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特開2024-25243布地、衣服、布地の製造方法および衣服の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025243
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】布地、衣服、布地の製造方法および衣服の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A41D 31/00 20190101AFI20240216BHJP
   A41D 31/06 20190101ALI20240216BHJP
   D04B 21/16 20060101ALI20240216BHJP
   D04B 21/18 20060101ALI20240216BHJP
   D06C 11/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
A41D31/00 502R
A41D31/00 502D
A41D31/00 503G
A41D31/00 503K
A41D31/06 100
D04B21/16
D04B21/18
D06C11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128524
(22)【出願日】2022-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】522043703
【氏名又は名称】老三ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128886
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 裕弘
(72)【発明者】
【氏名】姚 鋒
(72)【発明者】
【氏名】清水 和彦
(72)【発明者】
【氏名】高田 邦茂
【テーマコード(参考)】
3B154
4L002
【Fターム(参考)】
3B154AA07
3B154AB21
3B154BA25
3B154BA47
3B154BA49
3B154BB54
3B154BC31
3B154BF06
3B154DA01
4L002AA05
4L002AA07
4L002AB02
4L002AC01
4L002AC07
4L002CA01
4L002DA02
4L002EA01
4L002EA07
4L002FA01
(57)【要約】
【課題】保温性が高く肌触りの良い衣服および布地を提供する。
【解決手段】布地は、糸を用いて編まれた布地であって、糸は、デニールが50であってフィラメントが144のポリエステルの糸であり、布地の少なくとも一方の面を構成する前記糸に起毛加工が施され、起毛の毛足の長さが3mm以上かつ6mm以下であることを特徴とする。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を用いて編まれた布地であって、
前記糸は、デニールが50であってフィラメントが144のポリエステルの糸であり、
前記布地の少なくとも一方の面を構成する前記糸に起毛加工が施され、起毛の毛足の長さが3mm以上かつ6mm以下である、ことを特徴とする布地。
【請求項2】
前記起毛の毛足の長さは、4mm以上かつ5mm以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の布地。
【請求項3】
前記糸をループ状にした複数のループ部が縦方向および横方向に並べて配置され、
一のループ部と、前記横方向において当該一のループ部との間に2つのループ部を挟んで配置される他のループ部との間隔は、前記毛足の長さよりも大きい、ことを特徴とする請求項1または2に記載の布地。
【請求項4】
第1糸および第2糸を交差させて格子状に形成され、当該第1糸と当該第2糸との交差部にて前記ループ部の起点部を保持する編み構造を有する、ことを特徴とする請求項3に記載の布地。
【請求項5】
前記第1糸および前記第2糸は、前記糸よりもデニールがそれぞれ小さい、ことを特徴とする請求項4に記載の布地。
【請求項6】
前記糸は、ポリエステルの仮撚り加工糸であり、
前記第1糸は、ポリエステルの生糸であり、
前記第2糸は、ポリウレタンの糸である、ことを特徴とする請求項4に記載の布地。
【請求項7】
デニールが50であってフィラメントが144のポリエステルの糸を用いて布地を編む編み工程と、
前記布地の少なくとも一方の面に、起毛の毛足の長さを3mm以上かつ6mm以下とする起毛加工を施す起毛工程と、
を備えることを特徴とする布地の製造方法。
【請求項8】
前記編み工程は、前記糸をループ状にした複数のループ部を縦方向に組み合わせるとともに、前記糸を用いた接続部により横方向に配置される2つのループ部を接続し、
前記起毛工程は、前記接続部を切断することで前記起毛を形成する、ことを特徴とする請求項7に記載の布地の製造方法。
【請求項9】
前記編み工程は、一のループ部と、当該一のループ部との間に少なくとも1つのループ部を挟んで配置される他のループ部とを前記接続部により接続する、ことを特徴とする請求項8に記載の布地の製造方法。
【請求項10】
