(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025265
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】導電性シート
(51)【国際特許分類】
D06M 11/74 20060101AFI20240216BHJP
D03D 15/283 20210101ALI20240216BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
D06M11/74
D03D15/283
H01B5/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128574
(22)【出願日】2022-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 絵美
(72)【発明者】
【氏名】若元 佑太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】多羅尾 隆
(72)【発明者】
【氏名】田中 政尚
【テーマコード(参考)】
4L031
4L048
5G307
【Fターム(参考)】
4L031AB31
4L031BA02
4L031BA31
4L031DA15
4L048AA14
4L048AA19
5G307GA08
5G307GB02
5G307GC02
(57)【要約】
【課題】通気性に優れ、また、伸長させた際に起こる電気抵抗の増大が抑制でき、導電性を維持できる導電性シートを提供すること。
【解決手段】本発明の導電性シートは、導電性シートのトリム平均開口面積が0.09mm2よりも大きく、かつ、導電性シートの開口数が10個/cm2以上であり、通気性に優れ、ウェアラブルデバイスに用いた際に蒸れにくい導電性シートである。また、導電性シートの導電性材料が織物又は編物の構成繊維の表面に沿うように集中して存在しているため織物又は編物の開口内部に存在する導電性材料が少ない。その上、導電性シートの開口数が570個/cm2以下であり当該繊維交点に存在する導電性材料が少ない。このことから、導電性シートを伸長させた時でも導電性粒子同士の接触が外れ、導電経路が絶たれることで起こる電気抵抗の増大が生じ難く導電性を維持できる導電性シートである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
編物又は編物の構成繊維の表面に導電性材料を有し、前記構成繊維が有機樹脂で構成されている、主面上に貫通する開口を有する導電性シートであって、
導電性シートの主面における、10mm×10mmの正方形の領域内に存在する各開口面積を大きいものから小さいものに向けて順に並べて、各開口面積の上位20%の大きさ及び下位20%の大きさを除外した、残りの各開口面積の平均値であるトリム平均開口面積が0.09mm2より大きく、
導電性シートの開口数が10~570個/cm2である、導電性シート。
【請求項2】
導電性シートに含まれる前記導電性材料が炭素である、請求項1に記載の導電性シート。
【請求項3】
導電性シートの目付(単位:g/m2)に占める、導電性シートに含まれる前記導電性材料の含有量(単位:g/m2)の割合が、5~50mass%である、請求項1に記載の導電性シート。
【請求項4】
JIS K 7194:1994に記載の4探針法を用いて測定し求めた、表面抵抗率ρが1000(Ω/□)以下である、請求項1に記載の導電性シート。
【請求項5】
以下の方法で測定した表面抵抗変化率が300%未満である、請求項1に記載の導電性シート。
(1)導電性シートから、たて(MD)方向150mm×よこ(CMD)方向50mmの長方形状の試料を1枚採取する。
(2)前記試料の一方の主面上における長辺方向の各端部側に、2枚の長方形状の純ニッケル板(大きさ:10mm×35mm)を、2枚の純ニッケル板の間隔が100mmを成すように直接重ねて試験片を調製する。
(3)前記試験片を引張り強さ試験機(オリエンテック製、テンシロンUTM-III-100)のチャック間(距離:100mm)に、試験片における純ニッケル板が重ねられている各箇所を各チャックが挟むように固定する。次いで、2枚の純ニッケル板にそれぞれ抵抗測定器の端子を取付け、抵抗測定器でチャック間(距離:100mm)に固定されている導電性シートの初期表面抵抗値R0(単位:Ω)を測定する。
(4)抵抗測定器でチャック間に固定されている導電性シートの表面抵抗値を測定し続けながら、(2)の導電性シートを引張り速度300mm/sで長辺方向へ10%(10mm)伸長させ、速度300mm/sで元の長さに戻す。この動作を25回繰り返す。
(5)(4)の測定中に得られた最も高い表面抵抗値を、チャック間に固定されている導電性シートの最大表面抵抗値R1(単位:Ω)とする。
(6)以下の式から、たて方向の表面抵抗値変化率(単位:%)を求める。
(式)
(たて方向の表面抵抗値変化率(%))=(R1-R0)/R0×100(%)
(7)導電性シートから、よこ方向150mm×たて方向50mmの長方形状の試料を1枚採取し、(2)~(6)と同様の方法で、よこ方向の表面抵抗値変化率(単位:%)を測定する。
(8)たて方向の表面抵抗値変化率とよこ方向の表面抵抗値変化率の合計を、表面抵抗値変化率(%)とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織物又は編物の構成繊維の表面に導電性材料を有する導電性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、織物・編物・不織布などの繊維構造体と導電性材料から構成された導電性シートは、人間や動物の動作を計測するウェアラブルデバイスとしての用途が期待されている。
【0003】
