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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025264
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】制御システム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/10 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
B25J9/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128573
(22)【出願日】2022-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横井 昭佳
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS09
3C707CX03
3C707CX05
3C707HS27
3C707HT26
3C707HT40
3C707KS21
3C707KV01
3C707LT17
3C707MT01
3C707MT04
(57)【要約】
【課題】ロボットのキャリブレーション処理を行う際の手間を従来よりも軽減可能な制御システムを提供する。
【解決手段】制御システムは、アクチュエータ2を駆動するモータ21と、モータ21の回転軸の累積回転数に基づく当該回転軸の多回転位置を検出するエンコーダ23と、モータ21及びエンコーダ23を制御する制御部25と、制御部25を制御する制御装置1と、を備え、制御装置1は、回転軸の多回転位置を、当該多回転位置の初期位置に移動させる旨を制御部25に指示する第1指示部14と、第1指示部14による指示後、回転軸の多回転位置が初期位置に移動されたか否かを受け付ける受付部16と、受付部16により、回転軸の多回転位置が初期位置に移動された旨が受け付けられた場合、エンコーダ23により検出されている多回転位置を示す情報を記録部26に記録する記録制御部17と、を備えた。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータを駆動するモータと、
前記モータの回転軸の累積回転数に基づく当該回転軸の多回転位置を検出するエンコーダと、
前記モータ及び前記エンコーダを制御する制御部と、
前記制御部を制御する制御装置と、を備えた制御システムであって、
前記制御装置は、
前記回転軸の多回転位置を、当該多回転位置の初期位置に移動させる旨を前記制御部に指示する第1指示部と、
前記第1指示部による指示後、前記回転軸の多回転位置が初期位置に移動されたか否かを受け付ける受付部と、
前記受付部により、前記回転軸の多回転位置が初期位置に移動された旨が受け付けられた場合、前記エンコーダにより検出されている多回転位置を示す情報を記録部に記録する記録制御部と、
を備えた制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記モータが非常停止したことを検知する検知部を備え、
前記第1指示部は、
前記検知部により、前記モータが非常停止したことが検知された場合、前記回転軸の多回転位置を、当該多回転位置の初期位置に移動させる旨を前記制御部に指示する
ことを特徴とする請求項1記載の制御システム。
【請求項3】
前記アクチュエータに、予め設定された前記多回転位置の初期位置を示す目印が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記受付部により、前記回転軸の多回転位置が初期位置に移動されていない旨が受け付けられた場合、ユーザに対し、前記目印に基づいて前記回転軸の多回転位置を当該多回転位置の初期位置に移動させる旨を指示する第2指示部を備え、
前記受付部は、
前記第2指示部による指示後、前記回転軸の多回転位置が初期位置に移動されたか否かを受け付け、
前記記録制御部は、前記受付部により、前記回転軸の多回転位置が初期位置に移動された旨が受け付けられた場合、前記エンコーダにより検出されている多回転位置を示す情報を前記記録部に記録する
ことを特徴とする請求項3記載の制御システム。
【請求項5】
