(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025256
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
F16K 15/16 20060101AFI20240216BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
F16K15/16 E
F16K31/06 310A
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128560
(22)【出願日】2022-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】100106312
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敬敏
(72)【発明者】
【氏名】関口 恵之
(72)【発明者】
【氏名】石口 翔一
【テーマコード(参考)】
3H058
3H106
【Fターム(参考)】
3H058AA15
3H058BB14
3H058EE02
3H058EE18
3H106DA07
3H106DA36
3H106DC02
3H106KK17
(57)【要約】
【課題】弁装置を提供する。
【解決手段】流体を通す上流側通路41a及び下流側通路22a,上流側通路と下流側通路の間に介在する弁収容室h1,及び上流側通路の下流端に位置する開口部41bを画定するハウジングHと、弁収容室に配置され,弾性変形可能な片持ち状の支持部32及び支持部の自由端側において開口部を開閉する平板状の弁部31を有する片持ち状弁体30を備えた弁装置において、下流側通路22aは、弁部31が全開した状態において弁部の平面31a,31bに沿う方向に伸長するように形成されている。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を通す上流側通路及び下流側通路,前記上流側通路と前記下流側通路の間に介在する弁収容室,及び前記上流側通路の下流端に位置する開口部を画定するハウジングと、
前記弁収容室に配置され,弾性変形可能な片持ち状の支持部及び前記支持部の自由端側において前記開口部を開閉する平板状の弁部を有する片持ち状弁体と、を備え、
前記下流側通路は、前記弁部が全開した状態において、前記弁部の平面に沿う方向に伸長するように形成されている、
ことを特徴とする弁装置。
【請求項2】
前記開口部は、円形状に形成され、
前記弁部は、円板状に形成され、
前記支持部は、前記弁部から延出する領域が長尺な板状に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の弁装置。
【請求項3】
前記ハウジングは、第1軸線上において伸長するように前記上流側通路を画定する円筒部と、前記第1軸線に対して傾斜した第2軸線を中心とすると共に前記第2軸線上において伸長するように前記下流側通路を画定するパイプ部と、前記片持ち状弁体の固定側を収容するべく前記円筒部から径方向に突出して前記弁収容室の一部を画定する突出部を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の弁装置。
【請求項4】
前記弁部は、前記開口部に対向する前面と、前記前面と反対側の背面を含み、
前記ハウジングは、前記弁部が全開した状態において、前記背面側に流れ込んだ流体を前記下流側通路に案内する案内壁を含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の弁装置。
【請求項5】
前記案内壁は、前記弁部が全開した状態において、前記弁部の平面に沿う方向に伸長するように形成されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の弁装置。
【請求項6】
前記パイプ部と前記突出部とは、前記第1軸線周りの周方向において、180度離れて配置されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の弁装置。
【請求項7】
前記ハウジングは、前記弁部が全開した状態において、前記弁部の移動を規制する全開ストッパ部を含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の弁装置。
【請求項8】
前記弁部を閉弁させる向きに駆動力を及ぼすソレノイドを含み、
前記片持ち状弁体は、磁性材料により形成された前記弁部と、バネ材料により形成された前記支持部を含む、
ことを特徴とする請求項1ないし7いずれか一つに記載の弁装置。
【請求項9】