前記編み工程は、第1糸および第2糸を用いて、各々の前記ループ部の起点部を保持する格子状の編み構造を形成する、ことを特徴とする請求項9に記載の布地の製造方法。
【請求項11】
前記編み工程では、前記布地の厚み方向において、前記編み構造を前記接続部よりも前記ループ部側に配置する、ことを特徴とする請求項10に記載の布地の製造方法。
【請求項12】
デニールが50であってフィラメントが144のポリエステルの糸をループ状にした複数のループ部を縦方向に組み合わせるとともに、当該糸を用いた接続部により横方向に並ぶループ部同士を接続することで、当該縦方向および当該横方向に複数のループ部を配置した布地を編む編み工程と、
前記布地の前記接続部を切断することで起毛を形成する起毛工程と、
を備えることを特徴とする布地の製造方法。
【請求項13】
糸を用いて形成される衣服であって、
前記糸は、デニールが50であってフィラメントが144のポリエステル糸であり、
前記衣服において肌に対向する面を構成する前記糸に起毛加工が施され、起毛の毛足の長さが3mm以上かつ6mm以下である、ことを特徴とする衣服。
【請求項14】
デニールが50であってフィラメントが144のポリエステルの糸を用いて布地を編む工程と、
前記布地の少なくとも一方の面を構成する前記糸に、起毛の毛足の長さを3mm以上かつ6mm以下とする起毛加工を施す工程と、
前記起毛加工が施された前記布地を裁断する工程と、
裁断された前記布地を用いて衣服を縫製する工程と、
を備えることを特徴とする衣服の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布地、衣服、布地の製造方法および衣服の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、表生地と羽毛繊維層及び裏生地とが積層されてなり、裏生地の上面に熱可塑性樹脂層が積層され、その上面に上方に向かって順にエアロゲル混合体層、蜘蛛の巣状の樹脂層、羽毛繊維層が積層され、羽毛繊維層の上面に、裏面に起毛組織を備えた表生地が積層されてなり、裏生地と、表生地が、熱可塑性樹脂層の熱可塑性樹脂材料を介して接着され、羽毛繊維層が表生地及び裏生地と一体化してなる高保温性衣服品用積層生地が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-014652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば冬物の衣服や布地などにおいて保温性をもたせたい場合がある。また、例えば衣服や布地を手に取ったときの感触や着心地をより良くするためには、衣服や布地の肌触りが良いことが好ましい。
本発明は、保温性が高く肌触りの良い衣服および布地を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと、本明細書に開示される技術は、糸を用いて編まれた布地であって、前記糸は、デニールが50であってフィラメントが144のポリエステルの糸であり、前記布地の少なくとも一方の面を構成する前記糸に起毛加工が施され、起毛の毛足の長さが3mm以上かつ6mm以下である、ことを特徴とする布地である。
【0006】
ここで、前記起毛の毛足の長さは、4mm以上かつ5mm以下であるとよい。
また、前記糸をループ状にした複数のループ部が縦方向および横方向に並べて配置され、一のループ部と、前記横方向において当該一のループ部との間に2つのループ部を挟んで配置される他のループ部との間隔は、前記毛足の長さよりも大きいとよい。
また、第1糸および第2糸を交差させて格子状に形成され、当該第1糸と当該第2糸との交差部にて前記ループ部の起点部を保持する編み構造を有するとよい。
また、前記第1糸および前記第2糸は、前記糸よりもデニールがそれぞれ小さいとよい。
また、前記糸は、ポリエステルの仮撚り加工糸であり、前記第1糸は、ポリエステルの生糸であり、前記第2糸は、ポリウレタンの糸であるとよい。
【0007】
また、かかる目的のもと、本明細書に開示される技術は、デニールが50であってフィラメントが144のポリエステルの糸を用いて布地を編む編み工程と、前記布地の少なくとも一方の面に、起毛の毛足の長さを3mm以上かつ6mm以下とする起毛加工を施す起毛工程と、を備えることを特徴とする布地の製造方法である。
【0008】
ここで、前記編み工程は、前記糸をループ状にした複数のループ部を縦方向に組み合わせるとともに、前記糸を用いた接続部により横方向に配置される2つのループ部を接続し、前記起毛工程は、前記接続部を切断することで前記起毛を形成するとよい。
また、前記編み工程は、一のループ部と、当該一のループ部との間に少なくとも1つのループ部を挟んで配置される他のループ部とを前記接続部により接続するとよい。
また、前記編み工程は、第1糸および第2糸を用いて、各々の前記ループ部の起点部を保持する格子状の編み構造を形成するとよい。
また、前記編み工程では、前記布地の厚み方向において、前記編み構造を前記接続部よりも前記ループ部側に配置するとよい。
【0009】
また、かかる目的のもと、本明細書に開示される技術は、デニールが50であってフィラメントが144のポリエステルの糸をループ状にした複数のループ部を縦方向に組み合わせるとともに、当該糸を用いた接続部により横方向に並ぶループ部同士を接続することで、当該縦方向および当該横方向に複数のループ部を配置した布地を編む編み工程と、前記布地の前記接続部を切断することで起毛を形成する起毛工程と、を備えることを特徴とする布地の製造方法である。
