(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025262
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】土圧式シールド工法における試料サンプリング装置及び試料サンプリング方法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/093 20060101AFI20240216BHJP
E21D 9/06 20060101ALI20240216BHJP
G01N 1/04 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
E21D9/093 F
E21D9/06 301Z
G01N1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128570
(22)【出願日】2022-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】516308364
【氏名又は名称】JIMテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130362
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 嘉英
(72)【発明者】
【氏名】森山 茂
(72)【発明者】
【氏名】今崎 伸彦
(72)【発明者】
【氏名】中島 芳人
(72)【発明者】
【氏名】中山 敦
【テーマコード(参考)】
2D054
2G052
【Fターム(参考)】
2D054AC04
2D054CA02
2D054GA10
2D054GA93
2G052AA19
2G052AC04
2G052AD12
2G052AD32
2G052BA17
2G052GA02
2G052JA04
(57)【要約】
【課題】 土圧式シールド工法において、チャンバー内の試料に対し塑性流動性等の試験を行うために、チャンバー内から適切かつ容易に試料を採取する。
【解決手段】 バルクヘッド60に設けたバルクヘッド開口部10のシールドマシン内部側に試料サンプリング装置保持部20を取り付ける。試料サンプリング装置保持部20に対して試料サンプリング装置本体30のサンプリング部70を回動可能に取り付ける。試料サンプリング装置保持部20に設けた摺動凹部22内に、サンプリング部70を嵌まり込ませた状態で、回動駆動装置80を用いてサンプリング部70を回動させることにより、チャンバー50内の試料を取り込み可能な試料取込状態と、サンプリング部70に設けた閉塞部72により連通開口部21を閉塞する閉塞状態とに変換する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土圧式シールドマシンのチャンバー内から試料をサンプリングするための装置であって、
バルクヘッドに設けたバルクヘッド開口部と、
前記バルクヘッド開口部のシールドマシン内部側に取り付けた試料サンプリング装置保持部と、
前記試料サンプリング装置保持部に対して回動可能に取り付けた試料サンプリング装置本体と、
を備え、
前記試料サンプリング装置保持部は、
前記バルクヘッド開口部と連通した連通開口部と、
シールドマシン内部側に設けた摺動凹部と、
を備え、
前記試料サンプリング装置本体は、
前記摺動凹部に嵌まり込んで回動可能なサンプリング部と、
前記サンプリング部を、前記摺動凹部内に嵌まり込んだ状態で回動させる回動駆動装置と、
を備え、
前記サンプリング部は、
前記連通開口部に連通する取込開口部と、
前記連通開口部を閉塞する閉塞部と、
当該サンプリング部に着脱可能であり、前記取込開口部から試料を取り込んで回収する試料回収部と、
を備えたことを特徴とする土圧式シールド工法における試料サンプリング装置。
【請求項2】
前記サンプリング部には、前記摺動凹部に対して当該サンプリング部を回動可能に支持するための一対の回動軸を設け、
前記回動駆動装置は、前記各回動軸から延出して設けたリンク片にそれぞれ取り付けてある、
ことを特徴とする請求項1に記載の土圧式シールド工法における試料サンプリング装置。
【請求項3】
前記試料回収部に、試料を回収する際に噴発を防止するための噴発防止機構を設けた、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の土圧式シールド工法における試料サンプリング装置。
【請求項4】
前記摺動凹部に嵌まり込んで回動する前記サンプリング部の回動範囲を規制する回動規制部を設けた、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の土圧式シールド工法における試料サンプリング装置。
【請求項5】
前記摺動凹部に嵌まり込んで回動する前記サンプリング部の回動範囲を規制する回動規制部を設けた、
ことを特徴とする請求項3に記載の土圧式シールド工法における試料サンプリング装置。
【請求項6】
前記摺動凹部と前記サンプリング部との間の摺動面に保護材を注入する保護材注入装置を設けた、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の土圧式シールド工法における試料サンプリング装置。
【請求項7】
前記摺動凹部と前記サンプリング部との間の摺動面に保護材を注入する保護材注入装置を設けた、
