(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025239
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】光学部材および照明装置
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20240216BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
F21S2/00 481
G02B3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128517
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】野村 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 隆延
【テーマコード(参考)】
3K244
【Fターム(参考)】
3K244AA01
3K244BA08
3K244BA11
3K244CA02
3K244DA01
3K244FA03
3K244GA02
(57)【要約】
【課題】所定方向に沿って配光分布を均一化するとともに、光の利用効率を向上させることが可能な光学部材および照明装置を提供する。
【解決手段】光が入射する光入射面と、光入射面と対向して配された光出射面を有し、光入射面および光出射面は、所定方向に沿って形成されており、所定方向の中央に位置する中央領域(113a)と、所定方向に沿って中央領域(113a)の両側に位置する両側領域(113b)とを有し、中央領域(113a)は負の光学的パワーを有し、両側領域(113b)は正の光学的パワーを有する光学部材(113)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が入射する光入射面と、前記光入射面と対向して配された光出射面を有し、
前記光入射面および前記光出射面は、所定方向に沿って形成されており、
前記所定方向の中央に位置する中央領域と、
前記所定方向に沿って前記中央領域の両側に位置する両側領域とを有し、
前記中央領域は負の光学的パワーを有し、前記両側領域は正の光学的パワーを有することを特徴とする光学部材。
【請求項2】
請求項1に記載の光学部材であって、
前記中央領域は、前記所定方向において中心近傍が薄く端部が厚い凹レンズ形状であり、
前記両側領域は、前記所定方向において端部が薄い凸レンズ形状であることを特徴とする光学部材。
【請求項3】
請求項1に記載の光学部材であって、
前記中央領域は、前記所定方向において前記光入射面および前記光出射面が前記光の入射方向に湾曲したメニスカスレンズ形状であることを特徴とする光学部材。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一つに記載の光学部材であって、
前記光入射面または前記光出射面には、前記所定方向と直交する第2方向に沿って凹凸が繰り返されるレンチキュラー部が形成されていることを特徴とする光学部材。
【請求項5】
請求項1から3の何れか一つに記載の光学部材と、
前記光入射面側に配置された複数の発光部と、
前記光学部材と前記発光部の間に配置されたコリメートレンズを有することを特徴とする照明装置。
【請求項6】
請求項5に記載の照明装置であって、
複数の前記発光部は、前記所定方向に沿って配置されており、
前記コリメートレンズは、前記所定方向と直交する第2方向に沿った中央に配置された屈折部と、前記屈折部の両脇に配置された反射部を備えた内部全反射レンズであることを特徴とする照明装置。
【請求項7】
請求項6に記載の照明装置であって、
前記内部全反射レンズは、前記所定方向に前記屈折部および前記反射部が延伸されていることを特徴とする照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材および照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来全反射を利用したレンズ、いわゆるTIRレンズを用いた光源装置が知られている。TIRレンズは中央部に配置された屈折部、および屈折部の周囲に配置された反射部を備えている。TIRレンズを用いた光源装置を開示した文献として、例えば特許文献1が知られている。
【0003】