アクチュエータを駆動するモータと、
前記モータの回転軸の累積回転数に基づく当該回転軸の多回転位置を検出するエンコーダと、
前記モータ及び前記エンコーダを制御する制御部と、
前記制御部を制御する制御装置と、を備えた制御システムによる制御方法であって、
前記制御装置の第1指示部が、
前記回転軸の多回転位置を、当該多回転位置の初期位置に移動させる旨を前記制御部に指示するステップと、
前記制御装置の受付部が、前記第1指示部による指示後、前記回転軸の多回転位置が初期位置に移動されたか否かを受け付けるステップと、
前記制御装置の記録制御部が、前記受付部により、前記回転軸の多回転位置が初期位置に移動された旨が受け付けられた場合、前記エンコーダにより検出されている多回転位置を示す情報を記録部に記録するステップと、
を有する制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御システム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば多関節型の産業用ロボットとして構成されたロボットには、各関節軸を駆動するためのアクチュエータが搭載される。このアクチュエータは、モータの回転軸の物理的な絶対位置を検出する検出器であるアブソリュートエンコーダを備えている。
【0003】
モータの回転軸の物理的な絶対位置は、一回転情報と多回転情報とを含むエンコーダ位置情報によって表される。一回転情報とは、アブソリュートエンコーダの原点から一回転内におけるモータの回転軸の絶対位置(絶対角度)を示す情報である。また、多回転情報とは、アブソリュートエンコーダの原点を基準としてカウントしたモータの回転軸の累積回転数(累積角度)を示す情報である。また、モータの回転軸の累積回転数に基づく当該回転軸の位置を「多回転位置」ともいう。
【0004】
ロボットのユーザは、必要に応じて、多回転情報及び多回転位置についてのキャリブレーション処理を行う(例えば特許文献1)。なお、以下の説明において、キャリブレーション処理とは、モータの回転軸の多回転位置を、予め設定された当該多回転位置の初期位置(原点位置)に戻すとともに、多回転情報を予め設定された初期値に変更する処理をいう。なお、多回転位置の初期位置は、通常、ロボットのメーカにより設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5803173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、ロボットのユーザは、必要に応じて多回転情報及び多回転位置についてのキャリブレーション処理を行う。ところが、従来、ロボットのユーザは、このキャリブレーション処理を行う際、例えばピンあるいは水準器等といった特定の道具の使用を要する場合があった。しかしながら、このような特定の道具を用いた作業は、ユーザにとって煩雑であり、改善が求められていた。
【0007】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたもので、ロボットのキャリブレーション処理を行う際の手間を従来よりも軽減可能な制御システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る制御システムは、アクチュエータを駆動するモータと、モータの回転軸の累積回転数に基づく当該回転軸の多回転位置を検出するエンコーダと、モータ及びエンコーダを制御する制御部と、制御部を制御する制御装置と、を備えた制御システムであって、制御装置は、回転軸の多回転位置を、当該多回転位置の初期位置に移動させる旨を制御部に指示する第1指示部と、第1指示部による指示後、回転軸の多回転位置が初期位置に移動されたか否かを受け付ける受付部と、受付部により、回転軸の多回転位置が初期位置に移動された旨が受け付けられた場合、エンコーダにより検出されている多回転位置を示す情報を記録部に記録する記録制御部と、を備えた。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、上記のように構成したので、ロボットのキャリブレーション処理を行う際の手間を従来よりも軽減可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る制御システムの構成例を示す図である。