前記ハウジングは、前記上流側通路を画定するハウジング本体と、前記下流側通路を画定すると共に前記ハウジング本体に結合されるハウジングカバーを含み、
前記ハウジング本体は、前記円筒部と、前記突出部を部分的に画定する突出収容部を有し、
前記ハウジングカバーは、前記パイプ部と、前記突出部を部分的に画定すると共に前記突出収容部を覆う突出カバー部を有する、
ことを特徴とする請求項3に記載の弁装置。
【請求項10】
前記弁部は、前記開口部に対向する前面と、前記前面と反対側の背面を含み、
前記ハウジングカバーは、前記弁部が全開した状態において、前記背面側に流れ込んだ流体を前記下流側通路に案内する案内壁を含む、
ことを特徴とする請求項9に記載の弁装置。
【請求項11】
前記案内壁は、前記弁部が全開した状態において、前記弁部の平面に沿う方向に伸長するように形成されている、
ことを特徴とする請求項10に記載の弁装置。
【請求項12】
前記パイプ部と前記突出部とは、前記第1軸線周りの周方向において、180度離れて配置されている、
ことを特徴とする請求項9に記載の弁装置。
【請求項13】
前記ハウジングカバーは、前記弁部が全開した状態において、前記弁部の移動を規制する全開ストッパ部を含む、
ことを特徴とする請求項9に記載の弁装置。
【請求項14】
前記弁部を閉弁する向きに駆動力を及ぼすソレノイドを含み、
前記片持ち状弁体は、磁性材料により形成された前記弁部と、バネ材料により形成された前記支持部を含む、
ことを特徴とする請求項9に記載の弁装置。
【請求項15】
前記ソレノイドは、前記円筒部に埋設されている、
ことを特徴とする請求項14に記載の弁装置。
【請求項16】
前記ソレノイドは、前記上流側通路,前記開口部,及び前記弁部が着座する弁座面を画定する筒状部を有すると共に磁路を形成するインナーヨークと、前記インナーヨークに連結される共に磁路を形成するアウターヨークと、励磁用のコイルを含む、
ことを特徴とする請求項15に記載の弁装置。
【請求項17】
前記ハウジング本体は、前記円筒部から径方向に突出すると共に前記コイルに接続された端子を囲繞するコネクタ部を含み、
前記コネクタ部は、前記第1軸線周りの周方向において、前記パイプ部及び前記突出部から外れた位置に配置されている、
ことを特徴とする請求項16に記載の弁装置。
【請求項18】
前記ハウジング本体は、適用対象物に取り付けられるべく、前記円筒部から径方向に突出する取付け部を含み、
前記取付け部は、前記第1軸線周りの周方向において、前記パイプ部,前記突出部,及び前記コネクタ部から外れた位置に配置されている、
ことを特徴とする請求項17に記載の弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の通路を開閉する弁装置に関し、特に、片持ちバネの自由端側に位置する平板状の弁部を有する片持ち状弁体(リードバルブとも称す)により通路を開閉する弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の弁装置としては、流体を通す上流側通路及び下流側通路、上流側通路と下流側通路の間に介在する弁収容室、上流側通路の下流端に位置する開口部(弁口)、弁収容室に配置されて自由端側の弁部が開口部を開閉するように配置された片持ち状弁体、片持ち状弁体の弁部が閉弁する向きに駆動力を及ぼすソレノイド等を備えた電磁弁が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)。
【0003】
上記電磁弁においては、上流側通路及び下流側通路は同一の直線上に並ぶように配列されており、片持ち状弁体の弁部は、開弁状態において、上流側通路及び下流側通路の中領域を占有している。したがって、上流側通路から流れ込んだ流体は、平板状の弁部に正面から衝突し、その後、弁部を回避するように弁部の背面側に周り込んだ後に下流側通路に流れ出る。すなわち、流体は、弁部の前面に衝突した後に背面側に周り込んで、全体の流れとして弁部の面と交差するように流れるため、背面からの流れの剥離や淀み等を生じ、流体の圧力損失が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-12515号公報
【特許文献2】特許第5772343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、流体が片持ち状弁体の周りにおいてスムーズに流れるようにして、流体の圧力損失の低減を図れる弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の弁装置は、流体を通す上流側通路及び下流側通路,上流側通路と下流側通路の間に介在する弁収容室,及び上流側通路の下流端に位置する開口部を画定するハウジングと、弁収容室に配置され,弾性変形可能な片持ち状の支持部及び支持部の自由端側において開口部を開閉する平板状の弁部を有する片持ち状弁体と、を備え、下流側通路は、弁部が全開した状態において、弁部の平面に沿う方向に伸長するように形成されている、構成となっている。