特許文献1に開示された光学ユニット(光源装置)は複数の光源(発光素子)、複数の光源上に各々配置されたコリメートレンズの機能を有する複数の光学手段(TIRレンズ)、複数の光学手段の出射面側に配置された複数のレンズアレイを備え、複数の異なる配光パターンを形成している。特許文献1に開示された光学ユニットの用途は、主に車両用灯具である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような光源装置は例えば車両等に搭載されるヘッドアップディスプレイ(以下、「HUD」という場合がある)の照明装置(バックライト)として用いられる場合もある。HUDに用いる光源装置においては、特に明るく、むらのない、すなわち、高輝度で均一な輝度分布であることが求められる。換言すれば、光束の利用効率が高く、適切な配光であることが求められる。上記のTIRレンズは、発光素子からの出射光において出射軸とのなす角度(指向角)が大きく外側に広がる光も集光させることができるので、この目的に適合する光学手段として用いられる場合も多い。
【0006】
図9は、従来のTIRレンズを用いた照明装置の概要と光照射について説明する模式図である。
図9に示すように、従来の照明装置は複数の発光素子1と、TIRレンズ2と、配光調整レンズ3と、拡散シート4と、表示部5を備えている。図中における矢印は、各発光素子1から照射される光の進行方向を模式的に示している。
【0007】
複数の発光素子1は図中横方向(所定方向)に沿って配列されており、TIRレンズ2方向に光を照射する。TIRレンズ2は図中横方向に延伸して形成されており、
図9の紙面に対して垂直な方向(第2方向)において発光素子1からの光をコリメートする。配光調整レンズ3は、TIRレンズ2を介した発光素子1からの光を屈折して、拡散シート4および表示部5に対して照射する。拡散シート4は照射された光を拡散または散乱しながら透過する。表示部5は、液晶表示装置等の光を透過して画像を表示する部分であり、拡散シート4で拡散された背面側からの光によって画像表示を行う。
【0008】
図9に示した従来技術の照明装置では、一例として配光調整レンズ3として図中横方向(所定方向)の全域にわたって光入射面および光出射面が凹形状である凹レンズを用いている。これにより、TIRレンズ2を透過した光の照射範囲を所定方向に沿って拡大して、拡散シート4および表示部5における広い範囲を良好に照射することができる。
【0009】
しかし、配光調整レンズ3として凹レンズを用いることで、TIRレンズ2および配光調整レンズ3の所定方向における両端に入射した光はさらに外部方向に拡大されるため、光の一部が拡散シート4および表示部5の範囲外に進行して、発光素子1からの出射光の利用効率が低下してしまうという問題があった。
【0010】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、所定方向に沿って配光分布を均一化するとともに、光の利用効率を向上させることが可能な光学部材および照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の光学部材は、光が入射する光入射面と、前記光入射面と対向して配された光出射面を有し、前記光入射面および前記光出射面は、所定方向に沿って形成されており、前記所定方向の中央に位置する中央領域と、前記所定方向に沿って前記中央領域の両側に位置する両側領域とを有し、前記中央領域は負の光学的パワーを有し、前記両側領域は正の光学的パワーを有することを特徴とする。
【0012】
このような本発明の光学部材では、光学部材が所定方向の中央領域で負の光学的パワーを有し、両側領域で正の光学的パワーを有することで、中央領域の近傍では光を拡大しつつ両側領域では光を照射範囲内に集め、所定方向に沿って配光分布を均一化するとともに、光の利用効率を向上させることが可能となる。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記中央領域は、前記所定方向において中心近傍が薄く端部が厚い凹レンズ形状であり、前記両側領域は、前記所定方向において端部が薄い凸レンズ形状である。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記中央領域は、前記所定方向において前記光入射面および前記光出射面が前記光の入射方向に湾曲したメニスカスレンズ形状である。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記光入射面または前記光出射面には、前記所定方向と直交する2軸方向に沿って凹凸が繰り返されるレンチキュラー部が形成されている。
【0016】