図2】実施の形態1における制御装置及びアクチュエータの構成例を示す図である。
図3】実施の形態1におけるアクチュエータが搭載されるロボットの構成例を示す図である。
図4】実施の形態1に係る制御システムの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る制御システムの構成例を示す図である。
制御システムは、制御装置1及びアクチュエータ2を備えている。
まず、アクチュエータ2の構成例について、図1,2を参照しながら説明する。
【0012】
アクチュエータ2は、図1,2に示すように、入力側シャフト27(回転軸)を有するモータ21、電磁ブレーキ22、アブソリュートエンコーダ23、減速機24、制御部25、及び記録部26を有している。アクチュエータ2は、後述するロボット3(図3参照)に搭載され、ロボット3の関節軸を構成する可動部を駆動する。
【0013】
モータ21は、制御部(モータドライバ)25と接続されている。モータ21は、制御部25から駆動指示を示す信号が入力された場合、当該駆動指示に従って駆動することにより、アクチュエータ2を駆動する。具体的には、モータ21は、制御部25から駆動指示を示す信号が入力された場合、当該駆動指示に従って駆動することにより、回転軸である入力側シャフト27を回転させる。また、モータ21は、制御部25から停止指示を示す信号が入力された場合、当該停止指示に従って入力側シャフト27の回転を停止させる。
【0014】
電磁ブレーキ22は、制御部25及び入力側シャフト27と接続されている。電磁ブレーキ22は、制御部25からモータ21のブレーキ指示を示す信号が入力された場合、当該ブレーキ指示に応じて所定の電磁力を発生させることにより、入力側シャフト27を停止した状態に維持する。
【0015】
アブソリュートエンコーダ23は、制御部25及び入力側シャフト27と接続されている。アブソリュートエンコーダ23は、モータ21の回転軸である入力側シャフト27の物理的な絶対位置を検出する検出器である。絶対位置は、一回転情報と多回転情報とを含むエンコーダ位置情報によって表される。一回転情報とは、アブソリュートエンコーダ23の原点から一回転内におけるモータ21の回転軸の絶対位置(絶対角度)を示す情報である。また、多回転情報とは、アブソリュートエンコーダ23の原点を基準としてカウントしたモータ21の回転軸の累積回転数(累積角度)を示す情報である。ここでは、モータ21の回転軸の累積回転数に基づく当該回転軸の位置を「多回転位置」という。すなわち、アブソリュートエンコーダ23は、モータ21の回転軸の多回転位置を検出する。
【0016】
減速機24は、入力側シャフト27及び不図示の出力側シャフトと接続されている。減速機24は、モータ21が駆動することによる入力側シャフト27の回転を所定の減速比にしたがって減速させ、当該減速後の回転を、不図示の出力側シャフトに伝達させる。出力側シャフトは、例えばアクチュエータ2が搭載されるロボット3の関節軸を構成する固定部及び可動部のうちの可動部と接続されており、当該出力側シャフトが回転することにより、当該可動部が駆動される。減速機24は、例えば楕円と真円との差動を利用した減速機である波動歯車減速機により構成される。
【0017】
制御部(モータドライバ)25は、モータ21、電磁ブレーキ22、及びアブソリュートエンコーダ23と接続されている。制御部25は、モータ21、電磁ブレーキ22及びアブソリュートエンコーダ23を制御する。
【0018】
また、制御部25は、モータ21が停電等により非常停止した場合、モータ21が非常停止したことを示す信号(以下、「非常停止信号」ともいう。)を制御装置1(後述する検知部11)に送信する。なお、ここでは、非常停止とは、例えば、停電等によりモータ21に供給される電源が遮断されたことにより、モータ21が停止した場合等のように、モータ21が通常停止以外の要因で停止することをいう。また、モータ21の停止が通常停止である場合とは、例えばモータ21が制御部25からの停止指示に従って停止した場合をいう。
【0019】
また、制御部25は、制御装置1(後述する第1指示部14)から、入力側シャフト27の多回転位置を初期位置(原点位置)に移動させる旨を示す信号が入力された場合、当該指示に従い、入力側シャフト27の多回転位置を初期位置に戻すようモータ21の動作を制御する。