【0007】
上記弁装置において、開口部は円形状に形成され、弁部は円板状に形成され、支持部は弁部から延出する領域が長尺な板状に形成されている、構成を採用してもよい。
【0008】
上記弁装置において、ハウジングは、第1軸線上において伸長するように上流側通路を画定する円筒部と、第1軸線に対して傾斜した第2軸線を中心とすると共に第2軸線上において伸長するように下流側通路を画定するパイプ部と、片持ち状弁体の固定側を収容するべく円筒部から径方向に突出して弁収容室の一部を画定する突出部を含む、構成を採用してもよい。
【0009】
上記弁装置において、弁部は、開口部に対向する前面と、前面と反対側の背面を含み、ハウジングは、弁部が全開した状態において、背面側に流れ込んだ流体を下流側通路に案内する案内壁を含む、構成を採用してもよい。
【0010】
上記弁装置において、弁部は、開口部に対向する前面と、前面と反対側の背面を含み、ハウジングは、弁部が全開した状態において、背面側に流れ込んだ流体を下流側通路に案内する案内壁を含み、案内壁は、弁部が全開した状態において、弁部の平面に沿う方向に伸長するように形成されている、構成を採用してもよい。
【0011】
上記弁装置において、パイプ部と突出部とは、第1軸線周りの周方向において、180度離れて配置されている、構成を採用してもよい。
【0012】
上記弁装置において、ハウジングは、弁部が全開した状態において、弁部の移動を規制する全開ストッパ部を含む、構成を採用してもよい。
【0013】
上記弁装置において、弁部を閉弁させる向きに駆動力を及ぼすソレノイドを含み、片持ち状弁体は、磁性材料により形成された弁部と、バネ材料により形成された支持部を含む、構成を採用してもよい。
【0014】
上記弁装置において、ハウジングは、上流側通路を画定するハウジング本体と、下流側通路を画定すると共にハウジング本体に結合されるハウジングカバーを含み、ハウジング本体は、第1軸線上において伸長するように上流側通路を画定する円筒部と、片持ち状弁体の固定側を収容するべく円筒部から径方向に突出して弁収容室の一部を画定する突出部を部分的に画定する突出収容部を有し、ハウジングカバーは、第1軸線に対して傾斜した第2軸線を中心とすると共に第2軸線上において伸長するように下流側通路を画定するパイプ部と、突出部を部分的に画定すると共に突出収容部を覆う突出カバー部を有する、構成を採用してもよい。
【0015】
上記弁装置において、弁部は、開口部に対向する前面と、前面と反対側の背面を含み、ハウジングカバーは、弁部が全開した状態において、背面側に流れ込んだ流体を下流側通路に案内する案内壁を含む、構成を採用してもよい。
【0016】
上記弁装置において、弁部は、開口部に対向する前面と、前面と反対側の背面を含み、ハウジングカバーは、弁部が全開した状態において、背面側に流れ込んだ流体を下流側通路に案内する案内壁を含み、案内壁は、弁部が全開した状態において、弁部の平面に沿う方向に伸長するように形成されている、構成を採用してもよい。
【0017】
上記弁装置において、ハウジング本体及びハウジングカバーが突出部を画定し、ハウジングカバーがパイプ部を含み、パイプ部と突出部とは、第1軸線周りの周方向において、180度離れて配置されている、構成を採用してもよい。
【0018】
上記弁装置において、ハウジングカバーは、弁部が全開した状態において、弁部の移動を規制する全開ストッパ部を含む、構成を採用してもよい。
【0019】
上記弁装置において、ハウジング本体及びハウジングカバー、弁部を閉弁する向きに駆動力を及ぼすソレノイドを含み、片持ち状弁体は、磁性材料により形成された弁部と、バネ材料により形成された支持部を含む、構成を採用してもよい。
【0020】
上記弁装置において、ソレノイドは、ハウジング本体の円筒部に埋設されている、構成を採用してもよい。
【0021】
上記弁装置において、ソレノイドは、上流側通路,開口部,及び弁部が着座する弁座面を画定する筒状部を有すると共に磁路を形成するインナーヨークと、インナーヨークに連結される共に磁路を形成するアウターヨークと、励磁用のコイルを含む、構成を採用してもよい。
【0022】
上記弁装置において、ハウジング本体は、円筒部から径方向に突出すると共にコイルに接続された端子を囲繞するコネクタ部を含み、コネクタ部は、第1軸線周りの周方向において、パイプ部及び突出部から外れた位置に配置されている、構成を採用してもよい。
【0023】
上記弁装置において、ハウジング本体は、適用対象物に取り付けられるべく、円筒部から径方向に突出する取付け部を含み、取付け部は、第1軸線周りの周方向において、パイプ部,突出部,及びコネクタ部から外れた位置に配置されている、構成を採用してもよい。