ことを特徴とする請求項3に記載の土圧式シールド工法における試料サンプリング装置。
【請求項8】
前記摺動凹部に嵌まり込んで回動する前記サンプリング部の回動範囲を規制する回動規制部と、
前記摺動凹部と前記サンプリング部との間の摺動面に保護材を注入する保護材注入装置と、
を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の土圧式シールド工法における試料サンプリング装置。
【請求項9】
前記摺動凹部に嵌まり込んで回動する前記サンプリング部の回動範囲を規制する回動規制部と、
前記摺動凹部と前記サンプリング部との間の摺動面に保護材を注入する保護材注入装置と、
を設けたことを特徴とする請求項3に記載の土圧式シールド工法における試料サンプリング装置。
【請求項10】
土圧式シールドマシンのチャンバー内から試料をサンプリングするための方法であって、
バルクヘッドに設けたバルクヘッド開口部のシールドマシン内部側に試料サンプリング装置保持部を取り付けるとともに、当該試料サンプリング装置保持部に対して試料サンプリング装置本体のサンプリング部を回動可能に取り付け、
前記試料サンプリング装置保持部のシールドマシン内部側に設けた摺動凹部内に、前記サンプリング部を嵌まり込ませた状態で、回動駆動装置を用いて前記サンプリング部を回動させることにより、
前記バルクヘッド開口部と、前記試料サンプリング装置保持部に設けた連通開口部と、前記サンプリング部に設けた取込開口部とを一連として、前記サンプリング部に設けた試料回収部内に試料を取り込み可能な試料取込状態と、前記サンプリング部に設けた閉塞部により、前記試料サンプリング装置保持部に設けた連通開口部を閉塞する閉塞状態とに変換する、
ことを特徴とする土圧式シールド工法における試料サンプリング方法。
【請求項11】
前記サンプリング部に、前記摺動凹部に対して当該サンプリング部を回動可能に支持するための一対の回動軸を設けるとともに、前記回動駆動装置を前記各回動軸から延出して設けたリンク片にそれぞれ取り付けて、
前記回動駆動装置の駆動により、前記摺動凹部内に前記サンプリング部を嵌まり込ませた状態で、前記サンプリング部を回動させる、
ことを特徴とする請求項10に記載の土圧式シールド工法における試料サンプリング方法。
【請求項12】
前記バルクヘッド開口部から前記サンプリング部までの間に流体を充満させておき、前記サンプリング部内から流出する流体が無くなった場合に、試料のサンプリングが終了したと判断する、
ことを特徴とする請求項10または11に記載の土圧式シールド工法における試料サンプリング方法。
【請求項13】
前記試料取込状態において、噴発を防止するための噴発防止措置を実施する、
ことを特徴とする請求項10または11に記載の土圧式シールド工法における試料サンプリング方法。
【請求項14】
前記試料取込状態において、噴発を防止するための噴発防止措置を実施する、
ことを特徴とする請求項12に記載の土圧式シールド工法における試料サンプリング方法。
【請求項15】
前記摺動凹部と前記サンプリング部との間の摺動面に保護材を注入する、
ことを特徴とする請求項10または11に記載の土圧式シールド工法における試料サンプリング方法。
【請求項16】
前記摺動凹部と前記サンプリング部との間の摺動面に保護材を注入する、
ことを特徴とする請求項12に記載の土圧式シールド工法における試料サンプリング方法。
【請求項17】
前記試料取込状態において、噴発を防止するための噴発防止措置を実施し、
前記摺動凹部と前記サンプリング部との間の摺動面に保護材を注入する、
ことを特徴とする請求項10または11に記載の土圧式シールド工法における試料サンプリング方法。
【請求項18】
前記試料取込状態において、噴発を防止するための噴発防止措置を実施し、
前記摺動凹部と前記サンプリング部との間の摺動面に保護材を注入する、
ことを特徴とする請求項12に記載の土圧式シールド工法における試料サンプリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は土圧式シールド工法における試料サンプリング装置及び試料サンプリング方法に関するものであり、詳しくは、土圧式シールドマシンのチャンバー内から塑性流動性評価試験等に用いる試料(土砂等)を採取するための装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
土圧式シールド工法は、切羽を安定させるために必要な土圧を保持して、シールドマシンの掘進に伴い適正量の試料を排出するために、チャンバー内に取り込んだ掘削土砂等が適切な塑性流動性を有するとともに、チャンバー内に地下水が流入しないような止水性を保つ必要がある。
【0003】
シールドマシンの掘進に伴う切羽の安定には、チャンバー内の掘削土砂等の性状が大きな影響を与えるため、掘削土砂等の性状を適切に把握する必要がある。従来より、土圧式シールド工法において、掘削土砂等の性状を把握するための技術が種々開示されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
特許文献1(特許第6416496号公報)に記載された技術は、土圧シールド工法に用いるチャンバー内掘削土の性状測定評価方法に関するものである。このチャンバー内掘削土の性状測定評価方法は、チャンバーの内面、撹拌翼、固定翼の表面、カッターのチャンバーに対向する背面に、それぞれ土圧計、せん断力計若しくはせん断歪み計を設置して、泥土がチャンバーの内面、撹拌翼、固定翼の表面、カッターの背面に作用する圧力、せん断力若しくはせん断歪みを計測するようになっている。
