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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025214
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】画像読取装置および書込方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/193 20060101AFI20240216BHJP
   H04N 1/028 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
H04N1/193
H04N1/028 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128474
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠也
【テーマコード(参考)】
5C051
5C072
【Fターム(参考)】
5C051AA01
5C051BA04
5C051DA03
5C051DB01
5C051DB08
5C051DB12
5C051DB18
5C051DE02
5C072AA01
5C072BA13
5C072DA25
5C072EA07
5C072FA03
5C072FB08
5C072FB23
5C072MA01
5C072NA01
5C072UA11
5C072UA13
(57)【要約】
【課題】読取画像のムラが抑えられるように予めライン周期が設定された後に、画像読取装置に用いる読取センサを変更する要求があった場合であっても、その要求に対応可能な画像読取装置の提供。
【解決手段】画像読取装置(1)の記憶部(104)には、複数の読取モードのそれぞれに対応する変数が記憶され、制御部(101)は、読取モードに応じて読取センサ(35および36)に原稿を読み取らせる際、読取モードに対応した変数をスペクトラム拡散クロック生成部(106)に与え、スペクトラム拡散クロック生成部は、与えられた変数に基づいて、基準クロック(CLK)の周波数変調の変調周期を決定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準クロックを周波数変調してスペクトラム拡散クロックを生成するスペクトラム拡散クロック生成部と、
前記スペクトラム拡散クロックに基づいて、ライン周期を定めるスタートパルス信号と画素クロック信号とを出力する読取制御部と、
原稿の一方の面を読み取る読取センサであって、主走査方向に配列された複数の受光部を有し、前記主走査方向と直交する副走査方向に相対的に変位する原稿からの反射光を、前記複数の受光部により前記ライン周期毎に受光し、前記スタートパルス信号の入力に応じて前記複数の受光部のそれぞれの受光量に応じた信号を前記画素クロック信号に従って順次出力する読取センサと、
制御部と、
記憶部と、
を備え、
前記記憶部には、複数の読取モードのそれぞれに対応する変数が記憶され、
前記制御部は、前記読取モードに応じて前記読取センサに原稿を読み取らせる際、当該読取モードに対応した前記変数を前記スペクトラム拡散クロック生成部に与え、
前記スペクトラム拡散クロック生成部は、与えられた前記変数に基づいて、前記周波数変調の変調周期を決定する、
画像読取装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ライン周期が、前記スペクトラム拡散クロック生成部により決定された前記変調周期の(整数+0.5)倍の周期となるように、前記読取制御部から前記スタートパルス信号と前記画素クロック信号とを出力させる、
請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記記憶部には、更に、前記読取モード毎に、前記変調周期が前記変数と対応付けられて記憶され、
前記制御部は、前記読取モードに応じて前記読取センサに原稿を読み取らせる際に、当該読取モードに対応した前記変数を前記スペクトラム拡散クロック生成部に与え、前記記憶部に当該変数に対応付けて記憶されている前記変調周期で前記基準クロックを変調させて前記スペクトラム拡散クロックを生成させる、
請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記記憶部には、更に、前記読取モード毎に、前記ライン周期が前記変数と対応付けられて記憶され、
前記制御部は、前記読取モードに応じて前記読取センサに原稿を読み取らせる際に、前記読取制御部に、当該読取モードに対応した前記ライン周期に基づいて、前記スタートパルス信号と前記画素クロック信号とを出力させる、
請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記読取モード毎に、当該読取モードで最低限必要な画素数であるミニマムライン画素数が予め決定されており、
前記変調周期は、複数の候補値が予め決定されており、
前記制御部は、
前記変調周期の複数の候補値それぞれについて、
前記ミニマムライン画素数とライン調整画素数との和に1画素周期を乗じた積である前記ライン周期を、前記変調周期の当該候補値で割った値の小数部分が0.5となるような、前記ライン調整画素数を取得し、
取得された前記ライン調整画素数が最も小さくなる前記変調周期の候補値と、前記ライン周期と、の組み合わせを前記記憶部に記憶する、
請求項4に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記スペクトラム拡散クロック生成部は、前記制御部により与えられた前記変数に基づいて、前記ライン周期が前記変調周期の(整数+0.5)倍となるように前記変調周期を決定し、決定した前記変調周期で前記基準クロックを変調して前記スペクトラム拡散クロックを生成する回路ブロックを有する、
請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記読取センサは、
前記複数の受光部は前記主走査方向に複数の区間に分割され、
