IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社3D body Labの特許一覧

特開2024-25190型紙作成装置、型紙作成方法、及びコンピュータプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025190
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】型紙作成装置、型紙作成方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   A41H 3/04 20060101AFI20240216BHJP
   A41H 43/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
A41H3/04
A41H43/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128432
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】516195904
【氏名又は名称】iBODY株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120813
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】林 和人
(57)【要約】
【課題】オーダメイドのような特定のユーザに適した衣服用の型紙を、オペレータの技量に左右されることなく、作成できるようにする。
【解決手段】予め準備しておいた三次元基準型紙を、ユーザの三次元測定結果より得られた三次元ユーザモデル171と、標準的な身長及び体型に応じた三次元基準人体モデル71の比較結果に基づき、三次元ユーザモデル171のユーザモデル体表面171aに応じた形状へ変形することにより、三次元ユーザ型紙を作成する。その作成した三次元ユーザ型紙を二次元に展開して仮二次元ユーザ型紙を作成する。その仮二次元ユーザ型紙の輪郭に含まれる頂点の位置を修正して二次元ユーザ型紙を作成する。
【選択図】図20
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの三次元測定の結果より作成された三次元ユーザモデルに基づいて、そのユーザに応じた型紙の作成を行う型紙作成装置において、
身長及び体型に応じて分類した複数の二次元基準型紙を格納した基準型紙テーブルと、
二次元基準型紙を三次元基準人体モデルの体表面に応じた三次元形状へと変形させた三次元基準型紙を記憶する手段と、
前記三次元基準型紙を前記三次元ユーザモデルの体表面に応じた形状へ変形することにより、三次元ユーザ型紙を作成する三次元ユーザ型紙作成手段と、
前記三次元ユーザ型紙を二次元に展開して仮二次元ユーザ型紙を作成する仮二次元ユーザ型紙作成手段と、
前記基準型紙テーブルから、前記ユーザに応じた二次元基準型紙を特定する二次元基準型紙特定手段と、
特定した二次元基準型紙の輪郭に含まれる頂点の位置に基づき、前記仮二次元ユーザ型紙の輪郭に含まれる頂点の位置を移動することにより、前記仮二次元ユーザ型紙の輪郭形状を変形して二次元ユーザ型紙を作成する二次元ユーザ型紙作成手段と
を備えることを特徴とする型紙作成装置。
【請求項2】
前記二次元基準型紙特定手段は、前記ユーザに応じた二次元基準型紙として、前記基準型紙テーブルから、前記仮二次元ユーザ型紙作成手段が作成した仮二次元ユーザ型紙と最もサイズ及び形状が近い二次元基準型紙を特定する請求項1に記載の型紙作成装置。
【請求項3】
前記二次元基準型紙特定手段は、前記ユーザに応じた二次元基準型紙として、前記基準型紙テーブルから、前記ユーザの三次元測定の結果に基づく身長及び体型に応じた二次元基準型紙を特定する請求項1に記載の型紙作成装置。
【請求項4】
前記三次元ユーザ型紙作成手段は、前記三次元ユーザモデルの体表面における型紙装着範囲の表面積に基づいて、前記三次元基準型紙を変形する請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の型紙作成装置。
【請求項5】
身長及び体型に応じて分類した複数のゆとり量データを格納するゆとり量データテーブルと、
前記ゆとり量データテーブルから、前記ユーザの三次元測定の結果に基づく身長及び体型に応じたゆとり量データを特定する手段と
を備え、
前記三次元ユーザ型紙作成手段は、特定したゆとり量データが人体の部位ごとに規定するゆとり量を含めて、三次元基準型紙を変形する請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の型紙作成装置。
【請求項6】
外部の通信端末から送られてくるログイン情報の受信に伴い、ログインに係る処理を行う手段と、
ログインに係る処理に基づくログイン完了の通知を、前記外部の通信端末へ送信する手段と、
前記三次元ユーザ型紙作成手段が、ゆとり量を適用して、変形した三次元基準型紙を仮三次元ユーザ型紙として、前記三次元ユーザモデルに着用した状態の三次元画像データを作成する手段と、
作成した三次元画像データを、前記外部の通信端末へ送信する手段と
を備える請求項5に記載の型紙作成装置。
【請求項7】
前記外部の通信端末から送られる修正無し通知の受信の有無を判断する手段と、
修正無し通知の受信が有ったことを判断した場合、前記三次元画像データに係る仮三次元ユーザ型紙を、三次元ユーザ型紙として確定する手段と
を備える請求項6に記載の型紙作成装置。
【請求項8】
輪郭形状を変形した仮二次元ユーザ型紙の周縁の中で、水平方向又は垂直方向の直線にすべき辺部が、水平方向又は垂直方向の直線になっているか否かを判断する手段と、
水平方向又は垂直方向の直線にすべき辺部が水平方向又は垂直方向の直線になっていないことを判断した場合、その辺部の端に含まれる頂点を移動して、その辺部を水平方向又は垂直方向の直線に修正する手段と
を備える請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の型紙作成装置。
【請求項9】
型紙作成装置が、ユーザの三次元測定の結果より作成された三次元ユーザモデルに基づいて、そのユーザに応じた型紙の作成を行う型紙作成方法において、
前記型紙作成装置は、
二次元基準型紙を三次元基準人体モデルの体表面に応じた三次元形状へと変形させた三次元基準型紙を、前記三次元ユーザモデルの体表面に応じた形状へ変形することにより、三次元ユーザ型紙を作成するステップと、
前記三次元ユーザ型紙を二次元に展開して仮二次元ユーザ型紙を作成するステップと、
身長及び体型に応じて分類した複数の二次元基準型紙を格納した基準型紙テーブルから、前記ユーザに応じた二次元基準型紙を特定するステップと、
特定した二次元基準型紙の輪郭に含まれる頂点の位置に基づき、前記仮二次元ユーザ型紙の輪郭に含まれる頂点の位置を移動することにより、前記仮二次元ユーザ型紙の輪郭形状を変形して二次元ユーザ型紙を作成するステップと
を実行することを特徴とする型紙作成方法。
【請求項10】
前記型紙作成装置は、
前記ユーザに応じた二次元基準型紙として、前記基準型紙テーブルから、前記仮二次元ユーザ型紙と最もサイズ及び形状が近い二次元基準型紙を特定するステップを実行する請求項9に記載の型紙作成方法。
【請求項11】
前記型紙作成装置は、
前記ユーザに応じた二次元基準型紙として、前記基準型紙テーブルから、前記ユーザの三次元測定の結果に基づく身長及び体型に応じた二次元基準型紙を、特定するステップを実行する請求項9に記載の型紙作成方法。
【請求項12】
前記型紙作成装置は、
身長及び体型に応じて分類した複数のゆとり量データを格納するゆとり量データテーブから、前記ユーザの三次元測定の結果に基づく身長及び体型に応じたゆとり量データを特定するステップと、
特定したゆとり量データが人体の部位ごとに規定するゆとり量を含めて、三次元基準型紙を変形するステップと
を実行する請求項9乃至請求項11のいずれか1項に記載の型紙作成方法。
【請求項13】
前記型紙作成装置は、
外部の通信端末から送られてくるログイン情報の受信に伴い、ログインに係る処理を行うステップと、
ログインに係る処理に基づくログイン完了の通知を、前記外部の通信端末へ送信するステップと、
ゆとり量を含ませて変形した三次元基準型紙を仮三次元ユーザ型紙として、前記三次元ユーザモデルに着用した状態の三次元画像データを作成するステップと、
作成した三次元画像データを、前記外部の通信端末へ送信するステップと
を実行する請求項12に記載の型紙作成方法。
【請求項14】
前記型紙作成装置は、
輪郭形状を変形した仮二次元ユーザ型紙の周縁の中で、水平方向又は垂直方向の直線にすべき辺部が、水平方向又は垂直方向の直線になっているか否かを判断するステップと、
水平方向又は垂直方向の直線にすべき辺部が水平方向又は垂直方向の直線になっていないことを判断した場合、その辺部の端に含まれる頂点を移動して、その辺部を水平方向又は垂直方向の直線に修正するステップと
を実行する請求項9乃至請求項11のいずれか1項に記載の型紙作成方法。
【請求項15】
コンピュータに、ユーザの三次元測定の結果より作成された三次元ユーザモデルに基づき、そのユーザに応じた型紙の作成を行わせるためのコンピュータプログラムにおいて、
前記コンピュータに、
二次元基準型紙を三次元基準人体モデルの体表面に応じた三次元形状へと変形させた三次元基準型紙を、前記三次元ユーザモデルの体表面に応じた形状へ変形することにより、三次元ユーザ型紙を作成するステップと、
前記三次元ユーザ型紙を二次元に展開して仮二次元ユーザ型紙を作成するステップと、
身長及び体型に応じて分類した複数の二次元基準型紙を格納した基準型紙テーブルから、前記ユーザに応じた二次元基準型紙を特定するステップと、
特定した二次元基準型紙の輪郭に含まれる頂点の位置に基づき、前記仮二次元ユーザ型紙の輪郭に含まれる頂点の位置を移動することにより、前記仮二次元ユーザ型紙の輪郭形状を変形して二次元ユーザ型紙を作成するステップと
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項16】
前記コンピュータに、
前記ユーザに応じた二次元基準型紙として、前記基準型紙テーブルから、前記仮二次元ユーザ型紙と最もサイズ及び形状が近い二次元基準型紙を特定するステップを実行させる請求項15に記載のコンピュータプログラム。
【請求項17】
前記コンピュータに、
前記ユーザに応じた二次元基準型紙として、前記基準型紙テーブルから、前記ユーザの三次元測定の結果に基づく身長及び体型に応じた二次元基準型紙を、特定するステップを実行させる請求項15に記載のコンピュータプログラム。
【請求項18】
前記コンピュータに、
身長及び体型に応じて分類した複数のゆとり量データを格納するゆとり量データテーブから、前記ユーザの三次元測定の結果に基づく身長及び体型に応じたゆとり量データを特定するステップと、
特定したゆとり量データが人体の部位ごとに規定するゆとり量を含めて、三次元基準型紙を変形するステップと
を実行させる請求項15乃至請求項17のいずれか1項に記載のコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの三次元測定の結果に基づき作成した三次元人体モデルを用いて、オーダーメイドのような特定のユーザに適した衣服用の型紙を作成するものであり、特に、オペレータの技量に頼ることなく、現実的な着用感を確保した衣服用の型紙を作成できるようにした型紙作成装置、型紙作成方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、衣服を構成する布片を布地から裁断するために型紙が用いられている。型紙の作成には一般に、その元になる原型と称されるものが利用されており、このような原型に基づき型紙の形状や寸法等が決められる。原型には複数の種類が存在し、その例としては、ドレメ式や文化式のものなどが知られており、これらの原型は、衣服の着やすさを確保するために基本的なゆとり量が含まれていると共に、作成される衣服にシワや撓みなどが生じにくく、且つ、布片同士の縫い合わせのしやすさなどにも配慮されたものになっている。
【0003】
また、最近では、コンピュータを用いた三次元的な処理を行うことで型紙を作成することも試みられている。例えば、下記の特許文献1では、三次元の衣服モデルを三次元の人体モデル表面の形状に沿って作成し、オペレータの操作により、衣服モデルのゆとり量を調整してから、衣服モデルに切り込み線を入れて二次元平面へ展開することで、型紙が作成される(特許文献1の段落0068、0072、0093-0095、0102、0107等の記載参照)。なお、特許文献1では、作成した型紙の形状変更も行っており、作成した型紙を三次元画像に変換して三次元の人体モデルに着せ付けて、オペレータの操作により、その着せ付けられた衣服モデルに修正を加えると、その修正に合わせて、型紙モデルの形状も変更される(特許文献1の段落0111-0113等の記載参照)。
【0004】
さらに、下記の特許文献2では、型紙に相当する衣料品パーツデータをもとに、衣服に応じた衣料品形状データを作成し、その衣料品形状データを、変形前後の人体概略形状データを用いて、ウエスト部にゆとりを持たせるなどの変形を行うことにより、変形衣料品形状データを作成し、その変形衣料品形状データを平面展開して型紙データが作成される(特許文献2の段落0038-0042等の記載参照)。なお、特許文献2では、型紙に応じた型紙CADデータから衣服の三次元形状に応じた衣料品形状データを作成して人体形状データに着せ付けることで、衣服の着用状態をシミュレートすることも開示される(特許文献2の段落0029等の記載参照)。
【0005】
さらにまた、下記の特許文献3では、コンピュータ上で三次元のトルソ(人台)の表面に、二次元の型紙を配置して、トルソの表面に三次元の型紙を仮想的に配置した表示を得ている(特許文献3の図13等参照)。
【0006】
また、従来より、オーダーメイドのように、特定のユーザの体型に応じた衣服(洋服)を作成するため、ユーザを三次元測定し、その三次元測定の結果に基づき、ユーザの体型を三次元的に表した三次元人体モデルを作成し、その三次元人体モデルを用いて、ユーザの体型に応じた型紙を作成することも提案されている。
【0007】
下記の特許文献4は、三次元人体計測装置によるユーザの測定結果から、三次元のヌードボディモデルを作製し、そのヌードボディモデルに所要のゆとり値を導入して三次元のダミーボディモデルを作製し、そのダミーボディモデルを二次元に展開し、そこからアパレルCADを用いて二次元の型紙パターンを作成することが開示される(特許文献4の段落0027、0031-0036等の記載参照)。
【0008】
また、下記の特許文献5では、三次元スキャナにより読み込まれた人体データを用いた三次元の人台データ(三次元の人体形状モデル)に、二次元の型紙データを三次元形状に組み上げて作成した三次元の衣服を着せつけて、その着せつけた衣服を変形してから、切断線を入力して二次元に展開することで型紙を作成すること等が開示される(特許文献5の段落0030、0033、0040、0041、0056、0113-0122等の記載参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004-70519号公報
【特許文献2】特開2001-109789号公報
【特許文献3】特表2003-024261号公報
【特許文献4】特開2003-342818号公報
【特許文献5】特開2002-245115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した特許文献1では、三次元の衣服を二次元に展開して型紙を作成するにあたり、オペレータの操作指示により、切り込み線を入れて展開するので、作成される型紙の輪郭形状は、オペレータの技能に依存することになり、また、作成された型紙の形状を変更するのも、オペレータにより行われることから、結局、適切な形状の型紙を作成するには、オペレータに一定の技量が要求される問題がある。さらに、特許文献1では、切り込み線の入れ方によっては、縫い合わせ等が困難な型紙になるおそれもあり、このような場合は、縫い合わせて作られた衣服に不要なシワや撓みなどが生じ、衣服を仕上げるのに用いられる型紙としては、縫製等に関し現実的な適合性が欠けるという問題もある。
【0011】
特許文献2では、人体の概略形状を三次元的に表した人体概略データ(特許文献2の図2参照)を用いて、衣料品形状データ(型紙に相当)の変形を行うので、衣料品形状データの変形も概略的なもとのなり、オーダーメイドのような特定のユーザの体型を反映させた型紙の作成には対応できないという問題がある。なお、特許文献3では、三次元のトルソに二次元の型紙を配置して三次元的な配置表示を得るに留まるので、特定のユーザに応じた型紙の作成までは行えない。
【0012】
また、特許文献4では、ユーザを三次元測定した結果から作成したダミーボディモデルについて、ワイヤーで区切られた平面を一つのパネルとして二次元に展開するので、二次元に展開した状態では、多数のパネルを配列して整えただけであり、ここから型紙パターンを作成するには、アパレルCADを用いて、各パネルをつなげて型紙の輪郭となるアウトラインを引き、更に、余分な部分は小パネルを切り取り、不足する部分は小パネルを貼り付けるなどの幾多の細かい作業が必要となるので、やはり、アパレルCADを操作するオペレータに一定の技量が要求されると共に、かなりの手間も要するという問題がある(特許文献4の段落0033-0036の記載、及び図14-16等参照)。
【0013】
さらに、特許文献4では、ヌードボディモデルに、ゆとり値を加えてダミーボディモデルを作成するが、型紙パターンの作成過程において、配列的に隙間のあるパネル同士をつなげたり、余分な小パネルを切り取ったりするので、ダミーボディモデルの作成の際に加えられたゆとり値が、適切に型紙パターンへ反映されにくいという問題もある。
【0014】
また、特許文献5では、二次元に展開する際、上述した特許文献1と同様に、オペレータにより切断線を設定する必要があるので、適切な形状の型紙を作成するには、特許文献5の場合でも、オペレータに一定の技量が要求され、さらには型紙として縫製のしやすさ等に関して不安が残るという問題がある。
【0015】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、三次元に形成した三次元基準型紙を、ユーザの三次元測定結果に基づく三次元ユーザモデルの体表面に応じた形状へと変形してから、二次元に展開するので、オペレータによる切り込み線や切断線の入力なしで、二次元の型紙を得られるようにした型紙作成装置、型紙作成方法、及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【0016】
また、本発明は、三次元測定を行ったユーザに応じた二次元基準型紙の輪郭に含まれる頂点の位置に基づき、仮二次元ユーザ型紙の頂点の位置を移動して輪郭形状を変形して整えるので、二次元基準型紙に応じた実用性も確保でき、衣服を仕上げる際にシワや撓みなどが生じにくくなり、現実的な縫い合わせ性も具備するようにした型紙作成装置、型紙作成方法、及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために本発明は、ユーザの三次元測定の結果より作成された三次元ユーザモデルに基づいて、そのユーザに応じた型紙の作成を行う型紙作成装置において、身長及び体型に応じて分類した複数の二次元基準型紙を格納した基準型紙テーブルと、二次元基準型紙を三次元基準人体モデルの体表面に応じた三次元形状へと変形させた三次元基準型紙を記憶する手段と、前記三次元基準型紙を前記三次元ユーザモデルの体表面に応じた形状へ変形することにより、三次元ユーザ型紙を作成する三次元ユーザ型紙作成手段と、前記三次元ユーザ型紙を二次元に展開して仮二次元ユーザ型紙を作成する仮二次元ユーザ型紙作成手段と、前記基準型紙テーブルから、前記ユーザに応じた二次元基準型紙を特定する二次元基準型紙特定手段と、特定した二次元基準型紙の輪郭に含まれる頂点の位置に基づき、前記仮二次元ユーザ型紙の輪郭に含まれる頂点の位置を移動することにより、前記仮二次元ユーザ型紙の輪郭形状を変形して二次元ユーザ型紙を作成する二次元ユーザ型紙作成手段とを備えることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、前記二次元基準型紙特定手段が、前記ユーザに応じた二次元基準型紙として、前記基準型紙テーブルから、前記仮二次元ユーザ型紙作成手段が作成した仮二次元ユーザ型紙と最もサイズ及び形状が近い二次元基準型紙を特定することを特徴とする。