【発明の効果】
【0024】
上記構成をなす弁装置によれば、流体が片持ち状弁体の周りにおいてスムーズに流れるように案内されて、流体の圧力損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係る弁装置を示す外観斜視図である。
【
図3】一実施形態に係る弁装置を分解して、ハウジングカバー側の斜めから視た斜視分解図である。
【
図4】一実施形態に係る弁装置を分解して、ハウジング本体側の斜めから視た斜視分解図である。
【
図5】一実施形態に係る弁装置において、ハウジングカバーを取り外した状態を示す平面図である。
【
図6】一実施形態に係る弁装置に含まれる片持ち状弁体を示すものであり、支持部と弁部に分解した斜視分解図である。
【
図7】一実施形態に係る弁装置のハウジング本体に埋設されるソレノイドを示す斜視図である。
【
図8】
図7に示すソレノイドを分解した斜視分解図である。
【
図9】一実施形態に係る弁装置において、片持ち状弁体の弁部が閉弁した状態における斜視断面図である。
【
図10】一実施形態に係る弁装置において、片持ち状弁体の弁部が閉弁した状態における断面図である。
【
図11】一実施形態に係る弁装置において、片持ち状弁体の弁部が全開した状態における斜視断面図である。
【
図12】一実施形態に係る弁装置において、片持ち状弁体の弁部が全開した状態における断面図である。
【
図13】一実施形態に係る弁装置において、片持ち状弁体の弁部が全開した状態でハウジングカバーを部分的に切断した斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
本発明の弁装置は、例えば、車両の冷却水循環システム等において、流体としての冷却水の流れを調整するために適用されるものである。
一実施形態に係る弁装置は、
図1ないし
図8に示すように、ハウジングHとしてのハウジング本体10及びハウジングカバー20、片持ち状弁体30、ハウジング本体10に埋設されたソレノイドAを備えている。
ソレノイドAは、インナーヨーク40、アウターヨーク50、コイルモジュール60を備えている。コイルモジュール60は、ボビン61、励磁用のコイル62、二つの端子63を備えている。
【0027】
ハウジング本体10は、樹脂材料等により形成され、円筒部11、コネクタ部12、弁収容室13、突出収容部14、接合部15、二つの取付け部16、適用対象物に接合される接合部17を備えている。
【0028】
円筒部11は、第1軸線S1を中心とする円筒状の外周面11aを有し、その内側においてソレノイドAを埋設している。
コネクタ部12は、外部コネクタと電気的に接続するものであり、円筒部11から径方向に突出すると共にコイル62に接続された端子63を囲繞するように形成されている。
また、コネクタ部12は、
図5に示すように、第1軸線S1周りの周方向Cdにおいて、突出収容部14の中心を通り第1軸線S1に直交する直線L1から外れた位置に配置されている。
弁収容室13は、弁部31が開閉動作を行えるように片持ち状弁体30を収容する共に、弁部31が開弁した状態において弁部31の周りを流体が通過できるように流体の通路を画定する。
【0029】
突出収容部14は、弁収容室13に連続して弁収容室として機能するものであり、片持ち状弁体30の固定側を収容する突出部h2を部分的に画定する半体である。すなわち、突出収容部14は、片持ち状弁体30の支持部32を収容して一端部を固定するべく、円筒部11から直線L1を中心として径方向に突出して形成されている。
そして、突出収容部14は、その内側において、支持部32の係合孔32cを嵌合する嵌合突起14a、支持部32の一端部(係合孔32cの周辺部)を受ける受け面14b、支持部32から壁面を隔てる空間を形成する凹部14cを備えている。
嵌合突起14aは、第1軸線S1に垂直な平面内において片持ち状弁体30の移動を規制するように位置決めする。
受け面14bは、片持ち状弁体30の弁部31が弁座面41cに密接するように、支持部32を予め弾性変形させて沿わせるべく内側向きに下り傾斜して形成されている。
凹部14cは、流体に含まれる異物等が支持部32と突出収容部14の底壁面との間に噛み込まれないように形成されている。
【0030】
接合部15は、弁収容室13及び突出収容部14の外輪郭を画定するように形成され、ハウジングカバー20の接合部25と接合されて溶着される。
二つの取付け部16は、円筒部11から径方向に突出して形成され、弁装置を適用対象物に対してボルト又はネジ等により締結するものであり、ボルト又はネジ等を通す円孔16aを備えている。
また、二つの取付け部16は、
