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特開2024-25257商標評価額算定システム、算定方法及び算定プログラム、並びに商標売買システム、売買方法及び売買プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025257
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】商標評価額算定システム、算定方法及び算定プログラム、並びに商標売買システム、売買方法及び売買プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/18 20120101AFI20240216BHJP
【FI】
G06Q50/18 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128562
(22)【出願日】2022-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】522321933
【氏名又は名称】SPIDEX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100220711
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 朗
(72)【発明者】
【氏名】天羽 優太
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 拓規
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB55
5L049CC16
(57)【要約】
【課題】商標権の評価額を手軽に算定でき、簡単な操作で商標権を出品できる。
【解決手段】特定権利者の商標権一覧が表示されて、商標権一覧から選択された1以上の商標権について評価額の算定要求を送信する権利者端末40と、権利者端末40に通信接続された評価装置10とを備え、評価装置10は、算定要求として入力情報を権利者端末40から受信する算定要求受信手段21と、入力情報として少なくとも使用実績及び/又は使用予定の有無に基づき、記憶装置12内の算定ルールテーブル13a又は算定モデル13bを用いて、商標権の評価額を算定する算定手段22と、算定された評価額を権利者端末40に送信する評価額送信手段23とを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定権利者の商標権一覧が表示されて、商標権一覧から選択された1以上の商標権について評価額の算定要求を送信する権利者端末と、
権利者端末に通信接続された評価装置と、を備え、
評価装置は、
算定要求として入力情報を権利者端末から受信する受信手段と、
入力情報として少なくとも使用実績及び/又は使用予定の有無に基づき、記憶装置内の算定ルールテーブル又は算定モデルを用いて、商標権の評価額を算定する算定手段と、
算定された評価額を権利者端末に送信する送信手段と、を含むことを特徴とする商標評価額算定システム。
【請求項2】
算定手段は、算定要求された商標権に係る対象商標について、使用実績及び使用予定が無い場合、記憶装置内に格納された商標データとして少なくとも区分数が入力され、
算定手段は、
商標登録出願から登録までの費用を考慮した第1評価額を出力する第1算定部と、
第1評価額に係数を乗算した第2評価額を出力する第2算定部と、
を含む請求項1に記載の商標評価額算定システム。
【請求項3】
算定手段は、算定要求された商標権に係る対象商標について、使用実績又は使用予定が有る場合、入力情報として少なくとも売上予測額又は利益予測額が権利者端末から入力され、
算定手段は、
売上予測額又は利益予測額を考慮した第3評価額を出力する第3算定部と、
第3評価額に係数を乗算した第4評価額を出力する第4算定部と、
を含む請求項2に記載の商標評価額算定システム。
【請求項4】
評価装置に通信接続された閲覧者端末を備え、
評価装置は、閲覧者が閲覧者端末により商標権を購入できる出品状態を構築する出品手段を含み、
出品手段は、
請求項1に記載の商標評価額算定システムにより評価額が算定された商標権を出品するか否かの確認を求め、権利者端末から評価額と同一又は異なる出品額による出品許可を受信する出品確認部と、
出品許可された商標権の閲覧要求を閲覧者端末から受信する閲覧要求受信部と、
閲覧者端末から閲覧要求を受信した後に、評価装置が、出品許可された商標権の出品額を閲覧者端末に送信し表示させる出品額送信部と、を含むことを特徴とする商標売買システム。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1に記載の商標評価額算定システムとして機能させるための商標評価額算定プログラム。
【請求項6】
コンピュータを、請求項4に記載の商標売買システムとして機能させるための商標評価額算定プログラム。
【請求項7】
特定権利者の商標権一覧から選択された1以上の商標権について、操作者が権利者端末から送信した評価額の算定要求を、評価装置が受信する過程と、
算定要求として入力情報を受信したとき、評価装置は、入力情報として少なくとも使用実績及び/又は使用予定の有無に基づき、記憶装置内の算定ルールテーブル又は算定モデルを用いて、商標権の評価額を算定する過程と、
評価装置が権利者端末に対し、算定された評価額を送信する過程と、を含むことを特徴とする商標評価額算定方法。
【請求項8】
評価装置によって、請求項7に記載の商標評価額算定方法により評価額が算定された商標権を出品するか否かの確認を求め、権利者端末から評価額と同一又は異なる出品額による出品許可を受信する過程と、
出品許可された商標権の閲覧要求を閲覧者端末から評価装置が受信する過程と、
評価装置が、閲覧者端末から閲覧要求を受信した後に、出品許可された商標権の出品額を閲覧者端末に送信し表示させて、商標権の出品状態を構築する過程と、を含むことを特徴とする商標売買方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末からの入力情報に基づき、コンピュータを用い、商標の評価額を算定するシステム、方法及びプログラム、並びに評価額を算定した商標を売買するシステム、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
