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特開2024-25259オーディオシステム、オーディオ装置、プログラム、およびオーディオ再生方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025259
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】オーディオシステム、オーディオ装置、プログラム、およびオーディオ再生方法
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/178 20060101AFI20240216BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20240216BHJP
   H04S 7/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
G10K11/178 110
H04R3/00 310
H04S7/00 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128564
(22)【出願日】2022-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】309039716
【氏名又は名称】株式会社ディーアンドエムホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100104570
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 光弘
(72)【発明者】
【氏名】忠藤 華子
【テーマコード(参考)】
5D061
5D162
5D220
【Fターム(参考)】
5D061FF02
5D162CA01
5D162CA21
5D162DA02
5D162EG03
5D220AA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ユーザが室内で好みの音量でオーディオを聴取しても、室外への音漏れを抑制するオーディオシステム、オーディオ装置その再生方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】マルチチャンネルオーディオ装置1は、各チャンネルのオーディオ再生信号を各再生スピーカ2から音声出力するとともに、これらのオーディオ再生信号の逆位相信号を逆位相スピーカ3から音声出力する。各再生スピーカ2から音声出力されるオーディオ再生信号の、逆位相スピーカ3の設置位置における減衰率および遅延時間を予め記憶しておき、オーディオ再生に際して、各チャンネルのオーディオ再生信号の逆位相信号を、それぞれの減衰率に基づいて減衰させるとともに、それぞれの遅延時間に基づいて遅延させ、逆位相スピーカ3から音声出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーディオ再生信号を出力するオーディオ装置と、前記オーディオ装置より出力されたオーディオ再生信号を音声出力する再生スピーカと、を備えたオーディオシステムであって、
逆位相スピーカをさらに備え、
前記オーディオ装置は、
前記オーディオ再生信号の逆位相信号を生成する逆位相信号生成手段と、
前記再生スピーカから音声出力されるオーディオ再生信号の、前記逆位相スピーカの設置位置における減衰率および遅延時間を記憶する設置位置情報記憶手段と、
前記逆位相信号生成手段により生成された前記逆位相信号を、前記設置位置情報記憶手段に記憶されている前記減衰率に基づいて減衰させるとともに、当該設置位置情報記憶手段に記憶されている前記遅延時間に基づいて遅延させて前記逆位相スピーカに出力する逆位相信号出力手段と、を有し、
前記逆位相スピーカは、
前記オーディオ装置より出力された前記逆位相信号を音声出力する
ことを特徴とするオーディオシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のオーディオシステムであって、
前記オーディオ装置を遠隔操作するワイヤレス端末をさらに備え、
前記ワイヤレス端末は、
内蔵あるいは外付けのマイクと、
前記再生スピーカから音声出力された前記オーディオ再生信号を前記マイクで収音して、前記逆位相スピーカの設置位置における当該オーディオ再生信号の音量レベルおよび到達タイミングを測定する測定手段と、
前記測定手段による測定結果を前記オーディオ装置に送信する測定結果送信手段と、を有し、
前記オーディオ装置は、
前記再生スピーカからの前記オーディオ再生信号の出力音量レベルおよび出力タイミングと、前記ワイヤレス端末より受信した測定結果とに基づいて、前記逆位相スピーカの設置位置における当該オーディオ再生信号の減衰率および遅延時間を算出し、前記設置位置情報記憶手段に記憶する算出手段をさらに有する
ことを特徴とするオーディオシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のオーディオシステムであって、
前記オーディオ装置に接続されたマイクをさらに備え
前記オーディオ装置は、
前記再生スピーカから音声出力されたオーディオ再生信号を前記マイクで収音して、前記逆位相スピーカの設置位置における当該オーディオ再生信号の音量レベルおよび到達タイミングを測定する測定手段と、
前記再生スピーカからの前記オーディオ再生信号の出力音量レベルおよび出力タイミングと、前記測定手段による測定結果とに基づいて、前記逆位相スピーカの設置位置における、当該オーディオ再生信号の減衰率および遅延時間を算出し、前記設置位置情報記憶手段に記憶する算出手段と、をさらに有する
ことを特徴とするオーディオシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のオーディオシステムであって、
前記逆位相スピーカは、ワイヤレススピーカであり、
前記マイクは、前記逆位相スピーカに内蔵されている
ことを特徴とするオーディオシステム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のオーディオシステムであって、
前記逆位相信号出力手段は、
前記逆位相スピーカに出力する前記逆位相信号の高周波成分をカットするローパスフィルタを有する
ことを特徴とするオーディオシステム。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のオーディオシステムであって、