【0005】
特許文献2(特許第6522954号公報)に記載された技術は、土圧シールド工法に用いるチャンバー内掘削土の性状測定評価方法に関するものである。この土圧シールド工法に用いるチャンバー内掘削土の性状測定評価方法は、泥土がチャンバー内の各部に作用する圧力及びせん断力を土圧計及びせん断力計により計測し、その計測値に基づいてチャンバー内の泥土の性状を評価するようにしたものである。そして、チャンバーの内面、撹拌翼、固定翼の表面、カッターのチャンバーに対向する背面に、それぞれ土圧計やせん断力計を設置して、泥土がチャンバーの内面、撹拌翼、固定翼の表面、カッター背面に作用する圧力やせん断力を計測するようになっている。また、せん断力計は、ケース内に収容されている。
【0006】
また、シールドマシンのチャンバー内掘削土の塑性流動性を評価するための試験装置ではないが、特許文献3(実公平2-37913号公報)には、切羽地山の状態を知るための土圧計や水圧計等の計測器取付装置に関する技術が開示されている。このシールド掘進機の計器取付装置は、シールド掘進機のシールドフレームあるいはバルクヘッドに切羽側と機内側とを連通する開口部を形成する。そして、開口部に、機内側から曲面部で直接閉塞する回転体を設け、回転体の曲面部に土圧計等の計測器を取り付けて、回転体を回動させることにより、計測器が機内側又は開口部に位置するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6416496号公報
【特許文献2】特許第6522954号公報
【特許文献3】実公平2-37913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述した特許文献1及び特許文献2に記載された技術は、計測機器がチャンバー内に存在する装置に直接取り付けられているため、メンテナンスや交換に手間が掛かるばかりでなく、最悪の場合、メンテナンスや交換を行うことができない場合もある。これでは、試料がチャンバー内の各部に作用する力を計測して、その計測値に基づいてチャンバー内の試料の性状を安定して評価することはできない。なお、せん断力計がケース内に収容されているとしても、ケースはチャンバー内に設置されているため、上述した不都合を解消することはできない。
【0009】
また、上述した特許文献3に記載された技術は、切羽を開放することなく、土圧計等の計測器を容易に交換し、あるいは零点調整等を容易に行なうことを目的とした技術であり、チャンバー内の試料をサンプリングすることを目的としたものではない。土圧式シールドマシンでは、切羽を安定させるための土圧を保持しているため、チャンバー内の試料をサンプリングするには種々の工夫が必要となり、特許文献3に記載された技術をそのまま適用することはできない。
【0010】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、土圧式シールド工法において、チャンバー内の試料に対し塑性流動性等の試験を行うために、チャンバー内から適切かつ容易に試料を採取することが可能な試料サンプリング装置及び試料サンプリング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る土圧式シールド工法における試料サンプリング装置及び試料サンプリング方法(以下、試料サンプリング装置、試料サンプリング方法と略記することがある)は、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。すなわち、本発明に係る試料サンプリング装置及び試料サンプリング方法は、土圧式シールドマシンのチャンバー内から試料をサンプリングするための装置及び方法に関するものである。
【0012】
本発明に係る試料サンプリング装置は、バルクヘッドに設けたバルクヘッド開口部と、バルクヘッド開口部のシールドマシン内部側に取り付けた試料サンプリング装置保持部と、試料サンプリング装置保持部に対して回動可能に取り付けた試料サンプリング装置本体とを備えている。
【0013】
そして、試料サンプリング装置保持部は、バルクヘッド開口部と連通した連通開口部と、シールドマシン内部側に設けた摺動凹部とを備えている。また、試料サンプリング装置本体は、摺動凹部に嵌まり込んで回動可能なサンプリング部と、サンプリング部を、摺動凹部内に嵌まり込んだ状態で回動させる回動駆動装置とを備えている。さらに、サンプリング部は、連通開口部に連通する取込開口部と、連通開口部を閉塞する閉塞部と、当該サンプリング部に着脱可能であり、取込開口部から試料を取り込んで回収する試料回収部とを備えている。
【0014】
また、上述した構成に加えて、サンプリング部には、摺動凹部に対して当該サンプリング部を回動可能に支持するための一対の回動軸を設けることが可能である。この様な構成の場合に、回動駆動装置は、各回動軸から延出して設けたリンク片にそれぞれ取り付ける。
【0015】
また、上述した構成に加えて、試料を回収する際に噴発を防止するための噴発防止機構を設けることが可能である。
【0016】
また、上述した構成に加えて、摺動凹部に嵌まり込んで回動するサンプリング部の回動範囲を規制する回動規制部を設けることが可能である。
【0017】
また、上述した構成に加えて、摺動凹部とサンプリング部との間の摺動面に保護材(例えば、グリース)を注入する保護材注入装置を設けることが可能である。
