(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002528
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】中央循環式給湯水系の水系水の除菌方法
(51)【国際特許分類】
A01N 59/00 20060101AFI20231228BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
A01N59/00 D
A01P3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101766
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000101042
【氏名又は名称】アクアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅代
(72)【発明者】
【氏名】神澤 啓
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011BB18
4H011DD01
(57)【要約】
【課題】 金属腐食性が低く、高温でも分解されにくく、長時間の除菌効果が得られる中央循環式給湯水系の水系水の除菌方法を提供する。
【解決手段】 中央循環式給湯水系の水系水に、モノクロラミンまたはクロラミンTを単独または併用して添加する添加工程を含む、中央循環式給湯水系の水系水の除菌方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央循環式給湯水系の水系水に、モノクロラミンまたはクロラミンTを単独または併用して添加する添加工程を含む、中央循環式給湯水系の水系水の除菌方法。
【請求項2】
前記添加工程は、前記水系水の全塩素濃度を0.5mg/L以上100mg/L以下に維持するように、前記モノクロラミンまたは前記クロラミンTを単独または併用して添加する工程である、請求項1に記載の中央循環式給湯水系の水系水の除菌方法。
【請求項3】
前記中央循環式給湯水系における前記水系水が流れる配管が、金属製配管である、請求項1または2に記載の中央循環式給湯水系の水系水の除菌方法。
【請求項4】
前記中央循環式給湯水系の貯水槽から給湯管へ給湯される前記水系水の水温は、前記貯水槽から前記給湯管への出口において35℃~65℃である、請求項1または2に記載の中央循環式給湯水系の水系水の除菌方法。
【請求項5】
前記除菌方法がレジオネラ属菌を除去する方法である、請求項1または2に記載の中央循環式給湯水系の水系水の除菌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水供給システムにおける中央循環式給湯水系の水系水の除菌方法に関し、特に長期間にわたるレジオネラ属菌の殺菌効果に優れ、使用される金属配管が腐食しにくい水系水の除菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
病院、マンション、ホテル等のように建物内に複数の給湯箇所がある場合には、中央の貯温槽から各給湯箇所に給湯し、使用されなかった湯水を貯湯槽に戻して加温循環する中央循環式給湯設備による温水供給システム(中央循環式給湯水系)が使用されている。
【0003】
図6に、中央循環式給湯水系1000の概略図を示す。中央循環式給湯水系1000では、受水槽等からポンプによって汲み上げられた水が高置水槽100に貯められており、この水が給水管200を通って貯湯槽300へ送られる。貯湯槽300中の水は、配管210を通って加熱機400へ送られて加熱されてお湯となり、お湯は配管220を通って貯湯槽300へ送られる。配管210の途中に加熱循環ポンプ500が備えられており、貯湯槽300、加熱機400、配管210、220を水が循環することができる。お湯は、貯湯槽300から給湯管230を通って、給湯水栓やシャワーへ繋がる枝配管240へ一部が送られる。また、枝配管240へ送られなかったお湯は、返湯管250を通って貯湯槽300へ戻される。