さらに、本発明は、前記二次元基準型紙特定手段が、前記ユーザに応じた二次元基準型紙として、前記基準型紙テーブルから、前記ユーザの三次元測定の結果に基づく身長及び体型に応じた二次元基準型紙を特定することを特徴とする。
さらにまた、本発明は、前記三次元ユーザ型紙作成手段が、前記三次元ユーザモデルの体表面における型紙装着範囲の表面積に基づいて、前記三次元基準型紙を変形することを特徴とする。
【0019】
本発明は、身長及び体型に応じて分類した複数のゆとり量データを格納するゆとり量データテーブルと、前記ゆとり量データテーブルから、前記ユーザの三次元測定の結果に基づく身長及び体型に応じたゆとり量データを特定する手段とを備え、前記三次元ユーザ型紙作成手段は、特定したゆとり量データが人体の部位ごとに規定するゆとり量を含めて、三次元基準型紙を変形することを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、外部の通信端末から送られてくるログイン情報の受信に伴い、ログインに係る処理を行う手段と、ログインに係る処理に基づくログイン完了の通知を、前記外部の通信端末へ送信する手段と、前記三次元ユーザ型紙作成手段が、ゆとり量を適用して更に変形した三次元基準型紙を仮三次元ユーザ型紙として、前記三次元ユーザモデルに着用した状態の三次元画像データを作成する手段と、作成した三次元画像データを、前記外部の通信端末へ送信する手段とを備えることを特徴とする。
【0021】
さらに、本発明は、前記外部の通信端末から送られる修正無し通知の受信の有無を判断する手段と、修正無し通知の受信が有ったことを判断した場合、前記三次元画像データに係る仮三次元ユーザ型紙を、三次元ユーザ型紙として確定する手段とを備えることを特徴とする。
【0022】
さらにまた、輪郭形状を変形した仮二次元ユーザ型紙の周縁の中で、水平方向又は垂直方向の直線にすべき辺部が、水平方向又は垂直方向の直線になっているか否かを判断する手段と、水平方向又は垂直方向の直線にすべき辺部が水平方向又は垂直方向の直線になっていないことを判断した場合、その辺部の端に含まれる頂点を移動して、その辺部を水平方向又は垂直方向の直線に修正する手段とを備えることを特徴とする。
【0023】
本発明は、型紙作成装置が、ユーザの三次元測定の結果より作成された三次元ユーザモデルに基づいて、そのユーザに応じた型紙の作成を行う型紙作成方法において、前記型紙作成装置は、二次元基準型紙を三次元基準人体モデルの体表面に応じた三次元形状へと変形させた三次元基準型紙を、前記三次元ユーザモデルの体表面に応じた形状へ変形することにより、三次元ユーザ型紙を作成するステップと、前記三次元ユーザ型紙を二次元に展開して仮二次元ユーザ型紙を作成するステップと、身長及び体型に応じて分類した複数の二次元基準型紙を格納した基準型紙テーブルから、前記ユーザに応じた二次元基準型紙を特定するステップと、特定した二次元基準型紙の輪郭に含まれる頂点の位置に基づき、前記仮二次元ユーザ型紙の輪郭に含まれる頂点の位置を移動することにより、前記仮二次元ユーザ型紙の輪郭形状を変形して二次元ユーザ型紙を作成するステップとを実行することを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、前記型紙作成装置が、前記ユーザに応じた二次元基準型紙として、前記基準型紙テーブルから、前記仮二次元ユーザ型紙と最もサイズ及び形状が近い二次元基準型紙を特定するステップを実行することを特徴とする。
さらに、本発明は、前記型紙作成装置が、前記ユーザに応じた二次元基準型紙として、前記基準型紙テーブルから、前記ユーザの三次元測定の結果に基づく身長及び体型に応じた二次元基準型紙を、特定するステップを実行することを特徴とする。
【0025】
さらに、本発明は、前記型紙作成装置が、身長及び体型に応じて分類した複数のゆとり量データを格納するゆとり量データテーブから、前記ユーザの三次元測定の結果に基づく身長及び体型に応じたゆとり量データを特定するステップと、特定したゆとり量データが人体の部位ごとに規定するゆとり量を含めて、三次元基準型紙を変形するステップとを実行することを特徴とする。
【0026】
さらにまた、本発明は、前記型紙作成装置が、外部の通信端末から送られてくるログイン情報の受信に伴い、ログインに係る処理を行うステップと、ログインに係る処理に基づくログイン完了の通知を、前記外部の通信端末へ送信するステップと、ゆとり量を含ませて変形した三次元基準型紙を仮三次元ユーザ型紙として、前記三次元ユーザモデルに着用した状態の三次元画像データを作成するステップと、作成した三次元画像データを、前記外部の通信端末へ送信するステップとを実行することを特徴とする。
【0027】
そして、本発明は、前記型紙作成装置が、輪郭形状を変形した仮二次元ユーザ型紙の周縁の中で、水平方向又は垂直方向の直線にすべき辺部が、水平方向又は垂直方向の直線になっているか否かを判断するステップと、水平方向又は垂直方向の直線にすべき辺部が水平方向又は垂直方向の直線になっていないことを判断した場合、その辺部の端に含まれる頂点を移動して、その辺部を水平方向又は垂直方向の直線に修正するステップとを実行することを特徴とする。
【0028】
本発明は、コンピュータに、ユーザの三次元測定の結果より作成された三次元ユーザモデルに基づき、そのユーザに応じた型紙の作成を行わせるためのコンピュータプログラムにおいて、前記コンピュータに、二次元基準型紙を三次元基準人体モデルの体表面に応じた三次元形状へと変形させた三次元基準型紙を、前記三次元ユーザモデルの体表面に応じた形状へ変形することにより、三次元ユーザ型紙を作成するステップと、前記三次元ユーザ型紙を二次元に展開して仮二次元ユーザ型紙を作成するステップと、身長及び体型に応じて分類した複数の二次元基準型紙を格納した基準型紙テーブルから、前記ユーザに応じた二次元基準型紙を特定するステップと、特定した二次元基準型紙の輪郭に含まれる頂点の位置に基づき、前記仮二次元ユーザ型紙の輪郭に含まれる頂点の位置を移動することにより、前記仮二次元ユーザ型紙の輪郭形状を変形して二次元ユーザ型紙を作成するステップとを実行させることを特徴とする。
【0029】
また、本発明は、前記コンピュータに、前記ユーザに応じた二次元基準型紙として、前記基準型紙テーブルから、前記仮二次元ユーザ型紙と最もサイズ及び形状が近い二次元基準型紙を特定するステップを実行させることを特徴とする。
さらに、本発明は、前記コンピュータに、前記ユーザに応じた二次元基準型紙として、前記基準型紙テーブルから、前記ユーザの三次元測定の結果に基づく身長及び体型に応じた二次元基準型紙を、特定するステップを実行させることを特徴とする。
【0030】
さらにまた、本発明は、前記コンピュータに、身長及び体型に応じて分類した複数のゆとり量データを格納するゆとり量データテーブから、前記ユーザの三次元測定の結果に基づく身長及び体型に応じたゆとり量データを特定するステップと、特定したゆとり量データが人体の部位ごとに規定するゆとり量を含めて、三次元基準型紙を変形するステップとを実行させることを特徴とする。
【0031】
本発明にあっては、二次元基準型紙を三次元基準人体モデルの体表面に応じた三次元形状へと変形させた三次元基準型紙を、ユーザの三次元測定結果に基づく三次元ユーザモデルの体表面に応じた形状に変形してから二次元に展開するので、展開された段階で二次元の型紙の形状が得られるため、オペレータによる切り込み線や切断線の入力が不要となり、それにより、オペレータの操作負担等も低減される。
【0032】
また、本発明にあっては、三次元測定を行ったユーザに応じた二次元基準型紙を参照して、三次元から二次元に展開したユーザ型紙の輪郭形状を整える変形を行うので、二次元基準型紙が有する実用性も確保しやすくなり、それにより、縫いやすさや、シワの生じにくさ等も具備されるようになる。
【0033】
本発明にあっては、三次元から二次元に展開した仮二次元ユーザ型紙と最もサイズ及び形状が近い二次元基準型紙を、複数の二次元基準型紙の中から特定するので、三次元測定を行って、ユーザの体型等に応じて作成したユーザ型紙の形状を出来るだけ残しながら、二次元基準型紙が有する実用性も反映できるようになり、二次元ユーザ型紙から実際に衣服を作り上げるにあたり、現実的な縫製性や着やすさ等を確保できる。
【0034】
また、本発明にあっては、仮二次元ユーザ型紙の輪郭形状を変形する修正処理を行うのに用いる二次元基準型紙を、身長及び体型に応じて分類した複数の二次元基準型紙の中から、ユーザの三次元測定の結果に含まれる身長及び体型に基づき特定するので、ユーザの身長及び体型に基づき機械的に二次元基準型紙を選び出すことになり、型紙作成装置の処理負担を低減しながら、修正処理に用いるユーザに応じた二次元基準型紙をスムーズに特定できるようになる。
【0035】
本発明にあっては、三次元ユーザモデルの型紙装着範囲の表面積に基づいて、三次元基準型紙を変形するので、二次元に比べて複雑な形状となる三次元で変形処理を行う場合でも、表面積を指標にして三次元形状の変形処理を補完できるようになり、より正確な三次元での変形処理の実現が可能となる。
【0036】
本発明にあっては、身長及び体型に応じて分類した複数のゆとり量データを格納するゆとり量データテーブルを準備すると共に、そのゆとり量データテーブルに格納されるゆとり量データは、人体の部位ごとにゆとり量を規定するので、三次元測定を行ったユーザの身長及び体型に応じて、従来に比べてきめ細かく、ゆとり量を適用できるようになり、オーダーメイド用の衣服を作るための型紙として好適となる。
【0037】
本発明にあっては、ログイン中の外部の通信端末へ、仮三次元ユーザ型紙を三次元ユーザモデルに着せ付けた状態の三次元画像データを送信するので、外部の通信端末で、作成中の三次元ユーザ型紙の具合を確認できるようになる。それにより、三次元測定を行ったユーザ自身や、オーダーメイドの衣服の提供を行うショップやショールーム等のスタッフなどが、作成中の三次元ユーザ型紙が、ユーザの体型等にマッチしたものになっているか、ユーザの希望に応じたものになっているか等を容易にチェックでき、オーダーメイドで衣服を仕上げるのに良好な環境を提供できるようになる。
【0038】
また、本発明にあっては、外部の通信端末から送られる修正無しの通知を受信したことに伴って、仮三次元ユーザ型紙を三次元ユーザ型紙として確定するので、ユーザや、ショップのスタッフ等の承諾が無ければ、三次元ユーザ型紙を確定して処理を進められなくなり、ユーザ等の意向を反映した型紙作成処理を実現できる。
【0039】
洋服の中では、水平方向の直線又は垂直方向の直線にすべき周縁の辺部が存在するが(例えば、ティーシャツの裾は水平方向の直線になっており、ワイシャツにおける左右の前見頃をボタンで止める側の縦辺部は垂直方向の直線になっている)、三次元形状の型紙を二次元へと展開するときなどに、これらの辺部が水平方向又は垂直方向の直線にならずに、水平方向又は垂直方向に対して斜めの直線になったり、若しくは曲線になったりすることも想定される。しかし、本発明にあっては、水平方向又は垂直方向の直線になるように型紙の修正を行うので、ユーザの身長や体型に応じた上で、実用性も確保した衣服用の型紙を、ユーザの三次元測定に基づき提供できるようになる。
【発明の効果】
【0040】
本発明では、二次元基準型紙から三次元基準人体モデルの体表面に応じた三次元形状へ変形させた三次元基準型紙を用いて二次元のユーザ型紙を作成するので、最初から型紙の輪郭形状が確保されており、型紙の輪郭形状に切り込み線や切断線を入れることを不要にして、オペレータの技量に左右されることなく、ユーザの体型に応じた型紙を作成でき、また、作成途中では、二次元基準型紙を参照して、三次元から二次元に展開したユーザ型紙の輪郭形状を整える変形を行うので、二次元基準型紙が有する実用性も確保して、縫いやすさや、シワの生じにくさ等を具備した型紙を提供できる。
【0041】
本発明では、三次元から二次元に展開した仮二次元ユーザ型紙と最もサイズ及び形状が近い二次元基準型紙を、複数の二次元基準型紙の中から特定するので、三次元測定を行ったユーザの体型等に応じた形状を残しながら、二次元基準型紙が有する実用性も反映でき、現実的な縫製性や着やすさ等を確保できる。
【0042】
本発明では、仮二次元ユーザ型紙の輪郭形状を変形する修正処理に用いる二次元基準型紙を、身長及び体型に応じて分類した複数の二次元基準型紙の中から、三次元測定の結果に含まれるユーザの身長及び体型に基づき特定するので、型紙作成装置での処理負担を低減しながら、修正処理に用いるユーザに応じた二次元基準型紙をスムーズに特定できる。
【0043】
本発明では、三次元ユーザモデルの型紙装着範囲の表面積に基づき、三次元基準型紙を変形するので、表面積を指標にして三次元形状の変形処理を補完でき、複雑な形状となる三次元での変形処理を精度良く行える。
【0044】
本発明では、身長及び体型に応じて複数のゆとり量データを格納するゆとり量データテーブルを準備し、そのゆとり量データテーブルに格納されるゆとり量データは、人体の部位ごとにゆとり量を規定することで、従来に比べて、ユーザの身長及び体型に応じて、詳細にゆとり量を適用でき、オーダーメイド用の衣服を作るのに好適な型紙を提供できる。
【0045】
本発明では、ログイン中の外部の通信端末へ、仮三次元ユーザ型紙を三次元ユーザモデルに着せ付けた状態の三次元画像データを送信するので、三次元測定を行ったユーザ自身や、オーダーメイドの衣服の提供を行うショップやショールーム等のスタッフなどが、作成中の三次元ユーザ型紙をチェックできるオーダーメイドの衣服作成に適した環境を提供できる。
【0046】
本発明では、外部の通信端末から送られる修正無しの通知を受信したことに伴って、仮三次元ユーザ型紙を三次元ユーザ型紙として確定するので、ユーザや、ショップのスタッフ等の承諾に基づき、三次元ユーザ型紙を確定して処理を進められるので、ユーザ等の意向を反映した型紙作成処理を実現できると共に、型紙の作成後にユーザの不満が生じにくい環境を確保できる。
【0047】
本発明では、型紙の輪郭の中で必要な辺部に対して、水平方向又は垂直方向の直線になるように型紙の調整を行うので、ユーザの身長や体型にマッチすることを重視して作成した型紙に対し、衣服としての基本的な見栄えや実用性も確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明の実施形態に係る型紙作成システム及び人体測定システムを含む型紙提供システムの全体的な構成例を示す概略図である。
図2】測定処理装置の主要な内部構成を示すブロック図である。
図3】通信端末装置の主要な内部構成を示すブロック図である。
図4】通信端末装置で表示される型紙確認メニュー画面を示す概略図である。
図5】通信端末装置で表示される画面の例であり、(a)、(b)は作成中型紙確認画面の例を示す概略図である。
図6】通信端末装置で表示される画面の例であり、(a)は指示確認画面の例を示す概略図であり、(b)は作成済型紙一覧画面の例を示す概略図である。
図7】型紙作成装置の主要な内部構成を示すブロック図である。
図8】基準型紙テーブルの中身の一例を示す図表である。
図9】二次元基準型紙データに含まれる各パーツの型紙の形状を示す概略図である。
図10】三次元基準データテーブルの中身の一例を示す図表である。
図11】(a)は三次元基準人体モデルの三次元的な形状を示す概略図であり、(b)はモデル体表面を形成するポリゴンメッシュを拡大して示す概略図である。
図12】(a)は左前身頃三次元基準型紙の三次元的な形状を示す概略図であり、(b)は型紙表面を形成するポリゴンメッシュを拡大して示す概略図である。
図13】(a)は三次元基準人体モデルに左前身頃二次元基準型紙をあてがう状況を示す概略図であり、(b)は左前身頃二次元基準型紙を三次元形状に変形して三次元基準人体モデルのモデル体表面にあてがって沿わせた状態を示す概略図である。
図14】ゆとり量データテーブルの中身の一例を示す図表である。
図15】(a)、(b)は、ゆとり量データテーブルに格納されるゆとり量データの中身の例を示す図表である。
図16】ユーザデータベースの中身の一例を示す図表である。
図17】型紙作成方法の処理手順を示す第1フローチャートである。
図18】型紙作成方法の処理手順を示す第2フローチャートである。
図19】(a)は三次元ユーザモデルの三次元的な形状を示す概略図であり、(b)はユーザモデル体表面を形成するポリゴンメッシュを拡大して示す概略図である。
図20】(a)は三次元ユーザモデルと三次元基準人体モデルとを比較した状態を示す概略図であり、(b)は三次元ユーザモデルの体表面に、三次元基準型紙を沿わして変形することで着せ付けた状態を示す概略図である。
図21】(a)は仮左前身頃三次元ユーザ型紙の三次元的な形状を示す概略図であり、(b)はユーザ型紙表面を形成するポリゴンメッシュを拡大して示す概略図である。
図22】仮左前身頃二次元ユーザ型紙と左前身頃二次元基準型紙とを比較した状態を示す概略図である。
図23】(a)は仮左前身頃二次元ユーザ型紙と左前身頃二次元基準型紙を重ね合わせた状態を示す概略図であり、(b)、(c)は頂点の移動状況を示す要部拡大概略図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0049】
図1は、本実施形態に係る型紙提供システム1の一例となる全体的なシステム構成を概略的に示しており、この型紙提供システム1は、型紙作成システム2及び人体測定システム20を含む。型紙提供システム1は、特定のユーザ用のオーダーメイドの衣服を作るための型紙を提供するためのものであり、ユーザの三次元測定を行い、その三次元測定の結果より作成された三次元ユーザモデルに基づき、そのユーザに応じた衣服用の型紙の作成を行う。
【0050】
そのため、型紙提供システム1では、人体測定システム20で対象となるユーザの三次元測定を行って、その三次元測定結果はネットワークNWを介して、型紙作成システム2へ送るようにしている。送られてきた三次元測定結果は、型紙作成システム2に含まれる型紙作成装置50で受信され、その受信した三次元測定結果に基づき、ユーザの三次元人体モデル(三次元ユーザアバター)が作成され、その三次元人体モデルを用いて、ユーザの体型に応じた衣服用の型紙が作成される。
【0051】
型紙作成システム2では、型紙作成装置50と通信可能なコンピュータ、タブレット、スマートフォン等の通信端末である通信端末装置3が含まれており、この通信端末装置3により、作成途中の型紙をユーザ等が確認できるようにしている。以下、型紙として男性用のシャツ(半袖シャツ)の型紙を作成する場合を例にして、本発明の内容を詳しく説明していく。
【0052】