【0010】
また、かかる目的のもと、本明細書に開示される技術は、糸を用いて形成される衣服であって、前記糸は、デニールが50であってフィラメントが144のポリエステル糸であり、前記衣服において肌に対向する面を構成する前記糸に起毛加工が施され、起毛の毛足の長さが3mm以上かつ6mm以下である、ことを特徴とする衣服である。
【0011】
また、かかる目的のもと、本明細書に開示される技術は、デニールが50であってフィラメントが144のポリエステルの糸を用いて布地を編む工程と、前記布地の少なくとも一方の面を構成する前記糸に、起毛の毛足の長さを3mm以上かつ6mm以下とする起毛加工を施す工程と、前記起毛加工が施された前記布地を裁断する工程と、裁断された前記布地を用いて衣服を縫製する工程と、を備えることを特徴とする衣服の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、保温性が高く肌触りの良い衣服および布地を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の衣服の全体図である。
図2】(A)および(B)は、本実施形態の布地の概略図である。
図3】本実施形態の布地の編み構造(表面)の概略図である。
図4】本実施形態の布地の編み構造(裏面)の概略図である。
図5】本実施形態の布地の表面の拡大図である。
図6】本実施形態の布地の裏面の拡大図である。
図7】本実施形態の布地の評価試験の評価結果を表示する。
図8】本実施形態の布地の評価試験の評価結果を表示する。
図9】本実施形態の衣服の製造工程の一例を示す図である。
図10】本実施形態の起毛工程で用いる装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の衣服1の全体図である。
【0015】
(衣服1)
図1に示すように、本実施形態の衣服1は、長袖のTシャツである。衣服1は、気温が比較的低い時期にユーザが着用する冬物である。なお、本実施形態の衣服1は、冬物であり、ユーザが着用した際に暖かいと感じられる保温性が求められる。また、衣服1は、人の肌に触れるものであり肌触りの良さも求められる。
【0016】
衣服1は、本体部2と、袖部3とを有している。さらに、本体部2は、本体部2の上側に襟部4を有し、本体部2の下側に裾部5を有する。また、袖部3は、袖部3における本体部2とは逆側の端部に袖口部6を有する。
そして、本実施形態の衣服1において、本体部2、袖部3および裾部5は、それぞれ同じ布地10(後述)を用いて構成されている。本実施形態の衣服1は、ポリエステル90%かつポリウレタン10%の組成で構成されている。
【0017】
なお、図1に示す衣服1の形状は、本実施形態に限定されない。例えば、袖部3の長さがより短かったり、襟部4がV字形状であったりするなど、それぞれ他の形状であっても構わない。
【0018】
(布地10)
図2は、本実施形態の布地10の概略図である。なお、図2(A)は、布地10の全体概略図であり、図2(B)は、布地10を横から見た場合の側面の概略図である。
【0019】
布地10は、本実施形態の衣服1の材料となるものである。
図2(A)に示すように、布地10は、表(おもて)面10Aと、裏面10Bとを有する。このうち、裏面10Bは、ユーザが衣服1を着用した状態で、ユーザの肌に対向する面である。一方、表面10Aは、ユーザが衣服1を着用した状態で、ユーザの肌とは反対側になる面である。
【0020】
また、図2(B)に示すように、本実施形態の布地10の裏面10Bは、起毛加工が施されている。布地10は、裏面10B側にて、裏面10Bから遠ざかる方向に延びる起毛10Kが形成される。本実施形態では、起毛10Kの根本から先端部までを起毛10Kの毛足の長さLとする。また、本実施形態において、起毛10Kの長さLは、複数の起毛10Kの一本ずつの長さを測定した際に得られる平均値や中央値を例示することができる。そして、本実施形態の布地10の裏面10Bは、肌触り(風合い)が良くなっている。
【0021】
布地10は、交編によって構成されている。交編は、種類が異なる複数(本実施形態では3種類)の糸を使用して布を編むことである。このように、異なる糸を組み合わせることで、布地10に風合いや質感をもたせ、さらに伸縮性や耐久性などの機能も付与している。
【0022】
図3は、本実施形態の布地10の編み構造(表面10A)の概略図である。
図4は、本実施形態の布地10の編み構造(裏面10B)の概略図である。
【0023】
図3および図4に示すように、本実施形態の布地10は、3種類の糸の交編によって作られている。メイン糸11は、布地10の表面10Aおよび裏面10Bを形成する糸である。また、第1ベース糸13および第2ベース糸15は、布地10の表面10Aと裏面10Bとの間に挟まれるように設けられる。
【0024】
(メイン糸11)
メイン糸11は、ポリエステルを材料に用いた糸である。メイン糸11は、一方向に長く延びるポリエステルの長繊維の束によって構成されたフィラメント糸である。そして、本実施形態のメイン糸11は、デニールDの数値が「50」であって、フィラメントFの数値が「144」である。
【0025】