【0004】
このように、中央循環式給湯水系1000では、貯湯槽300と加熱機400の間で水が循環し、また、貯湯槽300から給湯管230、返湯管250を通って貯湯槽300へ戻ることで、貯湯槽300から貯湯槽300へ水が循環する。
【0005】
中央循環式給湯水系からは、レジオネラ属菌をはじめ各種の菌が検出される場合があることが知られている。特に、免疫力が低下している人の多い病院や老人福祉施設等において使用される中央循環式給湯水系では、細菌類や真菌類などの微生物、アメーバ等の原生生物が増殖し、例えばレジオネラ属菌を内包するバイオフィルムが発生した場合、人がレジオネラ属菌を含むエアロゾルを吸入することで肺炎を引き起こす。そのため、給湯水栓、シャワー等からレジオネラ属菌が検出される前に、レジオネラ属菌の発生防止対策を講じることにより、レジオネラ属菌を不検出にしておく必要がある。
【0006】
従来から、一般的には、給湯配管系統を塩素濃度が10~100mg/L程度の高濃度塩素水に数時間接触させて、発生したバイオフィルムを洗浄したり、配管系統水の遊離残留塩素濃度を0.5mg/L程度以上で維持し、場合によっては給湯末端での遊離残留塩素濃度を所定濃度以上に維持するために、循環給湯水系で1mg/Lを超える濃度に維持する対策が講じられている。また、電気分解により次亜塩素酸を生成する方法も知られている。(特許文献1、特許文献2)
【0007】
また、貯湯槽水温を殺菌可能温度、例えば60℃以上の高温に加温することでレジオネラ等の細菌類を殺菌することが知られている。(特許文献3、特許文献4)
【0008】
しかしながら、給湯配管の材質は銅管やSUS304ステンレス鋼管等の金属製配管が多く採用されており、上記レジオネラ属菌対策を講じた場合は、水質、温度、遊離残留塩素濃度の関係で、金属製配管に腐食が発生し、設備全体に不具合が生じることが懸念されるために改良が求められていた。
【0009】
さらに、中央循環式給湯水系では多くの場合、貯温槽から給湯管への出口における水系水の温度(出口温度)が50℃程度以上、返湯管から貯温槽への入口における水系水の温度(返湯温度)でも35℃程度以上となっており、従来から使用されている次亜塩素酸等の遊離塩素剤では、水系水において遊離塩素剤が短期間で分解して効果がなくなるために、遊離塩素剤を頻繁に添加する必要があり、水系内装置の金属腐食が進む恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001-99486号公報
【特許文献2】特開2006-317105号公報
【特許文献3】特開2004-150649号公報
【特許文献4】特開2015-38397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記課題を解決する中央循環式給湯水系の除菌方法、すなわち、特定の除菌剤を用いることで金属腐食性が低く、高温でも分解されにくく、長時間の除菌効果が得られる中央循環式給湯水系の水系水の除菌方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、モノクロラミンまたはクロラミンTを単独または併用して中央循環式給湯水系の水系水に添加することで、従来技術からは想定できない優れた除菌効果が長時間に渡って得られることを見出し、以下の(1)~(5)の本発明を完成するに至った。
【0013】
(1)中央循環式給湯水系の水系水に、モノクロラミンまたはクロラミンTを単独または併用して添加する添加工程を含む、中央循環式給湯水系の水系水の除菌方法。
【0014】
(2)前記添加工程は、前記水系水の全塩素濃度を0.5mg/L以上100mg/L以下に維持するように、前記モノクロラミンまたは前記クロラミンTを単独または併用して添加する工程である、(1)に記載の中央循環式給湯水系の水系水の除菌方法。
【0015】