型紙提供システム1に含まれる人体測定システム20は、計三本の柱状体21、22、23、及び測定処理装置30を含む。柱状体21、22、23は、測定対象物の三次元データ(OBJデータ)を測定し、測定対象のユーザUの測定位置の周囲を、平面視で三角形を構成するように、三角形の各頂点となる箇所に配置される。各柱状体21、22、23は複数のレーザ光出射部21a、22a、23a及び走査状況取得部21b、22b、23bを具備し、各レーザ光出射部21a、22a、23aからレーザ光を出射して測定対象物を走査すると共に、走査した状況を走査状況取得部21b、22b、23bで撮像する。
【0053】
また、人体測定システム20の測定処理装置30は、各柱状体21、22、23と三次元測定用接続線24a、24b、24cで接続されており、測定処理装置30から送られる測定開始指示が、三次元測定用接続線24a、24b、24cを介して、各柱状体21、22、23へ入力されると、各柱状体21、22、23の各レーザ光出射部21a、22a、23aからレーザ光を出射して測定を開始し、測定開始から数秒でレーザ光の走査状況の測定(及び対象物の撮影)を完了し、測定した数値を含む測定結果(対象物表面の点群、メッシュ等のデータ)及び撮像画像等が測定処理装置30へ送られる。
【0054】
測定処理装置30では、送られてきた数値結果(対象物表面を構成する各点の三次元的な位置に関する情報)に基づき測定対象物に関する各種数値を算出する処理を行う。この算出処理により得ることのできる各種寸法値としては、測定対象物の全体寸法(全長寸法)、体表面積、体容積、任意部の長さ、任意部の周囲長等がある。
【0055】
人体を身体的に測定対象にするときは、人体の身長に加えて、人体の特定部位である各腕についての長さ(袖丈の長さ)、手首の周囲長、腕の周囲長(最大周囲長)、体幹部の長さ(座高)、ウエストの周囲長(腰廻)、胸囲の周囲長(胸廻)、胴部の周囲長(胴廻)、臀部の周囲長、各脚についての長さ(股下の長さ)、足首の周囲長、及び太ももの周囲長(最大周囲長)等の体型(体格)等に係る項目が算出対象となると共に、各部の体表面の表面積も算出対象になる。なお、図1に示すように、ユーザUという人体を測定する場合、足を開く姿勢を取ることから、足を開いた分、実際の身長より測定値が小さくなるので、身長については、測定処理装置30において所定の比率を乗じて、自動補正を行う。
【0056】
三本の柱状体21、22、23を三角形の各頂点に配置して三次元測定する方法は、三角測量の原理を用いた公知の三次元距離計測手法(三角測量の原理)により、レーザ光出射部21a、22a、23aから出射するレーザ光で測定対象物の表面を走査し、その走査状況を、走査状況取得部21b、22b、23bで撮像して、柱状体21、22、23の三角形の位置と、走査状況取得部21b、22b、23bで撮像した画像におけるレーザ光の走査位置のポイント等との関係に基づき、測定対象物の各表面のポイント(表面をメッシュにした交点)を三次元座標上に展開した位置を求める。
【0057】
人体測定システム20が人体(例えば、ユーザU)を三次元測定する場合、人体表面上の約3万のポイントについての位置を三次元座標値で求めており、これら三次元測定される各ポイントは、それぞれを識別できるように番号が付され(1番目のポイント~約3万番目のポイントが存在する)、各番号と三次元座標値が対応づけたものが測定結果に含まれる。
【0058】
なお、三次元座標値に係る三次元座標系を構成するX、Y、Z軸について、本実施形態では図1に示すように、X軸方向は水平面(水平な床面)における人体の幅方向に一致させており、Y軸方向は水平面に垂直な人体の身長方向に一致させており、Z軸方向は水平面における人体の厚み方向に一致させると共に、X軸及びY軸に直交した方向になっている。そのため、例えば、人体を正面から表現する場合、主にXY座標系で示され、人体を横方向から表現する場合、主にYZ座標系で示される。また、このようなXYZ座標系による三次元座標の原点は三次元測定における床面(足裏面)に位置し、本実施形態では、左右の腸骨稜点の中点を床面に投影した点を原点にしている。
【0059】
図2は、人体測定システム20の中の測定処理装置30の主要構成を示したブロック図である。本実施形態の測定処理装置30としては、各柱状体21、22、23との接続機能、及びネットワークNWを介した通信機能等を具備したコンピュータを用いており、図2では、そのコンピュータを用いた場合の構成を示している。なお、このような測定処理装置30を含む人体測定システム20は、オーダーメイドの衣服を扱う店舗やショールーム等に設置され、オーダーメイドの衣服の購入を希望するユーザが、人体測定システム20の設置場所に出向いて、三次元測定を行うこと等が想定される。
【0060】
人体測定システム20でユーザの三次元測定を行うには最初にユーザ登録を行う必要があり、ユーザの氏名、年齢、性別、連絡先(電話番号や電子メールアドレス)、ログインに必要なパスワード等に係るユーザ情報をシステムへ入力することになる。
【0061】
測定処理装置30は、全体的な制御及び各種処理を行うCPU30aに、各種デバイス等を内部接続線30hで接続したものになっており、各種デバイス等には、外部機器接続部30b、通信部30c、ROM30d、RAM30e、表示入出力インタフェース30f、及び記憶部30g等がある。なお、測定処理装置30は、測定の際などに各種入力及び表示等を行うタッチパネル式の表示装置35を有する。
【0062】
外部機器接続部30bは、各種規格(例えば、IEEE系などの規格)に準じた双方向で各種信号、情報等を送ることが可能な接続インタフェース(例えば、USB系のシリアルインタフェース)であり、本実施形態では、この外部機器接続部30bで、三次元測定用接続線24a、24b、24cを介して、各柱状体21、22、23と接続し、各柱状体21、22、23による測定結果を取得すると共に、各柱状体21、22、23への測定開始指示などを送るようにしている。
【0063】
通信部30cは、ネットワークNWとの接続通信デバイスに相当する所要の通信規格に応じたものであり(例えばLANモジュール)、通信線L及び所要の通信機器(図示は省略。例えばルータ等が該当)を介してネットワークNWと接続することで、型紙作成システム2(型紙作成装置50)との通信を可能にしている。
【0064】
ROM30dは、CPU30aの基本的な処理内容を規定したプログラム等を記憶するものであり、RAM30eは、CPU30aの処理に伴う内容、ファイル等を一時的に記憶する。表示入出力インタフェース30fは、接続線36で表示装置35が接続されるインタフェースであり、本実施形態の表示装置35は、タッチスクリーン機能を具備する表示スクリーン35aを有するので、表示スクリーン35aに表示させる各種画面に応じた各画面データを出力することに加えて、表示スクリーン35aでのタッチによる操作内容の入力を受け付けて、その受け付けた操作内容の通知をCPU30aへ送る処理等も行う。上述したユーザ登録を行うにあたり、必要なユーザ情報の入力は、表示装置35の表示スクリーン35aでも受付可能になっている。
【0065】
記憶部30gは、HDD(Hard Disc Drive)又はSSD(Solid State Drive)等により構成される記憶デバイスであり、基本プログラムP1及び三次元測定プログラムP2といったプログラム、並びに画面データテーブルT1等を記憶する。各プログラムの説明を後にして、先ず、画面データテーブルT1について説明する。
【0066】
画面データテーブルT1は、表示装置35で表示させるための各種画面データを複数格納したものである。画面データテーブルT1が格納する画面データとしては、ユーザ登録又はログインを行うためのスタート画面、測定開始の指示を出すための開始指示画面、測定中の状態を示す測定中画面、及び測定終了を示す測定終了画面等に応じた画面データ等がある。測定処理装置30のCPU30aは、処理状況に応じた画面データを画面データテーブルT1から読み出し、表示入出力インタフェース30fから適宜出力させて、表示装置35に所要の画面を表示させる。
【0067】
次に、図2の記憶部30gに記憶される各プログラムについて説明していく。まず、基本プログラムP1は、測定処理装置30を一般的なコンピュータとして機能させるために、CPU30aが行う基本的な処理を規定したオペレーティングシステムに相当するものであり、この基本プログラムP1には、上述した外部機器接続部30bを通じた信号等の入出力機能、通信部30cを通じた通信機能、及び表示入出力インタフェース30fを通じた表示機能・操作受付機能等を含んでいる。
【0068】
三次元測定プログラムP2は、ユーザ登録に係る処理、ログインに係る処理、三次元測定に係る処理等をCPU30aが行うことを規定する。三次元測定プログラムP2のユーザ登録に係る処理及びログインに係る処理の前提として、表示装置35へスタート画面(ユーザ登録のボタン及びログインのボタンを選択可能に含むと共に、ログインのIDやパスワードの入力が可能な画面)を表示させるため、スタート画面に応じた画面データを画面データテーブルT1から読み出して、表示装置35へ出力する処理がCPU30aの制御により行われる。スタート画面を表示装置35に表示させた状態で、ユーザ登録のボタンの選択入力の通知を受け付けた場合、ユーザ登録に係る処理が開始される。
【0069】
ユーザ登録に係る処理が開始されると、ユーザ登録画面(ユーザの氏名、年齢、性別、電話番号、電子メールアドレス、ログインパスワード、三次元測定を行う店舗名等に係るユーザ情報の入力欄を含む画面)に応じた画面データを画面データテーブルT1から読み出して、表示装置35へ出力する処理がCPU30aにより行われる。この後は、ユーザ登録画面で入力されたユーザ情報が表示装置35から送られてくるかを待つ状態となる。
【0070】
ユーザ情報が送られてくると、CPU30aは、そのユーザ情報を型紙作成システム2の型紙作成装置50(図1参照)へ通信部30cより送信する制御を行う。そして、ユーザ情報の送信を経て、型紙作成装置50から、ユーザIDを含むユーザ登録完了の通知を通信部30cで受信すると、CPU30aは、表示装置35の表示内容を、ユーザ登録完了の旨とユーザIDを伝えるスタート画面に切り替えるために、その画面に応じた画面データを表示装置35へ出力する処理を行って、ユーザ登録に係る処理は完了することになる。なお、このようなユーザ登録については後述するように、型紙作成システム2に含まれる通信端末装置3で行うことも可能である。
【0071】
また、三次元測定プログラムP2におけるログインに係る処理は、表示装置35で表示されるスタート画面にて、ユーザにより、ログインのID(このIDとしては電子メールアドレス等が使用可能)及びパスワードが入力されてから、ログインのボタンが選択されることで始まることになる。このようにログインのボタンの選択がなされると、入力されたログインのID及びパスワードといったログイン情報が表示装置35から送られてくるので、CPU30aは、送られてきたログイン情報(ログインのID及びパスワード)を型紙作成システム2の型紙作成装置50へ通信部30cより送信する制御を行う。
【0072】
ログイン情報(ID又はパスワード)の不一致のためログイン不可の通知を型紙作成装置50から受信すると、CPU30aは、ログインのID又はパスワードが一致せず、ログインが出来なかった旨を含むスタート画面を表示装置35に表示する制御をCPU30aが行って、ユーザへログインのID又はパスワードの再入力を提示する。
【0073】
一方、型紙作成装置50より、ログイン完了の通知を受信すると、CPU30aは、三次元測定に係る処理を始めることになり、測定開始の指示を出すための開始指示画面に応じた画面データを画面データテーブルT1から読み出して、表示装置35へ出力する処理を行う。
【0074】
ユーザが測定開始の指示操作を表示装置35で行うと、表示装置35から測定開始指示受付の通知が送られてくるので、CPU30aは、測定中の状態を示す測定中画面に応じた画面データを画面データテーブルT1から読み出して、表示装置35へ出力する処理を行うと共に、三本の柱状体21、22、23でレーザ光の走査及び撮像を行い、各柱状体21、22、23より送られてくる測定結果に含まれる数値(検知した複数の頂点のXYZ座標値)を用いて、測定項目(身長、人体の各部位の寸法、各四肢の長さ、各部の表面積等)に係る数値を算出する処理を行う。
【0075】
上記の処理が終了すると、CPU30aは、測定終了を示す測定終了画面に応じた画面データを画面データテーブルT1から読み出して、表示装置35へ出力する処理を行うと共に、算出した数値を示すデータを測定結果として、型紙作成システム2(型紙作成装置50)へ通信部30cより送信する制御を行うことで、一連の三次元測定処理を完了する。
【0076】
これ以降については人体測定システム20では次回の測定を待つ状態になる。一方、人体測定システム20から測定結果を受信する型紙作成装置50は、測定結果の受信に伴い、測定を行ったユーザに応じた型紙を提供するための処理を開始することになる。なお、測定結果を受信する側の型紙作成システム2にとって、人体測定システム20や、測定処理装置30は、外部のシステムや装置に該当する。次に、型紙提供システム1の中の型紙作成システム2に含まれる通信端末装置3及び型紙作成装置50について説明する。
【0077】
図3は、通信端末装置3の主要な内部構成を示す。通信端末装置3としては、上述したように、タブレット、スマートフォンのような携帯通信端末、通信機能を有するパソコン(ノート型パソコン、デスクトップ型パソコン等)などを用いることができ、一種のコンピュータに相当する(図3はタブレットの場合の構成を示す)。ただし、通信端末装置3として、スマートフォンのような携帯通信端末、通信機能を有するパソコン(ノート型パソコン、デスクトップ型パソコン等)を用いた場合でも、本発明に関する構成部分は基本的に、図3に示す構成に対応したものとなる。
【0078】
なお、このような通信端末装置3としては、状況に応じて、オーダーメイドの衣服を扱う店舗やショールーム等(三次元測定を行う店舗やショールーム等も含む)が所有するものを使う場合や、三次元測定を行ってオーダーメイドの衣服の購入を希望するユーザ自身が所有するものを使う場合が想定される。
【0079】
通信端末装置3は、全体的な制御及び各種処理を行うCPU3b(プロセッサ3b)に、内部接続線3kを介して、通信モジュール3c(通信手段に相当)、RAM3d、ROM3e、入出力インタフェース3f、メモリである記憶部(記憶手段に相当)3g等の各種デバイス等を接続したものになっている。
【0080】
通信モジュール3cは、ネットワークを介した無線通信処理を、CPU3bの制御に従って行うものであり、本実施形態では型紙作成装置50から送られてくる各種画面情報及び各種数値情報等の受信も行う。RAM3dは、CPU3bの処理に伴う内容、ファイル等を一時的に記憶すると共に、本実施形態では型紙作成装置50から送られてきて受信した各種画面情報及び各種数値情報等の記憶も行う。ROM3eは、CPU3bの基本的な処理内容を規定したプログラム等を記憶すると共に、通信端末装置3を識別する識別情報(UID)等も格納している。なお、このUIDは、上述した通信モジュール3cで通信(送信する際、送信内容に含まれるようになっている(例えば、送信パケットのヘッダ等にUIDを含めて送信が行われる)。
【0081】
入出力インタフェース3fは、タッチパネル機能を具備した長方形のパネルディスプレイを有する表示スクリーン3aと接続されており、CPU3bの制御処理により生成された各種画面(図29等に示す画面)を表示スクリーン3aに出力する処理を行い、それにより、出力した画面内容が表示スクリーン3aに表示されることになる。また、入出力インタフェース3fは、表示スクリーン3aの表面をユーザがタッチ、スワイプ等することで受け付けた各種操作内容をCPU3bへ送る処理も行う。なお、ユーザが表示スクリーン3aの表面をタッチすることで受け付ける操作内容は、表示している画面内容に応じて適宜、変化する。
【0082】
記憶部3gは、OSプログラムP200、型紙アプリP201、及びその他の各種アプリ等のプログラムを記憶(インストール)すると共に、各種データも記憶する。OSプログラムP200は、オペレーティングシステムに相当する基本プログラムであり、通信端末装置3が一種のコンピュータとして機能するためのCPU3bの処理を規定している。OSプログラムP200が規定する基本的な処理の一つとしては、表示スクリーン3aにホーム画面を表示することが挙げられ、このホーム画面においては、記憶部3gにインストールされている各種アプリに応じたアイコン等を配置することも、OSプログラムP200の規定する処理によるものとなっている。
【0083】
記憶部3gに記憶される型紙アプリP201は、ユーザ登録に係る処理、ログインに係る処理、型紙の確認に係る処理等を通信端末装置3で行うためのアプリケーションプログラム(コンピュータプログラム)であり、これらの処理をCPU3bが各種手段として行う内容を規定する。なお、型紙アプリP201は、表示スクリーン3aに表示する各種画面に応じた画面データも複数含んでおり、CPU3bは、所要の画面データを適宜、読み出して、型紙作成システム2(型紙作成装置50)等からのデータを組み合わせるなどして、必要な画面を作成して表示スクリーン3aに表示する処理を、型紙アプリP201の規定に基づき行う。
【0084】
型紙アプリP201のユーザ登録に係る処理として、型紙アプリP201は、上述した人体測定システム20の測定処理装置30及び表示装置35によるユーザ登録に係る処理と同様の内容を規定する。型紙アプリP201は、そのアイコンがホーム画面に配置されており、そのアイコンがタップされて選択操作が行われると、起動してスタート画面を表示スクリーン3aに表示する。このスタート画面には、選択可能なユーザ登録ボタン、及びログイン開始ボタンが配置されており、ユーザ登録ボタンが選択(タップ)されると、ユーザ登録画面に表示が切り替わり、ログイン開始ボタンが選択(タップ)されるとログイン画面に表示が切り替わる。
【0085】
ユーザ登録画面は、上述した人体測定システム20の場合と同様に、各種ユーザ情報(ユーザの氏名、年齢、性別、電話番号、電子メールアドレス、ログインパスワード等)の入力欄、及びユーザ登録ボタンを配置したものになっており、入力欄に必要なユーザ情報が入力された状態でユーザ登録ボタンが選択(タップ)されると、入力されたユーザ情報が型紙作成システム2の型紙作成装置50へ通信モジュール3cより送信される。
【0086】
上記のユーザ情報の送信への返信として、型紙作成装置50から送られるユーザ登録完了の旨を通信モジュール3cで受信すると、型紙アプリP201のログインに係る処理が開始され、表示スクリーン3aの表示を、ユーザ登録完了の旨を含むスタート画面に切り替えて、ログインを行える状況を提示する。
【0087】
このログイン画面は、ログインのためのIDとパスワードの入力欄、及びログインボタンを含み、ID(例えば、電子メールアドレス)及びパスワードが入力された状態でログインボタンの選択(タップ)の操作(ログイン操作)が行われると、入力されたID及びパスワードがログイン情報として型紙作成装置50へ通信モジュール3cより送信される。型紙作成装置50から送られるログイン完了の通知を受信すると、型紙アプリP201の型紙の確認に係る処理が開始され、表示スクリーン3aの表示を型紙確認メニュー画面に切り替える。
【0088】
図4は、表示スクリーン3aに表示される型紙確認メニュー画面4を示す。型紙確認メニュー画面4は、作成中型紙確認ボタン4a及び作成済型紙確認ボタン4bを選択可能に配置した画面になっている。作成中型紙確認ボタン4aのタップ(選択)操作が行われると、CPU3bの制御により、作成中型紙要求が型紙作成システム2(型紙作成装置50)へ通信モジュール3cより送信される。
【0089】