ここで、デニールDは、1本の糸の太さを表す単位である。デニールの数値が大きいほど1本の糸が太くなり、デニールの数値が小さいほど1本の糸が細くなる。なお、ある糸を9000メートルとして計量した場合のグラム数がデニールの値になる。
また、フィラメントFは、1本の糸を構成する長繊維の数を表す単位である。すなわち、フィラメントFは、1本の糸が何本の長繊維を束ねて構成されているかを表す。例えば、デニールDの値が同じ1本の糸の場合、フィラメントFの数値が小さいほど個々の長繊維が太くなり、フィラメントFの数値が大きいほど個々の長繊維が細くなる。
【0026】
また、メイン糸11は、DTY(Draw Textured Yarn)と呼ばれる仮撚り加工糸である。すなわち、メイン糸11は、バネのようなクリンプ形態を有している。なお、DTYは、糸に撚りをかけた状態で加熱し、冷却することによって、撚り形状を固定させることで形成される。そして、本実施形態のメイン糸11は、伸縮性を備えている。
【0027】
(第1ベース糸13)
第1ベース糸13は、ポリエステルを材料に用いた糸である。第1ベース糸13は、一方向に長く延びるポリエステルの長繊維の束によって構成されたフィラメント糸である。そして、本実施形態の第1ベース糸13は、デニールDの数値が「45」であって、フィラメントFの数値が「24」である。
【0028】
本実施形態では、第1ベース糸13は、FDY(Fully Draw Yarn)と呼ばれる生糸である。すなわち、第1ベース糸13は、熱などを加えた加工が施されていないため、糸自体の強度が高くなっている。また、本実施形態の第1ベース糸13は、フィラメントFが「24」という比較的小さく設定されている。これによって、第1ベース糸13は、耐摩擦性が高くなり、例えば毛玉ができにくくなっている。
【0029】
(第2ベース糸15)
第2ベース糸15は、ポリウレタンを材料に用いた糸である。第2ベース糸15は、一方向に長く延びるポリウレタンの長繊維の束によって構成されたフィラメント糸である。そして、第2ベース糸15は、デニールDの数値が「40」となっている。そして、第2ベース糸15は、ポリウレタンの性質により伸縮性を備えている。なお、本実施形態の第2ベース糸15の延伸率は、80%になっている。
【0030】
本実施形態の布地10は、メイン糸11をDTYのポリエステル糸によって構成している。これによって、布地10を用いた衣服1に伸縮性を持たせる、着心地を良くしている。
一方で、布地10は、第1ベース糸13をFDYのポリエステル糸によって構成している。これによって、布地10を用いた衣服1に耐久性を持たせている。また、布地10は、第2ベース糸15をポリウレタン糸によって構成することで、第1ベース糸13の伸縮性が損なわれないようにしている。
【0031】
なお、本実施形態の布地10の原料の構成は、メイン糸11を構成するDTYのポリエステルが約60%、第1ベース糸13を構成するFDYのポリエステルが約30%、第2ベース糸15を構成するポリウレタンが約10パーセントとなっている。
【0032】
図3および図4に示すように、本実施形態の布地10は、経編の一つであるトリコット生地である。トリコット生地では、糸によりループを形成しながら、一のループと他のループとを組み合わせて編み込まれる。また、本実施形態の布地10は、コード編みによって構成されている。コード編は、左右交互に針を一つ飛ばしながら、縦方向に移動して編まれた編み構造である。そして、本実施形態の布地10では、メイン糸11を用いてコード編みを行う。
【0033】
図3に示すように、布地10の表面10A側において、メイン糸11によって形成される複数のループ部11Rが一方向(図中の上下方向)および、一方向と交差する交差方向(図中の左右方向)に並ぶように形成される。ループ部11Rは、起点部11X(根本)から延びた糸が弧を描き、再びループの起点部11Xに戻ることで形成される。そして、複数のループ部11Rは、一方向において他のループ部11Rと組み合せられる。すなわち、複数のループ部11Rは、一方向においてループ部11R同士が連続したメイン糸11として接続していない。一方で、複数のループ部11Rは、交差方向においてループ部11R同士が連続したメイン糸11(後述の接続部11J)により接続している。このように、本実施形態の布地10では、主にこれら複数のループ部11Rによって表面10A側(図2(A)参照)が形成される。
なお、本実施形態の説明において、複数のループ部11Rが組み合わされる方向を「縦方向」と呼ぶ。また、複数のループ部11Rが連続するメイン糸11により接続する方向を「横方向」と呼ぶ。
【0034】
また、図4に示すように、布地10の裏面10B側に、一のループ部11Rと他のループ部11Rとを結ぶ接続部11Jが縦方向および横方向に並ぶように形成される。また、本実施形態の接続部11Jは、横方向に並ぶ2つのループ部11Rを接続するため、横方向に沿って斜めに延びて形成される。このように、本実施形態の布地10では、主にこれら複数の接続部11Jによって裏面10B(図2(A)参照)が形成される。
本実施形態の布地10において、接続部11Jは、後述する起毛加工において切断されることで起毛10Kを形成する部分となる。また、本実施形態では、接続部11Jは、起毛工程にて略全てが切断されて起毛10Kになる。
【0035】