(3)前記中央循環式給湯水系における前記水系水が流れる配管が、金属製配管である、(1)または(2)に記載の中央循環式給湯水系の水系水の除菌方法。
【0016】
(4)前記中央循環式給湯水系の貯水槽から給湯管へ給湯される前記水系水の水温は、前記貯水槽から前記給湯管への出口において35℃~65℃である、(1)または(2)に記載の中央循環式給湯水系の水系水の除菌方法。
【0017】
(5)前記除菌方法がレジオネラ属菌を除去する方法である、(1)または(2)から(4)の何れか一項に記載の中央循環式給湯水系の水系水の除菌方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、中央循環式給湯水系の水系水の除菌方法であって、モノクロラミンまたはクロラミンTの少なくともいずれかを中央循環式給湯水系の水系水に添加することにより、温度の高い水系水であっても優れた除菌効果を長期間示すものであり、従来使用の除菌剤よりも金属腐食の改良が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】25℃における薬品の温度安定性試験の結果を示す図。
【
図2】35℃における薬品の温度安定性試験の結果を示す図。
【
図3】45℃における薬品の温度安定性試験の結果を示す図。
【
図4】55℃における薬品の温度安定性試験の結果を示す図。
【
図5】薬品のステンレスへの腐食性の評価として45℃における各薬品の腐食電圧測定の結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。本発明の中央循環式給湯水系の水系水の除菌方法は、モノクロラミンまたはクロラミンTを単独または併用して添加する添加工程を含む除菌方法である。
【0021】
本発明で用いるモノクロラミンとはモノクロロアミンであり、例えば次亜塩素酸ナトリウムとアンモニウム塩を反応させて作成することができる。また、クロラミンTとは、N-クロロ-4-メチルベンゼンスルホンアミドのことである。モノクロラミンおよびクロラミンTは、水中では遊離残留塩素を発生せず、全残留塩素として結合残留塩素が酸化力を示し、各種微生物の殺滅、増殖抑制に寄与する。
【0022】
本発明におけるモノクロラミンやクロラミンTの水系水への単独または併用での添加濃度は、中央循環式給湯水系水の全塩素濃度が0.5mg/L~100mg/L、好ましくは1mg/L~100mg/Lの範囲内に維持されるように添加する。これにより特にレジオネラ属菌に対する持続した殺菌効果が得られる。例えば、モノクロラミンまたはクロラミンTを給湯水の循環系統に添加して、濃度を調整することができる。
【0023】
また、金属腐食に関しては、少なくとも中央循環式給湯水系の水系水が流れる一部配管が金属製配管の場合には、従来使用されている遊離塩素剤の場合はステンレス鋼等の腐食電位を上昇させ、孔食を引き起こすが、本発明で添加するモノクロラミンやクロラミンTは、前記濃度範囲で添加した場合では遊離塩素剤の腐食電位よりも100mV以上低くなるため、高温給湯水配管の腐食は防止されることになる。
【0024】
なお、病院などで給水給湯を透析用水として使用する場合に、水系水中の残留塩素濃度が問題となることがあるが、モノクロラミンやクロラミンTは通常の透析用水製造装置に内蔵する、活性炭ろ過器(SV50以下)で除去することができるため、ろ過により残留塩素濃度を低下させることができる。
【0025】
モノクロラミンやクロラミンTは、遊離塩素に比較して、高温による濃度の低下の程度が少なく、維持濃度を高く保つ管理が容易であり、給湯管や返湯管等の温水配管中に停滞水が発生する場合や使用頻度の低い混合水栓に水系水が長く停滞する場合でも、残留塩素が長時間保たれるため、微生物の増殖、バイオフィルムの定着、レジオネラ属菌の定着、増殖を防止することができる。そのため、次亜塩素酸ナトリウムを添加する場合よりも添加頻度を下げてモノクロラミンやクロラミンTを使用することが可能となる。例えば、水系水の温度が55℃の場合では、モノクロラミンやクロラミンTの場合は水系水中の残留塩素濃度が3mg/Lの濃度になるように添加した場合には、残留塩素濃度が1.5mg/Lになるまでに10日程度以上かかるので(
