(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025232
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】検査装置および検査方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/22 20060101AFI20240216BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
H01J37/22 502H
H01J37/22 502B
H01J37/28 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128499
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】井田 知宏
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA03
5C101EE48
5C101FF02
5C101HH11
5C101HH16
5C101HH22
5C101HH35
5C101HH36
(57)【要約】
【課題】検査対象の表面の凹凸の高さを精度良く算出可能な検査装置を提供する。
【解決手段】検査装置は第1荷電粒子の出射部を備える。偏向部は第1荷電粒子を対象物の表面に走査するように第1荷電粒子を偏向する。検出部は第1荷電粒子を受けた対象物の表面から発生する第2荷電粒子を検出する。画像生成部は検出部による第2荷電粒子の検出結果に基づいて対象物の表面の画像を生成する。制御部は第1荷電粒子の走査方向を制御する。演算部は第1走査方向への走査で得られた第1画像における、対象物の表面の凹凸部の輪郭に対する法線方向を検出する。演算部は、第1画像の基準軸と複数の単位領域のそれぞれの法線方向との成す第1角度の頻度を算出する。演算部は、法線方向のうち第1角度の最頻値に対応する法線方向を第2走査方向として決定する。演算部は、第2走査方向への走査で得られた第2画像に基づいて凹凸部の高さを算出する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1荷電粒子を出射する出射部と、
前記第1荷電粒子を対象物の表面に走査するように該第1荷電粒子を偏向する偏向部と、
前記第1荷電粒子を受けた前記対象物の表面から発生する第2荷電粒子を検出する検出部と、
前記検出部による前記第2荷電粒子の検出結果に基づいて前記対象物の表面の画像を生成する画像生成部と、
前記第1荷電粒子の走査方向を制御する制御部と、
前記対象物の表面を前記第1荷電粒子で第1走査方向に走査して得られた第1画像における、前記対象物の表面にある凹凸部の輪郭に対する法線方向を前記第1画像の複数の単位領域について検出し、前記第1画像の基準軸と前記複数の単位領域のそれぞれの前記法線方向との成す第1角度の頻度を算出し、前記法線方向のうち前記第1角度の最頻値に対応する前記法線方向を第2走査方向として決定し、前記第1荷電粒子で前記対象物の表面を前記第2走査方向に走査して得られた第2画像に基づいて前記凹凸部の高さを算出する演算部と、を備える検査装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記第1画像の輝度のピーク値または積分値に基づいて前記凹凸部の輪郭を検出し、前記第2画像の輝度のピーク値または積分値に基づいて前記凹凸部の高さを算出する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記演算部は、前記凹凸部の輪郭に対する法線方向を前記第1画像の画素単位で検出する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記第1画像の輝度のピーク値の和または前記第1画像の輝度の積分値を、前記第2走査方向における前記複数の単位領域の列のそれぞれについて演算し、前記ピーク値の和または該積分値が最大となっている位置およびその近傍を選択的に前記第1荷電粒子で走査して前記第2画像を生成する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
第1荷電粒子を出射する出射部と、前記第1荷電粒子を偏向する偏向部と、前記第1荷電粒子を受けた対象物の表面から発生する第2荷電粒子を検出する検出部と、前記検出部による前記第2荷電粒子の検出結果に基づいて前記対象物の表面の画像を生成する画像生成部と、前記第1荷電粒子の走査方向を制御する制御部と、を備える検査装置を用いた検査方法であって、