図5に示すように、第1軸線S1周りの周方向Cdにおいて、突出部h2の半体を画定する突出収容部14及びコネクタ部12から外れた位置に配置されている。
接合部17は、適用対象物の接合面に接合されるべく形成され、シール部材等を嵌め込むための環状溝17aを備えている。
【0031】
ハウジングカバー20は、樹脂材料等により形成され、ドーム状カバー部21、パイプ部22、弁収容室23、突出カバー部24、接合部25、三つの全開ストッパ部26を備えている。
【0032】
ドーム状カバー部21は、ハウジング本体10の円筒部11の上部(弁収容室13)を覆うように形成されている。
パイプ部22は、適用対象物の流体導出配管が接続される領域であり、
図10に示すように、第1軸線S1に対して角度θをなすように傾斜する第2軸線S2を中心として伸長すると共に第2軸線S2を中心とする円形断面の下流側通路22aを画定する。
下流側通路22aは、
図12に示すように、片持ち状弁体30の弁部31が弁座面41cから離脱して全開した状態において、弁部31の平面(前面31a,背面31b)に沿う方向に伸長するように形成されている。
【0033】
弁収容室23は、弁部31が開閉動作を行えるように片持ち状弁体30を収容する共に、弁部31が開弁した状態において弁部31の背面31b側に流れ込んだ流体を下流側通路22aに案内する案内壁23aを画定する。
案内壁23aは、
図12に示すように、弁部31が全開した状態において弁部31の平面(背面31b)に沿う方向に伸長するように形成されている。これによれば、弁部31の背面31b側に流れ込んだ流体は、案内壁23aに沿って下流側通路22aにスムーズに導かれる。
【0034】
突出カバー部24は、片持ち状弁体30の固定側を収容する突出部h2を部分的に画定する半体である。すなわち、突出カバー部24は、片持ち状弁体30の支持部32を収容したハウジング本体10の突出収容部14を覆うべく直線L1を中心として径方向に突出するように形成されている。
そして、突出カバー部24は、その内側において、嵌合突起14aを嵌合させる嵌合穴24a、支持部32の一端部(係合孔32cの周辺部)を受け面14bに対して押圧する押え部24bを備えている。
接合部25は、弁収容室23及び突出カバー部24の外輪郭を画定するように形成され、ハウジング本体10の接合部15と接合されて溶着される。
【0035】
三つの全開ストッパ部26は、
図4及び
図13に示すように、第1軸線S1周りの周方向において略等間隔でかつ下流側通路22aから外れる領域において、ドーム状カバー部21の内壁面から内側に突出するように形成されている。
そして、三つの全開ストッパ部26は、片持ち状弁体30の弁部31が全開した状態において、弁部31の移動を規制するべく弁部31の背面31bに当接する。
このように、三つの全開ストッパ部26が、第1軸線S1周りに離散的に配置されることにより、弁部31の背面31b側に流れ込んだ流体を、案内壁23aと協働して下流側通路22aに向けてスムーズに導くことができる。
【0036】
上記ハウジング本体10及びハウジングカバー20から成るハウジングHにおいて、ハウジング本体10の弁収容室13及び突出収容部14及びハウジングカバー20の弁収容室23により、片持ち状弁体30を収容する弁収容室h1が形成される。また、ハウジング本体10の突出収容部14及びハウジングカバー20の突出カバー部24により、片持ち状弁体30の固定側を収容する突出部h2が形成される。
ここでは、ハウジングHが、ハウジング本体10及びハウジングカバー20により構成されているため、下流側通路22aを画定するパイプ部22の向きを所定範囲内において変えたい場合は、ハウジングカバー20のみを変更することで対処することができる。
【0037】
片持ち状弁体30は、
図6に示すように、弁部31、支持部32を備えている。
弁部31は、磁性材料、例えば鉄材料により円板状に形成され、上流側通路41aの開口部41bに対向する前面31aと、前面31aと反対側の背面31bを備えている。
支持部32は、バネ鋼板等の材料により形成され、長尺な板状をなす弾性変形可能な腕部32a、腕部32aに連続し弁部31がレーザ溶接により結合される円環状部32b、腕部32aの一端部において嵌合突起14aが係合される係合孔32cを備えている。
すなわち、片持ち状弁体30は、弾性変形可能な支持部32及び支持部32の自由端側において開口部41bを開閉する平板状(円板状)の弁部31を有する。
また、支持部32は、弁部31から延出する領域(腕部32a)が長尺な板状に形成されている。
【0038】
