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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024025284
(43)【公開日】2024-02-26
(54)【発明の名称】手摺
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/18 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
E04F11/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128618
(22)【出願日】2022-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】長峰 大輔
【テーマコード(参考)】
2E301
【Fターム(参考)】
2E301GG00
2E301GG06
2E301HH11
2E301HH18
2E301JJ05
2E301JJ21
2E301KK01
2E301LL02
2E301LL16
2E301LL23
2E301MM03
2E301MM06
(57)【要約】
【課題】 幼児や子供が手摺を乗り越えて屋外に転落するのを未然に防止する手摺を提供する。
【解決手段】 手摺であって、屋内側に向けて配置される前壁部21を備え、前記前壁部21は、その上端縁から下端縁にわたって屋内側に向けて下り勾配に傾斜する傾斜面を有し、この傾斜面により手指の指掛かりを抑制する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内側に向けて配置される前壁部を備え、
前記前壁部は、その上端縁から下端縁にわたって屋内側に向けて下り勾配に傾斜する傾斜面を有し、この傾斜面により手指の指掛かりを抑制することを特徴とする手摺。
【請求項2】
屋外側に向けて配置される後壁部と、
前記前壁部と前記後壁部のそれぞれの上端縁を連接する上壁部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の手摺。
【請求項3】
前記後壁部は、上側壁と下側壁とを有し、
前記上側壁は、屋内側に向けて下り勾配に形成され、
前記下側壁は、屋外側に向けて下り勾配に形成されるとともに、その上端縁が、前記上側壁の下端縁に連接され、
前記上壁部と前記後壁部の前記上側壁とがなす二面角は、鋭角に設定されていることを特徴とする請求項2記載の手摺。
【請求項4】
前記前壁部と前記後壁部との間の空間に補強部材としての補強片が設けられ、
前記補強片は、前記前壁部の内側面と前記後壁部の内側面とを連接するように形成されていることを特徴とする請求項2記載の手摺。
【請求項5】
支柱に固定される底部を有し、
前記前壁部と前記底部は、それぞれ屋内側の端縁部分が連接されて側面視略くの字状をなすことを特徴とする請求項1~4いずれか1項記載の手摺。
【請求項6】
前記前壁部の前記傾斜面は、その上端縁から下端縁にわたって滑らかに連続する平面をなすことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項記載の手摺。
【請求項7】
前記前壁部の前記傾斜面は、その上端縁から下端縁にわたって滑らかに連続する曲面をなすことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項記載の手摺。
【請求項8】