【0020】
記録部26は、制御部25と接続されている。記録部26は、例えば不揮発性メモリにより構成され、入力側シャフト27の多回転位置を示す情報を記録する。なお、ここでは、記録部26は、独立した機能部として構成された例を説明するが、記録部26はこれに限らず、例えばアブソリュートエンコーダ23又は制御部25と一体に構成されていてもよい。また、記録部26は、アクチュエータ2の外部に設けられていてもよい。
【0021】
次に、制御装置1の構成例について、図2を参照しながら説明する。
制御装置1は、図2に示すように、検知部11、通知部12、記録部13、第1指示部14、第2指示部15、受付部16、及び記録制御部17を備えている。
【0022】
なお、制御装置1は、システムLSI(Large Scale Integration)等の処理回路、又はメモリ等に記憶されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等により実現される。
【0023】
検知部11は、アクチュエータ2に搭載されたモータ21が非常停止した場合に、モータ21が非常停止したことを検知する。例えば、検知部11は、モータ21が非常停止した場合に、制御部25から送信された非常停止信号を受信することにより、モータ21が非常停止したことを検知する。
【0024】
通知部12は、検知部11によりモータ21の非常停止が検知された場合、モータ21の非常停止が検知されたことをユーザに通知する。この際、通知部12は、例えば、制御装置1が有する不図示のユーザインターフェースであるUIデバイス等に対して画面表示を行うことにより、当該通知を行う。
【0025】
記録部13は、モータ21の回転軸である入力側シャフト27の多回転位置の初期位置を示す情報を記録する。記録部13は、例えばHDD(Hard Disk Drive)、DVD(Digital Versatile Disc)又はメモリ等によって構成される。
【0026】
第1指示部14は、検知部11によりモータ21の非常停止が検知された場合、制御部25に対して、入力側シャフト27の多回転位置を、記録部13に記録されている初期位置へ移動させる旨を指示する。
【0027】
例えば、第1指示部14は、検知部11によりモータ21の非常停止が検知された場合、制御部25に対して、入力側シャフト27の多回転位置を、記録部13に記録されている初期位置へ移動させる旨を示す信号を送信することにより、上記指示を行う。なお、制御部25は、第1指示部14から上記指示を受けると、当該指示に従い、入力側シャフト27の多回転位置を初期位置に移動させるようモータ21の動作を制御する。
【0028】
第2指示部15は、第1指示部14による指示後、受付部16により、入力側シャフト27の多回転位置が初期位置に移動されていない旨が受け付けられた場合、ユーザに対し、ロボット3の関節軸に設けられた後述する目印に基づいて、入力側シャフト27の多回転位置を当該多回転位置の初期位置に移動させる旨を指示する。この際、第2指示部15は、例えば、制御装置1が有する不図示のユーザインターフェースであるUIデバイス等に対して画面表示を行うことにより、当該指示を行う。
【0029】
受付部16は、第1指示部14による指示後、入力側シャフト27の多回転位置が初期位置に移動されたか否かをユーザから受け付ける。
【0030】
また、受付部16は、第2指示部15による指示が行われた場合、ユーザから、入力側シャフト27の多回転位置を当該多回転位置の初期位置に移動させるための操作、及び入力側シャフト27の多回転位置が初期位置に移動された旨の入力を受け付ける
【0031】
記録制御部17は、第1指示部14及び第2指示部15による指示後、受付部16により、入力側シャフト27の多回転位置が初期位置に移動された旨が受け付けられた場合、アブソリュートエンコーダ23により検出されている多回転位置を示す情報を当該アブソリュートエンコーダ23から取得し、取得した情報を記録部26に記録する。
【0032】
次に、実施の形態1におけるアクチュエータ2が搭載されるロボット3の構成例について、図3を参照しながら説明する。
【0033】
ロボット3は、例えば多関節型の産業用ロボットとして構成されたロボットである。ロボット3は、例えば図3Aに示すように、固定部31及び可動部32を含んで構成される関節軸を有する。