上記構成をなす片持ち状弁体30は、ハウジング本体10の突出収容部14において、係合孔32cに嵌合突起14aが嵌合され、ハウジングカバー20の突出カバー部24に設けられた嵌合穴24aに嵌合突起14aが嵌合されつつ、押え部24bが係合孔32cの周辺部を受け面14bに押圧するように、ハウジングカバー20がハウジング本体10に結合されることにより、腕部32aが予め弾性変形させられて、弁部31が弁座面41cに向けて密接するように付勢された状態に組み付けられる。
そして、片持ち状弁体30は、上流側通路41aから流れ出る流体の圧力により開弁し、ソレノイドAの駆動力(吸引力)により、流体の圧力に打ち勝って閉弁するようになっている。
【0039】
ソレノイドAは、片持ち状弁体30の弁部31を閉弁させる向きに駆動力を及ぼすものであり、
図8に示すように、磁路を形成するインナーヨーク40、磁路を形成するアウターヨーク50、コイルモジュール60を備えている。
インナーヨーク40は、軟鉄等を用いて機械加工又は鍛造により形成され、筒状部41、フランジ部42を備えている。
筒状部41は、第1軸線S1を中心とする円筒状に形成され、その内側において円形断面をなすと共に第1軸線S1上において伸長する上流側通路41a、上流側通路41aの下流端に位置する円形状の開口部41b、開口部41bの周りに形成れた円環状の弁座面41cを画定する。
フランジ部42は、上流側通路41aの上流端において第1軸線S1に垂直な方向に延在する環状に形成され、外縁領域において二つの切欠き部42aを備えている。
【0040】
アウターヨーク50は、軟鉄等を用いて機械加工又は鍛造により形成され、第1軸線S1を中心とする二つの円弧壁部51、第1軸線S1方向においてフランジ部42と対向する円環状部52を備えている。
円弧壁部51は、第1軸線S1方向の端部において係合爪51aを備えている。
【0041】
コイルモジュール60は、樹脂材料により形成された貫通孔61aを画定するボビン61、ボビン61に巻回された励磁用のコイル62、ボビン61に部分的に埋設されると共にコイル62の両端にそれぞれ接続された二つの端子63を備えている。
そして、コイルモジュール60の貫通孔61aにインナーヨーク40の筒状部41が嵌合され、コイルモジュール60を挟み込むように、アウターヨーク50が組み付けられ、係合爪51aが切欠き部42aに係合されると共に、円環状部52に筒状部41が嵌合されることにより、
図7に示すように、ソレノイドAが形成される。
そして、ソレノイドAは、樹脂材料を用いてハウジング本体10を成型する際に、円筒部11の内側領域に埋設される。
【0042】
次に、一実施形態に係る弁装置が、例えば車両の冷却水循環システムに適用された場合の動作について説明する。
先ず、コイル62が通電されない非通電の状態でかつ流体の圧力が所定レベル以下のとき、
図9及び
図10に示すように、片持ち状弁体30は、弁部31が弁座面41cに着座して開口部41bを閉塞する閉弁状態に位置付けられる。
【0043】
続いて、流体の圧力が所定レベルを超えて大きくなると、上流側通路41aから流れ込む流体により、支持部32が弾性変形しつつ弁部31が下流側に向けて押し開けられる。
そして、弁部31の背面31bが全開ストッパ部26に当接して全開位置に位置付けられると、
図11及び
図12に示すように、弁部31が全開した状態において、弁部31の平面(前面31a及び背面31b)の延在する方向が、下流側通路22aが伸長する方向と一致するようになる。すなわち、下流側通路22aが、弁部31の平面(前面31a及び背面31b)に沿う方向に伸長する状態となる。
【0044】
この状態において、上流側通路41aから流れ込む流体は、弁部31の前面31aに沿うように流れて下流側通路22aに導かれる。また、上流側通路41aから流れ込む流体は、弁部31の背面31b側に周り込んで背面31bに沿って流れると共に、案内壁23aに案内されて下流側通路22aに導かれる。
また、
図13に示すように、下流側通路22a寄りに形成された二つの全開ストッパ部26は、下流側通路22aから外れた領域に形成されているため、全開状態において、弁部31の背面31b側に周り込んだ流体は、二つの全開ストッパ部26に邪魔されることなく、背面31bに沿うように導かれて下流側通路22aに流れ出る。
【0045】
一方、流体が上流側から導かれていない状態において、コイル62が通電されると、ソレノイドAに生じた電磁力(吸引力)により、弁部31が、インナーヨーク40側に引き寄せられて、
図9及び
図10に示すように、弁部31が弁座面41cに着座して開口部4bを閉塞した閉弁状態となる。この閉弁状態において、上流側の流体の圧力が所定レベル(システム内の最大圧力)まで上昇しても、閉弁状態が維持されるように設定されている。
【0046】
そして、下流側へ流体を流す要求があった際には、コイル62への通電が断たれて、弁部31が、流体の圧力により、
図11及び
図12に示すように、弁座面41cから離脱して開口部4bを開放した開弁状態となる。