前記前壁部は、高さ調整可能な支柱に設けられることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項記載の手摺。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手摺に関し、特に、幼児や子供が建物のベランダやバルコニー等に設置された手摺を乗り越えて、屋外に転落するのを防止するための手摺に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物のベランダやバルコニー等には、人の転落を防止するため、手摺が設置されているが、近年、幼児や子供が手摺を乗り越えて屋外に転落する事故が発生している。そこで、そのような転落事故を防止するために、従来、特許文献1に記載されるように、乗り越え防止用の突出部を突設させたフェンスの構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-213208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のフェンスの構造は、面材を支持するフェンス柱の上端部から屋内側に向かって突設された突出部によって、子供が上記面材を乗り越えることができなくなるように構成したものである。しかし、上記突出部の先端に設けられた手すり部は、子供がつかんでぶら下がることもできる構造のため、安全性の点で改善の余地がある。
【0005】
また安全とは別の問題として、突出部が屋内側に向かって突出する構造のため、バルコニーやベランダ等の有効スペースが狭まることや、洗濯物を干す際などにおいて、腕を上下させると突出部と干渉する可能性もあり、普段使いの機能が損なわれることもある。さらに、部材点数が増え高コスト化を招くおそれもあった。
【0006】
本発明は、上記従来の問題に鑑みなされたもので、特に、幼児や子供が手摺を乗り越えて屋外に転落するのを未然に防止する手摺を提供することを課題とする。
また、手摺の設置に係り、バルコニーやベランダ等のスペースにおいて、普段使いの機能を損なわず、さらに、既設の手摺と交換的に設置することも可能とし、高コスト化を回避することのできる手摺を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題に鑑みて、本発明の一つは、以下の構成を具備するものである。
屋内側に向けて配置される前壁部を備え、前記前壁部は、その上端縁から下端縁にわたって屋内側に向けて下り勾配に傾斜する傾斜面を有し、この傾斜面により手指の指掛かりを抑制することを特徴とする手摺。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る手摺の斜視図である。
図2】同手摺を側面から見た概要図である。
図3】同手摺の要部側面図である。
図4図2に用いられた支柱の変形例を示す側面図である。
図5図5(a)~図5(e)は、本発明の他の実施形態に係る手摺本体を示す側面図である。
図6図6(a)及び図6(b)は、本発明の他の変形例に係る手摺を示す概略側面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る手摺本体の正投影図法による六面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明に係る実施形態について、図面に基づいて説明する。図1には、本発明の一実施形態に係る手摺の斜視図が示され、図2には、同手摺を側面から見た概要図が示され、図3には、同手摺の要部側面図が示されている。
【0010】
[実施形態1]
本発明の一実施形態に係る手摺1は、図1及び図2に示すように、手摺本体2と底部3とを有し、例えば、ベランダやバルコニー等の床面FLから立設する壁部A上に複数の支柱4、4を介して設置される。なお、本実施形態1においては、壁部Aの上面に取付固定された笠木B上に複数の支柱4、4が設けられ、これら支柱4、4の上面に手摺1が配設されている。
以下、手摺本体2及び底部3の具体的な構成について説明する。
【0011】
(手摺本体)
手摺本体2は、支柱4の上端に設置される手摺用笠木材をなし、図3に示すように、前壁部21と、後壁部23と、前壁部21と後壁部23のそれぞれの上端縁を連接する上壁部22と、前壁部21の下部に形成された前側係合部24と、後壁部23の下部に形成された後側係合部25を有する。
この手摺本体2は、その断面形状(図3を参照)が連続する真直で長尺な部材として形成され、設置対象のベランダやバルコニー等に対応して、手摺1として必要な長さに設定される。