また上記課題を解決するために、本発明の照明装置は、上記何れか一つの態様の光学部材と、前記光入射面側に配置された複数の発光部と、前記光学部材と前記発光部の間に配置されたコリメートレンズを有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の一態様では、複数の前記発光部は、前記所定方向に沿って配置されており、前記コリメートレンズは、前記所定方向と直交する第2方向に沿った中央に配置された屈折部と、前記屈折部の両脇に配置された反射部を備えた内部全反射レンズである。
【0018】
また、本発明の一態様では、前記内部全反射レンズは、前記所定方向に前記屈折部および前記反射部が延伸されている。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、所定方向に沿って配光分布を均一化するとともに、光の利用効率を向上させることが可能な光学部材および照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態に係る照明装置100の概要を模式的に説明する図であり、
図1(a)は所定方向に沿った模式断面図であり、
図1(b)は第2方向に沿った模式断面図である。
【
図2】第2実施形態に係る照明装置200の概要を模式的に説明する図であり、所定方向に沿った模式断面図である。
【
図3】照明装置100,200における光の進行について説明する模式図であり、
図3(a)は配光調整レンズ113を示し、
図3(b)は配光調整レンズ213を示している。
【
図4】光学的パワーの正負が切り替わる境界近傍での光の進行について説明する模式図であり、
図4(a)は配光調整レンズ113を示し、
図4(b)は配光調整レンズ213を示している。
【
図5】配光調整レンズ213における最大の厚みを有する範囲213dを模式的に示す図である。
【
図6】照明装置100,200での虚像表示と輝度を示す図であり、
図6(a)は照明装置100で得られる虚像を示し、
図6(b)は照明装置200で得られる虚像を示し、
図6(c)は照明装置100の輝度分布を示し、
図6(d)は照明装置200の輝度分布を示している。
【
図7】照明装置100,200の輝度分布を示すグラフであり、
図7(a)は照明装置100の相対輝度分布を示し、
図7(b)は照明装置200の相対輝度分布を示している。
【
図8】配光調整レンズ213の光入射面にレンチキュラー部213cを設けた場合を示す図であり、
図8(a)は所定方向に沿った模式断面図であり、
図8(b)は模式斜視図である。
【
図9】従来のTIRレンズを用いた照明装置の概要と光照射について説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。
図1は、本実施形態に係る照明装置100の概要を模式的に説明する図であり、
図1(a)は所定方向に沿った模式断面図であり、
図1(b)は第2方向に沿った模式断面図である。
図1(a)における横方向をx軸方向(所定方向)とし、縦方向をz軸方向とし、紙面に垂直な方向をy軸方向(第2方向)とする。また、
図1(b)における横方向はy軸方向に対応し、縦方向はz軸方向に対応し、紙面に垂直な方向はx軸方向に対応している。
図1(a)(b)に示すように、照明装置100は、発光素子111と、TIRレンズ112と、配光調整レンズ113と、拡散シート114と、表示部115を有している。
【0022】
発光素子111は、配線が形成された搭載基板(図示省略)に搭載されて、駆動回路によって電流が供給されることで所定の色で発光する電子部品である。発光素子111は複数個がx軸方向(所定方向)に沿って配置されており、本発明における発光部に相当している。ここではx軸方向に沿って配置とは、実質的にx軸方向と見做せる場合を含み、数度の傾斜や千鳥状の配置等であってもよい。発光素子111の具体的な構造は限定されないが、一次光を発光する発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)と、一次光の一部を二次光に波長変換する波長変換部材を組み合わせたLEDパッケージを用いることができる。また、発光ダイオードの材料も限定されず、公知の材料および構造を用いることができる。一例としては、青色光を発光するGaN系LEDを用いることができる。また、波長変換部材の材料も限定されず、一例としては青色光で励起されて黄色光を発光するYAG系蛍光体材料等を用いることができる。なお、本実施形態では発光素子111の配列数を1列としているが、2列以上であってもよい。また発光素子111はLEDに限らず半導体レーザー等であってもよい。