前記オーディオ装置は、マルチチャンネルオーディオを再生して、チャンネル毎に前記オーディオ再生信号を出力し、
前記再生スピーカは、前記チャンネル毎に設けられており、
前記逆位相信号生成手段は、前記チャンネル毎に前記オーディオ再生信号の逆位相信号を生成し、
前記設置位置情報記憶手段は、前記再生スピーカ毎に、当該再生スピーカから音声出力されるオーディオ再生信号の、前記逆位相スピーカの設置位置における減衰率および遅延時間を記憶し、
前記逆位相信号出力手段は、前記再生スピーカ毎に、当該再生スピーカに対応するチャンネルについて前記逆位相信号生成手段により生成された逆位相信号を、前記設置位置情報記憶手段に当該再生スピーカに対応付けて記憶されている前記減衰率に基づいて減衰させるとともに、当該設置位置情報記憶手段に当該再生スピーカに対応付けて記憶されている前記遅延時間に基づいて遅延させ、当該チャンネル毎の逆位相信号を合成し出力する
ことを特徴とするオーディオシステム。
【請求項7】
請求項5に記載のオーディオシステムであって、
前記オーディオ装置は、マルチチャンネルオーディオを再生して、チャンネル毎に前記オーディオ再生信号を出力し、
前記再生スピーカは、前記チャンネル毎に設けられており、
前記逆位相信号生成手段は、前記チャンネル毎に前記オーディオ再生信号の逆位相信号を生成し、
前記設置位置情報記憶手段は、前記再生スピーカ毎に、当該再生スピーカから音声出力されるオーディオ再生信号の、前記逆位相スピーカの設置位置における減衰率および遅延時間を記憶し、
前記逆位相信号出力手段は、前記再生スピーカ毎に、当該再生スピーカに対応するチャンネルについて前記逆位相信号生成手段により生成された逆位相信号を、前記設置位置情報記憶手段に当該再生スピーカに対応付けて記憶されている前記減衰率に基づいて減衰させるとともに、当該設置位置情報記憶手段に当該再生スピーカに対応付けて記憶されている前記遅延時間に基づいて遅延させ、当該チャンネル毎の逆位相信号を合成し出力する
ことを特徴とするオーディオシステム。
【請求項8】
オーディオ再生信号を再生スピーカに出力するオーディオ装置であって、
前記オーディオ再生信号の逆位相信号を生成する逆位相信号生成手段と、
前記再生スピーカから音声出力されるオーディオ再生信号の、前記再生スピーカとは別個に設けられた逆位相スピーカの設置位置における減衰率および遅延時間を記憶する設置位置情報記憶手段と、
前記逆位相信号生成手段により生成された前記逆位相信号を、前記設置位置情報記憶手段に記憶されている前記減衰率に基づいて減衰させるとともに、当該設置位置情報記憶手段に記憶されている前記遅延時間に基づいて遅延させて前記逆位相スピーカに出力する逆位相信号出力手段と、を有する
ことを特徴とするオーディオ装置。
【請求項9】
請求項8に記載のオーディオ装置であって、
前記再生スピーカから音声出力された前記オーディオ再生信号の、前記逆位相スピーカの設置位置における音量レベルおよび到達タイミングを測定する測定手段と、
前記再生スピーカからの前記オーディオ再生信号の音量レベルおよび出力タイミングと、前記測定手段による測定結果とに基づいて、前記逆位相スピーカの設置位置における当該オーディオ再生信号の減衰率および遅延時間を算出し、前記設置位置情報記憶手段に記憶する算出手段と、をさらに有する
【請求項10】
請求項8または9に記載のオーディオ装置であって、
前記逆位相信号出力手段は、
前記逆位相スピーカに出力する前記逆位相信号の高周波成分をカットするローパスフィルタを有する
ことを特徴とするオーディオ装置。
【請求項11】
請求項8または9に記載のオーディオ装置であって、
前記オーディオ装置は、マルチチャンネルオーディオを再生して、チャンネル毎に前記オーディオ再生信号を当該チャンネルに対応する前記再生スピーカから出力し、
前記逆位相信号生成手段は、前記チャンネル毎に前記オーディオ再生信号の逆位相信号を生成し、
前記設置位置情報記憶手段は、前記再生スピーカ毎に、当該再生スピーカから音声出力されたオーディオ再生信号の、前記逆位相スピーカの設置位置における減衰率および遅延時間を記憶し、
前記逆位相信号出力手段は、前記再生スピーカ毎に、当該再生スピーカに対応するチャンネルについて前記逆位相信号生成手段により生成された逆位相信号を、前記設置位置情報記憶手段に当該再生スピーカに対応付けて記憶されている減衰率に基づいて減衰させるとともに、当該設置位置情報記憶手段に当該再生スピーカに対応付けて記憶されている遅延時間に基づいて遅延させ、当該チャンネル毎の逆位相信号を合成し出力する
ことを特徴とするオーディオ装置。
【請求項12】
請求項10に記載のオーディオ装置であって、
前記オーディオ装置は、マルチチャンネルオーディオを再生して、チャンネル毎に前記オーディオ再生信号を当該チャンネルに対応する前記再生スピーカから出力し、
前記逆位相信号生成手段は、前記チャンネル毎に前記オーディオ再生信号の逆位相信号を生成し、
前記設置位置情報記憶手段は、前記再生スピーカ毎に、当該再生スピーカから音声出力されたオーディオ再生信号の、前記逆位相スピーカの設置位置における減衰率および遅延時間を記憶し、
前記逆位相信号出力手段は、前記再生スピーカ毎に、当該再生スピーカに対応するチャンネルについて前記逆位相信号生成手段により生成された逆位相信号を、前記設置位置情報記憶手段に当該再生スピーカに対応付けて記憶されている減衰率に基づいて減衰させるとともに、当該設置位置情報記憶手段に当該再生スピーカに対応付けて記憶されている遅延時間に基づいて遅延させ、当該チャンネル毎の逆位相信号を合成し出力する
ことを特徴とするオーディオ装置。
【請求項13】
オーディオ再生信号を再生スピーカに出力するオーディオ装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、
前記オーディオ再生信号の逆位相信号を生成する逆位相信号生成手段、
前記再生スピーカから音声出力されるオーディオ再生信号の、前記再生スピーカとは別個に設けられた逆位相スピーカの設置位置における減衰率および遅延時間を記憶する設置位置情報記憶手段、および
前記逆位相信号生成手段により生成された前記逆位相信号を、前記設置位置情報記憶手段に記憶されている前記減衰率に基づいて減衰させるとともに、当該設置位置情報記憶手段に記憶されている前記遅延時間に基づいて遅延させて前記逆位相スピーカに出力する逆位相信号出力手段として、
前記コンピュータを機能させる
ことを特徴とするプログラム。
【請求項14】