【0034】
固定部31は、例えば工場内の設備に固定された部位であり、関節軸において固定された(稼働しない)部位である。
【0035】
可動部32は、固定部31に対して当該固定部31と同軸上に接続された部位であり、関節軸において稼働する部位である。可動部32は、アクチュエータ2の減速機24に接続された出力側シャフトと接続されており、当該出力側シャフトが回転することにより、軸線方向を中心として図3Aの水平方向に回転する。
【0036】
また、アクチュエータ2、より詳しくは、固定部31及び可動部32の外周面の一部には、目印4が設けられている。この目印4は、入力側シャフト27の多回転位置の初期位置を示すものであり、例えばユーザにより設けられる。例えば、目印4は、入力側シャフト27の多回転位置が予め設定された初期位置にある状態において、固定部31及び可動部32の外周面の一部に、固定部31及び可動部32の双方に跨るように、ユーザにより設けられる。この目印4により、ユーザは、入力側シャフト27の多回転位置が初期位置からどの程度ずれているのかを容易に把握することができる。
【0037】
ここで、目印4は、図3Bに示すように、入力側シャフト27の多回転位置の初期位置Xを中心とした所定の角度幅(可動部32の回転方向における長さ)Lを有している。この角度幅Lは、例えば、アブソリュートエンコーダ23の規定回転数と、減速機24の減速比との積により求められる角度幅とする。なお、アブソリュートエンコーダ23の規定回転数は、ロボット3のメーカが任意に設定した入力側シャフト27の回転数であり、例えば-1回転から+1回転までの間の任意の回転数である。
【0038】
例えば、減速機24の減速比が「1/100」で、アブソリュートエンコーダ23の規定回転数が「±0.5回転」である場合、入力側シャフト27が+方向に0.5回転すると、可動部32(出力側シャフト)は+方向に1.8度回転する。また、入力側シャフト27が-方向に0.5回転すると、可動部32(出力側シャフト)は-方向に1.8度回転する。したがって、この場合、目印4の角度幅Lは、入力側シャフト27の多回転位置の初期位置Xを中心とした3.6度(+方向に1.8度、-方向に1.8度)の幅となる。
【0039】
同様に、減速機24の減速比が「1/50」で、アブソリュートエンコーダ23の規定回転数が「±0.5回転」である場合、入力側シャフト27が+方向に0.5回転すると、可動部32(出力側シャフト)は+方向に3.6度回転する。また、入力側シャフト27が-方向に0.5回転すると、可動部32(出力側シャフト)は-方向に3.6度回転する。したがって、この場合、目印4の角度幅Lは、入力側シャフト27の多回転位置の初期位置Xを中心とした7.2度(+方向に3.6度、-方向に3.6度)の幅となる。
【0040】
同様に、減速機24の減速比が「1/100」で、アブソリュートエンコーダ23の規定回転数が「±1.0回転」である場合、入力側シャフト27が+方向に1.0回転すると、可動部32(出力側シャフト)は+方向に3.6度回転する。また、入力側シャフト27が-方向に1.0回転すると、可動部32(出力側シャフト)は-方向に3.6度回転する。したがって、この場合、目印4の角度幅Lは、入力側シャフト27の多回転位置の初期位置Xを中心とした7.2度(+方向に3.6度、-方向に3.6度)の幅となる。
【0041】
同様に、減速機24の減速比が「1/50」で、アブソリュートエンコーダ23の規定回転数が「±1.0回転」である場合、入力側シャフト27が+方向に1.0回転すると、可動部32(出力側シャフト)は+方向に7.2度回転する。また、入力側シャフト27が-方向に1.0回転すると、可動部32(出力側シャフト)は-方向に7.2度回転する。したがって、この場合、目印4の角度幅Lは、入力側シャフト27の多回転位置の初期位置Xを中心とした14.4度(+方向に7.2度、-方向に7.2度)の幅となる。
【0042】
このように、目印4に所定の角度幅Lを持たせることにより、入力側シャフト27の多回転位置が初期位置Xにあるか否かの判断が容易となる。例えば、入力側シャフト27の多回転位置と初期位置Xとを厳密に一致させるのは困難であることが想定されることから、上記のように目印4に所定の角度幅Lを持たせ、固定部31側の目印4と可動部32側の目印4とで、少なくとも当該角度幅Lの範囲が重なっていれば、入力側シャフト27の多回転位置が初期位置Xにあるとみなすようにする。これにより、ユーザは、入力側シャフト27の多回転位置が初期位置Xにあるか否かの判断が容易となり、キャリブレーション処理が容易となる。