商標権売却を希望する場合、売手である商標権者が希望額を定めるのが自然であるが、商標権は、無体財産権であるため客観的な市場価格が認知されてなく、また商標権者は通常、価値算定の知見や権利売買の経験が乏しく、売却額を幾らに設定すべきか決めかねるケースが多い。この場合、専門家に商標権の評価額算定を依頼できるが、専門家の算定は、膨大な時間と費用がかかり、その評価額は、権利残存期間(存続期間が十分ある又は殆どない等)の変動を考慮しない一時点での評価額である。また、評価方法及び算定結果が専門家により異なる場合がある。
【0003】
商標権者は、評価額を確認後に売却するか否か決めたい場合や、売却目的でなく自己の商標権資産額又は経済的価値を単に知りたい場合もある。また、商標は使用により業務上の信用(顧客吸引力)が化体し財産的価値が蓄積されるため、商標の評価額には、取引の実情、即ち使用実績又は使用予定が考慮されなければ、正確な評価額を算定したことにはならない。従って、商標売却又は売却以外の目的の商標権者にとって、時間をかけず無料又は低価格で手軽に商標権の評価額を算定でき、かつ実際の使用による商標の価値を考慮できる算定システムが望まれる。
【0004】
一方、自己の業務に商標を使用する場合、使用希望者は、最初に商標を決定し、決定された商標と同一又は類似の他人の先行登録商標の有無を調査し、その後、商標登録出願をして正式に登録されるのは6~12カ月後である。他人の商標権侵害のリスクを回避するため、登録後から商標を使用開始することが最も安心である。しかし、登録まで商標使用を待ち商品を販売できなければ、ビジネス機会を失うこともある。また、商標類否判断は難しい場合があり、出願して12カ月以上経過後に拒絶査定又は拒絶審決が確定すれば、その後新たな商標を決めて出願し直す必要が生じ、大きな時間ロスによる経済的不利益を被る。
【0005】
使用希望商標が既に他人の登録済みであるが不使用の場合、使用希望者は、他人である商標権者から権利譲渡を受ければその商標を使用できる。しかし、譲渡交渉は難しく登録手続が煩雑であり契約トラブルも起こり得るため、通常、代理人を介し交渉が行われ、交渉成否に関わらず代理人費用が発生する。従って、商標使用希望者にとって、安心して使用できる商標を、迅速かつ簡易に、高額な費用がかからず取得できるシステムの構築が望まれる。
【0006】
我が国の商標制度では、実際の使用だけでなく使用意思さえあれば、商標登録できるため、登録しても使用していない休眠状態の商標が多く存在し、その不使用商標は、商標権取得を希望する者の商標選択の余地を狭めている。また、商標登録出願が、他人の商標権に係る商標を引例として拒絶された場合、引例の商標権者は、これを認知できれば、出願人に対し積極的に商標権を売却したい状況、例えば、引例の商標が必要ないため売却したい状況、使用により高い業務上の信用が既に化体し高額で売却できる状況等があり得る。従って、不使用商標を有効活用でき、商標流動化を積極的に図るシステムが望まれる。
【0007】
特許文献1は、会員登録をした企業の登録済の有効工業所有権のなかで不要と考えるもののスタート価格を決めてネットオークションに出品し、会員登録した企業のうち当該有効工業所有権の購入希望者の入札を待ち、条件が合致した場合に取引を成立させ、権利の移転登録手続を特許庁に対し行なう工業所有権の取引システムを開示する。しかし、特許文献1の取引システムは、不要な工業所有権をネットオークションに出品するシステムであるため、例え低価格であっても売却処分するものである。また、オークションスタート価格の決定は、仲介業者が冷静な第三者的な立場から評定して行い、簡易かつ自動的に評価するものではない。更に、特許文献1のシステムでは、商標の使用実績又は取引の実情が全く考慮されていない。
【0008】
特許文献2は、会員特許事務所及び/又は弁理士からの取次ぎに基づき、取引対象の商標に関する売買及び/又は使用許諾の申込みのマッチングをする商標取引所コンピュータを備え、契約が成立したとき商標取引所コンピュータが取次ぎをした者を割り出して商標管理会社コンピュータに問い合わせ、割り出された取次ぎ者が会員特許事務所か否かを判別し、取次ぎ者が会員特許事務所である場合に会員特典を付与し、評価の必要性がある場合商標評価会社に評価の依頼をする商標管理・取引システムを開示する。特許文献2のシステムでは、商標評価会社に評価を依頼するため、評価に手間及び時間がかかり、簡易かつ自動的に評価できるシステムではない。また、特許文献2では、商標管理・取引システムと商標権者との間に会員特許事務所を介するため、商標権者にとって安価に権利を売却できるシステムではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006-11579号公報
【特許文献2】特開2012-32901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、時間をかけず手軽に商標権の評価額を算定でき、かつ商標使用実績及び使用予定を考慮した評価額算定システム、方法及びプログラムの提供を目的とする。また、商標権者が、簡易な操作により商標権を出品及び販売できることを目的とする。使用希望者が、安心して使用できる商標の権利を迅速かつ低価格で取得できることを目的とする。更に、不使用商標を有効活用して商標の流動化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の商標評価額算定システム1は、特定権利者の商標権一覧が表示されて、商標権一覧から選択された1以上の商標権について評価額の算定要求を送信する権利者端末40と、権利者端末40に通信接続された評価装置10とを備える。評価装置10は、算定要求として入力情報を権利者端末40から受信する受信手段21と、入力情報として少なくとも使用実績及び/又は使用予定の有無に基づき、記憶装置12内の算定ルールテーブル13a又は算定モデル13bを用いて、商標権の評価額を算定する算定手段22と、算定された評価額を権利者端末40に送信する送信手段23とを含む。
【0012】