オーディオ再生信号を出力するオーディオ装置と、前記オーディオ装置より出力されたオーディオ再生信号を音声出力する再生スピーカと、を備えたオーディオシステムによるオーディオ再生方法であって、
逆位相スピーカを設置し、
前記オーディオ装置は、
前記オーディオ再生信号の逆位相信号を生成し、
予め記憶された、前記再生スピーカから音声出力されたオーディオ再生信号の、前記逆位相スピーカの設置位置における減衰率および遅延時間に基づいて、前記逆位相信号を減衰させるとともに遅延させて出力し、
前記逆位相スピーカは、
前記オーディオ装置より出力された前記逆位相信号を音声出力する
ことを特徴とするオーディオ再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオ再生技術に関し、特にオーディオ再生信号の音漏れ抑制技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のスピーカを用いてマルチチャンネルオーディオコンテンツを再生するマルチチャンネルオーディオ装置が知られている。例えば、特許文献1に記載のマルチチャンネルオーディオ装置は、マルチチャンネルオーディオコンテンツのチャンネル毎に、オーディオ再生信号を再生して増幅し、このチャンネルに対応するスピーカから出力している。
【0003】
また、マルチチャンネルオーディオ装置のなかには、マルチチャンネルオーディオコンテンツのチャンネル毎にオーディオ再生信号の音響プロファイル情報(出力タイミング、音量レベル等)を設定できるものがある。例えば、特許文献2に記載のマルチチャンネルオーディオ装置は、マルチチャンネルオーディオコンテンツのチャンネル毎に、このチャンネルに対応するスピーカから出力されたテスト信号を、リスニングポイントに設置された専用の測定マイクで収音し、その遅延時間および減衰率を測定する。そして、マルチチャンネルオーディオコンテンツのチャンネル毎に、このチャンネルに対応するスピーカから出力されるオーディオ再生信号の音響特性がリスニングポイントで最適となるように音響プロファイル情報を設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-367290号公報
【特許文献2】特開2000-354300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に記載のような従来のマルチチャンネルオーディオ装置によれば、ユーザは、複数のスピーカから出力される各チャンネルのオーディオ再生信号によって、臨場感のあるサウンドを楽しむことができる。特に、特許文献2に記載のマルチチャンネルオーディオ装置によれば、リスニングポイントで最適なサウンドを楽しむことができる。
【0006】
しかしながら、室内で、ユーザが好みの音量レベルでオーディオを聴取すると、室外に音漏れしてしまい、室外の人に不快な思いをさせてしまう可能性がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ユーザが室内で好みの音量レベルでオーディオを聴取しても室外への音漏れを抑制することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明では、オーディオ再生信号を再生スピーカから音声出力するとともに、このオーディオ再生信号の逆位相信号を逆位相スピーカから音声出力する。ここで、再生スピーカから音声出力されるオーディオ再生信号の、逆位相スピーカの設置位置における減衰率および遅延時間を予め記憶しておく。そして、再生スピーカからのオーディオ再生信号の音声出力に際して、このオーディオ再生信号の逆位相信号を、予め記憶されている減衰率に基づいて減衰させるとともに、予め記憶されている遅延時間に基づいて遅延させて、逆位相スピーカから音声出力する。
【0009】
例えば、本発明のオーディオシステムは、
オーディオ再生信号を出力するオーディオ装置と、前記オーディオ装置より出力されたオーディオ再生信号を音声出力する再生スピーカと、を備えたオーディオシステムであって、
逆位相スピーカをさらに備え、
前記オーディオ装置は、
前記オーディオ再生信号の逆位相信号を生成する逆位相信号生成手段と、
前記再生スピーカから音声出力されるオーディオ再生信号の、前記逆位相スピーカの設置位置における減衰率および遅延時間を記憶する設置位置情報記憶手段と、
前記逆位相信号生成手段により生成された前記逆位相信号を、前記設置位置情報記憶手段に記憶されている前記減衰率に基づいて減衰させるとともに、当該設置位置情報記憶手段に記憶されている前記遅延時間に基づいて遅延させて前記逆位相スピーカに出力する逆位相信号出力手段と、を有し、
前記逆位相スピーカは、
前記オーディオ装置より出力された前記逆位相信号を音声出力する。
【0010】
また、例えば、本発明のオーディオ装置は、
オーディオ再生信号を再生スピーカに出力するオーディオ装置であって、
前記オーディオ再生信号の逆位相信号を生成する逆位相信号生成手段と、
前記再生スピーカから音声出力されるオーディオ再生信号の、前記再生スピーカとは別個に設けられた逆位相スピーカの設置位置における減衰率および遅延時間を記憶する設置位置情報記憶手段と、
前記逆位相信号生成手段により生成された前記逆位相信号を、前記設置位置情報記憶手段に記憶されている前記減衰率に基づいて減衰させるとともに、当該設置位置情報記憶手段に記憶されている前記遅延時間に基づいて遅延させて前記逆位相スピーカに出力する逆位相信号出力手段と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、再生スピーカから音声出力されるオーディオ再生信号の、逆位相スピーカの設置位置における減衰率および遅延時間を予め記憶しておき、再生スピーカからのオーディオ再生信号の音声出力に際して、このオーディオ再生信号の逆位相信号を、予め記憶されている減衰率に基づいて減衰させるとともに、予め記憶されている遅延時間に基づいて遅延させ、逆位相スピーカから音声出力する。このため、再生スピーカから音声出力されるオーディオ再生信号を逆位相スピーカの設置位置において逆位相信号により相殺することができる。
【0012】
したがって、本発明によれば、外部への音漏れが発生すると考えられる場所に逆位相スピーカを設置することにより、ユーザが室屋内で好みの音量レベルでオーディオを聴取しても室外への音漏れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施の形態に係るマルチチャンネルオーディオシステムの概略構成図である。