【0043】
なお、上記の説明では、目印4が固定部31及び可動部32の外周面の一部に、固定部31及び可動部32の双方に跨るように設けられる例について説明した。しかしながら、目印4はこれに限らず、例えば固定部31に目印4の機能を代替可能な目印(例えばケガキ線)が設けられていれば、目印4は可動部32側にのみ設けられていてもよい。
【0044】
次に、図1に示す実施の形態1に係る制御システムの動作例について、図4のフローチャートを参照しながら説明する。実施の形態1に係る制御システムでは、アクチュエータ2が動作を行う度に、図4のフローチャートに示す処理を実行する。
【0045】
なお、以下の説明では、説明を具体的にするため、一例として、モータ21が通常停止した場合と、モータ21が非常停止した場合との双方の場合における制御システムの動作例を説明する。
【0046】
まず、制御システムでは、アクチュエータ2の動作が開始されると、モータ21が制御部25からの駆動指示に従い駆動する(ステップST401)。
【0047】
次に、モータ21は、制御部25からの停止指示に従い駆動(入力側シャフト27の回転)を停止する(ステップST402)。
【0048】
次に、検知部11は、ステップST402におけるモータ21の停止が通常停止であったか否かを確認する(ステップST403)。
【0049】
その結果、ステップST402におけるモータ21の停止が通常停止であったことが確認された場合(ステップST403;YES)、制御部25は、電磁ブレーキ22に対し、モータ21のブレーキ指示を示す信号を送信する。電磁ブレーキ22は、当該信号が示すブレーキ指示に応じて所定の電磁力を発生させることにより、入力側シャフト27を停止した状態に維持する(ステップST404)。
【0050】
次に、記録制御部17は、アブソリュートエンコーダ23が検出している入力側シャフト27の多回転情報をアブソリュートエンコーダ23から取得し、当該取得した多回転情報を記録部26に記録する(ステップST405)。なお、当該多回転情報の取得及び記録は、記録制御部17に代えて制御部25が行ってもよい。
【0051】
一方、ステップST403において、ステップST402におけるモータ21の停止が通常停止でないこと(すなわち、非常停止であること)が確認された場合(ステップST403;NO)、検知部11は、モータ21が非常停止したことを検知し、当該非常停止を検知したことを示す信号を通知部12に送信する。
【0052】
次に、通知部12は、検知部11から非常停止を検知したことを示す信号を受信すると、画面表示等の方法により、モータ21の非常停止が検知されたことをユーザに通知する(ステップST406)。
【0053】
次に、第1指示部14は、記録部13を参照し、記録部13に記録されている入力側シャフト27の多回転位置の初期位置を確認する。そして、第1指示部14は、制御部25に対して、入力側シャフト27の多回転位置を、記録部13に記録されている初期位置へ移動させる旨を指示する(ステップST407)。
【0054】
次に、制御部25は、第1指示部14からの指示に応じて、モータ21を駆動し、入力側シャフト27の多回転位置を初期位置に移動させるようモータ21の動作を制御する(ステップST408)。
【0055】
その後、受付部16は、ユーザから、入力側シャフト27の多回転位置が初期位置に移動されたか否かをユーザから受け付ける(ステップST409)。具体的には、受付部16は、ユーザから、固定部31側の目印4の範囲と可動部32側の目印4の範囲とが少なくとも重なっているか否かの入力を受け付ける。
【0056】
次に、受付部16は、ステップST409において、ユーザから、入力側シャフト27の多回転位置が初期位置に移動された旨の入力を受け付けたか否かを確認する(ステップST410)。具体的には、受付部16は、ユーザから、固定部31側の目印4の範囲と可動部32側の目印4の範囲とが少なくとも重なっている旨の入力を受け付けたか否かを確認する。
【0057】