このような導電性シートとして、特開2017-124497号公報(特許文献1)には、ウェアラブルデバイスに好適に使用できる、織物・編物・不織布などの布帛上に、導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電性樹脂組成物である導電性材料からなる導電パターンが形成された導電性布帛が開示されている。なお、特許文献1では、あらかじめスクリーン印刷で導電パターンを形成したものを接着剤で布帛上に接着して導電性布帛を製造している。
【0004】
また、他の導電性シートとして、特開2022-7582号公報(特許文献2)には、燃料電池の触媒層とガス拡散層との間に配置される水分管理シートとして好適に使用できる、繊維集合体の空隙中に導電性粒子が存在する導電性シートが開示されている。なお、特許文献2に記載の導電性シートは、導電性粒子同士が接触していることで、導電経路が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-124497号公報
【特許文献2】特開2022-7582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1に開示された導電性布帛は、導電性布帛に接着された導電パターンが通気しにくいものであることから通気性の低いものであり、ウェアラブルデバイスに用いた際に蒸れるおそれのあるものであった。また、導電性布帛を伸長させた際に布帛上の導電パターンが破壊され、電気抵抗が増大し導電性が低下するおそれがあるものであった。
【0007】
特許文献2に開示された導電性シートについても、確かに厚さ方向へ貫通孔を有するものの、通気性が十分でないことがあった。また、導電性布帛を伸長させた際に導電性粒子同士の接触が外れることで導電経路が絶たれ、電気抵抗が増大し導電性が低下するおそれがあるものであった。
【0008】
本発明は、このような状況下においてなされたものであり、通気性に優れ、また、伸長させた際に起こる電気抵抗の増大が抑制でき、導電性を維持できる導電性シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1にかかる発明は、「編物又は編物の構成繊維の表面に導電性材料を有し、前記構成繊維が有機樹脂で構成されている、主面上に貫通する開口を有する導電性シートであって、導電性シートの主面における、10mm×10mmの正方形の領域内に存在する各開口面積を大きいものから小さいものに向けて順に並べて、各開口面積の上位20%の大きさ及び下位20%の大きさを除外した、残りの各開口面積の平均値であるトリム平均開口面積が0.09mm2より大きく、導電性シートの開口数が10~570個/cm2である、導電性シート。」である。
【0010】
本発明の請求項2にかかる発明は、「導電性シートに含まれる前記導電性材料が炭素である、請求項1に記載の導電性シート。」である。
【0011】
本発明の請求項3にかかる発明は、「導電性シートの目付(単位:g/m2)に占める、導電性シートに含まれる前記導電性材料の含有量(単位:g/m2)の割合が、5~50mass%である、請求項1に記載の導電性シート。」である。
【0012】
本発明の請求項4にかかる発明は、「JIS K 7194:1994に記載の4探針法を用いて測定し求めた、表面抵抗率ρが1000(Ω/□)以下である、請求項1に記載の導電性シート。」である。
【0013】
本発明の請求項5にかかる発明は、「以下の方法で測定した表面抵抗変化率が300%未満である、請求項1に記載の導電性シート。(1)導電性シートから、たて(MD)方向150mm×よこ(CMD)方向50mmの長方形状の試料を1枚採取する。(2)前記試料の一方の主面上における長辺方向の各端部側に、2枚の長方形状の純ニッケル板(大きさ:10mm×35mm)を、2枚の純ニッケル板の間隔が100mmを成すように直接重ねて試験片を調製する。(3)前記試験片を引張り強さ試験機(オリエンテック製、テンシロンUTM-III-100)のチャック間(距離:100mm)に、試験片における純ニッケル板が重ねられている各箇所を各チャックが挟むように固定する。次いで、2枚の純ニッケル板にそれぞれ抵抗測定器の端子を取付け、抵抗測定器でチャック間(距離:100mm)に固定されている導電性シートの初期表面抵抗値R0(単位:Ω)を測定する。(4)抵抗測定器でチャック間に固定されている導電性シートの表面抵抗値を測定し続けながら、(2)の導電性シートを引張り速度300mm/sで長辺方向へ10%(10mm)伸長させ、速度300mm/sで元の長さに戻す。この動作を25回繰り返す。(5)(4)の測定中に得られた最も高い表面抵抗値を、チャック間に固定されている導電性シートの最大表面抵抗値R1(単位:Ω)とする。(6)以下の式から、たて方向の表面抵抗値変化率(単位:%)を求める。(式)(たて方向の表面抵抗値変化率(%))=(R1-R0)/R0×100(%)(7)導電性シートから、よこ方向150mm×たて方向50mmの長方形状の試料を1枚採取し、(2)~(6)と同様の方法で、よこ方向の表面抵抗値変化率(単位:%)を測定する。(8)たて方向の表面抵抗値変化率とよこ方向の表面抵抗値変化率の合計を、表面抵抗値変化率(%)とする。」である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1にかかる導電性シートは、織物又は編物で構成されていることで、不織布で構成されている場合と比べて導電性シートの伸縮性及び伸長回復性が優れる。また、織物又は編物は不織布と比べて開口面積が大きくても形状が保持できることから、トリム平均開口面積の大きい導電性シートが実現できる。更に、織物又は編物の構成繊維が有機樹脂で構成されていることから、構成繊維が金属のものと比べて導電性シートの伸縮性及び伸長回復性が優れる。
【0015】
そして、本発明の導電性シートは、導電性シートのトリム平均開口面積が0.09mm2よりも大きく、かつ、導電性シートの開口数が10個/cm2以上であり、通気性に優れ、ウェアラブルデバイスに用いた際に蒸れにくい導電性シートである。
【0016】