前記複数の受光部は分割された区間ごとに、当該区間に対応する受光部のそれぞれの受光量に応じた信号を、前記スタートパルス信号の入力に応じて、前記画素クロック信号に従って順次出力する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項8】
請求項4に記載の画像読取装置の前記記憶部に、前記読取モード毎に、前記変調周期および前記ライン周期を前記変数と対応付けて記憶させる方法であって、
前記読取モード毎に、当該読取モードで最低限必要な画素数であるミニマムライン画素数が予め決定されており、
前記変調周期は、複数の候補値が予め決定されており、
コンピュータが、
前記変調周期の複数の候補値それぞれについて、前記ミニマムライン画素数とライン調整画素数との和に1画素周期を乗じた積である前記ライン周期を、前記変調周期の当該候補値で割った値の小数部分が0.5となるような、前記ライン調整画素数を取得するステップと、
取得された前記ライン調整画素数が最も小さくなる前記変調周期の候補値と、前記ライン周期と、の組み合わせを前記記憶部に記憶させるステップと、
を実行する書込方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像読取装置および書込方法に関する。
【背景技術】
【0002】
EMI(電磁妨害)対策のために、スペクトラム拡散クロック発振器を用いる画像読取装置が知られている。当該画像読取装置は、スペクトラム拡散クロックを用いる際、周期的なノイズに起因する読取画像の画質低下の影響を低減するために、ライン周期をスペクトラム拡散クロックの変調周期の整数倍+半周期に設定することで、読取画像のムラを目立たなくする。
【0003】
特許文献1の画像読取装置では、読取解像度に応じて、ライン周期を変調周期の(整数+小数)倍の周期に設定することで、周波数変調に起因する画質低下の影響を効率的に抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-82245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の画像読取装置のように、1つのスペクトラム拡散クロックの変調周期からライン周期を決定するようにすると、読取画像のムラが抑えられるようにライン周期が設定された後に、画像読取装置に用いる読取センサを変更する要求があったとしても対応することができない場合があった。
【0006】
本開示の一態様は、読取画像のムラが抑えられるようにライン周期が設定された後に画像読取装置に用いる読取センサの変更の要求があった場合であっても、その要求に対応することができる読取装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る画像読取装置は、基準クロックを周波数変調してスペクトラム拡散クロックを生成するスペクトラム拡散クロック生成部と、前記スペクトラム拡散クロックに基づいて、ライン周期を定めるスタートパルス信号と画素クロック信号とを出力する読取制御部と、原稿の一方の面を読み取る読取センサであって、主走査方向に配列された複数の受光部を有し、前記主走査方向と直交する副走査方向に相対的に変位する原稿からの反射光を、前記複数の受光部により前記ライン周期毎に受光し、前記スタートパルス信号の入力に応じて前記複数の受光部のそれぞれの受光量に応じた信号を前記画素クロック信号に従って順次出力する読取センサと、制御部と、記憶部と、を備え、前記記憶部には、複数の読取モードのそれぞれに対応する変数が記憶され、前記制御部は、前記読取モードに応じて前記読取センサに原稿を読み取らせる際、当該読取モードに対応した前記変数を前記スペクトラム拡散クロック生成部に与え、前記スペクトラム拡散クロック生成部は、与えられた前記変数に基づいて、前記周波数変調の変調周期を決定する。
【0008】
上記構成によれば、読取画像のムラが抑えられるように予めライン周期が設定された後で画像読取装置に用いる読取センサを変更する要求があった場合であっても、変調周期を変更することにより、その要求に対応することができる。
【0009】
また、本開示の一態様に係る画像読取装置では、前記制御部は、前記ライン周期が、前記スペクトラム拡散クロック生成部により決定された前記変調周期の(整数+0.5)倍の周期となるように、前記読取制御部から前記スタートパルス信号と前記画素クロック信号とを出力させる。
【0010】
上記構成によれば、ライン周期がスペクトラム拡散クロック生成部により決定された変調周期の(整数+0.5)倍の周期となるように、読取制御部から前記スタートパルス信号と前記画素クロック信号とを出力させるため、読取画像のムラを抑えることができる。
【0011】
また、本開示の一態様に係る画像読取装置では、前記記憶部には、更に、前記読取モード毎に、前記変調周期が前記変数と対応付けられて記憶され、前記制御部は、前記読取モードに応じて前記読取センサに原稿を読み取らせる際に、当該読取モードに対応した前記変数を前記スペクトラム拡散クロック生成部に与え、前記記憶部に当該変数に対応付けて記憶されている前記変調周期で前記基準クロックを変調させて前記スペクトラム拡散クロックを生成させる。
【0012】
上記構成によれば、読取画像のムラが抑えられるように予めライン周期が設定された後で画像読取装置に用いる読取センサを変更する要求があった場合であっても、記憶部に記憶されている変調周期を更新することで、読取画像のムラが抑えられている状態を維持することができる。
【0013】
また、本開示の一態様に係る画像読取装置では、前記記憶部には、更に、前記読取モード毎に、前記ライン周期が前記変数と対応付けられて記憶され、前記制御部は、前記読取モードに応じて前記読取センサに原稿を読み取らせる際に、前記読取制御部に、当該読取モードに対応した前記ライン周期に基づいて、スタートパルス信号と画素クロック信号とを出力させる。
【0014】
上記構成によれば、読取画像のムラが抑えられるように予めライン周期が設定された後で画像読取装置に用いる読取センサを変更する要求があった場合であっても、記憶部に記憶されている変調周期およびライン周期を更新することで、読取画像のムラが抑えられている状態を維持することができる。
【0015】