そして、図3および図4に示すように、本実施形態の布地10において、一のループ部11Rには、2本の接続部11Jが接続している。そして、1本目の接続部11Jは、一のループ部11Rと、この一のループ部11Rに対して横方向における3つ目、かつ縦方向(上側)における1つ目に位置する他のループ部11Rに接続する。また、2本目の接続部11Jは、一のループ部11Rと、この一のループ部11Rに対して横方向における3つ目、かつ縦方向(下側)における1つ目に位置する他のループ部11Rに接続する。このように、本実施形態の布地10において、一のループ部11Rは、少なくとも1つのループ部11Rを間に挟んで他のループ部11Rと接続部11Jを介して接続する。すなわち、本実施形態の接続部11Jは、隣り合う2つのループ部11R同士を接続するのではなく、隣り合うループ部11Rを飛ばすようにして、離れた2つのループ部11R同士を接続する。
【0036】
さらに、図3および図4に示すように、本実施形態の布地10では、トリコットのコード編みに加えて、第1ベース糸13および第2ベース糸15を用いた格子状の編み(以下、格子状編みと呼ぶ)を有している。格子状編みは、コード編みによって形成される複数のループ部11Rの起点部11Xを結ぶように、第1ベース糸13および第2ベース糸15を用いて菱形の格子を形成する。本実施形態の格子状編みは、菱形に形成される。すなわち、本実施形態の格子状編みは、第1ベース糸13および第2ベース糸15を交差させて格子状に形成され、第1ベース糸13と第2ベース糸15との交差部35(後述)にてループ部11Rの起点部11Xを保持する。また、本実施形態の布地10の厚み方向において、第1ベース糸13および第2ベース糸15により形成される格子状編みは、表面10Aを主に形成するループ部11Rと、裏面10Bを主に形成する接続部11Jとの間に挟まれるように配置される。
【0037】
次に、図4を参照しながら複数のループ部11Rの間隔について説明する。
本実施形態において、1本の接続部11Jが接続する2つループ部11Rの間隔Wは、起毛10Kの毛足の長さL(図2(B)参照)よりも大きく設定されている。つまり、一のループ部11Rと、横方向において一のループ部11Rとの間に2つのループ部11Rを挟んで配置される他のループ部11Rとの間隔Wは、毛足の長さLよりも大きくなっている。ここで、上記の2つのループ部11Rの間隔Wは、接続部11Jの長さに相当する。本実施形態では、この接続部11Jを用いて起毛10Kを形成する。そこで、接続部11Jを切断して起毛10Kを形成する際に、起毛10Kの毛足の長さLを十分に確保できるように2つのループ部11Rの関係を設定している。
なお、ループ部11Rの間隔とは、2つのループ部11Rにおける同じ形状の部分同士の距離である。また、同じ形状の部分は、例えばループ部11Rのループの端部やループの中心、根本である起点部11Xなどを例示できる。
【0038】
続いて、本実施形態の布地10の編み構造について詳細に説明する。
図5は、本実施形態の布地10の表面10Aの拡大図である。
図6は、本実施形態の布地10の裏面10Bの拡大図である。
【0039】
図5に示すように、メイン糸11によって形成される一のループ部11Rと他のループ部11Rとは、縦方向において組み合わされている。さらに、一のループ部11Rの起点部11Xに対して、第1ベース糸13および第2ベース糸15によって形成される格子状編みが編み込まれる。具体的には、第1ベース糸13と第2ベース糸15との交差部35に、ループ部11Rの起点部11Xが位置している。そして、第1ベース糸13と第2ベース糸15は、交差部35にて、ループ部11Rの起点部11Xを挟んで保持する。
【0040】
また、図5に示すように、第1ベース糸13および第2ベース糸15は、表面10A側から見て、交差部35の箇所を除き、ループ部11Rよりも奥側であって接続部11Jよりも手前側に位置している。一方、図6に示すように、第1ベース糸13および第2ベース糸15は、裏面10B側から見て、交差部35を除き、接続部11Jよりも奥側であってループ部11Rよりも手前側に位置している。
【0041】
そして、本実施形態の布地10は、裏面10B側に起毛加工が施される。本実施形態の布地10は、裏面10B側に対してサンドペーパーなどの器具を用いてやすりがかけられる。これにより、布地10の裏面10B側におけるメイン糸11が切断されるとともに、メイン糸11を構成する長繊維が解れた状態になる。さらに、布地10は、裏面10B側の長繊維の毛足の長さが切り揃えられる。これによって、本実施形態の布地10は、裏面10B側に起毛10Kが形成される。そして、本実施形態では、起毛10Kの毛足の長さLは、3mm以上かつ6mm以下になっている。より好ましくは、起毛10Kの毛足の長さLは、4mm以上かつ5mm以下になっている。なお、毛足は、図2(B)に示すように、起毛10Kの根本から先端部までの長さである。
そして、本実施形態の布地10は、メイン糸11を構成する長繊維が起毛として形成されることで、「肌触り」と「保温性」とを向上させている。
【0042】
また、本実施形態の布地10の裏面10Bには、複数の接続部11Jが配置されている。したがって、本実施形態の起毛10Kは、接続部11Jによって形成される。ここで、本実施形態の布地10は、接続部11Jが2つのループ部11Rを接続する際に、一のループ部11Rと他のループ部11Rとの間に、少なくとも1つのループ部11Rが挟まれるようになっている。これによって、本実施形態の布地10において、接続部11Jの長さは、例えば接続部11Jが隣接する2つのループ部11Rを接続する場合と比較して長くなっている。これにより、本実施形態の布地10は、起毛10Kの毛足の長さをより長くすることが可能になっている。