図4)、残留塩素濃度1.5mg/Lを下限維持濃度とすれば、10日間隔でモノクロラミンやクロラミンTを水系水へ添加すればよい。一方で、次亜塩素酸ナトリウムを水系水に添加する場合では、同条件で2日程度で残留塩素濃度が1.5mg/Lになってしまうため、2日程度の間隔での次亜塩素酸ナトリウムの添加が必要となる(
図4)。
【0026】
本発明のモノクロラミンまたはクロラミンTと併用可能な薬剤としては、本発明の効果が妨げられない範囲で、さらにその除菌効果を改良する等の目的で、従来から水処理用途で使用されている公知の防食剤、例えば亜硝酸、リン酸、珪酸、モリブデン酸、タングステン酸、アルミン酸、硼酸、オキシ酸、アミノ酸、脂肪族有機酸、芳香族カルボン酸、リグニンスルホン酸、或いはこれらの塩等や、タンニン、リグニン、或いは、例えばトリルトリアゾール、ベンゾトリアゾール、メルカプトベンゾチアゾール等のアゾール類、亜鉛塩等公知の防食剤、アニオン性界面活性剤やノニオン性界面活性剤等の洗浄剤、分散剤等を単独または併用して適宜使用することができる。これらの防食剤等を併用する場合も、本発明に含まれる。
【実施例0027】
以下に、本発明の除菌方法の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0028】
[薬品の温度安定性試験]
(試験方法)
次亜塩素酸ナトリウム水溶液の遊離残留塩素濃度の調整、およびモノクロラミン或いはクロラミンT水溶液の全残留塩素濃度の調整と、試験水を恒温庫に保管し、経時で塩素濃度を測定する安定性試験を以下の手順で行った。
(1)脱塩素処理したつくば市水に次亜塩素酸ナトリウムを添加して、残留塩素濃度(遊離残留塩素濃度)が3mg/Lの試験水を調整する。
(2)(1)と同様の脱塩素処理したつくば市水にモノクロラミンまたはクロラミンTを添加して、残留塩素濃度(全残留塩素濃度)が3mg/Lの試験水を調整する。
(3)栓付きパウチ袋を複数用意し、調製した(1)、(2)の試験水を満水に入れて密栓する。これにより、(1)の試験水を4体のパウチ袋に入れ、同様にモノクロラミンを添加した試験水、およびクロラミンTを添加した試験水を各4体のパウチ袋に入れる。
(4)恒温庫(55℃の暗所)に(1)の試験水を入れたパウチ袋、モノクロラミンを添加した試験水を入れたパウチ袋、およびクロラミンTを添加した試験水を入れたパウチ袋を各1体ずつ入れて試験水の温度を55℃に保持し、2日から3日毎に恒温庫から各試験水を取り出して、残留塩素濃度を測定する。また、3つの恒温庫(45℃、35℃、25℃の暗所)にも、同様にパウチ袋を各1体ずついれ、同様に残留塩素濃度を測定する。なお、25℃、および35℃の試験においては、クロラミンTを添加した試験水の試験は行わなかった。残留塩素濃度の測定は、DPD法遊離塩素濃度測定法、DPD法全塩素濃度測定法で測定した。
【0029】
各温度で各試験水を保持した時の、経時での全残留塩素濃度の濃度変化を測定した結果を、
図1~4に示す。
図1~4において、「次亜塩素酸Na」の結果は、(1)の試験水の結果である。
【0030】
図1~4の結果より、次亜塩素酸ナトリウムを添加した場合と比べて、モノクロラミン、およびクロラミンTを添加した場合の方が、残留塩素濃度が低下しにくく、薬剤の添加の間隔を伸ばせることがわかった。特に、モノクロラミン、およびクロラミンTは、45℃および55℃という試験水が高温の場合で残留塩素濃度が低下しにくいことから、高温でも分解されにくく、保存安定性に優れることがわかる。
【0031】
[薬品のステンレスへの腐食性試験]
次亜塩素酸ナトリウム水溶液の遊離塩素濃度の調整、およびモノクロラミン或いはクロラミンT水溶液の全塩素濃度の調整と腐食性試験を以下の手順で行った。
【0032】
(試験方法)