また、本開示の一態様に係る画像読取装置では、前記読取モード毎に、当該読取モードで最低限必要な画素数であるミニマムライン画素数が予め決定されており、前記変調周期は、複数の候補値が予め決定されており、前記制御部は、前記変調周期の複数の候補値それぞれについて、前記ミニマムライン画素数とライン調整画素数との和に1画素周期を乗じた積である前記ライン周期を、前記変調周期の当該候補値で割った値の小数部分が0.5となるような、前記ライン調整画素数を取得し、取得された前記ライン調整画素数が最も小さくなる前記変調周期の候補値と、前記ライン周期と、の組み合わせを前記記憶部に記憶する。
【0016】
上記構成によれば、ライン周期を変調周期で割った値の小数部分が0.5となり、かつ、ライン調整画素数が最も小さくなる変調周期とライン周期との組み合わせを記憶部に記憶することにしたため、読取画像のムラを抑制することと、原稿の画像を高速に読み取ることとを両立することができる。
【0017】
また、本開示の一態様に係る画像読取装置では、前記スペクトラム拡散クロック生成部は、前記制御部により与えられた前記変数に基づいて、前記ライン周期が前記変調周期の(整数+0.5)倍となるように前記変調周期を決定し、決定した前記変調周期で前記基準クロックを変調してスペクトラム拡散クロックを生成する回路ブロックを有する。
【0018】
上記構成によれば、スペクトラム拡散クロック生成部が回路ブロックを用いて、制御部により与えられた変数に基づいてハードウェア的に変調周期を決定することにしたため、スペクトラム拡散クロックの速やかに発振することができる。
【0019】
また、本開示の一態様に係る画像読取装置では、前記読取センサは、前記複数の受光部は前記主走査方向に複数の区間に分割され、前記複数の受光部は分割された区間ごとに、当該区間に対応する受光部のそれぞれの受光量に応じた信号を、前記スタートパルス信号の入力に応じて、前記画素クロック信号に従って順次出力する。
【0020】
上記構成によれば、複数の受光部は、分割された区間ごとに信号を順次出力する構成であるため、制御部が信号の処理を速やかに行うことができる。
【0021】
上記の課題を解決するために、本開示の別の一態様に係る書込方法は、上記画像読取装置の前記記憶部に、前記読取モード毎に、前記変調周期および前記ライン周期を前記変数と対応付けて記憶させる方法であって、前記読取モード毎に、当該読取モードで最低限必要な画素数であるミニマムライン画素数が予め決定されており、前記変調周期は、複数の候補値が予め決定されており、コンピュータが、前記変調周期の複数の候補値それぞれについて、前記ミニマムライン画素数とライン調整画素数との和に1画素周期を乗じた積である前記ライン周期を、前記変調周期の当該候補値で割った値の小数部分が0.5となるような、前記ライン調整画素数を取得するステップと、取得された前記ライン調整画素数が最も小さくなる前記変調周期の候補値と、前記ライン周期と、の組み合わせを前記記憶部に記憶させるステップと、を実行する。
【0022】
上記構成によれば、ライン周期を変調周期で割った値の小数部分が0.5となり、かつ、ライン調整画素数が最も小さくなる変調周期とライン周期との組み合わせを記憶部に記憶させておくができるため、読取画像のムラを抑制することと、原稿の画像を高速に読み取ることとを両立することができる。
【発明の効果】
【0023】
本開示の一態様によれば、読取画像のムラが抑えられるように予めライン周期が設定された後に画像読取装置に用いる読取センサの変更の要求があった場合であっても、その要求に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本開示の実施形態1に係る画像読取装置の外観を示す斜視図である。
図2】本開示の実施形態1に係る画像読取装置の画像読取部の内部構成を示す図である。
図3】本開示の実施形態1に係る画像読取装置の電気的構成を示すブロック図である。
図4】本開示の実施形態1に係る画像読取装置の制御系の構成を示すブロック図である。
図5】CISセンサの詳細構成を示す図である。
図6】本開示の実施形態1に係る画像読取装置による画像読取に関するフローチャートである。
図7】読取モードテーブルの一例を示す図である。
図8】SSC生成部によるスペクトラム拡散クロックの生成に関するフローチャートである。
図9】読取モードテーブルの生成処理に関するフローチャートである。
図10】ライン調整用画素数の説明に用いる図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔実施形態1〕
〔複合機の概略構成〕
図1は、本開示の実施形態1に係る画像読取装置の外観を示す斜視図である。図1に示す複合機(MFP:Multi-Function Peripheral)1は、画像読取装置の一例であり、プリント機能、コピー機能、スキャン機能、及びファックス機能等を有している。なお、画像読取装置は、前述した全ての機能を備えた複合機に限られるものではなく、例えば、ファックス機能を備えていない複合機であってもよい。以下、図1の矢印で示されるように、複合機1の上下方向、前後方向、及び左右方向を定義する。
【0026】
複合機1は、画像形成部2と、画像読取部3と、操作パネル110とを備えている。画像形成部2は、給紙トレイ21を備える。給紙トレイ21には、複数枚のシートを収容することができる。シートは、例えば普通紙である。なお、複合機1は、給紙トレイ21を複数個備えることにしてもよい。
【0027】
画像形成部2は、電子写真方式のプリント機能を有し、シートに画像を形成する。画像が形成されたシートは、排出トレイ22へ排出される。なお、画像形成部2の印刷方式は、電子写真方式に限らず、インクジェット方式であってもよい。画像形成部2は、カラー画像及びモノクロ画像を印刷可能であってもよいし、モノクロ画像のみを印刷可能であってもよい。
【0028】
画像読取部3は、1枚以上の原稿Qの画像を読み取って、読み取った画像である読取画像の画像データを生成する機能であるスキャン機能を有する。以下、読取画像の画像データのことを読取画像データと称する。画像読取部3は、読取画像データとして、モノクロ画像データおよびカラー画像データの両方を出力することができる。画像読取部3の内部構造については、詳細を後述する。
【0029】