【0023】
TIRレンズ112は、複数の発光素子111と配光調整レンズ113の間に配置され、発光素子111の配列方向(x軸方向)に沿って延伸されている。また、TIRレンズ112は、x軸方向と直交するy軸方向(第2方向)において、中央に配置された屈折部112aと、屈折部112aの両脇に配置された反射部112bを備えている。また、反射部112bはy軸方向の外側面が傾斜した反射面112cを有している。また、屈折部112aおよび反射部112bの配光調整レンズ113と対向する面は出射面112dを有している。発光素子111から照射された光の一部は、屈折部112aに入射して屈折率差に応じて屈折され、屈折部112a内を透過して出射面112dから配光調整レンズ113に照射される。また、発光素子111から照射された光の他の一部は、屈折部112aと反射部112bの境界に設けられた内側面から反射部112bに入射し、反射面112cで全反射されて出射面112dから配光調整レンズ113に照射される。
【0024】
図1(b)に示したように、TIRレンズ112はy軸方向において、内部全反射(TIR:Total Internal Reflection)により、大きな指向角を有する発光素子111からの出射光を集光し、例えば平行光、あるいは平行光に近い光(以下、両者を併せて「略平行光」という)として出射するコリメートレンズとしての機能を有する。したがって、TIRレンズ112は、本発明における内部全反射レンズに相当している。発光素子111からの指向角が大きい出射光とは、例えば
図1(b)においてy軸方向の外側に広がる光である。すなわち、TIRレンズ112は発光素子111からの出射光を効率よく集光することができる。
【0025】
配光調整レンズ113は、TIRレンズ112の出射面112d側に配置されており、光が入射する光入射面と、光入射面と対向して配された光出射面を有している。また配光調整レンズ113は、x軸方向に沿って延伸して形成されており、中央領域113aと、両側領域113bとを有している。また、配光調整レンズ113の光入射面側には、y軸方向に沿って凹凸が繰り返されるレンチキュラー部113cが形成されている。本実施形態ではレンチキュラー部113cを光入射面側に設けた例を示しているが、レンチキュラー部113cを光出射面側に設けるとしてもよく、レンチキュラー部113cを省略するとしてもよい。
【0026】
中央領域113aは、x軸方向の中央に位置しており、負の光学的パワーを有する部分である。また、両側領域113bは、中央領域113aの両側に位置しており、正の光学的パワーを有する部分である。中央領域113aと両側領域113bの境界は、形状の上では明確に定まらない場合があるが、光入射面側から平行光が入射した場合に、光出射面側から出射する光が拡大する領域が中央領域113aに相当し、光が集光される領域が両側領域113bに相当する。したがって、配光調整レンズ113は本発明における光学部材に相当している。中央領域113aおよび配光調整レンズ113の具体的な形状は限定されないが、
図1(a)に示したような、中心近傍が薄く端部が厚い凹レンズ形状の中央領域113aと、端部が薄い凸レンズ形状の両側領域113bの組み合わせを用いることができる。
【0027】
TIRレンズ112および配光調整レンズ113は、両者相まって発光素子111から出射した光を照明対象の照明領域に導く機能を有する。本実施形態では照明領域の一例として拡散シート114の裏面(発光素子111側の面)としている。しかしながら、どこを照明領域とするかは光源装置の仕様等を勘案して決定すればよく、例えば表示部115の裏面を直接照射するとしてもよい。TIRレンズ112および配光調整レンズ113は、例えばアクリル樹脂等の樹脂、ガラス等によって形成されている。
【0028】
拡散シート114は、配光調整レンズ113と表示部115の間に配置されて、配光調整レンズ113から照射された光を拡散または散乱しながら透過する光学部材である。したがって拡散シート114は、TIRレンズ112および配光調整レンズ113で偏向した指向性の高い光を拡散させて表示部115に出射し、表示部115がより均一に照明されるように機能する。拡散シート114の具体的な材料や構成は限定されず、樹脂に光散乱粒子を分散した略板状のものを用いるとしてもよく、樹脂材料の表面に微小な凹凸を形成した構造のシートを用いるとしてもよい。
【0029】
表示部115は、図示しない制御部からの画像信号に応じて画像を表示する装置である。表示部115の具体的な構成は限定されないが、背面側(発光素子111側)からの光を透過して画像を表示する液晶表示装置等を用いることができる。
