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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025215
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】表示ユニット及び光学表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 23/04 20060101AFI20240216BHJP
   G02B 21/18 20060101ALI20240216BHJP
   G02B 21/36 20060101ALI20240216BHJP
   G02B 27/02 20060101ALN20240216BHJP
【FI】
G02B23/04
G02B21/18
G02B21/36
G02B27/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128476
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(72)【発明者】
【氏名】井出 光隆
(72)【発明者】
【氏名】濱出 唯芽
【テーマコード(参考)】
2H039
2H052
2H199
【Fターム(参考)】
2H039AA05
2H039AB22
2H039AC09
2H052AB26
2H052AF22
2H199CA12
2H199CA23
2H199CA24
2H199CA25
2H199CA29
2H199CA30
2H199CA32
2H199CA43
2H199CA44
2H199CA45
2H199CA47
2H199CA50
2H199CA58
2H199CA59
2H199CA62
2H199CA65
2H199CA94
(57)【要約】
【課題】観察光と映像光とを重ね合わせて観察する。
【解決手段】本発明の表示ユニットは、対物レンズ及び接眼レンズを含むレンズ群を収容する第1収容部材に取り付けられる取付部材と、映像光を射出する表示素子と表示素子から射出された映像光を偏向する第1偏向部材とを収容する第2収容部材と、を備え、第1偏向部材はレンズ群の軸上に配置される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズ及び接眼レンズを含むレンズ群を収容する第1収容部材に取り付けられる取付部材と、
映像光を射出する表示素子と、前記表示素子から射出された前記映像光を偏向する第1偏向部材と、を収容する第2収容部材と、
を備え、
前記第1偏向部材は前記レンズ群の軸上に配置される、
表示ユニット。
【請求項2】
前記対物レンズは前記軸上で前記第1偏向部材と前記接眼レンズとの間に配置されている、
請求項1に記載の表示ユニット。
【請求項3】
前記接眼レンズは前記軸上で前記対物レンズと前記第1偏向部材との間に配置されている、
請求項1に記載の表示ユニット。
【請求項4】
前記第1偏向部材において前記映像光が入射する第1面に前記映像光の少なくとも一部を反射する反射膜が設けられ、
前記第1偏向部材において前記第1面とは反対側の第2面に反射防止膜が設けられている、
請求項1から3の何れか一項に記載の表示ユニット。
【請求項5】
前記第1偏向部材において第1波長域を有する光の反射率と前記第1波長域とは異なる第2波長域を有する光の反射率とは互いに異なる、
請求項1から3の何れか一項に記載の表示ユニット。
【請求項6】
前記表示素子からの映像光を前記第1偏向部材に向けて偏向させる第2偏向部材を備える、
請求項1から3の何れか一項に記載の表示ユニット。
【請求項7】
前記第1偏向部材は、
前記表示素子からの前記映像光が入射する第1入射部を有する第1プリズムと、
外景からの観察光が入射する第2入射部を有する第2プリズムと、
前記第1入射部から入射した映像光を反射し、前記第2入射部から入射した光を透過する反射膜と、
を備え、
前記第1プリズムは前記反射膜で反射された前記映像光と前記反射膜を透過した前記観察光とを出射する出射部を有する、
請求項1から3の何れか一項に記載の表示ユニット。
【請求項8】
前記第1偏向部材に対して前記表示素子とは反対側に設けられ、前記第1偏向部材を透過した前記映像光を前記第1偏向部材に向けて反射する反射部材と、
前記第1偏向部材と前記反射部材との間に配置された1/4波長板と、
を備え、
前記第1偏向部材は、前記反射部材に向けて第1偏光光を透過し、前記第1偏光光とは異なる偏光の第2偏光光を反射する、
請求項1から3の何れか一項に記載の表示ユニット。
【請求項9】
前記第1偏向部材に対して前記表示素子とは反対側に設けられた受光素子を備え、
前記受光素子には、前記第2入射部から前記第2プリズムに入射した前記観察光の一部が入射する、
請求項7に記載の表示ユニット。
【請求項10】
前記第1偏向部材に入射する前記映像光の光軸に対する前記第1偏向部材の角度を45°よりも大きく90°以下に調節する調節部材を備える、
請求項1から3の何れか一項に記載の表示ユニット。
【請求項11】
請求項1から3の何れか一項に記載の表示ユニットと、
前記レンズ群を有する遠方視認装置と、
を備える、
光学表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示ユニット及び光学表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、双眼鏡や望遠鏡、顕微鏡等の観察装置を用いる観察者からの観察像と映像とを重ね合わせて観察したいという要望が高まっている。例えば、双眼鏡で野鳥を観察したときに、観察像に野鳥の名前が瞬時に映像として表示される機能や、顕微鏡の観察像に倍率が瞬時に映像として表示される機能の実現が望まれている。
【0003】
特許文献1には、第1対物レンズと、第2対物レンズと、接眼レンズと、ビームスプリッターと、ディスプレイと、を備える光学装置が開示されている。特許文献1の光学装置では、ディスプレイから発せられた映像光が第2対物レンズを通り、観察光の光路上で第1対物レンズと接眼レンズとの間に配置されたビームスプリッターによって第1対物レンズを通った後の観察光と重ねられる。観察光及び映像光の光路上でビームスプリッターと接眼レンズとの間に中間像が形成される。その結果、特許文献1の光学装置を用いた観察者は、観察像と映像光とが互いに重なり合った中間像を視認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-174569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1に開示されている光学装置では、映像光を発するディスプレイ(表示素子)、第2対物レンズ及びビームスプリッターが観察光の光路上での第1対物レンズと接眼レンズとの間に予め且つ直接組み込まれている。そのため、第1対物レンズを有して観察像を結像させる第1光学系に、ディスプレイ、第2対物レンズ及びビームスプリッターを含む第2光学系(表示ユニット)を後から組み合わせることは難しい。したがって、観察者が使い慣れた観察装置や、特殊な条件或いは必要とされる性能に応じた観察装置が既にある場合でも、それらの観察装置を用いて特許文献1に開示されているように観察光と映像光とを重ね合わせて観察することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一つの態様の表示ユニットは、対物レンズ及び接眼レンズを含むレンズ群を収容する第1収容部材に取り付けられる取付部材と、映像光を射出する表示素子と表示素子から射出された映像光を偏向する第1偏向部材とを収容する第2収容部材と、を備える。第1偏向部材は、レンズ群の軸上に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1実施形態の光学表示装置の概略図である。