操作パネル110は、複合機1の前側に設けられている。操作パネル110には、表示部110Aと、電源ボタン112、キャンセルボタン113等の入力部111が設けられている。表示部110Aは、タッチパネルを有する液晶表示装置であり、複合機1の操作画面やプレビュー画像等が表示される。表示部110Aのタッチパネルも入力部111の一部である。
【0030】
〔画像読取部の構成〕
画像読取部3の内部構成について、図2を参照して説明する。図2は、複合機1の画像読取部3の内部構成を示す断面図である。画像読取部3は、筐体30と、原稿搬送部31と、原稿カバー32と、第1読取センサ36と、第2読取センサ35とを備える。
【0031】
原稿搬送部31は、原稿カバー32と一体的に設けられている。原稿搬送部31は、ADF(Auto Document Feeder)であり、原稿トレイ31Aに載置された原稿Qを、搬送路R1に沿って排出トレイ31Bに向けて搬送することができる。
【0032】
原稿トレイ31Aには、原稿Qの表面が上側を向くように、原稿Qを載置することができる。原稿トレイ31Aに原稿Qが載置されているか否かは、フロントセンサ37により検知される。
【0033】
原稿カバー32は、筐体30の載置台に対して回動自在に設けられている。図2に示す状態では、原稿カバー32が筐体30の載置台の上方を覆っており、原稿Qを原稿トレイ31Aに置くことに適した状態にある。
【0034】
原稿カバー32が筐体30に対して回動すると、筐体30の上面に原稿Qを置くことに適した状態となる。筐体30の上面には、第1コンタクトガラス33及び第2コンタクトガラス34が、左右方向に並んで設けられている。
【0035】
筐体30の内側には、第1読取センサ36が設けられている。第1読取センサ36は、読取センサの一例であり、原稿Qの表面の画像を読み取ることができる。第1読取センサ36は、後述する受光部が配列されている主走査方向に直交する副走査方向に移動可能に設けられている。主走査方向は、例えば、図1の前後方向、図2の紙面垂直方向である。副走査方向は、例えば、図1および図2の左右方向である。
【0036】
原稿搬送部31の内側には、第2読取センサ35が設けられている。第2読取センサ35は、原稿搬送部31により搬送されている原稿Qの裏面の画像を読み取ることができる。
【0037】
画像読取部3は、FB(Flat Bed)方式により原稿Qの画像を読み取ることができる。FB方式では、原稿Qの表面が第1コンタクトガラス33の上面に向くように、ユーザが原稿Qを筐体30の載置台に載置する。画像読取部3は、第1読取センサ36を副走査方向に駆動させることにより、筐体30の載置台に載置された原稿Qの表面の画像を読み取る。
【0038】
また、画像読取部3は、ADF方式により原稿Qの画像を読み取ることができる。ADF方式では、画像読取部3は、第1読取センサ36を第2コンタクトガラス34の下方で停止させ、原稿搬送部31により搬送路R1に沿って原稿Qを搬送させる。画像読取部3は、第1読取センサ36により原稿Qの表面の画像を読み取り、第2読取センサ35により原稿Qの裏面の画像を読み取ることができる。
【0039】
すなわち、画像読取部3は、搬送路R1に沿って原稿Qを搬送する、または、第1読取センサ36を副走査方向に移動させることにより、第1読取センサ36に対して原稿Qを相対的に変位させる。そして、第1読取センサ36に対して原稿Qを相対的に変位させている期間に、第1読取センサ36により原稿Qの表面の画像を読み取る。
【0040】
また、画像読取部3は、搬送路R1に沿って原稿Qを搬送することにより、第2読取センサ35に対して原稿Qを相対的に変位させる。そして、第2読取センサ35に対して原稿Qを相対的に変位させている期間に、第2読取センサ35により原稿Qの裏面の画像を読み取る。
【0041】
〔複合機の電気的構成〕
図3は、複合機1の電気的構成を示すブロック図である。図3に示すように、複合機1は、制御部100と、画像形成部2と、原稿搬送部31と、第1読取センサ36と、第2読取センサ35と、フロントセンサ37と、表示部110Aと、入力部111と、通信インタフェース(I/F)120とを備えている。
【0042】
制御部100は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)であり、CPU(Central Processing Unit)101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)104と、を備えている。なお、CPU101を制御部として構成してもよい。
【0043】
ROM102には、複合機1を制御するための各種制御プログラムや各種設定等が記憶されている。RAM103は、各種制御プログラムが読み出される作業領域、及び読取画像データ等を一時的に記憶する記憶領域として利用される。制御部100では、RAM103を作業領域として用いて、CPU101がROM102に記憶された制御プログラムを実行することにより、複合機1の各部を制御することができる。
【0044】
NVRAM104は、記憶部の一例であり、後述する読取モードテーブルTBL等、各種データ等が予め記憶されている。なお、読取モードテーブルTBLは、ROM102に記憶してもよく、複合機1の外部から接続される外部記憶装置に記憶することにしてもよい。また、読取モードテーブルTBLは、複合機1が起動されるたびに生成し、RAM103に記憶させることにしてもよい。
【0045】
〔画像読取〕
複合機1による画像読取について説明する。
図4は、複合機1の制御系の構成を示すブロック図である。図4に示すとおり、制御部100は、発振器105、SSC(Spectrum Spread Clock)生成部106、読取制御部107、ならびにLVDS(Low Voltage Differential Signaling)インタフェース108Aおよび108Bを更に備える。なお、SSC生成部106および読取制御部107を制御部100とは別に設けることにしてもよい。
【0046】