【0030】
図1(a)(b)に示したように、発光素子111から照射された光は、x軸方向およびy軸方向に拡大しながらTIRレンズ112に入射する。また
図1(a)に示したように、TIRレンズ112は、屈折部112aと反射部112bの構造がx軸方向に沿って延伸されているため、x軸方向に広がった光はそのまま出射面112dから配光調整レンズ113に向けて拡大して照射される。配光調整レンズ113の中央領域113aに入射した光は、負の光学的パワーを受けてより拡大する方向に屈折され、拡散シート114および表示部115の中央近傍に対して広い範囲で照射される。配光調整レンズ113の両側領域113bに入射した光は、正の光学的パワーを受けて集光する方向に屈折され、拡散シート114および表示部115の両側近傍に対して集光または平行光で照射される。
【0031】
また
図1(b)に示したように、TIRレンズ112はy軸方向において屈折部112aと反射部112bが設けられているため、y軸方向に対してはコリメートレンズとして機能して出射面112dから略平行光として光が照射される。y軸方向でコリメートされた光は、配光調整レンズ113の光入射面に設けられたレンチキュラー部113cで屈折された後に拡散シート114に照射される。
【0032】
複数の発光素子111はx軸方向に配列されているため、複数の発光素子111からの光が重なり合って到達するx軸中央近傍は光の強度が相対的に大きくなり、端部の発光素子111からの光のみが到達するx軸両端近傍は光の強度が相対的に小さくなる傾向がある。しかし、本実施形態の照明装置100では、配光調整レンズ113の中央領域113aで負の光学的パワーを光に与え、x軸中央に入射する光を拡大して、出射光の配光分布を広げることができる。また、配光調整レンズ113の両側領域113bで正の光学的パワーを光に与え、x軸両端に入射する光を集光して、拡散シート114の範囲内に照射される光量を多くすることができる。したがって、配光調整レンズ113を介して拡散シート114に照射される光は、x軸方向に沿って配光分布を均一化されるとともに、光の利用効率が向上する。
【0033】
上述したように、本実施形態の配光調整レンズ113および照明装置100では、配光調整レンズ113がx軸方向の中央領域113aで負の光学的パワーを有し、両側領域113bで正の光学的パワーを有することで、中央領域113aの近傍では光を拡大しつつ両側領域113bでは光を照射範囲内に集め、x軸方向に沿って配光分布を均一化するとともに、光の利用効率を向上させることが可能となる。
【0034】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図2を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図2は、本実施形態に係る照明装置200の概要を模式的に説明する図であり、所定方向に沿った模式断面図である。
図2に示したように、照明装置200は、発光素子211と、TIRレンズ212と、配光調整レンズ213と、拡散シート214と、表示部215を有している。TIRレンズ212のy軸方向に沿った屈折部112aと反射部112bの構造は第1実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0035】
本実施形態の照明装置200においても、配光調整レンズ213は、x軸方向に沿って延伸して形成されており、中央領域213aと、両側領域213bとを有している。また、中央領域213aは負の光学的パワーを有し、両側領域113bは正の光学的パワーを有している。
図2に示すように本実施形態では、中央領域213aは、x軸方向において光入射面および光出射面が発光素子211方向(光の入射方向)に湾曲しており、メニスカスレンズ形状を有している。
【0036】
本実施形態の配光調整レンズ213および照明装置200でも、配光調整レンズ213がx軸方向の中央領域213aで負の光学的パワーを有し、両側領域213bで正の光学的パワーを有することで、中央領域213aの近傍において光を拡大しつつ両側領域213bにおいて光を照射範囲内に集め、x軸方向に沿って配光分布を均一化するとともに、光の利用効率を向上させることが可能となる。
【0037】
(配光分布の均一化についての説明)
図3は、照明装置100,200における光の進行について説明する模式図であり、
図3(a)は配光調整レンズ113を示し、
図3(b)は配光調整レンズ213を示している。