その結果、ユーザから、入力側シャフト27の多回転位置が初期位置に移動された旨の入力を受け付けたことが確認された場合(ステップST410;YES)、受付部16は、その時点でアブソリュートエンコーダ23により検出されている多回転情報が正常であると判定する(ステップST411)。
【0058】
その後、処理はステップST405へ移り、記録制御部17は、アブソリュートエンコーダ23が検出している入力側シャフト27の多回転情報をアブソリュートエンコーダ23から取得し、当該取得した多回転情報を記録部26に記録する(ステップST405)。
【0059】
その後、モータ21は非常停止から復帰する。このとき、記録部26に記録されている多回転情報は初期値に変更されているため、アクチュエータ2(制御部25)は、モータ21の復帰後は多回転情報の初期値から動作を再開することができる。
【0060】
一方、ステップST410において、ユーザから、入力側シャフト27の多回転位置が初期位置に移動されていない旨の入力を受け付けたことが確認された場合(ステップST410;NO)、受付部16は、その時点でアブソリュートエンコーダ23により検出されている多回転情報が異常であると判定する(ステップST412)。
【0061】
ステップST412において、多回転情報が異常であると判定されると、第2指示部15は、ユーザに対し、目印4に基づいて入力側シャフト27の多回転位置を当該多回転位置の初期位置に移動させる旨を指示する(ステップST413)。
【0062】
その後、ユーザは、目印4に基づいて、入力側シャフト27の多回転位置を当該多回転位置の初期位置に移動させる。その際、ユーザは、例えば制御装置1を操作して、可動部32を所定の角度(例えば0.1度)ずつ細かく稼働させることにより、固定部31側の目印4の範囲と可動部32側の目印4の範囲とが少なくとも重なるようにする。その後、ユーザは、制御装置1に対して、入力側シャフト27の多回転位置を初期位置に移動させた旨を入力する。
【0063】
このとき、受付部16は、ユーザから、入力側シャフト27の多回転位置を当該多回転位置の初期位置に移動させるための操作、及び入力側シャフト27の多回転位置が初期位置に移動された旨を受け付ける(ステップST414)。
【0064】
その後、処理はステップST405へ移り、記録制御部17は、アブソリュートエンコーダ23が検出している入力側シャフト27の多回転情報をアブソリュートエンコーダ23から取得し、当該取得した多回転情報を記録部26に記録する(ステップST405)。
【0065】
その後、モータ21は非常停止から復帰する。このとき、記録部26に記録されている多回転情報は初期値に変更されているため、アクチュエータ2(制御部25)は、モータ21の復帰後は多回転情報の初期値から動作を再開することができる。
【0066】
なお、上記の説明では、モータ21が非常停止した場合に、制御システムがステップST406~ST414の処理を実行する例を説明した。しかしながら、制御システムはこれに限らず、例えばロボット3のユーザによる指示を受け付けた場合、あるいは、予め設定されたスケジュールに従って、ステップST406~ST414の処理を実行するようにしてもよい。
【0067】
このように、実施の形態1に係る制御システムによれば、ユーザはモータ21の回転軸の多回転情報を初期値に戻すキャリブレーション処理を行う際、例えばピンあるいは水準器等といった特定の道具を使用する必要がない。したがって、実施の形態1に係る制御システムでは、ロボット3のキャリブレーション処理を行う際の手間が従来よりも大幅に軽減される。
【0068】
また、ロボット3のキャリブレーション処理は、上述のように、例えばモータ21が非常停止した場合に実施される場合がある。これは、以下のような理由による。
【0069】
例えば、多回転情報を記録部26(不揮発性メモリ)に記録する場合、例えばロボット3の通常稼働時には、モータ21が停止した際に、モータ21の停止状態を電磁ブレーキ22により保持しつつ、当該停止時点での多回転情報を記録部26に記録する。一方、例えば停電等により、ロボット3(モータ21)が非常停止した場合には、モータ21の回転軸は回転したものの、その際の多回転情報の記録が行えないという状況が発生する可能性がある。その場合、モータ21の回転軸の実際の多回転情報と、記録部26に記録されている多回転情報との間にずれが生じることが想定されるが、このずれが生じた状態のままでロボット3を再起動すると、その後のロボット3の挙動に支障を来すおそれがある。そこで、このような事態を回避するため、ロボット3のユーザは、ロボット3(モータ21)が非常停止した場合には、モータ21の回転軸の多回転情報を初期値に戻すキャリブレーション処理を行う。