発振器105は、基準クロックCLKを出力する。SSC生成部106は、スペクトラム拡散クロック生成部であり、発振器105が出力した基準クロックCLKを周波数変調し、スペクトラム拡散クロックSSCを生成する。SSC生成部106は、レジスタ106Aを有する。レジスタ106Aには、複合機1の読取モードを示す変数Jが記憶される。読取モードとは、第1読取センサ36および第2読取センサ35による画像読取の設定である。
【0047】
複合機1は、複数の読取モードを有する。読取モードには、例えば、以下の設定が含まれる。
(1)FB方式で原稿Qの画像を読み取るか、ADF方式で原稿Qの画像を読み取るかを示す設定
(2)読取画像データをモノクロ画像データとするかカラー画像データとするかを示す設定
(3)読取画像データの解像度を示す設定
(4)スキャン機能のための画像読取なのか、コピー機能のための画像読取なのかを示す設定
なお、読取モードには、上記(1)から(4)以外の設定が含まれていてもよく、上記(1)から(4)の一部が含まれていなくてもよい。
【0048】
CPU101は、レジスタ106Aへ複合機1の読取モードを示す変数Jを記憶させることにより、SSC生成部106へ変数Jを与える。SSC生成部106は、与えられた変数Jに基づいて、基準クロックCLKを変調する変調周期Mを決定する。SSC生成部106は、決定された変調周期Mに基づいて基準クロックCLKを周波数変調し、スペクトラム拡散クロックSSCを生成する。CPU101が変数Jから変調周期Mを決定する方法については図8を用いて後述する。
【0049】
読取制御部107は、SSC生成部106が生成したスペクトラム拡散クロックSSCに基づいて、スタートパルス信号SPと、画素クロック信号MCLKとを、第1読取センサ36および第2読取センサ35へ出力する。
【0050】
第1読取センサ36および第2読取センサ35は、それぞれAFE(Analog Front End)200と、CIS(Contact Image Sensor)センサ201とを有する。AFE200は、タイミングジェネレータ210と、A/D変換回路211と、LVDSインタフェース212とを有する。
【0051】
タイミングジェネレータ210は、読取制御部107から入力されたスタートパルス信号SPに基づいて、サンプリングホールド信号SHを生成する。タイミングジェネレータ210は、スタートパルス信号SPと画素クロック信号MCLKとをCISセンサ201へ入力する。また、タイミングジェネレータ210は、スペクトラム拡散クロックSSCに基づいたサンプリングホールド信号SHをA/D変換回路211へ出力する。
【0052】
図5には、CISセンサ201の一構成例を示すブロック図1000と、CISセンサ201の出力の説明に用いる波形図1001とが示されている。ブロック図1000に示すように、CISセンサ201は、光源301と、受光素子群302と、シフトレジスタ303とを備える。
【0053】
図5のブロック図1000に示す光源301は、スタートパルス信号SPに従って、原稿Qへ光を照射する。受光素子群302は、主走査方向に配列された複数の受光部310を有する。受光部310は、例えば、フォトダイオードにより構成され、受光量に応じた電荷を生成する。
【0054】
第1読取センサ36では、第1読取センサ36の光源301から照射される光は、原稿Qの表面に反射される。第1読取センサ36の受光素子群302は、原稿Qの表面で反射された光を受光し、電荷を蓄積する。
【0055】
一方で、第2読取センサ35では、第2読取センサ35の光源301から照射される光は、原稿Qの裏面に反射される。第2読取センサ35の受光素子群302は、原稿Qの裏面で反射された光を受光し、電荷を蓄積する。
【0056】
ブロック図1000では、CISセンサ201は、6個のシフトレジスタ303を有する。6個のシフトレジスタ303は、主走査方向に6個に分割された受光素子群302の区画にそれぞれ対応する。6個のシフトレジスタ303には、スタートパルス信号SPと、画素クロック信号MCLKとが入力されており、対応する区画に配列されている複数の受光部310に蓄積された電荷量に応じたアナログ信号AO1-AO6を出力する。なお、受光素子群302の区画の数およびCISセンサ201に含まれるシフトレジスタ303の数は、1個以上であればよく、6個に限定されない。
【0057】
図4のA/D変換回路211は、タイミングジェネレータ210から入力されるサンプルホールド信号SHに基づいて、CISセンサ201から入力されるアナログ信号AO1-AO6をA/D変換することにより、差動伝送方式のデジタル信号DO1-DO6を生成する。デジタル信号DO1-DO6は、LVDSインタフェース212を介して、制御部100へ出力される。
【0058】
以上の説明のとおり、スタートパルス信号SPは、ライン周期TLINを定める。ライン周期TLINとは、CISセンサ201が1ライン分のアナログ信号AO1-AO6を出力する周期である。
【0059】
図5の波形図1001を用いて、スペクトラム拡散クロックSSCと、画素クロック信号MCLKと、サンプルホールド信号SHとの関係について説明する。波形図1001では、画素クロック信号MCLKの周期は、スペクトラム拡散クロックSSCの周期の4倍に設定されている。CISセンサ201は、画素クロック信号MCLKに同期して1画素分のアナログ信号AOを出力する。なお、波形図1001に示した画素クロック信号MCLKは、あくまで一例であって、画素クロック信号MCLKの周期はスペクトラム拡散クロックSSCの周期の4倍に限定されない。
【0060】
波形図1001では、サンプルホールド信号SHは、画素クロック信号MCLKの1周期のうち、スペクトラム拡散クロックSSCの4周期目の立ち上がりのタイミングに出力される。
【0061】
図6は、複合機1による画像読取に関するフローチャートである。
S1において、複合機1のCPU101は、図3の入力部111を用いた読取モードの設定に関する入力を受け付ける。例えば、CPU101は、表示部110Aに不図示の設定画面を表示し、ユーザに上記(1)-(4)の設定について入力部111を用いた入力を受け付ける(S1)。
【0062】
CPU101は、入力部111を用いた所定の読取開始命令を受け付けると(S2:YES)、S3に進む。例えば、CPU101は、原稿Qの画像の読取開始を指示するためのボタンを表示部110Aに表示することにより、読取開始命令の入力の受付を開始する。ユーザが入力部111を用いてそのボタンを選択する操作を行うと(S2:YES)、S3に進む。