図2図1に示す光学表示装置をD方向から見たときの概略図である。
図3】本発明の第2実施形態の光学表示装置の概略図である。
図4】本発明の第3実施形態の光学表示装置の概略図である。
図5】本発明の第4実施形態の光学表示装置の概略図である。
図6】本発明の第5実施形態の光学表示装置の概略図である。
図7】本発明の第6実施形態の光学表示装置の概略図である。
図8】本発明の第7実施形態の光学表示装置の概略図である。
図9】本発明の第8実施形態の光学表示装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、本発明の第1実施形態の光学表示装置101の構成を示す概略図であり、光学表示装置101を上方から見た場合の図である。なお、以下の各図面では、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を変えている場合がある。
【0009】
図1に示すように、光学表示装置101は、双眼鏡(遠方視認装置)201と、第1実施形態の表示ユニット11と、を備える。
【0010】
本明細書では、双眼鏡201を使用する観察者の右眼ERと左眼ELの中心同士を結ぶ図示略の線に平行な方向をX方向とし、右眼ERの中心と左眼ELの中心との中間位置を通って右眼ER及び左眼ELの視界の前後方向に平行に延在する仮想線を基準線BLとする。X方向において、基準線BLに近づく方向を-X方向と称し、相対的に基準線BLに近い位置を-X側の位置と称する場合がある。基準線BLから離れる方向を+X方向と称し、相対的に基準線BLから遠い位置を+X側の位置と称する場合がある。
【0011】
また、X方向に直交し、右眼ER及び左眼ELの視界の前後方向に平行な方向をZ方向とする。Z方向において、観察対象の不図示の物体が存在する位置から観察者の右眼ER及び左眼ELに向かう方向を+Z方向とし、+Z方向とは逆向きの方向を-Z方向と称する場合がある。相対的に+Z方向の前方の位置を+Z側の位置、又は像側の位置と称し、相対的に+Z方向の後方の位置すなわち-Z方向の前方の位置を-Z側の位置、又は物体側の位置と称する場合がある。また、X方向及びZ方向に直交し、鉛直方向に平行な方向をY方向とする。Y方向において下から上に向かう方向を+Y方向と称し、+Y方向とは逆向きの方向を-Y方向と称する場合がある。相対的に+Y方向の前方の位置を+Y側の位置、又は上側の位置と称し、相対的に+Y方向の後方の位置すなわち-Y方向の前方の位置を-Y側の位置、又は下側の位置と称する場合がある。
【0012】
以下、観察光は、観察対象の物体から発せられ、双眼鏡201によって観察者に視認される光を表す。映像光は、観察対象の物体に関する情報を示す画像光であり、後述する表示素子50から発せられ、双眼鏡201によって観察者に視認される光を表す。
【0013】
双眼鏡201は、ポロ式或いはポロプリズムタイプと呼ばれる種類のうちでも所謂ミニポロではなく普通のポロと呼ばれる種類の双眼鏡である。双眼鏡201は、右眼用の鏡筒(第1収容部材)211及びレンズ群と、左眼用の鏡筒(第1収容部材)212及びレンズ群222と、接続部材230と、を備える。
【0014】
右眼用の鏡筒211には、右眼用のレンズ群が収容されている。左眼用の鏡筒212には、左眼用のレンズ群222が収容されている。鏡筒211,212の形状は、各々に対応するレンズ群の全体的な形状に応じて適宜設計されている。具体的には、鏡筒211,212は、物体側の端から+Z方向に延在し、下方に拡がりつつ、-X方向に曲がり、像側の端まで+Z方向に延在している。右眼用の鏡筒211は、基準線BLを基準にして折り返した左眼用の鏡筒212と同等である。鏡筒211,212の物体側の端及び像側の端は開口されている。つまり、鏡筒211,212は、筒状の筐体である。
【0015】
図1では右眼用のレンズ群が省略されているが、右眼用のレンズ群は、基準線BLを基準にして折り返した左眼用のレンズ群222と同等である。以下では、レンズ群222についてのみ説明する。
【0016】
レンズ群222は、少なくとも対物レンズ250と、接眼レンズ270と、を備える。対物レンズ250は、レンズ群222において最も像側に配置されている光学素子であり、鏡筒212の物体側の端部に嵌められている。接眼レンズ270は、レンズ群222において最も像側すなわち左眼ELの近くに配置されている光学素子であり、鏡筒212の像側の端部に嵌められている。図1では、対物レンズ250及び接眼レンズ270の各々が1枚の両凸レンズで例示されている。但し、対物レンズ250及び接眼レンズ270の一方又は両方は、複数のレンズがレンズ群222の軸AX1上で互いに間隔をあけて配置されている複合レンズであってもよく、2枚以上のレンズが軸AX1上で互いに接合された接合レンズであってもよく、複合レンズと接合レンズとの組み合わせによって構成されていてもよい。軸AX1は、レンズ群222の全体を通る観察光及び映像光の光軸を意味する。
【0017】
また、レンズ群222は、プリズム261、262を備えている構成でもよい。プリズム261は、不図示の観察光の光路上すなわち軸AX1上で対物レンズ250と接眼レンズ270との間に配置されている。プリズム261は、X方向に沿って見たときに略四角形状を有し、Y方向に沿って見たときに略台形状を有し、Zに沿って見たときに長円形状を有する。
【0018】
プリズム261は、透過面261aと、反射面261b,261cと、を有する。透過面261aは、X方向及びY方向を含むXY平面に平行な平面であり、観察光及び後述する映像光を透過する。反射面261bは、Y方向に沿って移動したときに+X側に凸となるように湾曲し、且つ+Z方向に移動するに従って-X側に移動する湾曲面である。反射面261cは、Y方向に沿って移動したときに-X側に凸となるように湾曲し、且つ+Z方向に移動するに従って+X側に移動する湾曲面である。反射面261b,261cは、観察光及び映像光を全反射する。