更に、導電性シートの導電性に寄与する導電性材料が織物又は編物の構成繊維の表面に存在している、つまり、導電性材料が織物又は編物の構成繊維の表面に沿うように集中して存在しているため織物又は編物の開口内部に存在する導電性材料が少ない。その上、導電性シートの開口数が570個/cm2以下であり、導電性シートを構成する織物又は編物の繊維交点が少なく、そのため、当該繊維交点に存在する導電性材料が少ない。
【0017】
一般的に、織物又は編物を伸長させると、その開口部分や繊維交点が大きく変形するものであり、導電性シートを伸長させると導電性シートにおける開口部分や繊維交点では、開口部分や繊維交点の変形により導電性粒子同士の接触が外れ易く、導電経路が絶たれ電気抵抗が増大し導電性が低下し易い。しかし、本発明の導電性シートは織物又は編物の開口内部、及び、織物又は編物の繊維交点に存在する導電性材料が少ないことから、導電性シートを伸長させた時でも導電性粒子同士の接触が外れ、導電経路が絶たれることで起こる電気抵抗の増大が生じ難く導電性を維持できる導電性シートである。
【0018】
本発明の請求項2にかかる導電性シートは、導電性シートに含まれる導電性材料が炭素である。炭素は同じく導電性材料に用いられる金属と比べ、腐食しにくく耐候性が高いことから導電性の変化が生じ難い材料である。そのため、本発明の導電性シートは、電気抵抗の増大が抑制でき導電性を維持できる導電性シートである。
【0019】
本発明の請求項3にかかる導電性シートは、導電性シートの目付(g/m2)に占める、導電性シートに含まれる前記導電性材料の含有量(g/m2)の割合が、5~50mass%である。導電性シートの目付に占める、導電性シートに含まれる前記導電性材料の含有量の割合が5mass%以上であることで、十分な導電性を有する導電性シートを提供できる。そして、導電性シートの目付に占める導電性シートに含まれる導電性材料の含有量の割合が50mass%以下であることで、導電性材料によって開口が小さくなるのが防止されることにより通気性に優れ、ウェアラブルデバイスに用いた際に蒸れにくい導電性シートである。
【0020】
本発明の請求項4にかかる導電性シートは、導電性シートの表面抵抗率ρが1000(Ω/□)以下であり、導電性に優れる導電性シートである。
【0021】
本発明の請求項5にかかる導電性シートは、表面抵抗値変化率が300%未満と、導電性シートを伸長させた際の電気抵抗の増大が抑制されている導電性シートである。そのため、伸長させた際に導電性粒子同士の接触が外れ、導電経路が絶たれることで起こる電気抵抗の増大が生じ難く導電性を維持できる導電性シートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の導電性シートは、織物又は編物で構成されていることで、不織布で構成されている場合と比べて導電性シートの伸縮性及び伸長回復性が優れる。また、織物又は編物は不織布と比べて開口面積が大きくても形状が保持できることから、トリム平均開口面積の大きい導電性シートが実現できる。更に、織物又は編物の構成繊維が有機樹脂であることから、構成繊維が金属のものと比べて導電性シートの伸縮性及び伸長回復性が優れる。
【0023】
導電性シートを構成する織物又は編物の構成繊維は、有機樹脂で構成されている。これにより、構成繊維が金属のものと比べて導電性シートの伸縮性及び伸長回復率が優れる。
【0024】
織物又は編物の構成繊維を構成する有機樹脂は、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をシアノ基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリエーテル系樹脂(ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ユリア系樹脂、エポキシ系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、ニトリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリル樹脂など)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂など)、フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂など)、セルロース系樹脂(レーヨン繊維など)、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステル樹脂あるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダクリル系樹脂など)、ビニロン系樹脂(酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂など)、ポリフェニレンサルファイド樹脂などの有機樹脂であることができる。これらの樹脂の中でも、耐熱性に優れ、かつ汎用性が高いポリエステル系樹脂が好ましく、ポリエステル系樹脂の中でも特に汎用性が高いポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましい。
【0025】
導電性シートを構成する織物又は編物の構成繊維が単一の繊維からなるモノフィラメントである場合、繊度は特に限定するものではないが、導電性シートの機械的強度が優れることから、1dtex以上が好ましく、2dtex以上がより好ましく、4dtex以上が更に好ましい。繊度の上限は特に限定するものではないが、50dtex以下が現実的である。
【0026】
導電性シートを構成する織物又は編物の構成繊維が複数の繊維からなるマルチフィラメントである場合、前記複数の繊維の繊度をすべて合算した総繊度は、特に限定するものではないが、導電性シートの機械的強度が優れることから、10dtex以上が好ましく、20dtex以上がより好ましく、40dtex以上が更に好ましい。繊度の上限は特に限定するものではないが、150dtex以下が現実的である。なお、本発明における繊度は、JIS L 1015(2010)「化学繊維ステープル試験方法」8.5.1に記載のA法に規定されている方法により測定できる。また、導電性シートを構成する織物又は編物の構成繊維は、織物又は編物の伸縮性に優れるように、捲縮繊維であってもよい。