【0018】
本発明に係る試料サンプリング方法は、バルクヘッドに設けたバルクヘッド開口部のシールドマシン内部側に試料サンプリング装置保持部を取り付けるとともに、当該試料サンプリング装置保持部に対して試料サンプリング装置本体のサンプリング部を回動可能に取り付ける。そして、試料サンプリング装置保持部のシールドマシン内部側に設けた摺動凹部内に、サンプリング部を嵌まり込ませた状態で、回動駆動装置を用いてサンプリング部を回動させることにより、バルクヘッドに設けたバルクヘッド開口部と、試料サンプリング装置保持部に設けた連通開口部と、サンプリング部に設けた取込開口部とを一連として、サンプリング部に設けた試料回収部内に試料を取り込み可能な試料取込状態と、サンプリング部に設けた閉塞部により、試料サンプリング装置保持部に設けた連通開口部を閉塞する閉塞状態とに変換することを特徴とするものである。
【0019】
また、上述した構成に加えて、サンプリング部に、摺動凹部に対して当該サンプリング部を回動可能に支持するための一対の回動軸を設けるとともに、回動駆動装置を各回動軸から延出して設けたリンク片にそれぞれ取り付ける。そして、回動駆動装置の駆動により、摺動凹部内にサンプリング部を嵌まり込ませた状態で、サンプリング部を回動させることが可能である。
【0020】
また、上述した構成に加えて、バルクヘッドに設けたバルクヘッド開口部からサンプリング部(試料回収部)までの間に流体を充満させておく。そして、サンプリング部(試料回収部)内から流出する流体が無くなった場合に、試料のサンプリングが終了したと判断することが可能である。すなわち、バルクヘッドに設けたバルクヘッド開口部からサンプリング部(試料回収部)までの間に流体を充満させておき、サンプリング部(試料回収部)内から流体のすべてが流出した場合に、試料のサンプリングが終了したと判断することが可能である。
【0021】
また、上述した構成に加えて、試料取込状態において、噴発を防止するための噴発防止措置を実施することが可能である。
【0022】
また、上述した構成に加えて、摺動凹部とサンプリング部との間の摺動面に保護材(例えば、グリース)を注入することが可能である。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る土圧式シールド工法における試料サンプリング装置及び試料サンプリング方法によれば、バルクヘッドに設けたバルクヘッド開口部に試料サンプリング装置保持部を取り付け、当該試料サンプリング装置保持部に試料サンプリング装置本体のサンプリング部を回動動可能に取り付けて、回動駆動装置によりサンプリング部を回動させることにより、バルクヘッド開口部を閉塞する閉塞状態と、バルクヘッド開口部から試料(土砂)を取込可能な取込状態とに変換することができる。
【0024】
すなわち、常にはバルクヘッド開口部を閉塞状態としておき、試料のサンプリングが必要な場合にのみ、試料の取込状態とすることにより、チャンバー内から適切かつ容易に試料を採取することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態に係る試料サンプリング装置を側面から見た状態の説明図。
【
図2】本発明の実施形態に係る試料サンプリング装置をシールドマシン内部側から見た状態の説明図。
【
図3】本発明の実施形態に係る試料サンプリング装置におけるバルクヘッド開口部の閉塞状態を側面から見た状態の説明図。
【
図4】本発明の実施形態に係る試料サンプリング装置における試料の取込状態を側面から見た状態の説明図。
【
図5】本発明の実施形態に係る試料サンプリング装置を適用するシールドマシンを切羽側から見た状態の説明図。
【
図6】本発明の実施形態に係る試料サンプリング装置による試料サンプリング手順を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る土圧式シールド工法における試料サンプリング装置及び試料サンプリング方法を説明する。
図1~6は本発明の実施形態に係る試料サンプリング装置及び試料サンプリング方法を説明するもので、
図1は試料サンプリング装置を側面から見た状態の説明図、
図2は試料サンプリング装置をシールドマシン内部側から見た状態の説明図、
図3は試料サンプリング装置におけるバルクヘッド開口部の閉塞状態を側面から見た状態の説明図、
図4は試料サンプリング装置における試料の取込状態を側面から見た状態の説明図、
図5は試料サンプリング装置を適用するシールドマシンを切羽側から見た状態の説明図、
図6は試料サンプリング手順を示す説明図である。
【0027】
<試料サンプリング装置の概要>
本実施形態の試料サンプリング装置200は、バルクヘッド60に設けたバルクヘッド開口部10と、バルクヘッド開口部10のシールドマシン内部側に取り付けた試料サンプリング装置保持部20と、試料サンプリング装置保持部20に対して回動可能に取り付けた試料サンプリング装置本体30(サンプリング部70)とを主要な構成要素としている。
【0028】
<バルクヘッド開口部>
土圧式シールドマシンは、カッターヘッド40により地山を掘削するが、切羽の崩壊を防ぐための土圧を維持するために、土砂等を充填する空間であるチャンバー50を設けている。そして、このチャンバー50とシールドマシン内部との間にバルクヘッド60(隔壁)が設置されている。バルクヘッド開口部10は、