【0019】
プリズム262は、軸AX1上でプリズム261の直後、すなわち軸AX1上でプリズム261の像側の位置に配置されている。実際には、プリズム262は、X方向でプリズム261の中心よりも-X側の部分と重なり、Y方向でプリズム261の中心よりも下側の部分と重なり、且つプリズム261よりも下方に突出し、Z方向でプリズム261よりも-Z側の位置に配置されている。プリズム262の透過面262aは、プリズム261の透過面261aと平行に配置され、Z方向で透過面261aと隙間をあけて配置されている。
【0020】
プリズム262は、透過面262aと、反射面262b,262cと、を有する。透過面262aは、XY平面に平行な平面であり、観察光及び映像光を透過する。反射面262bは、X方向に沿って移動したときに+Y側に凸となるように湾曲し、且つ+Z方向に移動するに従って+Y側に移動する湾曲面である。反射面262cは、X方向に沿って移動したときに-Y側に凸となるように湾曲し、且つ+Z方向に移動するに従って-Y側に移動する湾曲面である。
【0021】
対物レンズ250と、プリズム261,262と、接眼レンズ270の各材質は、観察光及び映像光を透過可能であれば特に限定されないが、例えば光学ガラスや石英等である。
【0022】
図2は、光学表示装置101を図1に示すD方向から見たときの構成を示す概略図である。図1及び図2に示すように、表示ユニット11は、取付部材21と、筐体(第2収容部材)31と、表示素子50と、レンズ55と、ハーフミラー(第1偏向部材)60と、を備える。
【0023】
取付部材21は、双眼鏡201の鏡筒212の物体側の端部に対してさらに物体側すなわち-Z側から取り付けられ、鏡筒212に対して着脱可能な部材である。取付部材21の構成及び形状は、鏡筒212の物体側の端部に着脱可能であれば特に限定されない。取付部材21は、例えば鏡筒212の物体側の端部を径方向の外側から係止可能な部材である。Z方向に沿って見たときに、取付部材21は、少なくとも対物レンズ250に入射する前の観察光の光路とは重なっていない。
【0024】
筐体31には、表示素子50と、レンズ55と、ハーフミラー60と、信号処理装置70が収容されている。筐体31は、表示素子50から射出される映像光を観察光と重ね合わせるためのレンズ55及びハーフミラー60を含む光学系の全体的な形状及び大きさに応じて適宜設計されている。
【0025】
具体的には、筐体31は、直方体状に形成され、上壁部32と、底壁部33と、側壁部34,35,36,37と、を備える。上壁部32は、XY平面に略平行な内壁面及び外壁面を有し、鏡筒212よりも上方にある。底壁部33は、XY平面に略平行な内壁面及び外壁面を有し、ハーフミラー60の下端よりも下方にある。
【0026】
側壁部34は、X方向及びZ方向を含むXZ平面に略平行な内壁面及び外壁面を有し、ハーフミラー60の+Z側の端よりも+Z側すなわち像側の位置にあり、Z方向で鏡筒212の物体側の端と隣り合って配置される。側壁部34において観察光及び映像光の光路と重なる領域には、透過領域が設けられている。側壁部36は、XZ平面に略平行な内壁面及び外壁面を有し、ハーフミラー60の-Z側の端よりも-Z側すなわち物体側の位置にある。側壁部36において観察光の光路と重なる領域には、透過領域が設けられている。
【0027】
側壁部35は、Y方向及びZ方向を含むYZ平面に略平行な内壁面及び外壁面を有し、上壁部32及び底壁部33の各々の+X側の端同士及び側壁部34,36の各々の+X側の端同士を連結する。側壁部37は、YZ平面に略平行な内壁面及び外壁面を有し、上壁部32及び底壁部33の各々の-X側の端同士及び側壁部34,36の各々の-X側の端同士を連結する。
【0028】
筐体31の材質は、特に限定されない。但し、筐体31の材質が観察光及び映像光を透過しない、或いは透過し難い材質である場合には、側壁部34,36の透過領域に開口が形成される、或いは透過領域のみ観察光及び映像光を透過可能な材質で構成される。上壁部32、底壁部33、側壁部35,37の各々の内壁面及び側壁部34,36の透過領域以外の領域の内壁面には、ねじ切りや黒色のコーティング等の遮光処理が施されていることが好ましい。これらの内壁面に遮光処理が施されることによって、表示素子50から射出された映像光の内壁面での乱反射を抑え、ゴーストの発生を防止することができる。
【0029】
表示素子50は、筐体31の内部空間40に配置され、具体的には内部空間40における+Y側の所定の位置に配置されている。表示素子50は、映像光を射出する表示面52を有する。表示面52は、XZ平面に平行に配置され、内部空間40に面する。なお、表示素子50は、上壁部32の内壁面、すなわち内部空間40に向く壁面に設けられていてもよい。
【0030】
筐体31において側壁部34,36は省略されてもよく、筐体31は+Z側及び-Z側に向けて開口していてもよい。なお、側壁部34,36が設けられることによって、観察者が表示ユニット11を取り扱う際に手が表示素子50、レンズ55及びハーフミラー60に触れることを防止することができる。その結果、ハーフミラー60の傾斜角度の変動、当該変動による軸AX2のずれ、及び表示素子50、レンズ55及びハーフミラー60の各々への外部からの衝撃や各々の損傷の発生を防止することができる。また、側壁部34,36が設けられることによって、内部空間40に対する防塵効果が得られる。
【0031】
表示素子50は、後述するように観察光と重畳する際に観察光に影響を与えないように映像光を射出可能な光源として、OLED(Organic Light Emitting Diode)のような自発光素子やレーザーMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)であることが好ましい。表示素子50にこれらの光源が用いられることによって、映像光における所謂黒浮きの発生を防ぎ、映像光を鮮明に表示することができる。但し、映像光の黒浮きが問題にならない場合では、表示素子50は、例えばLCoS(Liquid Crystal on Silicon,登録商標)やLED(Light Emitting Diode)、LCD(Liquid Crystal Display)、LEDとLCDとの組み合わせであってもよい。
【0032】
レンズ55は、筐体31の内部空間40に配置され、具体的には表示素子50から発せられた映像光の光路上で表示素子50よりも前方すなわち下方及び-Y側の所定の位置に配置されている。レンズ55は、映像光をレンズ55よりも光路上の前方で結像させる。レンズ55は、図で例示しているように両凸レンズであってもよく、両凸レンズ以外の平凸レンズを含む回転対称形の球面レンズ、非球面レンズ、自由曲面レンズ、フレネルレンズを含む回折レンズの何れかであってもよい。また、レンズ55は、複数のレンズがレンズ55の軸AX2上で互いに間隔をあけて配置されている複合レンズであってもよく、2枚以上のレンズが軸AX2上で互いに接合された接合レンズであってもよく、複合レンズと接合レンズとの組み合わせによって構成されていてもよい。軸AX2は、レンズ55を通る映像光の光軸を意味する。レンズ55の形状、及び開口数(Numerical Aperture;NA)を含むパラメータは、表示面52の大きさ、映像光のビーム面積及び波長等を考慮して適宜設計されている。