図3(a)(b)では、中央領域113a,213aのうち、両側領域113b,213bとの境界近傍において負の光学的パワーを受ける光の経路について模式的に示している。配光調整レンズ113,213の中央領域113a,213aおよび両側領域113b,213bにおいて、入射した光がそれぞれ負の光学的パワーと正の光学的パワーを受け、x軸方向に沿って配光分布を均一化するとともに、光の利用効率を向上させることが可能なことは第1実施形態と同様である。
【0038】
図3(a)に示したように、照明装置100の配光調整レンズ113では、中央領域113aが凹レンズ形状であり、両側領域113bが凸レンズ形状であるため、両者の境界において光入射面と光出射面の曲率変化が大きくなる。特に、中央領域113aのうち両側領域113bの近傍では、中央領域113aの中央よりも負の光学的パワーが大きくなり、拡散シート114よりも外側に進行する光が生じる。特に、中央領域113aを挟んで反対側に配置された発光素子111から入射した光については、光の進行方向が拡散シート114内に収まるように適切に設定することが困難である。
【0039】
図3(b)に示したように、照明装置200の配光調整レンズ213では、中央領域213aがメニスカスレンズ形状であり、両側領域213bが凸レンズ形状であるため、両者の境界において光入射面と光出射面の曲率変化を配光調整レンズ113よりも小さくできる。したがって、中央領域213aにおける負の光学的パワーは当該領域全体で同程度となり、拡散シート214よりも外側に進行する光を抑制することができる。特に、中央領域213aを挟んで反対側に配置された発光素子211から入射した光についても、光の進行方向が拡散シート214内に収まるように設定することができ、拡散シート214内に入射する光量を増加させて、さらなる均一化を図ることができる。
【0040】
図4は、光学的パワーの正負が切り替わる境界近傍での光の進行について説明する模式図であり、
図4(a)は配光調整レンズ113を示し、
図4(b)は配光調整レンズ213を示している。配光調整レンズ113では
図4(a)に示したように、中央領域113aにおいて光入射面の端部に斜め方向に入射した光の一部は、負の光学的パワーを強く受けてx軸方向外側に広がり、両側領域113bの光出射面から出射される場合がある。両側領域113bでは正の光学的パワーを強く受けるため、さらにx軸方向外側に向かって光が進行することとなる。
【0041】
それに対して配光調整レンズ213では
図4(b)に示したように、中央領域213aにおいて光入射面の端部に斜め方向に入射した光は、負の光学的パワーを受けるが、両側領域213bの光出射面においてより中央領域213aに近い側に到達して出射される。したがって、両側領域213bで受ける正の光学的パワーは配光調整レンズ113よりも弱くなり、x軸方向外側に向かう光の角度を小さくして、拡散シート214の範囲内にすることができる。
【0042】
図5は、配光調整レンズ213における最大の厚みを有する範囲213dを模式的に示す図である。
図5では、配光調整レンズ213として光学的パワーを有する部分だけを示しているが、適切に保持および固定するための保持部材を配光調整レンズ213と一体に形成するとしてもよい。保持部材が配光調整レンズ213と一体に形成されている場合には、配光調整レンズ213の厚みとは、光学的パワーを有して光の屈折に寄与する部分の厚みを示す。配光調整レンズ213は、メニスカスレンズ形状の中央領域213aと凸レンズ形状の両側領域213bを有しており、x軸方向の何れかの位置においてz軸方向での厚みが最大値を有している。この配光調整レンズ213が最大の厚みを有する位置を最厚位置とする。x軸方向での中央を0%とし両端を100%と表現した場合には、最厚位置が5%以上95%以内の範囲213d内に存在することが好ましい。最厚位置が範囲213dよりも小さい場合には、中央領域213aによる光の拡大が不十分になる。また、最厚位置が範囲213dよりも大きい場合には、両側領域213bでの集光が不十分になり拡散シート214よりも外側に到達する光量が増加してしまう。
図5では中央領域213aがメニスカスレンズ形状の配光調整レンズ213のみを示しているが、中央領域113aが凹レンズ形状の配光調整レンズ113でも同様である。また、
図5では配光調整レンズ213として左右対称形状の例を示したが、左右非対称であってもよく、左右それぞれの範囲213dにおける最大の厚さおよび最厚位置が異なっていてもよい。
【0043】
図6は、照明装置100,200での虚像表示と輝度を示す図であり、