図2図2は、マルチチャンネルオーディオシステムの設置位置情報設定動作を説明するためのシーケンス図である。
図3図3は、マルチチャンネルオーディオシステムの設置位置情報設定動作を説明するためのシーケンス図であり、図2の続きである。
図4図4は、マルチチャンネルオーディオ装置1の概略機能構成図である。
図5図5は、マルチチャンネルオーディオ装置1の設置位置情報設定処理を説明するためのフロー図である。
図6図6は、マルチチャンネルオーディオ装置1のオーディオ再生処理における信号の流れを説明するための図であり、図4に示す機能構成図の一部を示している。
図7図7は、ワイヤレス端末4の概略機能構成図である。
図8図8は、ワイヤレス端末4の設置位置情報設定処理を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態に係るマルチチャンネルオーディオシステムの概略構成図である。
【0016】
図示するように、本実施の形態に係るマルチチャンネルオーディオシステムは、アクセスポイント7およびWAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)等のネットワーク6を介してメディアサーバ5に接続されたマルチチャンネルオーディオ装置1と、チャンネル毎に設けられた再生スピーカ2-1~2-5(以下、単に再生スピーカ2とも呼ぶ)と、逆位相スピーカ3と、アクセスポイント7を介してマルチチャンネルオーディオ装置1に無線接続されたワイヤレス端末4と、を備えて構成されている。
【0017】
マルチチャンネルオーディオ装置1は、メディアサーバ5からマルチチャンネルオーディオコンテンツをダウンロードし、ダウンロードしたマルチチャンネルオーディオコンテンツをチャンネル毎にオーディオ再生信号に再生して再生スピーカ2-1~2-5から出力する。
【0018】
本実施の形態では、5chのマルチチャンネルオーディオコンテンツを再生する場合を例示しており、C(Center)チャンネル、FR(Front Right)チャンネル、FL(Front Left)チャンネル、SR(Surround Right)チャンネル、およびSL(Surround Left)チャンネルに対応した5台の再生スピーカ2-1~2-5がマルチチャンネルオーディオ装置1に接続されている。
【0019】
逆位相スピーカ3は、マルチチャンネルオーディオシステムが設置されている部屋の壁面、窓、ドア付近等、室外への音漏れが発生する可能性がある場所に設置される。
【0020】
マルチチャンネルオーディオ装置1は、マルチチャンネルオーディオコンテンツのチャンネル毎にオーディオ再生信号の逆位相信号を生成する。そして、このチャンネル毎に、対応する再生スピーカ2から音声出力されたオーディオ再生信号の、逆位相スピーカ3の設置位置における減衰率および遅延時間(以下、これらを設置位置情報と呼ぶ)に基づいて、逆位相信号の出力音量レベルおよび出力タイミングを調整し、これらの逆位相信号を合成して逆位相スピーカ3から音声出力する。これにより、逆位相スピーカ3の設置位置付近において、各チャンネルの再生スピーカ2から音声出力されたオーディオ再生信号を相殺し、室外への音漏れを抑制する。
【0021】
ワイヤレス端末4は、マイクあるいはマイク入力端子を備えたスマートホン、タブレットPC(Personal Computer)等であり、マルチチャンネルオーディオ装置1をリモート操作するためのコントローラとして機能する。また、ワイヤレス端末4は、逆位相スピーカ3の設置位置において、マルチチャンネルオーディオコンテンツのチャンネル毎に、対応する再生スピーカ2から音声出力されたオーディオ再生信号の音量レベルおよび到達タイミングを測定し、それらの測定結果をマルチチャンネルオーディオ装置1に送信する。
【0022】
図2および図3は、マルチチャンネルオーディオシステムの設置位置情報設定動作を説明するためのシーケンス図である。
【0023】
まず、ユーザは、ワイヤレス端末4を携帯して逆位相スピーカ3の設置位置に移動し、そこで、ワイヤレス端末4に対して設置位置情報の設定操作を行う。ワイヤレス端末4は、ユーザから設置位置情報の設定操作を受け付けると(S100)、マルチチャンネルオーディオ装置1にCチャンネルテスト要求を送信する(S101)。これを受けて、マルチチャンネルオーディオ装置1は、Cチャンネルの再生スピーカ2-1にテスト用のオーディオ信号(以下、テスト信号と呼ぶ)を送信して(S102)、Cチャンネルの再生スピーカ2-1からテスト信号を音声出力する(S103)。ワイヤレス端末4は、内蔵マイクあるいはマイク入力端子に接続されたマイクにより、Cチャンネルの再生スピーカ2-1から音声出力されたテスト信号を収音し、その音量レベルおよび到達タイミングを測定する(S104)。
【0024】
つぎに、ワイヤレス端末4は、マルチチャンネルオーディオ装置1にFRチャンネルテスト要求を送信する(S105)。これを受けて、マルチチャンネルオーディオ装置1は、FRチャンネルの再生スピーカ2-2にテスト信号を送信して(S106)、FRチャンネルの再生スピーカ2-2からテスト信号を音声出力する(S107)。ワイヤレス端末4は、内蔵マイクあるいはマイク入力端子に接続されたマイクにより、FRチャンネルの再生スピーカ2-2から音声出力されたテスト信号を収音し、その音量レベルおよび到達タイミングを測定する(S108)。
【0025】
つぎに、ワイヤレス端末4は、マルチチャンネルオーディオ装置1にFLチャンネルテスト要求を送信する(S109)。これを受けて、マルチチャンネルオーディオ装置1は、FLチャンネルの再生スピーカ2-3にテスト信号を送信して(S110)、FLチャンネルの再生スピーカ2-3からテスト信号を音声出力する(S111)。ワイヤレス端末4は、内蔵マイクあるいはマイク入力端子に接続されたマイクにより、FLチャンネルの再生スピーカ2-3から音声出力されたテスト信号を収音し、その音量レベルおよび到達タイミングを測定する(S112)。
【0026】
つぎに、ワイヤレス端末4は、マルチチャンネルオーディオ装置1にSRチャンネルテスト要求を送信する(S113)。これを受けて、マルチチャンネルオーディオ装置1は、SRチャンネルの再生スピーカ2-4にテスト信号を送信して(S114)、SRチャンネルの再生スピーカ2-4からテスト信号を音声出力する(S115)。ワイヤレス端末4は、内蔵マイクあるいはマイク入力端子に接続されたマイクにより、SRチャンネルの再生スピーカ2-4から音声出力されたテスト信号を収音し、その音量レベルおよび到達タイミングを測定する(S116)。