【0033】
レンズ55の材質は、映像光を透過可能であれば特に限定されないが、例えば光学ガラスや石英等であり、プラスチック等の樹脂であってもよい。
【0034】
なお、軸AX2上でのレンズ55と表示素子50との距離は微調整可能であることが好ましい。例えば表示素子50の軸AX2上での位置は固定され、レンズ55の軸AX2上での位置が可動であってもよく、レンズ55に不図示の移動機構が設けられてもよい。例えば、観察光と映像光との焦点距離及び結像位置に互いにずれが生じた場合に、軸AX2上でのレンズ55と表示素子50との距離を調整することによって、観察光と映像光との焦点距離及び結像位置を互いに揃えることができる。また、観察対象の物体の位置が急変した場合、或いは光学表示装置101を複数の観察者が共有して使用し、観察者によって視認能力の差がある場合等においても、軸AX2上でのレンズ55と表示素子50との距離を調整することによって、観察光に対して各観察者が違和感のない映像光を視認することができる。
【0035】
ハーフミラー60は、筐体31の内部空間40に配置され、具体的には表示素子50から発せられた映像光の光路上でレンズ55よりも前方すなわち下方及び-Y側において軸AX1,AX2が交差する位置に配置されている。ハーフミラー60は、互いに平行な板面を有する平行平板である基板から構成されている。基板の一方の板面(第1面)は、映像光が入射するとともに観察光が透過する面であり、基板の他方の板面(第2面)は一方の板面とは反対側の面で合って、観察光が入射する面である。基板の一方の板面には、反射膜62が設けられている。基板の他方の板面(第2面)には、反射防止膜64が設けられている。
【0036】
基板の一方の板面及び反射膜62は、レンズ55及び対物レンズ250と対向している。基板の一方の板面及び反射膜62は、Y方向に沿って見たときに表示素子50の表示面52の全体及びレンズ55と重なり、Z方向に沿って見たときに対物レンズ250に入射する前の観察光の光路、筐体31の側壁部34,36の透過領域の全体及び対物レンズ250と重なっている。
【0037】
基板の両板面、反射膜62及び反射防止膜64の表面は、X方向に沿って見たときに軸AX1,AX2の各々と略45°をなし、XY平面及びXZ平面に対して傾斜している。前述の角度は、板面又は表面と軸とのなす狭角を意味する。基板の両板面、反射膜62及び反射防止膜64の表面は、+Z方向に移動するに従って-Y方向に移動する。
【0038】
ハーフミラー60の基板の材質は、観察光を透過可能であれば特に限定されない。反射膜62は、+Y側から入射する映像光の少なくとも一部を反射し、-Z側から入射する観察光の少なくとも一部を透過する。反射膜62が基板の一方の板面に設けられることによって、映像光を観察光に効率良く重畳することができる。反射防止膜64は、-Z側から入射する観察光の略全部を透過する。反射防止膜64は省略可能であるが、反射防止膜64が基板の他方の板面に設けられることによって、観察光が二重になることを防止することができる。
【0039】
ハーフミラー60における観察光の透過率は50%以上であることが好ましい。このことによって、光学表示装置101における観察光の透過率の低下を極力抑えることができる。反射膜62における映像光の反射率は40%以上であることが好ましい。このことによって、映像光の光量の低下を抑えることができる。
【0040】
映像光が単色でよい場合、表示素子50の表示面52から単色所定の色に対応する波長を有する映像光を射出させればよい。この場合、反射膜62は、所定の色の波長を有する光のみに高い反射率を有し、所定の色以外の波長を有する光を透過するように形成されてもよい。すなわち、ハーフミラー60において所定の色の波長(第1波長域)を有する光の反射率と所定の色以外の波長(第1波長域とは異なる第2波長域)を有する光の反射率とは互いに異なる。所定の色は、例えば緑色や青色であるが、観察者が視認可能であれば特に限定されない。このことによって、光学表示装置101における所定の色以外の波長の観察光の透過率の低下を抑えることができる。
【0041】
第1実施形態において、表示ユニット11が双眼鏡201の鏡筒212の-Z側の端部に装着された状態では、ハーフミラー60がレンズ群222の軸AX1上に配置され、軸AX1上で観察対象の物体と対物レンズ250との間に配置される。すなわち、表示ユニット11が双眼鏡201に装着された状態では、対物レンズ250が軸AX1上でハーフミラー60と接眼レンズ270との間に配置される。このような相対配置によって、観察者は、表示ユニット11に対してZ方向で左眼ELからある程度の距離をあけてアプローチすることができるので、観察をしている際にも表示ユニット11を快適に取り扱うことができる。
【0042】
信号処理装置70は、表示素子50と電気的に接続された任意の場所に配置され、例えば筐体31の内部空間40において映像光の光路と重ならない位置に配置されている。信号処理装置70は、少なくとも観察光に含まれる物体の情報に応じた文字情報や画像情報に基づいて映像光の電気信号を生成し、表示素子50に当該電気信号を送信し、表示素子50の表示面52から当該電気信号に応じた映像光を射出させる。信号処理装置70は、観察光に含まれる物体の情報を取得するために、例えばハーフミラー60を透過した観察光の一部を受光する、或いは観察者の動きを捉え、画像認識等によって物体の種類や状態に関する情報を取得する機能又は機構を備える。信号処理装置70は、例えば前述した信号処理装置70の動作及び処理を行うプログラムが内蔵されたマイクロコンピューターや集積回路で構成されている。
【0043】
表示ユニット11の軽量化の点から、信号処理装置70は、観察者が所有する表示ユニット11と通信可能なスマートフォン、タブレット端末機器に配置されていてもよい。表示ユニット11は、信号処理装置70が筐体31に配置されることによってスタンドアロンで動作してもよく、前述のように外部端末装置やコンピューターと有線又は無線によって接続された状態で動作してもよい。
【0044】
上述の構成を備える光学表示装置101では、観察対象の物体からの観察光は、遠方から略平行光の状態で軸AX1に沿って-Z側から対物レンズ250に入射する。対物レンズ250に入射した観察光は、プリズム262の反射面262b、透過面262a、プリズム261の透過面261aを透過し、反射面261bによって-X方向に全反射される。-X方向に全反射された観察光は、反射面261cによって-Z方向に全反射され、透過面261a及びプリズム262の透過面262aを透過し、反射面262bによって-Y方向に全反射され、反射面262cによって+Z方向に全反射され、透過面262aを透過する。前述のようにプリズム261,262を通ることによって、観察光の像が正立する。プリズム262から射出された観察光は、接眼レンズ270によって左眼ELの網膜上に結像し、観察者に視認される。