作成中型紙要求を型紙作成装置50へ送信すると、後述するように、型紙作成装置50にて作成中型紙(仮三次元ユーザ型紙)に係る三次元画像データの作成が完了しており、作成中型紙要求が送られてくるのが待たれている状態であれば、型紙作成装置50は、作成中型紙データ(三次元画像データ)を、作成中型紙要求の送信元の通信端末装置3へ送信する処理を行う。一方、型紙作成装置50にて、作成中型紙要求が送られてくるのが待たれていない状態や、そもそも作成中型紙データが存在しない状態であれば、型紙作成装置50は、送信すべきデータの無い旨(NO DATA)が作成中型紙要求の送信元の通信端末装置3へ送信(通知)されることになる。
【0090】
データの無い旨が型紙作成装置50から通知されると、CPU3bは、表示されている型紙確認メニュー画面4に「表示すべき作成中型紙が無い」旨の表記を追加して示す制御を行う。一方、作成中型紙要求の送信に伴って、型紙作成装置50から、作成中型紙データを受信すると、型紙アプリP201の型紙の確認に係る処理が開始され、受信した作成中画像データ及び所要の画面データを用いて作成中型紙確認画面を生成し、表示スクリーン3aの表示を、その生成した作成中型紙確認画面に切り替える。
【0091】
図5(a)、(b)は、表示スクリーン3aに表示される作成中型紙確認画面5の一例を示し、画面中央にユーザアバター7の三次元人体モデル(三次元ユーザモデル)を配置すると共に、画面下方にOKボタン5a、クリアボタン5bを選択可能に配置する。作成中型紙確認画面の中のユーザアバター7は、作成中の型紙6を着せ付けた状態になっており、このような型紙6(作成中型紙6)を着用したユーザアバター7は、型紙作成システム2(型紙作成装置50)から送られた作成中型紙データ(三次元画像データ)に基づき作成されている。
【0092】
すなわち、CPU3bは、作成中型紙データを受信すると、そのデータを用いて型紙6を着用したユーザアバター7を三次元人体モデル(三次元ユーザモデル)として作成し、その作成した三次元人体モデルを、作成中型紙確認画面5に応じた画面データと組み合わせて、作成中型紙確認画面5を生成し、表示スクリーン3aに表示する処理を行う。
【0093】
表示された作成中型紙確認画面5は、ユーザアバター7が三次元人体モデルであることから、ユーザアバター7の向き(表示される角度)や大きさ等を変更することも可能になっている。例えば、ユーザアバター7の表示箇所をタッチして表示スクリーン3aに対し一本の指でスワイプ操作を行うと、スワイプされた方向にユーザアバター7が回転し、所望の角度から、ユーザアバター7に着せ付けられた型紙6の着用状況を確認できる。図5(b)は、上述した操作により、図5(a)に示す正面向きのユーザアバター7の向きを変更した状態を示す。
【0094】
また、ユーザアバター7の表示箇所を二本の指でタッチしながら、各指を拡げるようにピンチ操作を行うと、操作対象の箇所を拡大でき、逆に各指を狭めるように操作すると、操作対象の箇所を縮小でき、作成中の型紙6の着用状況を様々な大きさで確認できる。
【0095】
さらに、作成中型紙確認画面5は、ユーザの好み等に応じて、作成中の型紙6の形状等を変更するための寸法の修正指示を出すことも可能になっている。作成中の型紙6に対して修正指示を出す場合、型紙6における修正を行いたい箇所をタップして選択することで選択状態にして(選択状態の箇所は色が変わる)、その選択状態の箇所を指でタッチして、型紙を拡げる向きへ表示スクリーン3a上で指を移動(スワイプ)させるとサイズ拡大を指示することになり、型紙を縮める向きへ指を移動(スワイプ)させるとサイズ縮小を指示することになる。拡大(長く)又は縮小(短く)させる寸法は、指を移動させた量に応じて決定されることになり、本実施形態では、5mm単位で寸法を変更するようになっている。
【0096】
図5(a)に示す黒矢印5cは、便宜的に修正の際の指の動きを表しており、作成中の型紙6における左前身頃型紙7の腰廻7aを拡大(長く)する修正指示を出す場合の指示箇所及び指示方向を表す。この場合、左前身頃型紙7の腰廻7aがタップされて修正箇所が指定(選択)されることになり、そのため、黒矢印5cは、腰廻7aに起点(始点)が位置する。そして、黒矢印5cの向き(画面中における水平方向の右向き)は、左前身頃型紙7の外方へ拡がる向きになるため、腰廻7aを拡大する方向の指示となる。また、黒矢印5cの長さは、拡大する寸法を指示するものとなり、黒矢印5cの長さ(スワイプする距離)に応じて、5mm単位の指示を出せる。
【0097】
さらに、黒矢印5cに応じたスワイプ操作を行うと、そのスワイプ操作の内容を示す吹出5eが操作対象箇所(この場合では左前身頃型紙7の腰廻7a)に対して生じるように、作成中型紙確認画面5は作り込まれている。図5(a)に示す吹出5eでは「腰廻+1.0」という記載になっているため、この吹出5eの記載により、スワイプ操作による修正指示の内容をユーザが確認できるようになっている(吹出5eで示される数値はcm単位になっており、他の吹出でも同様である)。
【0098】
また、図5(a)に示す白矢印5dも、上述した黒矢印5cと同様、便宜的に別の修正指示に応じた指の動きを表しており、左前身頃型紙7の裾7bを縦方向に短く(縮小)する場合の指示箇所及び指示方向を表す。この場合、左前身頃型紙7の裾7bがタップされて修正箇所が指定(選択)されることになり、そのため、白矢印5dは、裾7bに起点(始点)が位置する。そして、白矢印5dの向き(画面中における垂直方向の上向き)は、左前身頃型紙7の内方へ縮まる向きとなるため、裾7dを短くする方向の修正指示となる。また、白矢印5dの長さは、裾7dを短くする寸法を指示するものとなり、白矢印5dの長さ(スワイプする距離)に応じて、5mm単位の指示を出せる。
【0099】
図5(a)に示すように、白矢印5dの場合も、スワイプ操作の内容を示す吹出5fが操作対象箇所(この場合では左前身頃型紙7の裾7b)に対して生じており、この吹出5fは「裾-1.5」という記載になっており、白矢印5dに応じたスワイプ操作を行うことで、裾を1.5cm短くする修正の指示を出したことをユーザは確認できる。上述した黒矢印5c又は白矢印5dで示すようなスワイプ操作を行って、吹出5e、5fを生じさせた状態で、OKボタン5aの選択操作を受け付けると、CPU3bは、表示スクリーン3aの表示を指示確認画面に切り替える制御処理を行う。
【0100】
図6(a)は、指示確認画面8の例を示す。指示確認画面8は、図5(a)の作成中型紙確認画面5における吹出5e、5fに記載の内容を引き継いで記した指示内容部8a、OKボタン8bを有する。OKボタン8bのタップ操作(選択操作)を受け付けると、CPU3bの制御処理により、指示内容部8aで記された修正指示内容(図6の場合では、腰廻+1.0cm、裾-1.5cm)を表した修正有り通知を、型紙作成装置50へ送信するように、指示確認画面8は作り込まれている。
【0101】
なお、上述した図5(a)の作成中型紙確認画面5で示されるユーザアバター7に着せ付けられた型紙7の着用状態がユーザにより確認されて、修正不要と判断された場合は、修正操作(黒矢印5cや白矢印5d等で示すスワイプ操作)を行うこと無しに、OKボタン5aの選択操作(タップ操作)が行われることになる。修正操作無しでOKボタン5aの選択操作がなされた場合、切り替えて表示される指示確認画面は、図6に示す指示確認画面8における指示内容部8aには「修正無し」という内容が記される。そして、このような指示確認画面8でOKボタン8bのタップ操作がなされた場合は、「修正無し」という指示内容を表した修正無し通知が型紙作成装置50へ送信される。
【0102】
また、図5(a)の作成中型紙確認画面5にて、黒矢印5c又は白矢印5dで示すようなスワイプ操作を行って、吹出5e、5fを生じさせた状態で、クリアボタン5bのタップ操作(選択操作)を受け付けた場合は、CPU3bの制御処理により、スワイプ操作による内容(吹出5e、5fの内容)はクリア(取り消し)されて、スワイプ操作を行う前の状態に戻される。
【0103】
また、図4に示す型紙確認メニュー画面4の説明に戻り、この型紙確認メニュー画面4にて、作成済型紙確認ボタン4bのタップ(選択)操作が行われると、作成済型紙要求が型紙作成装置50へ通信モジュール3cより送信される。
【0104】
作成済型紙要求を型紙作成装置50へ送信すると、後述するように、型紙作成装置50にて、ログイン中のユーザに対応付けて作成済の型紙が記憶されていれば、型紙作成装置50から作成済型紙データが送信されてくる。一方、型紙作成装置50にて、ログイン中のユーザの作成済の型紙が記憶されていなければ、送信すべきデータの無い旨(NO DATA)が、作成済型紙要求の送信元の通信端末装置3へ送信(通知)される。
【0105】
データの無い旨が型紙作成装置50から通知されると、CPU3bは、表示されている型紙確認メニュー画面4に「表示すべき作成済型紙が無い」旨の表記を追加して示す制御を行う。また、作成済型紙要求の送信に伴って、型紙作成装置50から、作成済型紙データ(三次元画像データ)を受信すると、CPU3bの制御により、表示スクリーン3aの表示が作成済型一覧画面に切り替えられる。
【0106】
図6(b)は、表示スクリーン3aに表示される作成済型紙一覧画面9の一例を示し、ログイン中のユーザが過去にジャケット及びパンツの型紙を作成した場合の例となり、この作成済型紙一覧画面9の中には作成済型紙一覧10が配置されている。作成済型紙一覧10は、型紙作成システム2(型紙作成装置50)から送られてきた作成済型紙データに基づき作成されたものとなっている。なお、このような作成済型紙一覧10に含まれる欄の数は、ユーザが今までに作成した型紙に応じたものになっており、型紙の作成数が一つであれば、作成済型紙一覧10に含まれる欄の数は一つに留まり、型紙の作成数が複数であれば、欄の数は複数になる。
【0107】
この例における作成済型紙一覧画面9の中の作成済型紙一覧10は、ジャケット型紙欄10a及びパンツ型紙欄10bという二つの欄を含んだものになっており、それぞれの欄10a、10bは選択可能(タップ可能)になっている。ジャケット型紙欄10aが選択されると、CPU3bは、受信済みの作成型紙データ(三次元画像データ)に含まれる作成済のジャケット型紙三次元データやユーザの三次元人体モデルデータ等を用いて、作成済のジャケット型紙を着用したユーザアバターを三次元人体モデルとして作成し、その作成した三次元人体モデルを、作成済型紙確認画面に応じた画面データと組み合わせた画面を生成し、表示スクリーン3aの表示を作成済型紙確認画面に切り替える処理を行う。
【0108】
表示スクリーン3aに表示される作成済型紙確認画面は、図5(a)(b)に示す作成中型紙確認画面5と同様の構成及び機能を有したものとなっており、画面内に配置されるユーザアバター7が、作成済のジャケットの型紙を着用したものになっている点が異なるだけである。そのため、作成済型紙確認画面でも、上述した作成中型紙確認画面5と同様に、作成済の型紙(ジャケット型紙)に対して修正の指示を出すことが可能であり、一旦、型紙を作成した後から、修正を行いたい場合にも対応できるようになっている。
【0109】
なお、図6(b)の作成済型紙一覧画面9において、作成済型紙一覧10の中からパンツ型紙欄10bが選択された場合も、上述したジャケット型紙欄10aが選択された場合と同様の処理が行われて、パンツ型紙を着用したユーザアバターを配置した作成済型紙確認画面が表示スクリーン3aに表示されることになる。以上で、型紙作成システム2に含まれる通信端末装置3に関する説明を終了し、次に、型紙作成装置50についての説明を行う。
【0110】
図7は、型紙作成システム2に含まれる型紙作成装置50の主要な内部構成を示すブロック図である。本実施形態の型紙作成装置50は、一般的なサーバコンピュータ(サーバ装置)で構築したものになっているが、分散処理等を行うことで複数のサーバ装置及びデータベース装置等を組み合わせて構築することも勿論可能である(例えば、型紙作成に関する処理を主に行うサーバ装置、及び各種データを格納するデータベースに関する処理を主に行うデータベースサーバ装置を組み合わせて、型紙作成装置50を構築することなどが想定できる)。
【0111】
型紙作成装置50は、人体測定システム20で三次元測定されたユーザの測定結果より作成される三次元ユーザモデルに基づいて、そのユーザに応じた型紙の作成を行うものであり、全体的な制御及び各種処理を行うMPU50aに、各種デバイス等を内部接続線50hで接続したものになっている。各種デバイス等には、通信モジュール50b、RAM50c、ROM50d、入力インタフェース50e、出力インタフェース50f、及び記憶部50g等がある。
【0112】
通信モジュール50bは、ネットワークNWとの接続モジュールに相当する通信デバイスである(例えば、ある通信規格の仕様に応じたLANモジュールなどが該当)。通信モジュール50bは、所要の通信機器(図示は省略。例えばルータ等が該当)を介してネットワークNWと接続されており、測定処理装置30及び通信端末装置3等との通信を可能にする。なお、本実施形態において、型紙作成装置50は、ユーザUの身体的な三次元測定結果等(ユーザの三次元測定の結果に係る各種情報)を、通信モジュール50bで取得することになる。
【0113】
RAM50cは、MPU50aの処理に伴う内容、ファイル等を一時的に記憶するものであり、ROM50dは、MPU50aの基本的な処理内容を規定したプログラム等を記憶するものである。入力インタフェース50eは、型紙作成システム2のシステム管理者等からの操作指示等を受け付けるキーボード50i、マウス等が接続されるものである。出力インタフェース50fは、ディスプレイ50j(表示出力装置)が接続されるものであり、MPU50aの処理に伴う内容をディスプレイ50jへ出力し、システム管理者等が現在の処理内容等を確認できるようにしている。
【0114】
記憶部50gは、テーブル、データベース、及びプログラム等を記憶し、具体的には、テーブルとして基準型紙テーブル60、三次元基準データテーブル70、ゆとり量データテーブル80等を記憶し、データベースとしてユーザデータベース90等を記憶し、プログラムとしてサーバプログラムP10及び型紙作成プログラムP11等を記憶する。なお、型紙作成プログラムP11を記憶部10gにインストールするには、光ディスク等の記憶媒体にモデル提供プログラムP11を記憶しておき、その記憶媒体を通じて、記憶部50gにインストールすること等が考えられる。
【0115】
図8は、記憶部50gに記憶される基準型紙テーブル60の中身の一例を示す。基準型紙テーブル60は、身長及び体型に応じて分類した複数の二次元基準型紙データT11~T75を格納したものになっており、本実施形態では、男性向けのシャツ用(半袖シャツ用)の二次元の基準型紙が格納される(勿論、ジャケットやパンツなどの他の衣服用の基準型紙も格納されてもよい)。
【0116】
本実施形態の基準型紙テーブル60は格子状の構成であり、縦方向に身長の種類、横方向に体格の種類を規定し、身長及び体型(体格)の種類ごとに二次元基準型紙データを格納する。縦方向の身長の種類としては、160cm未満のH1クラス、160cm以上165cm未満のH2クラス、165cm以上170cm未満のH3クラス、170cm以上175cm未満のH4クラス、175cm以上180cm未満のH5クラス、180cm以上185cm未満のH6クラス、185cm以上のH7クラスというように、基本的に5cmきざみで計7つの種類にクラス分けしている。このような計7つのクラス分けは、一般的なXSサイズ、Sサイズ、Mサイズ、Lサイズ、XLサイズ等の区分けに比べて細かいので、オーダーメイドに適したものになっている。
【0117】
また、横方向の体型(体格)の種類としては、細目のK1タイプ、やや細目のK2タイプ、普通のK3タイプ、やや太目のK4タイプ、太目のK5タイプという計5つの種類のタイプに分けている。また、図8では示していないが、K1~K5の各タイプは、上述した身長毎に対する各部位(胸廻、胴廻、腰廻等)の数値範囲を規定したものになっており、それにより、身長及び体格に応じた二次元基準型紙を、図8に示す基準型紙テーブル60が格納する二次元基準型紙データT11~T75の中から特定できるようになっている。
【0118】
K1~K5の各タイプが、各身長のクラス(H1~H7)における各部位(胸廻、胴廻、腰廻等)についての数値範囲を規定した具体例を、H1~H3クラスで説明すると、身長160cm未満のH1クラスに対し、細目のK1タイプは、胸廻を76cm以上82cm未満、胴廻を68cm以上80cm未満、腰廻を60cm以上70cm未満と規定する。また、やや細目のK2タイプでは、胸廻を78cm以上84cm未満、胴廻を70cm以上82cm未満、腰廻を64cm以上72cm未満と規定し、普通のK3タイプでは、胸廻を80cm以上92cm未満、胴廻を72cm以上86cm未満、腰廻を70cm以上78cm未満と規定し、やや太目のK4タイプでは、胸廻を88cm以上96cm未満、胴廻を74cm以上90cm未満、腰廻を76cm以上86cm未満と規定し、太目のK5タイプでは、胸廻を92cm以上102cm未満、胴廻を86cm以上98cm未満、腰廻を84cm以上96cm未満という数値を規定している。
【0119】
また、身長160cm以上165cm未満のH2クラスに対し、細目のK1タイプは、胸廻を76cm以上83cm未満、胴廻を70cm以上81cm未満、腰廻を60cm以上71cm未満と規定し、以下、やや細目のK2タイプでは、胸廻を78cm以上85cm未満、胴廻を71cm以上83cm未満腰廻を64cm以上74cm未満、普通のK3タイプでは、胸廻を80cm以上93cm未満、胴廻を72cm以上88cm未満、腰廻を70cm以上79cm未満、やや太目のK4タイプでは、胸廻を88cm以上97cm未満、胴廻を78cm以上92cm未満、腰廻を77cm以上87cm未満、太目のK5タイプでは、胸廻を87cm以上110cm未満、胴廻を80cm以上98cm未満、腰廻を85cm以上97cm未満という数値を規定する。
【0120】
さらに、身長165cm以上170cm未満のH3クラスに対し、細目のK1タイプは、胸廻を76cm以上83cm未満、胴廻を65cm以上80cm未満、腰廻を61cm以上71cm未満と規定し、以下、やや細目のK2タイプでは、胸廻を79cm以上85cm未満、胴廻を68cm以上83cm未満、腰廻を65cm以上74cm未満、普通のK3タイプでは、胸廻を81cm以上94cm未満、胴廻を72cm以上90cm未満、腰廻を71cm以上81cm未満、やや太目のK4タイプでは、胸廻を89cm以上99cm未満、胴廻を78cm以上95cm未満、腰廻を77cm以上92cm未満、太目のK5タイプでは、胸廻を88cm以上104cm未満、胴廻を88cm以上104cm未満、腰廻を88cm以上104cm未満という数値を規定する。なお、H4~H7クラスも上記と同様に、K1~K5のタイプごとに各部位(胸廻、胴廻、腰廻等)の数値範囲が規定される。
【0121】
よって、あるユーザを三次元測定して得られた数値が、身長が169cm、胸廻が89cm、胴廻が84cm、腰廻が78cmである場合、このユーザは、身長についてはH3クラス、体格についてはK3タイプに該当するので、このユーザに応じたに二次元基準型紙は、基準型紙テーブル60より、T33のデータであると決定されることになる。
【0122】
図9は、上述した基準型紙テーブル60に格納される二次元基準型紙データT11~T75の中身の一例として、二次元基準型紙データT43に含まれる各パーツの型紙の形状を示す。二次元基準型紙データT43は、基準型紙テーブル60において、170cm以上175cm未満のH4クラスで、体格が普通のK3タイプである場合に対応し、複数のパーツに応じた型紙をセットにして含むものになっている。具体的には、左前身頃二次元基準型紙T43a、左後身頃二次元基準型紙T43b、袖二次元基準型紙T43c(半袖用)、左後ヨーク二次元基準型紙T43d等の各パーツに応じた二次元型紙を示す図形データのセットになっている(図示していないが、衿、台衿等の部分の型紙に応じた図形データも含む)。