本発明の商標評価額算定システム1では、操作者(商標権者又は商標権者を代理する者)は、スマートフォン、タブレット、パソコン等の権利者端末40に表示された商標権一覧から、簡易な操作、即ち入力情報として少なくとも使用実績及び/又は使用予定の有無を入力するだけで、即座に商標権の評価額を何度も得ることできる。ここで「商標権」とは、商標権自体だけでなく、商標権について設定又は許諾された使用権を含む概念である。また、本発明では、専門家に依頼する必要がなく高額な費用をかけず、商標権評価額を手軽に取得できる。また、売却予定がなくても、本システムにより、使用実績及び/又は使用予定を考慮した評価額を簡単に知得できる。
【0013】
本発明の商標売買システム3は、評価装置10に通信接続された閲覧者端末50を備え、評価装置10は、閲覧者が閲覧者端末50により商標権を購入できる出品状態を構築する出品手段24を含む。出品手段24は、前記商標評価額算定システム1により評価額が算定された商標権を出品するか否かの確認を求め、権利者端末40から評価額と同一又は異なる出品額による出品許可を受信する出品確認部24aと、出品許可された商標権の閲覧要求を閲覧者端末50から受信する閲覧要求受信部24bと、閲覧者端末50から閲覧要求を受信した後に、評価装置10が、出品許可された商標権の出品額を閲覧者端末50に送信し表示させる出品額送信部24cとを含む。
【0014】
本発明の商標売買システム3では、出品確認部24aを通じ権利者端末40に商標権を出品するか否かの確認を求め、商標権者は、評価額を参考にして、評価額と同一又は異なる出品額にて商標権を売却するか否か決定できる。評価額確認後、売却しない選択もできる。このため、出品後低価格でも売却が強要されるオークションと異なり、判断の機会があり商標権者にとって都合が良い。評価装置10は、閲覧要求受信部24bにより閲覧要求を閲覧者端末50から受信するので、閲覧権原の有無を確認した後、出品許可済みの出品商標権リストを閲覧者端末50に表示させ得る。商標購入希望者は、閲覧者端末50を通じて出品額及び商標権の詳細を確認し、商標権を購入できるため、安心してかつ代理人を介さず簡易な操作により購入できる。更に、閲覧者端末50を通じ簡単に商標権を購入して登録商標を使用できるため、不使用商標の有効活用を図ることができる。
【0015】
本発明の商標評価額算定プログラムは、コンピュータを、前記商標評価額算定システムとして機能させるためのプログラムである。本発明の商標売買プログラムは、コンピュータを、商標売買システムとして機能させるためのプログラムである。
【0016】
本発明の商標評価額算定方法は、特定権利者の商標権一覧から選択された1以上の商標権について、操作者が権利者端末40から送信した評価額の算定要求を、評価装置10が受信する過程と、算定要求として入力情報を受信したとき、評価装置10は、入力情報として少なくとも使用実績及び/又は使用予定の有無に基づき、記憶装置12内の算定ルールテーブル13a又は算定モデル13bを用いて、商標権の評価額を算定する過程と、評価装置10が権利者端末40に対し、算定された評価額を送信する過程とを含む。
【0017】
本発明の商標売買方法は、評価装置10によって、前記商標評価額算定方法により評価額が算定された商標権を出品するか否かの確認を求め、権利者端末40から評価額と同一又は異なる出品額による出品許可を受信する過程と、出品許可された商標権の閲覧要求を閲覧者端末50から評価装置10が受信する過程と、評価装置10が、閲覧者端末50から閲覧要求を受信した後に、出品許可された商標権の出品額を閲覧者端末50に送信し表示させて、商標権の出品状態を構築する過程とを含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明による商標評価額算定システム、方法及びプログラムでは、スマートフォン等の権利者端末により操作者が商標権の評価額を手軽に取得でき、かつ実際の商標使用の実情が考慮された評価額を取得できるため、自己資産把握及び売却前調査に有効活用できる。本発明による商標売買システム、方法及びプログラムでは、簡単な操作により商標権を出品及び販売できるため、いわゆる休眠登録商標の流動化を促進できる。また、商標使用希望者は、特許庁審査又は審判を経ずに商標権を購入できるため、商標権侵害のリスクを回避し、即座に自己業務に商標を使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の商標評価額算定システム及び商標売買システムを示すブロック図
図2】評価装置を示すブロック図
図3】本発明の商標評価額算定方法の手順を示すフローチャート
図4】本発明の商標売買方法の手順を示すフローチャート
図5】権利者端末の表示画面を例示するスクリーンショット(a)(b)(c)
図6】権利者端末の表示画面を例示するスクリーンショット(d)(e)(f)
図7】権利者端末の表示画面を例示するスクリーンショット(g)(h)(i)
図8】権利者端末の表示画面を例示するスクリーンショット(j)(k)
図9】閲覧者端末の表示画面を例示するスクリーンショット(l)(m)(n)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明による商標評価額算定システム、方法及びプログラム、並びに商標売買システム、方法及びプログラムの実施形態を図1図9を参照して説明する。下記実施形態及び図面の記載は例示であり本発明を限定解釈するものではない。
【0021】
図1に示す本発明の商標評価額算定システム1は、特定権利者の商標権一覧が表示されて、商標権一覧から選択された1以上の商標権について評価額の算定要求を送信する権利者端末40と、権利者端末40にインターネット2、専用回線等を通じ通信接続され、算定要求を受信する評価装置10とを備える。評価装置10は、ハードウエア装置として処理装置11及び記憶装置12を含み、システムサーバとして機能する。処理装置(中央処理装置:CPU)11は、記憶装置12に記憶されている指令を読み込み処理に必要な指令を他の装置に与える制御装置と、制御装置からの指令に従い演算を実行する演算装置とを含む。記憶装置12は、例えば磁気記憶装置、光ディスク、光磁気記憶媒体、半導体メモリ等、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体を含む。権利者端末40は、タッチ画面、キーボード等の入力装置と、表示画面41、ディスプレイ等の出力装置とを備える、スマートフォン、タブレット、携帯電話、ノート型又はデスクトップ型パソコン等の装置である。本明細書において用語「商標権一覧」は、図5(a)に例示するように、一商標権に関する商標情報(例えば、登録商標、登録番号、区分、指定商品又は役務、区分、更新期限等)が、1件又は複数件分列挙された一覧である。