【0070】
このとき、ロボット3のユーザは、ロボット3(モータ21)が非常停止した際にキャリブレーション処理を行う場合でも、ピンあるいは水準器等といった特定の道具を使用する必要がないため、ロボット3のキャリブレーション処理を従来よりも容易に実施することができる。
【0071】
また、実施の形態1に係る制御システムによれば、ロボット3の関節軸には、予め設定された多回転位置の初期位置を示す目印4が設けられているため、ロボット3のユーザは、モータ21の回転軸の多回転位置が初期位置からどの程度ずれているのかを容易に把握することができる。また、これにより、ロボット3のユーザは、ロボット3のキャリブレーション処理を容易に行うことができる。
【0072】
以上のように、この実施の形態1によれば、制御システムは、アクチュエータ2を駆動するモータ21と、モータ21の回転軸の累積回転数に基づく当該回転軸の多回転位置を検出するエンコーダ23と、モータ21及びエンコーダ23を制御する制御部25と、制御部25を制御する制御装置1と、を備え、制御装置1は、回転軸の多回転位置を、当該多回転位置の初期位置に移動させる旨を制御部25に指示する第1指示部14と、第1指示部14による指示後、回転軸の多回転位置が初期位置に移動されたか否かを受け付ける受付部16と、受付部16により、回転軸の多回転位置が初期位置に移動された旨が受け付けられた場合、エンコーダ23により検出されている多回転位置を示す情報を記録部26に記録する記録制御部17と、を備えた。これにより、実施の形態1に係る制御システムは、ロボット3のキャリブレーション処理を行う際の手間を従来よりも軽減可能となる。
【0073】
また、制御装置1は、モータ21が非常停止したことを検知する検知部11を備え、第1指示部14は、検知部11により、モータ21が非常停止したことが検知された場合、回転軸の多回転位置を、当該多回転位置の初期位置に移動させる旨を制御部25に指示する。これにより、実施の形態1に係る制御システムは、モータ21が非常停止した場合に、モータ21の回転軸の多回転位置を当該多回転位置の初期位置に移動させることができる。
【0074】
また、制御システムでは、アクチュエータ2に、予め設定された多回転位置の初期位置を示す目印4が設けられている。これにより、ロボット3のユーザは、モータ21の回転軸の多回転位置が初期位置からどの程度ずれているのかを容易に把握することができる。
【0075】
また、制御装置1は、受付部16により、回転軸の多回転位置が初期位置に移動されていない旨が受け付けられた場合、ユーザに対し、目印4に基づいて回転軸の多回転位置を当該多回転位置の初期位置に移動させる旨を指示する第2指示部15を備え、受付部16は、第2指示部15による指示後、回転軸の多回転位置が初期位置に移動されたか否かを受け付け、記録制御部17は、受付部16により、回転軸の多回転位置が初期位置に移動された旨が受け付けられた場合、エンコーダ23により検出されている多回転位置を示す情報を記録部26に記録する。これにより、実施の形態1に係る制御システムは、第1指示部14による指示によるキャリブレーション処理が成功しなかった場合でも、ユーザに対して指示を行うことで、再びキャリブレーション処理を実施することができる。
【0076】
なお、本開示はその開示の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、若しくは実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 制御装置
2 アクチュエータ
3 ロボット
4 目印
11 検知部
12 通知部
13 記録部
14 第1指示部
15 第2指示部
16 受付部
17 記録制御部
21 モータ
22 電磁ブレーキ
23 アブソリュートエンコーダ(エンコーダ)
24 減速機
25 制御部
26 記録部
27 入力側シャフト(回転軸)
31 固定部
32 可動部
L 角度幅
X 初期位置
図1
図2
図3
図4