前記第1荷電粒子で前記対象物の表面を第1走査方向に走査して第1画像を生成し、
前記第1画像を用いて、前記対象物の表面にある凹凸部の輪郭に対する法線方向を前記第1画像の複数の単位領域について検出し、
前記第1画像の基準軸と前記複数の単位領域のそれぞれの前記法線方向との成す第1角度の頻度を算出し、
前記法線方向のうち前記第1角度の最頻値に対応する前記法線方向を第2走査方向として決定し、
前記第1荷電粒子で前記対象物の表面を前記第2走査方向に走査して第2画像を生成し、
前記第2画像に基づいて前記凹凸部の高さを算出することを具備する検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、検査装置および検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子顕微鏡(SEM(Scanning Electron Microscope))等の検査装置を用いて検査対象の表面を観察する際に、検査装置は、検査対象に電子ビームを照射して、検査対象の表面から発生する二次電子、反射電子および後方散乱電子(以下、二次電子等という)を検出して画像(SEM画像)を生成する。
【0003】
しかし、従来の検査装置では、SEM画像を用いて検査対象の表面の突出部の高さを精度良く算出することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-116795号公報
【特許文献2】米国特許第10866197号明細書
【特許文献3】米国特許第10060947号明細書
【特許文献4】米国特許第9236218号明細書
【特許文献5】特開2021-148557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
検査対象の表面の凹凸の高さを精度良く算出することができる検査装置および検査方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態による検査装置は、第1荷電粒子を出射する出射部を備える。偏向部は、第1荷電粒子を対象物の表面に走査するように該第1荷電粒子を偏向する。検出部は、第1荷電粒子を受けた対象物の表面から発生する第2荷電粒子を検出する。画像生成部は、検出部による第2荷電粒子の検出結果に基づいて対象物の表面の画像を生成する。制御部は、第1荷電粒子の走査方向を制御する。演算部は、対象物の表面を第1荷電粒子で第1走査方向に走査して得られた第1画像における、対象物の表面にある凹凸部の輪郭に対する法線方向を第1画像の複数の単位領域について検出する。演算部は、第1画像の基準軸と複数の単位領域のそれぞれの法線方向との成す第1角度の頻度を算出する。演算部は、法線方向のうち第1角度の最頻値に対応する法線方向を第2走査方向として決定する。演算部は、第1荷電粒子で対象物の表面を第2走査方向に走査して得られた第2画像に基づいて凹凸部の高さを算出する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態による検査装置の構成例を示すブロック図。
【
図2】二次電子等の飛翔方向と信号強度との関係の一例を示す概念図。
【
図3】検出器の検出素子で得られる信号強度(輝度)のスペクトル。
【
図4】第1実施形態による検査装置を用いた検査方法の一例を示す図。
【
図6】ウェハの表面にある凹凸パターンの第1画像の一例を示す図。
【
図7】凹凸パターンの輪郭に対して法線方向を示す概念図。
【
図9】第2画像の取得時におけるビームの走査方向の一例を示す図。
【
図11】第2画像の取得時に得られる信号強度(輝度)のスペクトル。
【
図12】第1実施形態による検査方法の一例を示すフロー図。
【
図13】第1実施形態の変形例による検出器の一例を示す図。
【
図14】第1画像の凹凸パターンおよび法線方向の線分を示す図。
【
図15】法線方向の線分のそれぞれの信号強度(輝度)のスペクトル。
【
図16】第2画像取得時における走査領域と走査方向を示す概念図。
【
図17】第2実施形態による検査方法の一例を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