【0022】
図2は、評価装置10の構成を示すブロック図である。評価装置10は、権利者端末40からの一覧表示要求を受けて、特定商標権者の商標権一覧を権利者端末40に対し表示を実行する一覧表示手段18と、商標権一覧から1以上の商標権を選択した信号を権利者端末40から受信する商標選択手段19と、選択された商標権について評価額の算定要求として入力情報を受信する算定要求受信手段20と、権利者端末40からの入力情報に基づき必要に応じて係数を生成する係数生成手段21と、権利者端末40からの入力情報に基づき及び/又は記憶装置12に格納された商標データに基づき、選択された商標権の評価額を算定する評価額算定手段22と、評価額を権利者端末40に送信する評価額送信手段23とを備える。前記各手段(機能)は、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働することにより実現される。用語「入力情報」及び「商標データ」は何れも評価額算定に用いられる情報及びデータを意味するが、前者は権利者端末40から入力される情報(例えば、使用実績及び/又は使用予定の有無)、後者は外部データベース70又はインターネット検索から得られるデータ(例えば、指定商品及び役務の区分数)の各意味として、本明細書で用いられる。
【0023】
評価装置10の一覧表示手段18は、図2に示す少なくとも3構成を含む。即ち、特定商標権者の商標権の一覧表示要求を権利者端末40から受信する一覧要求受信部18aと、一覧表示要求に従い、商標情報記憶手段(評価装置10内データベース)31を検索し、商標情報記憶手段31から、特定商標権者の商標権に関する商標情報を商標権一覧として取得する一覧取得部18bと、取得した商標情報を含む商標権一覧を権利者端末40に送信して権利者端末40の画面41に表示させる一覧表示指令部18cとを含む。商標情報記憶手段31には、予め商標情報が記憶され、商標情報は、特許庁が提供する特許情報標準データ、その他の外部データベース70(図1)から、又はインターネット検索により得られ、定期又は非定期に更新される。ここで用語「商標情報」とは、商標イメージ、商標種類(文字、図形、文字と図形の結合、立体形状、色彩のみ、音、ホログラム、位置、動き)、商標の構成、シルエット、標準文字か否か、文字フォント、色彩、色コード、全体に占める空白率、文字間隔、出願番号、登録番号、出願日、公開日、登録日、公報発行日、更新期限、出願人名称、商標権者名称、出願人住所、商標権者住所、識別番号、代理人氏名、拒絶理由、引例、年金納付情報、存続・失効情報、移転情報、対応外国登録商標の有無、異議申立て及び審判請求の有無、検索エンジンによるヒット件数、ドメイン取得可否、商標権者の業績等、外部データベース70又はインターネット検索により得られる、商標に関するあらゆる情報を含む。
【0024】
評価装置10の商標選択手段19は、権利者端末40の画面41に表示された商標権一覧から、操作者が選択した1又は2以上の商標権を特定する商標選択信号を受信し、選択された商標権を商標情報記憶手段31にて検索して、その商標情報を商標情報記憶手段31から抽出する。選択された商標権に関する商標情報を、評価額算定に必要な商標データとして選択商標格納手段32に格納する。評価装置10の算定要求受信手段20は、入力情報を算定要求として権利者端末40から受信する。権利者端末40からの入力情報は、商標の使用実績、使用予定、使用権設定又は許諾、ライセンス料率、商標権に係る事業の売上予測額及び利益予測額、商標の目的、識別力、感性、商標の種類、周知著名歴等を含むが、これらに限定されない。
【0025】
評価装置10の係数生成手段21は、権利者端末40から入力された入力情報に基づき、必要に応じて選択商標格納手段32に記憶された商標データに基づき、係数を生成する。各入力情報及び商標データに対し予め割り当てられた係数が係数生成テーブル33によって付与される。例えば、入力情報「商標の種類」について「文字」をチェックした場合(図6(d))、選択商標格納手段32の商標データから対象商標の文字数が4字以下のとき係数「1.2」、5字又は6字のとき係数「1.1」、7字以上のとき係数「1.0」を係数生成テーブル33が付与する。また、入力情報「商標の種類」について「図形(ロゴ)」をチェックした場合、選択商標格納手段32の商標データから対象商標の図形等分類コード数が10以下のとき係数「1.2」、同コード数が11~15のとき係数「1.1」、同コード数が16以上のとき係数「1.0」を係数生成テーブル33が付与する。また、入力情報についてチェックが無い場合(図5(c))、即ち使用実績だけでなく使用予定も無い場合、係数「1.0」を係数生成テーブル33が付与する。
【0026】
係数は、商標評価額算定システム1の使用者に対するアンケートに基づき決定してもよい。即ち、無作為に選出した又は特定の属性(年齢、性別、地域、時間軸等)を有する使用者(アンケート回答者)に対し、商標情報記憶手段31に記憶された商標(例えば「すっぱえびせん」)について感じたこと(スナック、さくさく、えび、美味しそう、おやつ、赤い、おもしろい、酸っぱい、のど乾く、まずそう等)を端末画面41,51からフィードバックしてもらい、対象商標の感性データの項目として蓄積する。蓄積された感性データの項目を加算評価のポジティブと減算評価のネガティブにスコア分けし、集計して対象商標の感性に関する係数を決定してもよい。更なる感性データ蓄積のために、集計数上位(例えば上位10位まで)の各項目が端末画面41,51に表示されて、使用者(アンケート回答者)はその中から項目を選択(タップ)してもよい。また、評価額算定の際に、アンケートで蓄積された感性データの項目を使用してもよい。即ち、入力情報として商標権者が権利者端末40を通じ入力又は選択する感性データの項目が、集計数上位の項目に一致すれば、対象商標に対し感じることが需要者と商標権者との間で合致したとみなし、評価装置10は、より大きい係数を付与する。
【0027】