図1、3、4に示すように、バルクヘッド60を貫通して、チャンバー50内とシールドマシン内部とを連通接続して試料をサンプリングするための試料通過孔であり、このバルクヘッド開口部10を介してバルクヘッド60内から土砂等の試料をサンプリングすることができる。
【0029】
本実施形態では、
図5に示すように、バルクヘッド60の上部及び側部(切羽側から見た状態で右側側部)の2箇所にバルクヘッド開口部10を設け、このバルクヘッド開口部10のシールドマシン内部側に試料サンプリング装置200を取り付けてある。バルクヘッド開口部10の位置及び試料サンプリング装置200の取付位置は、シールドマシンの口径や掘削する地山状況等に応じて適宜変更することができる。
【0030】
<試料サンプリング装置保持部>
バルクヘッド開口部10は、試料サンプリング装置本体30により開閉するようになっている。バルクヘッド開口部10を開閉するための装置は、
図1~
図4に示すように、試料サンプリング装置保持部20と試料サンプリング装置本体30とにより構成する。すなわち、試料サンプリング装置保持部20は、試料サンプリング装置本体30のサンプリング部70を回動可能に保持するための部材である。この試料サンプリング装置保持部20は、バルクヘッド60に設けたバルクヘッド開口部10と連通した連通開口部21と、試料サンプリング装置本体30のサンプリング部70を回動可能に保持する摺動凹部22とを備えている。
【0031】
<連通開口部>
連通開口部21は、
図1、3、4に示すように、バルクヘッド60に設けたバルクヘッド開口部10と連通状態とすることにより、バルクヘッド60内から試料サンプリング装置本体30のサンプリング部70に試料を取り込むための試料通過孔である。この連通開口部21は、試料サンプリング装置本体30のサンプリング部70を回動させることにより、開閉するようになっている。
【0032】
<摺動凹部>
摺動凹部22は、
図1、3、4に示すように、連通開口部21を囲むようにしてシールドマシン内部側に設けられている。本実施形態の摺動凹部22の内周面は円弧状の凹部となっている。そして試料サンプリング装置本体30のサンプリング部70の外周面は、摺動凹部22の内周面の形状に合致して、摺動凹部22内に嵌まり込むように円弧状の凸部となっている。これにより、摺動凹部22内にサンプリング部70が嵌まり込んで、回動(摺動)することができる。
【0033】
<回動規制部>
回動規制部23は、
図1、3、4に示すように、摺動凹部22内に嵌まり込んで回動するサンプリング部70の回動範囲を規制するための部材である。本実施形態の回動規制部23は、サンプリング部70の回動位置を規制するための第1の規制突起23a及び第2の規制突起23bとからなる。なお、図示の都合上、各図においていずれか一方の規制突起のみを図示し、他方の規制突起の図示を省略している。すなわち、
図1及び
図4は第1の規制突起23aを模式的に示したものであり、
図3は第2の規制突起23bを模式的に示したものである。また、
図6においても、
図1、3、4と同様に第1の規制突起23a及び第2の規制突起23bの双方を設けてある。また、第1の規制突起23a及び第2の規制突起23bは、バルクヘッド60等に対して支持部材(図示せず)等を用いて取り付けてある。
【0034】
第1の規制突起23aは、バルクヘッド60に設けたバルクヘッド開口部10と、試料サンプリング装置保持部20に設けた連通開口部21と、サンプリング部70に設けた取込開口部71とを一連として、サンプリング部70に設けた試料回収部73内に試料を取り込み可能な試料取込状態となるようにサンプリング部70が回動した際に、それ以上サンプリング部70を回動させないための部材である。第2の規制突起23bは、サンプリング部70に設けた閉塞部72により、試料サンプリング装置保持部20に設けた連通開口部21を閉塞する閉塞状態となるようにサンプリング部70が回動した際に、それ以上サンプリング部70を回動させないための部材である。
【0035】
すなわち、回動規制部23は、サンプリング部70の回動範囲の両端部にそれぞれ規制突起23a、23bを設けることにより、サンプリング部70の回動範囲を規制するようになっている。第1の規制突起23a及び第2の規制突起23bは、サンプリング部70がそれぞれの規制位置にまで回動した際に、サンプリング部70の端面に当接して、サンプリング部70をそれ以上回動させないための部材である。
【0036】
後に詳細に説明するが、サンプリング部70を回動させるための回動駆動装置80による回動駆動範囲を規制することにより、回動規制部23を構成してもよい。例えば、回動駆動装置80を油圧ジャッキとした場合に、油圧ジャッキのジャッキストローク(ピストン82の突出量)を規制することにより、サンプリング部70の回動範囲を規制することができる。また、規制突起23a、23bまたは油圧ジャッキのいずれか一方を回動規制部23として機能させてもよいし、規制突起23a、23bと油圧ジャッキの双方を回動規制部23として機能させてもよい。
【0037】
<パッキング部材>
試料サンプリング装置保持部20には、連通開口部21に臨むようにしてパッキング部材24が設けてある。パッキング部材24は、例えば、リング状のゴム製であり、サンプリング部70の外周面に当接して、摺動凹部22の内周面とサンプリング部70の外周面との隙間を閉塞する部材である。
【0038】
<試料サンプリング装置本体>
試料サンプリング装置本体30は、