【0123】
これら左前身頃二次元基準型紙T43a、左後身頃二次元基準型紙T43b、袖二次元基準型紙T43c(半袖用)、左後ヨーク二次元基準型紙T43d等の二次元基準型紙は二次元の図形データであり、X軸及びY軸に基づく二次元座標系で形状を示すことが可能になっている。そのため、二次元基準型紙の図形データは、外周の輪郭線に加えて、輪郭線上における各頂点及び輪郭線で囲まれた内部の各位置に応じた点の位置も二次元座標系(XY座標値)で表すことが可能になっていると共に、輪郭線で囲まれた範囲を構成する点群データ(点群データに含まれる各点はナンバリングされた識別情報が付与されて識別可能になっている)や、その範囲の面積や、各箇所の寸法等も含むデータになっている。
【0124】
なお、このような二次元基準型紙の図形データに係る二次元座標系のXY座標は、図1に示す三次元座標系のXYZ座標におけるXY座標と対応するものになっている。また、本実施形態において、図9に示す二次元基準型紙データT43は、各パーツ(左前身頃、左後前身頃、袖、左後ヨーク等)の左側となる型紙を含み、右側の型紙は含んでおらす、これは、左側の型紙を左右対称(反対勝手)にすれば、右側の型紙は作成できるためである。
【0125】
このような複数の醜類のパーツ(左前身頃、左後前身頃、袖、左後ヨーク等)に応じた各型紙の図形データは、既存の原型(パターン)をベースにして、対応する身長(図9に示す例では170cm以上175cm未満のH4クラス)及び体格(図9に示す例では普通のK3タイプ)に応じた形状とサイズに変形して作成されたものになっている。なお、基準型紙テーブル60に含まれる他の二次元基準型紙データT11等も、上述した二次元基準型紙データT43と同様に作成されている。
【0126】
図10は、記憶部50gに記憶される三次元基準データテーブル70の中身の一例を示す。三次元基準データテーブル70は、三次元基準人体モデル71及び三次元基準型紙75の各三次元データを格納する。
【0127】
図11(a)は、三次元基準データテーブル70に格納される三次元データに応じた三次元基準人体モデル71の概要を示している。三次元基準人体モデル71は、標準的な身長及び体型の人体の三次元的な形状を表した人体モデル(標準アバター)である。本実施形態の三次元基準人体モデル71では、身長171cm(図8の基準型紙テーブル60におけるH4クラスに相当)、体格として普通(図8の基準型紙テーブル60におけるK3タイプに相当)に応じた三次元の人体形状データになっている。
【0128】
このような三次元基準人体モデル71は、いわゆる相同モデルに基づいたデータ(obj形式のデータ)であり、図1に示すような人体測定システム20で、標準的な身長及び体型(基準身長体型に相当)の人体の三次元測定を行って得たデータに基づき作成されている。三次元基準人体モデル71は、そのモデル体表面71aに約3万点の点群データを含むと共に、これら点群データの中から所定の点同士を繋いだ多角形(本実施形態では三角形)のメッシュの集合体であるポリゴンを構成して、人体の体表面を表現する。
【0129】
また、モデル体表面71aに位置する点群データに含まれる各点は、識別情報(識別符号)として、それぞれに番号付け(ナンバリング)がなされており(例えば、1番目の点はP1、2番目の点はP2など)、そのような番号付けにより個々の点を識別できるようにしている。なお、三次元基準人体モデル71の座標系は、上述した人体測定システム20の場合と同様になっており(図1参照)、人体を正面から見た場合の幅方向をX軸方向、人体の身長方向をY軸方向、人体の厚み方向をZ軸方向にする。
【0130】
図11(b)は、上述した三次元基準人体モデル71のモデル体表面71aを形成するポリゴンの一部を、概略的に拡大表示したものである。本実施形態の三次元基準人体モデル71は、ポリゴンを構成するメッシュ(ポリゴンメッシュ)として三角形の一種である正三角形を用いており、モデル体表面71aの点群データの中から正三角形を構成する点を抽出し、これら抽出した点を繋いで正三角形のメッシュを形成する。
【0131】
形成された各メッシュは、それぞれを識別できるように識別情報が付与されており、例えば、図11(b)に示す例では、メッシュM1(点P1、P2、P3で構成)、メッシュM2(点P2、P3、P4で構成)、メッシュM3(点P2、P4、P5で構成)、メッシュM4(点P4、P5、P6で構成)、以下、メッシュM5、M6、M7、M8、M9、M10等のようにナンバリング的な識別情報により、個々のメッシュを区別できるようにしている。なお、図11(b)に示す各メッシュM1、M2、M3等の中には、正三角形でないように見えるものが存在するが、これは、メッシュM1等が形成されるモデル体表面71aが三次元的な曲面になっているため、一部のメッシュが斜めから見た状態で示されるためである。
【0132】
さらに、本実施形態の三次元基準人体モデル71に応じた三次元データは、モデル体表面71aにおいて、図9に示すような各パーツ(左前身頃、左後前身頃、袖、左後ヨーク等)に応じた型紙の配置箇所(型紙を着せ付ける箇所、型紙装着箇所に相当)が予め設定(規定)されたものになっている。
【0133】
例えば、左前身頃の型紙の装着箇所は、図11(a)において破線で示す範囲(左前身頃範囲72)になっている。そして、三次元基準人体モデル71に応じた三次元データには、左前身頃範囲72の輪郭線上に位置するモデル体表面71aの各点を示す情報が含まれると共に、左前身頃範囲72に位置するメッシュ及び各点についても、その範囲に位置することを示す情報が含まれている。上述したような仕様の三次元基準人体モデル71に応じた三次元データが、三次元基準人体モデル71のデータとして、システム提供側の者により予め作成されて三次元基準データテーブル70に格納されている。
【0134】
また、図10の三次元基準データテーブル70に格納される三次元基準型紙75は、図8の基準型紙テーブル60の中から、上述した三次元基準人体モデル71と同様の基準身長体型(標準的な身長及び体型)に応じた二次元基準型紙(左前身頃、左後身頃、袖、左後ヨーク等の各パーツのセットを含む)を特定し、その特定した二次元基準型紙を三次元基準人体モデル71のモデル体表面71a(型紙装着箇所となる体表面)に沿わして、そのモデル体表面71aに応じた三次元形状に変形させたものである。本実施形態において、三次元基準人体モデル71に応じた基準身長体型に、基準型紙テーブル60におけるH4クラスでのK3タイプを用いており、このH4クラス及びK3タイプに応じた二次元基準型紙T43に含まれる各パーツの二次元型紙をベースに、三次元基準型紙75は予め作成されている。
【0135】
図12(a)は、三次元基準型紙75に含まれる各パーツ(左前身頃、左後前身頃、袖、左後ヨーク等)の型紙の三次元データの例として、左前身頃三次元基準型紙76を示す。この左前身頃三次元基準型紙76は、図9に示す左前身頃二次元基準型紙T43aを、図11(a)に示す三次元基準人体モデル71(図11(a)参照)のモデル体表面71aに沿わして三次元形状に変形して作成されたものである。
【0136】
図13(a)、(b)は、この左前身頃三次元基準型紙76が作成される状況を示している。先ず、図13(a)に示すように、三次元基準人体モデル71は上述したように、そのモデル体表面71aに左前身頃範囲72が予め規定されているので、その左前身頃範囲72に、左前身頃二次元基準型紙T43aをあてがう(例えば、左前身頃二次元基準型紙T43aにおける喉元の頂点A1を、左前身頃範囲72の喉元の頂点B1と一致するように、左前身頃二次元基準型紙T43aをあてがう)。そして、モデル体表面71aは三次元曲面なので、その三次元曲面に沿って張り付くように、左前身頃二次元基準型紙T43aを変形していくことで、三次元形状の左前身頃型紙(左前身頃三次元基準型紙76に応じたもの)を形成する(図13(b)に示す状況)。このような三次元形状の左前身頃型紙は、その型紙自体が点群データにより構成されると共に、三次元基準人体モデル71のモデル体表面71a(左前身頃範囲72)の各ポリゴンも転写されるように、同等のポリゴンを含むものになっている。
【0137】
図13(b)に示す状況では、三次元基準人体モデル71の左前身頃範囲72を、三次元形状の左前身頃型紙が覆って張り付いた(密着した)状態になっているので、左前身頃範囲72に応じた三次元曲面を形成するポリゴンのメッシュの構成を、三次元形状の左前身頃型紙へ転写するようにして、三次元形状の左前身頃型紙のポリゴン化を行うことにより、図12(a)に示す左前身頃三次元基準型紙76を作成する。
【0138】
このように作成された左前身頃三次元基準型紙76は、元になった左前身頃二次元基準型紙T43aを構成する点群データが三次元的に変位することで構成されており、左前身頃三次元基準型紙76を構成する点群データ(点群データに含まれる各点は、元の左前身頃二次元基準型紙T43aと同様に、ナンバリングされて識別可能になっている)は、図11(a)に示す三次元基準人体モデル71に準じた三次元座標系における座標位置を有している(図11(a)に示すXYZ座標軸と、図12(a)に示すXYZ座標軸は同じ座標系)。また、これら点群データの中の所要点により、転写されたメッシュ(正三角形のメッシュポリゴン)を形成することになる。
【0139】
図12(b)は、左前身頃三次元基準型紙76の三次元表面(三次元的に湾曲した表面)に応じた型紙表面76aを形成するポリゴンを、概略的に拡大表示したものであり、上述したように、三次元基準人体モデル71のポリゴンメッシュを転写したことから、図11(b)に示す三次元基準人体モデル71のモデル体表面71aを形成するポリゴンと同等な構成になっていると共に、ポリゴンを構成する各メッシュを識別する識別情報も、左前身頃三次元基準型紙76に係るデータに含まれている。
【0140】
図12(b)に示す左前身頃三次元基準型紙76の型紙表面76aを形成するポリゴンのメッシュも、図11(b)に示す三次元基準人体モデル71のモデル体表面71aを形成するポリゴンと同様に、メッシュTM1(点TP1、TP2、TP3で構成)、メッシュTM2(点TP2、TP3、TP4で構成)、メッシュTM3(点TP2、TP4、TP5で構成)、メッシュTM4(点TP4、TP5、TP6で構成)、以下、メッシュTM5、TM6、TM7、TM8、TM9、TM10等のようにナンバリング的な識別情報により、個々のメッシュを区別可能にしている。なお、図12(b)に示すメッシュTM1等の中には、正三角形でないように示されるものが存在するが、これも図11(b)に示す場合と同様、左前身頃三次元基準型紙76の型紙表面76aが三次元的な曲面形状になっているため、一部のメッシュが斜めから見た状態で示されるためである。
【0141】
なお、上記では左前身頃三次元基準型紙76について説明したが、他のパーツである左後身頃、左袖、左後ヨーク等の三次元基準型紙も、左前身頃三次元基準型紙76と同様な手順により予め作成され、これら予め作成された各パーツがセットになった三次元基準型紙75が、図10に示す三次元基準データテーブル70に格納されている。
【0142】
図14は、記憶部50gに記憶されるゆとり量データテーブル80の中身の一例を示す。ゆとり量データテーブル80は、身長及び体型に応じて分類した複数のゆとり量データを格納する。ゆとり量データテーブル80に格納される各ゆとり量データは、人体の部位ごとに、ゆとり量(着用の際に必要な余裕量(ゆるみ量)や、動きに必要な運動量等を含んだゆとりの量の数値)を規定している。
【0143】
なお、本実施形態のゆとり量データテーブル80は、男性向けの人体におけるシャツに応じた各部位のゆとり量を規定したデータ(ゆとり量データ)を含むものになっているが、作成する型紙が男性向けのジャケットやパンツ用であるときは、ゆとりデータテーブル80も、男性用のジャケットやパンツに応じたゆとり量を規定したデータを含むものになる。また、作成する型紙が女性用の衣服(ブラウス、ジャケット、パンツ、スカート等)である場合は、ゆとりデータテーブル80も、それらの女性用の各種衣服に応じたゆとり量を規定したデータを格納したものになる。
【0144】
ゆとり量データテーブル80は、上述した基準型紙テーブル60(図8参照)と基本的に同様の構成になっており、縦方向に身長の種類、横方向に体格の種類を規定し、身長及び体型(体格)ごとに、ゆとり量を示すデータを格納する。縦方向の身長の種類としては、H1(160cm未満)、H2(160cm以上165cm未満)、H3(165cm以上170cm未満)、H4(170cm以上175cm未満)、H5(175cm以上180cm未満)、H6(180cm以上185cm未満)、H7(185cm以上)の計7クラスを有する。
【0145】
また、横方向の体型(体格)の種類は、K1(細目)、K2(細目)、K3(普通)、K4(やや太目)、K5(太目)の計5タイプに分けている。これらK1~K5の各タイプは、上述した身長毎に対する各部位(胸廻、胴廻、腰廻等)の数値範囲を規定しており、それにより、身長及び体格に応じたゆとり量を、図14に示すゆとり量データE11~E74の中から特定できるようになっている。
【0146】
ゆとり量データE11~E75は、左前身頃、左後見頃等の各パターンの型紙ごとに、ゆとり量の数値を規定したものとなっている。また、ゆとり量データE11~E75が規定するゆとり量は、基本的に各部位の寸法に対して約3~18%程度となる値にしており、それにより、身長や体型等に応じて様々な値が設定される。
【0147】
例えば、同じクラス(例えば、165cm以上170cm未満のH1クラス)であれば、細目のK1タイプから太目のK5タイプへと順に体型が大きくなるにつれて、ゆとり量の数値(各部位のゆとり量を示す値)は大きくなり、また、同じタイプ(例えば、普通のK3タイプ)であれば、H1クラスからH7クラスへと順に身長が大きくなるにつれて、ゆとり量の数値は少しずつ大きくなるように設定される。以上のことから、ゆとり量データテーブル80において、H1クラス及びK1タイプに対応したゆとり量データE11のゆとり量が最も小さいものとなり、H7クラス及びK5タイプに対応したゆとり量データE74のゆとり量が最も大きいものになる。
【0148】
図15(a)(b)は、ゆとり量データテーブル80に格納されるゆとり量データの中身の例(型紙として左前身頃の部分の例)を示し、図15(a)は、ゆとり量データE43が設定する左前身頃の型紙における人体の部位ごとのゆとり量の具体的な数値を示し、図15(b)は、ゆとり量データE74が設定する左前身頃の型紙における人体の部位ごとのゆとり量の具体的な数値を示す。
【0149】
図15(a)のゆとり量データE43は、胸廻のゆとり量として3.5cm、胴廻のゆとり量として3.0cm、腰廻のゆとり量として3.0cmという各数値を設定している。また、図15(b)のゆとり量データE74は、胸廻のゆとり量として5.0cm、胴廻のゆとり量として4.5cm、腰廻のゆとり量として4.5cmという各数値を設定する。このように、ゆとり量データE74は、ゆとり量データE43に比べて、対応する身長及び体格がいずれも大きいので、規定するゆとり量も大きな値になっている。
【0150】
また、図15(a)、(b)に示した例のように設定される各ゆとり量に対する部位(胸廻、胴廻、腰廻)に応じた位置も、各ゆとり量データE11~E74は、座標値により規定している。例えば、上述した左前身頃の型紙における胸廻、胴廻、腰廻等のゆとり量については、Y座標の数値(身長方向における座標値)が規定されており、それにより、胸廻、胴廻、腰廻等のゆとり量はY軸に垂直な平面上(水平面に平行な平面上)において適用されることになる。
【0151】
図16は、記憶部50gに記憶されるユーザデータベース90の中身の一例を示す。ユーザデータベース90は、ユーザIDごとに、ユーザ情報及び各種ユーザデータが格納されたものになっている。ユーザIDは、ユーザ登録時に、そのユーザを識別するために型紙作成システム2(型紙作成装置50)で発行された識別情報である。また、ユーザデータベース90に格納されるユーザ情報は、ユーザ登録の際、人体測定システム20(測定処理装置30)又は通信端末装置3等から送られてくるユーザに関する情報であり、このようなユーザ情報に含まれる項目としては、ユーザの氏名、年齢、性別、電話番号、電子メールアドレス、ログインパスワード、三次元測定を行う店舗名や店舗ID等がある。
【0152】
さらに、ユーザデータベース90に格納される各種ユーザデータとしては、三次元測定値、三次元ユーザモデル、ユーザ型紙に関する各データ等がある。測定値のデータは、人体測定システム20で三次元測定されたユーザに関する各種測定値(測定日を含む)であり、各種測定値の中身としては身長、各部位の寸法、体表面の各箇所の表面積等があり、ファイル形式のデータになっている。
【0153】
三次元ユーザモデルのデータは後述するように、型紙作成システム2(型紙作成装置50)にて、三次元測定結果による測定値データ等に基づき作成されるユーザの体型を三次元的に表した三次元ユーザモデル(三次元ユーザアバター)を表すデータであり、こちらもファイル形式のデータになっている。また、ユーザ型紙のデータは後述するように、型紙作成システム2(型紙作成装置50)にて作成されるユーザの体型にマッチした衣服(例えば、シャツ)の型紙(二次元型紙)を表したデータであり、これもファイル形式のデータになっている。なお、ユーザが複数のユーザ型紙を作成していれば、ユーザデータベース90には、そのユーザのユーザIDに対応づけて複数のユーザ型紙のデータが格納される(また、複数回の三次元測定を行ったユーザには、複数の三次元測定値、複数の三次元ユーザモデルのデータが格納される)。ユーザ型紙のデータが作成されてユーザデータベース90に格納されると、その格納されたユーザ型紙のデータの目録を示すインデックスのデータも一緒に作成されて格納される。
【0154】
次に、記憶部50gに記憶されるプログラム(コンピュータプログラム)であるサーバプログラムP10及び型紙作成プログラムP11について説明する。サーバプログラムP10は、サーバコンピュータ用のオペレーティングシステムに応じた各種処理を規定したものであり、この規定内容に基づいた処理をMPU50aが行うことで、型紙作成装置50は、サーバコンピュータ(サーバ装置)としての各種機能を果たす。
【0155】
記憶部50gに記憶される型紙作成プログラムP11は、本発明に係る中心的な役割を果たすコンピュータプログラムであり、ユーザの身長及び体型に応じた型紙の作成に係る各種処理をMPU50aが各手段として実行することを規定したプログラミング内容になっている。型紙作成プログラムP11が規定する主な処理の種類としては、ユーザ登録処理、ログイン処理、ユーザ型紙の作成等に係る処理等がある。
【0156】
型紙作成プログラムP11が規定するユーザ登録処理は、通信モジュール50bで登録に必要なユーザ情報を受信した場合、そのユーザ情報の受信をトリガーにして開始される。ユーザ情報を受信すると、MPU50aは先ず、受信したユーザ情報に含まれるメールアドレスが、ユーザデータベース90に格納されているか否かを検索して確認する。検索対象のメールアドレスが既にユーザデータベース90に格納されていた場合、二重のユーザ登録を防止するため、入力されたユーザ情報では登録できない旨の通知を、ユーザ情報の送信元(図1に示す測定処理装置30又は通信端末装置3等)へ返信する処理をMPU50aは行う。なお、型紙作成装置50(MPU50a)にとって、測定処理装置30又は通信端末装置3は、外部の通信端末に相当する。
【0157】
一方、検索対象のメールアドレスがユーザデータベース90に格納されていない場合、MPU50aは新たなユーザIDを発行し、その新たなユーザIDに対応付けて、受信したユーザ情報をユーザデータベース90に格納する処理を行う。それからMPU50aは、ユーザ登録完了の通知を、ユーザ情報の送信元(図1に示す測定処理装置30又は通信端末装置3等)へ返信する処理を行う。このようにユーザ登録が完了すれば、そのユーザは、本発明に係る型紙作成のサービスを享受できる状態になる。