【0027】
つぎに、ワイヤレス端末4は、マルチチャンネルオーディオ装置1にSLチャンネルテスト要求を送信する(S117)。これを受けて、マルチチャンネルオーディオ装置1は、SLチャンネルの再生スピーカ2-5にテスト信号を送信して(S118)、SLチャンネルの再生スピーカ2-5からテスト信号を音声出力する(S119)。ワイヤレス端末4は、内蔵マイクあるいはマイク入力端子に接続されたマイクにより、SLチャンネルの再生スピーカ2-5から音声出力されたテスト信号を収音し、その音量レベルおよび到達タイミングを測定する(S120)。
【0028】
それから、ワイヤレス端末4は、各チャンネルのテスト信号の音量レベルおよび到達タイミングの測定が完了すると、これらの測定結果を、逆位相スピーカ3の設置位置における各チャネルのテスト信号の音量レベルおよび到達タイミングとしてマルチチャンネルオーディオ装置1に送信する(S121)。これを受けて、マルチチャンネルオーディオ装置1は、チャンネル毎に、対応する再生スピーカ2の設置位置情報を算出する(S122)。具体的には、チャンネル毎に、対応する再生スピーカ2からのテスト信号の出力音量レベルと、逆位相スピーカ3の設置位置におけるテスト信号の音量レベル(測定結果)とに基づいて、逆位相スピーカ3の設置位置におけるテスト信号の減衰率を算出する。また、チャンネル毎に、再生スピーカ2からのテスト信号の出力タイミングと、逆位相スピーカ3の設置位置におけるテスト信号の到達タイミング(測定結果)とに基づいて、逆位相スピーカ3の設置位置におけるテスト信号の遅延時間を算出する。
【0029】
それから、マルチチャンネルオーディオ装置1は、チャンネル毎に、テスト信号の減衰率および遅延時間を、このチャンネルに対応する再生スピーカ2の設置位置情報として登録する(S123)。
【0030】
なお、図2および図3に示す例では、Cチャンネル、FRチャンネル、FLチャンネル、SRチャンネル、およびSLチャンネルの順にテスト要求を行って、逆位相スピーカ3の設置位置におけるテスト信号の音量レベルおよび到達タイミングの測定を実施しているが、測定の順番はこれに限定されない。マルチチャンネルオーディオコンテンツのすべてのチャンネルについて、逆位相スピーカ3の設置位置におけるテスト信号の音量レベルおよび到達タイミングを測定できれば、複数の再生スピーカ2に対してどのような順番で測定が実施されてもよい。
【0031】
つぎに、本実施の形態に係るマルチチャンネルオーディオシステムを構成するマルチチャンネルオーディオ装置1およびワイヤレス端末4の詳細について説明する。
【0032】
なお、再生スピーカ2および逆位相スピーカ3には既存の一般的なスピーカを用いることができるので、その詳細な説明を省略する。
【0033】
まず、マルチチャンネルオーディオ装置1の詳細を説明する。
【0034】
図4は、マルチチャンネルオーディオ装置1の概略機能構成図である。
【0035】
図示するように、マルチチャンネルオーディオ装置1は、無線ネットワークインターフェース部100と、再生スピーカ接続部101と、逆位相スピーカ接続部102と、要求受信部103と、楽曲取得部104と、オーディオ再生部105と、逆位相信号生成部106と、設置位置情報記憶部107と、テスト信号出力部108と、測定結果受信部109と、設置位置情報算出部110と、逆位相信号出力部111と、主制御部112と、を有する。
【0036】
無線ネットワークインターフェース部100は、アクセスポイント7に無線接続するためのインターフェースである。
【0037】
再生スピーカ接続部101は、図示していないが、チャンネル毎に対応する再生スピーカ2を接続するための接続端子を有する。本実施の形態では、Cチャンネル対応の再生スピーカ2-1を接続するためのCチャンネル接続端子と、FRチャンネル対応の再生スピーカ2-2を接続するためのFRチャンネル接続端子と、FLチャンネル対応の再生スピーカ2-3を接続するためのFLチャンネル接続端子と、SRチャンネル対応の再生スピーカ2-4を接続するためのSRチャンネル接続端子と、SLチャンネル対応の再生スピーカ2-5を接続するためのSLチャンネル接続端子と、を有している。
【0038】
逆位相スピーカ接続部102は、図示していないが、逆位相スピーカ3を接続するための接続端子を有する。
【0039】
要求受信部103は、無線ネットワークインターフェース部100を介してワイヤレス端末4から各種要求を受け付ける。
【0040】
楽曲取得部104は、要求受信部103がワイヤレス端末4から受け付けた楽曲取得要求に従い、無線ネットワークインターフェース部100を介してメディアサーバ5にアクセスし、メディアサーバ5からマルチチャンネルオーディオコンテンツをダウンロードする。
【0041】
オーディオ再生部105は、楽曲取得部104によってダウンロードされたマルチチャンネルオーディオコンテンツを複数チャンネル(本実施の形態では、FRチャンネル、FLチャンネル、Cチャンネル、SRチャンネル、およびSLチャンネル)のオーディオ再生信号に再生する。そして、チャンネル毎に、そのオーディオ再生信号を、再生スピーカ接続部101を介して、対応する再生スピーカ2から音声出力する。
【0042】
逆位相信号生成部106は、チャンネル毎に、オーディオ再生部105によって再生されたオーディオ再生信号の逆位相信号を生成する。
【0043】
設置位置情報記憶部107には、再生スピーカ2毎に設置位置情報(再生スピーカ2から音声出力されるオーディオ信号の、逆位相スピーカ3の設置位置における減衰率および遅延時間)が記憶される。
【0044】
テスト信号出力部108は、要求受信部103がワイヤレス端末4から受け付けたテスト要求に従い、再生スピーカ接続部101を介して、このテスト要求で指定されているチャンネルに対応する再生スピーカ2からテスト信号を出力する。
【0045】
測定結果受信部109は、無線ネットワークインターフェース部100を介してワイヤレス端末4から、各再生スピーカ2から音声出力されたテスト信号の、逆位相スピーカ3の設置位置における音量レベルおよび到達タイミングを含む測定結果を受信する。
【0046】