図1、3、4に示すように、試料サンプリング装置保持部20とともに、試料サンプリング装置200を構成する主要な構成要素である。この試料サンプリング装置本体30は、摺動凹部22に嵌まり込んで回動可能なサンプリング部70と、サンプリング部70を、摺動凹部22内に嵌まり込んだ状態で回動させる回動駆動装置80とを備えている。
【0039】
<サンプリング部>
サンプリング部70は、チャンバー50内の土砂を試料としてサンプリングするための部材であり、連通開口部21に連通する取込開口部71と、連通開口部21を閉塞する閉塞部72と、当該サンプリング部70に対して着脱可能であり、取込開口部71から試料を取り込んで回収する試料回収部73とを備えている。
【0040】
上述したように、この試料サンプリング装置保持部20は、試料サンプリング装置本体30のサンプリング部70を回動可能に保持する摺動凹部22を備えており、サンプリング部70は試料サンプリング装置保持部20により回動可能に保持されている。本実施形態の摺動凹部22は、その内周面が円弧状の凹部となっている。
【0041】
このため、本実施形態のサンプリング部70は、摺動凹部22内に嵌まり込むように、その外周面が円弧状の凸部となっている。また、サンプリング部70の内側には、試料のサンプリングに用いる装置を収納するための収納凹部74が設けられている。さらに、収納凹部74内に収納する装置は、筒状の試料回収部73と試料回収部73の先端部(取込開口部71側の端部)に設けたフランジ73aと、フランジ73aに設けたボルト挿通孔73bとからなり、これらの装置は試料サンプリング装置200の一部となっている。
【0042】
サンプリング部70に設けた収納凹部74の連通開口部21側には、フランジ73aが当接する密閉部75を設けてあり、この密閉部75にはボルト螺着孔75aを設けてある。したがって、試料回収部73に設けたフランジ73aを収納凹部74に設けた密閉部75に密着させるととともに、ボルト挿通孔73bとボルト螺着孔75aとを一連とし、ボルト挿通孔73bにボルト76を挿通して、ボルト76の先端部をボルト螺着孔75aにネジ付けることにより、収納凹部74内に試料回収部73を取り付けることができる。なお、図示しないが、ボルト76の軸部外周面には雄ネジ部を有しており、ボルト螺着孔75aの内周面にはボルト76の雄ネジ部をネジ付けるための雌ネジ部を有している。
【0043】
そして、サンプリング部70を試料取込状態となるように回動させると、バルクヘッド開口部10と、試料サンプリング装置保持部20に設けた連通開口部21と、サンプリング部70に設けた取込開口部71とが一連となって、サンプリング部70に設けた試料回収部73内に試料を取り込むことができる。
【0044】
<取込開口部>
取込開口部71は、サンプリング部70の収納凹部74に設けられており、試料サンプリング装置保持部20の連通開口部21に連通させることができる。また、試料サンプリング装置保持部20の連通開口部21は、バルクヘッド開口部10に連通させることができる。
【0045】
したがって、バルクヘッド60側からサンプリング部70へ向かって順に、バルクヘッド開口部10、連通開口部21、取込開口部71を一連とすることにより、チャンバー50内の土砂(試料)をサンプリング部70の試料回収部73内に取り込むことができる。
【0046】
<閉塞部>
閉塞部72は、取込開口部71以外のサンプリング部70の外周面により形成する。すなわち、取込開口部71以外のサンプリング部70の外周面は、試料サンプリング装置保持部20の連通開口部21を閉塞することが可能な面積を有している。そして、閉塞部72により試料サンプリング装置保持部20に設けた連通開口部21を閉塞する閉塞状態となるようにサンプリング部70を回動させると、バルクヘッド開口部10及び試料サンプリング装置保持部20に設けた連通開口部21を閉塞することができる。この状態では、チャンバー50内とシールドマシン内部とは非連通状態となっている。チャンバー50内から土砂(試料)の取り込みを行わない場合には、連通開口部21を閉塞してシールドマシンによる掘進等を行う。
【0047】
<試料回収部>
試料回収部73は、取込開口部71から試料を取り込むための筒状の部材である。上述したように、試料回収部73の一端部(チャンバー50側)は、取込開口部71に連通する開放端となっており、この開放端にはフランジ73aを設けてある。一方、試料回収部73の他端部(シールドマシンの内部側)に送水パイプ90を取り付けてある。送水パイプ90は、バルクヘッド開口部10、連通開口部21、取込開口部71を一連とすることにより、チャンバー50内の土砂(試料)をサンプリング部70の試料回収部73内に取り込む際に、試料回収部73内の流体(空気や水)を抜き出すとともに、サンプリング部70内に水を送出するためのパイプである。この送水パイプ90の終端側には、送水ポンプ93が取り付けてあり、試料回収部73内に送水を行うことができる。
【0048】
図示しないが、送水ポンプ93と送水パイプ90とは、ホースジョイント等により着脱可能に接続されている。送水パイプ90には開閉弁91を設けてあり、開閉弁91は操作取っ手92により開閉するようになっている。また、開閉弁91を電磁弁等により構成してもよい。また、
図4及び
図6(b)に示すように、送水パイプ90には直列した2つの開閉弁91(第1の開閉弁91a、第2の開閉弁91b)を設けることができる。後に詳述するが、送水パイプ90に対して直列に設けた第1の開閉弁91a、第2の開閉弁91bが噴発防止機構として機能する。