図1は、第1実施形態による検査装置1の構成例を示すブロック図である。検査装置1は、例えば、SEM等の荷電粒子照射装置であり、半導体ウェハW上の欠陥を画像により検出するDR(Defect Review)-SEMでよい。検査装置1は、筐体3と、ステージ5と、出射部10と、偏向器20と、検出器30と、画像生成部40と、スキャンコントローラ50と、演算部60とを備える。
【0010】
筐体3は、ステージ5、出射部10、偏向器20および検出器30を収容している。ステージ5は、筐体3内に搬入された、検査の対象物である半導体ウェハW(以下、単にウェハWともいう)を載置可能である。
【0011】
出射部10は、荷電粒子ビームを生成し、ステージ5上のウェハWへ出射する。荷電粒子ビームB(以下、単にビームBともいう)は、例えば、電子ビーム、あるいは、イオンビーム等の電荷を有する粒子でよい。
【0012】
偏向器20は、ビームBを偏向し、ビームBでウェハWの表面を走査する。例えば、偏向器20は、ウェハW(またはステージ5)の表面をX-Y平面として、Y方向に所定間隔ずつずらしながらX方向にウェハWの表面をビームBで走査する(
図4参照)。これにより、偏向器20は、ウェハWの表面のほぼ全体をビームBで走査することができる。このように、偏向器20は、所謂、ラスタ走査を行う。尚、X軸およびY軸は、互いに直交する座標軸でよい。
【0013】
検出器30は、ビームBを受けたウェハWの表面から発生する二次電子、反射電子および後方散乱電子(以下、二次電子等ともいう)を検出する。ビームBは、ウェハWに照射されると、ウェハWの表面から二次電子等を発生する。この二次電子等は、ウェハWの凹凸パターンに依存した方向へ飛翔する。検出器30は、例えば、環状の形状を有し、中心の開口をビームBが通過する。検出器30は、複数の検出素子に分割されており、それぞれの検出素子において二次電子等を独立に検出可能に構成されている。よって、検出器30の各検出素子が検出する二次電子等の信号強度が二次電子等の飛翔方向に依存して異なる。
【0014】
図2は、二次電子等の飛翔方向と信号強度との関係の一例を示す概念図である。
図3は、検出器30の検出素子30_1で得られる信号強度(輝度)のスペクトルである。縦軸は信号強度(輝度)の階調値を示す。横軸はビームBの走査方向(X方向)の位置を示す。
【0015】
図2のようにウェハWの表面に凹凸パターンがある場合、ウェハWの表面にビームBを照射したときに、二次電子等B2は、斜面に対向する方向(斜面に対して垂直に近い方向)へ多く飛翔し、斜面に沿った方向(斜面に対して平行に近い方向)にはあまり飛翔しない。従って、
図2の例では、二次電子等B2は、検出素子30_1へ向かって多く飛翔し、検出素子30_2へはあまり飛翔しない。よって、ウェハWの表面をビームBでX方向へ走査すると、
図3に示すように、検出素子30_1で得られる信号強度(輝度)は大きなピークを生じる。一方、図示しないが、検出素子30_2で得られる信号強度(輝度)は、
図3に示すスペクトルを反転させたようなプロファイルのスペクトルとなり、このようなピークは生じない。
【0016】
このように、検出器30の各検出素子30_1、30_2の信号強度を測定することによって、ウェハWの表面上の凹凸パターンの輪郭が検出され得る。また、信号強度のピークの高さまたは信号強度の積分値は、凹凸パターンの高さと関係することが分かっている。よって、信号強度のピークの高さまたは信号強度の積分値から凹凸パターンの高さを算出することができる。
【0017】
凹凸パターンは、パーティクル等を原因とする欠陥であり、例えば、ウェハWの上方に発生した凹凸部である。このような凹凸部の高さ(深さ)は、信号強度のピークの高さまたは信号強度の積分値から算出することができる。
【0018】
図1を再度参照する。画像生成部40は、検出器30による二次電子等の検出結果に基づいてウェハWの表面の画像を生成する。画像生成部40は、検出器30で検出された二次電子等の信号強度をウェハWの表面の二次元画像に変換する。これにより、二次電子等の検出量(信号強度)が二次元画像の輝度として表現され得る。
【0019】
スキャンコントローラ50は、偏向器20を制御して、ビームBの走査方向を制御する。例えば、スキャンコントローラ50は、ビームBをウェハWの表面上に照射しながら一方向(X方向)へラスタ走査させる。これにより、画像生成部40がウェハWの表面の画像を得ることができる。
【0020】