手摺本体2は、例えばアルミニウム合金を押し出し成形することによって形成されるが、その他、合成樹脂材料等から一体成形することも可能である。
【0012】
<前壁部>
前壁部21は、図3に示すように、その上端縁から下端縁にわたって屋内側に向けて下り勾配に傾斜する傾斜面を有し、その表面が屋内側を向くように配置される。
この傾斜面は、凹凸のない滑らかに連続する平面を構成するとともに、その傾斜方向の長さは、幼児や子供の手指に比して長く(大きく)構成されている。
【0013】
前壁部21の傾斜角(水平面に対する前壁部21の傾斜面のなす角度)は、後述する手指の指掛かりを抑制する機能面等を考慮すると、25°~75°の角度範囲が好ましく、40°~50°の角度範囲がより好ましい。
なお、前壁部21の傾斜角は、これらの角度範囲に限定されるものではない。
【0014】
幼児や子供が手摺1に手を掛けてよじ登るような動作やぶら下がるような動作をする場合には、幼児や子供の手指(例えば、人差し指、中指、薬指及び小指の四指)は、図2及び図3に示すように、前壁部21に掛けられることになる。
しかし、前壁部21の傾斜面における傾斜方向の長さは、幼児や子供の手指に比して長く(大きく)構成され、さらに、傾斜面の傾斜角は25°~75°の角度範囲に設定されているため、前壁部21に掛けられた手指は傾斜面に沿って屋内側(図3に示す矢印方向)に引き戻されることととなり、手摺1を強く把持することができない。
したがって、幼児や子供は、手摺1から手を離し、よじ登るような動作やぶら下がるような動作をあきらめることになり、手摺を乗り越えて、屋外に転落するのを防止することができる。
【0015】
前壁部21の傾斜角は、25°程度あれば傾斜面に沿った屋内側への引き戻し作用が十分期待でき、その角度が大きいほど、その作用が大きくなる。しかし、前壁部21の傾斜角を大きくするほど、それに伴って手摺本体2のサイズ(高さ寸法)も大きくなることから、サイズやコスト面を考慮すると、前壁部21の傾斜角は、75°程度までに設定するのが好ましい。
また、前壁部21の傾斜角を、40°~50°の角度範囲に設定すると、手摺本体2の高さHと幅Wが同程度のサイズ感となることから、手摺本体2の意匠性も向上させることができる。
【0016】
<上壁部>
上壁部22は、前壁部21と後壁部23のそれぞれの上端縁を連接するものであり、手摺本体2の頂部をなす。この上壁部22は、略水平に延びる平坦面をなし、手摺本体2の剛性を高めている。
【0017】
また、上壁部22の幅(図3の左右方向の幅)は、幼児や子供の第2指(人差し指)の第1関節から第2関節の間の部位より短い幅狭に形成されるのが好ましく、その幅は、例えば、保護対象とする幼児や子供の平均的な指の大きさ等を考慮して設定される。
【0018】
このように上壁部22の幅を幅狭に構成することで握りにくさを助長することができる。仮に、幼児や子供が前壁部21の傾斜面に沿って手指を伸ばし、上壁部22の上面と上側壁231の傾斜面とがなす二面角に手指の第1関節を引っ掛け得たとしても、上壁部22が幅狭であるため指が浮き握りにくく、さらに、握り直しを試みても指がうまく掛からない状態となる。
【0019】
また、後述するように、そもそも上記二面角は角度が鋭角に設定されているため、そこに手指を掛けてよじ登るような動作やぶら下がるような動作をすると、幼児や子供の手指には、そのような動作に伴う相応の押圧力が作用し痛さを感じることになる。
したがって、幼児や子供は、手摺1から手を離し、よじ登るような動作やぶら下がるような動作をあきらめることになり、手摺を乗り越えて、屋外に転落するのを防止することができる。
【0020】
<後壁部>
後壁部23は、図3に示すように、その上側に形成された上側壁231と下側に形成された下側壁232とを有し、上側壁231の上端縁が上壁部22の屋外側の端縁に連接される。後壁部23の表面は屋外側を向くように配置される。
上側壁231は、屋内側に向けて下り勾配の傾斜面に形成され、また、下側壁232は、屋外側に向けて下り勾配の傾斜面に形成される。そして、上側壁231の下端縁と下側壁232の上端縁とが連接されている。
【0021】