【0063】
S3において、CPU101は、S1で設定された読取モードに基づいて、図3のNVRAM104に記憶されている読取モードテーブルTBLを参照する。CPU101は、S1で設定された読取モードに対応する変数Jを読取モードテーブルTBLから取得し、その変数JをSSC生成部106のレジスタ106Aへ記憶させる(S3)。
【0064】
図7は、読取モードテーブルTBLの一例を示す図である。図7に示す読取モードテーブルTBLでは、複合機1の読取モードごとに、ライン周期TLINと、SSC変調周波数と、ライン周期TLINを変調周期Mで割った値と、変数Jとが記憶されている。読取モードは、読取解像度、カラー/モノクロ、ADF/FB、スキャン/コピー/FAXの組み合わせからなり、例えば、読取モード1は、「読取解像度300dpi、カラー、FB方式、スキャン」である。
【0065】
SSC変調周波数は、SSC生成部106が基準クロックCLKを周波数変調する変調周波数であって、変調周期Mの逆数である。なお、SSC変調周波数の代わりに、複合機1の読取モードごとの変調周期Mを読取モードテーブルTBLに記憶することにしてもよい。
【0066】
図7に示すように、複合機1のいずれの読取モードでも、ライン周期TLINを変調周期Mで割った値は、正の整数+0.5の値となっている。すなわち、ライン周期TLINは、変調周期Mの(正の整数N+0.5)倍の周期になっている。
【0067】
図6のS1において、複合機1の読取モードの中から任意の読取モードが設定される。読取モードテーブルTBLには、読取モードと変数との対応関係が記憶されている。CPU101は、読取モードテーブルTBLから、S1において設定された読取モードに対応する変数Jを取得し、SSC生成部106のレジスタ106Aへ変数Jを記憶させる(S3)。
【0068】
CPU101は、レジスタ106Aへ変数Jを記憶させると(S3)、SSC生成部106に対して、読取モード1に対応したスペクトラム拡散クロックSSCの発振を命令する(S4)。また、CPU101は、読取制御部107に対して、読取モード1に対応したライン周期TLINを設定する(S5)。CPU101は、S1において設定された読取モードに応じたライン周期TLINに基づくスタートパルス信号SPと画素クロック信号MCLKとをそれぞれ読取制御部107に出力するように制御する。
【0069】
S6において、CPU101は、S1で設定された設定モードに基づいて、FB方式の画像読取を行うかADF方式の画像読取を行うのか判定する。例えば、S1で設定された読取モードがFB方式の画像読取を行うことになっている場合(S6:YES)、CPU101は、S1で設定された読取モードに応じたライン周期TLINにてFB方式の画像読取を行う(S7)。
一方、S1で設定された読取モードがADF方式の画像読取を行うことになっている場合(S6:NO)、CPU101は、S1で設定された読取モードに応じたライン周期TLINにてADF方式の画像読取を行う(S8)。
【0070】
S9において、CPU101は、S1で設定された設定モードに基づいて、コピー機能のための画像読取だったのか、スキャン機能のための画像読取だったのか判定する。例えば、S1で設定された読取モードにおける画像読取がコピー機能のための画像読取の場合(S9:YES)、CPU101は、画像形成部2を制御して、原稿Qから読み取った画像をシートに形成させる(S10)。
【0071】
S1で設定された読取モードにおける画像読取がスキャン機能のための画像読取の場合(S9:NO)、または、シートへの画像形成が完了した場合、CPU101は、図6の処理を終了する。
【0072】
図8は、SSC生成部106によるスペクトラム拡散クロックSSCの生成に関するフローチャートである。
【0073】
S21において、SSC生成部106は、CPU101からスペクトラム拡散クロックSSCの発振に関する命令があったか否かを判定する。図6のS4においてCPU101によりスペクトラム拡散クロックSSCの発振の命令を受けると(S21:YES)、SSC生成部106は、レジスタ106Aから変数Jを読み出し(S22)。例えば、図6のS3においてCPU101がレジスタ106Aに変数J=1を記憶させていた場合は、SSC生成部106は、変数J=1をレジスタ106Aから読み出す。
【0074】
SSC生成部106は、レジスタ106Aから読み出した変数Jが1または3の場合(S23:YES)、S24に進む。S24において、SSC生成部106は、図7の読取モードテーブルTBLの読取モード1または読取モード3のSSC変調周波数を参照し、61.3kHzにて基準クロックCLKを周波数変調し、スペクトラム拡散クロックSSCを生成する。
【0075】
SSC生成部106は、レジスタ106Aから読み出した変数Jが1または3でなく(S23:NO)、2または7である場合(S25:YES)、S26に進む。S26において、SSC生成部106は、図7の読取モードテーブルTBLの読取モード2または読取モード7のSSC変調周波数を参照し、52.5kHzにて基準クロックCLKを周波数変調し、スペクトラム拡散クロックSSCを生成する。
【0076】
SSC生成部106は、レジスタ106Aから読み出した変数Jが2または7でなく(S25:NO)、4である場合(S27:YES)、S28に進む。S28において、SSC生成部106は、図7の読取モードテーブルTBLの読取モード4のSSC変調周波数を参照し、82.2kHzにて基準クロックCLKを周波数変調し、スペクトラム拡散クロックSSCを生成する。
【0077】
SSC生成部106は、レジスタ106Aから読み出した変数Jが4でなく(S27:NO)、5である場合(S29:YES)、S30に進む。S30において、SSC生成部106は、図7の読取モードテーブルTBLの読取モード5のSSC変調周波数を参照し、68.7kHzにて基準クロックCLKを周波数変調し、スペクトラム拡散クロックSSCを生成する。
【0078】
SSC生成部106は、レジスタ106Aから読み出した変数Jが5でもない場合(S29:NO)、図7の読取モードテーブルTBLの読取モード6のSSC変調周波数を参照し、64.4kHzにて基準クロックCLKを周波数変調し、スペクトラム拡散クロックSSCを生成する(S31)。