演算部60は、ウェハWの表面をビームBで走査して得られた画像の輝度(即ち、二次電子等の信号強度)を用いて、ウェハWの表面の凹凸パターンの輪郭形状を取得する。凹凸パターンの輪郭形状は、例えば、2値化処理、ラプラシアンフィルタ、ソーベルフィルタ等の画像処理により抽出可能である。また、演算部60は、画像の輝度のピークの高さまたは積分値を用いて、ウェハWの表面の凹凸パターンの高さを算出することができる。
【0021】
画像生成部40、スキャンコントローラ50および演算部60は、1つのCPU(Central Processing Unit)等で構成され、それぞれ、ソフトウェアでそれらの機能を実現してもよい。あるいは、画像生成部40、スキャンコントローラ50および演算部60は、複数のCPU等で構成されていてもよい。
【0022】
本実施形態では、演算部60は、最初に検出したウェハWの表面の第1画像を用いてウェハWの表面の凹凸パターンの輪郭形状を取得し、その輪郭形状の外縁の法線方向を検出する。演算部60は、X軸とこれらの法線方向との成す角度の最頻値を算出する。画像生成部40はこの最頻値に対応する法線方向を走査方向として凹凸パターンの第2画像を取得する。これにより、ビームBの走査方向の多くが凹凸パターンの輪郭の法線方向あるいはそれに近い方向になる。
【0023】
凹凸パターンの輪郭の法線方向あるいはそれに近い方向にビームBで走査することによって、画像の輝度(二次電子等の信号強度)が急峻に立ち上がり、画像のコントラストが大きくなる。即ち、凹凸パターンの輪郭の法線方向あるいはそれに近い方向にビームBで走査すると、凹凸パターンの輪郭に平行方向に走査する場合よりも、画像の輝度のピークが高くかつ明確に現れ、その積分値も大きくなる。これにより、演算部60は、ウェハWの表面の凹凸パターンの高さをより正確に算出することができる。
【0024】
次に、検査装置1を用いた検査方法について説明する。
【0025】
図4~
図11は、第1実施形態による検査装置1を用いた検査方法の一例を示す図である。
図12は、第1実施形態による検査方法の一例を示すフロー図である。
【0026】
(第1画像取得)
まず、筐体3内にウェハWを搬入してステージ5上にウェハWを載置する。次に、出射部10がビームBを生成し、ウェハWの表面へ出射する。ビームBは、検出器30の中心の開口部を通過し、偏向器20によって所望の方向へ向けられ、ウェハWの表面に照射される。
【0027】
偏向器20は、ビームBを偏向し、ウェハWの表面をビームBで走査する(S10)。偏向器20は、ウェハWの表面をビームBで走査方向(例えば、X方向)に繰り返し走査する。偏向器20は、ビームBを走査するごとに、走査方向に対して直交方向(例えば、Y方向)に所定間隔だけずらす。このとき、偏向器20は、例えば、
図4に示すように、ウェハWの表面をビームBでX方向へ走査し、その後、ビームBをブランキングしている期間に走査開始位置からY方向へ所定間隔だけずらして、再度ウェハWの表面をビームBでX方向へ走査する。偏向器20は、これを繰り返すことによって、
図4に示すように、ウェハWの表面全体をビームBでラスタ走査することができる。尚、特に限定しないが、
図4では、ウェハWは、そのノッチNを-Y方向へ向けて配置され、ノッチNの向く方向に対して右方向(+X方向)を走査方向としている。
【0028】
次に、ビームBを受けたウェハWの表面から発生する二次電子等を検出器30が検出する(S20)。
図5は、検出器30の構成例を示す平面図である。検出器30は、例えば、略環状であり、中心にビームBが通過する開口部OPが設けられている。検出器30は、ビームBを通過させ、かつ、ウェハWからの二次電子等をウェハWの周辺で受けることができるように円環状に構成されている。尚、検出器30の平面形状は、ビームBを通過させ、二次電子等を受けることができれば、円環状に限定しない。
【0029】
検出器30は、複数の検出素子30_1~30_4に分割されている。
図5では、検出器30は、4つの検出素子30_1~30_4で構成されている。しかし、検出器30は、3つ以下あるいは5つ以上の検出素子で構成されていてもよい。
【0030】
検出素子30_1~30_4は、それぞれ独立して二次電子等を検出することができる。検出素子30_1~30_4のうちいずれの検出素子が二次電子等を検出したかに依って、二次電子等が飛翔してきた方向を或る程度認識することができる。
【0031】
次に、画像生成部40が二次電子等の検出結果に基づいてウェハWの表面の第1画像を生成する(S30)。画像生成部40は、検出器30で検出された二次電子等の信号強度をウェハWの表面の二次元画像に変換する。これにより、二次電子等の検出量が二次元画像の輝度として表現される。このとき、ウェハWの表面全体の第1画像を短時間で得るために、第1画像は或る程度低画質でもよい。