【0158】
また、型紙作成プログラムP11が規定するログイン処理については、外部の通信端末から送られてくるログイン情報を型紙作成装置50が受信したことに伴って、ログインに係る処理が開始され、ログイン処理が完了すると、ログイン完了の通知が、ログイン情報の送信元となる外部の通信端末へ型紙作成装置50から送信される。
【0159】
すなわち、通信モジュール50bでログインに必要なログイン情報(例えば、ログインIDに相当するメールアドレスと、パスワード)を受信した場合、そのことをトリガーにして、ログインに係る処理が型紙作成装置50で開始される。ログイン情報を受信すると、MPU50aは先ず、受信したログイン情報(メールアドレス及びパスワード)がユーザデータベース90に格納されているか否かを検索して確認する。検索対象のログイン情報がユーザデータベース90に格納されていない場合、MPU50aはログイン不可の通知を、ログイン情報の送信元(図1に示す測定処理装置30又は通信端末装置3等)へ返信する処理を行う。
【0160】
一方、検索対象のログイン情報がユーザデータベース90に格納されている場合、MPU50aは、そのログイン情報に係るユーザ(ユーザID)をログイン状態に設定すると共に、ログイン完了の通知を、ログイン情報の送信元(図1に示す測定処理装置30又は通信端末装置3等)へ返信する処理を行う。なお、設定されたログイン状態は、ログオフの通知を受信するまで、又は、測定処理装置30又は通信端末装置3等で操作の受付が一定時間以上の無いときまで、継続される。
【0161】
図17、18は、型紙作成プログラムP11の規定に基づく、MPU50aの制御により行われるユーザ型紙の作成に係る一連の処理手順を示す第1、第2フローチャートである(これらの各フローチャートで示される各段階の処理内容が、型紙作成方法に係る発明に該当する)。第1フローチャートは、上述したログイン処理が完了して、ログイン中となった状態からの各処理を示している。
【0162】
まず、MPU50aは、測定処理装置30からログイン中のユーザの測定結果(三次元の測定結果)を受信したか否かを判断する(S1)。測定結果を受信しない場合(S1:NO)、測定処理装置30から測定結果が送られてくるのを待つ状態となる。一方、測定結果を受信した場合(S1:YES)、受信した測定結果を、ログイン中のユーザのユーザIDに対応付けてユーザデータベース90へ、測定日時と共に記憶する処理をMPU50aは行う(S2)。
【0163】
それから、MPU50aは、記録した測定結果(ユーザの三次元測定の結果)を用いて三次元ユーザモデル(三次元ユーザアバター)を作成する(S3)。作成される三次元ユーザモデルは、上述した三次元基準データテーブル70に格納される三次元基準人体モデル71(図11(a)参照)と同等の仕様(相同モデルの仕様)になっている。なお、作成された三次元ユーザモデルは、ログイン中のユーザのユーザIDに対応付けてユーザデータベース90へ、モデル作成日時と共に記憶される。
【0164】
図19(a)は、上述したS3の段階で作成される一例のる三次元ユーザモデル171を示す。この三次元ユーザモデル171は、人体測定システム20で三次元測定されたユーザUに応じた三次元人体モデルであり、ユーザモデル体表面171aに約3万点の点群データを有すると共に、これら点群データの中から所定の点同士を繋いだ三角形のメッシュの集合体であるポリゴンを構成して、ユーザ人体の体表面を表現する。
【0165】
ユーザモデル体表面171aに位置する点群データに含まれる各点は、上述の三次元基準データテーブル70に記憶される三次元基準人体モデル71と同様の順序でナンバリングされる識別情報(識別符号)が付与されており、それにより、三次元ユーザモデル171と三次元基準人体モデル71の間では、識別情報のナンバリングされた数値情報に基づき、それぞれの体表面の点について対応関係が成立している。なお、図19(a)に示すXYZ座標系は、図11(a)に示すXYZ座標系と同じであるので、三次元ユーザモデル171のユーザモデル体表面171a上の点と、三次元基準人体モデル71のモデル体表面71a上の点は、同一の座標系(XYZ座標)に基づき位置の対比が可能になっている(それにより、所定範囲の表面積の対比も可能になっている)。
【0166】
図19(b)は、三次元ユーザモデル171のユーザモデル体表面171aを形成するポリゴンを、概略的に拡大表示したものである。ポリゴンを構成するメッシュ(ポリゴンメッシュ)の三角形には、上述した図11(b)に示す三次元基準人体モデル71のモデル体表面71aを構成するメッシュの三角形と同様の順序で、それぞれを識別する識別情報が付されている。そのため、ユーザモデル体表面171aを形成するメッシュ(三角形)と、モデル体表面71aを形成するメッシュ(三角形)も識別情報に基づき、それぞれのメッシュについて対応関係が成立している。
【0167】
図19(b)のユーザモデル体表面171aを形成するメッシュ(三角形)の例では、メッシュm1は点p1、p2、p3で構成されており、メッシュm2は点p2、p3、p4で構成されており、メッシュm3は点p2、p4、p5で構成されており、以下、メッシュm4、m5、m6、m7、m8、m9、10等も同様に各点で構成される。
【0168】
図19(b)のメッシュm1は(mは小文字のアルファベット)、図11(b)のメッシュM1と対応し(Mは大文字のアルファベット)、以下、メッシュm2はメッシュM2と対応し、メッシュm3はメッシュM3と対応するように、識別情報に含まれる数字(番号)が同じもの同士が、図19(b)と図11(b)で示す各メッシュにおいて対応関係が成立する。
【0169】
なお、図19(b)の各メッシュm1等を構成する点p1、p2、p3等(pは小文字のアルファベット)も、図11(b)の各メッシュM1等を構成する点P1、P2、P3等(Pは大文字のアルファベット)と対応関係が成立しており、具体的には、点p1と点P1が対応し、点p2と点P2が対応し、点p3と点P3が対応する(識別情報に含まれる数字(番号)が同じもの同士が対応する点となる)。
【0170】
図17の第1フローチャートの説明に戻り、S3の段階の次に、MPU50aは、作成した三次元ユーザモデルを、三次元基準データテーブル70から読み出した三次元基準人体モデル71と比較(対比)する(S4)。この比較は、型紙が着用される箇所の範囲において、ユーザモデル体表面171aとモデル体表面71aの表面積、及びユーザモデル体表面171a上の各メッシュを構成する各点とモデル体表面71a上の各メッシュを構成する各点の位置に対して行われる。
【0171】
図20(a)は、左前身頃の型紙が着用される箇所の範囲において、三次元ユーザモデル171と、三次元基準人体モデル71を比較する状況の例を、左前身頃の場合で示したものである。三次元基準人体モデル71のモデル体表面71aには上述したように、前身頃の型紙が着用される箇所の範囲である左前身頃範囲72が設定されているので、三次元ユーザモデル171のユーザモデル体表面171aにおいて、この左前身頃範囲72が対応する範囲(ユーザ左前身頃範囲172)を特定する処理がMPU50aにより行われる。
【0172】
三次元ユーザモデル171はユーザの体型を表し、三次元基準人体モデル71の体型と異なることから、ユーザモデル体表面171a上でのユーザ左前身頃範囲172の表面積も、三次元基準人体モデル71の左前身頃範囲72の表面積とも異なっており、MPU50aは、ユーザ左前身頃範囲172の表面積と、三次元基準人体モデル71の左前身頃範囲72の表面積との比較も行って、両者の大小や比率等を特定する。
【0173】
図11(a)(b)に示す三次元基準人体モデル71の左前身頃範囲72の表面積を算出するのは、左前身頃範囲72に含まれる各メッシュM1等のそれぞれの面積を求めてから、それらの各メッシュの面積の総合計より得るようにしている。この際、左前身頃範囲72の輪郭線にかかる箇所では、3点による完全なメッシュではなく、メッシュ内を輪郭線が横切るような不完全なメッシュも生じるが、このような不完全なメッシュについても、それぞれ面積を求めて総合計に含ませることで、左前身頃範囲72の表面積を算出する。
【0174】
三次元ユーザモデル171のユーザ左前身頃範囲172の表面積も、上述した三次元基準人体モデル71の左前身頃範囲72の表面積と同様に、MPU50aは、ユーザ左前身頃範囲172に含まれる複数のメッシュ(ユーザ左前身頃範囲172の輪郭線が横切る不完全なメッシュも含む)の面積の総和により求める。そして、MPU50aは、このように求めたユーザ左前身頃範囲172の表面積と、左前身頃範囲72の表面積を比較し、大小と、その比率等を特定することになる。
【0175】
また、三次元基準人体モデル71に応じた三次元データには、左前身頃範囲72の輪郭線上に位置する点を示す情報や、左前身頃範囲72に含まれるメッシュ及び各点を示す情報が含まれているので、このような三次元基準人体モデル71の左前身頃範囲72に係る各情報に基づき、これら左前身頃範囲72の輪郭線上の各点や左前身頃範囲72の範囲内の各点のそれぞれに対応する各点を、点MPU50aは、三次元ユーザモデル171のユーザモデル体表面171a上で特定し、それにより、左前身頃範囲72に対応するユーザ左前身頃範囲172を特定する処理を行うと共に、このような特定された両者の対応する点の位置(XYZ座標値)の比較を行う。
【0176】
それから、図17のフローチャートに示すように、ステップS5及びS6で、三次元基準データテーブル70に格納される三次元基準型紙75を変形する処理を行う。すなわち、ステップS5の段階では、上述した比較の結果に基づき(比較結果を用いて)、三次元基準型紙75を三次元ユーザモデル171のユーザモデル体表面171aにあてがって、そのユーザモデル体表面171a沿わした形状へ変形してから(図20(b)参照)、ステップS6の段階では更に、余裕分及びゆとり量等を含ませる変形を行って、仮三次元ユーザ型紙の作成を行う。
【0177】
詳しくは、ステップS5にて、MPU50aは、三次元基準データテーブル70から三次元基準型紙75を読み出し、その三次元基準型紙75を、三次元ユーザモデル171の型紙装着箇所となるユーザモデル体表面171aに応じた形状へ変形する処理を行うことで、仮三次元ユーザ型紙(変形した三次元基準型紙75に相当)を作成する。この変形処理では、図20(b)に示すように、三次元基準型紙75(例えば、左前身頃三次元基準型紙76)をユーザモデル体表面171aにおける型紙装着箇所(例えば、ユーザ左前身頃範囲172)に沿わして変形(三次元的に変形)するにあたり、三次元ユーザモデル171と三次元基準人体モデル71との比較結果(S4の段階の比較結果)が用いられる。なお、このように三次元基準型紙75(例えば、左前身頃三次元基準型紙76)を三次元的に変形したものが、仮三次元ユーザ型紙(例えば、仮左前身頃三次元ユーザ型紙176)になる。
【0178】
上述したS4の段階の比較の結果に基づいて三次元基準型紙75を変形する処理は、三次元基準人体モデル71における型紙の装着範囲と三次元ユーザモデル171におけるユーザ型紙の装着範囲の表面積の比較結果による概要的な相似変形、及び三次元基準型紙75の各点を、三次元基準人体モデル71の各点と三次元ユーザモデル171の各点の対応関係に基づき移動することによる詳細な変形の処理が含まれており、この変形処理の一例を、三次元基準型紙75に含まれる左前身頃三次元基準型紙76(図12(a)参照)の場合で説明する。
【0179】
まず、MPU50aは、ユーザ左前身頃範囲172の表面積と基準人体モデル71の左前身頃範囲72の表面積との比較結果より得られた両者の大小や比率等に基づき、三次元基準型紙75を相似変形する処理を行う。
【0180】
例えば、比較結果より、ユーザ左前身頃範囲172の表面積が、基準人体モデル71の表面積より大きく、その比率が1.2倍の場合であれば、左前身頃三次元基準型紙76を相似的に1.2倍で拡大変形する処理を行う。また、比較結果より、ユーザ左前身頃範囲172の表面積が、基準人体モデル71の表面積より小さく、その比率が0.9倍の場合であれば、左前身頃三次元基準型紙76を相似的に0.9倍で縮小変形する処理を行う。このような相似変形処理を行うことで、次の対応関係に基づく各点の移動変形処理において、移動すべき対象となる点の数、移動する量などの抑制を図れ、全体的な移動変形処理の効率化を図れるメリットがある。
【0181】
また、三次元基準型紙75に含まれる左前身頃三次元基準型紙76は上述したように、三次元基準人体モデル71の左前身頃範囲72に貼り付けて、その左前身頃範囲72に応じたポリゴンのメッシュ構成を転写するようにして三次元形状が形成されているので、左前身頃三次元基準型紙76を形成する各メッシュTM1、TM2、TM3等の頂点となる各点TP1、TP2、TP3等(図12(b)参照)は、三次元基準人体モデル71の左前身頃範囲72における各メッシュM1、M2、M3等の頂点となる各点P1、P2、P3等(図11(b)参照)と対応する。
【0182】
さらに、上述したように、三次元基準人体モデル71の左前身頃範囲72を形成する各メッシュM1、M2、M3等の各点P1、P2、P3等(図11(b)参照)は、三次元ユーザモデル171のユーザ左前身頃範囲172を形成する各メッシュm1、m2、m3等の各点p1、p2、p3等(図19(b)参照)と対応関係が成立するので、結局、左前身頃三次元基準型紙76の各点TP1、TP2、TP3等(図12(b)参照)も、三次元ユーザモデル171のユーザ左前身頃範囲172の各点p1、p2、p3等(図19(b)参照)と対応関係が成立する。
【0183】
この左前身頃三次元基準型紙76の各点TP1等と、三次元ユーザモデル171のユーザ左前身頃範囲172の各点p1等との対応関係に基づいて、MPU50aは、左前身頃三次元基準型紙76の各点TP1等を、対応関係の成立するユーザ左前身頃範囲172の各点p1等の位置の座標(XYZ座標値)へ一致するように移動させる処理を行って、左前身頃三次元基準型紙76を変形する。この処理により、左前身頃三次元基準型紙76は、三次元測定を行ったユーザの体型に応じた形状に変形されることになる。この変形では、三次元測定を行ったユーザの体型や寸法(身長、肩幅、胸囲等の寸法)と、三次元基準人体モデル71の体型や寸法の差が大きいほど、変形の度合いが大きくなる。このようなS5の段階で変形処理の完了した左前身頃三次元基準型紙76を、仮左前身頃三次元ユーザ型紙176と称し、以下、このような仮の三次元ユーザ型紙の総称を仮三次元ユーザ型紙と云う。
【0184】
図21(a)は、左前身頃三次元基準型紙76(図12(a)参照)を、S5の段階で変形して作成した仮左前身頃三次元ユーザ型紙176を示す。この仮左前身頃三次元ユーザ型紙176は、上述したように左前身頃三次元基準型紙76を変形して作成したので、そのユーザ型紙表面176aには、左前身頃三次元基準型紙76の型紙表面76aを形成するポリゴン(メッシュ)や各点に対応するポリゴン及びメッシュが存在し、これらのメッシュ及び各点を含む仮左前身頃三次元ユーザ型紙176に係るXYZ座標系(図21(a)に示すXYZ座標系)も、左前身頃三次元基準型紙76に係るXYZ座標系(図12(a)に示すXYZ座標系)と同じになっている(それゆえ、図21(a)に示すXYZ座標系は、図11(a)及び図19(a)等に示すXYZ座標系とも同じになっている)。
【0185】
図21(b)は、仮左前身頃三次元ユーザ型紙176の三次元表面(三次元的に湾曲した表面)に応じたユーザ型紙表面176aを形成するポリゴン(メッシュ)及び各点を概略的に拡大表示したものであり、図12(b)に示す左前身頃三次元基準型紙76の型紙表面76aと基本的に同様の構成になっているが、三次元測定を行ったユーザの体型や寸法により、メッシュの面積や点(メッシュを構成する頂点)の位置等は、ユーザ型紙表面176aと型紙表面76aの間で異なったものになる。
【0186】
仮左前身頃三次元ユーザ型紙176のユーザ型紙表面176aを構成するメッシュの例としては、メッシュtm1(点tp1、tp2、tp3で構成)、メッシュtm2(点tp2、tp3、tp4で構成)、メッシュtm3(点tp2、tp4、tp5で構成)、メッシュtm4(点tp4、tp5、tp6で構成)、メッシュtm5、tm6、tm7、tm8、tm9、tm10等がある(メッシュや点を区別する識別情報は小文字のアルファベットになる)。
【0187】
図21(b)に示す仮左前身頃三次元ユーザ型紙176の点tp1は、図12(b)に示す左前身頃三次元基準型紙76の点TP1と対応し、以下、点tp2は点TP2と対応し、点tp3は点TP3と対応し、点tp4は点TP4と対応するが、点tp5以下の対応関係も同様に、符号中の数字が同じもの同士に対応関係が成立する)、対応する両者の位置は、三次元測定が行われたユーザと三次元基準人体モデル71との体型や寸法の差に応じて異なったものになっている。
【0188】
また、図21(b)に示す仮左前身頃三次元ユーザ型紙176のメッシュtm1は、図12(b)に示す左前身頃三次元基準型紙76のメッシュTM1と対応し、以下、メッシュtm2はメッシュTM2と対応し、メッシュtm3はメッシュTM3と対応し、メッシュtm4はメッシュTM4と対応するが、(メッシュtm5以下の対応関係も同様に、符号中の数字が同じもの同士に対応関係が成立する)対応する両者の面積(表面積)は、三次元測定が行われたユーザと三次元基準人体モデル71との体型や寸法の差に応じて異なったものになっている。
【0189】
次に、図17のフローチャートのS6の段階において、先ず、余裕分を含ませる変形を行う。すなわち、S5の段階で作成された仮三次元ユーザ型紙(例えば、仮左前身頃三次元ユーザ型紙176)は、三次元ユーザモデル171のユーザモデル体表面171a上の型紙装着箇所(例えば、ユーザ左前身頃範囲172)に合わせて作成されるため、衣服の運動量や着やすさ等に関連するベースとなる余裕分が十分でないことから、まず、このような余裕分を確保するために、仮三次元ユーザ型紙の面積(表面積)を求め、その求めた表面積が、三次元ユーザモデル171のユーザモデル体表面171a上の型紙装着箇所の表面積に対して、所定の数値範囲で大きくなるように、仮三次元ユーザ型紙を相似的に変形(拡大変形)する。以下、仮三次元ユーザ型紙の中の仮左前身頃三次元ユーザ型紙176の場合を例にして、この処理を詳しく説明する。
【0190】
仮左前身頃三次元ユーザ型紙176の表面積(面積)の算出は、仮左前身頃三次元ユーザ型紙176に含まれる各メッシュtm1等のそれぞれの面積を求めてから、それらの各メッシュの面積の総合計より得るようにしている。この際、仮左前身頃三次元ユーザ型紙176の輪郭線にかかる箇所では、3点による完全なメッシュではなく、メッシュ内を輪郭線が横切るような不完全なメッシュも生じるが、このような不完全なメッシュについても、それぞれ面積を求めて総合計に含ませることで、仮左前身頃三次元ユーザ型紙176の表面積を算出する。なお、対比対象となる三次元ユーザモデル171のユーザ左前身頃範囲172の表面積は、上述したS4の段階で求めた数値を利用する。
【0191】
それから、MPU50aは、仮左前身頃三次元ユーザ型紙176の表面積(面積)と、三次元ユーザモデル171のユーザ左前身頃範囲172の表面積を対比する。なお、仮左前身頃三次元ユーザ型紙176は上述したように、左前身頃三次元基準型紙76の点(輪郭線を構成する点など)を移動することで、変形して作成するので、三次元ユーザモデル171のユーザ左前身頃範囲172と正確に一致しないことがある。
【0192】