【0079】
図9は、図7に示した読取モードテーブルTBLの生成処理に関するフローチャートである。図9に示す読取モードテーブルTBLの生成処理は、複合機1の電源投入時、複合機1の製造時、制御プログラム更新時等に実行される。読取モードテーブルTBLの生成処理は、CPU101により実行される。なお、複合機1の製造時に実行される場合には、生成処理は、複合機1の外部のコンピュータ、例えば複合機1の生産現場に設けられたコンピュータで実行されることにしてもよい。以下では、複合機1の電源投入時にCPU101により実行される場合について説明する。
【0080】
読取モードテーブルTBLの生成処理を開始するにあたり、読取モードごとに、変数Jおよびミニマムライン周期TMINは、予め定められている。ミニマムライン周期TMINは、図5に示した受光素子群302の1区画に含まれる受光部310の個数、図2に示した原稿搬送部31が原稿Qの搬送に用いる駆動部の性能、第1読取センサ36を副走査方向に駆動させる駆動部の性能等により決められる。読取モードごとのミニマムライン周期TMINは、例えば、NVRAM104、ROM102、不図示の外部記憶装置等に記憶されている。
【0081】
また、各読取モードに対して設定可能な変調周期Mは、その候補値が予め用意されている。例えば、SSC変調周波数が52.5kHz、61.3kHz、64.4kHz、68.7kHz、82.2kHzとなるような変調周期Mの候補値が予め用意されている。
【0082】
CPU101は、読取モード1についての設定を開始すると(S41)、読取モード1のミニマムライン周期TMINをNVRAM104等から読み出し、以下の式1によりミニマムライン画素数PMINを算出する(S42)。
MIN=TMIN/T …(式1)
ここで、Tは、1画素周期である。
【0083】
CPU101は、変調周期Mを最初の候補値、例えば、52.5kHzの逆数に設定し(S43)、以下の式2を満たすライン調整用画素数Δを算出し(S44)、RAM103にそのライン調整用画素数Δの値を記憶する(S45)。
Δ={M×(N+0.5)/T}-PMIN …(式2)
ここで、Nは任意の正の整数である。
【0084】
CPU101は、全ての変調周期Mの候補値に対してライン調整用画素数Δが算出されるまでS43からS45までの処理を繰り返す(S46:NO、S43-S45)。CPU101は、全ての変調周期Mの候補値に対してライン調整用画素数Δが算出されると(S46:YES)、ライン調整用画素数Δが最も小さい変調周期Mの候補値を、読取モード1の変調周期Mに決定する(S47)。
【0085】
CPU101は、S47で決定した読取モード1の変調周期Mと、その変調周期Mに対応するライン調整用画素数Δとに基づいて、読取モード1の設定を決定し、NVRAM104に記憶する(S48)。
より具体的には、読取モード1のライン周期TLINは、以下の式3により算出される。
LIN=TMIN+Δ×T …(式3)
読取モード1のSSC変調周波数は、読取モード1の変調周期Mの逆数に決定される。
読取モード1の「ライン周期/変調周期M」は、式3により算出されたライン周期TLINを、S47で決定された読取モード1の変調周期Mで割ることにより決定される。
【0086】
CPU101は、全ての読取モードについて設定が終了していない場合は(S49:NO)、次の読取モード、例えば読取モード2についてS42からS48までの処理を繰り返す(S50、S42-S48)。CPU101は、全ての読取モードについて設定が終了した場合(S49:YES)、すなわち、読取モードテーブルTBLの生成を完了すると、図9の処理を終了する。
【0087】
図10は、ミニマムライン画素数PMINと、ライン周期TLINと、ライン調整用画素数Δと、正の整数Nとの関係を示す図である。
【0088】
ミニマムライン画素数PMINは、CISセンサ201から1ライン分のアナログ信号AOを出力するために必要となる画素クロック信号MCLKの最小波数である。ライン周期TLINは、ミニマムライン画素数PMINに1画素周期Tを乗じた値よりも大きくなる。
【0089】
複合機1は、EMI対策のため、ライン周期TLINが変調周期Mの(正の整数N+0.5)倍となるように調節する。ライン周期TLINを変調周期Mの(正の整数N+0.5)倍に設定することにより、読取画像に現れるムラを目立たなくすることができる。
【0090】
しかしながら、ミニマムライン画素数PMINに1画素周期Tを乗じた値は、変調周期Mの(正の整数N+0.5)倍の値となるとは限らない。ライン調整用画素数Δは、ミニマムライン画素数PMINに1画素周期Tを乗じた値と、変調周期Mの(正の整数N+0.5)倍との間の差を調節するためのものである。
【0091】
図10の上段には、変調周期Mを変調周期M1にした場合のライン調整用画素数Δが図示されている。図10の下段には、変調周期Mを変調周期M1より大きい変調周期M2にした場合のライン調整用画素数Δが図示されている。図10に示す例では、変調周期MをM1にした場合よりもM2にした場合の方がライン調整用画素数Δをより小さくすることができる。
【0092】
図10に示すように、ライン周期TLINは、ライン調整用画素数Δが小さくなるほど小さくなる。すなわち、複合機1は、ライン調整用画素数Δが小さくなるほど高速に原稿Qの画像を読み取ることができる。
【0093】
図9に示した読取モードテーブルTBLの生成処理では、読取モードXごとにライン調整用画素数Δが小さくなる変調周期Mを決定し、読取画像に現れるムラを目立たなくすることと、原稿Qの画像を高速に読み取ることとの両立を図っている。
【0094】
〔実施形態1の作用効果〕
【0095】
以上説明した実施形態1に係る複合機1によれば、NVRAM104には、複数の読取モードのそれぞれに対応する変数Jが記憶されている。CPU101は、読取モードに応じて第1読取センサ36および第2読取センサ35に原稿を読み取らせる際、当該読取モードに対応した変数JをSSC生成部106に与える(図6のS3)。SSC生成部106は、与えられた変数Jに基づいて、周波数変調の変調周期Mを決定する(図8のS22-S31)。