評価装置10の算定手段22は、入力情報として少なくとも使用実績の有無及び/又は使用予定の有無に基づき、算定処理ルール又はプログラムが予め記憶された算定ルールテーブル13aを用い商標権の評価額を算定する。即ち、算定手段22は、算定要求された商標権に係る対象商標について、「使用実績及び予定が無いかつ他の入力情報が無い」第1入力情報を商標権者端末40から得た場合、選択商標格納手段32に格納された商標データとして少なくとも区分数を用い第1評価額を出力する第1算定部22aを備える。第1評価額は、商標登録出願から登録までの費用が下記式1の算定処理ルールにより算定される。更新されていれば下記式2の算定処理ルールによる更新費用を加算してもよい。
【式1】
【0028】
【式2】
【0029】
式1中「事務所出願及び登録手数料」は、商標登録出願時と商標登録時にかかる特許事務所(弁理士)費用の合計額である。式2中「事務所更新手数料」は、更新時にかかる特許事務所(弁理士)費用であり、複数回更新された場合、複数回分の費用を含んでもよい。第1評価額では、係数は「1」のため式1及び式2において実質的に考慮されない。また、算定手段22は、「使用実績及び予定が無いかつ他の入力情報が有る」第2入力情報を商標権者端末40から得た場合、前記第1評価額に1以外の係数を乗算した第2評価額を出力する第2算定部22bを備える。
【0030】
算定手段22は、算定要求された商標権に係る対象商標について、「使用実績及び予定が有るかつ他の入力情報が無い」第3入力情報を権利者端末40から得た場合、権利者端末40から少なくとも売上予測額又は利益予測額が入力されて、売上予測額又は利益予測額を考慮した第3評価額を出力する第3算定部22cを備える。また、算定手段22は、「使用実績又は予定が有るかつ他の入力情報が有る」第4入力情報を権利者端末40から得た場合、第3評価額に係数を乗算した第4評価額を出力する第4算定部22dを備える。使用実績又は予定が有る場合の入力情報は、対象商標の「自己使用」又は「他者にライセンス」の項目から選択され得る。自己使用の場合、入力情報は、商標権に係る事業の将来複数年の売上予測額又は利益予測額を含み、他者にライセンスの場合、入力情報は、商標権に係る事業の将来複数年の売上予測額又は利益予測額と、ライセンス料率とを含む。自己使用の場合、売上予測額を入力して商標権の現在価値(第3評価額)V1を得る方法は、インカムアプローチとして例えばDCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)法による下記式3の算定処理ルールに従う。Kは事業収益に対する対象商標権の寄与率、Tは事業の期待収益期間、Ctはt年目の売上予測額のフリーキャッシュフロー、rは商標権の将来価値を現在価値に変換する割合(割引率)をそれぞれ示す。
【式3】
【0031】
【0032】
他者にライセンスの場合、売上予測額及びライセンス料率を入力して商標権の現在価値(第3評価額)V2を得る方法は、例えばロイヤルティ免税法による下記式4の算定処理ルールに従う。Btはt年目の売上予測額、Lはライセンス料率、Eは所得税に課税される実際の税率(実効税率)、rは割引率をそれぞれ表す。
【式4】
【0033】
【0034】
本発明の商標評価額算定システム1は、入力に応じて異なる出力をする4つの算定部、即ち第1~第4算定部22a-22dを備え、入力として、特許庁からの商標情報だけでなく、自己及び他人の使用を含めて商標の使用実績及び/又は使用予定も考慮するため、第1~第4算定部22a-22dの何れかの算定部から適切な1つの評価額を取得できる。
【0035】
使用実績が有る場合、入力情報は、対象商標の周知著名歴を含み得る。周知著名歴は、著名、又は周知の項目から選択され、著名は、周知よりも高評価の係数を係数生成テーブル33が与える。入力情報は、対象商標の使用目的を含み得る。使用目的は、会社名、商品名、又はサービス名の項目から選択され、商品名は、会社名よりも低評価の係数を与え、サービス名よりも高評価の係数を係数生成テーブル33が与える。入力情報は、対象商標の識別力を含み得る。識別力は、感性に関する複数の表示項目から1以上が選択される。入力情報は、対象商標の種類を含み得る。種類は、文字、及び/又は図形の項目から選択され、文字は、文字数が少ないほど、高評価の係数を与え、図形は、図形分類コードの数が少ないほど、高評価の係数を係数生成テーブル33が与える。また、類似群コードの数が多いほど、高評価の係数を係数生成テーブル33が与える。文字数、図形分類コード及びその数、類似群コード及びその数は、選択商標格納手段32から商標データとして係数生成手段21に提供される。
【0036】
算定手段22は、前記のとおり算定ルールテーブル13aに記憶された算定処理ルールを用い評価額を算定できるが、別法として、算定モデル13bを用い商標権の評価額を導出できる。算定モデル13bは、人工知能、例えば機械学習により学習した、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、K-means、トピックモデル、ランダムフォレスト等の学習モデルを使用できる。特にニューラルネットワークのディープラーニングによる学習モデルが好ましい。データを積み重ねて算定モデル13bを更新する。即ち、算定モデル13bを用いた実施形態では、入力情報及び商標データに対するルールベースによる評価額を蓄積及び更新すると、係数を使用せず自動的に評価額を算出することを可能にする。更に別法として算定モデル13bは、インターネットを通じ常時又は任意時期に最新モデルの提供を受けて更新してもよい。
【0037】
評価装置10の評価額記憶手段34は、算定された評価額と、対応する商標権の商標情報とを関連付けて記憶する。商標権の商標情報は、選択商標格納手段32から得られる。評価装置10の評価額送信手段23は、評価額記憶手段34に記憶された評価額を商標権の商標情報と共に権利者端末40に送信する。
【0038】