ポリ容器に脱塩素処理したつくば市水を900mL入れ、45℃に加温した。そして、SUS304の試験片をポリ容器中のつくば市水に半分浸漬し、つくば市水を300rpmで撹拌しながら、経時での腐食電位を4日間測定した。薬剤を添加しない「無処理」の測定結果として、その結果を
図5に示す。
【0033】
同様に、脱塩素処理したつくば市水に次亜塩素酸ナトリウムを添加して、残留塩素濃度が3mg/Lおよび10mg/Lの試験水を調整し、それぞれ別個のポリ容器に900mLずつ入れ、45℃に加温した。そして、SUS304の試験片をポリ容器中の試験水に半分浸漬し、試験水を300rpmで撹拌しながら、経時での腐食電位を4日間測定した。遊離残留塩素濃度が3mg/Lの試験水を用いた場合を「次亜塩素酸Na(3)」、遊離残留塩素濃度が10mg/Lの試験水を用いた場合を「次亜塩素酸Na(10)」の測定結果として、これらの結果を
図5に示す。
【0034】
同様に、脱塩素処理したつくば市水にモノクロラミンを添加して、残留塩素濃度が3mg/Lおよび10mg/Lの試験水を調整し、それぞれ別個のポリ容器に900mLずつ入れ、45℃に加温した。そして、SUS304の試験片をポリ容器中の試験水に半分浸漬し、試験水を300rpmで撹拌しながら、経時での腐食電位を4日間測定した。残留塩素濃度が3mg/Lの試験水を用いた場合を「モノクロラミン(3)」、残留塩素濃度が10mg/Lの試験水を用いた場合を「モノクロラミン(10)」の測定結果として、これらの結果を
図5に示す。
【0035】
同様に、脱塩素処理したつくば市水にクロラミンTを添加して、残留塩素濃度が3mg/Lおよび10mg/Lの試験水を調整し、それぞれ別個のポリ容器に900mLずつ入れ、45℃に加温した。そして、SUS304の試験片をポリ容器中の試験水に半分浸漬し、試験水を300rpmで撹拌しながら、経時での腐食電位を4日間測定した。残留塩素濃度が3mg/Lの試験水を用いた場合を「クロラミンT(3)」、残留塩素濃度が10mg/Lの試験水を用いた場合を「クロラミンT(10)」の測定結果として、これらの結果を
図5に示す。
【0036】
図5より、無処理の腐食電位が-50mVAg-AgCl前後で推移しているのに対して、次亜塩素酸ナトリウムを添加した試験水の場合は3mg/L濃度で150mVAg-AgCl前後、10mg/L濃度で50mVAg-AgCl付近で推移した。一方で、モノクロラミンを添加した試験水、クロラミンTを添加した試験水の場合は、3mg/L濃度、10mg/L濃度のそれぞれで0mVAg-AgCl付近で推移しており、モノクロラミン、クロラミンTを添加した試験水が防食性に優れていることがわかる。
【0037】
[レジオネラ属菌に対する殺菌効果]
レジオネラ属菌に対する殺菌効果について、以下の手順で行った。
【0038】
(試験方法)
(1)つくば市水を、循環装置を用いて30℃で循環して濃縮させた試験水に対し、培地で培養したレジオネラのコロニ―を採取して試験水に懸濁させることにより、レジオネラ属菌を接種した。
(2)(1)によりレジオネラ属菌を接種した試験水に対し、試験水の残留塩素濃度が3mg/Lとなるように各薬剤をその試験水に添加した後、接種後の試験水の温度を30℃に保持して静置しておき、30分後、1時間後、3時間後、6時間後に試験水を採取してチオ硫酸ナトリウムで中和した。その後、ISO11731:2017に準拠したレジオネラの培養検査方法を行い、レジオネラ属菌数を測定した。
【0039】
参考として、濃縮後のつくば市水の水質を表1に示す。表1において、単位はpHを除いてmg/Lである。
【0040】
【0041】
また、レジオネラの培養検査方法を実施した後のレジオネラ属菌数について表2に示す。薬剤を添加しない無処理の水ではレジオネラ属菌が検出されたが、次亜塩素酸ナトリウムを添加した試験水からはレジオネラ属菌が検出されず、良好な殺菌効果を示した。また、モノクロラミンおよびクロラミンTを添加した試験水からも、レジオネラ属菌が検出されず、良好な殺菌性を示した。
【0042】