上記構成によれば、読取画像のムラが抑えられるようにライン周期TLINが設定された後に読取センサを変更する要求があった場合であっても、変調周期Mを変更することにより、その要求に対応することができる。
【0096】
また、CPU101は、ライン周期TLINが、SSC生成部106により決定された変調周期の(整数+0.5)倍の周期となるように、読取制御部107からスタートパルス信号SPと画素クロック信号MCLKとを出力させる。
上記構成によれば、ライン周期TLINがSSC生成部106により決定された変調周期Mの(整数+0.5)倍の周期となるように、読取制御部107からスタートパルス信号SPと画素クロック信号MCLKとを出力させるため、読取画像のムラを抑えることができる。
【0097】
また、NVRAM104には、更に、読取モード毎に、変調周期Mが変数Jと対応付けられて記憶されている。CPU101は、読取モードに応じて第1読取センサ36および第2読取センサ35に原稿を読み取らせる際に、当該読取モードに対応した変数JをSSC生成部106に与え、NVRAM104に当該変数Jに対応付けて記憶されている変調周期Mで基準クロックCLKを変調させてスペクトラム拡散クロックSSCを生成させる。
上記構成によれば、読取画像のムラが抑えられるように予めライン周期TLINが設定された後で読取センサを変更する要求があった場合であっても、NVRAM104に記憶されている変調周期Mを更新することで、読取画像のムラが抑えられている状態を維持することができる。
【0098】
また、NVRAM104には、更に、読取モード毎に、ライン周期TLINが変数Jと対応付けられて記憶され、CPU101は、読取モードに応じて第1読取センサ36および第2読取センサ35に原稿を読み取らせる際に、読取制御部107に、当該読取モードに対応したライン周期TLINに基づいて、スタートパルス信号SPと画素クロック信号MCLKとを出力させる。
【0099】
上記構成によれば、読取画像のムラが抑えられるように予めライン周期TLINが設定された後で読取センサを変更する要求があった場合であっても、NVRAM104に記憶されている変調周期Mおよびライン周期TLINを更新することで、読取画像のムラが抑えられている状態を維持することができる。
【0100】
また、複合機1では、読取モード毎に、当該読取モードで最低限必要な画素数であるミニマムライン画素数PMINが予め決定されている。変調周期Mは、複数の候補値が予め決定されており、CPU101は、変調周期Mの複数の候補値それぞれについて、ミニマムライン画素数PMINとライン調整画素数Δとの和に1画素周期Tを乗じた積であるライン周期TLINを、変調周期Mの当該候補値で割った値の小数部分が0.5となるような、ライン調整画素数Δを取得する(図9のS44)。CPU101は、取得されたライン調整画素数Δが最も小さくなる変調周期Mの候補値と、ライン周期TLINと、の組み合わせをNVRAM104に記憶する(S47およびS48)。
【0101】
上記構成によれば、ライン周期TLINを変調周期で割った値の小数部分が0.5となり、かつ、ライン調整画素数が最も小さくなる変調周期とライン周期TLINとの組み合わせを記憶部に記憶することにしたため、読取画像のムラを抑制することと、原稿の画像を高速に読み取ることとを両立することができる。
【0102】
また、第1読取センサ36および第2読取センサ35では、CISセンサ201の受光素子群302を構成する複数の受光部310が主走査方向に複数の区間に分割されている。複数の受光部310は分割された区間ごとに、当該区間に対応する受光部310のそれぞれの受光量に応じた信号を、スタートパルス信号SPの入力に応じて、画素クロック信号MCLKに従って順次出力する。
【0103】
〔実施形態2〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0104】
実施形態2では、SSC生成部106は、レジスタ106Aを有する回路ブロックとして構成される。実施形態2におけるSSC生成部106は、CPU101により、レジスタ106Aへ変数Jが記憶されると、その変数Jに応じた変調周期Mによりスペクトラム拡散クロックSSCを生成する。
【0105】
例えば、SSC生成部106は、変調周期Mの候補値ごとにスペクトラム拡散クロックSSCを生成する回路ブロックを有し、CPU101により与えられた変数Jに応じて使用する回路ブロックを切り替えるようにする。
【0106】
SSC生成部106を回路ブロックで構成する場合、読取モードテーブルTBLに読取モード毎のSSC変調周波数を記憶しておくことを要しない。
【0107】
〔実施形態2の作用効果〕
【0108】
以上説明した実施形態2に係る画像読取装置では、SSC生成部106は、CPU101により与えられた変数Jに基づいて、ライン周期TLINが変調周期Mの(整数+0.5)倍となるように変調周期Mを決定し、決定した変調周期Mで基準クロックCLKを変調してスペクトラム拡散クロックSSCを生成する回路ブロックを有する。
【0109】
上記構成によれば、SSC生成部106が回路ブロックを用いて、CPU101により与えられた変数Jに基づいてハードウェア的に変調周期Mを決定することにしたため、速やかにスペクトラム拡散クロックSSCを発振することができる。
【0110】
〔変形例〕
上記の実施形態1および実施形態2では、画像読取装置の一例として複合機1を採用したが、これに限られず、画像形成部2を備えないスキャナを採用してもよい。
【0111】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0112】
1 複合機
3 画像読取部
36 第1読取センサ
35 第2読取センサ
101 CPU
104 NVRAM
106 SSC生成部
106A レジスタ
107 読取制御部
CLK 基準クロック
SSC スペクトラム拡散クロック
SP スタートパルス信号
MCLK 画素クロック信号
M、M1、M2 変調周期
J 変数
LIN ライン周期
MIN ミニマムライン画素数
Δ ライン調整画素数

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10