【0027】
導電性シートを構成する織物又は編物の目付は、十分な量の導電性材料を担持し導電性が優れ、また機械的強度が優れる導電性シートであるように、更に、導電性シートを構成する織物又は編物の目付が小さければ小さいほど、導電性シートが同量の導電性材料を有している際に、導電性粒子同士の接触箇所が多く導電性シートの導電性が優れる傾向があることから、5~200g/m2が好ましく、10~150g/m2がより好ましく、15~100g/m2が更に好ましい。なお、本発明の目付はJIS L 1096:2010「織物及び編物の生地試験方法」の8.3.2のA法に規定されている標準状態における単位面積当たりの質量を目付と定義する。
【0028】
導電性シートを構成する織物又は編物の厚さは、特に限定するものではないが、通気性及び機械的強度が優れる、かつ厚みにより柔軟性を損なわない導電性シートであるように、20~1000μmが好ましく、30~700μmがより好ましく、80~500μmが更に好ましい。なお、本発明の厚さはJIS B 7502:2016「マイクロメータ」の3.1に規定されている外側マイクロメータ(測定範囲:0~25mm)を用いて、無作為に選んで測定した10点の平均値をいう。
【0029】
導電性シートが編物で構成されている場合、編物25.4mm(1インチ)あたりのウェール(たて方向の編目)数は、導電性シートの開口面積が大きく通気性が優れるように、また、機械的強度が優れるように、2~80個/25.4mmが好ましく、5~60個/25.4mmがより好ましく、10~30個/25.4mmが更に好ましい。導電性シート25.4mmあたりのコース(よこ方向の編目)数も、ウェール数と同様の理由で、2~80個/25.4mmが好ましく、5~60個/25.4mmがより好ましく、10~30個/25.4mmが更に好ましい。なお、編物の1インチ当たりのウェール数及びコース数は、JIS L 1096:2010「織物及び編物の生地試験方法」の8.6.2編物の密度により求めることができる。
【0030】
導電性シートが織物で構成されている場合、織物の25.4mm(1インチ)あたりのたて糸の本数は、たて糸が少なければ少ないほど織物における糸の密度が低く、導電性シートの開口面積が大きい傾向にある。このことから、導電性シートの開口面積が大きく通気性が優れるように、また、機械的強度が優れるように、2~80本/25.4mmが好ましく、5~60本/25.4mmがより好ましく、10~30本/25.4mmが更に好ましい。導電性シート25.4mmあたりのよこ糸の本数も、たて糸の本数と同様の理由で、2~80本/25.4mmが好ましく、5~60本/25.4mmがより好ましく、10~30本/25.4mmが更に好ましい。なお、織物の1インチ当たりのたて糸及びよこ糸の本数は、JIS L 1096:2010「織物及び編物の生地試験方法」の8.6.1織物の密度により求めることができる。
【0031】
本発明の導電性シートは、織物又は編物の構成繊維の表面に導電性材料を有する。導電性材料同士が接触していることで導電経路を形成し、導電性シートが導電性を有する。
【0032】
本発明の導電性シートを構成する導電性材料は、例えば、炭素、金属、金属酸化物、導電性ポリマーなどであることができる。これらの中でも導電性材料が炭素であると、炭素は金属と異なり、腐食しにくく耐候性が高いことから導電性の変化が生じ難い材料であり、導電性シートに用いた際に電気抵抗の増大が抑制でき導電性を維持できる導電性シートであることが出来ることから好ましい。
【0033】
本発明の導電性シートを構成する導電性材料の形状は、例えば、球状(略球状や真球状)、針状、平板状、多面体状、羽毛状、鱗片状などの粒子状や、繊維状などであることができる。
【0034】
また、導電性材料が炭素である場合、具体的には導電性を有する炭素であればよく、例えば、黒鉛、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンなどであることができる。なお、カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブでも、多層カーボンナノチューブであってもよい。
【0035】
前記炭素が下記の繊維状でない粒子状である場合、粒径が30μm以上と大きい炭素を含んでいると、粒径が小さい炭素と比べて導電性シートにおける導電性材料同士の接触箇所が少なく、これにより導電性材料間の接点が原因となる電気抵抗増大が起こりにくいため、高い導電性を有する導電性シートであることができ好ましい。
【0036】
また、導電性シートに含まれる導電性材料における、粒径が30μm以上の炭素の割合は、高ければ高いほど、より高い導電性を有する導電性シートであることができることから、50mass%以上が好ましく、60mass%以上がより好ましく、70mass%以上が更に好ましい。なお、炭素の粒径の上限は、炭素が導電性シートから脱落するおそれがあることから、1mm以下が好ましい。また、導電性材料の粒径は、100~30000倍の電子顕微鏡写真から、50個の球状の粒子サイズを測定した値の平均であり、対象となる導電性材料の粒径に合わせて適宜倍率を変更し測定できる。なお、球状でない粒子状の導電性材料の粒子サイズは、電子顕微鏡写真における粒子の面積を求め、粒子の面積を同じ面積の真円に換算した時の真円の直径を粒子サイズとする。また、繊維直径に対する繊維長のアスペクト比が100未満の繊維状の導電性材料は、粒子状の導電性材料とみなし、上記の方法で粒子サイズを求める。
【0037】
前記導電性材料が炭素繊維、カーボンナノチューブなど、繊維直径に対する繊維長のアスペクト比が100以上の繊維状である場合、導電性材料の繊維径が1~100nmであるのが好ましい。また、導電性材料が繊維状の場合、導電性材料の分散性が維持できるように、導電性材料の繊維長が1~500μmであるのが好ましい。なお、繊維径は、100000~1000000倍の電子顕微鏡写真から、10本の繊維状の導電性材料の直径を各々測定した値の平均であり、繊維長は、10~3000倍の電子顕微鏡写真から、10本の繊維状の導電性材料の長辺の長さを各々測定した値の平均であり、対象となる導電性材料の大きさに合わせて適宜倍率を変更し測定できる。