【0043】
さらに、本実施形態の布地10は、ループ部11Rの起点部11Xを第1ベース糸13および第2ベース糸15の交差部35が縛るように、メイン糸11に対して第1ベース糸13および第2ベース糸15が編み込まれている。つまり、ループ部11Rの根本である起点部11Xは、交差部35によって保持され状態になっている。これは、全てのループ部11Rに対して同様である。これによって、起毛加工によって上述した接続部11Jが切断されたとしても、ループ部11Rの形状が維持される。そして、本実施形態の布地10は、表面10A側において複数のループ部11Rが設けられ、裏面10B側において起毛10Kが形成された状態になる。
【0044】
なお、本実施形態の布地10では、表面10A側に対して起毛加工が施されていない。本実施形態では、布地10の表面10Aは、衣服1において外側(肌に対向する側とは逆側)になっている。つまり、布地10の表面10Aは、起毛を形成しないことで、例えば衣服1の外面に埃などが付着しにくくしている。
特に、本実施形態の布地10では、表面10A側にループ部11Rが設けられている。本実施形態の布地10では、ループ部11Rを例えば起毛加工により切断しないことで、表面10A側におけるループ部11Rによる質感(肌触り)を維持している。
【0045】
なお、本実施形態では、布地10をトリコットのコード編みで構成しているが、コード編みに限定されない。
布地10は、メイン糸11を用いたデンビー編みによって構成してもよい。デンビー編みは、隣同士の糸を絡ませながら編む編み構造である。デンビー編みにおいても、コード編みと同様に、ループ部と接続部とが設けられる。ここで、デンビー編みでは、接続部は、一のループ部と、この一のループ部に隣接するループ部とを接続する。
【0046】
また、布地10は、メイン糸11を用いたアトラス編みによって構成してもよい。アラス編みは、編目が斜めに連続し、途中から反対側に折り返すジグザグな編み構造である。アトラス編みにおいても、コード編みと同様に、ループ部と接続部とが設けられる。ここで、アトラス編みでは、接続部は、一のループ部と、この一のループ部に斜め方向において隣接するループ部とを接続する。
【0047】
そして、メイン糸11を用いて上述したデンビー編みやアトラス編みを採用した場合においても、第1ベース糸13および第2ベース糸15を用いた編み構造(格子状編み)については、上述した実施形態と同様に適用することができる。
【0048】
さらに、本実施形態では、第1ベース糸13および第2ベース糸15のデニールDは、それぞれメイン糸11のデニールDと比較して小さくなっている。
本実施形態では、メイン糸11のループ部11Rを、格子状に形成される第1ベース糸13および第2ベース糸15が保持している。ここで、メイン糸11には、上述のとおり起毛10Kが形成される。そして、起毛10Kは、布地10においてより密に配置される方が肌触りが向上する。そのため、例えば第1ベース糸13および第2ベース糸15の外径が大きくなると、メイン糸11に形成される起毛10Kの面方向における密度が低下する可能性がある。そこで、本実施形態では、第1ベース糸13および第2ベース糸15のデニールDを、メイン糸11よりもそれぞれ小さくすることで、布地10の面方向における密度が高くなるようにしている。
【0049】
また、本実施形態では、第1ベース糸13および第2ベース糸15によって形成される格子状編みの構造部は、布地10を裏面10B側から見て、接続部11Jよりも奥側に配置されている。すなわち、格子状編みの構造部は、布地10の厚み方向において、接続部11Jよりもループ部11R側に配置される。これによって、布地10の裏面10Bに対して起毛加工を施した場合であっても、格子状編みの構造部を形成する第1ベース糸13および第2ベース糸15が起毛加工の影響を受けにくくなっている。
【0050】
続いて、布地10についての評価試験について説明する。
図7は、本実施形態の布地10の評価試験の評価結果を表示する。
【0051】
本試験では、条件を異ならせた複数の布地10について比較を行った。
評価観点は、主に「肌触り」および「保温性」である。
「肌触り」は、布地10の裏面10B側の肌触りである。肌触りは、布地10の裏面10Bに実際に手で触れることで評価できる。
「保温性」は、熱の逃がしにくさである。保温性は、例えばJIS L 1096 保温性 A法(恒温法)によって特定可能である。
【0052】
また、評価は、優良(二重丸:◎)、良好(丸:〇)、やや不十分(三角:△)、不適(バツ:×)の4段階とした。
【0053】
本試験では、布地10について、第1ベース糸13および第2ベース糸15の条件を同じとし、メイン糸11の条件を異ならせた。具体的には、第1ベース糸13は、デニールDが「45」であってフィラメントFが「24」のポリエステル糸を用いた。また、第2ベース糸15は、デニールDが「40」のポリウレタン糸を用いた。さらに、メイン糸11の裏面10B側には起毛加工を施した。起毛10Kの毛足の長さは5mmとした。
そして、メイン糸11について、デニールDの数値およびフィラメントFの数値が異なる複数の組合せを準備した。なお、布地10の編み方など構造は上述した実施形態と同じ条件である。そして、布地10の裏面10B(メイン糸11の接続部10J側)に、起毛加工を施した。