本発明による商標売買システム3は、図1のとおり、商標評価額算定システム1と、評価装置10の出品手段24と、評価装置10にインターネット2を介して通信接続された閲覧者端末50,50a,50b…とを備える。閲覧者端末50は、タッチ画面、キーボード等の入力装置と、表示画面51、ディスプレイ等の出力装置とを備える、スマートフォン、タブレット、携帯電話、ノート型又はデスクトップ型パソコン等の装置である。評価装置10の出品手段24の出品確認部24aは、商標評価額算定システム1により評価額が算定された商標権を出品するか否かの確認を権利者端末40に求め、商標権者が出品を希望する場合、権利者端末40から評価額と同一の出品額又は異なる出品額による出品許可を受信する。出品手段24の閲覧要求受信部24bは、閲覧者が出品商標を閲覧したい旨の閲覧要求を閲覧者端末50から受信する。出品手段24の出品額送信部24cは、権利者端末40から出品許可を受信した後に、かつ閲覧者端末50から出品商標の閲覧要求を受信した後に、閲覧者端末50に対し評価額を出品額として商標情報と共に送信し、出品が表示された商標権について、閲覧者が閲覧者端末50により購入できる出品状態を成立させる。
【0039】
評価装置10は、特定権利者の商標権に係る商標を引用する拒絶理由通知の有無について、商標情報記憶手段31に対し定期又は不定期に確認する拒絶確認手段(図示せず)と、当該拒絶理由通知が有った場合、権利者端末40に対し、引用された商標に係る商標権の出品を勧める通知手段(図示せず)とを含み得る。出品を勧める通知を受けた商標権者は、引用された商標の評価額を商標評価額算定システム1により算定して、引用された商標を商標売買システム3により出品できる。拒絶理由通知を受けた出願人は、閲覧者端末50にてその出品を閲覧した場合、拒絶理由を解消するために引用商標に係る商標権を購入する可能性が高い。出願人は、閲覧者端末50から簡易な手続により購入できる。
【0040】
商標売買システム3は、ドメイン取得システムと連携してもよい。これにより、商標売買システム3は、文字商標(例えば「花畑」)の商標権が購入される際又は購入後、ドメイン取得システムにて当該文字商標に関連する取得可能ドメイン(例えば、hanabatake.jp、hanabata.com)を検索し、それが存在する場合、商標権購入者は、商標権購入とほぼ同時に、関連するドメインを商標売買システム3から申込み又は購入できる。逆に、ドメイン取得システムでドメイン(例えば、hanabatake.jp)が購入される際、当該ドメインに関連する取得可能な商標権(例えば文字商標「花畑」)が商標売買システム3に存在する場合、ドメイン購入者は、ドメイン購入とほぼ同時に、関連する商標権をドメイン取得システムから申込み又は購入できる。更に、商標売買システム3は、ロゴデザイン依頼システム(例えば「クラウドワークス」https://crowdworks.jp、「ランサーズ」https://www.lancers.jp)と連携してもよい。これにより、商標売買システム3にて商標権(例えば文字商標)が購入される際又は購入後、商標権購入者は、商標権購入とほぼ同時にロゴマークのデザインを商標売買システム3から依頼できる。
【0041】
以下、本発明の商標評価額算定方法について図3及び図5図8を参照して説明する。
図3は、本発明による商標評価額算定方法のフローチャートを示す。権利者端末40は、操作により特定商標権者の商標権一覧表示要求を発信する(S1)。評価装置10は、権利者端末40からの商標権一覧表示要求を一覧要求受信部18aにより受信し(S3)、商標情報が蓄積されている商標情報記憶手段(内部データベース)31を検索して(S5)特定商標権者の登録商標及びその情報を商標権一覧として取得する(S7)。評価装置10は、取得した登録商標及びその情報を商標情報記憶手段31に記憶し(S7)、権利者端末40に商標権一覧を表示するための指令を送信する(S9)。権利者端末40は、表示指令を受信し(S11)特定商標権者の商標権一覧を画面41に表示する(S13)。図5(a)は、スマートフォン(商標権者端末)40の画面41を示し、商標権一覧が表示された「管理している商標」の画面41である。画面41を下方にスクロールすれば複数の商標権の表示を確認できる。一方、商標情報記憶手段31を検索しても特定商標権者の商標権が存在しない場合、評価装置10は、権利者端末40に商標権を表示しないよう指令する。
【0042】
評価装置10は、商標情報記憶手段31に記憶された商標権に係る商標を引用する拒絶理由(例えば商標法第4条第1項11号拒絶理由)の通知有無について、商標情報記憶手段31に対し定期又は不定期に確認してもよい(S15)。当該拒絶理由通知が有った場合、評価装置10は、権利者端末40に対し引用商標に係る商標権の出品(売却)を勧める通知を行い(S17)、権利者端末40は通知を受信する(S19)。
【0043】
権利者端末40では、画面41に表示された特定権利者の商標権一覧から、操作者が商標権を選択し(S21)、その商標権について算定に必要な入力情報を評価装置10に送信して評価額の算定要求を行う(S25)。即ち、操作者は、図5(a)画面41の101部分をタップすると、図5(b)に示す「価値算定」画面41に移行し、更に、登録商標「ABC」を選択し「無料価格算定102」をタップすると、図5(c)に示す「無料簡易算定」画面41に移行する。本画面41では、商標の目的について「会社名・商品名・サービス名」、識別力について「造語・シンプル・直観的・ユニーク・可愛い・クール」、商標の種類「文字・図形(ロゴ)」、使用実績(直近3年以内)について「自己実施あり・他社にライセンス」、周知著名度(直近3年以内)について「周知あり・著名あり」、をそれぞれチェックできる。チェックして又はチェックせずに「算定スタート103」をタップすると、入力情報の送信と共に算定要求がされる。
【0044】
算定要求は、入力情報の種類によって、使用実績が無いかつ他の入力情報が無い第1入力情報と、使用実績が無いかつ他の入力情報が有る第2入力情報と、使用実績が有るかつ他の入力情報が無い第3入力情報と、使用実績が有るかつ他の入力情報が有る第4入力情報とに分類される。図5(c)は第1入力情報、図6(d)は第2入力情報、図6(e)及び(f)は第3入力情報、図7(g)は第4入力情報をそれぞれ入力し送信する各画面41を示す。
【0045】
評価装置10は、図2に示す商標選択手段19によって商標情報記憶手段31から対象商標権を抽出して選択商標格納手段32に格納し(S23)、算定要求受信手段20によって算定要求として入力情報を受信して(S27)、係数生成手段20及び算定手段22に対し算定開始を指令する(S29)。評価装置10は、入力情報又は商標データと係数との関係を表すルール又はプログラムが予め記憶された係数生成テーブル33を用い、係数生成手段20によって入力情報に基づき係数を生成する(S31)。