【0038】
本発明の導電性シートに含まれる導電性材料は、上述の粒子状の導電性材料と、上述の繊維状の導電性材料の両方を含んでいると、導電性シートに含まれる導電性材料同士の接触箇所が多い傾向があり、より電気抵抗が低く、導電性に優れる導電性シートが実現できることから好ましい。
【0039】
本発明の導電性シートにおける導電性材料の含有量は、多ければ多いほど、十分な導電性を有する導電性シートであることから、5g/m2以上が好ましく、10g/m2以上がより好ましく、15g/m2以上が更に好ましい。一方、導電性シートにおける導電性材料の含有量が多すぎると、導電性シートの通気度が低下するおそれがあること、および、導電性シートから導電性材料が脱落するおそれがあることから、100g/m2以下が好ましい。
【0040】
本発明の導電性シートの目付(g/m2)に占める、導電性シートに含まれる導電性材料の含有量(g/m2)の割合は、十分な導電性を有する導電性シートが提供できるように、5mass%以上が好ましく、10mass%以上がより好ましく、20mass%以上が更に好ましい。一方、導電性材料が織物又は編物の開口を塞ぎにくく導電性シートの通気性が優れ、また、導電性シートを伸長させた際に変形が生じる織物又は編物の開口内部に存在する導電性材料が少ないことで、導電性シートを伸長させた時に導電性粒子同士の接触が外れ、導電経路が絶たれることで起こる電気抵抗の増大が生じ難く導電性を維持できる導電性シートであるように、導電性シートの目付(g/m2)に占める、導電性シートに含まれる導電性材料の含有量(g/m2)の割合は、50mass%以下が好ましく、40mass%以下がより好ましく、35mass%以下が更に好ましい。なお、導電性シートの目付(g/m2)に占める、導電性シートに含まれる導電性材料の含有量(g/m2)の割合は、{(導電性シートに含まれる導電性材料の含有量(g/m2))/(導電性シートの目付(g/m2))}×100(mass%)で求めることが出来る。
【0041】
本発明の導電性シートは、導電性材料が織物又は編物の構成繊維の表面に有する。導電性材料の織物又は編物の構成繊維の表面への付着は、例えば、バインダによる付着、織物又は編物の構成繊維の表面が溶融することによる付着などが挙げられるが、導電性材料と織物又は編物の構成繊維の表面との接着が強固であるように、バインダによる付着により導電性材料が織物又は編物の構成繊維の表面に有しているのが好ましい。
【0042】
バインダの種類は、例えば、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシルなど)、エチレン-エチルアクリレート共重合体などのエチレン-アクリレート共重合体、各種ゴムおよびその誘導体[例えば、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ウレタンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)など]、ポリエチレングリコール(PEG)、セルロース誘導体[例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど]、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル系樹脂などであることができる。これらの中でも、耐薬品性、伸縮性に優れ導電性材料を長期間安定して付着していることができるため、アクリル系樹脂であるのが好ましい。なお、これらのバインダを導電性シートに1種類のみ含んでいてもよく、また、2種類以上含んでいてもよい。
【0043】
導電性シートがバインダにより導電性材料が織物又は編物の構成繊維の表面に付着している場合、導電性シートにおけるバインダの含有量は、導電性シートに導電性材料が十分に固定できるように、1g/m2以上が好ましく、3g/m2以上がより好ましく、5g/m2以上が更に好ましい。一方、導電性シートにおけるバインダの含有量の上限は、バインダの含有量が多すぎると電気抵抗増大のおそれがあること、また、通気性が低下するおそれがあることから、100g/m2以下が現実的である。
【0044】
本発明の導電性シートのJIS K 7194:1994に記載の4探針法を用いて測定し求めた表面抵抗率ρは、導電性が優れる導電性シートであるように、1000(Ω/□)以下が好ましく、500(Ω/□)以下がより好ましく、50(Ω/□)以下が更に好ましい。表面抵抗率ρの下限は、特に限定するものではないが0.05(Ω/□)以上が現実的である。なお、本発明の導電性シートの表面抵抗率ρは、JIS K 7194:1994「導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法」で抵抗を測定し、前記抵抗と前記JISに記載された補正係数から表面抵抗率ρを求めることができる。
【0045】
本発明の導電性シートは、主面上に貫通する開口を有し、導電性シートの主面における、10mm×10mmの正方形の領域内に存在する各開口面積を大きいものから小さいものに向けて順に並べて、各開口面積の上位20%の大きさ及び下位20%の大きさを除外した、残りの各開口面積の平均値であるトリム平均開口面積が0.09mm2より大きい。これにより、導電性シートの通気性が優れる。また、導電性材料が織物又は編物の構成繊維の表面に沿うように集中して存在するため、導電性シートを伸長させた際に変形が生じる織物又は編物の開口内部に存在する導電性材料が少ない。よって、導電性シートを伸長させた際に変形が生じやすい、織物又は編物の開口内部に存在する導電性材料同士の接触構造が少ないことから、導電性シートを伸長させた時でも導電性粒子同士の接触が外れ、導電経路が絶たれることで起こる電気抵抗の増大が生じ難く導電性を維持できる導電性シートである。