【0045】
光学表示装置101では、表示ユニット11の表示素子50の表示面52から、信号処理装置70からの電気信号に応じた映像光が表示されると、映像光はレンズ55によって略平行光になり、平行光になった映像光の少なくとも一部はハーフミラー60の反射膜62によって反射される。ハーフミラー60によって反射された映像光は、物体から対物レンズ250に入射する観察光に重畳される。すなわち、対物レンズ250には、観察光と映像光が軸AX1に沿って互いに揃えられた光路から入射する。対物レンズ250に入射した映像光は、観察光と同様の光路を進み、プリズム261,262によって像を正立され、接眼レンズ270によって左眼ELの網膜上に結像し、観察者に視認される。
【0046】
以上説明した第1実施形態の表示ユニット11は、取付部材21と、筐体(第2収容部材)31と、を備える。取付部材21は、対物レンズ250及び接眼レンズ270を含むレンズ群222を収容する鏡筒(第1収容部材)212に取り付けられる。筐体31には、映像光を射出する表示素子50と、表示素子50から射出された映像光を偏向するハーフミラー(第1偏向部材)60と、を収容されている。第1実施形態の表示ユニット11では、ハーフミラー60は、レンズ群222の軸AX1上に配置される。第1実施形態の表示ユニット11によれば、双眼鏡201が例えば観察者が使い慣れた双眼鏡であっても、双眼鏡201に後付けし、双眼鏡201によって視認される観察像と表示素子50からの映像とを重畳させ、観察者が観察像及び映像の両方を視認することができる。
【0047】
第1実施形態の光学表示装置101は、第1実施形態の表示ユニット11と、対物レンズ250及び接眼レンズ270を含むレンズ群222を有する双眼鏡201と、を備える。第1実施形態の光学表示装置101によって、鏡筒212における対物レンズ250側の端部に表示ユニット11を後付け可能な双眼鏡201を実現することができる。また、第1実施形態の光学表示装置101によれば、表示ユニット11を双眼鏡201に取り付けた状態で観察者が観察像及び映像の両方を視認することができる。
【0048】
なお、第1実施形態では、双眼鏡201としてポロプリズム方式の双眼鏡を例示したが、表示ユニット11を取り付け可能な双眼鏡としては、対物レンズと接眼レンズとを含むレンズ群の軸が略一直線状であるダハプリズム方式の双眼鏡、或いはガリレオ方式の双眼鏡であってもよく、これら以外の方式の双眼鏡であってもよい。また、対物レンズと接眼レンズとの間の軸AX1は、X方向、Y方向及びZ方向の何れにおいても任意に移動してもよく、双眼鏡における対物レンズ及び接眼レンズを含むレンズ群の軸の形状は特に限定されない。さらに、レンズ群は、対物レンズ及び接眼レンズ、プリズムの他に、観察光を観察者の眼の網膜に結像させ且つ観察像を正立させるための任意の光学素子を備えてもよい。言い換えれば、レンズ群における対物レンズ及び接眼レンズ以外の構成の有無は、特に限定されない。
【0049】
また、第1実施形態では、表示ユニット11及び取付部材21が左眼用の鏡筒212のみに着脱可能であったが、表示ユニット11及び取付部材21は、右眼用の鏡筒211のみに着脱可能であってもよく、鏡筒211,212の両方に着脱可能であってもよい。
【0050】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図3を用いて説明する。なお、第2実施形態以降の各実施形態では、上位の実施形態と共通する内容の説明を省略し、上位の実施形態とは異なる各実施形態の構成について説明する。各実施形態では、第1実施形態の表示ユニット11及び光学表示装置101の各構成と共通する構成には、各構成と同一の符号を付し、その説明を省略する。また、各実施形態では、特筆しない限り、上位の実施形態と同様の変形例を適用することができる。
【0051】
図3は、第2実施形態の光学表示装置102を図1に示すD方向に対応する方向から見たときの構成を示す概略図である。図3に示すように、第2実施形態の光学表示装置102は、双眼鏡201と、第2実施形態の表示ユニット12と、を備える。
【0052】
なお、図3以降の各図では、観察光及び映像光がプリズム261の反射面261cによって折り返される位置をR1として表し、観察光及び映像光がプリズム262の反射面262cによって折り返される位置をR2として示し、位置R1から位置R2までの軸AX1の図示は省略されている。すなわち、図3以降の各図では位置R1,R2がY方向で互いに同じ位置で示されているが、実際には図1及び図2を参照して説明したように、位置R2は位置R1よりも下方にあり、位置R1,R2間の軸AX1は反射面261c,262cによってX方向又はY方向においても移動する。また、図3以降の各図では、プリズム261,262の形状が簡略化されている。
【0053】
表示ユニット12は、取付部材21と、筐体31と、表示素子50と、レンズ55と、ハーフミラー60と、を備える。表示ユニット12では、ハーフミラー60の基板の両板面、反射膜62及び反射防止膜64の表面は、X方向に沿って見たときに軸AX1,AX2の各々と少なくとも45°とは異なる所定の傾斜角度をなし、例えば50°以上の角度をなす。軸AX2は、ハーフミラー60の反射膜62の表面が軸AX1に対してなす角度に応じて、X方向に沿って見たときにY方向に平行且つ軸AX1,AX2の交点を通る不図示の軸に対して傾斜している。
【0054】
図3に示すように、例えばX方向に沿って見たときに、軸AX1,AX2がなす狭角が90°未満であって、軸AX2がY方向に対して対物レンズ250に近づくように傾斜している。この場合、ハーフミラー60は、軸AX1,AX2の交点を中心として第1実施形態での姿勢よりもY方向に平行になるように立ち上がった姿勢をとる。表示ユニット12では、表示ユニット11と同様に、表示素子50から発せられた映像光を観察光に重畳することができる。また、表示ユニット12では、ハーフミラー60を第1実施形態での姿勢よりも立ち上げた姿勢で内部空間40に配置されているため、破線で示すように筐体31のZ方向の全長を縮小することができる。
【0055】
なお、図示していないが、表示ユニット12は、X方向に沿って見たときのハーフミラー60の反射膜62の表面がY方向に平行且つ軸AX1,AX2の交点を通る軸に対してなす傾斜角度を調節可能な角度調節機構を備えてもよい。ハーフミラー60の傾斜角度を調整することによって、ハーフミラー60から接眼レンズ270までの間の軸AX2が軸AX1からずれて観察像に対する映像の表示位置が変化する。この原理を用いて、観察者は、角度調節機構を用いて観察像における映像の表示位置を容易に変更することができ、観察像から映像を外すこともできる。