対比により、仮左前身頃三次元ユーザ型紙176の表面積(面積)が、ユーザ左前身頃範囲172の表面積以下である場合、仮左前身頃三次元ユーザ型紙176は小さすぎるので、MPU50aは仮左前身頃三次元ユーザ型紙176を相似的に拡大変形する処理を行う。この場合は、少し大きめ余裕分を確保するために、ユーザ左前身頃範囲172の表面積の1.02~1.15倍となる範囲で、仮左前身頃三次元ユーザ型紙176を相似的に拡大変形する。なお、オーダーメイド用の型紙としてユーザの体型にピッタリ合わせることを重視するときは、上記の範囲の中で約1.05~1.10倍となる範囲から倍率を選定することが実際的となる。
【0193】
また、対比により、仮左前身頃三次元ユーザ型紙176の表面積(面積)が、ユーザ左前身頃範囲172の表面積を超えて1.10倍以下の範囲に収まれば、基本的にユーザの体型に対して適切な寸法と思われるので、仮左前身頃三次元ユーザ型紙176を相似的に変形する処理は不要となるが、オーダーメイド用の型紙としてユーザの体型にピッタリ合わせることを重視する場合、MPU50aは、上述した1.05~1.10倍程度の範囲の中から倍率を選定し(例えば、1.07倍程度)、その選定した倍率で仮左前身頃三次元ユーザ型紙176を拡大変形することが好適である。
【0194】
なお、対比により、何らかの原因により、仮左前身頃三次元ユーザ型紙176の表面積(面積)が、ユーザ左前身頃範囲172の表面積の1.15倍を超過するようであれば、今度は、仮左前身頃三次元ユーザ型紙176の表面積(面積)がユーザ左前身頃範囲172に対して大きすぎるので、ユーザ左前身頃範囲172の表面積に対し1.04~1.14倍となる範囲に収まるように、仮左前身頃三次元ユーザ型紙176を相似的に縮小する処理をMPU50aは行う。なお、この場合も、縮小する範囲は、上記の範囲の中で1.05~1.10倍程度の範囲の中から倍率を選定することが好適である。このような余裕分に係る変形が終わると、次に、MPU50aは、ゆとり量を仮三次元ユーザ型紙(変形した三次元基準型紙に相当)に適用して更に変形する処理を行う。
【0195】
ゆとり量の適用は、図14に示すゆとり量データテーブル80に格納されるゆとり量データ(図15(a)(b)参照)を用いて行うことになる。MPU50aは、図17のフローチャートのS1の段階で取得した測定結果(ユーザの三次元測定の結果)に基づく身長及び体型に応じたゆとり量データを、ゆとり量データテーブル80から特定する。具体的には、三次元測定結果に含まれる身長、胸廻、胴廻、腰廻等の数値情報より、図14に示すゆとり量データテーブル80における縦方向の身長のクラスを特定すると共に(H1~H7クラスの中のいずれかのクラス)、横方向の体型のタイプを特定し(K1~K5の中のいずれかのタイプ)、それら特定した身長のクラス及び体型(体格)のタイプに対応するゆとり量データを特定する(E11~E74の中のいずれかのデータを特定)。
【0196】
そして、MPU50aは、特定したゆとり量データを、上述した余裕分を含ませた仮三次元ユーザ型紙(例えば、前述の仮左前身頃三次元ユーザ型紙176)に適用する処理を行う。ゆとり量データが規定する各数値を仮三次元ユーザ型紙に適用するのは、仮三次元ユーザ型紙を三次元人体モデルに着せ付けた場合に、三次元人体モデルにおける外方へ寸法を広げる向きとする。
【0197】
図21(a)に示す仮左前身頃三次元ユーザ型紙176を例にして、ゆとり量データの規定する数値での広げ方(ゆとりの付け方)を説明すると、基本的にY軸に垂直な平面上(水平面に平行的な平面上)で周長を広げるように、仮左前身頃三次元ユーザ型紙176へ、ゆとり量を適用することになる。この場合、仮左前身頃三次元ユーザ型紙176において、Y軸方向に平行的な直線状の第1縁辺部176bは、図示しない右前身頃と直線的に合わさる側になるので、この第1縁辺部176bと対向する第2縁辺部176cの側で、ゆとり量を適用して周長等を広げるようにする。
【0198】
具体的には、図21(a)に示す白矢印の方向(X軸の矢印が指し示す方向)へ拡がるように、仮左前身頃三次元ユーザ型紙176の第2縁辺部176cにおける胸廻の部位に係る胸部位点176d(脇下の点に相当、特定したゆとり量データが規定する胸廻のY座標値と第2縁辺部176cの交点、図中、黒丸で示す)、胴廻の部位に係る胴部位点176e(特定したゆとり量データが規定する胴廻のY座標値と第2縁辺部176cの交点、図中、黒丸で示す)、及び腰廻の部位に係る腰部位点176f(特定したゆとり量データが規定する腰廻のY座標値と第2縁辺部176cの交点、図中、黒丸で示す)を、ゆとり量データが規定する人体の各部位のゆとり量の数値分だけ移動させて、仮左前身頃三次元ユーザ型紙176をゆとり量に基づき変形する処理をMPU50aが行う。
【0199】
また、この際、第2縁辺部176cにおいて、胸部位点176dから、その上側の肩部分の頂点となる肩頂点176gまでの範囲を、上述した胸部位点176dに追従させて変位する処理をMPU50aが行う。さらに、第2縁辺部176cにおいて、胸部位点176dから胴部位点176eまでの範囲を、移動させる胸部位点176dと胴部位点176eに追従させて変位する処理をMPU50aが行う。さらにまた、第2縁辺部176cにおいて、胴部位点176eから腰部位点176fまでの範囲も、胴部位点176eと腰部位点176fに追従させて変位する処理をMPU50aが行う。そして、第2縁辺部176cにおいて、腰部位点176fから、その下側の裾部分の頂点となる裾頂点176hまでの範囲を、上述した腰部位点176fに追従させて変位する処理をMPU50aが行う。
【0200】
上述したゆとり量を適用する例は、仮左前身頃三次元ユーザ型紙176の場合で説明したが、他の部位の型紙(例えば、左後見頃の型紙)でも同様に行って、全ての部位の型紙について、ゆとり量データテーブル80から特定したゆとり量データが規定するゆとり量を適用することになる。
【0201】
図17の第1フローチャートに戻り、S6の段階で、余裕分及びゆとり量を適用した更なる変形の処理が終了すると、その余裕分及びゆとり量を適用した仮三次元ユーザ型紙を、S3の段階で作成した三次元ユーザモデル(図19(a)の三次元ユーザモデル171参照)へ着用した状態の三次元画像データ(作成中型紙データに相当)を作成する処理をMPU50aが行う(S7)。三次元ユーザモデルは上述したように、体表面に型紙を着用する箇所の範囲が規定されているので、その範囲に、仮三次元ユーザ型紙を着用することになる。
【0202】
この際、ゆとり量を適用した仮三次元ユーザ型紙の中の仮左前身頃三次元ユーザ型紙176や仮左後見頃三次元ユーザ型紙は、重力の影響を考慮して、三次元ユーザモデルの型紙着用範囲において、肩の稜線となる箇所に密着するように着用させて、実際の衣服と同様の着用状態を確保した三次元画像データをMPU50aは作成する。なお、このS7の段階における仮三次元ユーザ型紙は、上述したように、二次元基準型紙データは各パターンの左側となる型紙のみを含む関係上、左側のみに留まるので、作成される三次元画像データにおいて、三次元ユーザモデルに着用される仮三次元ユーザ型紙も左側のみとなる。また、作成された三次元画像データは、RAM50c又は記憶部50gに記憶される。
【0203】
それから、型紙作成装置50(MPU50a)は、ログイン中のユーザから送信される作成中型紙要求を受信したか否かを判断する(S8)。作成中型紙要求を受信していない場合は(S8:NO)、受信待ちの状態になる。また、作成中型紙要求を受信した場合(S8:YES)、S7の段階で作成した仮三次元ユーザ型紙を着用した状態の三次元ユーザモデルの三次元画像データ(作成中型紙データ)を、作成中型紙要求の送信元のアドレスへ送信する処理を型紙作成装置50(MPU50a)は行う(S9)。なお、このように三次元画像データ(作成中型紙データ)を送信することにより、作成中型紙要求の送信元となる通信端末装置3では、図5(a)(b)に示すような作成中型紙確認画面5が作成されて表示されることになる。
【0204】
図18の第2フローチャートに進んで、型紙作成装置50(MPU50a)は、作成中型紙データの送信先から、修正有り通知を受信したか否かを判断する(S10)。修正有り通知を受信していない場合(S10:NO)、次に、型紙作成装置50(MPU50a)は、作成中型紙データの送信先から、修正無し通知を受信したか否かを判断する(S11)。修正無し通知も受信していない場合(S11:NO)、S10の段階に戻り、修正有り通知(又は修正無し通知)が送られてくるのを待つことになる。
【0205】
一方、S10の段階で修正有り通知を受信した場合(S10:YES)、型紙作成装置50(MPU50a)は、受信した修正有り通知に含まれる修正指示内容で、作成中の型紙(仮三次元ユーザ型紙)の修正を行う(S12)。この修正は基本的に、上述した第1フローチャートのS6の段階におけるゆとり量の適用と同様に行われ、修正指示内容がプラスのものであれば、修正の指示箇所に対して、ゆとり量を適用する向きと同様に、型紙の縁辺部を移動して拡大する処理が行われる。また、修正指示内容がマイナスのものであれば、修正の指示箇所に対して、ゆとり量を適用する向きと反対の向きに型紙の縁辺部を移動して縮小する処理が行われる。
【0206】
修正有り通知に基づく修正が完了すると、MPU50aは、その修正した状態を三次元ユーザ型紙として確定する処理を行う(S13)。また、S11の段階で、修正無し通知を受信した場合(S11:YES)、MPU50aは、S6の段階でゆとり量を適用した仮三次元ユーザ型紙(三次元画像データに係る仮三次元ユーザ型紙)を、そのまま三次元ユーザ型紙として確定する処理を行う(S13)。
【0207】
そして、MPU50aは、確定した三次元ユーザ型紙を二次元に展開し、仮二次元ユーザ型紙を作成する処理を行う(S14)。このような三次元から二次元への展開処理は基本的に、上述した特許文献1、2等に開示される技術を用いており、三次元ユーザ型紙の周縁となる各縁辺部の長さ寸法を維持しながら、三次元ユーザ型紙を構成する各点について、X座標値は同じ数値を維持し、Z座標値を特定の値(例えば、Z=0)に揃えると共に、Y座標値を適宜、変更(増加)していくことで、三次元形状を二次元形状(例えば、XY平面に平行な平面上の形状)に展開して変形する。この際、Z座標において揃える対象となる特定の値から離れた値を有する点ほど、二次元に展開する際のY座標値の変更分が大きくなる。なお、このように作成した仮二次元ユーザ型紙は、周囲の輪郭を構成する線の各箇所、各頂点、及び輪郭内部の各点についてX座標値及びY座標値を有する。
【0208】
次に、図18の第2フローチャートに示すように、MPU50aは、基準型紙テーブル60の中から、三次元測定を行ったユーザに応じた二次元基準型紙を特定する(S15)。ユーザに応じた二次元基準型紙の特定の仕方としては様々な手法が存在するが、本実施形態では、S14の段階で作成した仮二次元ユーザ型紙と最もサイズ及び形状が近い二次元基準型紙を、基準型紙テーブル60から特定している。具体的には、仮二次元ユーザ型紙と、基準型紙テーブル60に格納される各二次元基準型紙を順次比較し、各比較対象となる型紙の周縁に含まれる各頂点の座標値(XY座標値)を対比して、座標値に基づく各頂点同士の位置の差が最も近い二次元基準型紙データを、基準型紙テーブル60から特定する。
【0209】
図22は、各頂点同士の位置の差に基づき、仮二次元ユーザ型紙に、寸法及び形状が最も近い二次元基準型紙データを特定する状況を説明する概要図である。図22の中で、右側に示すのが仮二次元ユーザ型紙の一例である仮左前身頃二次元ユーザ型紙200であり、左側に示すのが基準型紙テーブル60に格納される二次元基準型紙データT11~T75のいずれかに含まれる二次元基準型紙の一例である左前身頃二次元基準型紙300を示す。
【0210】
右側に示される仮左前身頃二次元ユーザ型紙200は、その周縁200aに、喉元付近の第1頂点201、首の左付根付近の第2頂点202、左肩付近の第3頂点203、左脇下付近の第4頂点204、左腰下付近の第5頂点205、及び前最下の第6頂点206を有する。左側に示される左前身頃二次元基準型紙300も、上述した仮左前身頃二次元ユーザ型紙200と同様、その周縁300aに、喉元付近の第1頂点301、首の左付根付近の第2頂点302、左肩付近の第3頂点303、左脇下付近の第4頂点304、左腰下付近の第5頂点305、及び前最下の第6頂点306を有する。
【0211】
仮左前身頃二次元ユーザ型紙200及び左前身頃二次元基準型紙300では、第1頂点同士、第2頂点同士、第3頂点同士、第4頂点同士、第5頂点同士、及び第6頂点同士が対応する。また、これらの各頂点の中で型紙のサイズや形状的に影響が大きいのが第1頂点から第5頂点であるので、本実施形態では、第1頂点から第5頂点について、仮左前身頃二次元ユーザ型紙200及び左前身頃二次元基準型紙300の間で、対応する各頂点同士に対して処理を行う。
【0212】
具体的にMPU50aは、対応する各頂点同士の位置の比較として、各頂点同士間の距離を算出し、それら算出した各頂点同士間の距離の合計値を求める処理を行う。このような処理を、MPU50aは、第2フローチャートのS14の段階で作成した仮二次元ユーザ型紙に含まれる各パーツの型紙(左前身頃、左後身頃、左袖、左後ヨーク等の各型紙)と、基準型紙テーブル60に格納される二次元基準型紙データT11~T75のそれぞれに含まれる各パーツの型紙(左前身頃、左後身頃、左袖、左後ヨーク等の各型紙)とを順次比較して行うことになり、それにより各パーツの型紙の頂点同士の距離の合計が最も小さい二次元基準型紙データを、基準型紙テーブル60に格納される二次元基準型紙データT11~T75の中から特定することになる。
【0213】
それから、図18の第2フローチャートに示すように、MPU50aは、特定した二次元基準型紙データの輪郭に含まれる頂点の位置に基づき、仮二次元ユーザ型紙の輪郭に含まれる頂点の位置を移動することにより、仮二次元ユーザ型紙の輪郭形状を変形する処理を行う(S16)。このような頂点の移動は、型紙の調整のために行うものであり、基準型紙の頂点の位置を参照した調整を行うことで、各型紙に応じた布片を縫い合わせしやすくして、そのような布片の縫い合わせで作成する衣服(本実施形態では半袖のシャツ)に不自然やシワや弛み等が生じるのを防ぐためである。すなわち、基準型紙(二次元基準型紙)は、できるだけシワや弛み等を発生させずに、縫い合わせしやすさも考慮して、その形状等が設定されているので、このような基準型紙の形状を規定する各頂点の位置を参考にすることで、本発明に係るユーザ型紙(二次元ユーザ型紙)の場合でもシワや弛み等が発生しにくくなることを狙っている。
【0214】
図23(a)~(c)は、仮二次元ユーザ型紙の頂点を、S15の段階で特定した二次元基準型紙データに係る二次元基準型紙に基づき移動する処理を、仮左前身頃二次元ユーザ型紙200及び左前身頃二次元基準型紙300を例として説明するものである。図23(a)は、二次元座標のXY座標の座標原点を一致させて、仮左前身頃二次元ユーザ型紙200(図中、実線で示す)及び左前身頃二次元基準型紙300(図中、破線で示す)を重ね合わせた状態を示す。本実施形態の頂点の移動処理では、仮左前身頃二次元ユーザ型紙200の第1頂点201~第6頂点206の中で、上述したS15の段階の処理と同様に、サイズや形状的に影響が小さい第6頂点206は移動の処理対象から外している。
【0215】
本実施形態では、仮左前身頃二次元ユーザ型紙200の第1頂点201~第5頂点の中で、二つの型紙200、300を図23(a)に示すように重ね合わせた状態において、左前身頃二次元基準型紙300の周縁300aより外側に位置する頂点(図23(a)に示す例では、第1頂点201、第2頂点202、第3頂点203)も、移動に係る処理の対象から外すようにして、左前身頃二次元基準型紙300の周縁300aより内側に位置する頂点(図23(a)に示す例では、第4頂点204及び第5頂点205)を、移動に係る処理の対象にする。そのような処理対処の頂点について、それらの頂点が対応する左前身頃二次元基準型紙300の頂点(図23(a)に示す例では、第4頂点304及び第5頂点305)へ近づくように移動する処理を行う。
【0216】
仮左前身頃二次元ユーザ型紙200の各頂点の中で、左前身頃二次元基準型紙300の周縁300aより外側に位置する頂点を、左前身頃二次元基準型紙300の各頂点へ近づけるように移動することは、型紙のサイズを縮めることになり、せっかく三次元測定を行ってユーザの体型に合うように作成した仮二次元ユーザ型紙の意義が無になることから、このような左前身頃二次元基準型紙300の周縁300aより外側に位置する頂点(例えば、第1頂点201、第2頂点202、第3頂点203)は、移動に係る処理の対象から外すようにしている。
【0217】
一方、仮左前身頃二次元ユーザ型紙200の各頂点の中で、左前身頃二次元基準型紙300の周縁300aより内側に位置する頂点(例えば、第4頂点204、第5頂点205)を、そのままの位置に留めると、そのような頂点付近は、左前身頃二次元基準型紙300に比べてタイトなサイズになるため、縫い合わせ性が良好でなく、また、シワや弛み等の発生の要因になるおそれがあることから、このような内側に位置する頂点を、本実施形態では移動に係る処理対象にしている。
【0218】
具体的な、移動の仕方としては様々なパターンが想定され、例としては、仮左前身頃二次元ユーザ型紙200における処理対象となる頂点(例えば、第4頂点204、第5頂点205)を、それらの頂点が対応する左前身頃二次元基準型紙300の頂点(例えば、第4頂点304、第5頂点305)に一致するように移動させること(処理対象となる頂点のX座標及びY座標を目的対象の頂点のX座標及びY座標へ移動)、対応する頂点同士間の距離が1/10、1/8、1/6、1/5、1/4、1/3又は1/2等となるように縮める方向へ処理対象の頂点を移動させることなどが考えられる。本実施形態では、オーダーメイド用の衣服に応じた型紙を作成することを考慮し、出来るだけ三次元測定の結果を反映できるようにするため、対応する頂点同士のX座標値のみが一致するように、仮左前身頃二次元ユーザ型紙200の頂点を移動させている。
【0219】
図23(b)は、仮左前身頃二次元ユーザ型紙200の第4頂点204の移動状況を示し、図中の左側が移動前の状態を表し、図中の右側が移動後の状態を表す。移動前において、仮左前身頃二次元ユーザ型紙200の第4頂点204は、左前身頃二次元基準型紙300の周縁300aより内側に位置しており、その第4頂点204に対応する左前身頃二次元基準型紙300の第4頂点304との間では、X座標値及びY座標値が異なり、位置が離れている。図23(b)の右側の図で示すように、MPU50aは、仮左前身頃二次元ユーザ型紙200の第4頂点204のX座標値が、左前身頃二次元基準型紙300の第4頂点304のX座標値に一致するように、第4頂点204の移動処理を行い、この際、第4頂点204の周縁200aの中の上下右側辺213、214も、第4頂点204に追従させて移動する処理を行う。
【0220】
また、図23(c)は、仮左前身頃二次元ユーザ型紙200の第5頂点205の移動状況を示し、図中の左側が移動前の状態を表し、図中の右側が移動後の状態を表す。移動前において、仮左前身頃二次元ユーザ型紙200の第5頂点205も、上述した第4頂点と同様に、左前身頃二次元基準型紙300の周縁300aより内側に位置し、その第5頂点205と対応する左前身頃二次元基準型紙300の第5頂点305との間には距離がある。図23(c)の右側の図で示すように、MPU50aは、仮左前身頃二次元ユーザ型紙200の第5頂点205のX座標値が、左前身頃二次元基準型紙300の第5頂点305のX座標値に一致するように、第5頂点205の移動処理を行い、この際、第5頂点205の周縁200aの中の下右側辺214及び下縁辺215も、第5頂点205に追従させて移動する処理を行う。
【0221】