この開弁状態においては、前述のように、上流側通路41aから流れ込む流体は、弁部31の前面31aに沿うように流れて下流側通路22aに導かれ、又、弁部31の背面31b側に周り込んで背面31bに沿って流れると共に案内壁23aに案内されて下流側通路22aに導かれる。
そして、開弁後においては、弁部31は、仮にコイル62が通電されたとしても、流体の圧力により開弁状態を維持し、上流側からの流体の流れが停止すると、弁座面41cに着座して閉弁するようになっている。
【0047】
上記構成をなす弁装置によれば、流体を通す上流側通路41a及び下流側通路22a,上流側通路41aと下流側通路22aの間に介在する弁収容室h1(13,23),及び上流側通路41aの下流端に位置する開口部41bを画定するハウジングHと、弁収容室h1に配置され弾性変形可能な片持ち状の支持部32及び支持部32の自由端側において開口部41bを開閉する平板状の弁部31を有する片持ち状弁体30を備え、下流側通路22aは、弁部31が全開した状態において弁部31の平面(前面31a及び背面31b)に沿う方向に伸長するように形成されている。
これによれば、片持ち状弁体30が全開した状態において、上流側通路41aから流れ込んだ流体は、開口部41bを通過した後に、傾斜した弁部31の平面(前面31a、背面31b)に沿うように流れ、その流れ方向においてスムーズに下流側通路22aに流れ出る。したがって、弁部31の背面31b側における流れの剥離や淀み等を生じることがなく、流体の圧力損失を低減することができる。
【0048】
また、上流側通路41aの下流端の開口部41bは円形状に形成され、弁部31は円板状に形成され、支持部32は弁部31から延出する領域が長尺な板状に形成されているため、片持ち状弁体の全体が例えば矩形状をなすような形態に比べて、流体が弁部31の外周縁から背面31b側にスムーズに周り込むと同時に背面31bに沿って下流側通路22aに流れ出ることができ、圧力損失の低減に寄与する。
【0049】
また、ハウジングHが、第1軸線S1上において伸長するように上流側通路41aを画定する円筒部11、第1軸線S1に対して傾斜した第2軸線S2を中心とすると共に第2軸線S2上において伸長するように下流側通路22aを画定するパイプ部22、片持ち状弁体30の固定側を収容するべく円筒部11から径方向に突出して弁収容室の一部を画定する突出部h2を含む。
これによれば、下流側通路22aがパイプ部22により画定され、片持ち状弁体30の固定側が突出部h2内に配置されるため、大きい外径のハウジング内に形成する場合に比べて、上流側通路41aの面積を確保しつつ、円筒部11の外径寸法を小さくすることができ、ハウジングHの小型化を達成することができる。
【0050】
また、弁部31が、上流側通路41aの下流端に位置する開口部41bに対向する前面31a及び前面31aと反対側の背面31bを含み、ハウジングHが、弁部31が全開した状態において背面31b側に流れ込んだ流体を下流側通路22aに案内する案内壁23aを含む構成となっている。
これによれば、弁部31の背面31b側に流れ込んだ流体は、案内壁23aに沿って下流側通路22aに導かれるため、流体の圧力損失をさらに低減することができる。
特に、案内壁23aが、弁部31が全開した状態において、弁部31の平面(背面31b)に沿う方向に伸長するように形成されているため、背面31b側に流れ込んだ流体を下流側通路22aに向けてスムーズに導くことができる。
【0051】
また、下流側通路22aを画定するパイプ部22と片持ち状弁体30の固定側を収容する突出部h2(突出収容部14及び突出カバー部24)とは、第1軸線S1周りの周方向Cdにおいて180度離れて配置された構成となっている。
これによれば、弁部31が傾斜して全開したときの最も開口量(リフト量)が大きい領域に対して、下流側通路22aが臨むように配置されることになり、流体をよりスムーズに下流側通路22aに導くことができる。
【0052】
また、ハウジングHが、弁部31が全開した状態において、弁部31の移動を規制する全開ストッパ部26を含む構成となっている。
これによれば、背面31bを全開ストッパ部26で押さえつつ前面31aに流体圧を作用させて、弁部31を全開位置に確実に位置付けることができる。これにより、流体の安定した流れを得ることができる。
【0053】
また、弁部31を閉弁させる向きに駆動力を及ぼすソレノイドAを含み、片持ち状弁体30が、磁性材料により形成された弁部31及びバネ材料により形成された支持部32を含む構成となっている。
これによれば、片持ち状弁体30を流体の圧力だけで開閉させるだけでなく、ソレノイドAの電磁力(吸引力)により、弁部31を吸着して閉弁状態を維持することができる。
【0054】