また、上壁部22の上面と上側壁231の傾斜面とがなす二面角は、鋭角に設定されている。したがって、仮に、幼児や子供の手指が手摺本体2の上壁部22と上側壁231の接続部位に掛けられて、よじ登るような動作やぶら下がるような動作が行い得たとしても、接続部位に掛けられた手指には、そのような動作に伴う相応の押圧力が作用し痛さを感じることになる。
したがって、幼児や子供は、手摺1から手を離し、よじ登るような動作やぶら下がるような動作をあきらめることになり、手摺を乗り越えて、屋外に転落するのを防止することができる。
【0022】
<前側係合部、後側係合部>
手摺本体2の前壁部21の下部及び後壁部23(下側壁232)の下部には、図3に示すように、それぞれ前側係合部24及び後側係合部25が空間を開けて対向するように設けられる。
この前側係合部24及び後側係合部25は、後述する底部3に形成された前側被係合部31の係合溝31a及び後側被係合部32の係合溝32aにそれぞれ係合する突条24a及び突条25aが形成されている。
【0023】
(底部)
底部3は、手摺1の基部をなし、手摺本体2と同様に真直で長尺に形成されている。底部3の幅方向両端縁には手摺本体2の前側係合部24及び後側係合部25にそれぞれ係合する前側被係合部31及び後側被係合部32が形成されている。
前側被係合部31には、手摺本体2における前側係合部24の突条24aに係合する係合溝31aが形成され、また、後側被係合部32は、手摺本体2における後側係合部25の突条25aに係合する係合溝32aが形成されている。
このような底部3は、例えばアルミニウム合金を押し出し成形することによって形成されるが、その他、合成樹脂材料等から一体成形することも可能である。
【0024】
また、底部3の幅方向(図3の左右方向)の中央部分には、長手方向に連続し所定幅を有して上方に突出する略コ字状の溝部33が折曲形成されている。この溝部33は、底部3の剛性を高めるとともに、例えば、支柱4と支柱4との間に付加的なフェンス(不図示)を設置する際の位置決めに用いられる。
【0025】
次に、上記実施形態の手摺1の設置態様について説明する。
手摺本体2と底部3とを有する手摺1は、図1及び図2に示すように、例えば、ベランダやバルコニー等の壁部Aに固定された笠木B上に複数の支柱4、4を介して設置される。支柱4は、例えば、中空な横断面矩形をなす角パイプ状に形成された長尺体であり、その内側には、長手方向に沿って固定手段としてのネジ6、7を受け入れるネジ受け部(不図示)が設けられている。
【0026】
具体的には、図3に示すように、各支柱4、4に対し手摺1の底部3を架け渡し、底部3の各取付穴(不図示)を介して各支柱4、4のネジ受け部(不図示)にネジ7を螺合させる。さらに、底部3上に支持具5を載置し、該支持具5を介して支柱4のネジ受け部(不図示)にネジ6を螺合させて各支柱4、4に底部3を取り付ける。その後、底部3の前側被係合部31及び後側被係合部32のそれぞれに、手摺本体2の前側係合部24及び後側係合部25を係合させて手摺1が設置される。
【0027】
また、底部3は、既設の手摺本体(不図示)の底部としても機能する。例えば、各支柱4、4に取り付けられた底部3に、断面形状が略四角形、略楕円形、略円形等に形成されるとともに、この断面形状で連続する真直で長尺な部材で形成された既設の手摺本体(不図示)が設置されている場合には(底部3の前側被係合部31及び後側被係合部32のそれぞれに、上記既設の手摺本体に形成された前側係合部及び後側係合部が係合している。)、そのような既設の手摺本体を底部3から取り外し、その底部3に本発明に係る手摺本体2を交換して設置することも可能である。
この場合、既設の手摺本体と本発明に係る手摺本体2とを交換するだけで、簡単に、幼児や子供が手摺を乗り越えて屋外に転落するのを未然に防止する手摺が設置できるとともに、手摺の設置に係る高コスト化を回避することができる。
【0028】
また、手摺の設置に関し、建築基準法施行令には、屋上広場又は二階以上の階にあるバルコニーその他これに類するものの周囲には、安全上必要な高さが1.1メートル以上の手すり壁、さく又は金網を設置すべき旨規定されている。