【0032】
例えば、
図6は、ウェハWの表面にある凹凸パターンの第1画像の一例を示す図である。ウェハW上にパーティクル等によって発生する欠陥がある場合、
図6に示すような凹凸パターンPTがウェハWの表面に現れる。演算部60は、第1画像の信号強度(輝度)のピーク値または積分値に基づいて凹凸パターンPTの輪郭を検出する。このような凹凸パターンPTの輪郭は、第1画像の画質が或る程度低画質であっても検出することができる。第1画像の画質は、その取得時間との関係に基づいて決定すればよい。
【0033】
(第2画像取得)
次に、演算部60は、第1画像においてウェハWの表面にある凹凸パターンPTの輪郭(エッジ部分)Eに対する法線方向Dnを第1画像の単位領域ごとに検出する(S40)。
図7は、凹凸パターンPTの輪郭に対して法線方向Dnを示す概念図である。凹凸パターンPTの輪郭Eに対して法線方向Dnは、第1画像の各単位領域における輪郭Eの線分に対して直交する方向である。単位領域は、第1画像の各画素で規定される領域であってもよく、隣接する複数の画素で構成される領域であってもよい。さらに、単位領域は画素に依らず、第1画像のX-Y面内の任意の範囲としてもよい。また、単位領域内において、輪郭Eの線分が曲線である場合、法線方向Dnは、輪郭Eの線分のいずれかの点の接線に対して直交方向とすればよい。尚、法線方向Dnは、凹凸パターンの輪郭の外側から内側へ向かっていてもよく、その逆でもよい。
【0034】
次に、演算部60は、第1画像のX軸と単位領域のそれぞれの法線方向Dnとの成す第1角度を算出する(S50)。さらに、演算部60は、その第1角度の頻度を算出する(S60)。
図8は、第1角度の頻度を示すヒストグラムである。縦軸は、第1角度の頻度を示す。横軸は、第1角度の区分を示す。第1角度の区分は、任意の角度間隔でよい。例えば、第1角度の区分の間隔は、n度(0<n≦90)ごとであってもよい。尚、第1角度は、第1画像の二次元平面(X-Y面)内の任意の軸と法線方向Dnとの成す角度であってよく、例えば、Y軸と法線方向Dnとの成す角度であってもよい。
【0035】
次に、演算部60は、法線方向Dnのうち第1角度の最頻値に対応する法線方向Dnmを走査方向として決定する(S70)。例えば、
図8に示すように、第1角度のヒストグラムのうち第1角度の最頻値が90度である場合、演算部60は、第1角度が90度である法線方向Dnmを次の走査方向に決定する。
【0036】
次に、スキャンコントローラ50は、ビームBの走査方向を法線方向Dnmに設定する。偏向器20は、スキャンコントローラ50の指令に従ってビームBを偏向し、ウェハWの表面をビームBで法線方向Dnmに走査する(S80)。
図9は、第2画像の取得時におけるビームBの走査方向の一例を示す図である。偏向器20は、例えば、ウェハWの表面のうち凹凸パターンPTの少なくとも一部の領域をビームBで法線方向Dnmにラスタ走査する。偏向器20は、ウェハWの表面をビームBで走査方向(例えば、Y方向)に繰り返し走査する。偏向器20は、ビームBを走査するごとに、走査方向に対して直交方向(例えば、X方向)に所定間隔だけずらす。このとき、走査方向は、第1角度の最頻値に対応する法線方向Dnmであるので、偏向器20は、凹凸パターンPTの輪郭Eに対して法線方向Dnあるいは法線方向Dnに近い方向にビームBを走査する。よって、凹凸パターンPTの輪郭Eが細長形状である場合には、第2画像の取得時の走査方向は、凹凸パターンPTの長手方向に対して略直交方向に設定される。これにより、凹凸パターンPTの輪郭Eにおける信号強度(輝度)のピークの高さまたはその積分値が大きくなる。また、偏向器20は、ウェハWの表面のうち凹凸パターンPTの領域に限定してビームBで走査している。これにより、画像生成部40は、凹凸パターンPTの第2画像を高画質で短時間に取得することができる。第1画像は、凹凸パターンPTの輪郭を検出できる程度の画質であればよいが、第2画像は、凹凸パターンPTの高さを高精度で算出するために或る程度高画質であることが望まれる。このように、凹凸パターンPTの高さを正確に算出するために、少なくとも第2画像は、第1画像よりも高画質とされる。
【0037】
次に、画像生成部40が二次電子等の検出結果に基づいて凹凸パターンPTの第2画像を生成する(S100)。例えば、