導電性シートのトリム平均開口面積が大きければ大きいほど、上述の効果がより得られることから、導電性シートのトリム平均開口面積は0.20mm2以上がより好ましく、1.0mm2以上が更に好ましい。トリム平均開口面積が大きすぎると導電性シートを構成する織物又は編物の構成繊維の本数が少なく、導電性シートの強度が劣るおそれがあることから導電性シートのトリム平均開口面積の上限は、10mm2以下が現実的である。なお、導電性シートにおいて、導電性シートの主面における10mm×10mmの正方形の領域内に存在する各開口面積を大きいものから小さいものに向けて順に並べて、各開口面積の上位20%の大きさ及び下位20%の大きさを除外した、残りの各開口面積の平均値であるトリム平均開口面積で導電性シートを評価した理由としては、導電性シートに存在する極端に面積が大きい開口と極端に面積が小さい開口の影響を排除し、比較的均一な開口面積を有する傾向がある中位60%の開口面積で評価するためである。
【0046】
また、導電性シートのトリム平均開口面積は、以下のようにして求めることができる。
(1)導電性シートから10mm×10mmの正方形の領域を切り取り、測定サンプルとする。
(2)(1)の測定サンプルの主面(最も大きい面)を顕微鏡で拡大し、10~40倍の顕微鏡写真を用意する。なお、対象となる織物又は編物の開口面積に合わせ、適宜倍率を変更し測定できる。また、顕微鏡写真において、導電性シートの構成繊維及び導電性シートを構成する導電性材料により囲まれ、かつ、主面上に貫通しているものを開口と定義する。
(3)測定サンプルにおけるすべての開口の面積を求める。
(4)(3)で求めたすべての開口の面積を大きいものから小さいものに向けて順に並べて、各開口面積の上位20%の大きさ及び下位20%の大きさを除外した、残りの各開口面積の平均値をとる。これを導電性シートのトリム平均開口面積とする。
【0047】
本発明の導電性シートは、導電性シートの開口数が10~570個/cm2である。導電性シートの開口数が10個/cm2以上であることにより、導電性シートの通気性が優れる。また、導電性シートの開口数が570個/cm2以下であることにより、導電性シートを構成する織物又は編物の繊維交点が少なく、そのため、当該繊維交点に存在する導電性材料が少ない。本発明の導電性シートは、織物又は編物の繊維交点に存在する導電性材料が少ないことから、導電性シートを伸長させた時でも導電性粒子同士の接触が外れ、導電経路が絶たれることで起こる電気抵抗の増大が生じ難く導電性を維持できる導電性シートである。また、機械的強度が優れる。より導電性シートの電気抵抗増大が生じ難く導電性を維持でき、また機械的強度が優れるように、導電性シートの開口数は20~300個/cm2がより好ましく、30~100個/cm2が更に好ましい。なお、本発明における導電性シートの開口数は、導電性シート10mm×10mmの正方形の領域10か所において、導電性シートの構成繊維及び導電性シートを構成する導電性材料により囲まれた領域を開口と定義して開口数を測定し、導電性シート10mm×10mmの正方形の領域1か所あたりに換算した開口数の算術平均値を指す。
【0048】
本発明の導電性シートは、以下の方法で測定できる表面抵抗変化率が300%未満であるのが好ましい。これにより、導電性シートを伸長させた際の電気抵抗の増大が抑制されている導電性シートである。そのため、伸長させた際に導電性粒子同士の接触が外れ、導電経路が絶たれることで起こる電気抵抗の増大が生じ難く導電性を維持できる導電性シートである。この表面抵抗変化率が低ければ低いほど、より上記の効果が得られることから、導電性シートの表面抵抗変化率は200%以下がより好ましく、150%以下が更に好ましい。
【0049】
なお、導電性シートの表面抵抗変化率は以下の方法で求めることができる。
(1)導電性シートから、たて(MD)方向150mm×よこ(CMD)方向50mmの長方形状の試料を1枚採取する。
(2)前記試料の一方の主面上における長辺方向の各端部側に、2枚の長方形状の純ニッケル板(大きさ:10mm×35mm)を、2枚の純ニッケル板の間隔が100mmを成すように直接重ねて試験片を調製する。
(3)前記試験片を引張り強さ試験機(オリエンテック製、テンシロンUTM-III-100)のチャック間(距離:100mm)に、試験片における純ニッケル板が重ねられている各箇所を各チャックが挟むように固定する。次いで、2枚の純ニッケル板にそれぞれ抵抗測定器の端子を取付け、抵抗測定器でチャック間(距離:100mm)に固定されている導電性シートの初期表面抵抗値R0(単位:Ω)を測定する。
(4)抵抗測定器でチャック間に固定されている導電性シートの表面抵抗値を測定し続けながら、(2)の導電性シートを引張り速度300mm/sで長辺方向へ10%(10mm)伸長させ、速度300mm/sで元の長さに戻す。この動作を25回繰り返す。
(5)(4)の測定中に得られた最も高い表面抵抗値を、チャック間に固定されている導電性シートの最大表面抵抗値R1(単位:Ω)とする。
(6)以下の式から、たて方向の表面抵抗値変化率(単位:%)を求める。
(式)
(たて方向の表面抵抗値変化率(%))=(R1-R0)/R0×100(%)
(7)導電性シートから、よこ方向150mm×たて方向50mmの長方形状の試料を1枚採取し、(2)~(6)と同様の方法で、よこ方向の表面抵抗値変化率(単位:%)を測定する。
(8)たて方向の表面抵抗値変化率とよこ方向の表面抵抗値変化率の合計を、表面抵抗値変化率(%)とする。
【0050】
本発明の導電性シートの目付は、特に限定するものではないが、機械的強度が優れ、かつ軽量なデバイスを構成可能である導電性シートであるように、10~300g/m2が好ましく、15~200g/m2がより好ましく、20~120g/m2が更に好ましい。
【0051】
本発明の導電性シートの厚さは、特に限定するものではないが、機械的強度が優れ、かつ厚みにより柔軟性を損なわないデバイスを構成する導電性シートであるように、20~1000μmが好ましく、30~700μmがより好ましく、100~500μmが更に好ましい。