そこで、本実施態様においては、ベランダやバルコニー等の壁部A(笠木Bを含む)の高さh1(図2に示す床面FLから笠木Bの上面までの高さ)を、例えば800mmに設定し、笠木Bの上面から手摺1の上面(上壁部22の上面)までの高さh2を例えば400mmに設定している。また、手摺本体2は、その幅Wが69mm、高さHが70mmに設定されるとともに、前壁部21の傾斜角度が略45°に設定されている。
なお、手摺1の幅Wや高さH、及び前壁部21の傾斜角度は、それらの寸法、角度に限定されるものではなく、適宜の寸法、角度に設定可能である。
【0029】
ここで、例えば、7歳程度の男子(図2の2点鎖線に示す)の平均的な身長h3を123cm前後、肩峰高h4(床面FLから肩峰点までの鉛直距離)を95cm前後と仮定すると、ベランダやバルコニーに設置した手摺1とこの子供の位置関係は、図2に示すようになる。
【0030】
この場合、この子供は、意識的に手を伸ばして手摺1に手を掛けることができるが、子供の肩峰高h4(95cm前後)は、手摺1の上面までの高さ(h1+h2:1200mm)より低いため、この子供の手や腕は、手摺1に向かって斜め上方に伸ばした状態となる。
この状態で、手摺1をよじ登るような動作やぶら下がるような動作をしても、手摺1の前壁部21は、その上端縁から下端縁にわたって屋内側に向けて下り勾配に傾斜する傾斜面を有し、凹凸のない滑らかに連続する平面を構成しているため、前壁部21に掛けられた手指は、傾斜面に沿って屋内側(図3に示す矢印方向)に引き戻されることになる。また、前壁部21の傾斜面における傾斜方向の長さは、子供の手指に比して長く(大きく)構成されているため、前壁部21に掛けられた手指を曲げて、手摺1を強く把持することもできない。
したがって、幼児や子供は、手摺1から手を離し、よじ登るような動作やぶら下がるような動作をあきらめることになり、手摺を乗り越えて、屋外に転落するのを防止することができる。
【0031】
また、上壁部22の幅は、例えば、幼児や子供の第2指(人差し指)の第1関節から第2関節の間の部位より短い幅狭に形成されていることから、握りにくさを助長することができる。
したがって、幼児や子供は、手摺1から手を離し、よじ登るような動作やぶら下がるような動作をあきらめることになり、手摺を乗り越えて、屋外に転落するのを防止することができる。
【0032】
さらに、上壁部22の上面と上側壁231の傾斜面とがなす二面角は、鋭角に設定されている。したがって、仮に、幼児や子供の手指が手摺本体2の上壁部22と後壁部23の上側壁231の接続部位に掛けられて、よじ登るような動作やぶら下がるような動作が行い得たとしても、接続部位に掛けられた手指には、そのような動作に伴う相応の押圧力が作用し痛さを感じることになる。
【0033】
また、仮に幼児や子供が踏み台等を使って、この手摺本体2上に腹部から乗っかることができたとしても、上壁部22の上面と上側壁231の傾斜面とがなす二面角の頂部に腹部がくい込むことで腹部には相応の押圧力が作用し痛さを感じることとなり、また、反射的に腹部を上記二面角の頂部から反らすならば、前壁部21の傾斜面により室内側に滑り落ちることになる。
したがって、幼児や子供は、手摺1に対して、よじ登るような動作やぶら下がるような動作をあきらめることになり、手摺を乗り越えて、屋外に転落するのを防止することができる。
【0034】
さらにまた、図3に示すように、手摺1は、前壁部21と底部3が、それぞれ屋内側の端縁部分が連接されて側面視略くの字状(側面視略Vの字状)をなす。幼児や子供がそのような手摺1を握ると、例えば、前壁部21に添えられる人差し指、中指、薬指及び小指の四指と、底部3に添えられる親指は、第1関節や第2関節が伸びた状態で手摺1を掴むことになるため、そのような手指の態様では、手摺1を強く把持することができない。
したがって、幼児や子供は、手摺1から手を離し、よじ登るような動作やぶら下がるような動作をあきらめることになり、手摺を乗り越えて、屋外に転落するのを防止することができる。
【0035】