【0049】
<回動軸>
サンプリング部70の外周面には、サンプリング部70を試料サンプリング装置保持部20に対して回動可能に固定することにより、摺動凹部22内で試料サンプリング装置本体30を回動させるための回動軸31を設けてある。この回動軸31は、
図2に示すように、一直線上に並ぶように、それぞれ試料サンプリング装置本体30の外周面の両側に設けてある。各回動軸31には、回動駆動装置80の駆動部(例えば、ピストン82の先端部)を取り付けるためのリンク片83を延出して設けてある。
【0050】
<回動駆動装置>
回動駆動装置80は、サンプリング部70を、摺動凹部22内に嵌まり込んだ状態で回動させるための装置であり、本実施形態では、
図2に示すように、油圧ポンプ(図示せず)と、シリンダ81と、ピストン82とにより構成する。そして、サンプリング部70に設けた一対の回動軸31から延出して設けたリンク片83には、それぞれ回動駆動装置80の駆動部(例えば、ピストン82の先端部)を取り付けてある。したがって、回動駆動装置80を駆動するとリンク片83に駆動力が伝達され、各回動軸31を回動支点として、サンプリング部70が摺動凹部22内に嵌まり込んだ状態で回動する。
【0051】
本発明では、
図2に示すように、サンプリング部70の外周面の両側にそれぞれ回動軸31を設けるとともに、各回動軸31から延出して設けたリンク片83にそれぞれ回動駆動装置80の駆動部(例えば、ピストン82の先端部)を取り付けてある。これにより、回動軸31に対して均等に力が加わるため、機械損傷を防止することができる。
【0052】
また、図示しないが、油圧ジャッキにジャッキ圧力を計測するための圧力計を取り付けてある。これにより、無負荷時と負荷時の力を把握することができるので、機械損耗状態を予測して、不具合の発生を未然に防止することができる。
【0053】
<保護材注入装置>
保護材注入装置100は、
図1、3、4に示すように、摺動凹部22と試料サンプリング装置本体30のサンプリング部70との間の摺動面に保護材を注入するための装置である。この保護材注入装置100は、保護材輸送管101と、開閉弁102と、保護材送出装置103とからなる。保護材輸送管101は、試料サンプリング装置保持部20の内部を貫通して先端部が摺動凹部22内に開口しており、基端部は開閉弁102を介して保護材送出装置103に連結してある。さらに、開閉弁102には、開閉取っ手104を設けてある。保護材は、例えば、グリースからなり、摺動凹部22の内周面とサンプリング部70の外周面との間に注入することにより摺動面を保護する。
【0054】
ところで、本発明の試料サンプリング装置200における土砂(試料)のサンプリングは、安定的なシールド掘削を行うために、例えば、1現場で数十回~数百回程度実施する。そこで、保護材注入装置100を設けることにより、摺動面を保護して機械損傷を未然に防止するようになっている。この点、特許文献3に記載した試験装置においても摺動面にグリースを塗布してもよいとしているが、装置の摺動は1現場で1回若しくは2回程度であるため、敢えて保護材注入装置100を設ける必要はなく、メンテナンス時に摺動面にグリースを塗布すればよい。
【0055】
<試料サンプリング装置の動作>
本発明の試料サンプリング装置200では、サンプリング部70を試料取込位置に回動させることにより、バルクヘッド開口部10と、試料サンプリング装置保持部20に設けた連通開口部21と、サンプリング部70に設けた取込開口部71とを一連とすることにより、サンプリング部70に設けた試料回収部73内に土砂(試料)を取り込み可能な試料取込状態とすることができる。また、サンプリング部70を閉塞位置に回動させることにより、サンプリング部70に設けた閉塞部72により、試料サンプリング装置保持部20に設けた連通開口部21を閉塞する閉塞状態とすることができる。
【0056】
<試料サンプリング方法>
本発明に係る試料サンプリング方法は、上述した試料サンプリング装置200を用いて、土圧式シールドマシンのチャンバー50内から土砂(試料)をサンプリングするための方法である。以下、
図6を参照して、試料サンプリング方法について説明する。
図6において、(a)、(b)、(c)、(d)の順で試料サンプリング装置200を動作させることにより、土砂(試料)のサンプリングを行う。
【0057】
<試料サンプリング方法の基本工程>
本発明に係る試料サンプリング方法は、バルクヘッド60に対してサンプリング装置保持部20とサンプリング装置本体30を取り付ける工程(取付工程)と、試料サンプリング装置本体30に設けたサンプリング部70を回動させる工程(回動工程)とを基本的な工程としている。取付工程は、バルクヘッド開口部10のシールドマシン内部側に試料サンプリング装置保持部20を取り付けるとともに、当該試料サンプリング装置保持部20の摺動凹部22内に試料サンプリング装置本体30のサンプリング部70を回動可能に取り付ける工程である。
【0058】
回動工程は、試料サンプリング装置保持部20のシールドマシン内部側に設けた摺動凹部22内に、サンプリング部70を嵌まり込ませた状態で、回動駆動装置80を用いてサンプリング部70を回動させることにより、バルクヘッド開口部10と、連通開口部21と、取込開口部71とが一連となった試料取込状態とするとともに、試料サンプリング装置保持部20に設けた連通開口部21を閉塞部72により閉塞する閉塞状態とするための工程である。すなわち、摺動凹部22内にサンプリング部70が嵌まり込んだ状態で、サンプリング部70を回動させることにより、試料取込状態と閉塞状態とに変換することができる。