【0046】
評価装置10は、算定開始指令(S29)を受けた算定手段22により、入力情報として少なくとも使用実績及び/又は使用予定の有無に基づき、記憶装置12内の算定ルールテーブル13aを用い、商標権の評価額算定を開始する。具体的には、算定要求された商標権に係る対象商標について、使用実績及び予定が無いかつ他に入力情報が無い第1入力情報のとき、記憶装置12内に格納された商標データ(区分数)を入力として(S33a)、商標登録出願から登録までの費用及び必要に応じて更新費用を考慮した第1評価額を出力する(S35a)。区分数2の登録商標「ABC」について図5(c)のとおり何もチェックせず「算定スタート103」すると(第1入力情報)、算定ルールテーブル13aに記憶された前記式1(未更新のため式2を考慮せず)に基づき、図8(i)「無料簡易算定」画面41のとおり第1評価額132,600円(=(出願時基本印紙代3,400+(出願時加算印紙代及び登録時印紙代41,500+事務所出願及び登録手数料21,400)×区分数2)×係数1)が得られる。この場合係数は「1」のため実質的に考慮されない。一方、使用実績が無いかつ他に入力情報が有る第2入力情報のとき、第1評価額に1以外の係数を乗算した第2評価額を出力する(S35b)。即ち図6(d)のように商標の種類「文字104」のみチェックし「算定スタート103」すると、算定ルールテーブル13aの前記式1に基づき(未更新のため式2を考慮せず)、また選択商標格納手段32に記憶された商標データ(例えば4字商標)に基づき、「文字」の係数を「1.2」として、第2評価額159,120円(図示せず)が得られる。
【0047】
算定要求された商標権に係る対象商標について、使用実績又は使用予定が有る場合、入力情報として少なくとも売上予測額又は利益予測額が算定手段22に入力される(S33b)。権利者端末40からの入力が、使用実績が有るかつ他に入力情報が無い第3入力情報のとき、評価装置10は、算定手段22によって売上予測額又は利益予測額を考慮した第3評価額を出力する(S35c)。即ち図6(e)のとおり使用実績「自己実施あり106」のみチェックして「次へ107」をタップすると、画面41が図7(h)に移行し、更に図示のとおり1年目、2年目、3年目、4年目及び5年目の各売上予測額例えば「1000」万円を入力して「算定スタート110」すると、算定ルールテーブル13aに記憶された前記式3に基づき、第3評価額(DCF法による商標権の現在価値V1)1,053,091円(図示せず)が得られる。前記のとおり図7(h)画面41にて売上予測額を入力するため、図6(e)の「自己実施あり106」は、使用実績だけでなく使用予定も含む意味である。本実施形態では、式3のフリーキャッシュフローCtを各売上予測額1000万円の10%、寄与率Kを0.25(25%)、割引率rを0.06(6%)とする。また、図6(f)のとおり使用実績「他社にライセンス108」のみチェックして「次へ107」をタップすると、画面41が図7(i)に移行し、図示のとおりライセンス料率例えば「3」%を入力し、1年目、2年目、3年目、4年目及び5年目の各売上予測額例えば「1000」万円を入力して「算定スタート112」すると、算定ルールテーブル13aに記憶された前記式4の算定式に基づき、第3評価額(ロイヤルティ免税法による商標権の現在価値V2)839,356円(図示せず)が得られる。本実施形態では、式4の各年の売上予測額Btを1000万円、ライセンス料率Lを0.03(3%)、実効税率Eを0.3358(33.58%)、割引率rを0.06(6%)とする。
【0048】
権利者端末40からの入力が、使用実績が有るかつ他に入力情報が有る第4入力情報のとき、評価装置10は、算定手段22によって第3評価額に係数を乗算した第4評価額を出力する(S35d)。即ち図7(g)のとおり、使用実績「自己実施106」と、商標の種類「文字104」をチェックし次へ107をタップすると、画面41が図7(h)に移行し、図示のとおり1年目、2年目、3年目、4年目及び5年目の各売上予測額例えば「1000」万円を入力し算定スタート110する。この結果、算定ルールテーブル13aに記憶された前記式3に基づき得られた第3評価額1,053,091円に、例えば4字商標の「文字」の係数「1.2」が乗算された第4評価額1,263,709円(図示せず)が得られる。本発明の商標評価額算定方法では、一般的な商標情報だけでなく、使用実績も評価額判断の材料として用いられるため、第1~第4評価額のうち何れか1つの適切な評価額が得られる。
【0049】
前記実施形態では、算定ルールテーブル13aを用いルールベースにより第1~第4評価額の何れかを算出したが、例えば機械学習により学習した算定モデル13bを用いてもよい。即ち、算定モデル13bは、入力情報又は商標データ(入力)に対する評価額のデータ(出力)を蓄積及び更新することにより、算定ルールテーブル13aを用いず又はそれと併用して、評価額を得ることができる。具体的には、学習した算定モデル13bは、権利者端末40から入力情報を受信した(S27)後、係数生成(S31)を省略して自動的に第1~第4評価額の何れかを出力し得る。
【0050】
評価装置10は、評価額が算定された商標権の商標情報を選択商標格納手段32から取得し、算定された評価額とその商標情報とを関連付けて評価額記憶手段34に記憶する(S37)。評価装置10は、図2に示す評価額送信手段23により、算定された評価額とその商標情報とを権利者端末40に送信する(S39)。
【0051】
以下、本発明の商標売買方法について図4図8及び図9を参照して説明する。
図4は、本発明による商標売買方法のフローチャートを示す。評価装置10は、権利者端末40に対し、評価額と共に又は評価額とは別に、評価額が算定された商標権を出品(売却)するか否かの確認を求める(S51)。権利者端末40は、出品確認の信号を受信し(S53)、評価額が算定された商標権について商標権者が出品を許可する場合、出品許可信号を評価装置10に送信する(S55)。このとき、評価額に限らず、評価額と異なる価格を入力して出品許可することもできる。即ち図8(j)画面41(権利者端末40が出品確認信号を受信した(S53)状態)にて「出品する113」をタップすると、図8(k)画面41に移行し、商標売却価格の欄114に例えば評価額「132600」円を自動又は手動により入力し、「出品する113」をタップして、出品許可信号と共に出品額を評価装置10に送信する(S55)。評価装置10は、図2に示す出品確認部24aにより権利者端末40から出品許可及び出品額を受信する(S57)。