【0056】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について、図4を用いて説明する。図4は、第3実施形態の光学表示装置103を図1に示すD方向に対応する方向から見たときの構成を示す概略図である。図4に示すように、第3実施形態の光学表示装置103は、双眼鏡201と、第3実施形態の表示ユニット13と、を備える。
【0057】
表示ユニット13は、取付部材21と、筐体31と、表示素子50と、レンズ55と、ミラー(第2偏向部材)58と、ハーフミラー60と、を備える。表示ユニット13では、表示素子50の表示面52は、XY平面に平行に配置されている。レンズ55は、表示素子50よりも+Z側の位置に配置されている。ミラー58は、レンズ55+Z側の位置に配置されている。表示素子50の表示面52から発せられた映像光は、+Z方向に進行する。表示素子50、レンズ55及びミラー58は、Z方向に沿って見たときに互いに重なり、ハーフミラー60よりも上側の位置にある。ミラー58は、少なくともハーフミラー60よりも+Z側の位置にある。
【0058】
表示ユニット13において、ハーフミラー60は、第2実施形態で説明したように、軸AX1,AX2の交点を中心として第1実施形態での姿勢よりもY方向に平行になるように立ち上がった姿勢をとっている。また、レンズ55の軸AX2がミラー58によって折り返されて反射膜62に交差している。ミラー58の反射面は、X方向に沿って見たときにハーフミラー60の反射膜62の表面の傾斜角度に応じて、Y方向に平行な不図示の軸及びZ方向に平行な不図示の軸に対して傾斜している。表示素子50とミラー58との間の軸AX2とハーフミラー60と対物レンズ250との間の軸AX1とが互いに平行であれば、ミラー58の反射面とハーフミラー60の反射膜62の表面が互いに平行である。
【0059】
表示ユニット13では、表示ユニット11と同様に、表示素子50から発せられた映像光を観察光に重畳することができる。また、表示ユニット13では、表示素子50からの映像光をハーフミラー60に向けて偏向させるミラー58をさらに備え、ハーフミラー60の傾斜角度、表示素子50とミラー58との離間距離等を適宜設定することによって、筐体31の少なくともZ方向から見て鏡筒212と重なる部分のZ方向の全長を縮小することができる。なお、映像光の光路を妨げなければ、表示ユニット13の双眼鏡201への装着状態において、ミラー58が対物レンズ250よりも+Z側の位置にあってもよい。このことによって、筐体31のZ方向から見て鏡筒212と重なる部分のZ方向の全長をさらに縮小することができる。
【0060】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について、図5を用いて説明する。図5は、第4実施形態の光学表示装置104を図1に示すD方向に対応する方向から見たときの構成を示す概略図である。図5に示すように、第4実施形態の光学表示装置104は、双眼鏡201と、第4実施形態の表示ユニット14と、を備える。
【0061】
表示ユニット14は、取付部材22と、筐体31と、表示素子50と、レンズ55と、ハーフミラー60と、を備える。
【0062】
取付部材22は、双眼鏡201の鏡筒212の像側の端部にさらに像側すなわち+Z側から取り付けられ、鏡筒212に対して着脱可能な部材である。取付部材22の構成及び形状は、鏡筒212の像側の端部に着脱可能であれば特に限定されない。取付部材22は、例えば鏡筒212の像側の端部を径方向の外側から係止可能な部材である。Z方向に沿って見たときに、取付部材22は、少なくとも接眼レンズ270を通った後の観察光の光路とは重なっていない。
【0063】
第4実施形態において、表示ユニット14が双眼鏡201の鏡筒212の+Z側の端部に装着された状態では、ハーフミラー60がレンズ群222の軸AX1上に配置され、軸AX1上で接眼レンズ270と観察者の左眼ELとの間に配置される。すなわち、表示ユニット14が双眼鏡201に装着された状態では、接眼レンズ270が軸AX1上で対物レンズ250とハーフミラー60との間に配置される。このような相対配置によって、光学表示装置104では、例えば双眼鏡201において表示倍率が可変であって、観察者が表示倍率を任意に変更した場合であっても、映像の倍率は変わらず、映像の視認度が保持される。一方で、光学表示装置104では、観察者が双眼鏡201の表示倍率を任意に変更すると、映像の倍率も変化する。
【0064】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態について、図6を用いて説明する。図6は、第5実施形態の光学表示装置105を図1に示すD方向に対応する方向から見たときの構成を示す概略図である。図6に示すように、第5実施形態の光学表示装置105は、双眼鏡201と、第5実施形態の表示ユニット15と、を備える。
【0065】
表示ユニット15は、取付部材21と、筐体31と、表示素子50と、レンズ55と、キューブ型のビームスプリッター(第1偏向部材)80と、を備える。つまり、表示ユニット15は、表示ユニット11においてハーフミラー60に替えてビームスプリッター80を備える装置である。
【0066】
ビームスプリッター80は、直角プリズム(第1プリズム)81と、直角プリズム(第2プリズム)82と、反射膜62と、を備える。直角プリズム81は、等辺面81a,81bと、斜辺面81cと、側面81d,81eと、を有する。等辺面(第1入射部)81aは、Y方向から見て略正方形状を有し、XZ平面に平行に配置されている。等辺面(出射部)81bは、等辺面81aに直交し、Z方向から見て略正方形状を有し、XY平面に平行に配置されている。斜辺面81cは、Y方向及びZ方向から見たときに等辺面81a,81bと重なるが、等辺面81a,81bの各々に対して傾斜し、+Z方向に移動するに従って-Y方向に移動するように傾斜している。側面81d,81eは、X方向から見て直角二等辺三角形状を有する。
【0067】
直角プリズム82は、直角プリズム81と略同等の大きさ及び形状で形成され、等辺面82a,82bと、斜辺面82cと、側面82d,82eと、を有する。等辺面(第2入射部)82aは、Z方向から見て略正方形状を有し、XY平面に平行に配置されている。等辺面82bは、等辺面82aに直交し、Y方向から見て略正方形状を有し、XZ平面に平行に配置されている。斜辺面82cは、Y方向及びZ方向から見たときに等辺面82a,82bと重なるが、等辺面82a,82bの各々に対して傾斜し、+Z方向に移動するに従って-Y方向に移動するように傾斜している。斜辺面82cは、直角プリズム81の斜辺面81cに対して平行である。側面82d,82eは、X方向から見て直角二等辺三角形状を有する。
【0068】