【0059】
<試料を回収するための方法>
上述した回動工程において、常には、サンプリング部70に設けた閉塞部72により、試料サンプリング装置保持部20に設けた連通開口部21を閉塞する閉塞状態としている(
図6(a))。そして、バルクヘッド開口部10と、試料サンプリング装置保持部20に設けた連通開口部21と、サンプリング部70に設けた取込開口部71とを一連とすることにより、サンプリング部70に設けた試料回収部73内に土砂(試料)を取り込み可能な試料取込状態とする(
図6(b))。
【0060】
試料取込状態においてサンプリング部70内に土砂(試料)が充満したら、サンプリング部70に設けた閉塞部72により、試料サンプリング装置保持部20に設けた連通開口部21を閉塞する閉塞状態とする(
図6(c))。そして、試料回収部73のフランジ73aと収納凹部74の底面に設けた密閉部75とを接続しているボルト76を取り外して、試料回収部73を収納凹部74内から取り出す(
図6(d))。これにより、試料回収部73内に取り込んだ土砂(試料)を回収することができる。
【0061】
<噴発を防止するための方法>
バルクヘッド60を隔てて、チャンバー50内の圧力とシールドマシン内部側の圧力とには差があるため、チャンバー50内とシールドマシン内部側を一気に連通させると、チャンバー50内に充満した土砂がシールドマシン内部に噴発するおそれがある。
【0062】
そこで、本実施形態では、噴発を防止するための方法として、取込開口部71からサンプリング部70の試料回収部73までの間に流体(例えば、水)を充満させておき、サンプリング部70内から流出する流体(例えば、水)が無くなった場合に、試料のサンプリングが終了したと判断する。換言すれば、取込開口部71からサンプリング部70の試料回収部73までの間に流体(例えば、水)を充満させておき、試料回収部73に連通接続した送水パイプ90から流体(例えば、水)のすべてが流出した場合に、土砂(試料)のサンプリングが終了したと判断する。
【0063】
図6(b)に示すように、送水パイプ90には直列に2箇所の開閉弁91が設けてある。各開閉弁91を、試料回収部73側に設けた第1の開閉弁91aと、送水パイプ90の後段に設けた開閉弁91bとして、噴発を防止するための方法について説明する。なお、土砂(試料)のサンプリングに際して、サンプリング部70内に水を充満させておく。
【0064】
試料サンプリングの開始前には、第1の開閉弁91a及び第2の開閉弁91bの双方を「閉」状態とする。そして、第1の開閉弁91aを「開」状態とし、第2の開閉弁91bの「閉」状態を維持すると、第1の開閉弁91aと第2の開閉弁91bの間に位置する送水パイプ90に水が充満する(A工程)。続いて、第1の開閉弁91aを「閉」状態とし、第2の開閉弁91bを「開」状態とすることにより、第1の開閉弁91aと第2の開閉弁91bの間に充満した水が大気圧に開放される。この際、送水パイプ90から流出する水は、適宜な容器に回収する(B工程)。
【0065】
上述した(A工程)と(B工程)とを繰り返して実施することにより、サンプリング部70に充満した水が流出し、試料回収部73内に土砂(試料)を取り込むことができる。このように、第1の開閉弁91a及び第2の開閉弁91bを用いて、各開閉弁91a、91bの開閉を繰り返すことにより、チャンバー50内の土砂圧力と大気圧との差を解消して、噴発を防止することができる。
【0066】
<サンプリング部を安定して回動させるための方法>
本実施形態では、サンプリング部70を安定して回動させるための方法として、サンプリング部70において、摺動凹部22に対して当該サンプリング部70を回動可能に支持するための一対の回動軸31を設けるとともに、各回動軸31から延出して設けたリンク片83に回動駆動装置80をそれぞれ取り付けてある。そして、回動駆動装置80の駆動により、摺動凹部22内にサンプリング部70を嵌まり込ませた状態で、サンプリング部70を回動させることにより、各回動軸31に対して均等に力が加わり、サンプリング部70を安定して回動させることができる。
【0067】
<摺動面を保護する方法>
本実施形態では、摺動面を保護する方法として、保護材注入装置100を用いて、摺動凹部22とサンプリング部70との間の摺動面に保護材(例えば、グリース)を適時注入する。これにより、摺動面を保護して機械損傷を未然に防止することができる。
【符号の説明】
【0068】
10 バルクヘッド開口部
20 試料サンプリング装置保持部
21 連通開口部
22 摺動凹部
23 回動規制部
23a 第1の規制突起
23b 第2の規制突起
24 パッキング部材
30 試料サンプリング装置本体
31 回動軸
40 カッターヘッド
50 チャンバー
60 バルクヘッド
70 サンプリング部
71 取込開口部
72 閉塞部
73 試料回収部
73a フランジ
73b ボルト挿通孔
74 収納凹部
75 密閉部
75a ボルト螺着孔
76 ボルト
80 回動駆動装置
81 シリンダ
82 ピストン
83 リンク片
90 送水パイプ
91 開閉弁
91a 第1の開閉弁
92b 第2の開閉弁
92 操作取っ手
93 送水ポンプ
100 保護材注入装置
101 保護材輸送管
102 開閉弁
103 保護材送出装置
104 開閉取っ手
200 試料サンプリング装置