【0052】
次に、本発明の導電性シートの製造方法について説明する。
【0053】
まず、織物又は編物を準備する。この織物又は編物は、前述のトリム平均開口面積が0.09mm2より大きい導電性シートであることができるように、織物又は編物のトリム平均開口面積は、0.15mm2以上が好ましく、0.20mm2以上がより好ましく、1.0mm2以上が更に好ましい。なお、織物又は編物のトリム平均開口面積は、導電性シートのトリム平均開口面積と同様の方法で求めることが出来る。
【0054】
この織物又は編物は、後述する混合液を織物又は編物が含有しやすくするなどの目的のために、織物又は編物を界面活性剤処理、プラズマ処理、スルホン化処理やフッ素ガス処理など、公知の方法で親水化処理してもよい。
【0055】
次に、織物又は編物の構成繊維の表面に導電性材料を付着させる。前記織物又は編物の構成繊維の表面に導電性材料を付着させる方法は、例えば、有機樹脂から構成されたバインダにより付着させる方法、織物又は編物の構成繊維の表面を溶融し、付着させる方法などが挙げられるが、導電性材料が織物又は編物の構成繊維の表面に強固に付着できるように、有機樹脂から構成されたバインダにより付着させる方法により、織物又は編物の構成繊維の表面に導電性材料を付着させるのが好ましい。
【0056】
この中の有機樹脂から構成されたバインダにより付着させる方法は適宜選択できるが、例えば、
1.溶媒あるいは分散媒にバインダと導電性材料を混合してなる導電性材料混合液(以降、混合液と称することがある)を用意し、織物又は編物を混合液に浸漬し、ロールで絞る、
2.織物又は編物に混合液をスプレーし、ロールで絞る、
3.グラビアロールを用いたキスコータ法などの塗工方法を用いて、織物又は編物の一方の主面あるいは両主面に混合液を塗布し、ロールで絞る、
のいずれかを行った後、混合液を含んだ織物又は編物を乾燥して、混合液中の溶媒や分散媒を除去する方法であることができる。
【0057】
なお、混合液中にバインダが粒子状等の固体で存在している場合、上述の乾燥を行う際に固体のバインダを融解固化あるいは軟化により変形させることで、バインダにより織物又は編物に導電性材料を付着させるのが好ましい。このとき、混合液中に存在するバインダ粒子の形状は適宜選択するが、例えば、球状(略球状や真球状)、針状、平板状、多面体状、羽毛状などから適宜選択することができる。溶媒あるいは分散媒の種類は適宜選択するが、例えば、水、アルコール類、エーテル類などを、単独あるいは混合して使用することができる。
【0058】
また、混合液にはバインダや導電性材料の凝集を防止し分散性を向上させるため、例えば、界面活性剤(例えば、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤など)などを添加しても良く、添加量は適宜調整する。
【0059】
混合液を含んだ織物又は編物を乾燥させる方法は適宜選択するが、例えば、近赤外線ヒータ、遠赤外線ヒータ、ハロゲンヒータなどの加熱手段へ供することにより溶媒あるいは分散媒を除去する方法、また、熱風あるいは送風などにより溶媒あるいは分散媒を除去する方法などを使用できる。また、混合液を含んだ織物又は編物を、例えば、室温(25℃)に放置する方法、減圧条件下に曝す方法、溶媒あるいは分散媒が揮発可能な温度以上の雰囲気下に曝す方法など、公知の方法を用いることができる。
【0060】
なお、混合物を含んだ織物又は編物を乾燥させた後に、導電性材料が織物又は編物から外れにくいように、有機樹脂から構成されたバインダを更に塗布し乾燥させてもよい。
【実施例0061】
以下、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、編物、不織布の開口数は導電性シートの開口数と同様の方法で測定した。
【0062】
(実施例1)
まず、編物A(目付:30.0g/m2、厚さ:170μm、平均総繊度:64dtex、トリム平均開口面積:1.3mm2、開口数:52.5個/cm2、ウェール数:19.9個/25.4mm、コース数:12.7個/25.4mm)を用意した。
【0063】
(混合液aの調製)
以下の配合で、混合液aを調製した。
導電性材料A(鱗片状黒鉛、粒径:30μm):62.0質量%
導電性材料B(球状カーボンブラック、粒径:700nm):11.0質量%
水系アクリルバインダ:27.0質量%
【0064】
(混合液aの編物Aへの塗布及び乾燥)
混合液aを編物Aに塗布し、ロール圧0.05MPaのロール間に混合液aが塗布された編物Aを通し、混合液aの塗布量を調節した。
その後、混合液aが塗布された編物Aを乾燥機に供することで、編物Aに塗布された混合液aの水を除去して、導電性シート(目付:54.7g/m2、導電性材料Aと導電性材料Bの合計含有量:18.0g/m2、アクリルバインダの含有量:6.7g/m2、厚さ:250μm、トリム平均開口面積:1.2mm2、開口数:52.5個/cm2)を調製した。
【0065】
(実施例2)
(混合液bの調製)
以下の配合で、混合物bを調製した。
導電性材料A(鱗片状黒鉛、粒径:30μm):61.5質量%
導電性材料B(球状カーボンブラック、粒径:700nm):11.0質量%
導電性材料C(単層カーボンナノチューブ、繊維径:2nm、繊維長:5μm):0.5質量%
水系アクリルバインダ:27.0質量%
【0066】
(混合物bの編物Aへの塗布及び乾燥)
混合液bを織物Aに塗布し、ロール圧0.05MPaのロール間に混合液bが塗布された編物Aを通し、混合物bの塗布量を調節した。
その後、混合液bが塗布された編物Aを乾燥機に供することで、編物Aに塗布された混合物bの水を除去して、導電性シート(目付:54.7g/m2、導電性材料A、B、Cの合計含有量:18.0g/m2、アクリルバインダの含有量:6.7g/m2、厚さ:250μm、トリム平均開口面積:1.2mm2、開口数:52.5個/cm2)を調製した。
【0067】
(実施例3)