設置位置情報算出部110は、再生スピーカ2毎に、再生スピーカ2からのテスト信号の出力音量レベルおよび出力タイミングと、測定結果受信部109により受信された測定結果に含まれている、逆位相スピーカ3の設置位置におけるテスト信号の音量レベルおよび到達タイミングとに基づいて、設置位置情報を算出する。具体的には、それぞれの再生スピーカ2について、テスト信号の出力音量レベルと、逆位相スピーカ3の設置位置におけるテスト信号の音量レベル(測定結果)との比率に基づいて、逆位相スピーカ3の設置位置におけるテスト信号の減衰率を算出する。また、それぞれの再生スピーカ2について、テスト信号の出力タイミングと、逆位相スピーカ3の設置位置におけるテスト信号の到達タイミング(測定結果)との差分に基づいて、逆位相スピーカ3の設置位置におけるテスト信号の遅延時間を算出する。また、設置位置情報算出部110は、再生スピーカ2毎に算出したテスト信号の減衰率および遅延時間を、設置位置情報として、対応する再生スピーカ2に紐付けて設置位置情報記憶部107に記憶する。
【0047】
逆位相信号出力部111は、再生スピーカ2毎に、逆位相信号生成部106によって生成された、対応するチャンネルの逆位相信号の出力音量レベルおよび出力タイミングを、この再生スピーカ2に紐付けられて設置位置情報記憶部107に記憶された設置位置情報に基づいて調整する。具体的には、再生スピーカ2毎に、対応するチャンネルの逆位相信号を、この再生スピーカ2に紐付けられて設置位置情報記憶部107に記憶された設置位置情報に含まれる減衰率に従って減衰させるとともに、この再生スピーカ2に紐付けられて設置位置情報記憶部107に記憶された設置位置情報に含まれる遅延時間に従って遅延させる。また、逆位相信号出力部111は、出力音量レベルおよび出力タイミングが調整されたすべてのチャネルの逆位相信号を合成し、この合成逆位相信号を、逆位相スピーカ接続部102を介して逆位相スピーカ3から出力する。
【0048】
そして、主制御部112は、マルチチャンネルオーディオ装置1の各部100~111を統括的に制御する。
【0049】
なお、図4に示すマルチチャンネルオーディオ装置1の機能構成は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積ロジックICによりハード的に実現されるものでもよいし、あるいはDSP(Digital Signal Processor)等の計算機によりソフトウエア的に実現されるものでもよい。または、CPU(Central Processing Unit)と、メモリと、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等の補助記憶装置と、無線LANアダプタ等の無線通信装置と、を備えたPC(Personal Computer)等の汎用コンピュータにおいて、CPUが所定のプログラムを補助記憶装置からメモリ上にロードして実行することによりプロセスとして実現されるものでもよい。
【0050】
図5は、マルチチャンネルオーディオ装置1の設置位置情報設定処理を説明するためのフロー図である。
【0051】
要求受信部103は、無線ネットワークインターフェース部100を介してワイヤレス端末4からテスト要求を受信すると(S200でYES)、このテスト要求を主制御部112に出力する。これを受けて、主制御部112は、このテスト要求で指定されたチャンネルに対応する再生スピーカ2に対するテスト信号の出力をテスト信号出力部108に指示する。テスト信号出力部108は、再生スピーカ接続部101を介して、主制御部112より指示された再生スピーカ2にテスト信号を送信して、この再生スピーカ2からテスト信号を音声出力する(S201)。
【0052】
また、テスト信号出力部108は、この再生スピーカ2からのテスト信号の出力音量レベルおよび出力タイミングを主制御部112に通知する。これを受けて、主制御部112は、テスト信号出力部108から通知された出力音量レベルおよび出力タイミングを、テスト要求で指定されたチャンネルに対応する再生スピーカ2に紐付けて記憶する(S202)。
【0053】
つぎに、主制御部112は、再生スピーカ接続部101に接続されたすべての再生スピーカ2について、対応するチャンネルの指定を伴うテスト要求を受信したか否かを判断する(S203)。一部の再生スピーカ2について、対応するチャンネルの指定を伴うテスト要求を受信していないならば(S203でNO)、S200に戻り、すべての再生スピーカ2について、対応するチャンネルの指定を伴うテスト要求を受信しているならば(S203でYES)、S204に進む。
【0054】
S204において、測定結果受信部109は、各再生スピーカ2から音声出力したテスト信号についての測定結果(逆位相スピーカ3の設置位置における各チャネルのテスト信号の音量レベルおよび到達タイミング)を、無線ネットワークインターフェース部100を介してワイヤレス端末4から受信すると(S204でYES)、これらの測定結果を主制御部112に出力する。
【0055】
これを受けて、主制御部112は、各再生スピーカ2から音声出力したテスト信号についての測定結果を、各再生スピーカ2に紐付けて記憶している出力音量レベルおよび出力タイミングとともに設置位置情報算出部110に通知して、各再生スピーカ2の設置位置情報の算出を指示する。これを受けて、設置位置情報算出部110は、各再生スピーカ2の設置位置情報を算出する。具体的には、再生スピーカ2毎に、テスト信号の出力音量レベルと、逆位相スピーカ3の設置位置におけるテスト信号の音量レベル(測定結果)との比率に基づいて、逆位相スピーカ3の設置位置におけるテスト信号の減衰率を算出するとともにテスト信号の出力タイミングと、逆位相スピーカ3の設置位置におけるテスト信号の到達タイミング(測定結果)との差分に基づいて、逆位相スピーカ3の設置位置におけるテスト信号の遅延時間を算出する。それから、設置位置情報算出部110は、再生スピーカ2毎に算出したテスト信号の減衰率および遅延時間を、設置位置情報として、対応する再生スピーカ2に紐付けて設置位置情報記憶部107に記憶する(S205)。
【0056】
図6は、マルチチャンネルオーディオ装置1のオーディオ再生処理における信号の流れを説明するための図であり、図4に示す機能構成図の一部を示している。
【0057】
まず、主制御部112は要求受信部103を介してワイヤレス端末4から受け付けたオーディオ再生要求に従い、楽曲取得部104によりメディアサーバ5からダウンロードされ、このオーディオ再生要求で指定されたマルチチャンネルオーディオコンテンツをオーディオ再生部105に出力する(S300)。
【0058】
つぎに、オーディオ再生部105は、主制御部112から入力されたマルチチャンネルオーディオコンテンツを複数チャンネル(本実施の形態では、FRチャンネル、FLチャンネル、Cチャンネル、SRチャンネル、およびSLチャンネル)のオーディオ再生信号に再生する。そして、複数チャンネルのオーディオ再生信号を再生スピーカ接続部101および逆位相信号生成部106に出力する(S301、S302)。