また、手摺1を支持する支柱4は、高さ調整可能に構成することもできる。図4には、図2に用いられた支柱の変形例を示す側面図が示されている。この支柱40は、上部支柱41及び下部支柱42を有し、この下部支柱42の上端部に上部支柱41の下端部を上下方向にスライド自在(伸縮自在)に嵌合させ、ねじ等の固定具43で適宜の高さ位置で位置固定することで、その高さを調整可能に構成したものである。
【0036】
このような高さ調整可能な支柱40を用いることで、幼児や子供の身長に対応して手摺1の高さを調整することができる。したがって、幼児や子供が成長して身長が伸びた場合にも対応することができる。
【0037】
次に、本発明に係る手摺の他の実施態様について説明する。
図5(a)~図5(e)に示す手摺本体の実施態様は、図3に示す手摺本体2の構成の一部を変更したものであるため、主にその変更部分について説明し、上記手摺本体2と同一となる構成には同一の符号を付けて重複する説明を省略する。
【0038】
[実施形態2]
図5(a)に示す手摺本体2aは、図3に示す手摺本体2において、前壁部21と後壁部23の間の空間に補強部材としての補強片26を設けたものである。
この補強片26は、例えば、後壁部23の上側壁231と下側壁232の接続部位の内側面と、前壁部21の内側面とを連接するように水平方向に延びるように形成されている。この補強片26も、前壁部21、上壁部22、後壁部23、前側係合部24及び後側係合部25とともに、例えばアルミニウム合金を押し出し成形することによって、あるいは、その他、合成樹脂材料等から一体成形することができる。
なお、補強片26の配設位置は、上述した位置に限定されず、前壁部21と後壁部23の間の空間の適宜の位置に配置することができる。
【0039】
この実施形態2の手摺本体2aも、実施形態1と同様の作用効果を有する。
また、手摺本体2aには補強片26が設けられ、剛性が高められていることから、仮に、前壁部21や上壁部22の上方から過度な押圧力が加えられたとしても、手摺本体2aの変形を確実に防止することができる。
【0040】
[実施形態3]
図5(b)に示す手摺本体2bは、図3に示す手摺本体2において、前壁部21を後壁部23側(屋外側)に向けて突出する湾曲形状の前壁部21bに変更したものである。この湾曲形状の前壁部21bは、その上端縁から下端縁にわたって滑らかに連続する曲面をなす。
【0041】
この実施形態3の手摺本体2bは、前壁部21bが、その上端縁から下端縁にわたって屋外側に向けて突出する下り勾配に湾曲して傾斜する傾斜面を有していることから、図1図3で説明した実施形態1と同様に、この湾曲する傾斜面により手指の指掛かりを抑制することができる。
なお、この手摺本体2bにおいても、上記実施形態2と同様に、前壁部21bと後壁部23の間の空間に補強部材としての補強片を設けることができる。
【0042】
[実施形態4]
図5(c)に示す手摺本体2cは、図3に示す手摺本体2において、前壁部21を後壁部23とは逆側(屋内側)に向けて突出する湾曲形状の前壁部21cに変更したものである。この湾曲形状の前壁部21cは、その上端縁から下端縁にわたって滑らかに連続する曲面をなす。
【0043】
この実施形態4の手摺本体2cも、前壁部21cが、その上端縁から下端縁にわたって屋内側に向けて突出する下り勾配に湾曲して傾斜する傾斜面を有していることから、図1図3で説明した実施形態1と同様に、この湾曲する傾斜面により手指の指掛かりを抑制することができる。
なお、この手摺本体2cにおいても、上記実施形態2と同様に、前壁部21cと後壁部23の間の空間に補強部材としての補強片を設けることができる。
【0044】
[実施形態5]
図5(d)に示す手摺本体2dは、図3に示す手摺本体2において、後壁部23を前壁部21側(屋内側)に向けて突出する湾曲形状の後壁部23dに変更したものである。
【0045】
この実施形態5の手摺本体2dも、実施形態1と同様の作用効果を有する。
なお、この手摺本体2dにおいても、上記実施形態2と同様に、前壁部21と後壁部23dの間の空間に補強部材としての補強片を設けることができる。
【0046】
[実施形態6]