直角プリズム81の等辺面81a,81bには、不図示の反射防止膜が設けられている。同様に、直角プリズム82の等辺面82a,82bには、不図示の反射防止膜が設けられている。直角プリズム81,82の各材質は、観察光及び映像光を透過可能であれば特に限定されないが、例えば光学ガラスや石英等である。
【0069】
反射膜62は、直角プリズム81の斜辺面81cと直角プリズム82の斜辺面82cとの間に介在し、斜辺面81c,82cと密着している。ビームスプリッター80は、立方体状に構成されている。
【0070】
光学表示装置105では、表示ユニット15の表示素子50の表示面52から射出され、レンズ55によって略平行光になった映像光は、ビームスプリッター80の直角プリズム81の等辺面81aから直角プリズム81に入射する。直角プリズム81に入射した映像光の少なくとも一部は、斜辺面81cを透過して反射膜62によって反射される。直角プリズム81に入射した映像光の残りの少なくとも一部は、反射膜62及び直角プリズム82の等辺面82bを順次透過する。反射膜62によって反射された映像光は、斜辺面81cから直角プリズム81の内部に入射し、等辺面81bから射出される。観察対象の物体からの観察光は、等辺面82aから直角プリズム82に入射し、斜辺面82cから射出するとともに反射膜62に入射する。直角プリズム82から射出された観察光の一部は、反射膜62を透過し、斜辺面81cから直角プリズム81に入射し、等辺面81bから+Z方向に射出され、対物レンズ250に入射する。ビームスプリッター80の直角プリズム81の等辺面81bから射出された映像光は、ビームスプリッター80から対物レンズ250に入射する観察光に重畳される。対物レンズ250には、第1実施形態と同様に、観察光と映像光が軸AX1に沿って互いに揃えられた光路から入射する。
【0071】
光学表示装置105では、映像光を観察光に重畳させるためにキューブ型のビームスプリッター80を用いるため、光学表示装置101等のようにハーフミラー60を用いる構成に比べて映像光の光路長が長くなると考えられる。しかしながら、光学表示装置105では、ハーフミラー60を用いる構成に対してビームスプリッター80を筐体31内で安定した状態で配置し、観察光に対する映像光の重畳精度を高めることができる。レンズ55をビームスプリッター80に対して固定することによって、表示ユニット15の組み立て工程時に外部からの衝撃を受けた際、或いは表示ユニット15の鏡筒212への着脱時に、レンズ55とビームスプリッター80との相対配置のずれの発生を抑えることができる。
【0072】
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態について、図7を用いて説明する。図7は、第6実施形態の光学表示装置106を図1に示すD方向に対応する方向から見たときの構成を示す概略図である。図7に示すように、第6実施形態の光学表示装置106は、双眼鏡201と、第6実施形態の表示ユニット16と、を備える。
【0073】
表示ユニット16は、取付部材21と、筐体31と、表示素子50と、偏光ミラー66と、1/4波長板90と、曲面ミラー92と、を備える。つまり、表示ユニット16は、表示ユニット11においてレンズ55に替えて曲面ミラー(反射部材)92を備え、ハーフミラー60に替えて偏光ミラー66を備える装置である。また、表示ユニット16では、偏光ミラー66の基板の一方の板面には、反射膜63が設けられている。偏光ミラー66の基板の他方の板面には、反射防止膜64が設けられている。反射膜63は、例えばS偏光の映像光(第1偏光光)を透過し、P偏光の映像光(第2偏光光)を反射する。偏光ミラー66の基板の両板面、反射膜63及び反射防止膜64の表面は、+Z方向に移動するに従って+Y方向に移動し、-X方向に向かって見たときに第1実施形態で説明したハーフミラー60の姿勢を軸AX1,AX2の交点を中心として時計回りに90°回転させた姿勢をとっている。
【0074】
1/4波長板90は、偏光ミラー66よりも-Y側の位置に配置されている。1/4波長板90の板面は、XZ平面に平行である。曲面ミラー92は、1/4波長板90よりも-Y側の位置に配置されている。したがって、1/4波長板90は、映像光の光路上で偏光ミラー66と曲面ミラー92との間に配置されている。曲面ミラー92は、偏光ミラー66に対して+Y側の位置にある表示素子50とは反対側の-Y側の位置に設けられている。なお、表示ユニット16では、軸AX2は、表示素子50の表示面52から発せられた映像光の光軸と同等である。
【0075】
曲面ミラー92は、Z方向及びX方向において-Y側に突出する湾曲板である基板から構成されている。基板の+Y側の湾曲面には、反射膜94が設けられている。反射膜94は、1/4波長板90に向き合っており、+Y側から入射する映像光の略全部を反射する。
【0076】
表示ユニット16では、例えば表示素子50の表示面52からS偏光の映像光(第1偏光光)が発せられる。偏光ミラー66は、表示素子50から入射するS偏光の映像光を-Y側に配置されている曲面ミラー92に向けて透過する。偏光ミラー66を透過したS偏光の映像光は、1/4波長板90を通り、円偏光の映像光に変換される。表示素子50の表示面52から曲面ミラー92に到達するまでのS偏光及び円偏光の映像光は、表示面52の発光点を基準とする拡散光である。偏光ミラー66を透過して曲面ミラー92に入射した円偏光の映像光は、曲面ミラー92の反射膜94によって+Y側にある偏光ミラー66に向けて反射される。曲面ミラー92で反射された円偏光の映像光は、平行光とされ、1/4波長板90を通り、S偏光とは異なるP偏光の映像光(第2偏光光)に変換され、偏光ミラー66の反射膜63に入射する。反射膜63に入射したP偏光の映像光は、+Z方向に反射され、観察対象の物体から発せられて偏光ミラー66を透過し且つ対物レンズ250に入射する観察光に重畳される。対物レンズ250には、第1実施形態と同様に、観察光と映像光が軸AX1に沿って互いに揃えられた光路から入射する。
【0077】
光学表示装置106では、表示ユニット16の表示素子50から発せられた映像光を殆ど損失せずに観察光に重畳することができる。また、光学表示装置106では、双眼鏡201の鏡筒212やレンズ群222と同様の構成要素で表示ユニット16を構成することができる可能性があり、その場合には全体の部品数を減らすことができる。
【0078】
なお、光学表示装置106では、表示素子50の表示面52からP偏光の映像光(第1偏光光)が発せられ、曲面ミラー92で反射された円偏光の映像光が1/4波長板90を通る際にS偏光の映像光(第2偏光光)に変換されてもよい。
【0079】
[第7実施形態]
次に、本発明の第7実施形態について、図8を用いて説明する。図8は、第7実施形態の光学表示装置107を図1に示すD方向に対応する方向から見たときの構成を示す概略図である。図8に示すように、第7実施形態の光学表示装置107は、双眼鏡201と、第7実施形態の表示ユニット17と、を備える。
【0080】