図10は、第2画像の一例を示す図である。画像生成部40は、検出器30で検出された二次電子等の信号強度をウェハWの表面の二次元画像に変換する。これにより、二次電子等の検出量が二次元画像の輝度として表現される。このとき、上述の通り、走査方向は、第1角度の最頻値に対応する法線方向Dnmであるので、第2画像では、凹凸パターンPTの輪郭Eにおける信号強度(輝度)のピークの高さまたはその積分値が大きくなる。即ち、第2画像では、凹凸パターンPTの輪郭Eが高いコントラストで明確に現れる。
【0038】
(凹凸パターンPTの高さ算出)
次に、演算部60が第2画像に基づいて凹凸パターンPTの高さを算出する(S110)。例えば、
図11は、第2画像の取得時に得られる信号強度(輝度)のスペクトルである。縦軸は信号強度(輝度)の階調値を示す。横軸がビームBの走査方向(法線方向Dnm)の位置を示す。演算部60は、第2画像の輝度のピーク値PKまたは積分値INTに基づいて凹凸パターンPTの高さを算出する。ここで、第2画像では、凹凸パターンPTの輪郭Eにおける信号強度(輝度)のピークの高さまたはその積分値が大きいので、演算部60は、凹凸パターンPTの高さを高精度で算出することができる。
【0039】
(変形例)
図13は、第1実施形態の変形例による検出器30の一例を示す図である。本変形例では、第2画像の取得時において、ビームBの走査方向、即ち、法線方向Dnmに応じて、検出器30のうち使用する検出素子を選択する。例えば、
図9のように法線方向DnmがY方向であり、ビームBを走査する凹凸パターンPTの輪郭Eが-Y方向へ向いている場合、二次電子等は、凹凸パターンPTの輪郭Eの斜面から-Y方向に傾斜して飛翔してくることが分かる。従って、検出器30は、検出素子30_1~30_4のうち、-Y方向にある検出素子30_2、30_3を使用して、二次電子等を検出する。これにより、第2画像の凹凸パターンPTの輪郭Eのコントラストがさらに明確に現れる。
【0040】
図示しないが、法線方向DnmがY方向であり、ビームBを走査する凹凸パターンPTの輪郭Eが+Y方向へ向いている場合、二次電子等は、凹凸パターンPTの輪郭Eの斜面から+Y方向に傾斜して飛翔してくることが予めわかる。従って、検出器30は、検出素子30_1~30_4のうち、+Y方向にある検出素子30_1、30_4を使用して、二次電子等を検出する。
【0041】
また、法線方向DnmがX方向であり、ビームBを走査する凹凸パターンPTの輪郭Eが-X方向へ向いている場合、二次電子等は、凹凸パターンPTの輪郭Eの斜面から-X方向に傾斜して飛翔してくることが予めわかる。従って、検出器30は、検出素子30_1~30_4のうち、-X方向にある検出素子30_3、30_4を使用して、二次電子等を検出する。
【0042】
さらに、法線方向DnmがX方向であり、ビームBを走査する凹凸パターンPTの輪郭Eが+X方向へ向いている場合、二次電子等は、凹凸パターンPTの輪郭Eの斜面から+X方向に傾斜して飛翔してくることが予めわかる。従って、検出器30は、検出素子30_1~30_4のうち、+X方向にある検出素子30_1、30_2を使用して、二次電子等を検出する。
【0043】
このように、画像生成部40は、第2画像を生成する際にビームBの走査方向、即ち、法線方向Dnmに応じて、検出器30のうち使用する検出素子を選択する。
【0044】
これにより、第2画像の凹凸パターンPTの輪郭Eがさらに高いコントラストで明確に現れる。その結果、凹凸パターンPTの輪郭Eにおける信号強度(輝度)のピークの高さまたはその積分値が大きくなるので、演算部60は、凹凸パターンPTの高さをさらに高精度で算出することができる。
【0045】
本変形例では、2つの検出素子が選択的に使用されている。しかし、1つまたは3つ以上の検出素子が選択的に使用されてもよい。
【0046】
(第2実施形態)
図14~
図16は、第2実施形態による検査装置1を用いた検査方法の一例を示す図である。
図17は、第2実施形態による検査方法の一例を示すフロー図である。尚、第2実施形態による検査装置1の構成は、第1実施形態のそれと同じでよい。
【0047】
第2実施形態は、第1画像の取得方法において第1実施形態のそれと同じでよい。また、第1画像を用いて法線方向Dnのうち第1角度の最頻値に対応する法線方向Dnmを走査方向として決定する点でも第1実施形態と同様でよい。従って、第2実施形態は、
図12のステップS10~S70を第1実施形態と同様に実行する。
【0048】