【0054】
続いて、評価結果について説明する。
図7に示すように、メイン糸11のデニールDが「30」であってフィラメントFが「48」の場合、不適であった。デニールDが「30」であって、フィラメントFが「48」の場合は、起毛10Kの長繊維が細すぎて切れやすく、さらに起毛10Kが抜けやすく、結果的に肌触りが悪くなったと考えられる。
【0055】
メイン糸11のデニールDが「30」であってフィラメントFが「144」の場合、不適であった。デニールDが「30」であって、フィラメントFが「144」の場合は、起毛10Kの長繊維が細すぎて切れやすくなり、結果的に肌触りが悪くなったと考えられる。
【0056】
メイン糸11のデニールDが「50」であってフィラメントFが「48」または「72」の場合、肌触りが不適であった。デニールDが一の値である場合に、フィラメントFの数値が小さいほど長繊維が太くなり、フィラメントFの数値が大きいほど長繊維が細くなる。したがって、デニールDが「50」であって、フィラメントFが「48」または「72」の場合、起毛10Kの長繊維が太すぎて粗くなり、肌触りが低下したと考えられる。
【0057】
メイン糸11のデニールDが「50」であってフィラメントFが「96」の場合、肌触りは良好であった。デニールDが「50」であって、フィラメントFが「96」の場合は、フィラメントFが「48」または「72」のときよりも起毛10Kの長繊維の太さが適正で、肌触りとしても比較的良いものとなった。
【0058】
メイン糸11のデニールDが「50」であってフィラメントFが「144」の場合、肌触りが優良となった。デニールDが「50」であって、フィラメントFが「144」の場合は、起毛10Kの長繊維のハリとコシがあって適度な太さで、起毛10Kの肌触りが最も良いものとなった。
【0059】
メイン糸11のデニールDが「50」であってフィラメントFが「192」の場合、肌触りが良好となった。デニールDが「50」であって、フィラメントFが「192」の場合は、起毛10Kの長繊維が細くなって、肌触りが比較的良かったものの、ハリとコシが足りなくなった。
【0060】
メイン糸11のデニールが「75」であってフィラメントFが「96」の場合、肌触りがやや不適となった。デニールDが「75」であって、フィラメントFが「96」の場合は、起毛10Kの長繊維の太さはやや太いものの、肌触りは比較的良いものとなった。
【0061】
メイン糸11のデニールが「75」であってフィラメントFが「144」の場合、肌触りが良好となった。デニールDが「75」であって、フィラメントFが「144」の場合は、起毛10Kの長繊維の太さはやや太いもののハリとコシがあり、肌触りは良いものとなった。
【0062】
メイン糸11のデニールが「75」であってフィラメントFが「192」の場合、肌触りが良好となった。デニールDが「75」であって、フィラメントFが「192」の場合は、起毛10Kの長繊維の太さはやや太く肌触りは良いものとなったものの、起毛10Kのハリとコシが足りなかった。
【0063】
メイン糸11のデニールが「100」であってフィラメントFが「192」の場合、肌触りがやや不十分となった。デニールDが「100」であって、フィラメントFが「192」の場合は、起毛10Kの長繊維が太過ぎとなり肌触りが良くなかった。また、布地10の重量感もやや重く感じられた。
【0064】
メイン糸11のデニールが「100」であってフィラメントFが「288」の場合、肌触りが不適となった。デニールDが「100」であって、フィラメントFが「288」の場合は、起毛10Kが立ちやすいものの肌触りとしては良くなかった。また、布地10の重量感も非常に重かった。
【0065】
図8は、本実施形態の布地10の評価試験の評価結果を表示する。
【0066】
本試験では、布地10について、メイン糸11、第1ベース糸13および第2ベース糸15の条件を同じとし、起毛加工の条件を異ならせた。具体的には、メイン糸11は、デニールDが「50」であってフィラメントFが「144」のポリエステル糸を用いた。第1ベース糸13は、デニールDが「45」であってフィラメントFが「24」のポリエステル糸を用いた。また、第2ベース糸15は、デニールDが「40」のポリウレタン糸を用いた。なお、布地10の編み方など構造は上述した実施形態と同じ条件である。
そして、布地10の裏面10B(接続部11J)に、起毛の長さが異なるように起毛加工を施した複数の布地を作成し、保温性の比較を行った。
【0067】
続いて、評価結果について説明する。
図8に示すように、起毛10Kの長さが「1mm」である場合、保温性が不適であった。起毛10Kの長さが短いことで起毛10Kにより形成される空気層が少なくなり、保温性が極めて低くなったものと考えられる。
【0068】
次に、起毛10Kの長さが「2mm」である場合、保温性がやや不十分であった。起毛10Kの長さが比較的短いことで起毛10Kにより形成される空気層が少なくなり、保温性が低くなったものと考えられる。
【0069】
さらに、起毛10Kの長さが「3mm」である場合、保温性が良好であった。起毛10Kの長さが比較的長いことで、起毛10Kにより形成される空気層が比較的多くなり、保温性が保たれたものと考えらえる。
【0070】