また、ハウジングHが、上流側通路41aを画定するハウジング本体10と、下流側通路22aを画定すると共にハウジング本体10に結合されるハウジングカバー20を含み、ハウジング本体10が、円筒部11及び突出部h2を部分的に画定する突出収容部14を有し、ハウジングカバー20が、パイプ部22及び突出部h2を部分的に画定すると共に突出収容部14を覆う突出カバー部24を有する構成となっている。
これによれば、下流側通路22aの向き(第2軸線S2の向き)を所定の角度範囲内で変更したい場合に、ハウジングカバー20のみを変更することで対処することができる。
【0055】
また、ソレノイドAがハウジング本体10の円筒部11に埋設され、上流側通路41a,開口部41b,及び弁座面41cを画定する筒状部41を有すると共に磁路を形成するインナーヨーク40、インナーヨーク40に連結される共に磁路を形成するアウターヨーク50、励磁用のコイル62を含む構成となっている。
これによれば、ソレノイドAを円筒部11に埋設しつつ、インナーヨーク40の筒状部41を、流体を通す上流側通路41aとして利用することにより、別途に上流側通路を形成する場合に比べて、円筒部11の小径化、装置の小型化を達成することができる。
【0056】
また、コネクタ部12は、第1軸線S1周りの周方向Cdにおいて、パイプ部22及び突出部h2から外れた位置に配置されている。これによれば、パイプ部22に対して適用対象物の流体導出配管を容易に接続することができ、又、電気的接続のための外部コネクタをコネクタ部12に容易に接続することができる。
【0057】
また、ハウジング本体10が、適用対象物に取り付けられるべく円筒部11から径方向に突出する取付け部16を含み、取付け部16が、第1軸線S1周りの周方向Cdにおいて、パイプ部22,突出部h2,及びコネクタ部12から外れた位置に配置されている。
これによれば、パイプ部22に対する流体導出配管の接続、コネクタ部12に対する外部コネクタの接続、取付け部16の適用対象物に対する取付けを、相互に干渉することなく容易に行うことができる。すなわち、艤装上に有利な配置構造とすることができる。
【0058】
上記実施形態においては、ハウジングとして、ハウジング本体10及びハウジングカバー20により構成されるハウジングHを示したが、これに限定されるものではなく、一体的なハウジングを採用してもよい。
上記実施形態においては、上流側通路がソレノイドAを構成するインナーヨーク40の筒状部41により画定される上流側通路41aを示したが、これに限定されるものではなく、ハウジングが樹脂成形される場合に、ハウジングの部材により上流側通路が画定されてもよい。
【0059】
上記実施形態においては、片持ち状弁体として、別部材からなる円板状の弁部31と長尺な板状の支持部32とを溶接して一体的に形成した片持ち状弁体30を示したが、これに限定されるものではなく、一体的に形成された片持ち状弁体、又は、通路の形状や弁座面の形状に適宜適合させた他の形態をなす片持ち状弁体を採用してもよい。
【0060】
上記実施形態においては、弁部31を閉弁させる向き駆動力を及ぼすソレノイドAを含む構成を示したが、これに限定されるものではなく、ソレノイドAを廃止して、片持ち状弁体の弁部が流体の圧力のみで開閉するように構成してもよい。
【0061】
上記実施形態においては、弁部31を閉弁させる駆動力を及ぼすソレノイドとして、弁部31が一旦開弁状態になって流体が流れ続けると、コイル62に通電しても弁部31を閉弁させる吸引力が生じないソレノイドAを示したが、これに限定されるものではなく、適用されるシステムによっては、流体の圧力に打ち勝って強制的に弁部31を閉弁させ得る電磁力を生じるソレノイドを採用してもよい。
【0062】
以上述べたように、本発明の弁装置は、流体が片持ち状弁体の周りにおいてスムーズに流れるように案内されて、流体の圧力損失を低減することができるため、車両等の冷却水循環システムに適用できるのは勿論のこと、その他の分野における流体の流れを制御する機器等においても有用である。
【符号の説明】
【0063】
S1 第1軸線
S2 第2軸線
Cd 第1軸線周りの周方向
H ハウジング
h1 弁収容室
h2 突出部
10 ハウジング本体(ハウジング)
11 円筒部
12 コネクタ部
13 弁収容室
14 突出収容部(弁収容室)
15 接合部
16 取付け部
20 ハウジングカバー(ハウジング)
22 パイプ部
23 弁収容室
23a 案内壁
24 突出カバー部
25 接合部
30 片持ち状弁体
31 弁部
31a 前面(平面)
31b 背面(平面)
32 支持部
A ソレノイド
40 インナーヨーク
41 筒状部
41a 上流側通路
41b 開口部
41c 弁座面
42 フランジ部
50 アウターヨーク
60 コイルモジュール
61 ボビン
62 励磁用のコイル
63 端子