このようなS16の段階における移動処理の対象となる頂点の判断は、対応する頂点同士等の座標値をMPU50aが比較して判断することになるが、判断基準が各頂点で異なる(それぞれの頂点の位置ごとの判断基準が、型紙作成プログラムP11で規定されている)。
【0222】
例えば、左上角となる第1頂点201では、そのX座標値が、左前身頃二次元基準型紙300の第1頂点301のX座標値より小さく、且つ第1頂点201のY座標値が、左前身頃二次元基準型紙300の周縁300aの襟ぐりの上縁辺311(図23(a)参照)における第1頂点201と同じX座標値の箇所のY座標値より小さい場合に、第1頂点201は左前身頃二次元基準型紙300の周縁300aより内側に位置し、処理対象の頂点として判断される。
【0223】
また、上縁辺に位置する第2頂点202では、そのY座標値が、左前身頃二次元基準型紙300の周縁300aの上縁辺311(図23(a)参照)又は肩稜線となる縁辺312における第2頂点202のX座標値と同じの箇所のY座標値より小さい場合に、第2頂点201は左前身頃二次元基準型紙300の周縁300aより内側に位置し、処理対象の頂点として判断される。さらに、右上角となる第3頂点203では、そのX座標値が、左前身頃二次元基準型紙300の第3頂点303のX座標値より小さく、且つ、第3頂点203のY座標値が、肩稜線となる縁辺312における第3頂点203のX座標値と同じ箇所のY座標値より小さい場合、左前身頃二次元基準型紙300の周縁300aより内側に位置し、処理対象の頂点として判断される。
【0224】
さらにまた、脇下に位置する第4頂点204では、そのX座標値が、左前身頃二次元基準型紙300の第4頂点304及びその周辺の上下右側辺313、314のX座標値より小さい場合に、左前身頃二次元基準型紙300の周縁300aより内側に位置し、処理対象の頂点として判断される。
【0225】
そして、右下角となる第5頂点205では、そのX座標値が、左前身頃二次元基準型紙300の第5頂点305のX座標値より小さく、且つ第5頂点205のY座標値が、左前身頃二次元基準型紙300の周縁300aの下縁辺315(図23(a)参照)における第5頂点205と同じX座標値の箇所のY座標値より大きい場合に、第5頂点205は周縁300aより内側に位置し、処理対象の頂点として判断されることになる。なお、仮左前身頃二次元ユーザ型紙200において、第1頂点201から第5頂点205の全てが、左前身頃二次元基準型紙300の周縁300aの内側に位置しない(外側又は輪郭上に位置する)と判断された場合、S16の段階における移動処理は特に行われない。
【0226】
そして、図18の第2フローチャートに示すように、MPU50aは、S16の段階を経過した仮二次元ユーザ型紙の微調整を行って、二次元ユーザ型紙を作成(完成)する(S17)。このS17の段階の微調整は、型紙に基づき作成する衣服として見栄えを考慮したものであり、型紙周縁の中で水平方向の直線又は垂直方向の直線にすべき辺部が、そのような水平方向の直線又は垂直方向の直線になっているか否かを判断する。そして、そのような直線になっていなければ、その辺部が水平方向の直線又は垂直方向の直線となるように、その辺部に含まれる頂点の位置の移動などを含む微調整を、MPU50aが行う。なお、型紙周縁の中で直線にすべき辺部の有無と、そのような辺部の場所は、各種型紙の種類に応じて、型紙作成プログラムP11で規定されており、MPU50aは、この型紙作成プログラムP11の規定により、微調整が必要か否かを判断する。
【0227】
このS17の段階の微調整の処理を、図23(a)に示す仮左前身頃二次元ユーザ型紙200を例にして説明すると、仮左前身頃二次元ユーザ型紙200において、周縁200aの中で直線にする箇所は、右前身頃と合わさる中央辺部216となる。そのため、MPU50aは、中央辺部216の上下端となる第1頂点201及び第6頂点206のX座標値同士を比較し、両者の値が一致するか否かにより、中央辺部216が直線(垂直方向の直線)になっているかを判断する。
【0228】
一致しないときは、今までの処理経緯より、第1頂点201の位置は様々な処理を経て確定したものであることから、そのままに維持し、第6頂点206のX座標値が、第1頂点201のX座標値に一致するように、第6頂点206及びその周囲の辺部の移動・変形する微調整を行って、二次元ユーザ型紙を完成させる。一方、一致するときは、中央辺部216は既に垂直方向の直線となっているので、MPU50aは仮左前身頃二次元ユーザ型紙200に対して、微調整の処理は行わずに、ステップS16の段階の処理を経て、輪郭形状を変形して作成した仮二次元ユーザ型紙を、そのまま二次元ユーザ型紙として確定する(二次元ユーザ型紙の作成が完成する)。
【0229】
MPU50aは、上述した辺部を所要の直線にするための頂点の位置等の移動・変形処理(微調整処理)を、仮二次元ユーザ型紙に含まれる全ての種類の型紙に対して行い(上述したように、対象となる辺部が既に水平方向又は垂直方向の直線であれば微調整処理を行わない)、それにより最終的な調整が済んだ全ての種類の型を含む紙仮二次元ユーザ型紙を、完成版の二次元ユーザ型紙として確定する。
【0230】
それから、図18の第2フローチャートに示すように、MPU50aは、完成版の二次元ユーザ型紙(ユーザ型紙のデータ)を、ログイン中のユーザのユーザIDに対応付けてユーザデータベース90へ、型紙作成時の日時と共に記憶する処理を行う(S18)。そして最後に、MPU50aは、完成した二次元ユーザ型紙に係るデータ(ユーザ型紙データ)を、ユーザIDのようなユーザ等を特定する情報と一緒にして、衣服の縫製を行う縫製工場のコンピュータ(サーバコンピュータ)等の装置へ送信する処理を行う(S19)。この送信の完了により、型紙作成装置50での型紙作成に関する処理を一旦、終了することになる。
【0231】
縫製工場のコンピュータ等の装置では、型紙作成装置50から送られてきた二次元ユーザ型紙データを受信すると、アパレル用CADソフトがインストールされたコンピュータを用いて、その二次元ユーザ型紙データに含まれる各型紙を読み出し、所定の必要な処理を行ってユーザ用の衣服を作成する。
【0232】
所定の必要な処理の例としては、各型紙の必要な輪郭箇所に縫い代に応じた部分を追加する処理がある。また、二次元ユーザ型紙データに含まれる左側の型紙から、右側の型紙を作成する処理も含まれる(例えば、二次元の左前身頃型紙を線対称にコピーして、右前身頃型紙を作成するなど)。さらに、人体の左右部分を連ねて一つの型紙になるものについては、左側の型紙部分を線対称にした右側部分を作成してから、左右部分を一体化して一つの型紙を作成する処理なども含まれる(例えば、左後ヨーク型紙を線対称にコピーして右側の後ヨーク型紙の部分を作成し、これら左右の後ヨーク型紙を繋ぎあわせて、一体的な後ヨーク型紙を作成するなど)。
【0233】
なお、衣服作成に用いる布地が表裏の影響を受けない場合や、布地の材料取りの関係で型紙の右側部分の作成が不要な場合は、前身頃や後見頃、袖などについては、右側の型紙(右前身頃や右後見頃などの型紙)の作成は不要であり、左側の型紙のみで対応できる。
【0234】
上述した所定の必要な処理が完了すると、縫製工場では、アパレル用CAMソフト等により、完了した型紙データを用いて、布地から、各型紙に応じた形状及び寸法の布片を切り取り処理が行われ、それから、切り取られた布片を適宜、縫い合わせることにより、ユーザの体型に応じたオーダーメイド的な衣服をスムーズに提供することが可能となる。
【0235】
このように本発明では、最初から型紙(三次元形状の型紙)を用いて、その型紙をユーザの三次元測定に基づいた三次元ユーザモデルに着せ付けるように変形することで、特定のユーザの体型に応じた型紙を作り上げていくことができ、オーダーメイドで衣服を作成する際に好適であり、また、オペレータの操作等により型紙の輪郭形状を指定することなどが不要であることから、オペレータの技量に依存することなく、誰もがユーザの体型に応じた型紙を簡単且つスムーズに作成することができる。
【0236】
さらに、本発明では、一律のゆとり量ではなく、三次元測定を行ったユーザの体型・体格に応じた部位ごとのゆとり量を三次元の状態の型紙に適用するので、三次元測定の結果を生かしてユーザの体格や体型に応じたオーダーメイド的な衣服を作成するに役立てられる。さらにまた、本発明では、三次元から二次元に展開した後に、使用実績のある基準型紙に合わせて、頂点等の修正を行うので、型紙に応じた布片を縫い合わせて衣服を作成する際、現実的な縫い合わせのしやすさが確保されると共に、作成される衣服に不自然なシワや撓み等も生じにくくなる。
【0237】
なお、上記では、主にシャツ用の左前身頃を例にして本発明に係る型紙の作成を説明したが、他の種類の型紙(左後見頃等の型紙)についても、上記と同様の手順で作成が可能であり、また、シャツ以外のジャケットやパンツなどの他の種類の衣服を作成するための各種型紙に対しても、本発明は適用可能である。
【0238】
そして、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく様々な変形例が考えられる。例えば、既に三次元測定を行っているユーザにおいて、そのユーザに体格や体型等の変化が無ければ、ユーザデータベース90に記憶された測定値データ、三次元モデルデータ、及び型紙データを利用できるので、各種処理を省略できる。
【0239】
具体的には、作成する衣服の種類(シャツ、ジャケット、パンツなど)が、既にユーザデータベース90に記憶されている型紙データに応じたものであれば、そのユーザデータベース90に記憶されている型紙データを用いることで、図17、18等のフローチャートに示す各種段階の処理を、S19の段階の処理を除き、省略できる。また、以前に型紙を作成したユーザが、以前の型紙と異なる種類の衣服用の型紙を作成する場合は、ユーザデータベース90に記憶される測定値及び三次元ユーザモデルの各データを利用できるので、図17の第1フローチャートのS1からS3の段階の処理を省略して、S4の段階から処理を開始でき、効率的な型紙作成処理を行える。
【0240】
また、上述した例では、型紙作成装置50(MPU50a)で、三次元ユーザモデルを作成していたが(図17の第1フローチャートのS3)、三次元ユーザモデルの作成を、人体測定システム20の中の測定処理装置30で行うようにしてもよい。
【0241】
この場合、測定処理装置30は、三本の柱状体21、22、23でレーザ光の走査及び撮像を行うことで、各柱状体21、22、23より送られてくる測定結果に含まれる数値(検知した複数の頂点のXYZ座標値)を用いて、測定項目(身長、人体の各部位の寸法、各四肢の長さ、各部の表面積等)に係る数値を算出し、その算出した各数値を三次元測定の結果として確定すると共に、確定した三次元測定の結果より三次元ユーザモデルを作成することになり、作成した三次元ユーザモデルに係るデータを、三次元測定の結果と一緒にして、型紙作成システム2(型紙作成装置50)へ通信部30cより送信する。
【0242】
このような変形例では、測定処理装置30に係る三次元測定プログラムP2は、三次元測定の結果に基づき三次元ユーザモデルを作成する処理、及び、作成した三次元ユーザモデルに係るデータを型紙作成装置50へ送信する処理をCPU30aが行うことも規定することになる。一方、型紙作成装置50の方では、図17の第1フローチャートのステップS1において、三次元測定結果と三次元ユーザモデルに係るデータを受信したか否かを判断し、ステップS2では、受信した三次元測定結果と三次元ユーザモデルに係るデータを記憶し、そして、ステップS3の処理を省略して、ステップS4の処理へ進むことになるため、型紙作成装置50の処理負担の軽減を図れる。
【0243】
また、図8に示す基準型紙テーブル60の中身は一例に過ぎず、縦方向の身長の種類(H1~H7)、又は横方向の体型の種類(K1~K5)の一方、若しくは両方の種類は、より細かく分けることや、より大まかに分けることのいずれも可能である。そして、種類を、より細かく分ける場合は、縦方向又は横方向の種類に対応付ける二次元基準型紙データT11~T75の種類も、それらの細かさの数に応じて増えることになり、また、より大まかに分ける場合は、それらに対応付ける二次元基準型紙データT11~T75の種類も、それらの大まかに分ける数に応じて減ることになる。
【0244】
さらに、ゆとり量データテーブル80も、上述した基準型紙テーブル60と同様に、図14に示す中身は一例に過ぎず、縦方向の身長の種類(H1~H7)、又は横方向の体型の種類(K1~K5)の一方、若しくは両方の種類は、より細かく分けることや、より大まかに分けることのいずれも可能であり、それに伴い、縦又は横方向の種類の数の増減に応じて、ゆとり量データE11~E74の数も増減できる。
【0245】
さらにまた、ゆとり量データテーブル80に格納されるゆとり量データE11~E74の中身についても、図15(a)(b)に示す内容は一例であり、胸廻、胴廻、腰廻以外の他の部位(例えば、肩廻、襟刳り、袖刳り等の部位)に対しても、ゆとり量の数値を規定してもよく、一方、処理を簡易にする場合は、ゆとり量を規定する部位を少なくしてもよい(例えば、胴廻については、ゆとり量の規定を省略するなど)。
【0246】
更に処理を簡易にする場合は、部位に関係なく、ゆとり量の数値は一律にすることも可能である(例えば、ゆとり量データE43は、部位に関係なく、ゆとり量として3.5cmを規定するなど)。このようにゆとり量の数値を一律にする場合は、上述した余裕分を含ませる変形と、ゆとり量に基づく変形を同時的に行うことが好適となる。すなわち、余裕分の数値に、一律のゆとり量の数値を加えた合計値で一度に変形を行うことも可能である。さらに、衣服に用いる材質のよっては(例えば、伸縮性が大きい材質など)、余裕分の適用を省略して、ゆとり量のみを適用することも可能である。
【0247】
また、図17、18に示す第1、2フローチャートにおける各ステップに応じた処理の中で、処理の簡易化を図る場合は、いずれかの処理を省略することも可能である。例えば、図17に示す第1フローチャートのS4の段階における比較では、表面積の比較を行っていたが、この表面積の比較処理を省略することも可能であり、この場合は、S5の段階における表面積の比較に基づく概要的な変形処理も省略される。なお、表面積の比較に基づく変形に関しては、S5の段階で、先に、三次元基準型紙75の各点を、三次元基準人体モデル71の各点と三次元ユーザモデル171の各点の対応関係に基づき移動することによる変形の処理を行い、その後に、各点を移動して変形した三次元基準型紙75の表面積が、移動前の表面積と比べて、S4の段階での表面積の比較結果と同等であるかを判断し、同等でない場合は、比較結果に応じた数値となるように、変形した三次元基準型紙75を相似的に変形するようにしてもよい。
【0248】
さらに、S8の段階では、型紙作成装置50が、ログイン中のユーザ(通信端末装置3)から送信される作成中型紙要求を受信したか否かを判断し、作成中型紙要求を受信した場合に、三次元画像データ(作成中型紙データ)を送信するようにしていたが、三次元画像データの作成が完了すれば、そのままログイン中のユーザに係る通信端末装置3へ三次元画像データを送信(プッシュ送信)する仕様にしてもよい。この仕様の場合では、通信端末装置3は自動的に三次元画像データを受信して記憶することになるので、型紙アプリP201を起動すれば、スムーズに三次元画像データをユーザが確認できる。
【0249】
更に処理の簡易化を進める場合は、ステップS7~S12の範囲までの処理を省略し、ステップS6の段階で、余裕分及びゆとり量を適用して変形すると、その変形した状態を、ステップS13にて、三次元ユーザ型紙として確定してもよい。このように処理の簡易化を更に進める場合は、ユーザ側の修正指示や確認等を型紙作成装置50が待たなくても済むので、処理全体のスピードアップを図れるメリットがある。
【0250】
一方、ユーザによる修正確認の処理を入念に進める場合は、ユーザに係る通信端末装置3から、型紙作成装置50が修正有り通知を受信して(S10:YES)、作成中の型紙(仮三次元ユーザ型紙)の修正を行うと(S12)、ステップS13の段階へ進むのでは無く、ステップS9の段階へ戻って、再度、修正した内容の仮三次元ユーザ型紙に係る三次元画像データを通信端末装置3へ送るようにしてもよい。このようにすると、ユーザは何度でも作成中の型紙を確認して修正することを繰り返せるので、ユーザの納得のいくまで修正を行えるメリットがある。
【0251】
さらに、図18の第2フローチャートにおけるステップS15の段階で、基準型紙テーブル60から、三次元測定を行ったユーザに応じた二次元基準型紙を特定する仕方としては、仮二次元ユーザ型紙の周縁に含まれる各頂点の座標と、基準型紙テーブル60に格納される各二次元基準型紙データのそれぞれの各頂点の座標を対比し、対比した頂点同士間の距離が最も近くになるものを選ぶようにしていたが、このような特定の処理を簡易化する場合は、三次元測定の結果により得られたユーザの身長及び体型(体格)を利用し、そのような身長及び体型に応じた二次元基準型紙を基準型紙テーブル60から特定することも考えられる。
【0252】
すなわち、図8に示すように、基準型紙テーブル60は縦方向に身長の種類を規定すると共に、横方向に体型(胸廻、胴廻、腰廻等の数値)の種類を規定した格子状の構成であるため、身長及び体型が決まれば、それに対応する二次元基準型紙データを、基準型紙テーブル60に格納される二次元基準型紙データT11~T75の中から、特定できるようになる。このような特定の仕方は、頂点同士間の位置や距離を対比する場合に比べて処理量が格段に小さいため、MPU50aの処理負担を低減したいときなどに好適となる。
【0253】
また、上述した説明では、縫い代に応じた部分の追加処理は、縫製工場側で行うようにしていたが、型紙作成装置50の側で縫い代に応じた部分を追加してから、縫製工場側へ二次元ユーザ型紙データを送る仕様にすることも可能である。この場合は、図18の第2フローチャートにおけるステップS17の段階が終わってから、縫い代に応じた部分を追加するのは、処理順において好適となる。なお、二次元ユーザ型紙データに含まれる左側の型紙から、右側の型紙を作成する処理等も型紙作成装置50で行うことも勿論可能であり、この右側の型紙の作成処理も、ステップ17の段階が終わってから行うことになる(縫い代に応じた部分の追加処理を行う場合は、その後に行う)。
【産業上の利用可能性】
【0254】
本発明は、ユーザの身長及び体型に応じたオーダーメイドの衣服を作成するための型紙を、ユーザの三次元測定の結果に基づき三次元的な形状変形処理を経て自動的に作成するので、オペレータの技能によるバラツキなどを無くして、スムーズに型紙を作成する事に対して好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0255】
1 型紙提供システム
2 型紙作成システム
3 通信端末装置
3a 表示スクリーン
3b CPU
4 型紙確認画面
5 作成中型紙確認画面
6 型紙(作成中型紙)
7 ユーザアバター
8 指示確認画面
9 作成済型紙一覧画面
20 人体測定システム
30 測定処理装置
50 人体モデル提供装置
50a MPU
50g 記憶部
60 基準型紙テーブル
70 三次元基準データテーブル
71 三次元基準人体モデル
76 左前身頃三次元基準型紙
80 ゆとり量データテーブル
90 ユーザデータベース
171 三次元ユーザモデル
176 仮左前身頃三次元ユーザ型紙
200 仮左前身頃二次元ユーザ型紙
201~206 第1頂点~第6頂点
300 左前身頃二次元基準型紙
E43、E44 ゆとり量データ
P11 型紙作成プログラム
P201 型紙アプリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23