【0059】
つぎに、再生スピーカ接続部101は、オーディオ再生部105から入力された複数チャンネルのオーディオ再生信号を、それぞれ対応するチャンネルの再生スピーカ2に出力して(S303)、この再生スピーカ2から音声出力する。
【0060】
一方、逆位相信号生成部106は、オーディオ再生部105から入力された複数チャンネルのオーディオ再生信号それぞれの逆位相信号を生成して逆位相信号出力部111に出力する(S304)。これを受けて、逆位相信号出力部111は、逆位相信号生成部106から入力された逆位相信号の出力音量レベルおよび出力タイミングを、それぞれの逆位相信号のチャンネルに対応する再生スピーカ2に紐付けられて設置位置情報記憶部107に記憶された設置位置情報に従って調整する。具体的には、再生スピーカ2毎に、対応するチャンネルの逆位相信号を、この再生スピーカ2に紐付けられた設置位置情報に含まれる減衰率に従って減衰させるとともに、この設置位置情に含まれる遅延時間に従って遅延させる。それから、逆位相信号出力部111は、出力音量レベルおよび出力タイミングが調整されたすべてのチャネルの逆位相信号を合成し、この合成逆位相信号を逆位相スピーカ接続部102に出力する(S305)。
【0061】
これを受けて、逆位相スピーカ接続部102は、合成逆位相信号を逆位相スピーカ3に出力して(S306)、逆位相スピーカ3から音声出力する。
【0062】
つぎに、ワイヤレス端末4の詳細について説明する。
【0063】
図7は、ワイヤレス端末4の概略機能構成図である。
【0064】
図示するように、ワイヤレス端末4は、無線ネットワークインターフェース部400と、マンマシンインターフェース部401と、各種要求送信部402と、収音部403と、測定部404と、測定結果送信部405と、主制御部406と、を有する。
【0065】
無線ネットワークインターフェース部400は、アクセスポイント7に無線接続するためのインターフェースである。
【0066】
マンマシンインターフェース部401は、ユーザに情報を表示したり、ユーザから各種操作を受け付けたりするためのインターフェースであり、タッチパネル等の入出力装置を有している。
【0067】
各種要求送信部402は、マンマシンインターフェース部401を介してユーザから受け付けた各種操作に従い、無線ネットワークインターフェース部400を介してマルチチャンネルオーディオ装置1に、チャンネルの指定を伴うテスト要求、楽曲名の指定を伴うオーディオ再生要求等の各種要求を送信する。
【0068】
収音部403は、各種要求送信部402がマルチチャンネルオーディオ装置1にテスト要求を送信した場合に、このテスト要求で指定されているチャンネルに対応する再生スピーカ2から音声出力されたテスト信号を、自ワイヤレス端末4の内蔵マイクあるいはマイク入力端子に接続されたマイクにより収音する。
【0069】
測定部404は、収音部403により集音されたテスト信号の音量レベルおよび到達タイミングを測定する。
【0070】
測定結果送信部405は、無線ネットワークインターフェース部400を介してマルチチャンネルオーディオ装置1に、測定部404により測定された測定結果を送信する。
【0071】
そして、主制御部406は、ワイヤレス端末4の各部400~405を統括的に制御する。
【0072】
なお、図7に示すワイヤレス端末4の機能構成は、CPUと、メモリと、フラッシュメモリ等の補助記憶装置と、無線LANアダプタ等の無線通信装置と、マイクと、スピーカと、を備えたスマートホン、タブレットPC等の携帯型コンピュータにおいて、CPUが所定のプログラムを実行することにより実現される。
【0073】
図8は、ワイヤレス端末4の設置位置情報設定処理を説明するためのフロー図である。
【0074】
このフローは、マンマシンインターフェース部401がユーザから設置位置情報の設定操作を受け付けることにより開始する。
【0075】
まず、主制御部406は、マルチチャンネルオーディオ装置1に接続されている複数の再生スピーカ2が対応する複数チャンネルのうち、未指定のチャンネルを各種要求送信部402に通知してテスト要求の送信を指示する。これを受けて、各種要求送信部402は、無線ネットワークインターフェース部400を介してマルチチャンネルオーディオ装置1に、主制御部406から通知されたチャンネルの指定を伴うテスト要求を送信する(S400)。
【0076】
その後、このテスト要求で指定されたチャンネルに対応する再生スピーカ2からテスト信号が音声出力され、これを収音部403が収音すると(S401でYES)、測定部404は、収音部403に収音されたテスト信号の音量レベルおよび到達タイミングを測定する(S402)。そして、それらの測定結果(音量レベルおよび到達タイミング)を主制御部406に通知する。これを受けて、主制御部406は、測定部404より通知された測定結果を、S400で送信されたテスト要求で指定されているチャンネルに紐付けて記憶する(S403)。
【0077】
つぎに、主制御部406は、マルチチャンネルオーディオ装置1に接続されている複数の再生スピーカ2に対応する複数チャンネルのなかに、各種要求送信部402が送信したテスト要求で指定されていないチャンネルが存在するか否かを判断する(S404)。未指定のチャンネルがあるならば(S404でYES)、S400に戻る。一方、複数チャンネルのすべてを指定済みであり、未指定のチャンネルがないならば(S404でNO)、主制御部406は、複数のチャンネル各々のテスト信号についての測定結果を測定結果送信部405に通知する。これを受けて、測定結果送信部405は、無線ネットワークインターフェース部400を介してマルチチャンネルオーディオ装置1に、このマルチチャンネルオーディオ装置1に接続されている複数の再生スピーカ2が対応するチャンネル各々のテスト信号についての測定結果を送信する(S405)。
【0078】
以上、本発明の一実施の形態について説明した。
【0079】
本実施の形態では、再生スピーカ2毎に、この再生スピーカ2から音声出力されたテスト信号の、逆位相スピーカ3の設置位置における減衰率および遅延時間を、この再生スピーカ2の設置位置情報として記憶しておき、マルチチャンネルオーディオコンテンツの再生に際して、再生スピーカ2毎に、この再生スピーカ2から音声出力されるオーディオ再生信号の逆位相信号を、この再生スピーカ2の設置位置情報に含まれる減衰率に基づいて減衰させるとともに、この再生スピーカ2の設置位置情報に含まれる遅延時間に基づいて遅延させる。そして、音量レベルおよび出力タイミングが調整された逆位相信号を合成し、この合成逆位相信号を逆位相スピーカ3から音声出力する。このため、各再生スピーカ2から音声出力されるオーディオ再生信号を逆位相スピーカ3の設置位置において相殺することができる。