【0052】
閲覧者端末50は、出品許可された商標権を閲覧者が閲覧したいとき、図9(l)に示す「ジャンルから探す」画面51から、例えば「飲食119」の項目をタップすると、評価装置10に対し出品商標閲覧要求を送信し(S59)、評価装置10は、閲覧要求受信部24bにより閲覧要求を受信する(S61)。評価装置10は、権利者端末40からの出品許可と閲覧者端末50からの閲覧要求との両方を受信した後、図2に示す出品額送信部24cにより、閲覧者端末50に対し出品額とその商標情報とを送信する(S63)。閲覧者端末50は、信号を受信し(S65)、図9(m)のとおり出品額121とその商標情報123を含む出品商標権リストを「商標一覧」画面51に表示する(S67)。これにより、閲覧者が閲覧者端末50から商標権を購入できる出品状態が成立する。出品状態では、例えば商標の更新期限が迫ると商標権価格を当初の出品額から減額する機能、広告を付した商標権の売却成立の確率が高まる機能(見易い上位に表示、他より大きく表示等)を評価装置10に設けてもよい。評価装置10は、出品許可と閲覧要求の両方を受信しても、対象商標が登録異議申立て、取消審判又は無効審判に係属中との商標情報又は商標データを、商標情報記憶手段31又は選択商標格納手段32から受けた場合、登録維持決定又は請求棄却審決が確定するまで、閲覧者端末50に対象商標権の出品額等を送信せずに出品状態が成立しない機能を設けてもよい(取消決定又は請求認容審決(取消若しくは無効)が確定した場合も当然に出品状態が成立しない)。
【0053】
閲覧者端末50の閲覧者は、閲覧者端末50に表示された出品状態の出品商標権リストから購入希望する商標権(図9(m)では商標「花畑」)を選択し(S69)、評価装置10は、信号を受信し(S71)、選択された対象商標権の表示を閲覧者端末50に指令する(S73)。閲覧者端末50は、対象商標「花畑」に関する各商標情報123a-123dを図9(n)の画面51に表示し(S75)、閲覧者は、対象商標権を購入する場合、「購入する125」をタップし、商標権購入を実行する(S77)。評価装置10は、閲覧者端末50から購入実行を受信し(S79)、当該商標権を所有する商標権者の権利者端末40に対し購入実行があった旨通知する。
【0054】
商標売買システム3及び売買方法の前記実施形態では、出品許可されている登録商標の閲覧要求を閲覧者端末50から受信する(S61)閲覧要求受信部24bを示すが、閲覧要求受信部24bは、登録商標、商品、役務、その他の商標情報に関する所望キーワードを閲覧者端末50から受け、記憶装置12の予約記憶手段(図示せず)に記憶してもよい。この場合、出品手段24の比較部(図示せず)は、予約記憶手段に記憶された所望キーワードと、出品確認部24aにて出品許可を得て評価額記憶手段34に記憶された商標権の商標情報とを比較し、両者が一致又は類似した場合、出品額送信部24cは、対象商標の商標情報及び出品額を閲覧者端末50に通知する(S63)。一方、両者が一致又は類似しない場合(即ち所望キーワードを含む商標情報を有する商標権が評価額記憶手段34に存在しない場合)、出品手段24の新商標提案部(図示せず)は、所望キーワードに基づき、また商標情報記憶手段31を照合して(例えば先行登録商標と同一又は類似商標を除外して)、1以上の新商標候補を提案し閲覧者端末50に送信してもよい。提案された新商標について閲覧者が商標登録出願を希望する場合、例えば、商標売買システム3は、連携された出願書類自動生成システムにより願書案を自動生成させて、閲覧者端末50に送信してもよい。提案された新商標について商標登録出願を希望しない場合、出品手段24の比較部は、その後定期又は非定期に、評価額記憶手段34を比較照合し続け、所望キーワードを含む商標情報を有する商標権が現れたとき、出品額送信部24cは、商標情報及び出品額を閲覧者端末50に通知する(S63)。また、前記全ての実施形態では、権利者端末40を商標権売手側の端末、閲覧者端末50を商標権買手側の端末としてのみ記載したが、共通のアプリケーションソフトウエアを使用すれば、スマートフォン等の一端末が、商標権買手側の端末(閲覧者端末)としても、商標権売手側の端末(権利者端末)としても機能し得る。
【0055】
本発明は、コンピュータを、商標評価額算定システム及び商標売買システムとして機能させるための商標評価額算定プログラム及び商標売買プログラムであってもよい。この場合、各手段及び各部が有する機能の処理内容はプログラムに記述されて、プログラムをコンピュータで実行することにより、各手段及び各部の処理がコンピュータ上で実現され得る。例えば、商標評価額算定プログラム及び商標売買プログラムを記憶する記憶装置12と、記憶装置12に接続されプログラムの処理動作を制御及び処理する処理装置11とを備える。記憶装置12は、例えば磁気記憶装置、光ディスク、光磁気記憶媒体、半導体メモリ等、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体を含む。更に、前記実施形態により詳述された商標評価額算定方法及び商標売買方法を、記憶装置に記憶された商標評価額算定プログラム及び商標売買プログラムで実行してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の商標評価額算定システム、算定方法及びプログラム、並びに商標売買システム、方法及びプログラムでは、商標権だけでなく、他の産業財産権の評価額算定及び売買にも利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1・・商標評価額算定システム、 3・・商標売買システム、 12・・記憶装置、 13a・・算定ルールテーブル、 13b・・算定モデル13b、 21・・算定要求受信手段、 22・・算定手段、 23・・評価額送信手段、 24・・出品手段、 40・・権利者端末、 50・・閲覧者端末、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9