図5(e)に示す手摺本体2eは、図3に示す手摺本体2において、後壁部23を鉛直方向に延びる平板形状の後壁部23eに変更したものである。
【0047】
この実施形態6の手摺本体2eも、実施形態1と同様に、前壁部21が、その上端縁から下端縁にわたって屋内側に向けて下り勾配に傾斜する傾斜面を有しており、また、上壁部22の幅は、幼児や子供の第2指(人差し指)の第1関節から第2関節の間の部位より短い幅狭に形成されることから、その点において実施形態1と同様の作用効果を有する。
また、この手摺本体2eにおいても、上記実施形態2と同様に、前壁部21と後壁部23eの間の空間に補強部材としての補強片を設けることができる。
【0048】
上記実施形態2~6の手摺本体2a~2eは、上記実施形態1の手摺本体2と同様に、上述した高さ調整可能な支柱40に取り付けるように構成することもできる。
【0049】
また、上記実施形態1~6の手摺1は、支柱4,40に取り付け固定した底部3に、手摺本体2,2a~2eを係合させて取り付けるように構成しているが、本発明の手摺はそのような構成に限定されない。
【0050】
以下、本発明の他の変形例に係る手摺について説明する。
図6(a)及び図6(b)には、本発明の他の変形例に係る手摺を示す概略側面図が示されている。
[変形例1]
本件発明に係る変形例1の手摺100は、図6(a)に示すように、前壁部110と底部120とを有し、この前壁部110と底部120が側面視くの字状(側面視略V字状)をなし、連続する真直で長尺な部材として形成される。
【0051】
前壁部110は、図6(a)に示すように、その上端縁から下端縁にわたって屋内側に向けて下り勾配に傾斜する傾斜面を有し、その表面が屋内側を向くように配置される。この傾斜面は、凹凸のない滑らかに連続する平面を構成している。
【0052】
前壁部110の傾斜角(水平面に対する前壁部110の傾斜面のなす角度)は、上述した手指の指掛かりを抑制する機能面等を考慮すると、25°~75°の角度範囲が好ましく、40°~50°の角度範囲がより好ましい。
なお、前壁部110の傾斜角は、これらの角度範囲に限定されるものではない。
【0053】
底部120は、手摺100の基部をなし、平板状に形成されるとともに、屋内側の端縁が前壁部110の下端縁に連接される。この底部120は、支柱4の上端にネジやビス等の固定手段によって固定される。
【0054】
この変形例1の手摺100も、前壁部110が、その上端縁から下端縁にわたって屋内側に向けて下り勾配に傾斜する傾斜面を有していることから、図1図3で説明した実施形態1と同様に、この傾斜面により手指の指掛かりを抑制することができる。
【0055】
また、図6(a)に示すように、手摺100は、支柱4に固定される底部120と、前壁部110が、それぞれの屋内側の端縁部分が連接されて側面視くの字状(側面視略V字状)をなす。幼児や子供がそのような手摺100を握ると、例えば、前壁部110に添えられる人差し指、中指、薬指及び小指の四指と、底部120に添えられる親指は、第1関節や第2関節が伸びた状態で手摺1を掴むことになるため、そのような手指の態様では、手摺100を強く把持することができない。
したがって、幼児や子供は、手摺100から手を離し、よじ登るような動作やぶら下がるような動作をあきらめることになり、手摺を乗り越えて、屋外に転落するのを防止することができる。
また、この手摺100において、前壁部110と底部120の間の空間に補強部材としての補強片を設けることができる。
【0056】
[変形例2]
本件発明に係る変形例2の手摺200は、図6(b)に示すように、平板状に形成された前壁部210を有し、この前壁部210が連続する真直で長尺な部材として形成される。
【0057】
前壁部210は、図6(b)に示すように、その上端縁から下端縁にわたって屋内側に向けて下り勾配に傾斜する傾斜面を有し、その表面が屋内側を向くように配置される。この傾斜面は、凹凸のない滑らかに連続する平面を構成している。
【0058】
前壁部210の傾斜角(水平面に対する前壁部210の傾斜面のなす角度)は、上述した手指の指掛かりを抑制する機能面等を考慮すると、25°~75°の角度範囲が好ましく、40°~50°の角度範囲がより好ましい。