表示ユニット17は、取付部材21と、筐体31と、表示素子50と、レンズ55と、ビームスプリッター80と、レンズ86と、イメージセンサー(受光素子)96と、を備える。表示ユニット17は、表示ユニット15の構成に加えて、レンズ86及びイメージセンサ―96をさらに備える装置である。以下では、表示ユニット17において表示ユニット15とは異なる構成について説明し、表示ユニット17と表示ユニット15で共通する内容についての説明は省略する。
【0081】
レンズ86は、ビームスプリッター80よりも-Y側の位置に配置されている。イメージセンサー96は、レンズ86よりも-Y側の位置に配置されている。イメージセンサー96の受光面98は、XZ平面に平行であり、レンズ86に向き合っている。レンズ86及びイメージセンサ―96は、ビームスプリッター80に対して+Y側の位置にある表示素子50とは反対側の-Y側の位置に設けられている。イメージセンサー96は、後述するようにビームスプリッター80から入射する観察光を受光する。イメージセンサー96は、観察光の撮影機能を有し、信号処理装置70と有線又は無線で接続されている。
【0082】
光学表示装置107では、観察対象の物体からの観察光は、等辺面82aから直角プリズム82に入射し、斜辺面82cから射出するとともに反射膜62に入射する。直角プリズム82から+Z方向に射出された観察光の一部は、反射膜62を透過し、等辺面81bから+Z方向に射出され、反射膜62によって+Z方向に反射された映像光と重畳される。対物レンズ250には、第5実施形態と同様に、観察光と映像光が軸AX1に沿って互いに揃えられた光路から対物レンズ250に入射する。直角プリズム82から+Z方向に射出された観察光の残りの少なくとも一部は、反射膜62によって-Y方向に反射され、直角プリズム82に入射し、等辺面82bから射出される。直角プリズム82から-Y方向に射出された観察光は、レンズ86によってイメージセンサー96の受光面98に結像する。すなわち、イメージセンサー96には、等辺面(第2入射部)82aから直角プリズム82に入射した観察光の一部が入射する。
【0083】
光学表示装置107では、表示ユニット17において表示素子50の表示面52とレンズ55、ビームスプリッター80、レンズ86を介して向き合う位置にイメージセンサー96の受光面98が配置されている。光学表示装置107によれば、イメージセンサー96を用いて、観察光に含まれる物体の情報をリアルタイムで撮影及び取得し、信号処理装置70に送信することができる。このことによって、例えば観察者が観察している観察像をフィードバックして信号処理装置70で確認することができる。
【0084】
[第8実施形態]
次に、本発明の第8実施形態について、図9を用いて説明する。図9は、第8実施形態の光学表示装置108を図1に示すD方向に対応する方向から見たときの構成を示す概略図である。図9に示すように、第8実施形態の光学表示装置108は、双眼鏡201と、第8実施形態の表示ユニット18と、を備える。
【0085】
表示ユニット18は、取付部材21と、筐体31と、表示素子50と、レンズ55と、ハーフミラー60と、不図示の角度調節機構と、を備える。表示ユニット18は、表示ユニット11の構成に加えて、角度調節機構をさらに備える装置である。以下では、表示ユニット18において表示ユニット11とは異なる構成について説明し、表示ユニット17と表示ユニット11で共通する内容についての説明は省略する。
【0086】
ハーフミラー60は、ハーフミラー60の下端、すなわち+Z側及び-Y側の端部を通ってX方向に平行な不図示の回転軸を中心として回転可能な状態で筐体31の内部空間40に配置されている。
【0087】
角度調節機構は、表示素子50の表示面52から発せられてハーフミラー60に入射する映像光の光軸すなわち表示素子50からハーフミラー60までの間の軸AX2に対するハーフミラー60の基板の板面及び反射膜62の表面の角度を45°よりも大きく90°以下に調節する。図9の二点鎖線のハーフミラー60は、ハーフミラー60に入射する映像光の光軸に対するハーフミラー60の基板の板面及び反射膜62の表面の角度が45°である状態、つまり表示ユニット11と同様に配置されている状態を表す。図9の実線のハーフミラー60は、ハーフミラー60に入射する映像光の光軸に対するハーフミラー60の基板の板面及び反射膜62の表面の角度が略90°である状態を表す。角度調節機構は、例えば軸部材と、角度調節部材と、を有してもよい。軸部材は、ハーフミラー60の下端を支持し、X方向に延在し、筐体31の側壁部35,37の少なくとも一方の外部に突出している。角度調節部材は、側壁部35,37の少なくとも一方の外部に突出した軸部材の端部に装着され、例えば観察者が手でYZ平面内で回転させることができる。なお、角度調節機構の構成は、ハーフミラー60に入射する映像光の光軸に対するハーフミラー60の角度を45°よりも大きく90°以下に調節することができれば特に限定されない。
【0088】
筐体31において、少なくとも角度調節部材によってハーフミラー60に入射する映像光の光軸に対するハーフミラー60の角度が上述のように調節される際にハーフミラー60が干渉し得る領域の側壁部36は、削除されている。
【0089】
光学表示装置108では、観察者が角度調節部材を用いてハーフミラー60に入射する映像光の光軸に対するハーフミラー60の角度を45°よりも大きく90°以下に調節することができる。光学表示装置108によれば、ハーフミラー60に入射する映像光の光軸に対するハーフミラー60の角度を略90°(45°よりも大きく90°以下)である状態にすると、観察像に映像が表示されないため、観察者が双眼鏡201本来の明るい観察像を視認する。したがって、光学表示装置108によれば、観察像に映像が重ね合わされてこれらの像が視認される状態と観察像のみが視認される状態とを容易に切り替えることができる。
【0090】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、複数の実施形態の構成要素は適宜組み合わせ可能である。
【0091】
例えば、上述の各実施形態では、本発明の遠方視認装置として双眼鏡を例示した。しかしながら、本発明の遠方視認装置は、単眼鏡であってもよい。また、本発明の遠方視認装置は、各種望遠鏡、各種顕微鏡等であってもよく、対物レンズから遠方の非観察物体を視認するために構成された装置を広く含む。
【符号の説明】
【0092】
11,12,13,14,15,16,17…表示ユニット、21,22…取付部材、31…筐体(第2収容部材)、60…ハーフミラー(第1偏向部材)、101,102,103,104,105,106,107…光学表示装置、201…双眼鏡(遠方視認装置)、211,212…鏡筒(第1収容部材)、222…レンズ群、250…対物レンズ、270…接眼レンズ。
図1
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図9