のサイズに依存せず、高い精度で歯車全周形状を評価できるようになる。
【0063】
(iii)本実施形態による形状計測システム1あるいは1Aにおいては、回転ステージ102と、光学センサ201および202からの光の光軸と直交する方向に、歯車100を載置した基準治具101あるいは101aと光学センサ201および202とを相対的に直進移動させる直動ステージ103あるいは106および107と、を用いることができる。この場合、コンピュータ105は、直動ステージ103あるいは106および107を直進移動させながら光学センサ201および202を動作させることにより、歯車100の一部と基準治具101あるいは101aの一部の計測データを取得し、その後、回転ステージ102を任意の角度だけ回転させて計測個所を変更する。そして、コンピュータ105は、局所的な計測データの取得と回転による計測個所の変更を繰り返して歯車100および基準治具101あるいは101aの全周の計測データを取得する。全周の計測データを取得すると、コンピュータ105は、基準治具101あるいは101aの全周の計測データの既知の輪郭形状のデータに対する位置合わせデータ(演算座標上での平行移動量および回転移動量:座標変換値)を歯車100の全周の計測データに適用することにより、歯車100の全周形状を取得する。このように歯車100また光学センサ201および202を直進させて3次元形状を計測するため、計測精度は光学センサ201および202と直動ステージ103あるいは106および107の精度に依存し、歯車100の直径には依存しない。すなわち、歯車サイズに依らず高い精度で歯形、歯筋の計測が可能となる。
【0064】
第1の実施形態では、直動ステージ103は、基準治具101の歯車載置面108と平行な方向(y軸方向)に、歯車100を載置した基準治具101を直進移動させる。そして、光学センサ201および202が出射する光は、直動ステージ103の移動方向(y軸方向)に所定角度φの広がりを有するように構成される。
【0065】
第2の実施形態では、直動ステージ106および107は、基準治具101aおよび歯車100の高さ方向(z軸方向)に光学センサ201および202を直進移動させる。そして、光学センサ201および202が出射する光は、直動ステージ106および107の移動方向に所定角度ψの広がりを有するように構成される。
【0066】
(iv)本実施形態の機能は、ソフトウェアのプログラムコードによっても実現できる。この場合、プログラムコードを記録した記憶媒体をシステム或は装置に提供し、そのシステム或は装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、及びそれを記憶した記憶媒体は本開示を構成することになる。このようなプログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどが用いられる。
【0067】
また、プログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現されるようにしてもよい。さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータ上のメモリに書きこまれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータのCPUなどが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現されるようにしてもよい。
【0068】
さらに、実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを、ネットワークを介して配信することにより、それをシステム又は装置のハードディスクやメモリ等の記憶手段又はCD-RW、CD-R等の記憶媒体に格納し、使用時にそのシステム又は装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が当該記憶手段や当該記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行するようにしても良い。
【0069】
ここで述べたプロセス及び技術は本質的に如何なる特定の装置に関連することはなく、コンポーネントのいかなる相応しい組み合わせによってでも実装できる。さらに、汎用目的の多様なタイプのデバイスを用いることができる。ここで述べた方法のステップを実行するのに、専用の装置を構築してもよい。また、実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。本開示は、具体例に関連して記述したが、これらは、すべての観点において限定のためではなく説明のためである。本分野にスキルのある者には、本開示を実施するのに相応しいハードウェア、ソフトウェア、及びファームウエアの多数の組み合わせがあることが解るであろう。例えば、記述したソフトウェアは、アセンブラ、C/C++、perl、Shell、PHP、Java(登録商標)等の広範囲のプログラム又はスクリプト言語で実装できる。
【0070】
さらに、上述の実施形態において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。全ての構成が相互に接続されていても良い。
【0071】
加えて、本技術分野の通常の知識を有する者には、本開示のその他の実装がここに開示された本開示の明細書及び実施形態の考察から明らかになる。明細書と具体例は典型的なものに過ぎず、本開示の範囲と精神は後続する特許請求範囲で示される。
【符号の説明】
【0072】
1、1A 形状計測システム
11 回転軸
100 歯車
101、101a 基準治具
102 回転ステージ
103、106、107 直動ステージ
104 コントローラ
105 コンピュータ
108 歯車載置面
201、202 光学センサ
21、22 ラインビーム
21a、22a ラインビーム光軸
301、301’ 基準治具の部分計測形状
401、401’ 歯車の部分計測形状