【0080】
したがって、本実施の形態によれば、マルチチャンネルオーディオシステムが設置された室内から外部への音漏れが発生すると考えられる場所(例えば、窓、壁、ドア付近)に逆位相スピーカ3を設置することにより、ユーザが室内で好みの音量レベルでマルチチャンネルオーディオを聴取しても、室外への音漏れを抑制することができる。
【0081】
また、本実施の形態では、設置位置情報設定処理において、ワイヤレス端末4は、逆位相スピーカ3の設置位置に配置された内蔵マイクあるいは外付けマイクにより、再生スピーカ2毎に、この再生スピーカ2から音声出力されたオーディオ再生信号を収音し、その音量レベルおよび到達タイミングの測定結果を、この再生スピーカ2に対応するチャンネルに紐付ける。そして、各チャンネルのテスト信号についての測定結果をマルチチャンネルオーディオ装置1に送信する。これを受けて、マルチチャンネルオーディオ装置1は、再生スピーカ2毎に、再生スピーカ2からのオーディオ再生信号の出力音量レベルおよび出力タイミングと、ワイヤレス端末4より受信した、この再生スピーカ2に対応するチャンネルのテスト信号についての測定結果とに基づいて、この再生スピーカ2の設置位置情報を算出する。
【0082】
したがって、本実施の形態によれば、再生スピーカ2-1~2-5や逆位相スピーカ3の設置位置を変更した場合でも、設置位置情報設定処理を再度行って各再生スピーカ2の設置位置情報を算出し直すことにより、ユーザが室内で好みの音量レベルでマルチチャンネルオーディオを聴取しても、室外への音漏れを抑制することができる。
【0083】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0084】
例えば、上記の実施の形態において、逆位相スピーカ3は、無線ネットワークインターフェース部100を介してアクセスポイント7経由でマルチチャンネルオーディオ装置1に無線接続されるワイヤレススピーカであってもよい。あるいは、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信により、直接マルチチャンネルオーディオ装置1に無線接続されるワイヤレススピーカであってもよい。この場合、各再生スピーカ2の設置位置情報に含まれる遅延時間を、マルチチャンネルオーディオ装置1から逆位相スピーカ3へ伝送されるオーディオ信号の伝送時間分だけ短くなるように補正することが好ましい。
【0085】
また、上記の実施の形態において、ワイヤレス端末4が備える収音部403および測定部404をマルチチャンネルオーディオ装置1に内蔵し、マイクをマルチチャンネルオーディオ装置1に外付けしてもよい。この場合、マルチチャンネルオーディオ装置1は、ワイヤレス端末4からテスト要求を受信すると、このテスト要求で指定されたチャンネルに対応する再生スピーカ2からテスト信号を音声出力し、これを、逆位相スピーカ3の設置位置に配置された外付けのマイクを用いて、マルチチャンネルオーディオ装置1に内蔵された収音部403により収音して、その音量レベルおよび到達タイミングを、マルチチャンネルオーディオ装置1に内蔵された測定部404で測定する。そして、すべての再生スピーカ2についてテスト信号の音量レベルおよび到達タイミングを測定したならば、それらの測定結果を主制御部112に渡す。その後は、図5のS205を実施して、設置位置情報算出部110に各再生スピーカ2の設置位置情報を算出させる。
【0086】
なお、この場合、ワイヤレス端末4から収音部403、測定部404、および測定結果送信部405を省略することができる。また、マルチチャンネルオーディオ装置1から測定結果受信部109を省略することができる。さらに、この場合において、逆位相スピーカ3がワイヤレススピーカである場合、マイクは逆位相スピーカ3に内蔵されていてもよい。
【0087】
また、上記の実施の形態において、マルチチャンネルオーディオ装置1の逆位相信号出力部111にローパスフィルタを内蔵し、逆位相信号出力部111から逆位相スピーカ接続部102へ出力する逆位相信号の高周波成分をカットしてもよい。このようにすることで、室外へ音漏れし易い低周波成分のみを逆位相スピーカ3から音声出力させ、室内のリスニング環境に与える逆位相信号の影響を小さくすることができる。
【0088】
また、上記の実施の形態では、マルチチャンネルオーディオ装置1およびワイヤレス端末4間の通信をアクセスポイント7経由で行っているが、本発明はこれに限定されない。Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信により、直接、マルチチャンネルオーディオ装置1およびワイヤレス端末4間において無線通信を行うようにしてもよい。
【0089】
また、上記の実施の形態では、マルチチャンネルオーディオ装置1が、メディアサーバ5からダウンロードしたマルチチャンネルオーディオコンテンツをチャンネル毎にオーディオ再生信号に再生して、再生スピーカ2-1~2-5から音声出力するマルチチャンネルオーディオシステムを例にとり説明した。しかし、本発明はこれに限定されない。本発明は、オーディオ再生信号を出力するオーディオ装置と、このオーディオ装置より出力されたオーディオ再生信号を音声出力する再生スピーカと、を備えたオーディオシステムに広く適用可能である。
【符号の説明】
【0090】
1:マルチチャンネルオーディオ装置
2-1~2-5:再生スピーカ
3:逆位相スピーカ 4:ワイヤレス端末
5:メディアサーバ 6:ネットワーク
7:アクセスポイント
100、400:無線ネットワークインターフェース部
101:再生スピーカ接続部 102:逆位相スピーカ接続部
103:要求受信部 104:楽曲取得部
105:オーディオ再生部 106:逆位相信号生成部
107:設置位置情報記憶部 108:テスト信号出力部
109:測定結果受信部 110:設置位置情報算出部
111:逆位相信号出力部 112、406:主制御部
401:マンマシンインターフェース部
402:各種要求送信部 403:収音部
404:測定部 405:測定結果送信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8