まず、織物B(目付:76.0g/m2、厚さ:300μm、平均総繊度:55dtex、トリム平均開口面積:0.22mm2、開口数:160.3個/cm2、ウェール数:31.3個/25.4mm、コース数:29.6個/25.4mm)を用意した。
【0068】
(混合液aの編物Bへの塗布及び乾燥)
混合液aを織物Bに塗布し、ロール圧0.2MPaのロール間に混合液aが塗布された編物Bを通し、混合物aの塗布量を調節した。
その後、混合液aが塗布された編物Bを乾燥機に供することで、編物Bに塗布された混合物aの水を除去して、導電性シート(目付:115.0g/m2、導電性材料Aと導電性材料Bの合計含有量:28.5g/m2、アクリルバインダの含有量:10.5g/m2、厚さ:410μm、トリム平均開口面積:0.20mm2、開口数:160.3個/cm2)を調製した。
【0069】
(実施例4)
(混合液cの調製)
以下の配合で、混合液cを調製した。
導電性材料A(鱗片状黒鉛、粒径:30μm):37.0質量%
導電性材料B(球状カーボンブラック、粒径:700nm):7.0質量%
水系アクリルバインダ:16.0質量%
水:40.0質量%
【0070】
(混合液cの編物Aへの塗布及び乾燥)
混合液cを編物Aへ塗布し、ロール圧0.4MPaのロール間に混合液cが塗布された編物Aを通し、混合液cの塗布量を調節した。
その後、混合液cが塗布された編物Aを乾燥機に供すことで、編物Aに塗布された混合液cの水を除去して、導電性シート(目付:39.1g/m2、導電性材料Aと導電性材料Bの合計含有量:6.7g/m2、アクリルバインダの含有量:2.4g/m2、厚さ:250μm、トリム平均開口面積:1.2mm2、開口数:52.5個/cm2)を調製した。
【0071】
(比較例1)
混合液aを編物Bに塗布し、混合液aが塗布された編物Bをロール間に通して混合液aの塗布量を調節した際のロール圧が0.01MPaであったことを除き、実施例3と同じ製造方法で、導電性シート(目付:236.2g/m2、導電性材料Aと導電性材料Bの合計含有量:120.0g/m2、アクリルバインダの含有量:40.2g/m2、厚さ:520μm、トリム平均開口面積:0.09mm2、開口数:128.2個/cm2)を調製した。
【0072】
(比較例2)
まず、織物C(目付:37.0g/m2、厚さ:215μm、平均総繊度:55dtex、トリム平均開口面積:0.02mm2、開口数:725.0個/cm2、ウェール数:81.2個/25.4mm、コース数:88.9個/25.4mm)を用意した。
【0073】
(混合物aの織物Cへの塗布と乾燥)
混合液aを織物Cに塗布し、ロール圧0.05MPaのロール間に混合液aが塗布された編物Cを通し、混合物aの塗布量を調節した。
その後、混合液aが塗布された編物Cを乾燥機に供することで、編物Cに塗布された混合物aの水を除去して、導電性シート(目付:61.7g/m2、導電性材料Aと導電性材料Bの合計含有量:18.0g/m2、アクリルバインダの含有量:6.7g/m2、厚さ:280μm、トリム平均開口面積:0.01mm2、開口数:575.0個/cm2)を調製した。
【0074】
(比較例3)
まず、以下の繊維から構成された不織布(乾式不織布、目付:25.0g/m2、厚さ:100μm、平均繊度:7dtex、トリム平均開口面積:0.02mm2、開口数:2687.5個/cm2)を用意した。
不織布の構成繊維:
ポリエチレンテレフタレート系繊維A(繊度:15dtex、繊維長:51mm、芯鞘型複合繊維):60mass%
ポリエチレンテレフタレート系繊維B(繊度:6dtex、繊維長:51mm、芯鞘型複合繊維):20mass%
レーヨン繊維(繊度:3.3dtex、繊維長:51mm、単繊維):20mass%
【0075】
(混合物aの不織布への塗布と乾燥)
混合物aを不織布に塗布し、ロール圧0.05MPaのロール間に混合液aが塗布された不織布を通し、混合物aの塗布量を調節した。
その後、混合液aが塗布された不織布を乾燥機に供することで、不織布に塗布された混合物aの水を除去して、導電性シート(目付:57.5g/m2、導電性材料Aと導電性材料Bの合計含有量:23.8g/m2、アクリルバインダの含有量:8.7g/m2、厚さ:140μm、トリム平均開口面積:0.01mm2、開口数:1888.0個/cm2)を調製した。
【0076】
導電性シートを構成する編物A~C/不織布の目付、厚さ、平均繊度、トリム平均開口面積、開口数、編物A~Cのウェール数及びコース数を以下の表1に、導電性シートの目付、厚さ、導電性シートを構成する導電性材料の種類及び担持量、導電性シートを構成するアクリルバインダの担持量、導電性シートのトリム平均開口面積、導電性シートに含まれる導電性材料の割合、開口数を以下の表2に示す。なお、表1において編物A~Cは平均総繊度、不織布は平均繊度を示す。
【0077】
【0078】
【0079】
また、次の方法で実施例1~4及び比較例1~3の導電性シートの物性を測定した。
【0080】
(導電性シートの通気度測定)
JIS L 1096:2010「織物及び編物の生地試験方法」8.26.1に記載のA法(フラジール形法)により、導電性シートの通気度を測定した。なお、通気度が750(cm3/cm2/s)を超えるものは測定ができなかったため、>750と表現した。
【0081】
(導電性シートの表面抵抗率測定)
JIS K 7194:1994「導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法」に記載の方法により導電性シートの抵抗を測定し、この抵抗値から表面抵抗率ρ(Ω/□)を求めた。なお、装置は三菱化学アナリテック製Loresta-GP MCP-T610を用いた。
【0082】
(導電性シートの表面抵抗値変化率)
上述の方法で、導電性シートの表面抵抗値変化率を測定した。なお、抵抗器は日置電機株式会社製バッテリハイテスタBT3563-01を用いた。
【0083】
実施例及び比較例の物性測定結果を、以下の表3に示す。
【0084】
【0085】
実施例及び比較例との比較の結果、本発明の導電性シートは、通気性に優れ、伸長させた際に起こる電気抵抗の増大が抑制でき、導電性を維持できるものであった。