次に、演算部60は、第1画像の信号強度から法線方向Dnmのピーク値の和またはその積分値を取得する(S71)。例えば、演算部60は、第1画像の信号強度を用いて、法線方向Dnmにおける信号強度のピーク値の和(ピークが1つしかない場合には、そのピーク値)または法線方向Dnmにおける信号強度の積分値を算出する。これにより、第1画像の画質は比較的低いものの、信号強度(輝度)のピーク値の和またはその積分値が最大となっているおおよその位置が判明する。
【0049】
図14は、第1画像の凹凸パターンPTおよび法線方向Dnmの線分P1、P2を示す図である。
図15は、法線方向Dnmの線分P1、P2のそれぞれの信号強度(輝度)のスペクトルである。尚、
図14に示すように、凹凸パターンPTは、ウェハWの表面から突出する突出部の下段パターンPT1を有し、さらに、その突出部上にさらに突出する上段パターンPT2を有する。即ち、凹凸パターンPTでは、パターンPT2において最も高く突出している。
【0050】
第1画像は、例えば、ビームBをX方向に走査して得られた画像であるが、第1画像の各単位領域の信号強度を法線方向Dnmへの配列として見れば、
図15のように法線方向Dnmの信号強度(輝度)がそれぞれの列において得られる。例えば、
図15に示すように、線分P1では、下段パターンPT1のみを含むので、信号強度のグラフは、ピークPK1のみを有する。線分P2では、下段および上段パターンPT1、PT2の両方を含むので、信号強度のグラフは、ピークPK2_1、PK2_2を有する。
【0051】
演算部60は、このような法線方向Dnmにおける信号強度のピーク値の和またはその積分値を算出する。例えば、線分P1では、演算部60は、ピークPK1の値または線分P1の信号強度の積分値を計算する。線分P2では、演算部60は、ピークPK2_1、PK2_2の和(PK2_1+PK2_2)または線分P2の信号強度の積分値を計算する。
【0052】
尚、
図14および
図15では、演算部60は、2つの線分P1、P2の信号強度を示しているが、法線方向Dnmの3つ以上の線分の信号強度を計算してもよい。
【0053】
次に、演算部60は、法線方向Dnmのピーク値の和が最大となっている箇所(線分)およびその周辺を、凹凸パターンPTの高さが最も高い領域として見なす。そして、演算部60は、法線方向Dnmを第2画像取得時の走査方向として決定するとともに、信号強度(輝度)のピーク値の和が最大となっている箇所およびその周辺領域(凹凸パターンPTの高さが最も高いと見なされた領域)を第2画像取得時の走査領域に決定する(S71)。
図16は、第2画像取得時における走査領域R2と走査方向を示す概念図である。ステップS71で取得された走査領域R2内を法線方向Dnmへラスタ走査する(S81)ことによって、第2画像が取得される。
【0054】
代替的に、演算部60は、法線方向Dnmの信号強度のピーク値に対して或る割合以上(例えば、80%以上)の信号強度または積分値を有する箇所(線分)を第2画像取得時の走査領域に決定してもよい。
【0055】
次に、ステップS100~S110を実行する。これにより、上記走査領域の第2画像を取得することができ、凹凸パターンPTの最も高い位置の高さを算出することができる。このとき、第2画像は、第1画像よりも狭い領域を走査しており、より高画質で短時間に取得され得る。従って、凹凸パターンPTの高さをより正確に検出することができる。
【0056】
このように、第2実施形態において、演算部60は、第1画像の信号強度(輝度)のピーク値の高さの和または積分値を、第2画像取得時における走査方向となる法線方向Dnmに配列された複数の単位領域のそれぞれの列について演算し、ピーク値の和またはその積分値が最大となっている位置およびその近傍を走査領域として選択的にビームBで走査する。演算部60は、このようにして得られた第2画像を用いて、凹凸パターンPTの高さを算出する。これにより、凹凸パターンPTの最も高い位置を高精度に検出することができる。また、第2画像取得時の走査領域は、第1画像の一部であるので、第2画像は、高画質で短時間に取得することができる。
【0057】
さらに第2実施形態は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0059】
1 検査装置、3 筐体、5 ステージ、10 出射部、20 偏向器、30 検出器、40 画像生成部、50 スキャンコントローラ、60 演算部、B ビーム、PT 凹凸パターン