なお、前壁部210の傾斜角は、これらの角度範囲に限定されるものではない。
この前壁部210は、その上部を屋内側に向かって下り勾配に傾斜して構成した支柱4’の上部にネジやビス等の固定手段によって固定される。
【0059】
この変形例2の手摺200も、前壁部210が、その上端縁から下端縁にわたって屋内側に向けて下り勾配に傾斜する傾斜面を有していることから、図1図3で説明した実施形態1と同様に、この傾斜面により手指の指掛かりを抑制することができる。
【0060】
なお、上記変形例1及び2の手摺100,200も、上述した高さ調整可能な支柱40に取り付けるように構成することができる。
【0061】
(付記)
図7は、本発明の実施形態1に係る手摺本体2の正投影図法による六面図である。
手摺本体2は、複数の支柱4,4の上端に設置される手摺用笠木材をなし、その断面形状が連続する真直で長尺な部材として形成される。また、手摺本体2は、設置対象のベランダやバルコニー等に対応して、手摺1として必要な長さ(例えば、100cm、150cm、200cm、250cm、300cmなど)に設定される。図7の六面図中の平面図(最左側の図)において、左右方向のみに連続する。
【0062】
また、本発明は上述した具体的構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【0063】
<総括>
以上のとおり、上記実施形態では以下の発明を開示している。
(1)
屋内側に向けて配置される前壁部を備え、前記前壁部は、その上端縁から下端縁にわたって屋内側に向けて下り勾配に傾斜する傾斜面を有し、この傾斜面により手指の指掛かりを抑制することを特徴とする手摺(図3図5(a)~(e)、図6(a)(b)参照)。
(2)
屋外側に向けて配置される後壁部と、前記前壁部と前記後壁部のそれぞれの上端縁を連接する上壁部と、をさらに備えることを特徴とする(1)に記載の手摺(図3図5(a)~(e)参照)。
(3)
前記後壁部は、上側壁と下側壁とを有し、前記上側壁は、屋内側に向けて下り勾配に形成され、前記下側壁は、屋外側に向けて下り勾配に形成されるとともに、その上端縁が、前記上側壁の下端縁に連接され、前記上壁部と前記後壁部の前記上側壁とがなす二面角は、鋭角に設定されていることを特徴とする(2)に記載の手摺(図3図5(a)~(c)参照)。
(4)
前記前壁部と前記後壁部との間の空間に補強部材としての補強片が設けられ、前記補強片は、前記前壁部の内側面と前記後壁部の内側面とを連接するように形成されていることを特徴とする(2)又は(3)に記載の手摺(図5(a)参照)。
(5)
支柱に固定される底部を有し、前記前壁部と前記底部は、それぞれ屋内側の端縁部分が連接されて側面視略くの字状をなすことを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の手摺(図3図6(a))
(6)
前記前壁部の前記傾斜面は、その上端縁から下端縁にわたって滑らかに連続する平面をなすことを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の手摺(図3図5(a)(d)(e)、図6(a)(b)参照)。
(7)
前記前壁部の前記傾斜面は、その上端縁から下端縁にわたって滑らかに連続する曲面をなすことを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の手摺(図5(b)(c)参照)。
(8)
前記前壁部は、高さ調整可能な支柱に設けられることを特徴とする請求項(1)~(6)のいずれかに記載の手摺(図4参照)。
【符号の説明】
【0064】
1:手摺
2、2a~2e:手摺本体
21、21b、21c:前壁部
22:上壁部
23、23d、23e:後壁部
231:上側壁
232:下側壁
26:補強片
3:底部
4、4’、40:支柱
100:手摺
110:前壁部
200:手摺
210:前壁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7