そして、起毛10Kの長さが「4mm」および「5mm」である場合、保温性が優良であった。起毛10Kの長さが長いことで、起毛10Kにより形成される空気層が適度に大きくなり、保温性が十分に保たれたものと推察する。
【0071】
そして、起毛10Kの長さが「6mm」である場合、保温性が良好であった。起毛10Kの長さが長いことで、起毛10Kにより形成される空気層が大きくなり、保温性が保たれたものと考えられる。
一方で、起毛10Kの長さが「7mm」である場合、保温性が低下する傾向がみられた。起毛10Kが倒れてしまい、起毛10Kによって形成される空気層が形成されなくなり、保温性がなくなってしまうと考えられる。
なお、起毛10Kの長さが7mmよりも長くなると、起毛10Kが倒れてしまい、保温性が低下する傾向がみられた。
そして、起毛10Kの毛足の長さに応じた保温性の傾向は、メイン糸11、第1ベース糸13および第2ベース糸15の実験条件以外の条件においても同様な傾向があると推察できる。
【0072】
次に、本実施形態の衣服1の製造について説明する。
図9は、本実施形態の衣服1の製造工程の一例を示す図である。
図10は、本実施形態の起毛工程で用いる装置900の一例を示す図である。
【0073】
図9に示すように、メイン糸11、第1ベース糸13および第2ベース糸を用いて布地10を編む編み工程を行う(S901)。本実施形態の編み工程では、3種類の糸を用いて、トリコットのコード編みによって布地10を作成する。
【0074】
次に、布地10に対して起毛加工を施す起毛工程を行う(S902)。起毛工程では、布地10を一方向に移動させながら、布地10の移動方向とは逆回転する円筒形状のサンドペーパーを布地10の裏面10Bに接触させる。これによって、裏面10Bにおけるメイン糸11(接続部11J)が切断されて解れた状態になる。
【0075】
さらに、起毛工程では、解れた接続部11Jを立たせて、接続部11Jが切り立った状態にする。そして、起毛工程では、起毛10Kの長さを切り揃えて、起毛10Kの毛足を予め定められた長さにする。
【0076】
ここで、起毛工程では、図10に示す装置900を用いる。装置900は、起毛10Kを切断する刃910と、起毛10Kを切断する長さを調整するガイド920とを有する。刃910は、搬送される布地10の裏面10B側に対向して設けられる。そして、刃910の刃先910Bによって起毛10Kを切断する。ガイド920は、布地10の裏面10Bに向け、刃先910Bよりも突出して設けられる。ガイド920の突出高さHは、起毛10Kの毛足の長さLに対応している。例えば、起毛10Kの毛足の長さL(図2(B)参照)を例えば5mmにする場合、ガイド920の突出高さHは5mmに設定される。そして、装置900は、布地10の裏面10Bに刃910およびガイド920を押し当て、起毛10Kにおいてガイド920よりも突出する部分を切断する。
以上のようにして、布地10には、起毛10Kが形成される。そして、布地10は、「肌触り」および「保温性」に優れたものになる。
【0077】
そして、起毛加工が施された布地10を予め定められた形状に裁断する裁断工程を行う(S903)。この裁断工程において、布地10は、衣服1を作るための形状に形成される。
さらに、裁断された布地10を縫う縫製工程を行う(S904)。この縫製工程によって、裁断された布地10は、衣服1(図1参照)の形に形成される。なお、衣服1を形成する際に、起毛工程(S902)にて起毛加工が施された裏面10Bが、衣服1における内面(ユーザの肌側)になるように縫製が行われる。
【0078】
以上のようにして、糸から布地10が製造され、さらに布地10から衣服1が作製される。この場合に、肌触りが良く保温性が高い布地10が製造されるため、ユーザが衣服1を着用した際にも着心地が良くなっている。また、ユーザが衣服1を着用した際の保温性も高まるようになっている。
【0079】
<変形例>
なお、本実施形態の布地10は、Tシャツ、ジャケット、ブルゾン、カバーオール、コート、スラックス、ジーンズ、スカート等の上着、またはタイツ、スパッツ、パンツ等の下着のほか、ユーザの身体に装着する身装品に用いることができる。さらに、布地10は、帽子、靴下、マフラー、手袋など種々のものに用いることができる。
【0080】
<変形例>
また、本実施形態では、メイン糸11に対して、メイン糸11とは異なる種類の第1ベース糸13および第2ベース糸15を用いているがこれに限定されない。例えば、第1ベース糸13および第2ベース糸15は、例えばメイン糸11と同じ種類の糸によって構成してもよい。
【0081】
ここで、衣服1は、衣服の一例である。布地10は、布地の一例である。メイン糸11は、糸の一例である。第1ベース糸13は、第1糸の一例である。第2ベース糸15は、第2糸の一例である。
【0082】
なお、上記では種々の実施形態および変形例を説明したが、これらの実施形態や変形例同士を組み合わせて構成してもよい。
また、本開示は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0083】
1…衣服、10…布地、10A…表面、10B…裏面、10K…起毛、11…メイン糸、11R…ループ部、11X…起点部、11J…接続部、13…第1ベース糸、15…第2ベース糸、35…交差部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10