図6(a)は照明装置100で得られる虚像を示し、
図6(b)は照明装置200で得られる虚像を示し、
図6(c)は照明装置100の輝度分布を示し、
図6(d)は照明装置200の輝度分布を示している。
図6(a)~
図6(d)に示した虚像および輝度断面は、照明装置100,200をHUD装置のバックライトとして用い、運転者の目が存在しうると想定される領域(アイボックス)の左端から見たものである。
図6(a)~
図6(d)に示したように、虚像および虚像輝度のどちらにおいても、x軸方向に対して均一な配光分布で光照射されていることが理解できる。特に、
図6(b)(d)に示した照明装置200では、配光調整レンズ213の中央領域213aがメニスカスレンズ形状であるため、図中右端の領域においてより配光分布の均一性が向上している。
【0044】
図7は、照明装置100,200の輝度分布を示すグラフであり、
図7(a)は照明装置100の相対輝度分布を示し、
図7(b)は照明装置200の相対輝度分布を示している。
図7(a)(b)に示した相対輝度分布は、
図6(c)(d)に実線で示したように、拡散シート114,214のy軸方向における中央で測定した。
図7(a)(b)に示したように、配光調整レンズ113,213の何れにおいても、広い範囲にわたって相対輝度を0.7以上で照射しており、x軸方向に沿って配光分布を均一化し、光の利用効率を向上できていることがわかる。特に、
図7(b)に示した配光調整レンズ213を用いた場合には、両端近傍においても相対輝度を0.7以上で照射できており、より配光分布の均一化と光の利用効率を向上できる。
【0045】
図8は、配光調整レンズ213の光入射面にレンチキュラー部213cを設けた場合を示す図であり、
図8(a)は所定方向に沿った模式断面図であり、
図8(b)は模式斜視図である。
図8に示したようにレンチキュラー部213cは、光入射面のy軸方向に周期的な凹凸形状として形成されており、x軸方向に沿って当該凹凸形状が延伸されている。
図8ではレンチキュラー部213cを光入射面側に設けた例を示しているが、レンチキュラー部213cを光出射面側に設けるとしてもよく、光入射面側と光出射面側の両方に設けるとしてもよい。配光調整レンズ213のy軸方向に凹凸形状のレンチキュラー部213cを設けることで、y軸方向に対する配光分布を調整することができる。
【0046】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。第1実施形態および第2実施形態では、配光調整レンズ113,213として中央領域113a,213aと両側領域113b,213bの光入射面および光出射面が滑らかに連続して形成された例を示したが、x軸方向に複数の区分に分割して段差を設けたフレネルレンズ形状としてもよい。
【0047】
配光調整レンズ113,213をフレネルレンズ形状としても、光入射面と光出射面の形状を適切に設計することで、中央領域113a,213aでは負の光学的パワーを有し、両側領域113b,213bでは正の光学的パワーを有することができる。また、配光調整レンズ113,213をフレネルレンズ形状とすることで、薄型化を図ることが可能となる。
【0048】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。第1実施形態および第2実施形態では、配光調整レンズ113,213としてy軸方向に中央領域113a,213aおよび両側領域113b,213bが延伸された四辺形状のものを示したが、配光調整レンズ113,213を円形状としてもよい。
【0049】
配光調整レンズ113,213を円形状とした場合には、円形の中心近傍が中央領域113a,213aとなり負の光学的パワーを有し、外周近傍が両側領域113b,213bとなり正の光学的パワーを有するものとなる。この場合、TIRレンズ112,212も円形状のものを用いることが好ましい。また、TIRレンズ112,212とは異なる形状のコリメートレンズを用いるとしてもよい。
【0050】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
100,200…照明装置
111,211…発光素子
112,212…TIRレンズ
112a…屈折部
112b…反射部
112c…反射面
112d…出射面
113,213…配光調整レンズ
113a,213a…中央領域
113b,213b…両側領域
113c,213c…レンチキュラー部
114,214…拡散シート
115,215…表示部
213d…範囲